FEX−2ポリペプチドに特異的なリガンドの新規の用途(NoveluseofligandsspecifictoFEX−2polypeptide)
本発明はFEX-2ポリペプチドに特異的なリガンドの新規な用途に関する。より具体的に本発明はFEX-2ポリペプチドに特異的なリガンドを利用して、炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する方法及び炎症性疾患を治療又は予防する方法を提供する。前記FEX-2ポリペプチドに特異的なリガンドは貪食細胞の表面に発現されたFEX-2に結合して抗炎症性サイトカインの分泌を促進し、炎症性サイトカインの分泌は抑制して炎症性疾患が治療又は予防できる効果がある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2004年10月12日付で出願された大韓民国特許出願第10-2004-0081499号に基づく優先権を主張するものである。
本発明はFEX-2ポリペプチドに特異的なリガンドの新規の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症(Inflammation)は細胞及び組織の損傷や感染に対する局部的な又は全身的な防御メカニズムである。炎症は主に、免疫系をなす数多くの体液性媒介体(humoral mediator)が直接反応するか又は局部的又は全身的作動システム(effector system)を刺激することにより生ずる連鎖的な生体反応により誘発される。このような炎症反応に関与する媒介体にはPMN(Polymorphonuclear leukocytes)、CTL(Cytotoxic Tlymphocyte)、NK(Natural killer)細胞、大食細胞等のような免疫細胞とサイトカイン等がある。炎症性疾患は特に、炎症性サイトカインの不均衡とエフェクター細胞(effector cell)の相互作用により引起こされる。主要炎症性疾患には感染性鼻炎、アレルギー性鼻炎、慢性鼻炎、急性副鼻腔炎及び慢性副鼻腔炎等のような鼻炎及び副鼻腔炎;急性化膿性中耳炎及び慢性化膿性中耳炎等のような中耳炎;細菌性肺炎、気管支肺炎、大葉性肺炎、レジオレラ肺炎及びウイルス性肺炎等のような肺炎;急性又は慢性胃炎;感染性小腸結腸炎、クローン氏病(Crohn's disease)、特発性潰瘍性大腸炎、胃膜性大腸炎等のような腸炎;化膿性関節炎、結核性関節炎、退行性関節炎及びリュウマチ関節炎等のような関節炎;及び糖尿性眼疾患等がある。
【0003】
今まで知られた主要炎症性サイトカインには、大食細胞及び単核球細胞により生成されるTNF-α(tumor necrosis factor-α)、IL-1、IL-6及びIL-18等がある。この中でTNF-αは低濃度で適切な止血及び防御作用を行うものの、高濃度では全身又は特定組織でIL-1のような他の種類の炎症性サイトカインと共に作用して炎症反応を悪化させる。
【0004】
一方、TGF-βは特定細胞の増殖を促進又は抑制する活性を有するサイトカインとして、リンパ球反応の拮抗効果及び大食細胞活性化抑制等のような活性を有し、代表的な抗炎症性サイトカインとして知られている。
【0005】
炎症性サイトカインの不均衡による炎症性疾患を治療する為に、前記炎症性サイトカインを抑制し、抗炎症性サイトカインの生成を促進しようとする研究が多様に成されている。
【0006】
炎症性サイトカイン(proinflammatory cytokine)を抑制する方法としては、サイトカインが外部の刺激により分泌されることを抑制する生産抑制方法と、サイトカインが対象細胞を刺激することを調節する作用抑制方法がある。サイトカインの生産抑制剤としては、IL-1とTNF-α生産抑制剤であるSK&F 86002、テトラドリン(tetradrine)、WIN67694等が報告された例があり、サイトカインの作用抑制剤としては、IL-1受容体拮抗剤(antagonist)であるIL-1Ra、水溶性TNF-α受容体、サイトカイン抗体等が開発されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的はFEX-2に特異的なリガンドの新規な用途を提供することである。
【0008】
ここに、本発明者らは新たな炎症性疾患の治療剤の研究を重ねていく中で、FEX-2に特異的なリガンドが貪食細胞の表面に発現されるFEX-2に結合し、抗炎症性サイトカインの分泌は促進し、炎症性サイトカインの分泌は抑制し、炎症性疾患を予防又は治療し得ることを確認することにより本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記のような本発明の目的を達成する為に、本発明はFEX-2ポリペプチドに特異的なリガンド(ligand)の有効量を、これを必要とする個体(subject)に投与することを含む、個体において炎症と関係のあるサイトカイン(cytokine associated with inflammation)の分泌を調節する方法;及び炎症性疾患を治療又は予防する方法を提供する。
【0010】
さらに、本発明の他の目的を達成する為に、本発明は(a)FEX-2を発現する貪食細胞と試験製剤を培養する段階;及び(b)試験製剤無しに培養された貪食細胞から分泌されるサイトカインの水準に対する試験製剤と共に培養された貪食細胞から分泌される、サイトカインの水準の相対的な変化を測定する段階を含む、炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する製剤のスクリーニング方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明の他の目的を達成する為に、本発明は前記スクリーニング方法の段階に前記(b)段階で選ばれた貪食細胞から分泌されるサイトカインの水準を調節する試験製剤を炎症性疾患を有する動物に投与して前記試験製剤が前記動物において、治療効果を呈するか否かを検査する段階をさらに含む、炎症性疾患の治療又は予防用製剤のスクリーニング方法を提供する。
【0012】
本発明の他の目的を達成する為に、本発明は炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する薬学的組成物;及び炎症性疾患の治療又は薬学的組成物の製造の為のFEX-2ポリペプチドに特異的なリガンドの用途を提供する。
【0013】
従って、本発明のさらに他の目的を達成する為に、本発明はFEX-2ポリペプチドに特異的なリガンドを有効成分として含む炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する薬学的組成物;及び炎症性疾患の治療又は予防用薬学的組成物を提供する。
【0014】
他の定義が無い限り、本明細書に使用された全ての技術的及び科学的用語は当業者らにより一般的に理解されるものと同一の意味を有する。次の参考文献は本発明の明細書に使われた多くの用語らの一般的な定義を有する技術(skill)の一つを提供する。(Singleton et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOTY(2d ed. 1994);THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY(Walker ed., 1988);及び Hale & Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY. さらに、次の定義は本発明の実施の為、読者(reader)に便宜を与える為に提供する。
【0015】
本発明で‘ポリペプチド’(polypeptide)は、‘ポリペプチド(polypeptides)及び'タンパク質(protein(s))'と互換性があるように使用され、例えば、典型的には自然状態のタンパク質から見い出される通り、アミノ酸残基の重合体をいう。
【0016】
本発明で‘FEX-2ポリペプチド’は哺乳動物から由来した場合もあり、好ましくは、人間、ラット及びマウスからなるグループの中で選ばれるいずれか一つから由来したものである。より好ましくは配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含む人間FEX-2である。最も好ましくは前記FEX-2は哺乳動物の貪食細胞より発現されるものである。
【0017】
本発明で‘FEX-2に特異的なリガンド’とは、FEX-2に結合する全ての種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ペプチド模倣物、化合物及び生物製剤を含む。好ましくは、前記FEX-2リガンドは貪食細胞の表面で発現されるFEX-2に結合して活性化された貪食細胞におけるサイトカインの分泌が調節できる活性を有することをいう。好ましくは、貪食細胞から抗炎症性サイトカインの分泌を促進し、炎症性サイトカインの分泌が抑制できる活性を有するものでもあり得る。前記にて貪食細胞としては専門的な貪食細胞である大食細胞ばかりでなく、上皮細胞及び繊維芽細胞のような非専門的な貪食細胞も含まれる。前記FEX-2リガンドは最も好ましくはホスファチジルセリン、抗-FEX-2抗体又はこれらの誘導体でもあり得る。前記にて‘誘導体’とはホスファチジルセリン又は抗-FEX-2抗体の基本骨格及びその生理活性を保持しながら一部の化学構造が変形したことをいう。
【0018】
前記ホスファチジルセリンは天然に存在する脂肪質の一種であり、セリン基、リン酸基、グリセロールと2個の脂肪酸基が結合された物質である。前記ホスファチジルセリンは1948年ホルク(Folch)により分離され、数多くの研究が進められることにより痴呆の治療及び脳機能改善、癲癇治療、ストレス耐性のような効果のあることが報告されている。本発明でホスファチジルセリンは特に限定はされず、天然由来か若しくは合成されたものを使用するか又は、商業的に購入したものが全て使用できる。さらに、前記にてホスファチジルセリンの誘導体としてはホスホ-L-セリンが好ましい。前記ホスファチジルセリン又はその誘導体は粉末、顆粒、ペースト及び液状の形態でもあり得、さらに、塩の形態の場合もあり得る。前記塩としては薬学的に許容できるものであれば、いずれでも使用できる。例えば、薬学的に許容される塩にはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、リン酸塩、塩酸塩及び硫酸塩を挙げられる。
【0019】
さらに、本発明で抗-FEX-2抗体はポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の場合もあり得る。本発明の抗体はFEX-2タンパク質を抗原として免疫学分野で広く知られている一般的な方法で製造できる。
【0020】
ポリクローナル抗体は馬、牛、山羊、羊、犬、鶏、七面鳥、兎、マウス又はラットのような多様な恒温動物から当該分野の一般的な技術中の一つを使用して製造できる。つまり、抗原を腹膜内、筋肉内、眼内又は皮下注射を通じて動物を免疫させる。前記抗原に対する免疫性は補助剤、例えば、フロウント(Freund)の完全補助剤又は不完全補助剤を用いて増加させることができる。ブ−スター(booster)免疫処理に応じた後、血清の小型サンプルを収集して目的とする抗原に対する反応性をテストした。動物の力価が一応抗原に対するその反応性の観点から停滞状態に至れば、多量のポリクローナル免疫血清を動物を1週間毎に出血又は放血させることにより収得できる。
【0021】
モノクローナル抗体も公知の技術を利用して生成させ得る(Kennettm McKearn, and Bechtol(eds.), Monoclonal Antibodies, Hybridomas; A New Dimension in Biological Analyses, Plenum Press, 1980)。モノクローナル抗体はFEX-2タンパク質を免疫原にして動物を免疫化させ、免疫化された動物の脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを生成し、FEX-2タンパク質を選択的に認識するハイブリドーマを選別し、選別したハイブリドーマを培養し、ハイブリドーマの培養液から抗体を分離することにより製造できる。さらに、本発明のモノクローナル抗体はFEX-2タンパク質を選択的に認識する抗-FEX-2抗体を生産する前記のハイブリドーマを動物に注入し、注入後一定期間が過ぎて回収した動物の腹水から分離することにより製造できる。本発明の1実施例で製造した人間FEX-2モノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ5G3はブタペスト条約下の国際寄託機関である韓国生命工学院遺伝資源センター遺伝子銀行(KCTC)(大韓民国大田市儒城区魚隠洞52番地韓国生命工学研究院)に2004年5月21日付で寄託番号KCTC-10639BPで寄託した。前記寄託物は登録特許(issued patent)の全期間の間、韓国生命工学院遺伝資源センター遺伝子銀行で生きている状態で維持され、寄託物管理法の規定により無制限で非商業的用途の為、全ての人(any person or entity)が入手可能である。
【0022】
本発明における抗-FEX-2抗体の誘導体には前記抗体の安定性、貯蔵性、揮発性又は溶解度等を変更させる為に、構造が変形されたものを含み得る。場合によってはリン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチール化(methylation)、ファネシル化(farnesylation)等で修飾(modification)されたものでもあり得る。
【0023】
本発明で‘個体(subject)’とは、動物、好ましくは哺乳動物の場合もあり得、動物より由来した細胞、組織、器官等でもあり得る。
【0024】
本発明で‘有効量(effective amount)’とは、個体において、炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する効果、好ましくは貪食細胞より分泌されるサイトカインの分泌を調節する効果、最も好ましくは抗炎症性サイトカインの分泌を促進するか、及び/又は炎症性サイトカインの分泌を抑制する効果又はそれを通じて炎症性疾患を治療又は予防する効果を示す量をいう。
【0025】
本発明で‘製剤(agent)’又は‘試験製剤(test agent)’とは、任意の物質(substance)、分子(molecule)、元素(element)、化合物(compound)、実在物(entity)、又はそれらの組合せを含む。例えば、これに制限はされないものの、タンパク質、ポリペプチド、小有機物質(small organic molecule)、多糖類(polysaccharide)、ポリヌクレオチド等を含む。さらに、自然産物(natural product)、合成化合物又は化学化合物又は2個以上の物質の組合せであることもあり得る。別に指定されない限り、製剤、物質及び化合物は互換性のあるように(interchangeably)利用できる。
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明者らはfas-1ドメインを含む部分的な人間cDNAを公知のヌクレオチドデータベースで検索し、この中で今までその特性が明らかにされていないcDNAを選抜した。前記cDNAを基にプライマーをデザインした後、人間の脾臓から抽出した総RNAを鋳型にして前記にてデザインされたプライマーでRT-PCR及び5′RACE PCRを行うことにより、fas-1ドメインを含む人間遺伝子を新たにクローニングした(実施例1参照)。
【0028】
前記本発明者らが合成した遺伝子は7個のfas-1ドメイン、23個のEGF-類似ドメイン、1個のX-リンクドメイン及び1個の膜横断ドメインを有していた(図1参照)。前記のようなドメイン構造を基にして前記遺伝子をFEX-2に命名し、前記遺伝子配列をジーンバンクに登録した(AY311388)。人間FEX-2の全体アミノ酸配列は配列番号1に示した通りである。
【0029】
本発明者らは前記FEX-2の機能を確認する為に多様な実験を行った結果、前記FEX-2が老化した細胞及び死滅細胞の表面より発現されるホスファチジルセリンを特異的に認識することにより、前記細胞の付着及び貪食を媒介するという事実を、FEX-2遺伝子で形質転換された繊維芽細胞を利用して確認した。さらに、本発明者らは老化した細胞及び死滅細胞の貪食に関与する大食細胞の表面にFEX-2が発現され、前記大食細胞の貪食作用がFEX-2により、媒介されるものであることを確認した。これより、本発明者らは前記FEX-2がホスファチジルセリンの新規な受容体であることを明らかにした。
【0030】
さらには、本発明者らは活性化された貪食細胞である大食細胞又はFEX-2遺伝子で形質転換された繊維芽細胞にFEX-2に対するリガンドを処理した結果、抗炎症性サイトカインの分泌が促進され、炎症性サイトカインの分泌は抑制されることが確認できた。従って、FEX-2のリガンドは個体内で炎症と関係のあるサイトカインの分泌調節剤及び炎症性疾患の予防又は治療剤として、使用可能であることが確認できた。
【0031】
より具体的に本発明の1実施例ではFEX-2遺伝子を含む組換えベクトルを製造し、これをマウス繊維芽細胞であるL細胞に形質転換してL/FEX-2細胞を製造した後(実施例1参照)、前記細胞が老化した細胞及び死滅細胞の付着及び貪食に関与するか否を調査した(実施例4参照)。その結果、L/FEX-2細胞が老化した赤血球細胞を選択的に認識して付着し、貪食することを確認することができた(図3及び図4参照)。従って、前記L/FEX-2細胞による老化した赤血球細胞の付着及び貪食はFEX-2により、媒介されたものであることが確認できた。
【0032】
さらには、本発明の他の実施例ではFEX-2による老化した細胞の付着において、FEX-2の認識部位を同定した結果(実施例5参照)、老化が進むにつれて赤血球の表面にホスファチジルセリンの発現程度が増加し(図5参照)、L/FEX-2細胞との付着程度も増加することが確認できた(図6参照)。さらに、FEX-2は老化した赤血球細胞表面のホスファチジルセリンのみを特異的に認識し(図7乃至図9参照)、FEX-2は陰性電荷によりホスファチジルセリンを認識するのでは無く、ホスファチジルセリンの構造を特異的に認識することが確認できた(図10参照)。
【0033】
さらに、本発明者らは老化した細胞ばかりでなく、自然死滅細胞の場合にも細胞表面にホスファチジルセリンが発現されるとの事実から、L/FEX-2細胞により自然死滅細胞が貪食されるか否かを調査した結果(実施例6参照)、FEX-2は老化した細胞のみならず、自然死滅細胞の表面で発現されるホスファチジルセリンを認識して付着及び貪食を媒介することが確認できた(図12及び図13参照)。
【0034】
一方、本発明者らはL/FEX-2細胞にFEX-2モノクローナル抗体を処理し、抗炎症性サイトカインの分泌量を測定した結果(実施例6参照)、L/FEX-2細胞にFEX-2モノクローナル抗体を処理することにより、抗炎症性サイトカインの分泌量が増加したことが確認できた(図14参照)。
【0035】
さらに、本発明者らは老化した細胞及び自然死滅細胞の貪食は、主に大食細胞によりなされることから、大食細胞の表面にFEX-2が発現されるか否か、前記大食細胞の貪食作用がFEX-2により媒介されるか否かを調査した(実施例7参照)。その結果、大食細胞よりFEX-2が発現され(図15参照)、大食細胞の貪食作用は大食細胞の表面に存在するFEX-2が自然死滅細胞の表面に発現されたホスファチジルセリンを特異的に認識することにより成されるという事実が確認できた(図16参照)。従って、FEX-2がホスファチジルセリンの新規の受容体であることが究明できた。
【0036】
ホスファチジルセリン依存性自然死滅細胞の貪食は抗炎症性サイトカインであるTGF-βの分泌を促進し、炎症性サイトカインであるTNF-αの分泌は抑制すると知られている。ここに、本発明者らは大食細胞の表面に存在するFEX-2に対するリガンドが大食細胞の貪食過程で生ずるシグナルと、同一なシグナルを活性化された大食細胞に伝達して抗炎症性サイトカインの分泌を促進できるか否かを調査した(実施例<7-3>参照)。その結果、ホスファチジルセリン又はFEX-2モノクローナル抗体の処理により、活性化された大食細胞は大食細胞が老化した細胞を貪食する場合と類似して抗炎症性サイトカインの分泌を促進し、炎症性サイトカインの分泌は抑制することが確認できた(図17参照)。
【0037】
