説明

OATP選択的阻害性を有する化合物、及び該化合物を含むOATPの選択的阻害剤

【課題】OATPを選択的に阻害する化合物、及びOATPを選択的に阻害する阻害剤を提供する。
【解決手段】下記式1で示される化合物、及びその塩:


(式中、Xはカルボキシル基、又はスルホン酸基で置換されたフェニル基又はビフェニル基を示し;Yはカルボニル(-CO-)、スルフィニル(-SO-)、又はスルホニル(-SO2-)を示し;かつZは−NH(R1)で示される官能基で、R1はアルキル、シクロアルキルアリール基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機アニオントランスポーター(OATP)群を選択的に阻害する化合物、特に、アミド型のカルボン酸、スルホン酸、又はそれらの塩に関するものである。なお本発明における有機アニオントランスポーター(OATP)とは、そのタンパク質をコードする遺伝子がThe Human Genome OrganisationによってSolute carrier organic anion transporter family(SLCO)と定義される遺伝子ファミリーに属する一連のタンパク質の事を指し、別名で呼ばれるものを区別するものではない。また、本発明は、該化合物を含むOATPの選択的阻害剤に関するものである。さらに本発明は、OATPの阻害作用に基づきOATPの機能解析を行い、OATPの薬物動態に対する寄与率の算定や、薬物相互作用の推定等に利用する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、薬剤の細胞内輸送にかかわるタンパク質として注目を集めているタンパク質の一つにトランスポーターがある。生体を構成する細胞は脂質二重膜と呼ばれる細胞膜に包まれているため、そのままでは生体に必須の糖やアミノ酸などの水溶性物質は、この細胞膜を通過することが出来ない。このため細胞膜にはこのような栄養素を取り込むための輸送体が備わっており、このような輸送体の一つがトランスポーターである。
【0003】
該トランスポーターは、上記の生体内の栄養素などの物質輸送に関わり生体の恒常性を保つのに大きな役割を果たすだけでなく、水溶性の薬剤の取り込み、及びその代謝産物の排出など、種々の外因性薬剤の体内動態にも大きく関与しておりその生物学的意義は非常に大きい。例えば、薬物を投与した場合、その体内動態は1)投与部位から循環血への吸収、2)組織への分布、3)肝代謝、及び4)胆汁、又は尿中排泄の4段階によって行われるが、このいずれの段階においてもトランスポーターは大きな役割を持っていることが知られている(非特許文献1)。
【0004】
例えば、血液脳関門(BBB)には、脳で必要な物質である水溶性の糖、アミノ酸、モノカルボン酸、アミン、カルニチン、又はホルモン等を輸送するためにそれぞれ独立して個別にトランスポーターが発現している。その一方で、異物となるシクロスポリンやビンクリスチンなどの薬剤は、脂溶性であるために一度は膜を透過するものの、血液脳関門に発現しているP-gpやMRPなどの各種トランスポーターにより排泄される。その結果、これら薬剤は脳内への流入が妨げられることとなり、その脳への影響が回避されるのである(非特許文献1)。
【0005】
また、消化管における栄養素吸収にも多くのトランスポーターが働いており、アミノ酸を輸送するLAT、ペプチドを輸送するPEPT、糖を輸送するSGLTなどの存在が知られている。さらに該SGLT1は各種配糖体の吸収にも働くことから、薬剤の配糖体化による吸収促進の可能性が示唆されている。このようにトランスポーターは薬剤の体内動態の改善に利用できると期待されている(非特許文献2)。
【0006】
このような状況から、近年、トランスポーターの研究が盛んになり、その実態が徐々に明らかとなり、トランスポーターの分子認識機構が解明されつつある(非特許文献3)。
例えば近年、痛風治療薬として広く用いられているプロベネシド、ベンズブロマロンなど尿酸再吸収阻害剤の作用メカニズムの解明がなされ、該再吸収阻害が尿酸トランスポーターであるURAT1の阻害作用に基づくものであることが明らかとなった(非特許文献4)。
【0007】
該作用メカニズムの解明が契機となって、近年ではトランスポーターが医薬品開発における標的分子として期待されるようになり、トランスポーターを利用した医薬品開発も盛んに行われるなど、医薬品開発におけるトランスポーターの役割はますます大きくなってきている(特許文献1〜5)。
【0008】
トランスポーターには上述のように多くの種類が存在することが知られているが、その一つとして、胆汁酸の取り込み研究により発見された有機アニオントランスポーター(OATP:Organic Anion transporting polypeptide)がある。胆汁酸は肝細胞内部でコレステロールより生合成された後に、消化管に分泌され、再び消化管内から再吸収される腸肝循環を行っている。この血中に取り込まれた胆汁酸の肝細胞への吸収を担うタンパク質がOATPである(非特許文献5)。
【0009】
該OATPは、その名の示す通り、主にアニオン性化合物を認識して選択的に輸送するトランスポーターであり、該アニオン性化合物としては、内因性アニオン性化合物として、前述の胆汁酸のほか、プロスタグランジンE2、トロンボキサンB2、ロイコトリエンC4、甲状腺ホルモンなど、外因性アニオン性化合物としては、プラバスタチン、メトトレキサレートなどが挙げられる。また該OATPは疎水性薬物の抱合体(グルタチオン、グルクロン酸、硫酸などの酸性抱合体)の輸送にも関与していることが知られている(非特許文献5)。
【0010】
該OATPにはOATP-A, B, C, D, E, 8など多くのサブタイプが存在し、このうちOATP-Aは脳に高発現しており、OATP-B, C,及び8は肝臓に、OATP-B, D, 及びEは末梢の臓器に広範に高発現していることが知られている。特に、OATP-CやOATP-8は肝臓に選択的に高発現しており、胆汁酸であるタウロコール酸(TCA)、性ホルモン誘導体であるエストロン-3-サルフェート(E1-3S)、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)、高脂血症治療剤であるスタチン系薬剤(プラバスタチン、フルバスタチン)、抗結核薬(リファンピシン)など広い分子認識性(下図参照)を示すことから(非特許文献5、及び6)、肝臓の薬物輸送において大きな役割を担っている。例えば、高脂血症薬として有名なプラバスタチンは他のスタチン系薬剤と比べて標的となる肝臓に対して高い移行性を示すことが知られているが、この組織選択性にはOATP-Cが関与している。すなわち、プラバスタチンは肝臓に高発現しているOATP-Cを介して輸送されることで高い肝移行性を示しているのである。
【0011】
【化1】

【0012】
またOATP-8は肝臓の他に、胃がん、大腸がん、膵がんなど各種消化器固形がんにおいて高発現していることから、OATP-8を利用した抗癌剤の開発が期待されている(非特許文献5)。
このような理由から、現在、OATPの薬剤輸送機構を解明すべく研究が盛んに行われている。薬剤の輸送機能の解明は、新規の薬剤を開発する際の薬物動態を調査する上で大変重要である。例えば、医薬品開発において薬物動態を推定するには、個々の薬剤の輸送に関与するトランスポーターの情報を得る必要があり、各トランスポーターの薬物動態への寄与率を推定することが必要となってくる。このような目的でトランスポーターの輸送活性を確認するには、それぞれのトランスポーターの特異的な阻害剤を発見することが必要となってくる(非特許文献5、7、及び8)
現在、OATPを阻害する薬物としてスルホブロモフタレイン(BSP)やエストロン-3-サルフェート(E1-3S)、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)など、多くの薬剤が知られているが(非特許文献9)。これらのOATPに対する選択性は低く、前記目的で使用できる薬物は限られており、OATPを選択的に阻害する薬剤が望まれている。
【0013】
【化2】

【特許文献1】特開2004-339159号公報
【特許文献2】特開2004-081196号公報
【特許文献3】特開2005-247716号公報
【特許文献4】再表2004/032966号公報
【特許文献5】国際公開03/066574号パンフレット
【0014】
【非特許文献1】YAKUGAKU ZASSHI Vo.122 (12), pp. 1037 (2002)
【非特許文献2】ファルマシア Vol. 39, pp.441(2003)
【非特許文献3】蛋白核酸酵素 Vol.46, No.5, pp.583-586 (2001)
【非特許文献4】ファルマシア Vol.39, pp.431(2003)
【非特許文献5】蛋白核酸酵素 Vol.46, No.5, pp.612-620 (2001)
【非特許文献6】Annu. Rev Pharmacol Toxicol Vol.45, pp.689-723 (2005)
【非特許文献7】第5回製剤研究フォーラムプログラム(2003年度 万有生命科学振興国際交流財団主催 第5回製剤研究フォーラム)
【非特許文献8】薬理と治療、2003、31 supplement、S-81
【非特許文献9】Gastroenterology Vol.120, pp525-533 (2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、OATPを選択的に阻害する化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、トランスポーターの研究、及び医薬品開発に有用な、OATPを選択的に阻害する阻害剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するために研究を行った結果、本発明者らは、特定の化合物、特にアミド型のカルボン酸、スルホン酸、又はそれらの塩が、優れたOATP選択的阻害性を有するという知見を得て、本発明を完成した。したがって、本発明は、下記式1で示される化合物、及びその塩を提供する。
【0017】
【化3】

