説明

PCB含有物の処理方法

【課題】PCBで汚染された絶縁油、PCBで汚染された廃電気機器、及びPCBで汚染された廃棄物を含む処理対象物の無害化処理が可能なPCB含有物の処理方法を提供する。
【解決手段】PCB含有物の処理方法は、処理対象物を加熱ガス化炉20に装入し600〜1000℃で3時間以上加熱し、処理対象物に含まれるPCBをガス化して分離する第1工程と、加熱ガス化炉20から排出されるPCBを含む燃焼ガスを燃焼処理手段25に入れて、850℃以上で2秒以上滞留させる焼却処理を行って含まれるPCBを無害化する第2工程と、加熱ガス化炉20で加熱処理した処理対象物を解体し、鉄類、銅類、及び碍子類に分別する第3工程と、焼却処理手段25から排出される焼却残渣をリサイクル原料とする第4工程と、焼却処理手段25からの排ガスを冷却洗浄し、除塵、脱硫、及びダイオキシン除去を行って大気に放散する第5工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCB(ポリ塩化ビフェニル)に汚染された絶縁油、PCBに汚染された廃電気機器、及びPCBに汚染された廃棄物を含む処理対象物の無害化処理方法に関する。
PCBに汚染された絶縁油とは、数mg/kg〜数十mg/kg程度の微量のPCBによって非意図的に汚染された絶縁油(以下、微量PCB汚染絶縁油という)を指す。
PCBに汚染された廃電気機器とは、PCBを使用していないとする電気機器(柱上トランス、コンデンサ、トランス、リアクトル、変成器、変流器、アブソーバ、遮断器、整流器、開閉器等)の中で、微量PCB汚染絶縁油を含むものが廃棄物になったものを指す。
PCBに汚染された廃棄物とは、微量PCB汚染絶縁油が塗布され、しみこみ、付着し、又は封入されたものが廃棄物になったもの(例えば、木屑、紙屑、OFケーブル等)、PCBを処理する際に発生した運転廃棄物(例えば、汚泥、廃活性炭等)、PCBを処理する際に発生した作業用廃棄物品(例えば、防護服、マスク、手袋、安全靴、アルコールティッシュ、ウエス等)等である。なお、PCBに汚染された廃電気機器は、柱上トランスが約330万台、JEMA機器が約120万台にのぼると推計されている。そして、PCBに汚染された廃電気機器の約77%は、絶縁油に含まれるPCB濃度が10mg/k以下であり、PCBに汚染された廃電気機器の約99%は100mg/kg以下であると推計されている。また、OFケーブルは約1400kmと推計されている。
【背景技術】
【0002】
例えば、トランス、コンデンサ等のPCBを含有した廃電気機器は、特別管理廃棄物に指定され、日本環境安全事業株式会社(JESCO)において安全かつ確実に処理することが義務付けられている。
一方、PCBを使用していないとされていた廃電気機器の中には、微量PCB汚染絶縁油を含んだもの(以下、微量PCB汚染廃電気機器という)が多量に存在することが近年判明した。このような微量PCB汚染廃電気機器は、日本環境安全事業株式会社での処理対象となっていないため、その性状等を踏まえた処理体制の構築を図ることが求められている。また、これまでJESCOで行われている化学処理方式では膨大な処理費がかかるため、効率的な処理が検討されている。そこで、既存の加熱設備を使用して、微量PCB汚染物を安価かつ確実に処理する方法として、例えば、特許文献1に示す技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−274310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す技術は、微量PCB汚染絶縁油の処理には適用できるが、微量PCB汚染廃電気機器及び微量PCB汚染物の処理には適用できないという問題がある。更に、既存の加熱設備として、高炉を使用するため、処理場所が非常に限定されるという問題もある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、特殊な設備を使用せずに、PCBに汚染された絶縁油、PCBに汚染された廃電気機器、及びPCBに汚染された廃棄物を含む処理対象物の無害化処理が可能なPCB含有物の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係るPCB含有物の処理方法は、PCBに汚染された絶縁油、PCBに汚染された廃電気機器、及びPCBに汚染された廃棄物のいずれか1又は2以上を含む処理対象物の無害化処理方法であって、