従って、本発明はFEX-2ポリペプチドに特異的なリガンドの有効量を、これを必要とする個体に投与することを含む、個体から炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する方法;及び炎症性疾患を治療又は予防する方法を提供する。前記炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する方法において、前記サイトカインは貪食細胞より分泌されるものでもあり得る。前記サイトカインは抗炎症性サイトカインと炎症性サイトカインを全て含む。例えば、抗炎症性サイトカインは、これに制限されないものの、TGF-β、IL-10、IL-4及びIL-13でなされた群より選ばれることもでき(Watanabe, M. et al., Adeno-associated virus-mediated human IL-10 gene transfer suppresses the development of experimental autoimmune orchitis. Gene Therapy 2005, 12:1126-1132; Ghoreschi, K. et al., Interleukin-4therapy of psoriasis induces Th2 responses and improves human autoimmune disease. Nature Medicine 2003, 9:40-46; Kluth, D.C. et al., New approaches to modify glomerular inflammation. J Nephrol. 1999 12:66-75)、より好ましくはTGF-βでもあり得る。さらに、炎症性サイトカインは、これに制限はされないものの、TNF-α、IL-1、IL-6、IL-8、IL-18及びMIPでなされた群より選ばれることもでき(McDonald, P. P. et al., Transcriptional and translational regulation of inflammatory mediator production by endogenous TGF-β in macrophages that have ingested apoptotic cells. J. immunol. 1999, 163:6164-6172)、より好ましくはTNF-αでもあり得る。
【0038】
前記方法において、サイトカインの分泌調節は好ましくは抗炎症性サイトカインの分泌を促進するか及び/又は炎症性サイトカインの分泌を抑制するものでもあり得る。例えば、TGF-βの分泌を促進し、TNF-αの分泌を抑制するものでもあり得る。
【0039】
前記のような本発明の方法に用いられる前記FEX-2ポリペプチドに特異的なリガンドは純粋な形態又は適合した薬学的組成物の形態で提供できる。前記薬学的組成物は‘FEX-2に特異的なリガンド’を有効成分として含むことを特徴とする。前記薬学的組成物は本発明のFEX-2に特異的なリガンドを薬学的に許容される担体と共に、適合した形態で剤形化することにより製造できる。前記‘薬学的に許容される塩’とは、生理学的に許容され、人間に投与された時、通常的に胃腸障害、眩暈症等のようなアレルギー反応又はこれと類似した反応を起こさない組成物をいう。薬学的に許容される担体には例えば、ラクトース、澱粉、セルロース誘導体、マグネシウムステアレートステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸のような経口投与用の担体及び水、適合したオイル、食塩水、水性グルコース及びグリコール等のような非経口投与用の担体等があり、安定化剤及び保存剤を追加して含み得る。適合した安定剤には亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又はアスコルビン酸のような抗酸化剤がある。適合した保存剤にはベンズアルコニウムクロライド、メチル-又はプロピール-パラベン及びクロロブタノールがある。その他の薬学的に許容される担体には次の文献に記載されているものを参考にできる(Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1995)。
【0040】
本発明の薬学的組成物は公知の方法により、多様な非経口又は経口投与用の形態で製造できる。非経口投与用剤型の代表的なものは、注射用の剤型であり等張性水溶液又は懸濁液が好ましい。注射用の剤型は適合した分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を用いて当業界に公知の技術により製造できる。例えば、各成分を食塩水又は緩衝液に溶解させ、注射用として剤型化できる。さらに、経口投与用の剤型としてはこれに限定はされないものの、粉末、顆粒、錠剤、丸薬及びカプセル等がある。
【0041】
前記のような方法で剤型化された薬学的組成物は有効量で経口、経皮、皮下、静脈又は筋肉を含む種々の経路を通じて投与できる。
【0042】
本発明におけるFEX-2に特異的なリガンド又はこれを有効成分とする薬学的組成物の投与量は投与経路、投与対象、年齢、性別体重、個人差及び疾病状態によって適切に選択できる。好ましくは、疾患の程度により有効成分の含量を異にすることができ、大人を基準にすると、通常1回投与時に10μg乃至10mgの有効容量で1日に数回繰り返し投与できる。
【0043】
前記のように製造された本発明の薬学的組成物は個体において、炎症と関連したサイトカインの分泌調節及び炎症性疾患の予防又は治療に効果的に使用できる。前記にて‘炎症性疾患’には、単純炎症自体又は前記炎症反応により誘発される全ての疾患が含まれる。例えば、これに限定はされないものの、炎症、炎症性疾患、糖尿性眼疾患、腹膜炎、骨髄炎、蜂巣炎、脳膜炎 、脳炎、膵臓炎、外傷誘発ショック、気管支喘息、鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、肺炎、胃炎、腸炎、嚢疱性繊維症、卒中、気管支炎、細気管支炎、肝臓炎、腎臓炎、関節炎、通風、脊椎炎、ライター症候群、結節性多発動脈炎、過敏性血管炎、ルゲニック肉芽腫症、リウマチ性多発性筋肉痛、関節細胞動脈炎、カルシウム結晶沈着関節病症、仮性通風、非-関節リウマチズム、粘液嚢炎、腱鞘炎、上顆炎(テニスエルボー)、神経病症状関節疾患(Charcot's joint)、出血性関節症(hemarthrosis)、ヘノフシェンライン紫斑病 、鼻喉性骨関節病症、多重芯性細網組織球腫、側湾症(scoliosis)、血色素症、鎌状赤血球症及びその他の血色素症 、高脂蛋白血症、低ガンマグロブリン血症、副甲状腺機能昂進症、末端巨大症、家族性地中海熱、ベハト病 、全身性紅斑性ループス、再帰熱、乾癬、多発性硬化症、敗血症、敗血性ショック、急性呼吸困難症候群 、多発性臓器不全、慢性閉鎖性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)、急性肺損傷(acute lung injury)及び気管支肺形成障害(broncho-pulmonary dysplasia)等が含まれる。
【0044】
さらに、本発明は貪食細胞において、炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する製剤;及び炎症性疾患の治療又は予防剤のスクリーニング方法を提供する。
【0045】
具体的に、前記スクリーニング方法は
(a)FEX-2を発現する貪食細胞と試験製剤を一緒に培養する段階;及び
(b)試験製剤無しに培養された貪食細胞より分泌されるサイトカインの水準に対する試験製剤と共に培養された貪食細胞より分泌されるサイトカインの水準の相対的な変化を測定する段階を含むことを特徴とする。
【0046】
前記スクリーニング方法において、前記(a)段階のFEX-2を発現する貪食細胞とは、大食細胞又はFEX-2で形質転換されたマウスの繊維芽細胞であるL細胞が好ましい。さらに、前記(b)段階は抗炎症性サイトカイン(例:TGF-β及び/又は炎症性サイトカイン(例:TNF-αの生成量を測定して行うことができ、これは当業界に公知のELISA法が利用できる。
【0047】
さらに、炎症性疾患の治療又は予防剤のスクリーニング方法の場合には、前記(a)及び(b)段階に下記の(c)段階を追加して含め得る:前記(b)段階で選ばれた、貪食細胞より分泌されるサイトカインの水準を調節する試験製剤を炎症性疾患を有する動物に投与し、前記試験製剤が前記動物において治療効果を呈するか否かの検査段階。
【0048】
前記(c)段階で‘動物’とは、人間ではない動物(non-human animal)であることが好ましい。さらに、前記(c)段階で‘治療効果’とは、炎症性疾患及びその症状を緩和又は改善する効果及び炎症性疾患の進行を抑制する効果を意味する。
【0049】
本発明により、スクリーニング可能な製剤は、好ましくは抗炎症性サイトカインの分泌を促進するか及び/又は炎症性サイトカインの分泌を抑制する製剤;又は前記のような作用を通じて炎症性疾患の治療又は予防効果を呈する製剤でもあり得る。
【0050】
本発明の方法でスクリーニング可能な試験製剤は、ポリペプチド、ベータ-ターンミメチック(beta-turn mimetics)、多糖類、リン脂質、ホルモン、プロスタグランジン、ステロイド、芳香族化合物、ヘテロサイクリック化合物、ベンゾジアゼピン(benzodiazepines)、オリゴマリックN−置換グリシン(oligomeric N-substituted glycines)、オリゴカルバメート(oligocarbamates)、糖類(saccharides)、脂肪酸、ピューリン、ピリミジン又はこれらの誘導体、構造的アナログ又は組合せを含む。ある試験製剤は合成物質の場合もあり得、他の試験製剤は天然物質でもあり得る。前記試験製剤は合成又は自然化合物のライブラリーを含む広範囲で多様な出処より得られる。組合せ(combinatorial)ライブラリーはステップバイステップ方式で合成できる種々の化合物で生産できる。多数の組合せライブラリーの化合物等はESL(encoded synthetic libraries)方法(WO 95/12608, WO 93/06121, WO 94/08051, WO 95/395503及びWO 95/30642)により製造できる。バクテリア、カビ、植物及び動物抽出物の形態の自然化合物のライブラリーは商業的な出処から得るか又はフィールド(field)で収集できる。公知された薬理学的(pharmacological)製剤が構造的アナログを製造する為に、アシル化、アルキル化、エステル化反応(esterification)、イミド化反応(amidification)のような指示されるか(direct)又は無作為な科学的数式に適用できる。前記試験製剤は自然的に生成されるタンパク質又はその断片でもあり得る。このような試験製剤は自然出処(natural source)、例えば、細胞又は組織溶解物質から収得できる。ポリペプチド製剤のライブラリーは、例えば、一般的な方法により生成されるか又は商業的に入手できるcDNAライブラリーから収得できる。前記試験製剤はペプチド、例えば、約5-30個、好ましくは約5-20個、より好ましくは7-15個のアミノ酸を有するペプチドでもあり得る。前記ペプチドは自然的に生成されるタンパク質、ランダムペプチド又は‘バイアス化(biased)’ランダムペプチドの切断物でもあり得る。
【0051】
さらに、前記試験製剤は‘核酸’でもあり得る。核酸試験製剤は自然的に生成される核酸、ランダム核酸、又は‘バイアス化’ランダム核酸でもあり得る。例えば、原核又は真核ゲノムの切断物を前記記載と同様に利用できる。
【0052】
さらに、前記試験製剤は小分子(例:約1,000以下の分子量を有する分子)でもあり得る。小分子の調節製剤をスクリーニングする為の方法には、好ましくは高速分析アッセイ(high throughput assay)が適用できる。前記記載の通り小分子試験製剤の組合せライブラリーが本発明のスクリーニング方法に容易に適用できる。多くのアッセイが前記スクリーニングに有用である(Shultz, Bioorg. Med. Chem. Lett., 8:2409-2414, 1998; Weller, Mol. Drivers., 3:61-70, 1997; Fernandes, Curr. Opin. Chem. Biol., 2:597-603, 1998; and Sittampalam, Curr. Opin. Chem. Biol., 1:384-91, 1997)。
【0053】
本発明の方法でスクリーニング可能な試験製剤のライブラリはFEX-2ポリペプチド又は、これに特異的なリガンド、又はこれらの断片若しくはアナログに対する構造研究を基に製造できる。前記にて‘アナログ(analog)’とは、標準物質(reference molecule)と構造的に類似するものの、標準物質の特異的置換基が置換により、代替されることにより標的や調節方法が変形した物質をいう。標準物質と比較するに、アナログは当業者により予想され得る通り、同一又は類似するか又は向上した有用性(utility)を有する。向上した性質(例:標的物質に対する、より高い結合親和力)を有する公知の化合物変異体を究明する為のアナログの合成及びスクリーニングは薬理化学的分野に公知の方法である。
【0054】
前記構造研究はFEX-2ポリペプチドに結合する可能性のある試験製剤の究明を可能にする。FEX-2ポリペプチドの3次元的構造は多くの方法、例えば、結晶学構造及び分子的モデリング(crystal structure and molecular modeling)で研究することができる。X線結晶学を利用するタンパク質構造の研究方法が文献に良く知られている:Physical Bio-Chemistry, Van Holde, K. E. (Prentice-Hall, New Jersey 1971), pp.221-239, and Physical Chemistry with Applications to the Life Sciences, D. Eisengerg & D. C. Crothers(Benjamin Cummings, Menlo Park 1979)。AIMP2の構造に対するコンピューターモデリングはp53の調節子をスクリーニングする為に、試験製剤のデザインの為の他の手段を提供する。分子的なモデリング方法は文献に開示されている:U.S. Pat. No. 5, 612, 894 and U.S. Pat. No. 5,593,973。さらに、タンパク質構造は中性子回折(neutron diffraction)及びNMR(nuclear magnetic resonance)により決定され得る:Physical Chemistry, 4th Ed. Moore, W. J.(Prentice-Hall, New Jersey 1972)and NMR of Proteins and Nucleic Acids, K. Wuthrich(Wiley-Interscience, New York 1986)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0056】
ただし、下記の実施例は本発明を例示するものであり、本発明の内容はこれに限定されるものではない。
【0057】
<実施例1>
人間FEX-2 cDNAのクローニング
<1-1> 発現ベクターの製造
fas-1ドメインを含む新規の細胞付着分子を同定する為に、fas-1ドメインを含む配列をジーンバンク(Genbank)とセレラゲノミックス(Celera genomics)のヌクレオチド・データベースで検索した。その結果、特徴が明らかにされていない人間の部分的なcDNAクローン(FLJ00112、DZKZp434E0321、CD44-like precursor FELL)が検索された。前記の全体の長さcDNA配列はRT-PCRと5’RACE PCRにより人間の脾臓細胞より製造した。
【0058】
まず、前記にてfas-1ドメインを含んでいるものとして検索された3種の人間の脾臓の部分的なcDNAクローンを基にして、2対のプライマー(配列番号2乃至配列番号5)をデザインした(表1)。人間の脾臓から抽出したRNA2μgを鋳型にし、前記にてデザインしたそれぞれのプライマー対を利用して逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(reverse transcriptase polymerase chain reaction、RT-PCR)を行うことにより、fas-1ドメインを含むたんぱく質の部分的なcDNAを2部分に分けて収得した。前記にてPCR反応はPCRシステム(Expand high fidelity PCR system、Roche)を用いて95℃で2分間反応させた後、94℃で30秒、60℃で30秒、72℃で30秒間の反応を30回繰返して行った。その結果、3.6kbと2.0kbの増幅産物をそれぞれ収得した。前記増幅産物の内に3.6kbのcDNAを制限酵素ClaI及びSacI(TaKaRa)で切断した後、pBluescript-KS(+)(Stratagene)ベクターの同一の制限酵素の座にT4リガーゼ(ligase、Invitrogen)を用いて挿入することにより、組換えベクター‘pBS-FEX-23’を製造した。さらに、前記増幅産物の内に、2.0kb cDNAを制限酵素SacI及びHindIII(TaKaRa)で切断した後、pET29bベクター(Novagen)の同一の制限酵素の座にT4リガーゼ(ligase、Invitrogen)を用いて挿入することにより、組換えベクター‘pET-Fex45’を製造した。その後で前記2個のcDNAの塩基配列を合わせる為に、pET-Fex45をEcoRIで切断して収得した断片を、クレナウ(klenow)酵素で処理してブラント(blunt)断片で製造した後、これを再度ScaIで切断して前記組換えベクターのPET-Fex23の同一な制限酵素の座にクローニングして組換えベクター‘pET-Fex2345’を製造した。
【0059】
fas-1ドメインを含むcDNAの5´末端は下記のような方法で製造した。人間の脾臓から収得したRNAを表1に示したプライマー(配列番号6)で増幅してcDNAを製造し、前記cDNAを鋳型にして表1に示したプライマー(配列番号7及び配列番号8)と5’RACE system(5’RACE system for Rapid Amplification of cDNA Ends version 2.0、Invitrogen)で提供するアダプタプライマーを使用して製造者が指示する方法により5’RACE PCRを行い、増幅産物を収得した。その後に前記増幅産物を塩基配列分析機(Applied Biosystems AB13700)で分析してFEX-2の5’末端の塩基配列を究明した後、前記5’末端の塩基配列を基にプライマーを製造した。人間の脾臓から抽出したRNA 2μgを鋳型にして前記の5’末端の塩基配列を基にデザインしたプライマーの対(配列番号9及び配列番号10)を用いて、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(reverse transcriptase polymerase chain reaction、RT-PCR)を行うことにより、2.5kbの5’末端cDNAを収得した。前記増幅産物を制限酵素のEcoRI及びClaI(TaKaRa)で切断し、pBluescript-KS(+)ベクター(Stratagene)の同一の制限酵素の位置に挿入することにより、組換えベクター‘pBS-Fex1’を製造した。完全な塩基配列を発現ベクターにクローニングする為に、まず前記にて製造したpET-Fex2345をKpnIとHindIIIで切断してpcDNA3.1(-)/Myc-Hisベクター(Invitrogen)の同一の制限酵素の位置に挿入して‘pcDNA-Fex45’を製造した。さらに、再度pET-Fex2345をBamHIとKpnIで切断してpcDNA-Fex45の同一の制限酵素の位置に挿入して‘pcDNA-Fex2345’を製造した後、最後に前記pBS-Fex1をEcoRIとClaIで切断してpcDNA-Fex2345の同一の制限酵素の位置に挿入して完全な塩基配列をクローニングした。
【0060】
前記にて製造されたプラスミドを塩基配列分析機(Applied Biosystems AB13700)で分析した後、塩基配列はジーンバンク(GenebankTM accession number AY311388)に登録し、前記にて製造されたFEX-2の完全な塩基配列を含む発現ベクターを‘pcDNA-Fex2’と命名した。
【0061】
前記塩基配列の分析結果から推定されたアミノ酸の配列はスカビンジャ受容体FEEL-2(Scavenger receptor FEEL-2)(Adachi H. et al., J. Biol. Chem. 277:34264-34270, 2002)とヒアルロナン受容体スタビリン-2(encocytic hyaluronan receptor Stabilin-2)(Politz O. et al., Biochem J. 362:155-164, 2002)と殆ど同一なものとして現われ、それらのドメイン構造は7個のfas-1ドメイン、23個のEGF-類似ドメイン、1個のX-リンクドメイン及び1個の膜横断ドメインを有していた(図1)。
