説明

LED光学素子、画像形成装置及び画像形成方法

【課題】本発明の目的は、感光体の静電潜像の結像ボケを改善し、高精細の電子写真画像を作製できるLED光学素子、画像形成装置、画像形成方法を提供することである。
【解決手段】複数のLEDを線状に基板上に配列し、かつ、光学系支持部材に支持されたLEDと該LEDからの光を収束して、結像させる結像素子を有するLED光学素子において、該結合素子がLEDからの光路上に複数のレンズを有し、少なくとも該光路上流側が棒状レンズ、下流側が凹レンズの組み合わせを有することを特徴とするLED光学素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンターの分野において用いられる電子写真方式の画像形成装置に用いられるLED(発光ダイオード)光学素子、画像形成装置及び画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の感光体への画像書込装置としてLED(発光ダイオード)アレイを用いた方法が知られている。この方法は高密度に配置されたLEDアレイからの変調光を収束性ロッドレンズアレイで感光体上に導いて結像させるもので、解像度に対応した数だけLED発光素子を一列又は千鳥型等に並べて光走査機構を構成しているため光走査系の小型化を実現することができる。
【0003】
しかし、一般的に収束性ロッドレンズアレイが使用されるLED書込ヘッド(以下、LEDヘッドという)は、ロッドレンズの焦点深度が浅いため(50〜100μm程度)、焦点位置にズレが生じると、ロッドレンズに入射してくるLEDからの像露光は、ボケて結像し、画像品質の劣化を招く。このため、LEDヘッドを搭載した画像形成装置では、LEDヘッドと感光体との間隔が基準位置からずれないようにする必要がある。例えば、ドラム状の感光体の偏心又はドラムの支持機構の芯ズレがあると、感光体上に形成される静電潜像に部分的な結像ボケが起こり、トナーで現像すると不鮮明な画像となる場合がある。このような問題に対して、工作精度上から解決を図っても機械寸法公差や組立精度の向上には限界があり、コストも増大する。
【0004】
この問題の解決方法として、特許文献1には感光体の表面変位を検知して発光手段及び結像素子の位置を変化させる方法が開示されている。また特許文献2にはLEDヘッドの両端に基準位置を設け、この基準位置と感光体との間隔を変位センサ等で測定してLEDヘッドを微動させ、LEDヘッドの位置決めを行う方法が示されている。
【0005】
又、特許文献3には、回転する感光体の一回転分の周面変位情報を変位センサで測定し、該変位情報に基づき、LEDヘッドを感光体の周面に対して進退させ、LEDヘッドを感光体の周面との距離を一定とする画像形成装置が示されている。
【特許文献1】特開昭62−250466号公報
【特許文献2】特開平04−246668号公報
【特許文献3】特開2006−187929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記引用文献等に示されたLED光等の結像位置の位置決め方法の改善では、感光体とLED光学素子間の間隙の精度を上げることの改善であり、このようなアプローチからの改善方法のみでは、ドラム状の感光体の偏心又はドラムの支持機構の芯ズレ等が原因の、感光体上の静電潜像に部分的な結像ボケ等の改善は、尚、不十分であった。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題点を解決することにあり、従来の感光体とLED光学素子間の間隙の精度の向上では、尚、解決できなかった感光体の静電潜像の結像ボケを、更に改善でき、高精細の電子写真画像を作製できるLED光学素子、画像形成装置、画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
我々は上記問題点について鋭意検討を重ねた結果、LED光学素子の収束性ロットレンズアレイのレンズ構成を少し変えるだけで、前記した従来の結像ボケが顕著に改善され、大きなコストアップを伴わないで、これら問題点を解決できることを見出し、本願発明を達成した。
【0009】
即ち、本願発明は、以下のような構成を有するLED光学素子及び該光学素子を用いた画像形成装置により達成される。
【0010】
