説明

CNS障害の処置のための2−イミダゾールの使用

本発明は、鬱病、不安障害、双極性障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、ストレス関連障害、精神病性障害(例えば、統合失調症)、神経性疾患(例えば、パーキンソン病)、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病)、てんかん、偏頭痛、高血圧症、薬物乱用、および代謝性障害(例えば、摂食障害、糖尿病、糖尿病合併症、肥満、脂質異常症、エネルギー消費および同化の障害)、体温恒常性の障害および異常、睡眠および概日リズムの障害、ならびに循環器系障害の処置のための薬剤の製造のための、式I〔式中、Rは、水素、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、ハロゲンにより置換された低級アルキルであるか、または4−(CHC(O)−ナフチルであり;Xは、−S−または−NH−であり;アリールは、フェニル、ナフタレン−1−イル、ナフタレン−2−イルまたは5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−イルより選択される芳香族基であり;ヘタリールは、少なくとも1個のNまたはS環原子を含有し、チオフェン−3−イルまたはピリミジン−5−イルからなる群より選択される芳香族基であり;nは、1,2または3である〕の化合物、ならびにそれらの薬学的に活性の塩、ラセミ混合物、鏡像異性体、光学異性体および互変異性体の形態の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鬱病、不安障害、双極性障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、ストレス関連障害、精神病性障害(例えば、統合失調症)、神経性疾患(例えば、パーキンソン病)、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病)、てんかん、偏頭痛、高血圧症、薬物乱用、および代謝性障害(例えば、摂食障害、糖尿病、糖尿病合併症、肥満、脂質異常症、エネルギー消費および同化の障害)、体温恒常性の障害および異常、睡眠および概日リズムの障害、ならびに循環器系障害の処置のための薬剤の製造のための、式I
【0002】
【化8】

