説明

GM−CSFアンタゴニストを用いて慢性炎症性疾患を治療する方法

本発明は、関節リウマチなどの慢性炎症性疾患の治療にGM-CSFアンタゴニストを使用できるという発見に基づく。したがって、本発明は、GM-CSFアンタゴニスト、例えばGM-CSF抗体、および抗葉酸化合物、例えばメトトレキサートをRA患者に投与する方法、ならびにそのようなアンタゴニストを含む薬学的組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年11月21日に出願した米国特許仮出願第60/860,780号;および2007年2月21日に出願した米国特許仮出願第60/902,742号の恩典を主張し、これらの出願はそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
関節リウマチ(RA)は、世界中の成人人口の最大1%が罹患している、慢性でかつ典型的に進行性の炎症性疾患である(Gabriel, Rheum Dis Clin North Am 27:269-81, 2001(非特許文献1))。RAの治療に関する現在の推奨には、診断が確定された後の、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)による早期治療が含まれる。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)および最近まではCOX-2阻害薬が、診断の確認を待機しながら、またはDMARDと併用して疾患の後期に広く使用されてきた。メトトレキサートが最も広く使用されているDMARDであるが、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、金、ミノサイクリン、およびレフルノミドを含むその他の薬剤も処方される。DMARDと併用して副腎皮質ステロイドを使用してもよいが、一般には、有害事象を最小限に抑えるために低用量のみが用いられる(O’Dell, New Engl. J. Med. 350:2591-2603, 2004(非特許文献2))。
【0003】
最近になって、いくつかの新規な生物学的製剤がRA治療に認可された。エタネルセプト(Enbrel(登録商標))は腫瘍壊死因子α(TNF-α)を遮断し;インフリキシマブおよびアダリムマブ(それぞれ、Remicade(登録商標)およびHumira(登録商標))はTNF-αおよびTNF-βを遮断し;アナキンラ(Kineret(登録商標))はIL-1の阻害薬である。これらの薬剤は迅速に作用し、疾患修飾性である(関節/骨侵食を遅延させる)ことが示されている(Olsen & Stein, New Engl. J. Med 350:2167-2179, 2004(非特許文献3))。しかし、これらの治療法にはいくつかの問題が残っている。TNF阻害薬に対して適切な反応を得ない患者もいる。さらに、患者によっては、TNF阻害薬の治療有益性が時間と共に失われる。TNF経路の遮断は、結核の再活性化、ならびに重篤な感染、脱髄、および(RA患者は一般集団よりもリンパ腫のリスクが高いが)リンパ腫のリスクの増加にも関連している。アナキンラは半減期が短く、連日注射として施与しなければならず、したがって、第一選択生物学的治療法として、長時間作用型のTNF阻害薬よりも使用頻度が低い。
【0004】
RA患者におけるメトトレキサートと併用した、モノクローナル抗CD20抗体であるリツキシマブ(Mabthera(登録商標))の使用に関する最近のデータから、抗体を2回注入した後の長期間にわたる有益性が示された(Edwards et al., New Engl. J. Med 350: 2572-2581, 2004(非特許文献4))。
【0005】
メトトレキサートは、RAおよび他の炎症性関節炎疾患、ならびに乾癬および全身性エリテマトーデスを含む自己免疫徴候を治療するためのDMARDとして用いられる。メトトレキサートは、乾癬性関節炎および若年性特発性関節炎を治療するのに特に有効である。この薬剤はまた、炎症性関節炎の治療に推奨されるよりも高い用量で、癌の化学療法において用いられる。化学療法において使用する場合、メトトレキサートは骨髄抑制を引き起こし、特に、副腎皮質ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、シクロスポリン、トリメトプリム、および特定の抗生物質を含むいくつかの他の薬剤のいずれかと併用した場合には、あらゆる種類の血液細胞の産生減少をもたらし得る。メトトレキサートは一般に、関節炎(または乾癬)の治療に使用される投与計画において耐容性が良好であるが、メトトレキサートはこのような低用量でさえも骨髄抑制および特に好中球減少を引き起こし得る。例えば、症例報告では(Sosin & Handa, Brit. Med. J. 326: 266-267, 2003(非特許文献5))、週用量5 mg〜17.5 mgのメトトレキサートで治療した患者で好中球減少が報告された。英国リウマチ学会の指針(2000年7月)などの、RAにおけるメトトレキサート投薬に関する推奨は、毎週7.5 mgのメトトレキサートであり、6週間ごとに2.5 mgずつ最大週用量25 mgまで増量するものである。このように、特に併用療法により、推奨される最大用量よりも有意に低い用量のこれらの患者において、好中球減少が生じた。
【0006】
メトトレキサートを含む化学療法では、血中の低い好中球レベルを正し、それによって好中球減少の持続および重症度を軽減するために、GM-CSFが処方され得る(Am. Soc. Clin. Onc. 2006, J. Clin. Oncol. 24: July 1st 2006(非特許文献6))。この臨床設定において、GM-CSFは、顆粒球(好中球を含む)およびマクロファージの産生を増強するための造血増殖因子として用いられる。例えば、癌患者に対するGM-CSFの短期投与は、好中球数の急速な増加をもたらすことができ、メトトレキサートを含む化学療法レジメンで治療した患者における好中球減少を軽減する(Aglietta et al., Cancer 72: 2970-2973, 1993(非特許文献7))。メトトレキサートによる好中球減少の治療においてGM-CSFの有効性が確立されていることは、特にメトトレキサートで同時に治療されているか、または以前に治療された患者において、GM-CSFの拮抗作用が逆の影響を及ぼす恐れがある、すなわちGM-CSF拮抗作用が好中球減少に寄与する恐れがあるという懸念をもたらす。
【0007】
好中球減少は、サイトカインアンタゴニストを含む、炎症性関節炎のためのいくつかの現在の治療法の顕著でかつ重篤な副作用である。IL-1アンタゴニストであるアナキンラは、単独でおよび特にTNF-アンタゴニストと併用した場合に、好中球減少のリスクを高める(Fleischmann et al., Expert Opinion Biol Ther. 4:1333, 2004(非特許文献8))。インフリキシマブもまた、好中球減少のリスク増加と関連づけられている。
【0008】
現在、特にメトトレキサートなどの抗葉酸化合物の投与を受けている患者において、RAの追加治療が必要とされている。本発明はこの必要性に取り組むものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Gabriel, Rheum Dis Clin North Am 27:269-81, 2001
【非特許文献2】O’Dell, New Engl. J. Med. 350:2591-2603, 2004
【非特許文献3】Olsen & Stein, New Engl. J. Med 350:2167-2179, 2004
【非特許文献4】Edwards et al., New Engl. J. Med 350: 2572-2581, 2004
【非特許文献5】Sosin & Handa, Brit. Med. J. 326: 266-267, 2003
【非特許文献6】Am. Soc. Clin. Onc. 2006, J. Clin. Oncol. 24: July 1st 2006
【非特許文献7】Aglietta et al., Cancer 72: 2970-2973, 1993
【非特許文献8】Fleischmann et al., Expert Opinion Biol Ther. 4:1333, 2004
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
本発明は、GM-CSFアンタゴニストを使用して、例えばRAといった炎症性関節炎状態などの慢性炎症状態に罹患している患者を治療する方法を提供する。典型的な態様では、好中球減少を引き起こさない量で、GM-CSFアンタゴニストを、抗葉酸化合物、例えばメトトレキサートと併用して投与する。いくつかの態様において、GM-CSFアンタゴニストは組換えによって産生させたものであり、例えば組換えモノクローナル抗体である。他の態様では、GM-CSFアンタゴニスト、例えばヒト血漿由来の精製抗GM-CSFを天然源から精製する。
【0011】
1つの局面において、本発明は、慢性炎症性疾患、例えば関節リウマチに罹患している患者を治療する方法であって、患者に抗葉酸化合物、例えばメトトレキサートを投与する段階、およびGM-CSFアンタゴニストを投与する段階を含み、慢性炎症性疾患の症状を軽減するのに十分な量であるが、好中球減少を誘発しない量の抗葉酸化合物、例えばメトトレキサート、およびGM-CSFアンタゴニストを提供する方法を提供する。GM-CSFアンタゴニストは、例えば、抗GM-CSF抗体、抗GM-CSF受容体抗体;可溶性GM-CSF受容体;シトクロムb562抗体模倣体;アドネクチン(adnectin)、リポカリン骨格抗体模倣体;カリックスアレーン抗体模倣体、または抗体様結合ペプチド模倣体であってよい。
【0012】
多くの態様において、GM-CSFアンタゴニストはGM-CSFに対する抗体、すなわち抗GM-CSF抗体である。種々の態様において、抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、またはナノボディもしくはラクダ科動物抗体などの抗体であってよい。いくつかの態様において、抗体は、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、またはドメイン抗体(dAB)などの抗体断片である。抗体は、例えば安定性を向上させるために修飾することができる。したがって、いくつかの態様では、抗体をポリエチレングリコールに結合させる。
【0013】
いくつかの態様において、抗体は、約100 pM〜約10 nM、例えば約100 pM、約200 pM、約300 pM、約400 pM、約500 pM、約600 pM、約700 pM、約800 pM、約900 pM、または約1 nM〜約10 nMの親和性を有する。さらなる態様において、抗体は、約1 pM〜約100 pMの親和性、例えば約1 pM、約5 pM、約10 pM、約15 pM、約20 pM、約25 pM、約30 pM、約40 pM、約50 pM、約60 pM、約70 pM、約80 pM、または約90 pM〜約100 pMの親和性を有する。いくつかの態様において、抗体は約10〜約30 pMの親和性を有する。
【0014】
いくつかの態様において、抗体は中和抗体である。さらなる態様において、抗体は組換え抗体またはキメラ抗体である。いくつかの態様において、抗体はヒト抗体である。いくつかの態様において、抗体はヒト可変領域を含む。いくつかの態様において、抗体はヒト軽鎖定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体は、γ鎖などのヒト重鎖定常領域を含む。
【0015】
さらなる態様において、抗体は、キメラ19/2抗体と同じエピトープに結合する。抗体は、例えばキメラ19/2のVH領域およびVL領域を含み得る。抗体はまた、γ領域などのヒト重鎖定常領域を含み得る。いくつかの態様において、抗体は、キメラ19/2のVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。さらなる態様において、抗体は、キメラ19/2のVL領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。付加的な態様において、抗体は、キメラ19/2抗体のVH領域およびVL領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。いくつかの態様において、抗体は、キメラ19/2のVH領域CDR3およびVL領域CDR3を含む。
【0016】
いくつかの態様において、抗体は約7〜約25日の半減期を有する。
【0017】
本発明の方法のいくつかの態様では、GM-CSFアンタゴニスト、例えば抗GMCSF抗体を注射によりまたは注入により投与する。例えば、GM-CSFアンタゴニストを約15分〜約2時間かけて静脈内投与することができる。
【0018】
他の態様では、GM-CSFアンタゴニストをボーラス注射によって皮下投与する。
【0019】
さらなる態様では、GM-CSFアンタゴニストを筋肉内投与する。
【0020】
GM-CSF抗体は、例えば、約1 mg/kg体重〜約10 mg/kg体重の用量で投与することができる。
【0021】
いくつかの態様において、GM-CSFアンタゴニストによる治療は、GM-CSFアンタゴニストの二次投与を含む。
【0022】
本発明はまた、治療的有効量の本明細書に記載される抗GM-CSF抗体を投与する段階を含む、慢性炎症性疾患、例えば関節リウマチを治療する方法を提供する。いくつかの態様では、抗GM-CSFアンタゴニスト、例えば抗GM-CSF抗体を、アルツハイマー病などの神経変性疾患を有する患者に投与する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
定義
