説明

III−V族半導体コア−ヘテロシェルナノクリスタル

本発明は、コア及び複数のシェルを含むコア/多重シェル半導体ナノクリスタルを提供する。このナノクリスタルは、タイプ−Iのバンドオフセット及び、約400nm〜1600nm超のNIRまでの可視範囲をカバーする明るさが調整可能な放射を提供する高いフォトルミネセンス量子収率を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア/多重シェル半導体ナノクリスタルの製造及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学から電気光学に亘る様々な用途のための明るく安定した蛍光を有するナノクリスタルに対するニーズがますます大きくなっている。この傾向は、技術的に重要な可視から近赤外線(NIR)のスペクトル範囲をカバーし、同時に環境に優しい(例えば、InP)という特徴から生じる大規模インプリメンテーションに利用されるIII-V族半導体ナノクリスタルについてはとりわけ当てはまる。
【0003】
ナノクリスタルのフォトルミネセンス量子収率及び安定性を高める主な方策は、コアの表面上にパッシベーションシェルを成長させることである。これは、キャリアにとってトラップとしての働きをする表面欠陥を除去し、よって、非放射減衰を介した発光消光の望ましくないプロセスの可能性を低減する。さらに、パッシベーションシェルはコアを保護し、表面劣化を低減する。パッシベーションシェル用の半導体材料を選ぶときに2つの主な要因を考慮する。第1の要因はコアとシェル物質との間の格子不整合である。大きな格子不整合はコア/シェル界面でひずみを引起し、このひずみは電荷キャリアにとってトラップサイトの働きをする欠陥サイトの生成に結びつくことがある。第2の要因は、コア及びシェル領域間のバンドオフセットである。即ち、バンドオフセットは、キャリアがコア領域に制限され、且つ欠陥が望ましくない非放射緩和プロセスに結びつき得る表面から隔離されるほど十分に高くなければならない。この後者の影響は、制限されるには大きなポテンシャル障壁を要求する電荷キャリアに対する小さな実効質量によって典型的に特徴づけられる、III-V族半導体にとって特に重大である。
【0004】
コア/シェルナノクリスタルの初期の研究は、II-VI族/II-VI族コア/シェル構造に関しては90%まで、またIII-V族/II-VI族コア/シェル構造に関しては20%までの量子収率値を示した。(BaninらのWO02/25745の中での開示、及び学術誌「Chemical Physics and Physical Chemistry」(2001年、第2巻、頁331)におけるHauboldらの開示を参照)。III-V族構造にとっては量子収率値にまだ著しい改良の余地がある。しかし、高い量子収率を示すII-VI族構造にとってさえ、これらの最大の量子収率に対応するシェルの厚さは小さく、典型的には2つ程度の単分子層しかない。この制限は、成長過程で形成された構造欠陥によって生成されたトラップに恐らく起因する。厚いシェルは、特に過酷なプロセスにさらされるアプリケーションの場合には、ナノクリスタルの安定性にとって重要である。
【0005】
この問題の1つの解決策は、Liらの研究(Journal of the American Chemical Society 、2003年、第125巻、頁12567-12575)によって示された。その解決策では、層毎の成長方法が採用された。層毎の成長が以前はCdS/HgS/CdS量子ドット−量子井戸構造を生成するためにも使用された(Mewsら、Journal of Physical Chemistry、1994年、第98巻、頁934)。この方法では、カチオン及びアニオンシェル前駆体を反応槽へ順次加える。シェルの厚さと共に増大したストレスという問題の別の解決策は、バッファ層を使用してシェル中のストレスを減少させるヘテロシェル構造を成長させることである。
【0006】
番号WO04/066361の国際公開には、高いフォトルミネセンス量子収率の組成は、単分散されたコロイド性のコア/シェル半導体ナノクリスタル、及びドープされたあるいは放射状にドープされたコア/多重シェルナノクリスタルを含んでいることが開示された。CdSeコアを含むコア/シェル/シェルのような多重シェル構造の調製も、例えばTalapinら(Journal of Physical Chemistry、2004年、第B 108巻、頁18826)及Mewsら(Journal of the American Chemical Society、2005年、第127巻、頁7480-7488)によって実証された。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、層毎の溶液成長技術を実施することによって、III-V族半導体コア、及びそれをコーティングする少なくとも2つの、ここにシェルと呼ばれる層を有する複雑なコア/多重シェルヘテロ構造を提供する。この構造は、水環境への配位子交換及び変換でさえ非常に高いままの、例外的な蛍光量子収率をもたらす。複雑なヘテロ構造はさらに、以下の特性を有することを特徴とする。
【0008】
(i)約400nm〜1600nmを超過するNIRの可視範囲をカバーし、明るさが調整可能な発光を提供する、高いフォトルミネセンス量子収率を示す。
(ii)優れた発光スペクトルをももたらす狭い粒子分布を示す。
(iii)例外的な安定性を提供する。
(iv)環境に優しく、よって、人体についてあるいは人体に関連する病気治療または診断の方法に使用され得る。
(v)種々の用途、例えば、生物学的な蛍光タグ付け、また、光ファイブ電気通信で要求される装置のような電気光学装置の中で実施され得る。
【0009】
このように、本発明は基本的に、半導体物質から製造され、前述の特性を有するコア/多重シェル半導体ナノクリスタルを提供する。本発明のナノクリスタルあるいは(区別なく使用されているように)ヘテロ構造は、ドープされておらず、且つ、量子井戸ではない。
【0010】
本発明の文脈内に使用されているように、用語「ヘテロ構造」は、化学組成が位置とともに変化する、ドープされていない半導体構造を指す。本発明のヘテロ構造は、コア物質と多重シェル物質から作られている。各シェル物質は順次その下にあるシェルをコーティングし、それにより、コア/シェル1/シェル2、コア/シェル1/シェル2/シェル3などのようなコア/多重シェルアセンブリーを生成する。本発明のヘテロ構造は、「ナノクリスタル」である。すなわち、本発明のヘテロ構造は、原料バルクの結晶構造に似た結晶コア構造をもち、典型的に2〜100nmの直径を有するナノメータ寸法の粒子である。ナノクリスタル表面が、粒子表面への親和力を有する適切な分子からなる配位子層によって通常コーティングされる。
【0011】
したがって、基本的な構造「コア/多重シェル」は、一個のコア及び少なくとも2つのシェルを有するヘテロ構造を指す。ここでは、シェルは、例えばシェル1、シェル2などと呼ばれ、なお、この場合、シェル1が最も内側のシェルであり、シェル2が次のシェルであるようになる。例えば、「コア/シェル1/シェル2」という表示によって表されるヘテロ構造は、一種の半導体物質のコアを有するヘテロ構造に対応する。なお、コアは異なる半導体組成のシェル1によってコーティングされ、シェル1は次には更なる別の半導体物質のシェル2によってコーティングされている。この典型的な例では、シェル2はコアの外部の、或いは最も外側のコーティングである。
【0012】
コア及びシェル物質の各々は異なり、異なるエネルギー特性を有する。コア及びシェル物質のエネルギー特性は、コアから離れて外部シェルへ向かう方向に増大するので、ヘテロ構造全体のエネルギー特性は、絵を用いて言えばロシアの入れ子人形「マトリョーシカ」あるいは「バブーシュカ」に類似する。その入れ子人形では、小さな人形がより大きな人形内に入れ子にされ、そのより大きな人形は、次には、もっとより大きな人形内に入れ子にされる。そのような構造のポテンシャルエネルギースキームが、図1のポテンシャルエネルギーダイアグラムに描かれている。
【0013】
