説明

CNSと眼の標的遺伝子を特異的に調節するための手段と方法及びその同定法

【課題】
【解決手段】 特に、CNSおよび/または眼の疾患を治療する医薬品を調整するため、標的の遺伝子または遺伝子産物を調節することができる化合物を有する組成物を使用することについて報告し、前記組成物は血液CNS関門と血液網膜関門の外に投与するように設計する。さらに、CNSまたは眼の疾患に関与するポリペプチドをコードする核酸分子を同定、入手する方法、前記疾患を診断する方法、及び前記に説明した方法に沿って同定された標的遺伝子の発現が欠乏した遺伝子組換え動物について提示する。さらに、CNSおよび/または眼に関連した疾患の治療に特に有用な薬物を同定し、単離する方法を提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中枢神経系(CNS)と眼の疾患を治療する方法に関するものである。特に、本発明はCNSと眼の疾患を治療する医薬品を調整するため、標的の遺伝子または遺伝子産物を調節することができる化合物を有する組成物を使用することに関するものであり、前記組成物は血液CNS関門と血液網膜関門の外に投与するように設計する。本発明は、さらに、CNS疾患または眼に関与するポリペプチドをコードする核酸分子を同定、単離する方法、前記疾患を診断する方法、及び遺伝子組換え動物に関するものであり、本発明の方法に沿って同定された標的遺伝子の発現を調節する。さらに、本発明は、CNSおよび/または眼に関連した疾患の治療に特に有用な薬物を同定し、単離する方法に関するものである。
【0002】
いくつかの特許文献はこの明細書の本文を通じて引用される。ここに引例された各特許文献(あらゆる製造者の仕様書、取り扱い説明書等を含む)は本明細書でこの参照によりここに組み込まれるが、引例されたすべての特許文献が実際に本発明の先行技術であるという承認ではない。
【背景技術】
【0003】
現在、CNSおよび/または眼に対して生物学的に活性な薬物を送達するための、様々なアプローチが存在する。これには、他の考えられる方法のうち、経口投与、静脈内、筋肉内、経皮投与、また球眼内注入や点眼薬のような応用も含まれる。前記薬物が全身の血液循環に送達されると、すべての内臓と組織に運ばれ、(CNSおよび/または眼の内部に作用させるためには)血液脳関門や血液網膜関門を通過しなければならない。明らかに、他のすべての臓器に薬物が作用するため、特に、治療する疾患や標的となる細胞または組織に特異的ではない標的遺伝子または遺伝子産物に、前記薬物が作用する場合には、副作用の発生率が高くなる可能性がある。脳への送達で利用されることが多い別の戦略は、脳室内注射系、脳内(重合体)移植、遺伝子組み換えしたタンパク質分泌細胞の移植、細胞移植などの侵襲的方法を利用するものである。残念ながらこれらの方法は、デポー部位または注射部位に近接した脳または細胞の表面に薬物を送達させる場合にのみ効果的であり、例えば髄膜の癌浸潤の治療などに利用することができる。しかし、脳の実質で有効な薬物濃度を達成できないため、これらの方法には多数の制限がある。
【0004】
ヒト中枢神経系のように、ヒトの眼は、高度に複雑で組織的な機能を持った、多数の特異的な構造及び組織で特徴付けられる器官である。両者は、有害な環境の影響に対して関門(涙の分泌、酵素、輸送メカニズム、血液網膜関門及び血液CNS関門)によって保護される。血液脳関門のように、前記血液網膜関門も眼の内部が薬物を取り込むための生理的な関門であり、現在の技術では、仮に可能であっても眼性疾患の薬理療法は非常に困難である。
【0005】
眼科疾患を含む、前記CNS障害の治療用として市場で現在利用できる薬物は、高用量を投与することが必要であるため、副作用を伴うことが多い臨床症状の治療においてのみに利用可能である。前記CNS、特に眼底部の原因療法は、注入の他には不可能である。さらに、現状では、複数要因に由来する網膜疾患の病因の根底にある、複雑な分子代謝相互関係の情報は限られている。その結果、市場で利用できる薬物は、そのような疾患の症状の治療のみに適している。
【0006】
CNSおよび/または眼に関連する疾患を治療するための治療手段の必要性を考慮すると、本発明の技術的な課題は、前記CNSおよび/または眼の障害に関する遺伝子を同定し、調節する手段と方法を提供することである。より具体的には、本発明の技術課題は、血液脳関門や血液網膜関門を傷つけずに通過させながら、哺乳類のCNSおよび/または眼にある標的遺伝子と遺伝子産物を調節制御するための非侵襲的方法を提供することである。
【0007】
前記技術課題に対する解決は、請求項で特徴付けられ、以下にさらに記載されている実施例を示すことによって達成される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、治療有効量で標的遺伝子または遺伝子産物を調節することができる化合物を有する組成物を被験者に投与する方法を有する、中枢神経系(CNS)と眼の疾患を治療する方法を対象にしており、前記組成物は血液脳関門や血液網膜関門の外に投与される。特に、前記組成物は1つ以上の二本鎖オリゴリボヌクレオチド(dsRNA)を有することができ、1つ以上の標的遺伝子に対応するmRNAのRNA干渉を介する。
【0009】
別の態様では、本発明がCNSおよび/または眼の疾患に関係するポリペプチドをコードした核酸分子を同定、単離する方法を対象とし、
(a)CNSまたは眼性疾患に関連した病的状態を刺激するストレス条件下、細胞、組織、または非ヒト動物を培養・育成する工程と;
(b)前記細胞、組織、または動物から核酸および/またはタンパク質を単離する工程と;
(c)少なくとも1つの前記核酸および/またはタンパク質の発現または活性プロフィールを、対応する非処理細胞、組織、または動物および、異なるストレス条件下で処理された細胞、組織、または動物と比較する工程と;
(d)異なって発現された少なくとも1つの核酸および/またはタンパク質を決定することで、前記の少なくとも1つの核酸の発現または活性量の変化、または少なくとも1つの前記タンパク質の活性、または前記タンパク質の局在化変化がCNSまたは眼の疾患に影響していることを示す、決定する工程とを有する。
【0010】
また本発明は、特に前記のコードされたポリペプチドが血管新生(angiogenesis)および/または新血管新生(neovascularization)、および/または網膜疾患に関係する場合に、前記方法によって得られる核酸分子に関するものであり、そのような核酸分子を有するベクターと前記ベクターを有する宿主細胞に関するものでもある。
【0011】
また、本発明は、ポリペプチドの発現が可能な条件下で前記宿主細胞を培養し、培養から生産されたポリペプチドを回収する工程と、および前記培養からのポリペプチドと前記方法によって得られるか前記核酸分子によってコードされたポリペプチドを回収する工程とを有する、表現型の反応変化を誘導することができるポリペプチドを生産する方法を対象としている。
【0012】
さらに、本発明は、そのようなポリペプチドを特異的に認識する抗体と、そのような抗体または前述した核酸分子、そのような核酸分子に相補的な核酸分子、ベクター、宿主細胞、ポリペプチドのいずれか1つを有する、医薬品や診断用の組成物に関するものであり、それぞれ任意に医薬品として認められた担体と適切な検出手段に関するものでもある。
【0013】
さらに、本発明は、効果的な用量で被験者に前記医薬品を投与する方法を有する、CNSおよび/または眼の疾患を治療する方法を対象とする。
【0014】
さらに、本発明はCNSおよび/または眼の疾患に関係する遺伝子の発現を検出する方法に関するものであり:
(a)細胞からmRNAを採取する工程と;
(b)ハイブリダイゼーションの条件下で前記の核酸分子またはそのフラグメントを有するプローブを用い、そのように採取されたmRNAをインキュベートする工程と;
(c)プローブにハイブリダイズさせたmRNAの有無を検出する工程とを有する、
または
(a)前記被験者から細胞サンプルを採取する工程と;
(b)そのように採取された細胞サンプルを前記抗体と接触させる工程と;
(c)前記遺伝子でコードされたタンパク質に結合した抗体の有無を検出する工程とを有する。
【0015】
本発明はさらに、被験者の前記疾患またはそのような疾患への罹患しやすさを診断する方法を対象とし:
(a)前記疾患に罹患した患者からDNAを単離する工程と;
(b)前記ステップ(a)で単離されたDNAを少なくとも1つの制限酵素で消化する工程と;
(c)サイジングゲル(sizing gel)上で得られたDNAフラグメントを電気泳動により分離する工程と;
(d)検出可能なマーカーで標識した、本発明の核酸分子またはそのフラグメントを有するプローブとともに、前記で得られたゲルをインキュベートする工程と;
(e)前記疾患患者のDNAに特異的なバンドパターンを作ると定義されているプローブにハイブリダイズしたゲル上で、標識バンドを検出する工程と;
(f)ステップ(a)〜(e)により被験者のDNAを調整し、ゲル上で検出可能な標識バンドを生成する工程と;
(g)ステップ(e)の疾患患者のDNAに特異的なバンドパターンとステップ(f)の被験者のDNAを比較し、前記パターンが同一か、異なっているかを決定し、前記パターンが同一の場合は、それによって前記疾患と前記疾患への罹患しやすさを診断する工程とを有する、
または
(a)診断チップ、プライマー伸長法、一塩基多型、または配列決定の方法により、前記の核酸分子を有する被験者の核酸サンプルを分析する工程と;
(b)前記の結果を前記疾患に罹患した患者から得られたサンプルの結果と比較する工程とを有し、
前記発現プロフィールの同一性および/またはヌクレオチドの配列は、前記疾患を示す。
【0016】
さらなる実施例では、本発明が、被験物質にCNSまたは眼性疾患に関与する核酸分子またはポリペプチドに対する作用があるか否かを決定する方法に関し:
(a)前記の方法に沿って同定、単離された標的遺伝子または遺伝子産物を発現した細胞と、スクリーニングする化合物を接触させる工程と;
(b)前記化合物が、前記標的遺伝子または遺伝子産物の発現または活性を調節するか否かを決定する工程とを有する。
【0017】
さらなる態様では、本発明が上記に定義した疾患の治療に用いられる薬物またはプロドラッグに関するもので:
(a)被験化合物または被験化合物の集合を合成する工程と;
(b)前記被験化合物または被験化合物の集合に対して、本発明のスクリーニング法を実施する工程と;
(c)標的遺伝子または遺伝子産物の修飾因子またはその誘導体として同定された化合物を生産する工程とを有する。
【0018】
さらに、本発明は、前記に定義した標的遺伝子または遺伝子産物の異常発現または活性を示す、遺伝子組換え非ヒト動物と、前記疾患を治療するための薬物発見プロセスにこれを利用することを対象とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、中枢神経系(CNS)と眼の疾患を治療する医薬品を調合するため、標的遺伝子または遺伝子産物を調節することができる化合物を使用することに関するものであり、前記組成物は血液CNS関門および/または血液網膜関門の外に投与するように設計する。
【0020】
1つの態様では、本発明は、眼の組織におけるタンパク質機能の特異的な調節により、眼性疾患の治療で血液網膜関門を通過できるとは考えられない化合物を投与することで、血液網膜関門を通過させることができるという、驚くべき所見を基にしている。血液網膜関門は血液脳関門と機能的に類似しているため、所定の眼性疾患の治療を目的とした、血液網膜関門を通過させる改良法を提供することは、CNS疾患の治療にも適していることが予想される。
【0021】
故に本発明に従うと、前記CNSまたは眼の中の標的遺伝子または遺伝子産物の調節ができる化合物を有する前記組成物は、好ましくは大量の、すなわち化合物の血液脳関門の通過を促進する送達促進因子の実質的な効果のある量なしで、また侵襲的方法及び装置の適用を必要とせずに、投与されるように設計されている;例えばこれら化合物、方法、及び装置は米国特許出願第US2002183683号、及び国際公開番号第WO03/000018号を参照のこと。しかし、本発明の独立した態様である一部の実施例では、例えばRNA干渉を介する化合物の利用、そのような方法と化合物の利用は、血液脳関門と血液網膜関門を迂回しながら、哺乳類のCNSおよび/または眼に標的遺伝子または遺伝子産物を調節することができる化合物の送達を向上及び管理することに含まれるかもしれない。
【0022】
これらの後者の実施例は、とりわけ新規の方法を提供し、CNS疾患や眼性疾患を引き起こす遺伝子を同定する、従来の実験戦略を応用する際の難しさを克服することと、診断及び医薬品を用いた介入戦略の標的としての妥当性を確認することを基にしている。これは、この疾患の症状が後年、一般には60歳代に見られるため、特にAMDに当てはまる。現状での病理学的な代謝相互関係についての知識は、ほとんどのCNS及び眼性疾患の医学的治療に対して十分ではない。前記疾患が複雑であり、CNSおよび眼の簡単な介入及び処置を行うための適当な戦略がないため、そのような疾患に適切な動物または細胞培養モデルは利用できない。
【0023】
従って、1つの重要な様態は、本発明がCNSおよび/または眼の疾患に関与する標的遺伝子及び遺伝子産物を同定、単離するための、細胞、組織、動物モデルを基本としたアッセイと、これらをそのような疾患の治療的介入と診断の標的として利用する方法に関する。
【0024】
CNS障害の例は、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、双極性障害、統合失語症、健忘症、偏頭痛、脳卒中、不眠症、アルコール依存症、不安症、強迫性障害、大脳後天性ヒト免疫不全症候群、慢性痛など多数の疾患である。
【0025】
本発明の組成物は局所的または全身的に、例えば静脈内などに投与してもよい。非経口投与に対する製剤は、無菌水溶液または非水溶液、懸濁液、及び乳濁液を含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコールと、ポリエチレングリコールと、例えばオリーブ油などの植物油と、例えばエチルオレイン酸などの注入可能な有機エステルである。水性担体は、生理食塩水、緩衝液などの水、アルコール性溶液/水溶液、乳濁液、または懸濁液を含む。非経口媒体は、塩化ナトリウム水溶液、ブドウ糖リンゲル液、ブドウ糖及び塩化ナトリウム、乳酸加リンガー液、または固定油を含む。静脈内媒体は、液体及び栄養補充液、電解質補充液(例えばブドウ糖リンゲル液に基づく補充液)などを含む。防腐剤など添加物は、例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスなどであってもよい。さらに、本発明の前記医薬品は、インターロイキンやインターフェロンなど、前記医薬品を意図した使用によって、さらなる因子を有してもよい。
【0026】
本発明に沿って、前記医薬品は約0.1μg〜約10mg単位/日および/または単位/kg体重の有効量で、被験者に投与されるが、下記も参照のこと。さらに、適切な投与法は例21によって決定することができる。
【0027】
好適な実施例では、治療される前記障害は眼に関連している。そのような疾患には脈絡網膜炎及びヘルペス網膜炎を含み、これは後天性の網膜疾患と考えられ、網膜障害疾患の大部分は遺伝的素因に例えられる。これらは例えば初期網膜剥離(ablatio retinae)、網膜芽細胞腫、網膜星細胞腫(Bourneville‐Pringle)、網膜血管腫症(Hippel‐Lindau)、コート病(滲出性網膜炎)、イールズ病、中心性漿液性網膜症、眼白子症、網膜色素変性症、白点状網膜炎、アッシャー症候群、レーバー先天性黒内障、錐体ジストロフィー、卵黄様黄斑変性症(ベスト病)、若年性網膜分離症、ノースカロライナ黄斑変性症、ソルスビー(Sorsby)基底ジストロフィー、ドイン(Doyne’s)ハニカム網膜ジストロフィー(Malattia Leventinese)、スタルガルト病、ワーグナー硝子体網膜変性症、または加齢性黄斑変性症(AMD)、同様にベスト梅毒またはスタルガルト梅毒のような単一遺伝子網膜症などを含む。さまざまな遺伝的欠陥が、この広範囲の眼性疾患の表現型を導くか、生じやすくすることが知られている。
【0028】
これらの臨床的な表現型の一部は、血管が病理学的に新規形成されることで特徴付けられ、血管新生(angiogenesis)または新血管新生(neovascularization)と呼ばれる。脈絡毛細管炎(choriokapillaris)から始まり、眼の内部に新しい血管が成長することで、ヒト網膜の患部で光受容体細胞の退化が促進される。眼科の分野では、血管新生を網膜下(脈絡膜=CNV)血管新生と網膜血管新生の2つに区別することができる。中心窩下血管新生とも呼ばれる網膜下血管新生は、Makular変性などの変性疾患と関連しており、視力喪失と変形視症で特徴付けられる。一方、網膜血管新生、つまり硝子体または虹彩の血管新生は、虚血性プロセス(例えば網膜血管炎や糖尿病性網膜症)と関連している。さらに、血管新生は、腫瘍成長、関節炎、糖尿病性腎症など、異なる眼科以外の疾患パターンでも重要な病理学的機序である。従って、本発明の方法と使用に関する好適な実施例では、治療される前記疾患が血管形成や血管新生と関連し、特に、網膜色素上皮(RPE)、神経感覚網膜、脈絡(choriodea)に好ましい。最も好ましいのは、前記疾患が湿性加齢性黄斑変性症(AMD)または糖尿病性網膜症の場合である。
【0029】
以下に続く説明では、遺伝的構成要素を有する複雑な眼科疾患の例としてAMDを扱う。湿性AMDを考慮すると、疾患パターンの例とすることもでき、明らかに異なる血管新生で特徴付けられる。この例は分子的原因の研究、及び診断と薬物介入戦略の開発に関する前記関連技術課題を説明する。
【0030】
網膜変性のサブタイプとして考えられるAMDは、先進国で視覚疾病の最も一般的な原因であり、有病率は52歳以上の人で9%、75歳以上の人では25%以上に上昇する(Paetkau et al.1978,Leibowitz et al.1980,Banks and Hutton 1981,Ghafour et al.1983,Hyman 1987,Hyman et al.1983,Grey et al.1989,Yap and Weatherill 1989,Heiba et al.1994)。
【0031】
AMDの病状進展の初期段階では、網膜色素上皮で黄色みがかったリポフスチン様の粒子の蓄積量が増加する(RPE;Feeney 1978)。これらの粒子は、未消化の食菌された光受容体の外節膜の残遺物であると考えられ、正常のプロセスでは、基本的にブルッフ膜(Brunch's membrane)から脈絡毛細管に排出される。経時的には、リポフスチン様粒子の蓄積がブルッフ膜に影響し、これが進行的に破壊される(Hogan and Alvarado 1967,Sarks 1976,Feeney−Burns and Ellersieck 1985,Pauleikhoff et al.1990)。RPEとブルッフ膜の沈着物は主に脂質で構成されるが、その正確な組成物は、一部の沈着物が極性の高いリン脂質であることが明らかとなった患者では異なり、主に無極性の中性脂質を含むこともある。
【0032】
このような個々のドルーゼ組成物の違いは、AMDが臨床的に不均一であることの根拠であると考えられる(Greenら、1985)。患者によっては脈絡毛細管炎からブルッフ膜に血管が内側に伸びることもあれば(新血管新生)(Bresslerら、1982)、RPE下の滲出により網膜色素上皮の剥離を示すこともあり(Gass 1967、Greenら 1985)、第3群の患者群では、RPEと上にかかる感覚神経網膜(sensory neuroretina)の萎縮変化により視力の喪失がゆっくりと低下する(Maguire及びVine 1986)。
【0033】
はるかに一般的ではないが、滲出性/新生血管性のAMDは、視力≦20/200の失明の80%以上を占めている(Bresslerら 2002)。前述の「乾性」AMDとは対照的に、滲出性の「湿性」AMDは脈絡膜血管新生(CNV)と関連し、失明、そのため(精神的疾患、損傷のリスク上昇などが続き)生活の質の喪失に至る(Bresslerら 2002)。片方の眼にCNV−AMDが発症してから5年以内にもう片方の眼でCNVが生じるリスクは高い(>40%)(Bresslerら 2002)。新生血管AMDは脈絡膜新生血管の病変で特徴付けられる。これらの病巣は、脈絡膜の異常血管がブルッフ膜の切れ目から網膜色素上皮の下に成長増殖した場合に生じる(Bresslerら.2002、Campochiaroら 1999)。これらの血管から異常な漏出があると、網膜色素上皮または(網膜色素上皮の上にある)神経感覚網膜の出血や剥離に至る可能性がある。瘢痕が形成することに伴い、網膜組織が置換され、永久的な視力喪失に至る可能性がある。
【0034】