1.複数のLEDを線状に基板上に配列し、かつ、光学系支持部材に支持されたLEDと該LEDからの光を収束して、結像させる結像素子を有するLED光学素子において、該結合素子がLEDからの光路上に複数のレンズを有し、少なくとも該光路上流側が棒状レンズ、下流側が凹レンズの組み合わせを有することを特徴とするLED光学素子。
【0011】
2.複数のLEDを線状に基板上に配列し、かつ、光学系支持部材に支持されたLEDと該LEDからの光を電子写真感光体表面に結像し、該電子写真感光体上に静電潜像を形成する結像素子が配置されたLED光学素子を有する画像形成装置において、該LED光学素子の結合素子がLEDからの光路上に複数のレンズを有し、少なくとも該光路上流側がロットレンズ、下流側が凹レンズの組み合わせを有することを特徴とする画像形成装置。
【0012】
3.前記電子写真感光体が円筒状の電子写真感光体であることを特徴とする前記2に記載の画像形成装置。
【0013】
4.前記電子写真感光体の支持体の円筒度が5〜40μmであることを特徴とする、前記3に記載の画像形成装置。
【0014】
5.前記2〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0015】
本願発明のLED光学素子及び該LED光学素子を用いた画像形成装置を用いることにより、LEDを用いた像露光の結像ボケや、LED光学素子へのトナー汚染等による画像欠陥が改善され、焦点の合った鮮明な電子写真画像を形成できる画像形成装置等が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本願発明について、詳細な説明を記載する。
【0017】
まず、本願発明の前記1に係わるLED光学素子について説明する。
【0018】
以下、LED光学素子120の構造を図1〜図3を参照して説明する。
【0019】
図1はLED光学素子120の斜視図、図2はLED(発光ダイオード)121を配設した基板123aの斜視図、図3はLED光学素子120の拡大断面図である。
【0020】
LED光学素子120は、複数のLED121と、該LEDに対応したレンズアレイから成る結像素子122とから構成される。図4ではLED光学素子120の複数のLED121と、レンズアレイから成る結像素子122は、電子写真感光体21の軸方向に直線状に配列されている。
【0021】
LED光学素子120は、図1及び図3に示すように電子写真感光体21の軸方向に配列した複数のLED121とLED駆動用IC126と温度センサ127とを配置した基板123aと、結像素子122を保持する保持部材(光学系カバー)124に取付けられてユニットとして構成され、電子写真感光体21の外方に設けられ、LED光学素子120を固定保持する光学系支持部材200に取付けている。画像形成メモリに記憶された各色の画像信号は、該メモリより順次読み出されてLED光学素子120にコネクタ129を介して電気信号として入力される。また図1には、LED121の基板123aが斜線にてそれぞれ示される接着剤128によって保持部材124に固定してある。
【0022】
LED121は、図2に示すように発光波長を350〜900nmの範囲にある線状に配列した発光ダイオードアレイである。該LED121は、例えば、パイレックス(登録商標)ガラスを用いた基板123a上に形成してある。
【0023】
本願発明に係わる結合素子122は、その構成が、LEDからの光路上に複数のレンズを有し、少なくとも該光路上流側が棒状レンズ、下流側が凹レンズの組み合わせ構造を有する。
【0024】
結合素子がこの構成を有することにより、焦点深度が深くなり、LEDアレイからの像露光が電子写真感光体表面等の焦点位置に、シャープに結像し、電子写真方式の画像形成において、画像ボケが改善された電子写真画像を得ることができる。又、複数のレンズを通過した見かけ上の焦点距離が長くなることから、電子写真感光体21の外周面とLED光学素子120の結像素子122端面との距離L0を従来のLED光学素子を用いた場合に比し、大きくすることが可能となり、結合素子(ロッドレンズアレイ)のレンズ面の汚れ(感光体上のトナー微粉体や汚染物質のレンズ面への飛散汚染)を少なくすることができる。
【0025】
図4は、本願発明のLED光学素子の1つの結合素子の構成を示した断面図である。
【0026】
図4では、基板123a上のLED121から発光された像露光の光路aの上流側に棒状レンズ122a、下流側に凹レンズ122bを配し、LEDからの入射距離L1に対し、凹レンズを透過したLED光の焦点距離L2が大きく成っており、従来のL2/L1が等倍のロッドレンズの構成に比し、焦点距離が長く成ることにより、焦点深度も深くなっている。
