説明

EGF受容体を標的とするモノクローナル抗体175ならびにその誘導体および用途

本発明は、EGF受容体、特に、増幅された又は過剰発現された上皮増殖因子受容体(EGFR)およびEGFRのde2−7 EGFRトランケート化体に結合する抗体、特に抗体175およびそのフラグメントまたはそれに由来する抗体に関する。これらの抗体は癌の診断および治療において有用である。抗体175の可変領域重鎖または軽鎖配列を有する組換え又はハイブリッド抗体も提供する。本発明の抗体は、化学療法剤もしくは抗癌剤および/または他の抗体もしくはそのフラグメントと組合せて、療法において使用されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGF受容体、特に、増幅された又は過剰発現された上皮増殖因子受容体(EGFR)およびEGFRのde2−7 EGFRトランケート化体に結合する抗体、特に抗体175およびそのフラグメントに関する。これらの抗体は癌の診断および治療において有用である。本発明の抗体は、化学療法剤もしくは抗癌剤および/または他の抗体もしくはそのフラグメントと組合せて、療法において使用されうる。
【背景技術】
【0002】
増殖性疾患、特に癌の、化学療法手段による治療は、しばしば、ヒトまたは動物の身体における標的増殖性細胞と他の正常細胞との間の相違を利用することに基づいている。例えば、多数の化学物質は、DNA複製および細胞分裂の過程が妨げられるよう、迅速に複製しているDNAにより取り込まれるよう設計される。もう1つのアプローチは、発生したヒト組織において通常は発現されない腫瘍細胞または他の異常細胞の表面上の抗原、例えば腫瘍抗原または胚性抗原を特定することである。そのような抗原は、該抗原を遮断または中和しうる抗体のような結合性タンパク質を使用して標的化されうる。また、抗体およびそのフラグメントを含む該結合性タンパク質は、腫瘍部位において毒性物質を直接的または間接的に活性化しうる毒性物質または他の物質を運搬しうる。
【0003】
EGFRは多数の型の上皮腫瘍において過剰発現されるので腫瘍標的化抗体療法に対する魅力的な標的である。(Voldborg,B.R.ら(1997)Ann Oncol 8:1197−206;den Eynde,B.およびScott,A.M.(1998)Tumor Antigens.In:P.J.DelvesおよびI.M.Roitt(編),Encyclopedia of Immunology,Second Edition edition,pp.2424−31.London:Academic Press)。さらに、EGFRの発現は、胃、結腸、膀胱、乳房、前立腺、子宮内膜、腎臓および脳(例えば、神経膠腫)を含む多数の腫瘍型における予後不良に関連している。したがって、いくつかの実施中の臨床評価で、多数のEGFR抗体が文献報告されている(Baselga,J.ら,(2000)J Clin Oncol.18:904;Faillot,T.ら,(1996)Neurosurgery 39:478−83;Seymour,L.(1999)Cancer Treat Rev 25:301−12)。頭部および頸部癌、扁平上皮肺癌、脳神経膠腫ならびに悪性星状細胞腫を有する患者においてEGFR mAbを使用した研究からの結果は励みになるものであった。ほとんどのEGFR抗体の抗腫瘍活性は、リガンド結合をそれらが遮断しうることにより増強される(Sturgis,E.M.ら,(1994)Otolaryngol Head Neck Surg 111:633−43;Goldstein,N.I.ら,(1995)Clin Cancer Res 1:1311−8)。そのような抗体は、細胞増殖のモジュレーションおよび抗体依存性免疫機能(例えば、補体活性化)の両方によりそれらの効力をもたらしうる。しかし、これらの抗体の使用は、EGFRの高い内因性レベルを有する器官、例えば肝臓および皮膚における取り込みにより制限されうる(Baselga,J.ら,(2000)J Clin Oncol.18:904;Faillot,T.ら,(1996)Neurosurgery 39:478−83)。
【0004】
EGFR遺伝子のアンプリコン(すなわち、EGFR遺伝子の複数のコピー)を含有する腫瘍のかなりの割合は、de2−7 EGFR、ΔEGFRまたはΔ2−7(これらの用語は本明細書においては互換的に用いられる)(Olapade−Olaopa,E.O.ら,(2000)Br J Cancer 82:186−94)として公知の該受容体のトランケート化体(Wikstrand,C.J.ら,(1998)J Neurovirol 4:148−58)をも共発現する。de2−7 EGFRにおいて見られる再構成は、エキソン2−7伸長する801ヌクレオチドを欠くインフレーム成熟mRNAを与える(Wong,A.J.ら,(1992)Proc Natl Acad Sci USA 89:2965−9;Yamazaki,H.ら,(1990)Jpn J Cancer Res 81:773−9;Yamazaki,H.ら,(1998) Mol Cell Biol 8:1816−20;Sugawa,N.,ら(1990)Proc Natl Acad Sci USA 87:8602−6)。対応EGFRタンパク質は細胞外ドメインの残基6−273を含む267アミノ酸の欠失および融合連結部における新たなグリシン残基を有する(Sugawa,N.ら,(1990)Proc Natl Acad Sci USA 87:8602−6)。この欠失は、グリシン残基の挿入と一緒になって、欠失境界に、特有の連結ペプチドを与える。de2−7 EGFRは、神経膠腫、乳房、肺、卵巣および前立腺を含む多数の腫瘍型において報告されている(Wikstrand,C.J.ら,(1997)Cancer Res.57:4130−40;Olapade−Olaopa,E.O.ら,(2000)Br J Cancer 82:186−94;Wikstrand,C.J.ら,(1995)Cancer Res 55:3140−8;Garcia de Palazzo,I.E.ら,(1993)Cancer Res 53:3217−20)。このトランケート化受容体はリガンドに結合しないが、それは低い構成的活性を有し、ヌードマウスにおいて腫瘍異種移植片として増殖する神経膠腫細胞に対して有意な増殖上の利点をもたらし(Nishikawa,R.ら,(1994)Proc Natl Acad Sci USA 91:7727−31,1994)、NIH3T3細胞およびMCF−7細胞を形質転換しうる(Batra,S.K.ら,(1995)Cell Growth Differ 6:1251−9)。神経膠腫細胞においてde2−7 EGFRにより利用される細胞メカニズムは完全には明らかにされていないが、アポトーシスの軽減および増殖の若干の増強を含むことが報告されている(Nagane,M.ら,(1996)Cancer Res 56:5079−86)。
【0005】
このトランケート化受容体の発現は腫瘍細胞に限定されるため、それは抗体療法のための高度に特異的な標的に相当する。したがって、多数の研究所は、de2−7 EGFRの特有のペプチドに特異的なポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方の作製を報告している(Wikstrand,C.J.ら,(1998)J Neurovirol 4:148−58;Humphrey,P.A.ら,(1990)Proc Natl Acad Sci USA 87:4207−11;Okamoto, S.ら,(1996)Br J Cancer 73:1366−72;Hills,D.ら,(1995)Int J Cancer 63:537−43)。特有のde2−7ペプチドでの免疫化の後に単離された一連のマウスmAbは全て、該トランケート化受容体に対する選択性および特異性を示し、ヌードマウスにおいて成長したde2−7 EGFR陽性異種移植片を標的化した(Wikstrand,C.J.ら,(1995)Cancer Res 55:3140−8;Reist,C.J.ら,(1997)Cancer Res 57:1510−5;Reist,C.J.ら,(1995)Cancer Res 55:4375−82)。
【0006】
しかし、de2−7 EGFR抗体の、1つの潜在的欠点は、EGFR遺伝子の増幅を示す腫瘍の一部だけがde2−7 EGFRをも発現することである。そのために、de2−7 EGFR特異的抗体はEGFR陽性腫瘍の一部のみにおいて有用であると予想されるであろう。それ故に、EGFR抗体の活性の現存する証拠は励みになるものではあるが、前記で示した適用可能性および効力の範囲に対する認められる制限は相変わらずである。したがって、広範な腫瘍で効力を示す抗体および同様の物質を得ることが望ましく、本発明が向けられているのは、その目的の達成である。また、正常組織を、および増幅、過剰発現または突然変異の非存在下のEGFRを標的化しない抗体が特に有用であろう。1つのそのような抗体であるモノクローナル抗体mAb806がWO02092771およびWO05081854に既に記載されている。追加的なそのような抗体が必要とされており、望ましいであろう。
【0007】
本明細書における参考文献の引用は、それが本発明の先行技術であると自認するものと解釈されるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第02/092771号
【特許文献2】国際公開第05/081854号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Voldborg,B.R.ら(1997)Ann Oncol 8:1197−206
【非特許文献2】den Eynde,B.およびScott,A.M.(1998)Tumor Antigens.In:P.J.DelvesおよびI.M.Roitt(編),Encyclopedia of Immunology,Second Edition edition,pp.2424−31.London:Academic Press
【非特許文献3】Baselga,J.ら,(2000)J Clin Oncol.18:904
【非特許文献4】Faillot,T.ら,(1996)Neurosurgery 39:478−83
【非特許文献5】Seymour,L.(1999)Cancer Treat Rev 25:301−12
【非特許文献6】Sturgis,E.M.ら,(1994)Otolaryngol Head Neck Surg 111:633−43
【非特許文献7】Goldstein,N.I.ら,(1995)Clin Cancer Res 1:1311−8
【非特許文献8】Olapade−Olaopa,E.O.ら,(2000)Br J Cancer 82:186−94
【非特許文献9】Wikstrand,C.J.ら,(1998)J Neurovirol 4:148−58
【非特許文献10】Wong,A.J.ら,(1992)Proc Natl Acad Sci USA 89:2965−9
【非特許文献11】Yamazaki,H.ら,(1990)Jpn J Cancer Res 81:773−9
【非特許文献12】Yamazaki,H.ら,(1998) Mol Cell Biol 8:1816−20
【非特許文献13】Sugawa,N.ら,(1990)Proc Natl Acad Sci USA 87:8602−6
【非特許文献14】Wikstrand,C.J.ら,(1997)Cancer Res.57:4130−40
【非特許文献15】Wikstrand,C.J.ら,(1995)Cancer Res 55:3140−8
【非特許文献16】Garcia de Palazzo,I.E.ら,(1993)Cancer Res 53:3217−20
【非特許文献17】Nishikawa,R.ら,(1994)Proc Natl Acad Sci USA 91:7727−31,1994
【非特許文献18】Batra,S.K.ら,(1995)Cell Growth Differ 6:1251−9
【非特許文献19】Nagane,M.ら,(1996)Cancer Res 56:5079−86
【非特許文献20】Humphrey,P.A.ら,(1990)Proc Natl Acad Sci USA 87:4207−11
【非特許文献21】Okamoto, S.ら,(1996)Br J Cancer 73:1366−72
【非特許文献22】Hills,D.ら,(1995)Int J Cancer 63:537−43
【非特許文献23】Reist,C.J.ら,(1997)Cancer Res 57:1510−5
【非特許文献24】Reist,C.J.ら,(1995)Cancer Res 55:4375−82
【発明の概要】
【0010】
発明の概括
本発明の抗体である抗体175およびそのフラグメントまたはそれに由来する単量体、組換え体もしくはハイブリッド抗体は、腫瘍形成性、過剰増殖性または異常細胞において見出され正常または野生型細胞においては検出不可能なEGFRエピトープを認識する。本発明の抗体は、本明細書に記載されている抗体mAb 175により更に例示される。
【0011】
本発明は、既に記載されているモノクローナル抗体(mAb)806(WO02092771およびWO05081854に記載されている)と同じEGF受容体エピトープを標的とする抗体を記載する。mAb 175の抗原結合のための最も重要なアミノ酸である相補性決定領域(CDR)は該806抗体と高度に相同性であり、少数のアミノ酸相違を伴うに過ぎない。
【0012】
抗体のその標的抗原への結合は、その重鎖および軽鎖の相補性決定領域(CDR)によりもたらされ、3つのCDR領域、すなわち、CDR1、CDR2およびCDR3が存在する。したがって、mAb 175の重鎖または軽鎖(好ましくはその両方)のCDR領域に基づく抗体は、インビボ療法を含む診断および治療用途のための有用な抗体となるであろう。特定されたmAb 175抗体のCDRに基づく抗体は、増幅されたEGFRを有する腫瘍を、そのde2−7 EGFRの状態には無関係に標的化するのに有用であろう。mAb 175は正常野生型受容体には有意には結合しないため、現在検討中であるEGFR抗体の制限である、正常組織における有意な取り込みは生じないであろう。
【0013】
EGF受容体を標的とするモノクローナル抗体175の配列は決定されており、該抗体のCDR領域は、図1に記載されているアミノ酸配列を有する。軽鎖および重鎖のそれぞれのCDRは本明細書中に記載されている。Ab175軽鎖CDRはCDR1(配列番号1)、CDR2(配列番号2)およびCDR3(配列番号3)に対応する。Ab175重鎖CDRはCDR1(配列番号4)、CDR2(配列番号5)およびCDR3(配列番号6)に対応する。
【0014】
抗体 806と同様に、本発明の175抗体も、増幅された野生型EGFRおよびde2−7 EGFRを認識するが、de2−7 EGFR突然変異の特有の連結ペプチド(連結ペプチドLEEKKGNYVVTDH(配列番号13))とは異なるエピトープに結合する。MAb 175はA431細胞の表面に結合し、これはEGFR遺伝子の増幅体を有するが、de2−7 EGFRを発現しない。重要なことに、mAb 175は、mAb 806と同様に、あるレベルの内因性野生型(wt)EGFRを発現するがEGFRが異常には発現されず増幅もされない肝臓および皮膚のような正常組織には有意には結合しない。
【0015】
mAb 175は、エピトープ結合、免疫組織化学的染色などに関してmAb 806に非常に類似した特性を有するが、de2−7 EGF受容体を発現するヒト神経膠腫異種移植片の処理においてmAb 806より高い効力を示す。
【0016】
1つの態様においては、本発明は、抗原に結合しうる抗体であって、配列番号1〜3に記載されているものを含むCDR1、CDR2および/またはCDR3を含むAb175の軽鎖のCDRにおいて記載されているのと実質的に同じアミノ酸配列を含むポリペプチド結合性ドメインを含む抗体を提供する。もう1つの態様においては、本発明は、抗原に結合しうる抗体であって、配列番号4〜6に記載されているものを含むCDR1、CDR2および/またはCDR3を含むAb175の重鎖のCDRにおいて記載されているのと実質的に同じアミノ酸配列を含むポリペプチド結合性ドメインを含む抗体を提供する。したがって、本発明は、組換え、ヒト化、キメラ、表面修飾(veneered)または他のそのような抗体、あるいは抗体ペプチド、例えば、Ab175の重鎖および/または軽鎖のCDRを含むドメインペプチドを含む。そのような抗体は、軽鎖に関しては配列番号1〜3、および重鎖に関しては配列番号4〜6に記載されている配列を含みうる。好ましい実施形態においては、該結合性ドメインはヒト抗体フレームワークにより含有される。
【0017】
他の態様においては、本発明は、前記のとおりの抗体をコードする配列を含む単離された核酸、および該結合メンバーの発現を引き起こす条件下で該核酸を発現させ、該結合メンバーを回収することを含む、本発明の抗体の製造方法を提供する。
【0018】
さらに、本発明のもう1つの態様は、EGFRに結合する、好ましくはそれへのリガンド結合を抑制する抗体のような追加的な抗体を伴う、そのような抗体の組成物である。そのような組成物は、好ましくは投与がし易くなるよう製剤化された、「ワンポット(one pot)」カクテル、キットなどでありうる。
【0019】
本発明の抗体またはそのフラグメントは、ヒトまたは動物の身体の治療または診断方法、例えば、本発明の抗体の有効量を患者に投与することを含む、ヒト患者における腫瘍の治療方法において使用されうる。
【0020】
本発明はまた、本発明の抗体をコードする組換えDNA分子もしくはクローン化遺伝子またはそれらの縮重変異体、好ましくは、図1(配列番号4〜6)に示す抗体VH CDR 1、2および/または3ドメインをコードする核酸分子、特に組換えDNA分子またはクローン化遺伝子に関する。もう1つの実施形態においては、本発明はまた、本発明の抗体をコードする組換えDNA分子もしくはクローン化遺伝子またはそれらの縮重変異体、好ましくは、図1(配列番号1〜3)に示す抗体VL CDR 1、2および/または3ドメインをコードする核酸分子、特に組換えDNA分子またはクローン化遺伝子に関する。
【0021】
本発明のもう1つの実施形態においては、本明細書に記載されている配列をコードする組換えDNA分子またはクローン化遺伝子の完全DNA配列は、適当な宿主内に導入されうる発現制御配列に機能的に連結されうる。したがって、本発明は、該抗体の本VHおよび/またはVL CDRまたはその一部をコードするDNA配列、より詳しくは、前記および図1および配列番号1、2、3、4、5および/または6に記載されているVHおよび/またはVL CDRをコードするDNA配列を含むクローン化遺伝子または組換えDNA分子で形質転換された単細胞宿主にまで拡張される。
【0022】
本発明は、本質的には、本明細書に例示されているとおり公知組換え技術を含む、抗体およびその活性フラグメントの製造のための幾つかの手段を含み、したがって、本発明は、その範囲内に、そのような合成またはキメラ抗体調製物を含むと意図される。本明細書に開示されている核酸およびアミノ酸配列の単離は、そのような組換え技術により本発明の抗体の再生を促進し、したがって、本発明は、組換えDNA技術により宿主系内での発現のために製造された発現ベクター、および得られた形質転換宿主にまで拡張される。
【0023】
本発明は、薬物または他の実体、例えば、抗体に結合することにより抗体活性をモジュレーション、抑制または増強しうる抗イディオタイプ抗体のような抗体を提供する。そのような抗イディオタイプ抗体は、mAb175のような抗体もしくはそのエピトープに特異的に結合する又はその活性を増強する薬物の開発において有用であろう。
【0024】
本発明の診断用途は、腫瘍もしくは細胞サンプルを特徴づけするための又は腫瘍もしくは癌に関してスクリーニングするためのアッセイ(インビトロおよびインビボ診断アッセイを含む)における本発明の抗体の用途にまで拡張される。イムノアッセイにおいては、対照量の該抗体などを調製し、酵素、特異的結合パートナーおよび/または放射性元素で標識し、ついで細胞サンプル内に導入することが可能である。該標識物質またはその結合パートナーが該サンプル内の部位と反応する機会を得た後、生じた物質を、付着している標識の性質によって様々となりうる公知技術により検査することが可能である。
【0025】
本発明の抗体は、検出可能または機能的な標識を含有しうる。該特異的結合メンバーは、放射能標識、例えば同位体H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、121I、124I、125I、131I、111In、211At、198Au、67Cu、225Ac、213Bi、99Tcおよび186Reを含有しうる。放射能標識を使用する場合、該抗体を特定し定量するために、公知の現在利用可能な計数方法が用いられうる。標識が酵素である場合には、検出は、当技術分野で公知の現在利用されている比色、分光光度、蛍光分光光度、電流測定または気体定量技術のいずれかにより達成されうる。
【0026】
放射能標識抗体およびそのフラグメントは、インビトロ診断技術およびインビボラジオイメージング技術において有用である。本発明のもう1つの態様においては、放射能標識抗体およびそのフラグメント、特にラジオイムノコンジュゲートは、放射線免疫療法において、特に、癌治療のための放射能標識抗体として有用である。さらにもう1つの態様においては、放射能標識抗体およびそのフラグメントは、それが癌細胞、前癌細胞、腫瘍細胞および過剰増殖細胞の存在および/または位置をそのような細胞の除去のための手術の前、途中または後で特定し示しうる放射免疫支援外科技術において有用である。
【0027】
本発明の抗体およびフラグメントが他の分子または物質にコンジュゲート化または結合されている本発明のイムノコンジュゲートまたは抗体融合タンパク質は更に、化学的切除用物質、毒素、イムノモジュレーター(免疫調節物質)、サイトカイン、細胞毒性物質、化学療法剤または薬物にコンジュゲート化された結合メンバー(これらに限定されるものではない)を含む。
【0028】
本発明は、例えば増幅されたEGFRまたはde2−7 EGFRの存在の度合の定量分析のための試験キットの形態で調製されうるアッセイ系を含む。該系または試験キットは、本明細書に記載されている放射能および/または酵素技術、該抗体への標識のカップリングの1つにより調製された標識成分、ならびに1以上の追加的免疫化学的試薬(それらの少なくとも1つは、決定すべき遊離もしくは固定化成分またはそれらの結合パートナーである)を含みうる。
【0029】
もう1つの実施形態においては、本発明は、該抗体またはその活性フラグメントの活性に基づく、あるいは同じ活性を有すると決定された物質または他の薬物に基づく或る治療方法に関する。第1の治療方法は、頭部および頸部、乳房、前立腺ならびに神経膠腫(これらに限定されるものではない)を含む癌の予防または治療に関連している。
【0030】
特に、本発明の抗体、および特定の実施形態においては、本明細書中の図1および配列番号1〜6に示されているCDRドメイン領域配列を有する175抗体、またはそれらの活性フラグメント、ならびにそれらに由来するキメラ(二重特異性)または合成抗体は、例えば癌を治療するための療法に適した投与のための適当なビヒクル、担体または希釈剤を含む医薬組成物として製造されうる。そのような医薬組成物は、当技術分野で公知の方法(例えば、ペジル化(pegylation))により該抗体またはフラグメントの半減期をモジュレーションする方法をも含みうる。そのような医薬組成物は更に、追加的な抗体または治療用物質を含みうる。
【0031】
したがって、本発明の組成物は、治療すべき状態に応じて、単独で、または他の治療、治療用物質もしくは因子と組合せて同時または連続的に投与されうる。また、本発明は、本明細書に記載されている抗体またはそのフラグメントおよび他の物質または治療用物質(例えば、抗癌物質もしくは治療用物質、抗EGFR物質もしくは抗体、または免疫モジュレーター)を含む組成物を想定しており、該組成物を含む。より一般的には、これらの抗癌物質はチロシンキナーゼインヒビターまたはリン酸化カスケードインヒビター、翻訳後モジュレーター、細胞増殖または分裂インヒビター(例えば、抗有糸分裂物質)、PDGFRインヒビターまたはシグナル伝達インヒビターでありうる。他の治療または療法は、適当な用量の鎮痛薬、例えば非ステロイド性抗炎症薬(例えばアスピリン、パラセタモール、イブプロフェンまたはケトプロフェン)またはオピエート、例えばモルヒネ、または制吐薬の投与を含みうる。したがって、これらの物質は抗EGFR特異的物質、例えばAG1478であることが可能であり、あるいはより一般的な抗癌および抗腫瘍物質(その非限定的な具体例には、ドキソルビシン、カルボプラチンおよびシスプラチンが含まれる)であることが可能である。また、該組成物は、免疫応答を及び癌細胞または腫瘍の減少または除去を刺激する免疫モジュレーター、例えばインターロイキン、腫瘍壊死因子(TNF)または他の増殖因子、サイトカインもしくはホルモン、例えばデキサメタゾンと共に投与されうる。該組成物は、抗EGFR抗体mAb806、抗体528、225、SC−03、108(ATCC HB9764)(米国特許第6,217,866号)、14E1(米国特許第5,942,602号)、DH8.3、L8A4,Y10、HuMAX−EGFRr(Genmab/Medarex)、ICR62およびABX−EGF(Abgenix)(これらに限定されるものではない)を含む他の抗EGFR抗体と共に投与されることも可能であり、該抗EGFR抗体との組合せを含むことも可能である。
