説明

LED標識

【課題】車載用LED標識の着雪による視認性の悪化を防ぐ。
【解決手段】車載用LED標識100は、複数のLEDがマトリックス状に配置され、各LEDが点灯、消灯することにより所望の情報を表示するLED表示部10と、LED表示部10の表示面側に配置され、熱および遠赤外線を放射する融雪ユニット20とを備える。融雪ユニット20の内部には、コード状のヒーターが複数本配置されており、融雪ユニット20内部の空気は熱せられる。従って、表示面(アクリル板24)に着雪する雪を瞬時に溶かすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融雪機能を有する車載用LED標識に関する。
【背景技術】
【0002】
視認性の向上や、消費電力を節約するために、救急車やパトロールカーなどの車両に車載される標識や道路の標識に、LED表示板を用いることが行われている(例えば特許文献1)。
【0003】
LED表示板は、従来の電球式の表示板と比べて、熱を発生しない。そのため、標識に用いた場合、降雪時に着雪する雪は溶けずに残ってしまい、視認性が悪化してしまうという問題を有する。
【特許文献1】特開2006−350108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、着雪による視認性の悪化を防ぐことを可能とする、LED標識を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るLED標識は、
複数のLEDがマトリックス状に配置され、各LEDが点灯、消灯することにより所望の情報を表示するLED表示部と、
前記LED表示部の表示面側に配置され、熱および遠赤外線を放射する融雪ユニットと、を備える、
ことを特徴とする。
【0006】
前記融雪ユニットは、
枠材と、
前記枠材を挟持する透明性を有する2枚の板材と、
前記枠材と前記2枚の板材とで密閉された空間内に一定のピッチで配置されているコード状のヒーターと、を備えてもよい。
【0007】
前記融雪ユニットは、
枠材と、
前記枠材を挟持する透明性を有する1枚の板材と、
前記枠材と前記1枚の板材と前記LED表示部の表示面とで密閉された空間内に一定のピッチで配置されているコード状のヒーターと、を備えてもよい。
【0008】
前記枠材は、黒メイト処理が施されている金属であってもよい。
【0009】
前記枠材の内側に断熱材が設けられていてもよい。
【0010】
前記融雪ユニットは、前記LED表示部に着脱自在に取り付けられていてもよい。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係るLED標識は、
複数のLEDがマトリックス状に配置され、各LEDが点灯、消灯することにより所望の情報を表示するLED表示部と、
前記各LEDの間に配置されたコード状のヒーターと、
を備えることを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係るLED標識は、
車両に載置されるLED標識であって、
複数のLEDがマトリックス状に配置され、各LEDが点灯、消灯することにより所望の情報を表示するLED表示部と、
前記LED表示部の表示面側に配置され、熱および遠赤外線を放射する融雪ユニットとを備え、
前記融雪ユニットの電力は、前記車両が備える電源から供給されている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、表示面側に遠赤外線を放射する融雪ユニットが配置されるため、着雪による視認性の悪化を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る、車載用のLED標識100について、図面を参照して説明する。LED標識100は、パトロールカーや救急車等の車両に載置され、道路情報等の各種情報を表示する標識として機能するものである。
【0015】
図1(A)は、本実施形態に係るLED標識100の正面図である。この例では、LED標識100の表示面には、「事故」という文字情報が表示されている。
また、この表示の上から、後述する融雪ユニット20が備える5本のヒーター21が確認できる。ヒーター21はコード状のヒーターであり、その幅は表示面の幅に対して十分細いため、表示面の表示の視認性はほとんど悪化しない。
【0016】
図1(B)は、図1(A)に示す車載用LED標識100を直線Sa−Sa’で切断した場合の矢視断面図である。LED標識100は、LED表示部10と、融雪ユニット20とを備えて構成される。
【0017】
LED表示部10は、種々の情報を表示するためのものである。LED表示部10は、表示面側にマトリックス状に配置されている複数のLEDと、CPU(Centrarl