本明細書で使用する「慢性炎症性疾患」とは、持続期間の長い炎症反応を伴う疾患を指す。場合によって、炎症反応は何週間も、何ヵ月も、またはさらに無期限に持続し得る。炎症反応の長期持続は、炎症反応への持続的な刺激によって誘発される頻度が高い。炎症反応は組織損傷を引き起こす。慢性炎症は、急性炎症の進行の結果であり得る。慢性炎症はまた、急性炎症の反復エピソード後に続いて起こり得るか、または新規に発症し得る。いくつかの炎症性疾患が、持続的な病原体感染、酵素による分解もしくは食作用によって除去され得ない刺激性非生物異物、または非自己として認識される「正常」組織成分(最も頻繁に、自己免疫疾患と関連している)と関連していることが見出された。慢性炎症の組織学的所見は、高頻度で混合炎症細胞浸潤物を含み、この浸潤物はほとんどの場合に、考えられる微量成分として好中球および好酸球多形を伴う(好中球および好酸球多形は多数が急性炎症と関連している)マクロファージ、リンパ球、および形質細胞の存在を伴う。炎症性疾患の例には、関節炎、例えばRA、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎、および関節の他の炎症性疾患;炎症性腸疾患、例えば潰瘍性大腸炎、クローン病、バレット症候群、回腸炎、腸炎、およびグルテン過敏性腸症;呼吸器系の炎症障害、例えば喘息、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー性鼻炎、珪肺症、慢性閉塞性気道疾患、過敏性肺疾患、気管支拡張症など;皮膚の炎症性疾患、例として乾癬、強皮症、および炎症性皮膚疾患(湿疹、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、およびそう痒症など);中枢神経系および末梢神経系の炎症を含む障害、例として多発性硬化症、特発性脱髄性多発ニューロパチー、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、およびアルツハイマー病などの神経変性疾患が含まれる。種々の他の炎症性疾患も、本発明の方法を用いて治療することができる。これらには、全身性エリテマトーデス、例えば糸球体腎炎といった免疫媒介性腎疾患、および脊椎関節症;ならびに望ましくない慢性炎症性成分を伴う疾患、例えば全身性硬化症、特発性炎症性筋疾患、シェーグレン症候群、血管炎、サルコイドーシス、甲状腺炎、痛風、耳炎、結膜炎、副鼻腔炎、サルコイドーシス、ベーチェット症候群、肝胆道疾患(例えば、肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、および硬化性胆管炎)など;循環系に対する炎症および虚血傷害、例えば虚血性心疾患、発作、およびアテローム性動脈硬化症など;ならびに移植片拒絶、例として同種移植片拒絶および移植片対宿主病が含まれる。種々の他の炎症性疾患には、結核および慢性胆嚢炎が含まれる。さらなる慢性炎症性疾患は、例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine, 12th Edition, Wilson, et al., eds., McGraw-Hill, Inc.に記載されている。
【0024】
「関節リウマチ」(RA)という用語は、自己免疫障害として発症し、関節の慢性炎症を伴う慢性炎症性疾患を指す。高い頻度で、炎症は関節を取り囲む組織およびその他の器官に伝播する。典型的にRAは、関節破壊および機能的身体障害を引き起こし得る進行性疾患である。RAに付随する関節の炎症は、関節の腫脹、疼痛、こわばり、および発赤を引き起こす。リウマチ性疾患の炎症は、腱、靱帯、および筋肉などの関節の周辺組織でも起こり得る。RA患者によっては、慢性炎症は軟骨、骨、および靱帯の破壊を招き、関節の変形を引き起こす。関節に対する損傷は疾患の初期に起こり得、進行性であり得る。関節に対する進行性損傷は、関節に存在する疼痛、こわばり、または腫脹の程度と必ずしも相関しない。
【0025】
本明細書で使用する「顆粒球マクロファージコロニー刺激因子」(GM-CSF)とは、分子量約23 kDaの、内部ジスルフィド結合を有する小さな天然糖タンパク質を指す。ヒトでは、これはヒト第5染色体上のサイトカインクラスター内に位置する遺伝子によってコードされる。ヒトの遺伝子およびタンパク質の配列は公知である。タンパク質は、N末端シグナル配列およびC末端受容体結合ドメインを有する(Rasko and Gough In: The Cytokine Handbook, A. Thomson, et al, Academic Press, New York (1994) pages 349-369)。その三次元構造はインターロイキンのものに類似しているが、アミノ酸配列は類似していない。GM-CSFは、造血環境および炎症の周辺部位に存在する間葉細胞により、いくつかの炎症性メディエータに応答して産生される。GM-CSFは、骨髄細胞からの好中性顆粒球、マクロファージ、および顆粒球-マクロファージ混合コロニーの産生を促進することができ、胎児肝前駆細胞からの好酸球コロニーの形成を促進することができる。GM-CSFは、成熟顆粒球およびマクロファージにおいて何らかの機能活性を促進することもできる。
【0026】
「顆粒球マクロファージコロニー刺激因子受容体」(GM-CSFR)という用語は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)と結合した場合にシグナルを伝達する、細胞上に発現される膜結合型受容体を指す。GM-CSFRは、リガンド特異的低親和性結合鎖(GM-CSFRα)、および高親和性結合およびシグナル伝達に必要な第2鎖からなる。第2鎖は、インターロイキン3(IL-3)受容体およびIL-5受容体のリガンド特異的α鎖によって共有され、よってβ共通(βc)と称される。GM-CSFRαの細胞質領域は、α1およびα2アイソフォームによって共有される膜近位保存領域、ならびにα1とα2とで異なるC末端可変領域からなる。β-cの細胞質領域は、膜近位セリン、およびGM-CSFによって誘導される増殖応答に重要な酸性ドメインを含む。
【0027】
「可溶性顆粒球マクロファージコロニー刺激因子受容体」(sGM-CSFR)という用語は、GM-CSFと結合するが、リガンドと結合した場合にシグナルを伝達しない非膜結合型受容体を指す。
【0028】
本明細書で使用する「ペプチドGM-CSFアンタゴニスト」とは、GM-CSFまたはその受容体と相互作用して、GM-CSFの、細胞上に発現されたその同族受容体への結合によって本来起こるシグナル伝達を(部分的または完全に)減少させるまたは遮断するペプチドを指す。GM-CSFアンタゴニストは、受容体との結合に利用可能なGM-CSFリガンドの量を減少させることによって作用し得るか(例えば、GM-CSFに一度結合した抗体は、GM-CSFのクリアランス速度を増加させる)、またはGM-CSFもしくは受容体に結合することによってリガンドがその受容体に結合するのを妨げ得る(例えば、中和抗体)。GM-CSFアンタゴニストには他のペプチド阻害剤も含まれてよく、これには、GM-CSFまたはその受容体と結合して、シグナル伝達を部分的または完全に阻害するポリペプチドが含まれ得る。ペプチドGM-CSFアンタゴニストは、例えば、抗体;GM-CSFと拮抗する天然または合成GM-CSF受容体リガンド、または他のポリペプチドであってよい。GM-CSFアンタゴニスト活性を検出するための例示的なアッセイ法を実施例1に提供する。典型的に、中和抗体などのペプチドGM-CSFアンタゴニストは、10 nMまたはそれ未満のEC50を有する。
【0029】
本明細書で使用する「精製」GM-CSFアンタゴニストとは、その天然状態において見出される通常それに付随する成分を実質的にまたは本質的に含まないGM-CSFアンタゴニストを指す。例えば、血液または血漿から精製された抗GM-CSF抗体などのGM-CSFアンタゴニストは、他の免疫グロブリン分子などの他の血液または血漿成分を実質的に含まない。純度および均一性は典型的に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学技法を用いて決定する。調製物中に存在する主な種であるタンパク質は、実質的に精製されている。典型的に、「精製された」とは、天然でタンパク質と共に存在する成分と比較して、タンパク質が少なくとも85%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、最も好ましくは少なくとも99%純粋であることを意味する。
【0030】
本明細書で使用する「抗体」とは、結合タンパク質として機能的に定義され、抗体を産生する動物の免疫グロブリンコード遺伝子のフレームワーク領域に由来すると当業者によって認識されるアミノ酸配列を含むとして構造的に定義されるタンパク質である。抗体は、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子の断片によって実質的にコードされる1つまたは複数のポリペプチドからなり得る。認識されている免疫グロブリン遺伝子にはκ、λ、α、γ、δ、ε、およびμ定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖はκまたはλのいずれかに分類される。重鎖はγ、μ、α、δ、またはεに分類され、これらはそれぞれ免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを規定する。
【0031】
典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含むことが知られている。各四量体は2つの同じポリペプチド鎖対からなり、各対は1本の「軽」鎖(約25 kD)および1本の「重」鎖(約50〜70 kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識を担う約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を規定する。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語は、それぞれこれらの軽鎖および重鎖を指す。
【0032】
本明細書で使用する「抗体」という用語は、結合特異性を保持する抗体断片も含む。例えば、いくつかの十分に特徴づけられた抗体断片が存在する。したがって、例えば、ペプシンはヒンジ領域内のジスルフィド結合の下方で抗体を消化して、それ自体ジスルフィド結合によりVH-CH1に結合している軽鎖であるFabの二量体であるF(ab)'2を生成する。F(ab)'2を穏和な条件下で還元してヒンジ領域のジスルフィド結合を切断し、それにより(Fab')2二量体からFab'単量体に変換することができる。Fab'単量体は、本質的にヒンジ領域の部分を伴うFabである(他の抗体断片のより詳細な説明については、Fundamental Immunology, W.E. Paul, ed., Raven Press, N.Y. (1993)を参照されたい)。無傷の抗体の消化に関して様々な抗体断片が規定されるが、当業者は、化学的にまたは組換えDNA方法論を用いることによりそのような断片を新規に合成できることを理解するであろう。したがって、本明細書で使用する抗体という用語はまた、全抗体の修飾によって生成される、または組換えDNA方法論を用いて合成される抗体断片を含む。
【0033】
抗体には、可変重鎖領域と可変軽鎖領域が共に結合して(直接またはペプチドリンカーを介して)、連続したポリペプチドを形成する一本鎖Fv抗体(sFvまたはscFv)のような一本鎖抗体(単一のポリペプチド鎖として存在する抗体)を含む、VH-VL二量体、VH二量体、またはVL二量体が含まれる。一本鎖Fv抗体は、直接結合しているか、またはペプチドコードリンカーによって結合しているVHおよびVLコード配列を含む核酸から発現され得る、共有結合したVH-VLヘテロ二量体である(例えば、Huston, et al. Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883, 1988)。VHとVLは単一ポリペプチド鎖として互いに結合しているが、VHおよびVLドメインは非共有結合によって会合する。または、抗体は、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)などの別の断片であってもよい。組換え技法の使用を含めて、他の断片を作製することもできる。自然に凝集するが化学的に分離している抗体V領域由来の軽鎖および重鎖ポリペプチド鎖を、抗原結合部位の構造と実質的に類似した三次元構造に折りたたまれる分子に変換する、scFv抗体およびいくつかの他の構造が当業者に公知である(例えば、米国特許第5,091,513号、第5,132,405号、および第4,956,778号を参照されたい)。いくつかの態様において、抗体には、ファージ上に提示されている、または鎖が可溶性タンパク質、例えばscFv、Fv、Fab、(Fab')2として分泌されるベクターを用いる組換え技術によって作製される、または鎖が可溶性タンパク質として分泌されるベクターを用いる組換え技術によって作製される抗体が含まれる。本発明において使用するための抗体には、二抗体(diantibody)およびミニ抗体も含まれ得る。
【0034】
本発明の抗体には、ラクダ科動物由来の抗体のような重鎖二量体も含まれる。ラクダ科動物における重鎖二量体IgGのVH領域は軽鎖と疎水性相互作用を形成する必要がないため、通常では軽鎖と接触する重鎖内の領域は、ラクダ科動物では親水性アミノ酸残基に変化している。重鎖二量体IgGのVHドメインはVHHドメインと称される。本発明において使用するための抗体には、単一ドメイン抗体(dAb)およびナノボティも含まれる(例えば、Cortez-Retamozo, et al., Cancer Res. 64:2853-2857, 2004を参照されたい)。
【0035】
本明細書で使用する「V領域」とは、B細胞分化の際の重鎖および軽鎖V領域遺伝子の再編成の結果としてVセグメントに付加されるセグメントであるCDR3およびフレームワーク4を含めた、フレームワーク1、CDR1、フレームワーク2、CDR2、およびフレームワーク3のセグメントを含む抗体可変領域ドメインを指す。本明細書で使用する「Vセグメント」とは、V遺伝子によってコードされるV領域(重鎖または軽鎖)の領域を指す。