【0062】
【表1】
【0063】
<1-2> L細胞の形質転換
前記実施例<1-1>の発現ベクターpcDNA-Fex-2でマウスの繊維芽細胞であるL細胞(ATCC CCL-1、東京大学の生物物理学科のタケチ博士より提供された)を形質転換した。前記L細胞を10%熱不活性化FBS、ペニシリンG及びストレプトマイシンが添加されたDMEM(Dulbecco's modified Eagle's medium)培地で培養した。
【0064】
前記にて選ばれたL細胞を組換えベクターpcDNA-Fex2に形質転換する為に、リポフェクタミン(Lipofectamine、Invitrogen)を使用し、製造者が指示する方法により形質転換した。形質転換した後48時間でG418(400 μg/ml)を処理し、10乃至12日間培養しながら抵抗性を示すそれぞれのコロニーを分離した。前記のような方法で形質転換された細胞をL/FEX-2と命名した。陰性対照群(L/MOCK)ではFEX-2遺伝子が含まれていないベクターのpcDNA3.1(-)/Myc-Hisで形質転換した細胞を利用した。
【0065】
<実施例2>
人間FEX-2に対するモノクローナル抗体の製造
人間FEX-2に対するモノクローナル抗体を製造する為に、人間FEX-2の全体アミノ酸配列(配列番号1)の内、アミノ酸1173番から1727番に該当する塩基配列を含むcDNAを製造した。前記cDNAは前記実施例<1-1>のpCDNA-Fex2DNAを鋳型にして下記のプライマー(配列番号11及び配列番号12)を利用してPCRを行うことにより収得した(表1)。PCRは95℃で2分間反応し、94℃で30秒、60℃で30秒、72℃で30秒間の反応を25回繰り返して行った。前記増幅された産物を制限酵素BamHI及びXhoI(TaKaRa)で切断し、pET43.1aベクター(Novagen)の同一の制限酵素の座に挿入した。
【0066】
【表2】
【0067】
前記にて製造された発現ベクターを‘pET-4E5’と命名し、タンパク質発現と分離は<2-1>における方法と同一の方法で行った。モノクローナル抗体の製造はダイノナ社(Dinona Inc., Seoul, Korea)に依頼して製造した。つまり、前記にて製造された組換えタンパク質20μgを6匹の鼠に2週間の間隔で免疫接種して陽性のハイブリドーマクローン(clone 5G3)を収得し、これを鼠の腹腔に注入させ腹水として採取することにより、モノクローナル抗体を得た。前記モノクローナル抗体のアイソタイプ(isotype)はイソストリップマウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(IsoStrip mouse monoclonal antibody isotyping kit、Roche)を使用して確認した。その結果、本発明はモノクローナル抗体のアイソタイプはIgG1ラムダチェーン(lambda chain)で確認できた。
【0068】
前記本発明の人間FEX-2モノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ5G3は、ブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国生命工学院遺伝資源センター遺伝子銀行(KCTC)に2004年5月21日付で寄託番号KCTC-10639BPで寄託した。
【0069】
<実施例3>
L/FEX-2細胞の表面においてFEX-2の発現可否の確認
前記実施例<1-2>のL/FEX-2細胞の表面よりFEX-2が発現されるか否かを前記実施例<2-3>により製造したFEX-2モノクローナル抗体(5G3)を利用してフローサイメトリー分析機(flow cytometry)で分析した。
【0070】
L/FEX-2細胞をDMEM(Dulbecco's modified Eagle's medium)培地が含まれたプレートで完全に培養(confluent)した後、前記プレートに0.25%トリプシンと0.05%EDTAを含むPBS緩衝液を処理してプレートの表面から細胞を分離した。前記細胞をPBS緩衝液で二回洗浄した後、これを再びPBS緩衝液に再懸濁した。前記細胞懸濁液にFEX-2モノクローナル抗体(5G3)を添加して4℃で1時間培養した。ここに、10μg/mlのFITCと結合した2次兎抗-マウス免疫グロブリンG(Santa Cruz Biotechnology, Inc., CA)を添加して4℃で1時間追加培養した。その後5−ワットレーザーが装着されたフローサイメトリー分析機(Becton Dickinson, San Jose, CA)を利用して488nmで分析した。対照群にはFEX-2モノクローナル抗体の代わりにマウス免疫グロブリン(IgG1)を使用した。
【0071】
実験の結果、FEX-2細胞の表面にFEX-2が発現されることを確認することができた。しかしながら、L/Mock細胞の表面にはFEX-2が発現されないものとして現われた。さらに、FEX-2モノクローナル抗体のマウス免疫グロブリンを使用した場合にもFEX-2の発現が検出されなかった(図2)。
【0072】
<実施例4>
FEX-2による老化した赤血球の付着及び貪食
<4-1>L/FEX-2細胞による老化した赤血球の付着及び貪食
前記実施例<1-2>のL/FEX-2細胞と対照群であるL/Mock細胞に老化した赤血球の付着及び貪食されるか否かを調査した。まず、この為に、正常の成人の自発的供与者から採血した正常赤血球をヘマトクリット20%となるようにPBSで希釈した後、37℃で4日間培養することにより、老化した赤血球の細胞を製造した。その後L/FEX-2細胞、L/Mock細胞及び正常L細胞をそれぞれDMEM培地(Dulbecco's modified Eagle's medium)が含まれた6−ウェルプレートで完全に(confluent)培養した後、老化した赤血球又は正常赤血球を最終ヘマトクリット1%となるように添加し、37℃で1時間培養した。その後前記培養液をPBSで5回洗浄し、光学顕微鏡で老化した赤血球及び正常赤血球の付着程度を観察した。任意に選択した100個のL/FEX-2細胞に付着された赤血球の数を計数して平均値を求めた。貪食分析は細胞をPBSで洗浄した後、水で10秒間処理して貪食されていない細胞を全て溶解させた。その後L/FEX-2細胞をディフクイック染色用キット(Diff quick staining kit, IMEM Ins., San Marcos, CA, USA)を使用して染色し、任意に選択した5箇所で赤血球を貪食した細胞の数を計数した。付着及び貪食指標(%)は全体L/FEX-2細胞の中で赤血球を付着及び貪食した細胞の数を百分率で示したものである。
【0073】
実験の結果、老化した赤血球がL/FEX-2細胞に付着され、貪食されたことが確認できた。しかしながら、老化した赤血球は対照群である正常L細胞とL/Mock細胞には殆ど付着せず、貪食されなかった。さらに、正常赤血球の場合にはL/FEX-2細胞による付着及び貪食が殆ど起こらなかった(図3)。
【0074】
前記結果からFEX-2は老化した細胞の選択的な付着と貪食を知ることができた。
【0075】
<4-2> 抗-FEX-2モノクローナル抗体による老化した赤血球の付着及び貪食の抑制
老化した赤血球の付着及び貪食がFEX-2によることであるか否かを確認する為に、FEX-2に対するモノクローナル抗体(5G3)が老化した赤血球細胞の付着及び貪食を抑制するか否かを調査した。
【0076】
前記実施例<1-2>のL/FEX-2細胞に前記実施例2の人間FEX-2モノクローナル抗体(5G3)100μg/mlを添加して37℃で1時間前に培養した。この際、対照群には前記FEX-2モノクローナル抗体の代わりにマウス免疫グロブリン(IgG1)を添加した。その後前記実施例<4-1>の老化した赤血球をヘマトクリット1%となるように添加し、37℃で1時間追加培養した。培養が完了した後、老化した赤血球の付着及び貪食程度を前記実施例<4-1>と同一の方法で分析した。この際、前記老化した赤血球の付着及び貪食程度は抗体と前培養しないL/FEX-2細胞の場合と比較して抑制程度を百分率で示した。
【0077】
実験の結果、L/FEX-2細胞をFEX-2モノクローナル抗体(5G3)と前培養した場合、老化した赤血球の付着及び貪食が大きく阻害された。これに比べて前記L/FEX-2細胞をマウス免疫グロブリンと前培養した場合には、老化した赤血球の付着及び貪食に大きな影響は与えなかった(図4)。
【0078】
前記実験の結果から老化した赤血球の付着及び貪食はFEX-2により媒介され、抗-FEX-2抗体により抑制されるという事実が確認できた。
【0079】
<実施例5>
FEX-2による老化した赤血球の付着においてFEX-2の認識部位の同定
<5-1> 赤血球の老化に伴う細胞の表面のホスファチジルセリンの発現程度の測定
自然死滅細胞は細胞表面に‘eat me’シグナルを現わすことにより、大食細胞により貪食される。前記シグナルの代表的なものがホスファチジルセリン(phospatidylserine)である。ここに、FEX-2による老化した赤血球の付着及び貪食が老化した赤血球の表面に発現されるホスファチジルセリンをFEX-2が特異的に認識することを仮定して、これを確認する為に、まず、老化の程度に伴う赤血球のホスファチジルセリンの発現程度を測定した。アネキシンV(annexin V)はカルシウムに依存的にリン脂質と結合するタンパク質であり、ホスファチジルセリンに強力な親和性を有していると知られている。これにアネキシンV抗体を使用して赤血球の老化過程で細胞の表面に発現されるホスファチジルセリンの量をフローサイメトリー分析機を利用して測定した。つまり、正常の成人の自発的供与者から採血した正常赤血球をPBSで37℃にそれぞれ0日、2日及び4日間培養した後、アネキシンV細胞死滅検出キット(Santacruz)を利用してホスファチジルセリンの発現程度を製造者の指示によりフローサイメトリー分析機で測定した。
【0080】
実験の結果、老化が進むにつれて、赤血球の細胞の表面にホスファチジルセリンの発現程度が増加することが確認できた(図5)。
【0081】
<5-2> 赤血球の老化に伴うFEX-2との付着程度の調査
前記実施例<4-1>と同一の方法でL/FEX-2細胞と老化した赤血球細胞を一緒に培養した。この際、前記老化した赤血球細胞はそれぞれ0、1、2、3、4及び5日間培養した赤血球細胞を使用した。培養が完了して老化した赤血球とL/FEX-2細胞との付着程度を前記実施例<4-1>と同一の方法で分析した。
【0082】
実験の結果、赤血球の培養時間が長引く程、つまり、赤血球の老化が進むにつれてL/FEX-2細胞との付着程度が増加することが分かった(図6)。
【0083】
<5-3> 多くの種類のリン脂質に対するL/FEX-2細胞の付着活性
赤血球が老化するに従い、細胞の表面のホスファチジルセリンが増加し、これをFEX-2が認識するという事実を確認する為に、多くの種類のリン脂質に対するL/FEX-2細胞の付着活性を調査した。ホスファチジルコリン(phosphatidlycholine、PC)、
ホスファチジルセリン(phosphatidlyserine、PS)、
ホスファチジルイノシトル(phospatidylinositol、PI)、
ホスファチジルエタノールアミン(phsophatidylethanolamine、PE)、ホスファチジン酸(phosphatidic acid、PA)及びホスファチジルグリセロール(phosphatidylgycerol、PG)のようなリン脂質を含むリポソームを以前報告された方法を使用して製造した(Oka, K. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 95:9535-9540, 1998; Fadok, V. A. et al., Nature 405:85-90, 2000)。つまり、PS:PC(PSリポソーム)、PI:PC(PIリポソーム)、PG:PC(PGリポソーム)、PE:PC(PEリポソーム)及びPA:PC(PAリポソーム)をそれぞれ50:50のモル比率で混合してリポソームを製造し、PCのみを含むリポソーム(PCリポソーム)を製造した。前記リポソーム混合物をクロロホルムと混合し、窒素気体下で乾燥させ、最終濃度が5mMとなるようにPBSに再懸濁して氷の上で10分間超音波処理した。さらに、前記リポソームの製造の際、総リン脂質に対して1%濃度のN-(lissamin rhodamine B sulfonyl)-L-α-ホスファチジルエタノールアミン(Avanti Polar Lipids)を添加し、蛍光表示されたリン脂質リポソームを製造した。前記実施例<1-2>のL/FEX-2細胞をDMEM培地で完全に培養した後、ここに前記にて製造された多様な種類のリン脂質リポソームをそれぞれ10μMずつ添加し、37℃で1時間培養した。培養が完了してPBSで十分に洗浄し、L/FEX-2に対するリン脂質リポソームの付着程度を前記実施例<4-1>と同一の方法で分析した。さらに、リン脂質リポソームの貪食程度はL/FEX-2細胞に細胞溶解緩衝液(1%TritonX-100)を添加して溶解させた。その後貪食されたリポソームの量を蛍光マイクロプレートリーダー(fluorescent microplate reader)(Biolumin 960、Molecular Dynamics)を使用して測定した。この際、刺激波長(excitation wavelength)は549nmにし、放出波長(emission wavelength)は565nmにした。対照群としてはL/Mock細胞を利用した。
【0084】
実験の結果、L/FEX-2細胞に対するリン脂質リポソームの付着程度はPSリポソームの場合、最も高く現われ、他の種類のリン脂質リポソームの場合には、対照群と類似した程度のみに現われた(図7)。さらに、L/FEX-2によるリン脂質リポソームの貪食程度は、PSリポソームが異なる他のリン脂質リポソーム及び対照群に比べて極めて高く現われた(結果未図示)。
【0085】
<5-4> 種々の種類のリン脂質リポソームによるL/FEX-2細胞に対する老化した赤血球の付着及び貪食抑制
前記実施例<5-3>で製造したPSリポソーム、PIリポソーム、PGリポソーム、PEリポソーム、PAリポソーム、PCリポソームとL/FEX-2細胞を前培養した後、老化した赤血球細胞と培養してL/FEX-2細胞に対する赤血球の付着及び貪食が抑制されるか否かを調査した。つまり、前記実施例<4-1>と同一になるようにL/FEX-2細胞を培養はするが、PSリポソーム、PIリポソーム、PGリポソーム、PEリポソーム、PAリポソーム、PCリポソームをそれぞれ100μMずつ添加して37℃で30分間前培養した。この時、対照群にはリン脂質リポソームを添加しなかった。前記L/FEX-2細胞に前記実施例<4-2>と同一の方法で老化した赤血球を処理して培養した。培養が完了した後老化した赤血球の付着及び貪食程度は前記実施例<4-1>と同一の方法で分析した。前記老化した赤血球の付着及び貪食の程度は対照群を100%とした時の相対的な値として現われた。
【0086】
実験の結果、L/FEX-2細胞をPSリポソームと前培養した場合に老化した赤血球の付着及び貪食が極めて大きく抑制されることが分かった。一方、L/FEX-2細胞をPSリポソームを除いた別の種類のリポソームと共に、前培養した場合には老化した赤血球の付着は殆ど抑制されず、貪食程度は対照群に比べてかえって若干増加する様相を示した(図8)。
【0087】
<5-5> PSリポソームの添加濃度に伴うL/FEX-2に対する老化した赤血球の付着抑制
前記実施例<5-3>で製造されたPSリポソームの添加濃度を異にして、L/FEX-2細胞と前培養した後、老化した赤血球と培養して赤血球の付着及び貪食の程度を調査した。対照群にはPSリポソームの代わりに、PCリポソームを添加した。つまり、前記実施例<5-4>と同一の方法で実験するものの、PSリポソームを0、0.1、1、10及び100μMの濃度でそれぞれ添加した。培養が完了した後前記実施例<4-1>と同一の方法でL/FEX-2細胞に対する老化した赤血球の付着程度を測定した。
【0088】
実験の結果、L/FEX-2細胞をPSリポソームと共に、前培養した場合にはPSリポソームの添加濃度に依存的にL/FEX-2細胞に対する老化した赤血球の付着が抑制されることが示された。一方、L/FEX-2細胞をPSリポソームと共に、前培養した場合にはL/FEX-2に対する老化した赤血球の付着に影響を与えなかった(図9)。
【0089】
前記実験の結果からL/FEX-2細胞は老化した赤血球の表面に発現されるホスファチジルセリンを特異的に認識し、老化した赤血球を付着し、貪食することが分かった。
【0090】
<5-6> ホスファチジルセリンの構造的誘導体によるL/FEX-2細胞に対する老化した赤血球の付着及び貪食の抑制
FEX-2細胞がPSを特異的に認識するか否かをさらに確認する為に、ホスファチジルセリンの構造的誘導体(structural analogue)であるホスホ-L-セリン(phosphor-L-serine、PLS)とホスホ-D-セリン(phosphor-D-serine、PDS)を利用してL/FEX-2細胞に対する老化した赤血球の付着及び貪食の抑制程度を調査した。
【0091】
前記実施例<5-4>と同一の方法で実験を行ったものの、リン脂質リポソームとしてPSリポソームとホスホ-L-セリン及びホスホ-D-セリン(Sigma)をそれぞれ使用した。この際、対照群にはリン脂質リポソームを添加しなかった。前記老化した赤血球の付着及び貪食の程度は対照群を100%とした場合に対して相対的な値で示された。
【0092】
実験の結果、L/FEX-2細胞をPDSと前培養した場合には、老化した赤血球の付着及び貪食の程度に大きな影響を与えなかった。一方、L/FEX-2細胞をPLSと前培養した場合にはPSリポソームを用いた場合と類似して老化した赤血球の付着及び貪食が大きく抑制されることが示された(図10)。
【0093】
前記実験の結果からFEX-2が陰性電荷により、ホスファチジルセリンを認識するのではなく、ホスファチジルセリンの構造を特異的に認識することが確認できた。
【0094】
<実施例6>
FEX-2による自然死滅細胞の付着及び貪食
<6-1> 細胞の死滅誘導
細胞の表面におけるホスファチジルセリンの発現は老化した細胞ばかりでなく、自然死滅細胞の場合にも代表的な‘eat me’シグナルとして広く知られている。ここに、FEX-2が自然死滅細胞の付着及び貪食も媒介するか否かを確認するため、細胞の死滅を誘導して自然死滅細胞を製造した。
【0095】
人間白血病Jurkat T細胞(韓国細胞株銀行)及び人間単核球白血病(premyelomonocytic leukemic)U937細胞(韓国細胞株銀行)の死滅を誘導した。前記細胞は10%の牛胎児血清(fetal bovine serum)が含まれたRPMI1640培地で培養した。Jurkat T細胞の細胞死滅誘導は公知の方法により前記Jurkat T細胞を抗-Fas抗体(CH-11)100ng/mlが添加された培地に接種し、6時間培養することにより、細胞死滅を誘導した(Oka, K. et al., Proc Natl Acad Sci USA, 95:9535-40, 1998)。さらに、U937細胞の細胞死滅誘導は公知の方法により、前記U937細胞をエクトポサイド(ectoposide)100ng/mlが添加された培地に接種して4時間培養することにより、細胞死滅を誘導した(Bave, U., et. al., J Immunol 165:3519-26, 2000)。前記細胞の死滅程度は細胞の表面に発現されたホスファチジルセリンの量を実施例<5-1>と同一の方法でアネキシンV細胞死滅検出キット(Santacruz)を利用して製造者の指示によりフローサイメトリー分析機(flow cytometry)で分析することにより測定した。
【0096】
実験の結果、抗-Fas抗体を処理したJurkat T細胞及びエクトポサイドを処理したU937細胞で全て細胞死滅が誘導されたことを確認できた。
【0097】
<6-2> L/FEX-2による自然死滅細胞の貪食
前記実施例<6-1>にて細胞死滅を誘導したJurkat T細胞とU937細胞を前記実施例<1-2>のL/FEX-2細胞と共に、培養した後貪食程度を分析した。前記L/FEX-2細胞を6-ウェルプレートで完全に培養した後、前記自然死滅細胞であるJurkat T細胞又はU937細胞1×106個を添加して37℃で1時間培養した。培養が完了した後、PBSで5回洗浄して前記実施例<4-1>と同一の方法で細胞をディフクイック染色用キット(Diff quick staining kit, IMEM Ins., San Marcos, CA, USA)を利用して染色した後、任意に選択した5箇所で死滅細胞を貪食した細胞の数を計数した。
