説明

EGR制御装置

【課題】ハイブリッド車両に搭載されたエンジンの間欠始動時において、EGR装置を適切に制御する。
【解決手段】EGR制御装置(100)は、エンジン(11)と、排気ガスの少なくとも一部をエンジンに還流するEGR手段(12)と、を備えるハイブリッド車両(1)に搭載されている。該EGR制御装置は、エンジンが一時的に停止された後に始動される際に、エンジンの吸気温度が高いほど、エンジンの始動時からEGR手段の動作開始時までの時間であるディレイ時間が長くなるようにEGR手段を制御する制御手段(21)を備える。当該EGR制御装置によれば、エンジン11の間欠始動時におけるEGR導入に起因するノッキングの発生を抑制すると共に、ノッキングの発生に起因する点火時期が遅角されることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハイブリッド自動車等の車両に搭載されるエンジンが備えるEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置を制御するEGR制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、ハイブリッド車両に搭載されたエンジンが間欠運転される際の、エンジン始動時における点火遅角量、燃焼室内の空気充填率、及び燃料噴射量の少なくとも一つに基づいて、EGR装置を作動させるまでのディレイ時間を設定する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
或いは、吸気温度の上昇に合わせてEGR率を増加させ、ノッキングを防止する装置が提案されている(特許文献2参照)。或いは、エンジン回転数、エンジントルク、吸気温及び冷却水温を考慮してEGRの制御を実行することにより、EGR制御中のノッキングを抑制する装置が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−114861号公報
【特許文献2】特開2007−056773号公報
【特許文献3】特開2003−328839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の背景技術には改良の余地があるという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、ハイブリッド車両に搭載されたエンジンの間欠始動時において、EGR装置を適切に制御することができるEGR制御装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のEGR制御装置は、上記課題を解決するために、エンジンと、排気ガスの少なくとも一部を前記エンジンに還流するEGR手段と、を備えるハイブリッド車両に搭載され、前記エンジンが一時的に停止された後に始動される際に、前記エンジンの吸気温度が高いほど、前記エンジンの始動時から前記EGR手段の動作開始時までの時間であるディレイ時間が長くなるように前記EGR手段を制御する制御手段を備える。
【0008】
本発明のEGR制御装置によれば、当該EGR制御装置は、ハイブリッド車両に搭載されている。該ハイブリッド車両は、エンジンと、排気ガスの少なくとも一部をエンジンに還流するEGR手段とを備えて構成されている。
【0009】
ここで、EGR手段は、例えばVVT(Variable Valve Timing)機構を用いて、一旦排気通路に排出された排気ガスの少なくとも一部を気筒内に戻す、所謂内部EGRを実施してもよいし、EGR通路を介して吸気通路に排気ガスの少なくとも一部を還流させる、所謂外部EGRを実施してもよい。
【0010】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる制御手段は、エンジンが一時的に停止された後に始動される際に(つまり、エンジンが間欠始動される際に)、該エンジンの吸気温度が高いほど、エンジンの始動時からEGR手段の動作開始(即ち、EGR導入)時までの時間であるディレイ時間が長くなるようにEGR手段を制御する。ここで、「エンジンの始動時」とは、エンジンのクランクシャフトのクランキング開始時を意味する。
【0011】
本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。即ち、ハイブリッド車両では、モータのみで走行するモードと、エンジン及びモータを併用して走行するモードとが、効率が最も良くなるように、自動的に切り換えられる。つまり、ハイブリッド車両に搭載されたエンジンは、該ハイブリッド車両の走行中に間欠駆動されることとなり、比較的頻繁に停止制御及び始動制御が実施される。この結果、エンジンの間欠停止中にエンジンコンパートメント内の温度が上昇し、次回エンジンが始動される際の吸気温度が比較的高くなる。吸気温度が比較的高い場合に、EGRが導入されるとノッキングが発生しやすくなる。ノッキングが発生した場合に、点火時期が補正されると、過遅角となり燃費が悪化する可能性がある。
【0012】
しかるに本発明では、上述の如く、制御手段により、エンジンが間欠始動される際に、該エンジンの吸気温度が高いほどディレイ時間が長くなるようにEGR手段が制御される。このため、ノッキングの発生を好適に抑制することができる。他方、吸気温度が比較的低い場合には、EGRが比較的早期に導入されるので、燃費の向上を図ることができる。従って、本発明のEGR制御装置によれば、エンジンの間欠始動時において、EGR装置を適切に制御することができる。
【0013】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るハイブリッド車両の構成を示すブロック図である。
【図2】車速、エンジン回転数、吸気温等の時間変動の一例である。
【図3】車速、エンジン回転数、吸気温等の時間変動の他の一例である。
【図4】実施形態に係るEGR制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のEGR制御装置に係る実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0016】
先ず、実施形態に係るハイブリッド車両の構成について、図1を参照して説明する。図1は、実施形態に係るハイブリッド車両の構成を示すブロック図である。
【0017】
ハイブリッド車両1は、駆動源としての、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等のエンジン11と、モータ・ジェネレータ13(MG1)及び14(MG2)と、を備える。
