説明

CMOSインバータ

【課題】 入力波形が急峻な場合でも反転電位を用いずに容易にデューティを補正することができるCMOSインバータを提供する。
【解決手段】 PMOSトランジスタP1と、NMOSトランジスタN1と、入力端子NGと、出力端子NDとを具備し、前記PMOSトランジスタ側もしくは前記NMOSトランジスタ側に接続されたスイッチを有している。前記スイッチがPMOSスイッチP2の場合には前記PMOSトランジスタ側に接続され、前記スイッチがNMOSスイッチの場合には前記NMOSトランジスタ側に接続される。入力端子NGに入力信号を入力した後に、前記スイッチに設けられた制御端子G1に制御信号を前記入力信号とずらして入力することによって前記入力信号の電圧を保持させ出力信号のデューティ補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力波形によらないでデューティ(DUTY)調整が可能なCMOSインバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、時計などにおいて基準クロック発生源として用いられる発振回路は、例えば、図7に示されているように、CMOSインバータ101と、このCMOSインバータ101に並列に接続された帰還抵抗102および水晶振動子103と、CMOSインバータ101の入力端子と出力端子のそれぞれに接続された負荷容量104と、CMOSインバータ101の出力を受ける発振バッファ用のインバータ105と、このインバータ105の出力を受けるデューティー調節用のインバータ106と、このデューティ調節用のインバータ106の出力を受け出力端子に出力させる出力バッファ用インバータ107と、出力バッファ用インバータ107に接続された外部端子OUTから構成されている。
【0003】
特許文献1には図7に示す出力パルスのデューティが変更可能な発振用集積回路および発振回路が開示されている。CMOSインバータの入力端子および出力端子に負荷容量を接続し、CMOSインバータに並列に帰還抵抗および水晶振動子を接続して発振させ、この発振出力を受ける発振バッファ用のCMOSインバータによりこれを増幅して、異なる反転電位のクロックドインバータに出力する。選択端子の状態を設定することにより、クロックドインバータを選択的に作動させ、CMOSインバータの出力信号のデューティを変更することにより、出力バッファ用のCMOSインバータを介して異なるデューティの信号を選択的に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−154146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来CMOSインバータは、デュ−ティ(DUTY)を50%に補正する場合、通常PMOSトランジスタとNMOSトランジスタで決まる反転電位を変えることにより行っていた。しかし、入力波形の立ち上がり・立ち下がり時間が急峻であると、反転電位を変えても出力のデューティを調整することは困難であった。
図8は、従来のCMOSインバータを示し、図9及び図10は、その入出力波形を示している。このCMOSインバータは、PMOSトランジスタP1及びNMOSトランジスタN1からなり、PMOSトランジスタP1のソースは電源に接続され、ドレインはNMOSトランジスタN1のドレインに接続され、NMOSトランジスタN1のソースは、接地されている。入力端子NGは、PMOSトランジスタP1及びNMOSトランジスタN1のゲートに接続され、出力端子NDは、PMOSトランジスタP1及びNMOSトランジスタN1のドレインに接続されている。ここで説明したインバータは、例えば、図7に記載した発振回路のインバータ107に適用される。
【0006】
図9は、図8に示すインバータに入力波形の立ち上がり・立ち下がりが遅い信号が入力した場合を説明している。入力端子NGに入力する信号は、デューティ42%と低い場合であり、反転電位は図示のように設定してある(図9(a))。この時の出力端子NDにはデューティ58%の信号が出力する(図9(b))。
従来、CMOSで構成されるインバータのデューティを50%に補正するには通常CMOSトランジスタとNMOSトランジスタで決まる反転電位を変えることによって行っている。反転電位は、PMOS及びNMOSトランジスタの大きさで決まるものである。この例では、入力波形のデューティが低い(42%)場合であり、出力波形のデューティは58%である。
この出力波形のデューティを50%に補正するために、デューティ42%で反転電位が図9(a)の入力信号より小さく設定された入力信号を入力端子に入力する(図9(c))。この時の出力端子NDにはデューティ50%の信号が出力され、正しく補正されたことが分かる(図9(d))。
【0007】
これに対して、図10は、図8に示すインバータに入力波形の立ち上がり・立ち下がりが早い信号が入力した場合を説明している。入力端子NGに入力する信号はデューティ42%と低い場合であり、反転電位は図示のように設定してある(図10(a))。この時の出力端子NDにはデューティ58%の信号が出力する(図10(b))。この信号の出力波形のデューティを50%に補正するために、デューティ42%で反転電位が図10(a)の入力信号より小さく設定された信号を入力端子に入力する(図10(c))と、出力端子NDにはデューティ56%の信号が出力し、正しく補正されない(図10(d))。このように、従来デューティ補正は反転電位を利用して行われる。
