説明

OFDMAシステム用無線通信基地局装置

【課題】送信ダイバーシチを備えるOFDMAシステム用無線通信基地局装置に於いて、片系統にて送信ダイバーシチ機能に係わる障害が発生した場合でも、送信電力を変えること無く且つ送信電力増幅部の出力電力を変えること無く、セル半径を維持して、通信サービスを継続できる運用形態を提供する。
【解決手段】基地局装置の送信ダイバーシチ機能に係わる障害が片系統にて発生した場合、障害検出部2は当該障害を検出し、装置動作制御部3は障害が発生している系統の機能を停止すると共に、動作可能な他系統に於いて送信ダイバーシチ機能に係わる制御を行われない通常処理に切り替える。送信ダイバーシチ機能が損なわれて送信電力が低下することによるセル半径の縮小を回避するために、信号帯域設定部12は信号帯域を狭めてOFDM信号のサブキャリア当たりの電力をダイバーシチ機能有効時の電力と同等とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送信ダイバーシチ機能を備えるOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)システム用無線通信基地局装置に於いて、片系統に障害が発生した際の他系統による運用手法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された送信ダイバーシチ機能を備えた無線通信装置では、符号化部に於いて音声及びデータ等の送信信号の符号化が行われ、アンテナA用信号処理部及びアンテナB用信号処理部に於いて所定の信号処理が行われ、それぞれの拡散/変調部に於いて拡散及び変調が行われ、送信電力増幅部に於いてそれぞれの信号処理系統の信号が電力増幅され、アンテナA又はアンテナBを介して無線送信される。又、無線通信装置は、障害検出部及び処理切替設定部を備えている。
【0003】
基地局装置の送信ダイバーシチ機能に係る部位に障害が発生した場合には、障害検出部が障害を検出し、処理切替設定部が障害を検出した信号処理系統の機能を停止し、障害検出されなかった信号処理系統から、通常の送信を行う設定に切り替える。
【0004】
特許文献1では、障害が検出されなかった送信信号系統の送信信号の電力を送信ダイバーシチ適用時よりも大きくする構成が取られており、これを以って通常の通信を継続させて通常サービスを維持している。
【0005】
【特許文献1】特開2003−169006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の送信ダイバーシチ機能を備える無線通信基地局装置では、片系統に障害が発生した場合に、通信サービスを継続させるために、全ての構成ユニットを或いは故障確率の高いユニットを冗長構成としたり、又は、特許文献1で記載されている様に、障害発生時に於いても正常に動作することが出来る他系統だけで運用出来る様にするために他系統内の電力増幅器を高出力対応に設定して、高信頼性を得ている。
【0007】
しかしながら、一般に高出力になる程に電力増幅器の増幅素子のコストは増大する。高信頼性を得るための冗長構成、又は、電力増幅器に使用する素子を障害発生時に合わせて部品を選定することによるコスト増大と言う問題点があった。
【0008】
本発明は、この様な問題点を克服すべく成されたものであり、送信ダイバーシチ機能を備えるOFDMAシステム用無線通信基地局装置に於いて、片系統に故障が発生した際に、送信電力を変えること無く、セル半径を維持して通信サービスを継続させて、比較的低コストで以って信頼性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主題は、送信ダイバーシチ機能を備えたOFDMAシステム用無線通信基地局装置であって、複数のアンテナから送信すべきOFDM信号を生成する信号生成部と、前記信号生成部で生成された前記OFDM信号を前記複数のアンテナの内の対応するアンテナまで送信する複数の処理系統と、前記複数の処理系統の各々に前記送信ダイバーシチ機能に係る機能障害が発生しているか否かを検出する障害検出部と、