説明

DLL回路、PLL回路

【課題】ロックイン時間を短縮しつつチャージポンプ回路の誤差電流に起因するジッタを低減する。
【解決手段】チャージポンプ回路30は、位相比較回路20による比較結果(充電信号UP0,放電信号DN0)に応答して正または負の出力電流Ioutを出力する。電流制御回路11は、遅延クロックCK(n)の遷移エッジを含む有効期間中に遅延クロックCK(1)の遷移エッジが発生することを検出し、その検出結果に応じてチャージポンプ回路30の出力電流Ioutの電流量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、DLL回路(Delay Lock Loop)やPLL回路(Phase Lock Loop)などのクロック生成回路に関し、特に、チャージポンプ回路の出力電流の電流量を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DLL回路には、位相比較器からのアップ信号およびダウン信号に応答して充放電動作を行うチャージポンプ回路が用いられている。例えば、チャージポンプ回路は、アップ信号に応答して充電電流を流出させるためのpMOSトランジスタと、ダウン信号に応答して放電電流を流入させるためのnMOSトランジスタとを備える。このように充電電流/放電電流を発生させることにより、ローパスフィルタの電圧が充電/放電され、その結果、電圧制御遅延回路のクロックの位相や周波数が調整される。このようなチャージポンプ回路は、DLL回路の他に、PLL回路などのクロック生成回路にも利用されている。
【0003】
DLL回路やPLL回路では、一般的に、位相比較器は、2つのクロックの位相差に応じて、アップ信号およびダウン信号を選択的に活性化させる。しかし、この2つのクロックの位相が一致している場合(2つのクロックの位相状態がロック状態である場合)、アップ信号およびダウン信号の両方が活性化する期間がある。この場合、チャージポンプ回路の出力電流の電流量は“0”であることが好ましい。しかし、実際には、チャージポンプ回路を構成するpMOSトランジスタおよびnMOSトランジスタ間におけるスイッチング特性の差や、充電電流の電流量と放電電流の電流量との不一致などが原因となり、チャージポンプ回路の出力電流の電流量は“0”にはならない。このように、2つのクロックの位相が一致していてもチャージポンプ回路から誤差電流が出力されるため、ローパスフィルタの電圧が変動し、その結果、電圧制御遅延回路(または、電圧制御発振回路)によって生成されるクロックに位相ノイズ(ジッタ)が発生してしまう。
【0004】
そこで、特開2000−165235号公報(特許文献1)には、2個のチャージポンプ回路を備えるPLL回路が開示されている。このPLL回路では、一方のチャージポンプ回路には、位相比較器からの位相誤差信号(アップ信号およびダウン信号)が直接的に供給され、他方のチャージポンプ回路には、遅延回路によって遅延された位相誤差信号が供給され、それぞれのチャージポンプ回路の出力電流が合成されてローパスフィルタに供給される。遅延回路は、縦続接続された複数個のインバータやバッファで構成され、位相誤差信号の信号幅が非常に狭い場合(例えば、数百ps)には位相誤差信号を通過させない。これにより、位相比較器に供給される2つのクロックの位相差が大きいときには、合成電流の電流量が多くなり、2つのクロックの位相差が小さいときには合成電流の電流量が少なくなる。なお、特開2007−295165号公報(特許文献2)にも同様のPLL回路が開示されている。
【特許文献1】特開2000−165235号公報
【特許文献2】特開2007−295165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたPLL回路では、電源電圧の変動や温度変化によって、遅延回路における遅延時間や遅延回路を通過可能な位相誤差信号の信号幅が変動してしまう。また、2つのチャージポンプ回路間における電流アンバランスに起因して、ジッタや定常位相誤差が生じてしまう。このように、従来のPLL回路では、チャージポンプ回路の出力電流の電流量を適切に切り換えることが困難であった。また、従来のDLL回路においても同様の課題があった。