AMDは内因性因子と同様、外因性因子によって引き起こされる複雑な病気である(MeyersおよびZachary 1988,Seddonら)。環境要因に加え、例えば遠視、明色皮膚及び虹彩色、血清コレステロールレベルの上昇、高血圧、または喫煙など、いくつかの個人的危険要因が提言されている(Hyman et al.1983,Klein et al.1993,Sperduto and Hiller 1986,The Eye Disease Case−Control Study Group 1992,Bressler and Bressler 1995)。AMDに対する遺伝的構成要素はいくつかの研究グループによって実証されており(Gass 1973,Piguet et al.1993,Silvestri et al.1994)、前記疾患は遺伝的な素因がある患者において、環境/個人的要因によって誘発されるという仮説が導かれた。変異した場合に、AMDに対する感受性を与えることができる遺伝子の数は知られていないが、数多くあると考えられる。
【0035】
症状の発症が遅く、通常は60歳代であることと、臨床的、また可能性としては遺伝的に不均一であるため、AMDに罹患しやすくする遺伝子を同定する、従来のアプローチを適用することが困難になっている。臨床的表現型が複雑であるため、変異した場合にAMD感受性に寄与する遺伝子数は多くなることが推測される。
【0036】
例えばレーザー光凝固術、光線力学的療法(verteprofin、商標名Visudyne(商標登録)(Novartis)を用いた)、放射線または外科療法など、AMDの治療のための最近の物理的アプローチを使用しての成功は、中規模の割合の患者でのみ達成された(Bressler et al.2002,Yuzawa et al.2001)。
【0037】
そのため、ここに記載された本発明の方法、使用、及び組成物は、他の疾患と同様にこの特定疾患の治療に対する重要な改良、及び代替治療介入を示している。これらの実施例に対して、前記医薬品は好ましくは、前記眼の後部に効果的である(もしくは適用される)ように設計され、好ましくは血液網膜関門の網膜領域の外側に適用されるように設計された形態である。
【0038】
本発明の1つの実施例では、前記化合物が前記標的遺伝子または遺伝子産物のインヒビター/アンタゴニストであり、好ましくは血管新生や新血管新生に関与する遺伝子の発現または遺伝子産物の活性を抑制する;上記を参照のこと。
【0039】
本発明に沿った「アンタゴニスト/インヒビター」という用語には、例えば転写または翻訳に影響するなどにより、酵素活性を変化させるか、発現を調節することで、遺伝子の作用または遺伝子産物の活性を調節する化学物質が含まれる。一部の場合、アンタゴニスト/インヒビターが、疾患に関与する遺伝子産物またはリガンド結合分子の基質となることもある。
【0040】
「インヒビター」という用語には、ポリペプチドの活性を低下させる基質と、それを完全に無効にする基質の両方が含まれる。
【0041】
遺伝子産物の活性を調節し、例えば以下に説明する細胞アッセイで反応を引き起こす「アンタゴニスト」は、遺伝子産物の活性または活性産物の量を直接または間接的に変化させる化合物を指す。アンタゴニストの効果は、標的遺伝子のアンタゴニストで誘導される活性を遮断するものと見ることができる。アンタゴニストには、競合的アンタゴニストと非競合的アンタゴニストが含まれる。競合的アンタゴニスト(または競合的遮断物質)は、作用物質の結合に特異的な部位と相互作用するか、その近くで相互作用する。非競合的アンタゴニストまたは遮断物質は、作用物質の相互作用部位以外の部位と相互作用することで、前記遺伝子産物の機能を不活化する。好ましくは、アンタゴニスト/インヒビターは小化学分子であり、疾患に関係する標的遺伝子産物、好ましくは血管形成や血管新生に関与する遺伝子産物と直接相互作用する。従って、好ましくは、標的遺伝子の活性を抑制または刺激するために必要な化合物の分子量と、細胞に存在するか存在しない遺伝子産物の分子量との間に直接的な関係がある。前記化合物は、ポリペプチド、抗ポリペプチド抗体、RNA分子をコードしたポリペプチド(の一部)、またはそのアンチセンス配列、転写制御因子、リガンド結合分子、ポリペプチド基質、または既知のアゴニスト(作用因子)/アクチベーター(活性化因子)またはアンタゴニスト/インヒビターに由来する可能性がある。
【0042】
本発明の好適な実施例では、前記アンタゴニストが、例えばリボソーム、前記遺伝子のアンチセンスまたはセンス核酸分子、またはRNA干渉を介することができる遺伝子またはdsRNA分子などの核酸を基にしている。例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド配列の調整、合理的な選択を行うための方法とコンピュータープログラムは、先行技術で報告されている;例えば、Smith,Eur.J.Pharm.Sci.11(2000),191〜198;Toschi,Methods 22(2000),261〜269;Sohail,Adv.Drug Deliv.Rev.44(2000),23〜34;Moulton,J.Comput.Biol.7(2000),277〜292を参照。これらの処置は、最適なハイブリダイゼーション部位を見つける方法、第2に、例えばCNSおよび/または眼性疾患で過剰発現されたmRNAに結合する配列を選択する方法を有する。これらの方法には、より系統的な技術に対して、多数のmRNAに相補的な配列をより経験的に検討することが含まれ、即ちRNアーゼHマッピング、組み合わせ配列の利用、コンピューターを用いた方法でmRNAの二次構造を予測する方法などがある。構造的RNAに結合する構造、つまりaptastructures及び鎖でつながれているオリゴヌクレオチドプローブ、折り畳み三重らせん形成オリゴヌクレオチドも、本発明の目的で利用することができる。コンピューターを用いた分析により補助したアンチセンス配列の選択と関連し、有益なwwwアドレスを以下に示す。
【0043】
本発明の特に好適な実施例では、前記アンタゴニスト/インヒビターは、実質的に、好ましくは二本鎖オリゴリボヌクレオチド(dsRNA)の一部を含むリボヌクレオチドで構成される。標的部位の選択における手段としての二次構造予測及びmRNAのin vitro到達性は、例えばAmarzguioui,Nucleic Acids Res.28(2000),4113〜4124に記載されている。修飾デオキシヌクレオシドの取り込みによるDNA標的の二次構造の最小化:ハイブリダイゼーションによる核酸分析の意義については、Nguyen,Nucleic Acids Res.28(2000),3904〜3909に記載されている。
【0044】
21〜23ヌクレオチド長のdsRNAが好ましい。前記dsRNA分子は末端3’ヒドロキシル基も含むことができ、1つ以上のヌクレオチドの付加、欠損、置換、または修飾によって前記遺伝子または遺伝子産物のヌクレオチド配列とは異なる、天然由来RNAの類似体でもよい。二本鎖構造のRNA、すなわちdsRNAまたはRNAiを有する細胞の標的遺伝子の遺伝子発現を阻害するため、RNAを生細胞へ導入する一般的工程は当業者に知られており、国際公開番号第WO99/32618号、第WO01/68836号、第WO01/77350号、第WO00/44895号、第WO02/055692号、及び第WO02/055693号に記載され、この内容の開示はここで参照により取り込まれる。
【0045】
前記dsRNAの標的mRNAは、好ましくは、以下に説明する本発明の方法に沿って得られた遺伝子またはcDNAによってコードされる。1つの実施例では、標的ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:2または4のアミノ酸配列をコードするか、SEQ ID NO:1または3のヌクレオチド配列を有する。
【0046】
本発明の1つの実施例では、前記組成物に利用される前記化合物が核酸分子であるか、核酸分子によってコードされ、CNSまたは眼の細胞に発現されるように設計されている。これらの実施例では、遺伝子治療介入が想定されている;下記も参照。
【0047】
本発明の方法及び使用の好適な実施例において、前記組成物は、CNSまたは眼の前記細胞または組織に適切な担体によって導入されるように設計され、血液CNS関門および/または血液網膜関門の外側で適用される、例えば点眼薬などで特徴付けられた形態である。これは全身的に、イオン注入的に、または球後注入によって投与され得る。
【0048】
イオン注入は、電流を用いて組織内にイオン化分子を能動的に導入することと定義されてきた。この技術は、ドナー電極(例えば皮膚など)の下にある組織、また全身の血液循環へのドラッグデリバリーを補強することで、全身に薬物を送達するために用いられてきた。イオン注入装置は少なくとも2つの電極を必要とし、その両方が体の生体膜表面のある部分と電気的に接触している。「供与」または「活性」電極として一般的に言及される1つの電極は、例えば薬物やプロドラッグなどの生理活性物質が体に運搬されるための電極である。反対の極性を有するもう1つの電極は、体と電源の間の電気回路を貫通させるために機能する。この電極は「受容」または「不活性」電極として一般的に言及される。イオン泳動中、薬物溶液及び隣接する組織を通過する電流を形成するため、電極全体に電位が加えられる。イオン泳動は、血液血管関連障害(例えば再狭窄など)、膀胱、子宮、尿道及び前立腺疾患の治療で報告されていた。米国特許番号第6,219,557号;第5,588,961号;第5,843016号;第5,486,160号;第5,222,936号;第5,232,441号;第5,401,239号、及び第5,728,068号は、中空、管状器官(膀胱、尿道及び前立腺)、または血管に挿入するイオン注入カテーテルの様々なタイプについて開示している。米国特許出願第US2002183683号はCNSへの活性物質の運搬法を示している。
【0049】
多数の活性で、特異的に発現することが多い遺伝子は、前記CNSと前記網膜の細胞でのプロセス、及び血液CNS関門と血液網膜関門の代謝交換を実行し、制御するために必要である。これらの複雑な組織にある多数の成分の構造と機能的統合性を維持するため、特異的な遺伝子活性も必要である。結果として、この独特な高度に進化した系は、特に様々な遺伝的欠陥を受けやすく、そのため広範な疾患の遺伝子型が生じる。前記患者が位置クローニングを実行できるだけ十分に人数が多い家族の一員であれば、単一遺伝子病の研究は比較的容易であるが、多重遺伝子の疾患に寄与しているか、関係している遺伝子、または疾患への罹患しやすさを同定することは、はるかに困難である。
【0050】
従って、別の態様では、本発明がCNSおよび/または眼の疾患に関係するポリペプチドをコードした核酸分子を同定、単離する方法に関連し:
(a)CNSまたは眼性疾患に関連した病的状態の刺激につながるストレス条件下で、細胞、組織、または非ヒト動物を培養・育成する工程と;
(b)前記細胞、組織、または動物から核酸および/またはタンパク質を単離する工程と;
(c)少なくとも1つの上述の核酸および/またはタンパク質の発現または活性プロフィールを、対応する非投与細胞、組織、動物、および/または異なるストレス条件で投与された細胞、組織、動物と比較する工程と;
(d)異なって発現された少なくとも1つの核酸やタンパク質を決定することで、前記の少なくとも1つの核酸の発現または活性量の変化、または少なくとも1つの前記タンパク質の活性、または前記タンパク質の局在化変化がCNSまたは眼の疾患に影響していることを示す工程とを有する。
【0051】
第一に、CNSまたは眼性疾患に関連した病的状態につながるストレス条件下で、細胞、組織、または非ヒト動物を培養・育成する。好ましくは、前記方法が細胞培養を基本とした方法である。(培養または被験動物に含まれる)検討される好適な細胞及び組織は、CNSおよび/または眼に属する細胞及び組織であり、例えば神経細胞、グリア細胞、網膜細胞などである。
【0052】
本発明の前記方法に関する特定の好適な実施例では、前記細胞がRPE細胞、または細胞株ARPE−19などのRPEに由来する確立した細胞株である;下記も参照。RPE細胞の単離について、下記の例1などで説明する。ARPE−19細胞株については、Dunn et al.,Exp.Eye Res.62(1996),155〜169で報告されている。例えば、ARPE−19細胞株は、硝子体を処理することで、増殖性硝子体網膜症中にin vivoで観察される修復反応を模倣することに特に適している。
【0053】
前述のストレス条件は、細胞、組織、または動物の培養条件を異常にすることで発生させることができ、例えば酸化的ストレス、低酸素の培養条件、不十分な栄養および/または成長因子、pH値の変化および/または桿体外節(ROS)とA2−Eの両方または何れか一方の病態生理学的濃度、を供給することなどを有する;例3〜10も参照。好適なストレス条件は、桿体外節(ROS)および/またはA2−Eの病態生理学的濃度によって与える条件である。例えば、眼の内節組織に異常な状態で供給することができ、これは本発明の方法の好適な実施例である。表1は、変化した発現がアポトーシス、低酸素培養条件、または酸化的ストレスを示し、それによって適用されたストレスと細胞の反応をそれぞれ確認および/または定量するために用いられる、一般的なマーカー遺伝子を示している。
【0054】
本発明の方法のさらなる工程では、前記細胞、組織、または動物のサンプルから核酸および/またはタンパク質を単離する工程が関与し、さらなる工程では、少なくとも1つの前記核酸および/またはタンパク質の発現または活性プロフィールを、対応する未処理の細胞、組織、または動物のもの、および/または異なるストレス条件下で処理した細胞、組織、動物のものと比較する工程が関与する。核酸及びタンパク質の単離は、当業者に周知の方法で行われ、引用した文献に報告されている;例11及び12も参照のこと。
【0055】
最後の工程では、異なって発現された少なくとも1つの核酸および/またはタンパク質を決定することで、前記の少なくとも1つの核酸の発現または活性量の変化、または少なくとも1つの前記タンパク質の活性、または前記タンパク質の局在化変化がCNSまたは眼の疾患に影響していることを示す。
【0056】
本発明のスクリーニング法に関する1つの実施例では、核酸の発現を発現アレイおよび/またはリアルタイムPCRにより分析する。チップ及びアレイ技術は当業者に周知であり;例14〜20も参照のこと。DNAによる診断アプローチの進歩は、例えばWhitcombe et al.in Curr.Opin.Biotechnol.9(1998),602〜608でレビューされている。さらに、DNAチップとマイクロアレイ技術の装置、システム、応用は、Cuzin,Transfus.Clin.Biol.8(2001),291〜296及びHeller,Annu.Rev.Biomed.Eng.(2002),129〜153などで報告されている。同様に、タンパク質チップの生物化学的応用はNg,J.Cell.Mol.Med.6(2002),329〜340などで知られ、報告されている。
【0057】
別の実施例では、前記タンパク質発現がイムノブロットアッセイまたはELISAアッセイ、または2Dゲル電気泳動、またはMALDI−TOFで分析され、特に、血管新生や新血管新生に関与するタンパク質に特異的な好適な抗体が利用される。
【0058】
ベクター及びプラスミドの構築、そのようなベクター及びプラスミドへのポリペプチドをコードする遺伝子の挿入、宿主細胞へのプラスミドの導入に利用される方法など、従来の方法の詳細、その遺伝子及び遺伝子産物の発現と定量法は、Sambrook et al.,(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Pressなど、多数の文献で知ることができる。そのように同定された核酸候補またはコードされたポリペプチドは、発現させて表現型を観察することで妥当性を確認することができる。従って、前記スクリーニング方法のさらなる実施例は、前記細胞、組織、または動物の表現型の反応変化を誘導できるかについて、前記細胞、素特、動物中の同定された核酸候補またはコードされたポリペプチドの発現を過剰発現または抑制する方法を有し、前記表現型はCNSまたは眼の疾患に関連している。
【0059】
前記細胞の表現型の反応変化は、前記細胞、その分泌因子、その細胞可溶化物を内皮細胞培養するか、および/または細胞増殖、電気生理学的活性、DNA合成、細胞増殖、細胞遊走、ケモキネシス、走化性、血管の発達、マーカー遺伝子の発現または活性、アポトーシス、生存度など、様々なパラメーターを分析することで観察することができる。そのようなアッセイの例は以下のとおりである。
【0060】
増殖細胞核抗原アッセイ(PCNA)またはTUNELアッセイについては、Montesano,R.:「in vitroでの血管新生の調節(Regulation of angiogeneesis in vitro)」Eur J Clin Invest,22:504〜515,1992.Montesano,R.et al.:「塩基性線維芽細胞成長因子はin vitroで血管新生を誘導する(Basic fibroblast growth factor induces angiogenesis in vitro)」Proc Natl Acad Sci USA,83:7297〜7301,1986.Holmgren,L.et al.:「微小転移巣の休止:血管新生の抑制がある場合の増殖とアポトーシスのバランス(Dormancy of mictrometastases:Balanced proliferation and apoptosis in the presence of angiogenesis suppression)」Nature Med,1:149〜153,1995で報告されている。
【0061】
ボイデンチャンバー法については、Holmgren,L.et al.:「微小転移巣の休止:血管新生の抑制がある場合の増殖とアポトーシスのバランス(Dormancy of mictrometastases:Balanced proliferation and apoptosis in the presence of angiogenesis suppression)」Nature Med,1:149〜153,1995.Albini,A.et al.:「腫瘍細胞の侵襲性の可能性を定量するための迅速なin vitroアッセイ(A rapid in vitro assay for quantitating the invassive potential of tumor cells)」Cancer Research,47:3239〜3245,1987.Hu,G.et al.:「アンジオゲニンは細胞関連タンパク分解活性を刺激することで、培養された内皮細胞の侵襲性を亢進(Angiogenen promotes invasissive of cultured endothelial cells by stimulation of cell−associated proteolytic activities)」Proc Natl Acad Sci USA,6:12096〜12100,1994.Alessandri,G.et al.:「in vitroでの毛細管内皮の可動化はin vivoの血管新生のエフェクターにより誘導される(Mobilization of capillary endothelium in vitro induced by effectors of angiogenesis in vivo)」Cancer res,43:1790〜1797,1983で報告されている。
【0062】
大動脈輪血管新生アッセイについては、Zuh,W.H.,et al.:「ラットの血管新生大動脈モデルにおける、マトリックスメタロプロテアーゼによる血管の成長と退化の調節(Regulation of vascular growth and regression by matrix metalloproteinases in the rat aorta model of angiogenesis)」Lab Invest,80:545〜555,2000.Kruger,EA.et al.:「プロテインキナーゼC阻害薬UCN01は、内皮細胞の増殖と血管由来低酸素反応を阻害。(a protein kinase C inhibitor,inhibits endothelial cell proliferation and angiogenic hypoxic resopnse)」Invasion Metastas,18:209〜218,2000.Kruger,E.A.et al.:「エンドスタチンは、ラット大動脈輪血管形成アッセイで微小血管の形成を抑制(Endostatin inhibits microvessel formation in the rat aortic ring angiogenesis assay)」Biochem Biophys Res Commun,268: 183〜191,2000.Bauer,K.S.et al.:「サリドマイドによる血管形成の抑制では、種依存的な代謝活性が必要(Inhibition of angiogenesis by thalidomide requires metabolic activation,which is species dependent)」Biochem Pharmacol,55:1827〜1834,1998.Bauer,K.S.et al.:「カルボキシアミドトリアゾールは、カルシウムを介した酸化窒素合成酵素−血管内皮成長因子経路を遮断することで血管新生を抑制(Carboxyamidotriazole inhibits angiogensis by blocking the calcium−mediated nitric−oxide synthase−vascular endothelial growth factor pathway)」J Pharmacol Exp Ther,292:31〜37,2000.Berger,A.C.et al.:「内皮単球活性化ポリペプチドIIIは内皮細胞アポトーシスを誘導し、腫瘍血管形成を阻害する可能性がある(Endothelial monocyte activating polypeptide III induces endothelial cell apoptosis and may inhibit tumor angiogenesis)」Microvasc Res,60:70〜80,2000で報告されている。