前記処理対象物を加熱ガス化炉に装入し、製鉄副生ガスを燃料にして600〜1000℃で3時間以上加熱し、前記処理対象物に含まれるPCBをガス化して該処理対象物から分離する第1工程と、
前記加熱ガス化炉から排出されるPCBを含む燃焼ガスを燃焼処理手段に入れて、850℃以上の温度雰囲気に2秒以上滞留させる焼却処理を行って、含まれるPCBを無害化する第2工程と、
前記加熱ガス化炉で加熱処理した前記処理対象物を取出して解体し、鉄類、銅類、及び碍子類に分別する第3工程と、
前記焼却処理手段から排出される焼却残渣をリサイクル原料とする第4工程と、
前記焼却処理手段からの排ガスを冷却洗浄し、除塵、脱硫、及びダイオキシン除去を行って大気に放散する第5工程とを有する。
【0007】
本発明に係るPCB含有物の処理方法において、前記処理対象物中、前記PCBに汚染された廃電気機器は前記加熱ガス化炉に入れて加熱処理することができる。
ここで、前記PCBに汚染された廃電気機器が前記PCBに汚染された絶縁油が封入された柱上トランスであって、該柱上トランスは前記PCBに汚染された絶縁油を抜油した後に開蓋状態にして前記加熱ガス化炉に入れることが好ましい。
【0008】
本発明に係るPCB含有物の処理方法において、前記処理対象物中、PCBに汚染された絶縁油は前記焼却処理手段に入れて焼却処理することができる。
【0009】
本発明に係るPCB含有物の処理方法において、前記第1工程の加熱処理で発生した加熱残渣は、前記第3工程で回収し前記焼却処理手段に下流側が連通するロータリーキルンに投入することが好ましい。
【0010】
本発明に係るPCB含有物の処理方法において、前記処理対象物中、前記PCBに汚染された廃棄物は前記ロータリーキルンに入れて焼却処理することができる。
また、前記処理対象物中、前記PCBに汚染された廃棄物は前記加熱ガス化炉に入れて加熱処理することもできる。
【0011】
本発明に係るPCB含有物の処理方法において、前記処理対象物中、廃プラスチック、廃油、汚泥、及び廃液のいずれか1又は2以上を含む産廃物は、前記ロータリーキルンを介して又は直接前記焼却処理手段に投入することができる。
【0012】
本発明に係るPCB含有物の処理方法において、前記第4工程での焼却残渣は、製鉄集塵ダストと混合して焼成し、焼成物をペレット化して高炉原料とすることができる。
また、前記第4工程での焼却残渣は、製鉄集塵ダストと混合して焼成し、焼成物をそのままセメント副原料とすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るPCB含有物の処理方法においては、処理対象物に含まれるPCBをガス化して処理対象物から分離するので、新たなPCB汚染物の発生を防止して処理対象物の無害化を行うことができる。そして、ガス化したPCBを含む燃焼ガスは焼却処理手段に入れて焼却処理されるので、PCBは熱分解してPCBの無害化が達成される。
また、加熱ガス化炉で加熱処理した処理対象物は解体して鉄類、銅類、碍子類に分別し、焼却処理手段で発生する焼却残渣はリサイクル原料とするので、埋立処分することなく、完全リサイクルできる。これにより、微量PCBを含む処理対象物の無害化事業の経済性を高めることができる。
【0014】
本発明に係るPCB含有物の処理方法において、処理対象物中、PCBに汚染された廃電気機器を加熱ガス化炉に入れて加熱処理する場合、PCBに汚染された廃電気機器に含まれるPCBをガス化させて分離することができる。