【0032】
本発明はまた、他の分子または物質と共有結合または会合した抗体およびそのフラグメントを含む。これらの他の分子または物質には、異なる認識特性を有する分子(抗体または抗体フラグメントを含む)、毒素、リガンドおよび化学療法剤(これらに限定されるものではない)が含まれる。
【0033】
他の目的および利点は、後記の例示的図面および添付の特許請求の範囲に関して説明されている以下の詳細な説明の精査から当業者に明らかとなろう。
【0034】
詳細な説明
本発明においては、当技術分野における技量の範囲内の通常の分子生物学、微生物学および組換えDNA技術が用いられうる。そのような技術は文献中に十分に説明されている。例えば、Sambrookら,“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”(1989);“Current Protocols in Molecular Biology”Volumes I−III[Ausubel,R.M.編,(1994)];“Cell Biology:A Laboratory Handbook”Volumes I−III[J.E.Celis編(1994))];“Current Protocols in Immunology”Volumes I−III[Coligan,J.E.編,(1994)];“Oligonucleotide Synthesis”(MJ.Gait編 1984);“Nucleic Acid Hybridization”[B.D.Hames & SJ.Higgins編(1985)];“Transcription And Translation”[B.D.Hames & SJ.Higgins編,(1984)];“Animal Cell Culture”[R.I.Freshney編,(1986)];“Immobilized Cells And Enzymes”[IRL Press,(1986)];B.Perbal,“A Practical Guide To Molecular Cloning”(1984)を参照されたい。
【0035】
したがって、本明細書中で用いられる以下の用語は、以下に記載する定義を有するものとする。
【0036】
A.用語
「異常発現」なる語は、その種々の文法形態において、増強された発現または翻訳、タンパク質のプロモーターまたは調節体のモジュレーション、タンパク質に関する遺伝子の増幅、あるいは増加した半減期または安定性を含むいずれかの手段により引き起こされる、組織におけるタンパク質の、いずれかの増強もしくは改変された発現または過剰発現(例えば、タンパク質の量における増加)により、非過剰発現状態と比較して大量のタンパク質が存在し又は同時に検出されうることを意味し、それを含みうる。異常発現は、タンパク質の発現の増強またはタンパク質のレベルもしくは量の増加(配列の改変、欠失もしくは挿入またはフォールディングの改変による突然変異タンパク質または変異体と同様に改変タンパク質が発現される場合を含む)により細胞内のタンパク質発現または翻訳後修飾装置に負荷がかかっている又は損なわれている、いずれかの場合または改変を含み、それらを想定している。
【0037】
「異常発現」なる語は、本明細書においては、異常な(通常は増加した)量/レベルのタンパク質が、その異常な量またはレベルの発生原因には無関係に存在する状態を含むよう、特に選ばれていることを理解することが重要である。したがって、タンパク質の異常な量は遺伝子増幅の非存在下の該タンパク質の過剰発現から生じることがあり、これは、例えば、癌を有する被験者の頭部および頸部から採取された多数の細胞/組織サンプルにおいて見出され、一方、遺伝子増幅に起因する異常タンパク質レベルを示すサンプルもある。
【0038】
この後者に関連して、本発明を例示するために本明細書中に示されている本発明者らの或る研究は、EFGRの増幅から生じる異常タンパク質レベルを或るサンプルが示す、サンプルの分析を含む。したがって、これは、増幅に関連した実験的知見の本明細書における提示に相当し、EGFRの異常レベルの説明における「増幅/増幅された」などの語の使用に相当する。しかし、本発明の結合性メンバーによる臨床的介入が想定される環境または状況を明確に定めるのは、該タンパク質の異常な量またはレベルの観察であり、この理由により、「異常発現」なる語は、EFGRレベルにおける対応する異常を引き起こす原因となる環境をより広く包含するものである、と本明細書はみなしている。
【0039】
したがって、「過剰発現」および「増幅」なる語は、それらの種々の文法形態において、異なる技術的意味を有すると理解されるが、本発明において、異常なEFGRタンパク質レベルが存在する状態をそれらが表す場合には、それらは互いに同等であるとみなされるべきである。したがって、「異常発現」なる語は、その範囲内に「過剰発現」および「増幅」を包含すると考えられるため、本明細書で用いられる場合には全ての用語が互いに同等であるとみなされうるよう、「異常発現」なる語が採用されている。
【0040】
「抗体」なる語は、天然の又は部分的もしくは完全に合成的に製造された免疫グロブリンを示す。この用語は、抗体結合ドメインである又はそれに相同な結合ドメインを有する任意のポリペプチドまたはタンパク質をも含む。CDRグラフティング抗体もこの用語に含まれる。
【0041】
抗体は多数の方法で修飾されうるため、「抗体」なる語は、要求される特異性を有する結合ドメインを有する任意の結合メンバーまたは物質を含むと解釈されるべきである。したがって、この用語は、天然物または全体的もしくは部分的に合成物である免疫グロブリン結合ドメインを含む任意のポリペプチドを含む、抗体フラグメント、抗体の誘導体、機能的等価体およびホモログを含む。したがって、別のポリペプチドに融合された免疫グロブリン結合ドメインまたは等価体を含むキメラ分子が含まれる。キメラ抗体のクローニングおよび発現はEP−A−0120694およびEP−A−0125023ならびに米国特許第4,816,397号および第4,816,567号に記載されている。
【0042】
全抗体のフラグメントは結合性抗原の機能を果たしうることが示されている。結合性フラグメントの具体例としては、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインよりなるFabフラグメント、(ii)VHおよびCH1ドメインよりなるFdフラグメント、(iii)単一抗体のVLおよびVHドメインよりなるFvフラグメント、(iv)VHドメインよりなるdAdフラグメント(Ward,E.S.ら,Nature 341,544−546(1989))、(v)単離されたCDR領域、(vi)2つの連結Fabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)2フラグメント、(vii)VHドメインおよびVLドメインがペプチドリンカー(これは、抗原結合部位を形成するようそれらの2つのドメインが会合することを可能にする)により連結された一本鎖Fv分子(scFv)(Birdら,Science,242,423−426,1988;Hustonら,PNAS USA,85,5879−5883,1988)、(viii)多価抗体フラグメント(scFv二量体、三量体および/または四量体(PowerおよびHudson,J Immunol.Methods 242:193−204 9(2000)))、(ix)二重特異性一本鎖Fv二量体(PCT/US92/09965)、ならびに(x)遺伝子融合により構築された多価または多重特異性フラグメントである「ジアボディ(diabody)」(WO94/13804;P.Holligerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90 6444−6448,(1993))が挙げられる。
【0043】
「抗体結合部位」は、抗原に特異的に結合する、軽鎖または重および軽鎖可変および超可変領域から構成される抗体分子の構造的部分である。
【0044】
「抗体分子」なる語は、本明細書中で用いられるその種々の文法形態において、無傷免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の両方を含む。
【0045】
典型的な抗体分子としては、無傷免疫グロブリン分子、実質的に無傷な免疫グロブリン分子、およびパラトープを含有する免疫グロブリン分子の部分(Fab、Fab’、F(ab’)およびF(v)として当技術分野で公知の部分が含まれ、それらの部分は、本明細書に記載されている治療方法における使用に好ましい)が挙げられる。
【0046】
また、抗体は二重特異性でありうる。この場合、該抗体の一方の結合ドメインは本発明の特異的結合メンバーであり、他方の結合ドメインは、例えばエフェクター機能をリクルートするためなどの、異なる特異性を有する。本発明の二重特異性抗体は、該抗体の一方の結合ドメインが本発明の特異的結合メンバー(そのフラグメントを含む)であり、他方の結合ドメインが、異なる抗体またはそのフラグメント、例えば異なる抗EGFR抗体、例えば以下のものである場合を含む:抗体528(米国特許第4,943,533号)、キメラおよびヒト化225抗体(米国特許第4,943,533号およびWO/9640210)、抗de2−7抗体、例えばDH8.3(Hills,D.ら(1995)Int.J.Cancer 63(4):537−543)、抗体L8A4およびY10(Reist,CJら(1995)Cancer Res.55(19):4375−4382;Foulon CFら(2000)Cancer Res.60(16):4453−4460)、ICR62(Modjtahedi Hら(1993)Cell Biophys.Jan−Jun;22(l−3):129−46;Modjtahediら(2002)P.A.A.C.R.55(14):3140−3148)、またはWikstrandら(Wikstrand C.ら(1995)Cancer Res.55(14):3140−3148)の抗体。他方の結合ドメインは、神経または神経膠腫細胞特異的抗体の場合のような特定の細胞型を認識または標的化する抗体でありうる。本発明の二重特異性抗体においては、本発明の抗体の一方の結合ドメインは、例えば以下のものとして、特定の細胞受容体を認識し及び/又は特定の様態で細胞をモジュレーションする他の結合ドメインまたは分子と組合されうる:免疫モジュレーター(例えば、インターロイキン)、増殖モジュレーターまたはサイトカイン[例えば、腫瘍壊死因子(TNF)、特に、2002年2月13日付け出願のU.S.S.N.60/355,838(その全体を本明細書に組み入れることとする)に示されているTNF二重特異性形態]または毒素(例えば、リシン)または抗有糸分裂もしくはアポトーシス分子もしくは因子。
【0047】
抗体分子のFabおよびF(ab’)部分は、よく知られた方法により、実質的に無傷の抗体分子上のそれぞれパパインおよびペプシンのタンパク質分解反応により製造されうる。例えば、Theofilopolousらの米国特許第4,342,566号を参照されたい。Fab’抗体分子部分もよく知られており、F(ab’)部分から製造され、ついで、メルカプトエタノールの場合と同様の2つの重鎖部分を連結するジスルフィド結合で還元され、ついで、生じたタンパク質メルカプタンの、例えばヨードアセトアミドのような試薬でのアルキル化に付される。無傷抗体分子を含有する抗体が本発明において好ましい。
【0048】
「モノクローナル抗体」なる語は、その種々の文法形態において、特定の抗原と免疫反応しうる、唯一の種の抗体結合部位を有する抗体を意味する。したがって、モノクローナル抗体は、典型的には、それが免疫反応するいずれかの抗原に対する単一の結合アフィニティを示す。モノクローナル抗体は、異なる抗原にそれぞれが免疫特異的である複数の抗体結合部位を有する抗体分子、例えば、二重特異性(キメラ)モノクローナル抗体をも含みうる。
【0049】
「抗原結合ドメイン」なる語は、抗原の一部または全部に特異的に結合しそれに相補的である領域を含む、抗体の部分を示す。抗原が大きい場合、抗体は抗原のみの特定の部分(この部分はエピトープと称される)に結合しうる。抗原結合ドメインは1以上の抗体可変ドメインにより提供されうる。好ましくは、抗原結合ドメインは抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含む。
【0050】
「翻訳後修飾」は、翻訳が完了した後およびリボソームから遊離された後または新生ポリペプチド上で翻訳と同時にタンパク質が受ける、共有結合修飾などの修飾のいずれか1つ又は組合せを含みうる。翻訳後修飾は、リン酸化、ミリスチル化、ユビキチン化、グリコシル化、補酵素結合、メチル化およびアセチル化(これらに限定されるものではない)を含む。翻訳後修飾は、タンパク質の活性、その細胞内もしくは細胞外目的地、その安定性または半減期および/またはリガンド、受容体もしくは他のタンパク質によるその認識をモジュレーションし又はそれらに影響を及ぼしうる。翻訳後修飾は、オルガネラにおいて、核もしくは細胞質において、または細胞外で生じうる。
【0051】
「特異的」なる語は、特異的結合ペアのメンバーの1つがその特異的結合パートナー以外の分子へのいずれの有意な結合をも示さない状況を表すために用いられうる。該用語は、例えば、多数の抗原により担持される特定のエピトープに抗原結合ドメインが特異的である場合にも適用可能であり、この場合、該抗原結合ドメインを担持する特異的結合メンバーは、該エピトープを担持する種々の抗原に結合しうるであろう。
【0052】
「含む」なる語は、一般に、包含するという意味、すなわち、1以上の特徴または成分の存在を許容するという意味で用いられる。
【0053】
「実質的になる」なる語は、より大きな産物に共有結合していない一定数の残基の産物、特にペプチド配列に関して用いられる。しかし、前記の本発明のペプチドの場合、該ペプチドのNまたはC末端への若干の修飾、例えば、保護基などを付加するための該末端の化学修飾、例えば、C末端のアミド化が想定されうる、と当業者は理解するであろう。
【0054】
「単離(された)」なる語は、本発明の抗体、またはそのような抗体もしくはそのCDRをコードする核酸が本発明に合致したものとなる状態を意味する。抗体および核酸は、それらに天然で付随している物質、例えば、それらの天然環境でそれらに付随して見出される、あるいはインビトロまたはインビボで行われる組換えDNA技術によりそれらが製造される環境(例えば、細胞培養)でそれらに付随して見出される他のポリペプチドまたは核酸を含有しない又は実質的に含有しないであろう。抗体および核酸は希釈剤または補助剤と共に製剤化されうるが、その場合でも尚、それらは実際の目的においては単離されており、例えば、該メンバーは、イムノアッセイにおける使用のためにマイクロタイタープレートをコートするために使用される場合には、通常、ゼラチンまたは他の担体と混合され、あるいは診断または療法において使用される場合には、医薬上許容される担体または希釈剤と混合されるであろう。抗体は天然で又は異種真核細胞の系によりグリコシル化されることが可能であり、あるいはそれは(例えば、原核細胞内での発現により産生される場合には)非グリコシル化形態でありうる。
【0055】
また、本明細書中で用いる「グリコシル化」および「グリコシル化された」なる語は、オリゴ糖の付加による、糖タンパク質と称される、タンパク質の翻訳後修飾を含み、それを包含する。オリゴ糖は糖タンパク質のグリコシル化部位において付加される(特に、N結合オリゴ糖およびO結合オリゴ糖を含む)。N結合オリゴ糖はAsn残基に付加され、特に、該Asn残基は配列N−X−S/T内に存在し、ここで、XはProでもAspでもなく、それは、糖タンパク質において見出される最も一般的なものである。N結合糖タンパク質の生合成においては、まず、高マンノース型オリゴ糖(一般には、ドリコール、N−アセチルグルコサミン、マンノースおよびグルコースから構成される)が小胞体(ER)において形成される。ついで該高マンノース型糖タンパク質はERからゴルジへ輸送され、ここで、該オリゴ糖の更なる加工および修飾が生じる。O結合オリゴ糖はSerまたはThr残基のヒドロキシル基に付加される。O結合オリゴ糖においては、まず、ERにおいてN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼによりN−アセチルグルコサミンがSerまたはThr残基に移される。ついで該タンパク質はゴルジに移動し、ここで、更なる修飾および鎖伸長が生じる。O結合修飾は、それらのSerまたはThr部位におけるOG1cNAc単糖のみの単純な付加により生じることが可能であり、それらは、異なる条件下、グリコシル化ではなくリン酸化されることも可能である。
【0056】
本明細書中で用いる「pg」はピコグラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「ug」または「μg」またはマイクログラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「ul」または「μl」はマイクロリットルを意味し、「ml」はミリリットルを意味し、「l」はリットルを意味する。
【0057】
「抗体175」、「175抗体」、「mAb175」なる語および具体的には挙げられていないいずれかの異形語は本明細書においては互換的に用いられることが可能であり、本出願および特許請求の範囲の全体において用いられる場合、単一または複数のタンパク質を含むタンパク質性物質を意味し、本明細書に記載されており図1に示されているアミノ酸配列データを有し配列番号1、2、3、4、5および/または6に記載のアミノ酸配列ならびに本明細書および特許請求の範囲に記載の活性のプロファイル有する又は含むタンパク質に拡張される。したがって、実質的に同等な又は改変された活性を示すタンパク質が同様に想定される。これらの修飾は、例えば、部位特異的突然変異誘発により得られる修飾のように意図的なものであることが可能であり、あるいは例えば該複合体またはその明示サブユニットの生産体である宿主における突然変異により得られる修飾のように偶発的なものであることが可能である。また、「抗体175」、「175抗体」および「mAb175」は、本明細書中に具体的に挙げられているタンパク質ならびに全ての実質的に相同な類似体および対立遺伝子変異体をそれらの範囲内に含むと意図される。
【0058】
本明細書に記載されているアミノ酸残基は「L」異性体であることが好ましい。しかし、免疫グロブリン結合の所望の機能特性が該ポリペプチドにより保有される限り、いずれかのL−アミノ酸残基の代わりに「D」異性体が用いられうる。NHは、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基を意味する。COOHは、ポリペプチドのカルボキシ末端に存在する遊離カルボキシ基を意味する。標準的なポリペプチド命名法(J.Biol.Chem.,243:3552−59(1969))に従ったアミノ酸残基の略語を以下の対応表に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
全てのアミノ酸残基配列は、本明細書においては、左右の配向がアミノ末端からカルボキシ末端への通常の方向である式により表されていることに注目すべきである。さらに、アミノ酸残基配列の始め及び終わりにおけるダッシュは1以上のアミノ酸残基の別配列へのペプチド結合を示すことに注目すべきである。前記の表は、本明細書中で代わる代わる現れうる3文字の記号および1文字の記号を相関させるために記載されている。
【0061】
「レプリコン」は、インビボでDNA複製の自律的単位として機能する(すなわち、それ自身の制御下で複製されうる)任意の遺伝的要素(例えば、プラスミド、染色体、ウイルス)である。
【0062】
「ベクター」は、別のDNAセグメントが結合して該結合セグメントの複製を引き起こしうる例えばプラスミド、ファージまたはコスミドのようなレプリコンである。
【0063】
「DNA分子」は、一本鎖形態または二重らせん形態のデオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミンまたはシトシン)の重合形態を意味する。この用語は該分子の一次および二次構造を意味し、それをいずれかの特定の三次形態に限定するものではない。したがって、この用語は、とりわけ、直鎖状DNA分子(例えば、制限断片)、ウイルス、プラスミドおよび染色体において見出される二本鎖DNAを含む。特定の二本鎖DNA分子の構造の考察においては、配列は、本明細書中では、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAと相同な配列を有する鎖)に沿って5’から3’への方向の配列のみを与える通常の慣例に従い記載されうる。
【0064】
「複製起点」は、DNA合成に関与するDNA配列を意味する。
【0065】
DNA「コード配列」は、適当な調節配列の制御下に配置された場合にインビボで転写されポリペプチドに翻訳される二本鎖DNA配列である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンにより定められる。コード配列には、原核生物配列、真核生物mRNAからのcDNA、真核生物(例えば、哺乳類)DNAからのゲノムDNA配列および更には合成DNA配列(これらに限定されるものではない)が含まれうる。ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列は、通常、コード配列の3’側に位置するであろう。
【0066】
転写および翻訳制御配列は、宿主細胞内でのコード配列の発現をもたらす例えばプロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーターなどのようなDNA調節配列である。
【0067】
「プロモーター配列」は、細胞内でRNAポリメラーゼに結合し下流(3’方向)コード配列の転写を開始させうるDNA調節領域である。本発明を定義する目的においては、プロモーター配列は、その3’末端において、転写開始部位との境界をなし、バックグラウンドを超える検出可能なレベルで転写を開始させるのに必要な最小数の塩基または要素を含むよう上流(5’方向)へと伸長する。プロモーター配列内には、転写開始部位(簡便には、ヌクレアーゼS1でのマッピングにより定められる)、およびRNAポリメラーゼの結合をもたらすタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が見出されるであろう。真核生物プロモーターは、常にというわけではないがしばしば、「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスを含有するであろう。原核生物プロモーターは、−10および−35コンセンサス配列に加えてシャイン・ダルガルノ配列を含有する。
【0068】
「発現制御配列」は、別のDNA配列の転写および翻訳を制御し調節するDNA配列である。コード配列が細胞内で転写および翻訳制御配列の「制御下」にあるのは、RNAポリメラーゼが該コード配列をmRNAに転写し、ついでそれが、該コード配列によりコードされるタンパク質へと翻訳される場合である。
【0069】
コード配列の前には「シグナル配列」が含まれうる。この配列はポリペプチドのN末端側のシグナルペプチドをコードしており、該シグナルペプチドは、該ポリペプチドを細胞表面へと導き該ポリペプチドを培地内に分泌させるよう宿主細胞に連絡し、このシグナルペプチドは、タンパク質が細胞を離れる前に宿主細胞により切断される。シグナル配列は、原核生物および真核生物に固有の種々のタンパク質と結びついていることが認められうる。
【0070】