【0006】
そこで、この発明は、DLL回路やPLL回路において、チャージポンプ回路の出力電流の電流量を適切に制御することにより、ロックイン時間を短縮しつつチャージポンプ回路の誤差電流に起因するジッタを低減できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の1つの局面に従うと、DLL回路は、縦続接続された複数の遅延素子を含み、入力クロックを順次遅延させてそれぞれ位相が異なる複数の遅延クロックを生成する遅延回路と、上記複数の遅延クロックのいずれか1つまたは上記入力クロックを第1の基準クロックとして受けるとともに上記複数の遅延クロックのうち上記第1の基準クロックよりも位相が遅れた遅延クロックを第2の基準クロックとして受け、上記第1および第2の基準クロックの位相を比較する位相比較回路と、上記位相比較回路による比較結果に応じて正または負の出力電流を供給するチャージポンプ回路と、上記チャージポンプ回路からの出力電流に応じて上記遅延回路に含まれる複数の遅延素子のそれぞれの遅延時間を制御する遅延制御回路と、上記第2の基準クロックの遷移エッジを含む有効期間中に上記第1の基準クロックの遷移エッジが発生することを検出し、その検出結果に応じて上記チャージポンプ回路の出力電流の電流量を制御する電流制御回路とを備える。
【0008】
上記DLL回路では、第1および第2の基準クロックの位相状態に応じて出力電流の電流量を適切に制御することにより、第1および第2の基準クロックの位相が互いに一致するまでの時間(ロックイン時間)を短縮しつつ、チャージポンプ回路の誤差電流に起因するジッタを低減できる。
【0009】
好ましくは、上記DLL回路は、上記有効期間中のみ上記位相比較回路による比較結果を通過させる供給制御回路をさらに備える。このように構成することにより、第1および第2の基準クロックの位相状態が疑似ロック状態へ遷移する確率を低減できる。
【0010】
この発明のもう1つの局面に従うと、PLL回路は、リング状に接続された複数の遅延素子を含み、それぞれ位相が異なる複数の発振クロックを生成する発振回路と、入力クロックを第1の基準クロックとして受けるとともに上記複数の発振クロックのうちいずれか1つを第2の基準クロックとして受け、上記第1および第2の基準クロックの位相を比較する位相比較回路と、上記位相比較回路による比較結果に応じて正または負の出力電流を供給するチャージポンプ回路と、上記チャージポンプ回路からの出力電流に応じて上記発振回路に含まれる複数の遅延素子のそれぞれの遅延時間を制御する遅延制御回路と、上記第2の基準クロックの遷移エッジを含む有効期間中に上記第1の基準クロックの遷移エッジが発生することを検出し、その検出結果に応じて上記チャージポンプ回路の出力電流の電流量を制御する電流制御回路とを備える。
【0011】
上記PLL回路では、第1および第2の基準クロックの位相状態に応じて出力電流の電流量を適切に制御することにより、ロックイン時間を短縮しつつ、チャージポンプ回路の誤差電流に起因するジッタを低減できる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、ロックイン時間を短縮しつつ、チャージポンプ回路の誤差電流に起因するジッタを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付しその説明は繰り返さない場合もある。
【0014】
(実施形態1)
図1は、この発明の実施形態1によるDLL回路の構成を示す。このDLL回路は、電圧制御遅延回路10と、位相比較回路20と、チャージポンプ回路30と、遅延制御回路40と、電流制御回路11とを備える。
【0015】
