説明

LED加工用シート

【課題】接着剤の量や形状の制御が容易で歩留まりを向上でき、さらに工程全体のタクトタイムを短くできる、LED加工用シートを提供する。
【解決手段】基材12a上に、粘着剤層12bと複数の接着剤層13とがこの順に形成されたLED加工用シート10であって、接着剤層13は、当該接着剤層13上に設けられるチップ2のサイズに対応した大きさで、複数の接着剤層13が、粘着剤層12b上に非連続に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDの生産工程において使用されるLED加工用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイや照明機器の光源として、従来の蛍光灯などと比較して省電力、長寿命である発光ダイオード(以下、LEDと言う)の需要が急増している。LEDの製造工程では、サファイアウエハをチップ単位に切断分離(ブレーキング)する工程、分離されたチップを発光などの品質ごとに分別(ソート)する工程、ソートしたチップをピックアップし、リードフレームやパッケージ基板等に接着するダイボンディング(マウント)工程が実施される。
【0003】
このダイボンディング工程時に使用される接着剤としては、ペースト状の接着剤が用いられ、ディスペンサを用い、チップサイズに合った大きさでひとつずつリードフレームや基板上へ塗布(またはスタンピング)を行う(例えば、特許文献1参照)。しかし、LEDに用いられるチップは、一辺が3mm以下とサイズがかなり小さく、場合によっては一辺が1mm以下ということも多々ある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−235558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、基板上に塗布するペーストの面積は極小、量は極少となり、液状であるペーストでは、量や形状の制御が大変難しくなり、チップからのはみ出しなどにより、装置上での認識不良やダイボンディング後の品質不良などにより、歩留まりが悪化する。
【0006】
また、ダイボンディング工程の直前に、接着剤ペーストをディスペンスし検査するために、チップのピックアップやダイボンディングより時間がかかり、工程全体としてタクトタイムが長くなってしまう。
【0007】
そこで、本発明の目的は、接着剤の量や形状の制御が容易で歩留まりを向上でき、さらに工程全体のタクトタイムを短くできる、LED加工用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
基材上に、粘着剤層と複数の接着剤層とがこの順に形成されたLED加工用シートであって、
前記接着剤層は、当該接着剤層上に設けられるチップのサイズに対応した大きさで、
複数の前記接着剤層が、前記粘着剤層上に非連続に形成されていることを特徴とするLED加工用シートが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基材上に、粘着剤層と複数の接着剤層とがこの順に形成されたLED加工用シートであって、接着剤層は、当該接着剤層上に設けられるチップのサイズに対応した大きさで、複数の接着剤層が、粘着剤層上に非連続に形成されているので、LED製造工程において、各接着剤層上にチップをそれぞれ貼り合せ、その後粘着剤層と接着剤層の間で剥離させることによってチップに接着剤を容易に設けることができる。つまり、従来のようにサイズの小さなチップ毎に随時、接着剤ペーストをディスペンスして塗布する必要がなく、粘着剤層上に予め複数の接着剤層を設けているので、接着剤の量や形状の制御が容易で、チップに接着剤を安定して供給することができる。その結果、品質不良などによる歩留まり悪化を抑制し、工程のタクトタイムを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るLED加工用シートを示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るLED加工用シートにチップを貼り合せた後の状態を示す平面図である。
【図3】図2における断面図である。
【図4】ピックアップ工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るLED加工用シートを示す断面図、図2は、LED加工用シートにチップを貼り合せた後の状態を示す平面図、図3は、図2における断面図、図4は、ピックアップ工程を説明するための図である。
図1に示すように、本発明の実施形態に係るLED加工用シート10は、フィルム状の基材フィルム12aと、基材フィルム12a上に形成された粘着剤層12bと、を有する粘着フィルム12と、この粘着フィルム12上に積層された複数の接着剤層13と、を備える。このように、LED加工用シート10では、基材フィルム12aと粘着剤層12bと接着剤層13とがこの順に形成されている。
【0012】
図1においては、接着剤層13を保護するため、剥離ライナー11がLED加工用シート10に設けられている様子が示されている。
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るLED加工用シート10の各構成要素について詳細に説明する。