【0063】
伏在静脈血管新生アッセイについては、Kruger,E.A.et al.:「エンドスタチンは、ラット大動脈輪血管形成アッセイで微小血管の形成を抑制(Endostatin inhibits microvessel formation in the rat aortic ring angiogenesis assay)」Biochem Biophys Res Commun,268:183〜191,2000で報告されている。
【0064】
角膜マイクロポケットアッセイについては、Gimbrone,E.A.et al:「腫瘍の増殖と新血管新生:ウサギの角膜を用いた実験モデル(Tumor growth and neovascularization:an experimental model using the rabbit cornea)」J Natl Cancer Inst,52:413〜427,1974.Kenyon,B.M.et al.:「マウス角膜の血管新生モデル(A model og angiogenesis in the rabbit cornea)」Invest Ophthalmol Vis Sci,37:1625〜1632,1996.Kenyon,B.M.et al.:「マウス角膜の新血管新生モデルにおけるサリドマイドと関連代謝物の作用(Effects of thalidomide and related metabolites in a mouse corneal model of neovascularization)」Exp Eye Res,64:971〜978,1997.Proia,A.D.et al.:「ラットの角膜血管新生におけるアンジオスタチンステロイドとβ−シクロデキストリンテトラデカスルフェートの作用(The effect of angiostatic steroids and beta−cyclodextrin tetradecasulfate on corneal neovasculatization in the rat)」Exp Eye Res,57:693〜698,1993で報告されている。
【0065】
鶏胚奬尿膜アッセイについては、Knighton,D.et al.:「ニワトリ胚の腫瘍増殖因子の無血管期及び血管期(Avascular and vascular phases of tumor growth factor in the chicken embryo)」Br J Cancer,35:347〜356,1977.Auerbach,R.et al.:「簡単なニワトリ胚の長期培養法(A simple procedure for the long−term cultivation of chicken embryos)」Dev Biol,41:391〜394,1974.Ausprunk,D.H.et al.:「鶏胚奬尿膜の血管内皮の分化:構造及びオートラジオグラフィーの研究(Differentiation of vascular rndthelium in the chick chorioallantois:A structural and autoradiopraphic study)」Dev Biol,38:237〜248,1974.Nguyen,M.et al.:「鶏胚奬尿膜の血管新生及び抗血管新生の定量(Quantitation of angiogenesis and antiangiogenesis in the chick embryo chorioallantoic membrane)」Microvasc Res,47: 31〜40,1994で報告されている。
【0066】
さらに、前記細胞のサンプルを、妥当性が確認された候補核酸またはコードされたポリペプチドに特異的なインヒビターで処理し、第2の工程で、前記細胞、その分泌された因子、またはその細胞可溶化物が、インヒビターを用いない場合に観察された表現型の反応変化を誘導する活性がなくなるか否かを判断する。好適な実施例では、前記表現型が血管新生および/または新血管新生である。インヒビターとして、前述の分子を利用することができる。好ましくは、標的遺伝子の発現を抑制するためのsiRNA技術を用いる。本明細書で述べたとおり、本発明の方法に採用できる、哺乳類遺伝子発現のsiRNAを介したノックダウンプロトコール集は、例えばElbashir et al.,Methods 26(2002),199〜213 and Martinez et al.,Cell 110(2002),563〜574に報告されている。
【0067】
前記遺伝子によって生じた疾患の治療に用いるアッセイと薬物の開発については、これらの核酸とタンパク質の配列を同定することが必要な場合が多く、任意に対応するコード遺伝子またはcDNAも同定する。CNSおよび/または眼に特異的な細胞の特異的機能に基づき、遺伝子、つまりCNSまたは眼性疾患を生じる異常機能が、それぞれの組織及び細胞で特異的に発現しているため、薬物介入に好ましい標的となっている。従って、前記の同定された遺伝子、cDNA、またはそのフラグメントは、通常クローニングされ、特に血管新生や新血管新生に関与するポリペプチドをコードしている場合、本発明の一部から本明細書で説明した前記方法により入手可能な核酸分子である。そのような核酸分子は、DNAまたはcDNAであり、哺乳類、また好適な実施例ではマウスまたはヒトに由来する。
【0068】
従って、実験の第1の工程では、実際に、とりわけ網膜の光受容体細胞の変性で特徴付けられる常染色体劣性網膜色素変性症(ARRP)に関与することが知られている、いくつかの核酸分子を同定することができる。例えば、核酸分子はヒトサイクリックヌクレオチドのゲート型チャネルα1をコードした遺伝子に一致することが同定することができた(CNGA1,受入番号NM_000087; SEQ ID NO:1及び2)。この遺伝子の突然変異は、常染色体劣性網膜色素変性症に関与していることが報告された;Dryja et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 92(1995),10177〜10181を参照。別の実験では、桿体cGMPホスホジエステラーゼのβサブユニットをコードするヒト遺伝子(受入番号NM_000283; SEQ ID NO: 3及び4)に対応する核酸分子が同定された。この遺伝子の機能異常は、常染色体劣性網膜色素変性症、特に先天性定常的夜盲症(congenital stationary night blindness)3型(CSNB3)と関与していた。これらの結果は、本発明の作用方法を確認している。
【0069】
別の実施例では、前記核酸分子が前記核酸分子の1つと特異的にハイブリダイズし、前記核酸分子が表現型の反応変化を誘導する能力を失ったタンパク質の突然変異型をコードする。加えてまたは代わりに、核酸分子が少なくとも15ヌクレオチド長を含み、前記核酸分子またはその相補的な鎖と特異的にハイブリダイズすることができる。これらの核酸分子は、特にプローブとして有用である;下記を参照のこと。
【0070】
前記核酸分子はベクターに含めることができ、好ましくは、原核生物または真核生物の宿主細胞で発現させることができる制御要素に操作可能なように結合させる。前記核酸の発現には、邦訳可能なmRNAへの転写を有する。真核細胞、好ましくは哺乳類細胞の発現を確実にする制御要素は、当該分野で周知である。通常、その要素は確実に転写を開始させる制御配列と、任意に、確実に転写の停止と転写物の安定化させるポリAシグナルを有する。さらなる規制要素には、転写エンハンサー及び翻訳エンハンサーや、天然に関連するか、非相同的なプロモーター領域が含まれてもよい。
【0071】
原核生物の宿主細胞での発現を可能とする、考えられる制御要素は、例えば大腸菌のP、lac、trp、またはtacプロモーターを有し、真核生物の宿主細胞での発現を可能とする制御要素の例は、酵母のAOX1またはGAL1プロモーター、または哺乳類や他動物の細胞のCMV−プロモーター、SV40−プロモーター、RSV−プロモーター、CMV−エンハンサー、SV40−エンハンサー、またはグロブリンイントロンである。
【0072】
転写開始に関係する要素をはずれて、そのような制御要素は、核酸分子下流のSV40−ポリ−A部位やtk−ポリ−A部位などの転写停止シグナルを有してもよい。さらに、用いた発現系によっては、ポリペプチドを細胞の成分に誘導するか、媒質に分泌することができるリーダー配列を、本発明のポリペプチドのコード配列に追加することができ、これは本分野で周知である。前記リーダー配列は、翻訳、開始、停止配列、好ましくは、翻訳されたタンパク質またはその一部を細胞膜周辺腔または細胞外媒質に分泌させることができるリーダー配列とともに適切な相で集合させる。任意に、前記の異種配列は、例えば安定化または発現された組換え産物の精製単純化など、望みの特徴を与えるC−またはN−末端同定ペプチドを含む融合タンパク質をコードすることができる。これに関連して、Okayama−Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogen)、またはpSPORT1(GIBCO BRL)などの適当な発現ベクターが、当該分野で知られている。
【0073】
好ましくは、前記発現制御配列は、真核生物の宿主細胞を形質転換または形質移入することができるベクターの真核生物プロモーターシステムであるが、原核生物の宿主の制御配列も利用することができる。前記ベクターを適切な宿主に組み込んだら、前記宿主を高レベルで発現したヌクレオチド配列に適した条件で管理し、適宜そのように生成した前記タンパク質を回収、精製する。
【0074】
さらに、本発明はベクター、特に従来から遺伝子工学に利用され、本発明の核酸分子を有するプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージに関するものである。好ましくは、前記ベクターが発現ベクターや遺伝子導入またはターゲティングベクターである。レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウィルス、またはウシパピローマウイルスなどのウイルスに由来する発現ベクターは、標的細胞集団に本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを送達するために用いることができる。当業者に周知の方法を用い、組換え型ウイルスベクターを構築することができる;例えば、Sambrook,Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1989) N.Y.及びAusubel,Current Protocols in Molecular Biology,Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.(1994)で報告されている技術を参照されたい。代わりに、本発明のポリペプチドとベクターは、標的細胞に送達するリポソームに再構成することができる。本発明の前記核酸分子を有するベクターは、細胞宿主のタイプによって変わる周知の方法により、宿主細胞に移入することができる。例えば、原核生物の細胞では塩化カルシウムの形質移入が一般的に用いられているが、他の細胞宿主では、リン酸カルシウム処理または電気穿孔法が用いられることもある;前記Sambrookを参照。
【0075】
本発明の教示することに従って治療および/または診断目的で利用されるベクターは当業者に周知であり;例えば、Tavernarakis et al.,Nat.Genet.24(2000),180〜183に記載されている、導入遺伝子によってコードされた二本鎖RNAによる遺伝性及び誘導性の遺伝的干渉などを参照のこと。さらに、遺伝子転移及び遺伝子組換え動物の作成のためのベクター及び方法は先行技術中に記載されており;例えば、Qing et al.,Virol.77(2003),2741〜2746に報告されている「アデノ随伴ウイルス関連ベクター(adeno‐associated virus related vectors)」、Cheng et al.Curr.Eye Res.24(2002),196〜201に報告されている「ヒト免疫不全ウイルス2型(HIV−2)ベクターを介したin vivoの、成獣ウサギ網膜への遺伝子導入(human immunodeficiency virus type 2(HIV‐2) vector‐mediated in vivo gene transfer into adult rabbit retina)」、Kreppel et al.,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.43(2002),1965〜1970に報告されている「高能力アデノウイルスベクターを用いた遺伝子導入後のRPEの長期的な導入遺伝子の発現(long‐term transgene expression in the RPE after gene transfer with a high‐capacity adenoviral vector)」、Borras et al.,J.Gene Med.3(2001),437〜449に報告されている「in vivoでのサルの眼の前部に繰り返しアデノウイルスGFP遺伝子を送達する非侵襲的所見(non‐invassive observation of repeated adenoviral GFP gene delivery to the anterior segment of the monkey eye in vivo)」などを参照のこと。
【0076】
CNS遺伝子導入については、Leone et al.,Curr.Opin.Mol.Ther.1(1999),487〜492にも報告された。
【0077】
今度は、前記ベクターを宿主細胞に含めることができる。細菌、真菌、植物、または動物細胞を宿主として用いることができるが、哺乳類細胞、特にRPEや神経感覚網膜細胞が好ましい。
【0078】
これらの宿主細胞を、前記ポリペプチドを発現させることができ、前記の生成したポリペプチドを培養液から回収する条件で培養した場合、これは表現型の反応変化を誘導することができるポリペプチドを生産する方法から成る。従って、前記に定義したか、本方法で得られる核酸分子をコードしたポリペプチドは、本発明の好適な実施例であり、抗体はそのようなポリペプチドを特異的に認識する。前述のポリペプチドに対する抗体またはそのフラグメントは、例えばin Harlow and Lane ”Antibodies,A Laboratory Manual”,CSH Press,Cold Spring Harbor,1988で報告されている方法を用いて得ることができる。
【0079】
さらに、前記の同定、単離された核酸分子によってコードされたポリペプチドを用い、リガンド、基質、結合パートナー、または前記ポリペプチドの受容体に結合する、天然リガンドと同等に効果的な合成化学ペプチドミメティックスを同定することができる;例えばEngleman,J.Clin.Invest.99(1997),2284〜2292を参照。例えば、適切なコンピュータープログラムを用い、前記タンパク質の構造モチーフについて、折りたたみのシミュレーションとコンピューターによる再設計を行うことができる(Olszewski,Proteins 25(1996),286〜299; Hoffman,Comput.Appl.Biosci.11(1995),675〜679)。ペプチドとタンパク質の詳細モデルの立体配置的、エネルギー的分析において、タンパク質の折りたたみのコンピューターモデルを用いることができる(Monge,J.Mol.Biol.247(1995),995〜1012; Renouf,Adv.Exp.Med.Biol.376(1995),37〜45)。特に、前記の適切なプログラムは、相補的なペプチド配列に関するコンピューター支援検索により、ポリペプチドとそのリガンドや他の相互作用するタンパク質との相互作用部位の同定に用いることができる(Fassina,Immunomethods 5(1994),114〜120)。タンパク質とペプチドの設計に関するさらに適切なコンピューターシステムについては、先行技術で報告されており、例えばBerry,Biochem.Soc.Trans.22(1994),1033〜1036; Wodak,Ann.N.Y.Acad.Sci.501(1987),1〜13; Pabo,Biochemistry 25(1986),5987〜5991などがある。ペプチドミメティックのコンビナトリアルライブラリの作成法と利用法については、先行技術で報告されており、例えばOstresh,Methods in Enzymology 267(1996),220〜234 and Dorner,Bioorg.Med.Chem.4(1996),709〜715などがある。さらに、本発明のタンパク質の生物活性を模倣したインヒビターの設計に、前記ポリペプチドの三次元構造や結晶構造を用いることができる(Rose,Biochemistry 35(1996),12933〜12944; Rutenber,Bioorg.Med.Chem.4(1996),1545〜1558)。
【0080】
天然の生物ポリペプチド活性を模倣した、低分子量の合成分子の構造に基づく設計と合成については、さらにDowd,Nature Biotechnol.16(1998),190〜195; Kieber−Emmons,Current Opinion Biotechnol.8(1997),435〜441; Moore,Proc.West Pharmacol.Soc.40(1997),115〜119; Mathews,Proc.West Pharmacol.Soc.40(1997),121〜125; Mukhija,European J.Biochem.254(1998),433〜438などで報告されている。
【0081】
本発明の方法によって同定、単離された前記核酸分子は、活性化因子及びインヒビターの標的とすることもできる。活性化因子は、例えば、対応する遺伝子のmRNAに結合することで、例えばHIV−RNAのTatタンパク質が作用するように、mRNAの天然型の配置を安定化し、転写や翻訳を促進するタンパク質を有する。さらに、化合物が細胞の内部に結合し、細胞増殖や細胞死が遅延する、定義されたもしくは定義されていない標的RNA分子の構造を模倣したRNA断片など、核酸分子を同定する方法が文献に報告されている;例えば国際公開番号第WO98/18947号とそこに引用された参考文献などを参照。これらの核酸分子を用い、薬理学的または農業的関心から未知化合物を同定し、疾患を治療するために利用する未知のRNA標的を同定することができる。代わりに、例えば、結合部位を模倣したRNA断片の立体配置的構造は、既知のリガンドを標的に結合しやすくするように修飾する、理論的なドラッグデザインに利用することができる。そのような方法の1つは核磁気共鳴(NMR)であり、薬物とRNA配置構造の同定に有用である。まだ他の方法には、例えば国際公開番号第WO95/35367号、米国特許公開第US−A−5,322,933号で報告された薬物設計の方法があり、前記RNA断片の結晶構造を推論することができ、コンピュータープログラムを利用して抗生物質として作用する新規結合化合物を設計する。
【0082】
従って、アンタゴニスト/インヒビターは、例えば抗体、アンチセンス核酸分子、リガンド結合分子をとりうる。好ましくは、前記アンタゴニスト/インヒビターがポリペプチドの配置/機能の変化に干渉し、最も好ましくは血管新生や新血管新生に関連した生物活性に干渉する。
【0083】
本発明の組成物で用いられる抗体、核酸分子、インヒビター、活性物質は、特に刺激が望ましい場合に、天然型リガンドの結合特異性または前記タンパク質の結合パートナーに少なくとも実質的に同等の特異性を持つことが好ましい。抗体またはインヒビターは、少なくとも10−1、好ましくは10−1以上、抑制が関与する場合、有利には1010−1までの前記タンパク質に対する結合親和性がある。好適な実施例では、抑制性抗体またはインヒビターに少なくとも約10−7M、好ましくは少なくとも約10−9M、最も好ましくは少なくとも約10−11Mの親和性があり、活性化因子には約10−7M未満、好ましくは約10−6M未満、最も好ましくは10−5Mの位数で親和性がある。
【0084】