Processing Unit)とを備え、CPUが、各LEDの点灯を選択的に制御することで、任意の文字や数字、その他二次元図形などの画像をドットマトリクス表示することができる。また、LED表示部10は、表示面を保護するためのアクリル板11と、表示面以外の周囲を覆うアルミニウムや鉄などの金属、又は、プラスチック、FPR(Fiber Reinforced Plastics)、樹脂等からなるカバー12とで全体が覆われている。
【0018】
融雪ユニット20は、LED表示部10の表示側を覆うように配置され、熱を放出し、着雪する雪を溶かす機能を有する。
【0019】
融雪ユニット20は、図1(B)および図2に示すように、外観的には、SPCC(冷間圧延鋼板)等の金属板を加工して作成される金属枠22を、LED表示部10のアクリル板11に接着されたアクリル板23とアクリル板24とで挾持した構成を有する。また、融雪ユニット20は、金属枠22とアクリル板23、24とで密閉された内部の空間に、複数のコード状のヒーター21を備える。
なお、アクリル板23、24は、透明性が高いため、LED表示部10の表示を覆うように融雪ユニット20が配置されても、その表示が阻害されることはない。
また、金属枠22は、ヒーター21からの輻射熱を効率よく吸収できるように、黒メイト処理が施されている。
【0020】
ヒーター21は、所定のヒーター間ピッチ(例えば60mm)で複数本(本実施形態では5本)X方向に延在して配置される。
ここで、図3を参照して、ヒーター21の構造について説明する。図3(A)は、ヒーター21の拡大図、図3(B)は、図3(A)に示すヒーター21を直線Ta−Ta’で切断した場合の矢視断面図である。ヒーター21は、炭素繊維(カーボン)を含有する発熱体である導体211と、導体211を2重に被覆するポリイミドテープ212、シリコンゴム213とを備えて、コード状(線状)に構成される。
【0021】
また、ヒーター21の両端は、車両の電源(バッテリー)に接続される。そして、この電源からの電力供給により、ヒーター21は、導体211の発熱によってジュール熱を発生させると共に、遠赤外線を放出する。なお、ヒーター21の定格電圧は12Vと比較的小電圧であるため、ヒーター21への電力供給によって、車両内の電源(バッテリー)を必要とするエアコンなどの機器に影響を与えることはない。
【0022】
ヒーター21が発生するジュール熱と放出する遠赤外線による分子運動に伴う熱とにより、金属枠22とアクリル板23、24とで密閉された空間内の空気は熱せられる。従って、融雪ユニット20は、この内部の空気により全体的に熱せられるため、融雪ユニット20に着雪する雪は瞬時に融解して、表示面(アクリル板24)上に残ることはない。従って、本実施形態に係るLED標識100は、着雪による視認性の悪化を防ぐことが可能となる。
【0023】
本発明は上述した実施形態に限られず、様々な変形及び応用が可能である。
例えば、LED表示部10のアクリル板11、および、融雪ユニット20のアクリル板23、24は、ポリカーボネイト等の、他の透明性を有する樹脂等から構成されるものであってもよい。
【0024】
また、図4(A)、(B)に示すように、融雪ユニット20の金属枠22の内側に断熱材を設けても良い。このようにすることで、融雪ユニット20が発生する熱が外部に逃げるのをある程度防ぐことができ、さらに効率よく表示面の雪を溶かすことが可能となる。また、断熱材は、金属枠22の内側のみに設けたので、視認性も悪化しない。
【0025】
また、融雪ユニット20をLED表示部10にビスで止めるなどして、LED表示部10から着脱自在になるようにLED標識100を構成してもよい。このようにすることで、万一融雪ユニット20が故障した場合、融雪ユニット20ごと取り外して交換することができ、メンテナンスが容易になる。また、降雪する冬季以外は、融雪ユニット20を取り外して使用することもでき、軽量化、省電力化を図ることも可能になる。
【0026】
また、図5に示すように、融雪ユニット20が備えるアクリル板をアクリル板24のみとし、このアクリル板24とLED表示部10のアクリル板11との間にヒーター21を配置するように、LED標識100を構成してもよい。この場合、LED表示部10と融雪ユニット20との間のアクリル板の数が2枚から1枚に減るため、表示の視認性がより高まる。
【0027】
また、図6に示すように、LED表示部10の表示用のLEDに直接ヒーター21を配置し、その上をアクリル板11で覆った構成にしてもよい。この場合、融雪ユニット20を備える必要がないため、より少ないコストでLED標識100を作成することができる。また、図7に示すように、LED間の隙間に埋め込むようにヒーター21を配置してもよく、この場合は、ヒーター21による視認性の悪化を限りなくゼロに抑えることができる。
