説明

N−n−アシルオキシプロピルリシンメチルエステル型及びN、N−ビス(n−アシルオキシプロピル)リシンメチルエステル型の化合物並びに抗菌活性を有する界面活性剤としての該化合物の使用

この発明は、両親媒性特性(カチオン性、アニオン性、両性及び非イオン性)を有する新規化合物、即ち、一般式(I)で表されるn−アシルオキシプロピル型リシンアミノ酸の誘導体に関する。該化合物は、自己凝集能と抗菌性を有する界面活性剤として食品工業、薬品工業及び化粧品工業において使用することができる。該化合物の活性の変化は、最終的な分子のイオン性、脂肪鎖の数及び脂肪鎖の長さの関数である。この種の化合物は化学的合成法によって調製される。中間体及び最終生成物は、液体/液体抽出法、液体/固体抽出法、結晶化法、カチオン交換クロマトグラフィー及び標準相クロマトグラフィーによって精製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
界面活性剤は、両親媒特性を有する有機分子であって、食品工業、薬品工業及び化粧品工業の分野において広範囲で万能的な用途を有する。界面活性剤の化学構造の一部は極性又は親水性のイオン性又は非イオン性の特性を有しており、また、該化学構造の一部は非極性又は疎水性であって、通常は1個又は2個の炭化水素鎖を有する。
【0002】
本発明による化合物は、1−O−1−アルギニルエステル型、3−O−モノアシルグリセリド型又は1−O−1−アルギニルエステルである2,3−O−ジアシルグリセリド型
の化合物(WO01/58860参照)と構造的に類似する。この種の化合物は、乳化特性、分散特性、及びカチオン性に起因する抗菌活性を有する。このような構造的類似性を仮定するならば、本発明によるリシン誘導体は、乳化特性、分散特性及び可溶化特性を有する抗菌性のあるカチオン性界面活性剤及び/又は徐放剤として使用できる可能性がある。
【背景技術】
【0003】
化学薬品に関連する現代の環境的観点からは、非汚染性の新規生成物を開発することが
必然的に要請されている。最近になって、天然物(例えば、糖類、ステロール類、アミノ酸類及び脂肪酸類等)に基づく界面活性剤の製造と研究が益々注目されるようになっている。これらに関しては、下記の文献を参照されたい:
i)R.G.ラウフリン、Y.−C.フー、F.C.ヴィレコ、J.J.シャイベル、及びR.L.ムンヨン著、「ノーベル・サーファクタント」、K.ホルメルグ編、マルセル−デッカー社、ニューヨーク、1998年、及び
ii)M.ブリンク著、「J.ノーベル・サーファクタンツ」、K.ホルメルグ編、マーセル・デッカー社、ニューヨーク、1998年。
【0004】
生態学的に許容される界面活性剤を得るために現在までに提案されている方策のうちの1つは、天然の界面活性剤(リポアミノ酸、ホスホリピド、グリセロリピド)の分子構造を模倣した分子構造を有する化合物を調製する方法である。この点に関しては、次の文献を参照されたい:J.H.フェンドラー著、「メンブラン・ミメチック・ケミストリー」、ジョン・ウィリー・アンド・サン社、1989年。
【0005】
この種の界面活性剤は、一般的に無毒であって、容易に生分解されるので、環境的観点からは許容される。この点に関しては、次の文献を参照されたい:M.R.インファンテ、P.ペレス、A.ピナゾ、P.クラペス、M.C.モラン、M.アンジェレット、M.T.ガルシア、及びM.P.ヴィナルデル著、「C.R.キミエ」、第7巻、第583頁、2004年。
【0006】
アミノ酸から誘導される界面活性剤は、多官能性を有すると共に無毒性であるという観点からは、非常に注目すべき化合物である。この点に関しては、下記の文献を参照されたい:
i)M.タケハラ、「コロイズ・アンド・サーフェシズ」、第38巻、第149頁、1989年。
ii)C.セルブ、L.マンスイ、M.アロウチ、「J. Chem. Res.」、第22巻、第401頁、1992年、
iii)R.ツシマ、「第4回世界界面活性剤会議紀要」、第1巻、第43頁、1996年、及び
