説明

ICチップ及びその製造方法

【課題】薄型化しながらも物理的強度特性に優れたICチップを提供することにあり、これにより、ICチップをアンテナシートに実装し、インレットを形成した際に、ICチップ部分を樹脂封止等しなくとも破損を防止するだけの強度を有すると共に、IC媒体表面の平滑性に優れる信頼性の高いIC媒体を提供する。
【解決手段】集積回路及び接続端子が形成されたシリコンウエハ2の片面に接着層3を介して補強板4を貼り合わせた積層体形成し、これをダイシングして、ICチップに個片化する際に、少なくとも補強板4及び接着層3のダイシングにレーザ6を用い、該接着層の該レーザ6に対する吸光度を0.6以上とするため、接着層3に着色剤を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカード、ICタグ等の様々なIC媒体に用いられるICチップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、個人を認識するIDカードとして、磁気あるいは光学的読み取りを行う方法が社員証、キャッシュカード、クレジットカード等において広く用いられてきた。しかしながら、技術の大衆化によってデータの改ざんや偽造カードが出回るようになり、実際に偽造カードによって被害を受ける人が増加するなど、個人情報の秘匿に関しては社会問題化している。このため、近年はICチップを内蔵したIC媒体が情報容量の大きさや暗号化データを載せられるといった高セキュリティの点から個人データを管理するものとして注目を集めている。
【0003】
特に非接触通信型のIC媒体は、手間が要らず携帯状態で外部の読み書き装置との情報交換が可能であり、様々な分野で使用されるようになってきている。これは、外部の読み書き装置からの電磁波によって、アンテナコイルに励起された誘導起電力でICチップを駆動するものであり、バッテリー電源をカード内部に持つ必要が無く、例えば、携帯状態で使用できるなどのアクティビティに優れている為である。
【0004】
このような非接触IC媒体は、従来、図4で示すように、アンテナシートへICチップをフリップチップ実装し、その後両面を樹脂で封止して、補強板の貼りあわせを行っている。この場合、ICチップの厚さが約200μm、補強板の厚さが1枚約30μmで、総厚が約450μmのICインレットが採用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−84710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ICチップ部分が厚くなることから、衝撃や曲げ等に対してこの部分が追従できずに、カードの衝撃、曲げ等に対する物理的強度特性に劣り、カードが点圧、衝撃、曲げ等のストレスを受けるとICチップが破壊される危惧があり、信頼性に問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、薄型化しながらも物理的強度特性に優れたICチップを提供することにあり、これにより、ICチップをアンテナシートに実装し、インレットを形成した際に、ICチップ部分を樹脂封止等しなくとも破損を防止するだけの強度を有すると共に、IC媒体表面の平滑性に優れる信頼性の高いIC媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、集積回路が形成されたシリコンウエハの片面に接着層を介して補強板を貼り合わせた積層体を、ダイシングすることで得られたICチップであって、該接着層には着色剤が含有されていることを特徴とするICチップとしたものである。
【0009】
また本発明は、前記着色剤は、カーボンブラックであることを特徴とする請求項1に記載のICチップとしたものである。
【0010】
また本発明は、集積回路が形成されたシリコンウエハの片面に接着層を介して補強板を貼り合わせた積層体を形成する工程と、該積層体をダイシングし、ICチップに個片化する工程と、を有し、該積層体をダイシングする工程のうち、少なくとも該補強板及び接着層をダイシングする工程にはレーザを用い、該接着層には着色剤が含有されていることを特徴とするICチップの製造方法としたものである。
【0011】
また本発明は、前記接着層は、該レーザの波長に対する吸光度が、0.6以上であることを特徴とするICチップの製造方法としたものである。
【0012】
また本発明は、前記接着層は、前記レーザの波長に対する吸光度が、0.6〜1.2であることを特徴とするICチップの製造方法としたものである。
【0013】
また本発明は、前記レーザはウォータージェットレーザであることを特徴とするICチップの製造方法としたものである。
【0014】
また本発明は、前記レーザは、グリーンレーザであることを特徴とするICチップの製造方法としたものである。
【0015】