【0018】
式1中、Xは、
【化4】

で示される官能基であり、式中R1はカルボン酸(-COOH)、又はスルホン酸(-SO3H)を示し;
【0019】
Yはカルボニル(-CO-)、スルフィニル(-SO-)、又はスルホニル(-SO2-)を示し;かつ
Zは−N(R)(R)で示される官能基であり、式中、R2は置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基、置換され、又は置換されていない炭素原子数3〜10の環状アルキル基、若しくは置換され、又は置換されていない環員数6〜12の芳香環であり、R3は水素、若しくは置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R2,とR3とは互いに結合して環構造を形成しても良い。
ただし、Zには以下の官能基は含まれない。
【0020】
【化5】

【0021】
なお、式1中のZは、−N(R)(R)で示される官能基である。該式中、R2は置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数3〜6のアルキル基である。好ましい例を挙げると、n-プロピル基、イソプロピル基、及びtert-ブチル基がある。また、該R2は、置換され、又は置換されていない炭素原子数3〜10、好ましくは炭素原子数5〜10環状アルキル基であり、好ましい例を挙げると、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びアダマンチル基などがある。さらに該R2は、置換され、又は置換されていない環員数6〜12、好ましくは環員数6〜10の芳香環であり、好ましい例を挙げると、フェニル基、クロロフェニル基、及びトリフルオロフェニル基がある。また該R3は、水素、若しくは置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基であり、好ましくは水素である。なお、R2,とR3とは互いに結合して環構造を形成しても良い。
また、本発明は、下記式で1示される化合物、又はその塩を有効成分とするOATP選択的阻害剤を提供する。
【0022】
【化6】

【0023】
式1中、Xは、
【化7】

で示される官能基であり、式中R1はカルボン酸(-COOH)、又はスルホン酸(-SO3H)を示し;
【0024】
Yはカルボニル(-CO-)、スルフィニル(-SO-)、又はスルホニル(-SO2-)を示し;かつ
Zは−N(R)(R)で示される官能基であり、式中、R2は置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基、置換され、又は置換されていない炭素原子数3〜10の環状アルキル基、置換され、又は置換されていない環員数6〜12の芳香環、若しくは置換され、又は置換されていない環員数5〜12の複素芳香環であり、R3は水素、若しくは置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R2,とR3とは互いに結合して環構造を形成しても良い。
また、本発明は、下記式1で示される化合物、又はその塩を有効成分として含む、化学物質の輸送におけるOATPの機能解析用試薬を提供する。
【0025】
【化8】

【0026】
式1中、Xは、
【化9】

で示される官能基であり、式中R1はカルボン酸(-COOH)、又はスルホン酸(-SO3H)を示し;
【0027】
Yはカルボニル(-CO-)、スルフィニル(-SO-)、又はスルホニル(-SO2-)を示し;かつ
Zは−N(R)(R)で示される官能基であり、式中、R2は置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基、置換され、又は置換されていない炭素原子数3〜10の環状アルキル基、置換され、又は置換されていない環員数6〜12の芳香環、若しくは置換され、又は置換されていない環員数5〜12の複素芳香環であり、R3は水素、若しくは置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R2,とR3とは互いに結合して環構造を形成しても良い。
また、本発明は、下記式1で示される化合物、又はその塩を有効成分として含む、化学物質の輸送におけるOATPの寄与率算定用試薬を提供する。
【0028】
【化10】

【0029】
式1中、Xは、
【化11】

で示される官能基であり、式中R1はカルボン酸(-COOH)、又はスルホン酸(-SO3H)を示し;
【0030】
Yはカルボニル(-CO-)、スルフィニル(-SO-)、又はスルホニル(-SO2-)を示し;かつ
Zは−N(R)(R)で示される官能基であり、式中、R2は置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基、置換され、又は置換されていない炭素原子数3〜10の環状アルキル基、置換され、又は置換されていない環員数6〜12の芳香環、若しくは置換され、又は置換されていない環員数5〜12の複素芳香環であり、R3は水素、若しくは置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R2,とR3とは互いに結合して環構造を形成しても良い。
また、本発明は、下記式1で示される化合物、又はその塩を有効成分として含む、化学物質の肝移行阻害剤を提供する。
【0031】
【化12】

【0032】
式1中、Xは、
【化13】

で示される官能基であり、式中R1はカルボン酸(-COOH)、又はスルホン酸(-SO3H)を示し;
【0033】
Yはカルボニル(-CO-)、スルフィニル(-SO-)、又はスルホニル(-SO2-)を示し;かつ
Zは−N(R)(R)で示される官能基であり、式中、R2は置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基、置換され、又は置換されていない炭素原子数3〜10の環状アルキル基、置換され、又は置換されていない環員数6〜12の芳香環、若しくは置換され、又は置換されていない環員数5〜12の複素芳香環であり、R3は水素、若しくは置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R2,とR3とは互いに結合して環構造を形成しても良い。
さらに、本発明は、下記式1で示される化合物、又はその塩を有効成分として含む、肝毒性を持つ化学物質の肝での毒性発現を低下させる薬剤を提供する。
【0034】
【化14】