電圧制御遅延回路10は、k個(kは3以上の整数)の遅延素子DL,DL,…を含み、入力クロックCKinを順次遅延させてそれぞれ位相が異なるk個の遅延クロックCK(1),CK(2),…,CK(k)を生成する。遅延素子DL,DL,…のそれぞれの遅延時間を“Tp”とすると、遅延クロックCK(1),CK(2),…,CK(k)の遅延時間は、それぞれ、“Tp×1”,“Tp×2”,…,“Tp×k”である。
【0016】
位相比較回路20は、第1番目の遅延クロックCK(1),第n番目(2≦n≦k)の遅延クロックCK(n)をそれぞれ第1および第2の基準クロックとして受け、第1および第2の基準クロックの位相を比較し、比較結果として充電信号UP0,放電信号DN0を活性化させる。例えば、位相比較回路20は、第1および第2の基準クロックの遷移エッジ(ここでは、立ち上がりエッジ)に基づいて位相比較を実行する。充電信号UP0は、チャージポンプ回路30に充電動作を実行させるための信号であり、遅延クロックCK(n)が遅延クロックCK(1)よりも遅れていることを示す。一方、放電信号DN0は、チャージポンプ回路30に放電動作を実行させるための信号であり、遅延クロックCK(n)が遅延クロックCK(1)よりも進んでいることを示す。
【0017】
チャージポンプ回路(CP)30は、位相比較回路20からの充電信号UP0に応答して正の出力電流Ioutを供給し、放電信号DN0に応答して負の出力電流Ioutを供給する。また、チャージポンプ回路30の出力電流の電流量は可変である。例えば、図4のように、チャージポンプ回路30は、インバータINVを介して供給された充電信号UP0に応答して電源ノードから出力ノードNoutに充電電流Iupを流すための充電トランジスタ31pと、放電信号DN0に応答して出力ノードNoutから接地ノードに放電電流Idnを流すための放電トランジスタ31nと、充電電流Iupの電流量を調整するための調整トランジスタ32pと、放電電流Idnの電流量を調整するための調整トランジスタ32nとを含む。
【0018】
図1に戻って、遅延制御回路40は、チャージポンプ回路30からの出力電流Ioutに応じて電圧制御遅延回路10に含まれる遅延素子DL,DL,…のそれぞれの遅延時間を制御する。例えば、遅延制御回路40は、ローパスフィルタ(LPF)41と、電圧制御回路42とを含む。ローパスフィルタ41は、チャージポンプ回路30からの出力電流Ioutによって充電/放電される。電圧制御回路42は、遅延時間の制御特性を適切化するために、ローパスフィルタ41の電圧を制御して遅延素子DL,DL,…のそれぞれの遅延制御端子に供給する。例えば、電圧制御回路42は、遅延素子DLの遅延時間の変動範囲が入力クロックCKinの周波数範囲に対応するように、ローパスフィルタ41の電圧の変動範囲を制御する。なお、電圧制御回路42を介さずにローパスフィルタ41の電圧を遅延素子DL,DL,…に供給しても良い。チャージポンプ回路30が正の出力電流Ioutを供給する場合、ローパスフィルタ41の電圧が充電され、その結果、遅延素子DL,DL,…のそれぞれの遅延時間が減少する。一方、チャージポンプ回路30が負の出力電流Ioutを供給する場合、ローパスフィルタ41の電圧が放電され、その結果、遅延素子DL,DL,…のそれぞれの遅延時間が増加する。
【0019】
また、電源を投入する場合やシステムをリセットする場合、パワーオンリセット信号PONRが活性化され、電圧制御遅延回路10に含まれる遅延素子DL,DL,…のそれぞれの遅延時間が最小になるように、ローパスフィルタ41の電圧が制御される。
【0020】
電流制御回路11は、遅延クロックCK(n)の遷移エッジを含む有効期間中に遅延クロックCK(1)の遷移エッジが発生することを検出するとともに、検出結果に応じてチャージポンプ回路30の出力電流Ioutの電流量を制御する。電流制御回路11は、有効期間規定部101と、ロック近傍状態検出部102と、電流調整部103とを含む。
【0021】
