説明

HCVNS3−NS4Aプロテアーゼの阻害

【課題】C型肝炎ウイルス(HCV)非遺伝子型1 NS3−NS4Aプロテアーゼ活性の活性阻害方法の提供。
【解決手段】該プロテアーゼを該プロテアーゼの活性を阻害するのに有効な量のVX−950(競合的可逆的ペプチドミミックNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤)またはその製薬上許容される塩、および免疫調節剤、シトクロムp45阻害剤、抗ウイルス剤、HCVプロテアーゼの第2の阻害剤、HCVの生活環中の他の標的の阻害剤、またはそれらの組合せから選択される追加の薬剤を患者に投与する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、セリンプロテアーゼの活性、とくに、C型肝炎ウイルスのNS3−NS4Aプロテアーゼの活性を阻害する化合物に関する。したがって、該化合物は、C型肝炎ウイルスの生活環を阻害することにより作用し、抗ウイルス剤としても有用である。本発明はさらに、ex vivoで使用するためのまたはHCV感染症に罹患している患者に投与するための組成物に関する。本発明はまた、本発明に係る組成物を投与することにより患者においてHCV感染症を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
C型肝炎ウイルス(「HCV」)の感染は、切実なヒト医学上の問題である。HCVは、非A型非B型肝炎のほとんどの症例の原因因子として認識され、全世界で3%の推定ヒト血清有病率を有する[A. Alberti et al., ”Natural History of Hepatitis C,” J. Hepatology, 31., (Suppl. 1), pp. 17-24 (1999)]。米国だけでも、およそ400万人が感染している可能性がある[M.J. Alter et al., ”The Epidemiology of Viral Hepatitis in the United States, Gastroenterol. Clin. North Am., 23, pp. 437-455 (1994); M. J. Alter ”Hepatitis C Virus Infection in the United States,” J. Hepatology, 31., (Suppl. 1), pp. 88-91 (1999)]。
【0003】
HCVに初めて暴露されたとき、感染者のわずか約20%が急性臨床的肝炎を発症するにすぎず、他の者は、感染を自発的に消散させるように思われる。しかしながら、症例のほぼ70%において、このウイルスは、何十年にもわたり持続する慢性感染症を定着させる[S. Iwarson, ”The Natural Course of Chronic Hepatitis,” FEMS Microbiology Reviews, 14, pp. 201-204 (1994); D. Lavanchy, ”Global Surveillance and Control of Hepatitis C,” J. Viral Hepatitis, 6, pp. 35-47 (1999)]。この結果、通常、肝炎の再発および進行性悪化が起こり、それにより、多くの場合、肝硬変や肝細胞癌のようなより重篤な疾患状態を生じる[M.C. Kew, ”Hepatitis C and Hepatocellular Carcinoma”, FEMS Microbiology Reviews, 14, pp. 211-220 (1994); I. Saito et al., ”Hepatitis C Virus Infection is Associated with the Development of Hepatocellular Carcinoma,” Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, pp. 6547-6549 (1990)]。残念ながら、慢性HCV症の衰弱性進行に対する広く有効な治療法は存在しない。
【0004】
HCVゲノムは、3010〜3033個のアミノ酸よりなるポリタンパク質をコードする[Q.L. Choo, et al., ”Genetic Organization and Diversity of the Hepatitis C Virus.” Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88, pp. 2451-2455 (1991); N. Kato et al., ”Molecular Cloning of the Human Hepatitis C Virus Genome From Japanese Patients with Non-A, Non-B Hepatitis," Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, pp. 9524-9528 (1990); A. Takamizawa et al., "Structure and Organization of the Hepatitis C Virus Genome Isolated From Human Carriers," J. Virol., 65, pp. 1105-1113 (1991)]。HCVの非構造(NS)タンパク質は、ウイルスの複製に不可欠な触媒機構を提供するものと推定される。NSタンパク質は、ポリタンパク質のタンパク質分解切断により誘導される[R. Bartenschlager et al., ”Nonstructural Protein 3 of the Hepatitis C Virus Encodes a Serine-Type Proteinase Required for Cleavage at the NS3/4 and NS4/5 Junctions,” J. Virol., 67, pp. 3835-3844 (1993); A. Grakoui et al., "Characterization of the Hepatitis C Virus-Encoded Serine Proteinase: Determination of Proteinase-Dependent Polyprotein Cleavage Sites," J. Virol., 67, pp. 2832-2843 (1993); A. Grakoui et
al., "Expression and Identification of Hepatitis C Virus Polyprotein Cleavage Products," J. Virol., 67, pp. 1385-1395 (1993); L. Tomei et al., "NS3 is a serine protease required for processing of hepatitis C virus polyprotein", J. Virol., 67, pp. 4017-4026 (1993)]。
【0005】
HCVのNSタンパク質3(NS3)は、ウイルス酵素の大多数のプロセシングを助けるセリンプロテアーゼ活性を含有するので、ウイルスの複製および感染力に不可欠であると考えられる。チンパンジーにおいて触媒性トライアドの置換が感染力の消失を引き起こしたので、HCV NS3セリンプロテアーゼは、ウイルスの複製に不可欠である[A.A. Kolykhalov et al., ”Hepatitis C virus-encoded enzymatic activities and conserved RNA elements in the 3’ nontranslated region are essential for virus replication in vivo”, J. Virol., 74: 2046-2051]。NS3の最初の181個のアミノ酸(ウイルスポリタンパク質の残基1027〜1207)は、HCVポリタンパク質の4つの下流部位すべてのプロセシングを行うNS3のセリンプロテアーゼドメインを含有することが明らかにされている[C. Lin et al., ”Hepatitis C Virus NS3 Serine Proteinase: Trans-Cleavage Requirements and Processing Kinetics”, J. Virol., 68, pp. 8147-8157 (1994)]。
【0006】
HCV NS3セリンプロテアーゼおよびその関連補因子NS4Aは、ウイルスの非構造タンパク質領域から個々の非構造タンパク質(ウイルスの酵素すべてを包含する)へのプロセシングを助ける。このプロセシングは、ヒト免疫不全ウイルスのアスパルチルプロテアーゼ(ウイルスタンパク質のプロセシングにも関与する)により行われるものと類似しているように思われる。HIVプロテアーゼ阻害剤(ウイルスタンパク質のプロセシングを阻害する)が、ヒトにおいて強力な抗ウイルス剤であることから、ウイルスの生活環のこの段階を中断すれば、治療上有効な薬剤が得られることが示唆される。したがって、それは、薬剤探索の魅力的な標的である。
【0007】
HCV プロテアーゼの阻害剤として可能性のあるものが先行技術でいくつか報告されている[PCT publication Nos. WO 02/18369, WO 02/08244, WO 00/09558, WO 00/09543, WO 99/64442, WO 99/07733, WO 99/07734, WO 99/50230, WO 98/46630, WO 98/17679 and WO 97/43310, United States Patent 5,990,276, M. Llinas-Brunet et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 8, pp. 1713-18 (1998); W. Han et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 10, 711-13 (2000); R. Dunsdon et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 10, pp. 1571-79 (2000); M. Llinas-Brunet et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 10, pp. 2267-70 (2000); and S. LaPlante et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 10, pp. 2271-74 (2000)]。しかしながら、これらの化合物が許容しうる薬剤として適切なプロファイルを有しているかどうかは、わかっていない。さらに、これらの阻害剤は、全部ではないにしてもほとんどが、標的として遺伝子型1(1aまたは1b)のNS3−4Aセリンプロテアーゼを用いて見いだされたものであった。しかしながら、HCVにはさまざまな遺伝子型が存在し、各遺伝子型内にさまざまなサブタイプが存在する。たとえば、現在、HCVには11種(1〜11の番号が付けられている)の主要な遺伝子型が存在することが知られているが、遺伝子型を6種の主要な遺伝子型として分類する人たちもいる。これらの各遺伝子型はさらに、サブタイプ(1a〜1c、2a〜2c、3a〜3b、4a〜4e、5a、6a、7a〜7b、8a〜8b、9a、10a、および11a)に細分される。
【0008】
サブタイプの存在割合は、以下のように全世界的に異なっている。
【表1】

【0009】
現在の科学的考えは、HCVの遺伝子型またはサブタイプが治療に対する患者の応答性を決定しうるということである。HCVのゲノムの複雑度とインターフェロン療法に対する患者の応答との間に相関があることが知られているが、この相関の理由は、明らかでない。遺伝子型2のHCVウイルスおよび遺伝子型3のHCVウイルスに感染した患者は、遺伝子型1のHCVに感染した患者とは異なる度合いで従来療法に応答することが一般に認められる。このため、遺伝子型1 HCVプロテアーゼに対していくつかのHCVプロテアーゼ阻害剤が設計/探索されてきたが、これらの阻害剤が遺伝子型2 HCVや遺伝子型3 HCVなどのような他の遺伝子型のHCV NS3−4Aセリンプロテアーゼを効果的に阻害するかどうかは、明らかでない。
【0010】