【0035】
式1中、Xは、
【化15】

で示される官能基であり、式中R1はカルボン酸(-COOH)、又はスルホン酸(-SO3H)を示し;
【0036】
Yはカルボニル(-CO-)、スルフィニル(-SO-)、又はスルホニル(-SO2-)を示し;かつ
Zは−N(R)(R)で示される官能基であり、式中、R2は置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基、置換され、又は置換されていない炭素原子数3〜10の環状アルキル基、置換され、又は置換されていない環員数6〜12の芳香環、若しくは置換され、又は置換されていない環員数5〜12の複素芳香環であり、R3は水素、若しくは置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R2,とR3とは互いに結合して環構造を形成しても良い。
【0037】
(定義)
本明細書中において、「アルキル基」とは直鎖、分岐鎖、又は環状の飽和の炭化水素基をいう。例を挙げると、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、及びシクロヘキシル基等がある。
【0038】
本明細書中において、「環状アルキル基」とは、環状の炭化水素基を意味し、例を挙げると、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、アダマンチル基等がある。
本明細書中において、「芳香族環」とは、炭化水素からなる芳香族環を意味し、例を挙げると、単環ではベンゼン環、多環式では、ナフタレン環、アントラセン環等がある。
本明細書中において、「複素芳香族環」とは、環中に窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子のいずれかのヘテロ原子を、1以上含む芳香族環を意味する。例を挙げると、単環では、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環等がある。また、多環式では、例えば、キノリン環、イソキノリン環、ベンズイミダゾール環、インダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環、インドール環、ベンズフラン環、ベンズチオフェン環等がある。
【0039】
また、本明細書中において、各置換基の表現中に含まれる「置換され」ている基とは、アルキル基、ヒドロキシル基、チオール基、ホルミル基、カルボキシル基、スルホニル基、アミノ基、アミド基、カルバモイル基、シアノ基、アルコキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アミノスルホニル基、ジアルキルアミノスルホニル基、メタンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、フェニル基、モルホリノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基等であり、1個又は複数の場合を表す。ここで、アルコキシ基とは酸素原子を介してアルキル基が結合しているものを意味し、アシルアミノ基とは、アルキル基、又はフェニル基がカルボニル基を介してアミノ基に結合しているものを意味する。
【発明の効果】
【0040】
本発明により、OATP選択的阻害性を有する化合物、新規なカルボン酸、スルホン酸、及びそれらの塩、並びに該化合物を含むOATPの選択的阻害剤が提供される。この新規なOATP阻害剤は、OATP阻害作用に基づくOATP機能解析に用いることが出来るほかに、併用薬剤の肝移行を阻害することにより肝代謝や胆汁中排泄を阻害し、薬剤の血中濃度を高めて標的臓器への移行を促進し、さらに、肝臓での毒性発現を低減することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
(新規化合物)
本発明の、前記式1で表される新規な化合物の具体的、かつ好ましい例を挙げると、次のとおりである。なお参考のため、図2にこれらの化合物の構造式を示した。
2'-(4-フェニルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸
(化合物1);
2'-[4-(4-tert-ブチル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸 (化合物2);
2'-[4-(4-ジメチルアミノ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸 (化合物3);
2'-[4-(モルホリン-4-イル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸 (化合物4);
2'-[4-(3-ベンジルオキシ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸 (化合物5);
【0042】
2'-[4-(3-メトキシカルボニル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸 (化合物6);
2'-[4-(4-メトキシ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸 (化合物7);
2'-[4-(4-フェノキシ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸 (化合物8);
2'-[4-(4-メトキシカルボニル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸 (化合物9);
2'-[4-(2-メトキシカルボニル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸 (化合物10);
【0043】
2'-(4-シクロヘキシルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸
(化合物11);
2'-(4-イソプロピルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸
(化合物12);
2'-(4-プロピルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸
(化合物13);
2'-(4-ヘキシルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸
(化合物14);
2'-[4-(ピペリジン-1-カルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸
(化合物15);
2'-(4-メチルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸
(化合物16);
【0044】
2'-[4-(アダマンタン-1-イルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸 (化合物17);
2'-[4-(4-クロロ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸
(化合物18);
2'-(4-p-トリルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸
(化合物19);
2'-(4-(3-クロロ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸
(化合物20);
2'-(4-シクロヘプチルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸
(化合物21);
2'-(4-(4-フルオロ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸 (化合物22);
【0045】
2'-(4-(3,5-ジクロロ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸 (化合物23);
2'-(4-(4-トリフルオロメチル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸 (化合物24);
2'-(4-シクロペンチルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸
(化合物25);
N-(4-フェニルカルバモイル-フェニル)-フタラミン酸
(化合物26);
2-(4-フェニルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ベンゼンスルホン酸
(化合物27)。
【0046】
本発明の化合物は塩の形態で使用することできる。その塩は、特に制限されるものではなく、用途に応じて、有機塩、及び無機塩とすることができる。例えば、有機酸又は無機酸の付加塩である。該無機酸付加塩には、例えば、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素塩、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸第一水素塩、リン酸第二水素塩、酢酸塩などがある。なお、塩基化合物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウムなどを用いて塩形成をすることもできる。
【0047】
また、有機酸付加塩は、脂肪酸のモノカルボン酸、ジカルボン酸、ヒドロキシアルカン酸、ヒドロキシアルカン二酸、アミノ酸など、又は芳香族の酸、脂肪酸、芳香族のスルホン酸などの無毒な有機酸から誘導される塩、例えば、メタンスルホン酸塩、スルファミン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、ピルビン酸塩、シュウ酸塩、ステアリン酸塩、ケイ皮酸塩、アスパラギン酸塩、サリチル酸塩、グルコン酸塩などがある。
【0048】
有機塩基付加体としては、アンモニア、アルキルアミン、芳香族アミンなどの有機塩基から誘導される塩、例えばアンモニウム塩、ジメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、テトラブチルアンモニウム塩、シクロヘキシルアミン塩、ピペリジン塩、グアニジノ塩、アニリン塩等がある。
このような塩類は、通常、分散性、吸収性などが良く、試薬として、又は製剤上有利な特性を有する。該塩類は、本発明の技術分野で周知であり、適当な酸、又は塩基化合物との接触により容易に調製することができる。
【0049】
(新規化合物の製造)
本発明の化合物の製造方法を、図1に基づき包括的に説明する。なお、本発明の化合物の製造は、図1記載の方法に限定されるものではない。
(製造例1)
製造例1は、図1中の式6-1で示されるカルボン酸の製造方法である。以下、図1に沿って説明する。
(工程1-1a)
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸(1)を、有機溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド(以下DMF)、クロロホルムなど)に溶解させ、縮合剤(例えば、N-エチル-N-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(以下WSCI)塩酸塩など)を加え、助剤(例えば1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(以下HOBt)など)を加え、室温にて30〜60分反応させた後に、(2)で表される化合物を加え、室温にて1.5〜72時間撹拌することにより、目的の化合物(3)を得る。
【0050】
(工程1-1b)
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸(1)及び(2)で表される化合物を、有機溶媒(例えば、クロロホルムなど)に溶解させ、試薬(例えばジクロロトリフェニルホスホランなど)加え、過熱還流により4時間反応させることにより、目的の化合物(3)を得ることができる。
【0051】
(工程1-2)
工程1-1a、又は1-1bで得られた化合物(3)を、有機溶媒(例えば、メタノールなど)に溶解させ、例えば、塩酸のような強酸を加えて、室温にて2〜24時間撹拌することにより、目的の化合物(4)を得ることができる。
(工程1-3)
工程1-2で得られた化合物(4)を、有機溶媒(例えばDMFなど)に溶解させ、ジフェン酸無水物(5-1)を加え、塩基(例えばピリジンなど)を加えて室温にて16〜60時間撹拌することにより、目的の化合物(6-1)を得ることができる。
【0052】
(製造例2)
製造例2は、図1中の式6-2で示されるカルボン酸の製造方法である。以下、図1に沿って説明する。
(工程2-1)
工程1-2で得られた化合物(4)を、有機溶媒(例えばDMFなど)に溶解させ、無水フタル酸(5-2)を加え、塩基(例えばピリジンなど)を加えて室温にて16〜60時間撹拌することにより、目的の化合物(6-2)を得ることができる。
【0053】
(製造例3)
製造例3は、図1中の式6-3で示されるスルホン酸の製造方法である。以下、図1に沿って説明する。
(工程3-1)
工程1-3で得られた化合物(4)を、有機溶媒(例えばDMFなど)に溶解させ、2-スルホ安息香酸無水物(5-3)を加え、塩基(例えばピリジンなど)を加えて室温にて16〜60時間撹拌することにより、目的の化合物(6-3)を得ることができる。
【0054】
(新規化合物等の用途)
本発明の化合物、及びその塩は、有機アニオントランスポーター(OATP)の選択的阻害剤として使用することができる。なお、本発明のOATP選択的阻害剤、化学物質の輸送におけるOATPの機能解析を行う試薬、化学物質の輸送におけるOATPの寄与率を算定する試薬、化学物質の肝臓における毒性発現を低下させる薬剤、及び化学物質の肝移行阻害剤においては、本発明の化合物のみならず、各薬剤の説明に記載されている、その類似化合物の範囲まで使用することができる。
【0055】
本発明における、有機アニオントランスポーター(OATP)とは、アニオン性化学物質を認識して、選択的に輸送するトランスポーターポリペプチド(タンパク質)をいう。したがって、本発明のOATP選択的阻害剤は、アミノ酸や核酸などの生体アニオン性化学物質、胆汁酸、プロスタグランジンE2、トロンボキサンB2、ロイコトリエンC4、甲状腺ホルモンなどの各種内因性化学物質、アニオン性薬物である外因性化学物質、及び疎水性薬物の抱合体(グルタチオン、グルクロン酸、硫酸などの酸性抱合体)の輸送にも関与するトランスポーターを選択的に阻害するものである。
【0056】
また、本発明のOATP選択的阻害剤は、そのOATPの阻害作用に基づき薬物動態に対するOATPの寄与率の算定や、薬物相互作用の推定等に利用することができる。薬剤の取り込み試験において、本発明化合物を他の薬剤と併用した際には、薬剤のOATPによる輸送が阻害されることになる。従って本発明化合物を併用しなかった時と比較して、取り込み量が減少していた際には、その薬剤の取り込みにOATPが関与していることが推定できる。またその際の減少量から、輸送に関してOATPがどの程度関与しているのか、その寄与率を算定する事が可能である。更に、この取り込み量の変化から併用薬剤の薬効等の変化が推測できる。
【0057】
また、本発明の化学物質の肝移行阻害剤は、肝臓に高発現するOATP 、例えばOATP-CやOATP-8などの活性を阻害することで、アニオン性薬剤の肝移行を阻害するものである。
OATPにより肝に輸送され、かつ肝で代謝される事により有効血中濃度が維持できない薬剤と本発明化合物を併用した場合には、OATP阻害作用により肝への移行が抑制され、代謝が抑制されるため、その結果有効血中濃度の維持につながる。同様にOATPにより肝に輸送され、かつ肝での毒性を発現することが明らかとなった薬剤に関して、本発明の化合物と併用する事により、肝への移行が抑制され、肝への毒性が軽減する事となる。
【0058】
本発明の化学物質の肝移行阻害剤、及び肝臓における化学物質の毒性を低下させる薬剤を、医薬として用いる場合、その投与量、及び製剤方法は次の通りである。
本発明の薬剤は、経口投与又は非経口投与することができる。経口投与する場合、硬カプセル剤、軟カプセル剤、錠剤、顆粒剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、丸剤、トローチ錠、有効成分持続的開放剤、エリキシル剤、乳剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤などの形態で調剤することができる。非経口投与には、点滴、静脈注射、皮下注射、筋肉注射などの注射による投与、軟膏及び経皮剤による経皮的投与、油脂製坐剤、水溶性坐剤、座剤による直腸投与、外用剤、点眼剤、経鼻剤などの形態がある。また、該調剤は、製薬分野における通常の担体を用い、常法により容易に行うことができる。
【0059】
本発明の薬剤を経口投与形態に調剤する場合、汎用されている担体などの製剤用成分、例えば、充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、緩衝剤、等張化剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、コーティング剤、界面活性剤、吸収促進剤、保湿剤、湿潤剤、吸着剤、滑沢剤及び賦形剤などを用いることができる。また、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤などの添加剤を用いてもよい。
