説明

PLL回路、無線端末装置、および周波数検出方法

【課題】DCOの最低発振周波数を検出し、分周比Nに比例した制御データから、DCOの制御データへの変換を精度良く行うことが可能な、新規かつ改良されたPLL回路を提供すること。
【解決手段】ディジタル値を用いて制御される発振回路を有するPLL回路であって、搬送波周波数値を設定する搬送波周波数設定部と、搬送波周波数値が変化したことを検出する検出部と、搬送波周波数値が変化したことを示す信号に同期して、発振回路を最低周波数で発振させるための制御信号を送信し、基準周波数の1周期内の発振回路の出力クロック数を計測する計測部と、を含むことを特徴とする、PLL回路が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLL回路、無線端末装置、および周波数検出方法に関し、より詳細には、ディジタル制御PLL回路に用いられるディジタル制御発振器の制御データを変換するPLL回路、無線端末装置、および周波数検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信端末では、搬送波周波数を正確な周波数にロックさせておくためにPLL(Phase Locked Loop)回路が持ちられる。近年、半導体プロセスの微細化に伴って、アナログ電圧で制御する電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator;VCO)を、ディジタル制御発振器(Digital Controlled Oscillator;DCO)に置き換えた構成が着目されつつある。
【0003】
従来のVCOを用いたPLL回路では、基準クロックとVCO出力を分周したクロックとの間の位相差を、位相比較器を用いて比較していた。ここで一般的な位相比較器としては、位相差を、アップ、ダウン、アップ+ダウンの3状態のパルス幅に変換する回路が用いられ、このパルスを用いてチャージ・ポンプ回路の電流源を制御して、出力される電流をループフィルタで電圧に変換して、VCOを制御していた。
【0004】
一方、図10(R.B.Staszewski et al., “All-Digital Phase-Domain TX Frequency Synthesizer for Bluetooth Radios in 0.13um CMOS, ISSCC2004 Digestからの引用)に示したように、近年着目されているDCOを用いたADPLL(All−Digital PLL)回路の例では、位相差に相当する時間差のFractional成分をTime−to−Digital Converter(TDC)回路で、Integer成分をアキュムレータ回路でディジタル値に変換し、検出したこれらの位相差に相当するディジタル値を様々な手法でフィードバックして、DCOをディジタル的に制御している。
【0005】
【非特許文献1】R.B.Staszewski et al., “All-Digital Phase-Domain TX Frequency Synthesizer for Bluetooth Radios in 0.13um CMOS, ISSCC2004 Digest
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図7は、従来のPLL回路10を示す説明図である。図7に示したように、従来のPLL回路10は、位相比較器11と、可変利得増幅回路12と、乗算器13と、発振器14と、を含んで構成される。
【0007】
図7に示すように、発振周波数fを基準周波数Ref_freqで除した分周比Nと発振周波数fとの関係は、図7のグラフ(1)に示したように、原点を通る1次曲線となる。ここで発振回路の特性として、図7のグラフ(2)に示したように、ディジタル制御データDと発振周波数fとの関係が、原点を通り、傾きがkDCOである1次曲線であれば、分周比Nから制御データDへの変換は、係数α(=Ref_freq/kDCO)を乗じることで実現できる。
【0008】
一方、ディジタルPLLに用いられるDCOには、タンク回路の容量として複数配置された可変容量を、ディジタル信号で切り替えて制御する構成が、一般的に用いられる。よって、全てのスイッチをオンして、全ての容量が付加された状態で、DCOは最低周波数を発振する。つまり、図8に示すように、制御データDと発振周波数との関係は、図8のグラフ(2)に示したように、Y切片が最低発振周波数fmin、傾きがkDCOとなる1次曲線に近似することができる。この場合、分周比Nから制御データDに変換するには、ある係数α’を乗じるだけでは難しく、少なくとも最低発振周波数fminを知る手段が必要となる。
【0009】
図9に示すように、制御データをD、最小可変容量値をΔC、全てのスイッチがオンした際の可変容量の容量値をCmax、インダクタンス値をLとした場合、発振周波数fは、以下の数式1で表される。
【数1】

【0010】
しかし、Cmaxに対してD・ΔCの値が充分小さな領域では、Y切片をfminとする1次曲線に近似することができるが、図9のグラフ(2)に示したように、Dが大きくなるにつれ誤差が大きくなり、この誤差はDCOに直接周波数変調を施す際に特に問題となってしまう。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、DCOの最低発振周波数を取得し、取得した最低発振周波数を用いて分周比Nに比例した制御データから、DCOの制御データへの変換を精度良く行うことが可能となる、新規かつ改良されたPLL回路、無線端末装置、および周波数検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、ディジタル値を用いて制御される発振回路を有するPLL(Phase Locked Loop)回路であって、搬送波周波数値を保持する搬送波周波数保持部と、搬送波周波数値が、搬送波周波数保持部が保持する値から変化したことを検出する検出部と、検出部で検出した搬送波周波数値の変化に同期して、発振回路を最低周波数で発振させるための制御信号を送信し、基準周波数の1周期内の発振回路の出力クロック数を計測する計測部と、を含むことを特徴とする、PLL回路が提供される。
【0013】