前記障害検出部が、一つの処理系統を除いて、その他の全ての処理系統に前記送信ダイバーシチ機能に係る機能障害が発生していることを検出したときには、前記その他の全ての処理系統を停止すると共に、前記送信ダイバーシチ機能に係る機能障害が発生していない前記一つの処理系統に対して、前記送信ダイバーシチ機能による送信処理を用いないで前記一つの処理系統に対応する一つのアンテナから無線送信する様に当該アンテナまで前記OFDM信号を送信する処理を通常動作として行わせる装置動作制御部と、前記装置動作制御部から前記その他の全ての処理系統の停止及び前記一つの処理系統の前記送信ダイバーシチ機能による送信処理から前記通常動作処理への移行の通知を受けて、前記信号生成部が生成し前記一つの処理系統によって送信されるOFDM信号の電力スペクトル密度が与える総和としての信号電力が、前記一つの処理系統に含まれる送信電力増幅部の出力電力を変更する事無く、前記送信ダイバーシチ機能が有効であったときのOFDM信号の電力スペクトル密度の信号電力の値と同等と成る様に、前記信号生成部を制御する信号生成制御部とを備えることを特徴とする。
【0010】
以下、この発明の主題の様々な具体化を、添付図面を基に、その効果・利点と共に、詳述する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の主題によれば、送信電力増幅器の出力電力を変えずに、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号のサブキャリア当たりの送信電力をダイバーシチ機能有効時と乃至は障害発生前と同等に保ち、セル半径を維持して、即ち、通信サービスエリアを維持して通信サービスを継続させることが出来ることから、信頼性を確保することが出来る。しかも、本発明の主題によれば、送信電力増幅部に使用する電力増幅素子の選定(部品選定)を通常運用時の出力に合わせて行うことが出来るため、コスト増大を抑制することも出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施の形態1)
本実施の形態の特徴点は、送信ダイバーシチ機能を備えるOFDMAシステム用無線通信基地局装置に於いて、片系統の無線部に故障が発生した場合に、送信ダイバーシチ機能を停止し、他系統の無線部に於いて、送信電力増幅部の出力電力を変えること無く(即ち、送信電力増幅部に使用する増幅素子を高出力対応化すること無く、通常運用時に合わせて増幅素子を選択可能とする。)、OFDM信号全体の電力スペクトル密度の信号帯域を狭めることで(典型的な2系統の場合には信号帯域を半減する。)、低コスト化を図りつつ、セル半径である、当該基地局を中心とした通信サービスエリアの縮小化を回避する点にある。以下、図面を参照して、本実施の形態の特徴点を記載する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る送信ダイバーシチ機能を備えたOFDMAシステム用無線通信基地局装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示す様に、送信ダイバーシチ機能を備えた無線基地局装置は、メイン部1より各アンテナ10,11までの2系統の信号処理系統(1系及び2系)を有しており、メイン部1に加えて、送受信処理部(1系)4、送受信処理部(2系)5、送信電力増幅部(1系)6、送信電力増幅部(2系)7、送受信切替部(1系)8、送受信切替部(2系)9、アンテナ(1系)10、及びアンテナ(2系)11を備えて成る。又、メイン部1は、障害検出部2、装置動作制御部3、信号帯域設定部12、及び信号生成部13を有する。
【0014】
