説明

ICソケット及びその実装構造

【課題】BGAタイプのICを接続することができ、しかも、実装する配線基板のスルーホールの数、位置及び間隔等を自由に設計することができると共にソケットの低背化を図ることができるICソケット及びその実装構造を提供する。
【解決手段】IC10を載置する積層型基板2と電源経路集約回路3とグランド経路集約回路4とを備える。集約回路3は複数のランド31と複数のスルーホール33と電源パターン35と集約スルーホール36と集約端子38とを有し、集約回路4は複数のランド41と複数のスルーホール42とグランドパターン45と集約スルーホール46と集約端子48とを有する。すなわち、ランド31に接続されたIC10の複数の電源端子11が電源集約端子38に集約され、ランド41に接続された複数のグランド端子12がグランド集約端子48に集約される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多端子のIC(Integrated Circuit)を接続して、基板に実装するためのICソケットに関し、特にBGA(Ball Grid Array)タイプのICを接続するためのICソケット及びその実装構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のICソケットとしては、例えば、特許文献1及び特許文献2等に開示された技術がある。
これらのICソケットは、ICピン数と同数のピン挿入孔を有している。このようなピン挿入孔内の上部には、コンタクトピンが設けられ、下部には、ICソケットの下面から突出した出力ピンが設けられている。
さらに、ICソケット内には、IC外付け用のコンデンサ等の電子部品が内蔵され、コンタクトピンと出力ピンとの間に接続されている。
これにより、ICのピンをICソケットのピン挿入孔に差し込んで、ICをICソケットに接続し、このICソケットを基板上に実装することで、電子部品の高密度実装を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平05−028048号公報
【特許文献1】特開平09−312187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来のICソケットは、次のような問題がある。
上記従来のICソケットは、DIP(Dual Inline Package)タイプのICを接続対象としているので、BGAタイプのICにはそのまま適用することができない。このため、BGAタイプIC用のICソケットの登場が期待されていた。
しかしながら、上記のICソケットでは、ピン挿入孔の配置が、ICのピンの配置と1対1に対応しているので、ICソケットの出力ピン数がICのピン数と同数になる。このため、この従来のICソケットを模して、BGAタイプIC用のICソケットを構成すると、BGAタイプのICの端子数と同数の膨大な数の出力ピンが必要となる。したがって、このようなICソケットを基板に実装するには、基板を多層基板にして、その層数をICソケットの出力ピン数に対応して多くする必要があり、基板単価の増大を招いてしまう。
【0005】
図14は、従来のICソケットの問題点を説明するための概略断面図である。
図14に示すように、従来のICソケットに模した構造のBGAタイプIC用のICソケット100を、電源ノイズ対策用の基板200に実装する場合には、ICソケット100の出力ピン101,102を基板200のスルーホール201,202に挿入する。これにより、IC150の電源端子151が、ICソケット100のランド111,入力ピン121,内蔵電子部品130及び出力ピン101を通じて、基板200のスルーホール201に接続した状態となる。また、同時に、IC150のグランド端子152が、ICソケット100のランド112,入力ピン122,内蔵電子部品130及び出力ピン102を通じて、基板200のスルーホール202に接続した状態になる。
基板200が、ノイズ対策用の基板である場合には、通常、スルーホール201,202が、基板200裏面のパターン211,212に接続され、バイパス用の2端子コンデンサ220が、これらパターン211,212間に接続されている。これにより、電源端子151で発生したノイズ電流Nを、この2端子コンデンサ220を通じてグランド端子152側に帰還させるようにしている。
しかし、このような構造では、基板200のスルーホール201,202の位置を、電源端子151やグランド端子152の位置に一致するように設計しなければならない。したがって、矢印で示すノイズ電流Nのループ経路が小さくなるように、基板200のスルーホール201,202の位置や間隔等を設計しようとしても、その自由度がない。このため、基板設計時に、上記ループ経路のインダクタンスが大きくなってしまい、大きな振幅の高周波ノイズが発生しやすくなるという問題が生じる。
また、従来のICソケットを模した構造にすると、チップ状のコンデンサ等を半田付けによってソケットに内蔵させるため、ソケット自体が厚くなってしまうという問題もある。
【0006】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、BGAタイプのICを接続することができ、しかも、実装する配線基板のスルーホールの数、位置及び間隔等を自由に設計することができると共にソケットの低背化を図ることができるICソケット及びその実装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、BGAタイプのICが載置可能な積層型基板を有し、この積層型基板に、ICの複数の電源端子に関する経路を集約する電源経路集約回路と、複数のグランド端子に関する経路を集約するグランド経路集約回路とを備えるICソケットであって、電源経路集約回路を、複数の電源端子のうち、同電位の電源を入力する第1の電源端子の配列に対応して積層型基板の表面に配設された複数の第1の電源端子用ランドと、各上端が各第1の電源端子用ランドに接続された状態で、下端が積層型基板の裏面側を向く複数の第1の電源スルーホールと、積層型基板の中間層に設けられ且つ複数の第1の電源スルーホールの下端が接続された第1の電源パターンと、上端が第1の電源パターンに接続された状態で、その下端が積層型基板の裏面に至る第1の電源集約スルーホールと、この第1の電源集約スルーホールに接続された状態で積層型基板の裏面に設けられた第1の電源集約端子とで構成し、グランド経路集約回路を、複数のグランド端子の配列に対応して積層型基板の表面に配設された複数のグランド端子用ランドと、各上端が各グランド端子用ランドに接続された状態で、下端が積層型基板の裏面側を向く複数のグランドスルーホールと、積層型基板の中間層に設けられ且つ複数のグランドスルーホールの下端が接続されたグランドパターンと、上端がグランドパターンに接続された状態で、その下端が積層型基板の裏面に至り且つ第1の電源集約スルーホールに近接した第1のグランド集約スルーホールと、このグランド集約スルーホールに接続された状態で積層型基板の裏面に設けられた第1のグランド集約端子とで構成した。