前記積層体をダイシングする工程のうち、前記シリコンウエハをダイシングする工程には、ダイシングブレードを用いることを特徴とするICチップの製造方法としたものである。
【0016】
また本発明は、前記積層体をダイシングする工程のうち、前記シリコンウエハをダイシングする工程にも、レーザを用いることを特徴とするICチップの製造方法としたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以上説明したような構成であるから、以下に示す如き効果がある。
【0018】
即ち、本発明におけるICチップは、集積回路が形成されたシリコンウエハの片面に接着層を介して補強板を貼り合わせた積層体を、少なくともレーザを用いてダイシングして、ICチップに個片化して得られるが、接着層に着色剤を含むため、安定したレーザダイシングが可能となる。また、こうして得られたICチップは、アンテナシートに実装する際に、ICチップ部分を樹脂封止して補強板を積層する必要がなく、ひいてはICチップ部分の薄型化に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明におけるICチップの製造方法の実施形態例を説明する図である。
【図2】本発明におけるICチップの製造方法の別の実施形態例を説明する図である。
【図3】本発明におけるICチップを実装したインレットの実施形態例を示す図である。
【図4】従来技術におけるインレットを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明における本発明におけるICチップ及びその製造方法の実施形態例を、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
本発明においてICチップは、Siウエハ、接着層、補強板(SUS)を積層してなる積層体をダイシングすることによりICチップに個片化して製造される。このため、Siウエハ単独でダイシングした場合に比べて、その後の、例えばアンテナシートへの実装等の工程において、取り扱いが容易であり、ICチップの破損の可能性を低下させることが可能となる。
【0022】
具体的には、まず、集積回路及び接続端子が形成されたシリコンウエハを研削する。シリコンウエハの厚さについては、特に限定しないが、45μm〜100μmが好ましく、求める薄さ、強度等により適宜調整する。
【0023】
詳しく説明すると、集積回路並びに接続端子(図示せず)が形成されたSiウエハを研磨し、所定の厚み(例えば80μm)に加工し、研磨後に、研磨時にダメージを受けた加工変質層を除去する。このため、例えば、超微細な砥粒を持つ乾式砥石ホイールによる機械的な研磨であるポリッシュ処理等を施す。この処理により、研削によって発生したストレスをリリースすることが可能になり、Siウエハの反り低減やICチップにした場合の強度を高めることができる。このポリッシュ処理では2〜3μmのSiを除去する。
【0024】
次に、薄く仕上げたSiウエアの片面に接着層を介して、補強板(SUS)を貼り合わせる。補強板(SUS)には、C、Si、Mn、P、S、Ni、Cr等を単体もしくは複合させてなる金属が用いられる。また、補強板の厚みとしては、50〜200μmであることが好ましい。
【0025】
補強板の厚み及び材質は、IC媒体に加工した後のICチップ部分の衝撃強度だけでなく、ダイシングのし易さにも大きく影響する。衝撃強度を向上させるためには、補強板の厚みを厚くし、硬度を高める必要があるが、ダイシングの際の加工性を良好にするには、この硬度を調整する必要があり、400Hv以下が望ましい。
【0026】
接着層の膜厚は5〜50μmが望ましい。接着層の組成については特に限定しないが、低温で処理が可能なものが望ましい。また、接着層は低弾性率のものが望ましく、具体的には弾性率が75MPa以下であると良い。これにより、接着層が柔らかく、クッション性に優れ、接着層が薄型化ICチップの強度を補強する役割も果たすことが可能となる。この条件を満たす接着層の材料として、例えば、ダイアタッチフィルム(DAF)が使用可能である。
【0027】
Siウエハへの補強板の貼り合わせは、ウエハにかかる温度がより低温(〜60℃)であることが望ましい。高温で貼り合わせを行うと、ウエハに反りが発生する場合があり、この反りがその後の処理工程で不具合を誘発させる原因になることがある。
【0028】
貼り合わせにはラミネータを用いるが、このとき真空雰囲気で貼り合わせると、ボイドや貼りムラ等の不具合を抑えることが可能になる(大気雰囲気でも貼り合わせは可能である)。補強板の面積は、Siウエハの面積と同等若しくは若干大きくしておくと良い。これにより、Siウエハに補強板を貼り合わせる際に、若干のズレが生じても、個片化した際に全てのICチップが補強板に覆われていることになり、さらに外周からの衝撃からもSiウエハを保護する役目も果たす。
【0029】
