説明

ICカード

【課題】複数種類の外部装置との間で非接触のデータの送受信を行うために、より多くのアンテナ線を搭載することができ、また、曲げ又は押圧等による外力が加わった場合であっても、アンテナ線及びICチップ等が破壊される虞が少ないICカードを提供する。
【解決手段】アンテナ基板1上に交差することなく巻回して形成されたアンテナ線2、3を、ICチップ15が搭載されたモジュール基板11に突設されたモジュールアンテナパッド12a、12c…が跨ぐようにして、アンテナ基板1及びモジュール基板11を対向配置し、アンテナ線2、3の端部に設けられたアンテナ端子4a、4c…とモジュールアンテナパッド12a、12c…とを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を利用して非接触の通信を行うことができる非接触型ICカード又は接触・非接触共用型ICカード等のICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子によるICチップを実装したICカードは、従来利用されていた磁気カードと比較して、記憶可能なデータ量が多く、また、高度なセキュリティ機能を搭載できる等の利点を有しており、急速に普及している。ICカードには、機械的な接続端子を備え、外部装置に備えられた接続端子に接触させることでデータの送受信を行う接触型のICカードと、接続端子を備えず、外部装置に接触することなく無線通信によりデータの送受信を行う非接触型のICカードとがある。また、両機能を備える接触・非接触共用型のICカードがある。
【0003】
非接触でデータの送受信を行うことができるICカードは、外部装置との間で電磁波を利用したデータの送受信を行うようにしてあり、内部には電磁波を送受信するためのアンテナを備えている。アンテナは、例えば、数mm又はそれ以下の厚さのポリエステルフィルム又はポリイミドフィルム等によるカード基板の一面に、アルミ箔を貼り付けてエッチングすることにより形成されており、カード基板の一面に多重に巻回して形成されている。多重に巻回されたアンテナの両端はICチップの接続端子に接続され、ICチップ内の送受信回路がアンテナを用いたデータの送受信を行うことができるようにしてある。
【0004】
特許文献1においては、基板シートにアンテナ用コイルパターンを含む回路パターンを形成し、回路パターンと接続するようにICチップを基板シートに実装し、基板シートにカバーシートを重ねてラミネート加工することでカード化を行う場合に、基板シートの実装範囲に回路パターンと接触しないバックアップパターンを導電性ペーストで形成しておくことにより、ラミネート加工時にICチップが基板シートに沈み込むことを防止できる非接触ICカードの製造方法が提案されている。この非接触ICカードにおいては、多重に巻回されたアンテナ用コイルパターンの内側の端部にICチップの端子を接続し、アンテナ用コイルパターンの外側の端部にはジャンパ線を介してICチップの端子を接続するようにしてある。
【0005】
特許文献2においては、樹脂製のインレットシートに、樹脂で被覆された銅線を巻回した巻線コイルを配設し、巻線コイルの両端部をICモジュールに接続する構成とする場合、巻線コイルの端部近傍を波状に形成することで、巻線コイルとICモジュールとの接続部分近傍に発生する張力を緩衝する緩衝部を設けた非接触型ICカードが提案されている。この非接触型ICカードは、例えば温度変化によりインレットシートと巻線コイルとの間に熱膨張差が発生した場合、熱膨張差により発生する張力が緩衝部にて緩衝されるため、信頼性を向上させることができる。
【0006】
特許文献3においては、アンテナコイルを基板上にエッチングによって形成し、ICチップの接続用バンプを、アンテナコイルを跨いで、アンテナコイルの両端の接続端子に接続する構成の非接触式ICカード、及びこの非接触式ICカードの製造方法が提案されている。この非接触式ICカードは、アンテナコイルを交差させる必要がないため、ジャンパ線を用いる必要がなく、低コストで製造することができると共に、信頼性を向上させることができる。
【特許文献1】特開2000−200332号公報
【特許文献2】特開2002−74298号公報
【特許文献3】特許第2814477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2に係るICカードでは、巻回されたアンテナ用のコイル両端部分とICチップの接続端子とを接続する必要があるため、コイルに交差する部分を設ける必要がある。この交差部分がショートすることを防ぐため、例えば絶縁被膜付の配線を用いてコイルを形成することができるが、絶縁被膜付の配線はICチップと接続するために両端部分の絶縁被膜を取り除かなければならないため、製造コストが増大するという問題があり、また、交差部分の厚みが増すため、ICカードの厚みが増大する虞があり、ICカードの使用及び曲げ等によって破断する虞がある等の問題がある。
【0008】
また、アンテナ用のコイルを基板上にエッチングによって形成する場合には、コイルの交差部分にジャンパ線を用いるか、又は基板の反対面に交差部分のパターンを形成して基板の表裏面をスルーホールにより接続するか等の方法により交差部分を実現することができる。しかし、ジャンパ線を用いる場合には、上述の絶縁被膜付の配線を用いる場合と同様の問題があり、基板の裏面に交差部分のパターンを形成する場合には、基板に形成したスルーホール部分の強度が低下するため、ICカードの信頼性が低下するという問題があるとともに、製造コストが増大するという問題がある。
【0009】
特許文献3に係るICカードでは、アンテナコイルに交差部分がないため、上述の問題は発生しない。しかしながら、ICチップの接続用バンプがアンテナコイルを跨ぐ構成であるため、ICチップの大きさによって跨ぐことができるアンテナコイルの配線数が制限されるという問題がある。このため、巻数の多いアンテナコイルを備えるためには、ICチップを大きくするか、又はICチップの接続用バンプが跨ぐ部分のみアンテナコイルの配線を細くするかしなければならない。ICチップを大きくした場合には、ICカードに加わる曲げ、捻り又は押圧等の外部の力によってICチップが破壊される可能性が高まるという問題がある。また、ICチップの接続用バンプが跨ぐ部分のみアンテナコイルの配線を細くした場合には、この部分の配線が破断する可能性が高まると共に、アンテナ特性が低下するという問題がある。
【0010】
また、近年においては、ICカードの技術が広い範囲で使用されるようになり、これに伴ってICカードが一種類の外部装置のみとデータの送受信を行うのではなく、複数の種類の外部装置とデータの送受信を行うことが求められている。接触・非接触共用型のICカードは、接触端子を介して通信を行う外部装置と、無線による通信を行う外部装置との2種類の外部装置との間でデータの送受信を行うことができるが、ICカードは、ユーザの利便性から、複数の種類の外部装置と非接触で通信を行うことができることが望ましい。複数の種類の外部装置と非接触で通信を行う場合、それぞれの外部装置が通信に用いる無線の周波数が大きく異なるものであれば、ICカードは各周波数に対応して複数のアンテナを備える必要がある。
