説明

DPFシステム

【課題】従来に比べて利便性を改善したDPFシステムを提供する。
【解決手段】ディーゼルエンジン10の排気管20に接続され排気ガス中のPMを捕集するCSF29とそのCSF29の上流側に設けられたDOC28とからなるDPF25と、DOC28の上流側と下流側にそれぞれ設けられた温度センサ30a,30bとを備え、CSF29のPM堆積量が一定量を超えたときに、上流側温度センサ30aにより検出される温度を第1の閾値以上、且つ、下流側温度センサ30bにより検出される温度を第2の閾値以上にしてDPF再生を行うDPFシステムにおいて、上流側温度センサ30aの故障を検知したときに、第2の閾値を上向き変更するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排気ガス中のPM(Particulate Matter)を捕集するDPFシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガス中のPMをDPF(Diesel Particulate Filter)、例えば、その一種であるDPD(Diesel Particulate Defuser)と呼ばれるフィルタで捕集して、外部へ排出されるPMの量を低減するDPFシステムが開発されている。
【0003】
DPFを用いたDPFシステムは、他の排ガス浄化システム(例えば、SCR(Selective Catalytic Reduction)システム)と同様に、排気管の途中に設けられ、排気ガスを浄化して大気中に排出するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このDPFシステムとして、DPFの上流側にDOC(Diesel Oxidation Catalyst)を設けた連続再生型のDPFシステムがある。このDPFシステムは、NO2によるPMの酸化が、排気ガス中のO2によってPMを酸化することで低温で行われることを利用したもので、上流側のDOCにより、排気ガス中のNOを酸化してNO2にして、このNO2で、下流側のDPFに捕集されたPMを酸化してCO2とし、PMを除去してDPF再生を行っている。
【0005】
ところが、このようなDPFシステムにおいても、排気ガス温度が低い場合には、DOCの温度が低下して活性化しないため、酸化反応が促進されず、PMを酸化してDPF再生を行うことができないため、PMのDPFへの堆積が継続されてフィルタの目詰まりが進行してしまう。
【0006】
このフィルタの目詰まりに対して、PM堆積量が所定の堆積量を超えたときに排気ガス温度を目標温度(例えば、500℃〜600℃程度)まで強制的に昇温させて、DPFに捕集されているPMを強制的に燃焼除去することが行われる。
【0007】
PM堆積量は、DPF前後の排気の差圧を計測する差圧センサの出力値に比例するため、差圧センサの出力値が所定の差圧を超えたときに、ECU(Engine Control Unit)はフィルタの目詰まりを検出し、ECUが自動的に(自動再生)、或いは手動(手動再生)で行う場合には、キャビン内に設けられたDPF警告灯(DPFランプ)を点灯し、車両の停止後、ドライバーが再生実行スイッチ(手動再生実行スイッチ)を押すことで、DPF再生を開始する。
【0008】
なお、フィルタの目詰まりの検出は、DPF前後の排気の差圧以外にも、走行距離に基づいてなされる場合もある。この場合は、走行距離が所定の距離を超えたときに、上述したように自動或いは手動でDPF再生を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4175281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、DPF再生においては、排気ガス温度を目標温度まで強制的に昇温させる。この排気ガス温度の測定は、DOCの上流側と下流側にそれぞれ設けられた排気ガス温度センサにより行っている。
【0011】
そのため、排気ガス温度センサが故障すると排気ガス温度の測定ができなくなり、排気ガス温度が異常昇温されて各種装置、機器が故障する虞もあるので、このような場合にはDPF再生を禁止するようにしている。
【0012】