有効期間規定部101は、第(n−m)番目の遅延クロックCK(n−m),第(n+m)番目の遅延クロックCK(n+m)をそれぞれ第1および第2の期間規定クロックとして受け、第1の期間規定クロックの遷移エッジが発生してから第2の期間規定クロックの遷移エッジが発生するまでの間、有効期間信号PWを活性化状態にする。このようにして、第1および第2の期間規定クロックの遷移エッジ間が有効期間として規定される。図2のように、例えば、有効期間規定部101は、遅延クロックCK(n+m)を反転させるインバータ111と、遅延クロックCK(n−m)とインバータ111の出力とを受けて有効期間信号PWを出力するAND回路112とを含む。
【0022】
ロック近傍状態検出部102は、有効期間規定部101からの有効期間信号PWが活性化状態である期間中(すなわち、有効期間中)において遅延クロックCK(1)の遷移エッジが発生することを検出し、その検出結果に基づいて遅延クロックCK(1),CK(n)の位相状態がロック近傍状態(遅延クロックCK(1),CK(n)の位相がほぼ一致している状態)および過渡応答状態(ロック近傍状態よりも遅延クロックCK(1),CK(n)の遅延時間差が大きい状態)のいずれであるのかを判定してロック近傍状態検出信号SWを活性化させる。例えば、有効期間中における遅延クロックCK(1)の遷移エッジの発生を検出した回数が1回以上である場合にチャージポンプ回路30の出力電流Ioutの電流量を減少させる場合、図3のように、ロック近傍状態検出部102は、遅延クロックCK(1)の遷移エッジに同期して有効期間信号PWを取り込むフリップフロップ121を含む。
【0023】
電流調整部103は、ロック近傍状態検出部102からのロック近傍状態検出信号SWに応じてチャージポンプ回路30の出力電流Ioutの電流量を調整する。例えば、電流調整部103は、バイアス電圧供給部131p,131nを含む。ロック近傍状態検出信号SWが非活性化状態(ここでは、ローレベル)である場合、バイアス電圧供給部131p,131nは、バイアス電圧Vbp1,Vbn1を調整トランジスタ32p,32nのゲートに供給する。一方、ロック近傍状態検出信号SWが活性化状態(ここでは、ハイレベル)である場合、バイアス電圧供給部131pは、バイアス電圧Vbp1よりも高いバイアス電圧Vbp2を供給し、バイアス電圧供給部131nは、バイアス電圧Vbn1よりも低いバイアス電圧Vbn2を供給する。これにより、充電電流Iup,放電電流Idnの電流量は、ロック近傍状態検出信号SWが非活性化状態である場合よりも少なくなる。すなわち、ロック近傍状態検出信号SWが非活性化状態である場合には、チャージポンプ回路30は、通常モードに設定され、ロック近傍状態検出信号SWが活性化状態である場合には、チャージポンプ回路30は、通常モードよりも出力電流Ioutの電流量が少ない電流制限モードに設定される。
【0024】
〔動作〕
次に、図5,図6を参照しつつ、図1に示したDLL回路による動作について説明する。なお、図5では、遅延クロックCK(n)は遅延クロックCK(1)よりも遅れているものとし、図6では、遅延クロックCK(n)は遅延クロックCK(1)よりも進んでいるものとする。
【0025】
図5のように、時刻t1〜t2の期間では、有効期間信号PWが活性化状態(ここでは、ハイレベル)である期間(すなわち、有効期間)よりも前に遅延クロックCK(1)の遷移エッジが発生するので、ロック近傍状態検出信号SWは非活性化状態である。また、遅延クロックCK(1)の遷移エッジが発生してから遅延クロックCK(n)の遷移エッジが発生するまでの間、充電信号UP0は活性化状態(ここでは、ハイレベル)である。この充電信号UP0に応答して、充電電流Iup(100%)が正の出力電流Ioutとして遅延制御回路40に供給される。
【0026】
次に、時刻t2〜t3の間において、遅延クロックCK(1),CK(n)の遅延時間差が小さくなり、遅延クロックCK(1),CK(n)の位相状態が過渡応答状態からロック近傍状態に遷移する。
【0027】
次に、時刻t3〜t4の期間では、有効期間信号PWが活性化状態である期間中に遅延クロックCK(1)の遷移エッジが発生するので、ロック近傍状態検出信号SWは非活性化状態から活性化状態に遷移する。このロック近傍状態検出信号SWの活性化に応答して、充電電流Iupの電流量が減少する(例えば、充電電流Iupの電流量が100%から50%になる)。
