EUV波長域用のミラー、当該ミラーを備えるマイクロリソグラフィ用の投影対物レンズ、及び当該対物レンズを備えるマイクロリソグラフィ用の投影露光装置
本発明は、基板(S)及び層構成体を備え、層構成体がそれぞれ個別層の少なくとも2つの周期(P2、P3)の周期的配列からなる複数の層サブシステム(P’’、P’’’)を備え、周期(P2、P3)が高屈折率層(H’’、H’’’)及び低屈折率層(L’’、L’’’)に関して異なる材料から構成される2つの個別層を含み、各サブシステム(P’’、P’’’)内で、隣接する層サブシステムの周期の厚さから逸脱した一定の厚さ(d2、d3)を有する、EUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)に関する。ミラーは、基板(S)から2番目に遠い層サブシステム(P’’)が有する周期(P2)の配列が、基板(S)から最も遠い層サブシステム(P’’’)の第1高屈折率層(H’’’)が基板から2番目に遠い層サブシステム(P’’)の最終高屈折率層(H’’)の直後に続くように、且つ/又は基板(S)から最も遠い層サブシステム(P’’’)が基板(S)から2番目に遠い層サブシステム(P’’)の周期(P2)の数(N2)よりも多い周期(P3)の数(N3)を有するようになっていることを特徴とする。本発明はさらに、上記ミラー(1a;1b;1c)を備えるマイクロリソグラフィ用の投影対物レンズ、及び当該投影対物レンズを備える投影露光装置に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EUV波長域用のミラーに関する。さらに、本発明は、当該ミラーを備えるマイクロリソグラフィ用の投影対物レンズに関する。さらに、本発明は、当該対物レンズを備えるマイクロリソグラフィ用の投影露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
EUV波長域用のマイクロリソグラフィ用の投影露光装置は、像平面へのマスクの露光又は結像に用いるミラーが高反射率を有するという前提に依存せざるを得ず、その理由は、第1に、個々のミラーの反射率値の積が投影露光装置の全透過率を決定するからであり、第2に、EUV光源の光パワーが限られているからである。
【0003】
高反射率値を有する約13nmのEUV波長域用のミラーは、例えば特許文献1から既知である。当該明細書に記載のミラーは、基板上に施されて個別層の配列を有する層構成体(layer arrangement)からなり、層構成体は、周期を形成する種々の材料の少なくとも2つの個別層の周期的配列をそれぞれが有する複数の層サブシステムを備え、個々のサブシステムの周期の数及び周期の厚さは、基板から表面に向かって減少する。このようなミラーは、入射角間隔が0°〜20°である場合に30%よりも高い反射率を有する。
【0004】
この場合、入射角は、光線の入射方向と光線がミラーに衝突する点におけるミラーの表面に対する法線との間の角度として定義される。この場合、入射角間隔は、ミラーに関してそれぞれ考慮される最大入射角と最小入射角との間の角度間隔から得られる。
【0005】
しかしながら、上述の層に関して不利なのは、規定される入射角間隔での反射率が一定ではなく変動することである。しかしながら、入射角におけるミラーの反射率の変動は、マイクロリソグラフィ用の投影対物レンズにおいて高入射角及び高入射角変化を有する箇所でのこのようなミラーの使用には不利である。これは、そのような変動により、例えば上記投影対物レンズの瞳アポダイゼーショの変動が大きくなり過ぎるからである。この場合、瞳アポダイゼーションは、投影対物レンズの射出瞳における強度変動の測度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第101 55 711号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、投影対物レンズ又は投影露光装置内で高入射角及び高入射角変化を有する箇所で用いることができるEUV波長域用のミラーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、基板と複数の層サブシステムを含む層構成体とを備えるEUV波長域用のミラーにより本発明に従って達成される。この場合、層サブシステムはそれぞれ、個別層の少なくとも2つの周期の周期的配列からなる。この場合、周期は、高屈折率層及び低屈折率層に関して異なる材料から構成される2つの個別層を含み、各層サブシステム内で、隣接する層サブシステムの周期の厚さから逸脱した一定の厚さを有する。この場合、基板から2番目に遠い層サブシステムが有する周期の配列は、基板から最も遠い層サブシステムの第1高屈折率層が基板から2番目に遠い層サブシステムの最終高屈折率層の直後に続くように、且つ/又は基板から最も遠い層サブシステムが基板から2番目に遠い層サブシステムの周期の数よりも多い周期の数を有するようになっている。
【0009】
この場合、本発明によるミラーの層構成体の層サブシステムは、相互に直接連続し、さらに別の層システムによって分離されない。さらに、本発明において、高屈折率層と低屈折率層との間の周期の区分が他の点で同一であったとしても、隣接する層サブシステムの周期の厚さの差異として0.1nmを超える差異があれば、層サブシステムが隣接する層サブシステムと区別される。これは、0.1nmの差を超えると、高屈折率層と低屈折率層との間の周期の区分が他の点で同一であっても層サブシステムの異なる光学的効果を得ることが可能だからである。
【0010】
高屈折率及び低屈折率という用語は、この場合、EUV波長域において層サブシステムの1周期内の各相手層に関する相対的用語である。EUV波長域において、層サブシステムは、光学的に高い屈折率で働く層をそれよりも光学的に低い屈折率層と、層サブシステムの1周期の主要構成要素として組み合わせた場合にのみ概して機能する。
【0011】
本発明によれば、大きな入射角間隔で高く均一な反射率を得るために、基板から最も遠い層サブシステムの周期の数が基板から2番目に遠い層サブシステムの周期の数よりも多くなければならないことが認識された。さらに、大きな入射角間隔で高く均一な反射率を得るために、上述の措置の代替形態として又はそれに加えて、基板から最も遠い層サブシステムの第1高屈折率層が基板から2番目に遠い層サブシステムの最終高屈折率層の直後に続くべきであることが認識された。
【0012】
さらに、本発明の目的は、基板と複数の層サブシステムを含む層構成体とを備えるEUV波長域用の本発明によるミラーにより達成される。この場合、層サブシステムはそれぞれ、個別層の少なくとも2つの周期の周期的配列からなる。この場合、周期は、高屈折率層及び低屈折率層に関して異なる材料から構成される2つの個別層を含み、各層サブシステム内で、隣接する層サブシステムの周期の厚さから逸脱した一定の厚さを有する。この場合、基板から2番目に遠い層サブシステムが有する周期の配列は、基板から最も遠い層サブシステムの第1高屈折率層が基板から2番目に遠い層サブシステムの最終高屈折率層の直後に続くようになっている。さらに、層サブシステムを通るEUV放射線の透過率は、10%未満、特に2%未満となる。
【0013】
本発明によれば、大きな入射角間隔で高く均一な反射率を得るために、層構成体の下に位置する層又は基板の影響を低減しなければならないことが認識された。これは、基板から2番目に遠い層サブシステムが有する周期の配列が、基板から最も遠い層サブシステムの第1高屈折率層が基板から2番目に遠い層サブシステムの最終高屈折率層の直後に続くようになっている層構成体で、主に必要である。層構成体の下にある層又は基板の影響を低減するための1つの単純な可能性は、層構成体の下にある層まで透過させるEUV放射線が可能な限り少ないように層構成体を設計することである。これにより、層構成体の下にある上記層又は基板がミラーの反射率特性に大きく寄与することが可能となる。
【0014】
一実施形態では、層サブシステムは、この場合、高屈折率層及び低屈折率層に関して同じ材料から全て構成される。これは、ミラーの製造を単純化するためである。
【0015】
基板から最も遠い層サブシステムの周期の数が9〜16の値に相当するEUV波長域用のミラー、及び基板から2番目に遠い層サブシステムの周期の数が2〜12の値に相当するEUV波長域用のミラーは、ミラーに必要な層の総数を制限することにつながり、したがってミラーの製造時の複雑性及び危険性を低減することにつながる。
【0016】
さらに別の実施形態では、本発明によるミラーの層構成体は、少なくとも3つの層サブシステムを備え、基板の最も近くに位置する層サブシステムの周期の数は、基板から最も遠い層サブシステムの周期の数及び/又は基板から2番目に遠い層サブシステムの周期の数よりも多い。
【0017】
これらの措置は、ミラーの反射特性を層構成体の下にある層又は基板から切り離すことを促し、他の機能特性を有する他の層又は他の基板材料をミラーの層構成体の下で用いることが可能となる。
【0018】
したがって、第1に、すでに上述したように、ミラーの光学特性に対する、この場合は特に反射率に対する層構成体の下にある層又は基板の摂動作用を回避することが可能であり、第2に、層構成体の下にある層又は基板がEUV放射線から十分に保護されることがこれにより可能である。
【0019】
さらに別の実施形態では、EUV放射線からのこのような保護は、例えば、層構成体の下にある層又は基板の特性がEUV照射下で長期安定性を有さない場合に必要であり得るが、上述の措置に加えて又はその代替形態として、層構成体と基板との間にある20nmを超える厚さを有する金属層により確保される。このような保護層を「表面保護層」(SPL)とも称する。
【0020】
この場合、層構成体の反射率、透過性、及び吸収性といった特性が層構成体の周期の数に対して非線形の挙動を示し、反射率が特に、層構成体の周期の数に関して限界値に向かって飽和挙動を示すことを考慮に入れるべきである。結果として、上記保護層を用いて、層構成体の下にある層又は基板をEUV放射線から保護するのに必要な層構成体の周期の数を、反射率特性を達成するのに必要な周期の数に減らすことができる。
【0021】
さらに、層サブシステムが少数である場合に層構成体で特に高い反射率値を得ることが可能なのは、この場合は基板から最も遠い層サブシステムの周期が、基板から2番目に遠い層サブシステムの周期の高屈折率層の厚さの120%を超える、特にその厚さの2倍を超える高屈折率層の厚さを有する場合であることが認識された。
【0022】
さらに別の実施形態において層サブシステムが少数である場合に層構成体で特に高い反射率値を得ることが同様に可能なのは、基板から最も遠い層サブシステムの周期が、基板から2番目に遠い層サブシステムの周期の低屈折率層の厚さの80%未満、特に2/3未満の低屈折率層の厚さを有する場合である。
【0023】
さらに別の実施形態では、EUV波長域用のミラーは、基板から2番目に遠い層サブシステムに関して、その周期の低屈折率層の厚さが4nmを超え、特に5nmを超える。この結果として、反射率自体に関してだけでなく、目標の入射角間隔にわたるp偏光の反射率に対するs偏光の反射率に関しても、層設計を適合させることができる可能性がある。したがって、主に2つの層サブシステムのみからなる層構成体の場合、限られた数の層サブシステムの結果として自由度が限られるにもかかわらず、偏光適合を行うことが可能となる。
【0024】
別の実施形態では、EUV波長域用のミラーは、基板から最も遠い層サブシステムの周期の厚さが7.2nm〜7.7nmである。これにより、大きな入射角間隔で特に高い均一な反射率値を実現することが可能である。
【0025】
さらに、別の実施形態は、ミラーの層構成体と基板との間に中間層又は中間層構成体を有し、これは層構成体の応力補償の役割を果たす。このような応力補償により、層を施している間のミラーの変形を回避することが可能である。
【0026】
本発明によるミラーの別の実施形態では、1周期を形成する2つの個別層は、材料としてモリブデン(Mo)及びケイ素(Si)、又は材料としてルテニウム(Ru)及びケイ素(Si)のいずれかからなる。これにより、ミラーの層構成体の層サブシステムを製造するのに異なる材料を2つしか用いないため、特に高い反射率値を達成すると同時に生産工学的利点を実現することが可能である。
【0027】
この場合、さらに別の実施形態では、上記個別層は、少なくとも1つのバリア層により分離され、バリア層は、B4C、C、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ホウ化ケイ素、窒化モリブデン、炭化モリブデン、ホウ化モリブデン、窒化ルテニウム、炭化ルテニウム、及びホウ化ルテニウムの材料群から選択されるか、又は化合物としてこの材料群から構成される材料からなる。このようなバリア層は、1周期の2つの個別層間での相互拡散を抑制することにより、2つの個別層の移行部における光学的コントラストを高める。1周期の2つの個別層に材料としてモリブデン及びケイ素を用いた場合、基板から見てSi層の上に1つのバリア層があれば、十分なコントラストを提供するのに十分である。この場合、Mo層の上の第2のバリア層を省くことができる。これに関して、1周期の2つの個別層を分離するために少なくとも1つのバリア層を設けるべきであり、この少なくとも1つのバリア層は、上記材料又はそれらの化合物の種々のものから完璧に構成することができ、この場合も異なる材料又は化合物の層状構成を示し得る。
【0028】
材料としてB4Cを含み、0.35nm〜0.8nm、好ましくは0.4nm〜0.6nmの厚さを有するバリア層で、実際には層構成体の高反射率値が得られる。特に、ルテニウム及びケイ素から構成される層サブシステムの場合、B4Cから構成されるバリア層は、バリア層の厚さが0.4nm〜0.6nmの値である場合に最大反射率を示す。
【0029】
さらに別の実施形態では、本発明によるミラーは、ミラーの層構成体の終端となる化学的に不活性な材料から構成される少なくとも1つの層を含む被覆層システムを備える。これにより、ミラーは周囲の影響から保護される。
【0030】
別の実施形態では、本発明によるミラーは、0.9〜1.05の値、特に0.933〜1.018の値を有するミラー表面に沿った層構成体の厚さ係数を有する。これにより、ミラー表面の種々の箇所をそこに生じる種々の入射角に目標をより絞って適合させることが可能である。
【0031】
この場合、厚さ係数は、所与の層設計の層の厚さ全部が乗算的に(in multiplied fashion)基板上の1箇所で実現される際の係数である。したがって、厚さ係数1は、公称層設計に相当する。
【0032】
さらなる自由度としての厚さ係数は、ミラー自体の層設計を変える必要なく、ミラーの種々の箇所をそこに生じる種々の入射角間隔に目標をより絞って適合させることを可能にし、その結果、ミラーは最終的に、ミラー上の種々の箇所における入射角間隔が大きいほど、固定の厚さ係数を1とした関連の層設計自体により許されるよりも高い反射率値をもたらす。したがって、厚さ係数の適合により、高入射角を確保するのに加えて、入射角にわたる本発明によるミラーの反射率の変動をさらに低減することも可能である。
【0033】
さらに別の実施形態では、ミラー表面の各箇所における層構成体の厚さ係数は、そこに生じる最大入射角と相関するが、これは、最大入射角が大きいほど大きな厚さ係数が適合に有用であるからである。
【0034】
さらに、本発明の目的は、本発明による少なくとも1つのミラーを備える投影対物レンズにより達成される。
【0035】
さらに、本発明の目的は、このような投影対物レンズを備えるマイクロリソグラフィ用の本発明による投影露光装置により達成される。
【0036】
本発明のさらに他の特徴及び利点は、本発明にとって重要な詳細を示す図面を参照して以下の本発明の例示的な実施形態の説明から、また特許請求の範囲から明らかとなるであろう。個々の特徴は、それぞれ個別に単独で、又は本発明の変形形態において任意の所望の組み合わせで複数として実現することができる。
【0037】
本発明の例示的な実施形態を、図面を参照して以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による第1ミラーの概略図を示す。
【図2】本発明による第2ミラーの概略図を示す。
【図3】本発明による第3ミラーの概略図を示す。
【図4】マイクロリソグラフィ用の投影露光装置用の本発明による投影対物レンズの概略図を示す。
【図5】投影対物レンズの像視野の概略図を示す。
【図6】投影対物レンズ内の光軸に対する本発明によるミラーの各箇所の距離に対する、最大入射角及び入射角間隔の間隔長の例示的な図である。
【図7】本発明によるミラーの基板上の光学的利用領域の概略図を示す。
【図8】図1からの本発明による第1ミラーの入射角に対するいくつかの反射率値の概略図を示す。
【図9】図1からの本発明による第1ミラーの入射角に対するさらに他の反射率値の概略図を示す。
【図10】図2からの本発明による第2ミラーの入射角に対するいくつかの反射率値の概略図を示す。
【図11】図2からの本発明による第2ミラーの入射角に対するさらに他の反射率値の概略図を示す。
【図12】図3からの本発明による第3ミラーの入射角に対するいくつかの反射率値の概略図を示す。