本発明のプローブに関して本明細書中で用いる「オリゴヌクレオチド」なる語は、2以上、好ましくは3以上のリボヌクレチドから構成される分子と定義される。その厳密なサイズは多数の要因に左右され、そしてこれらは該オリゴヌクレオチドの最終的な機能および用途に左右される。本明細書中で用いる「プライマー」なる語は、核酸鎖に相補的であるプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下、すなわち、ヌクレオチドおよび誘導物質、例えばDNAポリメラーゼの存在下で適当な温度およびpHで配置された場合に合成の開始点として作用しうる、精製された制限消化物の場合のように天然に存在する又は合成的に製造されたオリゴヌクレオチドを意味する。該プライマーは一本鎖または二本鎖であることが可能であり、該誘導物質の存在下で所望の伸長産物の合成を始動させるのに十分な程度に長くなければならない。プライマーの厳密な長さは、温度、プライマー源および該方法の用途を含む多数の要因に左右されるであろう。例えば、診断用途では、標的配列の複雑性に応じて、オリゴヌクレオチドプライマーは、典型的には、15〜25またはそれ以上のヌクレオチドを含有するが、それより少数のヌクレオチドを含有することも可能である。プライマーは、特定の標的DNA配列の、異なる鎖と「実質的に相補的」となるよう選択される。これは、プライマーが、そのそれぞれの鎖にハイブリダイズするのに十分な程度に相補的でなければならないことを意味する。したがって、プライマー配列は鋳型の厳密な配列を表す必要はない。例えば、非相補的ヌクレオチド断片がプライマーの5’末端に結合していることが可能であり、この場合、該プライマー配列の残部が該鎖に相補的である。あるいは、プライマー配列が、該鎖の配列にハイブリダイズして伸長産物の合成のための鋳型を形成するのに十分な、該鎖の配列に対する相補性を有する限り、非相補的塩基またはより長い配列が該プライマー内に介在していることが可能である。
【0071】
本明細書中で用いる「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」なる語は、特異的ヌクレオチド配列において又はその近傍で二本鎖DNAをそれぞれが切断する細菌酵素を意味する。
【0072】
細胞が外因性または異種DNAにより「形質転換」されているのは、そのようなDNAが細胞の内部に導入されている場合である。形質転換DNAは、細胞のゲノムを構成する染色体DNA内に組み込まれる(共有結合される)ことが可能であり、あるいは組み込まれなくてもよい。例えば原核生物、酵母および哺乳類細胞においては、形質転換DNAはエピソーム要素(例えば、プラスミド)上に維持されうる。真核細胞の場合、安定に形質転換された細胞は、形質転換DNAが染色体内に組み込まれていて、それが染色体複製により娘細胞により受け継がれるようなっているものである。
【0073】
この安定性は、該形質転換DNAを含有する娘細胞の集団から構成される細胞系またはクローンを該真核細胞が樹立しうることにより示される。「クローン」は、有糸分裂により単一の細胞または共通の祖先から誘導された細胞の集団である。「細胞系」は、インビトロで多数の世代にわたって安定に増殖しうる初代細胞のクローンである。
【0074】
2つのDNA配列が「実質的に相同」であるのは、そのヌクレオチドの少なくとも約75%(好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90または95%)が該DNA配列の一定の長さにわたって一致する場合である。実質的に相同な配列は、配列データバンクにおいて利用可能な標準的なソフトウェアを使用して該配列を比較することにより、あるいは例えばその特定の系に関して定められるストリンジェントな条件下のサザンブロットハイブリダイゼーション実験において特定されうる。適当なハイブリダイゼーション条件を定めることは当技術分野の技量の範囲内のものである。例えば、Maniatisら,前掲;DNA Cloning,VoIs.I&II,前掲;Nucleic Acid Hybridization,前掲を参照されたい。
【0075】
本発明の抗体をコードしている、例えば、配列番号1、2、3、4、5または6と同じアミノ酸配列を有する又は含む可変領域ドメインを有する抗体をコードしているが配列番号1、2、3、4、5または6に対して縮重関係にあるDNA配列も本発明の範囲内であると理解されるべきである。「縮重」は、特定のアミノ酸を特定するために異なる3文字記号が用いられることを意味する。以下のコドンは、それぞれの特定のアミノ酸をコードするために互換的に用いられうることが、当技術分野でよく知られている。
フェニルアラニン(Phe又はF) UUU又はUUC
ロイシン(Leu又はL) UUA又はUUG又はCUU又はCUC又はCUA又はCUG
イソロイシン(Ile又はI) AUU又はAUC又はAUA
メチオニン(Met又はM) AUG
バリン(Val又はV) GUU又はGUC又はGUA又はGUG
セリン(Ser又はS) UCU又はUCC又はUCA又はUCG又はAGU又はAGC
プロリン(Pro又はP) CCU又はCCC又はCCA又はCCG
トレオニン(Thr又はT) ACU又はACC又はACA又はACG
アラニン(Ala又はA) GCU又はGCG又はGCA又はGCG
チロシン(Tyr又はY) UAU又はUAC
ヒスチジン(His又はH) CAU又はCAC
グルタミン(Gln又はQ) CAA又はCAG
アスパラギン(Asn又はN) AAU又はAAC
リシン(Lys又はK) AAA又はAAG
アスパラギン酸(Asp又はD) GAU又はGAC
グルタミン酸(Glu又はE) GAA又はGAG
システイン(Cys又はC) UGU又はUGC
アルギニン(Arg又はR) CGU又はCGC又はCGA又はCGG又はAGA又はAGG
グリシン(Gly又はG) GGU又はGGC又はGGA又はGGG
トリプトファン(Trp又はW) UGG
終止コドン UAA(オーカー)又はUAG(アンバー)又はUGA(オパール)。
【0076】
前記のコドンはRNA配列に関するものであると理解されるべきである。DNAに関する対応コドンはUの代わりにTを有する。
【0077】
特定のコドンが、異なるアミノ酸をコードするコドンに変化するよう、本明細書に記載されている抗体ドメインをコードする核酸配列において突然変異が施されうる。そのような突然変異は、一般に、可能な最少のヌクレオチド変化を引き起こすことにより施される。この種の置換突然変異は、非保存的に(すなわち、特定のサイズまたは特性を有するアミノ酸のグループに属するアミノ酸から、別のグループに属するアミノ酸へと、コドンを変化させることにより)、または保存的に(すなわち、特定のサイズまたは特性を有するアミノ酸のグループに属するアミノ酸から、同じグループに属するアミノ酸へと、コドンを変化させることにより)、生じるタンパク質におけるアミノ酸を変化させるために施されうる。そのような保存的変化は、一般に、生じるタンパク質の構造および機能における、より少ない変化を招く。非保存的変化は、生じるタンパク質の構造、活性または機能を変化させる可能性がより高い。本発明は、生じるタンパク質の活性も結合特性も有意には変化させない保存的変化を含有する配列を含むとみなされるべきである。
【0078】
以下はアミノ酸の種々のグループの一例である。
【0079】
無極性R基を有するアミノ酸
アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン。
【0080】
非荷電極性R基を有するアミノ酸
グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン。
【0081】
荷電極性R基を有するアミノ酸(pH6.0において負に荷電)
アスパラギン酸、グルタミン酸。
【0082】
塩基性アミノ酸(pH6.0において正に荷電)
リシン、アルギニン、ヒスチジン(pH6.0において)。
【0083】
もう1つのグループは、フェニル基を有するアミノ酸でありうる:フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン。
【0084】
もう1つのグループ分けは分子量(すなわち、R基のサイズ)によるものでありうる。
グリシン 75
アラニン 89
セリン 105
プロリン 115
バリン 117
トレオニン 119
システイン 121
ロイシン 131
イソロイシン 131
アスパラギン 132
アスパラギン酸 133
グルタミン 146
リシン 146
グルタミン酸 147
メチオニン 149
ヒスチジン(pH6.0におけるおの) 155
フェニルアラニン 165
アルギニン 174
チロシン 181
トリプトファン 204。
【0085】
特に好ましい置換は以下のとおりである。
・正電荷が維持されうるよう、ArgからLysへ、およびその逆。
・負電荷が維持されうるよう、AspからGluへ、およびその逆。
・遊離−OHが維持されうるよう、ThrからSerへ。
・遊離NHが維持されうるよう、AsnからGlnへ。
【0086】
また、特に好ましい特性を有するアミノ酸で置換するために、アミノ酸置換が導入されうる。例えば、Cysは別のCysとのジスルフィド架橋の潜在的部位に導入されうる。Hisは、特に「触媒的」な部位として導入されうる(すなわち、Hisは酸または塩基として作用することが可能であり、生化学的触媒における最も一般的なアミノ酸である)。Proは、タンパク質の構造においてβターンを誘導するその特に平面的な構造ゆえに、導入されうる。
【0087】
2つのアミノ酸配列が「実質的に相同」であるのは、該アミノ酸残基の少なくとも約70%(好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90または95%)が同一であるか、または保存的置換を表す場合である。
【0088】
DNA構築物の「異種」領域は、より大きなDNA分子内の特定可能なDNAセグメントであって、そのより大きな分子と共には天然で見出されないものである。したがって、該異種領域が哺乳類遺伝子をコードしている場合、該遺伝子は、通常、起源生物のゲノム内で哺乳類ゲノムDNAに隣接していないDNAに隣接しているであろう。異種コード配列のもう1つの例は、コード配列自体が天然では見いだされない構築物である(例えば、ゲノムコード配列がイントロンを含有するcDNA、または天然遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)。対立遺伝子変異または天然に存在する突然変異事象は、本明細書中に定義されているDNAの異種領域を与えない。
【0089】
「医薬上許容される」なる語は、ヒトに投与された際に典型的にはアレルギーまたは同様の望ましくない反応(例えば、胃の不調、めまいなど)を引き起こさない生理的に許容される分子的実体および組成物を意味する。
【0090】
「治療的有効量」なる語は、本明細書においては、標的細胞塊、癌細胞もしくは腫瘍の群または他の病的特徴の成長または進行または有糸分裂活性における臨床的に有意な変化を少なくとも約30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%妨げる、好ましくは軽減するのに十分な量を意味するものとして用いられる。
【0091】
DNA配列が発現制御配列に「機能的に連結」しているのは、該発現制御配列がそのDNA配列の転写および翻訳を制御し調節する場合である。「機能的連結」なる語は、発現されるべきDNA配列の前に適当な開始シグナル(例えば、ATG)を有し、発現制御配列の制御下の該DNA配列の発現、および該DNA配列によりコードされる所望の産物の産生を可能にする適切なリーディングフレームを維持することを含む。組換えDNA分子内に挿入したい遺伝子が適当な開始シグナルを含有しない場合には、そのような開始シグナルが該遺伝子の前に挿入されうる。
【0092】
「標準的なハイブリダイゼーション条件」なる語は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の両方に関して5×SSCおよび65℃と実質的に同等な塩および温度条件を意味する。しかし、そのような「標準的なハイブリダイゼーション条件」は、バッファー中のナトリウムおよびマグネシウムの濃度、ヌクレオチド配列の長さ及び濃度、ミスマッチの割合、ホルムアミドの割合などを含む個々の条件に左右される、と当業者は認識するであろう。また、「標準的なハイブリダイゼーション条件」の決定において重要なのは、ハイブリダイズする2つの配列がRNA−RNAなのか、またはDNA−DNAなのか、またはRNA−DNAなのかである。そのような標準的なハイブリダイゼーション条件は、よく知られた手法に従い当業者により容易に決定され、ここで、ハイブリダイゼーションは、典型的には、推定される又は決定されたTより10〜20℃低い温度で行われ、所望により、より高いストリンジェンシーの洗浄を伴う。
【0093】
B.詳細な開示
本発明は、腫瘍形成性、過剰増殖性または異常細胞において露出されるEGFRエピトープ(ここで、該エピトープは増強され、現され又は明白であり、正常または野生型細胞においては検出可能でない)、特にEGFRペプチド(287CGADSYEMEEDGVRKC302(配列番号14))を認識する新規抗体175またはそのフラグメント(免疫原性フラグメントを含む)を提供する。特定の非限定的な実施形態においては、該抗体は、単純糖質修飾または初期グリコシル化に際して増強される又は明白であり複合糖質またはグリコシル化の存在下では軽減される又は明白ではないEGFRエピトープを認識する。該抗体またはそのフラグメントは、過剰発現、増幅または腫瘍形成事象の非存在下では、正常または野生型EGFRエピトープを含有する正常または野生型細胞に結合せず、また、該細胞を認識しない。
【0094】
本発明の特定の態様においては、前記のとおり、本発明者らは、増幅された野生型EGFRおよびde2−7 EGFRを特異的に認識するがde2−7 EGFR突然変異の特有の連結ペプチドとは異なるエピトープに結合する新規モノクローナル抗体175を見出した。また、mAb 175は、神経膠腫細胞の細胞表面上で発現される正常野生型EGFRを認識しないが、それは、ポリペプチド態様を有するコンホメーションエピトープを示す、ELISAプレートの表面上に固定化されたEGFRの細胞外ドメインに結合する。重要なことに、mAb 175は、EGFRが過剰発現されず増幅もされない、ほとんどの他の正常組織の場合より高いレベルの内因性wtEGFRを発現する肝臓および皮膚のような正常組織には有意には結合しない。したがって、mAb175は、de2−7 EGFRおよび増幅されたEGFRを認識するが正常野生型EGFRもde2−7 EGFRに特徴的な特有の連結ペプチドも認識しない新規かつ有用な特異性を示す。好ましい態様においては、本発明の抗体175は、図1ならびに配列番号1、2、3、4、5および6に示すVHおよびVL CDRドメインアミノ酸配列を含む。
【0095】
もう1つの態様においては、本発明は、175抗体と競合しうる抗体を提供し、この場合の競合は、175抗体のVHおよびVL配列を有する抗体の少なくとも10%がELISAアッセイにおいてそのような抗体との競合によりde2−7EGFRへの結合から遮断される条件下におけるものである。前記のとおり、本発明においては抗イディオタイプ抗体が想定される。
【0096】
診断および治療用途
本発明の175抗体またはそのフラグメントの特有の特異性は、従前公知のEGFR抗体で見られうる正常組織の取り込みに関連した問題を伴うことなく、多数の腫瘍形成性細胞型および腫瘍型(例えば、頭部および頸部、乳房、肺、暴行または前立腺腫瘍および神経膠腫)を特定、特徴づけ、標的化および治療、軽減または排除するための診断および治療用途を提供する。したがって、本発明の175抗体またはそのフラグメントを使用して、(例えば、突然変異体または変異体EGFRの増幅または発現により)EGFR、特に、異常な翻訳後修飾を示すものを過剰発現する細胞が認識され、単離され、特徴づけられ、標的化され、治療され、または排除されうる。
【0097】
したがって、本発明の抗体は、EGFRの過剰発現、特に増幅および/またはEGFR突然変異、特にde2−7EGFRが存在する腫瘍または細胞を染色または認識することにより、EGFR腫瘍または腫瘍形成性細胞の性質を特異的に特徴づけしうる。さらに、本発明の175抗体は、増幅されたEGFRを含有する腫瘍に対する、およびde2−7 EGFR陽性異種移植片に対する有意なインビボ抗腫瘍活性を示す。本発明のもう1つの態様においては、本発明の抗体175の投与を含む、腫瘍、癌状態、前癌状態および過剰増殖性細胞増殖に関連した又はそれから生じる任意の状態の治療方法を提供する。
【0098】
本発明の抗体は、ヒトまたは動物対象における腫瘍、特に上皮腫瘍の診断および治療の方法において使用されるよう設計される。これらの腫瘍は、神経膠腫、乳房、肺、前立腺、頭部または頸部腫瘍(これらに限定されるものではない)を含む任意の型の一次または二次充実性腫瘍でありうる。
【0099】
抗体の製造
ハイブリドーマによりモノクローナル抗体を製造するための一般的方法はよく知られている。不死抗体産生細胞系は、融合以外の技術、例えば、発癌性DNAでのBリンパ球の直接的な形質転換またはエプスタインバーウイルスでのトランスフェクションによっても作製されうる。例えば、M.Schreierら,“Hybridoma Techniques”(1980);Hammerlingら,“Monoclonal Antibodies And T−cell Hybridomas”(1981);Kennettら,“Monoclonal Antibodies”(1980);また、米国特許第4,341,761号、第4,399,121号、第4,427,783号、第4,444,887号、第4,451,570号、第4,466,917号、第4,472,500号、第4,491,632号、第4,493,890号を参照されたい。EFGRに対して産生されたモノクローナル抗体のパネルは、種々の特性、例えばイソタイプ、エピトープ、アフィニティなどに関してスクリーニングされうる。特に興味深いのは、EFGRまたはそのサブユニットの活性を模擬するモノクローナル抗体である。そのようなモノクローナル抗体は特異的結合メンバー活性アッセイにおいて容易に特定されうる。高アフィニティ抗体は、天然または組換え特異的結合メンバーの免疫アフィニティ精製が可能である場合に有用である。本発明の実施において有用なモノクローナル抗体は、適当な抗原特異性の抗体分子を分泌するハイブリドーマを含有する栄養培地を含むモノクローナルハイブリドーマ培養を開始させることにより製造されうる。該培養は、該ハイブリドーマが該抗体分子を培地内に分泌するのに十分な条件下および時間にわたって維持される。ついで該抗体含有培地を集める。ついで、よく知られた技術により、該抗体分子を更に単離することが可能である。
【0100】
モノクローナル抗EGFR抗体の製造方法は当技術分野でよく知られている。Nimanら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,80:4949−4953(1983)を参照されたい。典型的には、EGFRまたはペプチド類似体は、抗EGFRモノクローナル抗体を製造するための既に記載されている方法における免疫原として、単独で、または免疫原性担体にコンジュゲート化させて使用される。該ハイブリドーマは、腫瘍形成性、異常または過剰増殖性細胞に存在するEGFRと免疫反応する抗体を産生する能力に関してスクリーニングされる。他の抗EGFR抗体には、Genmab/MedarexのHuMAX−EGFr抗体、108抗体(ATCC HB9764)(米国特許第6,217,866号)およびSchering AG(米国特許第5,942,602号)の抗体14E1が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
組換え抗体、キメラ、二重特異性抗体およびフラグメント
一般に、配列番号1、2、3、4、5および/または6のCDR領域として記載されているのと実質的に同じアミノ酸配列を含むCDR領域は、腫瘍抗原へのCDR領域の結合を可能にする構造体内に含有されるであろう。「記載されているのと実質的に同じ」は、本発明のそのCDR領域が、配列番号1、2、3、4、5および/または6の特定されている領域と同一または高度に相同であることを意味する。「高度に相同」は、少数、好ましくは1〜8、好ましくは1〜5、好ましくは1〜4、または1〜3、または1〜2個のみの置換が該CDR内に施されうることを意味する。
【0102】
本発明のCDRを含有するための構造は、一般に、再構成免疫グロブリン遺伝子によりコードされる天然に存在するVHおよびVL抗体可変ドメインのCDR領域に対応する位置にCDR領域が位置する抗体重鎖もしくは軽鎖配列またはその実質的部分のものである。免疫グロブリン可変ドメインの構造および位置は、Kabat,E.A.ら,Sequences of Proteins of Immunological Interest.4th Edition.US Department of Health and Human Services.1987およびその改訂版(現在、インターネット(http://immuno.bme.nwu.edu)上で入手可能)を参照して決定されうる。
【0103】
好ましくは、配列番号4、5および6に記載されているのと実質的に同じアミノ酸配列はヒト重鎖可変ドメインまたはその実質的部分におけるCDR1、2および3として含有され、配列番号1、2および3に記載されているのと実質的に同じアミノ酸配列はヒト軽鎖可変ドメインまたはその実質的部分におけるそれぞれCDR1〜3として含有される。
【0104】
可変ドメインは任意の生殖系列または再構成ヒト可変ドメインに由来することが可能であり、あるいは公知ヒト可変ドメインのコンセンサス配列に基づく合成可変ドメインであることが可能である。前段落で定義された、本発明のCDR由来配列は、組換えDNA技術を用いて、CDR領域を欠く可変ドメインのレパートリー内に導入されうる。例えば、Marksら(Bio/Technology,1992,10:779−783)は、可変ドメイン領域の5’末端またはその近傍に対するコンセンサスプライマーをヒトVH遺伝子の第3フレームワーク領域に対するコンセンサスプライマーと共に使用して、1以上のCDRを欠くVH可変ドメインのレパートリーを得る、抗体可変ドメインのレパートリーの製造方法を記載している。Marksらは更に、このレパートリーがどのようにして特定の抗体のCDRと組合されうるかを記載している。類似した技術を用いて、本発明のCDR由来配列は、1以上のCDRを欠くVHまたはVLドメインのレパートリーとシャッフルされることが可能であり、シャッフルされた完全VHまたはVLドメインはコグネイトVLまたはVHドメインと組合されて本発明の抗体を与えうる。ついで、適当な特異的結合メンバーが選択されうるよう、該レパートリーは適当な宿主系、例えばWO92/01047のファージディスプレイ系において提示されうる。レパートリーは、10個以上のメンバー、例えば10〜10〜1010個のメンバーからのものよりなりうる。また、類似したシャッフリングまたは組合せ技術がStemmer(Nature,1994,370:389−391)により開示されており、彼はβ−ラクタマーゼ遺伝子に関する技術を記載しているが、該アプローチが抗体の作製のために用いられうることを観察している。
【0105】
もう1つの代替手段は、例えば、mAb175 VHまたはVL CDRをコードする核酸のランダム突然変異誘発を用いて該ドメイン内に突然変異を作製して、本発明のCDR由来配列を含有する新規VHまたはVL領域を作製することである。そのような技術はGramら(1992,Proc.Natl.Acad.Sci,USA,89:3576−3580)により記載されており、彼はエラー頻発型PCRを用いた。用いられうるもう1つの方法は、突然変異誘発をVHまたはVL遺伝子のCDR領域に導くことである。そのような技術はBarbasら(1994,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,91:3809−3813)およびSchierら(1996,J.Mol.Biol.263:551−567)により開示されている。前記の全ての技術は当技術分野において自体公知であり、それ自体は本発明の部分を構成しない。当業者は、当技術分野における通常の方法を用いて本発明の特異的結合メンバーを得るために、そのような技術を用いうるであろう。
【0106】
免疫グロブリン可変ドメインの実質的部分は少なくともそれらの3つのCDR領域を含むであろう。該可変ドメインの実質的部分のN末端またはC末端における追加的残基は、天然に存在する可変ドメイン領域に通常は付随していないものでありうる。例えば、組換えDNA技術により製造される本発明の抗体の構築は、クローニングまたは他の操作工程を促進するために導入されるリンカーによりコードされるN末端またはC末端残基の導入をもたらしうる。他の操作工程は、後記でより詳しく説明するとおり、免疫グロブリン重鎖、他の可変ドメイン(例えば、ジアボディの製造におけるもの)または他のタンパク質標識を含む他のタンパク質配列に本発明の可変ドメインを連結するためのリンカーの導入を含む。
【0107】
本発明の好ましい態様においては、配列番号1、2、3、4、5および/または6に記載されているのと実質的に同じ配列に基づく1以上の結合ドメインを含む抗体が好ましいが、これらの配列のいずれかに基づく単一の結合ドメインは本発明の他の態様を構成する。配列番号6に記載されているのと実質的に同じ配列に基づく結合ドメインまたは配列番号4〜6のドメインの場合、そのような結合ドメインは腫瘍抗原に対する標的化物質として使用されうる。なぜなら、免疫グロブリンVHドメインは標的抗原に特異的に結合しうることが公知だからである。単一鎖特異的結合ドメインのいずれかの場合、これらのドメインは、本明細書に開示されているmAb175抗体と同様に良好な又は同等のインビボ特性を有する2−ドメイン特異的結合メンバーを形成しうる相補性ドメインに関してスクリーニングするために用いられうる。