【0011】
特許文献1又は特許文献2に記載のICカードの構成と同様の構成で、複数のアンテナ用のコイルを備える場合、少なくともICカードに備えるアンテナ用のコイルの数と同数の交差部分が必要であり、アンテナ用コイルの配置によっては、それ以上の交差部分が必要となるため、ICカードの使用及び曲げ等によって交差部分が破断する虞が増し、ICカードの信頼性が低下するという問題がある。
【0012】
また、特許文献3に記載のICカードの構成と同様の構成で、複数のアンテナコイルを備える場合、ICチップの接続用バンプが跨ぐアンテナコイルの配線数が増大するため、ICチップをより大きくするか、又はICチップの接続用バンプが跨ぐ部分のアンテナコイルの配線をより細くするかしなければならない。ICチップを大きくした場合には、ICチップが破壊される可能性がより高くなり、ICチップの接続用バンプが跨ぐ部分のアンテナコイルの配線を細くした場合には、配線の断線が発生する可能性がより高くなるという問題がある。
【0013】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、複数のアンテナ線をアンテナ基板上に交差することなく巻回して形成し、ICチップが搭載されたモジュール基板の一面に複数のモジュール端子を突出させて設け、アンテナ基板及びモジュール基板を対向配置し、モジュール端子の間にアンテナ線を跨ぐようにしてアンテナ線のアンテナ端子とモジュール端子とを接続する構成とすることにより、より多くのアンテナを搭載することができ、使用及び曲げ等によってICチップ及びアンテナ線等が破壊される虞がないICカードを提供することにある。
【0014】
また本発明の他の目的とするところは、複数のアンテナ線を搭載して異なる周波数の信号を送信又は受信する構成とすることにより、より多くの種類の外部装置との非接触によるデータの送信又は受信を行うことができるICカードを提供することにある。
【0015】
また本発明の他の目的とするところは、アンテナ線を1ターン以上巻回する構成とすることにより、無線によるデータの送信又は受信の性能を高めることができ、アンテナ線を1ターン以上巻回した場合であっても、交差部分が形成されないICカードを提供することにある。
【0016】
また本発明の他の目的とするところは、巻回された一のアンテナ線の内側に、他のアンテナ線を巻回して設ける構成とすることにより、限られた配置領域に複数のアンテナ線を効率よく配設することができるICカードを提供することにある。
【0017】
また本発明の他の目的とするところは、モジュール基板のアンテナ基板との対向面にICチップを配設し、アンテナ基板に凹部を形成し、モジュール基板をアンテナ基板に対向配置した場合に、凹部にICチップを収容する構成とすることにより、より薄型化できるICカードを提供することにある。
【0018】
また本発明の他の目的とするところは、アンテナ基板に形成されたアンテナ端子とモジュール基板に設けられたモジュール端子とを導電性接着剤により接続する構成とすることにより、アンテナ端子とモジュール端子との接続を簡単に行うことができるICカードを提供することにある。
【0019】
また本発明の他の目的とするところは、ICチップをフリップチップボンド工法に従った処理でモジュール基板に接続する構成とすることにより、ICチップをワイヤボンディングによりモジュール基板に接続する場合と比較して、より強固に接続を行うことができるICカードを提供することにある。
【0020】
また本発明の他の目的とするところは、ICチップのモジュール基板に接続される面の反対面を補強する補強板を備える構成とすることにより、ICチップが破壊されることを防止できるICカードを提供することにある。
【0021】
また本発明の他の目的とするところは、モジュール基板のアンテナ基板との対向面の反対面に、外部機器と接触してデータの送信又は受信を行うための接触端子を設ける構成とすることにより、接触・非接触の両方式によるデータの送信又は受信を行うことができるICカードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係るICカードは、巻回するアンテナ線が配設されたアンテナ基板と、前記アンテナ線を介して送信又は受信される信号を処理するICチップが配設され、前記アンテナ基板に対向配置されたモジュール基板とを備えるICカードにおいて、前記アンテナ線を複数備え、複数の前記アンテナ線は、各アンテナ線が各個に交差することなく、且つ、複数のアンテナ線が相互に交差することなく前記アンテナ基板に配設してあり、前記アンテナ基板は、前記アンテナ線の両端にそれぞれ設けられた複数のアンテナ端子を有し、前記モジュール基板は、前記モジュール基板の一面に突出し、複数の前記アンテナ端子にそれぞれ接続される複数のモジュール端子を有し、複数の前記モジュール端子の間に一又は複数の前記アンテナ線を跨いで、前記モジュール基板が前記アンテナ基板に対向配置してあることを特徴とする。
【0023】
本発明においては、アンテナ基板上に交差することなく巻回して形成された複数のアンテナ線を、モジュール基板に突設された複数のモジュール端子が跨ぐようにして、アンテナ基板及びモジュール基板を対向配置し、アンテナ線の両端のアンテナ端子とモジュール端子とを接続する。アンテナ線が交差しないため、アンテナ線の強度が高まる。また、モジュール端子間に跨ぐアンテナ線の配線数が多い場合には、モジュール基板を大きくしてモジュール端子間の間隔を広げることにより、ICチップを大きくすることなくアンテナ線の数を増すことができる。
【0024】
また、本発明に係るICカードは、複数の前記アンテナ線が、異なる周波数の信号をそれぞれ送信又は受信するようにしてあることを特徴とする。
【0025】
本発明においては、アンテナ基板に設ける複数のアンテナ線は、異なる周波数の信号の送信又は受信に用いる。ICカードは、より多くの種類の外部装置と非接触によるデータの送信又は受信が可能となる。
【0026】
また、本発明に係るICカードは、前記アンテナ線が、1ターン以上巻回してあることを特徴とする。
【0027】
本発明においては、アンテナ基板に設けるアンテナ線は、1ターン以上巻回するように形成する。アンテナ線を1ターン以上巻回した場合であっても、アンテナ線が交差しないため、アンテナ線の強度が低下せず、アンテナ線の巻数を増すことにより、データの送信又は受信の性能が高まる。
【0028】
また、本発明に係るICカードは、前記アンテナ線が、一のアンテナ線の内側に他のアンテナ線が巻回してあることを特徴とする。
【0029】
本発明においては、巻回された一のアンテナ線の内側に、他のアンテナ線を巻回して形成することで、複数のアンテナ線を設ける。ICカードの限られた領域内に効率よく複数のアンテナ線を配置できる。また、複数のアンテナ線それぞれの両端部分を近くに配することができるため、アンテナ線両端のアンテナ端子に接続されるモジュール端子を有するモジュール基板を小型化できる。
【0030】
また、本発明に係るICカードは、前記ICチップが、前記モジュール基板の前記アンテナ基板との対向面に配設してあり、前記アンテナ基板は、前記ICチップを収容する凹部を有することを特徴とする。