iv)M.R.インファンテ、P.ペレツ、A.ピナゾ、P.クラペス、M.C.モラン、M.アンジェレット、M.T.ガルシア及びM.P.ヴィナルデル、「C.R.キミエ」、第7巻、第583頁、2004年。
【0007】
これらの特性は、最近の数年間においてアニオン性、カチオン性、非イオン性及び両性のアミノ酸から誘導された広範囲の界面活性剤に関する合成と性状についての研究の結果に基づくものである。これに関しては下記の文献を参照されたい:
i)M.タケハラ、「コロイズ・アンド・サーフェシズ」、第38巻、第149頁、1989年、
ii)K.セガワ、J.ヨロタ、I.ウエノ、T.ミヨシ及びM.タケハラ、「1986年XIV コングレスIFSCC」、
iii)T.タボハシ、K.トビタ、K.サコモト、J.コウチ、S.ヨコヤマ、H.サカイ及びM.アベ、「コロイズ・アンド・サーファクタンツ B:バイオインターファイシズ」、第20巻、第79頁、2001年、
iv)S.アウベルガー、C.ガラルジン、L.ローデヒューサー、C.フィナンス、C.ニコラッチ、L.ペレス、M.R.インファンテ、M.A.マンレサ、C.セルブ、「Progr. Colloid Polym. Sci.」、第118巻、第145頁〜第158頁、2001年、及び
v)I.A.ナンナ、J.キシア、「タンパク質に基づく界面活性剤:合成、物理化学的特性及び用途」、マーセル・デッカー社、ニューヨーク。
【0008】
1984年以来、この分野においては、界面活性剤の合成グループは、非常に異なる構造とイオン特性を有する単連鎖(monocatenary)リポアミノ酸(アミド、エステル及びアシル)の合成、研究及び開発を検討する研究調査法を開発している。この種の界面活性剤は、構造中の親水性又は極性の部分中にアミノ酸又はペプチドを有すると共に、αアミノ基又は末端カルボキシル基を介してアミノ酸に縮合した脂肪鎖を疎水性又は非極性の部分中に有することによって特徴づけられる。同様にして、化学的及び酵素的な方法によって、非常に異なる構造を有する二連鎖(dicatenary)リポアミノ酸及びジェミナル化合物が合成されている。このような研究結果は多数の特許文献及びその他の刊行物に記載されている。
【0009】
この点に関しては、例えば、下記の文献を参照されたい:
i)ES 9500061(1995年)、
ii)PI 9500027(1995年)、
iii)PCT/ES96/00026(1996年)、
iv)ES 9700520(1997年)、
v)ES 9900739(1999年)、
vi)M.R.インファンテ、J,モリネロ及びP.エルラ、「JAOCS」、第69巻、第7号、1992年、
vii)J.モリレノ、M.R.ジュリア、P.エルラ、M.ロベルト及びM.R.インファンテ、「JAOCS」、第65巻、第6号、1988年、
viii)C.ソランス、N.M.A.ペス、N.アゼマー及びM.R.インファンテ、「Progr. Colloid Polym. Sci.」、第81巻、第144頁〜第150頁、1990年、
ix)L.ペレス、J.L.トルレス、A.マンレサ、C.ソランス及びM.R.インファンテ、「ラングミュアー」、第229巻、第12号、第5296頁〜第5301頁、1996年、及び
x)P.クラペス、C.モラン及びM.R.インファンテ、「Biotechnol. Bioeng.」、第63巻、第333頁、1999年。
【0010】
さらに、現在のところ、食品工業において使用されている乳化剤の75%はグリセロリピド(モノアシルグリセリド及びジアシルグリセリド)によって占められているが、この理由は、この種の化合物は天然物であるために無害であるだけでなく、優れた界面特性と分散特性を有するからである(Y.ズ、A.マスヤマ、Y.キリタ、M.オカハラ及びM.J.ロセン、「J. Am. Oil. Chem. Soc.」、第69巻、第6269頁、1992年)。次の文献には、これらの化合物の特性が非常に詳細に記載されている:K.ラルッソン、「リピド:分子構造、物理的機能及び技術的用途」、ザ・オイリープレス社、1994年。食品工業においては、この種の化合物は、天然レシチン及びより高い極性を有するその他の乳化剤と併用することが通常おこなわれている。