そして、Siウエハに補強板を貼り合わせた積層体を、ダイシングテープ上に固定し、レーザを用いて、若しくはレーザ及びダイシングブレードを用いて、ダイシングすることによりチップ単位に個片化しICチップとする。ダイシングは、Siウエハに設けられているスクライブラインに沿って行うことが一般的である。
【0030】
スクライブラインとは、SiウエハをICチップに個片化する際に、ダイシングする場所を示す溝であり、予めSiウエハのメーカーによりSiウエハに設けられている。スクライブラインの幅は、現在の技術水準においては、一般的に50〜120μmのものが存在し、問題なくICチップを得る為には、このスクライブラインの幅より狭くダイシングする必要がある。ただし、本発明におけるSiウエハのスクライブライン幅は上記のものに限定されず、いかなる幅のスクライブラインが設けられたSiウエハでも使用可能である。
【0031】
ダイシングテープは基材と糊からなるが、基材の材料としては、本発明においては特に限定しないが、一般的に、PET、PO、PVC等が用いられおり、Siウエハのダイシングには、PO及びPVCが好適に用いられ、環境適正等を考慮すると、POを用いるのが望ましい。また、上記以外に、レーザダイシング専用のダイシングテープ等も使用可能である。
【0032】
ダイシングテープの厚みは、薄すぎるとダイシング中に破損してしまうため、破損しない程度の厚みが必要である。また、糊の接着性が弱いとダイシング中に積層体が微量ではあるが動いてしまい、加工不良が発生する可能性があるため、積層体が動かない程度の接着性が求められる。
【0033】
補強板は硬度が高いため、ダイシングブレードを用いてダイシングを行うと、ダイシングブレードのライフを短くし、ダイシングの際に発生する振動も大きい為、実際に部材に形成される溝の幅が、ダイシングブレードのブレード幅よりかなり広くなってしまうといった問題がある故、本発明においては、積層体のダイシングの内、少なくとも補強板及び接着層のダイシングはレーザを用いて行う。
【0034】
図1に示した本発明におけるICチップの製造方法の一実施形態例においては、Siウエハ及び接着層のダイシングにはダイシングブレードを用い、補強板及び接着層のダイシングにはレーザを用いている。
【0035】
ダイシングブレードとしては、ブレード基材単体からなるものでも良いし、ブレード基材の表面に、微細な砥粒が多数設けられたものでも良い。このブレード基材の材料、若しくは砥粒の材料により、その切断特性が変化する。Siウエハ及び接着層のダイシングに用いるダイシングブレードは、ブレード基材の表面に砥粒が設けられたものを用いるのが好ましく、表面に設けられた砥粒としては、ダイヤモンドが特に好適に用いられる。
【0036】
機械の性能、オペレート等の影響を受けることにより、ダイシングブレードのブレード幅より、実際の部材の切断幅は広くなる。よって、Siウエハ用のダイシングブレードは、Siウエハのスクライブライン幅より狭いことが求められ、具体的には、10〜15μm程度狭いことが望ましい。
【0037】
用いるレーザの波長域に関しては、特に限定しないが、例えば、ダイアタッチフィルム(DAF)等の代表的な接着性を有する樹脂は、一般的に目視でほぼ白色を呈するものが多い。レーザとして、紫外光領域のUVレーザ(例えば、波長が355nm付近)を用いる場合であれば、接着層が白色であっても切断可能であるが、UVレーザは発振器の負荷が大きく、このため装置設計上の難易度が高く、価格も高価である。そこで、積層体のダイシングに、可視光域に波長のピークがあるレーザーを用いる。
このようなものとして例えば、グリーンレーザ(波長のピークが532nm付近)等の可視光レーザを用いることが好ましい。
なお、このようなレーザは、固体レーザ、液体レーザ、ガスレーザ、半導体レーザ等、目的波長等に応じて使用することができる。
【0038】
そこで可視光レーザは、ほぼ白色の接着層にはほとんど吸収されないため、本発明における接着層には、着色剤を用いて着色することが望ましい。着色剤としては、積層体をダイシングする際に用いるレーザの波長により、様々な着色剤を用いる事が可能であり、特に限定しないが、幅広い波長の光を吸収するカーボンブラックが好適に用いられる。
【0039】
また、接着層に対する着色剤の含有量については、着色層の、積層体のダイシングに用いるレーザの波長に対する吸光度が、0.6以上となるような分量とすることが好ましく、さらには、0.6〜1.2であるとより望ましい。これは、吸光度が0.6より小さいと、接着層がほとんど切断できず、また、吸光度が1.2を上回ると、接着層自体は切断されるが、レーザが吸収されすぎて接着層が断面より後退し、Siウエハ及び補強板と面一な切断面を有するICチップを得ることが難しくなるためである。
【0040】