ところで、DOCの上流側の排気ガス温度センサは、主にエンジンアウトの排気ガス温度を測定し、DPF再生中に急にエンジンの負荷が抜けたりして排気ガス温度が下がる場合を監視しており、排気ガス温度を目標温度とするためになされるフィードバック制御は、通常は、DOCの下流側に設けられた排気ガス温度センサによって行われる。そのため、DOCの上流側の排気ガス温度センサが故障しても実際はDPF再生を行うことが可能である。
【0013】
つまり、DOCの下流側の排気ガス温度センサが故障した場合には、DPF再生を行えなくなるので速やかに修理を行う必要があるが、DOCの上流側の排気ガス温度センサが故障した場合には、修理を行う必要はあるものの緊急性はない。
【0014】
しかしながら、従来のDPFシステムでは、DOCの上流側と下流側のいずれかの排気ガス温度センサの故障を検知したときには、一律にDPF再生を禁止していたので、ドライバーにとっては利便性が悪いという問題があった。
【0015】
そこで、本発明の目的は、従来に比べて利便性を改善したDPFシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、ディーゼルエンジンの排気管に接続され排気ガス中のPMを捕集するフィルタとそのフィルタの上流側に設けられた酸化触媒とからなるディーゼルパティキュレートフィルタと、前記酸化触媒の上流側と下流側とにそれぞれ設けられた温度センサとを備え、前記フィルタのPM堆積量が一定量を超えたときに、前記酸化触媒の上流側温度センサにより検出される温度を第1の閾値以上、且つ、前記酸化触媒の下流側温度センサにより検出される温度を第2の閾値以上にしてディーゼルパティキュレートフィルタの再生を行うDPFシステムにおいて、前記酸化触媒の上流側温度センサの故障を検知したときに、第2の閾値を上向き変更するDPFシステムである。
【0017】
前記酸化触媒の下流側温度センサの故障を検知したときに、ディーゼルパティキュレートフィルタの再生を禁止するようにすると良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来に比べて利便性を改善したDPFシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】DPFシステムの構成を示すシステム図である。
【図2】DPFシステムの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0021】
図1は、DPFシステムを示すシステム図である。
【0022】
図1において、ディーゼルエンジン10の吸気マニホールド11と排気マニホールド12は、過給機(ターボチャージャー)13のコンプレッサ14とタービン15にそれぞれ連結され、上流側吸気管16aからの空気がコンプレッサ14で昇圧され、下流側吸気管16bのインタークーラ17を通って冷却されて吸気スロットル(吸気スロットルバルブ)18を介して吸気マニホールド11からディーゼルエンジン10に供給され、ディーゼルエンジン10からの排気ガスは、タービン15を駆動した後、排気管20に排気される。
【0023】
上流側吸気管16aには、吸気量を測定するMAF(Mass Air Flow)センサ19が設けられ、そのMAFセンサ19で、吸気スロットル18の開度が制御されて吸気量が調整される。また、排気マニホールド12と吸気マニホールド11には排気ガスの一部をディーゼルエンジン10の吸気系に戻してNOXを低減するためのEGR管21が接続され、そのEGR管21にEGRクーラ22とEGRバルブ23とが接続される。
【0024】
排気管20には、排気ブレーキバルブ24、DPF25、排気スロットル(排気スロットルバルブ)26、サイレンサー27が接続される。DPF25は、未燃焼燃料を酸化する活性触媒からなるDOC(酸化触媒)28と排ガス中のPMを捕集するフィルタ(CSF(Catalyzed Soot Filter))29からなる。
【0025】
排気ブレーキバルブ24の上流側には、DPF再生時に排気ガス温度を昇温させるべく、排気管20に燃料を噴射(排気管噴射)する排気管インジェクタ38が設けられる。この排気管インジェクタ38に図示しない燃料タンクからの燃料を供給する燃料供給ライン39には、燃料中に混入、発生する異物や水分を除去する燃料フィルタ40が接続され、その下流側に排気管インジェクタ38の燃料圧力を測定する燃料圧力センサ41が設けられる。
