説明

MEMS技術を有する動電型スピーカ構造

【課題】製造の複雑さ、動力の制限および出力に関するいくつかの課題を解決するMEMS技術を有する動電型スピーカ構造を実現する。
【解決手段】固定子形成手段(2)と、ダイヤフラム形成手段(3)と、前記手段の全てを接続するための弾性変形可能手段(4)と、を有し、固定子形成手段、ダイヤフラム形成手段および接続手段は、シリコンチップの機械加工によって単一ピースで作られる、MEMS技術を有する動電型スピーカ構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS技術を有する動電型スピーカ構造に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、固定子形成手段と、ダイヤフラム形成手段と、前記手段のすべてを接続する弾性変形可能手段と、を有する構造に関する。
【背景技術】
【0003】
このタイプのスピーカ構造は、最新技術において周知であり、例えば、IEEEの「Transactions on Biomedical Circuits and Systems(生物医学回路およびシステム部会報告書)」、第3巻、第5号、2009年10月、Sang-Soo Je他による「A Compact and Low-Cost MEMS Loudspeaker for Digital Hearing Aids(ディジタル補聴器のためのコンパクトで安価なMEMSスピーカ)」という文献に記載されている。
【0004】
この文献では、ダイヤフラム形成手段には、シリコンチップをベースに作られた固定子形成手段に結び付けられたポリイミド膜形成を想定している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このダイヤフラム形成手段の構造は、特に、製造の複雑さ、動力の制限および出力に関するいくつかの欠点を有する。
【0006】
本発明は、これらの問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明は、固定子形成手段と、ダイヤフラム形成手段と、手段の全てを接続するための弾性変形可能手段と、を有し、固定子形成手段、ダイヤフラム形成手段および接続手段は、シリコンチップの機械加工によって単一ピースで作られる、MEMS技術を有する動電型スピーカ構造に関する。
【0008】
本発明の他の形態によれば、スピーカ構造は、以下の1つまたは複数の特徴を有する。
−接続手段は、固定子形成手段とダイヤフラム形成手段との間に規則的に配置された接続アームを有する。
−ダイヤフラム形成手段の表面の少なくとも1つは、この表面の少なくとも1つの補強手段を有する。
−補強手段は、リブを有する。
−補強手段は放射状のリブを有する。
−ダイヤフラム形成手段の厚さは、このダイヤフラム形成手段の外周の方へ向かって増大する。
−ダイヤフラム形成手段の表面の少なくとも1つは、コイル形成手段を有する。
−コイル形成手段は、接続手段によって支持された電気接続部を有する。
−コイル形成手段は、銅で作られる。
−固定子形成手段の表面の少なくとも1つは、硬質磁性材料で作られた手段を有する。
−硬質磁性材料で作られた手段の形状は、ダイヤフラム形成手段の周囲に配置されたリングである。
−硬質磁性材料で作られた手段は、サマリウム−コバルトまたは鉄−ネオジム−ホウ素の合金で作られる。
−ダイヤフラム形成手段の表面の少なくとも1つは、ブラインド孔を有する。
−コイル形成手段の質量は、ダイヤフラム形成手段の質量に等しい、または、ほぼ等しい。
−構造の多様なこれらの手段が機械加工されるシリコンチップは、SOI技術に基づく。
−チップは、単結晶シリコンで作られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明によるスピーカ構造の一部を切断した斜視図である。
【図2】図1の構造の片側の部分を拡大した斜視図である。
【図3】図1の構造の背面の斜視図である。
【図4】図1の構造の背面の斜視図である。
【図5】本発明による構造を得るために、単結晶シリコンチップの機械加工を例示する図である。
【図6】本発明による構造の多様な代替の実施形態の背面図である。
【図7】本発明による構造の多様な代替の実施形態の背面図である。
【図8】本発明によるスピーカ構造の多様な代替の実施形態を例示する斜視図である。
【図9】本発明によるスピーカ構造の多様な代替の実施形態を例示する斜視図である。
【図10】本発明によるスピーカ構造の多様な代替の実施形態を例示する斜視図である。
【図11】本発明によるスピーカ構造の多様な代替の実施形態を例示する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、添付の図面を参照しながら単なる一実施例として提供される以下の説明によってより良く理解されるであろう。
【0011】
添付図面、特に図1および2は、共通参照符号1によって示されたMEMS技術を有する動電型スピーカ構造を示す。
【0012】
一般に、この構造は、共通参照符号2によって示された固定子形成手段と、共通参照符号3によって示されたダイヤフラム形成手段と、これらの手段の全てを接続する共通参照符号4によって示された弾性変形可能手段と、を有する。
【0013】
実際には、図示されるように、固定子形成手段、膜形成手段および接続手段は、例えば単結晶のシリコンチップのミクロ構造化/機械加工によって単一ピースで形成される。このシリコンチップは、例えば、図示されるように、シリコンオンインシュレータ (SOI:Silicon On Insulator)技術に基づく。