また、PCBに汚染された廃電気機器がPCBに汚染された絶縁油が封入された柱上トランスであって、柱上トランスはPCBに汚染された絶縁油を抜油した後に開蓋状態にして加熱ガス化炉に入れる場合、柱上トランスに付着しているPCBに汚染された絶縁油中のPCBをガス化させて確実に分離することができ、絶縁油は焼却処分することができる。
【0015】
本発明に係るPCB含有物の処理方法において、処理対象物中、PCBに汚染された絶縁油を焼却処理手段に入れて焼却処理する場合、PCBを熱分解して無害化すると共に、絶縁油の焼却処分を行うことができる。
【0016】
本発明に係るPCB含有物の処理方法において、第1工程の加熱処理で発生した加熱残渣を、第3工程で回収し焼却処理手段に下流側が連通するロータリーキルンに投入する場合、発生した加熱残渣の減容化を図ることができる。
【0017】
本発明に係るPCB含有物の処理方法において、処理対象物中、PCBに汚染された廃棄物をロータリーキルンに入れて焼却処理する場合、ロータリーキルンを用いてPCBに汚染された廃棄物の減容化を図ることができる。また、PCBに汚染された廃棄物がロータリーキルンを通過中、含まれているPCBはガス化して分離するので、ガス化したPCBは燃焼ガス中に混入して焼却処理手段内に進入し、熱分解して無害化される。
【0018】
本発明に係るPCB含有物の処理方法において、処理対象物中、廃プラスチック、廃油、汚泥、及び廃液のいずれか1又は2以上を含む産廃物を、ロータリーキルンを介して又は直接焼却処理手段に投入する場合、PCBに汚染された処理対象物と産廃物を同時に処理するので、廃棄物処理コストの低減を図ることができる。
【0019】
本発明に係るPCB含有物の処理方法において、第4工程での焼却残渣を、製鉄集塵ダストと混合して焼成し、焼成物をペレット化して高炉原料とする場合、又は第4工程での焼却残渣を、製鉄集塵ダストと混合して焼成し、焼成物をそのままセメント副原料とする場合、処理対象物の有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係るPCB含有物の処理方法が適用されるPCB含有物の処理設備の説明図である。
【図2】同PCB含有物の処理設備のリサイクル手段の説明図である。
【図3】同PCB含有物の処理設備の排ガス処理手段の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
先ず、本発明の一実施の形態に係るPCB含有物の処理方法が適用されるPCB含有物の処理設備(以下、単に処理設備ともいう)10について説明する。
なお、処理設備10で処理する処理対象物は、PCBに汚染された絶縁油(以下、微量PCB汚染絶縁油という)、PCBに汚染された廃電気機器(以下、微量PCB汚染廃電気機器という)、PCBに汚染された廃棄物(以下、微量PCB汚染物という)、及び産廃物(廃プラスチック、廃油、汚泥、廃液等)から構成される。ここで、微量PCB汚染廃電気機器は、柱上トランス(微量PCB汚染絶縁油が封入された柱上トランス及び既に微量PCB汚染絶縁油が抜油された柱上トランスのいずれか一方又は双方)と、柱上トランス以外の電気機器(以下、JEMA機器という)に大別される。
【0022】
図1に示すように、処理設備10は、輸送手段の一例であるトラック11で搬入された微量PCB汚染廃電気機器及び微量PCB汚染物をそれぞれ分別して一時保管する保管倉庫12と、輸送手段の一例であるタンクローリー13で搬入された微量PCB汚染絶縁油を一時保管する汚染油貯蔵タンク14と、図示しない輸送手段でそれぞれ搬入された産廃物を、廃プラスチック、廃油、汚泥、及び廃液別に分けてそれぞれ一時保管する産廃物保管倉庫15を有している。また、処理設備10は、保管倉庫12で一時保管されている微量PCB汚染廃電気機器の中で、微量PCB汚染絶縁油が封入された柱上トランスを切断機器等を用いて開蓋する作業場と、柱上トランス内の汚染油を抜き取るポンプ16と、抜き取った微量PCB汚染絶縁油を汚染油貯蔵タンク14に輸送する汚染油受入管17を備えた開蓋抜油手段18を有している。
【0023】