【0108】
これは、米国特許第5,969,108号に開示されているとおり、いわゆる階層的二重組合せアプローチを用いるファージディスプレイスクリーニング方法により達成可能であり、この場合、HまたはL鎖クローンを含有する個々のコロニーを使用して、他方の鎖(LまたはH)をコードするクローンの完全ライブラリーを感染させ、生じた2鎖特異的結合メンバーをファージディスプレイ技術(例えば、その参考文献に記載されているもの)に従い選択する。この技術もMarksら(同誌)に開示されている。
【0109】
本発明の抗体は更に、抗体定常領域またはその一部を含みうる。例えば、配列番号1〜3に基づく抗体は、それらのC末端において、ヒトCκまたはCλ鎖を含む抗体軽鎖定常ドメインに結合されうる。同様に、配列番号4〜6に基づく抗体は、それらのC末端において、任意の抗体イソタイプ(例えば、IgG、IgA、IgE、IgDおよびIgM)およびイソタイプサブクラスのいずれか、特にIgG1、IgG2bおよびIgG4に由来する免疫グロブリン重鎖の全部または一部に結合されうる。
【0110】
マウスmAbをキメラmAb(マウスV領域、ヒトC領域)に変換するための分子操作およびヒト化試薬(この場合、mAb相補性決定領域(CDR)のみがマウス由来である)の適用はmAb療法の臨床的成功のために決定的に重要である。操作されたmAbは、著しく減少した免疫原性を有するか又は免疫原性を有さず、延長した血清半減期を有し、該mAbのヒトFc部分は、補体および細胞毒性細胞の免疫エフェクターをリクルートする可能性を増加させる。体内分布、薬物動態、および臨床的に投与されたmAbに対する免疫応答のいずれかの誘導に関する研究は、医薬タンパク質と内因性タンパク質とを識別するための分析の開発を要する。
【0111】
該抗体またはその任意のフラグメントは、任意の細胞毒素、細菌または他の毒素(例えば、シュードモナス外毒素)、リシンまたはジフテリア毒素にコンジュゲート化または組換え的に融合されうる。使用される毒素の部分は、全毒素、または該毒素のいずれかの特定のドメインでありうる。そのような抗体−毒素分子は種々の種類の癌の標的化および療法のために成功裏に使用されている。例えば、Pastan,Biochim Biophys Acta.1997 Oct 24;1333(2):C1−6;Kreitmanら,N Engl J Med.2001 Jul 26;345(4):241−7;Schnellら,Leukemia.2000 Jan;14(1):129−35;Ghetieら,Mol Biotechnol.2001 Jul;18(3):251−68を参照されたい。
【0112】
二重および三重特異的多量体は、異なるscFvの結合により形成可能であり、腫瘍内へのT細胞リクルートメント(免疫療法)、ウイルス再標的化(遺伝子治療)のための架橋試薬として、および赤血球凝集試薬(免疫診断薬)として設計されている。例えば、Todorovskaら,J Immunol Methods.2001 Feb 1;248(l−2):47−66;Tomlinsonら,Methods Enzymol.2000;326:461−79;McCallら,J Immunol.2001 May 15;166(10):6112−7を参照されたい。完全ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン重鎖および軽鎖の大部分を含有するトランスジェニックマウスを免疫化することにより製造されうる。これらのマウスは当技術分野でよく知られており、それらのマウスの具体例としては、Xenomouse(商標)(Abgenix,Inc.)(米国特許第6,075,181号および第6,150,584号)、HuMAb−Mouse(商標)(Medarex,Inc./GenPharm)(米国特許第5545806号および第5569825号)、TransChromo Mouse(商標)(Kirin)およびKM Mouse(商標)(Medarex/Kirin)が挙げられる。また、抗体は、例えば、標準的なハイブリドーマ技術またはファージディスプレイにより製造されうる。したがって、これらの抗体は完全ヒトアミノ酸配列のみを含有するであろう。また、完全ヒト抗体は、ヒトライブラリーからファージディスプレイを用いて作製されうる。ファージディスプレイは、HoogenboomらおよびMarksら(Hoogenboom HRおよびWinter G.(1992)J Mol Biol.227(2):381−8;Marks JDら(1991)J Mol Biol.222(3):581−97;そしてまた、米国特許第5885793号および第5969108号)に記載されているような当業者によく知られた方法を用いて行われうる。
【0113】
治療用抗体および用途
本発明の抗体のインビボ特性、特に、腫瘍:血液比およびクリアランスの速度は、mAb175に少なくとも比肩するものであろう。ヒトまたは動物対象への投与の後、そのような特異的結合メンバーは、>1:1のピーク腫瘍:血液比を示すであろう。好ましくは、そのような比において、該特異的結合メンバーは、1:1より大きな、好ましくは2:1より大きな、より好ましくは5:1より大きな腫瘍:器官比をも有するであろう。好ましくは、そのような比において、該特異的結合メンバーは、腫瘍の部位から離れた器官において<1:1の器官:血液比をも有するであろう。これらの比は、投与された特異的結合メンバーの異化および分泌の器官を除外している。
【0114】
本発明の抗体は、検出可能な又は機能的な標識で標識されうる。検出可能な標識には、抗体イメージングの分野において公知の通常の化学法を用いて本発明の抗体に結合されうる同位体H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、121I、124I、125I、131I、111In、211At、198Au、67Cu、225Ac、213Bi、99Tcおよび186Reのような放射能標識が含まれるが、これらに限定されるものではない。標識には、蛍光標識、およびMRI−CTイメージングのための当該分野で通常使用される標識も含まれる。それらには、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼのような酵素標識も含まれる。標識には更に、特異的コグネイト検出可能部分、例えば標識されたアビジンへの結合により検出されうる例えばビオチンのような化学的部分が含まれる。機能的標識には、腫瘍組織の破壊を引き起こすよう腫瘍の部位に標的化されるよう設計された物質が含まれる。そのような機能的標識には、細胞毒性薬、例えば5−フルオロウラシルまたはリシン、および酵素、例えば細菌カルボキシペプチダーゼまたはニトロレダクターゼ(これらは腫瘍の部位においてプロドラッグを活性薬に変換しうる)が含まれる。
【0115】
175抗体およびそのサブユニットは或る診断用途を有しうる。それはらは、例えば、癌、前癌病変のような状態、過剰増殖性細胞増殖に関連した又はそれから生じる状態などを検出および/または測定する目的に利用されうる。放射能標識された175抗体およびそのフラグメントは、インビトロ診断技術およびインビボ放射能イメージング技術および放射免疫療法において有用である。インビボイメージングの場合、本発明の抗体は、例えば抗体分子がキレート化グループを介して多数の常磁性イオンでローディングされた磁気共鳴イメージ増強剤(これらに限定されるものではない)を含む、放射性同位体以外のイメージング剤(造影剤)にコンジュゲート化されうる。キレート化グループの具体例には、EDTA、ポルフィリン、ポリアミンクラウンエーテルおよびポリオキシムが含まれる。常磁性イオンの具体例には、ガドリニウム、鉄、マンガン、レニウム、ユロピウム、ランタニウム、ホルミウムおよびフェルビウムが含まれる。本発明のもう1つの態様においては、放射能標識された175抗体およびそのフラグメント、特に放射免疫コンジュゲートは、放射免疫療法において、特に癌治療のための放射能標識抗体として有用である。さらにもう1つの態様においては、放射能標識された175抗体およびそのフラグメントは放射免疫支援外科技術において有用であり、ここで、それらは、癌細胞、前癌細胞、腫瘍細胞および過剰増殖性細胞の存在および/または位置を、そのような細胞を除去するための手術の前、途中または後で特定し示しうる。本発明の175抗体およびそのフラグメントが他の分子または物質にコンジュゲート化または結合された、本発明の免疫コンジュゲートまたは抗体融合タンパク質には、化学的切除剤、毒素、免疫調節物質、サイトカイン、細胞毒性物質、化学療法剤または薬にコンジュゲート化された175抗体が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0116】
放射免疫療法(RAIT)は既に診療所に導入されており、種々の抗体免疫コンジュゲートを使用して効力を示している。131I標識ヒト化抗癌胎児性抗原(抗CEA)抗体hMN−14が結腸直腸癌において評価されており(Behr TMら(2002)Cancer 94(4Suppl):1373−81)、90Y標識を有する同じ抗体が髄様甲状腺癌において評価されている(Stein Rら(2002)Cancer 94(1):51−61)。モノクローナル抗体を使用する放射免疫療法が非ホジキンリンパ腫および膵癌に関して評価されており報告されている(Goldenberg DM(2001)Crit Rev Oncol Hematol 39(1−2):195−201;Gold DVら(2001)Crit Rev Oncol Hematol 39(1−2)147−54)。特定の抗体を使用する放射免疫療法は米国特許第6,306,393号および第6,331,175号にも記載されている。放射免疫支援手術(IGS)も診療所に導入されており、抗CEA抗体および腫瘍関連抗原に対する抗体を使用した場合などにおいて効力および有用性を示している(Kim JCら(2002)Int J Cancer 97(4):542−7;Schneebaum Sら(2001)World J Surg 25(12):1495−8;Avital Sら(2000)Cancer 89(8):1692−8;McIntosh DGら(1997)Cancer Biother Radiopharm 12(4):287−94)。
【0117】
本発明の抗体は、任意の適当な経路、通常は血流もしくはCSF内への又は直接的に腫瘍の部位内への注射により、治療を要する患者に投与されうる。厳密な用量は、該抗体が診断用なのか治療量なのか、腫瘍のサイズおよび位置、該抗体の厳密な性質(全抗体、フラグメント、ジアボディなどであるかどうか)ならびに該抗体に結合した検出可能な又は機能的な標識の性質を含む多数の要因に左右される。放射性核種が治療に使用する場合、適当な最大1回量は約45mCi/mから最大で約250mCi/mである。好ましい投与量は15〜40mCiの範囲であり、さらに好ましい投与量範囲は20〜30mCi、または10〜30mCiである。そのような療法は骨髄または幹細胞置換を要するかもしれない。腫瘍イメージングまたは腫瘍治療のための典型的な抗体用量はF(ab’)2形態の抗体0.5〜40mg、好ましくは1〜4mgの範囲となろう。裸抗体は、好ましくは、20〜1000mgタンパク質/用量、または20〜500mgタンパク質/用量、または20〜100mgタンパク質/用量の用量で投与される。これは成人患者の単一治療のための用量であり、小児および乳児では、比例的に調節されることが可能であり、また、他の抗体形態では、分子量に比例して調節されうる。治療は、医師の判断により、毎日、週2回、毎週または毎月の間隔で反復されうる。これらの製剤は第2の結合性タンパク質、例えば前記のEGFR結合性タンパク質を含みうる。特に好ましい形態においては、この第2の結合性タンパク質は、例えば前記の528または225のようなモノクローナル抗体である。
【0118】
医薬組成物および治療用組成物
本発明の抗体は、通常、医薬組成物の形態で投与され、これは、該特異的結合メンバーに加えて、少なくとも1つの成分を含みうる。したがって、本発明の、および本発明に従い使用される医薬組成物は、有効成分に加えて、医薬上許容される賦形剤、担体、バッファー、安定剤または当業者によく知られている他の物質を含みうる。そのような物質は無毒性であるべきであり、有効成分の効力を妨げるべきではない。該担体または他の物質の厳密な性質は、経口経路または注射(例えば、静脈内)によるものでありうる投与経路に左右されるであろう。
【0119】
経口投与用の医薬組成物は錠剤、カプセル剤、散剤または液体形態でありうる。錠剤は、固体担体、例えばゼラチン、または補助物質を含みうる。液体医薬組成物は、一般に、液体担体、例えば水、石油、動物もしくは植物油、鉱油または合成油を含む。生理食塩水、デキストロースもしくは他の糖溶液、またはグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールが含有されうる。
【0120】
静脈内注射、または罹患部位における注射の場合、有効成分は、発熱物質を含有せず適当なpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形態であろう。当業者は、例えば等張性ビヒクル、例えば食塩注射剤、リンゲル注射剤、乳酸添加リンゲル注射剤を使用して、適当な溶液を製造することが十分に可能である。必要に応じて、保存剤、安定剤、バッファー、抗酸化剤および/または他の添加剤も加えられうる。
【0121】
組成物は、治療すべき状態に応じて、単独で、または他の治療、治療剤もしくは物質と組合せて同時もしくは連続的に投与されうる。また、本発明は、本明細書に記載されている結合メンバー、特に抗体またはそのフラグメント、および他の物質または治療剤、例えば抗癌物質または治療剤、ホルモン、抗EGFR物質または抗体、あるいは免疫モジュレーター(免疫調節物質)を含む組成物を想定しており、それを含む。より一般には、これらの抗癌物質は、チロシンキナーゼインヒビターまたはリン酸化カスケードインヒビター、翻訳後モジュレーター、細胞増殖または分裂インヒビター(例えば、抗有糸分裂物質)、あるいはシグナル伝達インヒビターでありうる。他の治療または療法は、適当な用量の鎮痛薬、例えば非ステロイド性抗炎症薬(例えばアスピリン、パラセタモール、イブプロフェンまたはケトプロフェン)またはオピエート、例えばモルヒネ、または制吐薬の投与を含みうる。該組成物は、チロシンキナーゼインヒビター(限定的なものではないが、AG1478およびZD1839、STI571、OSI−774、SU−6668が含まれる)、ドキソルビシン、テモゾロミド、シスプラチン、カルボプラチン、ニトロソウレア、プロカルバジン、ビンクリスチン、ヒドロキシ尿素、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、エピポドフィロトキシン、カルムスチン、ロムスチンおよび/または他の化学療法剤と組合せて(連続的(すなわち、前または後で)または同時に)投与されうる。例えば、これらの物質は抗EGFR特異的物質またはチロシンキナーゼインヒビター、例えばAG1478、ZD1839、STI571、OSI−774、SU−6668であることが可能であり、あるいはより一般的な抗癌および抗腫瘍物質、例えばドキソルビシン、シスプラチン、テモゾロミド、ニトロソウレア、プロカルバジン、ビンクリスチン、ヒドロキシ尿素、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、エピポドフィロトキシン、カルムスチンまたはロムスチンでありうる。また、該組成物は、ホルモン、例えばデキサメタゾン、免疫モジュレーター(免疫調節物質)、例えばインターロイキン、腫瘍壊死因子(TNF)、または免疫応答および癌細胞もしくは腫瘍の減少もしくは排除を刺激する他の増殖因子もしくはサイトカインと共に投与されうる。免疫モジュレーター、例えばTNFは、806 EGFRエピトープを認識しTNF受容体に結合する二重特異性抗体の形態の本発明のメンバーと組合されうる。該組成物は、抗EGFR抗体528、225、SC−03、DR8.3、L8A4、Y10、ICR62およびABX−EGF(これらに限定されるものではない)を含む他の抗EGFR抗体と共に投与されることが可能であり、あるいはそのような他の抗EGFR抗体との組合せを含みうる。
【0122】
これまでに、抗EGFR抗体と組合されたドキソルビシンおよびシスプラチンのような物質の使用は抗腫瘍活性の増強を示している(Fanら,1993;Baselgaら,1993)。ドキソルビシンとmAb528との組合せは、樹立されたA431異種移植片の完全な根絶をもたらしたが、いずれかの物質の単独での治療は一時的なインビボ増殖抑制をもたらしたに過ぎなかった(Baselgaら,1993)。同様に、シスプラチンとmAb528または225のいずれかとの組合せも、十分に樹立されたA431異種移植片の根絶をもたらしたが、これは、いずれかの物質を使用した治療では観察されなかった(Fanら,1993)。
【0123】
通常の放射線療法
また、本発明は、通常の放射線療法と組合された該抗体の使用のための治療用組成物を想定しており、それを含む。EGF受容体を標的化する抗体での治療は通常の放射線療法の効果を増強しうることが示されている(Milasら,Clin Cancer Res.2000 Feb:6(2):701 8,Huangら,Clin Cancer Res.2000 Jun:6(6):2166 74)。
【0124】
該175抗体またはそのフラグメントと抗癌治療物質、特に抗EGFR治療物質(他の抗EGFR抗体を含む)との組合せが想定され、異種移植された腫瘍に対する有効な治療、特に相乗作用を示している。AG1478とmAb175との組合せはそのような典型的な組合せである。AG1478(4−(3−クロロアニリノ)−6,7−ジメトキシキナゾリン)はEGF受容体キナーゼの強力かつ選択的なインヒビターであり、米国特許第5,457,105号(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に詳細に記載されている(Liu,W.ら(1999)J.Cell Sci.112:2409;Eguchi,S.ら(1998)J.Biol.Chem.273:8890;Levitsky,A.およびGazit,A.(1995)Science 267:1782も参照されたい)。他の抗EGFR抗体、特に528抗EGFR抗体との175抗体の治療相乗作用が予想され想定される。
【0125】
本発明は更に、本発明の治療方法の実施において有用な治療用組成物を含む。本発明の治療用組成物は、混合物中に、医薬上許容される賦形剤(担体)と、有効成分としての本明細書に記載されている1以上の抗体175またはそのフラグメントとを含む。好ましい実施形態においては、該組成物は、標的細胞との本結合メンバー/抗体の特異的結合をモジュレーションしうる抗原を含む。
【0126】
有効成分としてポリペプチド、類似体または活性断片を含有する治療用組成物の製造は当技術分野において十分に理解されている。典型的には、そのような組成物は液体溶液または懸濁液としての注射剤として製造される。しかし、注射前に液体に溶解または懸濁するのに適した固体形態も製造されうる。また、該製剤は乳化されうる。該有効治療用成分は、しばしば、医薬上許容され該有効成分に適合した賦形剤と混合される。適当な賦形剤としては、例えば、水、食塩水(塩類液)、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組合せが挙げられる。また、所望により、該組成物は、該有効成分の有効性を増強する少量の補助物質、例えば湿潤または乳化剤、pH緩衝化剤を含有しうる。ポリペプチド、類似体または活性フラグメントは、中和された医薬上許容される塩形態として該治療用組成物中に配合されうる。医薬上許容される塩には、酸付加塩(該ポリペプチドまたは抗体分子の遊離アミノ基と共に形成されるもの)、および例えば塩酸もしくはリン酸のような無機酸または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と共に形成される塩が含まれる。遊離カルボキシル基から形成される塩は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基からも誘導されうる。
【0127】
治療用ポリペプチド、類似体または活性フラグメント含有組成物は通常、例えば単位用量の注射により、静脈内に投与される。本発明の治療用組成物に関して用いられる場合の「単位用量」なる語は、ヒトへの単位投与として適した物理的に分離している単位を意味し、各単位は、必要な希釈剤、すなわち、担体またはビヒクルと一緒になった、所望の治療効果を与えるよう計算された予め決められた量の活性物質を含有する。
【0128】
該組成物は、投与製剤に適した様態で、治療的に有効な量で投与される。投与すべき量は、治療すべき対象、対象の免疫系が該有効成分を利用する能力、および望まれるEFGR結合能の度合に左右される。投与するのに必要な有効成分の厳密な量は実施者の判断に左右され、各個体に特有のものである。しかし、適当な投与量は、1日当たり、個体の体重1キログラム当たり約0.1〜20、好ましくは約0.5〜約10、より好ましくは1〜数ミリグラムの有効成分の範囲でありうる。初期投与および追加投与のための適当な投与計画も様々となるが、初期投与、およびそれに続く、後続の注射または他の投与による1時間以上の間隔での反復投与が典型的である。あるいは、10ナノモル濃度〜10マイクロモル濃度の血中濃度を維持するのに十分な連続的静脈内注入が想定される。
【0129】
経口投与用の医薬組成物は錠剤、カプセル剤、散剤または液体形態でありうる。錠剤は、固体担体、例えばゼラチン、または補助物質を含みうる。液体医薬組成物は、一般に、液体担体、例えば水、石油、動物もしくは植物油、鉱油または合成油を含む。生理食塩水、デキストロースもしくは他の糖溶液、またはグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールが含有されうる。静脈内注射、または罹患部位における注射の場合、有効成分は、発熱物質を含有せず適当なpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形態であろう。当業者は、例えば等張性ビヒクル、例えば食塩注射剤、リンゲル注射剤、乳酸添加リンゲル注射剤を使用して、適当な溶液を製造することが十分に可能である。必要に応じて、保存剤、安定剤、バッファー、抗酸化剤および/または他の添加剤も加えられうる。
【0130】
診断アッセイ
本発明はまた、異常に発現されたEGFRのような刺激の存在を、本発明の175抗体により認識されるその能力を参照することにより検出する方法を含む種々の診断用途に関する。本発明の抗体の診断用途には、当業者によく知られた及び標準的な及び本記載に基づくインビトロおよびインビボ用途が含まれる。EGFR状態(特にEGFRの異常発現に関するもの)のインビトロ査定および評価のための診断アッセイおよびキットは、患者のサンプル、例えば、癌、前癌状態、過剰増殖細胞増殖に関連した状態を有する又は有する疑いのあるもの、または腫瘍サンプルを診断、評価およびモニターするために利用されうる。EGFR状態の査定および評価は、薬物の臨床治験のための患者の適合性、または特定の化学療法剤もしくは本発明の特異的結合メンバー、特に抗体(その組合せを含む)の投与のための、異なる物質または抗体と比較した場合の患者の適合性の判定においても有用である。このタイプの診断モニターおよび評価は、乳癌におけるHER2タンパク質に対する抗体(Hercep Test,Dako Corporation)を利用して既に実施されており、この場合、該アッセイは、ヘルセプチン(Herceptin)を使用する抗体療法に関して患者を評価するためにも用いられる。インビボ用途には、腫瘍のイメージングまたは個体の癌状態の評価(ラジオイメージングを含む)が含まれる。
【0131】
既に示唆されているとおり、本発明の診断方法は、EFGR/タンパク質に対するアンタゴニスト(例えば、抗EFGR抗体、好ましくは、本明細書に記載されているmAb175)の有効量を含むアッセイにより細胞サンプルまたは培地を検査することを含む。また、本発明において使用される抗EFGR抗体分子はFab、Fab’、F(ab’)もしくはF(v)部分または全抗体分子の形態であることが好ましい。既に記載されているとおり、この方法から利益が得られうる患者には、癌、前癌病変、ウイルス感染、過剰増殖性細胞増殖または他の同様の病的障害に関連した又はそれらから生じる病状に罹患している患者が含まれる。
【0132】