特に、障害検出部2及び装置動作制御部3の各々は、各処理系統の各構成部に、即ち、送受信処理部(1系)4、送受信処理部(2系)5、送信電力増幅部(1系)6、送信電力増幅部(2系)7、送受信切替部(1系)8、送受信切替部(2系)9、アンテナ(1系)10及びアンテナ(2系)11に接続されており、障害検出部2は、各処理系統(1系及び2系)の動作状態を監視している。そして、片系統に送信ダイバーシチ機能に係る機能障害が発生して、障害検出部2が当該障害を検出すると、その検出結果に応じて、装置動作状態制御部3は、障害が発生している片系統の全てのユニットの動作を停止させると共に、他系統の送信ダイバーシチ機能を停止させて、他系統のみ(他系統の一つのアンテナのみを利用する。)で通常動作としてのOFDM信号の送信処理を行う様に信号処理系統の処理内容を切り替える。
【0015】
次に、図1の無線通信基地局装置の送信動作について記載する。信号生成部13は、データ等の送信信号をOFDM信号に符号化し(OFDM信号の生成)、OFDM信号を各信号処理系統の送受信処理部(1系)4及び送受信処理部(2系)5に入力する。送受信処理部(1系)4は、入力された系統1のOFDMの送信信号に対して、周波数変換及び送信ダイバーシチ機能のための信号処理を実行する。又、送信電力増幅器(1系)6は、信号処理後の系統1のOFDM信号に対して、所望の電力値となるまでその電力を増幅する。電力増幅後のOFDM信号は、TDD(Time Division Duplex)制御用の送受信切替部(1系)8を経て、アンテナ(1系)10を介して、外部の受信端末装置に向けて無線送信される。
【0016】
他方、送受信信号処理部(2系)5に入力された系統2の送信信号に対しても、系統1の場合と同様の信号処理が行われ、信号処理後の送信すべきOFDM信号は、送信電力増幅器(2系)7によって、所望の電力値まで増幅された上で、送受信切替部(2系)9を経て、アンテナ(2系)11を介して、外部の受信端末装置に向けて無線送信される。
【0017】
ここで、図1の本基地局装置は、送信ダイバーシチ機能の実行により、アンテナ(1系)10及びアンテナ(2系)11より出力される各送信信号を、信号処理系統が1系統である場合の一つのアンテナより無線送信されたOFDM信号を受信端末装置が受信する場合の電力と比較して、2倍程度の電力を有するOFDM信号として、受信端末装置へ向けて送信する。
【0018】
図1の本基地局装置は、送信ダイバーシチ機能を用いて通信サービスを実現するが、送信ダイバーシチ機能に係る系統1又は系統2のアンテナ、送受信切替部、送信電力増幅部、及び送受信処理部の何れかに障害が発生した場合には、障害検出部2がその障害を検出する。
【0019】
ここで、障害検出方法の一例としては、基地局装置を構成する各ユニットが、正常動作時には周期的に特定の信号を障害検出部2に出力して障害検出部2がその特定の信号を受信する一方、障害検出部2がこの特定の信号を検出することが出来なくなった場合に、障害検出部2が、検出不可となった当該ユニットが含まれる処理系統に障害が発生したものと判定する方法がある。
【0020】
そして、装置動作制御部3は、障害が発生した処理系統の全ユニットに対して機能停止の制御を行うと共に、残り片方の処理系統に対しては、送信ダイバーシチ機能を適用しないで、通常動作としての送信処理方法によりOFDM信号を送信する動作に切り替える。
【0021】
以下に、系統1に送信ダイバーシチ機能に係る機能障害が発生した際の、送信ダイバーシチを適用しない送信処理方法について、具体的に説明する。ここで、OFDM信号を成す全ての搬送波(キャリア)のスペクトルを合成して成るOFDM信号の電力スペクトル密度は、周知の通り、矩形状の形を成すが、処理系統で送信すべき、この矩形状のOFDM信号の電力スペクトル密度を、以下では「キャリア」と称することと定義する。又、キャリアの一部から成るOFDM信号の電力スペクトル密度を、以下では「サブキャリア」と称することと定義する。
【0022】
