説明

PDT用医療装置システム、電子内視鏡システム、手術用顕微鏡システム、及び治療光照射分布制御方法

【課題】光感受性物質の濃度分布に応じて、適切な光量で治療光を照射する。
【解決手段】光感受性物質が蓄積された体腔内の腫瘍患部に対して、PDD用光源31から励起光Ldを照射する。この励起光Ldの照射により、腫瘍患部から蛍光光FLが発生する。蛍光光FLを含む体腔内からの光をCCD44で撮像する。CCD44で得られた撮像信号に基づいて、蛍光光画像を生成する。濃度分布特定部55aは、蛍光光画像から腫瘍患部に蓄積した光感受性物質の濃度分布を特定する。照射分布制御部54aは、光感受性物質の濃度分布に基づき、治療光Ltの照射分布を制御する。この照射分布の制御により、光感受性物質の濃度が高い部分には光量の大きい治療光Ltが、光感受性物質の濃度が低い部分には光量の小さい治療光Ltが照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PDT用医療装置システム、電子内視鏡システム、手術用顕微鏡システム、及び治療光照射分布制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の医療分野では、電子内視鏡を用いた診断や治療が数多く行なわれている。電子内視鏡は、被検者の体腔内に挿入される細長の挿入部を備えており、この挿入部の先端にはCCDなどの撮像装置が内蔵されている。また、電子内視鏡は白色光などの広帯域光を発する光源装置に接続されており、光源装置からの広帯域光は、挿入部の先端から体腔内部に対して照射される。このように体腔内部に光が照射された状態で、体腔内の被写体組織が、挿入部の先端部の撮像素子によって撮像される。撮像により得られた画像は、電子内視鏡に接続されたプロセッサ装置で各種処理が施された後、モニタに表示される。
【0003】
また、患者の体腔内壁にできた腫瘍患部などはモニタの画像から把握しにくい場合があることから、近年では、PDD(Photo Dynamic Diagnosis:光線力学的診断)と呼ばれる診断方法を用いることによって腫瘍患部から蛍光光を発生させて、腫瘍患部の位置、大きさ、範囲を容易に把握できるようにしている。このPDDによれば、診断を始める前に、ヘマトポルフィリン誘導体などの光感受性物質を患者に投与することによって、腫瘍患部に光感受性物質を蓄積させている。そして、診断時には、電子内視鏡の先端部を体腔内に挿入し、その先端部から腫瘍患部に対して特定波長の励起光を照射する。これにより、励起光が照射された腫瘍患部からは、蛍光光が発せられる。
【0004】
そして、術者がPDDにより腫瘍患部の位置等を把握した後は、PDT(Photo Dynamic Therapy:光線力学的治療)と呼ばれる治療方法を使って、腫瘍患部を消滅させている。このPDTでは、励起光とは波長が異なる特定波長の治療光を電子内視鏡の先端部から腫瘍患部に照射している。この治療光を照射することで、腫瘍患部に蓄積している光感受性物質から活性酸素が生成される。この活性酸素による殺細胞作用によって、腫瘍患部は消滅する。
【0005】
治療光は、光感受性物質から活性酸素を生成させるものであるため、非常に光量が大きい。したがって、治療光の照射により腫瘍患部が消滅しつつある場合には、そのまま光量が大きい治療光を当て続けると、正常な部分を傷つけてしまうおそれがある。そのため、治療光を照射する際には、治療状況に応じて、照射する治療光の光量を制御する必要がある。これに対して、特許文献1では、治療光の光量を測定する光量センサを電子内視鏡の先端部に取り付け、その光量センサの出力に基づいて治療光の光量を制御することで、適切な光量の治療光が腫瘍患部に当たるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−22654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
PDTでは、治療光の照射によって、光感受性物質の濃度は時間とともに変化する。したがって、治療光の照射開始時点では、光感受性物質の濃度が高い部分であっても、治療光がその部分に集中的に照射されることで、光感受性物質の濃度は徐々に低下する。このように濃度が低下した部分に対して、照射開始時点と同じ光量の治療光を当て続けると、正常な部分までも傷つけてしまうおそれがある。また、治療光の照射開始時点で、光感受性物質の濃度が高い部分に、光量が小さい治療光しか照射されない場合には、腫瘍患部を消滅させるまでに相当な時間がかかってしまう。
【0008】
これに対して、特許文献1の発明の適用が考えられるが、この特許文献1の発明は、体腔内で反射した治療光の光量に基づいて、新たに体腔内に照射する治療光の光量を制御するものであり、光感受性物質の濃度分布に応じて、治療光の光量を制御するものでないため、上記問題を解決することはできない。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、光感受性物質が蓄積した腫瘍患部に対して治療光を照射する際、光感受性物質の濃度分布に応じて、適切な光量で治療光を照射することができるPDT用医療装置システム、電子内視鏡システム、手術用顕微鏡システム、及び治療光照射分布制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のPDT用医療装置システムは、光感受性物質が蓄積された患者の腫瘍患部から蛍光光を発生させるための励起光を発するPDD用光源と、前記腫瘍患部を消滅させるための治療光を発するPDT用光源と、励起光または治療光を前記腫瘍患部に対して照射する照射手段と、前記腫瘍患部からの光を受光して生成される撮像信号に基づき、画像を生成する画像生成手段と、励起光を照射した時に得られる蛍光光画像から、前記腫瘍患部に蓄積した光感受性物質の濃度分布を特定する濃度分布特定部と、前記腫瘍患部における光感受性物質の濃度分布に基づき、前記治療光の照射分布を制御する照射分布制御部とを備えることを特徴とする。
