説明

GPSレシーバにおけるサーチ周波数の設定方法、GPSレシーバ、及び、車載器

【課題】 TTFFを効率良く短くさせることができる。
【解決手段】 GPS信号を第一のレンジでサーチし、第一のレンジによるサーチを所定回数実行してもGPS信号を捕捉できない場合に第一のレンジよりも広い第二のレンジでGPS信号をサーチし、これを繰り返して段階的にサーチレンジを広げていくサーチステップを含んだ、測位に必要な複数のGPS信号を捕捉する方法であって、GPS信号を捕捉できる状態に移行したか否かを判定する判定ステップと、GPS信号を捕捉できる状態に移行したと判定したときに、サーチステップを、終了させて最初から開始する開始ステップとを含んだ方法を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、測位に必要な複数のGPS信号を捕捉するGPSレシーバにおけるサーチ周波数の設定方法、前記のサーチ周波数の設定方法を用いるGPSレシーバ、及び前記のGPSレシーバを備えた車載器に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System)は、地球を周回するGPS衛星から発信されるGPS信号を用いて位置情報を取得する測位システムであり、例えば車両に搭載されるナビゲーション機能を有した車載器などに利用されている。
【0003】
このような車載器にはGPS信号を捕捉する為のGPSレシーバが備えられている。このGPSレシーバによってGPS信号を捕捉する場合、ドップラー効果による受信周波数の偏位やGPSレシーバに備えられた発振回路の周波数偏差等の各要因を考慮し、サーチする周波数のレンジを適当な値に設定する必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1や非特許文献1には、GPS信号の捕捉を効率良く行う(結果として初期測位までに要する時間(TTFF: Time to First Fix)を短くする)為にサーチ周波数のレンジを適切な値に設定する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平5−256926号公報
【非特許文献1】Bradford W. Parkinson, James J. Spilker Jr., Penina Axelrad, Per Enge 著、「Global Positioning System: Theory & Applications (Volume One)」、American Institute of Aeronautics and Astronautics 出版、1996年1月15日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記特許文献1や非特許文献1に示されたようなサーチ周波数の設定方法では、初期測位を実行するときに車両(より正確にはGPSレシーバ)がGPS信号を受信できない状況(例えば地下駐車場や屋根付き駐車場等)に位置する場合、TTFFを効率良く短くさせることができない。
【0006】
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、初期測位を実行するときにGPSレシーバがGPS信号を受信できない状況にあっても、TTFFを効率良く短くさせることができる、GPSレシーバにおけるサーチ周波数の設定方法、GPSレシーバ、及び、車載器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する本発明の一態様に係るGPSレシーバにおけるサーチ周波数の設定方法は、GPS信号を第一のレンジでサーチし、第一のレンジによるサーチを所定回数実行してもGPS信号を捕捉できない場合に第一のレンジよりも広い第二のレンジでGPS信号をサーチし、これを繰り返して段階的にサーチレンジを広げていくサーチステップを含んだ、測位に必要な複数のGPS信号を捕捉する方法であって、GPS信号を捕捉できる状態に移行したか否かを判定する判定ステップと、GPS信号を捕捉できる状態に移行したと判定したときにサーチステップを終了させて最初から開始する開始ステップとを含んだ方法である。なお、サーチステップにおいて少なくとも1つのGPS信号が捕捉された場合、該少なくとも1つのGPS信号に関しては開始ステップを実行しなくても良い。また、判定ステップは、GPSレシーバが所定領域内に位置するか否かに基づいて実行されるものであっても良い。ここでいう所定領域とは例えば駐車場である。