【0060】
具体的な例を挙げると、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸などの賦形剤、水、エタノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖などの崩壊剤、白糖、ステアリン酸、カカオバター、水素添加油などの崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤、グリセリン、デンプンなどの保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩等の滑沢剤などである。また、上記の各剤形について公知のドラッグデリバリーシステムの技術を採用し徐放化、局所適用化(トローチ、バッカル剤、舌下錠等)、薬物放出制御、腸溶性化、胃溶性化などを施すことができる。
【0061】
本発明の化合物を含む薬剤おける、該化合物、又はその塩の含有量は、その剤形に応じて異なるが、通常、全組成物中0.1〜100重量%、好ましくは0.3〜30重量%程度である。また、該化合物の投与量は対象となる患者の性別、年齢、体重、疾患の相違、症状の度合い、治療効果、又は投与方法等によって適宜決定されるが、経口投与の場合、成人1日当たり0.1〜5000mg、好ましくは1〜3000mg、非経口投与の場合、成人1日当たり0.1〜5000mg、好ましくは0.3〜3000mgの範囲内で、1日一回または数回に分けて投与する。もちろん、投与量は種々の条件で変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を超えて必要な場合もある。
【実施例】
【0062】
下記実施例に基づき、本発明のOATPを阻害する化合物の製造方法を具体的に説明する。なお、本実施例で用いた4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸は、渡辺化学工業社(広島)製であり、他の試薬類は当業者が容易に入手可能な市販品(例えば、東京化成社(東京)製、関東化学社(東京)製など)である。なお、下記実施例における「工程」とは、特に指摘がない限り、発明を実施するための最良の形態に記載されている、製造例の工程を意味する。
【0063】
(実施例1) 2'-(4-フェニルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸 (化合物1)の合成
(実施例1−1):(4-フェニルカルバモイル-フェニル)-カルバミン酸 tert-ブチル エステルの合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸200mgを用い、化合物(2)としてアニリン71.1mgを用いて、工程1-1aに従い、標記の化合物64.0mgを乳白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 313[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=1.50(9H,s), 7.06-7.10(1H,m), 7.32-7.36(2H,m), 7.59(2H,d,J=8.7Hz), 7.75(2H,dd,J=1.1, 8.6Hz), 7.88-7.91(2H,m), 9.70(1H,s), 10.08(1H,s).
【0064】
(実施例1−2):2'-(4-フェニルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸の合成
実施例1-1で得られた化合物73.8mgを用い、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物49.3mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 437[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=7.08(1H,tt,J=1.1,7.5Hz), 7.22-7.25 (2H,m), 7.31-7.35 (2H,m), 7.41 (1H,dt,J=1.4,9.0Hz), 7.48-7.55 (3H,m), 7.63 (2H,d,,J=8.8Hz), 7.64 (1H,dd,J=1.7,7.1Hz), 7.74 (2H,dd,J=1.1,8.6Hz), 7.81 (1H,dd,J=1.1,7.8Hz), 7.84-7.86 (2H,m), 19.09 (1H,s), 10.37 (1H,br).
【0065】
(実施例2):2'-[4-(4-tert-ブチル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物2)の合成
(実施例2−1):[4-(4-tert-ブチル-フェニルカルバモイル)-フェニル]-カルバミン酸 tert-ブチルエステルの合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸50.2mgを用い、化合物(2)として4-tert-ブチルフェニルアミン28.5mgを用いて、工程1-1aに従い標記の化合物73.7mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 369[M+H]+
1H NMR (500 MHz, CDCl3) :δ=1.32 (9H,s), 1.54 (9H,s), 6.68 (1H,s), 7.39 (2H,d,J=8.5Hz), 7.48 (2H,s,J=8.8Hz), 7.55 (2H,d,J=8.8Hz), 7.82 (2H,d,J=8.8Hz).
【0066】
(実施例2−2):2'-[4-(4-tert-ブチル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸の合成
実施例2-1で得られた化合物73.7mgを用い、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物38.8mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 493[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=1.27 (9H,s), 7.22 (2H,t,J=7.8Hz), 7.35 (2H,d,J=8.8Hz), 7.40 (1H,t,J=7.7Hz), 7.48-7.54 (3H,m), 7.58 (2H,d,J=8.5Hz), 7.64 (3H,m), 7.80 (1H,d,J=7.6Hz), 7.85 (2H,d,J=8.8Hz), 10.02 (1H,s), 12.80(1H,br).
【0067】
(実施例3): 2'-[4-(4-ジメチルアミノ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸 (化合物3)の合成
(実施例3−1):[4-(4-ジメチルアミノ-フェニルカルバモイル)-フェニル]-カルバミン酸 tert-ブチルエステルの合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸54.3mgを用い、化合物(2)としてN,N-ジメチル-ベンゼン-1,4-ジアミン25.9mgを用いて、工程1-1aに従い、標記の化合物29.4mgを白色固体として得た。
MS(EI,Pos):m/z= 355 [M]+
1H NMR (500 MHz, CDCl3) :δ=1.54 (9H,s), 2.94(6H,s), 6.66 (1H,s), 6.75 (2H,d,J=9.0), 7.47 (4H,d,J=8.3Hz), 7.61 (1H,s), 7.82 (2H,d,J=8.5Hz).
【0068】
(実施例3−2):2'-[4-(4-ジメチルアミノ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸の合成
実施例3-1で得られた化合物27.4mgを用い、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物13.1mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 480 [M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=2.85 (6H,s), 6.70 (1H,dd,J=2.0,7.1Hz), 6.92 (2H,dd,J=1.2,7.2Hz), 7.06 (1H,dd,J=3.1,5.9Hz), 7.19-7.29 (2H,m), 7.30-7.37 (4H,m), 7.41-7.45 (3H,m), 7.51 (2H,dd,J=5.5,8.8Hz), 7.75 (1H,d,J=8.8Hz), 9.79 (1H,s).
【0069】
(実施例4): 2'-[4-(モルホリン-4-イル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物4)の合成
(実施例4−1):[4-(4-モルホリン-4-イル-フェニルカルバモイル)-フェニル]-カルバミン酸 tert-ブチルエステルの合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸49.5mgを用い、化合物(2)として4-モルホリン-4-イル-フェニルアミン33.9mgを用いて、工程1-1aに従い標記の化合物18.3mgを褐色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 397 [M]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=1.49 (9H,s), 3.06 (4H,t,J=4.9Hz), 3.74 (4H,t,J=4.8Hz), 6.93 (2H,dd,J=2.3,7.1Hz), 7.56 (2H,d,J=8.8Hz), 7.60 (2H,d,J=9.3Hz), 7.87 (2H,dd,J=2.0,7.1Hz), 9.68 (1H,s), 9.90 (1H,s).
【0070】
(実施例4−2):2'-[4-(モルホリン-4-イル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸の合成
実施例4-1で得られた化合物18.3mgを用い、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物8.1mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 521 [M]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=2.91 (2H,br), 3.06 (2H,t,J=4.8Hz), 3.73 (2H,t,J=4.8Hz), 6.91 (2H,d,J=9.3Hz), 7.07-7.08 (1H,m), 7.23-7.26 (2H,m), 7.42-7.46 (2H,m), 7.52 (1H,d,J=8.8Hz), 7.57-7.60 (3H,m), 7.76 (1H,d,J=8.8Hz), 9.87 (1H,s).
【0071】
(実施例5): 2'-[4-(3-ベンジルオキシ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物5)の合成
(実施例5−1):[4-(3-ベンジルオキシ-フェニルカルバモイル)-フェニル]-カルバミン酸 tert-ブチルエステルの合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸49.8mgを用い、化合物(2)として3-ベンジルオキシ-フェニルアミン37.9mgを用いて、工程1-1aに従い、標記の化合物30.0mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 419[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=1.50 (9H,s), 5.09 (2H,s), 6.73 (1H,ddd,J=0.8,2.4,8.3Hz), 7.24 (1H,t,J=8.2Hz), 7.35 (2H,ddd,J=0.9,2.9,7.3Hz), 7.40 (2H,dt,J=1.2,7.1Hz), 7.46 (2H,dd,J=1.1,7.6Hz), 7.56-7.59 (3H,m), 7.88 (2H,dd,J=2.1,7.1Hz), 9.70 (1H,s), 10.05 (1H,s).
【0072】
(実施例5−2):2'-[4-(3-ベンジルオキシ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸の合成
実施例5-1で得られた化合物34.2mgを用い、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物8.6mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 543 [M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=5.08 (2H,s), 6.73 (4H,ddd,J=0.8,2.6,8.1Hz), 6.89 (1H,br), 7.06 (1H,br), 7.20-7.24 (3H,m), 7.31-7.35 (2H,m), 7.38-7.41 (2H,m), 7.43-7.47 (4H,m), 7.53 (4H,m), 7.58 (1H,t,J=4.4Hz), 7.76 (2H,d,J=8.5Hz), 10.02 (1H,s).
【0073】
(実施例6): 2'-[4-(3-メトキシカルボニル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物6)の合成
(実施例6−1):3-(4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ベンゾイルアミノ)-安息香酸メチルエステルの合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸75.0mgを用い、化合物(2)として3-アミノ安息香酸メチルエステル68.2mgを用いて、工程1-1aに従い、標記の化合物57.0mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 371[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=1.50 (9H,s), 3.87 (3H,s), 7.48-7.51 (2H,m), 7.59 (2H,d,J=8.8Hz), 7.68 (1H,dt,J=1.3,7.8Hz), 7.92 (2H,dd,J=2.0,6.8Hz), 7.08 (1H,ddd,J=1.0,2.2,8.1Hz), 8.45 (1H,t,J=2.0Hz), 9.72 (1H,s), 10.30 (1H,s).
【0074】
(実施例6−2):2'-[4-(3-メトキシカルボニル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸の合成
実施例6-1で得られた化合物82.3mgを用い、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物84.6mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 495[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=3.87 (3H,s), 7.18-7.23 (2H,m), 7.37-7.42 (2H,m), 7.46-7.54 (4H,m), 7.60 (2H,d,J=8.8Hz), 7.65-7.69 (2H,m), 7.78 (1H,d,J=7.6Hz), 7.88 (2H,d,J=8.8Hz), 8.05 (1H,ddd,J=1.0,2.2,8.3Hz), 8.44 (1H,t,J=1.8Hz), 10.31 (1H,s), 10.67 (1H,br).
【0075】
(実施例7): 2'-[4-(4-メトキシ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物7)の合成
(実施例7−1):[4-(4-メトキシ-フェニルカルバモイル)-フェニル]-カルバミン酸 tert-ブチルエステルの合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸75.0mgを用い、化合物(2)としてp-アニシジン57.9mgを用い、工程1-1aに従い、標記の化合物69.0mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 343[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=1.49 (9H,s), 3.74 (3H,s), 6.91 (2H,dd,J=2.3,6.8Hz), 7.57 (2H,d,J=8.5Hz), 7.65 (2H,dd,J=2.2,6.8Hz), 7.88 (2H,dd,J=2.0,6.8Hz), 9.68 (1H,s), 9.96 (1H,s).