補強板及び接着層のダイシングに用いるレーザのレーザ幅についても、前述したダイシングブレードにより形成したSiウエハの切断幅よりも狭いことが求められる。これは、Siウエハをダイシングしてできた溝に、補強板のダイシングに用いるレーザを挿入して補強板をダイシングするが、この際にレーザが、Siウエハに接触し、余計に切削することを防ぐためである。
【0041】
しかしながらレーザは、ダイシングブレードと比較して、機械の振動等の影響を受け難いため、レーザ幅はSiウエハに形成された溝の幅より、5〜10μm程度狭ければ問題ない。
【0042】
また、レーザとしては、ウォータージェットレーザが特に好適に使用できる。ウォータージェットレーザとは、集光したレーザを、水を細く噴射することにより形成したウォータージェットに導入し、ウォータージェット内にてレーザを反射させて誘導する技術である。
【0043】
ウォータージェットレーザは、水の作用効果により、切断される媒体の発熱を抑制させる効果があり、ダイシング時に発生する熱によりSiウエハ及び補強板に反りが発生するのを防止することが可能となる。
【0044】
また、ダイシング時にはSiウエハ及び補強板の削りカスが発生し、これがSiウエハ表面に付着することにより、不良品の原因となるため、ダイシングの際にSiウエハの表面にコート剤を塗布し、ダイシング後にコート剤を除去する等の対策をとる必要があるが、ウォータージェットレーザを用いると、水の洗浄効果により、コート剤を塗布しなくとも、Siウエハ表面への削りカスの付着を防止することが可能となる。また、ウォータージェットレーザは通常のレーザに比べて、焦点位置が多数存在するため、加工可能範囲が広く、加工時間も短縮される。
【0045】
図2は、本発明におけるICチップの製造方法の別の実施形態例を示す図である。図2に示したICチップの製造方法は、積層体のダイシングを、全てレーザを用いて行っている以外は、図1に示した製造方法と同様である。また、レーザとしても、前述した如く、通常のレーザ、ウォータージェットレーザ等が使用可能である。
【0046】
本発明におけるSiウエハ、接着層及び補強板からなる積層体のように、材質の異なる複数の部材からなる積層体のダイシングを、レーザを用いて行うには、各々のダイシングの対象部材に対応したレーザを用いて行う場合と、1つのレーザを用いて全体を一度にダイシングする場合があげられる。各々の対象部材のダイシングを異なる工程にて行うと、ダイシングの加工適正が向上するため、ダイシング面を綺麗に仕上げることが可能となる。一方で、1つのレーザを用いて全体を一度にダイシングすると、加工時間の短縮という効果が得られる。
【0047】
複数の部材を一度にダイシングする場合には、その厚みに応じて、各々の部材を個別にダイシングする場合に比べて、レーザの出力を上げる必要があるが、出力を上げすぎると、シリコンウエハが破損する危険性がある故、適宜出力を調節して行う。
【0048】
図3は、本発明におけるICチップをアンテナシートに実装してなるインレットの実施形態例を示す図である。アンテナシートとは、非接触通信用のアンテナが、コイル若しくはエッチング等によりフィルム上に設けられた部材のことである。
【0049】
ICチップのアンテナシートの実装は、絶縁性樹脂フィルム(NCF)又は異方性導電性樹脂フィルム(ACF)等の樹脂組成物を介して貼り合わせても良いし、超音波実装し、隙間をアンダーフィルで充填させても良く、その他公知の実装方法により行って良く、本発明においてはこの実装方法については特に限定しない。
【0050】
また、図示しないが、電気的安定性を高める為に、ICチップ部分の厚みに影響を及ぼさない範囲で、ICチップの側面を樹脂等により封止しても良い。
【0051】
図3(a)に示した如く、図1及び図2を用いて説明した本発明におけるICチップの製造方法を用いて得られたICチップは、上述した如くSiウエハが薄型化されており、更に補強板が既に積層されている故、アンテナシートに実装してインレットを形成する際に、樹脂封止した上に補強板を積層する必要がなく、インレットのICチップ部分の厚みを抑えることが可能となる。
【0052】
図3(a)に示した実装形態の場合には、Siウエハより、補強板を厚くすることが望ましく、本発明の構造とすることにより、全体としては薄型化を実現しながらも、補強板の厚みは従来よりも厚くすることが可能である故、ICチップ部分の強度を向上させることが可能となる。
【0053】
また、ICチップ部分に更なる強度が求められる場合には、図3(b)に示した如く、アンテナシートのICチップ積層部分の裏側に、接着層を介して補強板を積層しても良い。この場合であっても、従来のICチップ部分の表裏を樹脂封止して補強板を積層したインレットと比較して、ICチップ部分を薄くすることが可能である。
【0054】
図3(b)に示した実装形態の場合には、表裏いずれかの補強板を、Siウエハより厚くすることが望ましく、これにより、全体としては薄型化を実現しながらも、ICチップ部分の強度を向上させることが可能となる。