【0008】
また、上記の課題を解決する本発明の別の態様に係るGPSレシーバにおけるサーチ周波数の設定方法は、GPS信号を捕捉できる状態に移行したか否かを判定し、捕捉できる状態に移行したと判定したときにGPS信号のサーチを再び最初から開始する方法である。
【0009】
また、上記の課題を解決する本発明の一態様に係るGPSレシーバは、上述したGPSレシーバにおけるサーチ周波数の設定方法を用いるものである。
【0010】
また、上記の課題を解決する本発明の一態様に係る車載器は、上記GPSレシーバと、捕捉されたGPS信号に基づいて現在位置情報を生成する位置情報生成手段とを備えたものである。
【0011】
また、上記の課題を解決する本発明の一態様に係る車両に搭載された車載器は、所定領域内に位置するか否かに基づいて上記判定ステップを実行するGPSレシーバと、捕捉されたGPS信号に基づいて現在位置情報を生成する位置情報生成手段と、生成される現在位置情報に対応し、少なくとも前記所定領域の位置情報を含んだ地図データとを備えたものであり、生成された現在位置情報と前記地図データとを比較し、車両が所定領域内に位置するか否かを判定するものである。
【0012】
また、上記の課題を解決する本発明の別の態様に係る車両に搭載された車載器は、所定領域内に位置するか否かに基づいて上記判定ステップを実行するGPSレシーバと、捕捉されたGPS信号に基づいて現在位置情報を生成する位置情報生成手段と、生成される現在位置情報に対応し、少なくとも前記所定領域の位置情報を含んだ地図データとを備えたものであり、検出された方位の変化の頻度及び走行距離に基づき、車両が所定領域内に位置するか否かを判定するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のGPSレシーバにおけるサーチ周波数の設定方法、GPSレシーバ、及び車載器を採用すると、GPS信号を捕捉できない状態から捕捉できる状態に移行したときに、周波数偏差が合致する可能性の高い周波数範囲を迅速に再検索することができ、更には、サーチ時間の短縮を優先した処理を実行する為、TTFFを効率良く短くさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態の車載器の構成及び作用について説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態の車載器200の構成を示したブロック図である。車載器200は、車両(不図示)に搭載された所謂ナビゲーション装置であり、GPSレシーバ100と、デッドレコニング(以下、DRと略記)センサであるジャイロセンサ102、車速センサ104、3Dジャイロセンサ106と、車載器200全体の制御を統括して実行する制御部108と、地図データを含む各種情報を蓄積したメモリ110と、主としてナビゲーション画像が表示されるモニタ112とを備えている。
【0016】
また、図2は、本実施形態のGPSレシーバ100の構成を示したブロック図である。GPSレシーバ100は、複数のGPS信号を捕捉・追尾し、その捕捉・追尾数が所定数に達すると測位演算するものであり、大別して、受信されたGPS信号をダウンコンバートするRF(Radio Frequency)部1と、信号の捕捉から追尾・測位までを実行するデジタル処理部2を備えている。
【0017】
RF部1は、GPSアンテナ10、RF入力部11、BPF(Band Pass Filter)12及び14、LNA(Low Noise Amplifier)13、ダウンコンバータ15、AGC(Auto Gain Control)16、TCXO(Temperature Compensated Crystal Oscillator)17、及び、周波数シンセサイザー18、及び、A/D変換部19を有している。
【0018】
GPSアンテナ10がGPS衛星から発信されるGPS信号を受信すると、その受信信号は、RF入力部11を介してBPF12に入力される。そして所定の帯域のみを通過させる電子フィルタであるBPF12、低雑音増幅器であるLNA13、BPF14を経てGPS帯域外のノイズが減衰され、ダウンコンバータ15に入力される。
【0019】