更に、処理設備10は、開蓋状態となっている柱上トランス(微量PCB汚染絶縁油を抜油した柱上トランス及び搬入時に既に微量PCB汚染絶縁油が抜油されている柱上トランスのいずれか一方又は双方)及びJEMA機器を積載した台車19を収容して加熱処理を行う固定床炉20(加熱ガス化炉の一例)と、固定床炉20で開蓋状態となっている柱上トランス及びJEMA機器の加熱処理を行った際に発生する加熱残渣、保管倉庫12で一時保管されている微量PCB汚染物、産廃物保管倉庫15で一時保管されている産廃物(例えば、廃プラスチック、汚泥、廃油)を焼却処理するロータリーキルン21と、ロータリーキルン21の下流側と連通し、固定床炉20から燃焼排ガス配管22を介して供給された燃焼ガス及び汚染油貯蔵タンク14からポンプ23で汲み出され汚染油輸送管24を介して供給された微量PCB汚染絶縁油を燃焼する焼却処理手段の一例である二次燃焼炉25とを有している。これによって、柱上トランス及びJEMA機器を固定床炉20で加熱処理した際にガス化して離脱し燃焼ガス中に混入したPCB、微量PCB汚染物を産廃物と共にロータリーキルン21で焼却処理した際にガス化して離脱し燃焼ガス中に混入したPCB、及び微量PCB汚染絶縁油中のPCBを、燃焼処理して無害化処理できる。
そして、処理設備10には、ロータリーキルン21の下流側から排出され、二次燃焼炉25の底部に設けられた排出口25aを介して取出される焼却残渣をリサイクル原料の一例である高炉原料とするリサイクル手段26と、二次燃焼炉25からの排ガスを冷却洗浄し、除塵処理、脱硫及びダイオキシン除去を行って大気に放散する排ガス処理手段27と、固定床炉20で加熱処理した処理対象物を取出して解体し、鉄類、銅類、碍子類に分別する解体分別手段40が設けられている。
【0024】
図2に示すように、リサイクル手段26は、ロータリーキルン21の下流側から排出され二次燃焼炉25の排出口25aを介して取出される焼却残渣と製鉄所の各種製造工程で発生した製鉄集塵ダスト(酸化鉄含有ダスト)を混合して混合物を作製する撹拌機28と、混合物を、900〜1000℃(例えば950℃)の温度で焼成して、混合物中の炭素を除去して加熱処理物を製造する加熱炉29(例えば流動床炉)とを有している。更に、リサイクル手段26は、加熱処理物に塩化物の一例である塩化カルシウムを加えて混合して成形用配合物を製造する混合機30(例えばボールミル)と、成形用配合物を、例えば粒径が10mmのペレットに成形する造粒機31(例えばパンペレタイザ)と、得られたペレットを乾燥する乾燥機32(例えばコンベアドライヤ)と、乾燥後のペレットを700℃以上(例えば800〜1200℃)で加熱して、ペレット中の非鉄金属成分を塩化物にして揮発させる熱処理炉33(例えばロータリーキルン)とを有している。
【0025】
図3に示すように、排ガス処理手段27は、二次燃焼炉25からの排ガスに水を噴霧して冷却する冷却塔34と、冷却後の排ガスを水中に排出して排ガス中の塩化水素、硫黄酸化物、塵を除去する洗浄塔35と、洗浄された排ガス中に残存する塵を除去する湿式の電気集塵機36と、排ガス中に残存する二酸化硫黄を水酸化カルシウムで吸収する脱硫塔37と、脱硫塔37の出口側に接続される排ガスファン38と、排ガスファン38から送り出された排ガス中のダイオキシンを吸着除去するダイオキシン除去塔39とを有している。なお、ダイオキシン除去塔39から排出された排ガスは、煙突を介して大気中に放出される。
【0026】
続いて、本発明の一実施の形態に係るPCB含有物の処理方法について説明する。
本発明の一実施の形態に係るPCB含有物の処理方法は、例えば、微量PCB汚染絶縁油、微量PCB汚染廃電気機器、微量PCB汚染物、及び産廃物から構成される処理対象物の無害化処理方法であって、柱上トランス及びJEMA機器(微量PCB汚染廃電気機器)を台車19に積載して固定床炉20に装入し、製鉄副生ガスを燃料にして600〜1000℃で3時間以上加熱し、処理対象物に含まれるPCBをガス化して柱上トランス及びJEMA機器から分離する第1工程を有している。