【0036】
本明細書で使用する「相補性決定領域(CDR)」とは、軽鎖および重鎖可変領域によって確立される4つの「フレームワーク」領域を中断する、各鎖における3つの超可変領域を指す。CDRは主に、抗原のエピトープに対する結合を担う。各鎖のCDRは典型的に、N末端から順に番号付けしてCDR1、CDR2、およびCDR3と称され、典型的に、特定のCDRが位置する鎖によっても特定される。したがって、例えば、VH CDR3はそれが見出される抗体の重鎖の可変ドメインに位置し、VL CDR1はそれが見出される抗体の軽鎖の可変ドメインに由来するCDR1である。
【0037】
異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域は、構成成分である軽鎖および重鎖のフレームワーク領域が組み合わさったものであり、三次元空間にCDRを配置し、整列させるように働く。
【0038】
CDRおよびフレームワーク領域のアミノ酸配列は、例えば、Kabat, Chothia, international ImMunoGeneTics database(IMGT)、およびAbM(例えば、Johnson et al.、前記;Chothia & Lesk, 1987, Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins. J. Mol. Biol. 196, 901-917;Chothia C. et al., 1989, Conformations of immunoglobulin hypervariable regions. Nature 342, 877-883;Chothia C. et al., 1992, structural repertoire of the human VH segments J. Mol. Biol. 227, 799-817;Al-Lazikani et al., J.Mol.Biol 1997, 273(4)を参照されたい)といった当技術分野で周知の種々の定義を用いて決定することができる。抗原結合部位の定義は、以下の文献にも記載されている:Ruiz et al., IMGT, the international ImMunoGeneTics database. Nucleic Acids Res., 28, 219-221 (2000);およびLefranc,M.-P. IMGT, the international ImMunoGeneTics database. Nucleic Acids Res. Jan 1;29(1):207-9 (2001);MacCallum et al, Antibody-antigen interactions: Contact analysis and binding site topography, J. Mol. Biol., 262 (5), 732-745 (1996);およびMartin et al, Proc. Natl Acad. Sci. USA, 86, 9268-9272 (1989);Martin, et al, Methods Enzymol., 203, 121-153, (1991);Pedersen et al, Immunomethods, 1, 126, (1992);およびRees et al, In Sternberg M.J.E. (ed.), Protein Structure Prediction. Oxford University Press, Oxford, 141-172 1996)。
【0039】
「エピトープ」または「抗原決定基」とは、抗体が結合する抗原上の部位を指す。エピトープは、連続したアミノ酸から、またはタンパク質の三次折りたたみによって隣接した非連続アミノ酸から形成され得る。連続したアミノ酸から形成されるエピトープは典型的に、変性溶媒に曝露されても保持されるが、三次折りたたみによって形成されたエピトープは典型的に、変性溶媒による処理で失われる。エピトープは典型的に、独特の空間的高次構造中に少なくとも3アミノ酸、より一般的には少なくとも5または8〜10アミノ酸を含む。エピトープの空間的高次構造を決定する方法には、例えば、x線結晶解析および2次元核磁気共鳴が含まれる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, Glenn E. Morris, Ed (1996)を参照されたい。
【0040】
本明細書で使用する「中和抗体」とは、GM-CSFに結合し、GM-CSF受容体によるシグナル伝達を妨げるか、またはGM-CSFのその受容体への結合を阻害する抗体を指す。
【0041】
本明細書で使用する「キメラ抗体」とは、(a) 定常領域またはその一部が改変、置換、または交換され、その結果として抗原結合部位(可変領域)が、異なるもしくは改変したクラス、エフェクター機能、および/もしくは種の定常領域、または例えば酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬剤等といったキメラ抗体に新たな特性を付与する完全に異なる分子に結合している、または(b) 可変領域またはその一部が、異なるもしくは改変した抗原特異性を有する可変領域もしくはその一部で;または別の種由来もしくは別の抗体クラスもしくはサブクラス由来の対応する配列で改変、置換、または交換された免疫グロブリン分子を指す。
【0042】
本明細書で使用する「ヒト化抗体」とは、レシピエントヒト抗体のCDRがドナー抗体由来のCDRによって置換された免疫グロブリン分子を指す。ヒト化抗体はまた、フレームワーク配列内にドナー起源の残基を含み得る。ヒト化抗体はまた、ヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部を含み得る。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも、移入されたCDRまたはフレームワーク配列にも見出されない残基を含む場合がある。ヒト化は、「超ヒト化(superhumanizing)」抗体(Tan et al., J. Immunol. 169: 1119, 2002)および「表面再処理(resurfacing)」(例えば、Staelens et al., Mol. Immunol. 43: 1243, 2006;およびRoguska et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 91: 969, 1994)などの技法を含む、当技術分野で公知の方法(例えば、Jones et al., Nature 321:522-525; 1986;Riechmann et al., Nature 332:323-327, 1988;Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536, 1988);Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596, 1992;米国特許第4,816,567号)を用いて行うことができる。
【0043】
本発明との関連における「ヒューマニア化(humaneered)」抗体とは、参照抗体の結合特異性を有する操作されたヒト抗体を指す。本発明において使用するための「ヒューマニア化」抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含む免疫グロブリン分子を有する。典型的に抗体は、参照抗体の重鎖のCDR3領域による結合特異性決定基(BSD)をコードするDNA配列をヒトVHセグメント配列に結合し、参照抗体由来の軽鎖CDR3 BSDをコードするDNA配列をヒトVセグメント配列に結合することによって「ヒューマニア化」する。「BSD」とは、CDR3-FR4領域、または結合特異性を媒介するこの領域の一部を指す。したがって、結合特異性決定基は、CDR3-FR4、CDR3、CDR3の最小必須結合特異性決定基(これは、抗体のV領域に存在する場合に結合特異性を付与する、CDR3よりも小さな任意の領域を指す)、Dセグメント(重鎖領域に関する)、または参照抗体の結合特異性を付与するCDR3-FR4の他の領域であってよい。ヒューマニア化する方法は、米国特許出願公開第20050255552号および米国特許出願公開第20060134098号に提供されている。
【0044】
核酸の部分に関して使用する場合の「異種の」という用語は、核酸が、天然では相互にこれと同じ関係で通常見出されない2つまたはそれ以上のサブ配列を含むことを示す。例えば、そのような核酸は典型的に組換えにより生成され、例えば新たな機能的核酸を作製するように配置された無関係の遺伝子由来の2つまたはそれ以上の配列を有する。同様に、異種タンパク質とは、多くの場合、天然では相互にこれと同じ関係で見出されない2つまたはそれ以上のサブ配列を指す。
【0045】
例えば細胞、または核酸、タンパク質、もしくはベクターに関して使用する場合の「組換え体」という用語は、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターが異種核酸もしくは異種タンパク質の導入または天然核酸もしく天然タンパク質の変更により改変されていること、または細胞がそのように改変された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は天然(非組換え)型の細胞内に見出されない遺伝子を発現するか、または天然遺伝子を発現するがこれが別の方法で異常に発現される、低発現される、もしくは全く発現されない。本明細書における「組換え核酸」という用語は、例えばポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを用いて、一般に核酸の操作により最初にインビトロで形成された、天然に通常見出されない形態の核酸を意味する。このようにして、異なる配列の機能的な連結が達成される。したがって、通常は結合していないDNA分子を連結することによってインビトロで形成された線状形態の単離核酸または発現ベクターはいずれも、本発明の目的に関して組換え体とみなされる。組換え核酸を作製し、宿主細胞または生物体に再導入すると、これは非組換え的に、すなわちインビトロ操作ではなく宿主細胞のインビボ細胞機構を用いて複製する。しかし、このような核酸は、組換えにより生成すると続いて非組換え的に複製するが、それでもなお本発明の目的に関して組換え体とみなされることが理解される。同様に、「組換えタンパク質」とは、組換え技法を用いて、すなわち上記の組換え核酸の発現を通して作製されたタンパク質である。
【0046】
タンパク質またはペプチドに言及する場合の、抗体に「特異的に(または選択的に)結合する」または「〜と特異的に(または選択的に)免疫反応性である」という語句は、タンパク質および他の生物製剤の不均一な集団における、該タンパク質の存在を決定する結合反応を指す。したがって、指定の免疫測定条件下において、特定の抗体は、バックグラウンドの少なくとも2倍、より典型的にはバックグラウンドの10〜100倍超、特定のタンパク質配列に結合する。
【0047】
そのような条件下での抗体への特異的結合は、特定のタンパク質に対する特異性に関して選択された抗体を必要とする。例えば、特定のタンパク質、多型変種、対立遺伝子、オーソログ、および保存的修飾変種、もしくはスプライス変種、またはそれらの一部に対して産生されたポリクローナル抗体を選択して、GM-CSFタンパク質と特異的に免疫反応性であるが、他のタンパク質とは免疫反応性ではないポリクローナル抗体のみを得ることができる。この選択は、他の分子と交差反応する抗体を差し引くことにより達成することができる。
【0048】
本明細書で使用する「慢性炎症性疾患の治療薬」とは、治療有効用量を慢性炎症性疾患罹患患者に投与した場合に、疾患および疾患に伴う合併症の症状を治癒させるか、または少なくとも部分的に停止させる薬剤を指す。
【0049】
2つまたはそれ以上のポリペプチド(または核酸)配列との関連における「同一の」またはパーセント「同一性」という用語は、以下に記載する初期設定パラメータでBLASTもしくはBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを用いて、または手動アライメントおよび目視検査により測定した場合に(例えば、NCBIウェブサイトを参照されたい)、同一であるまたは特定の割合のアミノ酸残基(またはヌクレオチド)が同一である(すなわち、比較領域または指定領域にわたって最大限の一致を得るために比較およびアライメントした場合の、特定領域にわたる約60%の同一性、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の同一性)2つまたはそれ以上の配列またはサブ配列を指す。そのような配列は、その時「実質的に同一である」と称される。「実質的に同一である」配列には、欠失および/または付加を有する配列、ならびに置換を有する配列、ならびに天然の、例えば多型または対立遺伝子変種、および人為的変種が含まれる。以下に記載するように、好ましいアルゴリズムはギャップ等について説明し得る。好ましくは、タンパク質配列同一性は、少なくとも約25アミノ酸長の領域にわたり、より好ましくは50〜100アミノ酸長の領域にわたり、またはタンパク質の全長にわたり存在する。
【0050】