TCXO17は、ダウンコンバータ15に入力された受信信号の周波数よりも低い周波数を発振する局部発振器である。周波数シンセサイザー18は、TCXO17からの出力に基づいて局部発振器信号を生成し、ダウンコンバータ15に出力する。ダウンコンバータ15は、周波数シンセサイザー18からの局部発振器信号を用い、受信信号であるRF信号を、安定動作や選択特性が改善される中間周波数すなわちIF(Intermediate Frequency)信号に変換する。変換された信号は、AGC16に入力され、そのゲインが調整されて、更にA/D変換部19でサンプリングされ、デジタル処理部2に出力される。
【0020】
デジタル処理部2は、復調部21、測位演算部22、インターフェース23、メモリ27、及び、RTC(Real-Time Clock)28を有している。また、復調部21は、チャンネル25、及び、NCO(Number Controlled Oscillator)26を有している。
【0021】
A/D変換部19からの信号は、チャンネル25に入力されて処理を施される。ここで、GPSレシーバ100は、測位に必要な複数(例えば3つ又は4つ)のGPS信号を同時に捕捉・追尾する。サンプリングされたこれらのGPS信号の各々は別個のチャンネル25で処理される必要がある為、チャンネル25は複数備えられている。
【0022】
各チャンネル25では、数値制御された周波数を発振する発振器であるNCO26の出力に基づいてドップラーを除去し、少なくとも1つのコリレータによるコード相関検出及び積算処理が実行され、測位演算部22に出力される。測位演算部22は、各チャンネル25からの信号に関する測定値を算出する。なお、NCO26には、周波数シンセサイザー18から基準クロックが入力されている。このNCO26では、キャリアに関するNCO制御、PRN(Pseudo Random Noise)コードのリファレンスコード生成、コードに関するNCO制御を実行している。
【0023】
ここで、各チャンネル25に入力される信号に基づいて所望の測定値を得る処理について説明する。GPS信号を捕捉する為に必要なサーチ周波数のレンジは、主として、ドップラー効果による受信周波数の偏位と、TCXO17のばらつき(個体差や経年変化)及び変動(温度特性や電源変動)等の偏差によって決定される。先ず、測位演算部22が、衛星の軌道情報である航法データ、前回測位位置、及び、現在時刻に基づいて当該信号のドップラー周波数とコード位相のサーチレンジを推定し、それらの設定値を生成してNCO26に出力する。
【0024】
測位演算部22は、NCO26に値を設定し、各チャンネル25で実行される処理であって、GPS信号を追尾して測定値を得、GPS信号に含まれた航法データ等を取得する為に当該信号をサーチする処理を制御する。また、測位演算部22は、各チャンネル25でサーチされるPRNコードを、各チャンネル25毎に指定する。これにより、各チャンネル25では、設定されたドップラー周波数に基づいてドップラーを除去し、且つ、設定された位相サーチレンジ内において指定されたPRNコードのリファレンスコードとIF信号との相関ピークを検出し、GPS信号として捕捉する。なお、このときの捕捉感度は測位演算部22によって設定される。
【0025】
各チャンネル25では、さらに、測位演算部22に含まれるトラッキングループフィルタ及びNCO26を介して捕捉されたGPS信号のキャリア、コードへのトラッキングエラーを補正し、GPS信号の追尾を続行する。なお、GPS信号の捕捉に失敗した場合には、通常、測位演算部22が、より広いサーチ周波数のレンジ、コード位相のレンジ、及びより高い感度を再設定してNCO26に出力し、NCO26の制御下でチャンネル25において上述の処理が再試行される。
【0026】
測位演算部22は、測位に必要な複数のGPS信号に含まれる航法データを取得し、コード位相(疑似距離)、キャリア周波数(疑似距離レート)、キャリア位相(デルタスードレンジ)、SN比、GPSレシーバ100におけるGPSタイムラグを算出する。そしてこれらのGPS信号からの測定値及びデータに基づいて、位置、速度、方位、時刻を算出(すなわち測位演算)し、インターフェース23を介して制御部108に、測位結果、GPS測位速度及び方位のデータとして出力する。
【0027】
制御部108には、GPSレシーバ100からの信号以外に、ジャイロセンサ102、車速センサ104、及び、3Dジャイロセンサ106からの信号が入力される。ジャイロセンサ102は車両の方位に関する角速度を計測し、車速センサ104は車両の左右の駆動輪の回転速度を検出してその平均速度に応じた車速パルス信号を生成し、3Dジャイロセンサ106は車両の勾配に関する角速度を計測する。