【0003】
〔式中、
Rは、水素、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、ハロゲンにより置換された低級アルキルであるか、または4−(CHC(O)−ナフチルであり;
Xは、−S−または−NH−であり;
アリールは、フェニル、ナフタレン−1−イル、ナフタレン−2−イルまたは5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−イルより選択される芳香族基であり;
ヘタリールは、少なくとも1個のNまたはS環原子を含有し、チオフェン−3−イルまたはピリミジン−5−イルからなる群より選択される芳香族基であり;
nは、1,2または3である〕
の化合物、ならびにそれらの薬学的に活性の塩、ラセミ混合物、鏡像異性体、光学異性体および互変異性体の形態の使用に関する。
式Iで開示された化合物は公知であり、例えば、US 6,268,389中、または下記の引用中に記載されているか、あるいは公開の化学ライブラリーに納められている。
【0004】
式Iの化合物は、微量アミン関連レセプター(TAAR)に対して、特にTAAR1について、良好な親和性を有することが見出された。
【0005】
古典的な生体アミン(セロトニン、ノルエピネフリン、エピネフリン、ドーパミン、ヒスタミン)は、中枢および末梢神経系における神経伝達物質としての重要な役割を果たす[1]。それらの合成および貯蔵、ならびに放出後のそれらの分解および再取り込みは、厳重に調整される。生体アミンのレベルにおける不均衡は、多くの病的状態下で変化した脳機能に応答することが知られている[2−5]。内因性アミン化合物の第2のクラス、いわゆる微量アミン(TA)が、構造、代謝および細胞内局在性に関して古典的な生体アミンと有意に重複する。TAは、p−チラミン、β−フェニルエチルアミン、トリプタミンおよびオクトパミンを含み、そしてそれらが、一般に古典的な生体アミンより低いレベルで哺乳類の神経系中に存在する[6]。
それらの調節障害は、統合失調症および鬱病のようなさまざまな精神疾患[7]、および注意欠陥多動性障害、偏頭痛、パーキンソン病、薬物乱用および摂食障害のようなその他の病態[8,9]に関係している。
長い間、TA−固有レセプターは、ヒトおよび他の哺乳類のCNS中に位置する解剖学的に区別される高親和性TA結合部位に基づくものだけと仮定されていた。したがって、TAの薬理学的効果は、それらの放出を誘発するか、それらの再取り込みを阻害するか、またはそれらのレセプターシステムで「交差反応する」かのいずれかにより、古典的生体アミン類の周知の機構を通じて介在すると見られている[9、12、13]。この見識は、GPCRの新規ファミリーのいくつかのメンバー:微量アミン関連レセプター(TAAR)の最近の同定により有意に変化した[7、14]。ヒトにおいて9種のTAAR遺伝子(3種の偽遺伝子を含む)とマウスにおいて16種の遺伝子(1種の偽遺伝子を含む)が存在する。TAAR遺伝子は、イントロンを含有せず(1つだけ例外として、TAAR2は1つのイントロンを含有する)、同じ染色体部分上で互いに隣接して位置している。詳細なGPCR薬理作用団の類似比較および薬理学的データと一致する、レセプター遺伝子の系統発生関係が、これらのレセプターが3種のはっきりと異なるサブファミリーを形成することを示唆する[7、14]。TAAR1は、ヒトとげっ歯類との間で高度に保存された4種の遺伝子(TAAR1−4)の最初のサブクラスである。TAは、Gαsを経てTAAR1を活性化する。TAの調節障害は、鬱病、精神病、注意欠陥多動性障害、薬物乱用、パーキンソン病、偏頭痛、摂食障害、代謝障害のようなさまざまな疾患の原因論に貢献することが示され、それ故に、TAAR1リガンドがこれらの疾患の処置について高い可能性を有する。
【0006】
それ故に、微量アミン関連レセプターに関する知識を増やすことは一般的な関心である。
【0007】
使用された参考文献:
1. Deutch, A.Y. and Roth, R.H. (1999) Neurotransmitters. In Fundamental Neuroscience (2nd edn) (Zigmond, M.J., Bloom, F.E., Landis, S.C., Roberts, J.L, and Squire, L.R., eds.), pp. 193-234, Academic Press;
2. Wong, M.L. and Licinio, J. (2001) Research and treatment approaches to depression. Nat. Rev. Neurosci. 2, 343-351;
3. Carlsson, A. et al. (2001) Interactions between monoamines, glutamate, and GABA in schizophrenia: new evidence. Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 41, 237-260;
4. Tuite, P. and Riss, J. (2003) Recent developments in the pharmacological treatment of Parkinson's disease. Expert Opin. Investig. Drugs 12, 1335-1352,
5. Castellanos, F.X. and Tannock, R. (2002) Neuroscience of attention-deficit/hyperactivity disorder: the search for endophenotypes. Nat. Rev. Neurosci. 3, 617-628;
6. Usdin, E. and Sandler, M. eds. (1984), Trace Amines and the brain, Dekker;
7. Lindemann, L. and Hoener, M. (2005) A renaissance in trace amines inspired by a novel GPCR family. Trends in Pharmacol. Sci. 26, 274-281;
8. Branchek, T.A. and Blackburn, T.P. (2003) Trace amine receptors as targets for novel therapeutics: legend, myth and fact. Curr. Opin. Pharmacol. 3, 90-97;
9. Premont, R.T. et al. (2001) Following the trace of elusive amines. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 98, 9474-9475;