アンチセンス核酸分子の場合、コード配列の20連続ヌクレオチドの完全な相補体よりも多くて2、5、10倍少ない前記タンパク質をコードする核酸分子に対して、結合親和性があることが好ましい。
【0085】
本発明の別の実施例は、前記に定義した通り、前記の核酸分子、ベクター、宿主細胞、ポリペプチド、および/または抗体と、任意に医薬品として認められた担体とを有する医薬品である;上記及び下記を参照。これらの組成物は、効果的な用量で医薬品などを被験者に投与することを有する、CNSまたは眼の疾患の治療法に用いることができる。
【0086】
同様に、前記核酸分子、ベクター、宿主細胞、ポリペプチド、および/または抗体と、任意に適当な検出法も含めた診断組成物で用いることができる。CNSまたは眼の疾患に関与する遺伝子の発現は、細胞からmRNAを採取し、そのように採取された前記mRNAを、ハイブリダイズする条件で前記に示した核酸分子を有するプローブまたはそのフラグメントとインキュベートし、前記プローブにハイブリダイズしたmRNAの有無を検出することで、検出可能である。前記のタンパク質レベルでは、遺伝子の発現を検出する工程に、前記被験者から細胞サンプルを採取する工程、そのように採取された細胞サンプルを前記に定義した抗体と接触させる工程、そのように結合した抗体の有無を検出する工程が関与する。このように、表現型の反応変化を誘導することができなくなった、変異型核酸分子によってコードされるタンパク質の発現を検出することも可能である。
【0087】
本発明では、被験者で疾患またはそのようなCNSまたは眼の疾患への罹患しやすさを診断する方法を示し:
(a)前記疾患に罹患した患者からDNAを単離する工程と;
(b)前記ステップ(a)で単離されたDNAを少なくとも1つの制限酵素で消化する工程と;
(c)サイジングゲル上で得られたDNAフラグメントを電気泳動により分離する工程と;
(d)検出可能なマーカーで標識した、前記核酸分子またはそのフラグメントを有するプローブとともに、得られたゲルをインキュベートする工程と;
(e)前記疾患患者のDNAに特異的なバンドパターンを作ると定義されているプローブとハイブリダイズしたゲル上で、標識バンドを検出する工程と;
(f)ステップ(a)〜(e)により被験者のDNAを調整し、ゲル上で検出可能な標識バンドを生成する工程と;
(g)ステップ(e)の疾患患者のDNAに特異的なバンドパターンとステップ(f)の被験者のDNAを比較し、前記パターンが同一か、異なっているかを決定し、前記パターンが同一の場合は、それによって前記疾患または前記疾患への罹患しやすさを診断する、決定する工程とを有する。
【0088】
別の方法では、被験者で疾患またはそのようなCNSまたは眼の疾患への罹患しやすさを診断する方法を示し:
(a)診断チップ、プライマー伸長法、一塩基多型、または配列決定の方法により、前記の核酸サンプルを有する被験者の核酸サンプルを分析する工程と;
(b)前記の結果を前記疾患に罹患した患者から得られたサンプルの結果と比較する工程とを有し、前記発現プロフィールの同一性とヌクレオチドの配列は、前記疾患を示す。
【0089】
これらの実施例では、前記に定義された核酸分子、(ポリ)ペプチド、抗体、または化合物を標識し、検出できることが好ましい。標識生体分子については様々な技術が利用されており、当業者に周知であり、本発明の範囲内と考える。そのような技術は、例えばTijssenの「酵素免疫アッセイの技術と理論(Practice and theory of enzyme immuno assays)」、Burden,RH及びvon Knippenburg(Eds)、Volume 15(1985)の「分子生物学の基本的方法(Basic methods in molecular biology)」;Davis LG,Dibmer MD;Battey Elsevier(1990),Mayer et al.,(Eds)の「細胞及び分子生物学の免疫化学的方法(Immunochemical methods in cell and molecular biology)」Academic Press,London(1987)、または「酵素学の方法(Methods in Enzymology)」シリーズAcademic Press,Incで報告されている。普通の当業者に知られている標識には、多数の異なる標識と方法がある。一般的に使用される標識は、とりわけ蛍光色素(フルオロセイン、ロダミン、テキサスレッドなど)、酵素(西洋わさびベルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、放射性同位元素(32Pや125Iなど)、ビオチン、ジゴキシゲニン、コロイド金属、化学発光または生物発光化合物(ジオキセタン、ルミノール、またはアクリジニウムなど)を有する。酵素またはビオチン基の共有結合カップリング、ヨウ素化、リン酸化、ビオチン化、ランダムプライミング、ニックトランスレーション、(末端転移酵素を用いた)テーリングなどの標識処理が当該分野で周知である。検出法は、オートラジオグラフィー、蛍光顕微鏡、直接的及び間接的酵素反応などを有するが、これだけに限らない。
【0090】
さらに、前記化合物などは固相に結合してもよい。固相は当業者に周知であり、ポリスチレンビーズ、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、コロイド金属粒子、ガラスおよび/またはシリコンチップ及びシリコン表面、ニトロセルロース片、膜、シート、動物赤血球、または赤血球ゴースト、duracytes、及び反応トレー、プラスチックチューブ、または他の試験管の穴壁を有する。核酸、(ポリ)ペプチド、タンパク質、抗体などを固相に固定化するのに適した方法は、イオン、疎水性、共有結合の相互作用などがあるが、これだけに限らない。固相は1つ以上の追加受容体を保有し、前記に定義した部位を結合し固定することができる。この受容体は、試薬自体または捕捉試薬に結合した荷電基質とは反対に荷電した荷電基質を有することができ、または、前記受容体を前記固相に固定化(結合)しているか、前記に定義した試薬を固定することができる特異的結合部位とすることができる。
【0091】
一般的に利用される検出アッセイは、放射性同位元素法または非放射性同位元素法を有することができる。これは、とりわけRIA(放射性同位体測定法)及びIRMA(免疫放射定量法)、EIA(酵素免疫測定法)、ELISA(酵素結合免疫測定法)、FIA(蛍光免疫測定法)、CLIA(化学発光免疫測定法)を有する。他の当該分野で利用される検出法は、トレーサー分子を利用しない方法である。これらの方法の1つの典型は前記凝集アッセイであり、少なくとも2つの粒子を架橋する特定分子の性質に基づいている。
【0092】
臨床または科学的標本中の(ポリ)ペプチド、ポリヌクレオチドなどの診断と定量については、前記に定義した様々な免疫学的方法や、核酸ハイブリダイゼーションアッセイ、PCRアッセイ、またはDNA酵素免疫測定法などの分子生物学的方法(Mantero et al.,Clinical Chemistry 37(1991),422〜429)が開発され、当該分野で周知である。これに関連して、核酸分子はPNA、つまりアミド骨格の結合を有する修飾DNAを有することもできる。そのようなPNAは、とりわけDNA/RNAハイブリダイゼーションのプローブとして有用である。
【0093】
前記組成物は、(ポリ)ペプチドをコードするmRNAの有無を検出することで、標的遺伝子の発現を検出する工程に用いることもでき、例えば被験者の細胞からmRNAを採取し、そのように得られた前記mRNAを、適切なハイブリダイゼーションの条件で標的遺伝子と特異的にハイブリダイズすることができる核酸分子を有するプローブ/プライマーと接触させる工程、及び前記プローブ/プライマーとハイブリダイズするmRNAの有無を検出する工程を有する。サンプル中の核酸分子を検出する、さらなる診断法は、例えば核酸ハイブリダイゼーション、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、またはrepresentative difference analysis(RDA)と組み合わせたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、サザンブロット法を有する。核酸分子の有無を測定するこれらの方法は当該分野で周知であり、必要以上の実験を行わずに実施することができる。
【0094】
さらに、本発明は標的遺伝子産物、つまりサンプル(細胞サンプルなど)中のタンパク質の有無を検出する工程を有し、被験者から細胞サンプルを採取する工程、前記抗体を前記タンパク質に結合させる条件下で、前述の抗体の1つと前記サンプルを接触させる工程、例えばラジオイムノアッセイや酵素免疫測定法などの免疫測定技術を用いて、そのように結合した前記抗体の有無を検出する工程を有する。さらに、当業者は、天然の活性を持つがその不活性体は認識しないか、不活性体を特異的に認識するが天然の活性を持つ対応するポリペプチドを認識しない(ポリ)ペプチドを特異的に認識する抗体を用い、活性が失われたか変化した変異体と機能的な標的タンパク質のポリペプチドを特異的に検出し、区別することができる。
【0095】
本発明は、患者において、標的遺伝子の対立遺伝子の発現に関連したCNSおよび/または眼性疾患への罹患しやすさを診断する工程を含む;上記を参照。本発明の検出可能なマーカーは、例えば32Pや35Sなど、一般的に利用される放射性標識で標識することができるが、ビオチンや水銀などの他の標識、また前述の標識を利用することもできる。当業者に周知の様々な方法を用いて、前記の検出可能なマーカーを標識することができる。例えば、DNA配列とRNA配列をランダムプライマー法により32Pまたは35Sで標識することができる。適切な検出可能なマーカーが得られたら、当業者に周知の様々な方法を用いて、前記検出可能なマーカーを対象のサンプルに接触させることができる。例えば、標準的な方法により、DNA−DNA、RNA−RNA、DNA−RNAのハイブリダイゼーションを行うことができる。核酸を検出する様々な方法が当該分野で周知であり、例えばサザンブロット法、ノーザンブロット法、PCR、プライマー伸長法などがある。適切なさらなるDNA増幅法が当該分野で知られており、とりわけリガーゼ連鎖反応、鎖置換増幅(Strand Displacement Amplification)、核酸配列による増幅(Nucleic Acid Sequence based Amplification:NASBA)、またはQ−βレプリカーゼを有する。
【0096】
さらに、前記被験者から採取したmRNA、cRNA、cDNA、またはゲノムDNAの配列を決定し、前記標的遺伝子またはその変異型の発現に関連した、前記のCNSおよび/または眼性疾患の標的遺伝子変異に特徴的なフィンガープリントである変異を同定することができる。本発明はさらに、前記被験者から得たDNAまたはRNAのRFLPまたはAFLPにより、そのようなフィンガープリントを作成する方法を有し、任意に前記DNAまたはRNAを分析前に増幅することができ、その方法は当該分野で周知である。例えば前記被験者から採取したRNAサンプルを適当なRNA−酵素、例えばRNアーゼT、RNアーゼもTなど、またはリボザイムで消化し、例えば電気泳動により分離し、前記PAGEで前記RNA断片を検出することで、RNAフィンガープリントを行うことができる。好ましくは、ハイブリダイゼーション(及びその後の洗浄)は、厳密な条件で行う;例えば上記引用文中のSambrookらの文献を参照。
【0097】
さらに、本発明は、前記サンプルが毛髪、血液、血清、痰、便、または別の体液に由来している場合、前記方法に関連している。分析する前記サンプルは、とりわけ核酸分子、(ポリ)ペプチド、または抗体を抽出するなどの処理をすることができる。
【0098】
本発明は、例えばここで以前に記載されたような特異的試薬を含むキット構成にも関するものである。オリゴヌクレオチド、DNAまたはRNA、抗体またはタンパク質を含むキットを作成することができる。そのようなキットは、例えば前記標的遺伝子のDNAにハイブリダイズするDNAを検出するか、サンプル中のタンパク質またはペプチドフラグメントの有無を検出するために用いることができる。このような特性は、これに限定されるものではないが、本発明の上記方法に従った法医学的分析、診断適用、及び疫学的研究を含む様々な目的で有用である。前記組換え標的タンパク質、DNA分子、RNA分子、抗体は、前記標的遺伝子の検出及び分類に適したキットの構築に役立つ。そのようなキットは、一般的に、厳重な管理下にある少なくとも1つのコンテナを保持するのに適した区分化された担体を有する。前記担体はさらに、標的遺伝子または遺伝子産物の発現または活性の検出に適した組換えタンパク質または抗体などの試薬を有する。前記担体は標識化抗原または酵素基質などの検出のための手段も含む。
【0099】
本発明の別の実施例では、有効量の前記核酸分子またはそのような核酸分子に相補的な核酸分子、または体細胞遺伝子治療により被験者のCNSおよび/または眼の疾患を治療、予防、遅延させる組成物を調整するため、事前に定義したベクターを利用することを有する。
【0100】
ここで用いるとおり、前記「有効量」という用語は、意味のある患者の利益、つまり、前記CNSの疾患に関連した疾患、例えば新血管新生の治療、治癒、予防、回復、またはそのような疾患の治療、治癒、予防、回復率の改善を示すのに十分な薬物またはプロドラッグの総量を意味する。加えてまたは代わりに、特に前記薬物の前臨床試験については、前記「有効量」という用語に、非ヒト動物検査で生理反応を誘発するのに十分な薬物またはプロドラッグの総量を含める。
【0101】
前述のとおり、本発明のベクターは発現ベクター、遺伝子導入ベクター、遺伝子ターゲティングベクターであってもよい。遺伝子治療は、ex vivoまたはin vivo技術により細胞に治療遺伝子を導入することに基づいており、遺伝子導入の最も重要な応用の1つである。神経成長因子に対する中和抗体を発現した遺伝子組換えマウスは、「神経抗体(neuroantibody)」法により作成された;Capsoni,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97(2000),6826〜6831及びBiocca,Embo J.9(1990),101〜108。in vitroまたはin vivo遺伝子療法での適切なベクター、方法、または遺伝子送達系については文献で報告されており、当業者に周知である;例えば、Giordano,Nature Medicine 2(1996),534〜539;Schaper,Circ.Res.79(1996),911〜919; Anderson,Science 256(1992),808〜813,Isner,Lancet 348(1996),370〜374;Muhlhauser,Circ.Res.77(1995),1077〜1086;Onodua,Blood 91(1998),30〜36;Verzeletti,Hum.Gene Ther.9(1998),2243〜2251; Verma,Nature 389(1997),239〜242;Anderson,Nature 392(Supp.1998),25〜30;Wang,Gene Therapy 4(1997),393〜400;Wang,Nature Medicine 2(1996),714〜716;WO 94/29469; WO 97/00957;US 5,580,859;US 5,589,466;US 4,394,448、またはSchaper,Current Opinion in Biotechnology 7(1996),635〜640と、そこで引用されている参考文献を参照。特に、前記ベクターや遺伝子送達系については、神経組織/細胞(とりわけBlomer,J.Virology 71(1997) 6641〜6649を参照)または視床下部(とりわけGeddes,Front Neuroendocrinol.20(1999),296〜316またはGeddes,Nat.Med.3(1997),1402〜1404を参照)の遺伝子治療アプローチにも報告されている。神経細胞/組織での利用にさらに適した遺伝子治療構築物が当該分野で知られており、例えばMeier(1999),J.Neuropathol.Exp.Neurol.58,1099〜1110にある。本発明の核酸分子とベクターは、直接導入するか、リポソーム(アデノウィルス、レトロウィルスなど)、電気穿孔法、衝撃(遺伝子銃など)または他の細胞への送達系により導入するように設計することができる。導入及び遺伝子治療法は、好ましくは、本発明の標的遺伝子の機能的コピーを発現させる必要がある。一方、標的遺伝子の発現量が低下した場合、好ましくは、前記の導入したベクターの発現により、例えばアンチセンスRNAやRNAi分子など、前述のインヒビターが産生される。これらの実施例では、前記核酸分子が、細胞または組織の両方または一方に特異的なプロモーター、特に好ましくは眼の細胞及び組織で発現を制御するプロモーターに結合していることが好ましい。適切なプロモーターの例としては、アンジオポエチン2プロモーター(Hackett,J.Cell.Physiol.184(2000),275〜284を参照)などがあり、特に好ましいプロモーターは、チロシン関連タンパク質−1(Tyrp1)プロモーターなどの網膜色素上皮の発現を標的とすることが可能である;Beermann,Cell Mol.Biol.45(1999),961〜968を参照。
【0102】
さらなる態様では、本発明が、CNSまたは眼の疾患に関与するポリペプチドの発現または活性を調節する化合物のスクリーニング法も提示する。この方法には、事前に説明した方法で同定した前記ポリペプチドを発現した細胞に、スクリーニングする化合物を接触させ、前記発現または活性が変化するか否かを決定する工程が関与する。
前記化合物と細胞との接触に要する時間は、例えば、既知の分子を用いて時間を経過させ、時間の関数として細胞の変化を測定することで、経験的に決定する。本発明の方法の測定手段は、さらに化合物を処理した細胞と前記化合物を同様に処理し、同定された細胞と比較することで定義可能である。代わりに2つの細胞、つまり機能的な標的遺伝子を含む細胞と第1の細胞と同等であるが、機能的標的遺伝子がない第2の細胞を、いずれも前記の同一化合物と接触させ、2つの細胞の差を比較することができる。この技術は、これらのアッセイの雑音を確定する上で有用でもある。当該分野の平均的な技術の1つにより、これらの制御機序が、機能的な標的遺伝子または遺伝子産物の調節に反応した、細胞の変化の選択を容易にしていることが理解される。
【0103】
前記の「細胞」という用語は、少なくとも1つの細胞を指すが、前記検出法の感度に適した複数の細胞も含む。本発明に適した細胞は、細菌、酵母、また好ましくは真核生物である。本発明の方法では、特定タイプの細胞、細胞の生物学的状態の面からの変化の特定所見、これらの観察された変化の特定の比較を利用する。本発明のアッセイに利用される好ましい細胞株、特に、ヒト、ブタ、マウス由来のCNSおよび/または眼に由来する細胞及び細胞株は、例及び先行技術に報告されており、例えば、ヒト網膜色素上皮細胞(例えばDunaief et al.Curr.Eye Res.24(2002),392〜396を参照)、不死化ヒト角膜上皮細胞株(例えばAthmanathan et al.,BMC Ophthalmol.30(2002),3を参照)、また、例えばヒト神経細胞株(例えばLi et al.,J.Neurosci.Res.71(2003),559〜566を参照)、SV40ラージTのN末端断片で固定したCNS細胞株(例えばTruckenmiller et al.,Exp.Neurol.175(2002),318〜337を参照)、マウス脈絡叢の不死化Z310脈絡膜上皮細胞株(Zheng and Zhao,Brain Res.958(2002),371〜380を参照)などのCNS細胞がある。
【0104】
適切な細胞株、特に動物及びヒトの細胞株と細胞株の特徴に関する技術的知見、細胞遺伝的分析、細胞培養取り扱い指示などは、例えばAmerican Type Culture Collection(ATCC),P.O.Box 1549,Manassas,VA 20108,USA及びDSMZ − Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH,Mascheroder Weg 1b,38124 Braunschweig,GERMANYなどの受託機関から入手できる。ARPE−19などのRPE細胞またはRPE由来細胞株、CNSまたは眼性疾患に関与した候補遺伝子が過剰発現しているか、発現が抑制された細胞、または前述の宿主細胞が好ましい。
【0105】
好適な実施例では、前記ポリペプチドがGGTBプロモーターの制御下で発現され、これについてはvan Bokhoven et al.,Genomics 38(1996),133〜140で報告されている。被験物質は単一の化学療法剤、または化学療法剤の混合物とすることができる。
【0106】