【0011】
一方、世界的な食品(低カロリーでビタミン類やその他の栄養素を含有する製品)事情の絶え間ない変化によって、この種の製品の大量生産を可能にする新しい乳化剤を開発することが要請されている。このため、変性モノグリセリド、即ち、モノグリセリドを新規な食品組成物に配合するために適したように改変する物理化学的特性と溶解特性をもたらす化学的機能を分子中へ導入したモノグリセリドが広範囲にわたって使用されている(リピドテクノロジー)。例えば、当該分子の遊離のヒドロキシル末端基は乳酸型、クエン酸型及び酢酸型の有機酸によって機能化される(スチークE.フリブルク及びK.ラルッソン編、「食品エマルションズ」、1997年)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明は、アミノ酸「リシン」から誘導される新規なアシルグリセリド類(モノアシルグリセリド及びジアシルグリセリド)の合成法を提供するためになされたものである。この種の化合物は、アミノ酸の側鎖アミノ基を介するアミン結合によって2つのグリシドール単位の1つに結合したアミノ酸リシンから構成される。脂肪鎖は、ジヒドロキシプロピル鎖のヒドロキシル基へエステル結合を介して結合する。
【0013】
また、最近になって、アルギニン型、アセチル−アルギニン型、グルタミン酸型、アスパラギン酸型、グルタミン型、アスパラギン型及びチロシン型のアミノ酸と純粋なモノグリセリド又はジグリセリドとの縮合から誘導されるグリセロリピド構造を有する界面活性剤も合成されている。この点に関しては、下記の文献を参照されたい:
i)C.モラン、M.R.インファンテ及びP.クラペス、「J. Soc. Perkin Trans. 1」、2001年、第2063頁、
ii)C.モラン、M.R.インファンテ及びP.クラペス、「J. Soc. Perkin Trans. 1」、2002年、第1124頁、
iii)ペレスら、「New J. Chem.」、第26巻、第1221頁、2002年、
iv)スニルA.ダビドら、「Bioorg. Med. Chem. Lett.」、第12巻、第357頁、2002年、
v)P.ペレス、M.R.インファンテ、R.ポンズ、M.P.ヴィナルデル、M.ミジャンス及びA.ピナゾ、「コロイズ・アンド・サーフェシズ B」、第35巻、第235頁、2004年、
vi)C.モラン、A.ピナゾ、L.ペレス、P.クラペス、R.ポンズ及びM.R.インファンテ、「キミエ」、第7巻、第169頁、2004年、
vii)L.ペレス、M.R.インファンテ、M.アンジェレット、P.クラペス及びA.ピナゾ、「Progr. Colloid Polym. Sci.」、第123頁、2003年、及び
viii)M.R.インファンテ、L.ペレス、A.ピナゾ、P.クラペス、C.モラン、M.アンジェレット、M.T.ガルシア及びM.P.ヴィナルデル、「キミエ」、第7巻、第583頁、2004年。
【0014】
本願発明の対象となる分子とアルギニン型、アセチル−アルギニン型、グルタミン酸型、アスパラギン酸型、グルタミン型、アスパラギン型及びチロシン型のアミノ酸から誘導される類似体(これらの化合物は界面活性特性と抗菌特性を示す)との間に構造的な類似性があるとするならば、リシンの新規誘導体は、抗菌特性を示すと共に乳化特性、分散特性及び可溶化特性を示すカチオン性界面活性剤及び/又は徐放剤として使用できるであろう。
【0015】
アルギニンとアセチル−アルギニンの誘導体の化学的安定性に関する十分な試験結果によれば、この種の分子は、水溶液中においては、グリセロール骨格とアミノ酸(アルギニン)との間のアミド結合の加水分解を示す。この点に関しては、次の文献を参照されたい:P.ペレス、M.R.インファンテ、R.ポンズ、M.P.ヴィナルデル、M.ミジャンス及びA.ピナゾ、「コロイズ・アンド・サーフェシズ B」、第35巻、第235頁、2004年。
【0016】