用語「コア」は、本発明のヘテロ構造に含まれている最も内側の半導体物質を指し、量子ドットとして見なされる。典型的には、コアはほとんど球形である。しかしながら、擬似ピラミッド、立方体−八面体及びその他の様々な形のコアも使用された。コアの典型的な直径は約2〜約20nmである。用語「コア物質」は、本発明の文脈内ではコアが作られる半導体物質を指す。
【0014】
用語「多重シェル」は、ヘテロ構造の、複数のシェルを有する構造に使用される。用語「シェル物質」は、本発明の文脈内ではシェルの各々が作られる半導体物質を指す。
【0015】
本発明の第1の側面では、III/V族化合物からなるコア物質、及び少なくとも2つのシェル物質を含むコア/多重シェル半導体ナノクリスタルが提供される。ここでは、第1のシェル物質はコア物質をコーティングし、第2のシェル物質は第1のシェル物質をコーティングし、後続のシェル物質はそれぞれ前のシェルを順にコーティングする。また、各シェル物質は、II/VI族、III/V族あるいはIII/VI族の化合物から独立に選択される。さらに、コア物質は第1のシェル物質とは異なり、また、各シェル物質もその隣接するシェルのシェル物質とは必ず異なる。そして、このナノクリスタルはタイプ−Iのバンドオフセットを示す。
【0016】
一実施の形態では、ナノクリスタルは、波長が約400〜約1600nmまでのルミネセンスを示す。別の実施の形態では、複数のそのようなナノクリスタルは、波長が約400から約1600nmまでのルミネセンスを示す。
【0017】
本発明のさらなる別の実施の形態では、コア/多重シェル半導体ナノクリスタルは一個のコア及び2〜7つのシェルを含む。それらのシェルの各々は、III-V族、II-VI族、及びIII-VI族の化合物から独立に選択された異なる半導体物質からなる。別の実施の形態では、コア/多重シェル構造は、コア及び2〜4つのシェルを含む。
【0018】
複数のシェルの各々は、異なる厚さを有し、且つ、同じ組成物の多数の層により構成されてもよいことに注目すべきである。ここでは、各シェルを構成する層の数はシェルの厚さを決定する。言いかえれば、各シェルの境界は、各シェルそれ自体が同じ半導体物質の多数の層により形成されることを可能にしながら、1つの半導体物質から別の半導体物質への転換によって決定される。
【0019】
用語「タイプ−I」は、連続するシェル物質の伝導帯と価電子帯のオフセットが次のようなものとなるヘテロ構造のエネルギー構造を指す。即ち、このオフセットは、伝導帯のポテンシャルは各連続するシェルのほうがコア及び/又はコアにより接近しているシェルに比べてより高く、また、価電子帯のポテンシャルは各連続するシェルのほうがコア及び/又はコアにより接近しているシェルに比べてより低くなるような値を有する。それ故に、前述の少なくとも2つのシェル物質のバンドギャップ(伝導帯及び価電子帯間のエネルギーギャップ)がコア物質のバンドギャップより大きく、さらに、コアから外側へ増大すると言及した。
【0020】
言いかえれば、コア物質のバンドギャップは、第1及び後続のシェル物質のバンドギャップより小さい。第1のシェル物質のバンドギャップは、コア物質のバンドギャップより大きく、該第1のシェルをコーティングする(つまり、コアからより遠く離れている)後続のシェル物質のバンドギャップより小さい。そして、この後続のシェル物質は、コア及び内側のシェル物質のバンドギャップより高く、自体をコーティングするシェル物質のバンドギャップより低いバンドギャップを有する。
【0021】
用語「III/V族化合物」は、元素周期表のグループIIIa(B、Al、Ga、In、及びTl)からの少なくとも1つの金属前駆体及び元素周期表のグループVa(N、P、As、Sb、及びBi)からの少なくとも1つの元素の反応から形成された結晶物質または固溶体を記述するために使用される。特定のグループIIIaの金属前駆体は特定のグループVaの1つ以上の前駆体と反応し、GaAsPのような多原子構造を形成し、また、特定のグループVaの前駆体は特定のグループIIIaの1つ以上の金属前駆体と反応し、InGaAsのような多原子構造を形成し得ることに注目すべきである。そのような多原子構造も、上記用語の範囲内にある。
【0022】
本発明の中で使用され得るIII/V族化合物の例は、InAs、GaAs、GaP、GaSb、InP、InSb、AlAs、AlP、AlSb、及びInGaAs、GaAsP、InAsPのような合金を含む。
【0023】
用語「III/VI族化合物」は、元素周期表のグループIIIa(B、Al、Ga、In、及びTl)からの少なくとも1つの金属前駆体及び元素周期表のグループVIa(O、S、Se、Te)からの少なくとも1つの元素の反応から形成された結晶物質または固溶体を記述するために使用される。特定のグループIIIaの金属前駆体は、特定のグループVIの1つ以上の前駆体帯と反応させられてGaTeSeのような多原子構造を形成し、あるいは特定のグループVIの前駆体は、特定のグループIIIaの1つ以上の金属前駆体と反応させられてInSeのような多原子構造を形成し得ることに注目すべきである。そのような多原子構造もこの用語の範囲内にある。
【0024】
本発明の中で使用されうるIII/VI族化合物の例は、InS、In、InSe、InSe、InSe、InSe、InTe、InSe、GaS、GaSe、GaSe、GaSe、GaTe、GaTe、InSe3−xTe、GaTeSe、及び(GaIn1−x)Seを含む(ここでは、Xは、0または1である)。
【0025】
同様に、用語「II/VI族化合物」は、元素周期表のグループIIaからの少なくとも1つの金属前駆体及び元素周期表のグループVIaからの少なくとも1つの元素の反応から形成された結晶物質または固溶体を記述するために使用される。II/VI族化合物の例は、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTeなど、及びそれらのCdZnSe、CdSSe、ZnSSeなどのような合金を含む。
【0026】
好ましい実施の形態では、本発明は、III/V族化合物からなるコア物質、及びそれぞれ異なるII/VI、 III/V 或いは III/VI族化合物からなる2つのシェル物質を含むコア/シェル1/シェル2半導体ナノクリスタルを提供する。ここでは、第1のシェル物質(つまり、シェル1)はコア物質をコーティングし、第2のシェル物質(つまり、シェル2)は上記第1のシェル物質をコーティングし、且つ、このナノクリスタルのエネルギー構造はタイプ−Iである。
【0027】
好ましくは、コア/シェル1/シェル2半導体ナノクリスタルは、InAs/CdSe/ZnS、InAs/CdSe/CdS、InAs/InP/ZnSe、InP/ZnSe/ZnS、InP/CdS/ZnSe、InP/CdS/ZnSe、GaAs/CdSe/ZnS、GaAs/CdS/ZnSから選ばれる。最も好ましくは、ナノクリスタルは、InAs/CdSe/ZnSあるいはInP/ZnSe/ZnSである。
【0028】
本発明の別の側面では、本発明のコア/多重シェル半導体ナノクリスタルを製造する「湿式」製造方法を提供する。この「湿式」製造方法は、以下のステップを含む。
【0029】
(i)コアを提供するステップ、
(ii)IIIa、IIa、Va或いはVIa族のイオンのグループから選択された可溶のカチオンまたは可溶のアニオンの第1の溶液を含有する溶液とコアを接触させて、カチオンあるいはアニオンをコア上で反応させるステップ、
(iii)IIIa、IIa、Va或いはVIa族のイオンのグループから選択された、ステップ(ii)の第1の可溶のカチオンあるいは可溶のアニオンの対イオンを含有する溶液と上記コアを接触させて、対イオンを反応させ、かつ、コア/シェル1構造を提供するステップ、
(iv)IIIa、IIa、Va或いはVIa族のイオンのグループから選択された可溶のカチオンまたは可溶のアニオンの第2の溶液を含有する溶液とコア/シェル1構造を接触させて、上記カチオンあるいはアニオンをコア/シェル1構造のシェル1の上で反応させるステップ、
(v)IIIa、IIa、Va或いはVIa族のイオンのグループから選択された、ステップ(iv)の第2の可溶のカチオンあるいは可溶のアニオンの対イオンを含有する溶液とコア/シェル1構造を接触させて、反応させ、且つ、コア/シェル1/シェル2構造を提供するステップ、及び、