かかる構成によれば、搬送波周波数保持部はPLL回路における搬送波周波数の値を保持し、検出部は、搬送波周波数値が、搬送波周波数保持部が保持する値から変化したことを検出する。そして、計測部は、検出部で検出した搬送波周波数値の変化に同期して、発振回路を最低周波数で発振させるための制御信号を送信し、基準周波数の1周期内の発振回路の出力クロック数を計測する。その結果、PLL回路において、搬送波周波数の設定値が変化したことに同期して、発振回路には最低周波数を発振させる制御データを送信し、基準周波数の1周期内の発振回路出力のクロック数を計測することにより、最低発振周波数値をキャリブレーション機能の1つとして検出することができる。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、ディジタル値を用いて制御される発振回路を有するPLL回路であって、搬送波周波数値を保持する搬送波周波数保持部と、搬送波周波数値が、搬送波周波数保持部が保持する値から変化したことを検出する検出部と、検出部が検出した搬送波周波数値の変化に同期して、発振回路を最低周波数で発振させるための制御信号を送信し、基準周波数のクロック数を計測する第1の計測部と、第1の計測部で計測する基準周波数のクロック数を設定する設定部と、第1の計測部で計測したクロック数と等価な基準周波数周期内の発振回路の出力クロック数を計測する第2の計測部と、第1の計測部で計測したクロック数と等価な基準周波数周期内の第2の計測部で計測した発振回路の出力クロック数を、第1の計測部で計測したクロック数で平均化する平均部と、を含むことを特徴とする、PLL回路が提供される。
【0015】
かかる構成によれば、搬送波周波数保持部はPLL回路における搬送波周波数の値を保持し、検出部は、搬送波周波数値が、搬送波周波数保持部が保持する値から変化したことを検出する。そして、第1の計測部は検出部が検出した搬送波周波数値の変化に同期して、発振回路を最低周波数で発振させるための制御信号を送信し、基準周波数のクロック数を計測し、第2の計測部は、第1の計測部で計測する基準周波数のクロック数を設定する設定部と、第1の計測部で計測したクロック数と等価な基準周波数周期内の発振回路の出力クロック数を計測し、平均部は、第2の計測部の計測値を、第1の計測部で計測した計測値で平均化する。その結果、PLL回路において、搬送波周波数の設定値が変化したことに同期して、発振回路には最低周波数を発振させる制御データを送信し、基準周波数の1周期内の発振回路出力のクロック数を計測することにより、最低発振周波数値をキャリブレーション機能の1つとして検出することができる。また、計測時間を長く取り、1周期あたりのクロック数の平均値を算出することによって、より精度良く最低発振周波数値を検出することができる。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、ディジタル値を用いて制御される発振回路を有するPLL回路であって、最低周波数値を計測または入力する最低周波数設定部と、分周比に比例した制御データから、最低周波数値を基準周波数値で除した値を減じる減算部と、基準周波数値を発振回路の変換利得で除した値に相当する係数を乗じる乗算部と、を含み、乗算部の出力を発振回路の制御信号に用いることを特徴とする、PLL回路が提供される。
【0017】
その結果、PLL回路において、最低発振周波数値が0Hzとならない特性をもつ発振回路の制御データへの変換において、1次曲線へ近似することができる。
【0018】
上記PLL回路は、上記発振回路に直接周波数変調を施してもよい。その結果、PLL回路において直接周波数変調を施すことができる。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、ディジタル値を用いて制御される発振回路を有するPLL回路であって、請求項1または2に記載のPLL回路における最低周波数値を計測する最低周波数計測部と、分周比に比例した制御データから、最低周波数値を基準周波数値で除した値を減じる減算部と、基準周波数値を発振回路の変換利得で除した値に相当する係数を乗じる乗算部と、を含み、乗算部の出力を発振回路の制御信号に用いることを特徴とする、PLL回路が提供される。
【0020】
その結果、PLL回路において、最低発振周波数値が0Hzとならない特性をもつ発振回路の制御データへの変換において、1次曲線へ近似することができる。また、PLL回路において、搬送波周波数の設定値が変化したことに同期して、発振回路には最低周波数を発振させる制御データを送信し、基準周波数の1周期内の発振回路出力のクロック数を計測することにより、最低発振周波数値をキャリブレーション機能の1つとして検出することができる。
【0021】
上記PLL回路は、上記発振回路に直接周波数変調を施してもよい。その結果、PLL回路において直接周波数変調を施すことができる。
【0022】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、ディジタル値を用いて制御される発振回路を有するPLL回路であって、最低周波数値を計測または入力する最低周波数設定部と、最低周波数値および搬送波周波数値から、制御データと周波数との関係を1次曲線へ近似する際のY切片に相当する周波数値を計算する演算部と、分周比に比例した制御データから、Y切片に相当する周波数値を基準周波数値で除した値を減じる減算部と、基準周波数値を発振回路の変換利得で除した値に相当する係数を乗じる乗算部と、を含み、乗算部の出力を発振回路の制御信号に用いることを特徴とする、PLL回路が提供される。
【0023】
その結果、PLL回路において、発振回路の制御データへの変換において、1次曲線へ近似する際に、発振回路の制御データに対する発振周波数の傾きの変化が無視できない領域においても、所定の傾きを有する1次曲線に近似することができる。
【0024】
上記PLL回路は、上記発振回路に直接周波数変調を施してもよい。その結果、PLL回路において直接周波数変調を施すことができる。
【0025】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、ディジタル値を用いて制御される発振回路を有するPLL回路であって、請求項1または2に記載のPLL回路における最低周波数値を計測する最低周波数計測部と、最低周波数値および搬送波周波数値から、制御データと周波数との関係を1次曲線へ近似する際のY切片に相当する周波数値を計算する演算部と、分周比に比例した制御データから、Y切片に相当する周波数値を基準周波数値で除した値を減じる減算部と、基準周波数値を発振回路の変換利得で除した値に相当する係数を乗じる乗算部と、を含み、乗算部の出力を発振回路の制御信号に用いることを特徴とする、PLL回路が提供される。