本明細書で使用する「比較領域」には、2つの配列を最適にアライメントした後に、同じ数の連続位置の参照配列に対して1つの配列を比較することができる、典型的に20〜600、一般的には約50〜約200、より一般的には約100〜約150からなる群より選択される数の連続位置のうちの1つのセグメントに対する言及が含まれる。比較のための配列のアライメント方法は、当技術分野で周知である。比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所的相同性アルゴリズムにより、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アライメントアルゴリズムにより、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性検索方法により、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(Wisconsin Genetics Software Package中のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Genetics Computer Group、575 Science Dr., Madison, WI)により、または手動アライメントおよび目視検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds. 1995 supplement)を参照されたい)によって行うことができる。
【0051】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの好ましい例には、Altschul et al., Nuc. Acids Res. 25:3389-3402 (1977)、およびAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)に記載されているBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムが含まれる。本発明の核酸およびタンパク質のパーセント配列同一性を決定するには、BLASTおよびBLAST 2.0を本明細書に記載されるパラメータで使用する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、初期設定としてワード長(W) 11、期待値(E) 10、M=5、N=-4、および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムでは、初期設定としてワード長3、および期待値(E) 10、およびBLOSUM62スコア行列(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照されたい)アライメント(B) 50、期待値(E) 10、M=5、N=-4、ならびに両鎖の比較を使用する。
【0052】
2つのポリペプチドが実質的に同一であることの指標は、第1ポリペプチドが、第2ポリペプチドに対して産生された抗体と免疫学的に交差反応することである。したがって、例えば2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合、ポリペプチドは典型的に第2ポリペプチドと実質的に同一である。
【0053】
「単離された」、「精製された」、または「生物学的に純粋な」という用語は、その天然状態において見出される通常それに付随する成分を実質的にまたは本質的に含まない物質を指す。純度および均一性は典型的に、ポリアクリルアミド電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学技法により決定する。調製物中に存在する主な種であるタンパク質は、実質的に精製されている。いくつかの態様における「精製された」という用語は、タンパク質が電気泳動ゲルで本質的に1本のバンドを生じることを表す。好ましくは、これは、タンパク質が少なくとも85%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、最も好ましくは少なくとも99%純粋であることを意味する。
【0054】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は本明細書で互換的に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、天然アミノ酸ポリマー、修飾残基を含むもの、および非天然アミノ酸ポリマーばかりでなく、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的な化学模倣体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0055】
「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。天然アミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、ならびに後に修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体とは、例えば、α炭素に水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基が結合している、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。このような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様に機能する化合物を指す。
【0056】
アミノ酸は、本明細書中では、IUPAC-IUB生化学命名委員会により推奨されている一般に知られている3文字記号または1文字記号により参照され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に是認されている1文字コードにより参照され得る。
【0057】
「保存的修飾変種」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関する保存的修飾変種とは、同一または本質的に同一であるアミノ酸配列をコードする核酸を指すが、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一のまたは関連する配列、例えば天然の連続した配列を指す。遺伝暗号の縮重により、数多くの機能的に同一である核酸が大部分のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、コドンによりアラニンが指定されるすべての位置において、コードされるポリペプチドを変化させることなく、コドンを上記の対応するコドンの別のものに変更することができる。そのような核酸の変化は「サイレント変化」であり、これは保存的修飾変種の1種である。ポリペプチドをコードする本明細書内のすべての核酸配列は、核酸のサイレント変化も表す。当業者は、特定の状況において、核酸内の各コドン(通常メチオニンに対する唯一のコドンであるAUGおよび通常トリプトファンに対する唯一のコドンであるTGGを除く)を修飾して、機能的に同一である分子を生成できることを認識するであろう。したがって、多くの場合、発現産物に関して記載された配列では、ポリペプチドをコードする核酸のサイレント変化が暗に意味されるが、実際のプローブ配列に関してはそのようなことはない。
【0058】
アミノ酸配列に関して、コードされる配列内の単一アミノ酸またはほんの小数のアミノ酸を変化、付加、または欠失させる、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失、または付加が、その変化によって化学的に類似したアミノ酸によるアミノ酸の置換を生じる場合に「保存的修飾変種」であることを、当業者は認識するであろう。機能的に類似したアミノ酸を提供するBLOSUMなどの保存的置換表および置換行列は、当技術分野で周知である。そのような保存的修飾変種は、本発明の多型変種、種間相同体、および対立遺伝子に付加されるものであり、これらを排除するものではない。典型的な相互の保存的置換には以下のものが含まれる:1) アラニン(A)、グリシン(G);2) アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3) アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4) アルギニン(R)、リジン(K);5) イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6) フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7) セリン(S)、スレオニン(T);および8) システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照されたい)。
【0059】
I. 序論
本発明は、慢性炎症性疾患と診断された患者を治療するための、GM-CSFアンタゴニストを投与する方法に関する。いくつかの態様において、患者は、メトトレキサートなどの抗葉酸化合物による治療を受けている。いくつかの態様において、GM-CSFアンタゴニスト、例えば抗GM-CSF抗体で治療する慢性炎症性疾患には、炎症性関節炎疾患、例えばRA、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、および若年性特発性関節炎など;ならびにその他の炎症性疾患、例えば多発性筋炎および全身性エリテマトーデスなどが含まれる。そのような障害を有する患者は、いくつかの態様において、メトトレキサートなどの抗葉酸化合物による治療も受けていてよい。メトトレキサートなどの抗葉酸化合物と共にGM-CSFアンタゴニストを投与する態様において、GM-CSFおよび抗葉酸化合物、例えばメトトレキサートは、好中球減少を誘発しない量で投与する。GM-CSFアンタゴニストには、抗GM-CSF抗体、抗GM-CSF受容体抗体、またはGM-CSFのその同族受容体に対する結合によって通常生じるシグナル伝達を妨げる他の阻害剤が含まれ得る。
【0060】
いくつかの態様において、本発明は、本明細書に記載される抗GMCSF抗体を投与することによって、慢性炎症性疾患、例えば関節リウマチを治療する方法を提供する。GM-CSFアンタゴニスト、例えば抗GMCSF抗体で治療できるさらなる慢性炎症性疾患には、アルツハイマー病などの神経変性疾患が含まれる。
【0061】
本発明との使用に適した抗体、例えば抗GM-CSF抗体または抗GM-CSF受容体抗体は、モノクローナル、ポリクローナル、キメラ、ヒト化、ヒューマニア化、またはヒトであってよい。本発明との使用に適した他のGM-CSFアンタゴニストには、受容体への結合においてGM-CSFと競合するが、受容体に結合した場合にシグナル伝達を生じない天然リガンドまたは合成リガンド(またはそれらの断片)が含まれ得る。さらなる非限定的なGM-CSFアンタゴニストには、GM-CSFアンタゴニストの非存在下においてGM-CSFのその受容体への結合によって天然で生じるシグナル伝達を部分的にまたは完全に遮断するポリペプチド、核酸、小分子等が含まれ得る。
【0062】
II. 患者
GM-CSFアンタゴニストで治療する典型的な患者は、メトトレキサートによる治療も受けており、好中球減少を発症していない、慢性炎症性障害を有する患者である。患者は、確立された臨床指針に従ってメトトレキサートで治療し、メトトレキサート約5〜約25 mg/週という範囲の週用量のメトトレキサートで治療する。一部の患者については、より低用量のメトトレキサートが適切である場合があり、この低用量にはメトトレキサート約0.1〜約5 mgの週投与計画が含まれ得る。他の態様において、投与するメトトレキサートの量は約5 mg/週〜約25 mg/週である。
【0063】
いくつかの態様において、抗GM-CSF抗体などのGM-CSFアンタゴニストで治療する患者は、メトトレキサートの類似体または別の抗葉酸治療薬による治療を受けている。メトトレキサートは葉酸と構造的に類似しており、DNAのプリンおよびピリミジンヌクレオチド前駆体の生合成、ならびにタンパク質生合成中のアミノ酸の相互変換の補酵素として葉酸を通常使用するいくつかの酵素の活性部位に結合し得る。メトトレキサートは酵素結合部位において葉酸補因子と競合し、それによって酵素活性を阻害する。「メトトレキサート類似体」とは、同様に抗葉酸活性を有する、メトトレキサートとの構造的類似性を有する化合物である。したがって、メトトレキサート類似体とはまた、誘導体、および本発明の実行において使用できるプロドラッグを指す。例えば、プロドラッグを使用して、選択的生物変換を介して生物学的利用能を向上させることができる。メトトレキサート類似体には、例えば、パラ-アミノ安息香酸部分にハロゲン置換を有する4-アミノ誘導体、例えばジクロロメトトレキサート(例えば、Frei et al., Clin. Pharmacol. Therap., 6:160-71 (1965)を参照されたい)など;7-メチル置換メトトレキサート(例えば、Rosowsky et al., J. Med. Chem., 17:1308-11 (1974)を参照されたい);3’,5’-ジフルオロメトトレキサート(例えば、Tomcuf, J. Organic Chem., 26:3351 (1961)を参照されたい);アミノプテリンの2’および3’モノフッ素化誘導体(例えば、Henkin et al., J. Med. Chem., 26:1193-1196 (1983)を参照されたい);ならびに7,8-ジヒドロ-8-メチル-メトトレキサート(例えば、Chaykovsky, J. Org. Chem., 40:145-146 (1975)を参照されたい)が含まれる。
【0064】