【0011】
前記照射分布制御部は、前記腫瘍患部のうち光感受性物質の濃度が高い部分には、光量の大きい治療光を照射し、光感受性物質の濃度が低い部分には、光量の小さい治療光を照射することが好ましい。波長が青色領域から赤色領域にわたる広帯域光を発する広帯域光源と、前記腫瘍患部に対して照射する光を、前記広帯域光、前記励起光、前記治療光の順で切り替える照射光切替部とを備えることが好ましい。
【0012】
前記光感受性物質はフォトフィリンであり、前記治療光は中心波長が630nmであり、前記励起光は中心波長が405nmであり、前記蛍光光は660nmにピークを1つ有することが好ましい。
【0013】
本発明の電子内視鏡システムは、光感受性物質が蓄積された体腔内の腫瘍患部から蛍光光を発生させるための励起光を発するPDD用光源と、前記腫瘍患部を消滅させるための治療光を発するPDT用光源とを有する光源装置と、前記腫瘍患部を含む体腔内に対して励起光または治療光を照射する照射手段と、前記腫瘍患部からの光を受光して撮像信号を出力する撮像素子とを有する電子内視鏡と、撮像信号に基づいて画像を生成する画像生成手段と、励起光を照射した時に得られる蛍光光画像から、前記腫瘍患部に蓄積した光感受性物質の濃度分布を特定する濃度分布特定部とを有するプロセッサ装置とを備え、前記電子内視鏡は、前記腫瘍患部における光感受性物質の濃度分布に基づき、前記治療光の照射分布を制御する照射分布制御部を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の手術用顕微鏡システムは、手術部位のうち光感受性物質が蓄積された腫瘍患部から蛍光光を発生させるための励起光を発するPDD用光源と、前記腫瘍患部を消滅させるための治療光を発するPDT用光源とを有する光源装置と、前記腫瘍患部を含む手術部位に対して励起光または治療光を照射する照射手段と、前記腫瘍患部からの光を受光して撮像信号を出力する撮像素子と、撮像信号に基づいて画像を生成する画像生成手段と、励起光を照射した時に得られる蛍光光画像から、前記腫瘍患部に蓄積した光感受性物質の濃度分布を特定する濃度分布特定部とを有する手術用顕微鏡とを備え、前記手術用顕微鏡は、前記腫瘍患部における光感受性物質の濃度分布に基づき、前記治療光の照射分布を制御する照射分布制御部を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の治療光照射分布制御方法は、光感受性物質が蓄積された患者の腫瘍患部から蛍光光を発生させるための励起光を前記腫瘍患部に対して照射したときに、前記腫瘍患部からの光を撮像素子で受光し、撮像素子から出力される撮像信号に基づき、蛍光光画像を生成し、蛍光光画像から前記腫瘍患部に蓄積した光感受性物質の濃度分布を特定し、前記腫瘍患部を消滅させるための治療光を腫瘍患部に対して照射する際に、前記腫瘍患部における光感受性物質の濃度分布に基づき、治療光の照射分布を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、励起光の照射により腫瘍患部から蛍光光が発せられたときに得られる蛍光光画像から、腫瘍患部に蓄積した光感受性物質の濃度分布を特定し、その特定した腫瘍患部の光感受性物質の濃度分布に基づき、治療光の照射分布を制御していることから、腫瘍患部の光感受性物質の濃度分布に応じて、適切な光量で治療光を照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の電子内視鏡システムの外観図である。
【図2】電子内視鏡システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】励起光Ld、治療光Lt、蛍光光FLの強度を示すグラフである。
【図4】R1画素、R2画素、G画素、B画素を1つの画素群とするCCDの撮像面を説明するための説明図である。
【図5】(A)はR1画素の分光透過率を、(B)はR2画素の分光透過率を、(C)はG画素の分光透過率を、(D)はB画素の分光透過率を示すグラフである。
【図6】本発明の作用を示すフローチャートである。
【図7】(A)は通常光画像モード時におけるCCDの撮像動作を、(B)は蛍光光画像モード時におけるCCDの撮像動作を、(C)は治療光画像モード時におけるCCDの撮像動作を、(D)は治療状況確認モード時におけるCCDの撮像動作を説明する説明図である。
【図8】治療光の照射エリアを示す治療光画像の画像図である。
【図9】蛍光光を発している状態の腫瘍患部を示す蛍光光画像の画像図である。