【0031】
本発明においては、モジュール基板のアンテナ基板との対向面にICチップを配設し、アンテナ基板に凹部を形成し、ICチップを凹部に収容するようにモジュール基板をアンテナ基板に対向配置して、モジュール端子とアンテナ端子との接続を行う。ICチップのモジュール基板からの突出量が、モジュール端子の突出量より多い場合であっても、モジュール基板及びアンテナ基板を対向配置でき、ICカードを薄型化できる。
【0032】
また、本発明に係るICカードは、前記アンテナ端子及び前記モジュール端子が、導電性接着剤を介して接続してあることを特徴とする。
【0033】
本発明においては、アンテナ線の両端のアンテナ端子とモジュール基板のモジュール端子とを導電性接着剤により接続する。例えば、ワイヤボンディングによる接続と比較して、接続を簡単に行うことができると共に、接続強度を高めることができる。
【0034】
また、本発明に係るICカードは、前記ICチップが、フリップチップボンド工法により前記モジュール基板に接続してあることを特徴とする。
【0035】
本発明においては、ICチップをフリップチップボンド工法に従った処理でモジュール基板に接続する。例えば、ワイヤボンディングによる接続と比較して、接続を簡単に行うことができると共に、接続強度を高めることができる。
【0036】
また、本発明に係るICカードは、前記ICチップが板状をなし、一面側が前記モジュール基板に接続してあり、前記ICチップの他面側を補強する補強板を備えることを特徴とする。
【0037】
本発明においては、ICチップのモジュール基板に接続される面の反対面を補強する補強板を設ける。ICカードに曲げによる応力が加わった場合に、ICチップに応力が加わりにくくなり、ICチップが破壊されることを防止できる。
【0038】
また、本発明に係るICカードは、前記モジュール基板には、前記アンテナ基板との対向面の反対面に、外部の機器に接触し、該外部の機器との信号の送信又は受信を行う接触端子が設けてあることを特徴とする。
【0039】
本発明においては、モジュール基板のアンテナ基板との対向面の反対面に、外部機器と接触してデータの送信又は受信を行う接触端子を設ける。無線によるデータの送信又は受信を行うことができない外部機器との間で、接触端子を用いたデータの送信又は受信を行うことができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明による場合は、複数のアンテナ線をアンテナ基板上に交差することなく巻回して形成し、ICチップが搭載されたモジュール基板の一面に複数のモジュール端子を突出させて設け、アンテナ基板及びモジュール基板を対向配置し、モジュール端子の間にアンテナ線を跨ぐようにしてアンテナ線のアンテナ端子とモジュール端子とを接続する構成とすることにより、モジュール端子間に跨ぐアンテナ線の配線数が多い場合には、モジュール基板を大きくしてモジュール端子間の間隔を広げることにより、ICチップを大きくすることなくアンテナ線の数を増すことができるため、ICチップの強度を低下させることなく、より多くのアンテナ線を設けることができる。また、アンテナ線が交差しないため、アンテナ線の強度が高まる。よって、利便性が高く、信頼性の高いICカードが実現できる。
【0041】
また、本発明による場合は、複数のアンテナ線を搭載して異なる周波数の信号を送信又は受信する構成とすることにより、ICカードがより多くの種類の外部装置と非接触によるデータの送信又は受信が可能となるため、ICカードの利便性を高めることができる。
【0042】
また、本発明による場合は、アンテナ線を1ターン以上巻回する構成とすることにより、アンテナ線による送信又は受信の性能を高めることができるため、外部装置との間でデータの送信又は受信を確実に行うことができる。また、アンテナ線を1ターン以上巻回した場合であっても、交差部分が形成されないため、アンテナ線の強度を低下させることなく、アンテナ線の巻数を増すことができる。よって、利便性の高いICカードが実現できる。
【0043】
また、本発明による場合は、巻回された一のアンテナ線の内側に、他のアンテナ線を巻回して設ける構成とすることにより、ICカードの限られた領域内に効率よく複数のアンテナ線を配置できるため、アンテナ線による送信又は受信の性能を高めることができる。よって、ICカードの利便性を高めることができる。また、複数のアンテナ線それぞれの両端部分を近づけて配することができるため、アンテナ線両端のアンテナ端子に接続されるモジュール端子を有するモジュール基板を小型化できる。よって、ICカードの小型化又は薄型化を実現できる。
【0044】
また、本発明による場合は、モジュール基板のアンテナ基板との対向面にICチップを配設し、アンテナ基板に凹部を形成し、ICチップを凹部に収容するようにモジュール基板をアンテナ基板に対向配置して、モジュール端子とアンテナ端子とを接続する構成とすることにより、モジュール基板から突出するICチップを凹部に収容できるため、アンテナ基板及びモジュール基板間の距離を短くでき、ICカードを薄型化できる。よって、ICカードの利便性を高めることができる。
【0045】
また、本発明による場合は、アンテナ基板に形成されたアンテナ線のアンテナ端子とモジュール基板に設けられたモジュール端子とを導電性接着剤により接続する構成とすることにより、アンテナ線とモジュール端子との接続を簡単に行うことができるため、ICカードの製造工程を簡略化できる。また、アンテナ線とモジュール端子との接続強度を高めることができるため、ICカードの信頼性を高めることができる。
【0046】
また、本発明による場合は、ICチップをフリップチップボンド工法に従った処理でモジュール基板に接続する構成とすることにより、ICチップとモジュール基板との接続を簡単に行うことができるため、ICカードの製造工程を簡略化できる。また、ICチップとモジュール基板との接続強度を高めることができるため、ICカードの信頼性を高めることができる。
【0047】
また、本発明による場合は、ICチップのモジュール基板に接続される面の反対面を補強する補強板を備える構成とすることにより、ICカードに曲げによる応力が加わった場合に、ICチップに応力が加わりにくくなり、ICチップが破壊されることを防止できるため、ICカードの信頼性を高めることができる。
【0048】
また、本発明による場合は、モジュール基板のアンテナ基板との対向面の反対面に、外部機器と接触してデータの送信又は受信を行うための接触端子を設ける構成とすることにより、無線によるデータの送信又は受信を行うことができると共に、無線によるデータの送信又は受信を行うことができない外部機器との間で、接触端子を用いたデータの送信又は受信を行うことができるため、ICカードの利便性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係るICカードの構成を示す模式的平面図であり、図2は、図1のII−II線による模式的断面図である。なお、図1においては、ICカードの表面を覆う後述の表面シート35の図示を省略し、ICカードの内部構成を図示してある。図において1は略長方形の板状をなすアンテナ基板であり、アンテナ基板1は、例えばポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート(PolyEthylene Terephthalate))、PETG(ポリエチレンテレフタレート共重合体(PolyEthylene Terephthalete Glycol modeified))、PVC(ポリ塩化ビニル(PolyVinyl Chloride))又はPC(ポリカーボネート(PolyCarbonate))等の絶縁材料により形成されるものである。