【実施例】
【0055】
(実施例1)
集積回路及び接続端子が形成され、幅70μmのスクライブラインが設けられた厚さ80μmのシリコンウエハの片面に、接着層として厚さ30μmのDAF材を介して、補強板として厚さ70μmのSUS板を貼り合せて積層体を形成した。DAF材には、カーボンブラックを含有させ、グリーンレーザ(532nm波長)に対する吸光度を0.80としたDAF材(日立化成工業株式会社製)を使用した。そして、POからなるダイシングテープ上に、補強板がダイシングテープと接するように積層体を固定し、砥粒として、ダイヤモンドが設けられた厚さ60μmのダイシングブレードを用いて、シリコンウエハ及び接着層をダイシングした。その後、10W、160kHzのグリーンレーザを、水圧10Mpaのウォータージェットに誘導したウォータージェットレーザを用い、シリコンウエハのダイシング溝に合わせて補強板をダイシングすることにより、個片化してICチップを得た。得られたICチップは、破損もなく、ダイシング面も滑らかであった。
【0056】
(実施例2)
DAF材に対するカーボンブラックの含有量を調整し、グリーンレーザ(532nm波長)に対する吸光度を1.24としたDAF材(日立化成工業株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてICチップを製造した。積層体はダイシングされ、ICチップは得られたが、一部のICチップの切断面において、DAF材が後退し、平滑性に劣るものが見られた。
【0057】
(比較例1)
DAF材に対するカーボンブラックの含有量を調整し、グリーンレーザ(532nm波長)に対する吸光度を0.5としたDAF材(日立化成工業株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてICチップを製造した。しかし、DAF材がレーザにてほとんど切断できず、ICチップに個片化されないものが多く見られた。
【符号の説明】
【0058】
1・・・ICチップ
2・・・シリコンウエハ
3・・・接着層
4・・・補強板
5・・・ダイシングテープ
6・・・レーザ
7・・・ダイシングブレード
8・・・アンテナシート
9・・・封止樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路が形成されたシリコンウエハの片面に接着層を介して補強板を貼り合わせた積層体を、ダイシングすることで得られたICチップであって、
該接着層には着色剤が含有されていることを特徴とするICチップ。
【請求項2】
前記着色剤は、カーボンブラックであることを特徴とする請求項1に記載のICチップ。
【請求項3】
集積回路が形成されたシリコンウエハの片面に接着層を介して補強板を貼り合わせた積層体を形成する工程と、
該積層体をダイシングし、ICチップに個片化する工程と、を有し、
該積層体をダイシングする工程のうち、少なくとも該補強板及び接着層をダイシングする工程にはレーザを用い、
該接着層には着色剤が含有されていることを特徴とするICチップの製造方法。
【請求項4】
前記接着層は、該レーザの波長に対する吸光度が、0.6以上であることを特徴とする請求項3に記載のICチップの製造方法。
【請求項5】
前記接着層は、前記レーザの波長に対する吸光度が、0.6〜1.2であることを特徴とする請求項3又は4に記載のICチップの製造方法。
【請求項6】
前記レーザはウォータージェットレーザであることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載のICチップの製造方法。
【請求項7】
前記レーザは、グリーンレーザであることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載のICチップの製造方法。
【請求項8】
前記積層体をダイシングする工程のうち、前記シリコンウエハをダイシングする工程には、ダイシングブレードを用いることを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載のICチップの製造方法。
【請求項9】
前記積層体をダイシングする工程のうち、前記シリコンウエハをダイシングする工程にも、レーザを用いることを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載のICチップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−222847(P2011−222847A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92077(P2010−92077)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】