かかる構成により、ICの複数の第1の電源端子を、電源経路集約回路の複数の第1の電源端子用ランドに接続すると共に、ICの複数のグランド端子を、グランド経路集約回路の複数のグランド端子用ランドに接続することができる。
これにより、ICの複数の第1の電源端子が、電源経路集約回路の複数の第1の電源スルーホールを通じて、第1の電源パターン及び第1の電源集約スルーホールに接続され、第1の電源集約端子に接続された状態になる。
また、ICの複数のグランド端子が、グランド経路集約回路の複数のグランドスルーホールを通じて、グランドパターン及び第1の電源集約スルーホールに近接した第1のグランド集約スルーホールに接続され、第1のグランド集約端子に接続された状態になる。
この結果、ICの複数の第1の電源端子とグランド端子とが、ICソケットの第1の電源集約端子と第1のグランド集約端子とに集約される。
したがって、第1の電源集約端子と第1のグランド集約端子とが、配線基板等に接続するためのICソケットの端子であり、その数は、ICの第1の電源端子やグランド端子の数に比べて非常に少ない。この結果、このICソケットを実装する配線基板に設けるスルーホール数も、少なくすることができるので、配線基板の層数も少なくすることができ、基板単価の低廉化を図ることができる。
すなわち、この発明のICソケットによれば、第1の電源集約端子とグランド端子との数や間隔を自由に設計することができるので、ICソケットを実装する配線基板のスルーホールの数や位置を、ICの電源端子やグランド端子の位置や数による制約を受けることなく自由に設計することができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のICソケットにおいて、1対の第1の電源集約スルーホールを近接させて並設し、第1のグランド集約スルーホールをこれら1対の第1の電源集約スルーホールの間に並設した構成とする。
かかる構成により、ICの複数の第1の電源端子とグランド端子とが、ICソケットの1対の第1の電源集約端子と第1のグランド集約端子とに集約される。この結果、ICの第1の電源端子からのノイズ電流は、電源経路集約回路の第1の電源スルーホールを通じて第1の電源パターン至り、第1の電源パターンから1対の第1の電源集約スルーホールを同方向に流れて、1対の第1の電源集約端子に至る。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のICソケットにおいて、第1の2端子コンデンサを、積層型基板内に積層形成して、第1の電源スルーホールとグランドスルーホールとの間に接続した構成とする。
かかる構成により、ICの第1の電源端子からのノイズ電流は、第1の電源スルーホールから第1の2端子コンデンサを通じてグランドスルーホールに出力され、ICのグランド端子に帰還される。
すなわち、ノイズ電流を第1の電源端子から直ちにグランド端子に帰還させる短いループが、ICソケット内に形成されているので、その分ノイズ電流が通る経路のインダクタンスが小さくなり、ノイズ電流の抑制を図ることができる。
さらに、第1の2端子コンデンサを積層型基板内に積層形成したので、ICソケットの低背化を図ることができる。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のICソケットにおいて、チョークコイルを、積層型基板内に積層形成して、第1の電源集約スルーホールと第1の電源パターンとの間に介在させた構成とする。
かかる構成により、ICの第1の電源端子からのノイズ電流は、電源経路集約回路の第1の電源スルーホールを通じて第1の電源パターンに至る。そして、このノイズ電流が所定周波数以上であると、チョークコイルによって、第1の電源集約スルーホールへの流入が阻止される。
さらに、積層型基板に内蔵するチョークコイルをパターン形成することで、ICソケットの低背化を図ることができる。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1に記載のICソケットにおいて、電源経路集約回路は、複数の電源端子のうち、第1の電源端子とは異なる電位の電源を入力する複数の第2の電源端子の配列に対応して積層型基板の表面に配設された複数の第2の電源端子用ランドと、各上端が各第2の電源端子用ランドに接続された状態で、下端が積層型基板の裏面側を向く複数の第2の電源スルーホールと、積層型基板の中間層に設けられ且つ複数の第2の電源スルーホールの下端が接続された第2の電源パターンと、上端が第2の電源パターンに接続された状態で、その下端が積層型基板の裏面に至る第2の電源集約スルーホールと、この第2の電源集約スルーホールに接続された状態で積層型基板の裏面に設けられた第2の電源集約端子とを備え、グランド経路集約回路は、上端がグランドパターンに接続された状態で、その下端が積層型基板の裏面に至り且つ第2の電源集約スルーホールに近接した第2のグランド集約スルーホールと、この第2のグランド集約スルーホールに接続された状態で積層型基板の裏面に設けられた第2のグランド集約端子とを備える構成とした。
かかる構成により、ICの複数の第1及び第2の電源端子を、電源経路集約回路の複数の第1及び第2の電源端子用ランドにそれぞれ接続すると共に、ICの複数のグランド端子を、グランド経路集約回路の複数のグランド端子用ランドに接続することができる。
これにより、ICの複数の第1の電源端子,第2の電源端子が、電源経路集約回路の複数の第1の電源スルーホール,第2の電源スルーホールを通じて、第1の電源パターン,第2の電源パターンに接続され、第1の電源集約スルーホール,第2の電源集約スルーホールを通じて第1の電源集約端子,第2の電源集約端子にそれぞれ接続された状態になる。
また、ICの複数のグランド端子は、グランド経路集約回路の複数のグランドスルーホールを通じて、グランドパターンに接続され、第1の電源集約スルーホールに近接した第1のグランド集約スルーホール,第2の電源集約スルーホールに近接した第2のグランド集約スルーホールを通じて、第1のグランド集約端子,第2のグランド集約端子にそれぞれ接続された状態になる。
この結果、ICの複数の第1の電源端子と第2の電源端子とが、第1の電源集約端子と第2の電源集約端子にそれぞれ集約され、複数のグランド端子が、第1及び第2のグランド集約端子に集約される。
【0012】
請求項6の発明は、ICの第1の電源端子及びグランド端子が第1の電源端子用ランド及びグランド端子用ランドにそれぞれ接続された請求項1,請求項3又は請求項4のいずれかに記載のICソケットを、配線基板に実装したICソケットの実装構造であって、第1及び第2のランドを、積層型基板裏面の第1の電源集約端子及び第1のグランド集約端子に対応させて、配線基板の表面に並設すると共に、上端が第1及び第2のランドにそれぞれ接続された状態で、それぞれの下端が配線基板の裏面に至る第1及び第2のスルーホールを、配線基板内に設け、且つ、これら第1のスルーホールの下端と第2のスルーホールの下端とに接続された第2の2端子コンデンサを、配線基板の裏面に設け、ICソケットの第1の電源集約端子及び第1のグランド集約端子を、配線基板の第1及び第2のランドにそれぞれ接続した構成とする。