【0098】
実験の結果、対照群であるL/Mock細胞では死滅が誘導されたJurkat T細胞が殆ど貪食されないものの、(図12のa)、L/FEX-2細胞の場合には、多数のJurkat T死滅細胞が貪食されるものとして現われた(図12のb)。又、U937細胞を用いた実験でも類似した結果を得た(結果未図示)。前記L/FEX-2細胞は細胞死滅が誘導されないJurkat T細胞及びU937細胞は貪食されなかった(結果未図示)。
【0099】
<6-3> PSリポソームとFEX-2モノクローナル抗体による死滅細胞貪食抑制
前記実施例<6-2>でL/FEX-2細胞による死滅細胞の貪食がFEX-2が死滅細胞の表面で発現されるホスファチジルセリンを認識することにより、生ずるか否かを確認する為に、PSリポソームとFEX-2モノクローナル抗体がL/FEX-2細胞による死滅細胞の貪食を抑制するか否かを調査した。
【0100】
前記実施例<1-2>のL/FEX-2細胞をDMEM培地を含む6-ウェルプレートで完全に培養した後、前記実施例<2-3>のFEX-2モノクローナル抗体(5G3)100μg/ml、マウス免疫グロブリン(IgG1)100μg/ml、実施例<6-3>のPSリポソーム及びPCリポソーム100μMをそれぞれ添加して前培養した。ここに、前記実施例<6-1>で細胞死滅を誘導したJurkat T細胞又はU937細胞1×106個を添加して37℃で1時間追加して培養した。培養が完了した後、PBSで5回洗浄して細胞を前記実施例<4-1>と同一の方法でディフクイック染色用キット(Diff quick staining kit, IMEM Ins., San Marcos, CA, USA)を用いて染色した後、任意で選択した5箇所で死滅細胞を貪食した細胞の数を計数した。前記にて計数した貪食した細胞の数はL/FEX-2細胞と死滅細胞のみを培養した場合と比較して貪食抑制の程度を百分率で示した。
【0101】
実験の結果、ホスファチジルセリンとFEX-2モノクローナル抗体(5G3)により、L/FEX-2の死滅細胞の貪食が殆ど完璧に抑制された。一方、PCリポソームとマウス免疫グロブリンによっては、貪食の抑制程度が微弱なものとして示された(図13)。
【0102】
これより、FEX-2が老化した細胞のみならず、自然死滅細胞の表面で発現されるホスファチジルセリンを認識して貪食できることが分かった。
【0103】
<6-4> FEX-2モノクローナル抗体の処理に伴うL/FEX-2細胞から分泌される抗炎症性サイトカインの分析
前記実施例<1-2>のL/FEX-2細胞をDMEM培地を含む6-ウェルプレートで完全に培養した後、前記実施例<2-3>のFEX-2モノクローナル抗体(5G3) 100μg/ml又はマウス免疫グロブリン(IgG1)100μg/mlをそれぞれ添加して培養した。培養が完了した後、培地を回収して生成されたTGF-βの量をELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)を利用して測定した。
【0104】
実験の結果、本発明のFEX-2モノクローナル抗体を添加した場合、抗炎症性サイトカインであるTGF-βの生成が促進されることが確認できた(図14)。
【0105】
<実施例7>
大食細胞の表面で発現されるFEX-2による自然死滅細胞の貪食
<7-1> 大食細胞でFEX-2の発現可否の調査
自然死滅細胞及び老化した細胞の貪食に関与する大食細胞からFEX-2が発現するか否かを調査した。この為に、まず、正常の成人の自発的供与者より血液を採取し、前記血液から単核細胞を分離した後、10%の人間の血清が含まれたX-Vivo 10(BioWhitaker)培地で7日間程培養して大食細胞に分化させた後、β-グルカンを処理して活性化させることにより、人間単核細胞から由来した大食細胞(human monocyte derived macrophage, HMDM)を細胞した。その後THP-1人間単核細胞株(韓国細胞株銀行)にPMAを10ng/mlの濃度に処理して72時間培養することにより、大食細胞に分化させた。前記2種類の大食細胞とマウスの大食細胞であるP388D1(韓国細胞株銀行)の細胞の表面にFEX-2が発現されるか否かを前記実施例2のFEX-2モノクローナル抗体(5G3)を利用してフローサイメトリー分析機で分析した。
【0106】
実験の結果、活性化されたHMDM、THP-1及びP388D1大食細胞から全てFEX-2が発現されることが確認できた(図15)。
【0107】
<7-2> PSリポソーム及びFEX-2モノクローナル抗体による大食細胞の自然死滅細胞の貪食抑制
前記実施例<7-1>の3種類の大食細胞の自然死滅細胞の貪食がPSリポソーム及びFEX-2モノクローナル抗体により抑制されるか否かを調査した。
【0108】
まず、前記実施例<7-1>の大食細胞を前記実施例<5-3>のPSリポソーム又は前記実施例<2-3>のFEX-2モノクローナル抗体と30分間前培養した。ここに、前記実施例<6-1>の細胞死滅が誘導されたJurkat T細胞又はU937細胞を1×106個ずつ添加して37℃で1時間追加して培養した。対照群としては前記FEX-2モノクローナル抗体の代わりにマウス免疫グロブリン(IgG1)を使用した。大食細胞の貪食抑制の程度は前記実施例<6-3>と同一の方法で調査した。
【0109】
実験の結果、活性化されたHMDM、THP-1及びP388D1は全てPSリポソームとFEX-2モノクローナル抗体5G3により、貪食が大きく抑制されたものとして示された。一方、マウス免疫グロブリンによっては、殆ど抑制されないものとして示された(図16)。
【0110】
前記実験の結果から、大食細胞の表面に発現するFEX-2が自然死滅細胞のホスファチジルセリンを特異的に認識して大食細胞による自然死滅細胞の付着及び貪食を媒介することが確認できた。
【0111】
<7-3> FEX-2リガンドの処理に伴う大食細胞から分泌される抗炎症性サイトカインの分析
ホスファチジルセリン依存性死滅細胞の貪食は抗炎症性サイトカインのTGF-βの分泌を促進し、炎症性サイトカインのTNF-αの分泌は抑制すると知られている(Fadok V. A. et al., J. Clin. Invest., 101:890-898, 1998; McDonald P. P. et al., J. Immunol. 163:6164-6172, 2000)。ここに、大食細胞の表面に発現されるFEX-2に対する種々のリガンドを活性化された大食細胞に処理し、前記リガンドによる大食細胞の抗炎症性サイトカイン又は炎症性サイトカインの分泌程度を測定した。まず、マウスの大食細胞株J774(韓国細胞株銀行)をLPS(10ng/ml)で処理して刺激させた後、PSリポソーム又はPCリポソーム100μM、老化した赤血球細胞、FEX-2モノクローナル抗体5G3及びマウス免疫グロブリンIgG100μg/mlずつそれぞれ添加し、37℃で18時間培養した。培養が完了して、培地を回収してTGF-β及びTNF-αの量をELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)を利用して測定した。対照群には何等の処理もしなかった。
【0112】
実験の結果、LPSのみを処理して刺激させた大食細胞では炎症性サイトカインであるTNF-αの分泌が増加するものと示された。一方、LPS処理後に老化した赤血球細胞、PSリポソーム及びFEX-2モノクローナル抗体5G3を処理した場合には、大食細胞から抗炎症性サイトカインであるTGF-βの分泌が促進され、炎症性サイトカインであるTNF-αの分泌が減少されるものと示された。一方、PCリポソーム及びマウス免疫グロブリンIgGを処理した場合には、LPSで刺激させた大食細胞と殆ど同一な様相を示した(図17)。
【0113】
これより、大食細胞の表面に発現されるFEX-2タンパク質に対するリガンドとして作用するPSリポソーム及びFEX-2モノクローナル抗体は大食細胞が老化した細胞を貪食する場合と、同一のシグナルが伝達されるようにすることにより、大食細胞の抗炎症性サイトカインの分泌を促進し、炎症を抑制し得ることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明に伴うFEX-2ポリペプチドに特異的なリガンドは貪食細胞の表面に発現されたFEX-2に結合して抗炎症性サイトカインの分泌を促進し、炎症性サイトカインの分泌は抑制し、炎症性疾患が治療又は予防できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】図1は人間FEX-2タンパク質の各ドメインを図示化した模式図である。
【図2】図2はL/FEX-2細胞表面にFEX-2が発現されるか否かをFEX-2モノクローナル抗体を利用してフローサイメトリー分析機で分析した結果である。対照群にはマウス免疫グロブリン(IgG1)を使用した。
【図3】図3はL/FEX-2細胞による老化した赤血球又は正常赤血球の付着及び貪食程度を正常赤血球及びL/Mock細胞と比較した結果である。
【図4】図4はFEX-2モノクローナル抗体による老化した赤血球の付着及び貪食の抑制程度を示した結果である。 None:L/FEX-2細胞に何等の処理もしない場合 5G3 :L/FEX-2細胞をFEX-2モノクローナル抗体と前培養した場合 IgG1:L/FEX-2細胞をマウス免疫グロブリンと前培養した場合
【図5】図5は赤血球の老化に伴うホスファチジルセリンの発現程度をアネキシンV抗体を利用してフローサイメトリー分析機で測定した結果である。
【図6】図6は赤血球の老化に伴うL/FEX-2細胞との付着程度を測定した結果である。
【図7】図7は多くの種類のリン脂質がL/FEX-2細胞に付着される程度を示したグラフである。 PI:ホスファチジルイノシトル、 PE:ホスファチジルエタノールアミン PS:ホスファチジルセリン、 PC:ホスファチジルコリン PA:ホスファチジンサン、 PG:ホスファチジルグリセロール
【図8】図8は多くの種類のリン脂質の処理に伴うL/FEX-2細胞による老化した赤血球の付着及び貪食の抑制程度を示したグラフである。 None:リン脂質を添加もしない。 PI:ホスファチジルイノシトル、 PE:ホスファチジルエタノールアミン PS:ホスファチジルセリン、 PC:ホスファチジルコリン PA:ホスファチジン、 PG:ホスファチジルグリセロール
【図9】図9はホスファチジルセリン又はホスファチジルコリンの添加濃度に伴うL/FEX-2細胞に対する老化した赤血球の付着程度を示したグラフでる。
【図10】図10はホスファチジルセリンの構造的誘導体によるL/FEX-2細胞に対する老化した赤血球の付着及び貪食の抑制程度を示した結果である。 None:リン脂質を添加もしない。 PS :ホスファチジルセリン PDS:ホスホ-D-セリン PLS:ホスホ-L-セリン
【図11】図11は抗Fas-抗体を処理したJurkat T細胞及びエクトポーサイド(ectoposide)を処理したU937細胞において細胞死滅程度をフローサイメトリー分析機で分析した結果である。
【図12】図12はL/FEX-2細胞とL/Mock細胞において自然死滅細胞の貪食程度を観察した写真である。 a:L/Mock細胞 b:L/FEX-2細胞
【図13】図13はホスファチジルセリン又はFEX-2モノクローナル抗体によるL/FEX-2細胞の自然死滅細胞の貪食抑制程度を示したグラフである。 None:無処理 PS :ホスファチジルセリン、 PC :ホスファチジルコリン 5G3 :FEX-2モノクローナル抗体、 IgG1:マウス免疫グロブリン
【図14】図14はL/FEX-2細胞にFEX-2モノクローナル抗体の処理に伴う抗炎症性サイトカインの分泌程度を測定した結果である。 Con:何等の処理もしない対照群 IgG:マウス免疫グロブリンIgG1の処理 5G3:FEX-2モノクローナル抗体の処理
【図15】図15は大食細胞の表面にFEX-2が発現するか否かをFEX-2モノクローナル抗体を利用してフローサイメトリー分析機で分析した結果である。対照群にとしてはマウス免疫グロブリンIgG1を使用した。
【図16】図16はホスファチジルセリン又はFEX-2モノクローナル抗体による大食細胞の死滅細胞の貪食抑制程度を示したグラフである。 PS :ホスファチジルセリン IgG:マウス免疫グロブリン 5G3:FEX-2モノクローナル抗体
【図17】図17はLPSで刺激させたJ774大食細胞株にFEX-2に対する種々の種類のリガンドの処理に伴う抗炎症性サイトカイン及び炎症性サイトカインの分泌程度を測定した結果である。 対照群 :何等の処理もしない。 LPS :LPSで刺激する。 LPS+AR :LPSで刺激した後老化した赤血球を処理した。 LPS+PC :LPSで刺激した後ホスファチジルコリンリポソームを処理する。 LPS+PS :LPSで刺激した後ホスファチジルセリンリポソームを処理する。 LPS+IgG:LPSで刺激した後マウス免疫グロブリンを処理する。 LPS+5G3:LPSで刺激した後FEX-2モノクローナル抗体を処理する。
【技術分野】
【0001】
本出願は2004年10月12日付で出願された大韓民国特許出願第10-2004-0081499号に基づく優先権を主張するものである。
本発明はFEX-2ポリペプチドに特異的なリガンドの新規の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症(Inflammation)は細胞及び組織の損傷や感染に対する局部的な又は全身的な防御メカニズムである。炎症は主に、免疫系をなす数多くの体液性媒介体(humoral mediator)が直接反応するか又は局部的又は全身的作動システム(effector system)を刺激することにより生ずる連鎖的な生体反応により誘発される。このような炎症反応に関与する媒介体にはPMN(Polymorphonuclear leukocytes)、CTL(Cytotoxic Tlymphocyte)、NK(Natural killer)細胞、大食細胞等のような免疫細胞とサイトカイン等がある。炎症性疾患は特に、炎症性サイトカインの不均衡とエフェクター細胞(effector cell)の相互作用により引起こされる。主要炎症性疾患には感染性鼻炎、アレルギー性鼻炎、慢性鼻炎、急性副鼻腔炎及び慢性副鼻腔炎等のような鼻炎及び副鼻腔炎;急性化膿性中耳炎及び慢性化膿性中耳炎等のような中耳炎;細菌性肺炎、気管支肺炎、大葉性肺炎、レジオレラ肺炎及びウイルス性肺炎等のような肺炎;急性又は慢性胃炎;感染性小腸結腸炎、クローン氏病(Crohn's disease)、特発性潰瘍性大腸炎、胃膜性大腸炎等のような腸炎;化膿性関節炎、結核性関節炎、退行性関節炎及びリュウマチ関節炎等のような関節炎;及び糖尿性眼疾患等がある。
【0003】
今まで知られた主要炎症性サイトカインには、大食細胞及び単核球細胞により生成されるTNF-α(tumor necrosis factor-α)、IL-1、IL-6及びIL-18等がある。この中でTNF-αは低濃度で適切な止血及び防御作用を行うものの、高濃度では全身又は特定組織でIL-1のような他の種類の炎症性サイトカインと共に作用して炎症反応を悪化させる。
【0004】
一方、TGF-βは特定細胞の増殖を促進又は抑制する活性を有するサイトカインとして、リンパ球反応の拮抗効果及び大食細胞活性化抑制等のような活性を有し、代表的な抗炎症性サイトカインとして知られている。
【0005】
炎症性サイトカインの不均衡による炎症性疾患を治療する為に、前記炎症性サイトカインを抑制し、抗炎症性サイトカインの生成を促進しようとする研究が多様に成されている。
【0006】
炎症性サイトカイン(proinflammatory cytokine)を抑制する方法としては、サイトカインが外部の刺激により分泌されることを抑制する生産抑制方法と、サイトカインが対象細胞を刺激することを調節する作用抑制方法がある。サイトカインの生産抑制剤としては、IL-1とTNF-α生産抑制剤であるSK&F 86002、テトラドリン(tetradrine)、WIN67694等が報告された例があり、サイトカインの作用抑制剤としては、IL-1受容体拮抗剤(antagonist)であるIL-1Ra、水溶性TNF-α受容体、サイトカイン抗体等が開発されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的はFEX-2に特異的なリガンドの新規な用途を提供することである。
【0008】
ここに、本発明者らは新たな炎症性疾患の治療剤の研究を重ねていく中で、FEX-2に特異的なリガンドが貪食細胞の表面に発現されるFEX-2に結合し、抗炎症性サイトカインの分泌は促進し、炎症性サイトカインの分泌は抑制し、炎症性疾患を予防又は治療し得ることを確認することにより本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記のような本発明の目的を達成する為に、本発明はFEX-2ポリペプチドに特異的なリガンド(ligand)の有効量を、これを必要とする個体(subject)に投与することを含む、個体において炎症と関係のあるサイトカイン(cytokine associated with inflammation)の分泌を調節する方法;及び炎症性疾患を治療又は予防する方法を提供する。
【0010】
さらに、本発明の他の目的を達成する為に、本発明は(a)FEX-2を発現する貪食細胞と試験製剤を培養する段階;及び(b)試験製剤無しに培養された貪食細胞から分泌されるサイトカインの水準に対する試験製剤と共に培養された貪食細胞から分泌される、サイトカインの水準の相対的な変化を測定する段階を含む、炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する製剤のスクリーニング方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明の他の目的を達成する為に、本発明は前記スクリーニング方法の段階に前記(b)段階で選ばれた貪食細胞から分泌されるサイトカインの水準を調節する試験製剤を炎症性疾患を有する動物に投与して前記試験製剤が前記動物において、治療効果を呈するか否かを検査する段階をさらに含む、炎症性疾患の治療又は予防用製剤のスクリーニング方法を提供する。
【0012】
本発明の他の目的を達成する為に、本発明は炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する薬学的組成物;及び炎症性疾患の治療又は薬学的組成物の製造の為のFEX-2ポリペプチドに特異的なリガンドの用途を提供する。
【0013】
従って、本発明のさらに他の目的を達成する為に、本発明はFEX-2ポリペプチドに特異的なリガンドを有効成分として含む炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する薬学的組成物;及び炎症性疾患の治療又は予防用薬学的組成物を提供する。
【0014】
他の定義が無い限り、本明細書に使用された全ての技術的及び科学的用語は当業者らにより一般的に理解されるものと同一の意味を有する。次の参考文献は本発明の明細書に使われた多くの用語らの一般的な定義を有する技術(skill)の一つを提供する。(Singleton et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOTY(2d ed. 1994);THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY(Walker ed., 1988);及び Hale & Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY. さらに、次の定義は本発明の実施の為、読者(reader)に便宜を与える為に提供する。
【0015】
本発明で‘ポリペプチド’(polypeptide)は、‘ポリペプチド(polypeptides)及び'タンパク質(protein(s))'と互換性があるように使用され、例えば、典型的には自然状態のタンパク質から見い出される通り、アミノ酸残基の重合体をいう。
【0016】
本発明で‘FEX-2ポリペプチド’は哺乳動物から由来した場合もあり、好ましくは、人間、ラット及びマウスからなるグループの中で選ばれるいずれか一つから由来したものである。より好ましくは配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含む人間FEX-2である。最も好ましくは前記FEX-2は哺乳動物の貪食細胞より発現されるものである。
【0017】