したがって、HCVに関する現在の理解は、なんら満足すべき抗HCV剤や抗HCV治療をもたらすに至っていない。HCV疾患に対する唯一の確立された療法は、ペグ化インターフェロンとリバビリンとの組合せ治療である。しかしながら、インターフェロンは、有意な副作用を有し[M. A. Wlaker et al., "Hepatitis C Virus: An Overview of Current Approaches and Progress," DDT, 4, pp. 518-29 (1999); D. Moradpour et al., "Current and Evolving Therapies for Hepatitis C," Eur. J. Gastroenterol. Hepatol., 11, pp. 1199-1202 (1999); H. L. A. Janssen et al. "Suicide Associated with Alfa-Interferon Therapy for Chronic Viral Hepatitis," J. Hepatol., 21, pp. 241-243 (1994); P.F. Renault et al., "Side Effects of Alpha Interferon," Seminars in Liver Disease, 9, pp. 273-277. (1989)]、症例のごく一部だけ(約25%)で長期寛解をもたらすにすぎない[O. Weiland, ”Interferon Therapy in Chronic Hepatitis C Virus Infection” , FEMS Microbiol. Rev., 14, pp. 279-288 (1994)]。それに加えて、この組合せ治療は、遺伝子型2または3のHCVに感染した患者では約80%の持続性ウイルス応答(SVR)を有し、遺伝子型1のHCVに感染した患者では40〜50%のSVRを有する[J.G. McHutchison, et al., N. Engl. J. Med., 339: 1485-1492 (1998); G.L. Davis et al., N. Engl. J. Med., 339: 1493-1499 (1998)]。さらに、有効な抗HCVワクチンの見通しは、不明確なままである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、より有効な抗HCV療法、とくに、HCV NS3プロテアーゼを阻害する化合物に対する必要性が存在する。そのような化合物は、抗ウイルス剤とくに抗HCV剤として有用でありうる。種々の遺伝子型のHCVセリンプロテアーゼを阻害する化合物に対する必要性も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明は、VX−950を用いて遺伝子型2および遺伝子型3のHCVを阻害する方法を提供することにより、これらの必要性に対処する。遺伝子型2および遺伝子型3のHCVを特異的に阻害する点でVX−950は他のプロテアーゼ阻害剤よりも優れていることが本発明に例示されているが、他の非遺伝子型1のHCV遺伝子型であってもVX−950により効果的に阻害されうると考えられる。
【0013】
本発明はまた、VX−950を含む組成物およびその使用に関する。そのような組成物は、患者に挿入される侵襲的デバイスを前処理したり、血液のような生物学的サンプルを患者への投与前に処理したり、患者に直接投与したりするために使用することが可能である。いずれの場合も、組成物は、HCVの複製を阻害したりHCV感染症にかかる危険性やHCV感染症の重症度を低減したりするために使用されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】11種の遺伝子型2 HCV NS3セリンプロテアーゼドメインのアミノ酸配列のアライメント
【図2】遺伝子型2aのNS3セリンプロテアーゼドメインのコンセンサスアミノ酸配列およびコンセンサスヌクレオチド配列
【図3】6種の遺伝子型3 HCV NS3セリンプロテアーゼドメインのアミノ酸配列のアライメント。
【図4】遺伝子型3aのNS3セリンプロテアーゼドメインのコンセンサスアミノ酸配列およびコンセンサスヌクレオチド配列。
【図5】それぞれの遺伝子型または遺伝子サブタイプ1a、1b、2a、2b、3a、および3bのコンセンサスアミノ酸配列のアライメント。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、遺伝子型2または遺伝子型3のプロテアーゼをVX−950に接触させることにより遺伝子型2および遺伝子型3のプロテアーゼを単独にまたは同時に阻害する方法を提供する。
【0016】
VX−950は、3nMの定常状態結合定数(ki)(および8nMのKi)を有する競合的可逆的ペプチドミミックNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤である[WO 02/018369]。VX−950は、一般的には、当業者に公知の方法により調製可能である(たとえば、WO 02/18369を参照されたい)。
【化1】

【0017】
本発明に係る化合物は、1個以上の不斉炭素原子を含有しうるので、ラセミ体およびラセミ混合物、単一のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物および個別のジアステレオマーとして存在しうる。当該化合物のそのような異性形はすべて、本発明に明示的に包含される。各ステレオジェン炭素は、R配置またはS配置をとりうる。
【0018】
たとえば、特定の実施形態では、使用される化合物は、以下の構造:
【化2】

【0019】
に示されるようにN−プロピル側鎖におけるD異性体とL異性体との混合物でありうる。出発化合物としてたとえばVX−950または構造Aで示される化合物を用いてラショナルドラッグデザインを介して創出される他の薬剤をプロテアーゼ阻害剤としての活性に関して試験することも可能である。
【0020】
好ましくは、本発明に係る化合物は、VX−950に包含される化合物に示される構造および立体化学を有する。
【0021】
本発明の他の実施形態は、VX−950またはその製薬上許容される塩を含む組成物を提供する。好ましい実施形態によれば、VX−950は、サンプルにおいてまたは患者においてウイルス負荷(ただし、該ウイルスは、ウイルスの生活環に必要なセリンプロテアーゼをコードする)を減少させるのに有効な量でかつ製薬上許容される担体中に存在する。
【0022】
本発明に係る化合物の製薬上許容される塩を当該組成物で利用する場合、該塩は、好ましくは、無機または有機の酸および塩基から誘導される。そのような酸塩に包含されるのは、次の化合物、すなわち、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、1/2硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニル−プロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、およびウンデカン酸塩である。塩基塩には、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(たとえば、ナトリウム塩およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(たとえば、カルシウム塩およびマグネシウム塩)、有機塩基との塩(たとえば、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミン塩)、およびアミノ酸(たとえば、アルギニン、リシンなど)との塩が包含される。
【0023】
また、塩基性窒素含有基は、低級アルキルハリド(たとえば、メチル、エチル、プロピル、およびブチルのクロリド、ブロミド、およびヨージド)、ジアルキルスルファート(たとえば、ジメチル、ジエチル、ジブチル、およびジアミルのスルファート)、長鎖ハリド(たとえば、デシル、ラウリル、ミリスチル、およびステアリルのクロリド、ブロミド、およびヨージド)、アラルキルハリド(たとえば、ベンジルおよびフェネチルのブロミド)などのような作用剤で四級化可能である。それにより水または油に溶解可能または分散可能な生成物が得られる。
【0024】
本発明に係る組成物および方法で利用される化合物はまた、選択的生物学的性質を向上させるために、適切な官能基を付加することにより修飾可能である。そのような修飾は、当技術分野で公知であり、所与の生体系(たとえば、血液、リンパ系、中枢神経系)中への生物学的浸透を増大させたり、経口利用可能性を増大させたり、注射による投与が可能になるように溶解度を増大させたり、代謝を改変したり、排泄速度を改変したりする修飾を包含する。
【0025】
当該組成物で使用しうる製薬上許容される担体としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(たとえば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(たとえば、リン酸塩)、グリシン、ソルビン酸、カリウムソルベート、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(たとえば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
好ましい実施形態によれば、本発明に係る組成物は、哺乳動物、好ましくはヒトへの医薬投与のために製剤化される。
【0027】
本発明に係るそのような医薬組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーにより、局所的に、直腸内に、鼻内に、口腔内に、膣内に、または移植レザバーを介して投与可能である。本明細書中で使用される「非経口」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、脊髄内、肝臓内、病変内、および頭蓋内への注射または注入の技術を包含する。好ましくは、組成物は、経口的にまたは静脈内に投与される。
【0028】
本発明に係る滅菌注射剤形態の組成物は、水性懸濁剤または油性懸濁剤でありうる。これらの懸濁剤は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて当技術分野で公知の技術に従って製剤化可能である。滅菌注射調剤はまた、非毒性の非経口的に許容しうる希釈剤中または溶媒中(たとえば、1,3−ブタンジオール溶液として)の滅菌注射溶液剤または滅菌注射懸濁剤でありうる。利用可能な許容しうる媒体および溶媒には、水、リンゲル溶液、および等張塩化ナトリウム溶液が包含される。そのほかに、滅菌固定油が、溶媒または懸濁媒体として従来から利用されている。この目的のために、合成のモノ−またはジ−グリセリドをはじめとする任意の無刺激性固定油を利用することが可能である。オレイン酸のような脂肪酸およびそのグリセリド誘導体は、オリーブ油やヒマシ油(とくに、それらのポリオキシエチル化体)のような天然の製薬上許容される油の場合と同じように注射剤の調製に有用である。これらの油溶液剤または油懸濁剤は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤(たとえば、カルボキシメチルセルロースもしくはエマルジョン剤や懸濁剤をはじめとする製薬上許容される製剤の製剤化に一般に使用される類似の分散剤)をも含有しうる。他の一般に使用される界面活性剤(たとえば、Tween、Span、および他の乳化剤)または製薬上許容される固形製剤、液状製剤、もしくは他の製剤の製造に一般に使用される生物学的利用能向上剤もまた、製剤化の目的に使用しうる。
【0029】
1日あたり約0.01〜約100mg/kg(体重)、好ましくは1日あたり約0.5〜約75mg/kg(体重)の投与レベルの本明細書に記載のプロテアーゼ阻害化合物が、ウイルス疾患に対する、とくにHCV媒介疾患に対する予防および治療のための単独療法に有用である。典型的には、本発明に係る医薬組成物は、1日あたり約1〜約5回または他の選択肢として連続注入として投与されるであろう。そのような投与は、長期療法または短期療法として使用可能である。単一製剤を作製するために担体材料と組み合わせうる活性成分の量は、治療対象の宿主および特定の投与形態によって異なるであろう。典型的な調剤は、約5%〜約95%の活性化合物(w/w)を含有するであろう。好ましくは、そのような調剤は、約20%〜約80%の活性化合物を含有する。熟練診療医であればわかることであるが、インターフェロンの用量は、典型的には、IU単位で測定される(たとえば、約400万IU〜約1200万IU)。
【0030】