(接着剤層)
接着剤層13は、個片化されたウエハ(チップ)が貼り合わされた後、チップ2をピックアップする際に、粘着フィルム12から剥離してチップ2に付着し、チップ2を基板やリードフレームに固定する際の接着剤として使用されるものである。従って、接着剤層13は、ピックアップ工程において、個片化されたチップ2に付着したままの状態で、粘着フィルム12から剥離することができる剥離性を有する。さらに、ダイボンディング工程において、チップ2を基板やリードフレームに接着固定するために、十分な接着信頼性を有するものである。
【0014】
接着剤層13は、接着剤を予めチップ2のサイズに対応した大きさで、粘着剤層12b上に形成したものである。そして、このような接着剤層13が、粘着剤層12b上に非連続に複数配列されている。
また、接着剤層13の粘着剤層12bと接触する側の面積と、チップ2と接触する側の面積とが異なるように形成されている。特に、接着剤層13の粘着剤層12bと接触する側の面積を、チップ2と接触する側の面積よりも小さくすることが好ましい。
また、信頼性確保や工程、歩留まり改善を考慮し、接着剤層13の、チップ2と接触する側の面積がチップ2の面積の0.9〜1.1倍であることが好ましい。具体的には、接着剤層13の、チップ2と接触する側の面積が9mm以下であることが好ましい。また、互いに隣接する接着剤層13のピッチ距離としては、50μm以上であることが好ましい。
【0015】
このような接着剤層13の形状は、例えば、フォトリソグラフィや各種印刷法を適宜用いることにより作製することができる。
【0016】
この接着剤層13は、例えば、接着剤に使用される公知のポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、メラミン樹脂等やその混合物を使用することができる。また、チップやリードフレームに対する接着力を強化するために、シランカップリング剤もしくはチタンカップリング剤を添加剤として前記材料やその混合物に加えてもよい。
しかしながら、LEDという製品形態の特徴から、光透過性、耐熱性、耐候性が求められ、これらの特性を考慮すると、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0017】
(粘着フィルム)
粘着フィルム12は、接着剤13が付いたチップ2が搬送中などに剥離しないよう十分な粘着力を有し、搬送後にチップ2をピックアップする際には容易に接着剤層13から剥離できるよう低い粘着力を有するものである。本発明の実施形態において、粘着フィルム12は、図1に示すように、基材フィルム12aに粘着剤層12bを設けたものを使用した。
【0018】
粘着フィルム12のフィルム状の基材フィルム12aとしては、従来公知のものであれば特に制限することなく使用することができる。粘着剤層12bとして、エネルギー硬化性の材料、特に放射線硬化性の材料を使用する場合は、放射線透過性を有するものが好ましい。
【0019】
例えば、基材フィルム12aの材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのα−オレフィンの単独重合体または共重合体あるいはこれらの混合物、ポリウレタン、スチレン−エチレン−ブテン共重合体もしくはペンテン系共重合体、ポリアミド−ポリオール共重合体等の熱可塑性エラストマー、およびこれらの混合物を列挙することができる。また、基材フィルム12aはこれらの群から選ばれる2種以上の材料が混合されたものでもよく、これらが単層又は複層化されたものでもよい。基材フィルム12aの厚さは、特に限定されるものではなく、適宜に設定してよいが、50〜200μmが好ましい。
【0020】
粘着剤層12bの樹脂については、接着剤層13に合わせ、適宜、従来公知の樹脂を用いることが出来る。特に、本発明の実施形態においては、紫外線などの放射線を粘着フィルム12に照射することにより、粘着剤層12bを硬化させ、粘着剤層12bを接着剤層13から剥離しやすくしていることから、粘着剤層12bの樹脂には、粘着剤に使用される公知の塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、付加反応型オルガノポリシロキサン系樹脂、シリコーンアクリレート樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリイソプレンやスチレン・ブタジエン共重合体やその水素添加物等の各種エラストマー等やその混合物に、放射線重合性化合物を適宜配合して粘着剤を調製することが好ましい。また、各種界面活性剤や表面平滑化剤を加えてもよい。粘着剤層12bの厚さは特に限定されるものではなく適宜に設定してよいが、5〜30μmが好ましい。
【0021】
上記放射線重合性化合物は、例えば光照射によって三次元網状化しうる分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分子量化合物や、光重合性炭素−炭素二重結合基を置換基に持つポリマーやオリゴマーが用いられる。具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートや、オリゴエステルアクリレート等、シリコーンアクリレート等、アクリル酸や各種アクリル酸エステル類の共重合体等が適用可能である。