【0026】
その結果、PLL回路において、発振回路の制御データへの変換において、1次曲線へ近似する際に、発振回路の制御データに対する発振周波数の傾きの変化が無視できない領域においても、所定の傾きを有する1次曲線に近似することができる。また、PLL回路において、搬送波周波数の設定値が変化したことに同期して、発振回路には最低周波数を発振させる制御データを送信し、基準周波数の1周期内の発振回路出力のクロック数を計測することにより、最低発振周波数値をキャリブレーション機能の1つとして検出することができる。
【0027】
上記PLL回路は、上記発振回路に直接周波数変調を施してもよい。その結果、PLL回路において直接周波数変調を施すことができる。
【0028】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記のPLL回路を備えることを特徴とする、無線端末装置が提供される。その結果、上述のPLL回路の効果を有する無線端末装置を提供できることになる。
【0029】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、ディジタル値を用いて制御される発振回路を有するPLL回路における周波数検出方法であって、搬送波周波数値を保持する搬送波周波数保持ステップと、搬送波周波数値が、搬送波周波数保持ステップで保持した値から変化したことを検出する検出ステップと、検出ステップで検出した搬送波周波数値の変化に同期して、発振回路を最低周波数で発振させるための制御信号を送信し、基準周波数の1周期内の発振回路の出力クロック数を計測する計測ステップと、を含むことを特徴とする、周波数検出方法が提供される。
【0030】
その結果、PLL回路における周波数検出方法において、搬送波周波数の設定値が変化したことに同期して、発振回路には最低周波数を発振させる制御データを送信し、基準周波数の1周期内の発振回路出力のクロック数を計測することにより、最低発振周波数値をキャリブレーション機能の1つとして検出することができる。
【0031】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、ディジタル値を用いて制御される発振回路を有するPLL回路における周波数検出方法であって、搬送波周波数値を保持する搬送波周波数保持ステップと、搬送波周波数値が、搬送波周波数保持ステップで保持した値から変化したことを検出する検出ステップと、検出ステップで検出した搬送波周波数値の変化に同期して、発振回路を最低周波数で発振させるための制御信号を送信し、基準周波数のクロック数を計測する第1の計測ステップと、第1の計測ステップで計測する基準周波数のクロック数を設定する設定ステップと、第1の計測ステップで計測したクロック数と等価な基準周波数周期内の発振回路の出力クロック数を計測する第2の計測ステップと、第1の計測ステップで計測したクロック数と等価な基準周波数周期内の第2の計測ステップで計測した発振回路の出力クロック数を、第1の計測ステップで計測したクロック数で平均化する平均ステップと、を含むことを特徴とする、周波数検出方法が提供される。
【0032】
その結果、PLL回路における周波数検出方法において、搬送波周波数の設定値が変化したことに同期して、発振回路には最低周波数を発振させる制御データを送信し、基準周波数の1周期内の発振回路出力のクロック数を計測することにより、最低発振周波数値をキャリブレーション機能の1つとして検出することができる。また、計測時間を長く取り、1周期あたりのクロック数の平均値を算出することによって、より精度良く最低発振周波数値を検出することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように本発明によれば、DCOの最低発振周波数を取得し、取得した最低発振周波数を用いて分周比Nに比例した制御データから、DCOの制御データへの変換を精度良く行うことが可能となる、新規かつ改良されたPLL回路、無線端末装置、および周波数検出方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0035】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態にかかるPLL回路について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態にかかるPLL回路100について説明する説明図である。以下、図1を用いて、本発明の第1の実施形態にかかるPLL回路100の構成について説明する。
【0036】
図1に示したように、本発明の第1の実施形態にかかるPLL回路100は、第1のフリップフロップ101と、第1の比較回路102と、発振器103と、基準周波数発振器104と、第1の累積加算器105と、第2の累積加算器106と、第2の比較回路107と、第2のフリップフロップ108と、第1のスイッチ109と、第2のスイッチ110と、を含んで構成される。
【0037】
第1のフリップフロップ101は、直前の入力値の保持が可能なD型のフリップフロップであり、基準周波数発振器104の1クロック前における分周比の設定値を保持し、出力するものである。第1のフリップフロップ101からの出力は第1の比較回路102に入力される。
【0038】
第1の比較回路102は、第1のフリップフロップ101が出力した基準周波数発振器104の1クロック前における分周比の設定値と、現在の分周比の設定値(PLL設定データ)とを比較するものである。両者が一致していればLOWレベルの信号を出力し、両者が相違していればHIGHレベルの信号を出力する。
【0039】
発振器103は、所定の周波数で発振するクロック信号を出力するものである。本実施形態においては、第1のスイッチ109で選択的に出力される制御データDによって発振周波数が決定される。
【0040】