【0050】
アンテナ基板1の一面には、アンテナ基板1の外縁に沿って、2ターン弱程度を巻回されたアンテナ線2と、巻回されたアンテナ線2の内側に、3ターン弱程度を巻回されたアンテナ線3とが配設されている。巻回されたアンテナ線2の外側の端部にはアンテナ端子4aが設けられ、内側の端部にはアンテナ端子4bが設けられている。また、巻回されたアンテナ線3の外側の端部にはアンテナ端子4dが設けられ、内側の端部にはアンテナ端子4cが設けられている。これらのアンテナ線2、3及びアンテナ端子4a、4b、4c、4dは、アンテナ基板1の一面に銅箔又はアルミ箔等の金属箔を貼り付け、金属箔をエッチングすることによって形成されている。
【0051】
本発明に係るICカードは、通信に用いる電波の周波数が異なる複数種類の外部装置との間でデータの送受信を行うことができ、アンテナ線2及びアンテナ線3は、それぞれ異なる周波数の電波を受信するために用いられる。アンテナ線2及びアンテナ線3を用いて送受信を行う送受信回路、データを記憶するメモリ、及び演算を行うCPU等の回路はICチップ15に設けられており、ICチップ15はアンテナ基板1に対向配置されるICモジュール10に搭載されている。図3は、本発明の実施の形態1に係るICカードのICモジュール10の構成を示す模式的断面図であり、図4は、同模式的平面図である。
【0052】
ICモジュール10は、アンテナ基板1に対向して配され、略円形の板状をなすモジュール基板11を備え、モジュール基板11の一面に、アンテナ基板1のアンテナ端子4a、4b、4c、4dに接続されるモジュールアンテナパッド12a、12b、12c、12d、及び上述のICチップ15等が配されている。モジュールアンテナパッド12a、12b、12c、12dは、モジュール基板11をアンテナ基板1に対向して配置した場合に、アンテナ基板1のアンテナ端子4a、4b、4c、4dに対向するように、モジュール基板11の周縁側の適宜の位置に配設されている。
【0053】
また、略長方形の板状をなすICチップ15の一面には、アンテナ線2及びアンテナ線3に電気的に接続される接続端子16a、16b、16c、16dが突設されており、モジュール基板11には、モジュールアンテナパッド12a、12b、12c、12dが配された面と同じ面に、ICチップ15の接続端子16a、16b、16c、16dに接続されるモジュールチップパッド13a、13b、13c、13dが設けられている。モジュールチップパッド13a、13b、13c、13dは、モジュール基板11の反対面に設けられた接続線14a、14b、14c、14dにより、モジュールアンテナバッド12a、12b、12c、12dにそれぞれ接続されている。
【0054】
ICチップ15の接続端子16a、16b、16c、16dと、モジュール基板11のモジュールチップパッド13a、13b、13c、13dとは、金バンプ18、18…により接続されており、これによってICチップ15の接続端子16a、16b、16c、16dは、モジュール基板11のモジュールアンテナバッド12a、12b、12c、12dに電気的に接続され、アンテナ線2及びアンテナ線3に電気的に接続できるようにしてある。また、ICチップ15及びモジュール基板11の間には、接続端子16a、16b、16c、16d及びモジュールチップパッド13a、13b、13c、13dの金バンプ18、18…による接続を固定する接続固定樹脂部19を設けて、接続の信頼性を高めてある。
【0055】
また、ICチップ15の接続端子16a、16b、16c、16dが設けられた面の反対面には、ICチップ15より若干大きい略長方形の補強板17が、UV接着テープ又は熱接着テープ等により接着してあり、ICチップ15に曲げ又は押圧等の応力が加わりにくくしてある。更に、モジュール基板11の一面に設けられたICチップ15、接続固定樹脂部19及び補強板17は、合成樹脂による封止部20に覆われて封止してあり、ICチップ15及び金バンプ18、18…による接続部分が破壊されないように保護してある。なお、封止部20は、モジュール基板11の一面に突出する略円柱状に形成してある。
【0056】
ICモジュール10に対向配置されるアンテナ基板1には、ICモジュール10のモジュール基板11の対向面に突出する略円柱状の封止部20を収容する凹部5が形成されており、凹部5に封止部20を収容することによって、モジュール基板11の同じ面にICチップ15及びモジュールアンテナパッド12a、12b、12c、12dが設けられている場合であっても、アンテナ基板1及びモジュール基板11を対向配置し、アンテナ端子4a、4b、4c、4d及びモジュールアンテナパッド12a、12b、12c、12dを接続できるようにしてある。なお、凹部5は、封止部20と略同形に形成するか、又は封止部20より若干大きい形状に形成してある。
【0057】
アンテナ基板1のアンテナ端子4a、4b、4c、4d及びモジュール基板11のモジュールアンテナパッド12a、12b、12c、12dは、半田又はAgペースト等の導電性を有する接続材料31を用いてそれぞれ接続されており、これによりICチップ15はアンテナ線2及びアンテナ線3に電気的に接続され、アンテナ線2及びアンテナ線3を利用した非接触による信号の送受信を行うことができるようにしてある。また、ICモジュール10は、モジュール基板11に突出するようにして設けられたモジュールアンテナパッド12a、12b、12c、12dの間に、アンテナ線2及びアンテナ線3を跨いでアンテナ基板1に対向配置されており、アンテナ線2及びアンテナ線3に交差部分を設けることなく、アンテナ線2及びアンテナ線3とICチップ15との電気的な接続を実現できるようにしてある。
【0058】
また、接続材料31にて接続されたアンテナ基板1及びICモジュール10は、モジュール基板11のアンテナ基板1との対向面の反対面に接触して設けられた補強板32と、アンテナ基板1のモジュール基板11との対向面の反対面に接触して設けられた補強板33とに挟まれ、ICカードに曲げ又は押圧等の外力が加わった場合にICチップ15、ICチップ15及びモジュール基板11の接続部分、並びにモジュール基板11及びアンテナ基板1の接続部分等が破壊されることがないように補強されている。補強板32、33は、モジュール基板11より若干大きい略円形の板状をなしている。
【0059】
更に、アンテナ基板1及びICモジュール10は、アンテナ基板1と略同じ大きさの略長方形の板状をなす表面シート35及び裏面シート36に挟み込まれて覆われており、外部に露出しないようにしてある。