【0022】
また、上記のようなアクリレート系化合物のほかに、ウレタンアクリレート系オリゴマーを用いることもできる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ポリエステル型またはポリエーテル型などのポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアナートなど)を反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有するアクリレートあるいはメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなど)を反応させて得られる。なお、粘着剤層12bには、上記の樹脂から選ばれる2種以上が混合されたものでもよい。
【0023】
なお、粘着剤層12bの樹脂には、放射線を粘着フィルム12に照射して粘着剤層12bを硬化させる放射線重合性化合物の他、光重合開始剤、硬化剤等を適宜配合して粘着剤層12bを調製することもできる。
【0024】
光重合開始剤を使用する場合、例えばイソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等を使用することができる。
【0025】
(LED加工用シートの使用方法)
LEDの製造工程の中で、LED加工用シート10は、以下のように使用される。
図3においては、LED加工用シート10に、チップ2が貼り合わされた様子が示されている。まず、別途個片化したチップ2をダイボンダーなどを用い、図3に示すように、LED加工用テープ10の各接着剤層13上に、チップ2を貼り合わせる。このとき、チップ2はその色や輝度ごとにソートされ、LED加工用シート10に貼り合わされる。
【0026】
そして、搬送工程などを経た後、図4に示すように、LED加工用シート10をリングフレーム20などに貼り付ける。その後、粘着フィルム12をエキスパンドした状態を保ったままで、チップ2をピックアップするピックアップ工程を実施する。具体的には、粘着フィルム12の下面側からチップ2をピン31によって突き上げるとともに、粘着フィルム12の上面側から吸着冶具32でチップ2を吸着することで、個片化されたチップ2を接着剤層13とともにピックアップする。
【0027】
そして、ピックアップ工程を実施した後、ダイボンディング工程を実施する。具体的には、ピックアップ工程でチップ2とともにピックアップされた接着剤層13により、チップ2をリードフレームやパッケージ基板等に接着する。
【0028】
このとき、粘着フィルム12と接着剤層13との剥離力が0.05〜1.5N/25mmの範囲であることが望ましい。0.05N/25mm以下であると搬送工程中に、粘着剤層12bと接着剤層13の間で剥離して、チップ2が脱落しやすくなり、1.5N/25mm以上であると、粘着剤層12bと接着剤層13の密着力が大きすぎ、ピックアップできる条件の自由度が狭まる。
このような範囲の剥離力にするためには、例えば、粘着剤層12bを放射線硬化させるなどし、反応性を落とすことで可能となる。
【0029】
以上のように、本実施形態によれば、基材12a上に、粘着剤層12bと複数の接着剤層13とがこの順に形成されたLED加工用シート10であって、接着剤層13は、当該接着剤層13上に設けられるチップ2のサイズに対応した大きさで、複数の接着剤層13が、粘着剤層12b上に非連続に形成されているので、LED製造工程において、各接着剤層13上にチップ2をそれぞれ貼り合せ、粘着剤層からピックアップすることによってチップ2に接着剤を容易に設けることができる。つまり、従来のようにサイズの小さなチップ毎に随時、接着剤を塗布する必要がなく、粘着剤層12b上に予め複数の接着剤層13を設けているので、接着剤の量や形状の制御が容易で、チップ2に接着剤を安定して供給することができる。その結果、品質不良などによる歩留まり悪化を抑制し、工程のタクトタイムを短縮することができる。
【実施例】
【0030】
次に、本発明の実施例について説明する。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[基材フィルム]
基材フィルム1Aとして、ポリエチレン−テレフタレートにより作製された厚さ50μmのフィルム状の基材フィルムを使用した。
基材フィルム1Bとして、アイオノマー樹脂共重合体により作製された厚さ100μmのフィルム状の基材フィルムを使用した。なお、基材フィルム1A,1Bの材料及び厚さを下記表1に示した。
【表1】

【0031】
[粘着剤層組成物の調製]
以下のようにして粘着剤層組成物2A〜2Dを調製した。尚、粘着剤組成物2A〜2Dの組成を下記表2に示した。表2の単位は質量部である。
(粘着剤組成物2A)
粘着剤層組成物2Aは、放射線硬化性アクリル系粘着剤である。