10. Mousseau, D.D. and Butterworth, R.F. (1995) A high-affinity [3H] tryptamine binding site in human brain. Prog. Brain Res. 106, 285-291;
11. McCormack, J.K. et al. (1986) Autoradiographic localization of tryptamine binding sites in the rat and dog central nervous system. J. Neurosci. 6, 94-101;
12. Dyck, L.E. (1989) Release of some endogenous trace amines from rat striatal slices in the presence and absence of a monoamine oxidase inhibitor. Life Sci. 44, 1149-1156;
13. Parker, E.M. and Cubeddu, L.X. (1988) Comparative effects of amphetamine, phenylethylamine and related drugs on dopamine efflux, dopamine uptake and mazindol binding. J. Pharmacol. Exp. Ther. 245, 199-210;
14. Lindemann, L. et al. (2005) Trace amine associated receptors form structurally and functionally distinct subfamilies of novel G protein-coupled receptors. Genomics 85, 372-385.
【0008】
本発明の目的は、微量アミン関連レセプターへの親和性に関係した疾患の処置用の薬剤の製造のための式Iの化合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩、ラセミ混合物、鏡像異性体、光学異性体または互変異性体の形態の使用、本発明による化合物に基づく薬剤およびその生産、ならびに、鬱病、不安障害、双極性障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、ストレス関連障害、精神病性障害(例えば、統合失調症)、神経性疾患(例えば、パーキンソン病)、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病)、てんかん、偏頭痛、高血圧症、薬物乱用、および代謝性障害(例えば、摂食障害、糖尿病、糖尿病合併症、肥満、脂質異常症、エネルギー消費および同化の障害)、体温恒常性の障害および異常、睡眠および概日リズムの障害、ならびに循環器系障害などの病気の制御または予防における式Iの化合物の使用である。
【0009】
本発明の化合物を使用する好ましい適応症は、鬱病、精神病、パーキンソン病、不安および注意欠陥多動性障害(ADHD)である。
【0010】
明細書では、用語「低級アルキル」は、1〜7個の炭素原子を含有する飽和の直鎖状もしくは分岐鎖状の基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、2−ブチル、t−ブチルなどを意味する。好ましいアルキル基は、1〜4個の炭素原子を有する基である。
【0011】
明細書では、用語「低級アルコキシ」は、アルキル残基が上記に定義されたとおりであり、これが酸素原子を経て結合されている基を意味する。
【0012】
明細書では、用語「ハロゲンにより置換された低級アルキル」は、少なくとも1個の水素原子がハロゲンに置き換えられている、上記に定義されたようなアルキル基、例えば、CF、CHF、CHF、CHCF、CHCFCFなどを意味する。
【0013】
用語「ハロゲン」は、塩素、ヨウ素、フッ素および臭素を意味する。
【0014】
用語「薬学的に許容される酸付加塩」は、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのような無機酸および有機酸との塩を包含する。
【0015】
上記のような使用による式Iの好ましい化合物は、XがNであり、アリールがフェニルであるもの、例えば以下の化合物
(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−(2,6−ジメチル−フェニル)−アミンまたは互変異性体、
(2,6−ジエチル−フェニル)−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−アミンまたは互変異性体、
(2,6−ジブロモ−フェニル)−イミダゾリジン−2−イリデン−アミンまたは互変異性体、
(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−(2−エチル−6−メチル−フェニル)−アミンまたは互変異性体、
(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−(2−イソプロピル−6−メチル−フェニル)−アミンまたは互変異性体、
(5−クロロ−2−メチル−フェニル)−イミダゾリジン−2−イリデン−アミンまたは互変異性体、あるいは
3−[4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イルアミノ)−フェニル]−1−ナフタレン−2−イル−プロパン−1−オンまたは互変異性体である。
【0016】
さらに好ましい化合物は、XがNであり、アリール/ヘタリールがナフタ−1−イル、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−イルまたはチオフェン−3−イルであるもの、例えば以下の化合物
イミダゾリジン−2−イリデン−ナフタレン−1−イル−アミンまたは互変異性体、
(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−(5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イル)−アミンまたは互変異性体、あるいは
(2−クロロ−4−メチル−チオフェン−3−イル)−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−アミンまたは互変異性体である。
【0017】
好ましい化合物は、さらに、XがSであり、アリールがフェニルであるもの、例えば2−(2,6−ジクロロ−フェニルスルファニル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールである。
【0018】
式Iの本化合物およびそれらの薬学的に許容される塩を、当技術分野で公知である方法により、例えば、以下に記載されている方法であって、
【0019】
a) 式II
【0020】
【化9】