本発明に係る組成物がVX−950と1種以上の追加の治療剤または予防剤との組合せを含む場合、これらの化合物および追加の薬剤はいずれも、単独療法レジメンで通常投与される用量の約10〜100%、より好ましくは約10〜80%の投与レベルで存在することが望ましい。
【0031】
本発明に係る医薬組成物は、任意の経口的に許容しうる製剤、たとえば、限定されるものではないが、カプセル剤、錠剤、水性懸濁剤、または水溶液剤として経口投与可能である。経口用途の錠剤の場合、一般に使用される担体としては、ラクトースおよびトウモロコシデンプンが挙げられる。典型的には、マグネシウムステアレートのような滑沢剤もまた添加される。カプセル剤形態で経口投与する場合、有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンが挙げられる。水性懸濁剤が経口用途に必要とされる場合、活性成分は、乳化剤および懸濁化剤と組み合わされる。所望により、特定の甘味剤、風味剤、または着色剤もまた添加可能である。
【0032】
他の選択肢として、本発明に係る医薬組成物は、直腸内投与に供すべく坐剤の形態で投与可能である。これらは、薬剤を室温では固体であるが直腸温では液体である好適な非刺激性賦形剤と混合することにより調製可能であり、したがって、直腸内で融解して薬剤を放出するであろう。そのような材料としては、ココアバター、蜜蝋、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0033】
本発明に係る医薬組成物はまた、とくに、治療の標的が局所適用で容易に到達可能な領域または器官を含む場合(たとえば、眼、皮膚、または下部腸管の疾患)、局所投与することも可能である。これらの領域または器官のそれぞれに好適な局所製剤は、容易に調製される。
【0034】
下部腸管に対する局所適用は、直腸坐薬製剤(上記参照)または好適な浣腸製剤で行うことが可能である。局所的経皮貼付剤を使用することも可能である。
【0035】
局所適用の場合、医薬組成物は、1種以上の担体中に懸濁または溶解された活性成分を含有する好適な軟膏剤として製剤化可能である。本発明に係る化合物の局所投与に供される担体としては、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、および水が挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の選択肢として、医薬組成物は、1種以上の製薬上許容される担体中に懸濁または溶解された活性成分を含有する好適なローション剤またはクリーム剤として製剤化可能である。好適な担体としては、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
眼科用途の場合、医薬組成物はまた、ベンジルアルコニウムクロリドのような保存剤を併用してまたは併用せずに、等張性のpH調整された滅菌生理食塩水中のマイクロ粒子化懸濁剤としてまたは好ましくは等張性のpH調整された滅菌生理食塩水中の溶液剤として製剤化可能である。他の選択肢として、眼科用途の場合、医薬組成物は、ワセリン剤のような軟膏剤として製剤化可能である。
【0037】
本発明に係る医薬組成物は、鼻内エアロゾルまたは吸入により投与することも可能である。そのような組成物は、医薬製剤分野で周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールもしくは他の好適な保存剤、生物学的利用能を向上させる吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を利用して生理食塩水溶液として調製可能である。
【0038】
最も好ましいのは、経口投与に供すべく製剤化される医薬組成物である。
【0039】
他の実施形態では、本発明に係る組成物は、他の抗ウイルス剤、好ましくは抗HCV剤を追加的に含む。そのような抗ウイルス剤としては、免疫調節剤、たとえば、α−、β−、およびγ−インターフェロン、ペグ化誘導体化インターフェロン−α化合物、ならびにチモシン;他の抗ウイルス剤、たとえば、リバビリン、アマンタジン、およびテルビブジン;C型肝炎プロテアーゼの他の阻害剤(NS2−NS3阻害剤およびNS3−NS4A阻害剤);HCVの生活環中の他の標的の阻害剤、たとえば、ヘリカーゼ阻害剤およびポリメラーゼ阻害剤;リボソーム内部進入の阻害剤;広域ウイルス阻害剤、たとえば、IMPDH阻害剤(たとえば、United States Patent 5,807,876、6,498,178、6,344,465、6,054,472、WO 97/40028、WO 98/40381、WO 00/56331に記載の化合物、ならびにミコフェノール酸およびその誘導体、さらにはたとえば、限定されるものではないが、VX−497、VX−148、および/またはVX−944);または以上のいずれかの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、W. Markland et al., Antimicrobial & Antiviral Chemotherapy, 44, p. 859 (2000) および U.S. Patent 6,541,496をも参照されたい。
【化3】

【0040】
本明細書中では、以下の定義を使用する(商標は、本出願の出願日現在で入手可能な製品を示す)。
【0041】
「Peg−Intron」は、Schering Corporation, Kenilworth, NJから入手可能なペグインターフェロンα−2bであるPEG−Intron(登録商標)を意味する。
【0042】
「Intron」は、Schering Corporation, Kenilworth, NJから入手可能なインターフェロンα−2bであるIntron−A(登録商標)を意味する。
【0043】
「リバビリン」は、リバビリン(1−β−D−リボフラノシル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミド)を意味し、ICN Pharmaceuticals, Inc., Costa Mesa, CAから入手可能であり;Merck Index, entry 8365, Twelfth Editionに記載されており;さらには、Schering Corporation, Kenilworth, NJからRebetol(登録商標)としてまたはHoffmann-La Roche, Nutley, NJからCopegus(登録商標)として入手可能である。
【0044】
「Pagasys」は、Hoffmann-La Roche, Nutley, NJから入手可能なペグインターフェロンα−2aであるPegasys(登録商標)を意味する。
【0045】
「Roferon」は、Hoffmann-La Roche, Nutley, NJから入手可能な組換えインターフェロンα−2aであるRoferon(登録商標)を意味する。
【0046】
「Berefor」は、Boehringer Ingelheim Pharmaceutical, Inc., Ridgefield, CTから入手可能なインターフェロンα2であるBerefor(登録商標)を意味する。
【0047】
Sumiferon(登録商標)は、Sumitomo, Japanから入手可能なSumiferonのような天然のαインターフェロンの精製ブレンドである。
【0048】
Wellferon(登録商標)は、Glaxo_Wellcome LTd., Great Britainから入手可能なインターフェロンαn1である。
【0049】
Alferon(登録商標)は、Interferon Sciencesにより製造されてPurdue Frederick Co., CTから入手可能な天然のαインターフェロンの混合物である。
【0050】
本明細書中で使用される「インターフェロン」という用語は、ウイルスの複製および細胞の増殖を阻害しかつ免疫応答をモジュレートする高度の相同性を有する種特異的タンパク質ファミリーのメンバー、たとえば、インターフェロンα、インターフェロンβ、またはインターフェロンγを意味する。Merck Index, entry 5015, Twelfth Edition。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、インターフェロンは、α−インターフェロンである。他の実施形態によれば、本発明に係る治療剤の組合せでは、天然のαインターフェロン2aが利用される。または、本発明に係る治療剤の組合せでは、天然のαインターフェロン2bが利用される。他の実施形態では、本発明に係る治療剤の組合せでは、組換えαインターフェロン2aまたは2bが利用される。さらに他の実施形態では、インターフェロンは、ペグ化αインターフェロン2aまたは2bである。本発明に好適なインターフェロンとしては、以下のものが挙げられる:
(a) Intron(インターフェロン−α2B、Schering Plough)、
(b) Peg−Intron、
(c) Pegasys、
(d) Roferon、
(e) Berofor、
(f) Sumiferon、
(g) Wellferon、
(h) Amgen, Inc., Newbury Park, CAから入手可能なコンセンサスαインターフェロン、
(i) Alferon、
(j) Viraferon(登録商標)、
(k) Infergen(登録商標)。
【0052】
熟練診療医であればわかることであるが、プロテアーゼ阻害剤は、好ましくは、経口投与されるであろう。インターフェロンは、典型的には、経口投与されない。それにもかかわらず、本発明に係る方法や組合せは、本明細書の記載内容によりなんら特定の製剤やレジームに限定されるものではない。したがって、本発明に係る組合せの各成分は、別々に、一緒に、またはそれらの任意の組合せで投与可能である。
【0053】
一実施形態では、プロテアーゼ阻害剤およびインターフェロンは、個別製剤として投与される。一実施形態では、任意の追加の薬剤は、プロテアーゼ阻害剤を含む単一製剤の一部分としてまたは個別製剤として投与される。本発明が化合物の組合せを含む場合、各化合物の特定量は、組合せ中の他のそれぞれの化合物の特定量に依存する可能性がある。熟練診療医であればわかることであるが、インターフェロンの用量は、典型的には、IU単位で測定される(たとえば、約400万IU〜約1200万IU)。
【0054】
したがって、本発明に係る化合物と組み合わせて使用しうる薬剤(免疫調節剤として作用するか否かを問わず)としては、インターフェロン−α2B(Intron A, Schering Plough)、Rebatron(Schering Plough、インターフェロン−α2B+リバビリン)、ペグ化インターフェロンα(Reddy, K.R. et al. "Efficacy and Safety of Pegylated (40-kd) interferon alpha-2a compared with interferon alpha-2a in noncirrhotic patients with chronic hepatitis C" (Hepatology, 33, pp. 433-438 (2001))、コンセンサスインターフェロン(Kao, J.H., et al., "Efficacy of Consensus Interferon in the Treatement of Chronic Hepatitis" J. Gastroenterol. Hepatol. 15, pp. 1418-1423 (2000))、インターフェロン−α2A(Roferon A;Roche)、リンパ芽球様細胞インターフェロンすなわち「天然型」インターフェロン、インターフェロンτ(Clayette, P. et al., "IFN-tau, A New Interferon Type I with Antiretroviral activity" Pathol. Biol. (Paris) 47, pp. 553-559 (1999))、インターロイキン2(Davis, G.L. et al., "Future Options for the Management of Hepatitis C." Seminars in Liver Disease, 19, pp. 103-112 (1999))、インターロイキン6(Davis et al. "Future Options for the Management of Hepatitis C." Seminars in Liver Disease 19, pp. 103-112 (1999))、インターロイキン12(Davis, G.L. et al., "Future Options for the Management of Hepatitis C." Seminars in Liver Disease, 19, pp. 103-112 (1999))、リバビリン、および1型ヘルパーT細胞応答の発生を促進する化合物(Davis et al., "Future Options for the Management of Hepatitis C." Seminars in Liver Disease, 19, pp. 103-112 (1999))が挙げられるが、これらに限定されるものではない。インターフェロンは、直接的な抗ウイルス作用を発揮することによりおよび/または感染に対する免疫応答を改変することによりウイルス感染症を改善しうる。インターフェロンの抗ウイルス作用は、多くの場合、ウイルスの侵入もしくは脱殻、ウイルスRNAの合成、ウイルスタンパク質の翻訳、ならびに/またはウイルスの集合および放出の阻害を介して媒介される。