【図10】(A)は図9のA−A線部における蛍光光の光量分布を、(B)は図9のA−A線部における光感受性物質の濃度分布を、(C)は図9のA−A線部における治療光の照射分布を示すグラフである。
【図11】本発明の手術用顕微鏡システムの外観図である。
【図12】本発明の手術用顕微鏡システムの電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、本発明の電子内視鏡システム10は、患者の体腔内を撮像する電子内視鏡11と、撮像により得られた信号に基づいて体腔内の被写体組織の画像を生成するプロセッサ装置12と、体腔内を照射する光を供給する光源装置13と、体腔内の画像を表示するモニタ14とを備えている。電子内視鏡11は、体腔内に挿入される可撓性の挿入部16と、挿入部16の基端部分に設けられた操作部17と、操作部17とプロセッサ装置12及び光源装置13との間を連結するユニバーサルコード18とを備えている。
【0019】
挿入部16の先端側には、複数の湾曲駒を連結した湾曲部19が形成されている。湾曲部19は、操作部のアングルノブ21を操作することにより、上下左右方向に湾曲動作する。湾曲部19の先端側には、体腔内撮影用の光学系等を内蔵した先端部16aが設けられており、この先端部16aは、湾曲部19の湾曲動作によって体腔内の所望の方向に向けられる。
【0020】
ユニバーサルコード18には、プロセッサ装置12および光源装置13側にコネクタ24が取り付けられている。コネクタ24は、通信用コネクタと光源用コネクタからなる複合タイプのコネクタであり、電子内視鏡11は、このコネクタ24を介して、プロセッサ装置12および光源装置13に着脱自在に接続される。
【0021】
図2に示すように、光源装置13は、広帯域光源30と、PDD用光源31と、PDT用光源32と、体腔内に照射する光を切り替える照射光切替部34と、照射光切替部34で切り替えられた光を電子内視鏡11のライトガイド43に向けて集光させる集光レンズ35とを備えている。広帯域光源30はキセノンランプ、白色LEDなどであり、波長が赤色領域から青色領域(約470〜700nm)にわたる広帯域光BBを発生する。広帯域光源30は、電子内視鏡11の使用中、常時点灯している。
【0022】
PDD用光源31は電子内視鏡11の使用中、常時点灯するレーザーダイオードなどであり、PDD用光源は中心波長が400nm近傍の励起光Ldを発生する。この励起光が、光感受性物質を蓄積した腫瘍患部に対して照射されると、その腫瘍患部からは蛍光光FLが発せられる。また、PDT用光源32は電子内視鏡11の使用中、常時点灯するレーザーダイオードなどであり、中心波長が620〜690nmの範囲内にある励起光Ldを発生する。この治療光の照射により、光感受性物質が蓄積した部分からは活性酸素が発生する。この活性酸素によって、腫瘍患部は徐々に消滅する。
【0023】
患者に投与する光感受性物質の種類によって、励起光Ld、治療光Lt、及び蛍光光FLの波長域はそれぞれ異なる。本実施形態では、光感受性物質としてフォトフィリンを投与する。このフォトフィリンを投与した場合、図3に示すように、中心波長が405nmの励起光Ldを照射することによって、660nmにピークを1つ有する蛍光光FLが得られる。また、この場合には、中心波長が630nmの治療光Ltを照射することで、腫瘍患部を消滅させることができる。
【0024】
なお、光感受性物質としてレザフィリンを投与した場合には、中心波長405nmの励起光の照射によって660nmにピークを1つ有する蛍光光が得られ、中心波長664nmの治療光の照射によって腫瘍患部を消滅させることができる。また、光感受性物質としてビスダインを投与した場合には、中心波長405nmの励起光の照射によって660nmにピークを1つ有する蛍光光が得られ、中心波長689nmの治療光の照射によって腫瘍患部を消滅させることができる。
【0025】
照射光切替部34は、図2に示すように、各光源30,31,32からの光を反射させる第1〜第3ミラー36,37,38と、第1〜第3ミラー36,37,38で反射した光を集光レンズ39に向けて更に反射させる中継ミラー40と、ミラー切替部41とを備えている。第1〜第3ミラー36,37,38は、各光源30,31,32からの光を、中継ミラー40及び集光レンズ35を介して、ライトガイド43に入射させる入射位置と、この入射位置から退避させて、各光源30,31,32からの光がライトガイド43に入射することを阻止する退避位置との間で回転自在に設けられている。ミラー切替部41は、プロセッサ装置12内のコントローラー59からの切替信号に従って、第1〜第3ミラー36,37,38のいずれかを入射位置にセットするとともに、それ以外のミラーを退避位置にセットする。
【0026】
電子内視鏡11は、ライトガイド43、CCD44、アナログ処理回路45(AFE:Analog Front End)、撮像制御部46を備えている。ライトガイド43は大口径光ファイバ、バンドルファイバなどであり、入射端が光源装置13に挿入されており、出射端が先端部16aに設けられた照射レンズ48に向けられている。光源装置13で発せられた光は、ライトガイド43により導光された後、2枚の照射レンズ48a,48bに向けて出射する。照射レンズ48a,38bに入射した光は、先端部16aの端面に取り付けられた照明窓49を通して、体腔内に照射される。