基準周波数発振器104は、基準周波数Ref_freqを有するクロック信号を出力するものである、基準周波数発振器104から出力される信号は第1のフリップフロップ101および第2のスイッチ110に入力される。
【0041】
第1の累積加算器105は、発振器103の出力クロックの立ち上がりエッジをトリガとして、発振器103の出力クロック数を累積加算するものである。第1の累積加算器105で累積加算される値は第1の比較回路102の出力がHIGHレベルの信号である期間にリセットされ、LOWレベルの信号である期間に遷移した後に累積加算が開始される。第1の累積加算器105で累積加算した発振器103の出力クロック数は第2のフリップフロップ108に入力される。
【0042】
第2の累積加算器106は、基準周波数発振器104の出力クロックの立ち上がりエッジをトリガとして、基準周波数発振器104の出力クロック数を累積加算するものである。第1の累積加算器105と同様に、第2の累積加算器106で累積加算される値は第1の比較回路102の出力がHIGHレベルの信号である期間にリセットされ、LOWレベルの信号である期間に遷移した後に累積加算が開始される。第2の累積加算器106で累積加算された基準周波数発振器104の出力クロック数は第2の比較回路107に入力される。
【0043】
第2の比較回路107は、第2の累積加算器106の出力と、値“1”との比較結果を出力するものである。第2の累積加算器106の出力が1と等しくなった際には、第2の比較回路107はHIGHレベルの信号を出力し、等しくなければLOWレベルの信号を出力する。第2の比較回路107の出力は第2のフリップフロップ108、第1のスイッチ109および第2のスイッチ110に入力される。
【0044】
第2のフリップフロップ108は、第1のフリップフロップ101と同様に直前の入力値の保持が可能なD型のフリップフロップであり、基準周波数発振器104の出力クロックの“1”クロック後における第1の累積加算器105の累積加算値を保持して出力するものである。第2のフリップフロップ108からの出力は、基準周波数1周期内のクロック数、すなわちfminを基準周波数Ref_freqで除した値を得ることができるが、その原理については後に詳述する。
【0045】
第1のスイッチ109は、発振器103に供給する制御データを選択的に切り替えるものである。第1のスイッチ109の切り替えは第2の比較回路107からの出力信号によって行われ、第2の比較回路107の出力がLOWレベルの期間は、制御データDがD=0、すなわち最低発振周波数を発振される制御信号と接続され、HIGHレベルの期間はPLLのループを閉じた状態での制御信号Dと接続される。
【0046】
第2のスイッチ110は、第2の累積加算器106に供給する信号を選択的に切り替えるものである。第2のスイッチ110の切り替えは、第1のスイッチ109と同様に、第2の比較回路107からの出力信号によって行われ、第2の比較回路107の出力がLOWレベルの期間は、基準周波数発振器104と接続され、HIGHレベルの期間は、GND等のLOWレベルにプルダウンするような電位に接続される。
【0047】
以上、本発明の第1の実施形態にかかるPLL回路100の構成について説明した。次に、本発明の第1の実施形態にかかるPLL回路100の動作について説明する。
【0048】
ロックさせる搬送波周波数を変えるには、分周比の設定値を変えることになる。そこで、第1のフリップフロップ101を用いて、基準周波数発振器104の1クロック前における分周比の設定値を保持する。
【0049】
ここで分周比の設定値が変化すると、第1の比較回路102において分周比の設定値の変化が検出され、分周比に変化があったことを示すHIGHレベルの信号が第1の比較回路102から出力される。このHIGHレベルの信号が出力される期間は基準周波数発振器104が発振する基準周波数の1クロック分となる。
【0050】
第1の比較回路102から出力されたHIGHレベルの信号が第1の累積加算器105に入力されると、第1の累積加算器105は、それまでに累積加算した値がリセットされる。そして、基準周波数の1クロック後にLOWレベルの信号が第1の累積加算器105に入力されると、第1の累積加算器105は発振器103の出力クロック数の累積加算を開始する。ここで、発振器103は、第2の比較回路107の出力がLOWレベルであり、第1のスイッチ109によって最低発振周波数を発信させる制御信号と接続されているため、最低発振周波数fminで発振している状態となっている。
【0051】
また、第1の比較回路102から出力されたHIGHレベルの信号が第2の累積加算器106に入力されると、第2の累積加算器106は、それまでに累積加算した値がリセットされる。そして、基準周波数の1クロック後にLOWレベルの信号が第2の累積加算器106に入力されると、第2の累積加算器106は基準周波数発振器104のクロック数の累積加算を開始する。
【0052】
第2の比較回路107は、2つの入力が等しい場合にHIGHレベルの信号を出力する。すなわち、第2の比較回路107は、第2の累積加算器106の出力が“1”となった場合にHIGHレベルの信号を出力する。つまり、累積加算が開始されてから基準周波数発振器104が発振する基準周波数の“1”クロック後に、第2の比較回路107はHIGHレベルの信号を出力する。
【0053】
第2のフリップフロップ108は、第2の比較回路107の出力信号の立ち上がりエッジをトリガとする。第2のフリップフロップ108は第1の累積加算器105の出力と接続されているので、基準周波数の“1”クロック後における第1の累積加算器105の累積加算値を保持することになる。そして、第2のフリップフロップ108が出力するのは、基準周波数1周期内における第1の累積加算器105の累積加算値、すなわち最低発振周波数fminを基準周波数Ref_freqで割った値となる。
【0054】
なお、最低発振周波数fminを基準周波数Ref_freqで割った値の計測が終了すると、第2の比較回路107の出力信号はHIGHレベルに保持される。
【0055】
以上、本発明の第1の実施形態にかかるPLL回路100の動作について説明した。以上説明したように、本発明の第1の実施形態によれば、分周比の設定値の変化に同期して、発振器を最低周波数で発振させる状態に制御し、基準周波数1周期内の発振器のクロック数をカウントすることで、最低発振周波数fminの値を知ることができる。なお、図1に示した回路構成は一例であり、同じ処理を別の回路構成で構成可能なことは言うまでもない。