【0026】
また、図1には示していないが、排気スロットル26とサイレンサー27間にSCR装置が接続される。SCR装置は、排気ガス中のNOXをNH3と反応させてN2とH2Oにして浄化する装置である。
【0027】
DOC28の前後には、排気管噴射の可否、排気管噴射量、及びDPF再生の完了の判断に用いられる排気ガス温度センサ(上流側温度センサ30aと下流側温度センサ30b)が設けられる。また、CSF29のPM堆積量を推定するために、CSF29前後の排気の差圧を計測する差圧センサ31が設けられる。
【0028】
これらセンサの出力値は、ディーゼルエンジン10の運転の全般的な制御を行うと共に、DPF再生も行うECU32に入力され、このECU32から出力される制御信号により、ディーゼルエンジン10の燃料インジェクタ33や、排気スロットル26、排気ブレーキバルブ24、EGRバルブ23、排気管インジェクタ38等が制御される。
【0029】
ECU32には、ディーゼルエンジン10の運転のために、アクセルポジションセンサからのアクセル開度、回転数センサからのエンジン回転数、車速センサ34からの車速等の情報の他、エンジン冷却水の温度等の情報も入力される。
【0030】
また、ECU32には、キャビン内に設けられた手動再生用のDPF警告灯35a、自動再生用のDPF警告灯35bや、ドライバーが手動再生を実行するための再生実行スイッチ36、ディーゼルエンジン10に何らかの不具合が発生したときに、それをユーザに知らせるべく点灯するチェックエンジンランプ37等が接続され、制御される。
【0031】
このシステムにおいては、空気は、上流側吸気管16aのMAFセンサ19を通過し、過給機13のコンプレッサ14で昇圧され、下流側吸気管16bのインタークーラ17を通って冷却されて吸気スロットル18を介して吸気マニホールド11からディーゼルエンジン10のシリンダ内に入る。
【0032】
一方、シリンダ内で発生した排気ガスは、排気マニホールド12を通過してタービン15を駆動し、DPF25とSCR装置からなる排ガス浄化システムで浄化され、サイレンサー27で消音されて大気中に排出される。排気ガスの一部は、EGRクーラ22で冷却され、その量をEGRバルブ23で調整されて、吸気マニホールド11に循環される。
【0033】
排気ガス中にはPMが含まれており、このPMはDPF25によって捕集される。DPF25では、常時は、DOC28で排気ガス中のNOを酸化してNO2にして、このNO2で、下流側のCSF29に捕集されたPMを酸化してCO2とし、CSF29からPMを除去する、所謂DPF再生を連続的に行っている。
【0034】
ところが、排気ガス温度が低い場合には、DOC28の温度が低下して活性化しないため、酸化反応が促進されず、PMを酸化してDPF再生を行うことができないため、PMのCSF29への堆積が継続されてフィルタの目詰まりが進行してしまう。
【0035】
このフィルタの目詰まりに対して、PM堆積量が所定の堆積量を超えたときに排気ガス温度を強制的に昇温させて、CSF29に捕集されているPMを強制的に燃焼除去することが行われる。
【0036】
PM堆積量は、差圧センサ31の出力値に比例するため、差圧センサ31の出力値が所定の差圧(差圧閾値)を超えたときに、ECU32はフィルタの目詰まりを検出し、ECU32が自動的にDPF再生を行うか、或いは、DPF警告灯35aを点灯し、ドライバーに再生実行スイッチ36を押下することによるDPF再生を促す。このように差圧により、開始時期を判断するDPF再生が差圧型再生である。以下、ECU32が自動的に行うDPF再生を自動再生、ドライバーが手動で行う再生を手動再生と言う。
【0037】
なお、DPF再生の開始時期は、差圧センサ31の出力値以外にも、車速センサ34で計測された車速を基に計算される走行距離が所定の距離(距離閾値)を超えたかどうかで判断しても良い。このように走行距離により、開始時期を判断するDPF再生が距離型再生である。
【0038】
手動再生と自動再生の例を説明する。
【0039】