(vi)オプションとして、ステップ(ii)〜(v)を繰り返して、より高次のコア/多重シェル半導体ナノクリスタルを形成するステップ。
【0030】
一実施の形態では、ステップ(iii)のコア/シェル1構造は、InAs/CdSe、InAs/CdSe、InAs/InP、InP/ZnSe、InP/CdS、InP/CdS、GaAs/CdSe及びGaAs/CdSから選ばれる。ステップ(v)のコア/シェル1/シェル2構造は、InAs/CdSe/ZnS、InAs/CdSe/CdS、InAs/InP/ZnSe、InP/ZnSe/ZnS、InP/CdS/ZnSe、InP/CdS/ZnSe、GaAs/CdSe/ZnS、及びGaAs/CdS/ZnSから選ばれる。
【0031】
別の実施の形態では、コアを様々な前駆体溶液と接触させるステップ(ステップii〜ステップv)を、200℃を超過する温度で行う。
【0032】
このように得られたヘテロ構造は、反応溶液から集合体として集めることができる。ヘテロ構造が、その外側のシェル上には、デシルアミン(Decylamine)、ドデシルアミン(Dodecylamine)及びトリブチルアミン(Tributylamine)のような長くつながれたアミン配位子の有機質層によってカバーされることができる。このような配位子は、外側シェルの金属イオンと対位し、溶剤中の金属の溶解度を増大させる。
【0033】
さらなる側面では、本発明は、複数のコア/多重シェル半導体ナノクリスタルを含む、データ伝送光信号を増幅する広帯域の光増幅器に関連する。この光増幅器は、複数のコア/多重シェル半導体ナノクリスタル、及びポンピングを含む。各コア/多重シェルナノクリスタルは、特定の光学バンドに対応するコア寸法を有し、且つ、光伝送媒質内の所定のポイントに位置する。ポンピングは、可干渉光ソースを前記光伝送媒質へ接続し、前記光伝送媒質内で受信したデータ伝送光信号を前記特定の光学バンド内で増幅するのに必要な光エネルギーで個々の前記ナノクリスタルを励起させる。
【0034】
補足的な側面では、本発明は、本発明のコア/多重シェル半導体ナノクリスタルを含む発光ダイオードに関連する。
【0035】
本発明のコア/多重シェル半導体ナノクリスタルは、生物学的なラベリング剤、光電デバイス、あるいはレーザーデバイスとして使用されてもよく、また光データ通信システム中において使用されてもよい。
【0036】
本発明は、さらに、複数の本発明のコア/多重シェル半導体ナノクリスタルを包含するホスト物質を提供する。用語「複数」は、本発明の文脈内において、上記に詳述された特性を示すことができる十分な量のナノクリスタルを意味する。
【0037】
好ましくは、ホスト物質は、ポリマーであり、フッ素化ポリマー、ポリアクリルアミドのポリマー、ポリアクリル酸のポリマー、ポリアクリロニトリルのポリマー、ポリアニリンのポリマー、ポリベンゾフェノンのポリマー、ポリ塩化ビニル(メタクリル酸メチル)のポリマー、シリコーンポリマー、アルミニウムポリマー、ポリビスフェノールのポリマー、ポリブタジエンのポリマー、ポリジメチルシロキサンのポリマー、ポリエチレンのポリマー、ポリイソブチレンのポリマー、ポリプロピレンのポリマー、ポリスチレンのポリマー、及びポリビニルのポリマーから選択される。
【0038】
1つの実施の形態では、ポリマーは、ポリビニル又はフッ素化ポリマーから選択される。最も好ましい実施の形態では、ポリマーは、ポリビニルブチラールまたはペルフルオロシクロブチルである。
【0039】
本発明を理解し、且つ実際上どのように実施するかを確かめるために、好ましい実施の形態は、非限定的な例をもって、添付の図面を参照しながら以下に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
基本手順としては、本発明のコア/多重シェル構造は、まず非配位性溶媒に溶解されていた量子ドットまたはIII-V族のコアから製造される。非配位性溶媒は、1-ヘキサデセン(1-Hexadecene)、ヘキサデカン(Hexadecane)、ヘプタデカン(Heptadecane)、1-オクタデセン(1-Octadecene)、オクタデカン(octadecane)、ノナデカン(Nonadecane)、エイコサン(Eicosane)のような、デシルアミン(Decylamine)、ドデシルアミン(Dodecylamine)あるいはトリブチルアミン(Tributylamine)のような長くつながれたアミン化合物を含むものである。アミン化合物は、それ自体、あるいはホスフィン(phosphine)(例えばトリオクチルホスフィン(trioctylphosphine)、トリブチルホスフィン(tributylphosphine)、トリオクチルホスフィンオキシド(trioctylphosphineoxide)など)のような別の配位子と共に、あるいはヘキサンチオール(hexanethiol), ベンゼンチオール(benzenethiol)、ドデカンチオール(dodecanthiol)などのようなチオール(thiol)と共に保護配位子としての役割を果たす。シェル物質のカチオン及びアニオンのための前駆体原液は、連続する方式で熱い反応槽へ導入される。1つの種の反応(層の半分)が完了すると、対イオンが、層(完全な層)を完成するために挿入される。その後には、同一シェルの追加的な層の成長が続く。それにより、望まれる必要な厚さのシェル、あるいはその代りに次のコーティング層の成長による、例えばシェル2を提供する。
【0041】
ヘテロ構造の構築に利用される半導体は、図1の規準を満たすべきである。すなわち、シェル1として使用される半導体1は、コアより大きなバンドギャップを有するべきである。また、バンドのオフセットは、コアのバンドギャップがシェルのバンドギャップに囲まれるようなものである。シェル2の材料として使用される半導体2は、コア及びシェル1よりも大きいバンドギャップを有するべきであるとともに、バンドのオフセットは、コア及びシェル1のギャップがシェル2のギャップに囲まれるようなものである。このルールは、後続のシェルにも同様に適用される。
【0042】
溶解されたコアを、シェル1の半導体の前駆体と接触させる。前駆体を、異なる連続的な方式で加え得る。つまり、まずカチオン(あるいはアニオン)前駆体を、コア粒子を含む溶液に加える。コア粒子上でのそれら前駆体の反応が完了した後、それら前駆体の対イオン前駆体を挿入し、反応させて完全な膜を確立する。これは、シェル1の所望の厚さが達成されるまで更なるシェル成長を可能にするために、アニオン/カチオンを交互にしながら、順に繰り返され続けられる。
【0043】
第2のステージでは、シェル2を、シェル1の上に成長させる。再び、連続的な方式で、アニオンまたはカチオンの前駆体、続いてはそれらの対イオンの前駆体を別々に加える。よって、シェル2が所望の厚さに成長することが可能となる。さらなるシェルは同様に追加される。
【0044】
反応は、典型的に室温より高い温度で行われる。好ましくは、反応温度は200度を超過する。最も好ましくは、反応温度は260度である。
【0045】
コア/シェル1/シェル2・・・の反応が完了すると、温度を室温に下げる。製品粒子は、成長溶液に非溶剤を加えて該粒子を沈殿させることによって、成長溶液から分離される。非溶剤の例は、メタノール(methanol)、エタノール(ethanol)、プロパノール(propanol)、ブタノール(butanol)及び別のアルコール、並びにアセトン(acetone)のような極性溶剤、そして、その他の非溶剤を含む。その後、粒子は凝集し、次に、ろ過及び/又は遠心分離によって溶液から分離されることができる。製品パウダは、保護されたコア/シェル1/シェル2・・・粒子を含む。望むならば、これらの粒子を、再度溶解し、必要に応じてさらに処理することができる。
【0046】
7%まで大きな格子不整合を有するInAs及びZnSeのような一定の半導体をそれぞれコア及び外部シェルの物質として使用することは、望ましくないひずみ効果を引き起こしうる。立ち代わって、これは、コア/シェルインターフェースで欠陥の生成を招くことがある。これらの欠陥はキャリアにとってトラップの役割をし、電子−正孔パスに有効な非放射減衰ルートを開き、その結果、得られる最大の量子収率を、例えば、2つのZnSeシェル膜未満、約20%に制限してしまう。
