説明

OAローラの製造方法

【課題】芯金1の周囲に弾性層を有するOAローラを製造するにあたり、芯金1の一端に第1のキャップ5の中心穴を嵌合させ、第1のキャップ5に嵌合された芯金1を、中心軸線CLを水平に向けて配置され、両端が開口した円筒状の金型21の内へ挿入して第1のキャップ5によって金型21の一方の開口部22を閉塞し、芯金1の他端に第2のキャップ7の中心穴を嵌合させるに際し、従来よりも、第2のキャップを容易にスムースに芯金他端に嵌入させることが可能なOAローラの製造方法を提供する。
【解決手段】金型21の、他方の開口部23側の中心軸線CLより下方に配置され、金型21の中心軸線CLの左右に張り渡されたストリング25を上昇させることにより、前記芯金1の他端を持ち上げて芯金1を金型の中心軸線CL上に保持したあと、第2のキャップ7の中心穴を芯金1の他端に嵌合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式電子写真装置等の画像形成装置における、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、トナー供給ローラ、クリーニングローラおよび給紙ローラなどに供するOAローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真技術の進歩に伴い、乾式電子写真装置等の画像形成装置には、帯電用、現像用、転写用、トナー供給用、クリーニング用および給紙などの用途として、高分子材による部品が注目され、具体的には、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、トナー供給ローラ、クリーニングローラおよび給紙ローラなどの弾性を有するOAローラの形態で用いられている。
【0003】
上記OAローラは、通常、芯金と、その周囲に形成された弾性層とで構成されている。このようなOAローラは、一般的には、両端が開口した円筒状の金型を用いて以下のようにして製造される。すなわち、芯金の一端に第1のキャップの中心穴を嵌合させ、当該第1のキャップに嵌合された芯金を、円筒状の金型内へ挿入して該第1のキャップによって該金型の一方の開口部を閉塞し、該芯金の他端に第2のキャップの中心穴を嵌合させると共に該第2のキャップによって該金型の他方の開口部を閉塞して、該芯金を金型の中心軸線上に保持した後、前記第1のキャップと前記第2のキャップとの間に前記弾性層の材料を注入し、前記芯金の周囲に該弾性層を形成する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようにしてOAローラを製造する場合、第1のキャップに嵌合された芯金の他端に第2のキャップを嵌合させる際に、当該芯金の他端がうまく固定されず、該芯金の他端を、自動的にスムースに第2のキャップに嵌入させることができず、生産性を向上させることができないという問題があった。特に、金型を、その中心軸線が水平に向くように配置して、芯金の他端に第2のキャップを嵌合させようとした場合には、どうしても重力によって、芯金の他端は金型円筒の中心軸線から下に垂れ下がって位置するため、この嵌入が極めて難しかった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点を解決し、従来よりも、第2のキャップを容易にスムースに芯金他端に嵌入させることが可能なOAローラの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>は、芯金の周囲に弾性層を有するOAローラを製造するに際し、芯金の一端に第1のキャップの中心穴を嵌合させ、当該第1のキャップに嵌合された芯金を、両端が開口した円筒状の金型の内へ挿入して該第1のキャップによって該金型の一方の開口部を閉塞し、該芯金の他端に第2のキャップの中心穴を嵌合させると共に該第2のキャップによって該金型の他方の開口部を閉塞し、該芯金を金型の中心軸線上に保持した後、前記第1のキャップと前記第2のキャップとの間に前記弾性層の材料を注入し、前記芯金の周囲に該弾性層を形成するOAローラの製造方法において、
該第1のキャップによって一方の開口部が閉塞された金型を、中心軸線を水平に向けて配置した状態で、前記金型の、他方の開口部側の中心軸線より下方に配置された芯金支持機構を上昇させることにより、前記芯金の他端を持ち上げて該芯金を金型の中心軸線上に保持することを特徴とするOAローラの製造方法である。
【0007】
<2>は、<1>において、前記芯金支持機構として、金型の中心軸線の左右に張り渡されたストリングを用いることを特徴とするOAローラの製造方法である。
【0008】
<3>は、<2>において、前記ストリングとして、ピアノ線、もしくは、有機繊維コードを用いることを特徴とするOAローラの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
<1>によれば、前記金型の、他方の開口部側の中心軸線より下方に配置された芯金支持機構を上昇させることにより、前記芯金の他端を持ち上げて該芯金を金型の中心軸線上に保持するので、芯金他端を第二のキャップの中心に対応する位置に待機させることができ、このことによって、第2のキャップと芯金とのスムースな嵌合を容易に実現することができる。
【0010】
<2>によれば、前記芯金支持機構として、金型の中心軸線の左右に張り渡されたストリングを用いるので、芯金支持機構を省スペースなものとすることができ、特に、芯金支持機構の、芯金長さ方向の厚さを抑えることができ、キャップや金型と干渉することなく芯金の他端を上昇させることができる。