【0076】
(実施例7−2):2'-[4-(4-メトキシ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸の合成
実施例7-1により得られた化合物65.4mgを用い、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物46.7mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 495[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=3.73 (3H,s), 6.90 (2H,dd,J=2.3,71.Hz), 7.01-7.02 (1H,m), 7.11-7.13 (1H,m), 7.28-7.30 (2H,m), 7.45-7.47 (2H,m), 7.54 (2H,d,J=8.8Hz), 7.60-7.64 (4H,m), 7.79 (2H,d,J=,8.8Hz), 9.96 (1H,s).
【0077】
(実施例8): 2'-[4-(4-フェノキシ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物8)の合成
(実施例8−1):[4-(4-フェノキシ-フェニルカルバモイル)-フェニル]-カルバミン酸 tert-ブチルエステルの合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸75.0mgを用い、化合物(2)として4-アミノジフェニルエーテル83.3mgを用いて、工程1-1aに従い、標記の化合物47.4mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 405[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=1.50 (9H,s), 6.97-7.04 (4H,m), 7.11 (1H,tt,J=1.0,6.9Hz), 7.36-7.40 (2H,m), 7.59 (2H,d,J=8.8Hz), 7.77 (2H,dt,J=2.8,7.2HZ), 7.88 (2H,dt,J=2.2,9.3Hz), 9.70 (1H,s), 10.12 (1H,s).
【0078】
(実施例8−2):2'-[4-(4-フェノキシ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸の合成
実施例8-1で得られた化合物43.8mgを用い、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物36.7mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 529[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=6.99 (2H,dt,J=1.0,7.9Hz), 7.01 (2H,d,J=9.0Hz), 7.04-7.04 (1H,m), 7.10 (1H,tt,J=1.1,7.6Hz), 7.14-7.15 (1H,m), 7.30-7.34 (2H,m), 7.36-7.39 (2H,m), 7.46-7.48 (2H,m), 7.56 (2H,d,J=8.5Hz), 7.62-7.66 (2H,m), 7.76 (2H,d,J=9.0Hz), 7.82 (2H,d,J=8.5Hz), 10.14 (1H,s).
【0079】
(実施例9): 2'-[4-(4-メトキシカルボニル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物9)の合成
(実施例9−1):4-(4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ベンゾイルアミノ)-安息香酸メチルエステルの合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸124.5mgを用い、化合物(2)として4-アミノ安息香酸メチルエステル76.6mgを用いて、工程1-1bに従い、標記の化合物81.2mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 371[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=1.50 (9H,s). 3.35 (3H,s), 7.60 (2H,d,J=9.0), 7.90-7.97 (6H,m), 9.74 (1H,s), 10.40 (1H,s).
【0080】
(実施例9−2):2'-[4-(4-メトキシカルボニル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸の合成
実施例9-1で得られた化合物77.7mgを用い、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物18.2mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 495[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=3.36 (3H,s), 7.12 (1H,d,J=7.3Hz), 7.23 (2Ht,J=7.1Hz), 7.41 (2H,q,J=7.2Hz), 7.48-7.55 (3H,m), 7.61 (2H,d,J=8.8Hz), 7.67 (1H,dd,=1.1,7.3Hz), 7.81 (2H,d,J=7.8Hz), 7.87 (2H,d,J=8.8Hz), 7.93-7.96 (3H,m), 10.41 (1H,s).
【0081】
(実施例10): 2'-[4-(2-メトキシカルボニル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物10)の合成
(実施例10−1):2-(4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ベンゾイルアミノ)-安息香酸メチルエステルの合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸124.5mgを用い、化合物(2)としてアントラニル酸メチルエステル76.2mgを用いて工程1-1bに従い、標記の化合物99.2mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 371[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=1.50 (9H,s), 3.90 (3H,s), 7.23 (1H,t,J=7.1Hz), 7.65 (2H,d,J=8.5Hz), 7.68-7.70 (1H,m), 7.88 (2H,dJ=8.8Hz), 8.02 (1H,dd,J=1.6,8.1Hz), 8.58 (1H,dd,J=1.0,8.5Hz), 9.79 (1H,s), 11.54 (1H,s).
【0082】
(実施例10−2):2'-[4-(2-メトキシカルボニル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸の合成
実施例10-1で得られた化合物92.5mgを用い、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物34.1mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 495[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ= 3.89 (3H,s), 7.15 (1H,d,J=7.6Hz), 7.19-7.24 (2H,m), 7.35-7.38 (1H,m), 7.41-7.44 (1H,m), 7.47-7.53 (2H,m), 7.63-7.69 (4H,m), 7.75 (1H,d,J=7.8Hz), 7.81-7.84 (2H,m), 8.01 (1H,dd,J=1.5,7.9Hz), 8.55 (1H,dd,J=0.7,8.4Hz), 11.50 (1H,s).
【0083】
(実施例11): 2'-(4-シクロヘキシルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物11)の合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸118.6mgを用い、化合物(2)としてシクロヘキシルアミン45.0mgを用いて、工程1-1a、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物126.5mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 443[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=1.13 (1H,d,J=12.5Hz), 1.23-1.32 (4H,m), 1.60 (1H,d,J=12.7Hz), 1.71 (2H,s), 1.78 (2H,s), 3.71 (1H,s), 7.21-7.23 (2H,m), 7.40 (1H,t,J=7.6Hz), 7.47-7.54 (4H,m), 7.65 (1H,dd,J=1.6,7,6Hz), 7.72 (2H,d,J=8.8Hz), 7.81 (1H,d,J=7.8Hz), 8.03 (1H,d,J=8.1Hz), 12.82 (1H,s).
【0084】
(実施例12): 2'-(4-イソプロピルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物12)の合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸118.6mgを用い、化合物(2)としてイソプロピルアミン約50mgを用いて、工程1-1a、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物103.0mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 403[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=1.14 (6H,d,J=6.6Hz), 4.02-4.08 (1H,m), 7.21-7.24 (2H,m), 7.40 (1H,dt,J=1.3,7.6Hz), 7.47-7.54 (5H,m), 7.65 (1H,dd,J=1.4,7.6Hz), 7.72 (2H,dd,J=1.8,6.9Hz), 7.82 (1H,dd,J=1.2,6.6Hz), 8.06 (1H,d,J=7.8Hz), 10.18 (1H,s), 12.8 (1H,br).
【0085】
(実施例13): 2'-(4-プロピルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物13)の合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸118.6mgを用い、化合物(2)としてプロピルアミン0.05mlを用いて、工程1-1a、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物20.0mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 403[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :0.87 (3H,t,J=7.3Hz), 1.50 (2H,q,J=7.3Hz), 3.16-3.20 (2h,m), 7.20-7.23 (2H,m), 7.39-7.43 (2H,m), 7.46-7.54 (5H,m), 7.64-7.65 (1H,m), 7.71 (H,s), 7.73 (1H,s), 7.80 (2H,d,J=7.6Hz), 8.31 (1H,t,J=5.6Hz).
【0086】
(実施例14): 2'-(4-ヘキシルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物14)の合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸118.6mgを用い、化合物(2)としてヘキシルアミン0.04mlを用いて、工程1-1a、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物39.6mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 445[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=0.86 (3H,t,J=6.8Hz), 1.24-1.30 (6H,m), 1.48 (2H,m), 3.29 (2H,q,J=6.6Hz), 7.21-7.23 (2H,m), 7.40 (1H,dt,J=1.2,7.6Hz), 7.47-7.54 (5H,m), 7.63-7.65 (1H,m), 7.71-7.72 (2H,dd,J=2.0,6.9Hz), 7.81 (1H,dd,J=1.2,7.6Hz), 7.29 (1H,t,J=5.7Hz), 10.25 (1H,br).
【0087】
(実施例15): 2'-[4-(ピペリジン-1-カルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物15)の合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸118.6mgを用い、化合物(2)としてピペリジン0.06mlを用いて、工程1-1a、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物34.3mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 429[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=1.47 (4H,br), 1.59 (2H,d,J=4.6Hz), 3.35-3.38 (4H,m), 7.21-7.26 (4H,m), 7.41 (1H,dt,J=1.2,7.6Hz), 7.47-7.53 (5H,m), 7.64 (1H,dd,J=1.6,7.6Hz), 7.82 (1H,d,J=7.8Hz), 10.22 (1H,br).
【0088】
(実施例16): 2'-(4-メチルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸[化合物16]の合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸118.6mgを用い、化合物(2)としてメチルアミン0.1mlを用いて、工程1-1a、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物14.4mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 375[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=3.80 (3H,s), 7.13 (1H,d,J=7.1Hz), 7.19 (1H,d,J=7.1Hz), 7.35 (1H,q,J=7.3Hz), 7.42 (1H,d,J=2.7Hz), 7.48-7.53 (2H,m), 7.59-7.64 (3H,m), 7.74 (1H,d,J=8.1Hz), 7.83 (2H,dd,J=1.8,6.8Hz).
【0089】
(実施例17): 2'-[4-(アダマンタン-1-イルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物17)の合成
(実施例17−1):[4-(アダマンタン-1-イルカルバモイル)-フェニル]-カルボン酸 tert-ブチルエステルの合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸118.6mgを用い、化合物(2)として1-アダマンチルアミン83.2mgを用いて、工程1-1aに従い、標記の化合物130.0mgを白色固体として得た。
MS(EI,Pos):m/z= 371 [M]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=1.48 (9H,s), 1.65 (6H,s), 2.05 (9H,s), 7.40 (1H,s), 7,47 (2H,d,J=8.8Hz), 7.69 (2H,d,J=8.8Hz), 9.57 (1H,s).
【0090】
(実施例17−2):2'-[4-(アダマンタン-1-イルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸の合成