図2の(a)に示す様に、通常時に於いて、送信ダイバーシチ機能を用いて各信号系統1,2に、総電力値が例えば10Wの1キャリアFA1のOFDM信号が送信されているシステムを考える。このシステムに於いて、例えば系統1に送信ダイバーシチ機能に係る機能障害が発生したことを障害検出部2が検出した場合には、先ず、装置動作制御部3は、送信ダイバーシチ機能に係る系統1の全ユニットの機能停止を行うと共に、系統2の各ユニットに対しては、ダイバーシチ機能に係る信号送信の制御を行わない、通常動作としての信号処理に切り替える。その上で、装置動作制御部3は、系統1の全ユニットの機能を停止したこと、及び、系統2の送信ダイバーシチ機能を停止して系統2の各ユニットに対しては通常動作で処理を行なわせてOFDM信号を送信させる様に変更したことを、信号帯域設定部12に通知する。次に、送信ダイバーシチ機能が損なわれたために生じている送信電力不足によるセル半径(サービスエリア)の縮小を回避するために、信号帯域設定部12は、信号生成部13に於いて生成されるOFDM信号の1キャリアFA1の信号帯域Fb(Fbは、送信ダイバーシチ機能に係る信号送信を行っていた際の1キャリアFA1の信号帯域である。)の設定を変更する処理を実行する。即ち、信号帯域設定部12は、図2(b)に示す様に、系統2より出力されるOFDM信号の信号帯域を信号帯域Fbの半分Fb/2に狭めて設定して(これにより、信号帯域が狭められて形成されるOFDM信号のサブキャリアに含まれる各搬送波の電力は、送信ダイバーシチ機能が有効であった時の電力よりも約2倍に増加する。)、OFDM信号のサブキャリア当たりの送信電力を、送信ダイバーシチ機能が有効であった時の1キャリアFA1の送信電力10Wと同等にする。このとき、系統2の送信電力増幅部7の出力電力の変更を一切行わない。即ち、系統2より出力されるOFDM信号の信号帯域を信号帯域Fbの半分に狭めた後の送信電力増幅部7の出力電力は、送信ダイバーシチ機能が有効であった時の送信電力増幅部7の出力電力と同等である。信号帯域設定部12が信号生成部13に対してこの様な信号帯域の制御を行うことにより、セル容量(通信サービスエリア内に送信すべきデータ量に該当。)を犠牲にする代わりに、系統2より出力されるOFDM信号の送信電力を変えずに、セル半径を維持して通信サービスを継続させる。
【0023】
逆に、系統2に送信ダイバーシチ機能に係る機能障害が発生した場合には、装置動作制御部3は、上記と同様に、送信ダイバーシチ機能に係わる系統2の全ユニットの機能を停止し、系統1の送信処理をダイバーシチ機能に係わる制御を行わない処理に切り替えた上で、それらの措置を信号帯域設定部12に通知する。この通知に応じて、同部12は、図2(c)に示す様に、系統1より出力されるOFDM信号の信号帯域を送信ダイバーシチ機能が有効であった時の信号帯域Fbの半分Fb/2に狭めて、斯かる制御を受けた信号生成部13は、図2(c)に示す電力スプクトルを有するOFDM信号を系統1に出力する。その結果、系統2に送信ダイバーシチ機能に係る機能障害が発生した場合に於いても、信号生成部13は、セル容量を犠牲にすることで、セル半径を維持して通信サービスを継続させる。
【0024】
次に、図3(a)に示す様に、2キャリアシステムの場合について記載する。この場合にも、図1のブロック図を援用する。図3(a)の様に、信号生成部13に於いて生成された2キャリア(その内訳を、第1キャリアFA1及び第2キャリアFA2とする。)のOFDM信号の各々を、送信電力増幅器(1系)6及び送信電力増幅器(2系)7によって共通増幅する。そして、通常時に於いては、系統1及び系統2について共に、第1キャリアFA1のOFDM信号及び第2キャリアFA2のOFDM信号の各々の送信電力を、図2の1キャリアシステムの場合に於ける通常時のキャリアFA1のOFDM信号の送信電力10Wの半分に相当する送信電力5Wとし、本無線基地局装置は送信ダイバーシチ機能の適用によって2系統からOFDM信号を送信しているものと仮定する。
【0025】
上記の仮定の下で、系統1に於いて送信ダイバーシチ機能に係わる障害が発生し検出された場合には、図3(b)に示す様に、装置動作制御部3は、系統1の全ユニットの機能を停止させ、且つ、系統2の送信処理を送信ダイバーシチ機能の適用の無い通常動作の送信処理に切り替える。そして、装置動作制御部3は、系統1の全ユニットの機能の停止及び系統2の送信処理の通常動作への切り替えを共に行ったことを信号帯域設定部12に通知する。次に、送信ダイバーシチ機能が損なわれているために生じている送信電力低下によるセル半径縮小を回避するために、信号帯域設定部12は、第1キャリアFA1及び第2キャリアFA2の信号帯域を狭める処理を行う。