【図13】図3からの本発明による第3ミラーの入射角に対するさらに他の反射率値の概略図を示す。
【図14】本発明による第4ミラーの入射角に対するいくつかの反射率値の概略図を示す。
【図15】本発明による第4ミラーの入射角に対するさらに他の反射率値の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明による各ミラー1a、1b、及び1cを、図1、図2、及び図3を参照して以下で説明する。図中、ミラーの対応の特徴は同じ参照符号を有する。さらに、本発明によるこれらのミラーの対応の特徴又は特性を、図3に関する説明に従って図1〜図3について要約して後述する。
【0040】
図1は、基板S及び層構成体を備えるEUV波長域用の本発明によるミラー1aの概略図を示す。この場合、層構成体は、それぞれが個別層の少なくとも2つの周期P1、P2、及びP3の周期的配列からなる複数の層サブシステムP’、P’’、及びP’’’を備え、周期P1、P2、及びP3は、高屈折率層H’、H’’、及びH’’’と低屈折率層L’、L’’、及びL’’’とに関して異なる材料から構成される2つの個別層を含み、各層サブシステムP’、P’’、及びP’’’内で、隣接する層サブシステムの周期の厚さから逸脱した一定の厚さd1、d2、及びd3を有する。この場合、基板から最も遠い層サブシステムP’’’は、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の周期P2の数N2よりも多い周期P3の数N3を有する。さらに、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’が有する周期P2の配列は、基板から最も遠い層サブシステムP’’’の第1高屈折率層H’’’が基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の最終高屈折率層H’’の直後に続くようになっている。
【0041】
結果として、図1において、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の周期P2内における高屈折率層H’’及び低屈折率層L’’の順序は、他の層サブシステムP’、P’’’の他の周期P1、P3内における高屈折率層H’、H’’’及び低屈折率層L’、L’’に対して逆になっているため、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の第1低屈折率層L’’も、基板の最も近くに位置する層サブシステムP’の最終低屈折率層L’の後に光学的に活性に続く。したがって、図1において基板から2番目に遠い層サブシステムP’’は、後述する図2及び図3における他の層サブシステムとも層の順序が異なる。
【0042】
図2は、基板S及び層構成体を備えるEUV波長域用の本発明によるミラー1bの概略図を示す。この場合、層構成体は、層構成体は、それぞれが個別層の少なくとも2つの周期P1、P2、及びP3の周期的配列からなる複数の層サブシステムP’、P’’、及びP’’’を備え、周期P1、P2、及びP3は、高屈折率層H’、H’’、及びH’’’と低屈折率層L’、L’’、及びL’’’とに関して異なる材料から構成される2つの個別層を含み、各層サブシステムP’、P’’、及びP’’’内で、隣接する層サブシステムの周期の厚さから逸脱した一定の厚さd1、d2、及びd3を有する。この場合、基板から最も遠い層サブシステムP’’’は、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の周期P2の数N2よりも多い周期P3の数N3を有する。この場合、図1に関する例示的な実施形態の場合とは異なり、基板から2番目に遠いサブシステムP’’が有する周期P2の配列は、他の層サブシステムP’及びP’’’の周期P1及びP3の配列に対応し、基板から最も遠い層サブシステムP’’’の第1高屈折率層H’’’が基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の最終低屈折率層L’’の後に光学的に活性に続くようになっている。
【0043】
図3は、基板S及び層構成体を備えるEUV波長域用の本発明によるミラー1cの概略図を示す。この場合、層構成体は、それぞれが個別層の少なくとも2つの周期P2及びP3の周期的配列からなる複数の層サブシステムP’’及びP’’’を備え、周期P2及びP3は、高屈折率層H’’及びH’’’と低屈折率層L’’及びL’’’とに関して異なる材料から構成される2つの個別層を含み、各層サブシステムP’’及びP’’’内で、隣接する層サブシステムの周期の厚さから逸脱した一定の厚さd2及びd3を有する。この場合、図14及び図15に関する説明による例示的な第4実施形態において、基板から最も遠い層サブシステムP’’’は、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の周期P2の数N2よりも多い周期P3の数N3を有する。この例示的な第4実施形態も、ミラー1aに対応する図3におけるミラー1cの図に関する変形形態として、基板Sから2番目に遠い層サブシステムP’’の逆の順序の層を含むため、この例示的な第4実施形態は、基板か最も遠い層サブシステムP’’’の第1高屈折率層H’’’が基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の最終低屈折率層L’’の後に光学的に活性に続くという特徴も有する。
【0044】
特に層サブシステムが少数、例えば層サブシステムが2つだけの場合、基板から最も遠い層サブシステムP’’’が、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の周期P2の高屈折率層H’’の厚さの120%を超える、特にその厚さの2倍を超える高屈折率層H’’’の厚さを有する場合に、高反射率値が得られることが分かる。
【0045】
図1〜図3に関する本発明によるミラーの層構成体の層サブシステムは、相互に直接連続し、さらに別の層システムにより分離されない。しかしながら、層構成体の相互適合又は層構成体の光学特性の最適化のために、個別中間層により層サブシステムを分離することが考えられる。しかしながら、光学特性の最適化は、図1に関する例示的な第1実施形態及び図3に関する変形形態としての例示的な第4実施形態の2つの層サブシステムP’’及びP’’’には当てはまらない。これは、所望の光学効果がP’’における層の配列の逆転により阻止されるからである。
【0046】
図1〜図3にH、H’、H’’及びH’’’で示した層は、EUV波長域において、L、L’、L’’及びL’’’として示した同じ層サブシステムの層と比較して高屈折率層として示すことができ、表2における材料の複素屈折率を参照されたい。これに対して、図1〜図3にL、L’、L’’及びL’’’で示した層は、EUV波長域において、H、H’、H’’及びH’’’として示した同じ層サブシステムの層と比較して低屈折率層として示すことができる。結果として、EUV波長域における高屈折率及び低屈折率という用語は、層サブシステムの1周期内の各相手層に関する相対的用語である。層サブシステムは、概して高屈折率で光学的に作用する層をそれに対して低い屈折率を光学的に有する層と、層サブシステムの1周期の主要構成要素として組み合わせた場合にのみ、EUV波長域において機能する。材料としてケイ素は、高屈折率層に概して用いられる。ケイ素と組み合わせて、材料としてモリブデン及びルテニウムは、低屈折率層として示すべきであり、表2における材料の複素屈折率を参照されたい。
【0047】
図1〜図3において、バリア層Bが、ケイ素及びモリブデンから構成された又はケイ素及びルテニウムから構成された周期の個別層間に位置付けられ、上記バリア層は、B4C、C、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ホウ化ケイ素、窒化モリブデン、炭化モリブデン、ホウ化モリブデン、窒化ルテニウム、炭化ルテニウム、及びホウ化ルテニウムの材料群から選択されるか、又は化合物としてこの材料群から構成される材料からなる。このようなバリア層は、1周期の2つの個別層間での相互拡散を抑制することにより、2つの個別層の移行部における光学的コントラストを高める。1周期の2つの個別層に材料としてモリブデン及びケイ素を用いた場合、基板から見てケイ素層の上に1つのバリア層があれば、十分なコントラストを提供するのに十分である。この場合、モリブデン層の上の第2のバリア層を省くことができる。これに関して、1周期の2つの個別層を分離するために少なくとも1つのバリア層を設けるべきであり、この少なくとも1つのバリア層は、上記材料又はそれらの化合物の種々のものから完璧に構成することができ、この場合も異なる材料又は化合物の層状構成を示し得る。
【0048】
材料としてB4Cを含み、0.35nm〜0.8nm、好ましくは0.4nm〜0.6nmの厚さを有するバリア層で、実際には層構成体の高反射率値が得られる。特に、ルテニウム及びケイ素から構成される層サブシステムの場合、B4Cから構成されるバリア層は、バリア層の厚さが0.4nm〜0.6nmの値である場合に最大反射率を示す。
【0049】
本発明によるミラー1a、1b、1cの場合、層サブシステムP’、P’’、及びP’’’の周期P1、P2、及びP3の数N1、N2、及びN3は、図1〜図3に示す個々の周期P1、P2、及びP3を最大100周期までそれぞれ含むことができる。さらに、図1〜図3に示す層構成体と基板Sとの間に中間層又は中間層構成体を設けることができ、これは、基板に対する層構成体の応力補償の役割を果たす。
【0050】
層構成体自体と同じ配列で同じ材料を、中間層又は中間層構成体の材料として用いることができる。しかしながら、中間層構成体の場合、個別層間のバリア層を省くことが可能であり、これは、中間層又は中間層構成体が概してミラーの反射率にごく僅かしか寄与しないため、バリア層によるコントラストの増加の問題がこの場合に重要でないからである。交互のクロム層及びスカンジウム層又はアモルファスモリブデン層若しくはルテニウム層から構成される多層構成体も同様に、中間層又は中間層構成体として考えられる。中間層構成体は、その下にある基板がEUV放射線から十分に保護されるように、厚さに関して、例えば20nmを超えるよう選択され得る。この場合、層は、いわゆる「表面保護層」(SPL)として働き、保護層としてEUV放射線からの保護を可能にする。
【0051】
本発明によるミラー1a、1b、1cの層構成体は、図1〜図3において、終端層Mとして例えばRh、Pt、Ru、Pd、Au、SiO2等の化学的に不活性な材料から構成される少なくとも1つの層を備える被覆層システムCにより終端する。したがって、上記終端層Mは、周囲の影響によるミラー表面の化学的変化を防止する。図1〜図3における被覆層システムCは、終端層Mに加えて、高屈折率層H、低屈折率層L、及びバリア層Bからなる。
【0052】
周期P1、P2、及びP3の1つの厚さは、図1〜図3から、対応周期の個別層の厚さの和として、すなわち、高屈折率層の厚さ、低屈折率層の厚さ、及び2つのバリア層の厚さから得られる。結果として、図1〜図3における層サブシステムP’、P’’、及びP’’’は、周期P1、P2、及びP3が異なる厚さd1、d2、及びd3を有することにより相互に区別することができる。結果として、本発明において、種々の層サブシステムP’、P’’、及びP’’’は、周期P1、P2、及びP3の厚さd1、d2、及びd3の差が0.1nmを超える層サブシステムであると理解される。その理由は、高屈折率層と低屈折率層との間の周期の区分が他の点で同一であるとすると、0.1nm未満の差では層サブシステムごとに異なる光学的効果を示すことができなくなるからである。さらに、本質的に同一の層サブシステムは、種々の製造装置での製造時に、その周期の厚さがこの絶対値だけ変動し得る。モリブデン及びケイ素から構成される周期を有する層サブシステムP’、P’’、及びP’’’の場合、すでに上述したように、周期P1、P2、及びP3内の第2バリア層を省くことで、この場合は周期P1、P2、及びP3の厚さが高屈折率層の厚さ、低屈折率層の厚さ、及びバリア層の厚さから得られるようにすることが可能である。
【0053】
図4は、図8〜図15に関する例示的な実施形態に従って本発明によるミラー1a、1b、又は1cに基づき構成される少なくとも1つのミラー1を含む6つのミラー1、11を有する、マイクロリソグラフィ用の投影露光装置用の本発明による投影対物レンズ2の概略図を示す。マイクロリソグラフィ用の投影露光装置のタスクは、レチクルとも称するマスクの構造を像平面内のいわゆるウェーハにリソグラフィで結像することである。この目的で、図4における本明による投影対物レンズ2は、物体平面5内に配置された物体視野3を像平面7内の像視野に結像させる。明確にするために図示しない構造保持マスクは、物体平面5内の物体視野3の箇所に配置することができる。向きを示す目的で、図4は、x軸が図の平面を向いた直交座標系を示す。この場合、x―y座標平面は、物体平面5と一致し、z軸は、物体平面5に対して垂直であり下向きである。投影対物レンズは、物体視野3を通らない光軸9を有する。投影対物レンズ2のミラー1、11は、光軸に対して回転対称である設計表面を有する。この場合、当該設計表面を完成したミラーの物理的表面と混同してはならない。その理由は、物理的表面が、ミラーに対する光の通過を確保するために設計表面に対してトリミングされるからである。この例示的な実施形態では、開口絞り13が、物体平面5から像平面7までの光路における第2ミラー11に配置される。投影対物レンズ2の効果は、主光線15並びに2つの開口周縁光線17及び19という3つの光線を用いて図示されており、これらは全て物体視野3の中心に生じる。物体平面に対する垂線に対して6°の角度で進む主光線15は、開口絞り13の平面内で光軸9と交差する。物体平面5から見て、主光線15は、入射瞳平面21で光軸と交差するように見える。これを、図4において第1ミラー11を通る主光線15の延長破線により示す。結果として、開口絞り13の仮想像である入射瞳は、入射瞳平面21内にある。投影対物レンズの射出瞳も同様に、像平面7から進む主光線15を逆方向に延長して同じ構成を有することが分かり得る。しかしながら、像平面7では、主光線15が光軸9と並行であり、このことから、これら2つの光線の逆投影は投影対物レンズ2の前方で無限遠点を作り、それゆえ投影対物レンズ2の射出瞳は無限遠にあるということになる。したがって、この投影対物レンズ2は、いわゆる像側テレセントリックな対物レンズである。物体視野から出る放射線の望ましくない口径食が投影対物レンズの反射構成の場合に生じることがないように、物体視野3の中心は光軸9から距離Rにあり、像視野7の中心は光軸9から距離rにある。
【0054】
図5は、図4に示す投影対物レンズ2で生じるような弧状の像視野7aの平面図と、図4からの軸に対応する軸を有する直交座標系とを示す。像視野7aは、円環の一部であり、その中心は、光軸9と物体平面との交点により与えられる。平均半径rは、図示の場合は34mmである。y方向の視野の幅dは、ここでは2mmである。像視野7aの中心視野点を、像視野7a内に小円として表示する。代替形態として、湾曲した像視野を、同じ半径を有しy方向に相互に変位する2つの円弧により画定することもできる。投影露光装置をスキャナとして動作させる場合、走査方向は、物体視野の短寸方向に、すなわちy方向に延びる。
【0055】
図6は、図4からの投影対物レンズ2の物体平面5から像平面7までの光路における最後から2番目のミラー(penultimate mirror)1の、単位[mm]で示すミラー表面の各箇所と光軸との間の種々の半径又は距離に対する、単位[°]での最大入射角(四角)及び入射角間隔の間隔長(丸)の例示的な図を示す。上記ミラー1は、EUV波長域用の6つのミラー1、11を有するマイクロリソグラフィ用の投影対物レンズ2の場合、概して、最大入射角及び最大入射角間隔又は最大入射角変動を確保しなければならないミラーである。本願において、入射角変動の測度としての入射角間隔の間隔長は、ミラーの被覆が光学設計の要件により光軸からの所与の距離に関して確保しなければならない最大入射角と最小入射角との間の角度範囲の角度数であると理解される。入射角間隔は、略してAOI間隔ともいう。
【0056】
表1による投影対物レンズの光学データは、図6の基礎をなすミラー1の場合に適用可能である。この場合、光学設計のミラー1、11の非球面は、以下の非球面式(1)に従って、非球面頂点における法線に対する非球面点の垂直距離hの関数としての、非球面頂点における接平面に対する非球面点の垂直距離Z(h)により、回転対称表面として規定される。
【数1】
ここで、ミラーの半径R=1/rho及びパラメータky、c1、c2、c3、c4、c5、及びc6を単位[mm]とする。この場合、上記パラメータcnは、同じく単位[mm]での距離hの関数として球面Z(h)が得られるように、[1/mm2n+2]に従って単位[mm]に関して正規化される。
【0057】
表1 図4に基づく設計の概略図に従った図6におけるミラー1の入射角に関する光学設計のデータ
【表1】
【0058】
最大入射角24°及び間隔長11°がミラー1の異なる箇所で生じることを、図6から認めることができる。結果として、ミラー1の層構成体は、異なる入射角及び異なる入射角間隔についてこれらの異なる箇所で高く均一な反射率値を示さなければならない。そうでなければ、投影対物レンズ2の高い全透過率及び許容可能な瞳アポダイゼーションが確保できないからである。