【0060】
図5は、本発明の実施の形態1に係るICカードのICモジュール10の製造工程を示す模式図であり、(a)から(c)へアルファベット順に時系列で製造工程を図示してある。まず、厚さが60μm〜100μm程度のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、PET、PETG、PVC又はPC等によるモジュール基板11に、アルミ箔又は銅箔等の金属箔を着設してエッチングすることによりモジュールアンテナパッド12a、12b、12c、12d及びモジュールチップパッド13a、13b、13c、13d等を形成する。次いで、モジュール基板11に図示しないチップ抵抗又はチップコンデンサ等の回路部品を半田付けする。
【0061】
また、厚さが50μm〜100μm程度のICチップ15に、厚さが約50μm程度の補強板17を、接続端子16a、16b、16c、16dが設けられた面の反対面に、厚さ約10μm程度のUV接着テープにて着設し、次いで、ICチップ15の接続端子16a、16b、16c、16dに、高さが20μm〜30μm程度の金バンプ18、18…を形成する。
【0062】
次いで、モジュール基板11のICチップ15を接続する部分に、接続固定樹脂部19をなす樹脂製シートを仮接着し、ICチップ15の接続端子16a、16b、16c、16dとモジュール基板11のモジュールチップパッド13a、13b、13c、13dとの位置を合わせて、ICチップ15を加熱しながらモジュール基板11へ押し付ける(図5(a)参照)。このとき、ICチップ15の接続端子16a、16b、16c、16dに形成された金バンプ18、18…が2μm〜10μm程度潰れるようにICチップ15に圧力を加える。これにより、ICチップ15の接続端子16a、16b、16c、16dとモジュール基板11のモジュールチップパッド13a、13b、13c、13dとが接続される(図5(b)参照)。なお、上述のようなICチップ15を加熱及び加圧し、金バンプ18、18…による接続を行う方法は、所謂フリップチップボンド工法といわれる方法である。
【0063】
次いで、ICチップ15、補強板17及び接続固定樹脂部19を合成樹脂で覆って樹脂封止し、合成樹脂を略円柱形に形成して封止部20とする(図5(c)参照)。これにより、外部の応力からICチップ15及び金バンプ18、18…による接続部分等を保護することができ、ICカードの信頼性を高めることができる。以上の工程により、ICモジュール10が完成する。
【0064】
図6及び図7は、本発明の実施の形態1に係るICカードの製造工程を示す模式図であり、(A)から(F)へアルファベット順に時系列で製造工程を図示してある。まず、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、PET、PETG、PVC又はPC等の絶縁材料により形成されたアンテナ基板1に、銅箔又はアルミ箔等の金属箔を貼り付け、金属箔をエッチングすることによりアンテナ線2、3及びアンテナ端子4a、4b、4c、4d等を形成する(図6(A)参照)。
【0065】
次いで、アンテナ基板1に、ICモジュール10の封止部20を収容する凹部5を形成する(図6(B)参照)。凹部5は、ICモジュール10の封止部20と略同じ大きさ、又は封止部20より0.05mm〜0.5mm程度の余裕を持たせた大きさに形成する。
【0066】
次いで、アンテナ基板1のアンテナ端子4a、4b、4c、4dに接続材料31として導電性接着剤であるAgペーストを塗布し、ICモジュール10のモジュールアンテナパッド12a、12b、12c、12dとアンテナ基板1のアンテナ端子4a、4b、4c、4dとの位置を合わせて、ICモジュール10をアンテナ基板1へ押し付ける(図6(C)参照)。これにより、ICモジュール10の封止部20がアンテナ基板1の凹部5に収容され、モジュールアンテナパッド12a、12b、12c、12d及びアンテナ端子4a、4b、4c、4dが接続材料31により接続され、ICモジュール10がアンテナ線2及びアンテナ線3を跨いでアンテナ基板1に対向配置される(図6(D)参照)。
【0067】
なお、接続材料31として半田を用いる場合には、アンテナ基板1及びモジュール基板11を60℃〜85℃程度で溶融する材料で形成しているため、低温で溶融する低温半田を用いることが好ましい。
【0068】
次いで、モジュール基板11のアンテナ基板1との対向面の反対面に補強板32を接触させ、アンテナ基板1のモジュール基板11との対向面の反対面に補強板33を接触させて、2つの補強板32及び33にてICモジュール10及びアンテナ基板1を挟み込んで補強する。更に、アンテナ基板1のアンテナ線2、アンテナ線3及びICモジュール10が配された面を表面シート35で覆い、反対面を裏面シート36で覆い、2つのシート35、36にてアンテナ基板1及びICモジュール10を挟み込む(図7(E)参照)。
【0069】
その後、表面シート35及び裏面シート36を加熱及び加圧してラミネート加工し、アンテナ基板1と表面シート35及び裏面シート36とを一体化してカード化することで、ICカードが完成する(図7(F)参照)。このとき、ICカードの厚みが均一になるようにカード化を行うことが好ましい。なお、アンテナ基板1と表面シート35及び裏面シート36とを、それぞれPETG、PVC又はPC等の同じ材料で形成した場合には、表面シート35及び裏面シート36を加熱及び加圧してラミネート加工することでカード化することができるが、アンテナ基板1と表面シート35及び裏面シート36とを別の材料で形成し、加熱することでこれらが溶融したときに相互に結合することがない別の材料とした場合には、アンテナ基板1及び表面シート35の間と、アンテナ基板1及び裏面シート36の間とに接着剤を挟んで接着し、カード化することができる。
【0070】
以上の構成のICカードにおいては、ICモジュール10のモジュール基板11にモジュールアンテナパッド12a、12b、12c、12dを突出するように設け、モジュールアンテナパッド12a、12b、12c、12dの間にアンテナ基板1に形成されたアンテナ線2及びアンテナ線3を跨ぐようにして、ICモジュール10及びアンテナ基板1を対向配置し、ICモジュール10のモジュールアンテナパッド12a、12b、12c、12dとアンテナ基板1のアンテナ端子4a、4b、4c、4dとを接続することにより、アンテナ線2及びアンテナ線3に交差部分を設けることなく、ICチップ15とアンテナ線2及びアンテナ線3との電気的接続を行うことができる。また、アンテナ線の数又はアンテナ線の巻数を増した場合であっても、モジュール基板をこれに応じて大きくしてモジュールアンテナパッドの間隔を広げ、モジュールアンテナパッドの間により多くのアンテナ線を跨ぐようにすればよいため、ICチップを大きくする必要がない。
【0071】