実施例17-1で得られた化合物126.5mgを用い、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物65.9mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 495[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ=1.64 (6H,s), 2.04 (9H,s), 7.22 (2H,dt,J=1.6,6.9Hz), 7.41 (2H,dt,J=1.1,6.4Hz), 7.46-7.53 (5H,m), 7.65 (3H,dt,J=1.8,7.3Hz), 7.80 (1H,d,J=7.8Hz).
【0091】
(実施例18): 2'-[4-(4-クロロ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物18)の合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸100mgを用い、化合物(2)として4-クロロアニリン51.0mgを用いて、工程1-1a、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物101.3mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 470[M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ(ppm)=7.23-7.25 (2H,m), 7.38-7.43 (3H,m), 7.61 (2H,d,J=8.8Hz), 7.67 (1H,dd,J=1.2,7.3Hz), 7.77-7.86 (5H,m), 8.32 (1H,s), 10.22 (1H,s), 10.29 (1H,br).
【0092】
(実施例19): 2'-(4-p-トリルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物19)の合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸100mgを用い、化合物(2)として4-メチルアニリン42.9mg mgを用いて、工程1-1a、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物176.1mgを白色固体として得た
MS(FAB,Pos):m/z= 451 [M+H]+
1H NMR (500 MHz, CD3OD) :δ(ppm)=2.31 (3H.s), 7.15 (2H,dd,J=0.5,8.8Hz), 7.20-7.25 (2H,m), 7.40-7.54 (7H,m), 7.68-7.70 (1H,m), 7.80 (2H,dd,J=2.0,6.8Hz), 7.86 (1H,ddd,J=0.5,1.5,7.8Hz), 7.91 (1H,d,J=2.0Hz).
【0093】
(実施例20): 2'-(4-(3-クロロ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物20)の合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸100mgを用い、化合物(2)として3-クロロアニリン0.045mlを用いて、工程1-1a、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物53.4mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 471 [M+H]+
1H NMR (500 MHz, CD3OD) :δ(ppm)=7.12 (1H,dq,J=1.0,8.1Hz), 7.21-7.24 (2H,m), 7.31 (1H,t,J=8.1Hz), 7.41 (1H,dt,J=1.2,7.6Hz), 7.46-7.54 (5H,m), 7.56 (1H,dq,J=1.0,8.3Hz), 7.68-7.70 (1H,m), 7.79-7.87 (4H,m).
【0094】
(実施例21): 2'-(4-シクロヘプチルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物21)の合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸100mgを用い、化合物(2)としてシクロヘプチルアミン74.3mgを用いて、工程1-1a、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物46.7mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 457 [M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ(ppm)=1.37-1.66 (10H,m), 1.78-1.83 (2H,m), 3.87-3.94 (1H,m), 7.00 (1H,br), 7.11 (1H,dd,J=2.0,8.6Hz), 7.28 (2H,d,J=3.4Hz), 7.43-7.47 (4H,m), 7.60 (2H.dd,J=2.7,8.8Hz), 7.66 (2H,,d,J=8.8Hz), 8.04 (1H,d,J=8.1Hz).
【0095】
(実施例22): 2'-(4-(4-フルオロ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物22)の合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸100mgを用い、化合物(2)として4-フルオロアニリン47.8mgを用いて、工程1-1a、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物99.8mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 455 [M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ(ppm)=7.18 (2H,dtmJ=2.2,9.0Hz), 7.24 (1H,d,J=7.1Hz), 7.41 (1H,dt,J=1.2,7.6Hz), 7.48-7.55 (3H,m), 7.60 (2H,d,J=8.8Hz), 7.67 (1H,d,J=7.1Hz), 7.75-7.77 (2H,m), 7.82-7.86 (3H,m), 10.15 (1H,s), 10.26 (1H,br).
【0096】
(実施例23): 2'-(4-(3,5-ジクロロ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物23)の合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸100mgを用い、化合物(2)として3,5-ジクロロアニリン69.7mgを用いて、工程1-1a、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物62.2mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 505 [M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ(ppm)=7.23-7.25 (2H,m), 7.31 (1H,t,J=,1.8Hz), 7.41 (1H,dt,J=1.1,7.6Hz), 7.49-7.55 (3H,m), 7.62 (2H,d,J=8.5Hz), 7.67 (1H,dd,J=1.2,7.3Hz), 7.83 (1H,dd,J=1.0,7.8Hz), 7.86 (2H,d,J=8.8Hz), 7.88 (2H,d,J=2.0Hz), 10.31 (1H,br), 10.37 (1H,s).
【0097】
(実施例24): 2'-(4-(4-トリフルオロメチル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物24)の合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸100mgを用い、化合物(2)として4-トリフルオロメチルアニリン69.3mgを用いて、工程1-1a、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物26.9mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 505 [M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ(ppm)=7.23-7.26 (2H,m), 7.41 (1H,dt,J=1.2,7.8Hz), 7.47-7.55 (3H,m), 7.62 (2H,d,J=8.5Hz), 7.67 (1H,dd,J=1.5,6.8Hz), 7.71 (2H,d,J=8.8Hz), 7.83 (1H,dd,J=1.0,7.8Hz), 7.89 (2H,d,J=9.0Hz), 7.99 (2H,d,J=8.5Hz), 10.31 (1H,s), 10.43 (1H,s).
【0098】
(実施例25): 2'-(4-シクロペンチルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸(化合物25)の合成
4-tert-ブトキシカルボニルアミノ-安息香酸100mgを用い、化合物(2)としてシクロペンチルアミン36.6mgを用いて、工程1-1a、工程1-2および工程1-3に従い、標記の化合物26.1mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 429 [M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO-D6) :δ(ppm)=1.47-1.53 (4H,m), 1.67-1.68 (2H,m), 1.86-1.87 (2H,m), 4.16-4.22 (1H,m), 7.21-7.23 (2H,m), 7.40 (1H,dt,J=0.7,7.3hz), 7.47-7.54 (5H,m), 7.65 (1H,dd,J=1.3,7.6Hz), 7.72 (2H,d,J=8.8Hz), 7.81 (1H,d,J=7.8Hz), 8.11 (1H,d,J=7.3Hz).
【0099】
(実施例26): N-(4-フェニルカルバモイル-フェニル)-フタラミン酸[化合物26]の合成
(実施例26−1): 4-アミノ-N-フェニル-ベンズアミドの合成
実施例1-1で得られた化合物357.2mgを用い、工程1-2に従い、標記の化合物の粗生成物434.4mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 213 [M+H]+
【0100】
(実施例26−2):N-(4-フェニルカルバモイル-フェニル)-フタラミン酸の合成
実施例26-1で得られた化合物60.0mgを用い、工程2-1に従い標記の化合物98.1mgを白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 361 [M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO) :7.10 (1H,tt,J=1.1,6.3Hz), 7.35 (2H,dt,J=1.5,7.0Hz), 7.59 (1H,d,J=7.3Hz), 7.60 (1H,dt,J=1.2,7.6Hz), 7.68 (1H,dt,J=1.1,7.4Hz), 7.78 (2H,d,J=7.6Hz), 7.83 (2H,d,J=8.8Hz), 7.91 (1H,dd,J=0.7,7.8Hz), 7.97 (2H,d,J=8.8Hz), 10.14 (1H,s), 10.64 (1H,s), 13.11 (1H,s).
【0101】
(実施例27): 2-(4-フェニルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ベンゼンスルホン酸(化合物27)の合成
実施例26-1で得られた化合物60.0mgを用い、工程3-1に従い、標記の化合物20.8mgを乳白色固体として得た。
MS(FAB,Pos):m/z= 397 [M+H]+
1H NMR (500 MHz, DMSO) :7.09 (1H,tt,J=1.1,7.3Hz), 7.35 (2H,dt,J=1.6,7.0Hz), 7.52 (2H,dt,J=2.7,4.8Hz), 7.75-7.80 (5H,m), 7.91 (1H,dd,J=2.1,7.2Hz), 7.98 (2H,d,J=8.8Hz), 10.16 (1H,s), 11.61 (1H,s).
【0102】
(実施例28)
本実施例において、本発明の化合物の活性試験を行った。その結果を表1、及び図3のグラフに示す。この活性試験で用いた試薬、実験動物、試験手順等は下記のとおりである。
(試薬)
トリチウム標識されたエストロン-3-サルフェート(以下[3(←上付き)H]E1(←下付き)-3S)(2.12 TBq/mmol)は、パーキンエルマーライフサイエンスプロダクツ社(ボストン, アメリカ) 製を用いた。また、コラゲナーゼAは、ロシュダイアグノスティックスGmbH社(マンハイム,ドイツ)製を用いた。
(実験動物)
実験動物として、埼玉実験動物供給所(埼玉)から提供された、アフリカツメガエル(雌性)を用いた。
【0103】
(溶液の調整)
本活性試験に使用した溶液は、下記組成で調製した。
OR2溶液 (pH 7.5)
NaCl 82.5 mM
KCl 2.0 mM
MgCl2・6H2O 1.0 mM
HEPES 5.0 mM
【0104】
MBS (pH7.4)
NaCl 88.0 mM
KCl 1.0 mM
NaHCO 2.4 mM
MgSO4 0.82 mM
Ca(NO3)2 0.33 mM
CaCl2 0.41 mM
HEPES 10.0 mM
【0105】
デフォリキュレート溶液(pH 7.6)
NaCl 110 mM
EDTA 1.0 mM
HEPES 10.0 mM
【0106】
(cRNAの合成)
T7 RNA ポリメラーゼによるcRNA合成、及びキャッピングはmMESSAGE mMACHINE キット(アンビオン社, オースチン,アメリカ)を用いて行った。フェノール-クロロホルムイソアミルアルコール抽出後、エタノール沈殿を行った。70%エタノールで洗浄後、DNase-RNase-を含まない水に溶解した。
【0107】
(アフリカツメガエル卵母細胞の調製、及びcRNAインジェクション)
アフリカツメガエルを開腹後、アフリカツメガエル卵母細胞を取り出し、OR2 溶液で洗浄した。2mg/mLのコラゲナーゼA 含有OR2溶液で35〜40分間処理し、再びOR2 溶液でよく洗浄し、MBSに置換した。実体顕微鏡(オリンパス社,東京)下でピンセットを用い、デフォリキュレート溶液中で濾胞細胞層を取り除いた。cRNAを65℃で5分間熱処理した。濾胞細胞を取り除いた卵母細胞に、デジタルマイクロディスペンサー(ドラモンドサイエンティフィック社, ブルーマール, アメリカ)を用いてcRNAを50 nL (約25 ng)/卵母細胞の割合でインジェクションした。対照として、DNase-RNase-を含まない水をインジェクションした。インジェクジョンしたアフリカツメガエル卵母細胞を、MBS中で3日間培養した。培養中は1日2回、培地交換を行った。
【0108】
(試験用MBS溶液の調製)
本活性試験には、[3(←上付き)H]E1(←下付き)-3S、及び本発明の阻害剤を含む溶液を用いた。[3(←上付き)H]E1(←下付き)-3Sは比活性2.12 TBq/mmolの[3(←上付き)H]E1(←下付き)-3Sを、最終的に10nMになるように、該阻害剤は10mMのDMSO溶液をMBSで適宜希釈して目的濃度(0.1〜10μM)になるように調製した。いずれの場合も最終的なDMSO濃度は0.1%に合わせた。
(アフリカツメガエル卵母細胞発現系における取り込み試験)
アフリカツメガエル卵母細胞に前記cRNAをインジェクションして3日間培養し、試験用MBS溶液につけることにより取り込みを開始した。60分後、氷冷MBSにより3回洗うことにより取り込みを停止した。5% SDSによりアフリカツメガエル卵母細胞を可溶化し、クレアゾール-Iを加え放射能を液体シンチレーションカウンターによって測定した。
【0109】
(データ解析)
データは平均±S.E.Mで示した。また、基質の取り込み量はタンパク量、又はオーサイトの個数で補正した取り込み量(pmol /mg protein or pmol /卵母細胞)を基質濃度(μM)で補正して得られたcell-to-medium ratio(C/M Ratio) (μL/ mg protein or μL/ 卵母細胞)で表した。IC50の計算は次式に基づいて、非線形最小二乗法解析プログラムMULTIによって行った(Yamaoka et al., J. Pharmacobiodyn 4: 879-885 1981)。
% of Control=100×IC50r/(IC50r+ Ir)
なお、IC50: 50%阻害剤濃度、I: 阻害剤濃度、r: Hill係数を表す。
(結果)
次に化合物11、及び下記公知化合物28の結果を示す。
【0110】
【化16】