【0047】
2つの方策が本発明のヘテロ構造中の格子ストレスを減少するために使用されている。一つ目の方策では、コア及び外部シェルの格子定数の中間にある格子定数を有する中間の半導体を、コア及び外部シェルの間に導入する。この方策を使用する場合、コア及び外部シェル間の格子定数の差によって引起されたヘテロ構造の格子ストレスは、コアから外部シェルに向かって格子定数の徐々の変化によって低減される。したがって、InAsをコア物質、ZnSeをシェル物質として含むヘテロ構造の例では、CdSeは、InAs/CdSe/ZnSeヘテロ構造を提供するシェル1物質として導入される。
【0048】
第2の方策は、コアの格子定数より高い(または低い)格子定数を有するシェル1に別の半導体(シェル2)が続くように、コアの格子定数より低い(または高い)格子定数を有する半導体を成長させることである。この方策を使用する場合、コア及びシェル1間の格子定数の差によって引起されたヘテロ構造の格子ストレスは、シェル1のストレスとは反対のストレスを引起すシェル2によって低減される。この方策を使用して準備されたヘテロ構造の例はInAs/ZnTe/ZnSeである。
【0049】
層毎成長メカニズム及び格子ストレスを低減させる方法の実施は、例外的な蛍光輝度及び安定性を有する無欠陥で均質なコア/シェル1/シェル2QDの形成を可能にする。これは、III-V族半導体コア−ヘテロシェルナノクリスタルの強さを明白に実証している。
【0050】
本発明のヘテロ構造の調製に使用される前駆体原液は次のとおりである。
【0051】
1.Cd原液 ODE中の0.04MのCdは、Arの雰囲気の下でODE(27ml)の中のCdO(154mg)及びオレイン酸(2.71g)を、無色の溶液が得られるまで(約30min)、250℃で熱することにより準備された。
【0052】
2.Se原液 ODE中の0.04MのSeは、Arの下でODE(30ml)の中のSe(95mg)を、Seパウダがすべて溶けて、黄色の透明な溶液が得られるまで(約2時間)、200℃で熱することにより準備された。
【0053】
3.Zn原液 ODE中の0.04MのZnは、グローブボックス中でトルエン(0.20ml)の中の2MのZn(CHをODE(9.8ml)と単に混合することにより準備された。
【0054】
4.S原液 ODE中の0.04MのSは、Arの下でODE(30ml)の中のS(39mg)を、Sパウダがすべて溶解されるまで、200℃で熱することにより準備された。
【0055】
原液量の計算 各層のために加えられるカチオンまたはアニオンのモル数は、溶液中のすべての粒子の表面に存在するカチオンまたはアニオンのモル数と等しい。この数は、成長している半導体の粒子サイズ、量、結合距離及び密度を考慮して計算される。すべての層は厚さにして0.35nmであると考えられる。それは閃亜鉛鉱(zinc-blende)InAsの成長方向における結合距離である。例えば、3.8nmの平均直径を有する1.0x10−7モルのInAs QDの上にシェルを成長させる場合、第1の層のためには1.8x10−5モルのCd及びSeを使用し、第2の層のためには2.6x10−5モルのZn及びSeを使用し、また、第3の層のためには4.1x10−5モルのZn及びSeを使用する。
【0056】
合成条件の最適化はフォトルミネセンス特性、つまり、発光強度及び幅をもとに達成された。フォトルミネセンス強度の進展が止った時、原液を成長溶液に追加した。その間隔は、典型的には、第1の層のための約10分〜第7の層のための20分であった。小さいドット(3nm未満)及びより大きなドット(4nm超)の上のシェル成長については、計算した量を基準点として使用し、各半分シェル成長のために使用される原液量を最適化することが必要であった。使用される係数は、大きなドットの場合には1(4nmドット)〜0.8(7nmドット)であり、小さなドットの場合には1(4nmドット)〜0.7(2nmドット)である。
【0057】
コア/多重シェル構造の光学特性
時間分解測定のために、サンプルは、Nd:YAGレーザー(コンテニュアム社Miniliteシリーズ)の第2高調波(532nm)の5nsパルスによって10Hzの周波数で励起された。フォトルミネセンス信号は、検波モノクロメーターによる分散の後に、PMT(Photo Multiplier Tube、光電子増倍管)によって測定され、ディジタルオシロスコープで平均された。約600のパルスを、1つの減衰曲線を得るために使用した。システム応答時間(FWHM)は、散乱されたレーザー光の検出により測定されて、10nsであった。
【0058】
コア/多重シェル構造の構造特性
TEM(透過型電子顕微鏡法)写真を、100kVで作動する顕微鏡を使用して撮った。TEM用のサンプルは、非晶質の炭素薄膜で覆われた、400メッシュの銅グリッド上に少量のサンプルトルエン溶液を滴下し、続いて、メタノールで洗浄して超過の有機残留物を除去することにより準備した。XRD(X線回折、X-Ray Diffraction)測定は、Cu Kα放射を用いて、40kV及び30mAで作動するX線回折装置上で行なった。サンプルは、低バックグラウンド散乱の石英基板上に薄層として形成した。X線光電子分光法測定は解析的なXPS装置を利用して実施した。その測定は、Auコーティングされた基板にヘキサンジチオールによってリンクされた単分子層の厚さのナノクリスタル膜上で行われた。
【0059】
InAs/CdSe/ZnSeヘテロ構造(コア/シェル1/シェル2)
InAsコアの合成は、以前報告された物質の合成(例えばBaninら(Applied Physics Letters、1998年、第69号、頁1432、及びJournal of the American Chemical Society、2000年、第122巻、頁9692)を参照)と同様に達成された。
【0060】
典型的な一つの合成では、700mgのトルエンに溶解した1x10−7モルのInAsコアを、不活性でアンハイドラスの雰囲気の下で5gのODE(オクタデセン)及び1.5gのODA(オクタデシルアミン)に加える。InAsの量はコアの重量から推定される。次に反応混合物は排気されて、排気のままで徐々に100℃に加熱されて揮発性溶剤及び空気の残留物を除去する。バキュームはアルゴンフローに切替えられ、また、混合物の温度は260℃に上げられる。約200℃で、第1のアリクォート(実験結果の中で層0として示される)を取出す。第1半層用の量のCd前駆体を含む原液は、260℃で導入される。その後、Se前駆体が導入される。これは、シェル1の所望の厚さを完成するように順に続けられ得る。
【0061】
次に、シェル2の前駆体は、Zn前駆体の存在の下で、順次加えられて、半層を完成する。それに続いて、Se前駆体などが加えられる。この挿入はカチオンとアニオンの間の種々の態様で継続される。各層の間の時間間隔は約15分である。各半層に必要な量の計算は、以下に説明される。原液挿入の間に、アリクォートは反応をモニタするために取り出される。
【0062】
シェル成長の進行をモニタするために、フォトルミネセンスが反応過程で測定された。図2aは、3.8nm InAsコアドットのサンプル上に成長したシェル層の数の関数としてフォトルミネセンスの進展を示す図である。スペクトルは半層の成長毎に、即ち、カチオンまたはアニオン前駆体が加えられた後、且つ対イオン前駆体の追加の前に得られた。
【0063】
InAsコア上に成長した第1の層は、CdSeである。また、続く6つの層(一つの多重シェルを形成する)はZnSeである。層の成長が継続するにつれ、フォトルミネセンス強度に著しい増加がある。この増加は、シェルによって課された高いポテンシャル障壁の結果である。この高いポテンシャル障壁は、InAsコア中の電子及び正孔の波動の効果的な制限を可能にすると共に、ほとんどナノクリスタル表面領域にあるダークトラップ(Dark Trap)の近くではその存在が消失する。
【0064】