かかる構成により、ノイズ電流がICの第1の電源端子で生じると、ICソケットの第1の電源端子用ランドから電源経路集約回路に入力し、第1の電源スルーホール、第1の電源パターン、第1の電源集約スルーホールを通じて、第1の電源集約端子に至る。
すると、ノイズ電流は、配線基板表面の第1のランドから内部の第1のスルーホールを通じて、配線基板裏面の第2の2端子コンデンサに入力する。そして、第2の2端子コンデンサから出力したノイズ電流は、第2のスルーホールを通じて、第2のランドに至る。
すると、ノイズ電流は、第1のグランド集約端子からICソケット内に入力し、第1のグランド集約スルーホール、グランドパターン、グランドスルーホール、グランド端子用ランドを通じて、ICのグランド端子に帰還される。
すなわち、このICソケットの実装構造によれば、ICソケットの近接した第1の電源集約スルーホールと第1のグランド集約スルーホールの間隔に合わせて、配線基板の第1のスルーホールと第2のスルーホールとの間隔を狭くすることができるので、ICの第1の電源端子からICソケットの電源経路集約回路、配線基板の第1及び第2のスルーホール、ICソケットのグランド経路集約回路を通じてICのグランド端子に至るまでの全ループのインダクタンスを低減することができる。この結果、第1の電源端子で生じるノイズ電流の振幅を小さく抑えることができる。
【0013】
請求項7の発明は、ICの第1の電源端子及びグランド端子が第1の電源端子用ランド及びグランド端子用ランドにそれぞれ接続された請求項2ないし請求項4のいずれかに記載のICソケットを、配線基板に実装したICソケットの実装構造であって、第1,第2及び第3のランドを、積層型基板裏面の一方の第1の電源集約端子,第1のグランド集約端子及び他方の第1の電源集約端子に対応させて、配線基板の表面に並設すると共に、上端が第1,第2及び第3のランドにそれぞれ接続された状態で、それぞれの下端が配線基板の裏面に至る第1,第2及び第3のスルーホールを、配線基板内に設け、且つ、第1のスルーホールの下端と第2のスルーホールの下端とに接続された第2の2端子コンデンサと、第2のスルーホールの下端と第3のスルーホールの下端とに接続された第3の2端子コンデンサとを、配線基板の裏面に設け、ICソケットの一方の第1の電源集約端子,第1のグランド集約端子及び他方の第1の電源集約端子を、配線基板の第1,第2及び第3のランドにそれぞれ接続した構成とする。
かかる構成により、ノイズ電流がICの第1の電源端子で生じると、ICソケットの第1の電源端子用ランドから電源経路集約回路に入力し、第1の電源スルーホール、第1の電源パターン、1対の第1の電源集約スルーホールを通じて、1対の第1の電源集約端子に至る。
すると、ノイズ電流は、配線基板表面の第1及び第3のランドから内部の第1及び第3のスルーホールを同方向に流れ、第1のスルーホールからのノイズ電流が配線基板裏面の第2の2端子コンデンサに入力し、第3のスルーホールからのノイズ電流が第3の2端子コンデンサに入力する。
そして、第2の2端子コンデンサに入力したノイズ電流は、第2の2端子コンデンサを通って第2のスルーホールに入力し、第3の2端子コンデンサに入力したノイズ電流も、第3の2端子コンデンサを通って第2のスルーホールに入力する。
このとき、第2の2端子コンデンサから第2のスルーホールに入力するノイズ電流と第3の2端子コンデンサから第2のスルーホールに入力するノイズ電流は、互いに向き合って流れるので、磁界が互いに逆向きになって、互いの磁界を打ち消し合う。この結果、ノイズ電流発生時における第1〜第3のスルーホール部分のインダクタンスを低減し、ひいては、ICの第1の電源端子からICソケットの電源経路集約回路、配線基板の第1〜第3のスルーホール、ICソケットのグランド経路集約回路を通じてICのグランド端子に至るまでのループのインダクタンスが低減するので、第1の電源端子で生じるノイズ電流の振幅を小さく抑えることができる。
そして、第2のスルーホールに入力したノイズ電流は、第2のランドに至り、第1のグランド集約端子からICソケット内に入力する。しかる後、ノイズ電流は、第1のグランド集約スルーホール、グランドパターン、グランドスルーホール、グランド端子用ランドを通じて、ICのグランド端子に帰還される。
【0014】
請求項8の発明は、ICの第1の電源端子,グランド端子及び第2の電源端子が第1の電源端子用ランド,グランド端子用ランド及び第2の電源端子用ランドにそれぞれ接続された請求項5に記載のICソケットを、配線基板に実装したICソケットの実装構造であって、第1及び第2のランドを、積層型基板裏面の第1の電源集約端子及び第1のグランド集約端子に対応させて、配線基板の表面に並設すると共に、第3及び第4のランドを、積層型基板裏面の第2の電源集約端子及び第2のグランド集約端子に対応させて、配線基板の表面に並設し、上端が第1及び第2のランドにそれぞれ接続された状態で、それぞれの下端が配線基板の裏面に至る第1及び第2のスルーホールを、配線基板内に設けると共に、上端が第3及び第4のランドにそれぞれ接続された状態で、それぞれの下端が配線基板の裏面に至る第3及び第4のスルーホールを、配線基板内に設け、且つ、第1のスルーホールの下端と第2のスルーホールの下端とに接続された第2の2端子コンデンサと、第3のスルーホールの下端と第4のスルーホールの下端とに接続された第4の2端子コンデンサとを、配線基板の裏面に設け、ICソケットの第1の電源集約端子及び第1のグランド集約端子を、配線基板の第1及び第2のランドに接続すると共に、第2の電源集約端子及び第2のグランド集約端子を第3及び第4のランドにそれぞれ接続した構成とする。
かかる構成により、ノイズ電流がICの第2の電源端子で生じると、ICソケットの第2の電源端子用ランドから電源経路集約回路に入力し、第2の電源スルーホール、第2の電源パターン、第2の電源集約スルーホールを通じて、第2の電源集約端子に至る。
すると、ノイズ電流は、配線基板表面の第3のランドから内部の第3のスルーホールを通じて、配線基板裏面の第4の2端子コンデンサに入力する。そして、第4の2端子コンデンサから出力したノイズ電流は、第4のスルーホールを通じて、第4のランドに至る。
すると、ノイズ電流は、第2のグランド集約端子からICソケット内に入力し、第2のグランド集約スルーホール、グランドパターン、グランドスルーホール、グランド端子用ランドを通じて、ICのグランド端子に帰還される。
【発明の効果】
【0015】
以上詳しく説明したように、この発明のICソケットによれば、電源集約端子とグランド端子との数や間隔を自由に設計することができるので、ICソケットを実装する配線基板のスルーホールの数や位置を、ICの電源端子やグランド端子の位置や数による制約を受けることなく自由に設計することができるという優れた効果がある。
【0016】