【0011】
<3>によれば、前記ストリングを、ピアノ線、有機繊維コードを用いるので、芯金支持機構のスペースを一層小さいものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず、本発明の製造方法によって得られるOAローラの一例について、その長さ方向断面を示す図1を参照して説明する。図1において、1は芯金を、2は芯金1の周囲に形成された弾性層を示す。なお、図示例のOAローラ10は、弾性層2の外側に、弾性層2よりも硬度の高い1層以上の表面層(図示せず)を有してもよい。
【0013】
また、芯金1の形状は、中実、中空のいずれであってもよい。さらに、弾性層2の材料としては、特に限定されないが、ポリウレタン、ゴム及びこれらの発泡体などOAローラの弾性層に通常使用される材料が挙げられる。なお、製造するOAローラの使用目的に応じて、上記弾性層2の材料に一般に使用されている各種導電性付与剤を添加して、OAローラに導電性を付与してもよい。
【0014】
図2は、本発明に係るOAローラの製造方法に用いられる芯金組み付け装置を、芯金1とその一端に嵌合された第1のキャップ5とを金型21に組み付けた状態で示す側面図であり、図3は、図2のA−A矢視に対応する矢視図、図4は、図2のB−B矢視に対応する矢視図である。芯金組み付け装置30は、金型21を、その中心軸線CLを水平に向けた姿勢で固定する固定治具31A、31B、31Cと、これらを進出させることによって金型21を固定し、これらを後退させることによって金型21の固定を開放するそれぞれの固定治具移動手段32A、32B、32Cと、芯金1の他端を、その中心が金型21の中心軸線CLと一致する位置まで上昇させるストリング25と、ストリング25を支持するストリング台26と、ストリング台26を上下させるストリング上下手段27と、第2のキャップ7を保持するキャップ把持具34と、このキャップ把持具34を、キャップ7の中心が中心軸線CLに合致した状態を保ちながら移動させるキャップ挿入手段35を具えて構成される。なお、ストリング25は、芯金1の他端を上昇させる際の芯金支持機構として機能する。
【0015】
ここで、第1のキャップ5は、金型21の一方の開口部22に挿入されてこの開口部22を閉塞するが、ストリング25は、金型21の他方の開口部23に近接する位置で、中心軸線CLの下方に、中心軸線CLの左右に張り渡されて設けられている。また、第2のキャップ7を金型21に挿入するキャップ挿入手段35も、他方の開口部23側に配置される。
ストリング25としては、ピアノ線、もしくは、有機繊維コードを用いるのが好ましい。
【0016】
図5〜図10は、本発明のOAローラの製造方法を説明するための図である。本発明のOAローラの製造方法においては、まず、図5に示すように、芯金1の一端に第1のキャップ5の中心穴を嵌合させる。次いで、図6に示すように、第1のキャップ5に嵌合された芯金1を、中心軸線CLを水平に向けて両端が開口した円筒状の金型21内へ挿入し、第1のキャップ5によって金型21の一方の開口部22を閉塞する。
【0017】
このとき、芯金1の他端は、自重によって垂下し、金型21の中心軸線CLから下方に位置しているが、図6に示した状態のあと、ストリング25を、図7に示すように、予め定められた高さまで上昇させることにより、芯金1の他端を、中心軸線CLと合致する位置まで持ち上げてその位置に保持する。
【0018】
次いで、図8に示すように、キャップ挿入手段35を作動させ、把持具34で把持した第2のキャップ7を進出させ、その中心穴に芯金1の他端を嵌入させる。このとき、第2のキャップ7は、ストリング25と干渉しないよう、金型21の他方の開口部23には未だ挿入されてはいない。
【0019】
この状態で、図9に示すように、ストリング上下手段27を作動させてストリング25を下降させたあと、第2のキャップ7をさらに進出させて金型21の他方の開口部23に挿入する。
【0020】
このあと、弾性層2形成する材料を、金型21のキャビティ11に注入し、金型21のキャビティ11をこの材料で充満させたあと、加熱し硬化させて弾性層2を形成し、所定時間経過したのち、芯金1と弾性層2とよりなるOAローラ10を金型21から取り出して一連の工程を終了する。
【0021】
なお、上記の説明においては、最初から最後までのすべての工程を、金型21を、その中心軸線CLが水平に向く姿勢に配置して処理するよう構成したが、ストリング25を上昇させて、芯金1の他端を、中心軸線CLと合致する位置まで持ち上げたあと、第二のその位置に保持して、第2のキャップ7を、芯金1の他端に嵌合させ、金型21の他方の開口部23に挿入するまでの工程を除くいずれかの工程を、金型21を、その中心軸線CLが水平に向かない姿勢に配置して処理することができる。
【0022】
また、上記の説明においては、芯金支持機構として、ストリング25を用いたが、図11に示すように、ストリング25に代えて、中心軸の左右に掛け渡された薄板36を用いることもできる。なお、図11(a)は、図4に対応させて示す、芯金組み付け装置の一部分を示す図であり、図11(b)は、図11(a)の矢視a−aに対応する断面図である。
【0023】