即ち、2キャリアシステムの場合には、信号帯域設定部12は、第1キャリアFA1及び第2キャリアFA2の各々に対して、その信号帯域を、送信ダイバーシチ機能が有効に機能していたときの第1キャリアFA1及び第2キャリアFA2の各々の信号帯域Fb/2の半分に相当する信号帯域Fb/4に狭める制御を行うことで、その電力スペクトル密度が各々第1キャリアFA1及び第2キャリアFA2であるOFDM信号のサブキャリア当たりの送信電力を、送信ダイバーシチ機能が有効に機能していたときの送信電力の値と同等に設定する。この様にして、2キャリアシステムの場合に於いても、図2の1キャリアのシステムと同様に、本無線基地局装置は、セル容量を犠牲にする代わりに、系統2より出力されるOFDM信号の送信電力を変えずに、セル半径を維持したまま通信サービスを継続する。
【0026】
逆に、系統2に送信ダイバーシチ機能に係る機能障害が発生し検出された場合には、上記と同様に、装置動作制御部3は、送信ダイバーシチ機能に係わる系統2の全ユニットの機能を停止させ、且つ、系統1の送信処理をダイバーシチ機能に係わる制御を行わない通常動作の送信処理に切り替え、それらの処置を信号帯域設定部12に通知する。斯かる通知の受信に応じて、信号帯域設定部12は、図3(c)に示す様に、系統1より出力されるOFDM信号の各サブキャリアFA1,FA2の信号帯域を、送信ダイバーシチ機能が有効に適用されている場合の第1及び第2キャリアFA1,FA2の信号帯域Fb/2の半分の値Fb/4に狭めて、アンテナ10から送信されるOFDM信号の送信電力を送信ダイバーシチ機能が有効に適用されている場合に於けるアンテナ10,11から送信されるOFDM信号の送信電力と同等に設定して、セル容量を犠牲にすることで、セル半径を維持して、通信サービスを継続する。
【0027】
尚、本実施の形態では、上記によれば、障害検出対象を、送受信処理部(1系)4、送受信処理部(2系)5、送信電力増幅部(1系)6、送信電力増幅部(2系)7、送受信切替部(1系)8、送受信切替部(2系)9、アンテナ(1系)10、アンテナ(2系)11としているが、これに代えて、(1)故障率の比較的高い部位のみを障害検出の対象とする構成としても良い。更には、(2)図1に示す構成例では、送信系統が2系統の構成と成っているが、3系統以上の複数系統の装置構成に対しても、本実施の形態で記載した技術的特徴点を同様に適用出来る。但し、この場合には、送信ダイバーシチ機能が有効である1系統を除いた、他の全ての系統に於いて送信ダイバーシチ機能に係る機能障害が発生し検出されることが必須である。又、これらの変形例(1)及び(2)は、後述する実施の形態2に於いても同様に成立するものである。
【0028】
本実施の形態によれば、上記の通り、送信ダイバーシチ機能を備えたOFDMAシステム用無線通信基地局装置に於いて、送信ダイバーシチ機能に係わる障害が一方の処理系統に於いて発生した際に、当該処理系統による送信処理を停止すると共に、他方の処理系統に於ける送信処理を送信ダイバーシチ機能の適用の無い通常動作の送信処理に切り替えた上で、当該他方の処理系統に於けるOFDM信号の電力スペクトル密度の信号帯域を狭めることで、当該他方の処理系統に於ける送信電力増幅部の出力を変更すること無く、送信電力を変えずにセル半径を維持して、通信サービスを継続することが出来る。このため、本実施の形態に於いては、送信電力増幅部に於ける電力増幅器に使用する素子を通常運用時の出力に合わせて部品の選定が行えることとなり、信頼性を確保しつつ、コスト増大を抑制することが可能となる。
【0029】
(実施の形態2)
本実施の形態の特徴点は、実施の形態1の様にOFDM信号の電力スペクトル密度の信号帯域を狭める代わりに、OFDMAシステムに於いて複数のセグメントが適用されている場合に、信号生成制御部は、装置動作制御部から前記の通知を受けて、下り(Downlink)のOFDM信号バースト内のセグメントを複数のセグメントで運用する場合から単一セグメントで運用する場合に切り替えることで、信号生成部を制御する点にある。以下、図面を参照して、本実施の形態の特徴点を記載する。