表2に示すように、アクリル樹脂A100質量部に対して、硬化剤2質量部を加え、光重合開始剤2質量部を混合して粘着剤組成物2Aを調製した。尚、アクリル樹脂Aは、n−オクチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレートからなり、質量平均分子量50万を有する共重合体化合物である。また、硬化剤としてポリイソシアネート化合物コロネートL(日本ポリウレタン株式会社製、商品名)を、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバジャパン社製、商品名)を用いた。
【0032】
(粘着剤組成物2B)
粘着剤層組成物2Bは、放射線硬化性アクリル系粘着剤である。
表2に示すように、アクリル樹脂B100質量部に対して、硬化剤を2質量部、光重合開始剤を2質量部、混合して粘着剤組成物2Bを調製した。尚、アクリル樹脂Bは、n−ラウリルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレートからなり、質量平均分子量70万を有する共重合体化合物である。また、硬化剤としてポリイソシアネート化合物コロネートL(日本ポリウレタン株式会社製、商品名)を、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバジャパン社製、商品名)を用いた。
【0033】
(粘着剤組成物2C)
粘着剤層組成物2Cは、放射線硬化性アクリル系粘着剤である。
表2に示すように、アクリル樹脂B100質量部に対して、硬化剤を6質量部、光重合開始剤を2質量部、混合して粘着剤組成物2Cを調製した。尚、アクリル樹脂Bは、n−ラウリルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレートからなり、質量平均分子量70万を有する共重合体化合物である。また、硬化剤としてポリイソシアネート化合物コロネートL(日本ポリウレタン株式会社製、商品名)を、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバジャパン社製、商品名)を用いた。
【0034】
(粘着剤組成物2D)
粘着剤層組成物2Dは、放射線非硬化性アクリル系粘着剤である。
表2に示すように、アクリル樹脂C100質量部に対して、硬化剤を2質量部、混合して粘着剤組成物2Dを調製した。尚、アクリル樹脂Cは、n−ラウリルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートからなり、質量平均分子量40万を有する共重合体化合物である。また、硬化剤としてポリイソシアネート化合物コロネートL(日本ポリウレタン株式会社製、商品名)を用いた。
【表2】

【0035】
[接着剤層組成物の調製]
以下のようにして、接着剤層組成物3A〜3Cを調製した。尚、接着剤組成物3A〜3Cの組成を下記表3に示した。表3の単位は質量部である。
(接着剤層組成物3A)
接着剤層組成物3Aは、エポキシーアクリル系の接着剤組成物である。
表3に示すように、エポキシ樹脂55質量部、フェノール樹脂45質量部、シランカップリング剤(1)1.7質量部、シランカップリング剤(2)3.2質量部、フィラー32質量部からなる組成物に、シクロヘキサノンを60質量部加えて攪拌混合し、更にビーズミルを用いて90分混練した。これにグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート3重量%を含むアクリルゴムHTR−860P−3(ナガセケムテックス(株)製商品名、重量平均分子量80万)を280質量部、及び硬化促進剤を0.5質量部加え、攪拌混合し、真空脱気し、接着剤層組成物3Aを得た。
尚、エポキシ樹脂としてYDCN−703(東都化成(株)製商品名、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量210、分子量1200、軟化点80℃)を用い、フェノール樹脂としてミレックスXLC−LL(三井化学(株)製商品名、下記式(1)で表されるフェノール樹脂、水酸基当量175、吸水率1.8%、350℃における加熱重量減少率4%)を用いた。また、シランカップリング剤(1)としてNUC A−189(日本ユニカー(株)製商品名、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)を用い、シランカップリング剤(2)としてNUC A−1160(日本ユニカー(株)製商品名、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン)を用いた。また、フィラーとしてアエロジルR972(シリカ表面にジメチルジクロロシランを被覆し、400℃の反応器中で加水分解させた、メチル基などの有機基を表面に有するフィラー、日本アエロジル(株)製商品名、シリカ、平均粒径0.016μm)を用いた。また、硬化促進剤としてキュアゾール2PZ−CN(四国化成(株)製商品名、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール)を用いた。
【化1】

【0036】
(接着剤層組成物3B、3C)
接着剤層組成物3B、3Cは、シリコーン系の接着剤組成物である。接着剤層組成物3Bは、KER−3000−M2(信越化学工業社製、商品名)を使用し、接着剤組成物3Cは、DA6503(東レダウコーニング社製、商品名)を使用した。