特に、請求項2の発明に係るICソケットによれば、このICソケットを実装する配線基板のスルーホールの配列を、ノイズ電流の磁界打ち消し効果が生じるように設計することにより、ICの電源端子からICソケットの電源経路集約回路、配線基板のスルーホール、ICソケットのグランド経路集約回路を通じてICのグランド端子に至るまでのループのインダクタンスを低減させることができるという効果がある。
【0017】
また、請求項3の発明に係るICソケットによれば、ICソケット内に形成した第1の2端子コンデンサによって、ノイズ電流の帰還ループを短くすることができるので、ノイズ電流のさらなる抑制を図ることができるという効果がある。
さらに、2端子コンデンサの積層形成によって、ICソケットの低背化を図ることができるという効果もある。
【0018】
さらに、請求項4の発明に係るICソケットによれば、チョークコイルによって所定周波数のノイズ電流を除去することができるという効果がある。
さらに、チョークコイルをパターン形成することにより、ICソケットの低背化を図ることができるという効果もある。
【0019】
また、この発明のICソケットの実装構造によれば、ICソケットの電源集約スルーホールとグランド集約スルーホールの間隔に合わせて、配線基板のスルーホールの間隔を狭くすることにより、ICの第1の電源端子からICソケットの電源経路集約回路、配線基板の第1及び第2のスルーホール、ICソケットのグランド経路集約回路を通じてICのグランド端子に至るまでの全ループのインダクタンスを低減することができ、この結果、第1の電源端子で生じるノイズ電流の振幅を小さく抑えることができるという優れた効果がある。
【0020】
特に、請求項7の発明に係るICソケットの実装構造によれば、配線基板において、ICの電源端子からグランド端子に帰還するノイズ電流が、互いに磁界を打ち消し合いながら配線基板のスルーホールに入力するので、ICソケットと配線基板とにおけるノイズ電流のループのインダクタンスを低減させることができ、この結果、電源端子で生じるノイズ電流の振幅をさらに小さく抑えることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の第1実施例に係るICソケットを示す斜視図である。
【図2】図1に示すICソケットの電気的構造を示す概略図である。
【図3】図1に示すICソケットの分解斜視図である。
【図4】ICソケットの実装例を示す分解斜視図である。
【図5】図4に示すICソケットの実装例の電気的構造を示す概略図である。
【図6】この発明の第2実施例に係るICソケットを示す分解斜視図である。
【図7】図6に示すICソケットの電気的構造と配線基板の電気的構造を示す概略図である。
【図8】ICソケットの作用及び効果を説明するための部分拡大概略図である。
【図9】この発明の第3実施例に係るICソケットを示す分解斜視図である。
【図10】図9に示すICソケットの電気的構造と配線基板の電気的構造を示す概略図である。
【図11】この発明の第4実施例に係るICソケットの電気的構造と配線基板の電気的構造を示す概略図である。
【図12】実施例の第1の変形例を示す概略図である。
【図13】実施例の第2の変形例を示す概略図である。
【図14】従来のICソケットの問題点を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、この発明の第1実施例に係るICソケットを示す斜視図であり、図2は、図1に示すICソケットの電気的構造を示す概略図であり、図3は、図1に示すICソケットの分解斜視図である。
なお、これらの図において、部材間の関係の理解を容易にさせるため、電源端子と電源端子用ランドと電源集約端子とに斜線を付け、グランド端子とグランド端子用ランドとグランド集約端子とに黒色を付けた。
【0024】
図1に示すように、この実施例のICソケット1−1は、BGAタイプのIC10を載置可能な積層型基板2と、電源経路集約回路3と、グランド経路集約回路4とを備えている。
【0025】
電源経路集約回路3は、IC10の複数の電源端子に関する経路を集約するための回路であり、図2及び図3に示すように、第1の電源端子用ランドとしての電源端子用ランド31と、第1の電源スルーホールとしての電源スルーホール33と、第1の電源パターンとしての電源パターン35と、第1の電源集約スルーホールとしての電源集約スルーホール36と、第1の電源集約端子としての電源集約端子38とで構成されている。
【0026】
IC10の裏面には、図1に示すように、第1の電源端子としての同電位の複数の電源端子11(斜線付き端子)が配設されている。
電源端子用ランド31は、この電源端子11を接続するためのランドであり、複数の電源端子用ランド31が、積層型基板2の表面2aに、複数の電源端子11の配列に対応して配設されている。
【0027】
電源スルーホール33は、図2及び図3に示すように、積層型基板2の内部に複数設けられており、各電源スルーホール33の上端が、各電源端子用ランド31に接続され、下端が、積層型基板2の裏面2b側に向けられている。
【0028】
電源パターン35は、積層型基板2の上部の中間層21に設けられており、上記の複数の電源スルーホール33の下端が、この電源パターン35に接続されている。
【0029】
電源集約スルーホール36は、上記複数の電源スルーホール33を集約するためのスルーホールであり、その上端が電源パターン35に接続され、その下端が積層型基板2の裏面2b迄延ばされている。具体的には、電源集約スルーホール36は、下方のグランドパターン45の孔45aを貫通して、積層型基板2の裏面2bに至り、裏面2bに設けられた電源集約端子38に接続されている。
【0030】
一方、図1に示すグランド経路集約回路4は、IC10の複数のグランド端子に関する経路を集約するための回路であり、図2及び図3に示すように、グランド端子用ランド41と、グランドスルーホール42と、グランドパターン45と、第1のグランド集約スルーホールとしてのグランド集約スルーホール46と、第1のグランド集約端子としてのグランド集約端子48とで構成されている。
【0031】
IC10の裏面には、図1に示すように、複数のグランド端子12が配設されている。
グランド端子用ランド41は、グランド端子12を接続するためのランドであり、複数のグランド端子用ランド41が、積層型基板2の表面2aに、複数のグランド端子12の配列に対応して配設されている。
【0032】
グランドスルーホール42は、図2及び図3に示すように、積層型基板2の内部に複数設けられており、各グランドスルーホール42の上端が、各グランド端子用ランド41に接続され、下端が、積層型基板2の裏面2b側に向けられている。
【0033】
グランドパターン45は、積層型基板2の下部の中間層22に設けられており、上記の複数のグランドスルーホール42の下端が、このグランドパターン45に接続されている。具体的には、グランドスルーホール42は、電源パターン35の孔35aを貫通して、下方のグランドパターン45に至り、その下端がこのグランドパターン45に接続されている。
【0034】