本明細書で使用する「抗葉酸化合物」という用語は、葉酸との構造的類似性、および1つまたは複数の葉酸依存性酵素に対する葉酸アンタゴニストとしての活性を有する化合物を指す。抗葉酸化合物の例には、例えば、アミノプテリン、ラルチトレキセド、ロメトルキソール、多標的抗葉酸(MTA)、AQA、メトトレキサート、およびそれらの類似体が含まれる。例えばアミノプテリンは、メトトレキサートの構造と比較して、N-10位にメチル基の代わりに水素を有する。ラルチトレキセド(ZD1694)は、チミジル酸合成酵素の選択的阻害薬である。ロメトレキソールは、新規プリン合成の経路に関与する最初の酵素であるグリシンアミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼを選択的に阻害する。他の抗葉酸化合物には、例えば、トリメトレキサート、エダトレキサート等が含まれる(例示的な抗葉酸化合物のリストについては、例えば、Takimoto, Oncologist 1:68-81, 1996を参照されたい)。場合によっては、メトトレキサートを、1つまたは複数のメトトレキサート類似体および/または他の抗葉酸化合物ならびに抗GMCSFアンタゴニストと共に併用療法で使用することができる。抗葉酸剤は、好中球減少を生じない量で投与する。いくつかの態様において、その量は、約0.1、例えば約0.5、約1、約2、約3、約4、約5、約7.5、約10、約12.5、約15、約20〜約25 mg/週である。抗炎症薬として投与する抗葉酸化合物の量は、多くの場合、癌治療で用いられる抗葉酸化合物の量よりも2〜3対数桁低い量である。
【0065】
いくつかの態様では、炎症性関節炎罹患患者を本発明の方法に従って治療する。そのような患者には、RA、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、または若年性特発性関節炎に罹患している患者が含まれる。
【0066】
当技術分野で周知の方法を用いて、患者が好中球減少性であるかどうかを決定することができる。患者が好中球減少性であるかどうかを決定するには、絶対好中球数(ANC)を使用する。好中球数および白血球数(WBCC)が正常範囲内であれば、患者は好中球減少性であるとみなされない。好中球の正常範囲は、1×109個/lよりも大きな数によって表されると理解され;白血球の正常範囲は、3.5×109個/lよりも大きな数によって表されると理解される。ANCが0.5×109個/l未満である場合、好中球減少は臨床的に有意であるとみなされる。いくつかの態様では、本発明の方法に従って治療した患者において、臨床的に有意な好中球減少は誘発されない。いくつかの他の態様において、治療は検出可能な好中球減少を引き起こさない。
【0067】
いくつかの態様では、活動性RA患者を本発明の方法に従って治療する。治療に対するRA患者の反応および/または疾患進行は、RAに関連する臨床的パラメータのいずれかをモニターすることによって評価することができる。典型的に、治療に対して治療反応を示す患者は、薬理学的パラメータを含むいくつかのパラメータによって決定される。例えば、RAの米国リウマチ学会(ACR)スコアリング(ACR 20、ACR 50、およびACR 70)を使用することができる。RAのACR複合エンドポイントには、朝のこわばり、圧痛関節数、腫脹関節数、患者による疼痛評価、患者による全般的評価、医師による全般的評価;赤血球沈降速度(ESR)、血漿中のC反応性タンパク質(CRP)レベル、およびリウマトイド因子の尺度が含まれる。患者の反応を評価するために使用できる他の薬力学的マーカーには、血中または尿中のネオプテリンレベルの評価、全身的(血中)または局所的(例えば、関節などの炎症の限局部位)な炎症誘発性サイトカインのレベルの評価が含まれる。炎症誘発性サイトカインは当技術分野で周知である。本発明の治療に対する患者の反応を評価するために使用できる炎症誘発性サイトカインの例には、これらに限定されないが、TNF-α、GM-CSF、インターロイキン-1、インターロイキン-6、ならびにインターロイキン-8およびインターロイキン-17が含まれる。
【0068】
GM-CSFアンタゴニストとメトトレキサートなどの抗葉酸化合物との投与は、少なくとも部分的に疾患進行を停止させるか、または疾患症状の症状を軽減する(上記の例示的なパラメータなどのパラメータによって評価される)。したがって、GM-CSFアンタゴニストおよびメトトレキサートを投与することで、関節侵食の進行を軽減することができる。関節内の骨および軟骨を評価するのにオートラジオグラフィーなどの公知の技法を用いて、関節侵食の進行を評価することができる。
【0069】
他の態様では、メトトレキサートなどの抗葉酸化合物で治療されている、乾癬性関節炎、若年性特発性関節炎、または強直性脊椎炎などの別の炎症性関節炎を有する患者にGM-CSFアンタゴニストを投与する。RAの評価に用いられる方法、または他の適切な疾患スコアリング基準などの公知の方法を用いて、そのような患者を治療に対する反応および/または疾患進行について評価することができる。例えば、強直性脊椎炎については、強直性脊椎炎反応基準の評価(ASAS 20)を用いることができる。(ASASは、全背部痛を含むAS症状、患者による疾患活動性評価、炎症、および身体機能の改善の複合尺度である)。同様に、乾癬性関節炎の評価については、乾癬性関節炎反応基準(PsARC)指標を用いることができる。
【0070】
本発明のさらなる態様では、治療のためにメトトレキサートなどの抗葉酸化合物の投与を受けている全身性エリテマトーデス患者を、GM-CSFアンタゴニストで同様に治療する。治療に対する反応および/または疾患進行を、例えば確立された基準(例えば、Hochberg, Arthritis Rheum 40:1725, 1997;Tan, et al., Arthritis Rheum 25:1271-7, 1982)を用いて測定して、本発明の方法で治療されている患者の全身性エリテマトーデス疾患活動性指標(SLEDAI)を提供評価することができる。
【0071】
いくつかの態様では、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性特発性関節炎、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス、またはアルツハイマー病などの神経変性疾患などの慢性炎症性疾患に罹患している患者を、抗葉酸療法のさらなる施与なしに、GM-CSFアンタゴニストで治療する。多くの場合、そのような患者に投与するGM-CSFアンタゴニストは抗GM-CSF抗体である。
【0072】
III. GM-CSFアンタゴニスト
上記の通り、本発明は、疾患罹患患者にGM-CSFアンタゴニストおよびメトトレキサートを投与することによって、慢性炎症性疾患、例えばRAを治療する方法を提供する。本発明における使用に適したGM-CSFアンタゴニストは、GM-CSFのGM-CSF受容体への結合を減少させることによって、該受容体によるシグナル伝達の誘導を選択的に妨げる。そのようなアンタゴニストには、GM-CSF受容体と結合する抗体、GM-CSFと結合する抗体、およびGM-CSFのその受容体への結合において競合するか、またはリガンドの受容体への結合によって通常生じるシグナル伝達を阻害する他のタンパク質または小分子が含まれる。
【0073】
多くの態様において、本発明で使用するGM-CSFアンタゴニストは、タンパク質、例えば抗GM-CSF抗体、抗GM-CSF受容体抗体、可溶性GM-CSF受容体、または受容体への結合においてGM-CSFと競合するが、不活性である改変GM-CSFポリペプチドである。そのようなタンパク質は、多くの場合、組換え発現技術を用いて産生させる。そのような方法は当技術分野で広く知られている。発現方法を含む一般的な分子生物学方法は、例えば、Sambrook and Russell (2001) Molecular Cloning: A laboratory manual 3rd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press; Current Protocols in Molecular Biology (2006) John Wiley and Sons ISBN: 0-471-50338-Xなどの説明書中に見出すことができる。
【0074】
種々の原核生物および/または真核生物ベースのタンパク質発現系を使用して、GM-CSFアンタゴニストタンパク質を産生させることができる。多くのそのような系は、商業的供給業者から広く入手可能である。これらには、原核生物発現系および真核生物発現系が含まれる。
【0075】
GM-CSF抗体
いくつかの態様において、GM-CSFアンタゴニストは、GM-CSFと結合する抗体、またはGM-CSF受容体αもしくはβサブユニットに結合する抗体である。抗体はGM-CSF(またはGM-CSF受容体)タンパク質もしくは断片に対して産生させることができ、または組換えにより産生させることもできる。本発明において使用するためのGM-CSFに対する抗体は中和抗体であってよく、またはGM-CSFと結合し、循環中のGM-CSFレベルが低下するようにGM-CSFのインビボクリアランス速度を増加させる非中和抗体であってもよい。多くの場合、GM-CSF抗体は中和抗体である。
【0076】
ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に公知である(例えば、Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory manual (1988); Methods in Immunology)。ポリクローナル抗体は、免疫剤および必要に応じてアジュバントを1回または複数回注射することによって、哺乳動物において産生させることができる。免疫剤には、GM-CSFまたはGM-CSF受容体タンパク質、例えばヒトGM-CSFもしくはGM-CSF受容体タンパク質、またはそれらの断片が含まれる。
【0077】
いくつかの態様において、本発明において使用するためのGM-CSF抗体はヒト血漿から精製する。そのような態様において、GM-CSF抗体は典型的に、ヒト血漿中に存在する他の抗体から単離されたポリクローナル抗体である。例えば、アフィニティークロマトグラフィーなどの公知の技法を用いて、そのような単離手順を行うことができる。
【0078】
いくつかの態様において、GM-CSFアンタゴニストはモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、Kohler & Milstein, Nature 256:495 (1975)によって記載されているようなハイブリドーマ法を用いて調製することができる。ハイブリドーマ法では、免疫剤に特異的に結合する抗体を産生するまたは産生し得るリンパ球を誘発するために、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物に典型的にヒトGM-CSFなどの免疫剤を免疫化する。または、リンパ球をインビトロで免疫化してもよい。免疫剤には好ましくは、ヒトGM-CSFタンパク質、その断片、またはその融合タンパク質が含まれる。
【0079】
ヒトモノクローナル抗体は、ファージディスプレイライブラリー(Hoogenboom & Winter, J. Mol. Biol. 227:381 (1991);Marks et al., J. Mol. Biol. 222:581 (1991))を含む、当技術分野で公知の種々の技法を用いて生成することができる。ヒトモノクローナル抗体の調製には、ColeらおよびBoernerらの技法も利用できる(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, p. 77 (1985)、およびBoerner et al., J. Immunol. 147(1):86-95 (1991))。同様に、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活化されているトランスジェニック動物、例えばマウスにヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによって、ヒト抗体を作製することもできる。抗原投与するとヒト抗体の産生が認められるが、これは、遺伝子再編成、構築、抗体レパートリーを含め、すべての点でヒトに見られるものとよく似ている。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号、および以下の科学論文:Marks et al., Bio/Technology 10:779-783 (1992);Lonberg et al., Nature 368:856-859 (1994);Morrison, Nature 368:812-13 (1994);Fishwild et al., Nature Biotechnology 14:845-51 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology 14:826 (1996);Lonberg & Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)に記載されている。
【0080】
いくつかの態様において、抗GM-CSF抗体はキメラまたはヒト化モノクローナル抗体である。前記の通り、ヒト化型の抗体は、ヒト抗体の相補性決定領域(CDR)由来残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種のCDR由来残基によって置換されているキメラ免疫グロブリンである。
【0081】
本発明において使用する抗体は任意の形式であってよい。例えば、いくつかの態様において、抗体は、定常領域、例えばヒト定常領域を含む完全抗体であってもよいし、完全抗体の断片または誘導体、例えばFd、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、Fv断片、またはナノボディもしくはラクダ科動物抗体などの単一ドメイン抗体であってもよい。そのような抗体はさらに、当業者に周知の方法によって組換えにより操作することができる。上記の通り、そのような抗体は公知の技法を用いて生成することができる。
【0082】
本発明のいくつかの態様では、例えば抗体が反復投与に適するように、抗体をさらに操作して免疫原性を低減させる。免疫原性が低減した抗体を作製する方法には、ヒト化/ヒューマニア化手順、および例えば1つまたは複数のフレームワーク領域において抗体をさら操作して、T細胞エピトープを除去する脱免疫化などの改変技法が含まれる。
【0083】