【0027】
本願の棒状レンズとは、従来のロットレンズのことであり、円柱ロット状で、柱の径方向外側から中心方向に屈折率を変化させた屈折率分散型のロットレンズアレイが広く市販されている。
【0028】
凹レンズとは、光軸中心近傍が、周辺部分よりも薄い一般的なものを云うが、レンズ径方向外側から中心方向に屈折率を変化させた屈折率分散型レンズであっても良い。凹レンズも、又、図5のように基盤123b上に線状に集積した一体型凹レンズアレイを用いることが好ましい。このように集積した一体型凹レンズアレイをロッドレンズアレイと組み合わせることにより、ロットレンズと凹レンズの設置精度を向上させることが可能となる。
【0029】
次ぎに、本願発明のLED光学素子を電子写真方式の画像形成装置、画像形成方法に適用したことについて説明する。
【0030】
図6に示す画像形成装置1は、デジタル方式による画像形成装置であって、画像読取り部A、画像処理部B、画像形成部C、転写紙搬送手段としての転写紙搬送部Dから構成されている。
【0031】
画像読取り部Aの上部には原稿を自動搬送する自動原稿送り手段が設けられていて、原稿載置台11上に載置された原稿は原稿搬送ローラ12によって1枚宛分離搬送され読み取り位置13aにて画像の読み取りが行われる。原稿読み取りが終了した原稿は原稿搬送ローラ12によって原稿排紙皿14上に排出される。
【0032】
一方、プラテンガラス13上に置かれた場合の原稿の画像は走査光学系を構成する照明ランプ及び第1ミラーから成る第1ミラーユニット15の速度vによる読み取り動作と、V字状に位置した第2ミラー及び第3ミラーから成る第2ミラーユニット16の同方向への速度v/2による移動によって読み取られる。
【0033】
読み取られた画像は、投影レンズ17を通してラインセンサである撮像素子CCDの受光面に結像される。撮像素子CCD上に結像されたライン状の光学像は順次電気信号(輝度信号)に光電変換されたのちA/D変換を行い、画像処理部Bにおいて濃度変換、フィルター処理などの処理が施された後、画像データは一旦メモリに記憶される。
【0034】
画像形成部Cでは、画像形成ユニットとして、像担持体であるドラム状の感光体21と、その外周に、該感光体21を帯電させる帯電手段(帯電工程)22、帯電した感光体に像露光を行う像露光手段30、現像手段(現像工程)23、転写手段(転写工程)である転写搬送ベルト装置45、前記感光体21のクリーニング装置(クリーニング工程)26及び光除電手段(光徐電工程)としてのPCL(プレチャージランプ)27が各々動作順に配置されている。また、現像手段23の下流側には感光体21上に現像されたパッチ像の反射濃度を測定する反射濃度検出手段222が設けられている。感光体21には、本発明に係わる有機感光体を使用し、図示の時計方向に駆動回転される。
【0035】
回転する感光体21へは帯電手段22による一様帯電がなされた後、像露光手段(像露光工程)30として、本願発明のLED光学素子が用いられ、画像処理部Bのメモリから呼び出された画像信号に基づいた像露光が行われる。書き込み手段である像露光手段30には、本願発明のLED光学素子が用いられ、感光体21に対して像露光が行われ、感光体21の回転(副走査)によって静電潜像が形成される。本実施の形態の一例では文字部に対して露光を行い静電潜像を形成する。
【0036】
本発明の画像形成装置においては、感光体上に静電潜像を形成するに際し、発振波長が350〜900nmの発光ダイオードを像露光光源として用いる。これらの像露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜100μmに絞り込み、有機感光体上にデジタル露光を行うことにより、200dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)以上から2500dpiの高解像度の電子写真画像をうることができる。
【0037】
前記露光ドット径とは該露光ビームの強度がピーク強度の1/e以上の領域の主走査方向にそった露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)を云う。
【0038】
感光体21上の静電潜像は現像手段23によって反転現像が行われ、感光体21の表面に可視像のトナー像が形成される。本発明の画像形成方法では、該現像手段に用いられる現像剤には重合トナーを用いることが好ましい。形状や粒度分布が均一な重合トナーを本発明に係わる有機感光体と併用することにより、より鮮鋭性が良好な電子写真画像を得ることができる。