グランド集約スルーホール46は、上記複数のグランドスルーホール42を集約するためのスルーホールであり、その上端がグランドパターン45接続され、その下端が積層型基板2の裏面2b迄延ばされている。また、このグランド集約スルーホール46は、電源集約端子38に近接した状態で配されている。そして、このグランド集約スルーホール46の下端が、積層型基板2の裏面2bに設けられたグランド集約端子48に接続されている。
【0035】
次に、この実施例のICソケット1−1の実装例について説明する。
図4は、ICソケット1−1の実装例を示す分解斜視図であり、図5は、図4に示すICソケットの実装例の電気的構造を示す概略図である。
なお、この実装例は、この発明のICソケットの実装構造を具体的に実施するものでもある。
【0036】
この実装例では、図4及び図5に示すように、ICソケット1−1を配線基板9−1に実装する場合について説明する。
かかる場合には、まず、IC10の複数の電源端子11を、電源経路集約回路3の複数の電源端子用ランド31に接続すると共に、IC10の複数のグランド端子12を、グランド経路集約回路4の複数のグランド端子用ランド41に接続する。
これにより、IC10の複数の電源端子11が、電源経路集約回路3の複数の電源スルーホール33を通じて、電源パターン35と電源集約スルーホール36と電源集約端子38とに接続され、複数の電源端子11が電源集約端子38に集約された状態になる。また、IC10の複数のグランド端子12は、グランド経路集約回路4の複数のグランドスルーホール42を通じて、グランドパターン45とグランド集約スルーホール46とグランド集約端子48とに接続され、複数のグランド端子12がグランド集約端子48に集約された状態になる。
【0037】
この状態で、ICソケット1−1は、配線基板9−1に実装することができる。
配線基板9−1は、第1のランドとしてのランド91と、第2のランドとしてのランド92と、第1のスルーホールとしてのスルーホール94と、第2のスルーホールとしてのスルーホール95と、第2の2端子コンデンサとしての2端子コンデンサ81とを有している。
【0038】
ランド91,92は、ICソケット1−1の電源集約端子38,グランド集約端子48を接続するためのランドであり、電源集約端子38,グランド集約端子48の配列に対応して、配線基板の表面9aに並設されている。
【0039】
スルーホール94,95は、配線基板9−1内に設けられており、それらの上端がランド91,92にそれぞれ接続され状態で、配線基板の裏面9b迄延びている。
【0040】
2端子コンデンサ81は、このようなスルーホール94,95の下端間に接続されている。
具体的には、1対のランドパターン97,98が配線基板9−1の裏面9bに併設され、スルーホール94,95が、これらランドパターン97,98にそれぞれ接続されている。そして、2端子コンデンサ81の一方の外部電極81aが、ランドパターン97に接続され、他方の外部電極81bがランドパターン98に接続されている。
【0041】
これにより、ICソケット1−1の電源集約端子38,グランド集約端子48を、ランド91,92に接続することで、ICソケット1−1を配線基板9−1上に実装することができる。
【0042】
次に、この実施例のICソケット1−1が示す作用及び効果について説明する。
図10に示す実装状態で、図示しない外部電源をIC10に供給する場合には、例えば、配線基板9−1のランドパターン97に外部電源を接続する。
すると、電源電圧が、スルーホール94、ランド92を通じて、ICソケット1−1の電源集約端子38に至る。これにより、電源電圧は、電源経路集約回路3の電源集約スルーホール36を通じて電源パターン35に至り、複数の電源スルーホール33及び電源スルーホール33から、IC10の複数の電源端子11に同時に入力する。
【0043】
ところで、IC10の内部のスイッチング動作等によって、高周波のノイズ電流Nが電源端子11で生じる場合がある。
かかる場合には、ノイズ電流Nは、図5の矢印で示すように、ICソケット1−1の電源端子用ランド31から電源スルーホール33及び電源パターン35に入力し、電源集約スルーホール36を通じて、電源集約端子38に至る。
すると、ノイズ電流Nは、配線基板9−1の表面9aのランド91から内部のスルーホール94を通じて、裏面9bのランドパターン97に至り、外部電極81aから2端子コンデンサ81に入力する。そして、外部電極81bからランドパターン98に出力されたノイズ電流Nは、スルーホール95を通じてランド92に至り、グランド集約端子48からICソケット1−1内に入力する。
これにより、ノイズ電流Nは、グランド集約スルーホール46、グランドパターン45、グランドスルーホール42、グランド端子用ランド41を通じて、IC10のグランド端子に帰還し、図示しないグランドに排出される。
【0044】
以上のようにこの実施例のICソケット1−1によれば、ICソケット1−1の端子である電源集約端子38とグランド集約スルーホール46の数を、IC10の電源端子11やグランド端子の数に比べて非常に少なくすることができるので、ICソケット1−1を実装する配線基板9−1に設けるスルーホール94,95の数も、少なくすることができ、その分、配線基板9−1の単価の低廉化を図ることができる。
また、ICソケット1−1の、電源集約端子38とグランド端子との数や間隔を自由に設計することができるので、これに合わせて、配線基板9−1のスルーホールの数や位置を、自由に設計することができる。
【実施例2】
【0045】
次に、この発明の第2実施例について説明する。
図6は、この発明の第2実施例に係るICソケットを示す分解斜視図であり、図7は、図6に示すICソケットの電気的構造と配線基板の電気的構造を示す概略図である。
【0046】
この実施例のICソケット1−2は、電源集約スルーホールを2本設けた点が、上記第1実施例と異なる。
具体的には、図6に示すように、電源経路集約回路3において、電源集約スルーホール37が、電源集約スルーホール36に近接して並設され、グランド集約スルーホール46が、これら1対の電源集約スルーホール36,37の間に並んだ状態になっている。
そして、積層型基板2の裏面2bにおいて、電源集約端子38,グランド集約端子48が、電源集約スルーホール36,グランド集約スルーホール46にそれぞれ接続されると共に、電源集約端子39が電源集約スルーホール37に接続されている。
【0047】
一方、図7に示すように、ICソケット1−2を実装するための配線基板9−2では、第3のランドとしてのランド93が、ランド91,92に並ぶように、表面9aに配設され、ランド91〜93の並びが、ICソケット1−2の電源集約スルーホール36,39及びグランド集約スルーホール46の並びに対応している。
そして、スルーホール96が、スルーホール94,95に並べられ、その上端が、ランド93に接続され、下端が裏面9b迄延ばされている。
このスルーホール96の下端が至る裏面9bに部分には、ランドパターン99が設けられ、第3の2端子コンデンサとしての2端子コンデンサ82が、ランドパターン98,99に接続されている。
【0048】
したがって、ICソケット1−2の一方の電源集約端子38,グランド集約端子48及び他方の電源集約端子39を、配線基板9−2のランド91〜93に接続することで、ICソケット1−2を配線基板9−2に実装することができる。