【0028】
図6のように、時刻t5〜t6の期間では、有効期間信号PWが活性化状態である期間中に遅延クロックCK(1)の遷移エッジが発生するので、ロック近傍状態検出信号SWは活性化状態のままである。また、遅延クロックCK(n)の遷移エッジが発生してから遅延クロックCK(1)の遷移エッジが発生するまでの間、放電信号DN0は活性化状態(ここでは、ハイレベル)である。この放電信号DN0に応答して、放電電流Idn(50%)が負の出力電流Ioutとして遅延制御回路40に供給される。
【0029】
次に、時刻t6〜t7の間において、遅延クロックCK(1),CK(n)の遅延時間差が大きくなり、遅延クロックCK(1),CK(n)の位相状態がロック近傍状態から過渡応答状態に遷移する。
【0030】
次に、時刻t7〜t8の期間では、有効期間信号PWが活性化状態である期間よりも後に遅延クロックCK(1)の遷移エッジが発生するので、ロック近傍状態検出信号SWは活性化状態から非活性化状態に遷移する。このロック近傍状態検出信号SWの非活性化に応答して、放電電流Idnの電流量が元に戻る(例えば、放電電流Idnの電流量が50%から100%になる)。
【0031】
このように、充電電流Iupおよび放電電流Idnの電流量は、遅延クロックCK(1),CK(n)の位相状態が過渡応答状態である期間では100%に設定され、遅延クロックCK(1),CK(n)の位相状態がロック近傍状態である期間では50%に設定される。
【0032】
図7は、位相誤差(遅延クロックCK(1),CK(n)の遅延時間差)と単位充放電量(位相比較回路20による1回の位相比較に対するローパスフィルタ41の充放電量)との関係を示す。位相誤差を“φ”、単位充放電量を“Vcp”、過渡応答状態(φ<−Δφ、+Δφ<φ)における位相比較変換利得(位相誤差の変動量に対する単位充放電量の変動量の比:δVcp/δφ)を“K”とすると、ロック近傍状態(−Δφ≦φ≦+Δφ)における位相比較変換利得(δVcp/δφ)は“K/2”になる。なお、Δφは、下の式のように表現できる。
【0033】
Δφ=2π・t(CK(n+m))−t(CK(n−m))/t(CK(n))−t(CK(1))
但し、上の式において、t(CK(1)),t(CK(n−m)),t(CK(n)),t(CK(n+m))は、それぞれ、入力クロックCKinに対する遅延クロックCK(1),CK(n−m),CK(n),CK(n+m)の遅延時間である。
【0034】
以上のように、遅延クロックCK(1),CK(n)の位相状態に応じて出力電流Ioutの電流量を適切に制御することにより、遅延クロックCK(1),CK(n)の位相が互いに一致するまでの時間(ロックイン時間)を短縮しつつ、チャージポンプ回路30の誤差電流に起因するジッタを低減できる。
【0035】
なお、位相比較回路20に供給される第1の基準クロックは、入力クロックCKinであっても良いし、遅延クロックCK(1)ではない別の遅延クロックであっても良い。また、位相比較回路20に供給される第2の基準クロックは、遅延クロックCK(1),CK(2),…,CK(k)のうち第1の基準クロックよりも位相が遅れた遅延クロックであっても良い。
【0036】
また、第2の基準クロックに対する第1の期間規定クロックの位相進み量は、第2の基準クロックに対する第2の期間規定クロックの位相遅れ量とは異なる位相量であっても良い。すなわち、第1および第2の期間規定クロックは、それぞれ、第(n−x)番目の遅延クロック,第(n+y)番目の遅延クロックであっても良い(なお、x≠yである)。
【0037】
〔ロック近傍状態検出部の変形例〕