本発明は、このような事情によりなされたもので、入力波形が急峻な場合、反転電位を用いずにデューティを補正することができるCMOSインバータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のCMOSインバータは、PMOSトランジスタと、NMOSトランジスタと、入力端子と、出力端子とを具備し、前記PMOSトランジスタ側もしくは前記NMOSトランジスタ側に接続されたスイッチを有し、前記スイッチがPMOSスイッチの場合には前記PMOSトランジスタ側に接続され、前記スイッチがNMOSスイッチの場合には前記NMOSトランジスタ側に接続され、前記入力端子に入力信号を入力した後に、前記スイッチに設けられた制御端子に制御信号を前記入力信号とずらして入力することによって前記入力信号の電圧を保持させ出力信号のデューティ補正を行うことを特徴としている。前記PMOSスイッチ及び前記NMOSスイッチのゲートは前記PMOSトランジスタ及び前記NMOSトランジスタのゲートに接続されているようにしても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明のCMOSインバータは、入力波形の立ち上がり・立ち下がり時間が急峻であっても出力波形のデューティ補正を容易に行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1に係るCMOSインバータの回路図。
【図2】図1のCMOSインバータの入力波形図(a)、図1のCMOSインバータに付加されたPMOSスイッチのゲートに入力する波形図(b)、図1のCMOSインバータの出力波形図(c)。
【図3】実施例2に係るCMOSインバータの回路図。
【図4】図3のCMOSインバータの入力波形図(a)、図3のCMOSインバータに付加されたPMOSスイッチのゲートに入力する波形図(b)、図3のCMOSインバータの出力波形図(c)。
【図5】実施例3に係るCMOSインバータの回路図。
【図6】図5のCMOSインバータの入力波形図(a)、図5のCMOSインバータに付加されたPMOSスイッチのゲートに入力する波形図(b)、図5のCMOSインバータの出力波形図(c)。
【図7】実施例及び従来例のCMOSインバータが適用される発振回路を示す回路図。
【図8】従来のCMOSインバータの回路図。
【図9】図8のCMOSインバータの入力波形図(a)、(c)及び出力波形図(b)、(d)。
【図10】図8のCMOSインバータの入力波形図(a)、(c)及び出力波形図(b)、(d)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施例を参照して発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0012】
図1及び図2を参照して実施例1を説明する。
図1は、この実施例のCMOSインバータを示し、図2は、その入出力波形を示している。このCMOSインバータは、PMOSトランジスタP1及びNMOSトランジスタN1からなり、PMOSトランジスタP1のドレインはNMOSトランジスタN1のドレインに接続され、NMOSトランジスタN1のソースは、接地されている。入力端子NGは、PMOSトランジスタP1及びNMOSトランジスタN1のゲートに接続され、出力端子NDは、PMOSトランジスタP1及びNMOSトランジスタN1のドレインに接続されている。
この実施例は、PMOSトランジスタ側に設けられ、デューティ調整を行うスイッチに特徴がある。このスイッチは、PMOSスイッチP2であり、ソースは電源に接続され、ドレインはPMOSトランジスタP1のドレインに接続されている。
【0013】
このインバータは、PMOSスイッチを付加するものであって、このスイッチのゲートに制御信号を入力することによって、デューティ補正を行う。インバータの入力信号が急峻な波形であってもこの補正は正しく行われる。
図2(a)に示すように、入力端子NGに入力波形の立ち上がり、立ち下がりが早い(急峻な)波形の入力信号が入る(図2(a))。ついで、この入力信号に遅れて、この信号の電圧を保持するように制御端子G1に制御信号を入力する(図2(b))。制御端子G1の制御信号によって出力端子NDから出力する出力信号をハイインピーダンス(Hi−Z)状態とし、電圧を保持させることによってデューティ調整を行う(図2(c))。その際に、反転電位を変えることはない。
この実施例で説明したCMOSインバータは、反転電位を変化させずに、入力波形の立ち上がり・立ち下がり時間が急峻であっても出力波形のデューティ補正を容易に行うことができるものである。
【実施例2】
【0014】
次に、図3及び図4を参照して実施例2を説明する。
図3は、この実施例のCMOSインバータを示し、図4は、その入出力波形を示している。このCMOSインバータは、PMOSトランジスタP1及びNMOSトランジスタN1からなり、PMOSトランジスタP1のドレインはNMOSトランジスタN1のドレインに接続され、NMOSトランジスタN1のソースは、接地されている。入力端子NGは、PMOSトランジスタP1及びNMOSトランジスタN1のゲートに接続され、出力端子NDは、PMOSトランジスタP1及びNMOSトランジスタN1のドレインに接続されている。
【0015】
この実施例は、PMOSトランジスタ側に設けられ、デューティ調整を行うスイッチ及びこれに付随する抵抗に特徴がある。このスイッチは、PMOSスイッチP2であり、ソースは電源(VDD)に接続され、ドレインはPMOSトランジスタP1のドレインに接続されている。また、入力端子NGとPMOSスイッチP2の入力端子(インバータの制御端子G1)との間に抵抗R1が接続されている。