被験物質に接触した前記細胞は、単細胞生物または多細胞生物に由来することができる。前記の多細胞生物は、脊椎動物、哺乳類、霊長類、無脊椎動物、昆虫、植物から成るグループから選択することができる。前記細胞は、組織または生物、つまり非ヒト動物に含まれてもよい。特定のアッセイで測定される細胞または生物で望みの効果を持つ化合物をスクリーニングする一般的な方法は、先行技術で報告されており;例えば米国特許公開第US−A−6,165,709号と本明細書で引用されている参考文献を参照のこと。
細胞、非ヒト動物、標的遺伝子発現、ノックアウト系は先行技術に見ることができ、本発明の方法で採用されている;例えば本明細書で引用されている文献を参照のこと。
【0107】
本発明の方法に適した細胞の変化は、直接標的遺伝子産物の機能または量の変化を測定すること、または下流の効果を測定する、例えば二次伝達物質の濃度または転写の変化、または標的遺伝子産物による転写の影響を受ける遺伝子のタンパク質レベルの変化を測定すること、または細胞の表現型変化を測定することを有する。好ましい測定方法には、タンパク質量の変化、機能活性の変化、mRNA量の変化、細胞内タンパク質の変化、細胞表面タンパク質または分泌されたタンパク質の変化、Ca2+、cAMP、またはGTP濃度の変化などがある。標的遺伝子産物の量または機能活性の変化については、本明細書で説明する。mRNAレベルの変化は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、識別的遺伝子発現、マイクロアレイによって検出する。免疫親和性、リガンド親和性、酵素測定により、宿主細胞のタンパク質レベルの変化を定量する。タンパク質特異的な親和性ビーズまたは特定の抗体を用い、例えば35S−メチオニン標識タンパク質または非標識タンパク質を単離する。標識タンパク質はSDS−PAGEで分析する。非標識タンパク質はウェスタンブロット法、蛍光細胞分類による細胞表面の検出、細胞画像分析、ELISA、またはRIAを利用した特異的抗体により検出する。前記タンパク質が酵素の場合は、蛍光発生基質または比色分析基質の開裂により、タンパク質の誘導をモニターする。
【0108】
内因性遺伝子が可溶性細胞内タンパク質をコードする場合、前記内因性遺伝子の変化は、前記細胞可溶化物に含まれる特定タンパク質の変化によって測定することができる。前記可溶性タンパク質は、本明細書に説明する方法により測定することができる。
【0109】
前記アッセイは単純な「イエス/ノー」のアッセイであり、例えば血管新生活性の検出について、発現または機能に変化があるか否か、または前記方法のいずれか1つを有するか否かを決定する。前記アッセイは、被験サンプルの発現または機能を標準サンプルの発現または機能レベルと比較することで定量的とすることができる。このプロセスで同定された修飾因子は治療薬として有用である。
【0110】
前記方法は、当然、前記のスクリーニング法または他の当該分野で周知のスクリーニング法の1つ以上の工程と組み合わせることができる。臨床化合物の発見法は、例えば、リード化合物を同定するための極めて高い処理能力のスクリーニング法(Sundberg,Curr.Opin.Biotechnol.11(2000),47?53)、構造を基にしたドラッグデザイン(Verlinde and Hol,Structure 2(1994),577?587)、リード化合物を最適化するためのコンビナトリアルケミストリー(Salemme et al.,Structure 15(1997),319?324)を有する。
【0111】
薬物を選択したら、前記方法に、修飾した薬物により合理的なドラッグデザインを行い、前記の修飾した薬物が例えば相互作用/エネルギー分析に沿ってより高い親和性を示すか否かを評価するために用いる方法を繰り返す工程を加えることができる。
【0112】
本発明の好適な実施例では、前記細胞、組織、または非ヒト動物が、対応する野生型の動物と比べ、標的遺伝子の発現レベルや遺伝子産物の活性レベルが大幅に低下または上昇して示される、遺伝子組換え細胞、組織、または非ヒト動物である。通常、標的遺伝子の活性レベルが低下した前記遺伝子組換え非ヒト動物は、少なくとも1つの標的遺伝子の変異誘発遺伝子または異なる遺伝子の対応するトランス優性遺伝子を有する。好ましくは、前記遺伝子組換え非ヒト動物はノックアウト動物である。
【0113】
好ましくは、前記の標的遺伝子の発現レベルや遺伝子産物の活性レベルが大幅に低下または上昇することで、遺伝子組換え細胞、組織、または非ヒト動物の表現型の反応が変化する。アゴニスト(作用物質)/アクチベーター(活性化因子)またはアンタゴニスト/インヒビターは、候補化合物が特定の濃度で前記遺伝子組換え細胞、組織、または非ヒト動物の表現型の反応を正常に戻すことができるか否かを観察することで同定する。特定の好適な実施例では、前記遺伝子組換え非ヒト動物が前記に定義されたCNSおよび/または眼性疾患を示す。
【0114】
本発明のアッセイ法は、従来の実験室で行われる形態であるか、高処理に変更を加えることができる。前記「高処理(high throughput)」(HTS)という用語は、複数のサンプルを同時に、容易に分析することができるアッセイデザインと、ロボット操作能力を指す。高処理アッセイの別の望ましい特徴は、望ましい分析を行うため、試薬の使用を減少させるか、操作回数を最小限とするために最適化されたアッセイデザインである。アッセイ形態の例としては、液体を扱う実験に用いる96ウェル、384ウェル、またはこれ以上のウェルプレート、浮揚液滴、「ラボ・オン・チップ(lab on a chip)」マイクロチャンネルチップなどがある。プラスチック鋳型と液体操作装置の小型化が進歩するにつれ、または改良されたアッセイ装置がデザインされるに従って、より多数のサンプルが本発明の設計を用いて実施されることは、当業者に周知である。
【0115】
本発明の方法に従って検査、同定される被験物質は、例えばcDNA発現ライブラリ、ペプチド、タンパク質、核酸、抗体、有機小化合物、ホルモン、ペプチドミメティックス、PNAs、アプタマーなどの発現ライブラリであってもよい(Milner,Nature Medicine 1(1995),879〜880;Hupp,Cell 83(1995),237〜245;Gibbs,Cell 79(1994),193〜198、及び上記に引用された文献)。検査される前記被験物質は、「fast seconds」と呼ばれている既知の薬物であってもよい。本発明はさらに被験細胞を第1の被験物質の存在下、第2の被験物質、または被験物質の混合物と接触させる工程にも関する。
【0116】
本発明の方法では、前記細胞が好ましくは容器、例えば24、96、384、または1586ウェルプレートのマイクロタイタープレートのウェルに含まれる。代わりに、Caliper(Newton、米国マサチューセッツ州)が提供している装置など、マイクロ流体装置に前記細胞を導入することができる。別の好適な実施例では、本発明の方法のステップ(b)が、前記容器の異なる位置で2、3、4、5、7、10回またはそれ以上の測定を行う工程を有する。本発明の方法のいくつかの実施例では、ステップ(b)の前に、標的遺伝子または遺伝子産物を活性化または抑制することが知られている化合物を培地に加える。
【0117】
好ましくは、最初のスクリーニングに前記被験物質が含まれ、化合物の集合とする。前記の化合物の集合は約10〜10の多様性とすることができる。ペプチドミメティックのコンビナトリアルライブラリを作成、使用する方法は、先行技術に報告されており、例えばOstresh,Methods in Enzymology 267(1996),220〜234及びDorner,Bioorg.Med.Chem.4(1996),709〜715などがある。動的コンビナトリアルライブラリによる新薬発見については、例えばNat.Rev.Drug Discov.1(2002),26〜36及びDrug Discov.Today 7(2002),117〜125に報告されている。
【0118】
さらに、前記方法は、当然、前記のスクリーニング法または他の当該分野で周知のスクリーニング法の1つ以上の工程と組み合わせることができる。臨床化合物の発見法は、例えば、リード化合物を同定するための高処理スクリーニング法(Sundberg,Curr.Opin.Biotechnol.11(2000),47−53)、構造を基にしたドラッグデザイン(Verlinde and Hol,Structure 2(1994),577−587)、リード化合物を最適化するためのコンビナトリアルケミストリー(Salemme et al.,Structure 15(1997),319−324)を有する。薬物を選択したら、前記方法に、修飾した薬物により合理的なドラッグデザインを行い、前記の修飾した薬物が例えば相互作用/エネルギー分析に沿ってより高い親和性を示すか否かを評価するために用いる方法を繰り返す工程を加えることができる。本発明の前記方法は、前記化合物の集合の多様性が連続的に減少するように、1回以上繰り返すことができる。好ましくは、前記標的ポリペプチドが血管形成または血管新生に関与する。
【0119】
上述のとおり、本発明は遺伝子活性を調節できる薬物を同定し、得るための簡便なアッセイ、好ましくは細胞をもとにしたin vivoアッセイを提供し、それにより(例えば)前述の疾患など、統合失語症、パーキンソン病、アルツハイマー病を含むCNS障害に関連した疾患の治療のための治療薬として効果的である。これに従うと、適切に標的遺伝子活性を調節することができることが本分野で知られているが、標的遺伝子活性またはその欠落によって誘発された生物の表現型反応に関する知識の不足により、これまで医療的な使用が示唆されなかった、化合物の使用法も示す。
【0120】
本発明の1つの実施例は、特に前記物質がこれまでCNSまたは眼の障害の治療用薬物として知られていなかった場合、そのようなスクリーニングによって修飾因子またはその誘導体として同定された薬物またはプロドラッグの製造方法を有する。
【0121】
これらのin vivo投与の後、排泄または代謝によって除去されるために、物質は1つ以上の活性代謝産物または不活性代謝産物に代謝される(Mayer,J.Pharmacokinet.Biopharm.24(1996),449〜459)。従って、本発明の方法に従って同定され得られた、実際の化合物または薬物を用いるよりも、プロドラッグとして対応する製剤を用いることができ、これは代謝によって患者の中で活性型に変換されるものである。プロドラッグ及び薬物の適用に対して取られる予備的手段については、前記文献に記載されている;レビューについてはOzawa,J.Toxicol.Sci.21(1996),322〜329を参照のこと。
【0122】
さらに、本発明は前記CNS及び眼性疾患の治療用組成物を調整するため、これらの方法のいずれかによって同定、単離、生産された化合物の使用に関連する。治療法として、同定された物質またはそれを含む組成物は、そのような障害に罹患している被験者に投与することができる。上記の方法によって同定、単離、生産された化合物は、新薬発見や薬物またはプロドラッグの調整におけるリード化合物としても用いることができる。
【0123】
これは通常、リード化合物またはその誘導体または単離した化合物を調整することに関連し、(i)修飾された作用部位、活性範囲、臓器特異性、(ii)力価の改善、(iii)毒性低下(治療指数の改善)、(iv)副作用の減少、(v)治療作用の発生、作用持続期間の調節、(vi)薬物動態学的パラメーター(吸収、分布、代謝、排泄)の調節、(vii)物理化学的パラメーター(溶解性、吸湿性、色、味、匂い、安定性、状態)の調節、(viii)全身の特異性、臓器/組織特異性の改善、(ix)投与剤形と投与経路の最適化のいずれかまたはすべてを達成し、これは、(i)カルボキシル基のエステル化、(ii)カルボン酸を用いた水酸基のエステル化、(iii)水酸基の例えばリン酸塩、ピロリン酸塩、または硫酸塩、またはヘミコハク酸塩へのエステル化、(iv)医薬品として認められた塩の形成、(v)医薬品として認められた複合体の形成、(vi)医薬品として活性なポリマーの合成、(vii)親水性構造の導入、(viii)芳香族または側鎖の置換基の導入/交換、置換パターンの変化、(ix)等比体積または生物学的等価性の構造を導入することによる修飾、(x)相同的化合物の合成、(xi)枝分かれした側鎖の導入、(xii)アルキル置換基の環状類似体への変換、(xiii)水酸基のケタール、アセタールへの誘導体化、(xiv)アミド、フェニルカルバメートへのN−アセチル化、(xv)Mannich塩基、イミンの合成、(xvi)ケトンまたはアルデヒドのSchiff塩基、オキシム、アセタール、ケタール、エノールエステル、オキサゾリジン、チオゾリジン、またはその組み合わせへの変換のいずれかによる経路をとり;(b)医薬品として認められた担体を用いて前記修飾の生成物を形成する。
【0124】
上に列挙された様々な工程は本分野において一般的に知られている。例えば、これらの技術を実行するためのコンピュータプログラムが利用でき;例えばRein,Computer−Assisted Modeling of Receptor−Ligand Interactions(Alan Liss,New York,1989)などがある。化学的誘導体及び類似体の調整法は当業者に周知であり、例えばBeilstein,Handbook of Organic Chemistry,Springer edition New York Inc.,175 Fifth Avenue,New York,N.Y.10010 U.S.A.及びOrganic Synthesis,Wiley,New York,USA.に記載されている。さらにペプチドミメティックスや適切な誘導体及び類似体のコンピュータを用いた設計は、例えば上記の方法に従って利用することができる。新薬発見におけるリード化合物の生産法は、タンパク質の使用、及び質量分析計(Cheng et al.J.Am.Chem.Soc.117(1995),8859〜8860)やいくつかの核磁気共鳴(NMR)法(Fejzo et al.,Chem.Biol.6(1999),755〜769;Lin et al.,J.Org.Chem.62(1997),8930〜8931)などの検出方法を含む。これには定量的構造活性相関(QSAR)分析(Kubinyi,J.Med.Chem.41(1993),2553〜2564,Kubinyi,Pharm.Unserer Zeit 23(1994),281〜290)、コンビナトリアルケミストリー、古典的化学など(例えば、Holzgrabe and Bechtold,Pharm.Acta Helv.74(2000),149〜155を参照)もあり、これらに依存する。さらに、担体の例及び製剤化の方法はRemington‘s Pharmaceutical Sciencesに見ることができる。
【0125】
薬物を本発明の前記方法のいずれか1つに沿って選択したら、前記薬物またはそのプロドラッグを治療有効量で合成することができる。ここで用いるとおり、前記「有効量」という用語は、意味のある患者の利益、つまり、前記CNSおよび/または眼の疾患に関連した状態の治療、治癒、予防、回復、またはそのような疾患の治療、治癒、予防、回復率の改善を示すのに十分な薬物またはプロドラッグの総量を意味する。加えてまたは代わりに、特に前記薬物の前臨床試験については、前記「治療有効量」という用語に、非ヒト動物検査で生理反応を誘発するのに十分な薬物またはプロドラッグの総量を含める。
【0126】
さらに、今度は前記核酸分子を、CNSまたは眼の疾患の治療に対する被験物質、リード化合物、薬物及びプロドラッグの妥当性の確認、または下流遺伝子の確認と単離に用いることができる。
【0127】
本発明は、固体支持体を有するチップまたはアレイに関するものでもあり、そこに1つ以上の核酸分子またはコードされた前記(ポリ)ペプチドが結合し、そのチップまたはアレイが前記の方法のいずれか1つを実行するために有用である。チップを基本とするか、他の前記核酸分子またはそれぞれのポリペプチドの発現および/または活性を検出する方法は、キットの形で提供することができ、このキットは本発明の好適な実施例を構成する。同様に、キットは活性分子の同定、生産、スクリーニング法として開発することができる。
【0128】
さらに好適な実施例では、本発明が、特に前記動物がCNSおよび/または眼の疾患を再現する場合に、前述した、前記方法により同定、入手した異常な発現または活性の前記標的遺伝子および/または遺伝子産物を示す、遺伝子組換え非ヒト動物に関するものである。好ましくは、前記動物が哺乳類である。
【0129】
本発明にも含まれる、例えば遺伝子組換えマウスなどの遺伝子組換え非ヒト動物を生産するための方法は、ポリヌクレオチドまたは前記ポリペプチドをコードした標的ベクターを、生殖細胞、胚細胞、幹細胞または卵またはそれに由来する細胞へ導入する方法を有する。前記非ヒト動物はここに記載された発明のスクリーニング方法に従って用いることができる。遺伝子組換え胚の産生及びこれらのスクリーニングは、例えばA.L.Joyner Ed.,Gene Targeting,A Practical Approach(1993),Oxford University Press.に記載されているように実行することができる。遺伝子組換え非ヒト動物を作成するための一般的な方法は当技術分野で報告されており、例えば国際公開番号第WO94/24274号を参照のこと。遺伝子組換え非ヒト生物体(標的非ヒト動物を相同的に含む)を作成するために、胚性幹細胞(ES細胞)は好ましい。有糸分裂が不活性なSNL76/7細胞支持細胞層(McMahon and Bradley,Cell 62:1073〜1085(1990))上に培養されたAB−1系統などのマウスES細胞は、報告されているとおり(Robertson,E.J.(1987) in Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach.E.J.Robertson,ed.(Oxford:IRL Press),p.71〜112)、基本的に相同的遺伝子ターゲティングに対して用いることができる。他の適切なES株は、限定されるものではないが、E14株(Hooper et al.,Nature 326:292〜295(1987))、D3株(Doetschman et al.,J.Embryol.Exp.Morph.87:27〜45(1985))、CCE株(Robertson et al.,Nature 323:445〜448(1986))、AK−7株(Zhuang et al.,Cell 77:875〜884(1994))などがある。特異的標的変異を有するES細胞からマウス系列の作成に成功するか否かは、ES細胞の多分化能(すなわち、胚盤胞または桑実胚など、胚が発達している宿主に注入された場合、胚発生に関与し、その結果生まれる動物の生殖細胞に寄与する能力)に依存する。注入されたES細胞を含む前記胚盤胞は、偽妊娠の非ヒト雌の子宮内で発達してもよく、キメラマウスとして生まれる。その結果得られた遺伝子組換えマウスは、リコンビナーゼまたはレポーター遺伝子座を有する細胞がキメラであり、リコンビナーゼまたはレポーター遺伝子座について遺伝子組換えマウスがヘテロ接合性かを同定するために、子孫のDNA尾生検のPCRまたはサザンブロット分析によって、正しい標的導入遺伝子があるか否かをスクリーニングする。
【0130】
キイロショウジョウバエなどの遺伝子組換えハエを作成する方法は、当該分野でも報告されており、例えば米国特許公開第US−A−4,670,388号,Brand & Perrimon,Development(1993) 118:401〜415;及びPhelps & Brand,Methods(April 1998) 14:367〜379などがある。線虫などの遺伝子組換え虫は、Mello,et al.,Embo J.10(1991),3959〜3970,Plasterk,Methods Cell Biol 48(1995),59〜80に報告されているとおり、作成することができる。
【0131】
好ましくは、遺伝子組換え非ヒト動物が、CNSおよび/または眼性疾患に関与する、対応する遺伝子の活性化または抑制された野生型遺伝子を少なくとも1つ有する;上記を参照。この実施例では、例えば、臨床症状の発症に対する、これらの遺伝子または遺伝子産物の様々な変異体の相互作用を研究することができ、および/または研究する疾患で前記遺伝子の関与を確認するために用いることができる。遺伝子組換え動物について、これまでに本明細書で考察したすべての応用は、2つ、3つ、またはそれ以上の導入遺伝子を持った動物にも当てはまる。発生の特定の工程および/または遺伝子組換え動物の一生で、標的遺伝子の発現または機能を不活性化することも望ましいかもしれない。これは例えば、組織特異的(上記参照)、発達調節性、細胞調節性、誘導性プロモーターのすべてまたはいずれか1つなどを用いて達成することができ、このプロモーターは、例えば前記標的遺伝子mRNAをコードするRNA転写物に対するアンチセンスまたはリボザイムの発現を促進する;上記も参照のこと。適切な誘導性システムは、例えばGossen and Bujard(Proc.Natl.Acad.Sci.89 USA(1992),5547〜5551)、及びGossen et al.(TrendsBiotech 12(1994),58〜62)に報告されるような、テトラサイクリンにより調節される遺伝子発現である。同様に、標的変異遺伝子の発現はそのような制御要素によって制御されることもある。好ましくは、遺伝子組換え動物の細胞中に導入遺伝子があると、好ましくは上記に記載されたようなCNSおよび/または眼の障害に関連した状態に対して、様々な生理的、発達上、形態学的な変化のすべてまたはいずれかを導く。