【0039】
本発明の有機感光体上に形成された静電潜像は現像によりトナー像として顕像化される。現像に用いられるトナーは、粉砕トナーでも、重合トナーでもよいが、本発明に係わるトナーとしては、安定した粒度分布を得られる観点から、重合法で作製できる重合トナーが好ましい。
【0040】
重合トナーとはトナー用バインダーの樹脂の生成とトナー形状がバインダー樹脂の原料モノマーの重合と、必要によりその後の化学的処理により形成されるトナーを意味する。より具体的には懸濁重合、乳化重合等の重合反応と、必要によりその後に行われる粒子同士の融着工程を経て形成されるトナーを意味する。
【0041】
尚、トナーの体積平均粒径、即ち、50%体積粒径(Dv50)は2〜9μm、より好ましくは3〜7μmであることが望ましい。このような粒径の小さなトナーは、電子写真画像の高精細画像を形成する上で、有利であるが、一方、電子写真感光体上周辺に、トナーが飛散しやすく、LED光学素子の結合素子(ロットレンズアレイ)を汚染しやすい。しかしながら、本願発明のLED光学素子を用いることにより、感光体とLED光学素子の間隙を大きくすることができ、このようなトナー飛散によるレンズ表面の汚染、その結果としての電子写真の画像欠陥を小さくすることができる。
【0042】
尚、上記50%体積粒径(Dv50)は、コールターマルチサイザーを用い、アパーチャー径=100μmのアパーチャーを用いて2.0〜40μmの範囲における粒径分布を用から測定されたものを示す。
【0043】
本発明に係わるトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよい。
【0044】
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものがあげられ、いずれも使用することができる。
【0045】
又、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
【0046】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0047】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0048】
転写紙搬送部Dでは、画像形成ユニットの下方に異なるサイズの転写紙Pが収納された転写紙収納手段としての給紙ユニット41(A)、41(B)、41(C)が設けられ、また側方には手差し給紙を行う手差し給紙ユニット42が設けられていて、それらの何れかから選択された転写紙Pは案内ローラ43によって搬送路40に沿って給紙され、給紙される転写紙Pの傾きと偏りの修正を行う対の給紙レジストローラ44によって転写紙Pは一時停止を行ったのち再給紙が行われ、搬送路40、転写前ローラ43a、給紙経路46及び進入ガイド板47に案内され、感光体21上のトナー画像が転写位置Boにおいて転写極24及び分離極25によって転写搬送ベルト装置45の転写搬送ベルト454に載置搬送されながら転写紙Pに転写され、該転写紙Pは感光体21面より分離し、転写搬送ベルト装置45により定着手段50に搬送される。
【0049】
定着手段50は定着ローラ51と加圧ローラ52とを有しており、転写紙Pを定着ローラ51と加圧ローラ52との間を通過させることにより、加熱、加圧によってトナーを定着させる。トナー画像の定着を終えた転写紙Pは排紙トレイ64上に排出される。
【0050】
以上は転写紙の片側への画像形成を行う状態を説明したものであるが、両面複写の場合は排紙切換部材170が切り替わり、転写紙案内部177が開放され、転写紙Pは破線矢印の方向に搬送される。
【0051】
更に、搬送機構178により転写紙Pは下方に搬送され、転写紙反転部179によりスイッチバックさせられ、転写紙Pの後端部は先端部となって両面複写用給紙ユニット130内に搬送される。
【0052】
転写紙Pは両面複写用給紙ユニット130に設けられた搬送ガイド131を給紙方向に移動し、給紙ローラ132で転写紙Pを再給紙し、転写紙Pを搬送路40に案内する。
【0053】
再び、上述したように感光体21方向に転写紙Pを搬送し、転写紙Pの裏面にトナー画像を転写し、定着手段50で定着した後、排紙トレイ64に排紙する。
【0054】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0055】