【0056】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態にかかるPLL回路200について説明する説明図である。以下、図2を用いて本発明の第2の実施形態にかかるPLL回路200の構成について説明する。
【0057】
図2に示したように、本発明の第2の実施形態にかかるPLL回路200は、第1のフリップフロップ201と、第1の比較回路202と、発振器203と、基準周波数発振器204と、第1の累積加算器205と、第2の累積加算器206と、第2の比較回路207と、第2のフリップフロップ208と、第1のスイッチ209と、第2のスイッチ210と、除算器211と、を含んで構成される。このうち、本発明の第1の実施形態にかかるPLL回路100と異なるのは第2の比較回路207および除算器211である。従って、ここでは第2の比較回路207および除算器211について説明する。
【0058】
第2の比較回路207は、2つの入力が等しい場合にHIGHレベルの信号を出力する。本発明の第1の実施形態では、第2の比較回路107は第2の累積加算器106の出力が“1”と等しい場合にHIGHレベルの信号を出力したが、本実施形態では、第2の累積加算器206の出力が所定のカウント値Nと等しい場合にHIGHレベルの信号を出力する。所定のカウント値は自然数であり、任意の値をカウント値Nとして設定することができる。また、Nの値は2以上であることが望ましい。
【0059】
除算器211は、第2のフリップフロップ208の出力を所定のカウント値Nで除算して出力するものである。なお、カウント値Nを2(mは自然数)と設定することにより、除算器211はm回ビットシフトに簡略化することもできる。
【0060】
すなわち、本発明の第1の実施形態では、基準周波数1周期内における、最低発振周波数fminで発振する発振器103のクロック数を、第1の累積加算器105でカウントすることで、最低発振周波数fminを得ていたが、本発明の第2の実施形態では、基準周波数N周期内における、最低発振周波数fminで発振する発振器203のクロック数を、第1の累積加算器205でカウントする。そして、第1の累積加算器205から出力される累積加算値を、除算器211において所定のカウント値Nで除算することで、最低発振周波数fminを基準周波数Ref_freqで割った値を得る。
【0061】
以上、本発明の第2の実施形態にかかるPLL回路200の構成について説明した。以上説明したように本発明の第2の実施形態では、第1の実施形態と比べて長い期間をかけて、最低発振周波数fminで発振する発振器203のクロック数をカウントし、カウントした値を所定のカウント値Nで除算するので、より精度の高い最低発振周波数fminを得ることができる。なお、図2に示した回路構成は一例であり、同じ処理を別の回路構成で構成可能なことは言うまでもない。
【0062】
(第3の実施形態)
図3は、本発明の第3の実施形態にかかるPLL回路300の構成について説明する説明図である。以下、図3を用いて本発明の第3の実施形態にかかるPLL回路300の構成について説明する。
【0063】
図3に示したように、本発明の第3の実施形態にかかるPLL回路300は、位相比較器301と、可変利得増幅回路302と、減算器304と、乗算器306と、発振器307と、を含んで構成される。
【0064】
位相比較器301は、基準周波数発振器(図示せず)が出力する基準周波数Ref_freqの信号と、発振器307が出力する発振周波数RF OUTの信号とを入力し、両者の位相を比較して出力するものである。位相比較器301における位相比較処理は、基準周波数の信号の各周期において、ディジタル値に変換された分周比と、発振周波数の小数点表示されたクロック数の各累積加算値のディジタル値との減算処理として行われる。
【0065】
可変利得増幅回路302は、PLL回路300のループ利得を制御するものであり、位相比較器301の出力を入力して増幅することで、分周比Nに比例した制御データを生成するものである。
【0066】
減算器304は、分周比Nに比例した制御データから、発振器307の最低発振周波数fminを基準周波数Ref_freqで割った値を減じて出力するものである。
【0067】
乗算器306は、減算器304の出力に、変換係数α’(α’=D/N’=Ref_freq/kdco)を乗じて出力するものである。減算器304の出力に変換係数α’を乗じることで、発振器307の制御データDとして用いることができる。
【0068】
発振器307は、所定の発振周波数で発振する信号RF OUTを出力するものである。図3に示したPLL回路300では、乗算器306での演算によって出力される制御データDによって、所定の発振周波数で発振する信号RF OUTを出力する。
【0069】
以上、本発明の第3の実施形態にかかるPLL回路300の構成について説明した。次に、本発明の第3の実施形態にかかるPLL回路300の動作について説明する。
【0070】
位相比較器301に、基準周波数発振器が出力する基準周波数Ref_freqの信号と、発振器307が出力する発振周波数の信号RF OUTとが入力されると、位相比較器301は両者の位相を比較し、位相差成分を位相差信号として出力する。上述したように、位相比較器301における位相比較処理は、基準周波数の信号の各周期において、ディジタル値に変換された分周比と、発振周波数の小数点表示されたクロック数の各累積加算値のディジタル値との減算処理として行われる。
【0071】
位相比較器301が出力した位相差信号は可変利得増幅回路302に送られる。可変利得増幅回路302では、位相差信号の増幅によって、分周比Nに比例した制御データが生成される。そして、可変利得増幅回路302で生成された制御データは減算器304に送られる。
【0072】
減算器304では、可変利得増幅回路302で生成された制御データから、発振器307の最低発振周波数fminを基準周波数Ref_freqで割った値fmin/Ref_freqを減算する処理が行われる。ここで、発振器307の最低発振周波数fminを知る必要があるが、これには図1または図2に示した構成によって最低発振周波数fminを検出する手段を利用してもよく、予め最低発振周波数fminを測定しておき、測定して得られた値をROM(Read Only Memory、図示せず)等に格納し、減算器304における減算処理の際に格納した値を読み出すことで、最低発振周波数fminの値を得てもよい。