【0018】
ハイブリッド車両1は更に、エンジン11やモータ・ジェネレータ13及び14で発生した動力を駆動輪18に伝達したり、駆動輪18の駆動をエンジン11やモータ・ジェネレータ13及び14に伝達したりする減速機17と、エンジン11の発生する動力を駆動輪18とモータ・ジェネレータ13との2経路に分配する動力分割機構(例えば、遊星歯車機構)15と、モータ・ジェネレータ13及び14を駆動するための電力を充電するバッテリ16と、エンジン11等を制御するECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)21と、を備える。
【0019】
エンジン11には、排気ガスを該エンジン11に還流するEGR装置12が設けられている。EGR装置12は、所謂内部EGRであってもよいし、所謂外部EGRであってもよい。
【0020】
ハイブリッド車両1は、発進時や減速走行時等であってエンジン11の効率が悪い場合には、モータ・ジェネレータ14の動力のみにより走行する。他方、ハイブリッド車両1は、高速走行時には、エンジン11の動力とモータ・ジェネレータ14の動力とを併用して走行する。また、ハイブリッド車両1の低速走行時であっても、例えばバッテリ16の充電が必要な場合や、エアコン等の補機を駆動する場合等では、エンジン11が駆動される。このため、ハイブリッド車両1のエンジン11は、該ハイブリッド車両1の走行中において、比較的頻繁に停止制御と始動制御とが実施される。
【0021】
すると、例えば図2の下から2段目(“吸気温”)に示すように、エンジン11の間欠停止中にエンジンコンパートメント内の温度が上昇することに起因して吸気温度が上昇する。このため、次回エンジン11が始動される際に、何らの対策も採らなければ、例えばEGRが導入されることによりノッキングが発生する可能性がある。更には、ノッキングが発生した場合に、点火時期が遅角補正(ここでは、ノックコントロールシステムによる遅角補正、又は、高吸気温時の点火補正項による遅角補正、を意味する)されると、過遅角となり燃費が悪化する可能性がある。
【0022】
しかるに、本実施形態に係るECU制御装置100は、エンジン11が間欠始動される際に、温度センサ22により検出された吸気温度が高いほど、エンジン11の始動時からEGR装置12の動作開始時までの時間であるディレイ時間が長くなるように該EGR装置12を制御するECU21を備えて構成されている。ここで、ディレイ時間の決定に用いられる吸気温度は、エンジン11の始動時(例えば、図3の時刻t1)の吸気温度である。
【0023】
このように構成すれば、吸気温度が比較高い場合であっても、例えば図3に示すように、外気が新たに吸入されることに起因して吸気温度が低下した後に、EGRが導入される(図3の時刻t2参照)。この結果、エンジン11の間欠始動時におけるノッキングの発生を抑制することができる。更には、ノッキングの発生に起因する燃費の悪化を抑制することができる。他方、吸気温度が比較的低い場合には、ディレイ時間が比較的短くなるので、早期にEGRが導入され、燃費の向上を図ることができる。
【0024】
図2及び図3は、車速、エンジン回転数、吸気温等の時間変動の一例である。等、図2における時間軸のスケールと、図3における時間軸のスケールとは相互に異なっている。
【0025】
次に、ハイブリッド車両1の、主に走行時にEGR制御装置100が実施するEGR制御処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0026】
図4において、先ず、EGR制御装置100の一部としてのECU21は、エンジン11の間欠停止後の間欠始動時であるか否かを判定する(ステップS101)。エンジン11の間欠停止後の間欠始動時ではないと判定された場合(ステップS101:No)、ECU21は一旦処理を終了する。
【0027】
他方、エンジン11の間欠停止後の間欠始動時であると判定された場合(ステップS101:Yes)、ECU21は、温度センサ22により吸気温度を検出する(ステップS102)。次に、ECU21は、検出された吸気温度に基づいてEGR導入ディレイ時間を算出する(ステップS103)。
【0028】
次に、ECU21は、エンジン11の間欠始動後の経過時間が、算出されたディレイ時間よりも長いか否かを判定する(ステップS104)。エンジン11の間欠始動後の経過時間が、算出されたディレイ時間よりも長いと判定された場合(ステップS104:Yes)、ECU21は、EGRを導入するようにEGR装置12を制御する(ステップS105)。
【0029】
他方、エンジン11の間欠始動後の経過時間が、算出されたディレイ時間よりも短いと判定された場合(ステップS104:No)、ECU21は、EGRを導入しないようにEGR装置12を制御する(ステップS106)。
【0030】
本実施形態に係る「EGR装置12」及び「ECU21」は、夫々、本発明に係る「EGR手段」及び「制御手段」の一例である。本実施形態では、ハイブリッド車両1の各種電子制御用のECU21の機能の一部を、EGR制御装置100の一部として用いている。
【0031】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うEGR制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0032】
1…ハイブリッド車両、11…エンジン、12…EGR装置、13、14…モータ・ジェネレータ、21…ECU、22…温度センサ、100…EGR制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、排気ガスの少なくとも一部を前記エンジンに還流するEGR手段と、を備えるハイブリッド車両に搭載され、
前記エンジンが一時的に停止された後に始動される際に、前記エンジンの吸気温度が高いほど、前記エンジンの始動時から前記EGR手段の動作開始時までの時間であるディレイ時間が長くなるように前記EGR手段を制御する制御手段を備える
ことを特徴とするEGR制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−113248(P2013−113248A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261439(P2011−261439)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】