【0132】
別の実施例では、前記遺伝子組換え非ヒト動物を、CNSおよび/または眼の障害を治療するための薬物を発見する過程に用いる。特に、哺乳類動物、特にマウスやラットが好ましい。本発明に従って適応することができる対応する動物システムは当業者に知られており;例えばShibata et al.,Neuropathology 22(2002),337〜349に報告された、ノックアウト及び遺伝子組換えマウスモデルを含む、神経学的障害に対する分子生物学的アプローチを参照のこと。ただし、このモデル系は有益な予測結果を出すことが示されているため、広く用いられているゼブラフィッシュも利用できる;Gerlai et al.,Pharmacol.Biochem.Behav.67(2000),773〜782を参照のこと。
【0133】
本発明の好適な実施例では、前記CNSおよび/または眼性疾患の治療に用いる医薬品が、1つ以上の二本鎖オリゴリボヌクレオチド(dsRNA)を有し(上記を参照)、前記疾患に関連することが示された、1つ以上の核酸分子の対応するmRNAのRNA干渉と、任意に医薬品として認められた担体を媒介する。二本鎖オリゴリボヌクレオチド(dsRNA)による遺伝子の特異的な阻害法は国際公開番号第WO01/75164号に知られている。この明細書の開示は本説明により盛り込まれている。
【0134】
この出願書類は、二本鎖オリゴリボヌクレオチド(dsRNA)が標的細胞へ送達された後、mRNAの特異的な分解を誘導することについて記載している。この過程の特異性は、前記標的遺伝子のmRNAに対する2つのdsRNA鎖の1つの相補性が介している。
【0135】
dsRNA分子による遺伝子の遺伝子特異的、転写後スイッチオフの過程は、RNA干渉(RNAi)と呼ばれる。この用語は、初めにFireらが、線虫Caenorhabditis elegansへのdsRNA分子の送達により観察される、遺伝子発現の遮断を説明するために開発された(Fire et al.,1999)。その後、RNAiは植物、原生動物、昆虫(Kasschau and Carrington 1998)、及び最近では哺乳類細胞(Caplen et al.,2001;Elbashir et al.,2001)においても証明することができた。RNAiによる遺伝子発現抑制メカニズムはまだ完全に理解されていない。非哺乳類細胞の研究により、dsRNA分子は内因性リボヌクレアーゼによって低分子干渉RNA分子(siRNA分子)に形質転換されることが示された(Bernstein et al.,2001;Grishok et al.,2001;Hamilton and Baulcombe,1999;Knight and Bass,2001;Zamore et al.,2000)。
【0136】
望ましくは、二本鎖配座にある二本鎖RNA領域に、少なくとも5、10、20、30、50、75、100、または200ヌクレオチドが含まれる。好ましくは、二本鎖領域に15〜30ヌクレオチド、最も好ましくは20〜25、特に好ましくは21〜23ヌクレオチドが含まれ、標的遺伝子を特異的に阻害するため、二本鎖オリゴリボヌクレオチドが標的遺伝子と同一の21〜23ヌクレオチド(塩基対)長の配列を示すことで十分である;例えばElbashir et al.,Methods 26(2002),199〜213及びMartinez et al.,Cell 110(2002),563〜574を参照。dsRNA、ベクター、選択可能なマーカー、組成物、検出法などの定義、調整法など、転写後の遺伝子サイレンシングを利用することで、細胞機能を調節する核酸配列を同定する細胞アッセイの一般的な手段と方法で、本発明の教示に従って適応可能な手段と方法は、欧州特許出願書類EP 1 229 134 A2に記載され、その開示内容はここで参考文献として盛り込まれている。
【0137】
細胞培養に対してのみ記載されている、siRNA及び他のRNAを基本とした分子を使用している引用文献とは対照的に、本発明に従って実行された実験は、驚いたことに、長さ21〜23ヌクレオチドのdsRNA分子が、例えば静脈注射などの全身適用後、血液網膜関門を通過し、眼底の組織中の標的遺伝子を特異的に不活性にする能力があるということを示している。これまで、dsRNAによって血液網膜関門を克服することを示すことができた実験はなかったため、この関門を克服することはなおさら注目に値する。従って、実施例の手段によって以下に説明されている本発明の方法及び使用は、動物モデルの提供に適しており、この動物モデルにより、標的、つまり眼の疾患を引き起こす制限された機能を同定、確認することができる。これらの方法は、例えば影響を受ける細胞または組織の部位に直接適用する必要がない、分子レベルでのCNS及び眼性疾患の特異的干渉にさらに適している。標的細胞中に特異的に発現した遺伝子を阻害するために好ましいRNAiなどの選択的インヒビターの特異性は、望ましくない副作用のリスクを最小限とする。
【0138】
上記の本発明の方法及び使用のすべてにおける医薬品の投与法は、主治医の判断、及び臨床的要因によって決定される。医学分野で周知のように、患者一人一人に対する用量は多くの要因に依存しており、この要因としては患者のサイズ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与時間及び経路、全身の健康、及び併用投与される他の薬物などがある。典型的な用量は、例えば0.001μg〜10mgの範囲内(またはこの範囲内で発現させるか発現を阻害する核酸の範囲内)であるが;特に前記要因を考慮すれば、この典型的な範囲以下または以上の用量も想定される。一般的に、前記医薬品の標準投与としての前記投与法は、1日当たり0.01μg〜10mg単位の範囲内とする必要がある。前記投与法が連続的な注入の場合は、特に1分当たり0.01μg〜10mg単位/kg体重の範囲内とする必要がある。経過は定期的な評価によってモニターすることができる。用量は変わるが、核酸の静脈内投与に好ましい用量は、約10〜1012コピーの核酸分子である。
【0139】
本発明の治療用または診断用の組成物は、標的遺伝子または遺伝子産物の調節が適応となる障害を治療または診断するのに十分である、効果的な用量で患者に投与される。前記の効果的な量は、例えば患者の状態、体重、性別、及び年齢などの様々な要因に従って変化することがある。他の要因としては投与形態を含む。前記医薬品は、冠内、腹腔内、皮下、静脈内、経皮、滑膜内、筋肉内、または経口経路など、様々な経路で患者に投与される。さらに、他の薬物の同時投与または経時的な投与も望ましい。
【0140】
治療有効量とは、前記症状または状態を回復させるために必要な、本発明に従って記載された化合物の量を指す。そのような化合物の治療効果及び毒性は、細胞培養または実験動物中で標準的な薬理学的処置、例えばED50(集団の50%で治療に有効な用量)及びLD50(集団の50%に対して致死的な用量)によって決定することができる。治療効果と毒性効果の用量比が前記の治療指標であり、比LD50/ED50として表される。
【0141】
これらの実施例は、本発明の説明と例によって開示され、含まれる。さらに本発明に従って利用される前記物質、方法、使用法、化合物のいずれか1つに関する文献は、電子装置などを利用し、公共の図書館及びデータベースで検索することができる。例えば公共のデータベース「Medline」を用いることもでき、これは国立衛生研究所の全米バイオテクノロジー情報センターや米国立医学図書館が主催している。ヨーロッパ分子生物学研究所(EMBL)の一部である欧州バイオインフォマティクス研究所(EBI)など、他のデータベース及びウェブアドレスは当業者に周知であり、インターネットの検索エンジンを用いて入手することができる。さかのぼり検索やカレント・アウェアネスに役立つ、バイオテクノロジーの特許情報の概要や、特許情報の関連情報源の調査は、Berks,TIBTECH 12(1994),352〜364に記載されている。
【0142】
前記開示は、全般的に本発明について述べている。説明の目的のみでここに提供され、本発明の範囲を制限する意図はない、以下の特定の例と図を参照することで、より完全な理解が得られる。(参考文献、発行された特許、本出願書類で引用された既発表特許出願書類、製造業者の仕様書、使用説明書など)すべての引用された参考文献の内容は、参照によって明示的にここに取り込まれるが;これら文書が実際に本発明の先行技術であるということを承認するものではない。
【0143】
本発明の方法では、他に明記していない限り、当該分野の技術の範囲内にある、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子組換え生物学、微生物学、組換え型DNA、免疫学を利用する。そのような技術は文献に十分説明されており;例えば、DNA Cloning,Volumes I and II(D.N.Glover ed.,1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait ed.,1984);Mullis et al.U.S.Pat.No.4,683,195;Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames & S.J.Higgins eds.1984);Transcription And Translation(B.D.Hames & S.J.Higgins eds.1984);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986); B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology,Vols.154 and 155(Wu et al.eds.),Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987);Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I−IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,1986)を参照のこと。
【0144】
ベクター及びプラスミドの構築、そのようなベクター及びプラスミドへのポリペプチドをコードする遺伝子の挿入、宿主細胞へのプラスミドの導入、その遺伝子及び遺伝子産物の発現と定量法に利用される方法など、従来の方法の詳細については、Sambrook et al.,(1989)Molecular Cloning: A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Pressなど、多数の文献で知ることができる。
【実施例】
【0145】
例1 一次ブタ網膜色素上皮細胞(RPE細胞)の単離。
以下の例では、典型的な一次ブタRPE細胞の単離について説明し、これは滅菌条件下で行われる。ブタ、ヒト、ウシからのRPE細胞の単離は、原則的に同じである。
【0146】
ブタの眼は地元の屠殺場から入手した。残りの眼筋から前記眼を単離した後、ペニシリン(100 U/ml)とストレプトマイシン(100 μg/ml)を含む、氷冷したリン酸緩衝生理食塩水(1xPBS:1.15g/l NaHPO、0.20g/l KHPO x HO、8.00g/l NaCl、0.20g/l KCl、0.10g/l MgCl、0.10g/l CaCl)で1回洗浄した。前記眼を鋸状縁の周囲でスライスし、接眼レンズと硝子体を除去した。視神経を切除後、前記アイカップから前記網膜を連結部で慎重に剥離し、取り除いた。前記網膜は、例2で説明するとおり、桿体外節の単離に用いた。残りのアイカップを1ml 1xPBSで満たし、その細胞を洗浄した。前記溶液は廃棄し、前記細胞を1〜1.5mlのトリプシン/EDTA溶液(0.25%/0.02%)中、37℃で15分間インキュベーターとした。前記溶液を廃棄し、前記カップを37℃、1時間、再度1mlのトリプシン/EDTA溶液で満たした。ピペットで上下に取ることで慎重にRPE細胞を除き、6個の眼の細胞を細胞培養液20ml(DMEM F12(Bio Whittaker)と、10%ウシ胎仔血清(FCS)、ペニシリン(100 U/ml)、ストレプトマイシン(100 μg/ml)、2mMグルタミン、1.5g/ml炭酸水素ナトリウム)で希釈した。前記細胞を室温、120×gで5分間遠心分離し、細胞培養液で2回洗浄した。T25細胞培養フラスコ1個につき、網膜3つ分の細胞を培養した。壊死細胞片を取り除くため、翌日、前記細胞を1xPBSで洗浄した。約1週間、RPE細胞を10% FCSを含む細胞培地で培養した。細胞が飽和密度(confluency)に達したら、培地を2% FCSを含む培地と交換した。さらに1週間インキュベーションした後、前記細胞を1:2の比で細胞培養皿に分け、次の実験に用いる。
【0147】
例2 ブタの眼からの桿体外節(ROS)の単離。
前記ROSの単離は滅菌条件下で行った。RPE細胞の調整(例1を参照)で単離した30個の網膜は、氷冷した15mlのホモジナイズ用緩衝液(20%(w/v)スクロース、20mMトリスアセテートpH7.2、2mM MgCl、10mMグルコースを含む)に移した。前記懸濁液を1分間優しく振盪し、平織りの薄い綿布で3回ろ過し、組織フラグメントを除去し、20mMトリスアセテートpH7.2、10mMグルコースを含む、25〜60%w/vで連続的に濃度を勾配させたスクロース24ml上で層にする。Beckman SW−27ローターで24,000rpm、1時間、4℃で遠心分離を行った。勾配上部の白黄色のバンドを集め、同量の10mM Hepes緩衝液pH7.4、115mM NaCl、2.5mM KCl、1mM DTT、1mM MgClで注意しながら希釈し、Sigma 4K15遠心機、2989xg、4℃で10分間遠心分離した。前記の上澄みを慎重に取り除き、前記ROSのペレットをさらに使用するため、−20℃で保存した。1つの網膜から約1x10個のROSが単離された。
【0148】
例3(生理学的濃度の)ROSを用いた一次ブタRPE細胞のインキュベーション。
ROSを用いたブタ、ヒト及びウシのRPE細胞のインキュベーションは原則的に同様であるため、以下の例ではブタの眼から単離したRPE細胞のインキュベーションについて述べている(例2を参照)。
【0149】
−20℃で保存したROSのペレットを徐々に室温に昇温した。一次RPE細胞の数によって、細胞1個あたり10〜100個のROSをROS懸濁液から取り出した。インキュベーション中、細胞培養液は毎日取り替え、新たなROSを加えた。
【0150】
RPE細胞によるROSの食作用は2つのアプローチで同時に制御した。
アプローチ1は、二波長蛍光染色SNAFL−2(Molecular Probes、オランダ、ライデン)を用いて共有結合により標識したROSを検出する方法を有する。前記の酸型(pH 5)は緑黄色に見えるが、アルカリ型(pH 9)は黄橙色に見える。SNAFL−2(1μlのジメチルホルムイミド中SNAFL−2 10μg)を加え、スクロース緩衝液100μl(20%スクロース、2mM MgCl2、10mMグルコース、20mMトリスアセテートpH 8.0)に単離したROSを加え、前記ROSを暗所でゆっくりと撹拌しながら、1時間室温で標識した。前記の標識したROSを、同量のhepes緩衝液pH 8.0で希釈し、Heraeus Biofuge pico中、5分間2000rpmで遠心沈降させ、100μlの前記hepes緩衝液pH 8.0で2回洗浄した。前記の標識したROSを細胞培地に再懸濁し、前記細胞に加えた。4〜8時間インキュベートした後、細胞を洗浄し、蛍光顕微鏡用に細胞培地pH 9.0を加えた。アプローチ2では、ROS処理細胞を1xPBS(Ca2+及びMg2+を含む)中で洗い、内部ROSの自己蛍光活性を蛍光顕微鏡で分析した。
【0151】
例4 特定の標的遺伝子の転写後遺伝子スライシング(PTGS)。
以下の例では、異なる生物(つまりブタ、ヒト、ウシ)から単離した一次細胞または細胞株(つまりARPE−19)における、特定の標的遺伝子(成長因子)XのPTGSについて述べる。
【0152】
dsRNAの同一性、その濃度、適当な形質移入試薬について実験条件を最適化した後、業者(特にProligo)が合成するか、市販のキット(特にSilencerTM siRNA Construction Kit,Ambion)を用いて対応するオリゴヌクレオチドから合成した、標的遺伝子のmRNAの異なる部位に相同的な、3(〜5)個のdsRNAを用いてPTGSを行った。1ngから100μgの各siRNAを、市販の遺伝子移入試薬(特にGene Eraser/Stratagene,Transmessenger/Qiagen,Oligofectamin/Invitrogen)により、細胞に導入した。
【0153】
形質移入後5日間まで、細胞をリアルタイムPCRにより、mRNA発現プロフィールの分析用に採取し、形質移入後1週間まで、細胞をウェスタンブロット分析またはELISAによるタンパク質発現の分析用に採取した。
【0154】
例5 A2−Eの合成と精製。
Parish et al.(1998)(Parish CA,Hashimoto M,Nakanishi K,Dillon J,Sparrow J.:「A2E及びイソ型A2Eの単離と1工程での調整、ヒト網膜色素上皮のフルオロフォア」Proc Natl Acad Sci U S A.1998 Dec 8;95(25):14609−13)に報告されているとおり、A2−Eはすべてトランス型のレチナールとエタノールアミンから合成し、Eldred及びKatz(1988)(Eldred GE,Katz ML.:「ヒト網膜色素上皮のフルオロフォア:分離とスペクトル特性」Exp Eye Res.1988 Jul;47(1):71〜86)の一次展開系を用いたシリカゲル60薄層クロマトグラフィープレートでクロマトグラフィーにより精製した。50〜150mgのレチナールを1.5〜5.5mlのエタノールに溶解した。5〜15μlのエタノールアミンを加えて撹拌した。撹拌しながら5〜15μlの酢酸をゆっくりと加えた。前記混合物をアルミニウムホイルで包み、2日間室温で撹拌した。前記反応混合物を4つのエッペンドルフ試験管に4回分配し、speedvacで一晩濃縮乾固した。2つのエッペンドルフ反応試験管の内容物を、合計200〜600μlの「一次展開系」(14.5mlヘプタン、8.8mlヘキサン、9.8mlクロロホルム、3mlエーテル、3mlアセトン、14.8mlイソプロパノール、27mlエタノール、2.5mlメタノール、0.4ml酢酸、7,4ml HO)に溶解した。次に、この溶液をそれぞれ20〜60μlずつ含む5〜15等分を、約2時間、前記「一次展開系」で展開したシリカクロマトグラフィープレートで展開した。366nmの光で照射した蛍光により、プレートのA2−Eを検出した。A2−Eを含むシリカをかき取り(A2−E:上のスポット;イソ型A2−E:下のスポット)、ボルテックスしながらクロロホルム/メタノール/水で2〜3回溶出した。上澄みを合わせ、数時間speedvacで乾燥した。前記の乾燥した物質を200〜600μlの「一次展開系」に入れ、再度クロマトグラフィーを行った。前記の抽出と乾燥も繰り返し行った。前記の乾燥した物質を約1mlのMeSOまたはエタノールのA2−E保存溶液としてとり、暗所、−20℃で保存した。MeSOまたはエタノールに希釈したすべてのA2−Eを36,900のモル吸光係数、439nmで定量した(Parish CA,Hashimoto M,Nakanishi K,Dillon J,Sparrow J.:「A2E及びイソ型A2Eの単離と1工程での調整、ヒト網膜色素上皮のフルオロフォア」Proc Natl Acad Sci U S A.1998 Dec 8;95(25):14609〜13)。
【0155】
例6 A2−Eを用いたRPE細胞のインキュベーションとA2−E蓄積の分析。
1〜100μM A2−E及び0.5% MeSOまたはエタノール濃度まで、A2−Eを前記RPE細胞培地に希釈した。アポトーシス以下の(sub−apoptocical)A2E濃度を見出すため、ネガティブコントロールとしてA2−Eがない状態で0.5%MeSOまたはエタノールを用い、アポトーシスのコントロールとして1〜200μMのスタウロスポリンを用い、コントロールインキュベーションを行った。5%COを用い、37℃、暗所で(アルミホルイルで包んで)1日1回24〜144時間インキュベーションを行った。光源の下に細胞を置き、390〜550nmで144時間まで様々な時間、光に照射することができる。培地のみで対照実験も行った。RPE集団あたりの自己蛍光の平均値を決定するため、蛍光顕微鏡(Nikon;励起波長450〜490nm、発光波長>510nm)及びSafire(Tecan;励起波長456nm、発光波長610nm)を用い、栄養補給後の様々な時間で細胞内蛍光を評価した。
【0156】
例7 アポトーシスアッセイ。