【0055】
細胞内におけるインターフェロンの合成を刺激する化合物(Tazulakhova, E.B. et al., "Russian Experience in Screening, analysis, and Clinical Application of Novel Interferon Inducers" J. Interferon Cytokine Res., 21 pp. 65-73)としては、二本鎖RNA単独またはトブラマイシンおよびイミキモド(3M Pharmaceuticals; Sauder, D.N. "Immunomodulatory and Pharmacologic Properties of Imiquimod" J. Am. Acad. Dermatol., 43 pp. S6-11 (2000))との組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
他の非免疫調節性または免疫調節性の化合物、たとえば、限定されるものではないが、WO 02/18369(参照により本明細書に組み入れられるものとする)(たとえば、第273頁第9〜22行および第274頁第4行〜第276頁第11行(参照によりその全体が本明細書に組み入れられるものとする)を参照されたい)に指定されているものを本発明に係る化合物と組み合わせて使用することが可能である。
【0057】
細胞内におけるインターフェロンの合成を刺激する化合物(Tazulakhova et al., J. Interferon Cytokine Res. 21, 65-73))としては、二本鎖RNA単独またはトブラマイシンおよびイミキモド(3M Pharmaceuticals)(Sauder, J. Am. Arad. Dermatol. 43, S6-11 (2000))との組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。非免疫調節機序に基づくHCV抗ウイルス活性を有することが公知であるかまたはそれを有する可能性のある他の化合物としては、リバビリン(ICN Pharmaceuticals)、イノシン5’−一リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤(本明細書中に提供されるVX−497の式)、アマンタジンおよびリマンタジン(Younossi et al., In Seminars in Liver Disease 19, 95-102 (1999))、LY217896(U.S. Patent 4,835,168)(Colacino, et al., Antimicrobial Agents & Chemotherapy 34, 2156-2163 (1990))、さらには9−ヒドロキシイミノ−6−メトキシ−1,4a−ジメチル−1,2,3,4,4a,9,10,10a−オクタヒドロ−フェナントレン−1−カルボン酸メチルエステル、6−メトキシ−1,4a−ジメチル−9−(4−メチル−ピペラジン−1−イルイミノ)−1,2,3,4,4a,9,10,10a−オクタヒドロ−フェナントレン−1−カルボン酸メチルエステル−塩酸塩、1−(2−クロロ−フェニル)−3−(2,2−ビフェニルエチル)−ウレア(U.S. Patent 6,127,422)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。以上の分子の製剤、用量、および投与経路は、以下で引用される参考文献中に教示されているか、またはたとえば、F.G. Hayden, in Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ninth Edition, Hardman et al., Eds., McGraw-Hill, New York (1996), Chapter 50, pp. 1191-1223 およびそこに引用されている参考文献に開示されているように当技術分野で周知である。他の選択肢として、HCV抗ウイルス活性を呈する化合物を同定した後、当業者に周知の技術を用いてその化合物の製薬的有効量を決定することが可能である。たとえば、Benet et al., in Goodman & Gilman's The Phannaeological Basis of Therapeutics, Ninth Edition, Hardman et al., Eds., McGraw-Hill, New York (1996), Chapter 1, pp. 3-27 およびそこに引用されている参考文献に注目されたい。したがって、そのような化合物の適切な製剤、用量、範囲、および投与レジメンは、常法で容易に決定可能である。本発明に係る薬剤の組合せは、同時にもしくは逐次的に投与される個別の製薬上許容される製剤として、2種以上の治療剤を含有する製剤として、または単剤製剤および多剤製剤の組合せにより、1種もしくは複数種の細胞にまたはヒト患者に提供することが可能である。投与経路に関係なく、これらの薬剤の組合せは、抗HCV有効量の成分で構成される。
【0058】
本発明に係る方法で使用しうる多数の他の免疫調節剤および免疫刺激剤が、現在、入手可能であり、その例としては、次のものが挙げられる:AA−2G;アダマンチルアミドジペプチド;アデノシンデアミナーゼ、Enzon;アジュバント、Alliance;アジュバント、Ribi;アジュバント、Vaxcel;Adjuvax;アゲラスフィン−11;AIDS療法剤、Chiron;藻類グルカン、SRI;Algammulin、Anutech;Anginlyc;抗細胞因子、Yeda;Anticort;抗ガストリン−17免疫原、Ap;抗原送達システム、Vac;抗原製剤、IDBC;抗GnRH免疫原、Aphton;Antiherpin;Arbidol;アザロール;Bay−q−8939;Bay−r−1005;BCH−1393;Betafectin;Biostim;BL−001;BL−009;Broncostat;Cantastim;CDRI−84−246;セフォジジム;ケモカイン阻害剤、ICOS;CMVペプチド、City of Hope;CN−5888;サイトカイン放出剤、St;DHEA、Paradigm;DISC TA−HSV;J07B;I01A;I01Z;ジチオカルブナトリウム;ECA−10−142;EL−1;エンドトキシン、Novartis;FCE−20696;FCE−24089;FCE−24578;FLT−3リガンド、Immunex;FR−900483;FR−900494;FR−901235;FTS−Zn;Gタンパク質、Cadus;グルダプシン;グルタウリン;グリコホスホペプチカル;GM−2;GM−53;GMDP;増殖因子ワクチン、EntreM;H−BIG、NABI;H−CIG、NABI;HAB−439;ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)ワクチン;ヘルペス特異的免疫因子;HIV療法剤、United Biomed;HyperGAM+CF;ImmuMax;Immun BCG;免疫療法剤、Connective;免疫調節剤、Evans;免疫調節剤、Novacell;imreg−1;imreg−2;Indomune;イノシンプラノベクス;インターフェロン、Dong-A(α2);インターフェロン、Genentech(γ);インターフェロン、Novartis(α);インターロイキン−12、Genetics Ins;インターロイキン−15、Immunex;インターロイキン−16、Research Cor;ISCAR−1;J005X;L−644257;リコマラスミン酸;LipoTher;LK−409、LK−410;LP−2307;LT(R1926);LW−50020;MAF、Shionogi;MDP誘導体、Merck;メトエンケファリン、TNI;メチルフリルブチロラクトン類;MIMP;ミリモスチム;混合細菌ワクチン、Tem;MM−1;Moniliastat;MPLA、Ribi;MS−705;ムラブチド;arabutide、Vacsyn;ムラミルジペプチド誘導体;ムラミルペプチド誘導体;ミエロピド;N−563;NACOS−6;NH−765;NISV、Proteus;NPT−16416;NT−002;PA−485;PEFA−814;ペプチド、Scios;ペプチドグリカン、Pliva;Perthon,Advanced Plant;PGM誘導体、Pliva;Pharmaprojects No.1099;No.1426;No.1549;No.1585;No.1607;No.1710;No.1779;No.2002;No.2060;No.2795;No.3088;No.3111;No.3345;No.3467;No.3668;No.3998;No.3999;No.4089;No.4188;No.4451;No.4500;No.4689;No.4833;No.494;No.5217;No.530;ピドチモド;ピメラウチド;ピナフィド;PMD−589;ポドフィロトキシン、Conpharm;POL−509;ポリ−ICLC;ポリ−ICLC,Yamasa Shoyu;ポリA−ポリU;ポリサッカリドA;プロテインA、Berlux Bioscience;PS34W0;シュードモナス(Pseudomonas)MAb、Teijin;Psomaglobin;PTL−78419;Pyrexol;ピリフェロン;Retrogen;Retropep;RG−003;Rhinostat;リファマキシル;RM−06;Rollin;ロムルチド;RU−40555;RU−41821;風疹抗体、ResCo;S−27649;SB−73;SDZ−280−636;SDZ−MRL953;SK&F−107647;SL04;SL05;SM−4333;Solutein;SRI−62−834;SRL−172;ST−570;ST−789;スタファージ溶解物;Stimulon;サプレッシン;T−150R1;T−LCEF;タビラウチド;テムルチド;Theradigm−HBV;Theradigm−HBV;Theradigm−HSV;THF,Pharm & Upjohn;THF、Yeda;チマルファシン;胸腺ホルモンフラクション;チモカルチン;チモリンホトロピン;チモペンチン;チモペンチン類似体;チモペンチン、Peptech;チモシンフラクション5、α;チモスチムリン;チモトリナン;TMD−232;TO−115;伝達因子、Viragen;タフトシン、Selavo;ウベニメクス;Ulsastat;ANGG−;CD−4+;Collag+;COLSF+;COM+;DA−A+;GAST−;GF−TH+;GP−120−;IF+;IF−A+;IFA−2+;IF−B+;IF−G+;IF−G−1B+;IL−2+;IL−12+;IL−15+;IM+;LHRH−;LIPCOR+L;LYM−B+;LYM−NK+;LYM−T+;OPI+;PEP+;PHG−MA+;RNA−SYN−;SY−CW−;TH−A−I+;TH−5+;TNF+;UN。
【0059】