このようにして設けた複数のアンテナ線を利用して、周波数の異なる信号の送信又は受信を行うことにより、ICカードがより多くの種類の外部装置との間でデータの送信又は受信が可能となる。また、アンテナ基板1にICモジュール10の封止部20を収容する凹部5を形成することにより、アンテナ線2及びアンテナ線3に接続されるモジュールアンテナパッド12a、12b、12c、12dとICチップ15とをモジュール基板11の同じ面に配することができ、ICカードを薄型化することができる。また、ICチップ15に着設された補強板17、並びにICモジュール10及びアンテナ基板1を挟むようにして設けられた補強板32、33により、ICカードの強度を高めることができ、ICカードの信頼性を高めることができる。
【0072】
本発明に係るICカードは、例えば、社員証カード、学生証カード、銀行カード、クレジットカード、定期券、乗車券、図書カード、病院カード、住民基本台帳カード、国家公務員カード、地方公務員カード、ホームセキュリティーカード、PCセキュリティーカード、会員制クラブカード、個人私書箱カード、空港関係者カード、市民カード、入出国管理カード、電子パスポート、お買い物ポイントカード、製品保証カード、郵便物管理カード、ETCカード、ルームカード、運転免許証、国家認定免許証、自動車キー又は携帯電話マネーチャージカード等に利用することができ、複数のアンテナ線を備えて複数の外部機器とのデータの送信又は受信を行うことができるため、1枚のICカードに上述のカードの複数分の機能を備えることができる。
【0073】
なお、本実施の形態においては、アンテナ基板1にアンテナ線2及びアンテナ線3の2つのアンテナ線を設ける構成としたが、これに限るものではなく、3つ以上のアンテナ線を設ける構成としてもよい。また、アンテナ線2の内側にアンテナ線3を巻回して設ける構成としたが、これに限るものではなく、複数のアンテナ線が交差しなければ、別の配置としてもよい。また、アンテナ線2及びアンテナ線3は、アンテナ基板1に金属箔を貼り付けてエッチングすることにより形成したが、これに限るものではなく、アンテナ基板に銅線又はアルミ線等の金属線を巻回して着設させる構成としてもよく、この場合には金属線の両端に金属板を溶着することでアンテナ端子を形成してもよい。
【0074】
また、ICモジュール10のモジュール基板11を略円形としたが、これに限るものではなく、略矩形又は略三角形等の他の形状としてもよい。また、ICモジュール10のモジュール基板11及びICチップ15等の厚みを数値で示したが、これは一例であって、この数値に限定するものではない。
【0075】
(変形例)
図8は、本発明の実施の形態1の変形例に係るICカードの構成を示す模式的断面図である。図2に示すICカードは、表面シート35の厚みを均一とし、ICカードの厚みを均一としてあるが、変形例に係るICカードは、表面シート35aの厚みを均一とせず、ICモジュール10が配されていない部分の厚みを薄くしてある。ICカードの厚みは均一でなくてもよく、この場合であっても、図2に示すICカードと同様の効果を得ることができる。
【0076】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2に係るICカードの構成を示す模式的平面図であり、図10は、図9のX−X線による模式的断面図である。なお、図9においては、ICカードの表面を覆う表面シート135の図示を省略し、ICカードの内部構成を図示してある。実施の形態2に係るICカードのアンテナ基板1の一面には、アンテナ基板1の外縁に沿って、2ターン弱程度を巻回されたアンテナ線2と、巻回されたアンテナ線2の内側に、3ターン弱程度を巻回されたアンテナ線3とが配設されている。アンテナ線2の両端部にはアンテナ端子4a及び4bがそれぞれ設けられ、また、アンテナ線3の両端部にはアンテナ端子4c及び4dがそれぞれ設けられている。また、アンテナ基板1には、アンテナ端子4a、4b、4c、4dの間に、略円形の凹部5が形成されている。
【0077】
実施の形態2に係るICカードは、アンテナ線2及びアンテナ線3により複数種類の外部装置との間で非接触のデータの送信又は受信を行うことができると共に、ICカードの一面に露出する接触端子121を備えて、外部装置との間で接触端子121を介した接触によるデータの送信又は受信を行うことができるようにしてある。アンテナ線2、アンテナ線3又は接触端子121により送信又は受信されるデータを処理する回路はICチップ115に設けられており、ICチップ115はアンテナ基板1に対向配置されるICモジュール110に搭載されている。
【0078】
図11は、本発明の実施の形態2に係るICカードのICモジュール110の構成を示す模式的断面図である。ICモジュール110は、略矩形の板状をなし、アンテナ基板1に対向して配されるモジュール基板111を備え、モジュール基板111の一面に、アンテナ基板1のアンテナ端子4a、4b、4c、4dに接続される4つのモジュールアンテナパッド112a、112c…(図11にて2つのみ図示する)及び上述のICチップ115等が配されている。モジュールアンテナパッド112a、112c…は、モジュール基板111をアンテナ基板1に対向して配置した場合に、アンテナ基板1のアンテナ端子4a、4b、4c、4dにそれぞれ対向するように、モジュール基板111の周縁側の適宜の位置に配設されている。
【0079】
モジュール基板111の他面側、即ちアンテナ基板1に対向する面の反対面の側には、外部装置との間で接触によるデータの送信又は受信を行うための接触端子121が配設されている。図12は、本発明の実施の形態2に係るICカードの接触端子121の構成を示す模式的平面図である。接触端子121は、第1接触端子121a〜第8接触端子121hの8つの金属端子で構成されており、例えば電源端子、接地端子、入力端子及び出力端子等に割り当てられている。
【0080】
また、略長方形の板状をなすICチップ115の一面には、アンテナ線2及びアンテナ線3の両端に設けられたアンテナ端子4a、4b、4c、4dに電気的にそれぞれ接続される4つの接続端子16a、16c…(図11には2つのみ図示する)が突設されており、接触端子121(121a〜121h)に電気的にそれぞれ接続される8つの接続端子123(図11には1つのみ図示する)が突設されている。モジュール基板111には、モジュールアンテナパッド112a、112c…が配された面と同じ面に、ICチップ115の接続端子16a、16c…にそれぞれ接続される4つのモジュールチップパッド113a、113c(図11にて2つのみ図示する)と、接続端子123にそれぞれ接続される8つのモジュールチップパッド122(図11にて1つのみ図示する)とが突設されている。
【0081】
モジュールチップパッド113a、113c…は、モジュール基板111の同じ面に設けられた4つの接続線114a、114c…(図11にて2つのみ図示する)によりモジュールアンテナパッド112a、112c…にそれぞれ接続されている。モジュール基板111の一面は絶縁膜124に覆われており、モジュールチップパッド113a、113c…及びモジュールチップパッド122、並びにモジュールアンテナパッド112a、112c…が絶縁膜124から露出し、接続線114a、114c…は絶縁膜124から露出しないようにしてある。また、モジュールチップパッド122は、モジュール基板111の反対面に設けられた接触端子121にモジュール基板111に形成された貫通孔を通してそれぞれ接続されている。