手動再生は、車両を停止させた状態で行われる。車両の停止後、ユーザが再生実行スイッチ36を押下して手動再生が開始されると、ECU32によって燃料インジェクタ33、ディーゼルエンジン10、排気ブレーキバルブ24又は排気スロットル26、EGRバルブ23、吸気スロットル18が制御され、排気ガス温度がDOC28の活性化する温度まで昇温される。
【0040】
より具体的には、ECU32は、燃料インジェクタ33を制御してマルチ噴射を開始し、ディーゼルエンジン10を制御してエンジン回転数を上昇させ、排気ブレーキバルブ24又は排気スロットル26を急速昇温のため閉じ、EGRバルブ23を燃料の還流防止のため閉じ、吸気スロットル18を制御して吸気量を絞り、温度低下を抑制すると共に負荷を上げる。
【0041】
なお、DOC28の活性化の判断は、上流側温度センサ30aの検出値が予め設定した上流側閾値(第1の閾値)以上となると共に、下流側温度センサ30bの検出値が予め設定した下流側閾値(第2の閾値)以上となったときに行う。つまり、上流側温度センサ30aと下流側温度センサ30bの両方の検出値からDOC28の活性化を判断する。
【0042】
DOC28が活性化したら、マルチ噴射と共に排気管インジェクタ38を制御して排気管噴射を開始し、排気ブレーキバルブ24を閉じていた場合には、排気ブレーキバルブ24を開くと共に排気スロットル26を閉じ、排気スロットル26を閉じていた場合には、排気ブレーキバルブ24を開くと共に排気スロットル26を閉じている状態を引き続き維持し、排気ガス温度を目標温度まで更に昇温する。
【0043】
このとき、目標温度は、例えば、500℃と600℃の2段階に設定され、各目標温度が所定時間維持されるようにECU32によって制御される。目標温度を多段階とするのは、PMが燃焼することによって生じる熱により、CSF29が溶けてしまうのを防止するためである。つまり、PMが多く残っているDPF再生初期においては、PMの燃焼により多くの熱が発生するため、目標温度を低めに設定し、PMが燃焼して少なくなったDPF再生後期においては、目標温度を高く設定し、効率よくPMが燃焼するようにしている。
【0044】
しかる後、ECU32は、燃料インジェクタ33を制御して通常噴射に復帰させ、排気管インジェクタ38を閉じ、ディーゼルエンジン10を制御してエンジン回転数を通常のアイドル状態に戻し、排気スロットル26を開き、EGRバルブ23を通常(開)に戻し、吸気スロットル18を通常(開)に戻す。これにより、排気ガス温度が低下し、手動再生が終了する。
【0045】
この手動再生では、車両を停止させた状態でDPF再生を行うため、排気ガス温度を安定に保つことができ、効率よく確実にPMを燃焼させることができる一方で、手動再生中は車両を停止して所定の時間待機しておく必要がある。
【0046】
次に、自動再生を説明する。
【0047】
自動再生は、車両の走行中に行われる。ECU32によって自動再生が開始されると、ECU32が燃料インジェクタ33、ディーゼルエンジン10、EGRバルブ23、吸気スロットル18を制御し、排気ガス温度をDOC28の活性化する温度まで昇温する。自動再生では、手動再生と異なり走行中のため、排気ブレーキバルブ24を閉じることができないが、信号待ち等の車両停止時には排気ブレーキバルブ24を閉じて、排圧を上昇させ、排気ガス温度を昇温、保温するようにする。
【0048】
DOC28が活性化(DOC28の活性化の判断基準は上述と同じ)したら、マルチ噴射と共に排気管インジェクタ38を制御して排気管噴射を開始し、排気ガス温度を目標温度まで更に昇温する。走行中のため、排気スロットル26も閉じることができないので、排気スロットル26は常時開にされる。
【0049】
その後、排気ガス温度が目標温度まで上昇、所定時間維持されたら、ECU32は、燃料インジェクタ33を制御して通常噴射に復帰させ、排気管インジェクタ38を閉じ、ディーゼルエンジン10を制御してエンジン回転数を通常に戻し、EGRバルブ23を通常(開)に戻し、吸気スロットル18を通常(開)に戻す。これにより、排気ガス温度が低下し、自動再生が終了する。
【0050】
この自動再生では、車両が走行している状態でDPF再生を行うため、手動再生に比べて利便性に優れる。その反面、自動再生では、排気ガス温度が安定せず、或いは、なかなか上昇しない傾向にある。
【0051】