ロック近傍状態検出部102は、有効期間中における遅延クロックCK(1)の遷移エッジの発生を検出した回数が所定回数以上である場合にロック近傍状態検出信号SWを活性化させるものであっても良い。例えば、図1に示したロック近傍状態検出部102を、図8に示すロック近傍状態検出部102aに置き換えても良い。図8に示したロック近傍状態検出部102aは、フリップフロップ121,122,123と、AND回路124,125とを含む。フリップフロップ121,122,123は、それぞれ、遅延クロックCK(1)に同期して有効期間信号PW,AND回路124の出力,AND回路125の出力を取り込む。AND回路124は、有効期間信号PWとフリップフロップ121の出力(中間信号S121)とを受け、AND回路125は、有効期間信号PWとフリップフロップ123の出力(中間信号S122)とを受ける。フリップフロップ125の出力は、ロック近傍状態検出信号SWとして供給される。
【0038】
図9のように、第1回目の有効期間中に遅延クロックCK(1)の遷移エッジが発生すると中間信号S121が活性化し(時刻t1)、第2回目の有効期間中に遅延クロックCK(1)の遷移エッジが発生すると中間信号S122が活性化する。次に、第3回目の有効期間中に遅延クロックCK(1)の遷移エッジが発生すると、ロック近傍状態検出信号SWが活性化する(時刻t3)。このように、図8のロック近傍状態検出部102aは、有効期間中における遅延クロックCK(1)の遷移エッジの発生を検出した回数が3回数以上である場合にロック近傍状態検出信号SWを活性化させる。なお、この所定回数(ロック近傍状態であるか否かを判定するための回数)は、チャージポンプ回路30の充放電特性やDLL回路の特性などに応じて適宜設定すれば良い。
【0039】
(実施形態2)
図10は、この発明の実施形態2によるDLL回路の構成を示す。このDLL回路は、図1に示した構成に加えて、供給制御回路21をさらに備える。供給制御回路21は、有効期間中のみ位相比較回路20の比較結果を通過させる。例えば、供給制御回路21は、有効期間信号PWと充電信号UP0とを受けて充電信号UP2を出力するAND回路201uと、有効期間信号PWと放電信号DN0とを受けて放電信号DN2を出力するAND回路201dとを含む。チャージポンプ回路30は、供給制御回路21からの充電信号UP2および放電信号DN2に応答して出力電流Ioutを供給する。
【0040】
図11のように、充電信号UP2の活性化期間は、充電信号UP0の活性化期間と有効期間との重複期間に相当する。このように、供給制御回路21によって充電信号UP0の活性化期間が制限されて充電信号UP2としてチャージポンプ回路30に供給される。放電信号DN0,DN2についても同様である。
【0041】
図12のように、過剰応答状態(φ<−Δφ、+Δφ<φ)における位相比較変換利得(δVcp/δφ)は“K・Δφ/δφ”になる。すなわち、遅延クロックCK(1),CK(n)の位相状態が過渡応答状態である場合、単位充放電量Vcpは“−K・Δφ”または“+K・Δφ”になる。
【0042】
以上のように、単位充放電量の変動範囲を制限することにより、遅延クロックCK(1),CK(n)の位相状態が疑似ロック状態(遅延クロックCK(1),CK(n)の遅延時間差が遅延クロックCK(1)の2周期以上でロックされている状態)へ遷移する確率を低減できる。
【0043】
(PLL回路)
図13のように、電流制御回路11は、PLL回路にも適用可能である。図13に示したPLL回路は、図1に示した電圧制御遅延回路10に代えて電圧制御発振回路10aを備えるとともに、分周回路(DIV)50をさらに備える。その他の構成は、図1と同様である。
【0044】
電圧制御発振回路10aは、n個の遅延素子DL,DL,…を含み、それぞれ位相が異なるn個の発振クロックCK(0),CK(1),…,CK(n−1)を生成する。分周回路50は、発振クロックCK(0)を分周して分周クロックCKdivを出力する。位相比較回路20は、入力クロックCKin,分周クロックCKdivをそれぞれ第1および第2の基準クロックとして受ける。
【0045】
有効期間規定部101は、第(n−m)番目の発振クロックCK(n−m),第m番目の発振クロックCK(m)をそれぞれ第1および第2の期間規定クロックとして受ける。ロック近傍状態検出部102は、有効期間中に入力クロックCKinの遷移エッジが発生することを検出する。
【0046】