本願発明の画像形成装置は、前記したLED光学素子を電子写真感光体の像露光に用いるものであるが、該LED光学素子の像露光結像の改良効果を上げるには、電子写真感光体の結像面のブレを小さく抑えることがより好ましい。
【0056】
この電子写真感光体の結像面のブレを改善するためには、即ち、LED光学素子のレンズ面から電子写真感光体の表面迄の間隙の距離を一定に保つためには、円筒状の電子写真感光体では、円筒型状の幾何学的なゆがみを小さくすることが必要である。このことより、本願発明に係わる円筒状電子写真感光体では、該電子写真感光体の円筒状支持体の円筒度を5〜40μmの範囲内に抑えることが好ましい。
【0057】
円筒度をこの範囲にするためには、感光体支持体の金属の寸法精度を向上させる必要があり、例えば、アルミ支持体の場合には、アルミの切削管による高精度缶であることが好ましく、更に切削前のアルミ引き抜き管の肉厚の均一性を上げ、真円度、真直度を上げる必要がある。
【0058】
本発明の円筒度とは、JIS規格(B0621−1984)による。即ち、円筒基体を2つの同軸の幾何学的円筒で挟んだとき、同軸2円筒の間隔が最小となる位置の半径の差で表し、本発明では該半径の差をμmで表す。
【0059】
本発明の円筒状基体の円筒度は5〜40μm、好ましくは7〜30μm、更には7〜27μmが良い。5μmより小さくすると、収率が悪くなりコスト的に不利となる。
【0060】
又、本発明の電子写真感光体の円筒度も上記と同じ範囲内にあることが好ましい。但し、電子写真感光体の円筒度は、実質的に画像形成を行う領域の円筒度を意味し、画像形成を行わない両端の感光層膜厚の変動領域は除く。
【0061】
本発明の円筒度の測定方法は円筒状基体の両端10mmの2点、中心部、両端と中心部の間を3等分した点の4点、計7点の真円度を測定し求める。測定器は非接触万能ロール径測定機((株)ミツトヨ製)を用いた。
【0062】
本願発明に係わる円筒度は、円筒状基体を切削加工することにより調整することができる。例えば、円筒状基体を回転させながら、切削バイトを当接し、送り移動し、表面の円筒度を調整加工する。
【0063】
本願発明では、円筒度が5〜40μmの円筒状基体上に、有機或いは無機の感光層を形成した電子写真感光体を用いることにより、より好ましい効果をうることができる。
【実施例】
【0064】
本願発明の効果を確認するために、以下に示す実施例に係る画像形成装置(以下、単に実施例という)と比較例に係る画像形成装置(以下、単に比較例という)との比較実験を行った。
【0065】
実施例1
本願発明のLED光学素子は、図3に示されるように、各LED121の光は、結合素子122を介して感光体21の受光面21B上に集光される。このとき、結合素子122の構成を図4のように棒状レンズ(入射距離L1=2mm)と凹レンズの対で構成し、L2/L1の比が2.0となるように構成する。このようなLED光学素子(63μm間隔でLEDを配置した300mm幅のLEDアレイとレンズアレイを有するLED光学素子)を画像形成装置(bizhub C350改造機)の露光装置として搭載した。感光体には外径30mmφ、長さ352mm、円筒度28μmの円筒状基体の上に、膜厚25μmの均一な有機感光層が形成されているものを用い、現像剤にはトナーの50%体積粒径(Dv50)が6.2μmのトナーを用いた二成分現像剤を用いた。その結果として、焦点深度が深くなり、理想の像面位置から光軸方向(矢印Z方向)に受光面21Bがずれても画像濃度むらが発生しにくくなる。又、L2/L1の比を2.0として、結合素子122と受光面21Bの距離L0(ほぼ焦点距離L2に等しい)を従来のLEDロットレンズアレイに比し、2倍に長くすることができ、感光体表面からのレンズ汚染を減少することができた。
【0066】
実施例2〜8
凹レンズを変え、L2/L1が表1に示すように変化させ、各種円筒度の異なる感光体で画像出しを実施した時の、画像を同様に評価した。結果を表1に示す。
【0067】
実施例9
凹レンズの形状を図7のようにし、6個の光源の凹レンズを一体成型した部材を用いた以外は、実施例1と同様にして画像だしを行った。その結果を表1に示す。
【0068】
比較例1
実施例1の結像素子122から凹レンズを取り外した構成にした以外は実施例1と同様にして画像だしを行った。
【0069】
比較例2
実施例8の結像素子122から凹レンズを取り外した構成にした以外は実施例8と同様にして画像だしを行った。
【0070】
評価方法
ボケ評価