【0082】
ICチップ115の接続端子16a、16c…及び接続端子123と、モジュール基板111のモジュールチップパッド113a、113c…及びモジュールチップパッド122とは、金バンプ18、18…により接続されており、これによってICチップ115はモジュールアンテナパッド112a、112c…に電気的に接続され、アンテナ線2及びアンテナ線3に電気的に接続できるようにしてあると共に、接触端子121に電気的に接続してある。また、ICチップ115及びモジュール基板111の間には、接続端子16a、16c…及び接続端子123と、モジュールチップパッド113a、113c…及びモジュールチップパッド122との金バンプ18、18…による接続を固定する接続固定樹脂部19を設けて、接続の信頼性を高めてある。
【0083】
また、ICチップ115の接続端子16a、16c…が設けられた面の反対面には、ICチップ115より若干大きい略長方形の補強板17が、UV接着テープ又は熱接着テープ等により接着してあり、ICチップ115に曲げ又は押圧等の応力が加わりにくくしてある。さらに、モジュール基板111の一面に設けられたICチップ115、接続固定樹脂部19及び補強板17は、合成樹脂による封止部20に覆われて封止してあり、ICチップ115及び金バンプ18、18…による接続部分が破壊されないように保護してある。なお、封止部20は、モジュール基板111の一面に突出する略円柱状に形成してある。
【0084】
ICモジュール110に対向配置されるアンテナ基板1には、ICモジュール110のモジュール基板111に突出する略円柱状の封止部20を収容する凹部5が形成されており、凹部5に封止部20を収容することによって、モジュール基板111の同じ面にICチップ115及びモジュールアンテナパッド112a、112c…が設けられている場合であっても、アンテナ基板1及びモジュール基板111を対向配置し、アンテナ端子4a、4b、4c、4d及びモジュールアンテナパッド112a、112c…を接続できるようにしてある。なお、凹部5は、封止部20と略同形に形成するか、又は封止部20より若干大きい形状に形成してある。
【0085】
アンテナ基板1のアンテナ端子4a、4b、4c、4d及びモジュール基板111のモジュールアンテナパッド112a、112c…は、はんだ又はAgペースト等の導電性を有する接続材料31を用いてそれぞれ接続されており、これによりICチップ115はアンテナ線2及びアンテナ線3に電気的に接続され、アンテナ線2及びアンテナ線3を利用した非接触による信号の送受信を行うことができるようにしてある。また、ICモジュール110は、モジュール基板111に突出するようにして設けられたモジュールアンテナパッド112a、112c…の間に、アンテナ線2及びアンテナ線3を跨いでアンテナ基板1に対向配置されており、アンテナ線2及びアンテナ線3に交差部分を設けることなく、アンテナ線2及びアンテナ線3とICチップ115との電気的な接続を実現できるようにしてある。
【0086】
また、アンテナ基板1のアンテナ線2及びアンテナ線3等が配された面の反対面には、ICモジュール110が配された位置に対応して、ICモジュール110のモジュール基板111より若干大きい略矩形の補強板133が接触して設けられており、ICカードに曲げ又は押圧等の外力が加わった場合にICチップ115、ICチップ115及びモジュール基板111の接続部分、並びにモジュール基板111及びアンテナ基板1の接続部分等が破壊されることがないように補強されている。
【0087】
更に、アンテナ基板1は、アンテナ基板1と略同じ大きさの略長方形の板状をなす表面シート135及び裏面シート36に挟み込まれて覆われている。なお、ICモジュール110のモジュール基板111のアンテナ基板1との対向面の反対面に設けられた接触端子121は、表面シート135に覆われず、ICカードの表面に露出するようにしてあり、接触端子121が外部装置に接触できるようにしてある。これによりICカードは接触によるデータの送信又は受信を外部装置との間で行うことができるようにしてある。
【0088】
図13及び図14は、本発明の実施の形態2にかかるICカードの製造工程を示す模式図であり、(A)から(F)へアルファベット順に時系列で製造工程を図示してある。まず、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、PET、PETG、PVC又はPC等の絶縁材料により形成されたアンテナ基板1に、銅箔又はアルミ箔等の金属箔を貼り付け、金属箔をエッチングすることによりアンテナ線2、3及びアンテナ端子4a、4b、4c、4d等を形成する(図13(A)参照)。
【0089】
次いで、アンテナ基板1のアンテナ線2、3及びアンテナ端子4a、4b、4c、4d等が形成された面の反対面に補強板133を接触させ、更に、アンテナ基板1のアンテナ線2、3及びアンテナ端子4a、4b、4c、4d等が形成された面を表面シート135で覆い、反対面を裏面シート36で覆い、2つのシート135、36にてアンテナ基板1を挟み込む(図13(B)参照)。
【0090】
その後、表面シート135及び裏面シート36を加熱及び加圧してラミネート加工し、アンテナ基板1と表面シート135及び裏面シート36とを一体化してカード化する(図13(C)参照)。このとき、一体化されたアンテナ基板1、表面シート135及び裏面シート36の厚さが均一となるようにカード化を行うことが好ましい。なお、アンテナ基板1と表面シート135及び裏面シート36とを、それぞれPETG、PVC又はPC等の同じ材料で形成した場合には、表面シート135及び裏面シート36を加熱及び加圧してラミネート加工することでカード化することができるが、アンテナ基板1と表面シート135及び裏面シート36とを別の材料で形成し、加熱することでこれらが溶融したときに相互に結合することがない別の材料とした場合には、アンテナ基板1及び表面シート135の間と、アンテナ基板1及び裏面シート36の間とに接着剤を挟んで接着し、カード化することができる。
【0091】
次いで、表面シート135及びアンテナ基板1に、ICモジュール110を嵌合して収容可能な収容穴150を穿設する(図14(D)参照)。図15は、図14(D)の模式的平面図である。収容穴150にはICモジュール110の封止部20を収容する凹部5が含まれており、また、表面シート135に収容穴150を穿設することによってアンテナ端子4a、4b、4c、4dが露出するようにしてある。
【0092】
次いで、露出したアンテナ端子4a、4b、4c、4dに接続材料31として導電性接着剤であるAgペーストを塗布し、ICモジュール110のモジュールアンテナパッド112a、112c…及びアンテナ基板1のアンテナ端子4a、4b、4c、4dの位置を合わせ、ICモジュール110の封止部20及びアンテナ基板1の凹部5の位置を合わせて、ICモジュール110を表面シート135及びアンテナ基板1へ押し付ける(図14(E)参照)。これにより、ICモジュール110の封止部20がアンテナ基板1の凹部5に収容され、モジュールアンテナパッド112a、112c…及びアンテナ端子4a、4b、4c、4dが接続材料31により接続され、ICモジュール110がアンテナ線2及びアンテナ線3を跨いでアンテナ基板1に対向配置される(図14(F)参照)。