【表3】

【0037】
[LED加工用シートの作製]
(実施例1)
基材フィルム1A上に粘着剤層組成物2Aの乾燥後の厚さが10μmになるように粘着剤層組成物2Aを塗工し、120℃で3分間乾燥させて粘着フィルムを作製した。
次いで、接着剤組成物3Aを、離型処理したポリエチレン‐テレフタレート(PET)フィルムよりなる剥離ライナー上に、スクリーン印刷方式により所定の版(メッシュ数250、線径40μm、紗厚50μm)を用いて印刷し、140℃で5分間加熱乾燥して、膜厚が30μmのBステージ状態の塗膜を形成し、接着フィルムを作製した。
このとき、各接着剤層のサイズが1mm、互いに隣接する接着剤層のピッチ距離が1mmであった。
そして、粘着フィルムに放射線を照射したのち、粘着フィルムの粘着剤層に接着フィルムの接着剤層を貼り合わせた。最後に接着フィルムのPETフィルム(剥離ライナー)を接着剤層から剥離し、下記表4に示す実施例1のLED加工用シートを作製した。このとき、接着剤層の、チップに接触する側の面積は1mm、粘着フィルムに接触する側の面積は、0.92mmであった。
【0038】
(実施例2)
実施例2のLED加工用シートは、下記表4に示すように、基材フィルム1A、粘着剤層組成物2B、接着剤層組成物3Bを用い、実施例1のLED加工用シートと同様の方法で、基材フィルム、粘着剤層、接着剤層のそれぞれの厚さが50μm、10μm、30μmとなるように、この順に積層して作製した。
【0039】
(実施例3)
実施例3に係るLED加工用シートは、下記表4に示すように、基材フィルム1A、粘着剤層組成物2C、接着剤層組成物3Bを用い、実施例1のLED加工用シートと同様の方法で基材フィルム、粘着剤層、接着剤層のそれぞれの厚さが50μm、10μm、30μmとなるように、この順に積層して作製した。
【0040】
(実施例4)
実施例4に係るLED加工用シートは、下記表4に示すように、基材フィルム1A、粘着剤層組成物2B、接着剤層組成物3Cを用い、実施例1のLED加工用シートと同様の方法で基材フィルム、粘着剤層、接着剤層のそれぞれの厚さが50μm、10μm、30μmとなるように、この順に積層して作製した。
【0041】
(実施例5)
実施例4に係るLED加工用シートは、下記表4に示すように、基材フィルム1B、粘着剤層組成物2B、接着剤層組成物3Bを用い、実施例1のLED加工用シートと同様の方法で基材フィルム、粘着剤層、接着剤層のそれぞれの厚さが100μm、10μm、30μmとなるように、この順に積層して作製した。
【0042】
(実施例6)
実施例6に係るLED加工用シートは、下記表4に示すように、基材フィルム1A、粘着剤層組成物2B、接着剤層組成物3Cを用いた。また、実施例6のLED加工用シートは、剥離ライナーを使用せずに、放射線を照射した粘着フィルム上に接着剤層を直接印刷して作製した。それ以外は、実施例1のLED加工用シートと同様の方法で基材フィルム、粘着剤層、接着剤層のそれぞれの厚さが50μm、10μm、30μmとなるように、この順に積層して作製した。接着剤層のチップに接触する側の面積は0.92mm、粘着フィルムに接触する側の面積は、1.00mmであった。
【0043】
(実施例7)
実施例7に係るLED加工用シート10は、下記表4に示すように、基材フィルム1A、粘着剤層組成物2D、接着剤層組成物3Bを用い、実施例1のLED加工用シートと同様の方法で基材フィルム、粘着剤層、接着剤層のそれぞれの厚さが50μm、10μm、30μmとなるように、この順に積層して作製した。
【0044】
(比較例1)
比較例1に係るLED加工用シートは、下記表4に示すように、基材フィルム1A、粘着剤層組成物の変わりに基材フィルム1Aに離型処理を行い、接着剤層組成物3Bを用い、実施例1のLED加工用シートと同様の方法で基材フィルム、接着剤層のそれぞれの厚さが50μm、30μmとなるように、この順に積層して作製した。
【0045】
[評価]
(粘着剤層/接着剤層間の剥離力の測定)
実施例1〜7に係る各LED加工用シート、並びに、比較例1に係る各LED加工用シートにおける粘着剤層/接着剤層間の剥離力の測定は、粘着フィルムと接着剤層との間の剥離力を測定することにより求めた。ただし、このとき接着剤層は、非連続の配列状態ではなく、同じ条件で同じ厚みで連続的に塗工した接着剤層を用いた。
測定は、25mm幅あたりの応力をT字方向に速度300mm/minで剥離したときに必要とされる応力値を測定し、単位は[N/25mm]である。評価結果を下記表4に示した。
【0046】
(ピックアップ試験)
実施例1〜7に係る各LED加工用シート、並びに、比較例1に係る各LED加工用シートにおけるピックアップ試験は、1mm□のチップを貼り付けたLED加工用シートをピックアップすることにより、その可否を○×で示した。
条件1としては、ニードル1ピン突き上げ、ニードル径700μm、突き上げ速度3000μm/s、ピンハイト1000μmである。条件2は、条件1よりも厳しい(タクトタイムの短い)ピックアップ条件であり、ニードル1ピン突き上げ、ニードル径350μm、突き上げ速度15000μm/s、ピンハイト500μmである。評価結果を下記表4に示した。
【0047】
(チップの脱落)