【0027】
体腔内に照射される光のうち治療光Ltの光量の空間的分布、即ち治療光Ltの照射分布は、2枚の照射レンズ48a,48bの間に設けられた空間光変調器53により制御される。空間光変調器53は、微小な光変調素子を2次元的に複数並べたものから構成され、プロセッサ装置12内のコントローラー59に接続された照射分布制御部54によって制御される。なお、治療光の照射分布は、コントローラー59内の治療光照射分布特定部59aで求められる。
【0028】
体腔内からの光は、先端部16aの端面に取り付けられた観察窓50を通して、集光レンズ51に入射する。CCD44は、集光レンズ51からの光を撮像面44aで受光し、受光した光を光電変換して信号電荷を蓄積し、蓄積した信号電荷を撮像信号として読み出す。読み出された撮像信号は、AFE45に送られる。CCD44はカラーCCDであり、図4に示すように、撮像面44aには、光透過率がそれぞれ異なるR1画素70、R2画素71、G画素72、B画素73の4種類の画素を1セットとする画素群が多数配列されている。
【0029】
R1画素70は、R色のカラーフィルターに加え、中心波長405nmの励起光Ldを減光する減光フィルタを備えていることから、図5(A)に示すような光の透過率を有する。また、R2画素71は、R色のカラーフィルタに加え、中心波長630nmの治療光Ltの強度を一定値にまで弱める減光フィルタを備えていることから、図5(B)に示すような光の透過率を有する。また、G画素72はG色のカラーフィルターを備えていることから、図5(C)に示すような光の透過率を有する。また、B画素73はB色のカラーフィルターを備えていることから、図5(D)に示すような光の透過率を有する。なお、R1画素70、R2画素71には光の強度を弱める減光フィルターを設けたが、これに代えて、励起光Ldや治療光Ltを完全に遮断するカットフィルターを設けてもよい。
【0030】
AFE45は、図2に示すように、相関二重サンプリング回路(CDS)、自動ゲイン制御回路(AGC)、及びアナログ/デジタル変換器(A/D)(いずれも図示省略)から構成されている。CDSは、CCD44からの撮像信号に対して相関二重サンプリング処理を施し、CCD44の駆動により生じたノイズを除去する。AGCは、CDSによりノイズが除去された撮像信号を増幅する。A/Dは、AGCで増幅された撮像信号を、所定のビット数のデジタルな撮像信号に変換してプロセッサ装置12に入力する。
【0031】
撮像制御部46は、プロセッサ装置12内のコントローラー59に接続されており、コントローラー59から指示がなされたときにCCD44に対して駆動信号を送る。CCD44の各画素は、撮像制御部46からの駆動信号に基づいて、所定のフレームレートで撮像信号をAFE45に出力する。
【0032】
プロセッサ装置12は、デジタル信号処理部55(DSP(Digital Signal Processor))と、フレームメモリ56と、表示制御回路57とを備えており、コントローラー59が各部を制御している。DSP55は、電子内視鏡のAFE45から出力された撮像信号に対し、色分離、色補間、ホワイトバランス調整、ガンマ補正などを行うことによって、画像データを作成する。
【0033】
また、DSP55は、励起光Ldの照射により腫瘍患部から蛍光光FLが発せられたときに得られる蛍光光画像の画像データに基づき、腫瘍患部に蓄積した光感受性物質の濃度分布を求める濃度分布特定部55aを備えている。この濃度分布特定部55aは、蛍光光FLを発生する腫瘍患部のうち蛍光光FLの光量が大きい部分を光感受性物質の濃度が高いとして特定し、蛍光光FLの光量が小さい部分を光感受性物質の濃度が低いとして特定する。
【0034】
フレームメモリ56は、DSP55で作成された画像データを記憶する。表示制御回路57は、フレームメモリ56から画像データを読み出し、この画像データに基づいて画像をモニタ14に表示する。モニタ14に表示される画像は、コントローラー59に接続されたモード切替SW61により切り替えられる。
【0035】
モード切替SW61は、通常光画像モード、蛍光光画像モード、治療光画像モード、治療状況確認モードのいずれかに切り替える。ここで、通常光画像モードは広帯域光BBを体腔内に照射した時の通常光画像を表示するモードである。蛍光光画像モードは、励起光Ldを体腔内に照射し、腫瘍患部から蛍光光FLが発せられた時の蛍光光画像を表示するモードである。治療光画像モードは、治療光Ltを体腔内に照射した時の治療光画像を表示するモードである。治療状況確認モードは、通常光画像、蛍光光画像、治療光画像の全てをモニタ14に表示するモードである。なお、治療状況確認モードでは、蛍光光画像と治療光画像とを別々に表示する他、それらを重ね合わせて表示してもよい。
【0036】
次に、本発明の作用を図6のフローチャートに沿って説明する。まず、患者に対して、光感受性物質であるフォトフィリンを投与する。これにより、患者の腫瘍患部に光感受性物質が蓄積する。そして、モード切替SW61を操作し、画像モードを通常光画像モードに切り替える。通常光画像モードへの切替に従って、ミラー切替部41はコントローラー59の指示に基づき、第1ミラー36を入射位置にセットする。これにより、電子内視鏡11の先端部16aからは広帯域光BBが照射される。