【0030】
図4は、この発明の実施の形態2に係る送信ダイバーシチ機能を備えたOFDMAシステム用無線通信基地局装置の概略構成を示すブロック図である。図4に於いて、図1と共通する構成要素については、同符号を付している。図4に示す様に、図1の構成に於ける信号帯域設定部12の代わりに、セグメント設定部22が設けられており、メイン部21は、セグメント設定部22及び信号生成部23を含む点で、図1のメイン部1とは異なり、信号生成部23は、セグメント設定部22によってセグメント設定される点で、図1の信号生成部13とは異なる。
【0031】
本実施の形態では、送信するOFDM信号に於いて複数のセグメントが使用されるシステムである場合に、片系統に送信ダイバーシチ機能に係る機能障害が発生してその機能障害が検出された際に、送信ダイバーシチ機能が有効な他系統に於ける通常動作に基づく複数セグメントによる信号送信から単一セグメントによる信号送信に切り替えることで、サブキャリア数を減らし、サブキャリア当たりの送信電力をダイバーシチ機能が有効であったときの送信電力と同等に保つことで、セル容量を犠牲にする代わりに、セル半径を維持して、通信サービスを継続する。
【0032】
以下に、本実施の形態の特徴点について、図5を参照して記載する。図5に示す様に、OFDM信号に於いて3つのセグメントを使用しているシステムの一例を仮定する。障害検出、送信ダイバーシチ機能停止及び当該停止の通知の各動作については、実施の形態1で記載した場合と同じ流れで行われる。
【0033】
装置動作制御部3は、ダイバーシチ機能を停止したことを、セグメント設定部22に通知する。次に、ダイバーシチ機能が損なわれたために生じている送信電力不足によるセル半径縮小を回避するために、セグメント設定部22は、上記通知に応じて、図5(b)に示す様に、OFDM信号に於ける3つのセグメントを単一セグメントに切り替える。
【0034】
ここで、図5のサブチャネルについて説明すると、サブチャネルは、OFDM信号を構成する一つ一つのサブキャリアを直接には意味するものではないが、サブキャリアを決まった法則でグルーピングしたものである。よって、図5(a)の3つのセグメントを使用したシステムから図5(b)の単一セグメントを使用するシステムに切り替えることで、セグメント当たりに割り当てられる電力は3倍となる。従って、等価的に、OFDM信号のサブキャリア当たりの送信電力を送信ダイバーシチ機能が有効であった時の送信電力と同等にすることが出来る。
【0035】
以上の通り、本実施の形態によれば、送信ダイバーシチ機能を備え且つ複数セグメントを使用するOFDMAシステム用無線通信基地局装置に於いて、送信ダイバーシチ機能に係わる障害が発生した際でも、当該システムで使用するセグメントを単一セグメントに切り替えることで、等価的にOFDM信号の信号帯域を狭めてセル半径を維持することが出来るので、送信処理を行う処理系統に含まれる送信電力増幅部の出力電力を変えること無く、同一通信エリア内で通信サービスを継続することが出来る。このことから、送信電力増幅部の電力増幅器に使用する素子を通常運用時の出力に合わせて部品選定が行えるため、信頼性を確保しつつ、コスト増大を抑制することが可能となる。
【0036】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を詳細に開示し記述したが、以上の記述は本発明の適用可能な局面を例示したものであって、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、記述した局面に対する様々な修正や変形例を、この発明の範囲から逸脱することの無い範囲内で考えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の実施の形態1に係るOFDMAシステム用無線通信基地局装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に於いて、片系統に障害が発生した場合に、どの様に信号帯域を狭めて通信サービスを継続させるかを説明するための1例目を示す図である。