このように、自動再生と手動再生は、それぞれメリットとデメリットがあり、状況に応じて適宜選択して使い分けることが好ましいと言える。自動再生と手動再生の選択は、例えば、DPF再生終了から次のDPF再生開始までの走行距離である再生インターバルに基づいてなされる。
【0052】
再生インターバルが短くなる、即ち走行距離が短いのにも拘わらずPMがDPFに閾値を超えて堆積する理由としては、先のDPF再生でPMが十分に除去されなかった可能性が考えられる。そのため、再生インターバルが手動再生閾値未満のときは、安定してDPF再生を行える手動再生を選択し、確実にPMを除去するようにしている。
【0053】
これらのDPF再生においては、排気ガス温度を目標温度まで強制的に昇温させるが、この排気ガス温度の測定は、DOC28の上流側と下流側にそれぞれ設けられた排気ガス温度センサ(上流側温度センサ30aと下流側温度センサ30b)により行っている。
【0054】
つまり、CSF29のPM堆積量が一定量を超えたときに、上流側温度センサ30aにより検出される温度を第1の閾値以上、且つ、下流側温度センサ30bにより検出される温度を第2の閾値以上にしてディーゼルパティキュレートフィルタの再生を行っている。
【0055】
そのため、上流側温度センサ30a又は下流側温度センサ30bが故障すると排気ガス温度の測定ができなくなり、排気ガス温度が異常昇温されて各種装置、機器が故障する虞もあるので、このような場合にはDPF再生を禁止するようにしている。
【0056】
即ち、DPFシステムでは、CSF29のPM堆積量が一定量を超えたとき、DPF再生を行うに際し、上流側温度センサ30a、下流側温度センサ30bのいずれかの故障を検知したとき、DPF再生を禁止するようにしている。なお、上流側温度センサ30aと下流側温度センサ30bの故障は、ECU32にて検知される。
【0057】
ところで、上流側温度センサ30aは、主にエンジンアウトの排気ガス温度を測定し、DPF再生中に急にエンジンの負荷が抜けたりして排気ガス温度が下がる場合を監視しており、排気ガス温度を目標温度とするためになされるフィードバック制御は、通常は、下流側温度センサ30bによって行われる。そのため、上流側温度センサ30aが故障しても実際はDPF再生を行うことが可能である。
【0058】
つまり、下流側温度センサ30bが故障した場合には、DPF再生を行えなくなるので速やかに修理を行う必要があるが、上流側温度センサ30aが故障した場合には、修理を行う必要はあるものの緊急性はない。
【0059】
しかしながら、従来のDPFシステムでは、DOC28の上流側と下流側のいずれかの温度センサ30a,30bの故障を検知したときには、一律にDPF再生を禁止していたので、ドライバーにとっては利便性が悪いという問題があった。
【0060】
この問題を解決したのが本実施の形態に係るDPFシステムであり、本DPFシステムでは、下流側温度センサ30bが正常なとき、上流側温度センサ30aが故障しているか否かに関わらず、DPF再生を許可するようにした。
【0061】
より具体的には、下流側温度センサ30bが正常なときで、且つ、上流側温度センサ30aの故障を検知したとき、DOC28の活性化を検知するための下流側温度センサ30bの温度閾値(下流側閾値)を上向き変更すると共にDPF再生を許可するようにした。下流側閾値を上向き変更する理由を以下に述べる。
【0062】
DOC28の下流側の排気ガス温度が高ければ、当然、DOC28の上流側の排気ガス温度も高くなっていると考えられる。
【0063】
ところが、DOC28の上流側と下流側では温度差があるため、DOC28の下流側の排気ガス温度がDPF再生に十分な温度となっていたとしても、DOC28の上流側の排気ガス温度が十分に上昇しているとは断定できない。そのため、単純にDOC28の下流側の排気ガス温度のみを用いてDPF再生を行うと、DOC28が十分に活性化していなかったりしてDPF再生が期待通りに行われない場合がある。
【0064】
これを回避するためには、DOC28の上流側の排気ガス温度がDPF再生に十分な温度になっているかどうかを検出する必要がある。この検出は、上流側温度センサ30aが正常なときは、その検出値が上流側閾値以上であるか否かを見ることで直接検出することができるが、故障している場合にはそれができないので、本DPFシステムでは、上流側温度センサ30aの故障時にはその検出値を推定するようにした。