【0037】
また、撮像制御部46は、コントローラー59の指示に基づき、CCD44が図7(A)に示す動作を行なうように制御する。この通常光画像モード時では、CCD44のR1画素70、G画素72、B画素73がそれぞれ受光した広帯域光BBを光電変換して信号電荷を蓄積するステップ(以下「電荷蓄積ステップ」という)と、その後に蓄積した信号電荷を撮像信号として読み出すステップ(以下「信号読出ステップ」という)との合計2つの動作が、1フレームの取得期間で行われる。この動作は、通常光画像モードに設定されている間、繰り返し行われる。一方で、R2画素71では、信号電荷の蓄積や信号電荷の読み出しは行なわれない。
【0038】
これにより、モニタ14には、R1画素70の撮像信号、G画素72の撮像信号、B画素73の撮像信号に基づいて、カラーの通常光画像が表示される。この通常光画像は、その赤色の色再現に大きく影響を与える治療光用の減光フィルタが設けられたR2画素の撮像信号ではなく、赤色の色再現にほとんど影響を与えない励起光用の減光フィルタが設けられたR1画素の撮像信号に基づいて生成されているため、通常光画像は色再現性に優れている。
【0039】
モニタ14に通常光画像が表示されると、電子内視鏡11の先端部16aを患者の体腔内に挿入する。そして、モニタ14の通常光画像を確認しながら、先端部16aを徐々に腫瘍患部に近付けていく。先端部16aが腫瘍患部に到達したら、モード切替SW61を操作し、画像モードを蛍光光画像モードに切り替える。蛍光光画像モードへの切替に従って、ミラー切替部41は、コントローラー59からの指示に基づき、第1ミラー36を退避位置に戻し、第2ミラー37を入射位置にセットする。これにより、電子内視鏡11の先端部16aからは励起光Ldが照射される。この励起光Ldが腫瘍患部に照射されると、腫瘍患部からは蛍光光FLが発せられる。
【0040】
また、撮像制御部46は、コントローラー59からの指示に基づき、CCD44が図7(B)に示す動作を行なうように制御する。この蛍光光画像モード時では、CCD44のR1画素70が受光した蛍光光FLに基づく電荷蓄積ステップと、この後の信号読出ステップとの合計2つの動作が、1フレームの取得期間で行われる。この動作は、蛍光光画像モードに設定されている間、繰り返し行われる。一方、R2画素71、G画素72、B画素73では、電荷蓄積ステップや信号読出ステップは行なわれない。これにより、モニタ14には、R1画素71の撮像信号に基づいて、赤色の蛍光光画像が表示される。この蛍光光画像は、励起光LtがR1画素70の減光フィルタで除去されているため、その励起光によるハレーションが生じることはない。
【0041】
そして、術者はモニタ14に表示された蛍光光画像から腫瘍患部の蛍光状態を確認することによって、腫瘍患部の位置、大きさ、範囲を正確に把握する。腫瘍患部の位置等を把握した後は、モード切替SW61を操作し、画像モードを治療光画像モードに切り替える。治療光画像モードへの切替に従って、ミラー切替部41は、コントローラー59からの指示に基づき、第2ミラー37を退避位置に戻し、第3ミラー38を入射位置にセットする。これにより、電子内視鏡11の先端部16aからは治療光Ltが照射される。この治療光Ltの照射により、腫瘍患部は徐々に消滅する。
【0042】
また、撮像制御部46は、コントローラー59からの指示に基づき、CCD44が図6(C)に示す動作を行なうように制御する。この治療光画像モードでは、CCD44のR2画素71が受光した蛍光光に基づく電荷蓄積ステップと、この後の信号読出ステップとの合計2つの動作が1、フレームの取得期間で行なわれる。この動作は、治療光画像モードに設定されている間、繰り返し行われる。一方、R1画素70、G画素72、B画素73では、電荷蓄積ステップや信号読出ステップは行なわれない。
【0043】
これにより、モニタ14には、R2画素71の撮像信号に基づいて、赤色の治療光画像が表示される。この治療光画像は、治療光がR2画素71の減光フィルタによって強度が弱められているため、その治療光によるハレーションが生じることはない。また、R2画素71では治療光を完全に遮断していないため、治療光画像から治療光の照射状況も確実に把握することができる。
【0044】
そして、術者はモニタ14に表示された治療光画像から腫瘍患部の消滅状況を確認する。また、図8に示すように、腫瘍患部110の一部が治療光Ltの照射エリア111から外れていることを確認したときには、その照射エリア111から外れている部分にも治療光Ltが当たるように、アングルノブ21を操作して先端部16aを動かす。したがって、図8の場合であれば、先端部16aを左方向に動かすことにより、腫瘍患部110全体が治療光Ltの照射エリア112に含まれるようになる。
【0045】
次に、光感受性物質の濃度分布や腫瘍患部の消滅状況が経時的にどのように変化するかを確認する場合には、モード切替SW61を操作し、画像モードを治療状況確認モードに切り替える。治療状況確認モードへの切替に従って、ミラー切替部41は、コントローラー59からの指示に基づき、1フレームの期間ごとに、入射位置にセットするミラーを第1〜第3ミラー36〜38の順で切り替える。
【0046】