本願発明の対象となるNε−n−アシルオキシプロピルリシンメチルエステル型及びNε、Nε−ビス(n−アシルオキシプロピル)リシンメチルエステル型の化合物を合成するためには、予めNε(2,3−ジヒドロキシプロピル)L−リシン誘導体を得ることが必要である。グリセルアルデヒドとアミノ酸(リシン)を出発原料としてNε(2,3−ジヒドロキシプロピル)L−リシンを合成する方法が次の文献に記載されている:A.リロタ及びK.ゲルハルト、「バイオロジカルケミストリー Hoppe-Seyler」、第11巻、第368頁、1987年。
【0017】
当該分子のヒドロキシル基のアシル化に関しては、酸性触媒と塩基性触媒を使用する方法が下記の文献に記載されている:
i)M.レジェック、M.バセク及びZ.ウィマー、「ヘルベチカ・キミカ・アクタ」、第83巻、第2756頁、2000年、及び
ii)P.R.ガフネイ及びC.B.レーセ、「J. Chem. Soc. Perkin Trans. I」、2000年、第92頁。
【0018】
また、該アシル化に関しては、リパーゼ型酵素を使用する方法が次の文献に記載されている:R.ヴァリベティ、I.S.ギル及びE.N.ブルフソン、「J. Surf. Deterg.」、第1巻、第177頁〜第185頁、1998年。
【0019】
本願発明による主要な新規性は、水溶性であって広範囲の工業的用途を有するイオン性及び/又は非イオン性のモノアシルグリセリドとジアシルグリセリドを発生させるモノグリセリド界面活性剤とジグリセリド界面活性剤及びアミノ酸(リシン)から誘導される界面活性剤を同一分子中で組み合わせる点にある。アミノ酸(リシン)をアミン結合によって導入することによって、当該分子には化学的安定性が付与されると共に、高温とアルカリ性pHの条件が要求される特定の工業的用途に対して必要な特性が付与される。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この発明は、両親媒性特性(カチオン性、アニオン性、両性及び非イオン性)を有する新規化合物、即ち、下記の一般式(I)で表されるn−アシルオキシプロピル型リシンアミノ酸誘導体に関する。該化合物は、自己凝集能と抗菌性を有する界面活性剤として食品工業、薬品工業及び化粧品工業において使用することができる。
【0021】
【化1】

【0022】
[式中、Rは、水素原子、アセチル(Ac)基又は保護基を示し、Rは、水素原子、メチル基、飽和炭化水素鎖又はカチオン性対イオンを示し、R及びRは水素原子、直鎖状アシル(Ac)基(好ましくは飽和又は不飽和アシル基)を示し、Rは水素原子、又はCHCHORCHOR(式中、R及びRは、水素原子又は直鎖状アシル基(好ましくは飽和又は不飽和アシル基))を示す。但し、R〜Rの全てが同時に水素原子を示すことはない。]
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
出発物質としては下記のものが例示される:
i)工業用純度を有するリシン誘導体、特にNα−アセチル(Ac)リシン、Nα−ベンジルオキシカルボニル(Z)リシン及びNα−t−ブチルオキシカルボニル(Boc)リシン。
ii)グリシドール(鏡像体的純粋物又はラセミ混合物)。
iii)種々の鎖長を有する飽和又は不飽和な線状脂肪酸及び該酸の塩化物又はエステル。
【0024】
当該分子中におけるアルキル鎖の数、アルキル鎖の不飽和度、及びアルキル鎖の長さは変化させてもよく、これによって、吸着と自己凝集(self-aggregation)に関する物理化学的特性及び生物学的特性の点で異なる挙動を示す化合物が得られる。
【0025】
この種の化合物は化学的方法によって得ることができる。この方法に含まれる各工程について以下に説明する。この種の化合物の合成は下記の工程 i)〜iv)によっておこなわれる。
【0026】
i)リシンのN−α−保護エステルである1−O−N−(prot)−リシン[以下、(prot)Kで示す。]を調製する。原料物質としては、塩化チオニル、メタノール及び保護されたNα基を有する純粋なL−リシン又はそのラセミ混合物が使用される。
【0027】