【0059】
いわゆるPV値を、入射角にわたるミラーの反射率の変動の測度として用いる。この場合、PV値は、検討対象の入射角間隔における最大反射率Rmaxと最小反射率Rminとの間の差を検討対象の入射角間隔における平均反射率Raverageで割ったものとして定義される。結果として、PV=(Rmax−Rmin)/Raverageが成立する。
【0060】
この場合、図4及び表1の設計に従った像平面7の前の最後から2番目のミラーとしての投影対物レンズ2のミラー1に関するPV値が大きいと、瞳アポダイゼーションに関する値が大きくなることを考慮に入れるべきである。この場合、0.25を超える大きなPV値では、ミラー1のPV値と投影対物レンズ2の瞳アポダイゼーションの結像収差との間に相関があり、これは、この値を超えるとPV値が他の収差原因よりも瞳アポダイゼーションに大きく影響するからである。
【0061】
図6において、棒23を用いて、光軸に対して関連最大入射角約21°及び関連間隔長11°を有するミラーの箇所の特定の半径又は特定の距離を例として表示する。上記表示の半径は、図7において、後述するように、ミラー1の光学的利用領域20を表す斜線領域20内の、破線で示す円23a上の箇所に対応する。
【0062】
図7は、図4からの投影対物レンズ2の物体平面5から像平面7までの光路における最後から2番目のミラー1の基板Sを、光軸9を中心とした円として平面図で示す。この場合、投影対物レンズ2の光軸9は、基板の対称軸9に相当する。さらに、図7において、光軸に対してオフセットしているミラー1の光学的利用領域1は斜線で描かれ、円23aは破線で描かれている。
【0063】
この場合、破線円23aのうち光学的利用領域内の部分は、図6に示した棒23で識別されるミラー1の箇所に対応する。結果として、破線円23aのうち光学的利用領域20内の部分的領域に沿ったミラー1の層構成体は、図6からのデータによれば、最大入射角21°及び最小入射角約10°の両方で高い反射率値を確保しなければならない。この場合、最小入射角約10°は、11°の間隔長により図6からの最大入射角21°から得られる。入射角の2つの上記極値が生じる破線円上の箇所は、図7において、入射角10°に関しては矢先26で、入射角21°に関しては矢先25で強調されている。
【0064】
層構成体は、高額な技術費を伴わずには基板Sの複数箇所で局所的に変えることができず、概して基板の対称軸9に対して回転対称に施されるので、図7における破線円23aの箇所に沿った層構成体は、図1〜図3に基本構成で示したような全く同一の層構成体となり、図8〜図15を参照して特定の例示的な実施形態の形態で説明される。この場合、層構成体を有する基板Sの対称軸9に対して基板Sを回転対称に被覆することによる効果として、層構成体の層サブシステムP’、P’’、及びP'''の周期的配列がミラーの全箇所で維持され、対称軸9からの距離に応じた層構成体の周期の厚さが基板S全体で回転対称のプロファイルを得るだけであり、層構成体は、対称軸9における基板Sの中心よりも基板Sの縁部の方が薄いことを考慮に入れるべきである。
【0065】
適当な被覆技術により、例えば分配ダイヤフラム(distribution diaphragms)の使用により、基板にわたる被覆の厚さの回転対称半径方向プロファイルを適合させることが可能であることを考慮に入れるべきである。結果として、被覆自体の設計に加えて、基板にわたる被覆設計のいわゆる厚さ係数の半径方向プロファイルにより、被覆設計の最適化にさらなる自由度が利用可能である。
【0066】
図8〜図15に示す反射率値を、波長13.5nmでの利用材料に関して表2に示す複素屈折率n=n−i×kを用いて計算した。この場合、特に実際の薄層の屈折率が表2で言及されている文献値から逸脱し得るので、実際のミラーの反射率値が図8〜図15に示す理論上の反射率値よりも小さくなることが分かり得ることを考慮に入れるべきである。
【0067】
表2 13.5nmでの使用屈折率n=n−i×k
【表2】
【0068】
さらに、図1〜図3に関する層配列に従った下記の短縮表記は、図8〜図15に関連する層設計を表したものである。
基板/…/(P1)×N1/(P2)×N2/(P3)×N3/被覆層システムC
ここで、図2及び図3に関しては、
P1=H’BL’B;P2=H’’BL’’B;P3=H’’’BL’’’B;C=HBLM
であり、図1と、図3に関する変形形態としての例示的な第4実施形態とに関しては、
P1=BH’BL’;P2=BL’’BH’’;P3=H’’’BL’’’B;C=HBLM
である。
【0069】
この場合、文字Hは高屈折率層の厚さを象徴的に表し、文字Lは低屈折率層の厚さを表し、文字Bはバリア層の厚さを表し、文字Mは表2及び図1〜図3に関する説明に従った化学的に不活性な終端層の厚さを表す。
【0070】
この場合、単位[nm]は、括弧内で指定した個別層の厚さに適用される。したがって、図8及び図9に関して用いた層設計は、短縮表記で以下のように指定することができる。
基板/…/(0.4B4C2.921Si0.4B4C4.931Mo)×8/(0.4B4C4.145Mo0.4B4C2.911Si)×5/(3.509Si0.4B4C3.216Mo0.4B4C)×16/2.975Si0.4B4C2Mo1.5Ru
【0071】
この例でのバリア層B4Cは、常に厚さ0.4nmであるから、層構成体の基本構成を示すために省くこともでき、図8及び図9に関する層設計は、以下のように短縮して指定することができる。
基板/…/(2.921Si4.931Mo)×8/(4.145Mo2.911Si)×5/(3.509Si3.216Mo)×16/2.975Si2Mo1.5Ru
【0072】
図1に示す例示的な第1実施形態から認識すべきは、5周期を含む第2層サブシステムにおける高屈折率層Si及び低屈折率層Moの順序を、他の層サブシステムと逆にして、基板から最も遠い層サブシステムの厚さ3.509nmの第1高屈折率層が基板から2番目に遠い層サブシステムの厚さ2.911nmの最終高屈折率層の直後に続くようにしたことである。
【0073】
これに対応して、図2に従った例示的な第2実施形態として図10及び図11に関して用いた層設計を短縮表記で指定することが可能である。
基板/…/(4.737Si0.4B4C2.342Mo0.4B4C)×28/(3.443Si0.4B4C2.153Mo0.4B4C)×5/(3.523Si0.4B4C3.193Mo0.4B4C)×15/2.918Si0.4B4C2Mo1.5Ru
【0074】
この例でのバリア層B4Cは、さらに常に厚さ0.4nmであるから、層構成体を示すために省くことができ、図10及び図11に関する層設計は、以下のように短縮して指定することができる。
基板/…/(4.737Si2.342Mo)×28/(3.443Si2.153Mo)×5/(3.523Si3.193Mo)×15/2.918Si2Mo1.5Ru
【0075】
したがって、図3に従った例示的な第3実施形態として図12及び図13に関して用いた層設計を短縮表記で、
基板/…/(1.678Si0.4B4C5.665Mo0.4B4C)×27/(3.798Si0.4B4C2.855Mo0.4B4C)×14/1.499Si0.4B4C2Mo1.5Ru
また、説明のためにバリア層B4Cを無視して、
基板/…/(1.678Si5.665Mo)×27/(3.798Si2.855Mo)×14/1.499Si2Mo1.5Ru
として指定することが可能である。
【0076】
同様に、図3に関する変形形態に従った例示的な第4実施形態として図14及び図15に関して用いた層設計を短縮表記で、
基板/…/(0.4B4C4.132Mo0.4B4C2.78Si)×6/(3.608Si0.4B4C3.142Mo0.4B4C)×16/2.027Si0.4B4C2Mo1.5Ru
また、説明のためにバリア層B4Cを無視して、
基板/…/(4.132Mo2.78Si)×6/(3.609Si3.142Mo)×16/2.027Si2Mo1.5Ru
として指定することが可能である。
【0077】
この例示的な第4実施形態から認識すべきは、6周期を含む層サブシステムP’’における高屈折率層Si及び低屈折率層Moの順序を、16周期を含む他方の層サブシステムP’’’と逆にして、基板から最も遠い層サブシステムP’’’の厚さ3.609nmの第1高屈折率層が基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の厚さ2.78nmの最終高屈折率層の直後に続くようにしたことである。
【0078】
したがって、この例示的な第4実施形態は、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’における高屈折率層及び低屈折率層の順序を図1に関する例示的な第1実施形態に従って逆にした、例示的な第3実施形態の変形形態である。
【0079】
図8は、図1に従った本発明によるミラー1aの例示的な第1実施形態の単位[%]での非偏光放射線の反射率値を、単位[°]での入射角に対してプロットしたものを示す。この場合、ミラー1aの層構成体の第1層サブシステムP’は、N1=8の周期P1からなり、周期P1は、高屈折率層として2.921nmのSi及び低屈折率層として4.931nmのMoと、0.4nmのB4Cをそれぞれ含む2つのバリア層とからなる。結果として、周期P1の厚さd1は8.652nmとなる。層Mo及びSiを逆の順序にしたミラー1aの層構成体の第2層サブシステムP’’は、N2=5の周期P2からなり、周期P2は、高屈折率層として2.911nmのSi及び低屈折率層として4.145nmのMoと、0.4nmのB4Cをそれぞれ含む2つのバリア層とからなる。結果として、周期P2の厚さd2は7.856nmとなる。ミラー1aの層構成体の第3層サブシステムP’’’は、N3=16の周期P3からなり、周期P3は、高屈折率層として3.509nmのSi及び低屈折率層として3.216nmのMoと、0.4nmのB4Cをそれぞれ含む2つのバリア層とからなる。結果として、周期P3の厚さd3は7.525nmとなる。ミラー1aの層構成体は、指定の順序で2.975nmのSi、0.4nmのB4C、2nmのMo、及び1.5nmのRuからなる被覆層システムCにより終端する。結果として、基板から最も遠い層サブシステムP’’’は、基板から2番目に遠い層サブシステムの周期P2の数N2よりも多い周期P3の数N3を有し、基板から最も遠い層サブシステムP’’’の第1高屈折率層H’’’は、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の最終高屈折率層H’’の直後に続く。
【0080】
図8において、波長13.5nmで厚さ係数1を有するこの公称層設計の単位[%]での反射率値を、単位[°]での入射角に対して実線で示す。さらに、14.1°〜25.7°の入射角間隔に関するこの公称層設計の平均反射率を、実線水平棒で示す。さらに、図8はこれに対応して、波長13.5nmで厚さ係数を0.933とした場合の、入射角に対する反射率値を破線で、また2.5°〜7.3°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を破線棒で明記している。結果として、図8に破線で示す反射率値に対する層構成体の周期の厚さは、公称層設計における周期の対応の厚さの93.3%にしかならない。換言すれば、層構成体は、ミラー1aのミラー表面で2.5°〜7.3°の入射角を確保しなければならない箇所において公称層設計よりも6.7%薄い。
【0081】
図9は、図8に対応する様式で、波長13.5nmで厚さ係数を1.018とした場合の、入射角に対する反射率値を細線で、また17.8°〜27.2°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を細棒で示し、さらに、厚さ係数を0.972とした場合の、入射角に対する反射率値を太線で、また8.7°〜21.4°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を太棒で示す。結果として、層構成体は、ミラー1aのミラー表面で17.8°〜27.2°の入射角を確保しなければならない箇所において公称層設計よりも1.8%厚く、これに対応して、8.7°〜21.4°の入射角を確保しなければならない箇所において公称層設計よりも2.8%薄い。
【0082】
図8及び図9に関する層構成体により達成することができる平均反射率及びPV値を、表3において入射角間隔及び厚さ係数に対して集約する。上記で規定した層構成体を備えるミラー1aが、波長13.5nmで2.5°〜27.2°の入射角間隔に関して、43%を超える平均反射率と0.21以下のPV値としての反射率変動とを有することが認識できる。
【0083】
【表3】
表3 入射角及び選択した厚さ係数に対する図8及び図9に関する層設計の平均反射率及びPV値
【0084】
図10は、図2に従った本発明によるミラー1bの例示的な第2実施形態の単位[%]での非偏光放射線の反射率値を、単位[°]での入射角に対してプロットしたものを示す。この場合、ミラー1bの層構成体の第1層サブシステムP’は、N1=28の周期P1からなり、周期P1は、高屈折率層として4.737nmのSi及び低屈折率層として2.342nmのMoと、0.4nmのB4Cをそれぞれ含む2つのバリア層とからなる。結果として、周期P1の厚さd1は7.879nmとなる。ミラー1bの層構成体の第2層サブシステムP’’は、N2=5の周期P2からなり、周期P2は、高屈折率層として3.443nmのSi及び低屈折率層として2.153nmのMoと、0.4nmのB4Cをそれぞれ含む2つのバリア層とからなる。結果として、周期P2の厚さd2は6.396nmとなる。ミラー1bの層構成体の第3層サブシステムP’’’は、N3=15の周期P3からなり、周期P3は、高屈折率層として3.523nmのSi及び低屈折率層として3.193nmのMoと、0.4nmのB4Cをそれぞれ含む2つのバリア層とからなる。結果として、周期P3の厚さd3は7.516nmとなる。ミラー1bの層構成体は、指定の順序で2.918nmのSi、0.4nmのB4C、2nmのMo、及び1.5nmのRuからなる被覆層システムCにより終端する。結果として、基板から最も遠い層サブシステムP’’’は、基板から2番目に遠い層サブシステムの周期P2の数N2よりも多い周期P3の数N3を有する。
【0085】
図10において、波長13.5nmで厚さ係数1を有するこの公称層設計の単位[%]での反射率値を、単位[°]での入射角に対して実線で示す。さらに、14.1°〜25.7°の入射角間隔に関するこの公称層設計の平均反射率を、実線水平棒で示す。さらに、図10はこれに対応して、波長13.5nmで厚さ係数を0.933とした場合の、入射角に対する反射率値を破線で、また2.5°〜7.3°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を破線棒で明記している。結果として、図10に破線で示す反射率値に対する層構成体の周期の厚さは、公称層設計における周期の対応の厚さの93.3%にしかならない。換言すれば、層構成体は、ミラー1bのミラー表面で2.5°〜7.3°の入射角を確保しなければならない箇所において公称層設計よりも6.7%薄い。
【0086】
図11は、図10に対応する様式で、波長13.5nmで厚さ係数を1.018とした場合の、入射角に対する反射率値を細線で、また17.8°〜27.2°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を細棒で示し、さらに、厚さ係数を0.972とした場合の、入射角に対する反射率値を太線で、また8.7°〜21.4°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を太棒で示す。結果として、層構成体は、ミラー1bのミラー表面で17.8°〜27.2°の入射角を確保しなければならない箇所において公称層設計よりも1.8%厚く、これに対応して、8.7°〜21.4°の入射角を確保しなければならない箇所において公称設計よりも2.8%薄い。
【0087】
図10及び図11に関する層構成体により達成することができる平均反射率及びPV値を、表4において入射角間隔及び厚さ係数に対して集約する。上記で規定した層構成体を備えるミラー1bが、波長13.5nmで2.5°〜27.2°の入射角間隔に関して、45%を超える平均反射率と0.23以下のPV値としての反射率変動とを有することが認識できる。
【0088】
表4 入射角及び選択した厚さ係数に対する図10及び図11に関する層設計の平均反射率及びPV値
【表4】
【0089】