【0028】
制御部108に入力した各種信号(ジャイロセンサ102、車速センサ104、及び、3Dジャイロセンサ106からの信号)は、GPSレシーバ100からのGPS測位速度及び方位のデータに基づいてキャリブレーションされ、その後DR演算に用いられる(すなわち車両の進行方向及び距離の演算が成される)。
【0029】
制御部108は、演算したDR測位結果及びGPSレシーバ100からのGPS測位結果と、夫々の測位結果に対する誤差推定値とを比較することにより、高精度と判定される測位結果を選択し、選択された測位結果をマップマッチングする。また、制御部108は、各測位結果に基づいて、現在位置周辺のデジタル地図データをメモリ110から抽出し、地図データと共に車両の現在位置を示す自車位置マークをモニタ112に出力する。これにより、モニタ112にナビゲーション情報を含む各種情報が表示される。
【0030】
なお、ここでいうマップマッチングとは、モニタ112に表示されている地図中の道路から外れた位置に自車位置マークが表示されるなどの誤差を補正することを示す。マップマッチングを行うことによって自車位置と地図との整合性が取れ、運転手は自車の現在位置を正確に知ることができる。
【0031】
また、メモリ110に蓄積されたデジタル地図データは、GPS信号が遮蔽されて受信できない場所(例えば、地下駐車場や、屋根付き駐車場、タワー型駐車場等の屋内駐車場)や屋外駐車場の位置データを含む。制御部108は、GPS測位結果に基づいて取得された位置情報の履歴から推定される現在位置情報とデジタル地図データとを比較して当該車両が例えば地下駐車場に位置すると判定したとき(又は、GPS測位結果に基づいて取得された現在位置情報とデジタル地図データとを比較して当該車両が例えば屋外駐車場に位置すると判定したとき)、ユーザに正確な自車位置を提供すると共に車両が道路に復帰したときに起こり得る誤ったマッチングを防止する為、意図的にマップマッチングを実行しない。なお、このような駐車場判定処理を実行するタイミングとしては、後述するシーケンス初期化処理(図4)を実行するとき以外に、主として、GPS測位結果とDR測位結果とを統合する自車位置更新時等が想定される。
【0032】
上記の如き駐車場判定処理は、デジタル地図データに上記位置データが含まれていない場合であっても可能である。一例として、車両が、道路走行時は直線走行距離が比較的長くて走行速度が速い事と、駐車場内では方向転換が多くて直線走行距離が短く且つ走行速度が遅い事とを利用した駐車場判定処理であって、車両の方位変化量や大きな方位変化の頻度、及び走行距離や走行速度の履歴等に基づいて駐車場判定処理を実行することが挙げられる。
【0033】
ここで、本実施形態のGPSレシーバ100の測位演算部22が実行する、GPS信号を捕捉する為のサーチ周波数設定処理について説明する。図3は、本実施形態のサーチ周波数設定処理を示すフローチャートである。
【0034】
なお、図3のサーチ周波数設定処理は、車載器200の電源(不図示)がオンされると開始され、捕捉・追尾したGPS信号が測位に必要な数に達して測位を開始した時点、或いは電源がオフされた時点で終了する。また、このサーチ周波数設定処理は、初期測位が完了した後には実行されない。
【0035】
車載器200の電源をオンすると、測位演算部22は、自身に内蔵されているカウンタのカウント値Rを0に設定し(ステップ1、以下、ステップを「S」と略記)、カウント値Rを1インクリメントする(S2)。そしてGPS信号を現在のカウント値Rに該当するレンジ(ここではR=1の為、第一のレンジ)でサーチするような設定値をNCO26に出力し(S3)、S4の処理に進む。これにより、各チャンネル25において、GPS信号が第Rのレンジ(ここでは第一のレンジ)でサーチされる。
【0036】
なお、ここでいう第一のレンジは、GPS信号を含む確率が高い周波数帯域に相当するものであり、スペック上の周波数帯域を満足することよりもサーチ時間の短縮を優先して充分に狭い範囲に設定される。具体的には、第一のレンジは、TCXO17のばらつきをキャンセルする為に、初期設定のサーチ周波数の中央値から前回の処理におけるTCXO17の上記偏差分をシフトした値をサーチ中心周波数として設定され、このサーチ中心周波数に対し、上記充分に狭い範囲を高周波側にシフトさせたときの値をサーチ周波数の上限値とし、同範囲を低周波側にシフトさせたときの値をサーチ周波数の下限値として設定されたものである。すなわち第一のレンジは、これら上限値から下限値までの周波数帯域に相当する。