以下の例では、Cell Death Detection ELISA Plus(Roche)を用いたアポトーシスの誘導分析について述べる(Wyllie AH,Kerr JF,Currie AR.:「細胞死:アポトーシスの重要性」Int Rev Cytol.1980;68:251〜306.Review)。マウスモノクローナル抗体を用いた定量的サンドイッチ酵素免疫測定法の原則に基づいたアッセイは、それぞれDNA及びヒストンに対して行った。これにより、アポトーシスにより死亡した細胞の細胞質に放出される、モノヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドを特異的に定量することができる。前記サンプル(細胞可溶化物、血清、培養の上澄みなど)を、ストレプトアビジンでコーティングされたマイクロプレートに入れた。続いて、抗ヒストン−ビオチン及び抗DNA−PODの混合物を加え、2時間インキュベートした。インキュベーション中、前記抗ヒストン抗体はヌクレオソームのヒストン成分に結合し、同時に、ビオチン化によりストレプトアビジンでコートされたマイクロプレートに前記免疫複合体を固定する。さらに、前記抗−DNA−POD抗体はヌクレオソームのDNA成分と反応する。洗浄工程により結合していない抗体を除去した後、免疫複合体にある前記PODにより、ヌクレオソームの量を定量した。PODは基質としてABTS(2,2’−アジノ−ジ[3−エチル−ベンズ−チアゾリン−スルホナート])を用い、光度測定により決定した。
【0157】
例8 低酸素症の誘導。
vol(正常酸素(normoxic)条件)により、飽和密度(100% confluence)(約10細胞/100mmプレート)まで、37℃、空気95%、CO5%に維持したインキュベーター(Heracell,Kendro)で、RPE細胞をインキュベートした。次に1時間〜7日間、37℃でOレベルを0〜8%、5% CO、95〜87% N(Nを平衡状態)で維持した自動CO/Oインキュベーター(B 5061 EC/O,Kendro)に細胞を置き、細胞を低酸素状態とした。誘導されていない細胞は正常酸素条件のままとした。培地のPO及びPCOは血液ガス分析装置(Corningモデル178)で測定した。正常酸素値は、pH=7.2+/−0.1、PO=39.3+/−0.6mmHg、及びPCO=131.5+/−0.9mmHgであった。低酸素値は、pH=7.2+/−0.1、PO=7〜35+/−1.1mmHg、PCO=14.9+/−1.2mmHgであった(Liu et al.,1995;Palmer et al.,1998)(Liu Y,Cox SR,Morita T,Kourembanas S.:「低酸素症は内皮細胞の血管内皮成長因子の遺伝子発現を制御する。5’エンハンサーの同定」Circ Res.1995 Sep;77(3):638〜43;Palmer LA,Semenza GL,Stoler MH,Johns RA.:「低酸素症はHIF−1を介して肺の動脈内皮細胞のII型NOS遺伝子発現を誘導する」Am J Physiol.1998 Feb;274(2 Pt 1):L212〜9)。
【0158】
例9 必須要素の制限。
以下の例では、必須要素を欠乏させることでRPE細胞にストレスを誘導するための、調整DMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)(高グルコース、Life Technologies,Inc.)でのRPE細胞の培養について述べる。正常なRPE細胞培地において、37℃で5% COを含む加湿した大気中、2%の熱により不活化したウシ胎仔血清(Roche)、100単位/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、1×非必須アミノ酸、2mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム(すべてLife Technologies,Inc.)を補充した、調整DMEM(高グルコース、Life Technologies,Inc.)で前記細胞を培養させる。正常な細胞培地には様々な無機塩が含まれ、ビタミン、アミノ酸、グルコース、ヌクレオチド、その他多数の物質が加えられている。ウシ胎仔血清など、ほとんどの細胞が血清を培養するために必要である。前記血清は、タンパク質、ホルモン、成長因子、中間産物を補充する。これらの必須要素を制限するため、細胞を血清を含まない培地で培養した、さらに、調整DMEMを用いた。前記培地には無機塩(例えばKCl、NaCl)、アミノ酸(例えばL−グルタミン、L−プロリン)、ビタミン(例えばビオチン、リボフラビン、葉酸)または他の物質(例えばグルコース、リポ酸(lipon acid)、ヌクレオチド)を入れなかった。
【0159】
例10 代謝性アシドーシスの誘導。
以下の例では、pH値を変化させることで、培養したRPE細胞の代謝性アシドーシス(pH<7.2+/−0.1)を誘導させる方法について述べる。in vivoと同様、哺乳類細胞培養にはpH7.2〜7.4の最適条件のpHが必要である。培養した細胞は乳酸を産生するため、pH値を低下させる。培地のpH値は血液ガス分析装置(Corningモデル178)で測定した。代謝性アシドーシスを誘導するため、2つの方法、つまり培地の漏出したHCOとともに(5%から0%に)CO圧を変化させる方法(Palmer et al.,1998)(Palmer LA,Semenza GL,Stoler MH,Johns RA.:「低酸素症はHIF−1を介して肺の動脈内皮細胞のII型NOS遺伝子発現を誘導する」Am J Physiol.1998 Feb;274(2 Pt 1):L212〜9)と、20 mM Hepes緩衝液を含む調節DMEMを利用する方法を用いた。Hepesで緩衝とした培地は37℃、5%COを含む加湿した大気中で酸性となるため、Hepes緩衝培地は細胞のpHストレスに利用することができる。
【0160】
例11 培養した一次RPE細胞のRNA調整。
一次RPE細胞から調整したRNAを開始物質とし、リアルタイムPCR及びDNAマイクロアレイの発現分析を行った。ストレスの提示後(低酸素培養条件、栄養、成長因子の欠乏、またはpH変化など)、RPE細胞を細胞の溶解前にPBSで1回洗浄した。約1x10個の細胞(例えば細胞培養プレート6ウェル中1ウェル)を、プレートを軽く振盪させ、RLT緩衝液(Qiagen GermanyのRneasyミニキット)を含む800μlのβ−メルカプトエタノールで溶解した。可溶化液をすぐに−80℃に凍結した。37℃で15分間解凍後、製造業者(Rneasyミニキット、Qiagen)のプロトコールに従い、可溶化物を処理して全RNAを単離した。(1x10細胞ごとの)1カラムの充填材のRNAを、適当量(10〜100μl)のRNアーゼを含まない水で溶出した。全く同様に培養した細胞のRNAをプールし、1つの培養条件から均一なRNAを生産した。
【0161】
例12 ゲノムDNAが混入した場合のDNアーゼIによる消化。
その後RNAを分析するためには、ゲノムDNAの混入を取り除くため、注意が必要である。従って、DNAポリメラーゼI(RNアーゼを含まないDNアーゼI)を用いた酵素制限により、ゲノムDNAの消化を行った。要するに、100μlの反応用量には、50μgまでのRNAと、20μlの25mM MgSO(最終濃度5mM)、3.4μl 3M NaAc pH 4.7(最終濃度100mM)、及び20U DNアーゼI(Roche Diagnosticsなどの10U/μlストック2μl)を一緒に含めた。37℃で1時間消化を行った。その後、供給者の指針に従ってRneasyミニキット(Qiagen)を利用し、再度DNアーゼと制限したDNA断片からRNAを精製した。
【0162】
例13 リアルタイムPCRによる発現分析を行うためのcDNA合成。
リアルタイムPCR及びマイクロアレイ技術により発現分析を行うため、全RNAからcDNAを合成することが必要である。異なる培養条件に由来するmRNAの遺伝子発現を比較できるようにするため、1μlのオリゴ−dT−プライマー(500μg/ml、Qiagen−Operon、# 55000142)、ブタRPE細胞のRNA2μg、1μlの10 mM dNTP−mix(Invitrogen)、及びRNアーゼを含まない水(Qiagen)、合計12μlまでにより、同量の総RNA(ここでは、例えば異なるRNAにつき2μg)をcDNAに逆転写した。前記混合物を65℃で5分インキュベートした後、2分氷冷した。短時間遠心分離を行った後、4μl 5x First Strand緩衝液、2μl 0.1M DTT、及び1μl RNasin(40U/μl、Promega、# N2511)のキットの成分(Invitrogen、# 18064〜014)を加えた。上下にピペットで混ぜた後、前記反応液を水浴で42℃にして、2分間インキュベートした。次に、1μlの逆転写酵素(Superscript II、Invitrogenキット、上記参照)を加え、上下にピペットで混合した。前記反応液を水浴中、42℃で50分間インキュベートし、次に前記反応試験管を15分間70℃の加熱ブロックに切り替えて反応を停止した。短時間氷でインキュベートした後、新たに合成されたcDNAを遠心分離し、使用前まで−20℃で保存した。
【0163】
例14 リアルタイムPCR。
リアルタイムPCRで鋳型として用いるcDNAの濃度は、(最初のRNAによって)100pg〜100ngと変化する。所定の遺伝子と対照遺伝子それぞれについて、(蛍光色素と失活剤分子を含む)特定のTaqMan(登録商標)プローブを設計することができる。代わりに、前記色素SYBR(登録商標)−Greenを用いることもでき、すべての二本鎖DNA分子でインターカレートし、生じたPCR産物を処理中に測定することができる。(リアルタイムPCRとマイクロアレイ分析で)PCR増幅するオリゴヌクレオチドを設計し、通常150〜600塩基対(bp)のサイズのPCR断片を達成した。所定の遺伝子に加え、βアクチン(ACTB)、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPD)、またはヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT1)などの対照またはハウスキーピング遺伝子とともに、PCRプローブを2回または3回設定した。典型的な25μlのPCR反応は、鋳型cDNA(100pg〜100ng)、HotStart Taq−ポリメラーゼ(Invitrogenなど)0.5 U/μl、1xポリメラーゼ反応緩衝液、0.2mMの各dNTP(Invitrogenなど)、1.5〜7mMのMgCl(Invitrogenなど)、50〜300nMの範囲のオリゴヌクレオチド(ドイツのQiagen−Operonなど)、SYBR(r)−Green(Bio Whittaker Molecular Applicationsなど、#50512、濃度10,000x)0.1〜0.5x(ストックを希釈)などで構成された。リアルタイムPCRの典型的なPCR条件は、5〜15分の95℃での活性化段階、94℃で各30sの変性サイクル45回、30sのプライマーのアニーリング(温度はプライマーの融解温度による)、及び最長1分間の72℃でのプライマーの伸長であった。各サイクルの後、PCR増幅中の前記プローブの蛍光増加を、リアルタイムPCR装置の光学ユニットで決定した(例えばBIORADのiCycler)。対照と処置を行ったサンプルから作成したリアルタイムPCRのデータは、mRNAの発現変化について、意味深い情報を与えた。
【0164】
例15 マイクロアレイスライドをスポットするための標的遺伝子のPCR増幅。
選択したすべての標的遺伝子から、以下のプロトコールにより、(鋳型として)RPE/網膜−または肝臓特異的なcDNAから150〜600bpのPCR断片を増幅した:PCR反応は、典型的には合計50μlに設定した。この反応には通常、1xポリメラーゼ反応緩衝液(Invitrogenなど)、1.5〜4mM(最終濃度)のMgCl(Invitrogenなど)、0.2mMの各ヌクレオチド(10mM dNTPストック、Invitrogenなど)、最高1μMの遺伝子特異的forward及びreverseプライマー(Qiagen Operon)、0.025〜1UのTaqポリメラーゼ(Invitrogenなど)、適当量の鋳型cDNA(1〜10μl、cDNAの品質による)、及びヌクレアーゼを含まない水を最終量50μlまで含めた。PCRの典型的な条件は、5分間の95℃での単回変性段階、94℃で各30sの変性サイクル30回、30sのプライマーのアニーリング(通常45〜65℃、温度はプライマーの融解温度による)、最長1分間の72℃でのプライマーの伸長であった。
【0165】
例16 PCRの精製。
製造業者の指針に従いQiaQuick精製キット(Qiagen)を利用し、PCRの精製を行った。
【0166】
例17 コーティングしたガラススライドにPCR生成物をスポットする。
スポット用の緩衝液として50% DMSOを用いたGenepakスポッター(Genetix)により、2つに分かれたピン(Telechem)でCMT GAPSコートしたスライド(Corning)上のPCR産物のDNAを配列した。スポットしたスライドは6ヵ月まで保存した。
【0167】
例18 ハイブリダイゼーションのためのRNAの標識。
各標識反応について、RNAは5μg(少なくとも300ng/μl、OD260/280は1.8〜2.0)が望ましい。Qiagenのキット「Label Star」を用い、供給者のプロトコールに従って、(対照/非処理細胞の)対照RNAと(ストレス/処理細胞の)被験RNAをCy3及びCy5(Amersham BiosciencesまたはPerkin Elmerから供給)で直接標識した。
【0168】
例19 マイクロアレイによるRNAのハイブリダイゼーション。
自動Lucidea Slideproハイブリダイゼーションステーション(Amersham Biosciences)により、洗練されたハイブリダイゼーション及び洗浄の条件下でマイクロアレイにスポットしたDNAと混合したRNAのハイブリダイゼーションを、42℃で一晩行った:ハイブリダイゼーション緩衝液は、25%ホルムアミド、5x SSC、及び0.1% SDSで構成された。
【0169】
例20 配列の画像処理とデータ分析。
ハイブリダイゼーション後、マイクロアレイのシグナルをレーザースキャナー(ScanArray 4000,Perkin Elmer)でスキャンし、未処理の画像データを得た。上記で作成した画像からタブで区切ったテキストファイルにシグナル情報を抽出するため、ScanAlyze(Mike Eisen、カリフォルニア州スタンフォード大学、http://rana.lbl.gov/EisenSoftware.htm)などのソフトウェアツールを適用した。データの規格化は、MicrosoftのExcel及びAccessプログラム(Microsoft Officeパッケージの一部)を適応して行った。そのように調整したデータは、例えば、異なって発現された遺伝子を見つけるため、複雑なクラスター分析が可能なSilicon GeneticsのGeneSpringなどのソフトウェアを用いて分析した。
【0170】
例21 dsRNA分子による、遺伝子組換えマウスの網膜色素上皮(RPE)と網膜中の緑色蛍光タンパク質(eGFP)の発現抑制。
この例は、マウス動物モデルにおける標的遺伝子eGFPのdsRNAによる特異的転写後遺伝子サイレンシングについて説明しており、この間、全身適用において、転写後遺伝子サイレンシングに対する最適なdsRNA濃度が決定される(実験手順1、結果は図1を参照のこと)。前記手順には遺伝子組換えマウス(FVB.Cg−Tg(GFPU)5Nagy,The Jackson Laboratory)のin vivo処理が含まれ、標的遺伝子eGFPに対するdsRNAオリゴリボヌクレオチド分子の全身適用により、これらの体細胞中で緑色蛍光タンパク質(eGFP)の活性型を発現する。対照動物も非サイレンシングdsRNA分子を用いて全身に処理する。転写後遺伝子サイレンシングの目的で、鎮痛剤または麻酔の影響を受けていない動物に、100または200μg eGFP特異的dsRNA/kg体重(BW)、また対照群では200μgの非サイレンシングdsRNA/kg BWの尾静脈注入を連日静脈内から行う(投与1日目:0日、投与最終日:20日)。緩衝液で処理した対照群の動物(0.1mgの緩衝液を尾静脈に連日静脈内注射)も保持した。実験動物の各群は8匹とし、最大注射量/注射は0.1mlである。21日目に前記動物はCO吸入により屠殺する。
前記マウス中の眼における緑色蛍光タンパク質の発現は免疫組織学的に検討する(自発的eGFP蛍光:蛍光顕微鏡評価、eGFP特異的免疫蛍光染色:蛍光顕微鏡評価)。
【0171】
dsRNA構築物及びプラスミド:
dsRNA分子の設計に対して、2ヌクレオチド長で対称的な3’オーバーハングを有する21ヌクレオチド(nt)長のセンス鎖及びアンチセンス鎖を得るため、タイプAA(N19)TT(Nはすべてのヌクレオチドを表す)の配列を標的mRNAの配列から選択した。3’オーバーハングでは、ウリジンの代わりに2’デオキシチミジンを用いた。前記dsRNA分子が標的遺伝子のみに対応していることを確認するため、前記の選択したdsRNA配列をBLAST解析でマウスゲノムに対して検討する。前記21−ntRNA分子は化学的に合成、精製する。二本鎖を形成するため、100μgの各センス及びアンチセンスオリゴリボヌクレオチドを、10mMTris/HCl、20mMNaCl(pH7.0)中で混合し、95℃に加熱、18時間以上室温に冷却する。前記dsRNA分子をエタノールで沈殿し、滅菌緩衝液(100mM酢酸カリウム、30mMHEPES−KOH、2mM酢酸マグネシウム、pH7.4)に再懸濁する。前記dsRNAの整合性及び二本鎖の特性は、ゲル電気泳動法で確認する。代わりに、前記dsRNA分子を市販の供給業者から購入してもよい。前記標的遺伝子の配列及び対応するdsRNA分子は以下の通りである:
【0172】
【表1】

【0173】
マウスの鎮痛または麻酔:
全身に適用するため、前記動物を固定し、前記dsRNAを尾静脈中に静脈注射し(最大注射量:0.1ml)、鎮痛または麻酔は静脈注射自体より動物にストレスを与えるため控える。球後注射(最大注射量:0.005ml)を行うため、前記動物に短期間イソフルラン吸入麻酔を行い、鎮痛を行うためメタミゾールナトリウムを投与する。次に、前記動物をいつも飼育している動物ケージの周りで保定する。in vivo診断の完了後(各動物実験の最後は例1〜5にそれぞれ記載する)、前記動物をCO吸入により屠殺し、眼球除去し、この眼は組織学的(免疫組織学的)に研究する。
【0174】
網膜色素上皮及び網膜中のeGFP発現の研究:
除去後、前記眼を4%ホルマリン/PBS溶液で24時間固定する。標準的な方法により、次に前記固定サンプルを連続的に濃度を増加させたアルコール中で脱水し、パラフィンに包む。ミクロトームを用い、標準的には5〜12μmの連続切片を作成し、加熱した水浴中で伸展し、ポリリジンでコートしたカバーグラスに移す。次に前記切片をインキュベーター中で2時間、52℃で乾燥する。前記乾燥切片はキシロール中で脱パラフィン化し、連続的に濃度を減少させたアルコール中に移した後、Tris/HCl(pH7.4)に入れる。ブロッキング後、前記切片を一次抗eGFP抗血清(ポリクローナルヤギ抗eGFP抗血清、Santa Cruz No.sc−5384)で2時間インキュベートする。Cy2共役ウサギ抗ヤギIgG(Dianova,No.305−225−045)を用い、免疫蛍光染色の手法により検出する。前記サンプルを包み、次に20X及び40X/1.3対物レンズを装備したEclipse TE−2000−S顕微鏡(Nikon)で顕微鏡検査を行うため、マウントする。脱パラフィン化を行った、未処理切片中の自然eGFP特異的蛍光は、蛍光顕微鏡を用いて解析する。
【0175】
実験手順全身のsiRNA適用。転写後遺伝子サイレンシングに関する最適dsRNA濃度の決定。
【0176】
【表2】

【0177】
結果は図1を参照のこと。
【0178】
【表3−1】

【0179】
【表3−2】

【0180】
【表3−3】

【0181】
【表3−4】

【0182】
【表4−1】

【0183】
【表4−2】

【0184】
【表4−3】

【0185】
【表4−4】

【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】全身的dsRNA処理FVB.DG−TG(GFPU)5NAGYマウスの網膜及び網膜色素上皮(RPE)のeGFP発現。この図は、dsRNA処理FVB.Dg−Tg(GFPU)5NAGYマウスの眼のパラフィン切片中のeGFP発現を示している。全身的dsRNA処理FVB.DG−TG(GFPU)5NAGYマウスの網膜及び網膜色素上皮(RPE)中の発現は対照の緩衝液中で最も高く、非サイレンシングdsRNAで処理したマウスではわずかに減少し、eGFP特異的dsRNA処理マウスでは明らかに減少した(対照緩衝液>200μg/kgBW非サイレンシングdsRNA>100μg/kgBWeGFP特異的dsRNA>200μg/kgBW eGFP特異的dsRNA)。
【配列表】

