画像のボケ評価方法は、1ドットON−2ドットOFFのハーフトーンA4画像を、縦5等分割、横5等分割の25分割画面して、各1区画内の最大濃度と最小濃度を測定し、各区画の最大濃度25データの平均と、最小濃度25データの平均を測定した。
【0071】
ドットのにじみが部分的に発生すると、その部分の画像濃度の画像は周辺に比べ、高くなったり、低くなったりして、均一な濃度が得られなくなる。
【0072】
平均値は、最大と最小濃度差が0.2以下である必要があり(〇)、0.1以下であることが好ましい(◎)。これ0.2より差が大きいと、部分的な画像むらが一般ユーザーにも認識可能であり、画像品位品質が著しく低下する(×)。
【0073】
尚、上記濃度測定は、マクベス社製RD−918を使用し反射濃度で測定した。該反射濃度は相対濃度(印刷していないA4紙の濃度を0.000とする)で評価した。
【0074】
レンズ汚れ
印字濃度5%のテスト画像1万枚を、30℃、85%RH環境で実写したのち、光学系をはずし、波長500nmでのレンズの透過率を測定した。本評価で95%以上であれば、実用上時の実写条件で、ほぼ問題ないレベルで使用可能であるが、機種の使用環境によっては98%以上であることが好ましい。
【0075】
透過率(T%):98%≦T ○
95%≦T<98% △
T<95% ×
上記評価結果を下記表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
表1から明らかなように、実施例は、いずれも、ピントずれによる画像ボケが発生せず、均一で良好な画層が得られたのに対し、比較例は、部分的なボケが発生し、画像の均一性が得られなかった。
【0078】
また、トナーの粒子径(Dv50)が小さい場合には、特にトナー飛散に影響を受けやすく、本願構成の光学系を用いる事により、トナー飛散によるレンズ汚れの画質低下が抑制される事が予想される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】露光光学系の斜視図。
【図2】発光素子を配設した基板の斜視図。
【図3】露光光学系の拡大断面図。
【図4】本願発明のLED光学素子の1つの結合素子の構成を示した断面図である。
【図5】一体型凹レンズアレイの図である。
【図6】本発明の画像形成装置の機能が組み込まれた概略図である。
【符号の説明】
【0080】
21 感光体ドラム(像形成体)
21A 基体
120 LED光学素子
121 発光素子(発光光源、ライン状発光手段、LEDアレイ)
122 結像素子(屈折率分布型レンズアレイ)
123a、123b 基板
124 保持部材(光学系カバー)
125 位置決めスペーサ
126 駆動用IC
127 温度センサ
128 接着剤
129 コネクタ
200 光学系支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDを線状に基板上に配列し、かつ、光学系支持部材に支持されたLEDと該LEDからの光を収束して、結像させる結像素子を有するLED光学素子において、該結合素子がLEDからの光路上に複数のレンズを有し、少なくとも該光路上流側が棒状レンズ、下流側が凹レンズの組み合わせを有することを特徴とするLED光学素子。
【請求項2】
複数のLEDを線状に基板上に配列し、かつ、光学系支持部材に支持されたLEDと該LEDからの光を電子写真感光体表面に結像し、該電子写真感光体上に静電潜像を形成する結像素子が配置されたLED光学素子を有する画像形成装置において、該LED光学素子の結合素子がLEDからの光路上に複数のレンズを有し、少なくとも該光路上流側がロットレンズ、下流側が凹レンズの組み合わせを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記電子写真感光体が円筒状の電子写真感光体であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記電子写真感光体の支持体の円筒度が5〜40μmであることを特徴とする、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−91909(P2010−91909A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263624(P2008−263624)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】