【0021】
の化合物を、
式III
【0022】
【化10】

【0023】
のエチレンジアミンと反応させて、
式1−1
【0024】
【化11】

【0025】
(式中、Rとnは、上記で定義されたとおりである)
の化合物を得る工程、または
【0026】
b) 式IV
【0027】
【化12】

【0028】
の化合物を、
式III
【0029】
【化13】

【0030】
の化合物と反応させて、
式I−2
【0031】
【化14】

【0032】
(式中、置換基は、上記で定義されたとおりである)
の化合物を得る工程、および
【0033】
所望ならば、得られた化合物を薬学的に許容される酸付加塩に変換する工程、
を含む方法によって製造することができる。
【0034】
すべての出発物質は、公知の化合物か、または当技術分野で公知である方法により調製してもよい。
2−アリール/ヘタリール−イミダゾリンを、文献の手順と同様に、スキーム1およびスキーム2に描かれる経路の後に調製した。
【0035】
[1]Synthesis 1984, 825
[2]DE 0842065
[3]J. Heterocycl. Chem. 11, 257 (1974)
【0036】
【化15】

【0037】
イミダゾリン環の形成を、周囲温度〜還流温度で、好ましくは還流温度で、6〜48時間、好ましくは18〜24時間、アルコール、好ましくはメタノールまたはエタノール中でエチレンジアミンまたはその類似体とイソチオシアン酸アリール(II)の環化反応により行った。イソチオシアナートを、還流温度で、不活性溶媒中またはそのままで、好ましくはそのままで、イソチオシアン酸フェニルを用いる反応によりアニリン(V)またはその誘導体から調製した。
【0038】
【化16】

【0039】
2−アリール/ヘタリール−チオ−イミダゾリンを、スキーム2に描かれた文献の手順の後に調製することができる。
【0040】
下記の表に記載された化合物を、実施例2に関する記述にしたがって調製してもよい。
【0041】
(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−(2,6−ジメチル−フェニル)−アミンまたは互変異性体(実施例2)
【0042】
a) 2−イソチオシアナト−1,3−ジメチル−ベンゼン
【0043】
【化17】

【0044】
2,6−ジメチルアニリン 4.00g(33.0mmol)およびイソチオシアン酸フェニル 9.80g(72.5mmol)の混合物を、6時間、加熱して還流させた(油浴190℃〜200℃)。混合物を周囲温度に冷却すると、固体塊が形成された。この固体に、n−ヘキサン40mlを加え、そして懸濁液を15分間撹拌し、沈殿物を濾別し、n−ヘキサンで洗浄し、そして濾液を蒸発した。得られた黄色の油状物を、シリカゲル上で、溶離剤としてヘプタンを用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、そして得られた無色の油状物を、イソシアン酸フェニルを除去するためにクーゲルロール蒸留装置にかけた。2−イソチオシアナト−1,3−ジメチル−ベンゼンを、沸点110〜120℃/1.2mbar:MS(EI):163.1(M)の無色の油状物として単離した。
【0045】
b) (4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−(2,6−ジメチル−フェニル)−アミンまたは互変異性体
【0046】
【化18】

【0047】
エタノール6ml中の水酸化ナトリウム(破砕されたペレット)343mg(806mmol)およびエチレンジアミン0.41ml(368mg、6.1mmol)の混合物を、溶液が得られるまで、周囲温度で撹拌した。この溶液に、エタノール2ml中の2−イソチオシアナト−1,3−ジメチル−ベンゼンの溶液1.00g(6.1mmol)を滴下し、そして得られた混合物を20時間加熱して還流させた。得られた黄色の溶液を周囲温度に冷却し、そしてそれに塩化水素を通気することによりpH〜2に酸性化した。懸濁液を濾過し、残留物をエタノールでよく洗浄し、そして濾液を蒸発した。残留物を水に溶解し、pHを10〜11に調整し、そして溶液をtert−ブチルメチルエーテルで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、そして蒸発した。得られた粗生成物をシリカゲル上でフラッシュ−クロマトグラフィーにより精製した:不純物を、メタノールにより溶出し、そして続けてメタノール/濃縮アンモニア 95:5で標記化合物の溶離を行った。(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−(2,6−ジメチル−フェニル)−アミンを、周囲温度で結晶化した無色の油状物として単離した:無色の固体、融点155〜157℃、MS(ISP):190.4(M+H)。
【0048】
【表1】