【0027】
また、PCB含有物の処理方法は、固定床炉20の加熱処理で発生した加熱残渣(第3工程で回収)、保管倉庫12で一時保管されている微量PCB汚染物、産廃物保管倉庫15で一時保管されている産廃物(例えば、廃プラスチック、汚泥、廃油)を、850℃以上、好ましくは900℃以上の温度で焼却処理するロータリーキルン21の下流側と連通する二次燃焼炉25に、微量PCB汚染絶縁油及び固定床炉20から排出されるPCBを含む燃焼ガスを入れて、850℃以上、好ましくは1100〜1250℃以上の温度雰囲気に2秒以上滞留させる焼却処理を行って、含まれるPCBを無害化する第2工程を有している。
ここで、ロータリーキルン21で微量PCB汚染物を焼却処理する際に、微量PCB汚染物からPCBがガス化して離脱するので、ガス化したPCBは燃焼ガス中に混入しロータリーキルン21の下流側に連通する二次燃焼炉25内に進入し、熱分解して無害化される。
【0028】
更に、PCB含有物の処理方法は、固定床炉20で加熱処理した被加熱物を取出して解体し、鉄類、銅類、及び碍子類に分別する第3工程と、ロータリーキルン21の下流側から排出され、二次燃焼炉25の下流側に設けられた排出口25aを介して排出される焼却残渣をリサイクル原料とする第4工程と、二次燃焼炉25からの排ガスを冷却洗浄し、除塵、脱硫、及びダイオキシン除去を行って大気に放散する第5工程とを有する。以下、詳細に説明する。
【0029】
保管倉庫12内に一時保管されている微量PCB汚染廃電気機器の中で、微量PCB汚染絶縁油が封入された柱上トランスは、開蓋抜油手段18の作業場に搬入して解体機器を用いて開蓋する。そして、柱上トランス内の微量PCB汚染絶縁油をポンプ16を用いて抜き取り、抜き取った汚染油は汚染油受入管17を介して汚染油貯蔵タンク14に輸送する。次いで、開蓋状態の柱上トランス及び保管倉庫12内に一時保管されているJEMA機器を台車19に積載する。なお、微量PCB汚染廃電気機器の中に微量PCB汚染絶縁油が既に抜き取られた柱上トランス(抜油済柱上トランス)が存在する場合は、抜油済柱上トランスを開蓋状態にして、抜油して開蓋状態とした柱上トランスと共に台車19に積載する。そして、この台車19を固定床炉20に挿入して固定床炉20の扉を閉め、製鉄副生ガスを燃料にして600〜1000℃の温度で3時間以上保持する加熱処理を行う。これによって、開蓋状態となっている柱上トランス及びJEMA機器に含まれていたPCBはガス化して離脱し、PCBを分離することができる。なお、固定床炉20から排出されるPCBを含む燃焼ガスは、燃焼排ガス配管22を介して二次燃焼炉25に導入する(以上、第1工程)。
【0030】
固定床炉20から二次燃焼炉25内に排出されたPCBを含む燃焼ガスと、汚染油貯蔵タンク14内からポンプ23で汲み出され汚染油輸送管24を介して二次燃焼炉25内に供給された微量PCB汚染絶縁油は、二次燃焼炉25内の850℃以上、好ましくは1100〜1250℃以上の雰囲気に2秒以上曝されるため、燃焼ガス中及び微量PCB汚染絶縁油中に含まれるPCBは焼却されて分解し、無害化される。一方、保管倉庫12に一時保管されていた微量PCB汚染物は、固定床炉20で加熱処理した際に発生した加熱残渣と共に、ロータリーキルン21に投入される。微量PCB汚染物はロータリーキルン21内を通過する際に、850℃以上、好ましくは900℃以上で焼却処理されて減容化される。このとき、微量PCB汚染物からPCBがガス化して離脱するので、ガス化したPCBはロータリーキルン21内で発生した燃焼ガス中に混入し、二次燃焼炉25内に進入して2秒以上曝されるので、二次燃焼炉25内で焼却により分解し、無害化される。
【0031】