図12は、図3に従った本発明によるミラー1cの例示的な第3実施形態の単位[%]での非偏光放射線の反射率値を、単位[°]での入射角に対してプロットしたものを示す。この場合、ミラー1cの層構成体の第2層サブシステムP’’は、N2=27の周期P2からなり、周期P2は、高屈折率層として1.678nmのSi及び低屈折率層として5.665nmのMoと、0.4nmのB4Cをそれぞれ含む2つのバリア層とからなる。結果として、周期P2の厚さd2は8.143nmとなる。ミラー1cの層構成体の第3層サブシステムP’’’は、N3=14の周期P3からなり、周期P3は、高屈折率層として3.798nmのSi及び低屈折率層として2.855nmのMoと、0.4nmのB4Cをそれぞれ含む2つのバリア層とからなる。結果として、周期P3の厚さd3は7.453nmとなる。ミラー1cの層構成体は、指定の順序で1.499nmのSi、0.4nmのB4C、2nmのMo、及び1.5nmのRuからなる被覆層システムCにより終端する。結果として、基板から最も遠い層サブシステムP’’’は、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の高屈折率層H’’の厚さの2倍を超える高屈折率層H’’’の厚さを有する。
【0090】
図12において、波長13.5nmで厚さ係数1を有するこの公称層設計の単位[%]での反射率値を、単位[°]での入射角に対して実線で示す。さらに、14.1°〜25.7°の入射角間隔に関するこの公称層設計の平均反射率を、実線水平棒で示す。さらに、図12はこれに対応して、波長13.5nmで厚さ係数を0.933とした場合の、入射角に対する反射率値を破線で、また2.5°〜7.3°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を破線棒で明記している。結果として、図12に破線で示す反射率値に対する層構成体の周期の厚さは、公称層設計における周期の対応の厚さの93.3%にしかならない。換言すれば、層構成体は、ミラー1cのミラー表面で2.5°〜7.3°の入射角を確保しなければならない箇所において公称層設計よりも6.7%薄い。
【0091】
図13は、図12に対応する様式で、波長13.5nmで厚さ係数を1.018とした場合の、入射角に対する反射率値を細線で、また17.8°〜27.2°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を細棒で示し、さらに、これに対応して、厚さ係数を0.972とした場合の、入射角に対する反射率値を太線で、また8.7°〜21.4°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を太棒で示す。結果として、層構成体は、ミラー1cのミラー表面で17.8°〜27.2°の入射角を確保しなければならない箇所において公称層設計よりも1.8%厚く、これに対応して、8.7°〜21.4°の入射角を確保しなければならない箇所において公称設計よりも2.8%薄い。
【0092】
図12及び図13に関する層構成体により達成することができる平均反射率及びPV値を、表5において入射角間隔及び厚さ係数に対して集約する。上記で規定した層構成体を備えるミラー1cが、波長13.5nmで2.5°〜27.2°の入射角間隔に関して、39%を超える平均反射率と0.22以下のPV値としての反射率変動とを有することが認識できる。
【0093】
表5 入射角及び選択した厚さ係数に対する図12及び図13に関する層設計の平均反射率及びPV値
【表5】
【0094】
図14は、層サブシステムP’’における層の順序を逆にしたミラー1cの変形形態としての本発明によるミラーの例示的な第4実施形態の、単位[%]での非偏光放射線の反射率値を、単位[°]での入射角に対してプロットしたものを示す。この場合、ミラーの層構成体の層サブシステムP’’は、N2=6の周期P2からなり、周期P2は、高屈折率層として2.78nmのSi及び低屈折率層として4.132nmのMoと、0.4nmのB4Cをそれぞれ含む2つのバリア層とからなる。結果として、周期P2の厚さd2は7.712nmとなる。ミラーの層構成体の第3層サブシステムP’’’は、N3=16の周期P3からなり、周期P3は、高屈折率層として3.608nmのSi及び低屈折率層として3.142nmのMoと、0.4nmのB4Cをそれぞれ含む2つのバリア層とからなる。結果として、周期P3の厚さd3は7.55nmとなる。ミラーの層構成体は、指定の順序で2.027nmのSi、0.4nmのB4C、2nmのMo、及び1.5nmのRuからなる被覆層システムCにより終端する。結果として、基板から最も遠い層サブシステムP’’’は、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の高屈折率層H’’の厚さの120%を超える高屈折率層H’’’の厚さを有する。さらに、基板から最も遠い層サブシステムP’’’は、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の周期P2の数N2よりも多い周期P3の数N3を有し、基板から最も遠い層サブシステムP’’’の第1高屈折率層H’’’は、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の最終高屈折率層H’’の直後に続く。
【0095】
図14において、波長13.5nmで厚さ係数1を有するこの公称層設計の単位[%]での反射率値を、単位[°]での入射角に対して実線で示す。さらに、14.1°〜25.7°の入射角間隔に関するこの公称層設計の平均反射率を、実線水平棒で示す。さらに、図14はこれに対応して、波長13.5nmで厚さ係数を0.933とした場合の、入射角に対する反射率値を破線で、また2.5°〜7.3°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を破線棒で明記している。結果として、図14に破線で示す反射率値に対する層構成体の周期の厚さは、公称層設計における周期の対応の厚さの93.3%にしかならない。換言すれば、層構成体は、本発明によるミラーのミラー表面で2.5°〜7.3°の入射角を確保しなければならない箇所において公称層設計よりも6.7%薄い。
【0096】
図15は、図14に対応する様式で、波長13.5nmで厚さ係数を1.018とした場合の、入射角に対する反射率値を細線で、また17.8°〜27.2°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を細棒で示し、さらに、これに対応して、厚さ係数を0.972とした場合の、入射角に対する反射率値を太線で、また8.7°〜21.4°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を太棒で示す。結果として、層構成体は、本発明によるこのミラーのミラー表面で17.8°〜27.2°の入射角を確保しなければならない箇所において公称層設計よりも1.8%厚く、これに対応して、8.7°〜21.4°の入射角を確保しなければならない箇所において公称設計よりも2.8%薄い。
【0097】
図14及び図15に関する層構成体により達成することができる平均反射率及びPV値を、表6において入射角間隔及び厚さ係数に対して集約する。上記で規定した層構成体を備える本発明によるミラーが、波長13.5nmで2.5°〜27.2°の入射角間隔に関して、42%を超える平均反射率と0.24以下のPV値としての反射率変動とを有することが認識できる。
【0098】
表6 入射角及び選択した厚さ係数に対する図14及び図15に関する層設計の平均反射率及びPV値
【表6】
【0099】
図示の4つの例示的な実施形態全てにおいて、基板の近くにそれぞれ位置付けた層サブシステムの周期の数は、層サブシステムを通るEUV放射線の透過率が10%未満、特に2%未満であるよう増加させることができる。
【0100】
したがって、第1に、冒頭ですでに述べたように、ミラーの光学特性に対する、この場合は特に反射率に対する層構成体の下にある層又は基板の摂動作用を回避することが可能であり、第2に、層構成体の下にある層又は基板がEUV放射線から十分に保護されることがこれにより可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、EUV波長域用のミラーに関する。さらに、本発明は、当該ミラーを備えるマイクロリソグラフィ用の投影対物レンズに関する。さらに、本発明は、当該対物レンズを備えるマイクロリソグラフィ用の投影露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
EUV波長域用のマイクロリソグラフィ用の投影露光装置は、像平面へのマスクの露光又は結像に用いるミラーが高反射率を有するという前提に依存せざるを得ず、その理由は、第1に、個々のミラーの反射率値の積が投影露光装置の全透過率を決定するからであり、第2に、EUV光源の光パワーが限られているからである。
【0003】
高反射率値を有する約13nmのEUV波長域用のミラーは、例えば特許文献1から既知である。当該明細書に記載のミラーは、基板上に施されて個別層の配列を有する層構成体(layer arrangement)からなり、層構成体は、周期を形成する種々の材料の少なくとも2つの個別層の周期的配列をそれぞれが有する複数の層サブシステムを備え、個々のサブシステムの周期の数及び周期の厚さは、基板から表面に向かって減少する。このようなミラーは、入射角間隔が0°〜20°である場合に30%よりも高い反射率を有する。
【0004】
この場合、入射角は、光線の入射方向と光線がミラーに衝突する点におけるミラーの表面に対する法線との間の角度として定義される。この場合、入射角間隔は、ミラーに関してそれぞれ考慮される最大入射角と最小入射角との間の角度間隔から得られる。
【0005】
しかしながら、上述の層に関して不利なのは、規定される入射角間隔での反射率が一定ではなく変動することである。しかしながら、入射角におけるミラーの反射率の変動は、マイクロリソグラフィ用の投影対物レンズにおいて高入射角及び高入射角変化を有する箇所でのこのようなミラーの使用には不利である。これは、そのような変動により、例えば上記投影対物レンズの瞳アポダイゼーショの変動が大きくなり過ぎるからである。この場合、瞳アポダイゼーションは、投影対物レンズの射出瞳における強度変動の測度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第101 55 711号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、投影対物レンズ又は投影露光装置内で高入射角及び高入射角変化を有する箇所で用いることができるEUV波長域用のミラーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、基板と複数の層サブシステムを含む層構成体とを備えるEUV波長域用のミラーにより本発明に従って達成される。この場合、層サブシステムはそれぞれ、個別層の少なくとも2つの周期の周期的配列からなる。この場合、周期は、高屈折率層及び低屈折率層に関して異なる材料から構成される2つの個別層を含み、各層サブシステム内で、隣接する層サブシステムの周期の厚さから逸脱した一定の厚さを有する。この場合、基板から2番目に遠い層サブシステムが有する周期の配列は、基板から最も遠い層サブシステムの第1高屈折率層が基板から2番目に遠い層サブシステムの最終高屈折率層の直後に続くように、且つ/又は基板から最も遠い層サブシステムが基板から2番目に遠い層サブシステムの周期の数よりも多い周期の数を有するようになっている。
【0009】
この場合、本発明によるミラーの層構成体の層サブシステムは、相互に直接連続し、さらに別の層システムによって分離されない。さらに、本発明において、高屈折率層と低屈折率層との間の周期の区分が他の点で同一であったとしても、隣接する層サブシステムの周期の厚さの差異として0.1nmを超える差異があれば、層サブシステムが隣接する層サブシステムと区別される。これは、0.1nmの差を超えると、高屈折率層と低屈折率層との間の周期の区分が他の点で同一であっても層サブシステムの異なる光学的効果を得ることが可能だからである。
【0010】
高屈折率及び低屈折率という用語は、この場合、EUV波長域において層サブシステムの1周期内の各相手層に関する相対的用語である。EUV波長域において、層サブシステムは、光学的に高い屈折率で働く層をそれよりも光学的に低い屈折率層と、層サブシステムの1周期の主要構成要素として組み合わせた場合にのみ概して機能する。
【0011】
本発明によれば、大きな入射角間隔で高く均一な反射率を得るために、基板から最も遠い層サブシステムの周期の数が基板から2番目に遠い層サブシステムの周期の数よりも多くなければならないことが認識された。さらに、大きな入射角間隔で高く均一な反射率を得るために、上述の措置の代替形態として又はそれに加えて、基板から最も遠い層サブシステムの第1高屈折率層が基板から2番目に遠い層サブシステムの最終高屈折率層の直後に続くべきであることが認識された。
【0012】
さらに、本発明の目的は、基板と複数の層サブシステムを含む層構成体とを備えるEUV波長域用の本発明によるミラーにより達成される。この場合、層サブシステムはそれぞれ、個別層の少なくとも2つの周期の周期的配列からなる。この場合、周期は、高屈折率層及び低屈折率層に関して異なる材料から構成される2つの個別層を含み、各層サブシステム内で、隣接する層サブシステムの周期の厚さから逸脱した一定の厚さを有する。この場合、基板から2番目に遠い層サブシステムが有する周期の配列は、基板から最も遠い層サブシステムの第1高屈折率層が基板から2番目に遠い層サブシステムの最終高屈折率層の直後に続くようになっている。さらに、層サブシステムを通るEUV放射線の透過率は、10%未満、特に2%未満となる。
【0013】
本発明によれば、大きな入射角間隔で高く均一な反射率を得るために、層構成体の下に位置する層又は基板の影響を低減しなければならないことが認識された。これは、基板から2番目に遠い層サブシステムが有する周期の配列が、基板から最も遠い層サブシステムの第1高屈折率層が基板から2番目に遠い層サブシステムの最終高屈折率層の直後に続くようになっている層構成体で、主に必要である。層構成体の下にある層又は基板の影響を低減するための1つの単純な可能性は、層構成体の下にある層まで透過させるEUV放射線が可能な限り少ないように層構成体を設計することである。これにより、層構成体の下にある上記層又は基板がミラーの反射率特性に大きく寄与することが可能となる。
【0014】
一実施形態では、層サブシステムは、この場合、高屈折率層及び低屈折率層に関して同じ材料から全て構成される。これは、ミラーの製造を単純化するためである。
【0015】
基板から最も遠い層サブシステムの周期の数が9〜16の値に相当するEUV波長域用のミラー、及び基板から2番目に遠い層サブシステムの周期の数が2〜12の値に相当するEUV波長域用のミラーは、ミラーに必要な層の総数を制限することにつながり、したがってミラーの製造時の複雑性及び危険性を低減することにつながる。
【0016】
さらに別の実施形態では、本発明によるミラーの層構成体は、少なくとも3つの層サブシステムを備え、基板の最も近くに位置する層サブシステムの周期の数は、基板から最も遠い層サブシステムの周期の数及び/又は基板から2番目に遠い層サブシステムの周期の数よりも多い。
【0017】
これらの措置は、ミラーの反射特性を層構成体の下にある層又は基板から切り離すことを促し、他の機能特性を有する他の層又は他の基板材料をミラーの層構成体の下で用いることが可能となる。
【0018】
したがって、第1に、すでに上述したように、ミラーの光学特性に対する、この場合は特に反射率に対する層構成体の下にある層又は基板の摂動作用を回避することが可能であり、第2に、層構成体の下にある層又は基板がEUV放射線から十分に保護されることがこれにより可能である。
【0019】
さらに別の実施形態では、EUV放射線からのこのような保護は、例えば、層構成体の下にある層又は基板の特性がEUV照射下で長期安定性を有さない場合に必要であり得るが、上述の措置に加えて又はその代替形態として、層構成体と基板との間にある20nmを超える厚さを有する金属層により確保される。このような保護層を「表面保護層」(SPL)とも称する。
【0020】
この場合、層構成体の反射率、透過性、及び吸収性といった特性が層構成体の周期の数に対して非線形の挙動を示し、反射率が特に、層構成体の周期の数に関して限界値に向かって飽和挙動を示すことを考慮に入れるべきである。結果として、上記保護層を用いて、層構成体の下にある層又は基板をEUV放射線から保護するのに必要な層構成体の周期の数を、反射率特性を達成するのに必要な周期の数に減らすことができる。
【0021】
さらに、層サブシステムが少数である場合に層構成体で特に高い反射率値を得ることが可能なのは、この場合は基板から最も遠い層サブシステムの周期が、基板から2番目に遠い層サブシステムの周期の高屈折率層の厚さの120%を超える、特にその厚さの2倍を超える高屈折率層の厚さを有する場合であることが認識された。
【0022】
さらに別の実施形態において層サブシステムが少数である場合に層構成体で特に高い反射率値を得ることが同様に可能なのは、基板から最も遠い層サブシステムの周期が、基板から2番目に遠い層サブシステムの周期の低屈折率層の厚さの80%未満、特に2/3未満の低屈折率層の厚さを有する場合である。
【0023】