フォトルミネセンス強度の大きな増加に加えて、2つの興味深い現象を観察することができる。第1の現象は、第1のCdSe層の成長の後にフォトルミネセンスのレッドシフトである。これは、CdSeシェルによってInAsコア、特に伝導帯(CB)に課された低いポテンシャル障壁によるものであって、電子波動が周囲のシェルへトンネリングすることを可能にする。Cd前駆体だけの追加の後には、まず大きなレッドシフトが発生し、その次に、フォトルミネセンス強度の著しい増加が発生する。第2の現象はZnSeシェルの成長の後にフォトルミネセンス波長が元の位置へ回帰することである。
【0065】
図3は、図2に示されたフォトルミネセンス進展の数量的結果を示す。観察されるように、フォトルミネセンス量子収率は、シェル成長前の1%からシェル成長後の45%まで増加し(図3a、実線によって接続されている丸)、また、フォトルミネセンス最大波長は、シェル成長前の1070nmから第1のCdSe膜の成長後の1130nmまでレッドシフトする(図3a、破線によって接続されている三角)。ZnSeシェル成長が進行するにつれ、フォトルミネセンスは、ブルーシフトして元の位置に戻る。
【0066】
波長の位置及び強度に加えて、フォトルミネセンスの幅は、コア母集団上のシェル成長の均質性について直接の情報を与える。ナノクリスタルの均質なサンプルは、例えば、狭い発光が望まれる、或いはナノクリスタルの自己集合が必要な様々な用途において非常に重要である。フォトルミネセンスのFWHMにおける小さな変化は、以下に示され、且つ、説明されるように、シェル成長の前後の変わらない粒度分布に関連している。
【0067】
InP/ZnSe/ZnSヘテロ構造(コア/シェル1/シェル2)
InPコアの合成は、以前に公表された方法(Guzelianら、Journal of Physical Chemistry、1996年、第100巻、頁7212)に従う。
【0068】
シェル成長の前に、InPドットはHFでエッチングされる(Talapinら、Journal of Physical Chemistry B、2002年、第106巻、頁12659)。残りの合成のステップは、上の例1において詳述されたものに類似する。第1の層にはZn及びSe前駆体が使用され、また後続の層にはZn及びS前駆体が使用された。
【0069】
反応条件及び処理手順を最適化するために、反応温度、及び成長した各半導体のシェル層の数を含むいくつかの要因を、別々に評価した。シェル成長の温度を考慮する際、2つの主な要素を考慮しなければならない。1つは成長するシェルの結晶の品質であり、もう1つは粒子の環境である。不十分な温度は、フォトルミネセンスの消光に結びつくダークトラップが多い不完全なシェルの成長をもたらす。他方では、高温で反応を実行することはシェル前駆体の核生成をもたらす可能性がある。本発明の処理手順は低温で実施されたもの(図示せず)より著しくよい結果を提供する。シェル成長と競合する核生成過程の徴候は観察されなかった。
【0070】
粒子を取巻く環境のようものの本発明のヘテロ構造のフォトルミネセンス特性に対する付随的な影響は、シェル障壁の有効性に関する情報を提供する。コアナノクリスタルのみのケースにおいては、成長溶液からの化学的分離は、パッシベーション有機配位子の除去、及び表面トラップの可能な生成に起因して量子収率に著しい損失をもたらす場合がある。しかし、本発明の場合、分離中に発光は弱められなかったのみならず、フォトルミネセンス強度の増加は(メタノール沈殿を介した分離及びトルエン中の再溶解の後に)本発明のコア/多重シェルに観察された。この増加は、表面領域から励起子を離す際にシェル障壁の有効性を明白に実証する。フォトルミネセンスピーク位置の制御を達成するために、その上にシェルが成長するInAsコアについて異なるサイズのものを使用した。図4は、ZnSe/ZnSシェル成長の結果としてInPドットのフォトルミネセンスの進展を示す。成長が継続するにつれ、フォトルミネセンス強度は増大するが、フォトルミネセンス波長に顕著なシフトは観察されなかった。
【0071】
コアナノクリスタルのサイズを調節することによって、発光のためのスペクトルのチューニングはコア内の量子制限の影響を通じて達成され得る。4つのInAs/CdSe/ZnSeヘテロ構造粒子のサンプルは、880、1060、1170及び1420nmで発光する4つの異なるサイズのコアを使用して合成された。図5は、4つのサンプルによって提供されたスペクトル範囲を示す。小さなヘテロ構造(80%以上)から大きな構造(2%まで)にかけて量子収率に規則正しい減少が存在する。この減少は使用されるコアの最初の量子収率と関連する。層毎の成長方法によって得られた大きなヘテロ構造の量子収率は相当の補償を有しているが、小さなヘテロ構造によって達した強度と等しいために、まだ十分でない。例えば、880nmで発光するコアのフォトルミネセンス強度の増加は20倍であるのに対して、1420nmで発光する大きなコアの場合は70倍である。
【0072】
より大きな直径のナノクリスタルのより低い収率は、例えばInAs中の電子及び正孔の波動関数の非常に異なる実効質量に起因する、電子−正孔オーバーラップの減少の本質的効果によると考えられる。同時に、例外的な発光は種々の範囲で得られる。組成のチューニングを通じて、別のスペクトル範囲もアクセス可能である。例えば、InPコアを使用して、可視から近赤外領域をカバーすることが可能である。InSbコアはより赤の方への波長をカバーするために使用されてもよいのに対して、InAsSbまたはInAsPのコアは中間範囲をカバーするために使用されることができる。
【0073】
さらにInAsのような粒子コアの光学パフォーマンスに対する二重シェルの影響を調査するために、フォトルミネセンス減衰の寿命測定を行った。図6は、4nmのInAsコアから作られたヘテロ構造粒子と比較して、全く同じコアのフォトルミネセンス減衰を実証する。図示されているように、フォトルミネセンス寿命は、コアの場合の3nsからヘテロ構造の場合の150nsまで50倍延びた。この延びは主としてシェル物質によるコア表面のパッシベーション、及びその結果としての、フォトルミネセンスを消光する非放射プロセスの著しい減少によるものである。
【0074】
ヘテロ構造を取り囲む媒質もフォトルミネセンス減衰寿命に影響を及ぼす。図7は、3つの異なる媒質の中で4nmのInAsコアのフォトルミネセンス減衰を示す。周囲の媒質がPVB(ポリビニルブチラール)ポリマーであったとき(a)、48nsの最も速い減衰が観察された。また、CCl媒質(c)の中では、195nsの最も遅く、最も長い減衰が観察された。理論に拘束されるのを望んでいないが、2つの減衰間のこの大きな違いは、きっとヘテロ構造中の励起状態に対するPVB中のC−H振動間のカップリングから生じている。ヘテロ構造中の励起子にとって非放射減衰の根源の役割をするこのカップリングは、CClマトリックスには存在しない。したがって、フォトルミネッセンス減衰はより長い。C−H振動を示すトルエンマトリックス(b)においても、フォトルミネセンス減衰はPVBマトリックス(a)の中より長い。それは恐らく、C−H振動の異なる性質、並びに、液体トルエン及び固体PVBへのヘテロ構造のカップリング強度間の差に起因している。
【0075】
図8は、シェル成長後(フレームa)、及びシェル成長の前(フレームb)のInAsコアのトンネリング電子顕微鏡(TEM)写真、及びそれらの粒度分布を示す。コアはサイズにして3.8nmであり、シェルの追加で5.9nmまで成長する。粒度分布は、各サンプルの300を越える粒子の測定により決定された。コア及びヘテロ構造の両方の平均サイズの標準偏差は14%である。変化しない粒度分布は、この層毎の方法によるシェル成長プロセスにおける優れた動特性制御の指標である。
【0076】
XRD測定はヘテロ構造の結晶度の測定に利用された。図9は、InAs/CdSeヘテロ構造サンプル(3.8nmのInAsコア上に3層のCdSe、底部のスペクトル)のXRDスペクトル、及びInAs/CdSe/ZnSeヘテロ構造サンプル(3.8nmのInAsコア上に1層のCdSeの後に6層のZnSe、上部のスペクトル)のXRDスペクトルを示す。InAs/CdSeのスペクトルは、ピーク位置がほとんど同一のInAs及びCdSe閃亜鉛鉱の各XRDスペクトルと一致する。従って、CdSeシェル成長格子はInAsコア結晶を継続する。上部のInAs/CdSe/ZnSeのスペクトルは、InAs、CdSe及びZnSeの各閃亜鉛鉱のスペクトルの重ね合せであるように見える。それは再度、ZnSe成長格子もInAsコアの結晶性を継続することを示している。