【0037】
第一のレンジは比較的狭い為、このレンジを適用した場合、条件によっては合致する周波数偏差がレンジ外であり得、GPS信号を捕捉できない可能性もあるが、サーチ時間が短いというメリットがある。第一のレンジによるサーチ処理はスペック上の周波数を満足することよりもサーチ時間の短縮を優先している為、GPS信号の周波数が第一のレンジ内にある場合には当該GPS信号を短時間で捕捉できる。第一のレンジによってサーチ処理を実行すると、統計的に見た場合にTTFFが短くなる。なお、第一のレンジによるサーチ処理によって捕捉したGPS信号の数が測位に必要な数に達して初期測位が可能となった場合(S4:YES)、後述の第二のレンジ以降によるサーチ処理を実行することなく本フローチャートは終了する。
【0038】
S4の処理において現在のレンジ(ここでは第一のレンジ)で初期測位ができないと判定した場合(S4:NO)、測位演算部22は、カウント値RがNであるか否かを判定し(S5)、Nでない場合(S5:NO)、測位に必要な数のGPS信号をより確実に捕捉する為に、そのサーチレンジを現在のレンジより広いレンジに設定し(例えば前回のレンジが第一のレンジの場合、S2の処理を経て第二のレンジが設定される)、サーチ処理を再度実行する。なお、測位に至らずとも、現在までのサーチ処理で捕捉できたGPS信号に関しては追尾したままであり、捕捉できていないGPS信号に関してのみ再設定されたレンジによるサーチ処理を実行する。このように、本実施形態では、徐々にサーチレンジを広げていき、初期測位が可能になるまで処理が続行される。なお、カウント値RがNである(すなわち第Nのレンジでサーチ処理を実行した)場合(S5:YES)、測位演算部22は、S1の処理に戻り、第1のレンジから徐々にレンジを広げてサーチする一連の処理を再び実行する。
【0039】
ここでいう第Nのレンジとは、GPS信号を確実に捕捉する為のレンジであって、ドップラー効果による受信周波数の偏位、TCXO17のばらつき及び変動の全てを加味したレンジである。第Nのレンジは比較的広い為、第Nのレンジによるサーチ処理では、GPS信号を受信可能な状態ならば確実に合致する周波数偏差を検出して追尾に至れるがサーチ時間が長くなる。
【0040】
以上が、本実施形態においてGPS信号を捕捉する為に実行されるサーチ周波数設定処理である。しかしながら図3のサーチ周波数設定処理だけでは、車両が、例えば車載器200の電源投入時に地下駐車場に位置し、移動してGPS信号を捕捉できる状態になったときに、測位演算部22が、既に第Nのレンジでサーチ処理を実行していることも想定される。この場合、サーチ時間の短縮よりもスペック上の周波数偏差範囲の満足を優先したサーチが行われている為、TTFFを効率良く短くさせることが難しい。本実施形態では、このようなTTFFの効率の低下を改善する為に、制御部108が、以下に説明されるシーケンス初期化処理(図4のフローチャート)を実行する。なお、ここでいうシーケンスとは、図3のサーチ周波数設定処理そのものを示すものであり、便宜上付した名称である。
【0041】
なお、図4のシーケンス初期化処理は、図3のサーチ周波数設定処理と同様に、車載器200の電源(不図示)がオンされると開始され、電源がオフされた時点で終了する。
【0042】
また、捕捉・追尾したGPS信号を用いて測位を開始したときに、例えば測位演算部22が制御部108に対して図4のシーケンス初期化処理を強制的に終了させる信号を出力することによっても終了する。例えば車両が屋外に位置している為に電源オンして直ぐに測位可能となった場合には、この強制終了信号が直ぐさま制御部108に入力される為、このシーケンス初期化処理は実質的には機能しない。
【0043】
車載器200の電源をオンすると、制御部108は、上述した屋内駐車場判定処理(位置情報の履歴から推定される現在位置情報と、デジタル地図データに含まれる屋内駐車場の位置データとの比較によるものや、車両の方位変化量や大きな方位変化の頻度、及び走行距離や走行速度の履歴によるもの)を実行する(S11)。
【0044】