このインバータは、PMOSスイッチを付加するものであって、このスイッチのゲートに制御信号を入力することによって、デューティ補正を行う。インバータの入力信号が急峻な波形であってもこの補正は正しく行われる。
【0016】
図4(a)に示すように、入力端子NGに入力波形の立ち上がり、立ち下がりが早い(急峻な)波形の入力信号が入る(図4(a))。このとき、入力端子NGは制御端子G1に接続されているので、 制御端子G1には、入力信号が入力し、さらに、入力端子NGと制御端子G1との間には抵抗R1が接続されているので、入力信号が鈍った波形の信号が入力し(図4(b))、出力端子NGにはハイインピーダンス(HI−Z)の区間が形成された出力信号が出力する(図4(c))。これによりデューティは50%に近づく。
【0017】
ここでは、抵抗R1は、遅延回路として働き、入力信号につづいて、ずれて制御端子G1に制御信号が入力する。この制御信号によって出力端子NDから出力する出力信号をハイインピーダンス(Hi−Z)状態とし、電圧を保持させることによってデューティ調整を行うことができる。その際に、反転電位を変えることはない。
以上、この実施例で説明したCMOSインバータは、反転電位を変化させずに、入力波形の立ち上がり・立ち下がり時間が急峻であっても出力波形のデューティ補正を容易に行うことができる。
【実施例3】
【0018】
次に、図5及び図6を参照して実施例3を説明する。
図5は、この実施例のCMOSインバータを示し、図6は、その入出力波形を示している。このCMOSインバータは、基本的なインバータ構成が実施例1及び実施例2と同じであるのでこの部分は説明を略する。
この実施例は、NMOSトランジスタ側に設けられ、デューティ調整を行うスイッチ及びこれに付随する抵抗に特徴がある。このスイッチは、NMOSスイッチN2であり、ソースは接地(VSS)され、ドレインはNMOSトランジスタN1のソースに接続されている。また、入力端子NGとNMOSスイッチN2の入力端子(インバータの制御端子G2)との間に抵抗R2が接続されている。
このインバータは、NMOSスイッチを付加するものであって、このスイッチのゲートに制御信号を入力することによって、デューティ補正を行う。インバータの入力信号が急峻な波形であってもこの補正は正しく行われる。
【0019】
図6(a)に示すように、入力端子NGに入力波形の立ち上がり、立ち下がりが早い(急峻な)波形の入力信号が入る(図6(a))。このとき、入力端子NGは制御端子G2に接続されているので、 制御端子G2には、入力信号が入力し、さらに、入力端子NGと制御端子G2との間には抵抗R2が接続されているので、入力信号が鈍った波形の信号が入力し(図6(b))、出力端子NGにはハイインピーダンス(Hi−Z)の区間が形成された出力信号が出力する(図6(c))。これによりデューティは50%に近づく。
ここでは、抵抗R2は、遅延回路として働き、入力信号につづいて、ずれて制御端子G2に制御信号が入力する。この制御信号によって出力端子NDから出力する出力信号をハイインピーダンス(Hi−Z)状態とし、電圧を保持させることによってデューティ調整を行うことができる。その際に、反転電位を変えることはない。
【0020】
以上、この実施例で説明したCMOSインバータは、反転電位を変化させずに、入力波形の立ち上がり・立ち下がり時間が急峻であっても出力波形のデューティ補正を容易に行うことができる。なお、実施例1−3において説明したCMOSインバータは、例えば、図7に記載した発振回路のインバータ107に適用される。
【符号の説明】
【0021】
G1、G2・・・制御端子
N1・・・NMOSトランジスタ
N2・・・NMOSスイッチ
ND、OUT・・・出力端子
NG・・・入力端子
P1・・・PMOSトランジスタ
P2・・・PMOSスイッチ
R1、R2・・・抵抗
101・・・CMOSインバータ
102・・・帰還抵抗
103・・・水晶振動子
104・・・負荷容量
105・・・発振バッファ用インバータ
106・・・デューティ調節用インバータ
107・・・出力バッファ用インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PMOSトランジスタと、NMOSトランジスタと、入力端子と、出力端子とを具備し、前記PMOSトランジスタ側もしくは前記NMOSトランジスタ側に接続されたスイッチを有し、前記スイッチがPMOSスイッチの場合には前記PMOSトランジスタ側に接続され、前記スイッチがNMOSスイッチの場合には前記NMOSトランジスタ側に接続され、前記入力端子に入力信号を入力した後に、前記スイッチに設けられた制御端子に制御信号を前記入力信号とずらして入力することによって前記入力信号の電圧を保持させ出力信号のデューティ補正を行うことを特徴とするCMOSインバータ。
【請求項2】
前記PMOSスイッチ及び前記NMOSスイッチのゲートは、それぞれ前記PMOSトランジスタ及び前記NMOSトランジスタのゲートに接続されていることを特徴とする請求項1に記載のCMOSインバータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−21388(P2013−21388A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150729(P2011−150729)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(390009667)セイコーNPC株式会社 (161)
【Fターム(参考)】