本発明に有用な代表的なヌクレオシド化合物およびヌクレオチド化合物としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:(+)−cis−5−フルオロ−1−[2−(ヒドロキシ−メチル)−[1,3−オキサチオラン−5−イル]シトシン;(−)−2’−デオキシ−3’−チオシチジン−5’−三リン酸(3TC);(−)−cis−5−フルオロ−1−[2−(ヒドロキシ−メチル)−[1,3−オキサチオラン−5−イル]シトシン(FTC);(−)−2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン[(−)−SddC];1−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−5−ヨードシトシン(FIAC);1−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−5−ヨードシトシン三リン酸(FIACTP);1−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−5−メチルウラシル(FMAU);1−β−D−リボフラノシル−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミド;2’,3’−ジデオキシ−3’−フルオロ−5−メチル−デオキシシチジン(FddMeCyt);2’,3’−ジデオキシ−3’−クロロ−5−メチル−デオキシシチジン(ClddMeCyt);2’,3’−ジデオキシ−3’−アミノ−5−メチル−デオキシシチジン(AddMeCyt);2’,3’−ジデオキシ−3’−フルオロ−5−メチルシチジン(FddMeCyt);2’,3’−ジデオキシ−3’−クロロ−5−メチル−シチジン(ClddMeCyt);2’,3’−ジデオキシ−3’−アミノ−5−メチルシチジン(AddMeCyt);2’,3’−ジデオキシ−3’−フルオロチミジン(FddThd);2’,3’−ジデオキシ−β−L−5−フルオロシチジン(β−L−FddC);2’,3’−ジデオキシ−β−L−5−チアシチジン;2’,3’−ジデオキシ−β−L−5−シチジン(βL−ddC);9−(1,3−ジヒドロキシ−2−プロポキシメチル)グアニン;2’−デオキシ−3’−チア−5−フルオロシトシン;3’−アミノ−5−メチル−デオキシシチジン(AddMeCyt);2−アミノ−1,9−[(2−ヒドロキシメチル−1−(ヒドロキシメチル)エトキシ)メチル]−6H−プリン−6−オン(ガンシクロビル);2−[2−(2−アミノ−9H−プリン−9−イル)エチル−1,3−プロパンジオールジアセテート(ファムシクロビル);2−アミノ−1,9−ジヒドロ−9−[(2−ヒドロキシ−エトキシ)メチル]6H−プリン−6−オン(アシクロビル);9−(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルブト−1−イル)グアニン(ペンシクロビル);9−(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルブト−1−イル)−6−デオキシ−グアニンジアセテート(ファムシクロビル);3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT);3’−クロロ−5−メチル−デオキシシチジン(ClddMeCyt);9−(2−ホスホニル−メトキシエチル)−2’,6’−ジアミノプリン−2’,3’−ジデオキシリボシド;9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン(PMEA);アシクロビル三リン酸(ACVTP);D−カルボサイクリック−2’−デオキシグアノシン(CdG);ジデオキシ−シチジン;ジデオキシ−シトシン(ddC);ジデオキシ−グアニン(ddG);ジデオキシ−イノシン(ddl);E−5−(2−ブロモビニル)−2’−デオキシウリジン三リン酸;フルオロ−アラビノフラノシル−ヨードウラシル;1−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−1−β−D−アラビノフラノシル)−5−ヨードウラシル(FIAU);スタブジン;9−β−D−アラビノフラノシル−9H−プリン−6−アミン一水和物(Ara−A);9−β−D−アラビノフラノシル−9H−プリン−6−アミン−5’−一リン酸一水和物(Ara−AMP);2−デオキシ−3’−チア−5−フルオロシチジン;2’,3’−ジデオキシ−グアニン;および2’,3’−ジデオキシ−グアノシン。
【0060】
本発明に有用であるヌクレオシドおよびヌクレオチドを調製するための合成方法は、Acta Biochim Pol., 43, 25-36 (1996); Swed. Nucleosides Nucleotides 15, 361-378 (1996); Synthesis 12,1465-1479 (1995); Carbohyd. Chem. 27, 242-276 (1995); Chena Nucleosides Nucleotides 3, 421-535 (1994); Ann. Reports in Med. Chena, Academic Press; and Exp. Opin. Invest. Drugs 4, 95-115 (1995)に開示されているように当技術分野で周知である。
【0061】
以上で引用した参考文献に記載の化学反応は、一般的には、本発明に係る化合物の調製に最も広く適用される形で開示されている。ときとして、それらの反応は、本明細書に開示されている化合物の範囲内に包含されるそれぞれの化合物に、記載されるとおりには適用できない可能性がある。これに該当する化合物は、当業者であれば容易にわかるであろう。そのような場合にはいずれにおいても、当業者に公知の従来型の変更を加えることにより、たとえば、妨害基の適切な保護を行ったり、他の選択肢の従来型の試薬に変更したり、反応条件に慣用的な変更を加えたりすることにより、うまく反応を行うことが可能であるか、または本明細書に開示されている他の反応もしくはそれ以外の従来型の反応を本発明に係る対応する化合物の調製に適用することが可能であろう。いずれの調製方法においても、出発原料はすべて、公知であるかまたは公知の出発原料から容易に調製可能である。一般的にはヌクレオシド類似体がそのままの状態で抗ウイルス剤として利用されるが、細胞膜を横切る輸送を促進するために、ヌクレオチド(ヌクレオシドリン酸)をヌクレオシドに変換しなければならないこともある。細胞に進入しうる化学修飾されたヌクレオチドの例は、S−1−3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピルシトシン(HPMPC、Gilead Sciences)である。本発明で使用されるヌクレオシド化合物およびヌクレオチド化合物が酸である場合、塩を形成することが可能である。例としては、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属(たとえば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、もしくはマグネシウム)との塩または有機塩基との塩あるいは塩基性第四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0062】
本発明はまた、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ阻害剤を投与することを包含しうる。CYP阻害剤は、CYPにより阻害される化合物の肝臓内濃度の増大および/または血中レベルの増大に有用でありうる。
【0063】
本発明に係る実施形態がCYP阻害剤を含む場合、関連するNS3/4Aプロテアーゼの薬動学的挙動を改善する任意のCYP阻害剤を本発明に係る方法で使用することが可能である。これらのCYP阻害剤としては、リトナビル(WO 94/14436)、ケトコナゾール、トロレアンドマイシン、4−メチルピラゾール、シクロスポリン、クロメチアゾール、シメチジン、イトラコナゾール、フルコナゾール、ミコナゾール、フルボキサミン、フルオキセチン、ネファゾドン、セルトラリン、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、フォサムプレナビル、サキナビル、ロピナビル、デラビルジン、エリスロマイシン、VX−944、およびVX−497が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましいCYP阻害剤としては、リトナビル、ケトコナゾール、トロレアンドマイシン、4−メチルピラゾール、シクロスポリン、およびクロメチアゾールが挙げられる。リトナビルの好ましい製剤については、United States Patent 6,037,157 およびそこに引用されている文献、すなわち、United States Patent 5,484,801、United States Application 08/402,690、ならびにInternational Applications WO 95/07696 および WO 95/09614)を参照されたい。
【0064】
シトクロムP50モノオキシゲナーゼ活性を阻害する化合物の能力を測定する方法は公知である(US 6,037,157 および Yun, et al. Drug Metabolism & Disposition, vol. 21, pp. 403-407 (1993)を参照されたい)。
【0065】
種々の公開された米国特許出願には、肝炎を治療するためにVX−950と組み合わせて使用しうる化合物および方法についてさらなる教示が提供されている。そのような方法および組成物はいずれも、本発明に係る方法および組成物と組み合わせて使用しうると考えられる。簡潔にするために、それらの公報の開示内容の開示は、公開番号を参照することにより参照されるが、なかでもとくに、化合物の開示は、参照により本明細書にとくに組み入れられることに留意すべきである。代表的なそのような公報としては、U.S. Patent Publication No. 20040058982; U.S. Patent Publication No. 20050192212; U.S. Patent Publication No. 20050080005; U.S. Patent Publication No. 20050062522; U.S. Patent Publication No. 20050020503; U.S. Patent Publication No. 20040229818; U.S. Patent Publication No. 20040229817; U.S. Patent Publication No. 20040224900; U.S. Patent Publication No. 20040186125; U.S. Patent Publication No. 20040171626; U.S. Patent Publication No. 20040110747; U.S. Patent Publication No. 20040072788; U.S. Patent Publication No. 20040067901; U.S. Patent Publication No. 20030191067; U.S. Patent Publication No. 20030187018; U.S. Patent Publication No. 20030186895; U.S. Patent Publication No. 20030181363; U.S. Patent Publication No. 20020147160; U.S. Patent Publication No. 20040082574; U.S. Patent Publication No. 20050192212; U.S. Patent Publication No. 20050187192; U.S. Patent Publication No. 20050187165; U.S. Patent Publication No. 20050049220が挙げられる。
【0066】
本発明に係る組合せ治療方法に有用な免疫調節剤、免疫刺激剤、および他の薬剤は、当技術分野で慣用される量よりも少ない量で投与可能である。たとえば、インターフェロンαは、HCV感染症を治療するために、典型的には、毎週3回で約1×10単位/人〜毎週3回で約10×10単位/人の量でヒトに投与される(Simon et al., Hepatology 25: 445-448 (1997))。本発明に係る方法および組成物では、この用量は、毎週3回で約0.1×10単位/人〜毎週3回で約7.5×10単位/人;より好ましくは毎週3回で約0.5×10単位/人〜毎週3回で約5×10単位/人;最も好ましくは毎週3回で約1×10単位/人〜毎週3回で約3×10単位/人の範囲内でありうる。本発明に係るHCVセリンプロテアーゼ阻害剤の存在下でC型肝炎ウイルスに対する免疫調節剤、免疫刺激剤、または他の抗HCV剤の抗ウイルス効率が増大されるので、これらの免疫調節剤/免疫刺激剤は、低減された量で本発明に係る治療方法および組成物に利用可能である。同様に、免疫調節剤および免疫刺激剤の存在下でC型肝炎ウイルスに対する本発明に係るHCVセリンプロテアーゼ阻害剤の抗ウイルス効率が増大されるので、当該HCVセリンプロテアーゼ阻害剤は、低減された量で本発明に係る方法および組成物に利用可能である。そのような低減された量は、治療を受けている感染患者においてC型肝炎ウイルスの力価を慣例に従ってモニタリングすることにより決定可能である。これは、たとえば、スロットブロット技術、ドットブロット技術、もしくはRT−PCR技術を用いて患者の血清中のHCV RNAをモニタリングすることにより、またはHCVの表面抗原もしくは他の抗原を測定することにより、実施可能である。本明細書に開示されているHCVセリンプロテアーゼ阻害剤と、抗HCV活性を有する他の化合物、たとえば、ヌクレオシドおよび/またはヌクレオチドの抗ウイルス剤と、を利用する組合せ療法時、組み合わせて使用するときのそれぞれの最小有効用量を決定するために、患者に対して同様にモニタリングを行うことが可能である。