このPLL回路においても、以上のDLL回路と同様に、ロックイン時間を短縮しつつチャージポンプ回路30の誤差電流に起因するジッタを低減できる。また、図13のPLL回路は、図10に示した供給制御回路21をさらに備えていても良い。すなわち、図10に示した供給制御回路21は、PLL回路にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、この発明によるDLL回路やPLL回路は、ロックイン時間を短縮しつつチャージポンプ回路の誤差電流に起因するジッタを低減できるので、半導体集積回路における同期クロック生成回路等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の実施形態1によるDLL回路の構成例を示す図。
【図2】図1に示した有効期間規定部の構成例を示す図。
【図3】図1に示したロック近傍状態検出部の構成例を示す図。
【図4】図1に示した電流調整部およびチャージポンプ回路の構成例を示す図。
【図5】図1に示したDLL回路による動作について説明するためのタイミングチャート。
【図6】図1に示したDLL回路による動作について説明するためのタイミングチャート。
【図7】図1に示したDLL回路における位相誤差と単位充放電量との関係を示すグラフ。
【図8】ロック近傍状態検出部の変形例について説明するための図。
【図9】図8に示したロック近傍状態検出部の処理について説明するためのタイミングチャート。
【図10】この発明の実施形態2によるDLL回路の構成例を示す図。
【図11】図10に示したDLL回路による動作について説明するためのタイミングチャート。
【図12】図10に示したDLL回路における位相誤差と単位充放電量との関係を関係を示すグラフ。
【図13】図1に示した電流制御回路を備えるPLL回路の構成例を示す図。
【符号の説明】
【0049】
10 電圧制御遅延回路
20 位相比較回路
30 チャージポンプ回路
40 遅延制御回路
41 ローパスフィルタ
42 電圧制御回路
10a 電圧制御発振回路
50 分周回路
11 電流制御回路
101 有効期間規定部
102 ロック近傍状態検出部
103 電流調整部
21 供給制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦続接続された複数の遅延素子を含み、入力クロックを順次遅延させてそれぞれ位相が異なる複数の遅延クロックを生成する遅延回路と、
前記複数の遅延クロックのいずれか1つまたは前記入力クロックを第1の基準クロックとして受けるとともに前記複数の遅延クロックのうち前記第1の基準クロックよりも位相が遅れた遅延クロックを第2の基準クロックとして受け、前記第1および第2の基準クロックの位相を比較する位相比較回路と、
前記位相比較回路による比較結果に応じて正または負の出力電流を供給するチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ回路からの出力電流に応じて前記遅延回路に含まれる複数の遅延素子のそれぞれの遅延時間を制御する遅延制御回路と、
前記第2の基準クロックの遷移エッジを含む有効期間中に前記第1の基準クロックの遷移エッジが発生することを検出し、その検出結果に応じて前記チャージポンプ回路の出力電流の電流量を制御する電流制御回路とを備える
ことを特徴とするDLL回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記チャージポンプ回路は、通常モードと、前記通常モードよりも前記出力電流の電流量が少ない電流制限モードとを有し、
前記電流制御回路は、前記有効期間中における第1の基準クロックの遷移エッジの発生を検出した回数が所定回数以上である場合には前記チャージポンプ回路を前記電流制限モードに設定し、前記有効期間中に前記第1の基準クロックの遷移エッジが発生しない場合には前記チャージポンプ回路を前記通常モードに設定する
ことを特徴とするDLL回路。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記電流制御回路は、