ここで、産廃物保管倉庫15に一時保管されている廃プラスチック及び汚泥は、ロータリーキルン21に投入され、焼却処理されて減容化される。また、産廃物保管倉庫15に一時保管されている廃油の一部はロータリーキルン21に投入され、廃油の残部は二次燃焼炉25に直接投入されて焼却処理される。更に、産廃物保管倉庫15に一時保管されている廃液は、二次燃焼炉25に直接投入され、燃焼処理される。なお、ロータリーキルン21で生成した焼却残渣は、ロータリーキルン21の下流側から排出され、二次燃焼炉25の下流側に設けられた排出口25aを介して外部に排出される。また、二次燃焼炉25からの排ガスは、排ガス処理手段27に供給される(以上、第2工程)。
【0032】
固定床炉20で加熱処理した被加熱物は、解体分別手段40の解体分別場に搬送され、解体分別場に設けられた解体機器(図示せず)を用いて解体する。そして、柱上トランスの容器及び鉄心並びにJEMA機器の容器等を構成している鉄類、柱上トランスの巻き線、JEMA機器の導線、及び端子板等を構成している銅類、柱上トランスの端子絶縁材等を構成している碍子類に、それぞれ分別する(以上、第3工程)。
【0033】
ロータリーキルン21の下流側から排出される焼却残渣は、ロータリーキルン21に連通する二次燃焼炉25の下流側に設けられた排出口25aを介して外部に排出され、灰出しコンベア41を介して図2に示すリサイクル手段26に供給される。リサイクル手段26に供給された焼却残渣は、製鉄集塵ダストと共に撹拌機28に投入されてと混合され、得られた混合物は、加熱炉29に導入して900〜1000℃の温度で焼成し、混合物中の炭素を除去して加熱処理物を製造する。そして、得られた加熱処理物を混合機30に投入し、塩化カルシウムを加えて混合して成形用配合物を製造し、得られた成形用配合物を造粒機31を用いてペレットに成形し、乾燥機32で乾燥した後、熱処理炉33を用いてペレットを700℃以上で加熱し、ペレット中の非鉄金属成分を塩化物にして揮発させる。これにより、高炉原料が得られる(以上、第4工程)。
なお、加熱炉29から排出される加熱処理物は、そのままセメント副原料とすることができる。
【0034】
また、二次燃焼炉25から排出される排ガスは、図3に示す排ガス処理手段27の冷却塔34に導入されて冷却され、冷却塔34から排出された冷却後の排ガスは洗浄塔35に供給されて排ガス中の塩化水素、硫黄酸化物、塵が除去される。そして、洗浄塔35から排出された排ガスは、電気集塵機36で除塵され、脱硫塔37で排ガス中に残存する二酸化硫黄が除去され、更にダイオキシン除去塔39で排ガス中のダイオキシンを吸着除去されて、煙突を介して大気中に放出される(以上、第5工程)。
【0035】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、処理対象物中、微量PCB汚染物をロータリーキルンに入れて焼却処理したが、微量PCB汚染物を固定床炉に入れて加熱処理し、発生した加熱残渣をロータリーキルンに投入するようにしてもよい。
また、処理対象物を、微量PCB汚染絶縁油、微量PCB汚染廃電気機器、及び微量PCB汚染物のいずれか1つ又は任意の2つの組合せから構成することも、微量PCB汚染絶縁油、微量PCB汚染廃電気機器、及び微量PCB汚染物のいずれか1つ又は任意の2つの組合せに産廃物を加えた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10:PCB含有物の処理設備、11:トラック、12:汚染物用保管容器、13:タンクローリー、14:汚染油貯蔵タンク、15:産廃物保管容器、16:ポンプ、17:汚染油受入管、18:開蓋抜油手段、19:台車、20:固定床炉、21:ロータリーキルン、22:燃焼排ガス配管、23:ポンプ、24;汚染油輸送管、25:二次燃焼炉、25a:排出口、26:リサイクル手段、27:排ガス処理手段、28:撹拌機、29:加熱炉、30:混合機、31:造粒機、32:乾燥機、33:熱処理炉、34:冷却塔、35:洗浄塔、36:湿式電気集塵器、37:脱硫塔、38:排ガスファン、39:ダイオキシン除去塔、40:解体分別手段、41:灰出しコンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCBに汚染された絶縁油、PCBに汚染された廃電気機器、及びPCBに汚染された廃棄物のいずれか1又は2以上を含む処理対象物の無害化処理方法であって、