ii)該エステルの誘導体であるNα,Oα−保護Nε−ジヒドロキシプロピルリシン[以下、(00)(prot)Kで示す。この場合、xは1又は2を示す。]を調製する。 この反応は、メタノール溶液中のグリシドールに(prot)Kを反応させることによっておこなわれる。
【0028】
iii)アシル化誘導体である(nn)(prot)Kを調製する。この反応は、塩基性有機媒体中において、(00)(prot)Kを出発物質とし、また、アシル化剤として炭素原子数が8〜14の線状脂肪酸の塩化物を使用することによっておこなう。
【0029】
iv)Pd/Cを用いる接触水素化又はアシドリシスによってNε−n−アシルオキシプロピルリシンメチルエステル[以下、(nn)Kで示す。]を調製する。
【0030】
本発明は、抗菌活性を有する界面活性剤として設計されるタイプのアミノ酸(リシン)から誘導されるNε−n−アシルオキシプロピルリシンメチルエステル型の界面活性剤にも関する。該界面活性剤の活性の変化は、脂肪鎖の数と長さの関数である。
【0031】
中間体と最終生成物の精製は、液体/液体抽出法、液体/固体抽出法、結晶化法、カチオン交換クロマトグラフィー及び標準相クロマトグラフィーによっておこなわれる。
【実施例】
【0032】
本発明を以下の実施例によって説明するが、該実施例は本発明の範囲を制限するものではない。
実施例1
この実施例においては、炭素原子数が12の脂肪鎖を有する化合物であるNε、Nε−ビス(2−ヒドロキシ,3−ラウロイルオキシプロピル)リシンメチルエステルの調製例について説明する。この化合物は、前述の方法に従って、以下の4工程によって調製した。
【0033】
1)Z−Kの調製
メタノールを溶媒とするZ−リシン−OHの0.3モル溶液を調製した。この溶液を−80℃まで冷却した後、5.8容量%の塩化チオニルを該溶液中へ添加した。反応は20時間おこなった。生成物は、溶媒と過剰の塩化チオニルを連続的に蒸発させることによって分離した。
【0034】
2)(00)Z−Kの調製
乾燥メタノールを溶媒とするZ−Kの0.04モル溶液を調製した。0.6容量%のトリエタノールアミンを該溶液中へ添加した。この混合物中へ、0.09Mのグリシドールをゆっくりと添加した。この反応混合物は、撹拌下において、70℃で40時間保持した。真空下で溶媒を除去した。カチオン交換クロマトグラフィーを用いる精製処理によって生成物を得た。
【0035】
3)(12 0)Z−Kの調製
ピリジンを溶媒とする(00)Z−Kの0.1モル溶液を調製した。5.4容量%の塩化ラウロイルを添加した。この混合物は、室温で8時間反応させた。真空下でピリジンを除去した後、生成物はシリカを用いるカラムクロマトグラフィーによって精製した。この場合、溶離液としては、極性を順次増加させたクロロホルム/メタノール混合物を使用した。
【0036】
4)(12 0)Kの調製
メタノールを溶媒とする(12 0)Z−Kの0.1モル溶液を調製した。10重量%の触媒(Pd/C)を添加した。室温において、反応系へ窒素ガス(圧力:600psい)を1時間導入した。生成物は、反応混合物を、セライトを用いる触媒の除去処理及び溶媒の蒸発処理に付すことによって得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)で表されるNε−n−アシルオキシプロピルリシンメチルエステル型及びNε、Nε−ビス(n−アシルオキシプロピル)リシンメチルエステル型の化合物:
【化1】

[式中、Rは、水素原子、アセチル(Ac)基又は保護基を示し、Rは、水素原子、メチル基、飽和炭化水素鎖又はカチオン性対イオンを示し、R及びRは水素原子、直鎖状アシル(Ac)基(好ましくは飽和又は不飽和アシル基)を示し、Rは水素原子、又はCHCHORCHOR(式中、R及びRは、水素原子又は直鎖状アシル基(好ましくは飽和又は不飽和アシル基))を示す。但し、R〜Rの全てが同時に水素原子を示すことはない。]
【請求項2】
下記の工程i)〜iv)を含む請求項1記載の両親媒性化合物の製造方法:
i)塩化チオニル及びNα基によって保護されたL−リシンを原料とすることによって、リシンのエステルである1−O−N−(prot)−リシン[以下、(prot)Kで示す]を調製する。
ii)該エステルの誘導体であるNα,Oα−保護Nε−ジヒドロキシプロピルリシン[以下、(00)(prot)Kで示す]を調製する。
iii)ピリジン溶剤中において、アシル化剤として炭素原子数がx〜wの線状脂肪酸の塩化物を使用することによって、出発化合物としての(00)(prot)から保護アシル化誘導体であるNε−n−アシルオキシプロピルリシン[以下、(nn)Kで示す]を調製する。
iv)Pd/Cを用いる接触水素化によってアシル化誘導体Nε−n−アシルオキシプロピルリシン[(nn)K]を調製する。
【請求項3】
出発化合物として、L−リシン(純粋物又はラセミ混合物)を使用する請求項2記載の方法。
【請求項4】
リシンのα−アミノ官能基の保護基として、アセチル基(Ac)基、ベンジルオキシカルビニル(Z)基又はt−ブチルオキシカルボニル(Boc)基を使用する請求項2記載の方法。
【請求項5】
工程i)において、N−保護リシン及びグリシドールから出発してNε−ジヒドロキシプロピルリシンを調製する請求項2記載の方法。
【請求項6】
グリシドール、及びリシンの鏡像体的な純粋物又はラセミ混合物を使用する請求項2又は5記載の方法。
【請求項7】
工程ii)において、Nε−ジヒドロキシプロピルリシンの遊離のヒドロキシル基のアシル化を反応媒体としてのピリジン中でおこなう請求項2記載の方法。
【請求項8】
ε−ジヒドロキシプロピルリシンの遊離のヒドロキシル基のアシル化反応において、炭素原子数が8、10、12又は14の直鎖を有する飽和又は不飽和脂肪酸の塩化物を使用する請求項2又は7記載の方法。
【請求項9】
所望により、必要に応じて、リシンのα−アミノ基の脱保護を、Pd/Cを用いる接触水素化によっておこなう請求項2記載の方法。
【請求項10】
反応の監視を、高性能液体クロマトグラフィー(カラム:プロピルシアン型カラム;溶離液:水とアセトニトリルの混合液)によっておこなう請求項2記載の方法。
【請求項11】
抗菌特性によって特徴づけられる請求項1記載のNε−n−アシルオキシプロピルリシンメチルエステル型化合物又はNε、Nε−ビス(n−アシルオキシプロピル)リシンメチルエステル型の化合物の使用。
【請求項12】
n−アシルグリセリド凝集特性によって特徴づけられる請求項1記載のNε−n−アシルオキシプロピルリシンメチルエステル型化合物又はNε、Nε−ビス(n−アシルオキシプロピル)リシンメチルエステル型の化合物の使用。
【請求項13】
カチオン性、アニオン性、双極イオン性及び/又は非イオン性の界面活性剤としての請求項1記載のNε−n−アシルオキシプロピルリシンメチルエステル型化合物又はNε、Nε−ビス(n−アシルオキシプロピル)リシンメチルエステル型の化合物の使用。
【請求項14】
乳化特性、分散特性及び/又は抗菌活性を有する高活性界面活性剤としての請求項1記載のNε−n−アシルオキシプロピルリシンメチルエステル型化合物又はNε、Nε−ビス(n−アシルオキシプロピル)リシンメチルエステル型の化合物の使用。

【公表番号】特表2008−520631(P2008−520631A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542015(P2007−542015)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【国際出願番号】PCT/ES2005/070158
【国際公開番号】WO2006/056636
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(593005895)コンセホ・スペリオール・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス (67)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS
【Fターム(参考)】