細胞内のEGFRの存在は、そのような決定に適用可能な通常のインビトロまたはインビボ免疫学的方法により確認されうる。多数の有用な方法が公知である。該方法およびその適用は当業者によく知られており、したがって、本発明の範囲内で利用されうる。そのような方法においては、EGFRは1以上の抗体または結合パートナーとの複合体を形成し、該複合体のメンバーの1つは、検出可能な標識で標識される。複合体が形成されたこと、および所望により、その量は、標識の検出に適用可能な公知方法により決定されうる。これらの研究に最も一般的に使用される標識は、放射性元素、酵素、紫外線にさらされると蛍光を発する化学物質などである。多数の蛍光物質が公知であり、標識として使用されうる。これらには、例えば、フルオレセイン、ローダミン、オーラミン、テキサスレッド、AMCAブルーおよびルシファー・イエロウ(Lucifer Yellow)が含まれる。EGFRまたはEGFR抗体175は放射性元素または酵素で標識されることも可能である。放射能標識は、現在利用可能な計数方法のいずれかにより検出されうる。好ましい同位体は、H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、121I、124I、125I、131I、111In、211At、198Au、67Cu、225Ac、213Bi、99Tcおよび186Reから選ばれうる。酵素標識も同様に有用であり、現在利用されている比色、分光光度、蛍光分光光度、電流測定または気体定量技術のいずれかにより検出されうる。該酵素は、例えばカルボジイミド、ジイソシアナート、グルタルアルデヒドなどのような架橋分子との反応により、選択された粒子にコンジュゲート化される。これらの方法において使用されうる多数の酵素が公知であり、使用可能である。好ましいのは、ペルオキシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ+ペルオキシダーゼ、およびアルカリホスファターゼである。米国特許第3,654,090号、第3,850,752号、第4,016,043号が、例示として、代替的標識物質および方法のそれらの開示に関して参照される。
【0133】
本発明のもう1つの実施形態においては、医学的専門家による使用に適した市販の試験キットは、疑われる標的細胞における、増幅EGFRおよび/またはEGFR突然変異(これらに限定されるものではない)を含むEGFRの異常発現の存在または非存在を決定するよう製造されうる。前記の試験技術に応じて、そのようなキットの1つのクラスは、少なくとも、標識されたEGFRまたはその結合パートナー、例えば、それに特異的な抗体(抗体175)、および、勿論、選択される方法に応じた説明、例えば「競合」、「サンドイッチ」、「DASP」などを含有するであろう。該キットは、周辺試薬、例えばバッファー、安定剤などをも含有しうる。
【0134】
したがって、試験キットは、EGFRの異常発現または異常形態に関する細胞の存在または能力の実証のために製造されることが可能であり、
(a)検出可能な標識への175抗体またはそれに対する特異的結合パートナーの直接的または間接的結合により得られる少なくとも1つの標識された免疫化学的に反応性の成分の予め決められた量、
(b)他の試薬、および
(c)該キットの使用のための説明
を含みうる。
【0135】
前記に従い、EFGRの活性またはEGFRの異常発現および/または該抗体(特に175抗体)の活性もしくは結合をモジュレーションするのに有効な潜在的薬物をスクリーニングするためのアッセイ系が製造されうる。該受容体または該抗体を試験系内に導入することが可能であり、生じた細胞培養内に有望な薬物を導入することも可能であり、ついで該培養を検査して、その有望な薬物のみの添加による又は該既知物質の添加量の効果による該細胞のS期活性における変化を観察することが可能である。
【0136】
核酸
本発明は更に、本発明の抗体175をコードする単離された核酸を提供する。核酸には、DNAおよびRNAが含まれる。好ましい態様においては、本発明は、配列番号1、2、3、4、5および/または6に記載されているポリペプチドを含む前記の本発明のポリペプチドをコードする核酸を提供する。本発明はまた、前記の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むプラスミド、ベクター、転写または発現カセットの形態の構築物を提供する。本発明はまた、前記の1以上の構築物を含む組換え宿主細胞を提供する。提供されるそのもののいずれかの抗体175をコードする核酸は、該抗体のコード化核酸からの発現を含む該抗体の製造方法と同様に、本発明の1つの態様を構成する。発現は、該核酸を含有する組換え宿主細胞を適当な条件下で培養することにより簡便に達成されうる。発現による産生の後、特異的結合メンバーを、任意の適当な技術を用いて単離および/または精製し、ついで適宜、使用することが可能である。
【0137】
本発明の抗体およびコード化核酸分子およびベクターは、例えばそれらの天然環境から単離および/または精製された形態、実質的に純粋または均一な形態、あるいは核酸の場合には、必要な機能を有するポリペプチドをコードする配列以外の核酸または遺伝子源を含有しない又は実質的に含有しない形態で提供されうる。本発明の核酸はDNAまたはRNAを含むことが可能であり、全体的または部分的に合成物でありうる。多種多様な宿主細胞におけるポリペプチドのクローニングおよび発現のための系がよく知られている。適当な宿主細胞には、細菌、哺乳類細胞、酵母およびバキュロウイルス系が含まれる。異種ポリペプチドの発現のための当技術分野で利用可能な哺乳類細胞系には、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、乳児ハムスター腎細胞、NSOマウスメラノーマ細胞およびその他多数が含まれる。一般的な好ましい細菌宿主は大腸菌(E.coli)である。大腸菌(E.coli)のような原核細胞における抗体および抗体フラグメントの発現は当技術分野において十分に確立されている。概説としては、例えば、Pluckthun,A.Bio/Technology 9:545−551(1991)を参照されたい。特異的結合メンバーの製造のための選択肢として、培養内の真核細胞における発現も当業者に利用可能である。最近の概説としては、例えば、Raff,M.E.(1993)Curr.Opinion Biotech.4:573−576;Trill JJ.ら(1995)Curr.Opinion Biotech 6:553−560を参照されたい。プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および他の配列を適宜含む適当な調節配列を含有する適当なベクターが選択または構築されうる。ベクターは、適宜、プラスミド、ウイルス、例えばファージまたはファジミドでありうる。更なる詳細は、例えば、Molecular Cloning:a Laboratory Manual:2nd edition,Sambrookら,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。例えば核酸構築物の製造、突然変異誘発、配列決定、細胞内へのDNAの導入および遺伝子発現における核酸の操作ならびにタンパク質の分析のための多数の公知技術およびプロトコールがShort Protocols in Molecular Biology,Second Edition,Ausubelら編,John Wiley & Sons,1992に詳細に記載されている。Sambrookら及びAusubelらの開示を参照により本明細書に組み入れることとする。
【0138】
したがって、本発明のもう1つの態様は、本明細書に開示されている抗体をコードする核酸を含有する宿主細胞を提供する。さらにもう1つの態様は、そのような核酸を宿主細胞内に導入することを含む方法を提供する。該導入には、任意の利用可能な技術が用いられうる。該導入の後、例えば該遺伝子の発現のための条件下で宿主細胞を培養することにより、該核酸からの発現が生じ、または該発現が可能となりうる。1つの実施形態においては、本発明の核酸は宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)内に組み込まれる。組み込みは、標準的な技術に従い、該ゲノムとの組換えを促進する配列を含めることにより促進されうる。本発明はまた、前記のとおりに抗体またはポリペプチドを発現させるために発現系において前記の構築物を使用することを含む方法を提供する。
【0139】
前記のとおり、本発明はまた、配列番号1、2、3、4、5および/または6に記載されているアミノ酸配列を有する抗体175またはそのフラグメントをコードする組換えDNA分子もしくはクローン化遺伝子またはそれらの縮重変異体、好ましくは核酸分子に関する。当技術分野でよく知られているとおり、DNA配列は、適当な発現ベクター内の発現制御配列にそれを機能的に連結しその発現ベクターを使用して適当な単細胞宿主を形質転換することにより発現されうる。
【0140】
発現制御配列の選択においては、通常、種々の要因が考慮される。これらには、例えば、該系の相対的強度、その制御可能性、および発現すべき特定のDNA配列または遺伝子とのその適合性(特に、潜在的二次構造に関するもの)が含まれる。適当な単細胞宿主は、例えば選択されたベクターとのその適合性、その分泌特性、タンパク質を正しくフォールディングするその能力およびその発酵要件、ならびに発現すべきDNA配列によりコードされるタンパク質の宿主に対する毒性および発現産物の精製の容易さを考慮することにより選択される。これらの及び他の要因を考慮して、当業者は、発酵に際して又は大規模動物培養において本発明のDNA配列を発現する種々のベクター/発現制御配列/宿主組合せを構築しうるであろう。
【0141】
類似体、例えばフラグメントは、例えば、抗体ペプチドまたは物質のペプシン消化により製造されうる。他の類似体、例えば突然変異タンパク質は、特異的結合メンバーをコードする配列の標準的な部位特異的突然変異誘発により製造されうる。抗体175様活性を示す類似体(例えば、小分子)は、プロモーターとして機能するのかインヒビターとして機能するのかには無関係に、公知のインビボおよび/またはインビトロアッセイにより特定されうる。175抗体をコードするDNA配列は、クローニングではなく合成的に製造されうる。完全配列は、標準的な方法により調製された重複オリゴヌクレオチドから構築され、完全なコード配列へと構築される。例えば、Edge,Nature,292:756(1981);Nambairら,Science,223:1299(1984);Jayら,J.Biol.Chem.,259:6311(1984)を参照されたい。合成DNA配列は、特異的結合メンバーの類似体または「突然変異タンパク質」を発現する遺伝子の簡便な構築を可能にする。あるいは、突然変異タンパク質をコードするDNAは天然特異的結合メンバー遺伝子またはcDNAの部位特異的突然変異誘発により製造されることが可能であり、突然変異タンパク質は、通常のポリペプチド合成を用いて直接的に製造されることが可能である。タンパク質内への非天然アミノ酸の部位特異的組込みのための一般的方法はChristopher J.Noren,Spencer J. Anthony−Cahill,Michael C.Griffith,Peter G.Schultz,Science,244:182−188(April 1989)に記載されている。この方法は、非天然アミノ酸を含有する類似体を作製するために使用されうる。
【0142】
本発明は、本発明の例示として記載されている以下の非限定的な実施例を参照することにより、より良く理解されうる。以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態をより完全に例示するために記載されており、いかなる点においても、本発明の広範な範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】mAb806およびmAb175からのCDRに関するアミノ酸配列のアライメント。それらの2つの抗体の間の配列相違が太字で示されている。
【図2】mAb175での細胞系および正常ヒト肝臓の免疫組織化学的染色。A:ビオチン化mAb175を使用して、A431細胞(wtEGFRを過剰発現する)、U87MG.Δ2−7細胞(Δ2−7 EGFRを発現する)およびU87MG(適度なレベルでwtEGFRを発現する)を含有する塊から調製された切片を染色した。B;mAb175(左パネル)、イソタイプ対照(中央パネル)および二次抗体対照(右パネル)での正常ヒト肝臓(400倍)の染色。特異的な洞様毛細血管または肝細胞染色は観察されなかった。
【図3】酵母上で提示されたEGFRの断片とのmAb806およびmAb175の反応性。A:酵母提示EGFR断片のmAb175およびmAb806標識の平均蛍光シグナルを示す代表的フローサイトメトリーヒストグラム。酵母提示では、一部の細胞はその表面上にタンパク質を発現せず、2つのヒストグラムピークを与える。全ての断片は直鎖状C末端c−mycタグを含有するため、陽性対照として9E10抗体が使用される。B:種々のEGFR断片への抗体結合の要約。C:酵母ペレットを80℃まで30分間加熱することにより、EGFR断片を変性させた。全ての場合において、該c−mycタグは9E10抗myc抗体により尚も認識されたが、このことは、熱処理が酵母表面提示タンパク質を損なわないことを示している。変性を確認するために、コンホメーション感受性EGFR抗体mAb225を使用した。
【図4】脳および前立腺癌異種移植片に対するmAb175の抗腫瘍効果。A:U87MG.Δ2−7異種移植片を担持するマウス(n=5)に、PBS、1mgのmAb175またはmAb806(陽性対照)を、2週間にわたって週3回、第6、8、10、13、15および17日に注射(i.p.)した。この場合、出発腫瘍体積は100mmであった。データは平均腫瘍体積±SEとして表されている。B:細胞を2つの無関係な抗体(青色べた塗りおよび緑色中空)、全EGFRに対するmAb528(桃色べた塗り)、mAb806(薄青色中空)およびmAb175(オレンジ色中空)で染色し、ついでFACSにより分析した。C:DU145細胞を細胞溶解し、mAb528、mAb806、mAb175または2つの独立した無関係な抗体でのIPに付し、ついでEGFRに関する免疫ブロット法に付した。D:DU145異種移植片を担持するマウス(n=5)に、PBS、1mgのmAb175またはmAb806を、第18〜22日、25〜29日および39〜43日に毎日注射(i.p.)した。この場合、出発腫瘍体積は85mmであった。データは平均腫瘍体積±SEとして表されている。
【図5】Fabフラグメントに結合したEGFRペプチド287−302の結晶構造。(A)軽鎖(赤色)、重鎖(青色)、結合ペプチド(黄色)およびEGFR由来の重ね合わされたEGFR287−302(紫色)を含有するFab806のカートゥーン(cartoon)。(B)軽鎖(黄色)、重鎖(緑色)、結合ペプチド(ライラック色)およびEGFR(D1−3)由来の重ね合わされたEGFR287−302(紫色)を含有するFab175のカートゥーン。(C)FAb175に結合したペプチドに対する、EGFRにおけるEGFR287−302の類似性を示す(B)からの詳細。ペプチドバックボーンがCαトレースとして示されており、相互作用性側鎖が小枝として示されている。O原子は赤色に、Nは青色に、Sはオレンジ色に着色されており、Cは主鎖として示されている。(D)空間的重複を示すFab175:ペプチド複合体とのEGFRの重ね合わせ。(C)と同様に着色されており、EGFR187−286の表面は青緑色に着色されている。(E)(D)に対する直交図であり、EGFR187−286は不透明な青色で示されており、軽鎖(オレンジ色)および重鎖(緑色)の表面は透明で示されている。(F)抗原結合部位を示す175Fab複合体の詳細な立体図。(C)と同様に着色されており、側鎖水素結合が黒色の点線で示されている。複合体形成に際して埋もれた水分子が赤色の球体として示されている。
【図6−1】EGFRへのmAb806結合に対する271−283シスチン結合の影響。A:wtEGFR、EGFR−C271A、EGFR−C283AまたはC271A/C283A突然変異体でトランスフェクトされた細胞をmAb528(べた塗り桃色ヒストグラム)、mAb806(青色線)または二次抗体のみ(紫色)で染色し、ついでFACSにより分析した。クラスが釣り合わされた無関係な抗体を使用して、利得を設定した。B:EGFR−C271AまたはC271/283A EGFRを発現するBaF3細胞を、「方法」に記載されているとおりのMTTアッセイにおいて、EGFに対するそれらの応答に関して検査した。データ点のボルツマンフィットを用いて、EC50を導出した。データは3回重複の測定の平均およびsdを表す。C:wtまたはEGFR−C271A/C283Aを発現するBaF3をIL−3および血清飢餓させ、ついでEGFまたはビヒクル対照にさらした。全細胞ライセートをSDS−PAGEにより分離し、抗ホスホチロシン抗体(上パネル)または抗EGFR抗体(下パネル)での免疫ブロット法に付した。D:wt(左パネル)またはC271A/C283A(右パネル)EGFRを発現するBaF3細胞を、抗体の非存在下(中空の記号)またはmAb528(灰色の丸印)もしくはmAb806(黒色の三角)(共に10μg/ml)の存在下、漸増濃度のEGFで刺激した。データは3回重複の測定の平均およびsdとして表されている。
【図6−2】EGFRへのmAb806結合に対する271−283シスチン結合の影響。A:wtEGFR、EGFR−C271A、EGFR−C283AまたはC271A/C283A突然変異体でトランスフェクトされた細胞をmAb528(べた塗り桃色ヒストグラム)、mAb806(青色線)または二次抗体のみ(紫色)で染色し、ついでFACSにより分析した。クラスが釣り合わされた無関係な抗体を使用して、利得を設定した。B:EGFR−C271AまたはC271/283A EGFRを発現するBaF3細胞を、「方法」に記載されているとおりのMTTアッセイにおいて、EGFに対するそれらの応答に関して検査した。データ点のボルツマンフィットを用いて、EC50を導出した。データは3回重複の測定の平均およびsdを表す。C:wtまたはEGFR−C271A/C283Aを発現するBaF3をIL−3および血清飢餓させ、ついでEGFまたはビヒクル対照にさらした。全細胞ライセートをSDS−PAGEにより分離し、抗ホスホチロシン抗体(上パネル)または抗EGFR抗体(下パネル)での免疫ブロット法に付した。D:wt(左パネル)またはC271A/C283A(右パネル)EGFRを発現するBaF3細胞を、抗体の非存在下(中空の記号)またはmAb528(灰色の丸印)もしくはmAb806(黒色の三角)(共に10μg/ml)の存在下、漸増濃度のEGFで刺激した。データは3回重複の測定の平均およびsdとして表されている。
【図7】A)声帯の転移性扁平上皮癌を有する患者における111In−ch806の生体分布の全身ガンマカメライメージであり、右頸部(矢印)の腫瘍における定量的な高い取り込みを示している。血液プール活性および肝臓における遊離111Inの若干の異化も認められる。B)この患者の頸部のシングルフォトンエミッションコンピュータ断層撮影(SPECT)イメージであり、生存可能な腫瘍(矢印)における111In−ch806の取り込みを示しており、ここで、中央の取り込みの減少は壊死を示している。C)頸部の対応CTスキャンであり、中央の壊死を伴う大きな右頸部腫瘍塊(矢印)を示している。
【図8】非係留型EGFR1−621の構造の立体モデル。受容体バックボーンは青色で、リガンドTGF−αは赤色でトレースされている。mAb806/175エピトープは青緑色で、ジスルフィド結合は黄色で描かれている。該エピトープを該受容体内に固定するジスルフィド結合の原子は空間充填形態で示されている。該モデルは、係留型コンホメーションからのEGFR−ECD CR2ドメイン(13)を、対応リガンドの存在下の繋ぎとめられていないEGFR単量体の構造(14)上に繋ぎとめることにより構築した。
【図9】EGFRの断片とのmAb806の反応性。可溶性1−501 EGFR断片またはGH/EGFR断片融合タンパク質(GH−274−501、GH−282−501、GH−290−501およびGH−298−501)を発現するベクターでトランスフェクトされた293T細胞からのライセートをSDS−PAGEにより分離し、膜にトランスファーし、mAb806(左パネル)または抗myc抗体9B11(右パネル)での免疫ブロット法に付した。 実施例 本発明は、本発明の例示として記載されている以下の非限定的な実施例を参照することにより、より良く理解されうる。以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態をより完全に例示するために記載されており、いかなる点においても、本発明の広範な範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0144】
概要
EGFRは、2つの十分に特徴づけられたコンホーマー(係留型(tethered)および非係留型(untethered))として存在する。係留型コンホーマーは、リガンド非含有(そして部分的に連結された)形態の該受容体でのみ観察されており、非係留型の後部−後部二量体を形成するようリガンドにより誘導されうる。mAb806は、細胞表面上の幾つかのトランケート化された、過剰発現された又は活性化された形態のEGFR上のエピトープを認識するが、それは、正常な未刺激細胞上のEGFRを認識しない。もう1つの関連抗体であるmAb175もこの異常エピトープを認識する。本発明者らは、抗体mAb806およびmAb175のFabに結合したEGFR287−302ペプチドエピトープの3D構造を決定した。該抗体の存在下、該ペプチドエピトープは、両方の形態の該受容体において見出されるものに非常に類似したコンホメーションをとる。しかし、wtEGFR構造へのmAb806またはmAb175抗体の結合は、係留型および非係留型コンホメーションの両方において、CR1ドメインとのFabの有意な立体的衝突により抑制されるであろう。CR1ドメインの3Dコンホメーションの精査は、該エピトープの直前のジスルフィド結合の破壊が、いずれかの抗体の結合を可能にするのに十分な程度にCR1ドメインを開くことを可能にすることを示唆した。システイン突然変異体EGFRC271A/C283AはmAb806およびmAb175に結合するだけでなく、その化学量論は1:1である(すなわち、EGFR L2リガンド結合ドメインを認識するmAb528と同等である)。mAb806は、野生型EGFRを発現する細胞のインビトロ増殖を抑制しないが、mAb806は、EGFRC271A/C283Aを発現するBaF/3細胞のリガンド関連刺激を完全に抑制する。本発明者らの結果は、抗体mAb806およびmAb175の結合のメカニズムが、該エピトープが受容体活性化中またはトランケート化もしくは過剰発現により優先的に露出されるEGFRの形態を要することを示している。したがって、他のEGFR抗体とは対照的に、mAb806は、該EGFRを過剰発現する癌患者における腫瘍に優先的に局在する。作用メカニズムは、過剰発現された、トランケート化した又は活性化された形態のEGFRファミリー受容体を有する癌細胞の抗体/インヒビター殺傷を改善するための及び腫瘍を検出するための抗体の作製のための新規アプローチを示唆している。
【0145】
重要性
EGFRは多数のヒト腫瘍の増殖の刺激に関与している。治療用物質としてインヒビターおよびアンタゴニストが使用されているが、1つには、正常組織上のEGFRの阻害のため、そしてもう1つには、それらの物質の幾つかの限定された一時的作用のため(すなわち、Abは、より長い作用を示す)、成功は限定されたものである。抗体Mab806およびMab175は該受容体の異常コンホメーションを認識し、これは、しばしば、腫瘍細胞上では見出されるが、正常細胞上では見出されない。EGFR上のこれらの抗体の三次元結合部位は、それらの腫瘍特異性を説明する異常コンホメーションを識別する。これらの抗体は、他の抗EGFR物質と相乗的に作用して、マウスにおける顕著な腫瘍殺傷を誘発する。該抗体の放射能標識形態を使用した癌患者における初期結果は腫瘍選択性を証明している。
【0146】
序論
EGFRの、そのリガンドファミリーによる活性化の理解は困難なことであるが、遺伝的(1−3)、生物物理的(4−8)、そしてより最近では、結晶学的(9−17)な素晴らしい研究が、EGFR細胞内チロシンキナーゼドメインを活性化するために必要な複雑な一連のコンホメーション変化および凝集事象の多くを明らかにしている(18)。これらの複雑性のうち、溶液中では、EGFR細胞外ドメインは少なくとも2つの基本的コンホメーション、すなわち、不活性な係留型(tethered)コンホメーションおよび活性な非係留型または伸長型(extedned)リガンド結合「後部−後部」二量体をとることが明らかである。EGFRは、癌に関連した最初の増殖因子受容体であった(19;20)。EGFRは自己分泌リガンドにより活性化され(19;21;22)、高い割合の進行神経膠腫においては、EGFR受容体細胞外ドメインがトランケート化され(23;24)、したがって活性化される。しばしば、EGFRの活性化が悪性状態の維持に要求される。逆に、毛包およびブルンネル腺における少数の細胞を除き、成体生物においては、EGFRは低レベルで発現され、成体期においては不活性である。