さらに別の実施形態では、EUV波長域用のミラーは、基板から2番目に遠い層サブシステムに関して、その周期の低屈折率層の厚さが4nmを超え、特に5nmを超える。この結果として、反射率自体に関してだけでなく、目標の入射角間隔にわたるp偏光の反射率に対するs偏光の反射率に関しても、層設計を適合させることができる可能性がある。したがって、主に2つの層サブシステムのみからなる層構成体の場合、限られた数の層サブシステムの結果として自由度が限られるにもかかわらず、偏光適合を行うことが可能となる。
【0024】
別の実施形態では、EUV波長域用のミラーは、基板から最も遠い層サブシステムの周期の厚さが7.2nm〜7.7nmである。これにより、大きな入射角間隔で特に高い均一な反射率値を実現することが可能である。
【0025】
さらに、別の実施形態は、ミラーの層構成体と基板との間に中間層又は中間層構成体を有し、これは層構成体の応力補償の役割を果たす。このような応力補償により、層を施している間のミラーの変形を回避することが可能である。
【0026】
本発明によるミラーの別の実施形態では、1周期を形成する2つの個別層は、材料としてモリブデン(Mo)及びケイ素(Si)、又は材料としてルテニウム(Ru)及びケイ素(Si)のいずれかからなる。これにより、ミラーの層構成体の層サブシステムを製造するのに異なる材料を2つしか用いないため、特に高い反射率値を達成すると同時に生産工学的利点を実現することが可能である。
【0027】
この場合、さらに別の実施形態では、上記個別層は、少なくとも1つのバリア層により分離され、バリア層は、B4C、C、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ホウ化ケイ素、窒化モリブデン、炭化モリブデン、ホウ化モリブデン、窒化ルテニウム、炭化ルテニウム、及びホウ化ルテニウムの材料群から選択されるか、又は化合物としてこの材料群から構成される材料からなる。このようなバリア層は、1周期の2つの個別層間での相互拡散を抑制することにより、2つの個別層の移行部における光学的コントラストを高める。1周期の2つの個別層に材料としてモリブデン及びケイ素を用いた場合、基板から見てSi層の上に1つのバリア層があれば、十分なコントラストを提供するのに十分である。この場合、Mo層の上の第2のバリア層を省くことができる。これに関して、1周期の2つの個別層を分離するために少なくとも1つのバリア層を設けるべきであり、この少なくとも1つのバリア層は、上記材料又はそれらの化合物の種々のものから完璧に構成することができ、この場合も異なる材料又は化合物の層状構成を示し得る。
【0028】
材料としてB4Cを含み、0.35nm〜0.8nm、好ましくは0.4nm〜0.6nmの厚さを有するバリア層で、実際には層構成体の高反射率値が得られる。特に、ルテニウム及びケイ素から構成される層サブシステムの場合、B4Cから構成されるバリア層は、バリア層の厚さが0.4nm〜0.6nmの値である場合に最大反射率を示す。
【0029】
さらに別の実施形態では、本発明によるミラーは、ミラーの層構成体の終端となる化学的に不活性な材料から構成される少なくとも1つの層を含む被覆層システムを備える。これにより、ミラーは周囲の影響から保護される。
【0030】
別の実施形態では、本発明によるミラーは、0.9〜1.05の値、特に0.933〜1.018の値を有するミラー表面に沿った層構成体の厚さ係数を有する。これにより、ミラー表面の種々の箇所をそこに生じる種々の入射角に目標をより絞って適合させることが可能である。
【0031】
この場合、厚さ係数は、所与の層設計の層の厚さ全部が乗算的に(in multiplied fashion)基板上の1箇所で実現される際の係数である。したがって、厚さ係数1は、公称層設計に相当する。
【0032】
さらなる自由度としての厚さ係数は、ミラー自体の層設計を変える必要なく、ミラーの種々の箇所をそこに生じる種々の入射角間隔に目標をより絞って適合させることを可能にし、その結果、ミラーは最終的に、ミラー上の種々の箇所における入射角間隔が大きいほど、固定の厚さ係数を1とした関連の層設計自体により許されるよりも高い反射率値をもたらす。したがって、厚さ係数の適合により、高入射角を確保するのに加えて、入射角にわたる本発明によるミラーの反射率の変動をさらに低減することも可能である。
【0033】
さらに別の実施形態では、ミラー表面の各箇所における層構成体の厚さ係数は、そこに生じる最大入射角と相関するが、これは、最大入射角が大きいほど大きな厚さ係数が適合に有用であるからである。
【0034】
さらに、本発明の目的は、本発明による少なくとも1つのミラーを備える投影対物レンズにより達成される。
【0035】
さらに、本発明の目的は、このような投影対物レンズを備えるマイクロリソグラフィ用の本発明による投影露光装置により達成される。
【0036】
本発明のさらに他の特徴及び利点は、本発明にとって重要な詳細を示す図面を参照して以下の本発明の例示的な実施形態の説明から、また特許請求の範囲から明らかとなるであろう。個々の特徴は、それぞれ個別に単独で、又は本発明の変形形態において任意の所望の組み合わせで複数として実現することができる。
【0037】
本発明の例示的な実施形態を、図面を参照して以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による第1ミラーの概略図を示す。
【図2】本発明による第2ミラーの概略図を示す。
【図3】本発明による第3ミラーの概略図を示す。
【図4】マイクロリソグラフィ用の投影露光装置用の本発明による投影対物レンズの概略図を示す。
【図5】投影対物レンズの像視野の概略図を示す。
【図6】投影対物レンズ内の光軸に対する本発明によるミラーの各箇所の距離に対する、最大入射角及び入射角間隔の間隔長の例示的な図である。
【図7】本発明によるミラーの基板上の光学的利用領域の概略図を示す。
【図8】図1からの本発明による第1ミラーの入射角に対するいくつかの反射率値の概略図を示す。
【図9】図1からの本発明による第1ミラーの入射角に対するさらに他の反射率値の概略図を示す。
【図10】図2からの本発明による第2ミラーの入射角に対するいくつかの反射率値の概略図を示す。
【図11】図2からの本発明による第2ミラーの入射角に対するさらに他の反射率値の概略図を示す。
【図12】図3からの本発明による第3ミラーの入射角に対するいくつかの反射率値の概略図を示す。
【図13】図3からの本発明による第3ミラーの入射角に対するさらに他の反射率値の概略図を示す。
【図14】本発明による第4ミラーの入射角に対するいくつかの反射率値の概略図を示す。
【図15】本発明による第4ミラーの入射角に対するさらに他の反射率値の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明による各ミラー1a、1b、及び1cを、図1、図2、及び図3を参照して以下で説明する。図中、ミラーの対応の特徴は同じ参照符号を有する。さらに、本発明によるこれらのミラーの対応の特徴又は特性を、図3に関する説明に従って図1〜図3について要約して後述する。
【0040】
図1は、基板S及び層構成体を備えるEUV波長域用の本発明によるミラー1aの概略図を示す。この場合、層構成体は、それぞれが個別層の少なくとも2つの周期P1、P2、及びP3の周期的配列からなる複数の層サブシステムP’、P’’、及びP’’’を備え、周期P1、P2、及びP3は、高屈折率層H’、H’’、及びH’’’と低屈折率層L’、L’’、及びL’’’とに関して異なる材料から構成される2つの個別層を含み、各層サブシステムP’、P’’、及びP’’’内で、隣接する層サブシステムの周期の厚さから逸脱した一定の厚さd1、d2、及びd3を有する。この場合、基板から最も遠い層サブシステムP’’’は、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の周期P2の数N2よりも多い周期P3の数N3を有する。さらに、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’が有する周期P2の配列は、基板から最も遠い層サブシステムP’’’の第1高屈折率層H’’’が基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の最終高屈折率層H’’の直後に続くようになっている。
【0041】
結果として、図1において、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の周期P2内における高屈折率層H’’及び低屈折率層L’’の順序は、他の層サブシステムP’、P’’’の他の周期P1、P3内における高屈折率層H’、H’’’及び低屈折率層L’、L’’に対して逆になっているため、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の第1低屈折率層L’’も、基板の最も近くに位置する層サブシステムP’の最終低屈折率層L’の後に光学的に活性に続く。したがって、図1において基板から2番目に遠い層サブシステムP’’は、後述する図2及び図3における他の層サブシステムとも層の順序が異なる。
【0042】
図2は、基板S及び層構成体を備えるEUV波長域用の本発明によるミラー1bの概略図を示す。この場合、層構成体は、層構成体は、それぞれが個別層の少なくとも2つの周期P1、P2、及びP3の周期的配列からなる複数の層サブシステムP’、P’’、及びP’’’を備え、周期P1、P2、及びP3は、高屈折率層H’、H’’、及びH’’’と低屈折率層L’、L’’、及びL’’’とに関して異なる材料から構成される2つの個別層を含み、各層サブシステムP’、P’’、及びP’’’内で、隣接する層サブシステムの周期の厚さから逸脱した一定の厚さd1、d2、及びd3を有する。この場合、基板から最も遠い層サブシステムP’’’は、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の周期P2の数N2よりも多い周期P3の数N3を有する。この場合、図1に関する例示的な実施形態の場合とは異なり、基板から2番目に遠いサブシステムP’’が有する周期P2の配列は、他の層サブシステムP’及びP’’’の周期P1及びP3の配列に対応し、基板から最も遠い層サブシステムP’’’の第1高屈折率層H’’’が基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の最終低屈折率層L’’の後に光学的に活性に続くようになっている。
【0043】
図3は、基板S及び層構成体を備えるEUV波長域用の本発明によるミラー1cの概略図を示す。この場合、層構成体は、それぞれが個別層の少なくとも2つの周期P2及びP3の周期的配列からなる複数の層サブシステムP’’及びP’’’を備え、周期P2及びP3は、高屈折率層H’’及びH’’’と低屈折率層L’’及びL’’’とに関して異なる材料から構成される2つの個別層を含み、各層サブシステムP’’及びP’’’内で、隣接する層サブシステムの周期の厚さから逸脱した一定の厚さd2及びd3を有する。この場合、図14及び図15に関する説明による例示的な第4実施形態において、基板から最も遠い層サブシステムP’’’は、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の周期P2の数N2よりも多い周期P3の数N3を有する。この例示的な第4実施形態も、ミラー1aに対応する図3におけるミラー1cの図に関する変形形態として、基板Sから2番目に遠い層サブシステムP’’の逆の順序の層を含むため、この例示的な第4実施形態は、基板か最も遠い層サブシステムP’’’の第1高屈折率層H’’’が基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の最終低屈折率層L’’の後に光学的に活性に続くという特徴も有する。
【0044】
特に層サブシステムが少数、例えば層サブシステムが2つだけの場合、基板から最も遠い層サブシステムP’’’が、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の周期P2の高屈折率層H’’の厚さの120%を超える、特にその厚さの2倍を超える高屈折率層H’’’の厚さを有する場合に、高反射率値が得られることが分かる。
【0045】
図1〜図3に関する本発明によるミラーの層構成体の層サブシステムは、相互に直接連続し、さらに別の層システムにより分離されない。しかしながら、層構成体の相互適合又は層構成体の光学特性の最適化のために、個別中間層により層サブシステムを分離することが考えられる。しかしながら、光学特性の最適化は、図1に関する例示的な第1実施形態及び図3に関する変形形態としての例示的な第4実施形態の2つの層サブシステムP’’及びP’’’には当てはまらない。これは、所望の光学効果がP’’における層の配列の逆転により阻止されるからである。
【0046】
図1〜図3にH、H’、H’’及びH’’’で示した層は、EUV波長域において、L、L’、L’’及びL’’’として示した同じ層サブシステムの層と比較して高屈折率層として示すことができ、表2における材料の複素屈折率を参照されたい。これに対して、図1〜図3にL、L’、L’’及びL’’’で示した層は、EUV波長域において、H、H’、H’’及びH’’’として示した同じ層サブシステムの層と比較して低屈折率層として示すことができる。結果として、EUV波長域における高屈折率及び低屈折率という用語は、層サブシステムの1周期内の各相手層に関する相対的用語である。層サブシステムは、概して高屈折率で光学的に作用する層をそれに対して低い屈折率を光学的に有する層と、層サブシステムの1周期の主要構成要素として組み合わせた場合にのみ、EUV波長域において機能する。材料としてケイ素は、高屈折率層に概して用いられる。ケイ素と組み合わせて、材料としてモリブデン及びルテニウムは、低屈折率層として示すべきであり、表2における材料の複素屈折率を参照されたい。
【0047】
図1〜図3において、バリア層Bが、ケイ素及びモリブデンから構成された又はケイ素及びルテニウムから構成された周期の個別層間に位置付けられ、上記バリア層は、B4C、C、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ホウ化ケイ素、窒化モリブデン、炭化モリブデン、ホウ化モリブデン、窒化ルテニウム、炭化ルテニウム、及びホウ化ルテニウムの材料群から選択されるか、又は化合物としてこの材料群から構成される材料からなる。このようなバリア層は、1周期の2つの個別層間での相互拡散を抑制することにより、2つの個別層の移行部における光学的コントラストを高める。1周期の2つの個別層に材料としてモリブデン及びケイ素を用いた場合、基板から見てケイ素層の上に1つのバリア層があれば、十分なコントラストを提供するのに十分である。この場合、モリブデン層の上の第2のバリア層を省くことができる。これに関して、1周期の2つの個別層を分離するために少なくとも1つのバリア層を設けるべきであり、この少なくとも1つのバリア層は、上記材料又はそれらの化合物の種々のものから完璧に構成することができ、この場合も異なる材料又は化合物の層状構成を示し得る。
【0048】
材料としてB4Cを含み、0.35nm〜0.8nm、好ましくは0.4nm〜0.6nmの厚さを有するバリア層で、実際には層構成体の高反射率値が得られる。特に、ルテニウム及びケイ素から構成される層サブシステムの場合、B4Cから構成されるバリア層は、バリア層の厚さが0.4nm〜0.6nmの値である場合に最大反射率を示す。
【0049】
本発明によるミラー1a、1b、1cの場合、層サブシステムP’、P’’、及びP’’’の周期P1、P2、及びP3の数N1、N2、及びN3は、図1〜図3に示す個々の周期P1、P2、及びP3を最大100周期までそれぞれ含むことができる。さらに、図1〜図3に示す層構成体と基板Sとの間に中間層又は中間層構成体を設けることができ、これは、基板に対する層構成体の応力補償の役割を果たす。
【0050】
層構成体自体と同じ配列で同じ材料を、中間層又は中間層構成体の材料として用いることができる。しかしながら、中間層構成体の場合、個別層間のバリア層を省くことが可能であり、これは、中間層又は中間層構成体が概してミラーの反射率にごく僅かしか寄与しないため、バリア層によるコントラストの増加の問題がこの場合に重要でないからである。交互のクロム層及びスカンジウム層又はアモルファスモリブデン層若しくはルテニウム層から構成される多層構成体も同様に、中間層又は中間層構成体として考えられる。中間層構成体は、その下にある基板がEUV放射線から十分に保護されるように、厚さに関して、例えば20nmを超えるよう選択され得る。この場合、層は、いわゆる「表面保護層」(SPL)として働き、保護層としてEUV放射線からの保護を可能にする。
【0051】
本発明によるミラー1a、1b、1cの層構成体は、図1〜図3において、終端層Mとして例えばRh、Pt、Ru、Pd、Au、SiO2等の化学的に不活性な材料から構成される少なくとも1つの層を備える被覆層システムCにより終端する。したがって、上記終端層Mは、周囲の影響によるミラー表面の化学的変化を防止する。図1〜図3における被覆層システムCは、終端層Mに加えて、高屈折率層H、低屈折率層L、及びバリア層Bからなる。
【0052】