【0065】
上流側温度センサ30aの検出値の推定は、上流側温度センサ30aの検出値が上流側閾値以上となるときの下流側温度センサ30bの検出値を実験等により予め求めておき、上流側温度センサ30aの故障時に、下流側閾値をその求めた値まで上向き変更し、下流側温度センサ30bの検出値が変更後の下流側閾値以上となったときに、上流側温度センサ30aの検出値が上流側閾値以上となったことを推定する。
【0066】
つまり、本DPFシステムでは、上流側温度センサ30aの検出値が上流側閾値以上となったことを推定するために、下流側閾値を上向き変更するようにした。
【0067】
このDPFシステムの動作を図2のフローチャートにまとめて示す。
【0068】
DPFシステムは、以下のステップを繰り返すようにされる。
【0069】
図2に示すように、DPFシステムは、DPF再生を行うに際し、DOC28前後、即ち上流側温度センサ30aと下流側温度センサ30bが故障しているか否かを判定する(ステップ201)。
【0070】
ステップ201にて、上流側温度センサ30aと下流側温度センサ30bが故障していないと判定されたときは、DPF再生を開始する(ステップ202)。
【0071】
一方、ステップ201にて、上流側温度センサ30aと下流側温度センサ30bが故障していると判定されたときは、故障した排気ガス温度センサがDOC前、即ちDOC28の上流側のものであるか否かを判定する(ステップ203)。
【0072】
ステップ203にて、下流側温度センサ30bが故障していると判定されたときは、DPF再生を禁止する(ステップ204)。
【0073】
これに対し、ステップ203にて、上流側温度センサ30aが故障していると判定されたときは、下流側閾値を予め求めておいた実験値に上向き変更する(ステップ205)と共に、DPF再生を開始する(ステップ202)。
【0074】
以上説明したDPFシステムによれば、下流側温度センサ30bが正常なとき、上流側温度センサ30aが故障しているか否かに関わらず、DPF再生を許可するようにしているため、緊急性が無いのにも拘わらずユーザに速やかな修理を促すような事象を減らすことができ、従来に比べてユーザの利便性を改善することができる。
【0075】
また、下流側温度センサ30bが正常なときで、且つ、上流側温度センサ30aの故障を検知したとき、DOC28の活性化を検知するための下流側温度センサ30bの下流側閾値を上向き変更すると共にDPF再生を許可するようにしているため、上流側温度センサ30aが故障したときでも、DOC28の活性化を正確に判断することができ、期待した通りのDPF再生を行うことができる。
【符号の説明】
【0076】
10 ディーゼルエンジン
20 排気管
25 DPF
28 DOC
29 CSF
30a 上流側温度センサ
30b 下流側温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの排気管に接続され排気ガス中のPMを捕集するフィルタとそのフィルタの上流側に設けられた酸化触媒とからなるディーゼルパティキュレートフィルタと、前記酸化触媒の上流側と下流側とにそれぞれ設けられた温度センサとを備え、前記フィルタのPM堆積量が一定量を超えたときに、前記酸化触媒の上流側温度センサにより検出される温度を第1の閾値以上、且つ、前記酸化触媒の下流側温度センサにより検出される温度を第2の閾値以上にしてディーゼルパティキュレートフィルタの再生を行うDPFシステムにおいて、
前記酸化触媒の上流側温度センサの故障を検知したときに、第2の閾値を上向き変更することを特徴とするDPFシステム。
【請求項2】
前記酸化触媒の下流側温度センサの故障を検知したときに、ディーゼルパティキュレートフィルタの再生を禁止するようにした請求項1に記載のDPFシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−256845(P2011−256845A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134513(P2010−134513)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】