上記ピックアップ後の、搬送中におけるチップの脱落の有無について、下記表4に示した。
【0048】
【表4】

表4の結果より、実施例1は、剥離力が0.1N/25mmであり、条件1、2ともにピックアップも可能であり良好であった。
実施例2は、剥離力が0.2N/25mmであり、条件1、2ともにピックアップも可能であり良好であった。
実施例3は、剥離力が0.08N/25mmであり、条件1、2ともにピックアップも可能であり良好であった。
実施例4は、剥離力が1.3N/25mmであり、条件1、2ともにピックアップも可能であり良好であった。
実施例5は、剥離力が0.3N/25mmであり、条件1、2ともにピックアップも可能であり良好であった。
実施例6は、剥離力が1.3N/25mmであり、条件1ではピックアップが可能であったが、条件2では、ピックアップできなかった。これは、粘着剤層側の接着剤の面積がチップ側の接着剤層の面積よりも大きいため、剥離のきっかけが取り難くなったためである。
実施例7は、剥離力が2.1N/25mmであり、条件1ではピックアップが可能であったが、条件2では、ピックアップできなかった。これは、粘着剤層と接着剤層との、剥離力が高いためにピックアップし難くなったためである。
比較例1は、剥離力が0.04N/25mmであり、ピックアップは可能であったが、搬送中にチップが脱落してしまった。
【0049】
したがって、実施例1〜7の本実施形態に係るLED加工用シートのように、基材上に、粘着剤層と複数の接着剤層とがこの順に形成され、接着剤層は、当該接着剤層上に設けられるチップのサイズに対応した大きさで、複数の接着剤層が、粘着剤層上に非連続に形成されたLED加工用シートを使用することにより、LED製造工程において搬送中のチップの脱落がなく、ピックアップが可能で、歩留まり悪化の抑制および工程のタクトタイムが短縮できることがわかる。
また、実施例1〜7の本実施形態に係るLED加工用シートのように、特に接着剤層の面積が粘着剤層との接触側とチップとの接触側で異なり、接着剤層が所定の大きさ、ピッチで形成され、粘着剤層との剥離力が0.05〜1.5N/25mmであり、粘着剤層が放射線により硬化する成分を含有することにより、歩留まり悪化の抑制および工程のタクトタイム短縮を一層図れることがわかる。
【0050】
以上のことより、本実施形態に係るLED加工用シートを使用することにより、LED製造工程での歩留まり悪化の抑制および工程のタクトタイムが短縮できることができる。
【符号の説明】
【0051】
2 チップ
10 LED加工用シート
11 剥離ライナー
12a 基材フィルム
12b 粘着剤層
12 粘着フィルム
13 接着剤層
20 リングフレーム
31 ピン
32 吸着治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、粘着剤層と複数の接着剤層とがこの順に形成されたLED加工用シートであって、
前記接着剤層は、当該接着剤層上に設けられるチップのサイズに対応した大きさで、
複数の前記接着剤層が、前記粘着剤層上に非連続に形成されていることを特徴とするLED加工用シート。
【請求項2】
前記粘着剤層と前記接着剤層との剥離力が、0.05N〜1.5N/25mmであることを特徴とする請求項1に記載のLED加工用シート。
【請求項3】
前記接着剤層の、前記粘着剤層と接触する側の面積と、前記チップと接触する側の面積とが、異なることを特徴とする請求項1又は2記載のLED加工用シート。
【請求項4】
前記複数の接着剤層は配列されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のLED加工用シート。
【請求項5】
前記粘着剤層が、放射線により硬化する成分を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のLED加工用シート。
【請求項6】
前記接着剤層が、エポキシまたはシリコーン成分を含有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のLED加工用シート。
【請求項7】
前記接着剤層の、前記チップと接触する側の面積が9mm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のLED加工用シート。
【請求項8】
前記接着剤層の、前記チップと接触する側の面積が、前記チップの前記接着剤層と接触する側の面積の0.9〜1.1倍であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のLED加工用シート。
【請求項9】
互いに隣接する前記接着剤層のピッチ距離が、50μm以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のLED加工用シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−182403(P2012−182403A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45909(P2011−45909)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】