周期P1、P2、及びP3の1つの厚さは、図1〜図3から、対応周期の個別層の厚さの和として、すなわち、高屈折率層の厚さ、低屈折率層の厚さ、及び2つのバリア層の厚さから得られる。結果として、図1〜図3における層サブシステムP’、P’’、及びP’’’は、周期P1、P2、及びP3が異なる厚さd1、d2、及びd3を有することにより相互に区別することができる。結果として、本発明において、種々の層サブシステムP’、P’’、及びP’’’は、周期P1、P2、及びP3の厚さd1、d2、及びd3の差が0.1nmを超える層サブシステムであると理解される。その理由は、高屈折率層と低屈折率層との間の周期の区分が他の点で同一であるとすると、0.1nm未満の差では層サブシステムごとに異なる光学的効果を示すことができなくなるからである。さらに、本質的に同一の層サブシステムは、種々の製造装置での製造時に、その周期の厚さがこの絶対値だけ変動し得る。モリブデン及びケイ素から構成される周期を有する層サブシステムP’、P’’、及びP’’’の場合、すでに上述したように、周期P1、P2、及びP3内の第2バリア層を省くことで、この場合は周期P1、P2、及びP3の厚さが高屈折率層の厚さ、低屈折率層の厚さ、及びバリア層の厚さから得られるようにすることが可能である。
【0053】
図4は、図8〜図15に関する例示的な実施形態に従って本発明によるミラー1a、1b、又は1cに基づき構成される少なくとも1つのミラー1を含む6つのミラー1、11を有する、マイクロリソグラフィ用の投影露光装置用の本発明による投影対物レンズ2の概略図を示す。マイクロリソグラフィ用の投影露光装置のタスクは、レチクルとも称するマスクの構造を像平面内のいわゆるウェーハにリソグラフィで結像することである。この目的で、図4における本明による投影対物レンズ2は、物体平面5内に配置された物体視野3を像平面7内の像視野に結像させる。明確にするために図示しない構造保持マスクは、物体平面5内の物体視野3の箇所に配置することができる。向きを示す目的で、図4は、x軸が図の平面を向いた直交座標系を示す。この場合、x―y座標平面は、物体平面5と一致し、z軸は、物体平面5に対して垂直であり下向きである。投影対物レンズは、物体視野3を通らない光軸9を有する。投影対物レンズ2のミラー1、11は、光軸に対して回転対称である設計表面を有する。この場合、当該設計表面を完成したミラーの物理的表面と混同してはならない。その理由は、物理的表面が、ミラーに対する光の通過を確保するために設計表面に対してトリミングされるからである。この例示的な実施形態では、開口絞り13が、物体平面5から像平面7までの光路における第2ミラー11に配置される。投影対物レンズ2の効果は、主光線15並びに2つの開口周縁光線17及び19という3つの光線を用いて図示されており、これらは全て物体視野3の中心に生じる。物体平面に対する垂線に対して6°の角度で進む主光線15は、開口絞り13の平面内で光軸9と交差する。物体平面5から見て、主光線15は、入射瞳平面21で光軸と交差するように見える。これを、図4において第1ミラー11を通る主光線15の延長破線により示す。結果として、開口絞り13の仮想像である入射瞳は、入射瞳平面21内にある。投影対物レンズの射出瞳も同様に、像平面7から進む主光線15を逆方向に延長して同じ構成を有することが分かり得る。しかしながら、像平面7では、主光線15が光軸9と並行であり、このことから、これら2つの光線の逆投影は投影対物レンズ2の前方で無限遠点を作り、それゆえ投影対物レンズ2の射出瞳は無限遠にあるということになる。したがって、この投影対物レンズ2は、いわゆる像側テレセントリックな対物レンズである。物体視野から出る放射線の望ましくない口径食が投影対物レンズの反射構成の場合に生じることがないように、物体視野3の中心は光軸9から距離Rにあり、像視野7の中心は光軸9から距離rにある。
【0054】
図5は、図4に示す投影対物レンズ2で生じるような弧状の像視野7aの平面図と、図4からの軸に対応する軸を有する直交座標系とを示す。像視野7aは、円環の一部であり、その中心は、光軸9と物体平面との交点により与えられる。平均半径rは、図示の場合は34mmである。y方向の視野の幅dは、ここでは2mmである。像視野7aの中心視野点を、像視野7a内に小円として表示する。代替形態として、湾曲した像視野を、同じ半径を有しy方向に相互に変位する2つの円弧により画定することもできる。投影露光装置をスキャナとして動作させる場合、走査方向は、物体視野の短寸方向に、すなわちy方向に延びる。
【0055】
図6は、図4からの投影対物レンズ2の物体平面5から像平面7までの光路における最後から2番目のミラー(penultimate mirror)1の、単位[mm]で示すミラー表面の各箇所と光軸との間の種々の半径又は距離に対する、単位[°]での最大入射角(四角)及び入射角間隔の間隔長(丸)の例示的な図を示す。上記ミラー1は、EUV波長域用の6つのミラー1、11を有するマイクロリソグラフィ用の投影対物レンズ2の場合、概して、最大入射角及び最大入射角間隔又は最大入射角変動を確保しなければならないミラーである。本願において、入射角変動の測度としての入射角間隔の間隔長は、ミラーの被覆が光学設計の要件により光軸からの所与の距離に関して確保しなければならない最大入射角と最小入射角との間の角度範囲の角度数であると理解される。入射角間隔は、略してAOI間隔ともいう。
【0056】
表1による投影対物レンズの光学データは、図6の基礎をなすミラー1の場合に適用可能である。この場合、光学設計のミラー1、11の非球面は、以下の非球面式(1)に従って、非球面頂点における法線に対する非球面点の垂直距離hの関数としての、非球面頂点における接平面に対する非球面点の垂直距離Z(h)により、回転対称表面として規定される。
【数1】
ここで、ミラーの半径R=1/rho及びパラメータky、c1、c2、c3、c4、c5、及びc6を単位[mm]とする。この場合、上記パラメータcnは、同じく単位[mm]での距離hの関数として球面Z(h)が得られるように、[1/mm2n+2]に従って単位[mm]に関して正規化される。
【0057】
表1 図4に基づく設計の概略図に従った図6におけるミラー1の入射角に関する光学設計のデータ
【表1】
【0058】
最大入射角24°及び間隔長11°がミラー1の異なる箇所で生じることを、図6から認めることができる。結果として、ミラー1の層構成体は、異なる入射角及び異なる入射角間隔についてこれらの異なる箇所で高く均一な反射率値を示さなければならない。そうでなければ、投影対物レンズ2の高い全透過率及び許容可能な瞳アポダイゼーションが確保できないからである。
【0059】
いわゆるPV値を、入射角にわたるミラーの反射率の変動の測度として用いる。この場合、PV値は、検討対象の入射角間隔における最大反射率Rmaxと最小反射率Rminとの間の差を検討対象の入射角間隔における平均反射率Raverageで割ったものとして定義される。結果として、PV=(Rmax−Rmin)/Raverageが成立する。
【0060】
この場合、図4及び表1の設計に従った像平面7の前の最後から2番目のミラーとしての投影対物レンズ2のミラー1に関するPV値が大きいと、瞳アポダイゼーションに関する値が大きくなることを考慮に入れるべきである。この場合、0.25を超える大きなPV値では、ミラー1のPV値と投影対物レンズ2の瞳アポダイゼーションの結像収差との間に相関があり、これは、この値を超えるとPV値が他の収差原因よりも瞳アポダイゼーションに大きく影響するからである。
【0061】
図6において、棒23を用いて、光軸に対して関連最大入射角約21°及び関連間隔長11°を有するミラーの箇所の特定の半径又は特定の距離を例として表示する。上記表示の半径は、図7において、後述するように、ミラー1の光学的利用領域20を表す斜線領域20内の、破線で示す円23a上の箇所に対応する。
【0062】
図7は、図4からの投影対物レンズ2の物体平面5から像平面7までの光路における最後から2番目のミラー1の基板Sを、光軸9を中心とした円として平面図で示す。この場合、投影対物レンズ2の光軸9は、基板の対称軸9に相当する。さらに、図7において、光軸に対してオフセットしているミラー1の光学的利用領域1は斜線で描かれ、円23aは破線で描かれている。
【0063】
この場合、破線円23aのうち光学的利用領域内の部分は、図6に示した棒23で識別されるミラー1の箇所に対応する。結果として、破線円23aのうち光学的利用領域20内の部分的領域に沿ったミラー1の層構成体は、図6からのデータによれば、最大入射角21°及び最小入射角約10°の両方で高い反射率値を確保しなければならない。この場合、最小入射角約10°は、11°の間隔長により図6からの最大入射角21°から得られる。入射角の2つの上記極値が生じる破線円上の箇所は、図7において、入射角10°に関しては矢先26で、入射角21°に関しては矢先25で強調されている。
【0064】
層構成体は、高額な技術費を伴わずには基板Sの複数箇所で局所的に変えることができず、概して基板の対称軸9に対して回転対称に施されるので、図7における破線円23aの箇所に沿った層構成体は、図1〜図3に基本構成で示したような全く同一の層構成体となり、図8〜図15を参照して特定の例示的な実施形態の形態で説明される。この場合、層構成体を有する基板Sの対称軸9に対して基板Sを回転対称に被覆することによる効果として、層構成体の層サブシステムP’、P’’、及びP'''の周期的配列がミラーの全箇所で維持され、対称軸9からの距離に応じた層構成体の周期の厚さが基板S全体で回転対称のプロファイルを得るだけであり、層構成体は、対称軸9における基板Sの中心よりも基板Sの縁部の方が薄いことを考慮に入れるべきである。
【0065】
適当な被覆技術により、例えば分配ダイヤフラム(distribution diaphragms)の使用により、基板にわたる被覆の厚さの回転対称半径方向プロファイルを適合させることが可能であることを考慮に入れるべきである。結果として、被覆自体の設計に加えて、基板にわたる被覆設計のいわゆる厚さ係数の半径方向プロファイルにより、被覆設計の最適化にさらなる自由度が利用可能である。
【0066】
図8〜図15に示す反射率値を、波長13.5nmでの利用材料に関して表2に示す複素屈折率n=n−i×kを用いて計算した。この場合、特に実際の薄層の屈折率が表2で言及されている文献値から逸脱し得るので、実際のミラーの反射率値が図8〜図15に示す理論上の反射率値よりも小さくなることが分かり得ることを考慮に入れるべきである。
【0067】
表2 13.5nmでの使用屈折率n=n−i×k
【表2】
【0068】
さらに、図1〜図3に関する層配列に従った下記の短縮表記は、図8〜図15に関連する層設計を表したものである。
基板/…/(P1)×N1/(P2)×N2/(P3)×N3/被覆層システムC
ここで、図2及び図3に関しては、
P1=H’BL’B;P2=H’’BL’’B;P3=H’’’BL’’’B;C=HBLM
であり、図1と、図3に関する変形形態としての例示的な第4実施形態とに関しては、
P1=BH’BL’;P2=BL’’BH’’;P3=H’’’BL’’’B;C=HBLM
である。
【0069】
この場合、文字Hは高屈折率層の厚さを象徴的に表し、文字Lは低屈折率層の厚さを表し、文字Bはバリア層の厚さを表し、文字Mは表2及び図1〜図3に関する説明に従った化学的に不活性な終端層の厚さを表す。
【0070】
この場合、単位[nm]は、括弧内で指定した個別層の厚さに適用される。したがって、図8及び図9に関して用いた層設計は、短縮表記で以下のように指定することができる。
基板/…/(0.4B4C2.921Si0.4B4C4.931Mo)×8/(0.4B4C4.145Mo0.4B4C2.911Si)×5/(3.509Si0.4B4C3.216Mo0.4B4C)×16/2.975Si0.4B4C2Mo1.5Ru
【0071】
この例でのバリア層B4Cは、常に厚さ0.4nmであるから、層構成体の基本構成を示すために省くこともでき、図8及び図9に関する層設計は、以下のように短縮して指定することができる。
基板/…/(2.921Si4.931Mo)×8/(4.145Mo2.911Si)×5/(3.509Si3.216Mo)×16/2.975Si2Mo1.5Ru
【0072】
図1に示す例示的な第1実施形態から認識すべきは、5周期を含む第2層サブシステムにおける高屈折率層Si及び低屈折率層Moの順序を、他の層サブシステムと逆にして、基板から最も遠い層サブシステムの厚さ3.509nmの第1高屈折率層が基板から2番目に遠い層サブシステムの厚さ2.911nmの最終高屈折率層の直後に続くようにしたことである。
【0073】
これに対応して、図2に従った例示的な第2実施形態として図10及び図11に関して用いた層設計を短縮表記で指定することが可能である。
基板/…/(4.737Si0.4B4C2.342Mo0.4B4C)×28/(3.443Si0.4B4C2.153Mo0.4B4C)×5/(3.523Si0.4B4C3.193Mo0.4B4C)×15/2.918Si0.4B4C2Mo1.5Ru
【0074】
この例でのバリア層B4Cは、さらに常に厚さ0.4nmであるから、層構成体を示すために省くことができ、図10及び図11に関する層設計は、以下のように短縮して指定することができる。
基板/…/(4.737Si2.342Mo)×28/(3.443Si2.153Mo)×5/(3.523Si3.193Mo)×15/2.918Si2Mo1.5Ru
【0075】
したがって、図3に従った例示的な第3実施形態として図12及び図13に関して用いた層設計を短縮表記で、
基板/…/(1.678Si0.4B4C5.665Mo0.4B4C)×27/(3.798Si0.4B4C2.855Mo0.4B4C)×14/1.499Si0.4B4C2Mo1.5Ru
また、説明のためにバリア層B4Cを無視して、
基板/…/(1.678Si5.665Mo)×27/(3.798Si2.855Mo)×14/1.499Si2Mo1.5Ru
として指定することが可能である。
【0076】
同様に、図3に関する変形形態に従った例示的な第4実施形態として図14及び図15に関して用いた層設計を短縮表記で、
基板/…/(0.4B4C4.132Mo0.4B4C2.78Si)×6/(3.608Si0.4B4C3.142Mo0.4B4C)×16/2.027Si0.4B4C2Mo1.5Ru
また、説明のためにバリア層B4Cを無視して、
基板/…/(4.132Mo2.78Si)×6/(3.609Si3.142Mo)×16/2.027Si2Mo1.5Ru
として指定することが可能である。
【0077】
この例示的な第4実施形態から認識すべきは、6周期を含む層サブシステムP’’における高屈折率層Si及び低屈折率層Moの順序を、16周期を含む他方の層サブシステムP’’’と逆にして、基板から最も遠い層サブシステムP’’’の厚さ3.609nmの第1高屈折率層が基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の厚さ2.78nmの最終高屈折率層の直後に続くようにしたことである。
【0078】
したがって、この例示的な第4実施形態は、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’における高屈折率層及び低屈折率層の順序を図1に関する例示的な第1実施形態に従って逆にした、例示的な第3実施形態の変形形態である。
【0079】
図8は、図1に従った本発明によるミラー1aの例示的な第1実施形態の単位[%]での非偏光放射線の反射率値を、単位[°]での入射角に対してプロットしたものを示す。この場合、ミラー1aの層構成体の第1層サブシステムP’は、N1=8の周期P1からなり、周期P1は、高屈折率層として2.921nmのSi及び低屈折率層として4.931nmのMoと、0.4nmのB4Cをそれぞれ含む2つのバリア層とからなる。結果として、周期P1の厚さd1は8.652nmとなる。層Mo及びSiを逆の順序にしたミラー1aの層構成体の第2層サブシステムP’’は、N2=5の周期P2からなり、周期P2は、高屈折率層として2.911nmのSi及び低屈折率層として4.145nmのMoと、0.4nmのB4Cをそれぞれ含む2つのバリア層とからなる。結果として、周期P2の厚さd2は7.856nmとなる。ミラー1aの層構成体の第3層サブシステムP’’’は、N3=16の周期P3からなり、周期P3は、高屈折率層として3.509nmのSi及び低屈折率層として3.216nmのMoと、0.4nmのB4Cをそれぞれ含む2つのバリア層とからなる。結果として、周期P3の厚さd3は7.525nmとなる。ミラー1aの層構成体は、指定の順序で2.975nmのSi、0.4nmのB4C、2nmのMo、及び1.5nmのRuからなる被覆層システムCにより終端する。結果として、基板から最も遠い層サブシステムP’’’は、基板から2番目に遠い層サブシステムの周期P2の数N2よりも多い周期P3の数N3を有し、基板から最も遠い層サブシステムP’’’の第1高屈折率層H’’’は、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の最終高屈折率層H’’の直後に続く。
【0080】