ここで、第1のキャップ5と第2のキャップ7にはキャビティ11に通じる穴5a及び7aが設けられ、これらの穴5a及び7aは、材料を注入する金型一方側の第1のキャップ5又は第2のキャップ7のいずれかにおいては材料を注入するための注入口となり、金型他方側の第1のキャップ5又は第2のキャップ7のいずれかにおいては材料注入時にキャビティ11内の空気を排出するための排気口として機能し、図示例では、穴5aが材料の注入口となり、穴7aが排気口となっている。なお、第1のキャップ5及び第2のキャップ7の材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン等の樹脂が挙げられる。
【0024】
なお、弾性層2の外側に表面層を設ける場合には、シャフト1の周囲に弾性層2が形成されたものを金型21から脱型した後に、表面層となる材料を常法に従って弾性層2の外表面に塗装すればよく、塗装方法としては、ディップ塗装法、スプレー塗装法又はロールコータ塗装法が挙げられる。
【0025】
以下に、本発明に係る製造方法に基づいてOAローラを製造した実施例、および、それと比較する目的で、本発明によらない製造方法に基づいて製造を行った比較例について以下に説明する。
【実施例】
【0026】
実施例および比較例のOAローラの製造は以下の方法に従って行った。すなわち、径が
6mmで、長さが250mmの鉄製の芯金1の一端に第1のキャップ5の中心穴を勘合させたものを、内径10mmおよび長さ300mmの両端が開口した円筒状金型21内へ挿入して第1のキャップ5によって金型21の一方の開口部を閉塞したものを用意し、実施例においては、ストリング25としてピアノ線を用い、図6〜図9を参照して説明したところに基づいて芯金を金型に組み付け、一方、比較例においては、ストリング25により芯金1の他端を上昇させる行程を省いた方法で芯金1を金型21に組み付けた。
【0027】
そして、実施例および比較例のそれぞれの方法で100本のOAローラを製造すべく、実験を行い、自動で工程を止めることなく芯金1を金型21に組み付けることに失敗した本数をカウントし、その割合を故障率として求めた。結果を表1に示す。表1に示すとおり、比較例の方法では、わずか20%のOAローラしか芯金の組み付けに成功しなかったのに足して、実施例の製造方法に基づく工程では、100%、問題なく組み付けられており明らかに、本発明の製造方法によって、生産性を大幅に向上させることができることがわかる。
【0028】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の製造方法によって得られるOAローラの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の製造方法に用いる芯金組み付け装置を示す側面図である。
【図3】図2における、A−A矢視に対応する矢視図である。
【図4】図2における、B−B矢視に対応する矢視図である。
【図5】本発明に係る製造方法を説明するための図である。
【図6】図5に続く工程を示す金型の断面図である。
【図7】図6に続く工程を示す金型の断面図である。
【図8】図7に続く工程を示す金型の断面図である。
【図9】図8に続く工程を示す金型の断面図である。
【図10】図9に続く工程を示す金型の断面図である。
【図11】芯金組み付け装置の一部分を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 シャフト
2 弾性層
5 第1のキャップ
5a 第1のキャップの穴
7 第2のキャップ
7a 第2のキャップの穴
10 OAローラ
11 キャビティ
21 金型
22 金型の一方の開口部
23 金型の他方の開口部
25 ストリング
26 ストリング台
27 ストリング上下手段
30 芯金組み付け装置
31A、31B、31C 固定治具
32A、32B、32C 固定治具移動手段
34 キャップ把持具
35 キャップ挿入手段
36 薄板
CL 金型の中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金の周囲に弾性層を有するOAローラを製造するに際し、芯金の一端に第1のキャップの中心穴を嵌合させ、当該第1のキャップに嵌合された芯金を、両端が開口した円筒状の金型の内へ挿入して該第1のキャップによって該金型の一方の開口部を閉塞し、該芯金の他端に第2のキャップの中心穴を嵌合させると共に該第2のキャップによって該金型の他方の開口部を閉塞し、該芯金を金型の中心軸線上に保持した後、前記第1のキャップと前記第2のキャップとの間に前記弾性層の材料を注入し、前記芯金の周囲に該弾性層を形成するOAローラの製造方法において、
該第1のキャップによって一方の開口部が閉塞された金型を、中心軸線を水平に向けて配置した状態で、前記金型の、他方の開口部側の中心軸線より下方に配置された芯金支持機構を上昇させることにより、前記芯金の他端を持ち上げて該芯金を金型の中心軸線上に保持することを特徴とするOAローラの製造方法。
【請求項2】
前記芯金支持機構として、金型の中心軸線の左右に張り渡されたストリングを用いることを特徴とする請求項1に記載のOAローラの製造方法。
【請求項3】
前記ストリングとして、ピアノ線、もしくは、有機繊維コードを用いることを特徴とする請求項2に記載のOAローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−245531(P2007−245531A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72228(P2006−72228)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】