【0147】
EGFRを標的化するための2つの主要クラスの物質、すなわち、チロシンキナーゼインヒビター(TKI)およびモノクローナル抗体(mAb)が開発されている。ゲフィチニブ(gefitinib)(ZD1839)およびエーロチニブ(erlotinib)(OSI−774)のようなTKIはEGFRのATPポケットに競合的に結合して、その活性化を抑制する。これに対して、EGFRに対する抗体、例えばセツキシマブ(cetuximab)(C225)およびパニツムマブ(ABX−EGFR)はリガンド結合を競合的に抑制し、それにより受容体活性化を妨げる。該インヒビターおよび抗体のクラスは共に、ある範囲のEGFR依存性マウス異種移植モデルにおいて有意な抗腫瘍活性を示し(25−29)、どちらも、NSCL、膵臓、頭部および頸部ならびに結腸を含む選択された癌において承認されている(30−32)。これらのEGFR治療剤に対する応答率は適度であるが、EGFR遮断に応答する可能性のある患者小集団の特定に成功すれば、該患者に関する結果が改善されうると期待されている。例えば神経膠腫においては、タルセバ(Tarceva)に対する応答は、神経膠腫において一般的に発現されるEGFRの細胞外トランケート化体であるΔ2−7EGFR(EGFRvIIIとも称される)およびPTENに関して二重陽性である患者の小集団にほぼ限定されるらしい(33)。これらの治療用物質は有望さを示しているが、EGFR発現が有意である正常皮膚におけるこれらの物質の有意な取り込みから生じる、用量を限定する毒性、例えば皮疹のため、それらの使用は制限される。
【0148】
多数の神経膠腫は、主としてEGFR遺伝子の増幅により、EGFRを過剰発現する(23;24)。神経膠腫におけるEGFR遺伝子増幅は、エキソン2−7の切除(34)、およびそれに続く、前記のEGFRのトランケート化され部分的に活性化されたΔ2−7 EGFR形態の発現(35;36)を招く突然変異事象にも関連している。Δ2−7 EGFRは、エキソン1および8のスプライシングおよび唯一のグリシンの挿入から生じた、N末端における特有の融合ペプチドを含有する。この連結ペプチドに対する幾つかのモノクローナル抗体は既に記載されており(34)、したがって、Δ2−7 EGFRに特異的な潜在的治療用物質に相当する。本発明者らは、このトランケート化EGFRを過剰発現する(内因性EGFRファミリーメンバーを欠く3T3の変異体としての)NR6細胞を使用して、Δ2−7 EGFR特異的抗体のパネルを作製した。これらの抗体の幾つかは、Δ2−7 EGFRへの確固たる結合を示す一方で、生理的レベルでは発現されず過剰発現されたwtEGFRにも結合する。これらの抗体のうちの最もよく記載されているもの、すなわち、MAb806(35;37;38)は、細胞表面上で1×10未満のEGFRを発現する細胞には結合しないようであるが、より高い発現レベルがmAb806反応性EGFRの顕著な集団(全受容体集団の5〜10%)を与える場合にのみ、そのような結合が生じるらしい(35,37,38)。
【0149】
後続のエピトープマッピング研究は、EGFRが係留型から伸長型コンホメーションへと移行するにつれて、一時的に露出されるに過ぎない細胞外ドメイン上のアミノ酸287−302間の短いシステインループにmAb806が結合することを示した(23;28)。したがって、mAb806の反応性は、該受容体の突然変異(例えば、Δ2−7 EGFR)、過剰発現または活性化の存在のような受容体非係留化のための有利な条件を有する細胞においてのみ見出される。EGFRの過剰発現の場合、リガンド非依存的EGFR活性化およびグリコシル化の変化の両方の結果として増強された非係留が存在するらしい(39)。これらの状態は腫瘍細胞においては一般的であるが、正常組織においては稀であり、したがって、mAb806が正常組織より優先的に腫瘍細胞(例えば、肝臓)を標的化することが可能となる。実際、mAb806のキメラ形態を使用した、本発明者らの最近完了した第I相臨床治験からの結果は、この抗体により標的化されるエピトープが正常組織上では露出されないが、ある範囲のEGFR陽性腫瘍上では接近可能であることを示している(28;40)。異種移植片においては、mAb806は、Δ2−7 EGFRを発現するU87MG神経膠腫細胞、およびこの突然変異を伴わないwtEGFRを過剰発現する或る範囲の他のモデルに対して確固たる抗腫瘍活性を示している(28;40)。さらに、mAb806は、EGFRキナーゼインヒビター(27)および無関係なエピトープを有する抗体(41)を含む他のEGFR治療用物質と組合せて使用された場合に、動物モデルにおいて相乗的抗腫瘍活性を示す。
【0150】
システイン残基287と302との間のEGFRアミノ酸配列は、mAb806に結合するのに十分なものである。しかし、Δ2−7 EGFRにおいて見出されるトランケート化はmAb806による結合のためのこのシステインループを明らかに露出させるが、mAb806−wtEGFR結合のメカニズムは部分的に解明されているに過ぎない。EGFRの結晶構造は完全長細胞外ドメインおよびEGFR−ECD1−501断片(リガンドに結合したもの)の両方に関して解明されている。これらの構造の分析は、mAb806が、完全長ECD構造において観察される係留型EGFR(13)にも、EGFR−ECD1−501(14)またはEGFR−ECD1−621(42)構築物で見られるリガンド結合非係留型後部−後部二量体にも結合し得ないことを明らかにする。したがって、本発明者らは、mAb806が、不活性状態と活性状態との間に存在する部分的に非係留型である形態のwtEGFRに結合すると提示している。連結された非係留型EGFRにmAb806が結合し得ないことは、受容体インターナリゼーションを妨げる条件下でwtEGFR発現BaF/3細胞をEGFと共にプレインキュベートすることにより、更に証明された。これらの条件下、より大きな割合のEGFRが、連結された後部−後部二量体を形成して、mAb806結合を妨げるはずであり、これは、明らかに証明された観察である(43)。しかし、確固たるEGFR/リガンド自己分泌ループを有する細胞において生じうるような、定常状態におけるmAb806結合に対するリガンドの効果は不明である。興味深いことに、細胞表面wtEGFRへのmAb806の結合は、免疫学的な意味において、該受容体のコンホメーションに依存的であるが、該エピトープはコンホメーション的(conformational)ではない。なぜなら、mAb806はウエスタンブロットにおけるEGFRに対する優れたプローブであり、すなわち、それは該変性受容体を認識しうるからである。明らかに、エピトープ自体のコンホメーションではなく、EGFRのコンホメーションにより決定される該エピトープへの接近可能性がmAb806結合に関する最も決定的な要因である。MAb806は、プラスチックおよび表面プラズモン共鳴チップ上に固定化されたEGFRにも結合する(37)。
【0151】
この報告においては、本発明者らは、mAb806と同様にして産生された他の抗体の生物活性、特異性およびエピトープをも記載する。これらの抗体の特有の特異性を理解するために、本発明者らは、mAb806およびmAb175のFabフラグメントに結合したmAb806ペプチドエピトープ(EGFR287−302)ならびに該遊離Fabフラグメントの3D構造を決定した。該受容体上のEGFR287−302の配向および抗体に結合したこのペプチドのコンホメーションは、mAb806が該EGFRの特異的形態に結合しなければならないこと、およびこの形態が、係留型または伸長型コンホメーションのいずれかにおいて観察されるwtEGFRとは異なってフォールディングされなければならないことを証明した。点突然変異を用いて、本発明者らは、EGFR構造およびmAb806/175反応性に対する隣接システインループ(アミノ酸271−283)の影響を調べた。なぜなら、このループはこれらの抗体の結合を著しく制限するらしいからである。本発明者らは、確固たるTGF−α/EGFR自己分泌刺激ループを有する前立腺細胞系であるDU145異種移植片に対するmAb806および175の効力、ならびに第I相環境における頭部および頸部癌患者への放射能標識mAb806の結合を報告する(44)。
【0152】
結果
mAb175の特異性
予備的結合研究は、mAb175が、mAb806に類似した、EGFRに対する特異性を示すことを示唆した。mAb806(IgG2b)およびmAb175(IgG1)のCDR領域においては、それぞれにおいて僅か1つのアミノ酸相違が存在するだけで、アミノ酸配列はほぼ同一である(図1)。これらの相違の全ては側鎖の電荷およびサイズを維持するものである。明らかに、これらの抗体は、独立して生じている。
【0153】
本発明者らは、mAb175結合の特異性を分析するために1組の免疫組織化学的実験を行った。mAb175は、EGFRを過剰発現するA431異種移植片の切片(図2A)およびΔ2−7EGFRを発現するU87MG.Δ2−7神経膠腫異種移植片の切片(図2A)を染色する。これとは対照的に、mAb175はU87MG異種移植片切片を染色しない。U87MG細胞系は、あまり高くないレベルの野生型EGFRを発現するに過ぎず(図2A)、検出可能なEGFR自己分泌ループを有さない。最も重要なことに、mAb175は正常ヒト肝臓切片には結合しない(図2B)。したがって、mAb175はmAb806と同じ特異性を示すらしい。すなわち、それは、過剰発現された及びトランケート化されたヒトEGFRを検出するが、あまり高くないレベルで発現されたwtEGFRを検出しない。
【0154】
mAb175エピトープの特定
mAb175は、アミノ酸6−273が欠失しているΔ2−7EGFRおよびEGFR1−501にも結合するため、mAb175エピトープは残基274−501内に含有されているに違いない。mAb806のエピトープの決定においては、本発明者らは、全てアミノ酸501で終結するヒトGHのカルボキシ末端に融合された一連のc−mycタグ付きEGFRフラグメントを発現させた(45;46)。mAb175はまた、ウエスタンブロットにおいて、274−501および282−501 EGFRフラグメントの両方と反応したが、アミノ酸290または298から始まるフラグメントを検出しなかった(補足的な図9)。全てのGH−EGFR融合タンパク質の存在は、c−myc抗体9E10を使用して確認された(補足的な図9)。したがって、mAb175エピトープの重要な決定基はアミノ酸290の近くに位置する。最後に、mAb806エピトープが欠失した274−501 EGFRフラグメント(Δ287−302)は、mAb175結合に関して陰性であったが(図9)、このことは、この領域がmAb175結合のほとんどを同様に決定したことを示唆している。
【0155】
本発明者らは、mAb175エピトープを更に特徴づけるためにもう1つのアプローチを用いた。EGFRの細胞外ドメインを含むフラグメントを酵母の表面上で発現させ、フローサイトメトリーを用いて間接免疫蛍光によりmAb175結合に関して試験した。mAb175は、Δ2−7 EGFRの細胞外ドメインに対応する酵母フラグメント273−621を認識したが、フラグメント1−176、1−294、294−543、または475−621のいずれをも認識しなかった(図3Aおよび3B)。したがって、mAb175エピトープの少なくとも一部はアミノ酸274−294の領域内に含有されていなければならず、これは、EGFRフラグメントを使用した本発明者らの免疫ブロット法のデータに符合する。mAb175は該273−621の変性フラグメントに結合するため(図3C)、該エピトープは本質的に直鎖状でなければならない(補足的な図9)。mAb806およびmAb175はEGFRの類似した領域およびコンホメーションを認識することは明らかである。
【0156】
表面プラズモン共鳴(BIAcore)を用いて、本発明者らは、EGFRペプチド(287CGADSYEMEEDGVRKC302(配列番号14))へのmAb175の結合を調べた。アミン、チオール−ジスルフィド交換またはPms−Serカップリング化学を用いて、EGFR287−302をバイオセンサー表面上に固定化した。後者の方法は該ペプチドを専らN末端システインを介して固定化する(47)。mAb175は全ての配向のEGFR287−302に結合した(表1)。EGFR287−302に対するmAb175のアフィニティは、Pms−セリンカップリンに関する35nMから、アミンカップリングに関する154nMまでの範囲であった。すべての場合において、EGFR287−302に対するmAb175の結合アフィニティは、mAb806に関して得られたものより低かった(表1)。本発明者らはEGFRの2つの異なる細胞外フラグメントに対するmAb175のアフィニティも決定した。mAb175は、該1−501フラグメントに、該ペプチドを使用して得られたものに類似したアフィニティで結合した(16nM対35nM)(表1)。予想どおり、係留型コンホメーションを形成しうる該1−621完全長細胞外ドメインに対するmAb175のアフィニティは遥かに低かった(188nM)。mAb806およびmAb175はEGFR287−302に対する類似したアフィニティを有するが、mAb175は、EGFRの細胞外ドメインに対する、より高いアフィニティを示すようである(表1)。明らかに、mAb175エピトープはEGFR287−302に含有され、EGFRの細胞外ドメインに対する結合アフィニティはコンホメーションに依存的である。
【0157】
【表2】

【0158】
酵母の表面上で発現される273−621 EGFRフラグメントの突然変異体のパネル(45;46)を使用して、mAb175エピトープの構造を特徴づけした。mAb175およびmAb806は該突然変異体に対するほぼ同一の反応性パターンを示した(表2)。287−302ジスルフィド結合の破壊はエピトープ反応性に対するそれほど大きくない影響を及ぼしたに過ぎなかった。なぜなら、該抗体はC287における全ての突然変異体に結合し、C302における全てではないが幾つかの突然変異体に結合したからである(表2)。mAb175結合に重要なアミノ酸には、E293、G298、V299、R300およびC302が含まれる(表2)。mAb175は、突然変異体V299およびD297に対して、若干、より感受性であるらしいが、mAb806も、これらの部位における幾つかの突然変異への結合の低下を示した(表2)。この場合もまた、mAb175エピトープは、mAb806により認識されるエピトープと実質的に同じであるらしい。
【0159】
【表3】


【0160】
Δ2−7EGFRまたはEGFR自己分泌ループにより刺激された腫瘍異種移植片に対するmAb175の効力
本発明者らはU87MG.Δ2−7神経膠腫異種移植片に対するmAb806およびmAb175のインビボ抗腫瘍活性を調べた。異種移植片を、抗体療法(2週間にわたり、示されている日の週3回)を開始する前に6日間樹立させた。この時点で、平均腫瘍体積は100mmであった(図4A)。mAb175処理は、ビヒクルまたはmAb806での処理と比較して、全体的な腫瘍増殖速度の減少を引き起こし、それは接種後第19日に非常に有意であり(P<0.0001対対照およびP<0.002対ma806)、この時点で、倫理的理由により該対照群を犠死させた。この時点の平均腫瘍体積は、ビヒクル、mAb806およびmAb175に関して、それぞれ1530、300および100mmであり(図4A)、このことは、mAb175が、Δ2−7EGFRを発現する異種移植片に対する抗腫瘍活性を有することを証明している。
【0161】
U87MG細胞が約1×10 EGFR/細胞を発現するとしても、mAb806は該表面EGFRのいずれをも認識できず、驚くまでもなく、U87MGのインビボ増殖を抑制しない。さらに、これらの細胞はいずれのEGFRリガンドをも共発現しない。EGFRエピトープが一過性に露出され、したがって、EGFR自己分泌ループを含有する細胞においてmAb806およびmAb175により認識されうるかどうかを試験するため。前立腺細胞系DU145は、U87MG細胞において観察されるものに類似したレベルでwtEGFRを発現するが、U87MG細胞とは異なり、DU145細胞はTGF−α遺伝子の増幅を含有し、したがってEGFR/TGF−アルファ自己分泌ループを示す。mAb175および806は共に、FACS分析により測定された場合にDU145細胞に結合し(図4B)、共に、これらの細胞から抽出されたEGFRの小さな割合を免疫沈降させうる(図4C)。どちらの技術も、mAb175の、より大きな結合を示したが、L2ドメインに結合するmAb528と比較した場合、mAb175およびmAb806はこれらの細胞の表面上のEGFRの一部に結合するに過ぎない(図4Bおよび4C)。もう1つの前立腺細胞系(LnCap)および結腸系(LIM1215)(これらは共に、EGFR自己分泌ループをも含有する(22;48))で、同様の観察が認められた(データ非表示)。明らかに、mAb806およびmAb175は、自己分泌刺激ループの存在下、細胞上のEGFRの小さな割合のみを認識しうる。
【0162】
mAb175およびmAb806は、DU145細胞において発現されるEGFRに対しては、U87MG細胞において発現されるEGFRに対する場合より効果的に結合するため、本発明者らは、ヌードマウスにおいて増殖させたDU145異種移植片におけるこれらの抗体の抗腫瘍活性を分析するための研究を行った。異種移植片を、療法(3週間にわたり、示されている日の週3回)を開始する前に18日間樹立させた。この時点で、平均腫瘍体積は90mmであった(図4D)。mAb175およびmAb806は共に、DU145異種移植片の増殖を抑制した。該対照群を第67日に犠死させ、それは1145mmの平均腫瘍体積を有し、これに対して、mAb806およびmAb175群は、それぞれ605および815mmの平均腫瘍体積を有していた(それぞれ、P<0.007および0.02)(図4D)。
【0163】
mAb806およびmAb175のFabフラグメントと接触しているEGFR287−302の3D構造
mAb806およびmAb175が、全てではないが幾つかのコンホメーションにおけるEGFRをどのように認識しうるかの分子的詳細を理解するために、酸化型EGFR287−302エピトープと複合体化した(それぞれ、2.0および1.59オングストロームの分解能、図5Aおよび5B)、および単独の(それぞれ、2.3および2.8オングストロームの分解能)、両方の抗体のFabフラグメントの結晶構造を決定した。どちらの場合も、遊離および複合体化Fab構造は実質的に同一であり、該ペプチドおよび該抗体のCDRループのコンホメーションは十分に特徴づけられた(図5)。該エピトープはβ−リボン構造をとり、ここで、該リボンの一方の末端はFabを向き、V299は抗原結合部位の中央部に埋もれている(図5C〜E)。これらの抗体が、遥かに長いポリペプチドに結合することに合致して、該エピトープの両末端は溶媒に露出される。
【0164】
該エピトープに接触している20個の抗体残基のうち、mAb806とmAb175との間には僅か2つの置換のみが存在する(図1)。mAb175接触残基は以下のとおりである:軽鎖S30、S31、N32、Y49、H50、Y91、F94、W96および重鎖D32、Y33、A34、Y51、S53、Y54、S55、N57、R59、A99、G100、R101。mAb806接触残基は、軽鎖N30および重鎖F33に関する配列相違を伴うこと以外は同じである。EGFR287−302はペプチド残基293−302間の密接な接触によりFabに結合し、該接触のほとんどは残基297と302との間で生じる。FabおよびEGFR287−302の主鎖原子間の唯一の水素結合は残基300および302におけるものである(図5F)。該エピトープ配列の認識は、残基E293(FabのH50およびR101へ)、D293(Y51およびN57へ)、R300(D32へ)およびK301(水素分子を介してY51およびW96へ)への側鎖水素結合により生じる。疎水性接触はG298、V299およびC302において生じる。
【0165】
293と302との間のエピトープバックボーンのコンホメーションは、Fab806およびFab175結晶において同一であった(これらの残基におけるCα原子に関して、rms偏差=0.4オングストローム)。該ペプチドのN末端(287−292)は、ジスルフィド結合により束縛されるものの、この領域における抗体構造およびコンホメーションにおいて有意な接触をなさない。しかし、Fab806複合体におけるこのセグメントはやや無秩序であるらしい。より興味深いことに、該抗体と接触しているEGFR287−302ペプチドのコンホメーションは、係留型または非係留型EGFR構造のバックボーンにおいて観察されるEGFR287−302のコンホメーションに非常に密接に関連している(Liら,2005;Garrettら,2002)。Fab175複合体からのEGFR287−302の場合、Cα位におけるrms偏差は、それぞれ、0.66および0.75オングストロームである(図5)。
【0166】
mAb806およびmAb175によるEGFRの認識に関する更なる洞察を得るために、15N標識酸化型ペプチドEGFR287−302のコンホメーションを、溶液中、遊離状態および806 Fabの存在下のNMR分光法により研究した(詳細は補足データを参照されたい)。該遊離ペプチドの場合、共鳴を帰属し、ランダムコイルのものと比較した。本質的に、該遊離ペプチドは、天然EGFRで見られるようなベータリボン(14)ではなくランダムコイル構造をとった。該Fabを添加すると、共鳴シフトが観察された。しかし、Fabの添加の際に広がる有意な線から生じる弱いシグナルのため、および該複合体の結晶化の成功により、該Fab806−エピトープ複合体の溶液構造をそれ以上は追及しなかった。しかし、明らかに、該ペプチドがmAb806(またはmAb175)のFabフラグメントに結合する際、該Fabは、該天然受容体におけるそのペプチドと合致する該ペプチドのコンホメーションを選択または誘発するようである。
【0167】
なぜ、mAb806およびmAb175はEGFRの幾つかのコンホメーションのみを認識するのか。本発明者らは、EGFR287−302を重ね合わせることにより、mAb175のFabフラグメントをEGFR(係留型および非係留型単量体)の細胞外ドメイン上に合体させた。Δ2−7様フラグメントの場合、該受容体との有意な立体的破壊は存在しなかった。非係留形態においては、埋もれたFabの接近可能表面積は、実質的に、より大きかった(920オングストローム;これに対して、係留型では550オングストローム)。したがって、酵母発現突然変異体により示されているとおり(45)、この抗原は該抗体の非CDR領域と追加的な接触をなしうる。逆に、該Fab上への全EGFRエクトドメインの合体の場合には、該Fabの中央部を通って走る、および該エピトープに先行するCR1ドメインの部分(残基187−286)との相当な空間的重複が存在する(図5D、E)。したがって、CR1ドメインは、係留型または非係留型コンホメーションにおいて、実質的に同じ構造を有するため、mAb806またはmAb175はEGFRのいずれの形態にも結合し得ないであろう。明らかに、wtEGFRの公知コンホメーションにおけるCR1ドメインに対する該エピトープの配向と、エピトープ結合を許容する配向との間に相違が存在しなければならない。CR1ドメインの精査は、EGFR287−302に先行するジスルフィド結合(271−283)が、該エピトープへの接近を遮断するポリペプチドを拘束することを示した。このジスルフィドの破壊は、それが該抗体への直接的結合に関与しないとしても、mAb175またはmAb806が該エピトープへの接近を達成しうるよう、CR1ドメインの部分的アンフォールディングを可能にすると予想されるであろう。
【0168】
EGFR271−283ジスルフィド結合の破壊はmAb806結合を増強する