【0049】
次に、この実施例のICソケット1−2が示す作用及び効果について説明する。
図8は、ICソケット1−2の作用及び効果を説明するための部分拡大概略図である。
外部電源を、図6及び図7に示すIC10の電源端子11に供給する方法や、電源端子11で生じたノイズ電流を、ICソケット1−2の電源経路集約回路3の電源集約スルーホール36及び配線基板9−2のスルーホール94を通じて、2端子コンデンサ81に送る経路は、上記第1実施例と同様である。
しかし、この実施例では、図8に示すように、電源端子11で生じたノイズ電流Nが、電源経路集約回路3の電源集約スルーホール37、電源集約端子39を通じて、配線基板9−2のランド93に至り、スルーホール96にも流入する。
このとき、スルーホール94のノイズ電流Nとスルーホール96のノイズ電流Nとは、共に2端子コンデンサ81,82に向かって下方に流れるが、矢印で示すように、スルーホール94からのノイズ電流Nが2端子コンデンサ81からランドパターン98に至り、スルーホール96からのノイズ電流Nが、2端子コンデンサ82からランドパターン98に至ると、2端子コンデンサ81からのノイズ電流Nと2端子コンデンサ82からのノイズ電流Nとが、互いに向き合うように流れる。このため、ノイズ電流N,Nの磁界H,Hが互いに逆向きになって、互いの磁界H,Hを打ち消し合う現象が生じる。
したがって、ノイズ電流Nの発生時におけるスルーホール94〜96部分のインダクタンスが減少し、この結果、IC10の電源端子11からICソケット1−1の電源経路集約回路3、配線基板のスルーホール94〜96、ICソケット1−1のグランド経路集約回路4を通じてIC10のグランド端子12に至るまでの全ループのインダクタンスが低減する。
しかる後、スルーホール95に入力したノイズ電流N,Nは、ランド92、グランド集約端子48、グランド集約スルーホール46、グランドパターン45、グランドスルーホール42、グランド端子用ランド41を通じて、IC10のグランド端子12に帰還する(図7参照)。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【実施例3】
【0050】
次に、この発明の第3実施例について説明する。
図9は、この発明の第3実施例に係るICソケットを示す分解斜視図であり、図10は、図9に示すICソケットの電気的構造と配線基板の電気的構造を示す概略図である。
この実施例は、2端子コンデンサやチョークコイル等の電子部品を第2実施例のICソケットに内蔵させた点が、上記第1及び及び第2実施例と異なる。
【0051】
すなわち、図9に示すように、 この実施例のICソケット1−3では、第1の2端子コンデンサとしての2端子コンデンサ61が、電源経路集約回路3の電源スルーホール33とグランド経路集約回路4のグランドスルーホール42との間に接続されている。
具体的には、電極61aが、積層型基板2の表面2aと電源パターン35間の中間層23上にパターン形成されると共に、この電極61aが、電源スルーホール33に接続されている。また、電極61bが、中間層23より上方の中間層24にパターン形成され、電極61aに対向している。この電極61bは、グランドスルーホール42に接続されており、この電極61bと電極61aとの間に、誘電体層61cが介設されている。このような2端子コンデンサ61は、図10に示すように、全ての電源スルーホール33とグランドスルーホール42との間に設けられている。
【0052】
さらに、この実施例では、図9に示すように、渦巻き状のチョークコイル71,72が、電源パターン35とグランドパターン45との間の中間層25にパターン形成され、チョークコイル71(72)の内端が、電源パターン35に接続されると共に、外端が、電源集約スルーホール36(37)に接続されている。
すなわち、図10に示すように、チョークコイル71(72)は、電源パターン35と電源集約スルーホール36(37)との間に介在している。
【0053】
次に、この実施例のICソケット1−3が示す作用及び効果について説明する。
図10に示すように、この実施例のICソケット1−3は、上記第2実施例のICソケット1−2と同様に、配線基板9−2に実装することができる。
ICソケット1−3を配線基板9−2に実装した状態で、ノイズ電流Nが、IC10の電源端子11で生じると、ノイズ電流Nは、ICソケット1−3の電源スルーホール33から2端子コンデンサ61を通じてグランドスルーホール42に出力し、IC10のグランド端子12に帰還する。
すなわち、電源端子11で生じた大部分のノイズ電流Nが、ICソケット1−3内の2端子コンデンサ61を通じて直ちにグランド端子12に帰還するので、ノイズ電流Nが通る経路のインダクタンスが小さくなり、ノイズ電流の抑制が図られる。
【0054】
そして、2端子コンデンサ61を通らずに、電源パターン35に至ったノイズ電流Nは、所定周波数以上であると、チョークコイル71(72)によって、電源集約スルーホール36(37)への流入が阻止され、除去される。
【0055】
このように、この実施例のICソケット1−3によれば、ノイズ電流を効果的に除去することができるだけでなく、2端子コンデンサ61やチョークコイル71,72等の電子部品を、積層型基板2内に積層形成するので、ICソケット1−3の低背化を図ることができる。
【0056】
なお、この実施例では、2端子コンデンサ61やチョークコイル71,72を上記第2実施例のICソケットに内蔵させた例を示したが、2端子コンデンサ61やチョークコイル71を上記第1実施例のICソケット1−1にも内蔵させることができることは勿論である。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1及び第2実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【実施例4】
【0057】
次に、この発明の第4実施例について説明する。
図11は、この発明の第4実施例に係るICソケットの電気的構造と配線基板の電気的構造を示す概略図である。
【0058】
この実施例のICソケットは、上記第1実施例のICソケットを改良し、異なる電位の電源端子を有するICをも接続することができるようにしたものである。
図11に示すように、符号13が第2の電源端子としての電源端子であり、図中、斑点が付されている。
この電源端子13には、電源端子11とは異なる電位の電源が供給される。このため、ICソケット1−4の電源経路集約回路3には、複数の電源端子11に対応した集約経路の他に、複数の電源端子13に対応した集約経路が形成されている。
すなわち、この実施例のICソケット1−4も、電源経路集約回路3とグランド経路集約回路4とに、電源端子用ランド31と、電源スルーホール33と、電源パターン35と、電源集約スルーホール36と、電源集約端子38と、グランド端子用ランド41と、グランドスルーホール42と、グランドパターン45と、グランド集約スルーホール46と、グランド集約端子48とが設けられ、電源端子11やグランド端子12用の集約経路が形成されている点は、上記第1実施例のICソケット1−1の同じである。