【0049】
式Iの化合物およびそれらの薬学的に使用できる付加塩は、有用な薬理学的特性を所有する。特に、本発明の化合物は、微量アミン関連レセプター(TAAR)、特にTAAR1に対して良好な親和性を有することが発見された。
化合物を以下に与えられた試験に従って調査した。
【0050】
原料および方法
TAAR発現プラスミドおよび安定にトランスフェクトされた細胞株の作製
発現プラスミドの作製のために、ヒト、ラットおよびマウスのTAAR1のコード配列を、基本的にLindemannらにより記述されたようにしてゲノムDNAから増幅した[14]。エキスパンドハイフィディリティ(Expand High Fidelity)PCRシステム(Roche Diagnostics)を、1.5mM Mg2+と一緒に使用して、精製されたPCR生成物を、製造元の指示書に従って、pCR2.1−TOPOクローニングベクター(Invitrogen)の中にクローン化した。PCR生成物を、pIRESneo2ベクター(BD Clontech、パロアルト、カリフォルニア)にサブクローン化して、そして発現ベクターの配列を確認してから、細胞株へ導入した。
【0051】
HEK293細胞(ATCC # CRL−1573)を、基本的にLindemannらにより記述されたようにして培養した。安定にトランスフェクトされた細胞株の産出のために、HEK293細胞に、製造元の指示書にしたがって、リポフェクトアミン 2000(Invitrogen)で(上述した)TAARコード配列を含有するpIRESneo2発現プラスミドをトランスフェクトし、そしてトランスフェクションの24時間後に、培養媒体に1mg/ml G418(Sigma、Buchs、スイス)を補充した。培養期間約10日後、クローンを単離し、膨張させて、cAMP Biotrak酵素免疫測定(EIA)装置(Amersham)で微量アミン(すべての化合物はSigmaから購入した)に対する反応性を、製造元から与えられた非アセチル化EIAの手順に従い試験した。15代の培養期間の安定EC50を示す単クローン性細胞株を、引き続きすべての試験のために使用した。
【0052】
膜調製と放射性リガンド結合
集密状態の細胞を、10mM EDTAを含有するCa2+とMg2+なしの氷冷リン酸緩衝生理食塩水でゆすぎ、1000rpm、5分間、4℃で遠心分離してペレット状にした。次に、ペレットを氷冷リン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄して、細胞ペレットを液体窒素に浸漬することにより直ちに凍結して、そして−80℃で使用するまで貯蔵した。次に、細胞ペレットを、EDTA 10mMを含有するpH7.4のHEPES−NaOH(20mM)20ml中に懸濁して、10,000rpm、10秒間、ポリトロン(PT3000、Kinematica)で均質化した。ホモジネートを、48,000×gで、30分間、4℃で遠心分離して、ペレットを、0.1mM EDTAを含有するpH7.4のHEPES−NaOH(20mM)(バッファーA)20ml中に再懸濁して、10,000rpm、10秒間、ポリトロンで均質化した。次に、ホモジネートを、48,000×gで、30分間、4℃で遠心分離して、ペレットをバッファーA 20ml中に再懸濁して、10,000rpm、10秒間、ポリトロンで均質化した。タンパク質濃度をピアス法(Rockford、IL)により測定した。次に、ホモジネートを、48,000×gで、10分間、4℃で遠心分離して、MgCl(10mM)とCaCl gタンパク/mlを含むpH7.0のHEPES−NaOH(20mM)(バッファーB)中に再懸濁して、10,000rpmで、10秒間、ポリトロンで均質化された。
【0053】
結合アッセイを、4℃で、最終容量1mlにおいて、インキュベート時間30分で実施した。放射性リガンド[H]−rac−2−(1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフチル)−2−イミダゾリンを、60nMの算出されたK値と同等の濃度で使用して、総添加された放射性リガンド濃度の約0.1%で結合、および総結合のおよそ70〜80%を示す特異結合が得られた。非特異結合を、適切な標識されていないリガンド(10μM)の存在下、[H]−rac−2−(1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフチル)−2−イミダゾリン結合の量として定義した。
競合リガンドを、広範囲の濃度(10pM−30μM)において試験した。アッセイにおける最終ジメチルスルホキシド濃度が2%であり、それは放射性リガンド結合に影響を及ぼさなかった。それぞれの試験を2回行った。すべてのインキュベートを、Filtermate 96 Cell Harvester(Packard Instrument Company)を使用して、UniFilter-96 plates(Packard Instrument Company)、およびポリエチレンイミン0.3%中で少なくとも2時間予備浸漬したガラス濾過器GF/Cによる急速濾過により終結した。次に、チューブおよびフィルターを、冷バッファーBの分割量1mlで、3回洗浄した。フィルターを乾燥せず、Ultima gold(45μl/ウェル、Packard Instrument Company)中で予備浸漬して、結合放射性活性を、TopCount Microplate Scintillation Counter(Packard Instrument Company)によりカウントした。
【0054】
好ましい化合物は、下記の表中に示したように、0.026〜0.500の範囲内で、マウスTAAR1についてのKi値(μM)を示す。
【0055】
【表2】