このように第1〜第3ミラー36〜38を切り替えることで、広帯域光BB、励起光Ld、治療光Ltの順で、体腔内に光が照射される。この光の照射は、治療状況確認モードに設定されている間、繰り返し行われる。このように励起光Ld、治療光Ltの照射を繰り返すことによって、治療光Ltの照射で腫瘍患部を消滅させつつ、その腫瘍患部に対する励起光Ldの照射によって、消滅状態にある腫瘍患部から蛍光光FLを発生させることができる。
【0047】
また、撮像制御部46は、コントローラー59からの指示に基づき、CCD44が図6(D)に示す動作を行なうように制御する。この治療状況確認モード時では、広帯域光BBの照射時に、CCD44のR1画素70、G画素72、B画素73が受光した広帯域光BBに基づく電荷蓄積ステップと、この後の信号読出ステップとの合計2つの動作を1フレームの取得期間で行う。そして、その後の励起光Ldの照射時には、CCD44のR1画素70が受光した蛍光光FLに基づく電荷蓄積ステップと、この後の信号読出ステップとの合計2つの動作を1フレームの取得期間で行い、R2画素71、G画素72、B画素73ではそれら2つの動作は行なわない。そして、その後の治療光Ltの照射時には、CCD44のR2画素71が受光した治療光Ltに基づく電荷蓄積ステップと、この後の信号読出ステップとの合計2つの動作を1フレームの取得期間で行い、R1画素70、G画素72、B画素73ではそれら2つの動作は行なわない。これら3フレームの取得期間分の動作は、治療状況確認モードに設定されている間、繰り返し行われる。
【0048】
これにより、モニタ14には、カラーの通常光画像、赤色の蛍光光画像、赤色の治療光画像の3つの画像が表示される。このように通常光画像や治療光画像だけでなく、蛍光光画像も合わせてモニタ14に表示することによって、PDT治療の進捗状況を光感受性物質の濃度変化で確認することができるようになる。なお、各画像は1フレーム分ずつ時間がずれているが、フレームの取得期間を短くすることで、各画像が同じ時間に撮像したように見せることができる。例えば、3フレームの取得期間を33msecとすることが好ましい。
【0049】
また、この治療状況確認モード時では、光感受性物質の濃度変化に応じて治療光Ltの照射分布を制御することが行なわれる。この治療光Ltの照射分布の制御は、蛍光光画像の画像データを生成した後に行われる。まず、蛍光光画像の画像データが生成されると、DSP55内の濃度分布特定部55aが、蛍光光画像の画像データに基づいて、腫瘍患部から発している蛍光光FLの光量分布を求める。そして、この蛍光光FLの光量分布から、腫瘍患部の光感受性物質の濃度分布を求める。
【0050】
例えば、図9に示すような腫瘍患部114のうちA−A線部から、図10(A)に示すような光量分布の蛍光光FLが発せられている場合には、A−A線上の光感受性物質の濃度分布は、光感受性物質の濃度が高いときほど蛍光光FLの光量が高くなることを考慮すると、A−A線上の蛍光光FLの光量分布と同様とされる。したがって、図10(B)に示す濃度分布となる。そして、A−A線以外についても同じように蛍光光の光量分布を求めることより、腫瘍患部全体の光感受性物質の濃度分布を求める。腫瘍患部全体の光感受性物質の濃度分布が求まると、光感受性物質の濃度分布についての濃度データがコントローラー59に送られる。
【0051】
次に、コントローラーの治療光照射分布特定部59aでは、光感受性物質の濃度分布に基づき、腫瘍患部に照射する治療光Ltの照射分布を求める。そして、照射分布制御部54は、治療光照射分布特定部59aで求めた治療光Ltの照射分布に基づいて空間光変調器53を制御する。これにより、治療光Ltが、治療光照射分布特定部59aで求めた照射分布に従って照射される。
【0052】
ここで、光感受性物質の濃度が高い部分には、治療光Ltの光量を大きくすることによって、腫瘍患部の消滅を早めることができる。その一方で、光感受性物質の濃度が低い場合には、治療光Ltの光量を小さくすることによって、消滅しつつある腫瘍患部に対して治療光Ltを当て過ぎないようにすることできる。
【0053】
例えば、図9の腫瘍患部114のうちA−A線上の光感受性物質の濃度分布が図10(B)に示すような場合、光感受性物質の濃度が高い中心部分については、大きい光量の治療光Ltを照射するようにし、光感受性物質の濃度が低い周辺部分については、小さい光量の治療光Ltを照射するようにする。したがって、腫瘍患部114のうちA−A線上部分に対しては、図10(C)に示すような照射分布で、治療光Ltを照射する。
【0054】
なお、上記実施形態では、本発明を電子内視鏡システムに適用したが、その他、図11に示すような手術用顕微鏡システム80にも本発明を適用することができる。手術用顕微鏡システム80は、手術用架台81に載せられた患者の上方に設けられ、手術部位を撮像して表示する手術用顕微鏡82と、この手術用顕微鏡を支持する支持スタンド83と、手術用顕微鏡82に対して各種光を供給する光源装置84とを備えている。
【0055】
支持スタンド83は軸86により回転自在に連結された2本のアーム88,89を備えている。一方のアーム88は手術用顕微鏡82に取り付けられているため、手術用顕微鏡82は軸86を中心として水平方向に移動可能となっている。もう一方のアーム89は、支持スタンド83の支柱83aに上下方向に移動自在に取り付けられている。したがって、手術用顕微鏡82は、アーム89の上下方向への移動に従って、上下方向に移動可能となっている。