しかし、この実施例のICソケット1−4では、電源経路集約回路3とグランド経路集約回路4に、さらに、第2の電源端子用ランドとしての電源端子用ランド31′と、第2の電源スルーホールとしての電源スルーホール33′と、第2の電源パターンとしての電源パターン35′と、第2の電源集約スルーホールとしての電源集約スルーホール36′と、第2の電源集約端子としての電源集約端子38′と、第2のグランド集約スルーホールとしてのグランド集約スルーホール46′と、第2のグランド集約端子としてのグランド集約端子48′とが設けられ、これらによって、電源端子13用の集約経路が形成されている。
【0059】
具体的には、複数の電源端子用ランド31′が、第2の電源端子としての電源端子13の配列に対応して積層型基板2の表面2aに配設され、各電源スルーホール33′の上端が、この電源端子用ランド31′に接続されている。 そして、電源スルーホール33′が、電源パターン35の下側の中間層に設けられた電源パターン35′に接続されている。
電源集約スルーホール36′は、この電源パターン35′に接続されており、その下端は、積層型基板2の裏面2bに至り、積層型基板2の裏面2bに設けられた電源集約端子38′に接続されている。
一方、グランド集約スルーホール46′は、電源集約スルーホール36′と近接して配され、その上端がグランドパターン45に接続されている。そして、下端は、裏面2bに設けられたグランド集約端子48′に接続されている。
すなわち、複数の電源端子13,グランド端子12が電源集約端子38′,グランド集約端子48′に集約されている。
【0060】
このようなICソケット1−4を実装する配線基板9−4にも、上記第1実施例で適用された配線基板9−1と同様に、ランド91,92と、スルーホール94,95と2端子コンデンサ81とが設けられているが、この配線基板9−4では、さらに、第3及び第4のランドとしてのランド91′,92′と、第3及び第4のスルーホールとしてのスルーホール94′,95′と第4の2端子コンデンサとしての2端子コンデンサ81′とが設けられている。
具体的には、ランド91′,92′が、電源集約端子38′及びグランド集約端子48′に対応し並設され、スルーホール94′,95′が、これらランド91′,92′に接続されている。そして、ランドパターン97′,98′が、配線基板の裏面2bに設けられて、スルーホール94′,95′の下端に接続され、2端子コンデンサ81′が、ランドパターン97′,98′に接続されている。
【0061】
これにより、ICソケット1−4の電源集約端子38及びグランド集約端子48を、配線基板のランド91,92に接続すると共に、電源集約端子38′及びグランド集約端子48′を、ランド91′,92′に接続することで、ICソケット1−4を配線基板9−4に実装することができる。
なお、図示しない外部電源をIC10の電源端子13に供給する場合には、例えば、配線基板9−4のランドパターン97′に外部電源を接続する。
【0062】
かかる実装状態において、ノイズ電流が、IC10の電源端子13で生じると、ノイズ電流は、ICソケット1−4の電源端子用ランド31′から電源スルーホール33′、電源パターン35′に至り、電源集約スルーホール36′を通じて、電源集約端子38′に至る。すると、ノイズ電流は、配線基板表面9aのランド91′から内部のスルーホール94′を通じて、配線基板裏面2bの2端子コンデンサ81′に入力し、スルーホール95′に至る。そして、このノイズ電流は、ランド92′からグランド集約端子48′を通じてICソケット1−4内に入力し、グランド集約スルーホール46′、グランドパターン45、グランドスルーホール42、グランド端子用ランド41を通じて、IC10のグランド端子12に帰還する。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、その記載は省略する。
【0063】
なお、この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
例えば、上記実施例のICソケットでは、電源集約スルーホール36とグランド集約スルーホール46の組や電源集約スルーホール36′とグランド集約スルーホール46′の組を、1組だけ設けた例について説明したが、図12に示すように、電源集約スルーホール36とグランド集約スルーホール46等の組を、実装する配線基板の設計に合わせて、複数組み設けることができることは勿論である。同様に、第2実施例のICソケットでは、電源集約スルーホール36,37とグランド集約スルーホール46の組についても、1組だけ設けた例を示したが、この場合においても、図13に示すように、これらの組を、実装する配線基板の設計に合わせて、複数組設けることができることは勿論である。
また、上記第4実施例と第2実施例の双方の構造を備えた実装構造も、この発明の範囲に含まれる。そして、第4実施例と第2実施例の双方の構造を備えたこの実装構造に、第3実施例のように、2端子コンデンサやチョークコイルを設けた発明もこの発明の範囲に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
1−1〜1−4…ICソケット、 2…積層型基板、 2a,9a…表面、 2b,9b…裏面、 3…電源経路集約回路、 4…グランド経路集約回路、 9−1〜9−5…配線基板、 10…IC、 11,13…電源端子、 12…グランド端子、 21〜25…中間層、 31,31′…電源端子用ランド、 33,33′…電源スルーホール、 35,35′…電源パターン、 35a,45a…孔、 36,36′,37,37′…電源集約スルーホール、 38,38′,39…電源集約端子、 41…グランド端子用ランド、 42…グランドスルーホール、 45…グランドパターン、 46,46′…グランド集約スルーホール、 48,48′…グランド集約端子、 61,81,81′,82…2端子コンデンサ、 61a,61b…電極、 61c…誘電体層、 71,72…チョークコイル、 81a,81b…外部電極、 91〜93,91′〜92′…ランド、 94〜96,94′〜95′…スルーホール、 7,97′,98,98′,99…ランドパターン、 N…ノイズ電流。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BGAタイプのICが載置可能な積層型基板を有し、この積層型基板に、上記ICの複数の電源端子に関する経路を集約する電源経路集約回路と、複数のグランド端子に関する経路を集約するグランド経路集約回路とを備えるICソケットであって、
上記電源経路集約回路を、
上記複数の電源端子のうち、同電位の電源を入力する第1の電源端子の配列に対応して上記積層型基板の表面に配設された複数の第1の電源端子用ランドと、
各上端が各第1の電源端子用ランドに接続された状態で、下端が積層型基板の裏面側を向く複数の第1の電源スルーホールと、