タンパク質におけるジスルフィド結合は構造的剛性の増強をもたらすが、いくつかの細胞表面受容体、特に、サイトカインおよび増殖因子においては、ジスルフィド結合の一時的破壊およびジスルフィド交換が該受容体の機能を制御しうる(49)。これは、mAb806およびmAb175がそれらの結合部位への接近を達成しうる1つのメカニズムであったため、本発明者らは、271位および283位のシステイン残基の一方または両方をアラニン残基へと突然変異させることにより(C271A/C283A)、該エピトープの接近可能性を増強することを試みた。完全長C271A−、C283A−またはC271A/C283A−EGFRを発現しうるベクターをIL−3依存性Ba/F3細胞系内にトランスフェクトした。C271A−およびC271A/C283A−EGFR突然変異体をwtEGFRと同等のレベルで発現した安定なBa/F3クローンを選択した(図6A)。高レベルの突然変異体C283A−EGFRを発現するBa/F3細胞は観察されなかった。既に記載されているとおり、wtEGFRはmAb806と良くは反応しないが、該突然変異体受容体はmAb528、mAb806および抗FLAG抗体と同じくらい強く反応し、このことは、該受容体が細胞表面で発現され、正しくフォールディングされ、mAb806に対するエピトープがそのような場合に完全に接近可能であることを示唆している。mAb806がC271A/C283A突然変異体を、wtEGFRより効率的に認識することを証明するために、本発明者らはmAb528の結合に対するmAb806の結合の比を決定した。wtおよびC271A/C283A EGFRは共に、N末端においてFLAGタグ化されているため、本発明者らはM2抗体へのmAb806およびmAb528の結合の比をも決定した。既に報告されているとおり、mAb806は、Ba/F3細胞の表面上で発現される全wtEGFRの小さな割合を認識したに過ぎなかった(mAb806/528結合比は0.08である)(表3)。これとは対照的に、mAb806は、細胞表面上で発現されるC271A/C283A突然変異EGFRの実質的に全てを認識した(1.01のmAb806/528結合比)(図6Aおよび表3)。
【0169】
【表4】

【0170】
それらの2つのシステインの突然変異はEGF結合または受容体機能を損なわなかった。C271A/C283A EGFR突然変異体を発現するBaF3細胞はEGFの存在下で増殖する(図6B)。本発明者らは、C271A/C283A突然変異を発現する細胞におけるEGFに関する用量反応曲線における左シフトを再現性よく観察したが、これは、該リガンドに対する、より高いアフィニティ、または該突然変異受容体に関するシグナリング能力の増強のいずれかを示唆している。ウエスタンブロット分析は、C271A/C283A突然変異体がwtEGFRに類似したレベルで発現され、EGF刺激に応答してチロシンリン酸化されることを証明した(図6C)。他の細胞系におけるこれまでの研究に一致して、mAb806は、wtEGFRを発現するBa/F3細胞のインビトロEGF誘導性増殖には全く影響を及ぼさないが、mAb528を遮断するリガンドはこれらの細胞のEGF誘導性増殖を完全に抑制する(図6D、左パネル)。これとは対照的に、mAb806は、C271/283A突然変異体を発現するBaF3細胞におけるEGF誘導性増殖を完全に排除した(図6D、右パネル)。271−283システインループが破壊されると、mAb806がより効果的に結合するだけでなく、一旦結合すると、mAb806はリガンド誘導性増殖を妨げる。
【0171】
頭部および頸部癌における第I相イメージング研究
報告されているとおり(44)、8名の患者[1名の女性および7名の男性;平均年齢61歳(範囲44〜75歳)]がこの第1相治験を完了した。患者8(この患者は原発性脳腫瘍を有していた)を除く全ての患者が参加基準を満たし、研究開始時点で全員が転移性疾患を有していた。腫瘍によるAb取り込みが全患者で見られ、111In−ch806(mAb806のキメラ化形態)は腫瘍における迅速かつ高レベルの取り込みを示した(図7)。正常器官(肝臓、肺、腎臓および脾臓)からの111In−ch806のクリアランスは用量レベル間の相違を示さなかった(44)。特に、肝臓クリアランスは用量レベル間の相違を全く示さず、これは、ch806に関する、肝臓における飽和可能抗原区画を全く示していない。全肝臓取り込みは、最大で、注入直後の14.45±2.43%IDであり、注入後72時間までに8.45±1.63%IDに、そして注入後1週間までに3.18±0.87%IDに減少した。これは、注入後の3日間以上にわたって肝臓において30%ID以上(用量40mgの場合)に達することが示されているwtEGFRに対する抗体(eg225)の取り込み(50)と好対照である。
【0172】
111In−ch806の測定ピーク腫瘍取り込みは注入の5〜7日後に生じた。患者1および3における定量的腫瘍取り込みの計算は、心血液プールに標的病変が接近していたため、および患者が動いたため、正確に行えなかった。腫瘍におけるピークch806取り込みは5.21〜13.73×10−3%ID/gm腫瘍組織の範囲であった。腫瘍における実際のch806濃度の計算は、(平均±SD)0.85±0μg/gm(5mg/m)、0.92±0μg/gm(10mg/m)、3.80±1.10μg/gm(20mg/m)および7.05±1.40μg/gm(40mg/m)のピーク値を示した。
【0173】
考察
EGFRまたは関連erbB2のレベルまたは活性が一定しない場合、EGFRファミリーメンバーを標的化するセツキシマブ(cetuximab)およびヘルセプチン(herceptin)のような抗体は癌治療のための重要な選択肢である。これらの抗体の結合部位、標的受容体およびより最近では抗体:受容体複合体の両方の3D構造の決定が、これらの抗体がどのようにして受容体活性化に干渉するのかに関する我々の理解を深めている。これらの研究は、この受容体ファミリー上の他のエピトープの標的化が、癌治療を改善するために抗体の組合せを使用する新たな機会をつくりうることを示唆している。
【0174】
残念ながら、現在利用可能な治療用抗EGFR抗体の全ては、実質的に全ての正常組織において発現されるwtEGFRを認識する。正常組織において発現されるEGFRは該抗体の大きな溜り場となるだけでなく、それは、観察される用量限定性毒性(例えば、皮疹)において決定的に重要であり、抗体/細胞毒性コンジュゲートの使用を不可能にする可能性がある。これらの問題にもかかわらず、ほとんどの正常組織は活性化EGFRを欠き、したがって、中和性抗EGFR抗体は必須の恒常性シグナリングに対して顕著な効果を与えないらしいことに注目すべきである。これとは対照的に、多数の腫瘍は、自己分泌/傍分泌メカニズム、トランケート化、突然変異、遺伝子増幅および/または過剰発現により活性化EGFRを含有する。重要なことに、活性化EGFRは、腫瘍細胞の細胞運動、増殖、浸潤、血管新生および生存を促進することにより、腫瘍形成に関与するようである。したがって、抗EGFR抗体またはEGFRキナーゼインヒビターの投与は腫瘍細胞の増殖および生存を低下させうる。Δ2−7 EGFRにおける特有の連結ペプチドに対する抗体は、正常組織取り込みに関連した問題を伴うことなく、いくつかの腫瘍を標的化する能力を有する(51)。神経膠腫においては、Δ2−7 EGFRの発現は、mAb806またはmAb175により抑制されるはずであるが他のΔ2−7 EGFR抗体によっては抑制されないwtEGFRの過剰発現を伴う。
【0175】
これまでに、本発明者らは、Δ2−7 EGFRを発現する細胞に対して産生させた抗体mAb806を記載している。mAb806はこのトランケート化受容体に結合するだけでなく、過剰発現したwtEGFRにも結合する。mAb806は、Δ2−7 EGFRにおいては接近可能であるが細胞上で及びリガンドの非存在下で低ないし中等度レベルで発現されるwtEGFRにおいては接近可能ではないシステインループ(アミノ酸287−302)内に含有されるエピトープを認識する。同様に、EGFRの精製された完全長細胞外ドメイン(EGFR1−621)。この抗体に対するエピトープは、活性状態の形成中にコンホメーション変化を受けるEGFR細胞外ドメインのヒンジ領域付近に存在することが判明した。さらに、不活性コンホメーションにおいて埋もれているエピトープだけではなく、それも、リガンドが結合した後部−後部非係留型EGFR二量体において接近不可能であるらしい。mAb806の魅力的な特性に促されて、本発明者らは、初期融合体から単離されたモノクローナル抗体を発現する他のハイブリドーマを再分析した(38)。予備スクリーニングにおいては、これらのmAb175の1つが、mAb806に類似したEGFR結合特性を有するようであった。それらのCDRループ内のアミノ酸配列は著しく類似しており(90%の配列同一性)、これらの相違は関連側鎖のサイズおよび電荷を維持するものである。mAb806と同様に、mAb175は、EGFRを過剰発現する又はΔ2−7 EGFRを発現する腫瘍細胞を染色するが、あまり高くないレベルのwtEGFRを含有する細胞(例えば、ヒト肝臓)を染色しない。詳細なエピトープマッピングは、mAb175が、mAb806と同じシステインループに結合することだけでなく、それが、このループ内に点突然変異を含有する一連の突然変異体に対するほぼ同じ結合プロファイルを有することをも示した。さらに、いずれの抗体も、エピトープジスルフィド結合が結合のために無傷であることを要しなかった。
【0176】
mAb806およびmAb175は共に、Δ2−7 EGFRを発現するヒト神経膠腫異種移植片に対する抗腫瘍活性を有し、共に、腫瘍増殖における有意な遅延を誘発し、このモデルにおいて、mAb175は、若干、より強力であるようであった。興味深いことに、mAb806およびmAb175は、DU145前立腺細胞(これは、あまり高くないレベルのEGFRを発現するが、有意な量のTGF−αを自己分泌様態で分泌する細胞系である(52))上で発現されるEGFRに結合する。EGFRを過剰発現する細胞系の場合と同様に、どちらの抗体もDU145細胞上の表面EGFRの小さな割合に結合するに過ぎない。しかし、どちらの抗体もヌードマウスにおけるDU145異種移植片の増殖を抑制する。したがって、生理的条件下でのリガンドの存在は、これらの抗体により認識されるEGFRの移行形態の利用可能性を増加させ、この形態の標的化は、EGFRにより駆動される細胞増殖をダウンレギュレーションするのに十分である。
【0177】
このクラスの抗EGFR抗体は、最初に予想されたものより一層広範な抗腫瘍作用を有する可能性がある。さらに、他のEGFR治療剤(41)と組合せて使用された場合のmAb806の相乗活性は、このクラスの抗体に関する直接的な治療的役割を示唆している。また、mAb806は、EGFRキナーゼを活性化する癌関連突然変異を含有する腫瘍細胞に結合する。mAb806およびmAb175は、活性化EGFRを有する細胞に選択的に結合し、現在承認されているEGFR治療剤に応答する可能性のある患者を特定および/またはモニターするための有用な試薬でありうる。
【0178】
EGFR287−302エピトープでの本発明者らの構造研究は、mAb806およびmAb175が共に、同じ3D構造モチーフを認識したことを示している。mAb806およびmAb175と接触しているペプチド残基は、どちらの場合でも、ほとんど同一の構造を示したが、このことは、これが、生成抗原であるΔ2−7 EGFRにおいて見出されるこれらのアミノ酸のコンホメーションであることを示唆している。実際、該抗体/ペプチド構造において見られるEGFR287−302のペプチドバックボーンは、EGFR構造の両方の公知コンホメーションにおいて見出されるものと厳密に一致する。しかし、抗体806がwtEGFRに結合しないという実験的観察に合致して、これらの構造におけるエピトープの配向は関連アミノ酸への抗体の接近を妨げるであろう。EGFR構造の詳細な精査はもう1つの興味深い可能性を提起した。EGFR287−302エピトープは第2のジスルフィドループ(アミノ酸271−283)から垂れ下がっており、このジスルフィド結合の破壊は、該エピトープのバックボーンコンホメーションを変化させることなく、EGFR287−302ループへの接近を可能にするはずである(図8を参照されたい)。C271A/C283A EGFR突然変異体での本発明者らの結果は、該突然変異受容体にmAb806および175が化学量論的に結合するのを可能にするようCR1ドメインが開かなければならないことを示している。この突然変異受容体は尚も天然コンホメーションをとりうる。なぜなら、それはEGF刺激に完全に応答性であるが、wtEGFRとは異なり、mAb806により完全に抑制されるからである。
【0179】
wtEGFRを過剰発現する細胞の表面上に、mAb806またはmAb175結合のためにEGFR287−302エピトープが接近可能である受容体小集団が明らかに存在する。接近は受容体活性化中に最も容易に生じるが、この受容体小集団が非係留形態へのコンホメーション転移中のものであるのか、あるいは非係留形態からリガンド活性化状態への転移中のものであるのか、あるいは271と283との間のジスルフィド結合が損なわれた(還元された)EGFR小集団における不完全な酸化が存在するのかどうかは、未だ明らかでない。EGFRの還元形態が癌細胞の表面上に存在する場合、それは活性であり、細胞シグナリングを始動しうる可能性があることを、本発明者らのデータは明らかに示している。受容体小集団に結合するのみであり、EGFRの下流のシグナリングを抑制しないにもかかわらず、wtEGFRを過剰発現する異種移植片の増殖をmAb806が抑制しうることは、依然として謎である。この理由により、異常なシグナリング特性を有する特有のEGFR小集団にmAb806が結合するという概念は、特に、他のEGFR治療剤とのその非常に大きな相乗作用を考えると、常に魅力的なものである。それが癌細胞の細胞表面上に存在する場合、271−283ジスルフィドにおいて還元されたEGFRはEGFRのこの特有の形態に相当しうるであろう。最後に、Δ2−7EGFRにおける欠失は非常に大きいが、それはアミノ酸273で終わることが想起されるべきである。Δ2−7 EGFRはこのジスルフィド結合を欠き、wtEGFRとは異なるシグナリング特性を有することが公知である。一方、EGFRの活性化キナーゼ突然変異、自己分泌ループおよび過少グリコシル化も、おそらくは271−283ジスルフィドの破壊を要することなく、該受容体の活性化を増強することにより、mAb806反応性を増強する。EGFR活性化中の幾つかの点においてEGFR287−302への接近を可能にするようCR1ドメインがねじれうるが、CR1ドメインは係留およびリガンド結合形態におけるねじれから保護されるという概念を、これらの観察は支持している。本発明者らは現在、mAb806により認識されるEGFRが還元型271−283ジスルフィド結合を含有するのかどうかを決定するための継続中の研究を行っているところである。
【0180】
キメラ化806(ch806)の本発明者らの第I相治験の結果の分析は、mAb806により標的化されるエピトープが腫瘍特異的であることを証明した。定量的体内分布分析は腫瘍におけるch806の迅速かつ特異的な取り込み明らかに示している。これらのデータは、癌細胞上で発現される抗原への抗体の最高の定量的標的化に合致しており、同等の用量におけるwtEGFR抗体の値より著しく優れている(44;50)。全ての正常組織(肝臓を含む)におけるch806の取り込みは低かったが、これは、正常組織におけるwtEGFRへの結合の証拠を示すものではなく、また、肝臓においては、それは遊離111In−キレートの僅かな異化および血液プール活性に相当したに過ぎなかった。これは、大きなタンパク質用量が投与されたにもかかわらず(300mgまで)(50)、注入後72時間以上維持される肝臓における非常に高い取り込み(20〜30%ID)を有することが示されているwtEGFRを標的化する抗体(eg225;Cetuximab)とは著しく異なる。また、wtEGFRに対する抗体は、腫瘍取り込みが明白になる前に正常組織を飽和させるためには大きな負荷用量を要し(50)、皮膚および腸におけるwtEGFRへの抗体結合からの用量限定性毒性をも有する(53)。これらの結果は、mAb806がヒトにおける正常組織を標的化しないことを示しており、体内分布の定量的分析は、インビボでmAb806により標的化されるEGFRエピトープの腫瘍特異性を証明している。
【0181】
mAb806またはmAb175から誘導された抗体でのEGFR287−302エピトープの標的化は、正常組織における最低限度の取り込みを伴って癌細胞における活性化EGFRを攻撃するための1つの方法である。該受容体の活性化は、癌に関連したメカニズムの多くから生じうる。また、おそらくは最も重要なことに、これらの抗体は、細胞毒、治療用ナノ粒子、siRNAおよび放射性同位体を腫瘍部位へ直接的に標的化するために使用されうる。最後に、これらの研究は、mAb806およびmAb175が、細胞表面上のEGFR活性化に関連した事象をマッピングするのを助けるための重要な手段であることを証明している。
【0182】
抗体が異常および活性化形態の増殖因子受容体を認識しうるが不活性野生型受容体を認識し得ないのはどのようにして生じるのかを分子レベルで理解する場合、この研究は、癌治療のための他の標的、例えば、EGFRファミリーの他のメンバーに対する抗体を作製するために用いられうる。1つの方法は、抗体mAb806およびmAb175に化学量論的に結合するジスルフィド突然変異体EGFR−C227A/C283Aを使用しうるであろう。EGFRに関して見られるコンホメーションの乱れが、erbB2、erbB3またはerbB4が連続的に過剰発現または活性化された場合にも生じれば、これらの受容体の相同ジスルフィド突然変異体は、腫瘍に対する選択性を有する他のEGFRファミリーメンバー標的化抗体を作製するための免疫原として作用しうる。さらに、腫瘍細胞が他の受容体、特に、ジスルフィドに富むドメインを含有するもの(例えば、Trk)を過剰発現する場合、これらの受容体の一部は、過少グリコシル化または一時的に破壊されたジスルフィド結合のため、部分的にミスフォールディングしうる。ジスルフィド突然変異体またはトランケート化受容体は、他の異常発現受容体を認識する抗体を潜在的に作製するために免疫原と同様に使用されうると考えられる。
【0183】
実験方法
細胞系
Δ2−7 EGFRでトランスフェクトされたU87MG,Δ2−7(54)およびA431細胞系(2)は既に記載されている。ホルモン非依存性前立腺細胞系DU145(55)はATCC(atcc.org)から入手した。該細胞系の増殖条件に関しては、補足的データを参照されたい。
【0184】
抗体、Fabおよびペプチド
mAb806およびmAb175はBiological Production Facility(Ludwig Institute for Cancer Research,Melbourne)において製造され精製された。該抗体、抗体フラグメントおよびペプチドエピトープの製造および特徴づけに関しては、補足的データを参照されたい。
【0185】
哺乳類細胞および酵母において発現されたEGFRフラグメントを使用するAb175のマッピング
補足的データに記載されているとおりにマッピングを行った。
【0186】
表面プラズモン共鳴(BIAcore)
BIAcore 3000を全ての実験に使用した。5μl/分の流速でアミン、チオールまたはPmsカップリングを用いて、推定mAb806エピトープを含有するペプチドをCM5センサーチップ上に固定化した(47)。mAb806およびmAb175を25℃で5μl/分の流速で該センサー表面上を通過させた。各実施の間に、10mM HClを10μl/分の流速で注入することにより、該表面を再生させた。
【0187】
免疫沈降およびウエスタンブロット
細胞を細胞溶解バッファー(1% Triton X−100,30mM HEPES,150mM NaCl,500mM 4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド,150nM アプロチニン,1mM E−64プロテアーゼインヒビター,0.5mM EDTA,および1mM ロイペプチン,pH7.4)で20分間細胞溶解し、14,000×gで30分間の遠心分離により清澄化し、5μg/mlの最終濃度の関連抗体で60分間免疫沈降させ、セファロースAビーズにより一晩捕捉した。ついでサンプルを2×NuPAGE SDSサンプルバッファー(Invitrogen)で溶出し、NuPAGEゲル(3〜8%または4〜12%)上で分離し、Immobilon−Pトランスファーメンブレン(Millipore)上にエレクトロトランスファーし、関連抗体でプローブした後、化学発光ラジオグラフィーにより検出した。
【0188】
免疫組織化学
凍結切片を5μg/ml mAb175または無関係なイソタイプ対照で室温で60分間染色した。Dako Envision+HRP検出系を製造業者の説明に従い使用して、結合抗体を検出した。最後に、切片を水で洗浄し、ヘマトキシリンで対比染色し、マウントした。
【0189】
異種移植モデル
100μLのPBS中のU87MG.Δ2−7細胞(3×10)を4〜6週齢の雌Balb/cヌードマウス(Animal Research Centre,Perth,Australia)の両脇腹に皮下接種した。全ての研究は、既に報告されている確立された腫瘍モデル(41)を使用して行った。適当な図面説明に示されている平均体積に腫瘍が達したら、治療を開始した。式(長さ×幅)/2(ここで、長さは最長軸であり、幅は垂直測定値であった)を用いて、mm単位の腫瘍体積を決定した。データは各治療群ごとに平均腫瘍体積±SEとして表されている。片側スチューデントt検定により有意性に関して全てのデータを分析し、ここで、p<0.05を、統計的に有意であるとみなした。この研究計画はAnimal Ethics Committee of the Austin Hospitalにより承認されたものであった。
【0190】
EGFR突然変異構築物を発現する安定細胞系の作製および特徴づけ
(wt)EGFRの突然変異を、部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene,La Jolla,CA)を使用して作製した。各突然変異誘発のための鋳型はヒトEGFR cDNA(アクセッション番号x00588)(2)であった。該EGFR突然変異の完全性を確認するために、各構築物の自動ヌクレオチド配列決定を行った。野生型および突然変異(C173A/C281A)EGFRをBaF/3細胞内にエレクトロポレーションによりトランスフェクトした。該細胞系の特徴づけに関する更なる詳細は補足的データに示されている。
【0191】
Fab175およびFab806、Fab−ペプチド複合体の結晶構造決定ならびに溶液中の806ペプチドエピトープのNMR構造
Fab806、Fab175および個々のFab−ペプチド複合体を製造および分析するための結晶学的方法ならびに溶液中の15N標識806エピトープペプチドのNMR研究に関する詳細は補足的データに記載されている。分子置換および精密化(以下のとおりに収束するもの)により構造を決定した:Fab806に関してはR=0.225/Rfree=0.289およびFab806:ペプチドに関してはR=0.226/Rfree=0.279;Fab806に関してはR=0.210/Rfree=0.305およびFab806:ペプチドに関してはR=0.203/Rfree=0.257。
【0192】
患者におけるchAb806腫瘍の体内分布
インビボでのmAb806の腫瘍特異性を示すために、キメラ形態(ch806)を操作し、cGMP条件下(56)で製造した。806陽性腫瘍を有する患者におけるch806の安全性、体内分布および免疫応答を評価するために、第I相初回人体治験を行った。安全性、体内分布および薬物動態学の結果は既に報告されている(44)。患者における正常組織(すなわち、肝臓)と比較した腫瘍におけるch806の特異性を定めるために、腫瘍および肝臓におけるch806の定量的取り込みを、5〜7mCi(200〜280MBq)の111In−ch806の注射後1週間にわたって得た全身ガンマカメライメージからの111In−ch806の%注射用量(ID)の計算により行った。肝臓および腫瘍線量測定の計算を、累積活性の計算を可能にするバックグラウンドおよび減衰に関して補正された各患者の111In−ch806注入イメージデータセットにおける関心領域に基づいて行った。注射後1週間にわたる腫瘍および肝臓における111In−ch806の濃度を導き出すために、線量測定計算を行った。
【0193】
【表5】





【実施例2】
【0194】
補足的データ
実験方法
細胞系
全ての細胞系を、10% FCS(CSL,Melbourne)、2mM グルタミン(Sigma Chemical Co,St.Louis)およびペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies,Grand Island)を含有するDMEM(Life Technologies,Grand Island,NY)内で維持した。また、400mg/mlのGeneticin(Life Technologies,Inc,Grand Island)内でU87MG.Δ2−7細胞系を維持した。種々のEGF受容体を発現するBaF/3(l)およびBaF/3細胞系(2)を、10% ウシ胎児血清(GIBCO BRL)および10% WEHI−3B馴らし培地(3)(IL−3源としてのもの)で補足されたRPMI 1640(GIBCO BRL)内に常法により維持した。全ての細胞系を、空気/CO(95%〜5%)雰囲気中、37℃で増殖させた。
【0195】
抗体およびペプチド