【0067】
本明細書に開示されている組合せ治療方法では、ヌクレオシドもしくはヌクレオチドの抗ウイルス化合物またはそれらの混合物は、約0.1mg/人/日〜約500mg/人/日の範囲内、好ましくは約10mg/人/日〜約300mg/人/日、より好ましくは約25mg/人/日〜約200mg/人/日、さらにより好ましくは約50mg/人/日〜約150mg/人/日、最も好ましくは約1mg/人/日〜約50mg/人/日の範囲内の量でヒトに投与することが可能である。
【0068】
種々の用量の化合物を一回用量でまたは適切に配分された用量で患者に投与することが可能である。後者の場合、投与ユニット組成物は、一日用量を構成するような量またはそのサブ用量を含有しうる。薬剤処方者が望むのであれば、1日に複数回投与することにより、合計一日用量を増大させることも可能である。
【0069】
HCV感染症に罹患している患者を本発明に係る化合物および/または組成物で治療するためのレジメンは、患者の年齢、体重、性別、食事、および病状、感染症の重症度、投与の経路、薬理学的な要件(たとえば、利用される特定の化合物の活性、効力、薬動学的および毒性学的なプロファイル)、ならびに薬剤送達システムを利用するかどうかをはじめとするさまざまな因子に基づいて選択される。本明細書に開示されている薬剤の組合せの投与は、一般的には、ウイルス力価が許容レベルに達して感染症が抑制または根絶されたことが示唆されるまで、数週間〜数ヶ月間または数年間にわたり継続しなければならない。療法の有効性を決定するために、スロットブロット技術、ドットブロット技術、もしくはRT−PCR技術を用いて患者の血清中の肝炎ウイルスRNAを測定することにより、または血清中のC型肝炎ウイルス抗原(たとえば、表面抗原)を測定することにより、本明細書に開示されている薬剤の組合せによる治療を受けている患者に対して慣例に従ってモニタリングを行うことが可能である。組合せの各成分が最適量で投与されるように、しかも治療の継続期間を決定することもできるように、これらの方法により得られたデータを継続して解析すれば、治療時、治療レジメンに変更を加えることが可能である。
【0070】
本発明は、患者においてHCV感染症を治療または予防するために、抗HCV活性を有する以上のタイプかつ類似のタイプの化合物とさまざまに組み合わせて、本明細書に開示されているHCVセリンプロテアーゼ阻害剤を使用することを包含する。たとえば、抗HCV活性を有する1種以上のインターフェロンもしくはインターフェロン誘導体、抗HCV活性を有する1種以上の非インターフェロン化合物、または抗HCV活性を有する1種以上のインターフェロンもしくはインターフェロン誘導体および抗HCV活性を有する1種以上の非インターフェロン化合物と組み合わせて、1種以上のHCVセリンプロテアーゼ阻害剤を使用することが可能である。ヒト患者においてHCV感染症を治療または予防するために組み合わせて使用する場合、このたび開示されたHCVセリンプロテアーゼ阻害剤および抗HCV活性を有する以上の化合物はいずれも、製薬的有効量または抗HCV有効量で存在しうる。以上に記載した組合せで使用した場合、相加効果または相乗効果に基づいて、準臨床的な製薬的有効量または抗HCV有効量でそれぞれを存在させることも可能である。すなわち、単独で使用した場合、製薬的有効量で使用したときのそのようなHCVセリンプロテアーゼ阻害剤および抗HCV活性を有する化合物と比較して、HCVビリオンの蓄積の完全阻害もしくは減少および/または患者におけるHCVの感染もしくは病理発生に関連する病状もしくは症状の軽減もしくは改善に関して、低減された製薬的有効性を提供する量で、それぞれを存在させることも可能である。それに加えて、本発明は、HCV感染症を治療または予防するために、以上に記載したように、HCVセリンプロテアーゼ阻害剤と抗HCV活性を有する化合物とを組み合わせて使用することを包含する。この場合、これらの阻害剤または化合物の1種以上は、製薬的有効量で存在し、他のものは、相加効果または相乗効果に基づいて準臨床的な製薬的有効量または抗HCV有効量で存在する。本明細書中で使用する場合、「相加効果」という用語は、各薬剤を単独で与えたときの効果の合計に等しい2種(もしくはそれ以上)の医薬活性剤の組合せ効果を記述する。相乗効果とは、2種(もしくはそれ以上)の医薬活性剤の組合せ効果が各薬剤を単独で与えたときの効果の合計よりも大きい効果のことである。
【0071】
患者の病状が改善された後、必要であれば、本発明に係る化合物、組成物、または組合せを維持用量で投与することが可能である。その結果、治療を中止すべき所望のレベルにまで症状が軽減されたときに、症状に応じて、投与用量もしくは投与頻度またはその両方を改善された病状が維持されるレベルにまで低減させることが可能である。しかしながら、患者は、疾患症状が再発した際に長期間にわたる間欠的治療を必要とすることもある。
【0072】
また、当然のことながら、特定の患者に対する特定の用量および治療レジメンは、利用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全般的健康状態、性別、食事、投与時期、排泄速度、薬剤の組合せ、および治療医の判断、さらには治療される特定の疾患の重症度をはじめとするさまざまな因子に依存するであろう。活性成分の量もまた、特定の記載化合物ならびに組成物中の追加の抗ウイルス剤の存在または不在および性質に依存するであろう。
【0073】
他の実施形態によれば、本発明は、本発明に係る製薬上許容される組成物を患者に投与することにより、ウイルスの生活環に必要であるウイルスにコードされたセリンプロテアーゼにより特徴付けられるウイルスに感染した患者を治療する方法を提供する。好ましくは、本発明に係る方法は、HCV感染症に罹患している患者を治療するために使用される。そのような治療は、ウイルス感染症を完全に根絶しうるか、またはその重症度を低減させうる。より好ましくは、患者はヒトである。
【0074】
代替実施形態では、本発明に係る方法は、抗ウイルス剤、好ましくは抗HCV剤を前記患者に投与する工程を追加的に含む。そのような抗ウイルス剤としては、免疫調節剤、たとえば、α−、β−、およびγ−インターフェロン、ペグ化誘導体化インターフェロン−α化合物、ならびにチモシン;他の抗ウイルス剤、たとえば、リバビリンおよびアマンタジン;C型肝炎プロテアーゼの他の阻害剤(NS2−NS3阻害剤およびNS3−NS4A阻害剤);HCVの生活環中の他の標的の阻害剤、たとえば、ヘリカーゼ阻害剤およびポリメラーゼ阻害剤;リボソーム内部進入の阻害剤;広域ウイルス阻害剤、たとえば、IMPDH阻害剤(United States Patent 5,807,876に開示されているIMPDH阻害剤、ミコフェノール酸およびその誘導体);または以上のいずれかの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
そのような追加の薬剤は、本発明に係る化合物および追加の抗ウイルス剤の両方を含む単一製剤の一部分として前記患者に投与可能である。他の選択肢として、追加の薬剤は、本発明に係る化合物とは別に複数製剤の一部分として投与可能である。この場合、該追加の薬剤は、本発明に係る化合物を含む組成物の前に、それと一緒に、またはその後で、投与可能である。
【0076】
さらに他の実施形態では、本発明は、患者への投与を目的とした生体物質を前処理する方法を提供する。この方法は、該生体物質を、本発明に係る化合物を含む製薬上許容される組成物に、接触させる工程を含む。そのような生体物質としては、血液およびその成分、たとえば、血漿、血小板、血球の亜集団など;臓器、たとえば、腎臓、肝臓、心臓、肺など;精子および卵子;骨髄およびその成分;ならびに患者に注入される他の流体、たとえば、生理食塩水、デキストロースなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
他の実施形態によれば、本発明は、生活環に必要であるウイルスにコードされたセリンプロテアーゼにより特徴付けられるウイルスに接触する可能性のある材料を処理する方法を提供する。この方法は、該材料を本発明に係る化合物に接触させる工程を含む。そのような材料としては、外科用の器具および衣類(たとえば、衣服、手袋、エプロン、ガウン、マスク、眼鏡、履物など);実験用の器具および衣類(たとえば、衣服、手袋、エプロン、ガウン、マスク、眼鏡、履物など);血液採取用の器具および材料;ならびに侵襲的デバイス、たとえば、シャント、ステントなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
他の実施形態では、本発明に係る化合物は、ウイルスにコードされたセリンプロテアーゼの単離を助ける実験ツールとして使用可能である。この方法は、固体担体に結合された本発明に係る化合物を提供する工程と、該固体担体へのプロテアーゼの結合を引き起こす条件下で、該固体担体を、ウイルスのセリンプロテアーゼを含有するサンプルに、接触させる工程と、該固体担体から該セリンプロテアーゼを溶出させる工程と、を含む。好ましくは、この方法により単離されるウイルスのセリンプロテアーゼは、HCV NS3−NS4Aプロテアーゼである。
【0079】
本発明がより十分に理解されるように、以下の調製例および試験例について説明する。これらの実施例は、例示を目的としたものにすぎず、なんら本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【実施例】
【0080】
以下の実施例は、好ましい実施形態および技術を提示したものであり、限定しようとするものではない。当業者であれば、本開示に照らして、開示されている特定の材料および方法に多くの変更を加えうることかつそれにより本発明の精神および範囲から逸脱することなく同一もしくは類似の結果が得られることはわかるであろう。
【0081】
実施例1
HCV NS3プロテアーゼのHPLCペプチド切断アッセイ
このアッセイは、Landro et al. [Landro J.A. et al., Biochemistry, 36, pp. 9340-9348 (1997)]に報告されたアッセイに変更を加えたものである。遺伝子型1a HCVのNS5A/NS5B切断部位に基づく単一のペプチド基質(NS5AB)をすべてのプロテアーゼについて使用した。0.2M DTTを含有するDMSOを用いて基質ストック溶液(25mM)を調製し、−20℃で貯蔵した。各遺伝子型に適合した合成ペプチド補因子(KK4A)をNS4Aの中心コア領域の代わりに使用した。ペプチド配列は、以下に示される。50mM HEPES pH7.8、100mM NaCl、20%グリセロール、5mM DTT、および25μM KK4Aを含有する緩衝液中の25nM〜50nM HCV NS3プロテアーゼを用いて、96ウェルマイクロタイタープレート方式で加水分解反応を行った。最終DMSO濃度は、2% v/v以下であった。2.5%の最終TFA濃度になるように10%トリフルオロ酢酸(TFA)を添加することにより、反応を停止させた。自動注入ならびに210nmおよび280nmにおけるダイオードアレイ検出の機能を備えたAgilentシリーズ1100装置を使用し、サーモスタット付きカラムチャンバーを用いて40℃に加熱された逆相マイクロボアHPLCカラム(Phenomenex Jupiter 5μ C18 300A column, 150×2.0 mm)で基質と産物とを分離することにより、酵素活性を評価した。HO/0.1% TFA(溶媒A)およびCHCN/0.1% TFA(溶媒B)を使用し、流量は、0.2mL/minであった。リニアグラジエントを使用した。12分間で溶媒Bを5%から60%に、次に、1分間で溶媒Bを60%から100%に変化させ、3分間の定組成条件の後、1分間で溶媒Bを5%に変化させ、そして定組成条件で5%溶媒Bを用いて10分間のポストタイムで最終処理を行った。210nmで収集されたデータを用いてSMSY産物ピーク(典型的には10分間の保持時間を有する)を分析した。