いくつかの態様において、抗体はヒューマニア化抗体である。ヒューマニア化抗体は、参照抗体の重鎖のCDR3領域による結合特異性決定基(BSD)をコードするDNA配列をヒトVHセグメント配列に結合し、参照抗体由来の軽鎖CDR3 BSDをコードするDNA配列をヒトVLセグメント配列に結合することによって得られる、参照抗体の結合特異性を有する操作されたヒト抗体である。ヒューマニア化の方法は、米国特許出願公開第2005025552号および米国特許出願公開第20060134098号に提供されている。
【0084】
抗体をさらに脱免疫化して、抗体のV領域から1つまたは複数の予測T細胞エピトープを除去することができる。そのような手順は、例えばWO 00/34317に記載されている。
【0085】
いくつかの態様において、可変領域はヒトV遺伝子配列からなる。例えば、可変領域配列は、ヒト生殖系列V遺伝子配列と少なくとも80%の同一性、もしくは少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、もしくは少なくとも99%の同一性、またはそれ以上を有し得る。
【0086】
本発明において使用する抗体は、ヒト定常領域を含み得る。軽鎖の定常領域は、ヒトκまたはλ定常領域であってよい。重鎖定常領域は多くの場合γ鎖定常領域、例えばγ1、γ2、γ3、またはγ4定常領域である。
【0087】
例えば抗体が断片であるいくつかの態様では、例えばインビボでの半減期の延長をもたらすために、ポリエチレングリコール(ペグ化)または血清アルブミンなどの別の分子に抗体を結合させることができる。抗体断片のペグ化の例は、Knight et al (2004) Platelets 15: 409(アブシキシマブについて);Pedley et al (1994) Br. J. Cancer 70: 1126(抗CEA抗体について) Chapman et al (1999) Nature Bitoech. 17: 780に提供されている。
【0088】
抗体特異性
本発明において使用するための抗体は、GM-CSFまたはGM-CSF受容体に結合する。数多くの技法を用いて、抗体結合特異性を決定することができる。例えば、抗体の特異的免疫反応性を決定するために使用できる免疫測定法の形式および条件については、Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988)を参照されたい。
【0089】
本発明との使用に適した例示的な抗体はc19/2である。いくつかの態様では、c19/2と同じエピトープへの結合において競合するか、またはc19/2と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体を使用する。特定の抗体が別の抗体と同じエピトープを認識する能力は典型的に、抗原に対する第2抗体の結合を競合的に阻害する第1抗体の能力により決定する。いくつの競合結合アッセイ法のいずれかを用いて、同じ抗原に対する2つの抗体間の競合を測定することができる。例えば、この目的にサンドイッチELISAアッセイ法を用いることができる。これは、ウェルの表面にコーティングするための捕獲抗体を使用することによって行う。次に、飽和濃度未満のタグ化抗原を捕獲表面に添加する。このタンパク質は、特異的な抗体:エピトープ相互作用を介して抗体に結合する。洗浄後、検出可能部分(例えばHRP、標識抗体は検出抗体と定義される)に共有結合した第2抗体をELISAに添加する。この抗体が捕獲抗体と同一のエピトープを認識するのであれば、特定のエピトープはもはや結合に利用できないため、この抗体は標的タンパク質に結合できない。しかしながら、この第2抗体が標的タンパク質上の異なるエピトープを認識するのであれば、この抗体は結合することができ、この結合は、関連基質を用いて活性(よって、結合した抗体)のレベルを定量することによって検出することができる。バックグラウンドは、捕獲抗体および検出抗体双方として単一の抗体を用いることによって規定され、最大シグナルは、抗原特異的抗体で捕獲し、抗原上のタグに対する抗体で検出することによって確立することができる。参照としてバックグラウンドおよび最大シグナルを用いることによって、抗体を対様式で評価して、エピトープ特異性を決定することができる。
【0090】
上記のアッセイ法のいずれかを用いて、第1抗体の存在下で、抗原に対する第2抗体の結合が少なくとも30%、通常少なくとも約40%、50%、60%、または75%、多くの場合少なくとも約90%減少する場合に、第1抗体は第2抗体の結合を競合的に阻害するとみなされる。
【0091】
エピトープマッピング
本発明のいくつかの態様では、公知の抗体、例えばc19/2と同じエピトープに結合する抗体を使用する。エピトープをマッピングする方法は当技術分野で周知である。例えば、ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(hGM-CSF)の機能的活性領域を位置確認するための1つのアプローチは、中和抗hGM-CSFモノクローナル抗体によって認識されるエピトープをマッピングすることである。例えば、c19/2(中和抗体LMM102と同じ可変領域を有する)が結合するエピトープは、細菌で合成されたhGM-CSFの酵素消化によって得られたタンパク質分解断片を使用して規定された(Dempsey et al., Hybridoma 9:545-558, 1990)。トリプシン消化物のRP-HPLC分画により、66アミノ酸(タンパク質の52%)を含む免疫反応性「トリプシンコア」ペプチドが同定された。この「トリプシンコア」を黄色ブドウ球菌(S. aureus) V8プロテアーゼでさらに消化したところ、残基88と121との間のジスルフィド結合によって結合している2つのペプチド、残基86〜93および112〜127を含む独特の免疫反応性hGM-CSF産物が生成された。個々のペプチドは、この抗体によって認識されなかった。
【0092】
結合親和性の決定
いくつかの態様において、本発明との使用に適した抗体は、ヒトGM-CSFまたはGM-CSF受容体に対して高親和性結合を有する。抗体の解離定数(KD)が<1 nM、好ましくは<100 pMである場合に、抗体と抗原との間に高親和性結合が存在する。当業者に周知のように、表面プラズモン共鳴アッセイ法、飽和アッセイ法、またはELISAもしくはRIAなどの免疫測定法などの種々の方法を用いて、抗体のその標的抗原に対する結合親和性を決定することができる。結合親和性を決定するための例示的な方法は、Krinner et al., (2007) Mol. Immunol. Feb;44(5):916-25. (Epub 2006 May 11)に記載されているように、CM5センサーチップを使用するBIAcore(商標) 2000装置(Biacore AB、ドイツ、フライブルク)での表面プラズモン共鳴解析によるものである。
【0093】
中和抗体を同定するための細胞増殖アッセイ法
いくつかの態様において、GM-CSFアンタゴニストは、GM-CSFの結合を妨げる様式で結合する、GM-CSFまたはその受容体に対する中和抗体である。中和抗体および他のGM-CSFアンタゴニストは、GM-CSF機能を評価する数多くのアッセイ法を用いて同定することができる。例えば、限定量のGM-CSFに応答したGM-CSF依存性細胞株の増殖速度を決定するアッセイ法など、GM-CSF受容体シグナル伝達に関する細胞ベースのアッセイ法を都合よく使用する。ヒトTF-1細胞株は、そのようなアッセイで使用するのに適している。Krinner et al., (2007) Mol. Immunolを参照されたい。いくつかの態様において、本発明の中和抗体は、90%最大TF-1細胞増殖を促進するGM-CSF濃度を使用した場合に、GM-CSFによって促進されるTF-1細胞増殖を少なくとも50%阻害する。他の態様において、中和抗体は、GM-CSFによって促進される増殖を少なくとも90%阻害する。したがって、典型的に、中和抗体、または本発明において使用するための他のGM-CSFアンタゴニストは、10 nM未満のEC50を有する(例えば、表1)。本発明との使用に適した中和抗体を同定する際に使用するのに適しているさらなるアッセイ法は、当業者に周知である。
【0094】
例示的な抗体
本発明において使用するための抗体は当技術分野で公知であり、日常的技法を用いて生成することができる。例示的な抗体を記載してある。当技術分野で公知であり本明細書に要約した手順に従って例示的な抗体が調製され、化学的または組換え技術によって抗体断片、キメラ等を生成することができることが理解される。
【0095】
GM-CSFアンタゴニストとして使用するのに適している例示的なキメラ抗体はc19/2である。c/19/2抗体は、表面プラズモン共鳴解析により決定して、約10 pMの一価結合親和性でGM-CSFと結合する。SEQ ID NO 1および2は、c19/2の重鎖および軽鎖可変領域配列を示す(例えば、WO03/068920)。Kabatに従って規定されるCDRは:

である。CDRは、当技術分野における他の周知の定義、例えば、Chothia, international ImMunoGeneTics database(IMGT)およびAbMを用いて決定することもできる。
【0096】
いくつかの態様において、本発明において使用する抗体は、c19/2と同じエピトープへの結合において競合するか、またはc19/2と同じエピトープに結合する。c19/2によって認識されるGM-CSFエピトープは、残基88と121との間のジスルフィド結合によって結合している2つのペプチド、残基86〜93および残基112〜127を有する産物として同定されている。0.5 ng/ml GM-CSFで細胞を刺激した場合、c19/2抗体は、30 pMのEC50でヒトTF-1白血病細胞株のGM-CSF依存性増殖を阻害する。いくつかの態様において、本発明において使用する抗体は、c19/2と同じエピトープに結合する。
【0097】
c19/2などの投与用の抗体は、さらにヒューマニア化することができる。例えば、c19/2抗体を、ヒトV遺伝子セグメントを含むようにさらに操作することができる。
【0098】
別の例示的な中和抗GM-CSF抗体は、Li et al., (2006) PNAS 103(10):3557-3562に記載されているE10抗体である。E10は、GM-CSFに対して870 pMの結合親和性を有するIgGクラスの抗体である。この抗体は、ELISAアッセイで示されるようにヒトGM-CSFに対する結合に関して特異的であり、TF1細胞増殖アッセイにより評価して強力な中和活性を示す。
【0099】
さらなる例示的な中和抗GM-CSF抗体は、Krinner et al., (Mol Immunol. 44:916-25, 2007; Epub 2006 May 112006)に記載されているMT203抗体である。MT203は、ピコモル親和性でGM-CSFと結合するIgG1クラスの抗体である。この抗体は、TF-1細胞増殖アッセイにより評価して強力な阻害活性を示し、またU937細胞におけるIL-8産生を遮断する能力を示す。
【0100】
本発明との使用に適したさらなる抗体は、当業者に周知であろう。
【0101】
抗GM-CSF受容体抗体であるGM-CSFアンタゴニストも、本発明において使用することができる。そのようなGM-CSFアンタゴニストには、GM-CSF受容体α鎖またはβ鎖に対する抗体が含まれる。本発明において使用する抗GM-CSF受容体抗体は、上記の通り任意の抗体形式であってよく、例えば無傷、キメラ、モノクローナル、ポリクローナル、抗体断片、ヒト化、ヒューマニア化等であってよい。本発明における使用に適した抗GM-CSF受容体抗体、例えば中和高親和性抗体の例は公知である(例えば、米国特許第5,747,032号、およびNicola et al., Blood 82: 1724, 1993を参照されたい)。
【0102】
非抗体GM-CSFアンタゴニスト
GM-CSFとその受容体との生産的相互作用を妨げ得る他のタンパク質には、変異体GM-CSFタンパク質、およびGM-CSFに結合し、細胞表面受容体への結合と競合する、GM-CSF受容体鎖の一方または両方の細胞外部分の少なくとも一部を含む分泌タンパク質が含まれる。例えば、sGM-CSFRαのコード領域をマウスIgG2aのCH2-CH3領域と融合させることによって、可溶性GM-CSF受容体アンタゴニストを調製することができる。例示的な可溶性GM-CSF受容体は、Raines et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci USA 88: 8203によって記載されている。GM-CSFRα-Fc融合タンパク質の例は、例えば、Brown et al (1995) Blood 85: 1488に提供されている。いくつかの態様では、そのような融合物のFc成分を操作して、結合を調節する、例えばFc受容体への結合を高めることができる。
【0103】
他のGM-CSFアンタゴニストにはGM-CSF変異体が含まれる。例えば、Hercus et al. Proc. Natl. Acad. Sci USA 91:5838, 1994によって記載される、GM-CSFのアミノ酸残基21のアルギニンまたはリジンへの変異(E21RまたはE221K)を有するGM-CSFは、マウス異種移植モデルにおいて、GM-CSF依存性白血病細胞の播種を妨げるインビボ活性を有することが示されている(Iversen et al. Blood 90:4910, 1997)。当業者によって理解されるように、そのようなアンタゴニストには、アミノ酸残基21に示される置換などの置換を有するGM-CSFの保存的改変変種、または例えば半減期を延長するためのアミノ酸類似体を有するGM-CSF変種も含まれ得る。
【0104】
他の態様において、GM-CSFアンタゴニストは、抗体と類似の様式で抗原を標的化しこれに結合する「抗体模倣体」である。一部のこれらの「抗体模倣体」は、抗体の可変領域のための代替タンパク質フレームワークとして非免疫グロブリンタンパク質骨格を使用する。例えば、Ku et al. (Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92(14):6552-6556 (1995))は、シトクロムb562のループのうちの2つを無作為化し、ウシ血清アルブミンに対する結合について選択した、シトクロムb562に基づく抗体の代替物を開示している。個々の変異体は、抗BSA抗体と同様にBSAと選択的に結合することが見出された。