抗体の作製。マウス線維芽細胞系NR6ΔEGFRを免疫原として使用した。アジュバント中の5×10〜2×10 細胞でBALB/cマウスの皮下に2〜3週間間隔で5回免疫化することにより、マウスハイブリドーマを作製した。初回注射には、完全フロイントアジュバントを使用した。ついで不完全フロイントアジュバント(Difco)を使用した。免疫化マウスからの脾細胞をマウス骨髄腫細胞系SP2/0と融合させた。新たに作製されたクローンの上清を赤血球吸着アッセイにおいて細胞系NR6、NR6wtEGFRおよびNR6ΔEGFRとの反応性に関してスクリーニングし、ついでヒト神経膠芽細胞腫細胞系U87MG、U87MGwtEGFRおよびU87MGΔEGFRでの赤血球吸着アッセイにより分析した。
【0196】
無傷mAb(50mg)を、PBS中、活性化パパイン(1:20の比)で37℃で2〜3時間消化し、該パパインをヨードアセトアミドで不活性化した。ついで該消化を20mM リン酸ナトリウムバッファー(pH8.0)中のプロテインAセファロース(Amersham)のカラムに通過させ、Mono−Sカラム(Amersham)を使用するカチオン交換によりフロースルーを更に精製した。ついで、10,000MWCO遠心濃縮装置(Millipore)を使用して、タンパク質を濃縮した。Fab−ペプチド複合体の場合、モル過剰の凍結乾燥ペプチドを該Fabに直接的に加え、4℃で2時間インキュベートした後、結晶化実験を準備した。
【0197】
哺乳類細胞において発現されたEGFRフラグメントを使用するmAb175のマッピング
これらのフラグメントでのトランスフェクションの前日に、ヒト293T胎児腎線維芽細胞を、2mlの培地を含有する6ウェル組織培養プレート内に、8×10/ウェルで播いた。製造業者の説明に従いLipofectamine 2000(Invitrogen)と複合体化された3〜4μgのプラスミドDNAで細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの24〜48時間後、細胞培養を吸引し、細胞単層を250μlの細胞溶解バッファー(1% Triton X−100,10% グリセロール,150mM NaCl,50mM HEPES(pH7.4),1mM EGTAおよびComplete Protease Inhibitor mix(Roche))中で細胞溶解した。細胞ライセートのアリコート(10〜15μl)を、1.5% β−メルカプトエタノールを含有するSDSサンプルバッファーと混合し、100℃で5分間の加熱により変性させ、10% NuPAGE Bis−Trisポリアクリルアミドゲル(Invitrogen)上で電気泳動させた。ついでサンプルをニトロセルロースメンブレンにエレクトロトランスファーし、それをTBSTバッファー(10mM Tris−HCl,pH8.0,100mM NaClおよび0.1% Tween−20)中で洗浄し、2.5%脱脂乳を含有するTBST中で室温で30分間ブロッキングした。メンブレンを、ブロッキングバッファー中、0.5μg/mlのmAb175と共に4℃で一晩インキュベートした。c−mycエピトープを検出するために、並行メンブレンをmAb9B11(1:5000,Cell Signaling Technology,Danvers,Massachussets)でプローブした。メンブレンをTBST中で洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ウサギ抗マウスIgG(Biorad)を1:5000の希釈度で含有するブロッキングバッファー中で室温で2時間インキュベートした。ついでブロットをTBST中で洗浄し、Western Pico Chemiluminescent Substrate(Pierce,Rockford,Illinois)とのインキュベーションの後、オートラジオグラフィーフィルムを使用して現像した。
【0198】
哺乳類細胞および酵母において発現されたEGFR断片を使用するmAb175のマッピング
増殖ホルモンに融合された、残基274、282、290および298から始まり全てアミノ酸501で終わる一連の重複c−mycタグ化EGFRエクトドメイン断片をは、既に記載されている(6)。
【0199】
酵母細胞表面上でのEGFRタンパク質の発現を、既に記載されているとおり(7)に行った。簡潔に説明すると、形質転換されたコロニーを、酵母窒素塩基、カゼイン加水分解物、デキストロースおよびリン酸バッファー(pH7.4)を含有する最少培地内で、5〜6のOD600に達するまで約1日間、振とうプラットフォーム上、30℃で増殖させた。ついで酵母細胞を、ガラクトースを含有する最少培地に移すことにより、タンパク質提示のために誘導し、30℃で24時間、振とうしながらインキュベートした。ついで培養を、分析するまで4℃で保存した。c−mycモノクローナル抗体9E10を含有する腹水原液をCovance(Richmond,CA)から入手した。1×10個の酵母細胞を氷冷FACSバッファー(1mg/ml BSAを含有するPBS)で洗浄し、抗c−myc腹水(1:50希釈)またはヒトEGFRモノクローナル抗体(10μg/ml)と共に50μlの最終容量中、4℃で1時間インキュベートした。ついで該細胞を氷冷FACSバッファーで洗浄し、フィコエリトリン標識抗マウスIgG(1:25希釈)と共に50μlの最終容量中、遮光条件下、4℃で1時間インキュベートした。該酵母細胞を氷冷FACSバッファーで洗浄した後、蛍光データをCoulter Epics XLフローサイトメーター(Beckman−Coulter)で得、WinMDIサイトメトリーソフトウェア(J.Trotter,Scripps University)で分析した。直線エピトープかコンホメーションエピトープかの決定のために、酵母細胞を80℃で30分間加熱し、ついで氷上で20分間冷却した後、抗体で標識した。表2に挙げられている一連のEGFR突然変異体は既に記載されている(8)。
【0200】
EGFR突然変異構築物を発現する安定細胞系の作製および特徴づけ
EGFR突然変異体を発現する細胞系の作製
突然変異EGFRを発現する安定細胞系をネオマイシン含有培地内での選択により得た。最終選択後、mRNAを各細胞系から単離し、逆転写し、EGFR配列をPCRにより増幅した。発現されたEGFR内の全ての突然変異を、該PCR産物を配列決定することにより確認した。5% FCS、5mM EDTA、PBS中で10μg/mlの抗EGFR抗体mAb528(9;10)を使用し、ついでAlexa 488標識抗マウスIg(1:4000の最終希釈度)を使用して、FACStar(Becton and Dickinson,Franklin Lakes,NJ)でのFACS分析により、EGFR発現のレベルを決定した。クラスが釣り合った無関係な一次抗体と共に該細胞をインキュベートすることにより、バックグラウンド蛍光を決定した。RPMI,10% FCS、10% WEHI3B馴らし培地および1.5mg/ml G418中、全ての細胞を常法により継代した。
【0201】
突然変異EGFRのEGF依存的活性化
wtEGFRまたはC271A/C283A−EGFRを発現する細胞を洗浄し、血清もIL−3も含有しない培地内で3時間インキュベートした。細胞を遠心分離により集め、EGF(100ng)または同等容量のPBSを含有する培地に再懸濁させた。15分後、細胞を集め、ペレット化し、β−メルカプトエタノールを含有するSDS/PAGEサンプルバッファー中で直接的に細胞溶解した。サンプルをNuPAGE 4〜12% 勾配ゲル上で分離し、Immobilon PVDFメンブレン上にトランスファーし、抗ホスホチロシン(4G10,Upstate Biotechnologies)または抗EGFR抗体(mAb806,LICRにて製造)でプローブした。化学発光を用いて、反応性バンドを検出した。
【0202】
細胞増殖に対するEGFおよび抗体の効果
対数期で増殖している細胞を集め、PBSで2回洗浄して残存IL−3を除去した。細胞をRPMI 1640+10% FCSに再懸濁させ、担体のみ又は漸増濃度のEGFを伴う10 細胞/ウェルで96ウェルプレートに播いた。適当な場合には、一定濃度のmAb528またはmAb806(2μg/ウェル)をも該培地に加えた。MTTアッセイ(11)を用いて、増殖を決定した。
【0203】
コンホメーション特異的抗体との反応性
細胞を遠心分離により集め、対照または試験抗体(全て、FACSバッファー中、10μg/ml、氷上で40分間、FACSバッファー中で洗浄)、ついでAlexa488標識抗マウスIgG(1:400の最終希釈度、氷上で20分間)で染色した。該細胞を氷冷FACSバッファーで洗浄し、遠心分離により集め、FACScanで分析し、CellQuest(Becton and Dickinson)における統計ツールを使用してピーク蛍光チャネルおよび蛍光中央値を各サンプルに関して決定した。バックグラウンド(陰性対照)蛍光を全測定値から導き出した。蛍光中央値を、ピーク形状および蛍光強度を最もよく代表するものとして選択し、mAb806対mAb528結合の比を導き出すために用いた。
【0204】
175および806Fab、Fab−ペプチド複合体の結晶構造決定ならびに溶液中の806ペプチドエピトープのNMR構造の
10mg/ml Fab、ならびに0.1M 酢酸ナトリウムバッファー(pH4.6)、6〜8% PEG6000および15〜20% イソプロパノールを含有するレザバーを使用して、懸滴蒸気拡散(hanging drop vapour diffusion)により、天然806Fabの結晶を成長させた。データ収集のために、0.1M 酢酸ナトリウムバッファー(pH4.6)、10% PEG6000、15〜20% イソプロパノールおよび10% グリセロールを含有する凍結防止剤溶液に結晶を移した。ついで結晶をナイロンループにおいてマウントし、直接的に液体窒素中で瞬間冷凍した。
【0205】
10mg/ml Fab−ペプチド複合体、ならびに0.2M 酢酸ナトリウム、16〜18% PEG5,000モノメチルエーテルを含有する貯蔵器を使用して、懸滴蒸気拡散(hanging drop vapour diffusion)により、806 Fab−ペプチド複合体の結晶を成長させ、ついで種入れ(seeding)技術により結晶の質を改善した。データ収集のために、25% グリセロールで補足されたレザバーよりなる凍結防止剤溶液に結晶を移した。ついで結晶をナイロンループにおいてマウントし、直接的に液体窒素中で瞬間冷凍した。
【0206】
175 Fab−ペプチド複合体の結晶を、まず、Topaz結晶化系(Fluidigm,San Francisco)を使用する自由境界拡散(free interface diffusion)により成長させた。同様の条件で7mg/ml Fab、0.1M ビス−トリスプロパンバッファー、0.2M 酢酸アンモニウムおよび18% PEG 10,000を使用する懸滴蒸気拡散(hanging drop vapour diffusion)により、微結晶を成長させた。ついで微結晶を0.15m ギ酸ナトリウムおよび15% PEG 1500中へのストリークシーディングにより改良して、小さな板状結晶を得た。データ収集のために、25% グリセロールで補足されたレザバーよりなる凍結防止剤溶液に結晶を移した。ついで結晶をナイロンループにおいてマウントし、直接的に液体窒素中で瞬間冷凍した。
【0207】
AXCO光学装置を備えたRigaku micromax−007ジェネレーター上のR−AXIS IV検出器を使用して、806 Fabおよび175 Fab複合体結晶に関する回折データを社内で集め、ついでこれらのデータを、CrystalClearを使用して処理した。806 Fab−ペプチド複合体データを、ビームラインX29,Brookhaven National LaboratoryにおけるADSC量子315 CCD検出器で集め、これらのデータをHKL2000で処理した(12)(データ収集統計を表1に示す)。Fab構造2E8の座標を使用するプログラムMOLREP(13)を使用する分子置換により、天然806 Fabを解析し、該構造の精密化をREFMAC5(14)において行い、モデル構築をCoot(15)において行った。806−ペプチドおよび175 Fab−ペプチド構造を、806 Fab構造の座標を使用するプログラムMOLREPを使用する分子置換により解析し、精密化および再構築を、再び、REFMAC5およびCOOTにおいて行い、最終構造の妥当性証明(O.Validation)をPROCHECK(16)およびWHATCHECK(17)で行った。
【0208】
NMR研究
NMR研究のために、15NHClで補足されたNeidhardtの最少培地(19)内で大腸菌(E.coli)を増殖させること以外はFairlieら(18)により既に記載されている方法を用いて、SHP2のSH2ドメインへの融合体として、15N標識ペプチドを組換え製造した。該ペプチドを、CNBrを使用して該融合相手から切断し、逆相HPLCにより精製し、その同一性をMALDI−TOF質量分析およびN末端配列決定により確認した。該ペプチド自体の内部での切断ではなく該融合相手からの切断を可能にするために、806抗体−結合配列内のメチオニン残基をロイシンへと突然変異させた。
【0209】
NMR研究に使用したサンプルは、5% HO、70mM NaClおよび50mM NaPOを含有するHO溶液(pH6.8)中で調製した。全てのスペクトルは、クリオプローブ(cryoprobe)を使用して、Bruker Avance500分光計で、298Kで得た。標準的な2D TOCSYおよびNOESYならびに15N−編集(edited)TOCSYおよびNOESYスペクトルを使用して、m806Fabの非存在下、該ペプチドの連続的帰属を確立した。fAb806の非存在下および存在下の該ペプチドの15N HSQCスペクトルをモニターすることにより、該ペプチドとfAb806との間の相互作用を調べた。fAb806の存在下の該ペプチドの15N HSQCのスペクトルのスペクトル変動は、該ペプチドが、該存在溶液条件下でfAb806に結合可能であったことを明らかに示している。しかし、該複合体形態における該ペプチドの詳細なコンホメーションは決定しなかった。
【0210】
【表6】

【0211】
【表7】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍形成性、過剰増殖性または異常細胞においては見出されるが正常細胞においては検出不可能であるEGFRエピトープを認識する単離された抗体であって、該抗体が連結ペプチドLEEKKGNYVVTDH(配列番号13)を認識せず、該抗体が、配列番号1〜3から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDRドメイン配列と、配列番号4〜6から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDRドメイン配列とを有する、抗体。
【請求項2】
EGFRアミノ酸ペプチドエピトープ287CGADSYEMEEDGVRKC302(配列番号14)を認識する、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
配列番号4、5および6を含む重鎖可変領域CDR1、2および3配列を有する単離された抗体。
【請求項4】
配列番号1、2および3を含む軽鎖可変領域CDR1、2および3配列を有する単離された抗体。
【請求項5】
完全にヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ化抗体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の単離された抗体。
【請求項6】
EGFRエピトープペプチド287CGADSYEMEEDGVRKC302(配列番号14)を認識し、de2−7 EGFR連結ペプチドLEEKKGNYVVTDH(配列番号13)を認識しない単離された抗体であって、配列番号1、2、3、4、5および/または6の1以上に記載されているものと実質的に同じポリペプチド配列を含む抗体。
【請求項7】
該結合ドメインがヒト抗体フレームワークにより含有されている、請求項1〜4または6のいずれか1項に記載の単離された抗体。
【請求項8】
配列番号4、5および/または6に記載されているCDR配列を有する可変重鎖とヒトIgG1定常領域とを含んでなる抗体。
【請求項9】
配列番号1、2および/または3に記載されているCDR配列を有する可変軽鎖とヒトカッパ定常領域とを含んでなる抗体。
【請求項10】
抗体F(ab’)、scFvフラグメント、ジアボディ、トリアボディまたはテトラボディの形態の、請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項11】
検出可能または機能的な標識を含有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項12】
該標識が、共有結合している薬物である、請求項11に記載の抗体。
【請求項13】
該標識が放射能標識である、請求項11に記載の抗体。
【請求項14】
該抗体がペジル化(pegylated)されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗体をコードする配列を含んでなる単離された核酸。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体の製造方法であって、該抗体の発現を引き起こす条件下、請求項15記載の核酸を発現させ、該抗体を回収することを含んでなる製造方法。
【請求項17】
ヒトまたは動物の身体の治療または診断の方法において使用するための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項18】
EGFR腫瘍抗原に結合しうる抗体の製造方法であって、
a)CDRコード領域を欠くVHドメインをコードする核酸の出発レパートリーを準備し、
b)該レパートリーを、配列番号4、5または6のいずれかに記載されているのと実質的に同じアミノ酸配列をコードするドナー核酸と合体させて、該ドナー核酸を該欠落CDR領域内に挿入して、VHドメインをコードする核酸の産物レパートリーを得、
c)該産物レパートリーの核酸を発現させ、
d)試験動物における>1:1の最大腫瘍:血液局在化比を有し、場合によっては、該比において、<1:1の腫瘍非含有器官:血液比を有する特異的結合メンバーを選択し、
e)該結合メンバーまたはそれをコードする核酸を回収することを含んでなる製造方法。
【請求項19】
ヒト患者における腫瘍の治療方法であって、請求項1〜14および17のいずれか1項に記載の特異的結合メンバーまたは抗体の有効量を該患者に投与することを含んでなる方法。
【請求項20】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体、場合によっては、試薬および/または使用説明を含んでなる、EGFRが異常発現される又はEGFRが増幅される若しくは突然変異体である腫瘍の診断のためのキット。
【請求項21】
請求項1〜12および15のいずれか1項に記載の抗体、ならびに場合によっては、医薬上許容されるビヒクル、担体または希釈剤を含んでなる医薬組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の医薬組成物の医薬剤形ならびに、化学療法剤、抗EGFR抗体、放射線免疫療法剤およびそれらの組合せよりなる群から選ばれる追加的な抗癌剤を含む別個の医薬剤形とを含んでなる、ヒト患者における腫瘍の治療のためのキット。
【請求項23】
該化学療法剤が、チロシンキナーゼインヒビター、リン酸化カスケードインヒビター、翻訳後モジュレーター、細胞成長または分裂インヒビター(例えば、抗有糸分裂物質)、シグナル伝達インヒビターおよびそれらの組合せよりなる群から選ばれる、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
該チロシンキナーゼインヒビターが、AG1478、ZD1839、STI571、OSI−774、SU−6668およびそれらの組合せよりなる群から選ばれる、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
該抗EGFR抗体が、抗EGFR抗体528、225、SC−03、DR8.3、L8A4、Y10、ICR62、ABX−EGFおよびそれらの組合せよりなる群から選ばれる、請求項22に記載のキット。
【請求項26】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗体またはそのフラグメントをコードするDNA配列またはその縮重変異体を含む組換えDNA分子で形質転換された単細胞宿主。
【請求項27】
単細胞宿主が、大腸菌(E.coli)、シュードモナス(Pseudomonas)、バシラス(Bacillus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、酵母、CHO、YB/20、NSO、SP2/0、R1.1、B−W、L−M、COS1、COS7、BSC1、BSC40およびBMT10細胞、植物細胞、昆虫細胞ならびにヒト細胞(組織培養内のもの)よりなる群から選ばれる、請求項26に記載の該単細胞宿主。
【請求項28】
増幅されたEGFRまたはde2−7EGFRの存在を検出するための方法であって、
A.増幅されたEGFRまたはde2−7EGFRの存在が疑われる哺乳動物からの生物学的サンプルを、請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体と、該抗体への該EGFRの結合が生じることを可能にする条件下で接触させ、
B.該サンプルからのEGFRと該抗体との間の結合が生じたかどうかを検出することにより、該EGFRを測定し、
ここで、結合の検出が該サンプル中の該EGFRの存在または活性を示す、方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法によりEGFRの存在または活性を検出することを含んでなる、哺乳動物における癌を検出するための方法であって、該EGFRの存在の検出が該哺乳動物における腫瘍または癌の存在を示す、方法。
【請求項30】
請求項21に記載の医薬組成物または請求項22に記載のキットの治療的有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における癌を予防および/または治療するための方法。
【請求項31】
請求項21に記載の医薬組成物または請求項22に記載のキットの治療的有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における異常発現EGFRを産生する脳固有癌の治療方法。
【請求項32】
該脳固有癌が、膠芽腫、髄芽腫、髄膜腫、腫瘍性星状細胞腫および増殖性動静脈奇形から選ばれる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
該医薬組成物または該キットを全身投与する、請求項30または31に記載の方法。
【請求項34】
請求項21に記載の医薬組成物または請求項22に記載のキットの治療的有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における悪性神経性腫瘍の治療方法。
【請求項35】
哺乳動物における癌の治療または予防のための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の特異的結合メンバーまたは抗体の使用。
【請求項36】
哺乳動物における癌の治療または予防のための、請求項21に記載の医薬組成物または請求項22に記載のキットの使用。
【請求項37】
哺乳動物における癌の治療または予防のための医薬の製造のための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体の使用。
【請求項38】
該癌が脳または脳付近に位置する、請求項35〜37のいずれか1項に記載の使用。
【請求項39】
哺乳動物における神経性腫瘍の治療または予防のための医薬の製造のための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体の使用。
【請求項40】
治療のための方法が放射線免疫療法を含む、請求項35〜39のいずれか1項に記載の使用。
【請求項41】
まず、請求項21に記載の抗体組成物を投与し、ついで、化学療法剤を含む組成物を投与する、請求項35〜39のいずれか1項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−536340(P2010−536340A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521045(P2010−521045)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/009771
【国際公開番号】WO2009/023265
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(500025570)ルードヴィッヒ インスティテュート フォー キャンサー リサーチ (16)
【Fターム(参考)】