本発明で‘FEX-2に特異的なリガンド’とは、FEX-2に結合する全ての種類のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ペプチド模倣物、化合物及び生物製剤を含む。好ましくは、前記FEX-2リガンドは貪食細胞の表面で発現されるFEX-2に結合して活性化された貪食細胞におけるサイトカインの分泌が調節できる活性を有することをいう。好ましくは、貪食細胞から抗炎症性サイトカインの分泌を促進し、炎症性サイトカインの分泌が抑制できる活性を有するものでもあり得る。前記にて貪食細胞としては専門的な貪食細胞である大食細胞ばかりでなく、上皮細胞及び繊維芽細胞のような非専門的な貪食細胞も含まれる。前記FEX-2リガンドは最も好ましくはホスファチジルセリン、抗-FEX-2抗体又はこれらの誘導体でもあり得る。前記にて‘誘導体’とはホスファチジルセリン又は抗-FEX-2抗体の基本骨格及びその生理活性を保持しながら一部の化学構造が変形したことをいう。
【0018】
前記ホスファチジルセリンは天然に存在する脂肪質の一種であり、セリン基、リン酸基、グリセロールと2個の脂肪酸基が結合された物質である。前記ホスファチジルセリンは1948年ホルク(Folch)により分離され、数多くの研究が進められることにより痴呆の治療及び脳機能改善、癲癇治療、ストレス耐性のような効果のあることが報告されている。本発明でホスファチジルセリンは特に限定はされず、天然由来か若しくは合成されたものを使用するか又は、商業的に購入したものが全て使用できる。さらに、前記にてホスファチジルセリンの誘導体としてはホスホ-L-セリンが好ましい。前記ホスファチジルセリン又はその誘導体は粉末、顆粒、ペースト及び液状の形態でもあり得、さらに、塩の形態の場合もあり得る。前記塩としては薬学的に許容できるものであれば、いずれでも使用できる。例えば、薬学的に許容される塩にはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、リン酸塩、塩酸塩及び硫酸塩を挙げられる。
【0019】
さらに、本発明で抗-FEX-2抗体はポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の場合もあり得る。本発明の抗体はFEX-2タンパク質を抗原として免疫学分野で広く知られている一般的な方法で製造できる。
【0020】
ポリクローナル抗体は馬、牛、山羊、羊、犬、鶏、七面鳥、兎、マウス又はラットのような多様な恒温動物から当該分野の一般的な技術中の一つを使用して製造できる。つまり、抗原を腹膜内、筋肉内、眼内又は皮下注射を通じて動物を免疫させる。前記抗原に対する免疫性は補助剤、例えば、フロウント(Freund)の完全補助剤又は不完全補助剤を用いて増加させることができる。ブ−スター(booster)免疫処理に応じた後、血清の小型サンプルを収集して目的とする抗原に対する反応性をテストした。動物の力価が一応抗原に対するその反応性の観点から停滞状態に至れば、多量のポリクローナル免疫血清を動物を1週間毎に出血又は放血させることにより収得できる。
【0021】
モノクローナル抗体も公知の技術を利用して生成させ得る(Kennettm McKearn, and Bechtol(eds.), Monoclonal Antibodies, Hybridomas; A New Dimension in Biological Analyses, Plenum Press, 1980)。モノクローナル抗体はFEX-2タンパク質を免疫原にして動物を免疫化させ、免疫化された動物の脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを生成し、FEX-2タンパク質を選択的に認識するハイブリドーマを選別し、選別したハイブリドーマを培養し、ハイブリドーマの培養液から抗体を分離することにより製造できる。さらに、本発明のモノクローナル抗体はFEX-2タンパク質を選択的に認識する抗-FEX-2抗体を生産する前記のハイブリドーマを動物に注入し、注入後一定期間が過ぎて回収した動物の腹水から分離することにより製造できる。本発明の1実施例で製造した人間FEX-2モノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ5G3はブタペスト条約下の国際寄託機関である韓国生命工学院遺伝資源センター遺伝子銀行(KCTC)(大韓民国大田市儒城区魚隠洞52番地韓国生命工学研究院)に2004年5月21日付で寄託番号KCTC-10639BPで寄託した。前記寄託物は登録特許(issued patent)の全期間の間、韓国生命工学院遺伝資源センター遺伝子銀行で生きている状態で維持され、寄託物管理法の規定により無制限で非商業的用途の為、全ての人(any person or entity)が入手可能である。
【0022】
本発明における抗-FEX-2抗体の誘導体には前記抗体の安定性、貯蔵性、揮発性又は溶解度等を変更させる為に、構造が変形されたものを含み得る。場合によってはリン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチール化(methylation)、ファネシル化(farnesylation)等で修飾(modification)されたものでもあり得る。
【0023】
本発明で‘個体(subject)’とは、動物、好ましくは哺乳動物の場合もあり得、動物より由来した細胞、組織、器官等でもあり得る。
【0024】
本発明で‘有効量(effective amount)’とは、個体において、炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する効果、好ましくは貪食細胞より分泌されるサイトカインの分泌を調節する効果、最も好ましくは抗炎症性サイトカインの分泌を促進するか、及び/又は炎症性サイトカインの分泌を抑制する効果又はそれを通じて炎症性疾患を治療又は予防する効果を示す量をいう。
【0025】
本発明で‘製剤(agent)’又は‘試験製剤(test agent)’とは、任意の物質(substance)、分子(molecule)、元素(element)、化合物(compound)、実在物(entity)、又はそれらの組合せを含む。例えば、これに制限はされないものの、タンパク質、ポリペプチド、小有機物質(small organic molecule)、多糖類(polysaccharide)、ポリヌクレオチド等を含む。さらに、自然産物(natural product)、合成化合物又は化学化合物又は2個以上の物質の組合せであることもあり得る。別に指定されない限り、製剤、物質及び化合物は互換性のあるように(interchangeably)利用できる。
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明者らはfas-1ドメインを含む部分的な人間cDNAを公知のヌクレオチドデータベースで検索し、この中で今までその特性が明らかにされていないcDNAを選抜した。前記cDNAを基にプライマーをデザインした後、人間の脾臓から抽出した総RNAを鋳型にして前記にてデザインされたプライマーでRT-PCR及び5′RACE PCRを行うことにより、fas-1ドメインを含む人間遺伝子を新たにクローニングした(実施例1参照)。
【0028】
前記本発明者らが合成した遺伝子は7個のfas-1ドメイン、23個のEGF-類似ドメイン、1個のX-リンクドメイン及び1個の膜横断ドメインを有していた(図1参照)。前記のようなドメイン構造を基にして前記遺伝子をFEX-2に命名し、前記遺伝子配列をジーンバンクに登録した(AY311388)。人間FEX-2の全体アミノ酸配列は配列番号1に示した通りである。
【0029】
本発明者らは前記FEX-2の機能を確認する為に多様な実験を行った結果、前記FEX-2が老化した細胞及び死滅細胞の表面より発現されるホスファチジルセリンを特異的に認識することにより、前記細胞の付着及び貪食を媒介するという事実を、FEX-2遺伝子で形質転換された繊維芽細胞を利用して確認した。さらに、本発明者らは老化した細胞及び死滅細胞の貪食に関与する大食細胞の表面にFEX-2が発現され、前記大食細胞の貪食作用がFEX-2により、媒介されるものであることを確認した。これより、本発明者らは前記FEX-2がホスファチジルセリンの新規な受容体であることを明らかにした。
【0030】
さらには、本発明者らは活性化された貪食細胞である大食細胞又はFEX-2遺伝子で形質転換された繊維芽細胞にFEX-2に対するリガンドを処理した結果、抗炎症性サイトカインの分泌が促進され、炎症性サイトカインの分泌は抑制されることが確認できた。従って、FEX-2のリガンドは個体内で炎症と関係のあるサイトカインの分泌調節剤及び炎症性疾患の予防又は治療剤として、使用可能であることが確認できた。
【0031】
より具体的に本発明の1実施例ではFEX-2遺伝子を含む組換えベクトルを製造し、これをマウス繊維芽細胞であるL細胞に形質転換してL/FEX-2細胞を製造した後(実施例1参照)、前記細胞が老化した細胞及び死滅細胞の付着及び貪食に関与するか否を調査した(実施例4参照)。その結果、L/FEX-2細胞が老化した赤血球細胞を選択的に認識して付着し、貪食することを確認することができた(図3及び図4参照)。従って、前記L/FEX-2細胞による老化した赤血球細胞の付着及び貪食はFEX-2により、媒介されたものであることが確認できた。
【0032】
さらには、本発明の他の実施例ではFEX-2による老化した細胞の付着において、FEX-2の認識部位を同定した結果(実施例5参照)、老化が進むにつれて赤血球の表面にホスファチジルセリンの発現程度が増加し(図5参照)、L/FEX-2細胞との付着程度も増加することが確認できた(図6参照)。さらに、FEX-2は老化した赤血球細胞表面のホスファチジルセリンのみを特異的に認識し(図7乃至図9参照)、FEX-2は陰性電荷によりホスファチジルセリンを認識するのでは無く、ホスファチジルセリンの構造を特異的に認識することが確認できた(図10参照)。
【0033】
さらに、本発明者らは老化した細胞ばかりでなく、自然死滅細胞の場合にも細胞表面にホスファチジルセリンが発現されるとの事実から、L/FEX-2細胞により自然死滅細胞が貪食されるか否かを調査した結果(実施例6参照)、FEX-2は老化した細胞のみならず、自然死滅細胞の表面で発現されるホスファチジルセリンを認識して付着及び貪食を媒介することが確認できた(図12及び図13参照)。
【0034】
一方、本発明者らはL/FEX-2細胞にFEX-2モノクローナル抗体を処理し、抗炎症性サイトカインの分泌量を測定した結果(実施例6参照)、L/FEX-2細胞にFEX-2モノクローナル抗体を処理することにより、抗炎症性サイトカインの分泌量が増加したことが確認できた(図14参照)。
【0035】
さらに、本発明者らは老化した細胞及び自然死滅細胞の貪食は、主に大食細胞によりなされることから、大食細胞の表面にFEX-2が発現されるか否か、前記大食細胞の貪食作用がFEX-2により媒介されるか否かを調査した(実施例7参照)。その結果、大食細胞よりFEX-2が発現され(図15参照)、大食細胞の貪食作用は大食細胞の表面に存在するFEX-2が自然死滅細胞の表面に発現されたホスファチジルセリンを特異的に認識することにより成されるという事実が確認できた(図16参照)。従って、FEX-2がホスファチジルセリンの新規の受容体であることが究明できた。
【0036】
ホスファチジルセリン依存性自然死滅細胞の貪食は抗炎症性サイトカインであるTGF-βの分泌を促進し、炎症性サイトカインであるTNF-αの分泌は抑制すると知られている。ここに、本発明者らは大食細胞の表面に存在するFEX-2に対するリガンドが大食細胞の貪食過程で生ずるシグナルと、同一なシグナルを活性化された大食細胞に伝達して抗炎症性サイトカインの分泌を促進できるか否かを調査した(実施例<7-3>参照)。その結果、ホスファチジルセリン又はFEX-2モノクローナル抗体の処理により、活性化された大食細胞は大食細胞が老化した細胞を貪食する場合と類似して抗炎症性サイトカインの分泌を促進し、炎症性サイトカインの分泌は抑制することが確認できた(図17参照)。
【0037】
従って、本発明はFEX-2ポリペプチドに特異的なリガンドの有効量を、これを必要とする個体に投与することを含む、個体から炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する方法;及び炎症性疾患を治療又は予防する方法を提供する。前記炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する方法において、前記サイトカインは貪食細胞より分泌されるものでもあり得る。前記サイトカインは抗炎症性サイトカインと炎症性サイトカインを全て含む。例えば、抗炎症性サイトカインは、これに制限されないものの、TGF-β、IL-10、IL-4及びIL-13でなされた群より選ばれることもでき(Watanabe, M. et al., Adeno-associated virus-mediated human IL-10 gene transfer suppresses the development of experimental autoimmune orchitis. Gene Therapy 2005, 12:1126-1132; Ghoreschi, K. et al., Interleukin-4therapy of psoriasis induces Th2 responses and improves human autoimmune disease. Nature Medicine 2003, 9:40-46; Kluth, D.C. et al., New approaches to modify glomerular inflammation. J Nephrol. 1999 12:66-75)、より好ましくはTGF-βでもあり得る。さらに、炎症性サイトカインは、これに制限はされないものの、TNF-α、IL-1、IL-6、IL-8、IL-18及びMIPでなされた群より選ばれることもでき(McDonald, P. P. et al., Transcriptional and translational regulation of inflammatory mediator production by endogenous TGF-β in macrophages that have ingested apoptotic cells. J. immunol. 1999, 163:6164-6172)、より好ましくはTNF-αでもあり得る。
【0038】
前記方法において、サイトカインの分泌調節は好ましくは抗炎症性サイトカインの分泌を促進するか及び/又は炎症性サイトカインの分泌を抑制するものでもあり得る。例えば、TGF-βの分泌を促進し、TNF-αの分泌を抑制するものでもあり得る。
【0039】
前記のような本発明の方法に用いられる前記FEX-2ポリペプチドに特異的なリガンドは純粋な形態又は適合した薬学的組成物の形態で提供できる。前記薬学的組成物は‘FEX-2に特異的なリガンド’を有効成分として含むことを特徴とする。前記薬学的組成物は本発明のFEX-2に特異的なリガンドを薬学的に許容される担体と共に、適合した形態で剤形化することにより製造できる。前記‘薬学的に許容される塩’とは、生理学的に許容され、人間に投与された時、通常的に胃腸障害、眩暈症等のようなアレルギー反応又はこれと類似した反応を起こさない組成物をいう。薬学的に許容される担体には例えば、ラクトース、澱粉、セルロース誘導体、マグネシウムステアレートステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸のような経口投与用の担体及び水、適合したオイル、食塩水、水性グルコース及びグリコール等のような非経口投与用の担体等があり、安定化剤及び保存剤を追加して含み得る。適合した安定剤には亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又はアスコルビン酸のような抗酸化剤がある。適合した保存剤にはベンズアルコニウムクロライド、メチル-又はプロピール-パラベン及びクロロブタノールがある。その他の薬学的に許容される担体には次の文献に記載されているものを参考にできる(Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1995)。
【0040】
本発明の薬学的組成物は公知の方法により、多様な非経口又は経口投与用の形態で製造できる。非経口投与用剤型の代表的なものは、注射用の剤型であり等張性水溶液又は懸濁液が好ましい。注射用の剤型は適合した分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を用いて当業界に公知の技術により製造できる。例えば、各成分を食塩水又は緩衝液に溶解させ、注射用として剤型化できる。さらに、経口投与用の剤型としてはこれに限定はされないものの、粉末、顆粒、錠剤、丸薬及びカプセル等がある。
【0041】
前記のような方法で剤型化された薬学的組成物は有効量で経口、経皮、皮下、静脈又は筋肉を含む種々の経路を通じて投与できる。
【0042】
本発明におけるFEX-2に特異的なリガンド又はこれを有効成分とする薬学的組成物の投与量は投与経路、投与対象、年齢、性別体重、個人差及び疾病状態によって適切に選択できる。好ましくは、疾患の程度により有効成分の含量を異にすることができ、大人を基準にすると、通常1回投与時に10μg乃至10mgの有効容量で1日に数回繰り返し投与できる。
【0043】
前記のように製造された本発明の薬学的組成物は個体において、炎症と関連したサイトカインの分泌調節及び炎症性疾患の予防又は治療に効果的に使用できる。前記にて‘炎症性疾患’には、単純炎症自体又は前記炎症反応により誘発される全ての疾患が含まれる。例えば、これに限定はされないものの、炎症、炎症性疾患、糖尿性眼疾患、腹膜炎、骨髄炎、蜂巣炎、脳膜炎 、脳炎、膵臓炎、外傷誘発ショック、気管支喘息、鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、肺炎、胃炎、腸炎、嚢疱性繊維症、卒中、気管支炎、細気管支炎、肝臓炎、腎臓炎、関節炎、通風、脊椎炎、ライター症候群、結節性多発動脈炎、過敏性血管炎、ルゲニック肉芽腫症、リウマチ性多発性筋肉痛、関節細胞動脈炎、カルシウム結晶沈着関節病症、仮性通風、非-関節リウマチズム、粘液嚢炎、腱鞘炎、上顆炎(テニスエルボー)、神経病症状関節疾患(Charcot's joint)、出血性関節症(hemarthrosis)、ヘノフシェンライン紫斑病 、鼻喉性骨関節病症、多重芯性細網組織球腫、側湾症(scoliosis)、血色素症、鎌状赤血球症及びその他の血色素症 、高脂蛋白血症、低ガンマグロブリン血症、副甲状腺機能昂進症、末端巨大症、家族性地中海熱、ベハト病 、全身性紅斑性ループス、再帰熱、乾癬、多発性硬化症、敗血症、敗血性ショック、急性呼吸困難症候群 、多発性臓器不全、慢性閉鎖性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)、急性肺損傷(acute lung injury)及び気管支肺形成障害(broncho-pulmonary dysplasia)等が含まれる。
【0044】
さらに、本発明は貪食細胞において、炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する製剤;及び炎症性疾患の治療又は予防剤のスクリーニング方法を提供する。
【0045】
具体的に、前記スクリーニング方法は
(a)FEX-2を発現する貪食細胞と試験製剤を一緒に培養する段階;及び
(b)試験製剤無しに培養された貪食細胞より分泌されるサイトカインの水準に対する試験製剤と共に培養された貪食細胞より分泌されるサイトカインの水準の相対的な変化を測定する段階を含むことを特徴とする。
【0046】
前記スクリーニング方法において、前記(a)段階のFEX-2を発現する貪食細胞とは、大食細胞又はFEX-2で形質転換されたマウスの繊維芽細胞であるL細胞が好ましい。さらに、前記(b)段階は抗炎症性サイトカイン(例:TGF-β及び/又は炎症性サイトカイン(例:TNF-αの生成量を測定して行うことができ、これは当業界に公知のELISA法が利用できる。
【0047】
さらに、炎症性疾患の治療又は予防剤のスクリーニング方法の場合には、前記(a)及び(b)段階に下記の(c)段階を追加して含め得る:前記(b)段階で選ばれた、貪食細胞より分泌されるサイトカインの水準を調節する試験製剤を炎症性疾患を有する動物に投与し、前記試験製剤が前記動物において治療効果を呈するか否かの検査段階。
【0048】
前記(c)段階で‘動物’とは、人間ではない動物(non-human animal)であることが好ましい。さらに、前記(c)段階で‘治療効果’とは、炎症性疾患及びその症状を緩和又は改善する効果及び炎症性疾患の進行を抑制する効果を意味する。