上記積層型基板の中間層に設けられ且つ上記複数の第1の電源スルーホールの下端が接続された第1の電源パターンと、
上端が上記第1の電源パターンに接続された状態で、その下端が積層型基板の裏面に至る第1の電源集約スルーホールと、
この第1の電源集約スルーホールに接続された状態で積層型基板の裏面に設けられた第1の電源集約端子とで構成し、
上記グランド経路集約回路を、
上記複数のグランド端子の配列に対応して上記積層型基板の表面に配設された複数のグランド端子用ランドと、
各上端が各グランド端子用ランドに接続された状態で、下端が積層型基板の裏面側を向く複数のグランドスルーホールと、
上記積層型基板の中間層に設けられ且つ上記複数のグランドスルーホールの下端が接続されたグランドパターンと、
上端が上記グランドパターンに接続された状態で、その下端が積層型基板の裏面に至り且つ上記第1の電源集約スルーホールに近接した第1のグランド集約スルーホールと、
このグランド集約スルーホールに接続された状態で積層型基板の裏面に設けられた第1のグランド集約端子とで構成した、
ことを特徴とするICソケット。
【請求項2】
請求項1に記載のICソケットにおいて、
1対の上記第1の電源集約スルーホールを近接させて並設し、上記第1のグランド集約スルーホールをこれら1対の第1の電源集約スルーホールの間に並設した、
ことを特徴とするICソケット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のICソケットにおいて、
第1の2端子コンデンサを、積層型基板内に積層形成して、上記第1の電源スルーホールと上記グランドスルーホールとの間に接続した、
ことを特徴とするICソケット。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のICソケットにおいて、
チョークコイルを、積層型基板内に積層形成して、上記第1の電源集約スルーホールと上記第1の電源パターンとの間に介在させた、
ことを特徴とするICソケット。
【請求項5】
請求項1に記載のICソケットにおいて、
上記電源経路集約回路は、
上記複数の電源端子のうち、上記第1の電源端子とは異なる電位の電源を入力する複数の第2の電源端子の配列に対応して上記積層型基板の表面に配設された複数の第2の電源端子用ランドと、
各上端が各第2の電源端子用ランドに接続された状態で、下端が積層型基板の裏面側を向く複数の第2の電源スルーホールと、
上記積層型基板の中間層に設けられ且つ上記複数の第2の電源スルーホールの下端が接続された第2の電源パターンと、
上端が上記第2の電源パターンに接続された状態で、その下端が積層型基板の裏面に至る第2の電源集約スルーホールと、
この第2の電源集約スルーホールに接続された状態で積層型基板の裏面に設けられた第2の電源集約端子とを備え、
上記グランド経路集約回路は、
上端が上記グランドパターンに接続された状態で、その下端が積層型基板の裏面に至り且つ上記第2の電源集約スルーホールに近接した第2のグランド集約スルーホールと、
この第2のグランド集約スルーホールに接続された状態で積層型基板の裏面に設けられた第2のグランド集約端子とを備える、
ことを特徴とするICソケット。
【請求項6】
上記ICの第1の電源端子及びグランド端子が第1の電源端子用ランド及びグランド端子用ランドにそれぞれ接続された請求項1,請求項3又は請求項4のいずれかに記載のICソケットを、配線基板に実装したICソケットの実装構造であって、
第1及び第2のランドを、上記積層型基板裏面の上記第1の電源集約端子及び第1のグランド集約端子に対応させて、上記配線基板の表面に並設すると共に、上端が上記第1及び第2のランドにそれぞれ接続された状態で、それぞれの下端が配線基板の裏面に至る第1及び第2のスルーホールを、配線基板内に設け、且つ、これら第1のスルーホールの下端と第2のスルーホールの下端とに接続された第2の2端子コンデンサを、当該配線基板の裏面に設け、
上記ICソケットの第1の電源集約端子及び第1のグランド集約端子を、上記配線基板の第1及び第2のランドにそれぞれ接続した、
ことを特徴とするICソケットの実装構造。
【請求項7】
上記ICの第1の電源端子及びグランド端子が第1の電源端子用ランド及びグランド端子用ランドにそれぞれ接続された請求項2ないし請求項4のいずれかに記載のICソケットを、配線基板に実装したICソケットの実装構造であって、
第1,第2及び第3のランドを、上記積層型基板裏面の上記一方の第1の電源集約端子,第1のグランド集約端子及び他方の第1の電源集約端子に対応させて、上記配線基板の表面に並設すると共に、上端が上記第1,第2及び第3のランドにそれぞれ接続された状態で、それぞれの下端が配線基板の裏面に至る第1,第2及び第3のスルーホールを、配線基板内に設け、且つ、第1のスルーホールの下端と第2のスルーホールの下端とに接続された第2の2端子コンデンサと、第2のスルーホールの下端と第3のスルーホールの下端とに接続された第3の2端子コンデンサとを、当該配線基板の裏面に設け、
上記ICソケットの一方の第1の電源集約端子,第1のグランド集約端子及び他方の第1の電源集約端子を、上記配線基板の第1,第2及び第3のランドにそれぞれ接続した、
ことを特徴とするICソケットの実装構造。
【請求項8】
上記ICの第1の電源端子,グランド端子及び第2の電源端子が第1の電源端子用ランド,グランド端子用ランド及び第2の電源端子用ランドにそれぞれ接続された請求項5に記載のICソケットを、配線基板に実装したICソケットの実装構造であって、
第1及び第2のランドを、上記積層型基板裏面の上記第1の電源集約端子及び第1のグランド集約端子に対応させて、上記配線基板の表面に並設すると共に、第3及び第4のランドを、上記積層型基板裏面の上記第2の電源集約端子及び第2のグランド集約端子に対応させて、上記配線基板の表面に並設し、上端が上記第1及び第2のランドにそれぞれ接続された状態で、それぞれの下端が配線基板の裏面に至る第1及び第2のスルーホールを、配線基板内に設けると共に、上端が第3及び第4のランドにそれぞれ接続された状態で、それぞれの下端が配線基板の裏面に至る第3及び第4のスルーホールを、配線基板内に設け、且つ、第1のスルーホールの下端と第2のスルーホールの下端とに接続された第2の2端子コンデンサと、第3のスルーホールの下端と第4のスルーホールの下端とに接続された第4の2端子コンデンサとを、当該配線基板の裏面に設け、
上記ICソケットの第1の電源集約端子及び第1のグランド集約端子を、上記配線基板の第1及び第2のランドに接続すると共に、第2の電源集約端子及び第2のグランド集約端子を第3及び第4のランドにそれぞれ接続した、
ことを特徴とするICソケットの実装構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−210596(P2011−210596A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78177(P2010−78177)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】