【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量で標的遺伝子または遺伝子産物を調節することができる化合物を有する組成物を被験者に投与する方法を有する、中枢神経系(CNS)と眼の疾患の両方または一方を治療する方法であって、前記組成物は血液脳関門と血液網膜関門の両方または一方の外に投与されるものである。
【請求項2】
中枢神経系(CNS)と眼の疾患の両方または一方を治療する医薬品を調合するため、標的遺伝子または遺伝子産物を調節することができる化合物の使用法であって、前記組成物は血液脳関門と血液網膜関門の両方または一方の外に適用されるように設計するものである。
【請求項3】
請求項1の方法または請求項2の使用法において、前記疾患は眼に関連するものである。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つの方法または使用法において、前記疾患は血管新生(angiogenesis)および/または新血管新生(neovascularization)に関連するものである。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つの方法または使用法において、前記疾患は網膜色素上皮(RPE)、神経感覚網膜、脈絡(choriodea)のすべてまたはいずれかに関連するものである。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つの方法または使用法において、前記疾患は滲出型加齢性黄斑変性症(AMD)または糖尿病性網膜症である。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つの方法または使用法において、前記医薬品は眼球の内節に効果的であり(適用される)ように設計されているものである。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つの方法または使用法において、前記組成物は血液網膜関門の網膜領域の外に適用されるように設計された形である。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つの方法または使用法において、前記化合物は前記遺伝子または遺伝子産物のインヒビター(阻害物質)/アンタゴニスト(拮抗物質)である。
【請求項10】
請求項9の方法または使用法において、前記アンタゴニスト/インヒビターは遺伝子の発現または血管形成と血管新生の両方または一方に関係する遺伝子産物の活性を阻害するものである。
【請求項11】
請求項9または10の方法または使用法において、前記アンタゴニスト/インヒビターは前記遺伝子または遺伝子産物の核酸分子、ポリペプチド、抗体、またはリガンド結合分子であるか、これらに由来するものである。
【請求項12】
請求項9または11の方法または使用法において、前記アンタゴニスト/インヒビターは前記遺伝子または遺伝子産物のリボザイム、アンチセンス、またはセンス核酸分子である。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか1つの方法または使用法において、前記アンタゴニスト/インヒビターは実質的にリボヌクレオチドで構成されるものである。
【請求項14】
請求項13の方法または使用法において、前記アンタゴニスト/インヒビターは実質的に二本鎖オリゴリボヌクレオチド(dsRNA)の一部を有するものである。
【請求項15】
請求項14の方法または使用法において、前記dsRNAは21〜23ヌクレオチド長である。
【請求項16】
請求項14または15の方法または使用法において、前記dsRNA分子は末端3’水酸基を含むものである。
【請求項17】
請求項12〜16のいずれか1つの方法または使用法において、前記核酸分子は天然由来RNAの類似体である。
【請求項18】
請求項17の方法または使用法において、1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換、または修飾により、前記核酸分子のヌクレオチド配列が前記遺伝子または遺伝子産物のヌクレオチド配列とは異なるものである。
【請求項19】
請求項10〜18のいずれか1つの方法または使用法において、前記遺伝子またはそのcDNAはヌクレオチド配列を有するか、SEQ ID NO:1〜4のいずれか1つから成るグループから選択したアミノ酸配列をコードするものである。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1つの方法または使用法において、前記化合物は核酸分子であるか、核酸分子によってコードされ、CNSまたは眼の細胞に発現されるように設計されるものである。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1つの方法または使用法において、前記組成物は、血液脳関門または血液網膜関門の外に適用することで特徴付けられる、適当な担体により、CNSまたは眼の細胞または組織に導入されるように設計された形態である。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1つの方法または使用法において、前記組成物は全身投与またはイオン注入による投与用に設計されているものである。
【請求項23】
請求項1〜21のいずれか1つの方法または使用法において、前記組成物は球後投与または点眼用に設計されている。
【請求項24】
請求項1〜6のいずれか1つで定義される通り、疾患に関与するポリペプチドをコードした核酸分子を同定、入手する方法であって:
(a)CNSまたは眼性疾患に関連した病的状態の刺激につながるストレス条件下で、細胞、組織、または非ヒト動物を培養・育成する工程と;
(b)前記細胞、組織、または動物のサンプルから核酸及び/若しくはタンパク質を単離する工程と;
(c)少なくとも1つの上述の核酸および/またはタンパク質の発現または活性プロフィールを、対応する非投与細胞、組織、または動物のそれら、及び/若しくは異なるストレス条件で投与された細胞、組織、または動物のそれらと比較する工程と;
(d)異なって発現された少なくとも1つの核酸および/またはタンパク質を決定する工程であって、それにより前記の少なくとも1つの核酸の発現または活性量の変化、または少なくとも1つの前記タンパク質の活性、または前記タンパク質の局在化変化がCNSまたは眼の疾患に影響していることを示す、決定する工程と、
を有する。
【請求項25】
請求項24の方法において、前記ストレス条件は前記細胞、組織、または動物の培養条件が異常に供給されることによって生じるものである。
【請求項26】
請求項24または25の方法において、前記の異常な供給は前記眼の内節の異常な供給である。
【請求項27】
請求項24〜26のいずれか1つの方法において、前記方法は細胞培養を基本とした方法である。
【請求項28】
請求項27の方法において、前記細胞はRPE細胞である。
【請求項29】
請求項28の方法において、前記細胞は細胞株ARPE−19などのRPE由来細胞株に由来するものである。
【請求項30】
請求項24〜26のいずれか1つの方法において、前記方法は非ヒト動物を用いて行われるものである。
【請求項31】
請求項24〜30のいずれか1つの方法において、前記ストレス条件は例えば酸化的ストレス、低酸素の培養条件、不十分な栄養および/または成長因子、pH値の変化および/または桿体外節(ROS)および/またはA2−Eの病態生理学的濃度を供給する工程を有するものである。
【請求項32】
請求項24〜31のいずれか1つの方法において、核酸の発現を発現アレイおよび/またはリアルタイムPCRにより分析するものである。
【請求項33】
請求項24〜32のいずれか1つの方法において、タンパク質発現をイムノブロットアッセイ若しくはELISAアッセイ、または2Dゲル電気泳動若しくはMALDI−TOFで分析するものである。
【請求項34】
請求項33の方法において、血管新生および/または新血管新生に関与するタンパク質に特異的な抗体が利用されるものである。
【請求項35】
請求項24〜34のいずれか1つの方法であって、さらに、前記細胞、組織、または動物の表現型の反応変化を誘導できるかについて、前記細胞、組織、動物中の同定された核酸候補またはコードされたポリペプチドの発現を過剰発現または抑制する方法を有し、前記表現型はCNSまたは眼の疾患に関連するものである。
【請求項36】
請求項24〜35のいずれか1つの方法であって、さらに、
(e)ステップ(a)の細胞またはその分泌された因子、またはその細胞可溶化物を内皮細胞培養にさらす工程と、
(f)細胞増殖、電気生理学的活性、DNA合成、細胞成長、細胞遊走、ケモキネシス、走化性、血管の発達、マーカー遺伝子の発現または活性、アポトーシス、生存度のいずれかまたはすべてを分析する工程と、
を有するものである。
【請求項37】
請求項24〜36のいずれか1つの方法において、前記細胞のサンプルは、前記候補核酸またはコードされたポリペプチドに特異的なインヒビターで処理され;さらに、前記細胞、その分泌された因子、またはその細胞可溶化物が前記表現型の前記反応変化を誘導できなかったか否かを決定する工程を有するものである。
【請求項38】
請求項35〜37のいずれか1つの方法または使用法において、前記表現型は血管新生および/または新血管新生、変性性網膜障害のすべてまたはいずれかに関連するものである。
【請求項39】
請求項38の方法において、前記インヒビターは請求項10〜19のいずれか1つで定義されたインヒビターであるものである。
【請求項40】
請求項24〜39のいずれか1つの方法であって、さらに前記の少なくとも1つの核酸および/またばタンパク質の配列を同定し、任意に対応するコード遺伝子またはそのcDNAを同定する工程を有するものである。
【請求項41】
請求項40の方法であって、さらに前記遺伝子、cDNA、またはその断片をクローニングする工程を有するものである。
【請求項42】
請求項24〜41のいずれか1つの方法により得られる核酸分子。
【請求項43】
血管新生および/または新血管新生、および/または網膜疾患に関与するポリペプチドをコードした、請求項42の核酸分子。
【請求項44】
請求項42または43の核酸分子に特異的にハイブリダイズする核酸分子であって、請求項35〜38のいずれか1つで定義したとおり、表現型の反応変化を誘導することができなくなったタンパク質の変異体をコードする核酸分子。
【請求項45】
請求項42〜44のいずれか1つの核酸分子において、この核酸分子はDNAである。
【請求項46】
請求項45の核酸分子において、この核酸分子はcDNAである。
【請求項47】
請求項42〜64のいずれか1つの核酸分子において、この核酸分子は哺乳類に由来するものである。
【請求項48】
請求項47の核酸分子において、前記哺乳類はマウスまたはヒトである。
【請求項49】
請求項42〜48のいずれか1つの核酸分子、またはその相補鎖と特異的にハイブリダイズする、少なくとも15ヌクレオチド長の核酸分子。
【請求項50】
請求項42〜49のいずれか1つの核酸分子を有するベクター。
【請求項51】
請求項50のベクターにおいて、前記核酸分子は原核生物または真核生物の宿主細胞の発現を可能にする制御要素と操作可能に結合するものである。
【請求項52】
請求項50または51のベクターを有する宿主細胞。
【請求項53】
請求項52の宿主細胞は、細菌、真菌、植物、または動物細胞である。
【請求項54】
請求項53の宿主細胞は、哺乳類細胞である。
【請求項55】
請求項54の宿主細胞は、RPE細胞または神経感覚網膜細胞である。
【請求項56】
請求項35〜38のいずれか1つで定義されるとおり、表現型の反応変化を誘導することができるポリペプチドを生産する方法であって、ポリペプチドの発現を可能にする条件下で請求項52〜55のいずれか1つの宿主細胞を培養する工程と、前記培養で生産されたポリペプチドを回収する工程と
を有するものである。
【請求項57】
請求項42〜49のいずれか1つの核酸分子でコードされているか、または請求項56による方法で得られるポリペプチド。
【請求項58】
請求項57のポリペプチドを特異的に認識する抗体。
【請求項59】
請求項42〜49のいずれか1つの核酸分子、またはそのような核酸分子に相補的な核酸分子、請求項50または51のベクター、請求項52〜55のいずれか1つの宿主細胞、請求項57のポリペプチド、請求項58の抗体のいずれかまたはすべてと、任意に医薬品として認められた担体を有する医薬品。
【請求項60】
請求項42〜49のいずれか1つの核酸分子、請求項50または51のベクター、請求項52〜55のいずれか1つの宿主細胞、請求項57のポリペプチドおよび/または請求項58の抗体と、任意に適当な検出法とを有する診断構成。
【請求項61】
請求項1〜6のいずれか1つで定義された疾患を治療する方法において、有効量の請求項59の医薬品を被験者に投与する方法を有するものである。
【請求項62】
請求項1〜6のいずれか1つで定義された疾患に関与する遺伝子の発現を検出する方法であって、
(a)細胞からmRNAを採取する工程と;
(b)ハイブリダイゼーションの条件下で請求項42〜49のいずれか1つの核酸分子またはそのフラグメントを有するプローブを用い、そのように採取されたmRNAをインキュベートする工程と;
(c)プローブにハイブリダイズさせたmRNAの有無を検出する工程と、
を有するものである。
【請求項63】
請求項1〜6のいずれか1つで定義された疾患に関与する遺伝子の発現を検出する方法であって、
(d)前記被験者から細胞サンプルを採取する工程と;
(e)そのように採取された細胞サンプルを請求項58の抗体と接触させる工程と;
(f)前記遺伝子でコードされたタンパク質に結合した抗体の有無を検出する工程と、
を有するものである。
【請求項64】
請求項44の核酸分子によってコードされたタンパク質発現を検出するための、請求項62〜63の方法。
【請求項65】
請求項1〜6のいずれか1つで定義された疾患であるか、またはそのような疾患に罹患しやすい被験者を診断する方法であって:
(a)前記疾患に罹患した患者からDNAを単離する工程と;
前記ステップ(a)で単離されたDNAを少なくとも1つの制限酵素で消化する工程と;
(b)サイジングゲル上で得られたDNAフラグメントを電気泳動により分離する工程と;
(c)検出可能なマーカーで標識した、請求項42〜49の何れか1つの核酸分子またはそのフラグメントを有するプローブとともに、前記の得られたゲルをインキュベートする工程と;
(d)前記疾患患者のDNAに特異的なバンドパターンを作ると定義されているプローブとハイブリダイズしたゲル上で、標識バンドを検出する工程と;
(e)ステップ(a)〜(e)により被験者のDNAを調整し、ゲル上で検出可能な標識バンドを生成する、調整する工程と;
(f)ステップ(e)の疾患患者のDNAに特異的なバンドパターンとステップ(f)の被験者のDNAを比較する工程であって、前記パターンが同一か、異なっているかを決定し、前記パターンが同一の場合は、それによって前記疾患または前記疾患への罹患しやすさを診断する、比較する工程と、
を有するものである。
【請求項66】
請求項1〜6のいずれか1つで定義された疾患であるか、そのような疾患に罹患しやすいと、診断する方法であって:
(a)診断チップ、プライマー伸長法、一塩基多型、または配列決定の方法により、請求項42〜49の核酸分子を有する被験者の核酸サンプルを分析する工程と、
(b)前記結果を前記疾患に罹患した患者から得られたサンプルの結果と比較する工程とを有し、
前記発現プロフィールおよび/またはヌクレオチドの配列の同一性は、前記疾患を示すものである。
【請求項67】
体細胞遺伝子治療により請求項1〜6のいずれか1つで定義した被験者の疾患を治療、予防、および/または遅延させる組成物を調整するための、請求項42〜49のいずれか1つの有効量の前記核酸分子、またはそのような核酸分子に相補的な核酸分子、または請求項50または51のベクターの利用法。
【請求項68】
請求項1〜6のいずれか1つで定義されるとおり、被験物質が疾患に関与する核酸分子またはポリペプチドに作用するか否かを決定する方法であって:
(a)請求項57のポリペプチドを発現した細胞とスクリーニングする化合物とを接触させる工程と;
(b)前記化合物が、前記ポリペプチドの発現または活性を調節するか否かを決定する工程と、
を有するものである。
【請求項69】
請求項68の方法において、前記ポリペプチドはGGTBプロモーターの制御下で発現されるものである。
【請求項70】
請求項68または69の方法において、前記被験物質は化学療法剤である。
【請求項71】
請求項68〜70のいずれか1つの方法において、前記被験物質は化学療法剤の混合物である。
【請求項72】
請求項68〜71のいずれか1つの方法において、前記細胞は単細胞生物または多細胞生物に由来するものである。
【請求項73】
請求項68〜72のいずれか1つの方法において、前記細胞は請求項28、29、35、または52〜55のいずれか1つで定義された細胞である。
【請求項74】
請求項68〜73のいずれか1つの方法において、好ましくは第1のスクリーニングで前記被験物質が被験物質の集合を構成し、被験物質の集合となるものである。
【請求項75】
請求項74の方法において、前記被験物質の集合は約10〜約10の多様性を持つものである。
【請求項76】
請求項74または75の方法において、前記被験物質の集合の多様性は連続的に減少するものである。
【請求項77】
請求項68〜76のいずれか1つの方法において、前記方法は組織または非ヒト動物を構成するものである。
【請求項78】
請求項1〜6のいずれか1つで定義された疾患を治療する薬物またはプロドラッグを生産する方法であって:
(a)被験化合物または被験化合物の集合を合成する工程と;
(b)前記被験化合物または被験化合物の集合に対して、請求項68〜77のいずれか1つの方法を実施する工程と;
(c)ステップ(b)の修飾因子またはその誘導体として同定された化合物を生産する工程と、
を有するものである。
【請求項79】
請求項68〜78のいずれか1つの方法によって同定、単離、生産された被験物質であって、前記被験物質が、これまで請求項1〜6のいずれか1つで定義された疾患の治療薬として知られていないものものである。
【請求項80】
請求項1〜6のいずれか1つで定義された疾患を治療する組成物を調整するため、請求項68〜78のいずれか1つの方法によって同定、単離、生産された化合物の使用法。
【請求項81】
請求項1〜6のいずれか1つで定義された疾患を治療する方法であって、前記疾患に罹患した被験者に、請求項80の使用法または請求項78の方法に沿って調整した組成物を投与する方法を有するものである。
【請求項82】
固体支持体を有し、そこに請求項42〜49のいずれか1つの核酸分子を1つ以上結合させたチップ。
【請求項83】
請求項24〜41または62〜78のいずれか1つの方法で使用するキットであって、請求項82のチップ、または請求項42〜49のいずれか1つの核酸分子、または請求項58のポリペプチドの発現および/または活性を検出する他の方法を有するものである。
【請求項84】
請求項68〜78の方法で同定、単離、生産された化合物を、新薬発見及び薬物またはプロドラッグの調整のリード化合物として使用する方法。
【請求項85】
請求項1〜6のいずれか1つで定義した疾患を治療するため、または請求項42〜49のいずれか1つの核酸分子またはそのコードされた遺伝子産物を有する遺伝子の調節に反応する、下流遺伝子を同定及び単離するため、被験物質、リード化合物、薬物及びプロドラッグの妥当性を確認するために、請求項42〜49のいずれか1つの核酸分子または請求項57のポリペプチドを使用する方法。
【請求項86】
請求項57のポリペプチドの異常な発現または活性を示す遺伝子組換え非ヒト動物。
【請求項87】
請求項86の非ヒト動物において、前記動物は請求項1〜6のいずれか1つで定義された疾患を再現するものである。
【請求項88】
請求項86または87の動物において、哺乳類である。
【請求項89】
請求項86〜88のいずれか1つの遺伝子組換え非ヒト動物を、請求項1〜6のいずれか1つで定義された疾患を治療するため、新薬発見のプロセスに利用する方法。
【請求項90】
請求項1〜6のいずれか1つで定義された疾患を治療するために用いる医薬品であって、1つ以上の二本鎖オリゴヌクレオチド(dsRNA)を有し、請求項42〜49のいずれか1つの核酸分子1つ以上の対応するmRNAのRNA干渉と、任意に医薬品として認められた担体を介するものである。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2006−500910(P2006−500910A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−584309(P2003−584309)
【出願日】平成15年4月16日(2003.4.16)
【国際出願番号】PCT/EP2003/004003
【国際公開番号】WO2003/087368
【国際公開日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【出願人】(505095121)アキュイティ ファーマシューティカルズ、インク. (1)
【Fターム(参考)】