図8において、波長13.5nmで厚さ係数1を有するこの公称層設計の単位[%]での反射率値を、単位[°]での入射角に対して実線で示す。さらに、14.1°〜25.7°の入射角間隔に関するこの公称層設計の平均反射率を、実線水平棒で示す。さらに、図8はこれに対応して、波長13.5nmで厚さ係数を0.933とした場合の、入射角に対する反射率値を破線で、また2.5°〜7.3°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を破線棒で明記している。結果として、図8に破線で示す反射率値に対する層構成体の周期の厚さは、公称層設計における周期の対応の厚さの93.3%にしかならない。換言すれば、層構成体は、ミラー1aのミラー表面で2.5°〜7.3°の入射角を確保しなければならない箇所において公称層設計よりも6.7%薄い。
【0081】
図9は、図8に対応する様式で、波長13.5nmで厚さ係数を1.018とした場合の、入射角に対する反射率値を細線で、また17.8°〜27.2°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を細棒で示し、さらに、厚さ係数を0.972とした場合の、入射角に対する反射率値を太線で、また8.7°〜21.4°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を太棒で示す。結果として、層構成体は、ミラー1aのミラー表面で17.8°〜27.2°の入射角を確保しなければならない箇所において公称層設計よりも1.8%厚く、これに対応して、8.7°〜21.4°の入射角を確保しなければならない箇所において公称層設計よりも2.8%薄い。
【0082】
図8及び図9に関する層構成体により達成することができる平均反射率及びPV値を、表3において入射角間隔及び厚さ係数に対して集約する。上記で規定した層構成体を備えるミラー1aが、波長13.5nmで2.5°〜27.2°の入射角間隔に関して、43%を超える平均反射率と0.21以下のPV値としての反射率変動とを有することが認識できる。
【0083】
【表3】
表3 入射角及び選択した厚さ係数に対する図8及び図9に関する層設計の平均反射率及びPV値
【0084】
図10は、図2に従った本発明によるミラー1bの例示的な第2実施形態の単位[%]での非偏光放射線の反射率値を、単位[°]での入射角に対してプロットしたものを示す。この場合、ミラー1bの層構成体の第1層サブシステムP’は、N1=28の周期P1からなり、周期P1は、高屈折率層として4.737nmのSi及び低屈折率層として2.342nmのMoと、0.4nmのB4Cをそれぞれ含む2つのバリア層とからなる。結果として、周期P1の厚さd1は7.879nmとなる。ミラー1bの層構成体の第2層サブシステムP’’は、N2=5の周期P2からなり、周期P2は、高屈折率層として3.443nmのSi及び低屈折率層として2.153nmのMoと、0.4nmのB4Cをそれぞれ含む2つのバリア層とからなる。結果として、周期P2の厚さd2は6.396nmとなる。ミラー1bの層構成体の第3層サブシステムP’’’は、N3=15の周期P3からなり、周期P3は、高屈折率層として3.523nmのSi及び低屈折率層として3.193nmのMoと、0.4nmのB4Cをそれぞれ含む2つのバリア層とからなる。結果として、周期P3の厚さd3は7.516nmとなる。ミラー1bの層構成体は、指定の順序で2.918nmのSi、0.4nmのB4C、2nmのMo、及び1.5nmのRuからなる被覆層システムCにより終端する。結果として、基板から最も遠い層サブシステムP’’’は、基板から2番目に遠い層サブシステムの周期P2の数N2よりも多い周期P3の数N3を有する。
【0085】
図10において、波長13.5nmで厚さ係数1を有するこの公称層設計の単位[%]での反射率値を、単位[°]での入射角に対して実線で示す。さらに、14.1°〜25.7°の入射角間隔に関するこの公称層設計の平均反射率を、実線水平棒で示す。さらに、図10はこれに対応して、波長13.5nmで厚さ係数を0.933とした場合の、入射角に対する反射率値を破線で、また2.5°〜7.3°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を破線棒で明記している。結果として、図10に破線で示す反射率値に対する層構成体の周期の厚さは、公称層設計における周期の対応の厚さの93.3%にしかならない。換言すれば、層構成体は、ミラー1bのミラー表面で2.5°〜7.3°の入射角を確保しなければならない箇所において公称層設計よりも6.7%薄い。
【0086】
図11は、図10に対応する様式で、波長13.5nmで厚さ係数を1.018とした場合の、入射角に対する反射率値を細線で、また17.8°〜27.2°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を細棒で示し、さらに、厚さ係数を0.972とした場合の、入射角に対する反射率値を太線で、また8.7°〜21.4°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を太棒で示す。結果として、層構成体は、ミラー1bのミラー表面で17.8°〜27.2°の入射角を確保しなければならない箇所において公称層設計よりも1.8%厚く、これに対応して、8.7°〜21.4°の入射角を確保しなければならない箇所において公称設計よりも2.8%薄い。
【0087】
図10及び図11に関する層構成体により達成することができる平均反射率及びPV値を、表4において入射角間隔及び厚さ係数に対して集約する。上記で規定した層構成体を備えるミラー1bが、波長13.5nmで2.5°〜27.2°の入射角間隔に関して、45%を超える平均反射率と0.23以下のPV値としての反射率変動とを有することが認識できる。
【0088】
表4 入射角及び選択した厚さ係数に対する図10及び図11に関する層設計の平均反射率及びPV値
【表4】
【0089】
図12は、図3に従った本発明によるミラー1cの例示的な第3実施形態の単位[%]での非偏光放射線の反射率値を、単位[°]での入射角に対してプロットしたものを示す。この場合、ミラー1cの層構成体の第2層サブシステムP’’は、N2=27の周期P2からなり、周期P2は、高屈折率層として1.678nmのSi及び低屈折率層として5.665nmのMoと、0.4nmのB4Cをそれぞれ含む2つのバリア層とからなる。結果として、周期P2の厚さd2は8.143nmとなる。ミラー1cの層構成体の第3層サブシステムP’’’は、N3=14の周期P3からなり、周期P3は、高屈折率層として3.798nmのSi及び低屈折率層として2.855nmのMoと、0.4nmのB4Cをそれぞれ含む2つのバリア層とからなる。結果として、周期P3の厚さd3は7.453nmとなる。ミラー1cの層構成体は、指定の順序で1.499nmのSi、0.4nmのB4C、2nmのMo、及び1.5nmのRuからなる被覆層システムCにより終端する。結果として、基板から最も遠い層サブシステムP’’’は、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の高屈折率層H’’の厚さの2倍を超える高屈折率層H’’’の厚さを有する。
【0090】
図12において、波長13.5nmで厚さ係数1を有するこの公称層設計の単位[%]での反射率値を、単位[°]での入射角に対して実線で示す。さらに、14.1°〜25.7°の入射角間隔に関するこの公称層設計の平均反射率を、実線水平棒で示す。さらに、図12はこれに対応して、波長13.5nmで厚さ係数を0.933とした場合の、入射角に対する反射率値を破線で、また2.5°〜7.3°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を破線棒で明記している。結果として、図12に破線で示す反射率値に対する層構成体の周期の厚さは、公称層設計における周期の対応の厚さの93.3%にしかならない。換言すれば、層構成体は、ミラー1cのミラー表面で2.5°〜7.3°の入射角を確保しなければならない箇所において公称層設計よりも6.7%薄い。
【0091】
図13は、図12に対応する様式で、波長13.5nmで厚さ係数を1.018とした場合の、入射角に対する反射率値を細線で、また17.8°〜27.2°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を細棒で示し、さらに、これに対応して、厚さ係数を0.972とした場合の、入射角に対する反射率値を太線で、また8.7°〜21.4°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を太棒で示す。結果として、層構成体は、ミラー1cのミラー表面で17.8°〜27.2°の入射角を確保しなければならない箇所において公称層設計よりも1.8%厚く、これに対応して、8.7°〜21.4°の入射角を確保しなければならない箇所において公称設計よりも2.8%薄い。
【0092】
図12及び図13に関する層構成体により達成することができる平均反射率及びPV値を、表5において入射角間隔及び厚さ係数に対して集約する。上記で規定した層構成体を備えるミラー1cが、波長13.5nmで2.5°〜27.2°の入射角間隔に関して、39%を超える平均反射率と0.22以下のPV値としての反射率変動とを有することが認識できる。
【0093】
表5 入射角及び選択した厚さ係数に対する図12及び図13に関する層設計の平均反射率及びPV値
【表5】
【0094】
図14は、層サブシステムP’’における層の順序を逆にしたミラー1cの変形形態としての本発明によるミラーの例示的な第4実施形態の、単位[%]での非偏光放射線の反射率値を、単位[°]での入射角に対してプロットしたものを示す。この場合、ミラーの層構成体の層サブシステムP’’は、N2=6の周期P2からなり、周期P2は、高屈折率層として2.78nmのSi及び低屈折率層として4.132nmのMoと、0.4nmのB4Cをそれぞれ含む2つのバリア層とからなる。結果として、周期P2の厚さd2は7.712nmとなる。ミラーの層構成体の第3層サブシステムP’’’は、N3=16の周期P3からなり、周期P3は、高屈折率層として3.608nmのSi及び低屈折率層として3.142nmのMoと、0.4nmのB4Cをそれぞれ含む2つのバリア層とからなる。結果として、周期P3の厚さd3は7.55nmとなる。ミラーの層構成体は、指定の順序で2.027nmのSi、0.4nmのB4C、2nmのMo、及び1.5nmのRuからなる被覆層システムCにより終端する。結果として、基板から最も遠い層サブシステムP’’’は、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の高屈折率層H’’の厚さの120%を超える高屈折率層H’’’の厚さを有する。さらに、基板から最も遠い層サブシステムP’’’は、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の周期P2の数N2よりも多い周期P3の数N3を有し、基板から最も遠い層サブシステムP’’’の第1高屈折率層H’’’は、基板から2番目に遠い層サブシステムP’’の最終高屈折率層H’’の直後に続く。
【0095】
図14において、波長13.5nmで厚さ係数1を有するこの公称層設計の単位[%]での反射率値を、単位[°]での入射角に対して実線で示す。さらに、14.1°〜25.7°の入射角間隔に関するこの公称層設計の平均反射率を、実線水平棒で示す。さらに、図14はこれに対応して、波長13.5nmで厚さ係数を0.933とした場合の、入射角に対する反射率値を破線で、また2.5°〜7.3°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を破線棒で明記している。結果として、図14に破線で示す反射率値に対する層構成体の周期の厚さは、公称層設計における周期の対応の厚さの93.3%にしかならない。換言すれば、層構成体は、本発明によるミラーのミラー表面で2.5°〜7.3°の入射角を確保しなければならない箇所において公称層設計よりも6.7%薄い。
【0096】
図15は、図14に対応する様式で、波長13.5nmで厚さ係数を1.018とした場合の、入射角に対する反射率値を細線で、また17.8°〜27.2°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を細棒で示し、さらに、これに対応して、厚さ係数を0.972とした場合の、入射角に対する反射率値を太線で、また8.7°〜21.4°の入射角間隔に関する上記で規定した層設計の平均反射率を太棒で示す。結果として、層構成体は、本発明によるこのミラーのミラー表面で17.8°〜27.2°の入射角を確保しなければならない箇所において公称層設計よりも1.8%厚く、これに対応して、8.7°〜21.4°の入射角を確保しなければならない箇所において公称設計よりも2.8%薄い。
【0097】
図14及び図15に関する層構成体により達成することができる平均反射率及びPV値を、表6において入射角間隔及び厚さ係数に対して集約する。上記で規定した層構成体を備える本発明によるミラーが、波長13.5nmで2.5°〜27.2°の入射角間隔に関して、42%を超える平均反射率と0.24以下のPV値としての反射率変動とを有することが認識できる。
【0098】
表6 入射角及び選択した厚さ係数に対する図14及び図15に関する層設計の平均反射率及びPV値
【表6】
【0099】
図示の4つの例示的な実施形態全てにおいて、基板の近くにそれぞれ位置付けた層サブシステムの周期の数は、層サブシステムを通るEUV放射線の透過率が10%未満、特に2%未満であるよう増加させることができる。
【0100】
したがって、第1に、冒頭ですでに述べたように、ミラーの光学特性に対する、この場合は特に反射率に対する層構成体の下にある層又は基板の摂動作用を回避することが可能であり、第2に、層構成体の下にある層又は基板がEUV放射線から十分に保護されることがこれにより可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(S)及び層構成体を備え、前記層構成体はそれぞれ個別層の少なくとも2つの周期(P2、P3)の周期的配列からなる複数の層サブシステム(P’’、P’’’)を備え、前記周期(P2、P3)は高屈折率層(H’’、H’’’)及び低屈折率層(L’’、L’’’)に関して異なる材料から構成される2つの個別層を含み、前記周期は各サブシステム(P’’、P’’’)内で隣接する層サブシステムの前記周期の厚さから逸脱した一定の厚さ(d2、d3)を有する、EUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)であって、
前記基板(S)から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)が有する前記周期(P2)の配列は、
前記基板(S)から最も遠い前記層サブシステム(P’’’)の第1高屈折率層(H’’’)が前記基板から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)の最終高屈折率層(H’’)の直後に続くように、
且つ/又は前記基板(S)から最も遠い前記層サブシステム(P’’’)が前記基板(S)から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)の前記周期(P2)の数(N2)よりも多い前記周期(P3)の数(N3)を有するようになっている
ことを特徴とするEUV波長域用のミラー。
【請求項2】
基板(S)及び層構成体を備え、前記層構成体はそれぞれ個別層の少なくとも2つの周期(P2、P3)の周期的配列からなる複数の層サブシステム(P’’、P’’’)を備え、前記周期(P2、P3)は高屈折率層(H’’、H’’’)及び低屈折率層(L’’、L’’’)に関して異なる材料から構成される2つの個別層を含み、前記周期は各サブシステム(P’’、P’’’)内で、隣接する層サブシステムの前記周期の厚さから逸脱した一定の厚さ(d2、d3)を有する、EUV波長域用のミラー(1a)であって、
前記基板(S)から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)が有する前記周期(P2)の配列は、
前記基板(S)から最も遠い前記層サブシステム(P’’’)の第1高屈折率層(H’’’)が前記基板から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)の最終高屈折率層(H’’)の直後に続き、
前記層構成体の前記層サブシステム(P’’、P’’’)を通るEUV放射線の透過率が10%未満、特に2%未満となるようになっている
ことを特徴とするEUV波長域用のミラー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)において、前記層サブシステム(P’’、P’’’)は、前記高屈折率層(H’’、H’’’)及び前記低屈折率層(L’’、L’’’)に関して同じ材料から構成されるEUV波長域用のミラー。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)において、前記基板(S)から最も遠い前記層サブシステム(P’’’)の前記周期(P3)の数(N3)は、9〜16となり、前記基板(S)から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)の前記周期(P2)の数(N2)は、2〜12となるEUV波長域用のミラー。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b)において、