【表2】

【0082】
速度論的パラメーターKmおよびVmaxを決定するために、NS5AB基質を3μM〜200μMの間で変化させた。産物ピーク面積と反応時間との比から、酵素触媒加水分解の速度を得た。これらの速度vs基質濃度データ点を非線形回帰によりMichaelis−Menten式にあてはめた。装置校正標準として公称プロテアーゼ濃度および完全切断基質ペプチドを用いてVmaxからkcatの値を決定した。
【表3】

【0083】
実施例2
HPLCペプチド切断アッセイによる効力の決定
見掛けのKi値を評価するために、試験化合物および基質を除くすべての成分を室温で5分間プレインキュベートした。次に、DMSOに溶解された試験化合物を混合物に添加し、室温で15分間インキュベートした。Kmに見合う濃度(70μM〜11μM)でNS5ABペプチドを添加することにより切断反応を開始し、30℃で15分間インキュベートした。阻害を調べるために、7〜8つの化合物濃度を用いて酵素活性の力価を測定した。活性vs阻害剤濃度のデータ点を非線形回帰により競合的強結合酵素阻害を記述するMorrison式にあてはめた[Sculley, M.J. and Morrison, J.F., Biochim. Biophys. Acta. 874, pp. 44-53 (1986)]。
【表4】

【0084】
実施例3
HCV NS3プロテアーゼの蛍光ペプチドアッセイ
Taliani et al. [Taliani M. et al., Anal. Biochem., 240, pp. 60-67 (1997)]に報告されたアッセイに変更を加えて、酵素活性を決定した。基質としてRET−S1蛍光ペプチド(AnaSpec, San Jose, CA)を用いて、50mM HEPES pH7.8、100mM NaCl、20%グリセロール、5mM DTT、および25μM KK4Aを含有する緩衝液(緩衝液A)中で、すべての反応を行った。最終DMSO濃度を1〜2%(v/v)に保持した。とくに記載がないかぎり、それぞれ355nmおよび495nmの励起フィルターおよび発光フィルターを用いて、サーモスタットで30℃に制御された蛍光マイクロタイタープレートリーダーにより、反応を連続的にモニタリングした。
【0085】
速度論的パラメーターKmおよびVmaxを決定するために、RET−S1基質を緩衝液A中で6μM〜200μMの間で変化させ、5nM〜10nM HCV NS3プロテアーゼと5〜10分間反応させた。25μLの10%トリフルオロ酢酸(TFA)を添加することにより、反応を停止させた。自動注入ならびに350nm励起および490nm検出による蛍光検出の機能を備えたAgilentシリーズ1100装置を使用し、サーモスタット付きカラムチャンバーを用いて40℃に加熱された逆相マイクロボアHPLCカラム(Phenomenex Jupiter 5μ C18 300A column, 150×2.0 mm)で基質と産物とを分離することにより、酵素活性を評価した。HO/0.1% TFA(溶媒A)およびCHCN/0.1% TFA(溶媒B)を使用し、流量は、0.2mL/minであった。リニアグラジエントを使用した。30分間で溶媒Bを5%から100%に、次に、2分間で溶媒Bを100%から5%に変化させ、そして定組成条件で5%溶媒Bを用いて10分間のポストタイムで最終処理を行った。活性vs基質濃度データ点を非線形回帰によりMichaelis−Menten式にあてはめた。装置校正標準として公称プロテアーゼ濃度および完全切断基質ペプチドを用いてVmaxからkcatの値を決定した。
【表5】

【0086】
実施例4
長時間インキュベーションによる効力の決定
VX−950と共に長時間プレインキュベーションを行った後の残存酵素活性をアッセイすることにより、VX−950およびHCV NS3プロテアーゼに対する阻害定数を決定した。緩衝液A中のHCV NS3プロテアーゼのストック溶液を室温で10分間プレインキュベートし、次に、30℃に変化させた。100% DMSOに溶解されたVX−950のアリコートを予備加熱された酵素ストック液に時間ゼロで添加した。4μM RET−S1および5nM〜20nM HCV NS3プロテアーゼの最終濃度になるように緩衝液A中のRET−S1の5μLアリコートを酵素−阻害剤混合物の95μLアリコートに添加することにより、5〜360分の範囲内の時間点で反応を開始した。蛍光の変化を150秒のウィンドウでモニタリングし、蛍光vs時間のデータ点の線形回帰に基づいて反応速度を決定した。ニートなDMSOを含有する反応から対照速度を決定した。阻害を調べるために、7〜8つの化合物濃度を用いて酵素活性の力価を測定した。標準的なロジスティック2パラメーターあてはめを用いて、活性vs阻害剤濃度のデータからIC50値を計算した。これらのアッセイ条件下では、長時間インキュベーション後におけるVX−950によるHCV NS3プロテアーゼの阻害に対するIC50は、強結合酵素/阻害剤複合体に対する阻害定数と等価である。
【表6】

【0087】
実施例5
プログレス曲線解析に基づく阻害の特徴付け
Narjes et al. [Narjes F. et al., Biochemistry 39, pp. 1849-1861 (2000)]に報告されたプログレス曲線の測定方法に変更を加えて、緩徐な結合阻害の初速度を決定した。緩衝液A中のHCV NS3プロテアーゼのストック溶液を室温で10分間プレインキュベートし、次に、10分間で30℃に変化させた。100% DMSOに溶解された対象化合物を緩衝液A中のRET−S1の溶液に添加した。次に、化合物および基質を30℃で10分間インキュベートした。6〜12μM RET−S1および0.5nM〜4nM HCV NS3プロテアーゼの最終濃度になるように予備加熱された酵素ストック液のアリコートを化合物−基質混合物に添加することにより、反応を開始した。蛍光の変化を4時間までモニタリングし、蛍光vs時間のデータ点を非線形回帰により式1にあてはめた[Morrison, J.F. and Walsh, C.T., Adv. Enzymol. Relat. Areas Mol. Biol. 61, pp. 201-301 (1988)]。ニートなDMSOを含有する反応から対照速度を決定した。
式1: F(t)=Vs×t+(Vi−Vs)×(1−exp(−kobs×t))/kobs+C
【0088】
obs値vsVX−950濃度の再プロットを行って、式2へのあてはめにより強結合酵素/阻害剤複合体の形成の二次速度定数(kon)および強結合酵素/阻害剤複合体の解離の一次速度定数(koff)の両方の決定を可能にした。この種に対する阻害定数をkoff/konの比から求めた[Morrison, J.F. and Walsh, C.T., Adv. Enzymol. Relat. Areas Mol. Biol. 61, pp. 201-301 (1988)]。
式2: kobs=koff+(kon×[I])/(1+[S]/Km)
【0089】
【表7】

【0090】
以上で得られたプログレス曲線を用いて長い反応時間で残存酵素活性を分析することにより、VX−950によるHCV NS3プロテアーゼの阻害に対する阻害定数を決定した。反応の定常状態時における蛍光vs時間のデータ点の線形回帰に基づいて反応速度を決定した。活性vs阻害剤濃度のデータ点を非線形回帰により競合的強結合酵素阻害を記述するMorrison式にあてはめた[Sculley, M.J. and Morrison, J.F., Biochim. Biophys. Acta. 874, pp. 44-53 (1986)]。
【表8】

【0091】
実施例6
酵素−阻害剤複合体からの解離速度の測定
緩衝液A中のHCV NS3プロテアーゼのストック溶液を室温で10分間プレインキュベートし、次に、10分間で30℃に変化させた。330nM〜1600nM酵素および1.0μM〜6.4μM阻害剤を生成するように、100% DMSOに溶解された対象化合物を予備加熱された酵素ストック液に添加した。酵素−阻害剤複合体が平衡に達するように、この溶液を30℃で長時間インキュベートした。30℃で酵素−阻害剤混合物を緩衝液A中のRET−S1の溶液中に希釈することにより、反応を開始した。最終濃度は、0.5nM〜8nM HCV NS3プロテアーゼ、12μM RET−S1、および2nM〜32nM阻害剤であった。蛍光の変化を4時間までモニタリングし、蛍光vs時間のデータ点を非線形回帰により式2にあてはめた。ニートなDMSOを含有する反応から対照速度を決定した。式3を用いて強結合VX−950/HCV NS3プロテアーゼ複合体の半減期を決定した[Segel, I.H. Biochemical Calculations, 2nd ed., Wiley & Sons: New York, p. 228 (1976)]。
式3: t1/2=0.693/koff
【0092】
【表9】

【0093】
実施例7
HCVレプリコン細胞アッセイのプロトコル
Lohmannn et al., Science, 285, pp. 110-113 (1999)の方法に従って細胞を取得した。適切な補助剤と共に10%ウシ胎仔血清(FBS)、0.25mg/mlのG418を含有するDMEM(培地A)中に、C型肝炎ウイルス(HCV)レプリコンを含有する細胞を保持した。
【0094】
1日目、レプリコン細胞単層をトリプシン:EDTA混合物で処理し、取り出し、次に、100,000細胞/mlの最終濃度になるように培地Aをその中に希釈導入した。100μl中の10,000個の細胞を96ウェル組織培養プレートの各ウェル中にプレーティングし、37℃の組織培養インキュベーター中で一晩培養した。
【0095】
2日目、適切な補助剤と共に2% FBS、0.5% DMSOを含有するDMEM(培地B)中に化合物(100% DMSO中)を逐次希釈導入した。希釈シリーズ全体にわたりDMSOの最終濃度を0.5%に保持した。
【0096】
レプリコン細胞単層上の培地を除去し、次に、種々の濃度の化合物を含有する培地Bを添加した。化合物をまったく含まない培地Bを化合物なしの対照として他のウェルに添加した。
【0097】
37℃の組織培養インキュベーター中で培地B中の化合物または0.5% DMSOと共に細胞を48時間インキュベートした。48時間のインキュベーションの終了時、培地を除去し、レプリコン細胞単層をPBSで1回洗浄し、そしてRNA抽出前、−80℃で貯蔵した。
【0098】
処理されたレプリコン細胞単層を有する培養プレートを解凍し、一定量の他のRNAウイルス(たとえば、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV))を各ウェル中の細胞に添加した。RNAの分解を回避するために、ただちにRNA抽出試薬(たとえば、RNeasyキットの試薬)を細胞に添加した。抽出効率および粘稠度を改良するように変更を加え、製造業者の使用説明書に従って全RNAを抽出した。最後に、HCVレプリコンRNAを含む全細胞RNAを溶出させ、さらなる処理まで−80℃で貯蔵した。
【0099】
2セットの特異的なプライマーおよびプローブを用いてTaqmanリアルタイムRT−PCR定量アッセイを構成した。一方はHCV用であり、他方はBVDV用であった。同一のPCRウェル中のHCV RNAおよびBVDV RNAの両方を定量するために、処理されたHCVレプリコン細胞からの全RNA抽出物をPCR反応系に添加した。各ウェル中のBVDV RNAのレベルに基づいて実験の失敗をマークして排除した。同一のPCRプレート中で実験した標準曲線に基づいて、各ウェル中のHCV RNAのレベルを計算した。0%の阻害としてDMSO対照すなわち化合物なしの対照を用いて、化合物処理に基づく阻害のパーセントすなわちHCV RNAレベルの減少のパーセントを計算した。任意の所与の化合物の力価測定曲線からIC50(HCV RNAレベルの50%阻害が観測される濃度)を計算した。
【0100】
このレプリコンアッセイでVX−950が354nMのIC50を有することが判明した。
【0101】
実施例8
遺伝子型2a、2b、3a、または3bに対するHCV NS3セリンプロテアーゼドメインおよびNS4A補因子ペプチドのコンセンサス配列