【0049】
本発明により、スクリーニング可能な製剤は、好ましくは抗炎症性サイトカインの分泌を促進するか及び/又は炎症性サイトカインの分泌を抑制する製剤;又は前記のような作用を通じて炎症性疾患の治療又は予防効果を呈する製剤でもあり得る。
【0050】
本発明の方法でスクリーニング可能な試験製剤は、ポリペプチド、ベータ-ターンミメチック(beta-turn mimetics)、多糖類、リン脂質、ホルモン、プロスタグランジン、ステロイド、芳香族化合物、ヘテロサイクリック化合物、ベンゾジアゼピン(benzodiazepines)、オリゴマリックN−置換グリシン(oligomeric N-substituted glycines)、オリゴカルバメート(oligocarbamates)、糖類(saccharides)、脂肪酸、ピューリン、ピリミジン又はこれらの誘導体、構造的アナログ又は組合せを含む。ある試験製剤は合成物質の場合もあり得、他の試験製剤は天然物質でもあり得る。前記試験製剤は合成又は自然化合物のライブラリーを含む広範囲で多様な出処より得られる。組合せ(combinatorial)ライブラリーはステップバイステップ方式で合成できる種々の化合物で生産できる。多数の組合せライブラリーの化合物等はESL(encoded synthetic libraries)方法(WO 95/12608, WO 93/06121, WO 94/08051, WO 95/395503及びWO 95/30642)により製造できる。バクテリア、カビ、植物及び動物抽出物の形態の自然化合物のライブラリーは商業的な出処から得るか又はフィールド(field)で収集できる。公知された薬理学的(pharmacological)製剤が構造的アナログを製造する為に、アシル化、アルキル化、エステル化反応(esterification)、イミド化反応(amidification)のような指示されるか(direct)又は無作為な科学的数式に適用できる。前記試験製剤は自然的に生成されるタンパク質又はその断片でもあり得る。このような試験製剤は自然出処(natural source)、例えば、細胞又は組織溶解物質から収得できる。ポリペプチド製剤のライブラリーは、例えば、一般的な方法により生成されるか又は商業的に入手できるcDNAライブラリーから収得できる。前記試験製剤はペプチド、例えば、約5-30個、好ましくは約5-20個、より好ましくは7-15個のアミノ酸を有するペプチドでもあり得る。前記ペプチドは自然的に生成されるタンパク質、ランダムペプチド又は‘バイアス化(biased)’ランダムペプチドの切断物でもあり得る。
【0051】
さらに、前記試験製剤は‘核酸’でもあり得る。核酸試験製剤は自然的に生成される核酸、ランダム核酸、又は‘バイアス化’ランダム核酸でもあり得る。例えば、原核又は真核ゲノムの切断物を前記記載と同様に利用できる。
【0052】
さらに、前記試験製剤は小分子(例:約1,000以下の分子量を有する分子)でもあり得る。小分子の調節製剤をスクリーニングする為の方法には、好ましくは高速分析アッセイ(high throughput assay)が適用できる。前記記載の通り小分子試験製剤の組合せライブラリーが本発明のスクリーニング方法に容易に適用できる。多くのアッセイが前記スクリーニングに有用である(Shultz, Bioorg. Med. Chem. Lett., 8:2409-2414, 1998; Weller, Mol. Drivers., 3:61-70, 1997; Fernandes, Curr. Opin. Chem. Biol., 2:597-603, 1998; and Sittampalam, Curr. Opin. Chem. Biol., 1:384-91, 1997)。
【0053】
本発明の方法でスクリーニング可能な試験製剤のライブラリはFEX-2ポリペプチド又は、これに特異的なリガンド、又はこれらの断片若しくはアナログに対する構造研究を基に製造できる。前記にて‘アナログ(analog)’とは、標準物質(reference molecule)と構造的に類似するものの、標準物質の特異的置換基が置換により、代替されることにより標的や調節方法が変形した物質をいう。標準物質と比較するに、アナログは当業者により予想され得る通り、同一又は類似するか又は向上した有用性(utility)を有する。向上した性質(例:標的物質に対する、より高い結合親和力)を有する公知の化合物変異体を究明する為のアナログの合成及びスクリーニングは薬理化学的分野に公知の方法である。
【0054】
前記構造研究はFEX-2ポリペプチドに結合する可能性のある試験製剤の究明を可能にする。FEX-2ポリペプチドの3次元的構造は多くの方法、例えば、結晶学構造及び分子的モデリング(crystal structure and molecular modeling)で研究することができる。X線結晶学を利用するタンパク質構造の研究方法が文献に良く知られている:Physical Bio-Chemistry, Van Holde, K. E. (Prentice-Hall, New Jersey 1971), pp.221-239, and Physical Chemistry with Applications to the Life Sciences, D. Eisengerg & D. C. Crothers(Benjamin Cummings, Menlo Park 1979)。AIMP2の構造に対するコンピューターモデリングはp53の調節子をスクリーニングする為に、試験製剤のデザインの為の他の手段を提供する。分子的なモデリング方法は文献に開示されている:U.S. Pat. No. 5, 612, 894 and U.S. Pat. No. 5,593,973。さらに、タンパク質構造は中性子回折(neutron diffraction)及びNMR(nuclear magnetic resonance)により決定され得る:Physical Chemistry, 4th Ed. Moore, W. J.(Prentice-Hall, New Jersey 1972)and NMR of Proteins and Nucleic Acids, K. Wuthrich(Wiley-Interscience, New York 1986)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0056】
ただし、下記の実施例は本発明を例示するものであり、本発明の内容はこれに限定されるものではない。
【0057】
<実施例1>
人間FEX-2 cDNAのクローニング
<1-1> 発現ベクターの製造
fas-1ドメインを含む新規の細胞付着分子を同定する為に、fas-1ドメインを含む配列をジーンバンク(Genbank)とセレラゲノミックス(Celera genomics)のヌクレオチド・データベースで検索した。その結果、特徴が明らかにされていない人間の部分的なcDNAクローン(FLJ00112、DZKZp434E0321、CD44-like precursor FELL)が検索された。前記の全体の長さcDNA配列はRT-PCRと5’RACE PCRにより人間の脾臓細胞より製造した。
【0058】
まず、前記にてfas-1ドメインを含んでいるものとして検索された3種の人間の脾臓の部分的なcDNAクローンを基にして、2対のプライマー(配列番号2乃至配列番号5)をデザインした(表1)。人間の脾臓から抽出したRNA2μgを鋳型にし、前記にてデザインしたそれぞれのプライマー対を利用して逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(reverse transcriptase polymerase chain reaction、RT-PCR)を行うことにより、fas-1ドメインを含むたんぱく質の部分的なcDNAを2部分に分けて収得した。前記にてPCR反応はPCRシステム(Expand high fidelity PCR system、Roche)を用いて95℃で2分間反応させた後、94℃で30秒、60℃で30秒、72℃で30秒間の反応を30回繰返して行った。その結果、3.6kbと2.0kbの増幅産物をそれぞれ収得した。前記増幅産物の内に3.6kbのcDNAを制限酵素ClaI及びSacI(TaKaRa)で切断した後、pBluescript-KS(+)(Stratagene)ベクターの同一の制限酵素の座にT4リガーゼ(ligase、Invitrogen)を用いて挿入することにより、組換えベクター‘pBS-FEX-23’を製造した。さらに、前記増幅産物の内に、2.0kb cDNAを制限酵素SacI及びHindIII(TaKaRa)で切断した後、pET29bベクター(Novagen)の同一の制限酵素の座にT4リガーゼ(ligase、Invitrogen)を用いて挿入することにより、組換えベクター‘pET-Fex45’を製造した。その後で前記2個のcDNAの塩基配列を合わせる為に、pET-Fex45をEcoRIで切断して収得した断片を、クレナウ(klenow)酵素で処理してブラント(blunt)断片で製造した後、これを再度ScaIで切断して前記組換えベクターのPET-Fex23の同一な制限酵素の座にクローニングして組換えベクター‘pET-Fex2345’を製造した。
【0059】
fas-1ドメインを含むcDNAの5´末端は下記のような方法で製造した。人間の脾臓から収得したRNAを表1に示したプライマー(配列番号6)で増幅してcDNAを製造し、前記cDNAを鋳型にして表1に示したプライマー(配列番号7及び配列番号8)と5’RACE system(5’RACE system for Rapid Amplification of cDNA Ends version 2.0、Invitrogen)で提供するアダプタプライマーを使用して製造者が指示する方法により5’RACE PCRを行い、増幅産物を収得した。その後に前記増幅産物を塩基配列分析機(Applied Biosystems AB13700)で分析してFEX-2の5’末端の塩基配列を究明した後、前記5’末端の塩基配列を基にプライマーを製造した。人間の脾臓から抽出したRNA 2μgを鋳型にして前記の5’末端の塩基配列を基にデザインしたプライマーの対(配列番号9及び配列番号10)を用いて、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(reverse transcriptase polymerase chain reaction、RT-PCR)を行うことにより、2.5kbの5’末端cDNAを収得した。前記増幅産物を制限酵素のEcoRI及びClaI(TaKaRa)で切断し、pBluescript-KS(+)ベクター(Stratagene)の同一の制限酵素の位置に挿入することにより、組換えベクター‘pBS-Fex1’を製造した。完全な塩基配列を発現ベクターにクローニングする為に、まず前記にて製造したpET-Fex2345をKpnIとHindIIIで切断してpcDNA3.1(-)/Myc-Hisベクター(Invitrogen)の同一の制限酵素の位置に挿入して‘pcDNA-Fex45’を製造した。さらに、再度pET-Fex2345をBamHIとKpnIで切断してpcDNA-Fex45の同一の制限酵素の位置に挿入して‘pcDNA-Fex2345’を製造した後、最後に前記pBS-Fex1をEcoRIとClaIで切断してpcDNA-Fex2345の同一の制限酵素の位置に挿入して完全な塩基配列をクローニングした。
【0060】
前記にて製造されたプラスミドを塩基配列分析機(Applied Biosystems AB13700)で分析した後、塩基配列はジーンバンク(GenebankTM accession number AY311388)に登録し、前記にて製造されたFEX-2の完全な塩基配列を含む発現ベクターを‘pcDNA-Fex2’と命名した。
【0061】
前記塩基配列の分析結果から推定されたアミノ酸の配列はスカビンジャ受容体FEEL-2(Scavenger receptor FEEL-2)(Adachi H. et al., J. Biol. Chem. 277:34264-34270, 2002)とヒアルロナン受容体スタビリン-2(encocytic hyaluronan receptor Stabilin-2)(Politz O. et al., Biochem J. 362:155-164, 2002)と殆ど同一なものとして現われ、それらのドメイン構造は7個のfas-1ドメイン、23個のEGF-類似ドメイン、1個のX-リンクドメイン及び1個の膜横断ドメインを有していた(図1)。
【0062】
【表1】
【0063】
<1-2> L細胞の形質転換
前記実施例<1-1>の発現ベクターpcDNA-Fex-2でマウスの繊維芽細胞であるL細胞(ATCC CCL-1、東京大学の生物物理学科のタケチ博士より提供された)を形質転換した。前記L細胞を10%熱不活性化FBS、ペニシリンG及びストレプトマイシンが添加されたDMEM(Dulbecco's modified Eagle's medium)培地で培養した。
【0064】
前記にて選ばれたL細胞を組換えベクターpcDNA-Fex2に形質転換する為に、リポフェクタミン(Lipofectamine、Invitrogen)を使用し、製造者が指示する方法により形質転換した。形質転換した後48時間でG418(400 μg/ml)を処理し、10乃至12日間培養しながら抵抗性を示すそれぞれのコロニーを分離した。前記のような方法で形質転換された細胞をL/FEX-2と命名した。陰性対照群(L/MOCK)ではFEX-2遺伝子が含まれていないベクターのpcDNA3.1(-)/Myc-Hisで形質転換した細胞を利用した。
【0065】
<実施例2>
人間FEX-2に対するモノクローナル抗体の製造
人間FEX-2に対するモノクローナル抗体を製造する為に、人間FEX-2の全体アミノ酸配列(配列番号1)の内、アミノ酸1173番から1727番に該当する塩基配列を含むcDNAを製造した。前記cDNAは前記実施例<1-1>のpCDNA-Fex2DNAを鋳型にして下記のプライマー(配列番号11及び配列番号12)を利用してPCRを行うことにより収得した(表1)。PCRは95℃で2分間反応し、94℃で30秒、60℃で30秒、72℃で30秒間の反応を25回繰り返して行った。前記増幅された産物を制限酵素BamHI及びXhoI(TaKaRa)で切断し、pET43.1aベクター(Novagen)の同一の制限酵素の座に挿入した。
【0066】
【表2】
【0067】
前記にて製造された発現ベクターを‘pET-4E5’と命名し、タンパク質発現と分離は<2-1>における方法と同一の方法で行った。モノクローナル抗体の製造はダイノナ社(Dinona Inc., Seoul, Korea)に依頼して製造した。つまり、前記にて製造された組換えタンパク質20μgを6匹の鼠に2週間の間隔で免疫接種して陽性のハイブリドーマクローン(clone 5G3)を収得し、これを鼠の腹腔に注入させ腹水として採取することにより、モノクローナル抗体を得た。前記モノクローナル抗体のアイソタイプ(isotype)はイソストリップマウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(IsoStrip mouse monoclonal antibody isotyping kit、Roche)を使用して確認した。その結果、本発明はモノクローナル抗体のアイソタイプはIgG1ラムダチェーン(lambda chain)で確認できた。
【0068】
前記本発明の人間FEX-2モノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ5G3は、ブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国生命工学院遺伝資源センター遺伝子銀行(KCTC)に2004年5月21日付で寄託番号KCTC-10639BPで寄託した。
【0069】
<実施例3>
L/FEX-2細胞の表面においてFEX-2の発現可否の確認
前記実施例<1-2>のL/FEX-2細胞の表面よりFEX-2が発現されるか否かを前記実施例<2-3>により製造したFEX-2モノクローナル抗体(5G3)を利用してフローサイメトリー分析機(flow cytometry)で分析した。
【0070】
L/FEX-2細胞をDMEM(Dulbecco's modified Eagle's medium)培地が含まれたプレートで完全に培養(confluent)した後、前記プレートに0.25%トリプシンと0.05%EDTAを含むPBS緩衝液を処理してプレートの表面から細胞を分離した。前記細胞をPBS緩衝液で二回洗浄した後、これを再びPBS緩衝液に再懸濁した。前記細胞懸濁液にFEX-2モノクローナル抗体(5G3)を添加して4℃で1時間培養した。ここに、10μg/mlのFITCと結合した2次兎抗-マウス免疫グロブリンG(Santa Cruz Biotechnology, Inc., CA)を添加して4℃で1時間追加培養した。その後5−ワットレーザーが装着されたフローサイメトリー分析機(Becton Dickinson, San Jose, CA)を利用して488nmで分析した。対照群にはFEX-2モノクローナル抗体の代わりにマウス免疫グロブリン(IgG1)を使用した。
【0071】
実験の結果、FEX-2細胞の表面にFEX-2が発現されることを確認することができた。しかしながら、L/Mock細胞の表面にはFEX-2が発現されないものとして現われた。さらに、FEX-2モノクローナル抗体のマウス免疫グロブリンを使用した場合にもFEX-2の発現が検出されなかった(図2)。
【0072】
<実施例4>
FEX-2による老化した赤血球の付着及び貪食
<4-1>L/FEX-2細胞による老化した赤血球の付着及び貪食
前記実施例<1-2>のL/FEX-2細胞と対照群であるL/Mock細胞に老化した赤血球の付着及び貪食されるか否かを調査した。まず、この為に、正常の成人の自発的供与者から採血した正常赤血球をヘマトクリット20%となるようにPBSで希釈した後、37℃で4日間培養することにより、老化した赤血球の細胞を製造した。その後L/FEX-2細胞、L/Mock細胞及び正常L細胞をそれぞれDMEM培地(Dulbecco's modified Eagle's medium)が含まれた6−ウェルプレートで完全に(confluent)培養した後、老化した赤血球又は正常赤血球を最終ヘマトクリット1%となるように添加し、37℃で1時間培養した。その後前記培養液をPBSで5回洗浄し、光学顕微鏡で老化した赤血球及び正常赤血球の付着程度を観察した。任意に選択した100個のL/FEX-2細胞に付着された赤血球の数を計数して平均値を求めた。貪食分析は細胞をPBSで洗浄した後、水で10秒間処理して貪食されていない細胞を全て溶解させた。その後L/FEX-2細胞をディフクイック染色用キット(Diff quick staining kit, IMEM Ins., San Marcos, CA, USA)を使用して染色し、任意に選択した5箇所で赤血球を貪食した細胞の数を計数した。付着及び貪食指標(%)は全体L/FEX-2細胞の中で赤血球を付着及び貪食した細胞の数を百分率で示したものである。
【0073】
実験の結果、老化した赤血球がL/FEX-2細胞に付着され、貪食されたことが確認できた。しかしながら、老化した赤血球は対照群である正常L細胞とL/Mock細胞には殆ど付着せず、貪食されなかった。さらに、正常赤血球の場合にはL/FEX-2細胞による付着及び貪食が殆ど起こらなかった(図3)。
【0074】
前記結果からFEX-2は老化した細胞の選択的な付着と貪食を知ることができた。
【0075】
<4-2> 抗-FEX-2モノクローナル抗体による老化した赤血球の付着及び貪食の抑制
老化した赤血球の付着及び貪食がFEX-2によることであるか否かを確認する為に、FEX-2に対するモノクローナル抗体(5G3)が老化した赤血球細胞の付着及び貪食を抑制するか否かを調査した。
【0076】
前記実施例<1-2>のL/FEX-2細胞に前記実施例2の人間FEX-2モノクローナル抗体(5G3)100μg/mlを添加して37℃で1時間前に培養した。この際、対照群には前記FEX-2モノクローナル抗体の代わりにマウス免疫グロブリン(IgG1)を添加した。その後前記実施例<4-1>の老化した赤血球をヘマトクリット1%となるように添加し、37℃で1時間追加培養した。培養が完了した後、老化した赤血球の付着及び貪食程度を前記実施例<4-1>と同一の方法で分析した。この際、前記老化した赤血球の付着及び貪食程度は抗体と前培養しないL/FEX-2細胞の場合と比較して抑制程度を百分率で示した。
【0077】