【0056】
手術用顕微鏡82は、手術部位を撮像する手術部位撮像部91と、撮像により得られた信号に基づいて手術部位の画像を生成する顕微鏡本体92と、手術部位の画像を表示するファインダ93とを備えている。図12に示すように、光源装置84は本実施形態の光源装置13と略同様であり、広帯域光源30から広帯域光BBを、PDD用光源31から励起光Ldを、PDT用光源32から治療光Ltを発する。各光源30,31,32からの光は、光ホモジナイザー94で光量分布が均一化される。光量分布が均一化された光は、中継ミラー40及び2枚の集光レンズ35を介して、光源装置84と手術部位撮像部91とを光学的に接続するライトガイド95に供給される。
【0057】
手術部位撮像部91では、ライトガイド95からの光が、ダイクロイックミラー97で反射されて対物レンズ98に入射する。対物レンズ98に入射した光は、対物窓100を通して、患者の手術部位に照射される。広帯域光BB,励起光Ld、治療光Ltが手術部位に照射されると、その一部が反射して手術用顕微鏡に戻ってくる。また、手術部位のうち光感受性物質が蓄積された腫瘍患部に対して励起光Ldが照射されたときには、その腫瘍患部からは蛍光光FLが発生する。また、手術部位に照射される光のうち治療光Ltの光量の空間的分布、即ち治療光Ltの照射分布は、ライトガイド95とダイクロイックミラー97との間に設けられた空間光変調器53により制御される。空間光変調器53は本実施形態のものと同様である。
【0058】
手術部位からの光は、対物窓100を通して、対物レンズ98で集光される。対物レンズ98で集光された光は、ダイクロイックミラー97をそのまま透過する。ダイクロイックミラー97からの光は、集光レンズ102で更に集光された後、CCD44の撮像面44aに入射する。
【0059】
撮像面44aには、本実施形態と同様に、光透過率がそれぞれ異なるR1画素70、R2画素71、G画素72、B画素73の4種類の画素を1セットとする画素群が多数配列されている(図4、図5参照)。CCD44の各画素から得られる撮像信号は、AFE45でデジタル化された後、顕微鏡本体92に入力される。AFE45への撮像信号の出力は、CCD44に接続された撮像制御部46によって制御される。この撮像制御部46は、本実施形態の電子内視鏡システムの撮像制御部と同様であり、顕微鏡本体92内のコントローラー59の各種指示に基づいて駆動する。
【0060】
顕微鏡本体92は、本実施形態のプロセッサ装置12に対応するものであり、顕微鏡本体92のAFE45から出力された撮像信号に対し、DSP55で色分離などの画像処理を行うことによって、画像データを作成する。この画像データは、フレームメモリ56に記憶される。このフレームメモリ56に記憶された画像データは、表示制御回路57によって読み出される。表示制御回路57は、読み出した画像データに基づいて画像をファインダ93に表示する。ファインダ93に表示される画像は、コントローラー59に接続されたモード切替SW61により切り替えられる。モード切替SW61は、本実施形態と同様に、画像モードを通常光画像モード、蛍光光画像モード、治療光画像モード、治療状況確認モードのいずれかに切り替える。
【0061】
通常光画像モードでは、R1画素70の撮像信号、G画素72の撮像信号、B画素73の撮像信号に基づいて生成される通常光画像がファインダ93に表示される。この通常光画像は、赤色の色再現に大きく影響を与える治療光用の減光フィルタが設けられたR2画素71の撮像信号ではなく、赤色の色再現にほとんど影響を与えない励起光カット用の減光フィルタが設けられたR1画素70の撮像信号に基づいて生成されているため、色再現性に優れている。
【0062】
また、蛍光光画像モードでは、R1画素70の撮像信号に基づいて生成される蛍光光画像がファインダ93に表示される。蛍光光画像は、励起光LdがR1画素70の減光フィルタで減光されていることから、ハレーションの発生は無い。また、治療光画像モードでは、R2画像71の撮像信号に基づいて生成される治療光画像がファインダ93に表示される。治療光画像は、治療光LtがR2画素71の減光フィルタで減光されていることから、ハレーションの発生は無い。
【0063】
また、治療状況確認モードでは、通常光画像、蛍光光画像、治療光画像がファインダ93に表示されるため、光感受性物質の濃度分布や腫瘍患部の消滅状況が経時的にどのように変化するかを確認することができる。また、治療状況確認モードでは、本実施形態と同様に、蛍光光画像の画像データを生成した後に、光感受性物質の濃度変化に応じて治療光Ltの照射分布を制御することが行なわれる。
【0064】
この治療光Ltの照射分布の制御に際しては、まず、DSP内の濃度分布特定部55aによって腫瘍患部に蓄積した光感受性物質の濃度分布を求めるとともに、この求めた光感受性物質の濃度分布に基づき、治療光照射分布特定部59aによって、腫瘍患部に照射する治療光Ltの照射分布を求めている。そして、この求めた治療光Ltの照射分布に基づいて照射分布制御部54が空間光変調器53を制御する。
【0065】