【0056】
式Iの化合物および式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、医薬として、例えば、医薬製剤の形態で使用することができる。医薬製剤は、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬および軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤または懸濁剤の剤形で、経口投与することができる。しかしながら、投与はまた、例えば、坐剤の剤形で経直腸的に、または例えば、注射液の剤形で非経口的に行うこともできる。
【0057】
式Iの化合物は、医薬製剤を製造するため、薬学的に不活性な無機または有機担体と共に製剤化することができる。乳糖、トウモロコシデンプンまたはそれらの誘導体、タルク、ステアリン酸またはそれらの塩などが、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠および硬ゼラチンカプセル剤のためのそのような担体として使用することができる。軟ゼラチンカプセル剤のための適切な担体は、例えば、植物油、ロウ、脂肪、半固体および液体のポリオール類などである。しかしながら、活性物質の性質に応じて、軟ゼラチンカプセル剤の場合は、通常担体を必要としない。液剤およびシロップ剤の製造に適切な担体は、例えば、水、ポリオール類、グリセリン、植物油などである。坐剤に適切な担体は、例えば、天然または硬化油、ロウ、脂肪、半液体または液体のポリオールなどである。
【0058】
さらに、医薬製剤は、保存剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、着香剤、浸透圧を変化させる塩、緩衝剤、マスキング剤または酸化防止剤を含有することができる。それらはまた、その他の治療上有用な物質もさらに含有することができる。
【0059】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩と、治療上不活性な担体とを含有する医薬もまた、式Iの化合物および/または薬学的に許容される酸付加塩の1種以上と、所望により、1種以上の他の治療上有用な物質とを、1種以上の治療上不活性な担体と共に、ガレヌス製剤の投与形態にすることを含むそれらの製造方法と同様に、本発明の目的である。
【0060】
本発明の最も好ましい適応症は、中枢神経系の疾患を含むものであり、例えば、統合失調症、認識障害およびアルツハイマー病の治療または予防である。
【0061】
用量は、広い範囲内で変えることができ、当然、それぞれの特定の症例における個別の要求に適合させなければならない。経口投与の場合、成人用の用量は、一般式Iの化合物1日当たり約0.01mg〜約1000mg、またはその薬学的に許容される塩の対応する量で変えることができる。1日量を、1回量としてまたは分割量として投与してよく、加えて、必要性が示される場合、上限を超えることもできる。
【0062】
錠剤処方(湿式造粒法)
品目 成分 1錠当たり
5mg 25mg 100mg 500mg
1. 式Iの化合物 5 25 100 500
2. 無水ラクトース DTG 125 105 30 150
3. Sta−Rx 1500 6 6 6 30
4. 微晶質セルロース 30 30 30 150
5. ステアリン酸マグネシウム 1 1 1 1
総量 167 167 167 831
【0063】
製造手順
1. 品目1、2、3、および4を混合して、精製水で顆粒にする。
2. 顆粒を50℃で乾燥する。
3. 顆粒を適切な粉砕装置に通す。
4. 品目5を加えて、3分間混合する;適切な圧縮機で圧縮する。
【0064】
カプセル剤処方
品目 成分 1錠当たり
5mg 25mg 100mg 500mg
1. 式Iの化合物 5 25 100 500
2. 含水ラクトース 159 123 148 −−−
3. トウモロコシデンプン 25 35 40 70
4. タルク 10 15 10 25
5. ステアリン酸マグネシウム 1 2 2 5
総量 200 200 300 600
【0065】
製造手順
1. 品目1、2、および3を、適切な混合機において、30分間混合する。
2. 品目4と5を加えて、3分間混合する。
3. 適切なカプセルに充填する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鬱病、不安障害、双極性障害、注意欠陥多動性障害、ストレス関連障害、精神病性障害(例えば、統合失調症)、神経性疾患(例えば、パーキンソン病)、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病)、てんかん、偏頭痛、高血圧症、薬物乱用、および代謝性障害(例えば、摂食障害、糖尿病、糖尿病合併症、肥満、脂質異常症、エネルギー消費および同化の障害)、体温恒常性の障害および異常、睡眠および概日リズムの障害、ならびに循環器系障害の処置のための薬剤の製造のための
式I
【化1】