阻害剤濃度 10μMでは、試験を行ったすべての化合物は、OATP-B, OATP -C,及びOATP- 8のE1-3S輸送を有意に阻害した。その結果を、図3に示す。
なお、本発明の化合物28では、OATP-B, OATP -C, OATP -8のE1-3S輸送に対するIC50値はそれぞれ0.11 μM, 13.21 μM, 0.89 μMと算出された。化合物11によるIC50値はそれぞれ0.27 μM, 14.90 μM, 0.52 μMと算出された(表1)。
【0111】
【表1】

【0112】
(試験例)
本発明の化合物を既存の薬剤と併用する際の試験としては、以下のような方法が考えられる。
試験用溶液の調製
試験には放射標識された薬剤および阻害剤を含むバッファーを用いる。標識した薬剤および阻害剤は10mMのDMSO溶液をバッファーで適宜希釈して目的濃度になるように調製する。
肝細胞における取り込み試験
遊離肝細胞をクレブス−ヘンスレイ緩衝液に懸濁させ、37℃で3分間プレインキュベーションする。これにリガンドを含む溶液を加えて反応を開始し、決められた時間(例えば、30,60,90秒など)経過後、細胞をシリコンレイヤー法によりろ過することにより細胞と培地を分離して反応を停止させる。具体的には0.4mLの遠心チューブに50μLの2mol/L水酸化ナトリウム水溶液加え、その上層を100μLのシリコンオイルとミネラルオイルの混合物(比重1.015)で覆い、その上に200μLのサンプルを乗せて、遠心分離を行い、肝細胞を水酸化ナトリウム層に回収する。水酸化ナトリウム溶液で細胞を可溶化した後、水酸化ナトリウム層を回収して、酸(例えば塩酸)を用いて中和する。計数用溶液を加え、液体シンチレーションカウンターにより放射能を測定して、細胞の薬剤取り込み量を算出する。また細胞のタンパク量はブラッドフォードの方法に従い、牛血清アルブミンを標準とするタンパクアッセイキットを用いることで測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】図1は、本発明の化合物の製造方法を、包括的に説明した反応説明図である。
【図2】図2は、本発明の好ましい化合物の構造式を示す。
【図3】図3は、OATP-B, OATP-C, 及びOATP-8を発現したアフリカツメガエル卵母細胞の[3(←上付き)H] E1(←下付き)-3S取込みに対する、阻害剤10μMにおける阻害効果を示すグラフである。このグラフが示す値は、水をインジェクションしたアフリカツメガエル卵母細胞の取込み量を差し引いた値を示している(OATP-B:黒色、OATP-C:灰色、OATP-8:白色)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で示される化合物、及びその塩:
【化1】