【0105】
米国特許第6,818,418号および第7,115,396号は、フィブロネクチンまたはフィブロネクチン様タンパク質骨格および少なくとも1つの可変ループを特色とする抗体模倣体を開示している。アドネクチン()として知られるこれらのフィブロネクチンベースの抗体模倣体は、任意の標的化リガンドに対する高い親和性および特異性を含めて、天然抗体または改変抗体と同じ特徴の多くを示す。これらのフィブロネクチンベースの抗体模倣体の構造は、IgG重鎖の可変領域の構造と類似している。したがって、これらの模倣体は、天然抗体と性質および親和性が類似している抗原結合特性を示す。さらに、これらのフィブロネクチンベースの抗体模倣体は、抗体および抗体断片を上回るある種の利点を示す。例えば、これらの抗体模倣体は、天然折りたたみの安定性をジスルフィド結合に依存せず、よって通常では抗体を分解する条件下で安定している。加えて、これらのフィブロネクチンベースの抗体模倣体の構造はIgG重鎖の構造と類似しているため、インビボでの抗体の親和性成熟の過程に類似したループの無作為化およびシャフリングの過程をインビトロで利用することができる。
【0106】
Beste et al. (Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96(5):1898-1903 (1999))は、リポカリン骨格に基づく抗体模倣体(Anticalin(登録商標))を開示している。リポカリンは、βバレルとタンパク質の末端における4つの超可変ループから構成される。ループがランダム突然変異誘発に供され、例えばフルオレセインとの結合について選択された。変種3つがフルオレセインとの特異的結合を示し、変種1つが抗フルオレセイン抗体と類似の結合を示した。さらなる解析から、無作為化の位置はすべて異なることが明らかになり、Anticalin(登録商標)が抗体の代替物として使用するのに適していることが示された。したがって、Anticalin(登録商標)は典型的に160〜180残基の小さな一本鎖ペプチドであり、生成コストの削減、貯蔵安定性の増加、および免疫学的反応の低下を含め、抗体を上回るいくつかの利点を提供する。
【0107】
米国特許第5,770,380号は、カリックスアレーンの強固な非ペプチド有機骨格を、結合部位として用いる複数の可変ペプチドループと付着させて使用する合成抗体模倣体を開示している。ペプチドループはすべて、互いに、カリックスアレーンの幾何学的に同じ側から突出している。この幾何学的高次構造のために、すべてのループが結合に利用でき、リガンドに対する結合親和性が増加する。しかし、他の抗体模倣体と比較して、カリックスアレーンベースの抗体模倣体は全くペプチドだけからなるわけではなく、したがってプロテアーゼ酵素による攻撃に強い。この骨格は純粋にペプチド、DNA、またはRNAからなるわけではなく、この抗体模倣体が極端な環境条件において比較的安定であり、寿命が長いことを意味している。さらに、カリックスアレーンベースの抗体模倣体は比較的小さいため、免疫原性反応を生じる可能性が低い。
【0108】
Murali et al. (Cell Mol Biol 49(2):209-216 (2003))は、抗体を縮小してより小さなペプチド模倣体にする方法論を記載しており、この模倣体は「抗体様結合ペプチド模倣体」(ABiP)と命名され、これもまた抗体の代替物として有用であり得る。
【0109】
非免疫グロブリンタンパク質フレームワークに加えて、RNA分子および非天然オリゴマーを含む化合物においても抗体特性が模倣されている(例えば、プロテアーゼ阻害剤、ベンゾジアゼピン、プリン誘導体、およびβターン模倣体)。したがって、非抗体GM-CSFアンタゴニストにはそのような化合物も含まれ得る。
【0110】
III. 治療的投与
本発明の方法は典型的に、疾患の治療に適した投与計画を用いて、例えばRAといった慢性炎症性疾患を有する患者に、薬学的組成物として治療的有効量のメトトレキサートおよびGM-CSFアンタゴニスト(例えば、抗GM-CSF抗体)を投与する段階を含む。
【0111】
本発明のいくつかの態様では、例えばRAといった慢性炎症性疾患に罹患している患者を、最大約25 mgまでの週用量のメトトレキサート、および臨床的に有意な好中球減少を誘発せず、炎症の1つまたは複数のマーカーの改善をもたらす用量のGM-CSFアンタゴニスト、例えばGM-CSFに特異的な抗体で治療する。いくつかの態様では、赤血球沈降速度(ESR)の正常範囲内への有意な減少を示すことによって、治療に対する患者の反応を決定する。正常ESR範囲は年齢および性別に依存する。男性に関しては、以下の式:0.5×(年齢)に従って、正常ESRを算出することができる。女性に関しては、以下の式:0.5×(年齢+10)に従って、正常ESRを算出することができる(Wallach J. Interpretation of Laboratory Tests, 6th Edition. Little Brown and Company. 1996)。
【0112】
様々な薬物送達系で使用するために、組成物を製剤化することができる。適切な製剤のために、1つまたは複数の生理的に許容される賦形剤または担体も組成物中に含めることができる。本発明において使用するのに適した製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, PA, 17th ed. (1985)に見出される。薬物送達の方法の簡潔な総説については、Langer, Science 249: 1527-1533 (1990)を参照されたい。
【0113】
本発明の方法において使用するためのGM-CSFアンタゴニストは、注射用滅菌等張水溶液など、患者への注射に適した溶液として提供する。許容される担体に、GM-CSFアンタゴニストを適切な濃度で溶解または懸濁する。いくつかの態様において、担体は水性であり、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水等である。組成物は、pH調製剤および緩衝剤、浸透圧調整剤等のような、おおよその生理的状態に必要とされる補助的な薬学的物質を含み得る。
【0114】
本発明の薬学的組成物は、疾患または疾患およびその合併症の症状を治癒させるか、または少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で、例えばRAといった慢性炎症性疾患に罹患している患者に投与する。これを達成するのに適した量を「治療有効用量」と定義する。治療有効用量は、治療に対する患者の反応をモニターすることにより決定する。治療有効用量を示唆する典型的な基準は、疾患に応じて当技術分野で公知である。例えば、RAに関して、基準には、CRPの血漿レベル、ESR、ネオプテリンの血中もしくは尿中レベル、炎症誘発性サイトカイン(例えば、TNF-α、GM-CSF、インターロイキン-1、インターロイキン-6、ならびにインターロイキン-8およびインターロイキン17)のレベル、または他の薬力学的マーカーのレベル変化が含まれる。関節の圧痛および腫脹の数および/または重症度、疼痛レベル等を評価することによるなど、治療反応を評価するための他の基準も使用することができる。
【0115】
有効な投与量は、年齢、体重、性別、投与経路等の他の要因を含め、疾患の重症度および患者の健康の全般的状態に依存する。患者により必要とされかつ許容される投与量および頻度に応じて、アンタゴニストの単回投与または複数回投与を施与することができる。いずれにしても、本方法は、患者を効果的に治療するために、メトトレキサートと併用して十分量のGM-CSFアンタゴニストを提供する。
【0116】
本発明の別の態様では、RAなどの慢性炎症性疾患に罹患している患者を治療するために使用する抗GM-CSFアンタゴニストを、メトトレキサートおよび1つまたは複数の追加薬剤、例えば非ステロイド性抗炎症薬と共に併用療法として提供する。したがって、患者は、疾患を治療するために追加治療を受けてもよい。そのような治療には、これらに限定されないが、ヒドロキシクロロキノン、スルファサラジン、金、ミノサイクリン、レフルノミド、副腎皮質ステロイド、TNFアンタゴニスト(例えば、エタネルセプト、インフリキシマブ、またはアダリムマブ)、IL-1アンタゴニスト(例えば、アナキンラとして)、または抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)が含まれる。患者は、併用療法として、これらの追加治療薬の1つまたは複数の投与を受けることができる。または、患者を追加治療薬で順次治療してもよい。
【0117】
いくつかの態様では、RAなどの慢性炎症性疾患を有する患者を、GM-CSFアンタゴニストによる治療と併用して、メトトレキサート以外の抗葉酸化合物で治療する。抗葉酸化合物およびGM-CSFアンタゴニストは、疾患の治療に適した投与計画を用いて、臨床的に有意な好中球減少を誘発しない量で投与する。
【0118】
A. 投与
本発明は、メトトレキサートと併用してGM-CSFアンタゴニストを投与することによる、RAなどの慢性炎症性疾患の患者を治療する方法を提供する。いくつかの態様では、これらに限定されないが静脈内、皮下、筋肉内、または腹腔内経路を含む任意の適切な経路を介して、GM-CSFアンタゴニストを注射または注入により投与する。例示的な態様では、GM-CSFアンタゴニストを注射用の生理的食塩溶液に希釈してから、患者に投与する。そのようなアンタゴニストは、例えば、15分〜2時間かけて静脈内注入により投与する。さらに他の態様では、投与手順は皮下注射または筋肉内注射による。
【0119】
患者をメトトレキサートで治療しながら、GM-CSFアンタゴニストを投与する。本発明との関連において、「メトトレキサートで治療されている」または「メトトレキサートによる治療を受けている」患者とは、患者がメトトレキサートを処方されており、よってある用量のメトトレキサートの投与を受けているか、または最近受けたことを意味する。典型的に、メトトレキサートは週に1回投与する。したがって、例えば、GM-CSFアンタゴニストは、その用量と用量の間の1週間の任意の時点で投与することができる。いくつかの態様において、GM-CSFアンタゴニストは、患者がメトトレキサート用量の投与を受けた後であって、次の用量をまだ受けてない時点で、例えばメトトレキサートの最終用量後の1週間のうちに投与することができる。そのような患者は、メトトレキサート療法がその患者に対して今もなお処方されているならば、やはりメトトレキサートによる治療を受けているとみなされる。
【0120】
B. 投薬
慢性炎症性疾患を有する患者に効果的な治療を提供するために、GM-CSFアンタゴニストの用量を選択する。用量は典型的に、約0.1 mg/kg体重〜約25 mg/kg体重の範囲、または約1 mg〜約2 g/患者の範囲である。用量は多くの場合、約1〜約10 mg/kgまたは約50 mg〜約1000 mg/患者の範囲である。用量は、アンタゴニストの薬物動態(例えば、循環中の抗体の半減期)および薬力学的反応(例えば、抗体の治療効果の持続)に応じて、1日に1回〜3ヵ月ごとに1回の範囲であり得る適切な頻度で繰り返すことができる。アンタゴニストが、インビボ半減期約7〜約25日の抗体または改変抗体断片であるいくつかの態様では、抗体の投薬を1週間に1度〜3ヵ月に1度繰り返す。他の態様では、抗体を1ヵ月に約1度投与する。
【0121】
メトトレキサートを投与するための治療手順および用量は、当技術分野で公知である。例えば、英国リウマチ学会の指針(2000年7月)などの、RAにおけるメトトレキサート投薬に関する推奨は、毎週7.5 mgのメトトレキサートであり、6週間ごとに2.5 mgずつ最大週用量25 mgまで増量するものである。他の抗葉酸化合物の投薬も、周知の方法を用いて決定することができる。
【0122】
例えばメトトレキサートといった抗葉酸化合物およびGM-CSFアンタゴニストは、好中球減少を誘発しない範囲で投与する。例えば、患者は、最大約25 mg/週という用量のメトトレキサート、および約0.2〜約10 mg/kigのGM-CSFアンタゴニストの投与を受ける。
【0123】
実施例
実施例1‐GM-CSFに対する例示的なヒューマニア化抗体
米国特許出願第20060134098号に記載されている通りに、エピトープに焦点を当てたヒトVセグメントライブラリーから、c19/2の特異性を有する一連のヒューマニア化Fab’分子を作製した。
【0124】
Fab’断片を大腸菌(E. coli)から発現させた。OD600が0.6になるまで、細胞を2×YT培地で培養した。IPTGを用いて、発現を33℃で3時間誘導した。構築されたFab’をペリプラズム画分から取得し、標準的な方法に従って、連鎖球菌プロテインGを使用するアフィニティークロマトグラフィー(HiTrap Protein G HPカラム;GE Healthcare)により精製した。Fab’をpH 2.0緩衝液で溶出し、ただちにこれをpH 7.0に調整して、PBS pH 7.4に対して透析した。
【0125】
Biacore 3000表面プラズモン共鳴(SPR)により、結合動態を解析した。組換えヒトGM-CSF抗原をビオチン化し、ストレプトアビジンCM5センサーチップ上に固定化した。Fab試料を3 nMの開始濃度に希釈し、3倍希釈系列で流した。アッセイは、10 mM HEPES、150 mM NaCl、0.1 mg/mL BSA、および0.005% p20、pH 7.4中で37℃にて実行した。各濃度を2回試験した。Fab’結合アッセイは2つの抗原密度表面で実行し、2つ組のデータセットを提供した。1:1ラングミュア結合モデルを用いて計算した、6つのヒューマニア化抗GM-CSF Fabクローンそれぞれの平均親和性(KD)を表1に示す。
【0126】