【0077】
さらに、In BCC(体心立方)格子と一致する弱いピークも顕著である。この格子は、シェル成長プロセスが始まる前に、InAsコアの表面で高温で形成され得る。
【0078】
シェル成長のエピタキシャル性質のさらなる裏づけは、ヘテロ構造の表面を調査するX線の光電子分光法(XPS)測定から得られる。図10は、InAsコア及びInAs/CdSe/ZnSeコア/シェル/シェルヘテロ構造のXPS測定を示す。表面感度の高い技術のため、XPS信号は、表面から原子を構成する材料までの距離に依存する。InAsコアスペクトル(図10、底部)の中に、In及びAs、並びにコアが付着される表面であるAuの様々な原子レベルの信号がはっきり見える。しかしながら、シェル成長後(図10、上部のスペクトル)、この時点でシェルによってふるい分けをされたIn及びAsの原子信号は著しく減少するか、または消失する。その代りに、ZnとSeのピークは、スペクトルにおいて強く支配的となり、エピタキシャルシェル成長を証明する。
【0079】
ヘテロ構造粒子の著しく改善された特性は、量子収率における顕著な増大だけでなく改善された安定性によっても明白に例証されている。図11は、オリジナルのInAsコア(前の図のものと同じ)及びInAs/CdSe/ZnSeヘテロ構造の相対的な量子収率測定によって反映されるような安定性の比較を示す。この実験では、ナノクリスタルを含有する溶液は、レーザーへの均一な暴露を確保するために攪拌されながら、30mWの強度の473nmレーザーによって照射された。溶液からの発光は6時間にわたって測定された。ヘテロ構造と異なって、コアは迅速な減衰を示し、実際は約1時間の後に完全に劣化し、溶液から沈殿した。同じ条件の下では、ヘテロ構造ナノクリスタルは著しくよりよいパフォーマンスを示した。量子収率の最初の減少の後、発光は最初の量子収率の約60%で安定し、依然として約25%の絶対量子収率を有する。この発光は、僅かで、且つゆっくりの減衰を伴うだけで6時間も維持する。また、粒子は溶液において非常に安定しているままである。
【0080】
上記にて述べたように、本発明のヘテロ構造は様々な用途の中で使用するために製造され得る。これらのヘテロ構造を様々な用途に利用するために、固体のホストにそれらを埋込むことが必要である。十分な固体のホストはいくつかの特性を有しなければならない。(1)マトリックス内のヘテロ構造粒子の凝集を防止し、結果としてホスト内のヘテロ構造粒子のより大きな濃度(より大きなロード)を可能にするように、固体のホストはヘテロ構造の表面と化学的に適合しなければならない。(2)固体のホストは被加工性を示さなければならない。すなわち、容易に形成されるが強固でなければならない。そして、(3)光学面の用途については、ホストの光学挙動は用途にふさわしくなければならない。
【0081】
以上で述べたように、ホスト物質及びヘテロ構造の化学的な適合性はホストの主な特性のうちの1つである。ヘテロ構造の凝集を防ぐために、ホスト及び、ヘテロ構造表面をカバーする長い原子連鎖のアミン配位子の化学構造の間に化学的な類似が存在しなければならない。ヘテロ構造の表面を不動態化するために使用される配位子には主に2つのグループがある。即ち、極性と無極性の配位子である。無極性の配位子の場合には、可能な同等のホストは例えば、以下のようなもの:ポリビスフェノール(Polybisphenol)のポリマー、ポリブタジエン(Polybutadiene)のポリマー、ポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane)のポリマー、ポリエチレン(Polyethylene)のポリマー、ポリイソブチレン(Polyisobutylene)のポリマー、ポリプロピレン(Polypropylene)のポリマー、ポリスチレン(Polystyrene)のポリマー及びポリビニルのポリマーがあるが、それらに限定されない。
【0082】
極性の配位子の場合には、典型的な同等のホストは次のとおりである:ポリアクリルアミド(Ployacrylamide)のポリマー、ポリアクリル(Polyacrylic)酸のポリマー、ポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile)のポリマー、ポリアニリン(Polyaniline)のポリマー、ポリベンゾフェノン(Polybenzophenon)のポリマー、ポリ塩化ビニル(メタクリル酸メチル)のポリマー、シリコーンポリマー、及びアルミニウムポリマー。
【0083】
本発明の範囲内で使用されるポリマーホストは、好ましくは、様々なポリビニル及びフッ素化ポリマーから選択される。
【0084】
ポリビニル及びフッ素化ポリマー間の光学的な違いにより、ホストは不利な領域において互いに補うように選択されえる。例えば、ポリビニルがヘテロ構造埋め込みに化学上ふさわしく、また、複雑な処理なしで透明な茶色の光るヘテロ構造/ポリビニル物質を生成する一方、ポリビニルは、NIRスペクトルのいくつかの領域において光学上不活性である。スペクトルのそれらの部分では、フッ素で処理されたポリマーは、そのNIR領域での透明性のために、より有用である。
【0085】
ヘテロ構造の埋め込みにそれほど化学上適していないPFCB(ペルフルオロシクロブチル、Perfluorocyclobutyl)ポリマーのようなホストのために、配位子交換処理を適用する。この処理では、ヘテロ構造をカバーする配位子は、ホストに化学的に適している配位子と取替えられる。以下はポリマーマトリクスにヘテロ構造を埋込むための一例である。
【0086】
ポリビニルブチラール中へのヘテロ構造の埋め込み
400mgのポリビニルブチラール(粒子)は、トルエン(3ODまで)中に溶解された2gのヘテロ構造及び磁気撹拌機を含んだ20mlのガラス瓶に加えられた。その後、混合物は、4時間力強く攪拌された。攪拌中に、ポリマーは完全にトルエンに溶解する。次に、攪拌は止められ、溶液は乾燥するために3日間置かれた。乾燥する期間中に、トルエンは蒸発し、また、ヘテロ構造はポリマーチェーンの内部にトラップされた。製品は、粒子を含んだ透明な個別の光るポリマーであった。埋め込みプロセスの成功は次の三つの観点から見られた:(1)ナノクリスタルの存在に起因する複合材の色、(2)ナノクリスタルの吸収スペクトルを示す複合材の吸収スペクトル、及び(3)発光スペクトルが本発明のナノクリスタルの発光スペクトルであること。
【0087】
非制限的な例では、例外的な蛍光量子収率および安定性をもたらすInAs/CdSe/ZnSeの特定のコア/シェル1/シェル2構造は、800nmから1.6ミクロン超までのNIRスペクトル範囲全体をカバーする。このスペクトル範囲は電気通信アプリケーションにとって重要である。さらに、それは、生物学的な蛍光タグ付け、及び肉眼に見えない放射を要求する付加的なタグ付けのアプリケーションにとっても重要である。コア/シェル1/シェル2構造の別の非制限的な例では、InP/ZnSe/ZnSのヘテロ構造は、コアサイズによって調整可能な可視から近赤外の放射を有して製作された。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明のヘテロ構造のポテンシャルエネルギースキームを示す図である。
【図2A】図2A〜図2Cは、3.8nmのInAsコアのフォトルミネセンススペクトルの進展をシェルの厚さの関数として示す図である。特に、図2Aは、InAsの層数が(ボトムアップで)0、0.5、1、1.5、…、7へ増えるときの、フォトルミネセンスの強度を示す図である。ここでは、完全な層の番号は完全な層(カチオン及びアニオン)を表し、半層の番号(例えば0.5、1.5など)は、半層(カチオンまたはアニオン)を表す。
【図2B】Cdの半層の挿入後のフォトルミネセンススペクトルを示す図である。