〔式中、
Rは、水素、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、ハロゲンにより置換された低級アルキルであるか、または4−(CHC(O)−ナフチルであり;
Xは、−S−または−NH−であり;
アリールは、フェニル、ナフタレン−1−イル、ナフタレン−2−イルまたは5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−イルより選択される芳香族基であり;
ヘタリールは、少なくとも1個のNまたはS環原子を含有し、チオフェン−3−イルまたはピリミジン−5−イルからなる群より選択される芳香族基であり;
nは、1,2または3である〕
の化合物、ならびにそれらの薬学的に活性の塩、ラセミ混合物、鏡像異性体、光学異性体および互変異性体の形態の使用。
【請求項2】
XがNであり、アリールがフェニルである、請求項1記載の式Iの化合物の使用。
【請求項3】
化合物が、
(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−(2,6−ジメチル−フェニル)−アミンまたは互変異性体、
(2,6−ジエチル−フェニル)−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−アミンまたは互変異性体、
(2,6−ジブロモ−フェニル)−イミダゾリジン−2−イリデン−アミンまたは互変異性体、
(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−(2−エチル−6−メチル−フェニル)−アミンまたは互変異性体、
(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−(2−イソプロピル−6−メチル−フェニル)−アミンまたは互変異性体、
(5−クロロ−2−メチル−フェニル)−イミダゾリジン−2−イリデン−アミンまたは互変異性体、あるいは
3−[4−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イルアミノ)−フェニル]−1−ナフタレン−2−イル−プロパン−1−オンまたは互変異性体
である、請求項2記載の式Iの化合物の使用。
【請求項4】
XがNであり、そしてアリール/ヘタリールがナフタ−1−イル、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−イルまたはチオフェン−3−イルである、請求項1記載の式Iの化合物の使用。
【請求項5】
化合物が、
イミダゾリジン−2−イリデン−ナフタレン−1−イル−アミンまたは互変異性体、
(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−(5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イル)−アミントリフルオロ−アセタートまたは互変異性体、あるいは
(2−クロロ−4−メチル−チオフェン−3−イル)−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−アミンまたは互変異性体
である、請求項4記載の式Iの化合物の使用。
【請求項6】
XがSであり、そしてアリールがフェニルである、請求項1記載の式Iの化合物の使用。
【請求項7】
化合物が、2−(2,6−ジクロロ−フェニルスルファニル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールである、請求項6記載の式Iの化合物の使用。
【請求項8】
a) 式II
【化2】


の化合物を、
式III
【化3】


のエチレンジアミンと反応させて、
式1−1
【化4】


(式中、Rとnは、請求項1で定義されたとおりである)
の化合物を得る工程、または
b) 式IV
【化5】


の化合物を、
式III
【化6】


の化合物と反応させて、
式I−2
【化7】


(式中、置換基は、請求項1で定義されたとおりである)
の化合物とする工程、および
所望ならば、得られた化合物を薬学的に許容される酸付加塩に変換する工程、
を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iの化合物の製造方法。
【請求項9】
鬱病、不安障害、双極性障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、ストレス関連障害、精神病性障害、統合失調症、神経性疾患、パーキンソン病、神経変性障害、アルツハイマー病、てんかん、偏頭痛、高血圧症、薬物乱用、および代謝性障害、摂食障害、糖尿病、糖尿病合併症、肥満、脂質異常症、エネルギー消費および同化の障害、体温恒常性の障害および異常、睡眠および概日リズムの障害、ならびに循環器系障害の処置のための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の1個以上の化合物を含有する薬剤。
【請求項10】
鬱病、精神病、パーキンソン病、不安および注意欠陥多動性障害(ADHD)の処置のための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の1個以上の化合物を含有する、請求項9記載の薬剤。
【請求項11】
本明細書に記載されている発明。

【公表番号】特表2009−524619(P2009−524619A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551762(P2008−551762)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050445
【国際公開番号】WO2007/090720
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】