S11の処理において、車両(より正確にはGPSレシーバ100)が屋内駐車場に位置していないと判定した場合(S11:NO)、制御部108は、所定のタイミング後に再びS11の処理を実行する。また、車両が屋内駐車場に位置していると判定した場合(S11:YES)、制御部108は、当該車両が現在位置する屋内駐車場から移動したか否かを判定する(S12)。
【0045】
S12の処理において、車両が屋内駐車場から移動していないと判定した場合(S12:NO)、制御部108は、GPS信号を捕捉できる状態になっていないと判断し、所定のタイミング後に再びS12の処理を実行する。また、車両が屋内駐車場から移動したと判定した場合(S12:YES)、制御部108は、GPS信号を捕捉できる状態になったと判断し、測位演算部22に対して上記シーケンスの初期化命令を発行し(S13)、S11の処理に戻る。これにより、測位演算部22は、処理中の上記シーケンスを中止し、当該シーケンスを再び最初から開始する。すなわち例えば第二のレンジでサーチ中であっても再び第一のレンジでサーチ処理を開始する。この為、GPS信号を捕捉できない状態から捕捉できる状態になったときに、周波数偏差が合致する可能性の高い周波数範囲を迅速に再検索することができ、サーチ時間の短縮を優先した処理を確実に実行することができる。従って、TTFFを効率良く短くさせることができる。
【0046】
なお、S13の処理では、屋内駐車場であるにも拘わらず捕捉できたGPS信号がある場合を想定して、捕捉できたGPS信号に関しては追尾を続行し、捕捉できていないGPS信号に関してのみ上記シーケンスを初期化する命令を発行する。これにより、本実施形態のサーチ周波数の設定方法を採用したことによるTTFFの効率の低下がなくなる。
【0047】
また、図5に、別の実施形態において実施される処理であり、本実施形態のシーケンス初期化処理に相当するシーケンスリセット処理のフローチャートを示す。
【0048】
なお、図5のシーケンスリセット処理は、図4のシーケンス初期化処理と同様に、車載器200の電源(不図示)がオンされると開始され、電源がオフされた時点で終了する。
【0049】
また、少なくとも1つのGPS信号を捕捉・追尾したときに、例えば測位演算部22が制御部108に対してその旨を報知する信号を出力すると、当該制御部108は、後述するリセット命令を発行する必要がないと判定し、このシーケンスリセット処理を終了する。すなわちこの実施形態では、GPS信号を1つでも捕捉できた場合にはシーケンスを初期化する処理を実行しない。
【0050】
車載器200の電源をオンすると、制御部108は、図4のシーケンス初期化処理と同様に、上述した屋内駐車場判定処理を実行する(S21)。そして車両が屋内駐車場に位置していないと判定した場合(S21:NO)、制御部108は、所定のタイミング後に再びS21の処理を実行する。また、車両が屋内駐車場に位置していると判定した場合(S21:YES)、制御部108は、当該車両が現在位置する屋内駐車場から移動したか否かを判定する(S22)。
【0051】
S22の処理において、車両が屋内駐車場から移動していないと判定した場合(S22:NO)、制御部108は、GPS信号を捕捉できる状態になっていないと判断し、所定のタイミング後に再びS22の処理を実行する。また、車両が屋内駐車場から移動したと判定した場合(S22:YES)、制御部108は、GPS信号を捕捉できる状態になったと判断し、測位演算部22に対して上記シーケンスのリセット命令を発行し(S23)、S21の処理に戻る。これにより、測位演算部22は、処理中の上記シーケンスを中止し、当該シーケンスを再び最初から開始する。
【0052】
この実施形態では、GPS信号を捕捉できない状態から捕捉できる状態になったときに、少なくとも1つのGPS信号を捕捉・追尾したとき以外に限り、サーチ時間の短縮を優先した処理を確実に実行することができる。
【0053】
以上が本発明の実施形態である。本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく様々な範囲で変形が可能である。
【0054】
なお、本実施形態では図4のシーケンス初期化処理を制御部108が実行しているが、別の実施形態ではGPSレシーバ100内部で実行してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態の車載器の構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態の車載器に備えられたGPSレシーバの構成を示したブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態のGPSレシーバが有した測位演算部が実行するサーチ周波数設定処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態の車載器が有した制御部が実行するシーケンス初期化処理を示すフローチャートである。