【図2C】コアの最初のフォトルミネセンススペクトル対コア/シェル1/シェル2粒子の最終のフォトルミネセンススペクトルを示す図である。スペクトルは、InAs/CdSeヘテロ構造の合成中にトルエンから取り出されたアリクォートのものである。
【図3A】図3A及び図3Bは、層数に応じた量子収率の変化を示す図である。図3Aでは、丸及び実線は、3.8nmのInAsコアの量子収率を層数の関数として示している。第1の層はCdSe層である。三角及び破線は、フォトルミネセンス波長のシフトを層数の関数として示している。第1のCdSe層の成長の後にフォトルミネセンスのレッドシフトが続く。後続のZnSe層の成長の後に、このレッドシフトはブルーシフトによってその初期位置に戻される。
【図3B】丸及び実線は、図3AでのようにInAsコアの量子収率を示す。正方形及び破線は、層数対フォトルミネセンス特徴の半値全幅(FWHM)を示す。ZnSeシェル成長が継続するにつれ補償される粒度分布の増加は、1.5層の後に観察される。
【図4】2.9nmのInPコアのフォトルミネセンススペクトルの進展をシェルの厚さの関数として示す図である。成長した第1のシェルはZnSeである。また、後のシェルはZnSから成る。図において、実線は、最初のInPコアのフォトルミネセンスである。残りの曲線は、第1(ZnSe)、第2(ZnS)及び第3(ZnS)層のそれぞれ成長後のフォトルミネセンスである。
【図5】4つのヘテロ構造の、正規化された電気通信領域をカバーするフォトルミネセンス放射を実証する図である。フォトルミネセンスのピーク位置は使用されているコアのサイズによって決定される。
【図6】InAsをベースにしたコア/シェル1/シェル2粒子の時間分解蛍光測定を示す図である。トレースAは装置応答関数である。トレースBは測定された4nmのInAsコアの蛍光減衰である。トレースCは、同じコアで作られたInAs/CdSe/ZnSe製品ヘテロ構造の、測定された蛍光減衰である。ヘテロ構造の減衰は単一指数曲線(実線)に当てはまるが、コアの減衰は二重指数的である。また、減衰時間は著しくより短い(実線)。図6において、Cの黒いラインはヘテロ構造のフォトルミネセンス減衰のための指数関数的なフィットである。トレースBの黒いラインはレーザー減衰と即時の上昇との畳み込みである。フォトルミネセンス寿命は、コアの場合の3nsからヘテロ構造の場合の150nsまで50倍延びる。
【図7】様々な媒質の中でコア/シェル1/シェル2ヘテロ構造粒子の時間分解測定(図6のトレースCと同じ)を描く図である。トレースAはPVBポリマー中での測定を表し、トレースBはトルエン溶液中での測定を表し、トレースCはCCl溶液中での測定を表す。フォトルミネセンス減衰寿命はそれぞれ48ns、150ns及び195nsである。トレースAの中の実線は二重指数関数的なフィットであるが、トレースB及びCの中の実線は、単一指数関数的なフィットである。トレースBの中の、及び特にトレースAの中のより短い寿命は、ヘテロ構造内の励起状態に対する媒質中のC−H振動間のカップリングに恐らく起因する。
【図8A】3.8nmのInAsコアのTEM(トンネリング電子顕微鏡)写真及びその対応する粒度分布(左側)である。
【図8B】図8AのInAsコアを使用して合成された5.9nmのInAs/CdSe/ZnSeコア/シェル/シェルQDのTEM写真、及びその対応する粒度分布(左側)である。粒度分布は、図8Bのヘテロ構造の場合には5.6±0.77nmであり、図8Aのコアの場合には3.8±0.52nmである。
【図9】InAs/CdSeコア/シェル QD(図中の下部)及びInAs/CdSe/ZnSeコア/シェル/シェル QD(図中の上部)のX線パウダ回折スペクトルを示す図である。ラインはそれぞれ、閃亜鉛鉱InAs(実線、下部)、CdSe(破線、下部)、ZnSe(実線、上部)、及びBCC In(破線、上部)の各XRDパタンを表す。XRDパターンは、構成する半導体のXRD閃亜鉛鉱の特性の重ね合せである。
【図10】3.8nmのInAsコアのXPS調査(下部)、及び、まさにこの同じコアを使用して合成された5.9nmのInAs/CdSe/ZnSeヘテロ構造のQDのXPS調査(上部)を示す図である。ピークの割当てが示されている。In及びAsに関連するピークが洩れている、或いはヘテロ構造QDのスペクトルの中で縮小しているのに対して、ZnとSeの新しいピークが現れてシェル物質の成長を明白に示していることに気がつくであろう。
【図11】InAsコア(丸)及びヘテロ環式化合物(三角)の光化学的安定性を示す図である。サンプルはトルエンに溶解され、30mWの473nm光で照射された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア/多重シェル半導体ナノクリスタルであって、
III/V族化合物からなるコア物質及び少なくとも2つのシェル物質を含み、
第1のシェル物質が前記コア物質をコーティングし、第2のシェル物質が前記第1のシェル物質をコーティングし、後続のシェル物質が順にそれぞれ前のシェル物質をコーティングし、各シェル物質がII/VI族、III/V族、或いはIII/VI族の化合物より独立に選択され、
前記コア物質が前記第1のシェル物質と異なり、且つ、各シェル物質がその隣接するシェルのシェル物質と異なり、
前記ナノクリスタルが、タイプ−Iのバンドオフセット、及び波長が400nm〜1600nmのルミネセンスを示すコア/多重シェル半導体ナノクリスタル。
【請求項2】
(i)前記コア物質のバンドギャップが、前記第1及び後続のシェル物質のバンドギャップ未満であり、
(ii)前記第1のシェル物質のバンドギャップが、前記コア物質のバンドギャップより大きく、後続のシェル物質のバンドギャップより小さく、
(iii)前記第2或いは後続のシェル物質のバンドギャップが、前記第1或いはその前のシェル物質のバンドギャップより大きく、後続のシェル物質のバンドギャップより小さい請求項1に記載のコア/多重シェル半導体ナノクリスタル。
【請求項3】
1つのコア物質及び2〜7つのシェル物質を含む請求項1又は請求項2に記載のコア/多重シェル半導体ナノクリスタル。
【請求項4】
ドープされていないナノクリスタルである、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のコア/多重シェル半導体ナノクリスタル。
【請求項5】
コア/シェル1/シェル2半導体ナノクリスタルであって、
III/V族化合物からなるコア物質、並びに、各々独立にII/VI族、III/V族、或いはIII/VI族の化合物から選択された異なる化合物からなるシェル1物質及びシェル2物質を含み、
前記シェル1物質が前記コア物質をコーティングし、前記シェル2物質が前記第1のシェル1物質をコーティングし、
前記ナノクリスタルが、NIR分光測光器によって測定されるように波長が400nm〜1600nmのルミネセンスを示すコア/シェル1/シェル2半導体ナノクリスタル。
【請求項6】
コア/シェル1/シェル2半導体ナノクリスタルであって、
III/V族化合物からなるコア物質、並びに、各々独立にII/VI族、III/V族、或いはIII/VI族の化合物から選択された異なる化合物からなるシェル1物質及びシェル2物質を含み、
前記シェル1物質が前記コア物質をコーティングし、前記シェル2物質が前記第1のシェル1物質をコーティングし、
(i)前記コア物質のバンドギャップが、前記シェル1物質のバンドギャップ未満であり、
(ii)前記シェル1物質のバンドギャップが、前記コア物質のバンドギャップより大きく、前記シェル2物質のバンドギャップより小さいコア/シェル1/シェル2半導体ナノクリスタル。
【請求項7】
III/V族の化合物からなる前記コア物質が、InAs、InP、GaAs、GaP、GaSb、InSb、AlAs、AlP、AlSb、InGaAs、GaAsP及びInAsPから選択される請求項1〜請求項6の何れか一項に記載のコア/多重シェル半導体ナノクリスタル。
【請求項8】
前記コア物質がInAs、InP、あるいはGaAsである請求項7に記載のコア/多重シェル半導体ナノクリスタル。
【請求項9】