【0014】
また、多結晶シリコンを考慮してもよい。
【0015】
実際には、多様な図1〜5、特に図5により明確に示すように、共通参照符号4で示される接続手段は、固定子形成手段2とダイヤフラム形成手段3との間に規則的に分散された接続ア−ムを有する。
【0016】
例えば、図5に例示されるように、これらのア−ムは4つでもよい。
【0017】
後でより詳細に記載するように、当然、異なる数および異なる形状のアームが考慮されてもよいことは言うまでもない。
【0018】
図5において、異なるアームは、それぞれ、参照符号5、6、7および8によって示される。
【0019】
また、これらの図に例示されるように、ダイヤフラム形成手段3の例えば背面などの少なくとも1つの表面は、自体の補強手段を有する。
【0020】
この補強手段は、これらの図では共通参照符号9によって示されており、例えば、図3および4により明確に示されるように、例えばその1つが共通参照符号10で示される好ましくは放射状の補強用リブで作成される。
【0021】
実際には、ダイヤフラム形成手段3の補強は、例えば、ダイヤフラム形成手段の厚さを中央部から外周の方へ向かって増大させるなどの他の手段によって行ってもよい。
【0022】
例えば、ダイヤフラム形成手段3の他の表面は、図1および2で共通参照符号11によって示されたコイル形成手段を有する。
【0023】
このコイル形成手段11は、例えば接続アーム6によって支持された、例えば図1の共通参照符号12で示された部分などの接続手段によって支持された電気接続部を有する。
【0024】
コイル形成手段11は、例えば、銅で作ってもよいが、当然、他の実施形態を考慮してもよい。
【0025】
最後に、固定子形成手段の表面の少なくとも1つは、例えば、ダイヤフラム形成手段3の周囲に配置されたリングの形状で硬質磁性材料から作られた手段を含んでもよい。
【0026】
この硬質磁性材料で作られた手段は、サマリウム−コバルト(Samarium-Cobalt)、鉄ネオジムホウ素(Iron-Neodyme-Boron)または他の合金で作られてもよい。
【0027】
図1および2に例示される実施例では、固定子形成手段の2つの表面は、共通参照符号13および14によってそれぞれ示される上記リングを有する。
【0028】
この場合、これらのリングは、SOIチップの両側の側面上に配置され、例えば、横材15をリング13に結び付けることによって、リングがチップの両側の側面上で対称に配置されるようにすることができる。
【0029】
また、図6および7において例示されるように、ダイヤフラム形成手段3の表面の少なくとも1つは、例えば、図6に共通参照符号16によって示された穿孔、または、図7の穿孔17などの、異なる穿孔の形状を想定可能なブラインド孔を有してもよいことに気づくであろう。
【0030】
実際に、これらの穿孔によってダイヤフラム形成手段を軽くできるよう設計されている。
【0031】
最後に、コイル形成手段の質量がダイヤフラム形成手段の質量に等しいか、または、ほぼ等しいことによって構造の効率を最適化できることに気づくであろう。
【0032】
そして、スピーカ構造がシリコン基板上に集約して作られるのが分かる。これらの構造は、「WAFER」(ウエハ)チップ、すなわち、従来半導体電子部品を製造するのに使用されていた円形のシリコンディスクで、数百同時に製造することができる。
【0033】
ダイヤフラム形成手段は、接続アームが固定子形成手段に垂下する円形の平面によって形成される。
【0034】
これらの異なる形状は、基板上で「マイクロ構造化/機械加工」される。
【0035】
シリコンは、一方では、スピーカの表面、すなわち音波を発する可動面を非常に硬くし、他方では、機械的疲労を受けずに接続アームを変形することができる。
【0036】
コイル形成手段は、可動面上に「渦巻状」に沈着され、接続アームによって電気的接続が行われる。
【0037】
固定子形成手段上に締結または沈着された硬質磁性材料のリングによって、放射状の磁場が生成される。
【0038】
このアセンブリによって、鉄を含まない磁気回路を製造し、良好な音響品質を実現することができる。
【0039】
同じシリコンチップ上で、スピーカ構造に電源供給する電気および信号増幅処理の全てまたは一部を行ってもよい。これによって、特に可動コイルの電流を制御することができる。
【0040】
可動部、ダイヤフラムおよび接続アームの製造は、例えば、加速度マイクロセンサを製造するのに既に実施されているシリコンを機械加工するための技術を用いて行われる。
【0041】
ダイヤフラムは、例えば、直径が5〜15ミリメートルで厚さが20〜400ミクロンのシリコンディスクである。
【0042】
厚いダイヤフラムの場合、これを非貫通孔によってより軽くする。この軽量化は、初期重量の最大90%でもよい。可動量は、性能の主要な評価基準である。可動部は、できる限り軽くしなければならないが、発信面、すなわちダイヤフラムは、できる限り硬くなければならない。
【0043】
スピーカ表面の第1の特定の変形モードは、構造の帯域幅の最もシャープな周波数より高い周波数を有することが好ましい。
【0044】
接続アームは、ダイヤフラムの所望の動きおよび移動を可能にするよう機械加工される。
【0045】
メンバ間の空間の機械加工幅を十分小さくして、構造の前面と背面との間の漏音を制限できるようにする。