実験の結果、L/FEX-2細胞をFEX-2モノクローナル抗体(5G3)と前培養した場合、老化した赤血球の付着及び貪食が大きく阻害された。これに比べて前記L/FEX-2細胞をマウス免疫グロブリンと前培養した場合には、老化した赤血球の付着及び貪食に大きな影響は与えなかった(図4)。
【0078】
前記実験の結果から老化した赤血球の付着及び貪食はFEX-2により媒介され、抗-FEX-2抗体により抑制されるという事実が確認できた。
【0079】
<実施例5>
FEX-2による老化した赤血球の付着においてFEX-2の認識部位の同定
<5-1> 赤血球の老化に伴う細胞の表面のホスファチジルセリンの発現程度の測定
自然死滅細胞は細胞表面に‘eat me’シグナルを現わすことにより、大食細胞により貪食される。前記シグナルの代表的なものがホスファチジルセリン(phospatidylserine)である。ここに、FEX-2による老化した赤血球の付着及び貪食が老化した赤血球の表面に発現されるホスファチジルセリンをFEX-2が特異的に認識することを仮定して、これを確認する為に、まず、老化の程度に伴う赤血球のホスファチジルセリンの発現程度を測定した。アネキシンV(annexin V)はカルシウムに依存的にリン脂質と結合するタンパク質であり、ホスファチジルセリンに強力な親和性を有していると知られている。これにアネキシンV抗体を使用して赤血球の老化過程で細胞の表面に発現されるホスファチジルセリンの量をフローサイメトリー分析機を利用して測定した。つまり、正常の成人の自発的供与者から採血した正常赤血球をPBSで37℃にそれぞれ0日、2日及び4日間培養した後、アネキシンV細胞死滅検出キット(Santacruz)を利用してホスファチジルセリンの発現程度を製造者の指示によりフローサイメトリー分析機で測定した。
【0080】
実験の結果、老化が進むにつれて、赤血球の細胞の表面にホスファチジルセリンの発現程度が増加することが確認できた(図5)。
【0081】
<5-2> 赤血球の老化に伴うFEX-2との付着程度の調査
前記実施例<4-1>と同一の方法でL/FEX-2細胞と老化した赤血球細胞を一緒に培養した。この際、前記老化した赤血球細胞はそれぞれ0、1、2、3、4及び5日間培養した赤血球細胞を使用した。培養が完了して老化した赤血球とL/FEX-2細胞との付着程度を前記実施例<4-1>と同一の方法で分析した。
【0082】
実験の結果、赤血球の培養時間が長引く程、つまり、赤血球の老化が進むにつれてL/FEX-2細胞との付着程度が増加することが分かった(図6)。
【0083】
<5-3> 多くの種類のリン脂質に対するL/FEX-2細胞の付着活性
赤血球が老化するに従い、細胞の表面のホスファチジルセリンが増加し、これをFEX-2が認識するという事実を確認する為に、多くの種類のリン脂質に対するL/FEX-2細胞の付着活性を調査した。ホスファチジルコリン(phosphatidlycholine、PC)、
ホスファチジルセリン(phosphatidlyserine、PS)、
ホスファチジルイノシトル(phospatidylinositol、PI)、
ホスファチジルエタノールアミン(phsophatidylethanolamine、PE)、ホスファチジン酸(phosphatidic acid、PA)及びホスファチジルグリセロール(phosphatidylgycerol、PG)のようなリン脂質を含むリポソームを以前報告された方法を使用して製造した(Oka, K. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 95:9535-9540, 1998; Fadok, V. A. et al., Nature 405:85-90, 2000)。つまり、PS:PC(PSリポソーム)、PI:PC(PIリポソーム)、PG:PC(PGリポソーム)、PE:PC(PEリポソーム)及びPA:PC(PAリポソーム)をそれぞれ50:50のモル比率で混合してリポソームを製造し、PCのみを含むリポソーム(PCリポソーム)を製造した。前記リポソーム混合物をクロロホルムと混合し、窒素気体下で乾燥させ、最終濃度が5mMとなるようにPBSに再懸濁して氷の上で10分間超音波処理した。さらに、前記リポソームの製造の際、総リン脂質に対して1%濃度のN-(lissamin rhodamine B sulfonyl)-L-α-ホスファチジルエタノールアミン(Avanti Polar Lipids)を添加し、蛍光表示されたリン脂質リポソームを製造した。前記実施例<1-2>のL/FEX-2細胞をDMEM培地で完全に培養した後、ここに前記にて製造された多様な種類のリン脂質リポソームをそれぞれ10μMずつ添加し、37℃で1時間培養した。培養が完了してPBSで十分に洗浄し、L/FEX-2に対するリン脂質リポソームの付着程度を前記実施例<4-1>と同一の方法で分析した。さらに、リン脂質リポソームの貪食程度はL/FEX-2細胞に細胞溶解緩衝液(1%TritonX-100)を添加して溶解させた。その後貪食されたリポソームの量を蛍光マイクロプレートリーダー(fluorescent microplate reader)(Biolumin 960、Molecular Dynamics)を使用して測定した。この際、刺激波長(excitation wavelength)は549nmにし、放出波長(emission wavelength)は565nmにした。対照群としてはL/Mock細胞を利用した。
【0084】
実験の結果、L/FEX-2細胞に対するリン脂質リポソームの付着程度はPSリポソームの場合、最も高く現われ、他の種類のリン脂質リポソームの場合には、対照群と類似した程度のみに現われた(図7)。さらに、L/FEX-2によるリン脂質リポソームの貪食程度は、PSリポソームが異なる他のリン脂質リポソーム及び対照群に比べて極めて高く現われた(結果未図示)。
【0085】
<5-4> 種々の種類のリン脂質リポソームによるL/FEX-2細胞に対する老化した赤血球の付着及び貪食抑制
前記実施例<5-3>で製造したPSリポソーム、PIリポソーム、PGリポソーム、PEリポソーム、PAリポソーム、PCリポソームとL/FEX-2細胞を前培養した後、老化した赤血球細胞と培養してL/FEX-2細胞に対する赤血球の付着及び貪食が抑制されるか否かを調査した。つまり、前記実施例<4-1>と同一になるようにL/FEX-2細胞を培養はするが、PSリポソーム、PIリポソーム、PGリポソーム、PEリポソーム、PAリポソーム、PCリポソームをそれぞれ100μMずつ添加して37℃で30分間前培養した。この時、対照群にはリン脂質リポソームを添加しなかった。前記L/FEX-2細胞に前記実施例<4-2>と同一の方法で老化した赤血球を処理して培養した。培養が完了した後老化した赤血球の付着及び貪食程度は前記実施例<4-1>と同一の方法で分析した。前記老化した赤血球の付着及び貪食の程度は対照群を100%とした時の相対的な値として現われた。
【0086】
実験の結果、L/FEX-2細胞をPSリポソームと前培養した場合に老化した赤血球の付着及び貪食が極めて大きく抑制されることが分かった。一方、L/FEX-2細胞をPSリポソームを除いた別の種類のリポソームと共に、前培養した場合には老化した赤血球の付着は殆ど抑制されず、貪食程度は対照群に比べてかえって若干増加する様相を示した(図8)。
【0087】
<5-5> PSリポソームの添加濃度に伴うL/FEX-2に対する老化した赤血球の付着抑制
前記実施例<5-3>で製造されたPSリポソームの添加濃度を異にして、L/FEX-2細胞と前培養した後、老化した赤血球と培養して赤血球の付着及び貪食の程度を調査した。対照群にはPSリポソームの代わりに、PCリポソームを添加した。つまり、前記実施例<5-4>と同一の方法で実験するものの、PSリポソームを0、0.1、1、10及び100μMの濃度でそれぞれ添加した。培養が完了した後前記実施例<4-1>と同一の方法でL/FEX-2細胞に対する老化した赤血球の付着程度を測定した。
【0088】
実験の結果、L/FEX-2細胞をPSリポソームと共に、前培養した場合にはPSリポソームの添加濃度に依存的にL/FEX-2細胞に対する老化した赤血球の付着が抑制されることが示された。一方、L/FEX-2細胞をPSリポソームと共に、前培養した場合にはL/FEX-2に対する老化した赤血球の付着に影響を与えなかった(図9)。
【0089】
前記実験の結果からL/FEX-2細胞は老化した赤血球の表面に発現されるホスファチジルセリンを特異的に認識し、老化した赤血球を付着し、貪食することが分かった。
【0090】
<5-6> ホスファチジルセリンの構造的誘導体によるL/FEX-2細胞に対する老化した赤血球の付着及び貪食の抑制
FEX-2細胞がPSを特異的に認識するか否かをさらに確認する為に、ホスファチジルセリンの構造的誘導体(structural analogue)であるホスホ-L-セリン(phosphor-L-serine、PLS)とホスホ-D-セリン(phosphor-D-serine、PDS)を利用してL/FEX-2細胞に対する老化した赤血球の付着及び貪食の抑制程度を調査した。
【0091】
前記実施例<5-4>と同一の方法で実験を行ったものの、リン脂質リポソームとしてPSリポソームとホスホ-L-セリン及びホスホ-D-セリン(Sigma)をそれぞれ使用した。この際、対照群にはリン脂質リポソームを添加しなかった。前記老化した赤血球の付着及び貪食の程度は対照群を100%とした場合に対して相対的な値で示された。
【0092】
実験の結果、L/FEX-2細胞をPDSと前培養した場合には、老化した赤血球の付着及び貪食の程度に大きな影響を与えなかった。一方、L/FEX-2細胞をPLSと前培養した場合にはPSリポソームを用いた場合と類似して老化した赤血球の付着及び貪食が大きく抑制されることが示された(図10)。
【0093】
前記実験の結果からFEX-2が陰性電荷により、ホスファチジルセリンを認識するのではなく、ホスファチジルセリンの構造を特異的に認識することが確認できた。
【0094】
<実施例6>
FEX-2による自然死滅細胞の付着及び貪食
<6-1> 細胞の死滅誘導
細胞の表面におけるホスファチジルセリンの発現は老化した細胞ばかりでなく、自然死滅細胞の場合にも代表的な‘eat me’シグナルとして広く知られている。ここに、FEX-2が自然死滅細胞の付着及び貪食も媒介するか否かを確認するため、細胞の死滅を誘導して自然死滅細胞を製造した。
【0095】
人間白血病Jurkat T細胞(韓国細胞株銀行)及び人間単核球白血病(premyelomonocytic leukemic)U937細胞(韓国細胞株銀行)の死滅を誘導した。前記細胞は10%の牛胎児血清(fetal bovine serum)が含まれたRPMI1640培地で培養した。Jurkat T細胞の細胞死滅誘導は公知の方法により前記Jurkat T細胞を抗-Fas抗体(CH-11)100ng/mlが添加された培地に接種し、6時間培養することにより、細胞死滅を誘導した(Oka, K. et al., Proc Natl Acad Sci USA, 95:9535-40, 1998)。さらに、U937細胞の細胞死滅誘導は公知の方法により、前記U937細胞をエクトポサイド(ectoposide)100ng/mlが添加された培地に接種して4時間培養することにより、細胞死滅を誘導した(Bave, U., et. al., J Immunol 165:3519-26, 2000)。前記細胞の死滅程度は細胞の表面に発現されたホスファチジルセリンの量を実施例<5-1>と同一の方法でアネキシンV細胞死滅検出キット(Santacruz)を利用して製造者の指示によりフローサイメトリー分析機(flow cytometry)で分析することにより測定した。
【0096】
実験の結果、抗-Fas抗体を処理したJurkat T細胞及びエクトポサイドを処理したU937細胞で全て細胞死滅が誘導されたことを確認できた。
【0097】
<6-2> L/FEX-2による自然死滅細胞の貪食
前記実施例<6-1>にて細胞死滅を誘導したJurkat T細胞とU937細胞を前記実施例<1-2>のL/FEX-2細胞と共に、培養した後貪食程度を分析した。前記L/FEX-2細胞を6-ウェルプレートで完全に培養した後、前記自然死滅細胞であるJurkat T細胞又はU937細胞1×106個を添加して37℃で1時間培養した。培養が完了した後、PBSで5回洗浄して前記実施例<4-1>と同一の方法で細胞をディフクイック染色用キット(Diff quick staining kit, IMEM Ins., San Marcos, CA, USA)を利用して染色した後、任意に選択した5箇所で死滅細胞を貪食した細胞の数を計数した。
【0098】
実験の結果、対照群であるL/Mock細胞では死滅が誘導されたJurkat T細胞が殆ど貪食されないものの、(図12のa)、L/FEX-2細胞の場合には、多数のJurkat T死滅細胞が貪食されるものとして現われた(図12のb)。又、U937細胞を用いた実験でも類似した結果を得た(結果未図示)。前記L/FEX-2細胞は細胞死滅が誘導されないJurkat T細胞及びU937細胞は貪食されなかった(結果未図示)。
【0099】
<6-3> PSリポソームとFEX-2モノクローナル抗体による死滅細胞貪食抑制
前記実施例<6-2>でL/FEX-2細胞による死滅細胞の貪食がFEX-2が死滅細胞の表面で発現されるホスファチジルセリンを認識することにより、生ずるか否かを確認する為に、PSリポソームとFEX-2モノクローナル抗体がL/FEX-2細胞による死滅細胞の貪食を抑制するか否かを調査した。
【0100】
前記実施例<1-2>のL/FEX-2細胞をDMEM培地を含む6-ウェルプレートで完全に培養した後、前記実施例<2-3>のFEX-2モノクローナル抗体(5G3)100μg/ml、マウス免疫グロブリン(IgG1)100μg/ml、実施例<6-3>のPSリポソーム及びPCリポソーム100μMをそれぞれ添加して前培養した。ここに、前記実施例<6-1>で細胞死滅を誘導したJurkat T細胞又はU937細胞1×106個を添加して37℃で1時間追加して培養した。培養が完了した後、PBSで5回洗浄して細胞を前記実施例<4-1>と同一の方法でディフクイック染色用キット(Diff quick staining kit, IMEM Ins., San Marcos, CA, USA)を用いて染色した後、任意で選択した5箇所で死滅細胞を貪食した細胞の数を計数した。前記にて計数した貪食した細胞の数はL/FEX-2細胞と死滅細胞のみを培養した場合と比較して貪食抑制の程度を百分率で示した。
【0101】
実験の結果、ホスファチジルセリンとFEX-2モノクローナル抗体(5G3)により、L/FEX-2の死滅細胞の貪食が殆ど完璧に抑制された。一方、PCリポソームとマウス免疫グロブリンによっては、貪食の抑制程度が微弱なものとして示された(図13)。
【0102】
これより、FEX-2が老化した細胞のみならず、自然死滅細胞の表面で発現されるホスファチジルセリンを認識して貪食できることが分かった。
【0103】
<6-4> FEX-2モノクローナル抗体の処理に伴うL/FEX-2細胞から分泌される抗炎症性サイトカインの分析
前記実施例<1-2>のL/FEX-2細胞をDMEM培地を含む6-ウェルプレートで完全に培養した後、前記実施例<2-3>のFEX-2モノクローナル抗体(5G3) 100μg/ml又はマウス免疫グロブリン(IgG1)100μg/mlをそれぞれ添加して培養した。培養が完了した後、培地を回収して生成されたTGF-βの量をELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)を利用して測定した。
【0104】
実験の結果、本発明のFEX-2モノクローナル抗体を添加した場合、抗炎症性サイトカインであるTGF-βの生成が促進されることが確認できた(図14)。
【0105】
<実施例7>
大食細胞の表面で発現されるFEX-2による自然死滅細胞の貪食
<7-1> 大食細胞でFEX-2の発現可否の調査
自然死滅細胞及び老化した細胞の貪食に関与する大食細胞からFEX-2が発現するか否かを調査した。この為に、まず、正常の成人の自発的供与者より血液を採取し、前記血液から単核細胞を分離した後、10%の人間の血清が含まれたX-Vivo 10(BioWhitaker)培地で7日間程培養して大食細胞に分化させた後、β-グルカンを処理して活性化させることにより、人間単核細胞から由来した大食細胞(human monocyte derived macrophage, HMDM)を細胞した。その後THP-1人間単核細胞株(韓国細胞株銀行)にPMAを10ng/mlの濃度に処理して72時間培養することにより、大食細胞に分化させた。前記2種類の大食細胞とマウスの大食細胞であるP388D1(韓国細胞株銀行)の細胞の表面にFEX-2が発現されるか否かを前記実施例2のFEX-2モノクローナル抗体(5G3)を利用してフローサイメトリー分析機で分析した。
【0106】
実験の結果、活性化されたHMDM、THP-1及びP388D1大食細胞から全てFEX-2が発現されることが確認できた(図15)。
【0107】
<7-2> PSリポソーム及びFEX-2モノクローナル抗体による大食細胞の自然死滅細胞の貪食抑制
前記実施例<7-1>の3種類の大食細胞の自然死滅細胞の貪食がPSリポソーム及びFEX-2モノクローナル抗体により抑制されるか否かを調査した。
【0108】
まず、前記実施例<7-1>の大食細胞を前記実施例<5-3>のPSリポソーム又は前記実施例<2-3>のFEX-2モノクローナル抗体と30分間前培養した。ここに、前記実施例<6-1>の細胞死滅が誘導されたJurkat T細胞又はU937細胞を1×106個ずつ添加して37℃で1時間追加して培養した。対照群としては前記FEX-2モノクローナル抗体の代わりにマウス免疫グロブリン(IgG1)を使用した。大食細胞の貪食抑制の程度は前記実施例<6-3>と同一の方法で調査した。
【0109】
実験の結果、活性化されたHMDM、THP-1及びP388D1は全てPSリポソームとFEX-2モノクローナル抗体5G3により、貪食が大きく抑制されたものとして示された。一方、マウス免疫グロブリンによっては、殆ど抑制されないものとして示された(図16)。
【0110】
前記実験の結果から、大食細胞の表面に発現するFEX-2が自然死滅細胞のホスファチジルセリンを特異的に認識して大食細胞による自然死滅細胞の付着及び貪食を媒介することが確認できた。
【0111】
<7-3> FEX-2リガンドの処理に伴う大食細胞から分泌される抗炎症性サイトカインの分析
ホスファチジルセリン依存性死滅細胞の貪食は抗炎症性サイトカインのTGF-βの分泌を促進し、炎症性サイトカインのTNF-αの分泌は抑制すると知られている(Fadok V. A. et al., J. Clin. Invest., 101:890-898, 1998; McDonald P. P. et al., J. Immunol. 163:6164-6172, 2000)。ここに、大食細胞の表面に発現されるFEX-2に対する種々のリガンドを活性化された大食細胞に処理し、前記リガンドによる大食細胞の抗炎症性サイトカイン又は炎症性サイトカインの分泌程度を測定した。まず、マウスの大食細胞株J774(韓国細胞株銀行)をLPS(10ng/ml)で処理して刺激させた後、PSリポソーム又はPCリポソーム100μM、老化した赤血球細胞、FEX-2モノクローナル抗体5G3及びマウス免疫グロブリンIgG100μg/mlずつそれぞれ添加し、37℃で18時間培養した。培養が完了して、培地を回収してTGF-β及びTNF-αの量をELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)を利用して測定した。対照群には何等の処理もしなかった。
【0112】
実験の結果、LPSのみを処理して刺激させた大食細胞では炎症性サイトカインであるTNF-αの分泌が増加するものと示された。一方、LPS処理後に老化した赤血球細胞、PSリポソーム及びFEX-2モノクローナル抗体5G3を処理した場合には、大食細胞から抗炎症性サイトカインであるTGF-βの分泌が促進され、炎症性サイトカインであるTNF-αの分泌が減少されるものと示された。一方、PCリポソーム及びマウス免疫グロブリンIgGを処理した場合には、LPSで刺激させた大食細胞と殆ど同一な様相を示した(図17)。
【0113】
これより、大食細胞の表面に発現されるFEX-2タンパク質に対するリガンドとして作用するPSリポソーム及びFEX-2モノクローナル抗体は大食細胞が老化した細胞を貪食する場合と、同一のシグナルが伝達されるようにすることにより、大食細胞の抗炎症性サイトカインの分泌を促進し、炎症を抑制し得ることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明に伴うFEX-2ポリペプチドに特異的なリガンドは貪食細胞の表面に発現されたFEX-2に結合して抗炎症性サイトカインの分泌を促進し、炎症性サイトカインの分泌は抑制し、炎症性疾患が治療又は予防できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】図1は人間FEX-2タンパク質の各ドメインを図示化した模式図である。