少なくとも2つの前記シェル物質が、II/VI族の化合物から選択される請求項1〜請求項8の何れか一項に記載のコア/多重シェル半導体ナノクリスタル。
【請求項10】
少なくとも2つの前記シェル物質が、III/V族の化合物から選択される請求項1〜請求項9の何れか一項に記載のコア/多重シェル半導体ナノクリスタル。
【請求項11】
少なくとも2つの前記シェル物質が、III/VI族の化合物から選択される請求項1〜請求項10の何れか一項に記載のコア/多重シェル半導体ナノクリスタル。
【請求項12】
前記II/VI族の化合物が、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、CdZnSe、CdSSe及びZnSSeより選択される請求項9に記載のコア/多重シェル半導体ナノクリスタル。
【請求項13】
前記III/V族の化合物が、InAs、GaAs、GaP、GaSb、InP、InSb、AlAs、AlP、AlSb、InGaAs、GaAsP、及びInAsPより選択される請求項10に記載のコア/多重シェル半導体ナノクリスタル。
【請求項14】
前記III/VI族の化合物が、InS、In、InSe、InSe、InSe、InSe、InTe、InSe、GaS、GaSe、GaSe、GaSe、GaTe、GaTe、InSe3−xTe、GaTeSe、及び(GaIn1−x)Se(ここでは、Xは0又は1である)より選択される請求項11に記載のコア/多重シェル半導体ナノクリスタル。
【請求項15】
InAs/CdSe/ZnS、InAs/CdSe/CdS、InAs/InP/ZnSe、InP/ZnSe/ZnS、InP/CdS/ZnSe、InP/CdS/ZnSe、GaAs/CdSe/ZnS、及びGaAs/CdS/ZnSより選択される、請求項1〜請求項14の何れか一項に記載のコア/多重シェル半導体ナノクリスタル。
【請求項16】
InAs/CdSe/ZnSeあるいはInP/ZnSe/ZnSである、請求項1〜請求項15の何れか一項に記載のコア/多重シェル半導体ナノクリスタル。
【請求項17】
少なくとも2つのシェルを有するコア/多重シェル半導体ナノクリスタルの製造方法であって、
(i)コアを提供するステップ、
(ii)IIIa、IIa、Va或いはVIa族のイオンのグループから選択された可溶のカチオンまたは可溶のアニオンの第1の溶液と前記コアを接触させて、前記カチオンあるいはアニオンを前記コア上で反応させるステップ、
(iii)IIIa、IIa、Va或いはVIa族のイオンのグループから選択された、前記ステップ(ii)の前記第1の可溶のカチオンあるいは可溶のアニオンの溶液の対イオンと前記コアを接触させて、前記対イオンを反応させて、コア/シェル1構造を提供するステップ、
(iv)IIIa、IIa、Va或いはVIa族のイオンのグループから選択された可溶のカチオンまたは可溶のアニオンの第2の溶液と前記コア/シェル1構造を接触させて、前記カチオンあるいはアニオンを前記コア/シェル1構造のシェル1の上で反応させるステップ、
(v)IIIa、IIa、Va或いはVIa族のイオンのグループから選択された、前記ステップ(iv)の第2の可溶のカチオンあるいは可溶のアニオンの溶液の対イオンと前記コア/シェル1構造を接触させて、且つ、反応させてコア/シェル1/シェル2構造を提供するステップ、及び、
(vi)オプション的に、前記ステップ(ii)〜前記ステップ(v)を繰り返して、より高次のコア/多重シェル半導体ナノクリスタルを形成するステップを含み、
前記コア/多重シェルが、ドープされておらず、400nm〜1600nmの波長のルミネセンスを示すコア/多重シェル半導体ナノクリスタルの製造方法。
【請求項18】
前記コア/多重シェルが、タイプ−Iのバンドオフセットを示す請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記コア/シェル1及び前記コア/シェル1/シェル2構造を分離するステップをさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の可溶のカチオン溶液が、Cd及びZnより選択される請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の可溶のアニオン溶液が、S、Se及びPより選択される請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の可溶のカチオン溶液が、Zn及びCdより選択される請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の可溶のアニオン溶液が、S及びSeより選択される請求項17に記載の方法。
【請求項24】
データ伝送光信号を増幅する広帯域の光増幅器であって、
請求項1〜請求項16の何れか一項に記載の、複数のコア/多重シェル半導体ナノクリスタル、及びポンピングを含み、
前記コア/多重シェルナノクリスタルの各々が、特定の光学バンドに対応するコア寸法を有し、且つ、光伝送媒質内の所定のポイントに位置し、
前記ポンピングが、可干渉光ソースを前記光伝送媒質へ接続し、前記光伝送媒質内で受信した前記データ伝送光信号を前記特定の光学バンド内で増幅するのに必要な光エネルギーで個々の前記ナノクリスタルを励起させる広帯域の光増幅器。
【請求項25】
請求項1〜請求項16の何れか一項に記載の、複数のコア/多重シェル半導体ナノクリスタルを含む発光ダイオード。
【請求項26】
請求項1〜請求項16の何れか一項に記載の、複数のコア/多重シェル半導体ナノクリスタルを含む生物学的なラベリング剤。
【請求項27】
請求項1〜請求項16の何れか一項に記載の、複数のコア/多重シェル半導体ナノクリスタルを含む光電デバイス。
【請求項28】
請求項1〜請求項16の何れか一項に記載の、複数のコア/多重シェル半導体ナノクリスタルを含むレーザーデバイス。
【請求項29】
請求項1〜請求項16の何れか一項に記載の、複数のコア/多重シェル半導体ナノクリスタルを含む光データ通信システム。
【請求項30】
請求項1〜請求項16の何れか一項に記載の、複数のコア/多重シェル半導体ナノクリスタルを包含するホスト物質。
【請求項31】
ポリマーである請求項30に係るホスト物質。
【請求項32】
前記ポリマーが、フッ素化ポリマー、ポリアクリルアミドのポリマー、ポリアクリル酸のポリマー、ポリアクリロニトリルのポリマー、ポリアニリンのポリマー、ポリベンゾフェノンのポリマー、ポリ塩化ビニル(メタクリル酸メチル)のポリマー、シリコーンポリマー、アルミニウムポリマー、ポリビスフェノールのポリマー、ポリブタジエンのポリマー、ポリジメチルシロキサンのポリマー、ポリエチレンのポリマー、ポリイソブチレンのポリマー、ポリプロピレンのポリマー、ポリスチレンのポリマー、及びポリビニルのポリマーより選択される請求項31に記載のホスト物質。
【請求項33】
前記ポリマーが、ポリビニル及びフッ素化ポリマーより選択される請求項32に記載のホスト物質。
【請求項34】
前記ポリマーが、ポリビニルブチラール、またはペルフルオロシクロブチルである請求項33に記載のホスト物質。
【請求項35】
400〜1600nmの波長のルミネセンスを有する、請求項1〜請求項16のいずれか一項に記載の、複数のコア/多重シェル半導体ナノクリスタル。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公表番号】特表2008−544013(P2008−544013A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516503(P2008−516503)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際出願番号】PCT/IL2006/000695
【国際公開番号】WO2006/134599
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(507410869)イッサム リサーチ デベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブライ ユニバーシティ オブ エルサレム (2)
【Fターム(参考)】