【図3】実施の形態1に於いて、片系統に障害が発生した場合に、どの様に信号帯域を狭めて通信サービスを継続させるかを説明するための2例目を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係るOFDMAシステム用無線通信基地局装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】実施の形態2に於いて、片系統に障害が発生した場合に、どの様にセグメントを切り替えて通信サービスを継続させるかを模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1,21 メイン部、2 障害検出部、3 装置動作制御部、4 送受信処理部(1系)、5 送受信処理部(2系)、6 送信電力増幅部(1系)、7 送信電力増幅部(2系)、8 送受信切替部(1系)、9 送受信切替部(2系)、10 アンテナ(1系)、11 アンテナ(2系)、12 信号帯域設定部、13,23 信号生成部、22 セグメント設定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信ダイバーシチ機能を備えたOFDMAシステム用無線通信基地局装置であって、
複数のアンテナから送信すべきOFDM信号を生成する信号生成部と、
前記信号生成部で生成された前記OFDM信号を前記複数のアンテナの内の対応するアンテナまで送信する複数の処理系統と、
前記複数の処理系統の各々に前記送信ダイバーシチ機能に係る機能障害が発生しているか否かを検出する障害検出部と、
前記障害検出部が、一つの処理系統を除いて、その他の全ての処理系統に前記送信ダイバーシチ機能に係る機能障害が発生していることを検出したときには、前記その他の全ての処理系統を停止すると共に、前記送信ダイバーシチ機能に係る機能障害が発生していない前記一つの処理系統に対して、前記送信ダイバーシチ機能による送信処理を用いないで前記一つの処理系統に対応する一つのアンテナから無線送信する様に当該アンテナまで前記OFDM信号を送信する処理を通常動作として行わせる装置動作制御部と、
前記装置動作制御部から前記その他の全ての処理系統の停止及び前記一つの処理系統の前記送信ダイバーシチ機能による送信処理から前記通常動作処理への移行の通知を受けて、前記信号生成部が生成し前記一つの処理系統によって送信されるOFDM信号の電力スペクトル密度が与える総和としての信号電力が、前記一つの処理系統に含まれる送信電力増幅部の出力電力を変更する事無く、前記送信ダイバーシチ機能が有効であったときのOFDM信号の電力スペクトル密度の信号電力の値と同等と成る様に、前記信号生成部を制御する信号生成制御部とを備えることを特徴とする、
OFDMAシステム用無線通信基地局装置。
【請求項2】
請求項1記載のOFDMAシステム用無線通信基地局装置であって、
前記信号生成制御部は、装置動作制御部から前記通知を受けて、OFDM信号の電力スペクトル密度の信号帯域を狭めることで、前記信号生成部を制御することを特徴とする、
OFDMAシステム用無線通信基地局装置。
【請求項3】
請求項1記載のOFDMAシステム用無線通信基地局装置であって、
OFDMAシステムに於いて複数のセグメントが適用されている場合に、
前記信号生成制御部は、装置動作制御部から前記通知を受けて、下りのOFDM信号バースト内のセグメントを前記複数のセグメントで運用する場合から単一セグメントで運用する場合に切り替えることで、前記信号生成部を制御することを特徴とする、
OFDMAシステム用無線通信基地局装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−147589(P2009−147589A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321731(P2007−321731)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】