前記複数の遅延クロックのうち前記第2の基準クロックよりも位相が所定量だけ進んだ遅延クロックを第1の期間規定クロックとして受けるとともに前記複数の遅延クロックのうち前記第2の基準クロックよりも位相が所定量だけ遅れた遅延クロックを第2の期間規定クロックとして受け、前記第1および第2の期間規定クロックのそれぞれの遷移エッジ間を前記有効期間として規定する有効期間規定部と、
前記第1の基準クロックを受け、前記有効期間規定部によって規定された有効期間中に前記第1の基準クロックの遷移エッジが発生することを検出するロック近傍状態検出部と、
前記ロック近傍状態検出部による検出結果に応じて前記チャージポンプ回路の出力電流の電流量を調整する電流調整部とを含む
ことを特徴とするDLL回路。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
前記有効期間中のみ前記位相比較回路による比較結果を通過させる供給制御回路をさらに備える
ことを特徴とするDLL回路。
【請求項5】
リング状に接続された複数の遅延素子を含み、それぞれ位相が異なる複数の発振クロックを生成する発振回路と、
入力クロックを第1の基準クロックとして受けるとともに前記複数の発振クロックのうちいずれか1つを第2の基準クロックとして受け、前記第1および第2の基準クロックの位相を比較する位相比較回路と、
前記位相比較回路による比較結果に応じて正または負の出力電流を供給するチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ回路からの出力電流に応じて前記発振回路に含まれる複数の遅延素子のそれぞれの遅延時間を制御する遅延制御回路と、
前記第2の基準クロックの遷移エッジを含む有効期間中に前記第1の基準クロックの遷移エッジが発生することを検出し、その検出結果に応じて前記チャージポンプ回路の出力電流の電流量を制御する電流制御回路とを備える
ことを特徴とするPLL回路。
【請求項6】
請求項5において、
前記チャージポンプ回路は、通常モードと、前記通常モードよりも前記出力電流の電流量が少ない電流制限モードとを有し、
前記電流制御回路は、前記有効期間中における第1の基準クロックの遷移エッジの発生を検出した回数が所定回数以上である場合には前記チャージポンプ回路を前記電流制限モードに設定し、前記有効期間中に前記第1の基準クロックの遷移エッジが発生しない場合には前記チャージポンプ回路を前記通常モードに設定する
ことを特徴とするPLL回路。
【請求項7】
請求項5または6において、
前記電流制御回路は、
前記複数の発振クロックのうち前記第2の基準クロックよりも位相が所定量だけ進んだ発振クロックを第1の期間規定クロックとして受けるとともに前記複数の発振クロックのうち前記第2の基準クロックよりも位相が所定量だけ遅れた発振クロックを第2の期間規定クロックとして受け、前記第1および第2の期間規定クロックのそれぞれの遷移エッジ間を前記有効期間として規定する有効期間規定部と、
前記第1の基準クロックを受け、前記有効期間規定部によって規定された有効期間中に前記第1の基準クロックの遷移エッジが発生することを検出するロック近傍状態検出部と、
前記ロック近傍状態検出部による検出結果に応じて前記チャージポンプ回路の出力電流の電流量を調整する電流調整部とを含む
ことを特徴とするPLL回路。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項において、
前記有効期間中のみ前記位相比較回路による比較結果を通過させる供給制御回路をさらに備える
ことを特徴とするPLL回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−119061(P2010−119061A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292673(P2008−292673)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】