【図5】別の実施の形態の車載器が有した制御部が実行するシーケンスリセット処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
1 RF部
2 デジタル処理部
17 TCXO
21 復調部
22 測位演算部
25 チャンネル
26 NCO
100 GPSレシーバ
108 制御部
110 メモリ
112 モニタ
200 車載器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS信号を第一のレンジでサーチし、前記第一のレンジによるサーチを所定回数実行してもGPS信号を捕捉できない場合に前記第一のレンジよりも広い第二のレンジでGPS信号をサーチし、これを繰り返して段階的にサーチレンジを広げていくサーチステップを含んだ、測位に必要な複数のGPS信号を捕捉するGPSレシーバにおけるサーチ周波数の設定方法であって、
GPS信号を捕捉できる状態に移行したか否かを判定する判定ステップと、
GPS信号を捕捉できる状態に移行したと判定したときに、前記サーチステップを、終了させて最初から開始する開始ステップと、を含んだこと、を特徴とするGPSレシーバにおけるサーチ周波数の設定方法。
【請求項2】
前記サーチステップにおいて少なくとも1つのGPS信号が捕捉された場合、該少なくとも1つのGPS信号に関しては前記開始ステップを実行しないこと、を特徴とする請求項1に記載のGPSレシーバにおけるサーチ周波数の設定方法。
【請求項3】
前記判定ステップは、前記GPSレシーバが所定領域内に位置するか否かに基づいて実行されること、を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のGPSレシーバにおけるサーチ周波数の設定方法。
【請求項4】
前記所定領域が駐車場であること、を特徴とする請求項3に記載のGPSレシーバにおけるサーチ周波数の設定方法。
【請求項5】
GPSレシーバにおけるサーチ周波数の設定方法において、
GPS信号を捕捉できる状態に移行したか否かを判定し、
捕捉できる状態に移行したと判定したときにGPS信号のサーチを再び最初から開始すること、を特徴とするGPSレシーバにおけるサーチ周波数の設定方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のGPSレシーバにおけるサーチ周波数の設定方法を用いること、を特徴とするGPSレシーバ。
【請求項7】
請求項6に記載のGPSレシーバと、捕捉されたGPS信号に基づいて現在位置情報を生成する位置情報生成手段と、を備えたこと、を特徴とする車載器。
【請求項8】
請求項3又は請求項4のいずれかに記載のGPSレシーバにおけるサーチ周波数の設定方法を用いるGPSレシーバと、捕捉されたGPS信号に基づいて現在位置情報を生成する位置情報生成手段と、生成される現在位置情報に対応し、少なくとも前記所定領域の位置情報を含んだ地図データと、を備え、車両に搭載された車載器であって、
生成された現在位置情報と前記地図データとを比較し、前記車両が前記所定領域内に位置するか否かを判定すること、を特徴とする車載器。
【請求項9】
車両に搭載され、請求項3又は請求項4のいずれかに記載のGPSレシーバにおけるサーチ周波数の設定方法を用いるGPSレシーバと、前記車両の方位を検出する方位検出手段と、前記車両の走行距離を検出する距離検出手段と、を備えた車載器であって、
検出された方位の変化の頻度及び走行距離に基づき、前記車両が前記所定領域内に位置するか否かを判定すること、を特徴とする車載器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−250681(P2006−250681A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67008(P2005−67008)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】