【0073】
減算器304によって減算処理が行われると、次に乗算器306で、減算器304で減算された後の制御データにおける分周比N’に係数α’(α’=D/N’=Ref_freq/kdco)を乗算する。そして、乗算器306の出力を発振器307の制御データDとして用いる。ここで、発振器307の制御データDに対する発振周波数を1次曲線に近似すると、下記の数式2の通りとなる。
【数2】

【0074】
変換係数α’より、Dは数式3の通りとなる。
【数3】

【0075】
従って、数式3を数式2に代入して、
【数4】

となる。この数式4の両辺をRef_freqで除算して変形すると、以下の数式5の通りとなる。
【数5】

【0076】
図3のグラフ(1)に分周比N’と周波数fとの関係を示し、グラフ(2)に制御データDと周波数fとの関係を示す。分周比N’と周波数fとの関係は、上記数式4に示した通りの関係を有しており、制御データDと周波数fとの関係は、上記数式2の示したとおりの関係を有している。従って、図3に示したようなPLL回路300の構成が、データ変換の手順として正しいことが分かる。
【0077】
以上、本発明の第3の実施形態にかかるPLL回路300の動作について説明した。以上説明したように、本発明の第3の実施形態によれば、PLL回路において、最低発振周波数値が0Hzとならない特性を持つ発振回路の制御データへの変換において、1次曲線への近似が可能となる。また、搬送波周波数の設定値の変化に同期して、発振回路には最低発振周波数を発振させる制御データを送信し、基準周波数の1周期あたりの発振回路出力のクロック数を計測することにより、キャリブレーション機能の1つとして最低発振周波数値を検出することが可能となる。
【0078】
(第4の実施形態)
図4は、本発明の第4の実施形態にかかるPLL回路400の構成について説明する説明図である。以下、図4を用いて本発明の第4の実施形態にかかるPLL回路400の構成について説明する。
【0079】
図4に示したように、本発明の第4の実施形態にかかるPLL回路400は、位相比較器401と、可変利得増幅回路402と、減算器404と、乗算器406と、発振器407と、を含んで構成される。
【0080】
位相比較器401は、図3に示した位相比較器301と同様に、基準周波数発振器(図示せず)が出力する基準周波数Ref_freqの信号と、発振器407が出力する発振周波数RF OUTの信号とを入力し、両者の位相を比較して出力するものである。位相比較器401における位相比較処理は、図3に示した位相比較器301と同様に、基準周波数の信号の各周期において、ディジタル値に変換された分周比と、発振周波数の小数点表示されたクロック数の各累積加算値のディジタル値との減算処理として行われる。
【0081】
可変利得増幅回路402は、図3に示した可変利得増幅回路302と同様に、PLL回路400のループ利得を制御するものであり、位相比較器401の出力を入力して増幅することで、分周比Nに比例した制御データを生成するものである。
【0082】
減算器404は、分周比Nに比例した制御データから、発振器407の最低発振周波数fminを、制御すべき目標周波数ftargetを用いて補正したfmin’を基準周波数Ref_freqで割った値を減じて出力するものである。fmin’の値の算出方法は後述するが、fmin’の値は下記の数式6に示した値である。ここで、発振器407の最低発振周波数fminを知る必要があるが、これには図1または図2に示した構成によって最低発振周波数fminを検出する手段を利用してもよく、予め最低発振周波数fminを測定しておき、測定して得られた値をROM(Read Only Memory、図示せず)等に格納し、減算器404における減算処理の際に格納した値を読み出すことで、最低発振周波数fminの値を得てもよい。
【数6】

【0083】
乗算器406は、図3に示した乗算器306と同様に、減算器404の出力に、変換係数α’(α’=D/N’=Ref_freq/kdco)を乗じて出力するものである。減算器404の出力に変換係数α’を乗じることで、発振器407の制御データDとして用いることができる。
【0084】
発振器407は、所定の発振周波数で発振する信号RF OUTを出力するものである。発振器407の発振周波数fは、制御データをD、最小可変容量値をΔC、全てのスイッチがオンした際の容量値をCmax、インダクタンス値をLとすると、下記の数式7のように表される。
【数7】

【0085】
以上、本発明の第4の実施形態にかかるPLL回路400の構成について説明した。次に、本発明の第4の実施形態にかかるPLL回路400の動作について説明する。
【0086】
上述したように、発振器407の発振周波数fは数式7のように表すことができる。この数式7において、D・ΔCの値がCmaxに比べて十分小さくなるような制御データDに対しては、図3のグラフ(2)に示したように、最低発振周波数fminをY切片とする1次曲線に近似することができる。しかし、Dの値が大きくなるに連れて誤差が大きくなり、最低発振周波数fminをY切片とする1次曲線に近似することができなくなる。そこで、減算器404において、fminを基準周波数Ref_freqで割った値の代わりに、最低発振周波数fminを制御すべき目標周波数ftargetを用いてfmin’に補正し、このfmin’を基準周波数Ref_freqで割った値を減じて出力する。
【0087】
上記の数式7において、ftargetにおけるDに対する微係数を求めると、下記の数式8の通りとなる。
【数8】

【0088】
この数式8で表される傾きを有する1次曲線で近似する際のY切片をfmin’とすると、ftargetは次の数式9の関係を満たす必要がある。
【数9】

【0089】
この数式9を変形してfmin’を求めると、
【数10】

となる。これは上述した数式6と同じ数式である。従って、図4に示した構成はこの計算結果を満たすように構成されたものである。すなわち、減算器404において、分周比Nに比例した制御データからftargetを用いて、最低発振周波数fminを補正したfmin’を、基準周波数Ref_freqで割った値を減じて出力する。このように構成することで、発振回路の発振周波数に対するkDCOの変化が無視できない領域においても、図4のグラフ(2)に示したようにkDCOを傾きに持つ1次曲線に近似することができる。