前記層構成体は、少なくとも3つの層サブシステム(P’、P’’、P’’’)を有し、
前記基板(S)の最も近くに位置付けた前記層サブシステム(P’)の前記周期(P1)の数(N1)は、前記基板(S)から最も遠い前記層サブシステム(P’’’)よりも多く、且つ/又は前記基板(S)から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)よりも多いEUV波長域用のミラー。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1c)において、前記基板(S)から最も遠い前記層サブシステム(P’’’)の前記周期(P3)は、前記基板(S)から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)の前記周期(P2)の前記高屈折率層(H’’)の厚さの120%を超える、特に該厚さの2倍を超える前記高屈折率層(H’’’)の厚さを有するEUV波長域用のミラー。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1c)において、前記基板(S)から最も遠い前記層サブシステム(P’’’)の前記周期(P3)は、前記基板(S)から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)の前記周期(P3)の前記低屈折率層(L’’)の厚さの80%未満、特に該厚さの2/3未満の前記低屈折率層(L’’’)の厚さを有するEUV波長域用のミラー。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1c)において、前記基板(S)から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)の前記周期(P2)は、4nmを超える、特に5nmを超える前記低屈折率層(L’’)の厚さを有するEUV波長域用のミラー。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)において、前記基板(S)から最も遠い前記層サブシステム(P’’’)は、7.2nm〜7.7nmとなる前記周期(P3)の厚さ(d3)を有するEUV波長域用のミラー。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)において、中間層又は中間層構成体が、前記層構成体と前記基板(S)との間に設けられ、前記層構成体の応力補償の役割を果たすEUV波長域用のミラー。
【請求項11】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)において、20nmを超える、特に50nmを超える厚さを有する金属層が、前記層構成体と前記基板(S)との間に設けられるEUV波長域用のミラー。
【請求項12】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)において、
前記周期(P3、P3)を形成する2つの前記個別層(L’’、H’’、L’’’、H’’’)の材料は、モリブデン及びケイ素又はルテニウム及びケイ素であり、
前記個別層は少なくとも1つのバリア層(B)により分離され、該バリア層(B)はB4C、C、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ホウ化ケイ素、窒化モリブデン、炭化モリブデン、ホウ化モリブデン、窒化ルテニウム、炭化ルテニウム、及びホウ化ルテニウムの材料群から選択されるか、又は化合物として該材料群から構成される材料からなるEUV波長域用のミラー。
【請求項13】
請求項12に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)において、前記バリア層(B)は、材料としてB4Cを含み、0.35nm〜0.8nm、好ましくは0.4nm〜0.6nmの厚さを有するEUV波長域用のミラー。
【請求項14】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)において、被覆層システム(C)が、化学的に不活性な材料から構成される少なくとも1つの層(M)を含み、該ミラーの前記層構成体の終端となるEUV波長域用のミラー。
【請求項15】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)において、ミラー表面に沿った前記層構成体の厚さ係数は、0.9〜1.05の値、特に0.933〜1.018の値を呈するEUV波長域用のミラー。
【請求項16】
請求項15に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)において、前記ミラー表面の1箇所における前記層構成体の前記厚さ係数は、そこで確保しなければならない最大入射角と相関するEUV波長域用のミラー。
【請求項17】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b)において、前記層構成体は少なくとも3つの層サブシステム(P’、P’’、P’’’)を有し、前記少なくとも3つの層サブシステム(P’、P’’、P’’’)を通るEUV放射線の透過率は10%未満、特に2%未満となるEUV波長域用のミラー。
【請求項18】
請求項2に記載のEUV波長域用のミラー(1a)において、
前記層サブシステム(P’’、P’’’)は、前記高屈折率層(H’’、H’’’)及び前記低屈折率層(L’’、L’’’)に関して同じ材料から構成され、
前記基板(S)から最も遠い前記層サブシステム(P’’’)は、前記基板(S)から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)の前記周期(P2)の数(N2)よりも多い前記周期(P3)の数(N3)を有するEUV波長域用のミラー。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載のミラー(1a;1b;1c)を備えるマイクロリソグラフィ用の投影対物レンズ。
【請求項20】
請求項19に記載の投影対物レンズを備えるマイクロリソグラフィ用の投影露光装置。
【請求項1】
基板(S)及び層構成体を備え、前記層構成体はそれぞれ個別層の少なくとも2つの周期(P2、P3)の周期的配列からなる複数の層サブシステム(P’’、P’’’)を備え、前記周期(P2、P3)は高屈折率層(H’’、H’’’)及び低屈折率層(L’’、L’’’)に関して異なる材料から構成される2つの個別層を含み、前記周期は各サブシステム(P’’、P’’’)内で隣接する層サブシステムの前記周期の厚さから逸脱した一定の厚さ(d2、d3)を有する、EUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)であって、
前記基板(S)から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)が有する前記周期(P2)の配列は、
前記基板(S)から最も遠い前記層サブシステム(P’’’)の第1高屈折率層(H’’’)が前記基板から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)の最終高屈折率層(H’’)の直後に続くように、
且つ/又は前記基板(S)から最も遠い前記層サブシステム(P’’’)が前記基板(S)から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)の前記周期(P2)の数(N2)よりも多い前記周期(P3)の数(N3)を有するようになっている
ことを特徴とするEUV波長域用のミラー。
【請求項2】
基板(S)及び層構成体を備え、前記層構成体はそれぞれ個別層の少なくとも2つの周期(P2、P3)の周期的配列からなる複数の層サブシステム(P’’、P’’’)を備え、前記周期(P2、P3)は高屈折率層(H’’、H’’’)及び低屈折率層(L’’、L’’’)に関して異なる材料から構成される2つの個別層を含み、前記周期は各サブシステム(P’’、P’’’)内で、隣接する層サブシステムの前記周期の厚さから逸脱した一定の厚さ(d2、d3)を有する、EUV波長域用のミラー(1a)であって、
前記基板(S)から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)が有する前記周期(P2)の配列は、
前記基板(S)から最も遠い前記層サブシステム(P’’’)の第1高屈折率層(H’’’)が前記基板から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)の最終高屈折率層(H’’)の直後に続き、
前記層構成体の前記層サブシステム(P’’、P’’’)を通るEUV放射線の透過率が10%未満、特に2%未満となるようになっている
ことを特徴とするEUV波長域用のミラー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)において、前記層サブシステム(P’’、P’’’)は、前記高屈折率層(H’’、H’’’)及び前記低屈折率層(L’’、L’’’)に関して同じ材料から構成されるEUV波長域用のミラー。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)において、前記基板(S)から最も遠い前記層サブシステム(P’’’)の前記周期(P3)の数(N3)は、9〜16となり、前記基板(S)から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)の前記周期(P2)の数(N2)は、2〜12となるEUV波長域用のミラー。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b)において、
前記層構成体は、少なくとも3つの層サブシステム(P’、P’’、P’’’)を有し、
前記基板(S)の最も近くに位置付けた前記層サブシステム(P’)の前記周期(P1)の数(N1)は、前記基板(S)から最も遠い前記層サブシステム(P’’’)よりも多く、且つ/又は前記基板(S)から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)よりも多いEUV波長域用のミラー。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1c)において、前記基板(S)から最も遠い前記層サブシステム(P’’’)の前記周期(P3)は、前記基板(S)から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)の前記周期(P2)の前記高屈折率層(H’’)の厚さの120%を超える、特に該厚さの2倍を超える前記高屈折率層(H’’’)の厚さを有するEUV波長域用のミラー。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1c)において、前記基板(S)から最も遠い前記層サブシステム(P’’’)の前記周期(P3)は、前記基板(S)から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)の前記周期(P3)の前記低屈折率層(L’’)の厚さの80%未満、特に該厚さの2/3未満の前記低屈折率層(L’’’)の厚さを有するEUV波長域用のミラー。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1c)において、前記基板(S)から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)の前記周期(P2)は、4nmを超える、特に5nmを超える前記低屈折率層(L’’)の厚さを有するEUV波長域用のミラー。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)において、前記基板(S)から最も遠い前記層サブシステム(P’’’)は、7.2nm〜7.7nmとなる前記周期(P3)の厚さ(d3)を有するEUV波長域用のミラー。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)において、中間層又は中間層構成体が、前記層構成体と前記基板(S)との間に設けられ、前記層構成体の応力補償の役割を果たすEUV波長域用のミラー。
【請求項11】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)において、20nmを超える、特に50nmを超える厚さを有する金属層が、前記層構成体と前記基板(S)との間に設けられるEUV波長域用のミラー。
【請求項12】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)において、
前記周期(P3、P3)を形成する2つの前記個別層(L’’、H’’、L’’’、H’’’)の材料は、モリブデン及びケイ素又はルテニウム及びケイ素であり、
前記個別層は少なくとも1つのバリア層(B)により分離され、該バリア層(B)はB4C、C、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ホウ化ケイ素、窒化モリブデン、炭化モリブデン、ホウ化モリブデン、窒化ルテニウム、炭化ルテニウム、及びホウ化ルテニウムの材料群から選択されるか、又は化合物として該材料群から構成される材料からなるEUV波長域用のミラー。
【請求項13】
請求項12に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)において、前記バリア層(B)は、材料としてB4Cを含み、0.35nm〜0.8nm、好ましくは0.4nm〜0.6nmの厚さを有するEUV波長域用のミラー。
【請求項14】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)において、被覆層システム(C)が、化学的に不活性な材料から構成される少なくとも1つの層(M)を含み、該ミラーの前記層構成体の終端となるEUV波長域用のミラー。
【請求項15】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)において、ミラー表面に沿った前記層構成体の厚さ係数は、0.9〜1.05の値、特に0.933〜1.018の値を呈するEUV波長域用のミラー。
【請求項16】
請求項15に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b;1c)において、前記ミラー表面の1箇所における前記層構成体の前記厚さ係数は、そこで確保しなければならない最大入射角と相関するEUV波長域用のミラー。
【請求項17】
請求項1又は2に記載のEUV波長域用のミラー(1a;1b)において、前記層構成体は少なくとも3つの層サブシステム(P’、P’’、P’’’)を有し、前記少なくとも3つの層サブシステム(P’、P’’、P’’’)を通るEUV放射線の透過率は10%未満、特に2%未満となるEUV波長域用のミラー。
【請求項18】
請求項2に記載のEUV波長域用のミラー(1a)において、
前記層サブシステム(P’’、P’’’)は、前記高屈折率層(H’’、H’’’)及び前記低屈折率層(L’’、L’’’)に関して同じ材料から構成され、
前記基板(S)から最も遠い前記層サブシステム(P’’’)は、前記基板(S)から2番目に遠い前記層サブシステム(P’’)の前記周期(P2)の数(N2)よりも多い前記周期(P3)の数(N3)を有するEUV波長域用のミラー。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載のミラー(1a;1b;1c)を備えるマイクロリソグラフィ用の投影対物レンズ。
【請求項20】
請求項19に記載の投影対物レンズを備えるマイクロリソグラフィ用の投影露光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2012−532467(P2012−532467A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518847(P2012−518847)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057655
【国際公開番号】WO2011/003676
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー (435)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057655
【国際公開番号】WO2011/003676
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー (435)
【Fターム(参考)】
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