【図2】図2はL/FEX-2細胞表面にFEX-2が発現されるか否かをFEX-2モノクローナル抗体を利用してフローサイメトリー分析機で分析した結果である。対照群にはマウス免疫グロブリン(IgG1)を使用した。
【図3】図3はL/FEX-2細胞による老化した赤血球又は正常赤血球の付着及び貪食程度を正常赤血球及びL/Mock細胞と比較した結果である。
【図4】図4はFEX-2モノクローナル抗体による老化した赤血球の付着及び貪食の抑制程度を示した結果である。 None:L/FEX-2細胞に何等の処理もしない場合 5G3 :L/FEX-2細胞をFEX-2モノクローナル抗体と前培養した場合 IgG1:L/FEX-2細胞をマウス免疫グロブリンと前培養した場合
【図5】図5は赤血球の老化に伴うホスファチジルセリンの発現程度をアネキシンV抗体を利用してフローサイメトリー分析機で測定した結果である。
【図6】図6は赤血球の老化に伴うL/FEX-2細胞との付着程度を測定した結果である。
【図7】図7は多くの種類のリン脂質がL/FEX-2細胞に付着される程度を示したグラフである。 PI:ホスファチジルイノシトル、 PE:ホスファチジルエタノールアミン PS:ホスファチジルセリン、 PC:ホスファチジルコリン PA:ホスファチジンサン、 PG:ホスファチジルグリセロール
【図8】図8は多くの種類のリン脂質の処理に伴うL/FEX-2細胞による老化した赤血球の付着及び貪食の抑制程度を示したグラフである。 None:リン脂質を添加もしない。 PI:ホスファチジルイノシトル、 PE:ホスファチジルエタノールアミン PS:ホスファチジルセリン、 PC:ホスファチジルコリン PA:ホスファチジン、 PG:ホスファチジルグリセロール
【図9】図9はホスファチジルセリン又はホスファチジルコリンの添加濃度に伴うL/FEX-2細胞に対する老化した赤血球の付着程度を示したグラフでる。
【図10】図10はホスファチジルセリンの構造的誘導体によるL/FEX-2細胞に対する老化した赤血球の付着及び貪食の抑制程度を示した結果である。 None:リン脂質を添加もしない。 PS :ホスファチジルセリン PDS:ホスホ-D-セリン PLS:ホスホ-L-セリン
【図11】図11は抗Fas-抗体を処理したJurkat T細胞及びエクトポーサイド(ectoposide)を処理したU937細胞において細胞死滅程度をフローサイメトリー分析機で分析した結果である。
【図12】図12はL/FEX-2細胞とL/Mock細胞において自然死滅細胞の貪食程度を観察した写真である。 a:L/Mock細胞 b:L/FEX-2細胞
【図13】図13はホスファチジルセリン又はFEX-2モノクローナル抗体によるL/FEX-2細胞の自然死滅細胞の貪食抑制程度を示したグラフである。 None:無処理 PS :ホスファチジルセリン、 PC :ホスファチジルコリン 5G3 :FEX-2モノクローナル抗体、 IgG1:マウス免疫グロブリン
【図14】図14はL/FEX-2細胞にFEX-2モノクローナル抗体の処理に伴う抗炎症性サイトカインの分泌程度を測定した結果である。 Con:何等の処理もしない対照群 IgG:マウス免疫グロブリンIgG1の処理 5G3:FEX-2モノクローナル抗体の処理
【図15】図15は大食細胞の表面にFEX-2が発現するか否かをFEX-2モノクローナル抗体を利用してフローサイメトリー分析機で分析した結果である。対照群にとしてはマウス免疫グロブリンIgG1を使用した。
【図16】図16はホスファチジルセリン又はFEX-2モノクローナル抗体による大食細胞の死滅細胞の貪食抑制程度を示したグラフである。 PS :ホスファチジルセリン IgG:マウス免疫グロブリン 5G3:FEX-2モノクローナル抗体
【図17】図17はLPSで刺激させたJ774大食細胞株にFEX-2に対する種々の種類のリガンドの処理に伴う抗炎症性サイトカイン及び炎症性サイトカインの分泌程度を測定した結果である。 対照群 :何等の処理もしない。 LPS :LPSで刺激する。 LPS+AR :LPSで刺激した後老化した赤血球を処理した。 LPS+PC :LPSで刺激した後ホスファチジルコリンリポソームを処理する。 LPS+PS :LPSで刺激した後ホスファチジルセリンリポソームを処理する。 LPS+IgG:LPSで刺激した後マウス免疫グロブリンを処理する。 LPS+5G3:LPSで刺激した後FEX-2モノクローナル抗体を処理する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FEX-2ポリペプチドに特異的なリガンド(ligand)の有効量を、これを必要とする個体(subject)に投与することを含む、個体で炎症と関係のあるサイトカイン(cytokine associated with inflammation)の分泌を調節する方法。
【請求項2】
前記サイトカインは貪食細胞で分泌されることを特徴とする第1項に記載の方法。
【請求項3】
前記サイトカインの分泌調節は抗炎症性サイトカインの分泌を促進するか及び/又は炎症性サイトカインの分泌を抑制することを特徴とする第1項に記載の方法。
【請求項4】
前記抗炎症性サイトカインはTGF-β、IL-10、IL-4及びIL-13からなる群より選ばれることを特徴とする第3項に記載の方法。
【請求項5】
前記炎症性サイトカインはTNF-α、IL-1、IL-6、IL-8、IL-18及びMIP2からなる群より選ばれることを特徴とする第3項に記載の方法。
【請求項6】
前記FEX-2ポリペプチドは哺乳動物から由来したものであることを特徴とする第1項に記載の方法。
【請求項7】
前記FEX-2ポリペプチドは、配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする第1項に記載の方法。
【請求項8】
前記FEX-2ポリペプチドは、貪食細胞の表面で発現することを特徴とする第1項に記載の方法。
【請求項9】
前記リガンドはホスファチジルセリン、抗-FEX-2抗体、及びその誘導体からなる群より選ばれることを特徴とする第1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ホスファチジルセリンの誘導体はホスホ-L-セリンであることを特徴とする第9項に記載の方法。
【請求項11】
前記抗-FEX-2抗体はポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体であることを特徴とする第9項に記載の方法。
【請求項12】
前記モノクローナル抗体はハイブリドーマ(寄託番号:KCTC 10639BP)により生成されたものであることを特徴とする第11項に記載の方法。
【請求項13】
FEX-2ポリペプチドに特異的なリガンド(ligand)の有効量を、これを必要とする個体(subject)に投与することを含む、炎症性疾患を治療又は予防する方法。
【請求項14】
前記FEX-2ポリペプチドは哺乳動物から由来したものであることを特徴とする第13項に記載の方法。
【請求項15】
前記FEX-2ポリペプチドは配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする第13項に記載の方法。
【請求項16】
前記FEX-2ポリペプチドは貪食細胞の表面で発現するものであることを特徴とする第13項に記載の方法。
【請求項17】
前記リガンドはホスファチジルセリン、抗-FEX-2抗体、及びその誘導体からなる群より選ばれることを特徴とする第13項に記載の方法。
【請求項18】
前記ホスファチジルセリンの誘導体はホスホ-L-セリンであることを特徴とする第17項に記載の方法。
【請求項19】
前記抗-FEX-2抗体はポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体であることを特徴とする第17項に記載の方法。
【請求項20】
前記モノクローナル抗体はハイブリドーマ(寄託番号:KCTC 10639BP)により生成されたものであることを特徴とする第19項に記載の方法。
【請求項21】
前記炎症性疾患は炎症、炎症性腸疾患、糖尿性眼疾患、腹膜炎、骨髄炎、蜂巣織炎、脳膜炎、脳炎、膵臓炎、外傷誘発ショック、気管支喘息、鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、肺炎、胃炎、腸炎、嚢疱性繊維症、卒中、気管支炎、細気管支炎、肝臓炎、腎臓炎、関節炎、通風、脊椎炎、ライター症候群、結節性多発動脈炎、過敏性血管炎、ルゲニック肉芽腫症、リウマチ性多発性筋肉痛、関節細胞動脈炎、カルシウム結晶沈着関節病症、仮性通風、非関節リウマチズム、粘液嚢炎、腱鞘炎、上顆炎(テニスエルボー)、神経病症性関節疾患(Charcot's joint)、出血性関節症(hemarthro sis)、ヘノフシェンライン紫斑病、鼻喉性骨関節病症、多重芯性細網組織球腫、側湾症(scoliosis)、血色素症、鎌状赤血球症及びその他の血色素症、高脂蛋白血症、低ガンマグロブリン血症、副甲状腺機能亢進症、末端巨大症、家族性地中海熱、ベハト病、全身性紅斑性ループス、再帰熱、乾癬、多発性硬化症、敗血症、敗血性ショック、急性呼吸困難症候群、多発性臓器不全、慢性閉鎖性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)、急性肺損傷(acute lung injury)及び気管支肺形成障害(broncho-pulmonary dysplasia)のグループの中で選ばれたことを特徴とする第13項に記載の方法。
【請求項22】
(a)FEX-2を発現する貪食細胞と試験製剤を一緒に培養する段階;及び
(b)試験製剤無く培養された貪食細胞から分泌されるサイトカインの水準に対する試験製剤と共に培養された貪食細胞から分泌されるサイトカインの水準の相対的な変化を測定する段階を含む、炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する製剤のスクリーニング方法。
【請求項23】
前記(b)段階の貪食細胞で分泌されるサイトカインはTGF-β又はTNF-αであることを特徴とする第22項に記載の方法。
【請求項24】
(a)FEX-2を発現する貪食細胞と試験製剤を一緒に培養する段階;及び
(b)試験製剤無く培養された貪食細胞から分泌されるサイトカインの水準に対する試験製剤と共に培養された貪食細胞から分泌されるサイトカインの水準の相対的な変化を測定する段階;及び
(c)前記(b)で選ばれた貪食細胞から、分泌されるサイトカインの水準を調節する試験製剤を炎症性疾患を有している動物に投与して、前記試験製剤が前記動物において治療効果を呈しているか否かを検査する段階を含む炎症性疾患の治療又は予防用製剤の同定(identifying)方法。
【請求項25】
前記(b)段階の貪食細胞で分泌されるサイトカインはTGF-β又はTNF-αであることを特徴とする第24項に記載の方法。
【請求項26】
前記(b)段階の試験製剤は抗炎症性サイトカインの分泌を促進するか、及び/又は炎症性サイトカインの分泌を抑制する活性を有することを特徴とする第24項に記載の方法。
【請求項27】
炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する薬学的組成物の製造の為のFEX-2ポリペプチドに特異的なリガンド(ligand)の用途。
【請求項28】
炎症性疾患の治療又は予防用薬学的組成物の製造の為のFEX-2ポリペプチドに特異的なリガンド(ligand)の用途。
【請求項29】
FEX-2ポリペプチドに特異的なリガンド(ligand)を有効成分として含む、炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する薬学的組成物。
【請求項30】
FEX-2ポリペプチドに特異的なリガンド(ligand)を有効成分として含む、炎症性疾患の治療又は予防用薬学的組成物。
【請求項1】
FEX-2ポリペプチドに特異的なリガンド(ligand)の有効量を、これを必要とする個体(subject)に投与することを含む、個体で炎症と関係のあるサイトカイン(cytokine associated with inflammation)の分泌を調節する方法。
【請求項2】
前記サイトカインは貪食細胞で分泌されることを特徴とする第1項に記載の方法。
【請求項3】
前記サイトカインの分泌調節は抗炎症性サイトカインの分泌を促進するか及び/又は炎症性サイトカインの分泌を抑制することを特徴とする第1項に記載の方法。
【請求項4】
前記抗炎症性サイトカインはTGF-β、IL-10、IL-4及びIL-13からなる群より選ばれることを特徴とする第3項に記載の方法。
【請求項5】
前記炎症性サイトカインはTNF-α、IL-1、IL-6、IL-8、IL-18及びMIP2からなる群より選ばれることを特徴とする第3項に記載の方法。
【請求項6】
前記FEX-2ポリペプチドは哺乳動物から由来したものであることを特徴とする第1項に記載の方法。
【請求項7】
前記FEX-2ポリペプチドは、配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする第1項に記載の方法。
【請求項8】
前記FEX-2ポリペプチドは、貪食細胞の表面で発現することを特徴とする第1項に記載の方法。
【請求項9】
前記リガンドはホスファチジルセリン、抗-FEX-2抗体、及びその誘導体からなる群より選ばれることを特徴とする第1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ホスファチジルセリンの誘導体はホスホ-L-セリンであることを特徴とする第9項に記載の方法。
【請求項11】
前記抗-FEX-2抗体はポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体であることを特徴とする第9項に記載の方法。
【請求項12】
前記モノクローナル抗体はハイブリドーマ(寄託番号:KCTC 10639BP)により生成されたものであることを特徴とする第11項に記載の方法。
【請求項13】
FEX-2ポリペプチドに特異的なリガンド(ligand)の有効量を、これを必要とする個体(subject)に投与することを含む、炎症性疾患を治療又は予防する方法。
【請求項14】
前記FEX-2ポリペプチドは哺乳動物から由来したものであることを特徴とする第13項に記載の方法。
【請求項15】
前記FEX-2ポリペプチドは配列番号1で表示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする第13項に記載の方法。
【請求項16】
前記FEX-2ポリペプチドは貪食細胞の表面で発現するものであることを特徴とする第13項に記載の方法。
【請求項17】
前記リガンドはホスファチジルセリン、抗-FEX-2抗体、及びその誘導体からなる群より選ばれることを特徴とする第13項に記載の方法。
【請求項18】
前記ホスファチジルセリンの誘導体はホスホ-L-セリンであることを特徴とする第17項に記載の方法。
【請求項19】
前記抗-FEX-2抗体はポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体であることを特徴とする第17項に記載の方法。
【請求項20】
前記モノクローナル抗体はハイブリドーマ(寄託番号:KCTC 10639BP)により生成されたものであることを特徴とする第19項に記載の方法。
【請求項21】
前記炎症性疾患は炎症、炎症性腸疾患、糖尿性眼疾患、腹膜炎、骨髄炎、蜂巣織炎、脳膜炎、脳炎、膵臓炎、外傷誘発ショック、気管支喘息、鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、肺炎、胃炎、腸炎、嚢疱性繊維症、卒中、気管支炎、細気管支炎、肝臓炎、腎臓炎、関節炎、通風、脊椎炎、ライター症候群、結節性多発動脈炎、過敏性血管炎、ルゲニック肉芽腫症、リウマチ性多発性筋肉痛、関節細胞動脈炎、カルシウム結晶沈着関節病症、仮性通風、非関節リウマチズム、粘液嚢炎、腱鞘炎、上顆炎(テニスエルボー)、神経病症性関節疾患(Charcot's joint)、出血性関節症(hemarthro sis)、ヘノフシェンライン紫斑病、鼻喉性骨関節病症、多重芯性細網組織球腫、側湾症(scoliosis)、血色素症、鎌状赤血球症及びその他の血色素症、高脂蛋白血症、低ガンマグロブリン血症、副甲状腺機能亢進症、末端巨大症、家族性地中海熱、ベハト病、全身性紅斑性ループス、再帰熱、乾癬、多発性硬化症、敗血症、敗血性ショック、急性呼吸困難症候群、多発性臓器不全、慢性閉鎖性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)、急性肺損傷(acute lung injury)及び気管支肺形成障害(broncho-pulmonary dysplasia)のグループの中で選ばれたことを特徴とする第13項に記載の方法。
【請求項22】
(a)FEX-2を発現する貪食細胞と試験製剤を一緒に培養する段階;及び
(b)試験製剤無く培養された貪食細胞から分泌されるサイトカインの水準に対する試験製剤と共に培養された貪食細胞から分泌されるサイトカインの水準の相対的な変化を測定する段階を含む、炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する製剤のスクリーニング方法。
【請求項23】
前記(b)段階の貪食細胞で分泌されるサイトカインはTGF-β又はTNF-αであることを特徴とする第22項に記載の方法。
【請求項24】
(a)FEX-2を発現する貪食細胞と試験製剤を一緒に培養する段階;及び
(b)試験製剤無く培養された貪食細胞から分泌されるサイトカインの水準に対する試験製剤と共に培養された貪食細胞から分泌されるサイトカインの水準の相対的な変化を測定する段階;及び
(c)前記(b)で選ばれた貪食細胞から、分泌されるサイトカインの水準を調節する試験製剤を炎症性疾患を有している動物に投与して、前記試験製剤が前記動物において治療効果を呈しているか否かを検査する段階を含む炎症性疾患の治療又は予防用製剤の同定(identifying)方法。
【請求項25】
前記(b)段階の貪食細胞で分泌されるサイトカインはTGF-β又はTNF-αであることを特徴とする第24項に記載の方法。
【請求項26】
前記(b)段階の試験製剤は抗炎症性サイトカインの分泌を促進するか、及び/又は炎症性サイトカインの分泌を抑制する活性を有することを特徴とする第24項に記載の方法。
【請求項27】
炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する薬学的組成物の製造の為のFEX-2ポリペプチドに特異的なリガンド(ligand)の用途。
【請求項28】
炎症性疾患の治療又は予防用薬学的組成物の製造の為のFEX-2ポリペプチドに特異的なリガンド(ligand)の用途。
【請求項29】
FEX-2ポリペプチドに特異的なリガンド(ligand)を有効成分として含む、炎症と関係のあるサイトカインの分泌を調節する薬学的組成物。
【請求項30】
FEX-2ポリペプチドに特異的なリガンド(ligand)を有効成分として含む、炎症性疾患の治療又は予防用薬学的組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2008−515967(P2008−515967A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536612(P2007−536612)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【国際出願番号】PCT/KR2005/003404
【国際公開番号】WO2006/080757
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(507119515)ギョングブク ナショナル ユニヴァシティ インダストリー−アカデミック コーポレーション フォンデション (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【国際出願番号】PCT/KR2005/003404
【国際公開番号】WO2006/080757
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(507119515)ギョングブク ナショナル ユニヴァシティ インダストリー−アカデミック コーポレーション フォンデション (2)
【Fターム(参考)】
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