TF-1細胞増殖アッセイ法を用いて、FabをGM-CSF中和について試験した。生細胞を決定するためにMTSアッセイ法(Cell titer 96、Promega)を用いて、0.5 ng/ml GM-CSFと共に4日間インキュベートした後に、ヒトTF-1細胞のGM-CSF依存性増殖を測定した。このアッセイにおいてすべてのFabが細胞増殖を阻害し、これらが中和抗体であることが示された。抗GM-CSF Fabの相対的親和性と細胞ベースのアッセイにおけるEC50との間に、良好な相関関係が存在する。18 pM〜104 pMの範囲の一価親和性を有する抗GM-CSF抗体は、細胞ベースのアッセイにおいてGM-CSFの効果的な中和を実証する。
【0127】
(表1)GM-CSF依存性TF-1細胞増殖アッセイにおける活性(EC50)と比較した、表面プラズモン共鳴解析によって決定された抗GM-CSF Fabの親和性

【0128】
実施例2‐抗GM-CSF抗体を送達するための例示的な臨床手順
抗GM-CSF抗体を注射用の滅菌等張生理食塩水溶液中の10 mg/mlとして4℃で保存し、注射用の0.9%塩化ナトリウム100 mlまたは200 mlに希釈してから、患者に投与する。0.2〜10 mg/kgの用量で、静脈内注入により1時間かけて、抗体をRA患者に投与する。
【0129】
この治療手順に含める患者は、以下の基準に基づいて選択する:患者は活動性RAの徴候を示す、患者は現在メトトレキサートによる治療を受けており、患者は少なくとも6週間の間、安定した用量のDMARDの投与を受けている。さらに、本研究に含める患者は、以下の症状を示す:少なくとも6つの腫脹関節数(関節数66を使用)、少なくとも6つの圧痛関節数(関節数68を使用)。以下の基準のうち少なくとも2つを、同様に包含基準に含める:ESR≧20 mm/hr、CRP≧15 mg/l、早朝のこわばり≧45分。
【0130】
患者は1日目に以下の用量のうちの1つで、静脈内注入よりプラセボ(注射用0.9%塩化ナトリウム)または抗GM-CSF抗体の投与を受ける:0.2 mg/kg、1.0 mg/kg、5.0 mg/kg、または10 mg/kg。患者を29日間モニターする。患者は全員、DMARD、最大25 mg/週までの用量のメトトレキサート、最大10 mg/日までのプレドニゾロン、および任意の他の医学的状態のための薬物療法と臨床的に適合するNSAIDの投与を受け続ける。研究期間を通して、研究の安全性評価として以下の試験を実施する:健康診断、生命徴候測定、12誘導心電図(ECG)、血液学、生化学、および尿検査を含む臨床検査、肺機能検査、ならびに失調症および有害事象(AE)の強度。
【0131】
治療の有効性を二段階で評価する。一次評価は、治療の29日目以前の任意の時点または29日目のACR 20反応を含む。二次評価は、ACR20までの時間測定、ACR 50およびACR 70反応を達成する患者の割合、ならびに8日目、15日目、および29日目に測定されたESRおよびCRPを含む。
【0132】
治療群による有害事象、重篤有害事象、および検査所見の異常を一覧にし、プールしたプラセボ群のものと比較する。閉手順を用いて治療企図のACR 20/50/70反応を計算することにより、抗GM-CSF抗体の有効性を解析する。プールした活性群を、プラセボで治療した患者と比較する。
【0133】
実施例3‐メトトレキサートおよび抗GM-CSF抗体による患者の治療
実施例2に記載した臨床手順に従って、活動性RA患者をメトトレキサートおよび抗GM-CSF抗体で治療した。患者は0.2 mg/kg抗GM-CSF抗体の投与を受けた。患者はまた、25 mg/週メトトレキサートによる治療も受けた。
【0134】
標準的な方法により血球数を決定したが、これにはヘモグロビン(HGB);総白血球(WBCC);血小板(PLT);好中球(Neut;好中球絶対数ANCとも称される);リンパ球(LYMPH);単球(MONO);好酸球(EOSIN);好塩基球(BASO)の数、ヘマトクリット(HCT)の決定を含めた。加えて、赤血球沈降速度(ESR)、C反応性タンパク質(CRP)も決定した。治療前および治療時および治療後2週間までの血球数、ESR、およびCRPを表2に示す。表に示すように、2週間後、ESRは異常値40から、治療した患者と同じ性別および年齢の個体の正常範囲内である18に低下する一方、好中球数は変化しないままであった。したがって、メトトレキサート治療、および抗GM-CSFアンタゴニスト、この場合抗GM-CSF抗体による治療を含む併用療法は、関節リウマチの治療に治療的有用性をもたらした。
【0135】
表2中の「1」日は、抗GM-CSFアンタゴニストを投与した時点を示す。患者はメトトレキサートによる治療を以前に受けており、抗GM-CSFアンタゴニスト治療と共にメトトレキサート治療を継続して受けた。
【0136】
(表2)週用量のメトトレキサートで治療され、かつ1日目に単回用量の抗GM-CSF抗体を投与された患者による血球数およびESR。種々の細胞(血小板、好中球、リンパ球等)の数は、×109個/Lである。ESRはmm/hrで表す。

【0137】
上記の実施例は、説明のためのみに提供するものであって、限定のために提供するものではない。当業者は、本質的に同様の結果を得るために、重要ではない種々のパラメータを変更または修正できることを容易に理解すると考えられる。
【0138】
本明細書において引用した出版物、特許出願、アクセッション番号、および他の参考文献はすべて、個々の出版物または特許出願が詳細にかつ個別に参照により組み入れられることが示されるがごとく、参照により本明細書に組み入れられる。
【0139】
例示的な配列
SEQ ID NO 1:マウス19/2重鎖可変領域のアミノ酸配列

SEQ ID NO 2:マウス19/2軽鎖可変領域のアミノ酸配列


【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性炎症性疾患に罹患している患者を治療する方法であって、該患者に抗葉酸化合物を投与する段階、および該患者にGM-CSFアンタゴニストを投与する段階を含み、慢性炎症性疾患の症状を軽減するのに十分な量であるが、好中球減少を誘発しない量の抗葉酸化合物およびGM-CSFアンタゴニストが提供される、前記方法。
【請求項2】
抗葉酸化合物がメトトレキサートである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
慢性炎症性疾患が関節リウマチである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
GM-CSFアンタゴニストが抗GM-CSF抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
抗体がポリクローナル抗体である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項4記載の方法。
【請求項7】
抗体が、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、またはdABである抗体断片である、請求項4記載の方法。
【請求項8】
抗体断片がポリエチレングリコールに結合している、請求項7記載の方法。
【請求項9】
抗体が約5 pM〜約50 pMの範囲の親和性を有する、請求項4記載の方法。
【請求項10】
抗体が中和抗体である、請求項4記載の方法。
【請求項11】
抗体が組換え抗体またはキメラ抗体である、請求項4記載の方法。
【請求項12】
抗体がヒト抗体である、請求項4記載の方法。
【請求項13】
抗体がヒト可変領域を含む、請求項4記載の方法。
【請求項14】
抗体がヒト軽鎖定常領域を含む、請求項4記載の方法。
【請求項15】
抗体がヒト重鎖定常領域を含む、請求項4記載の方法。
【請求項16】
ヒト重鎖定常領域がγ鎖である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
抗体がキメラ19/2と同じエピトープに結合する、請求項4記載の方法。
【請求項18】
抗体がキメラ19/2のVH領域およびVL領域を含む、請求項4記載の方法。
【請求項19】
抗体がヒト重鎖定常領域を含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
ヒト重鎖定常領域がγ領域である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
抗体がキメラ19/2のVH領域およびVL領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む、請求項4記載の方法。
【請求項22】
抗体がキメラ19/2のVH領域のCDR3およびVL領域のCDR3を含む、請求項4記載の方法。
【請求項23】
GM-CSFアンタゴニストが、抗GM-CSF受容体抗体、可溶性GM-CSF受容体、シトクロムb562抗体模倣体、アドネクチン(adnectin)、リポカリン骨格抗体模倣体、カリックスアレーン抗体模倣体、および抗体様結合ペプチド模倣体からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項24】
関節リウマチに罹患している患者を治療する方法であって、メトトレキサートを投与する段階、および抗GM-CSF抗体の治療的有効量を投与する段階を含み、抗GM-CSF抗体がキメラ19/2の結合特異性を有するヒューマニア化(humaneered)Fab’を含み、約5〜約50 pMの範囲の親和性を有する方法。
【請求項25】
抗GM-CSF抗体の治療的有効量を患者に投与する段階を含む、アルツハイマー病に罹患している患者を治療する方法。
【請求項26】
抗葉酸化合物による治療を受けている患者における慢性炎症性疾患を治療するための医薬品を調製するための治療的有効量の抗GMCSF抗体の使用であって、治療的有効量が、慢性炎症性疾患の症状を軽減するのに十分であるが、好中球減少を誘発しない、前記使用。
【請求項27】
抗葉酸化合物がメトトレキサートである、請求項26記載の使用。
【請求項28】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項26または請求項27記載の使用。
【請求項29】
抗体が組換え抗体またはキメラ抗体である、請求項26〜28のいずれか一項記載の使用。
【請求項30】
抗体がヒト可変領域を含む、請求項26〜29のいずれか一項記載の使用。
【請求項31】
抗体がヒト軽鎖定常領域を含む、請求項26〜30のいずれか一項記載の使用。
【請求項32】
抗体がヒト重鎖定常領域を含む、請求項26〜31のいずれか一項記載の使用。
【請求項33】
ヒト重鎖定常領域がγ領域である、請求項32記載の使用。
【請求項34】
抗体がキメラ19/2と同じエピトープに結合する、請求項26〜33のいずれか一項記載の使用。
【請求項35】
抗体がキメラ19/2のVH領域のCDR3およびVL領域のCDR3を含む、請求項26〜34のいずれか一項記載の使用。
【請求項36】
抗体がキメラ19/2のVH領域およびVL領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む、請求項26〜35のいずれか一項記載の使用。
【請求項37】
抗体がキメラ19/2のVH領域およびVL領域を含む、請求項26〜36のいずれか一項記載の使用。
【請求項38】
抗体が、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、またはdABである抗体断片である、請求項26〜37のいずれか一項記載の使用。
【請求項39】
抗体が約5 pM〜約50 pMの範囲の親和性を有する、請求項26〜38のいずれか一項記載の使用。
【請求項40】
抗体がヒト抗体である、請求項26〜34のいずれか一項記載の使用。
【請求項41】
抗体がポリクローナル抗体である、請求項26〜40のいずれか一項記載の使用。
【請求項42】
抗体が中和抗体である、請求項26〜41のいずれか一項記載の使用。
【請求項43】
メトトレキサートによる治療を受けている患者における慢性炎症性疾患を治療するための医薬品を調製するための、約5〜約50 pMの範囲の親和性を有する、キメラ19/2の結合特異性を有するヒューマニア化Fab’を含む抗GM-CSF抗体の治療的有効量の使用であって、治療的有効量が、慢性炎症性疾患の症状を軽減するのに十分であるが、好中球減少を誘発しない、前記使用。
【請求項44】
抗体がポリエチレングリコールに結合している、請求項26〜43のいずれか一項記載の使用。
【請求項45】
抗葉酸化合物による治療を受けている患者における慢性炎症性疾患を治療するための医薬品を調製するための治療的有効量のGMCSFアンタゴニストの使用であって、治療的有効量が、慢性炎症性疾患の症状を軽減するのに十分であるが、好中球減少を誘発しない、前記使用。
【請求項46】
抗葉酸化合物がメトトレキサートである、請求項45記載の使用。
【請求項47】
GM-CSFアンタゴニストが、抗GM-CSF受容体抗体;可溶性GM-CSF受容体;シトクロムb562抗体模倣体;アドネクチン;リポカリン骨格抗体模倣体;カリックスアレーン抗体模倣体;または抗体様結合ペプチド模倣体より選択される、請求項45または請求項46記載の使用。
【請求項48】
慢性炎症性疾患が関節リウマチである、請求項26〜47のいずれか一項記載の使用。
【請求項49】
アルツハイマー病に罹患している患者を治療するための医薬品を調製するための、抗GM-CSF抗体の治療的有効量の使用。

【公表番号】特表2010−510323(P2010−510323A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538506(P2009−538506)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/085402
【国際公開番号】WO2008/064321
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(506249211)カロバイオス ファーマシューティカルズ インコーポレイティッド (12)
【Fターム(参考)】