(式1中、Xは、
【化2】

で示される官能基であり、式中R1はカルボン酸(-COOH)、又はスルホン酸(-SO3H)を示し;
Yはカルボニル(-CO-)、スルフィニル(-SO-)、又はスルホニル(-SO2-)を示し;かつ
Zは−N(R)(R)で示される官能基であり、式中、R2は置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基、置換され、又は置換されていない炭素原子数3〜10の環状アルキル基、若しくは置換され、又は置換されていない環員数6〜12の芳香環であり、R3は水素、若しくは置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R2,とR3とは互いに結合して環構造を形成しても良い;
ただしZには以下の官能基は含まれない:
【化3】

)。
【請求項2】
Xが、
【化4】

であり、かつYがカルボニル(-CO-)である、請求項1記載の化合物、又はその塩。
【請求項3】
前記R1がカルボン酸である、請求項2記載の化合物、又はその塩。
【請求項4】
下記化合物からなる群から選ばれた、請求項1記載の化合物、又はその塩:
2'-(4-フェニルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-[4-(4-tert-ブチル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-[4-(4-ジメチルアミノ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-[4-(モルホリン-4-イル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-[4-(3-ベンジルオキシ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-[4-(3-メトキシカルボニル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-[4-(4-メトキシ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-[4-(4-フェノキシ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-[4-(4-メトキシカルボニル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-[4-(2-メトキシカルボニル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-(4-シクロヘキシルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-(4-イソプロピルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-(4-プロピルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-(4-ヘキシルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-[4-(ピペリジン-1-カルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-(4-メチルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-[4-(アダマンタン-1-イルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-[4-(4-クロロ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル]-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-(4-p-トリルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-(4-(3-クロロ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-(4-シクロヘプチルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-(4-(4-フルオロ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-(4-(3,5-ジクロロ-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-(4-(4-トリフルオロメチル-フェニルカルバモイル)-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸;
2'-(4-シクロペンチルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ビフェニル-2-カルボン酸;
N-(4-フェニルカルバモイル-フェニル)-フタラミン酸;及び
2-(4-フェニルカルバモイル-フェニルカルバモイル)-ベンゼンスルホン酸。
【請求項5】
下記式1で示される化合物、又はその塩を含む、OATP選択的阻害剤:
【化5】

(式1中、Xは、
【化6】

で示される官能基であり、式中R1はカルボン酸(-COOH)、又はスルホン酸(-SO3H)を示し;
Yはカルボニル(-CO-)、スルフィニル(-SO-)、又はスルホニル(-SO2-)を示し;かつ
Zは−N(R)(R)で示される官能基であり、式中、R2は置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基、置換され、又は置換されていない炭素原子数3〜10の環状アルキル基、置換され、又は置換されていない環員数6〜12の芳香環、若しくは置換され、又は置換されていない環員数5〜12の複素芳香環であり、R3は水素、若しくは置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R2,とR3とは互いに結合して環構造を形成しても良い。)。
【請求項6】
下記式1で示される化合物、又はその塩を含む、化学物質の輸送におけるOATPの機能解析用試薬:
【化7】

(式1中、Xは、
【化8】

で示される官能基であり、式中R1はカルボン酸(-COOH)、又はスルホン酸(-SO3H)を示し;
Yはカルボニル(-CO-)、スルフィニル(-SO-)、又はスルホニル(-SO2-)を示し;かつ
Zは−N(R)(R)で示される官能基であり、式中、R2は置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基、置換され、又は置換されていない炭素原子数3〜10の環状アルキル基、置換され、又は置換されていない環員数6〜12の芳香環、若しくは置換され、又は置換されていない環員数5〜12の複素芳香環であり、R3は水素、若しくは置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R2,とR3とは互いに結合して環構造を形成しても良い。)。
【請求項7】
下記式1で示される化合物、又はその塩を含む、化学物質の輸送におけるOATPの寄与率算定用試薬:
【化9】

(式1中、Xは、
【化10】

で示される官能基であり、式中R1はカルボン酸(-COOH)、又はスルホン酸(-SO3H)を示し;
Yはカルボニル(-CO-)、スルフィニル(-SO-)、又はスルホニル(-SO2-)を示し;かつ
Zは−N(R)(R)で示される官能基であり、式中、R2は置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基、置換され、又は置換されていない炭素原子数3〜10の環状アルキル基、置換され、又は置換されていない環員数6〜12の芳香環、若しくは置換され、又は置換されていない環員数5〜12の複素芳香環であり、R3は水素、若しくは置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R2,とR3とは互いに結合して環構造を形成しても良い。)。
【請求項8】
下記式1で示される化合物、又はその塩を含む、化学物質の肝移行阻害剤:
【化11】

(式1中、Xは、
【化12】

で示される官能基であり、式中R1はカルボン酸(-COOH)、又はスルホン酸(-SO3H)を示し;
Yはカルボニル(-CO-)、スルフィニル(-SO-)、又はスルホニル(-SO2-)を示し;かつ
Zは−N(R)(R)で示される官能基であり、式中、R2は置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基、置換され、又は置換されていない炭素原子数3〜10の環状アルキル基、置換され、又は置換されていない環員数6〜12の芳香環、若しくは置換され、又は置換されていない環員数5〜12の複素芳香環であり、R3は水素、若しくは置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R2,とR3とは互いに結合して環構造を形成しても良い。)。
【請求項9】
前記化学物質が、内因性化学物質、外因性化学物質、及び疎水性薬物の抱合体からなる群から選ばれる、請求項8記載の阻害剤。
【請求項10】
下記式1で示される化合物、又はその塩を含む、肝毒性を持つ化学物質の肝での毒性発現を低下させる薬剤:
【化13】

(式1中、Xは、
【化14】

で示される官能基であり、式中R1はカルボン酸(-COOH)、又はスルホン酸(-SO3H)を示し;
Yはカルボニル(-CO-)、スルフィニル(-SO-)、又はスルホニル(-SO2-)を示し;かつ
Zは−N(R)(R)で示される官能基であり、式中、R2は置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基、置換され、又は置換されていない炭素原子数3〜10の環状アルキル基、置換され、又は置換されていない環員数6〜12の芳香環、若しくは置換され、又は置換されていない環員数5〜12の複素芳香環であり、R3は水素、若しくは置換され、又は置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R2,とR3とは互いに結合して環構造を形成しても良い。)。
【請求項11】
前記化学物質が、内因性化学物質、外因性化学物質、及び疎水性薬物の抱合体からなる群から選ばれる、請求項10記載の薬剤。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−106017(P2008−106017A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292037(P2006−292037)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】