【0046】
コイル形成手段は、例えば、銅で作られ、周知方法を用いてダイヤフラムの表面の1つに沈着される。接続アーム上に配置された溝により、可動部の方へ向かって電気的連続性が得られる。コイル形成手段の中心端によって、電子部品の周知技術を用いてダイヤフラムの反対側の表面でアームを接合する。
【0047】
これらの接続アームは、厚みをダイヤフラムより薄くすることによって、よりフレシキブルにすることができる。
【0048】
したがって、可動部の動きは、コイルに電源供給する電気信号の忠実なイメージになる。また、この信号は、増幅されてダイヤフラムを動かすのに必要な電力を与えることができる。
【0049】
所与の音響出力を得るために、所与の体積の空気が動かなければならない。したがって、ダイヤフラムは、かなり十分に移動しなければならない。
【0050】
上述した電気的および機械的ディメンショニングによって、今日のものとは違って、特に、低周波数を含む音楽を忠実に再現でき、最新技術のシステムを用いて優れた品質の音源を得ることができる。
【0051】
この構造は、特に、電話、携帯用ステレオおよび多様な音楽読取装置など、電圧を考慮したり自律性を要求したりすることによって、いくつかの分野で適用可能である。
【0052】
図8〜11に例示されるように、当然、異なる形状の固定子形成手段、ダイヤフラム形成手段、コイルおよびアームなど、本発明の多様な実施形態を考慮することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子形成手段と、
ダイヤフラム形成手段と、
前記手段の全てを接続する弾性変形可能手段と、を有し、
前記固定子形成手段、前記ダイヤフラム形成手段および前記接続手段は、シリコンチップの機械加工によって単一ピースで作られる、MEMS技術を有する動電型スピーカ構造。
【請求項2】
前記接続手段は、前記固定子形成手段と前記ダイヤフラム形成手段との間に規則的に配置された接続アームを有する、請求項1に記載の動電型スピーカ構造。
【請求項3】
前記ダイヤフラム形成手段の表面の少なくとも1つは、該表面の少なくとも1つの補強手段を有する、請求項1または2に記載の動電型スピーカ構造。
【請求項4】
前記補強手段は、リブを有する、請求項3に記載の動電型スピーカ構造。
【請求項5】
前記補強手段は、放射状のリブを有する、請求項4に記載の動電型スピーカ構造。
【請求項6】
前記ダイヤフラム形成手段の厚さは、該ダイヤフラム形成手段の外周の方へ向かって増大する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の動電型スピーカ構造。
【請求項7】
前記ダイヤフラム形成手段の表面の少なくとも1つは、コイル形成手段を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の動電型スピーカ構造。
【請求項8】
前記コイル形成手段は、前記接続手段によって支持された電気接続部を有する、請求項7に記載の動電型スピーカ構造。
【請求項9】
前記コイル形成手段は、銅で作られる、請求項7または8に記載の動電型スピーカ構造。
【請求項10】
前記固定子形成手段の表面の少なくとも1つは、硬質磁性材料で作られた手段を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の動電型スピーカ構造。
【請求項11】
前記硬質磁性材料で作られた手段の形状は、前記ダイヤフラム形成手段の周囲に配置されたリングである、請求項10に記載の動電型スピーカ構造。
【請求項12】
前記硬質磁性材料で作られた手段は、サマリウム−コバルトまたは鉄−ネオジム−ホウ素の合金で作られる、請求項10または11に記載の動電型スピーカ構造。
【請求項13】
前記ダイヤフラム形成手段の表面の少なくとも1つは、ブラインド孔を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の動電型スピーカ構造。
【請求項14】
前記コイル形成手段の質量は、前記ダイヤフラム形成手段の質量に等しい、または、ほぼ等しい、請求項7と請求項8〜13のいずれか一項とに記載の動電型スピーカ構造。
【請求項15】
前記構造の多様な前記手段が機械加工される前記シリコンチップは、SOI技術に基づく、請求項1〜14のいずれか一項に記載の動電型スピーカ構造。
【請求項16】
前記チップは、単結晶シリコンで作られる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の動電型スピーカ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−517729(P2013−517729A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549397(P2012−549397)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【国際出願番号】PCT/FR2011/050070
【国際公開番号】WO2011/089345
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(508246870)ユニベルシテ デュ メーヌ (2)
【出願人】(512187664)ユニベルシテ パリ−シュド オンズ (1)
【Fターム(参考)】