これにより、腫瘍患部のうち光感受性物質の濃度が高い部分には、光量の大きい治療光Ltが照射されるため、腫瘍患部の消滅を早めることができる。その一方で、光感受性物質の濃度が低い部分には、光量の小さい治療光Ltが照射されるため、消滅しつつある腫瘍患部に対して治療光Ltを当て過ぎることがなくなる。
【0066】
なお、本実施形態では、通常光画像モード、蛍光光画像モード、治療光画像モード、治療状況確認モードの順で画像モードを切り替える例を説明したが、画像モードの切替順番はこれに限られない。
【0067】
なお、本発明は電子内視鏡システムや手術用顕微鏡システムだけでなく、その他のPDTを用いる医療装置システムに対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
10 電子内視鏡システム
11 電子内視鏡
30 広帯域光源
31 PDD用光源
32 PDT用光源
34 照射光切替部
44 CCD
53 空間光変調器
54 照射分布制御部
55 DSP
55a 濃度分布特定部
59 コントローラー
59a 治療光照射分布特定部
80 手術用顕微鏡システム
82 手術用顕微鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光感受性物質が蓄積された患者の腫瘍患部から蛍光光を発生させるための励起光を発するPDD用光源と、
前記腫瘍患部を消滅させるための治療光を発するPDT用光源と、
励起光または治療光を前記腫瘍患部に対して照射する照射手段と、
前記腫瘍患部からの光を受光して生成される撮像信号に基づき、画像を生成する画像生成手段と、
励起光を照射した時に得られる蛍光光画像から、前記腫瘍患部に蓄積した光感受性物質の濃度分布を特定する濃度分布特定部と、
前記腫瘍患部における光感受性物質の濃度分布に基づき、前記治療光の照射分布を制御する照射分布制御部とを備えることを特徴とするPDT用医療装置システム。
【請求項2】
前記照射分布制御部は、前記腫瘍患部のうち光感受性物質の濃度が高い部分には、光量の大きい治療光を照射し、光感受性物質の濃度が低い部分には、光量の小さい治療光を照射することを特徴とする請求項1記載のPDT用医療装置システム。
【請求項3】
波長が青色領域から赤色領域にわたる広帯域光を発する広帯域光源と、
前記腫瘍患部に対して照射する光を、前記広帯域光、前記励起光、前記治療光の順で切り替える照射光切替部とを備えることを特徴とする請求項1または2記載のPDT用医療装置システム。
【請求項4】
前記光感受性物質はフォトフィリンであり、前記治療光は中心波長が630nmであり、前記励起光は中心波長が405nmであり、前記蛍光光は660nmにピークを1つ有することを特徴とする請求項1ないし3記載のPDT用医療装置システム。
【請求項5】
光感受性物質が蓄積された体腔内の腫瘍患部から蛍光光を発生させるための励起光を発するPDD用光源と、前記腫瘍患部を消滅させるための治療光を発するPDT用光源とを有する光源装置と、
前記腫瘍患部を含む体腔内に対して励起光または治療光を照射する照射手段と、前記腫瘍患部からの光を受光して撮像信号を出力する撮像素子とを有する電子内視鏡と、
撮像信号に基づいて画像を生成する画像生成手段と、励起光を照射した時に得られる蛍光光画像から、前記腫瘍患部に蓄積した光感受性物質の濃度分布を特定する濃度分布特定部とを有するプロセッサ装置とを備え、
前記電子内視鏡は、
前記腫瘍患部における光感受性物質の濃度分布に基づき、前記治療光の照射分布を制御する照射分布制御部を備えることを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項6】
手術部位のうち光感受性物質が蓄積された腫瘍患部から蛍光光を発生させるための励起光を発するPDD用光源と、前記腫瘍患部を消滅させるための治療光を発するPDT用光源とを有する光源装置と、
前記腫瘍患部を含む手術部位に対して励起光または治療光を照射する照射手段と、前記腫瘍患部からの光を受光して撮像信号を出力する撮像素子と、撮像信号に基づいて画像を生成する画像生成手段と、励起光を照射した時に得られる蛍光光画像から、前記腫瘍患部に蓄積した光感受性物質の濃度分布を特定する濃度分布特定部とを有する手術用顕微鏡とを備え、
前記手術用顕微鏡は、
前記腫瘍患部における光感受性物質の濃度分布に基づき、前記治療光の照射分布を制御する照射分布制御部を備えることを特徴とする手術用顕微鏡システム。
【請求項7】
光感受性物質が蓄積された患者の腫瘍患部から蛍光光を発生させるための励起光を前記腫瘍患部に対して照射したときに、前記腫瘍患部からの光を撮像素子で受光し、
撮像素子から出力される撮像信号に基づき、蛍光光画像を生成し、
蛍光光画像から前記腫瘍患部に蓄積した光感受性物質の濃度分布を特定し、
前記腫瘍患部を消滅させるための治療光を腫瘍患部に対して照射する際に、前記腫瘍患部における光感受性物質の濃度分布に基づき、治療光の照射分布を制御することを特徴とする治療光照射分布制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−167344(P2011−167344A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33785(P2010−33785)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】