【0090】
以上、本発明の第4の実施形態にかかるPLL回路400の動作について説明した。以上説明したように、本発明の第4の実施形態によれば、発振回路の発振周波数に対するkDCOの変化が無視できない領域においても、接線成分となるkDCOを傾きに持つ1次曲線に近似することができる。そして、搬送波周波数の設定値の変化に同期して、発振回路には最低発振周波数を発振させる制御データを送信し、基準周波数の1周期あたりの発振回路出力のクロック数を計測することにより、キャリブレーション機能の1つとして最低発振周波数値を検出することが可能となる。
【0091】
(第5の実施形態)
図5は、本発明の第5の実施形態にかかるPLL回路500の構成について説明する説明図である。以下、図5を用いて本発明の第5の実施形態にかかるPLL回路500の構成について説明する。
【0092】
図5に示したように、本発明の第5の実施形態にかかるPLL回路500は、位相比較器501と、可変利得増幅回路502と、減算器504と、乗算器506と、発振器507と、加算器508と、を含んで構成される。この構成において、位相比較器501、可変利得増幅回路502、減算器504、乗算器506および発振器507は、図3に示した本発明の第3の実施形態にかかるPLL回路300における位相比較器301、可変利得増幅回路302、減算器304、乗算器306および発振器307、並びに、図4に示した本発明の第4の実施形態にかかるPLL回路400における位相比較器401、可変利得増幅回路402、減算器404、乗算器406および発振器407と同様の機能を有するので、詳細な説明は省略し、図3および図4に示した構成から新たに追加された加算器508について説明する。
【0093】
加算器508は、可変利得増幅回路502の出力に対して、周波数変調成分を加算して出力するものである。加算器508において周波数変調成分を加算して出力することで、PLL回路500において直接周波数変調を施すことができる。
【0094】
以上、本発明の第5の実施形態にかかるPLL回路500の構成について説明した。このように、本発明の第5の実施形態によれば、加算器508において周波数変調成分を加算して出力することで、PLL回路500において直接周波数変調を施すことができる。
【0095】
(第6の実施形態)
図6は、本発明の第6の実施形態にかかる無線端末装置600の構成について説明する説明図である。以下、図6を用いて本発明の第6の実施形態にかかる無線端末装置600の構成について説明する。
【0096】
図6に示したように、本発明の第6の実施形態にかかる無線端末装置600は、ベースバンド信号を扱うベースバンド回路(Base−band BLOCK)601と、ベースバンド回路601との間で信号の授受を行って信号処理を行う送受信モジュール602と、送受信モジュール602との間で信号をやりとりするアンテナ共用器603と、電波を送受信するアンテナ604と、を含んで構成される。また、送受信モジュール602は、送信系と受信系に分けられ、送信系はディジタルPLL611と、発振器612と、増幅器613と、を含んで構成され、受信系は、ディジタルPLL621と、発振器622と、増幅器623と、ダウンコンバータ624と、ローパスフィルタ625と、可変利得変換器626と、を含んで構成される。
【0097】
ここで、図6に示したディジタルPLL611、621に、例えば図3〜図5のいずれかに示した、本発明の第3〜第5の実施形態にかかるPLL回路300、400、500のいずれかを適用することができる。PLL回路300、400、500のいずれかを無線端末装置600に適用することで、無線端末装置600は、上述した各実施形態の効果を有することができる。つまり、本発明の第6の実施形態にかかる無線端末装置600は、DCOの最低発振周波数を取得し、取得した最低発振周波数を用いて分周比Nに比例した制御データから、DCOの制御データへの変換を精度良く行うことが可能となる。
【0098】
なお、図6に示した無線端末装置600の構成は、あくまで一例であり、かかる例に限定されないことは言うまでもない。ディジタルPLLを用いる装置であれば本発明のPLL回路を適用することが可能であり、そのようなPLL回路として、例えば上述した本発明の第1〜第5の実施形態にかかるPLL回路を適用することができる。
【0099】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるPLL回路100について説明する説明図である。
【図2】本発明の第2の実施形態にかかるPLL回路200について説明する説明図である。
【図3】本発明の第3の実施形態にかかるPLL回路300について説明する説明図である。
【図4】本発明の第4の実施形態にかかるPLL回路400について説明する説明図である。
【図5】本発明の第5の実施形態にかかるPLL回路500について説明する説明図である。
【図6】本発明の第6の実施形態にかかる無線端末装置600の構成について説明する説明図である。
【図7】従来のPLL回路10を示す説明図である。
【図8】従来のPLL回路10を示す説明図である。
【図9】従来のPLL回路10を示す説明図である。
【図10】従来のDCOを用いたADPLL回路の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0101】
100、200、300、400、500 PLL回路
101、201 第1のフリップフロップ
102、202 第1の比較回路
103、203 発振器
104、204 基準周波数発振器
105、205 第1の累積加算器
106、206 第2の累積加算器
107、207 第2の比較回路
108、208 第2のフリップフロップ
109、209 第1のスイッチ
110、210 第2のスイッチ
211 除算器
301、401、501 位相比較器
302、402、502 可変利得増幅回路
304、404、504 減算器
306、406、506 乗算器
307、407、507 発振器
508 加算器