多くのHCV単離株のNS3セリンプロテアーゼドメインおよびNS4A補因子ペプチドをカバーするcDNA断片のヌクレオチド配列をGenBankから入手し、DNAstarソフトウェアを用いてアライメントした。これらの遺伝子型2単離株には、遺伝子型2aに属する8種(GenBank寄託コードP26660、AF177036、AB031663、D50409、AF169002、AF169003、AF238481、AF238482)および遺伝子型2bに属する3種(GenBank寄託コードP26661、AF238486、AB030907)が包含される。これらの11種の遺伝子型2 HCV NS3セリンプロテアーゼドメインのアミノ酸配列のアライメントを図1に示す。遺伝子型2a NS3セリンプロテアーゼドメインのコンセンサスアミノ酸配列およびコンセンサスヌクレオチド配列を図2に示す。これらの遺伝子型3単離株には、遺伝子型3aに属する4種(GenBank寄託コードAF046866、D17763、D28917、X76918)および遺伝子型3bに属する2種(GenBank寄託コードD49374およびD63821)が包含される。これらの6種の遺伝子型3 HCV NS3セリンプロテアーゼドメインのアミノ酸配列のアライメントを図3に示す。遺伝子型3a NS3セリンプロテアーゼドメインのコンセンサスアミノ酸配列およびコンセンサスヌクレオチド配列を図4に示す。最後に、それぞれの遺伝子型または遺伝子サブタイプ1a、1b、2a、2b、3a、および3bのコンセンサスアミノ酸配列のアライメントを図5に示す。
【0102】
プラスミドの構築。遺伝子型2aまたは2bのいくつかの単離株の残基Ala〜Ser181をコードするDNA断片のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列をGenBankから入手し、遺伝子型2aまたは2b NS3セリンプロテアーゼドメインに対するコンセンサス配列を同定するためにアラインメントした。遺伝子型3aまたは3b HCV NS3セリンプロテアーゼドメインのコンセンサス配列を同定するために、同じことを遺伝子型3aまたは3bに適用した。E. coli最適コドン使用頻度を用いてオリゴヌクレオチド合成(Genscript)によりこれらのコンセンサス配列のcDNA断片を形成し、次に、PCRにより増幅し、そしてC末端ヘキサヒスチジンタグを有するHCVタンパク質をE. coliにより発現させるためにpBEV11中にサブクローニングした。可溶性変異体を得るために、HCV NS3セリンプロテアーゼのアミノ酸番号13のLeuをLysで置き換えた。すべての構築物を配列決定により確認した。
【0103】
HCV NS3セリンプロテアーゼドメインの発現および精製。遺伝子型2aまたは3aのHCV NS3セリンプロテアーゼドメインに対する各発現構築物をBL21/DE3 pLysS E. coli細胞(Stratagene)中にトランスフォームした。100μg/mlのカルベニシリンおよび35μg/mlのクロラムフェニコールが追加されたBHI培地(Difco Laboratories)中、37℃において、トランスフォームされたばかりの細胞を600nmで0.75の光学濃度になるまで増殖させた。24℃で4時間にわたり1mM IPTGによる誘導を行った。細胞ペーストを遠心分離により採取し、タンパク質精製前、−80℃でフラッシュ凍結した。すべての精製工程を4℃で行った。HCV NS3プロテアーゼのそれぞれについて、100gの細胞ペーストを1.5Lの緩衝液A[50mM HEPES(pH8.0)、300mM NaCl、0.1% n−オクチル−β−D−グルコピラノシド、5mM β−メルカプトエタノール、10%(v/v)グリセロール]に溶解させて30分間攪拌した。Microfluidizer(Microfluidics, Newton, MA)を用いて溶解物をホモジナイズし、続いて、54,000×gで超遠心分離を45分間行った。5mMのイミダゾールを含有する緩衝液Aであらかじめ平衡化された2mlのNi−NTA樹脂と共にイミダゾールを5mMの最終濃度になるように上清に添加した。混合物を3時間揺動させ、20カラム体積の緩衝液A+5mMのイミダゾールで洗浄した。300mMのイミダゾールを含有する緩衝液A中にHCV NS3タンパク質を溶出させた。溶出液を濃縮し、緩衝液Aであらかじめ平衡化されたHi−Load 16/60 Superdex 200カラム上に充填した。精製HCVタンパク質の適切な画分をプールし、−80℃で貯蔵した。
【0104】
実施例9
HCV遺伝子型のコンセンサスドメインを決定した後、NS3セリンプロテアーゼドメインタンパク質をE. coliにより発現させ、そして所定の均一度になるように精製した。KK−4Aペプチド(Landro et al., 1997 Biochemistry)およびFRET基質(Taliani et al., 1997 Anal. Biochem.)を用いてVX−950に対する酵素アッセイを行った。定常状態法を用いてVX−950のKiを決定し、2つの他の方法(長時間インキュベーション法およびプログレス曲線法)により確認した。
【0105】
コンセンサスドメインが単離されたので、HCV−2と比較してHCV−1のドメインへのVX−950の結合特性を決定することが可能になった。本発明者らは、VX−950が当業者により報告された他の阻害剤よりも数倍良好な活性を有することを明らかにした。本発明者らにより得られたデータから、NS3−4AセリンプロテアーゼへのVX−950の結合は、可逆的、共有結合的、競合的、強固、かつ緩徐な結合であることが明らかである。したがって、この薬剤は、現在開発段階にある他の薬剤とは異なる阻害作用機序を有する。たとえば、他の薬剤は、プロテアーゼに結合することが観測されてはいるが、その結合は、可逆的、非共有結合的、競合的、かつ強固なものであった。より重要な点として、遺伝子型1の結合部位には残基78〜80にVal−Asp−Glnおよびアミノ酸56が存在し、一方、遺伝子型2ではAla−Glu−Glyが存在することが確認された。それらの残基のアミノ酸にこうした差異があることは、HCV遺伝子型2のセリンプロテアーゼ中に存在するループの配座安定性がHCV遺伝子型1のループの安定性と比較して低いことを意味する。配座安定性が低下するといくつかの阻害剤の結合は減少するが、こうして配座安定性が低下してもVX−950の結合はほとんど影響を受けないと予想されるので、この阻害剤は、遺伝子型2 HCVのセリンプロテアーゼに対するより強力な阻害剤になる。遺伝子型1 HCV中に存在するAsp168がGlnで置き換えられた遺伝子型3 HCVをに関しても、類似の結果が観測された。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、本発明に係る化合物および方法を利用する他の実施形態を行うようにこれらの基本的実施例に変更を加えることが可能である。したがって、本発明の範囲は、以上に例として示された特定の実施形態により規定されるのではなく、添付の特許請求の範囲により規定されなければならないことはわかるであろう。引用文献はすべて、参照により本明細書に組み入れられるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型2 NS3−NS4Aプロテアーゼを阻害する方法であって、該プロテアーゼを該プロテアーゼの活性を阻害するのに有効な量のVX−950またはその製薬上許容される塩に接触させることを含む、上記方法。
【請求項2】
HCV遺伝子型3 NS3−NS4Aプロテアーゼを阻害する方法であって、該プロテアーゼを該プロテアーゼの活性を阻害するのに有効な量のVX−950またはその製薬上許容される塩に接触させることを含む、上記方法。
【請求項3】
患者においてHCV遺伝子型2感染症を治療する方法であって、該患者にVX−950またはその製薬上許容される塩を投与することを含む、上記方法。
【請求項4】
患者においてHCV遺伝子型3感染症を治療する方法であって、該患者にVX−950またはその製薬上許容される塩を投与することを含む、上記方法。
【請求項5】
免疫調節剤;シトクロムp45阻害剤、抗ウイルス剤;HCVプロテアーゼの第2の阻害剤;HCVの生活環中の他の標的の阻害剤;またはそれらの組合せ;から選択される追加の薬剤を前記患者に投与する追加の工程を含み、該追加の薬剤が、VX−950と同一の製剤の一部分としてまたは個別の製剤として前記患者に投与される、請求項3または請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記免疫調節剤が、α−、β−、もしくはγ−インターフェロン、またはチモシンであるか;前記抗ウイルス剤が、リババリン、アマンタジン、またはテルビブジンであるか;あるいはHCVの生活環中の他の標的の前記阻害剤が、HCVヘリカーゼ、HCVポリメラーゼ、またはHCVメタロプロテアーゼの阻害剤である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記シトクロムP−450阻害剤がリトナビルである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記追加の薬剤がVX−497である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記追加の薬剤がインターフェロンである、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
生物学的サンプルまたは医療機器もしくは実験機器のHCV遺伝子型2汚染またはHCV遺伝子型3汚染を排除または低減する方法であって、該生物学的サンプルまたは該医療機器もしくは該実験機器をVX−950に接触させる工程を含む、上記方法。
【請求項11】
前記サンプルまたは前記機器が、体液、生物学的組織、外科用器具、外科用衣類、実験用器具、実験用衣類、血液もしくは他の体液の採取装置;血液もしくは他の体液の貯蔵材料;から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記体液が血液である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
HCV遺伝子型2 NS3−NS4Aプロテアーゼを阻害する組成物であって、i)HCV遺伝子型2 NS3−NS4Aプロテアーゼを阻害するのに有効な量のVX−950またはその製薬上許容される塩と;ii)許容しうる担体、アジュバント、または媒体と;を含む、上記組成物。
【請求項14】
HCV遺伝子型3 NS3−NS4Aプロテアーゼを阻害する組成物であって、i)HCV遺伝子型3 NS3−NS4Aプロテアーゼを阻害するのに有効な量のVX−950またはその製薬上許容される塩と;ii)担体、アジュバント、または媒体と;を含む、上記組成物。
【請求項15】
前記組成物が患者への投与に供すべく製剤化されている、請求項13または請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記担体、前記アジュバント、または前記媒体が、製薬上許容される担体、アジュバント、または媒体である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、免疫調節剤;シトクロムp450阻害剤、抗ウイルス剤;HCVプロテアーゼの第2の阻害剤;HCVの生活環中の他の標的の阻害剤;シトクロムP−450阻害剤;またはそれらの組合せ;から選択される追加の薬剤を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記免疫調節剤が、α−、β−、もしくはγ−インターフェロン、またはチモシンであるか;前記抗ウイルス剤が、リバビリン、アマンタジン、またはテルビブジンであるか;あるいはHCVの生活環中の他の標的の前記阻害剤が、HCVヘリカーゼ、HCVポリメラーゼ、またはHCVメタロプロテアーゼの阻害剤である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記シトクロムP−450阻害剤がリトナビルである、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記追加の薬剤がVX−497である、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記追加の薬剤がインターフェロンである、請求項17に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−102098(P2012−102098A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246034(P2011−246034)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【分割の表示】特願2007−534798(P2007−534798)の分割
【原出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】