【0028】
また、上記実施形態では、融雪ユニット20が備えるヒーター21は複数であると説明したが、図8に示すように、1つのヒーター21を曲げて融雪ユニット20の全面をカバーするように配置してもよい。
【0029】
また、上記実施形態では、ヒーター21の発熱導体211として、炭素繊維を用いたが、これ以外の、電熱線、発熱線等を用いてヒーター21を構成してもよい。要するに、コード状のヒーター21を実現できれば、その材質は何でもよい。
【0030】
また、上記実施形態では、車両に載置されたLED標識について説明したが、本発明のLED標識はこれに限定されず、様々な場面、場所で利用されているLED標識に適用可能である。例えば、トンネルの入り口および内部や外部に設置されているLED標識、ETC出入アームのLED標識、高速道路の料金所(トールバリア)で使用されるLED標識、工事現場における交通規制情報を表示するLED標識などにも本発明は適用できる。また、屋外に配置された、各種の案内、警報、規則、指示情報等を表示する情報板、可変掲示板、屋外ディスプレイとして機能するLED標識にも本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係るLED標識の正面図(A)と断面図(B)である。
【図2】融雪ユニットの外観図である。
【図3】ヒーターの構造を説明するための図である。
【図4】断熱材を用いた場合の融雪ユニットの外観図(A)と、LED標識の断面図(B)である。
【図5】他の形態のLED標識を説明するための図である。
【図6】他の形態のLED標識を説明するための図である。
【図7】LEDとヒーターとの関係を示した図である。
【図8】1つのヒーターで構成される融雪ユニットを示した外観図である。
【符号の説明】
【0032】
10 LED表示部
11 アクリル板
12 カバー
20 融雪ユニット
21 ヒーター
22 金属枠
23、24 アクリル板
100 LED標識

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDがマトリックス状に配置され、各LEDが点灯、消灯することにより所望の情報を表示するLED表示部と、
前記LED表示部の表示面側に配置され、熱および遠赤外線を放射する融雪ユニットと、を備える、
ことを特徴とする、LED標識。
【請求項2】
前記融雪ユニットは、
枠材と、
前記枠材を挟持する透明性を有する2枚の板材と、
前記枠材と前記2枚の板材とで密閉された空間内に一定のピッチで配置されているコード状のヒーターと、を備える、
ことを特徴とする、請求項1に記載のLED標識。
【請求項3】
前記融雪ユニットは、
枠材と、
前記枠材を挟持する透明性を有する1枚の板材と、
前記枠材と前記1枚の板材と前記LED表示部の表示面とで密閉された空間内に一定のピッチで配置されているコード状のヒーターと、を備える、
ことを特徴とする、請求項1に記載のLED標識。
【請求項4】
前記枠材は、黒メイト処理が施されている金属である、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のLED標識。
【請求項5】
前記枠材の内側に断熱材が設けられている、
ことを特徴とする、請求項2乃至4の何れか1項に記載のLED標識。
【請求項6】
前記融雪ユニットは、前記LED表示部に着脱自在に取り付けられている、
ことを特徴とする、請求項2乃至5の何れか1項に記載のLED標識。
【請求項7】
複数のLEDがマトリックス状に配置され、各LEDが点灯、消灯することにより所望の情報を表示するLED表示部と、
前記各LEDの間に配置されたコード状のヒーターと、
を備えることを特徴とする、LED標識。
【請求項8】
車両に載置されるLED標識であって、
複数のLEDがマトリックス状に配置され、各LEDが点灯、消灯することにより所望の情報を表示するLED表示部と、
前記LED表示部の表示面側に配置され、熱および遠赤外線を放射する融雪ユニットとを備え、
前記融雪ユニットの電力は、前記車両が備える電源から供給されている、
ことを特徴とするLED標識。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−299335(P2009−299335A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154530(P2008−154530)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(508176991)株式会社ネクスコ東日本パトロール (1)
【Fターム(参考)】