前記処理対象物を加熱ガス化炉に装入し、製鉄副生ガスを燃料にして600〜1000℃で3時間以上加熱し、前記処理対象物に含まれるPCBをガス化して該処理対象物から分離する第1工程と、
前記加熱ガス化炉から排出されるPCBを含む燃焼ガスを燃焼処理手段に入れて、850℃以上の温度雰囲気に2秒以上滞留させる焼却処理を行って、含まれるPCBを無害化する第2工程と、
前記加熱ガス化炉で加熱処理した前記処理対象物を取出して解体し、鉄類、銅類、及び碍子類に分別する第3工程と、
前記焼却処理手段から排出される焼却残渣をリサイクル原料とする第4工程と、
前記焼却処理手段からの排ガスを冷却洗浄し、除塵、脱硫、及びダイオキシン除去を行って大気に放散する第5工程とを有することを特徴とするPCB含有物の処理方法。
【請求項2】
請求項1記載のPCB含有物の処理方法において、前記処理対象物中、前記PCBに汚染された廃電気機器は前記加熱ガス化炉に入れて加熱処理することを特徴とするPCB含有物の処理方法。
【請求項3】
請求項2記載のPCB含有物の処理方法において、前記PCBに汚染された廃電気機器が前記PCBに汚染された絶縁油が封入された柱上トランスであって、該柱上トランスは前記PCBに汚染された絶縁油を抜油した後に開蓋状態にすることを特徴とするPCB含有物の処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のPCB含有物の処理方法において、前記処理対象物中、前記PCBに汚染された絶縁油は前記焼却処理手段に入れて焼却処理することを特徴とするPCB含有物の処理方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のPCB含有物の処理方法において、前記第1工程の加熱処理で発生した加熱残渣は、前記第3工程で回収し前記焼却処理手段に下流側が連通するロータリーキルンに投入することを特徴とするPCB含有物の処理方法。
【請求項6】
請求項5記載のPCB含有物の処理方法において、前記処理対象物中、前記PCBに汚染された廃棄物は前記ロータリーキルンに入れて焼却処理することを特徴とするPCB含有物の処理方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のPCB含有物の処理方法において、前記処理対象物中、前記PCBに汚染された廃棄物は前記加熱ガス化炉に入れて加熱処理することを特徴とするPCB含有物の処理方法。
【請求項8】
請求項5又は6記載のPCB含有物の処理方法において、前記処理対象物中、廃プラスチック、廃油、汚泥、及び廃液のいずれか1又は2以上を含む産廃物は、前記ロータリーキルンを介して又は直接前記焼却処理手段に投入することを特徴とするPCB含有物の処理方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のPCB含有物の処理方法において、前記第4工程での焼却残渣は、製鉄集塵ダストと混合して焼成し、焼成物をペレット化して高炉原料とすることを特徴とするPCB含有物の処理方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のPCB含有物の処理方法において、前記第4工程での焼却残渣は、製鉄集塵ダストと混合して焼成し、焼成物をそのままセメント副原料とすることを特徴とすることを特徴とするPCB含有物の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−106182(P2012−106182A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257066(P2010−257066)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(597118016)光和精鉱株式会社 (1)
【Fターム(参考)】