【0093】
なお、接続材料31として半田を用いる場合には、アンテナ基板1及びモジュール基板111に60℃〜85℃程度で溶融する材料を使用しているため、低温で溶融する低温半田を用いることが好ましい。また、接続材料31による接続部分以外の部分は、ICモジュール110と表面シート135及びアンテナ基板1等とを導電性を有しない接着剤を用いて接着してもよい。
【0094】
以上の構成の実施の形態2に係るICカードにおいては、実施の形態1に係るICカードと同様の効果を有すると共に、接触端子121を備えるため、無線による通信手段を有しない外部装置との間でデータの送信又は受信を行うことができる。
【0095】
なお、実施の形態2に係るICカードのその他の構成は、実施の形態1に係るICカードの構成と同様であるため、対応する箇所には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施の形態1に係るICカードの構成を示す模式的平面図である。
【図2】図1のII−II線による模式的断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るICカードのICモジュールの構成を示す模式的断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るICカードのICモジュールの構成を示す模式的平面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るICカードのICモジュールの製造工程を示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るICカードの製造工程を示す模式図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係るICカードの製造工程を示す模式図である。
【図8】本発明の実施の形態1の変形例に係るICカードの構成を示す模式的断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係るICカードの構成を示す模式的平面図である。
【図10】図9のX−X線による模式的断面図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係るICカードのICモジュールの構成を示す模式的断面図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係るICカードの接触端子の構成を示す模式的平面図である。
【図13】本発明の実施の形態2にかかるICカードの製造工程を示す模式図である。
【図14】本発明の実施の形態2にかかるICカードの製造工程を示す模式図である。
【図15】図14(D)の模式的平面図である。
【符号の説明】
【0097】
1 アンテナ基板
2、3 アンテナ線
4a、4b、4c、4d アンテナ端子
5 凹部
10 ICモジュール
11 モジュール基板
12a、12b、12c、12d モジュールアンテナパッド(モジュール端子)
13a、13b、13c、13d モジュールチップパッド
15 ICチップ
16a、16b、16c、16d 接続端子
17 補強板
18 金バンプ
20 封止部
31 接続材料(導電性接着剤)
32、33 補強板
35、35a 表面シート
36 裏面シート
110 ICモジュール
111 モジュール基板
112a、112c モジュールアンテナパッド
113a、113c モジュールチップパッド
115 ICチップ
121 接触端子
122 モジュールチップパッド
123 接続端子
150 収容穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回するアンテナ線が配設されたアンテナ基板と、前記アンテナ線を介して送信又は受信される信号を処理するICチップが配設され、前記アンテナ基板に対向配置されたモジュール基板とを備えるICカードにおいて、
前記アンテナ線を複数備え、
複数の前記アンテナ線は、各アンテナ線が各個に交差することなく、且つ、複数のアンテナ線が相互に交差することなく前記アンテナ基板に配設してあり、
前記アンテナ基板は、前記アンテナ線の両端にそれぞれ設けられた複数のアンテナ端子を有し、
前記モジュール基板は、前記モジュール基板の一面に突出し、複数の前記アンテナ端子にそれぞれ接続される複数のモジュール端子を有し、
複数の前記モジュール端子の間に一又は複数の前記アンテナ線を跨いで、前記モジュール基板が前記アンテナ基板に対向配置してあること
を特徴とするICカード。
【請求項2】
複数の前記アンテナ線は、異なる周波数の信号をそれぞれ送信又は受信するようにしてある請求項1に記載のICカード。
【請求項3】
前記アンテナ線は、1ターン以上巻回してある請求項1又は請求項2に記載のICカード。
【請求項4】
前記アンテナ線は、一のアンテナ線の内側に他のアンテナ線が巻回してある請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のICカード。
【請求項5】
前記ICチップは、前記モジュール基板の前記アンテナ基板との対向面に配設してあり、
前記アンテナ基板は、前記ICチップを収容する凹部を有する請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載のICカード。
【請求項6】
前記アンテナ端子及び前記モジュール端子が、導電性接着剤を介して接続してある請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載のICカード。
【請求項7】
前記ICチップは、フリップチップボンド工法により前記モジュール基板に接続してある請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載のICカード。
【請求項8】
前記ICチップは板状をなし、一面側が前記モジュール基板に接続してあり、
前記ICチップの他面側を補強する補強板を備える請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載のICカード。
【請求項9】
前記モジュール基板には、前記アンテナ基板との対向面の反対面に、外部の機器に接触し、該外部の機器との信号の送信又は受信を行う接触端子が設けてある請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載のICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−193598(P2007−193598A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11496(P2006−11496)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】