600 無線端末装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディジタル値を用いて制御される発振回路を有するPLL(Phase Locked Loop)回路であって、
搬送波周波数値を保持する搬送波周波数保持部と、
搬送波周波数値が、前記搬送波周波数保持部が保持する値から変化したことを検出する検出部と、
前記検出部で検出した前記搬送波周波数値の変化に同期して、前記発振回路を最低周波数で発振させるための制御信号を送信し、基準周波数の1周期内の前記発振回路の出力クロック数を計測する計測部と、
を含むことを特徴とする、PLL回路。
【請求項2】
ディジタル値を用いて制御される発振回路を有するPLL回路であって、
搬送波周波数値を保持する搬送波周波数保持部と、
搬送波周波数値が、前記搬送波周波数保持部が保持する値から変化したことを検出する検出部と、
前記検出部が検出した前記搬送波周波数値の変化に同期して、前記発振回路を最低周波数で発振させるための制御信号を送信し、基準周波数のクロック数を計測する第1の計測部と、
前記第1の計測部で計測する前記基準周波数のクロック数を設定する設定部と、
前記第1の計測部で計測したクロック数と等価な基準周波数周期内の前記発振回路の出力クロック数を計測する第2の計測部と、
前記第1の計測部で計測したクロック数と等価な基準周波数周期内の前記第2の計測部で計測した前記発振回路の出力クロック数を、前記第1の計測部で計測したクロック数で平均化する平均部と、
を含むことを特徴とする、PLL回路。
【請求項3】
ディジタル値を用いて制御される発振回路を有するPLL回路であって、
最低周波数値を計測または入力する最低周波数設定部と、
分周比に比例した制御データから、前記最低周波数値を基準周波数値で除した値を減じる減算部と、
前記基準周波数値を前記発振回路の変換利得で除した値に相当する係数を乗じる乗算部と、
を含み、前記乗算部の出力を前記発振回路の制御信号に用いることを特徴とする、PLL回路。
【請求項4】
前記発振回路に直接周波数変調を施すことを特徴とする、請求項3に記載のPLL回路。
【請求項5】
ディジタル値を用いて制御される発振回路を有するPLL回路であって、
請求項1または2に記載のPLL回路における最低周波数値を計測する最低周波数計測部と、
分周比に比例した制御データから、前記最低周波数値を基準周波数値で除した値を減じる減算部と、
前記基準周波数値を前記発振回路の変換利得で除した値に相当する係数を乗じる乗算部と、
を含み、前記乗算部の出力を前記発振回路の制御信号に用いることを特徴とする、PLL回路。
【請求項6】
前記発振回路に直接周波数変調を施すことを特徴とする、請求項5に記載のPLL回路。
【請求項7】
ディジタル値を用いて制御される発振回路を有するPLL回路であって、
最低周波数値を計測または入力する最低周波数設定部と、
前記最低周波数値および搬送波周波数値から、制御データと周波数との関係を1次曲線へ近似する際のY切片に相当する周波数値を計算する演算部と、
分周比に比例した制御データから、前記Y切片に相当する周波数値を基準周波数値で除した値を減じる減算部と、
前記基準周波数値を前記発振回路の変換利得で除した値に相当する係数を乗じる乗算部と、
を含み、前記乗算部の出力を前記発振回路の制御信号に用いることを特徴とする、PLL回路。
【請求項8】
前記発振回路に直接周波数変調を施すことを特徴とする、請求項7に記載のPLL回路。
【請求項9】
ディジタル値を用いて制御される発振回路を有するPLL回路であって、
請求項1または2に記載のPLL回路における最低周波数値を計測する最低周波数計測部と、
前記最低周波数値および搬送波周波数値から、制御データと周波数との関係を1次曲線へ近似する際のY切片に相当する周波数値を計算する演算部と、
分周比に比例した制御データから、前記Y切片に相当する周波数値を基準周波数値で除した値を減じる減算部と、
前記基準周波数値を前記発振回路の変換利得で除した値に相当する係数を乗じる乗算部と、
を含み、前記乗算部の出力を前記発振回路の制御信号に用いることを特徴とする、PLL回路。
【請求項10】
前記発振回路に直接周波数変調を施すことを特徴とする、請求項9に記載のPLL回路。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のPLL回路を備えることを特徴とする、無線端末装置。
【請求項12】
ディジタル値を用いて制御される発振回路を有するPLL回路における周波数検出方法であって、
搬送波周波数値を保持する搬送波周波数保持ステップと、
搬送波周波数値が、前記搬送波周波数保持ステップで保持した値から変化したことを検出する検出ステップと、
前記検出ステップで検出した前記搬送波周波数値の変化に同期して、前記発振回路を最低周波数で発振させるための制御信号を送信し、基準周波数の1周期内の前記発振回路の出力クロック数を計測する計測ステップと、
を含むことを特徴とする、周波数検出方法。
【請求項13】
ディジタル値を用いて制御される発振回路を有するPLL回路における周波数検出方法であって、
搬送波周波数値を保持する搬送波周波数保持ステップと、
搬送波周波数値が、前記搬送波周波数保持ステップで保持した値から変化したことを検出する検出ステップと、
前記検出ステップで検出した前記搬送波周波数値の変化に同期して、前記発振回路を最低周波数で発振させるための制御信号を送信し、基準周波数のクロック数を計測する第1の計測ステップと、
前記第1の計測ステップで計測する前記基準周波数のクロック数を設定する設定ステップと、
前記第1の計測ステップで計測したクロック数と等価な基準周波数周期内の前記発振回路の出力クロック数を計測する第2の計測ステップと、
前記第1の計測ステップで計測したクロック数と等価な基準周波数周期内の前記第2の計測ステップで計測した前記発振回路の出力クロック数を、前記第1の計測ステップで計測したクロック数で平均化する平均ステップと、
を含むことを特徴とする、周波数検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−177259(P2009−177259A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10952(P2008−10952)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】