説明

PVC樹脂用の衝撃補強剤及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、PVC樹脂のカラー特性および低温衝撃強度を強化できるグラフト共重合体及びその製造方法を提供することであって、本発明が達成しようとする第1の技術的課題は、前記PVC樹脂の衝撃補強用のグラフト共重合体の製造に用いられるゴムラテックスを提供することである。
【解決手段】多層構造を有するゴムラテックスであり、内層のゴムラテックスの屈折率が外層のゴムラテックスの屈折率より大きいことを特徴とするゴムラテックスと、ゴムラテックスから製造されたグラフト共重合体と、グラフト共重合体含有のPVC樹脂ブレンドと、ゴムラテックスの製造方法を提供する。本発明のゴムラテックスを含むグラフト共重合体含有のPVC樹脂ブレンドは、既存のPVC樹脂に比べてカラー特性と低温衝撃強度とが改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride:以下、“PVC”と称する)樹脂用の衝撃補強剤及びその製造方法に係り、さらに詳細には、PVC樹脂の衝撃補強剤として使われるアルキル(メタ)アクリレート−共役ジエン系単量体−エチレン不飽和性芳香族化合物(以下“MBS系”と称する)のグラフト共重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PVC樹脂は、塩化ビニルを50%以上含有する重合体であり、衝撃に対して非常に弱いという短所を有して、かかる短所を補完するための方法が以前から研究されてきた。耐衝撃性を向上させるための方法として、ブタジエンを基質とするゴムラテックスに、スチレン、メチルメタクリレートまたはアクリロニトリルのような単量体をグラフトさせたグラフト重合体をPVC樹脂の衝撃補強剤として使用する方法があるが、この方法はPVC樹脂の衝撃補強効果はあるが、製品の透明度が低くてシートの成形時に白化を伴うという問題点がある。
【0003】
MBS系グラフト共重合体の物性は、グラフトされる各単量体の含有量、重合方法、基質として使われるゴムラテックスの含有量、及び粒径などによって影響を受けると知られている。衝撃強度を向上させるためには、基質として用いられるゴムラテックスの含有量及び粒径を増大させることが一般的な方法であるが、このようなゴムラテックスがPVC樹脂に含まれる場合、衝撃補強剤用のグラフト共重合体粒子の粒径増大による光散乱増大効果によってPVC樹脂の透明度が低下するだけでなく、PVC樹脂と衝撃補強剤用のグラフト共重合体粒子との屈折率の差が大きい場合、または変形時に、衝撃補強剤用のMBS系グラフト共重合体とPVC樹脂との結合力が弱くて孔隙が容易に生成される場合には、むしろ白化度(whitening)が増大し、衝撃強度が低下しうるという問題点がある。
【0004】
これまで耐衝撃性、透明度及び耐白化性にいずれも優れたグラフト共重合体粒子を製造するために、ゴム粒子の含有量及びサイズ、グラフト重合方法及びグラフト組成などについての多くの研究が進められてきた。特に、用途によってゴムラテックスの使用が制限的な場合に、グラフトされる単量体の含有量およびグラフト重合方法が製品の透明度と衝撃強度に及ぼす影響が非常に大きいということは周知である。
【0005】
MBS系グラフト共重合体は、PVC樹脂の耐衝撃性、耐白化度、加工性及び光学特性の向上のために一般的に用いられる添加剤であって、MBS系グラフト共重合体は、例えばスチレン−ブタジエンゴムラテックスのような共役ジエン系単量体−エチレン不飽和性芳香族化合物のゴムラテックスにアルキル(メタ)アクリレート及びエチレン不飽和性芳香族化合物を乳化重合によってグラフトさせることで製造される。
【0006】
このようなMBS系グラフト共重合体の物性を左右する要因は、グラフトされる各単量体の含有量及び重合方法を含み、最も重要な要因は、MBS系グラフト共重合体の基質として用いられるゴムラテックスの物性である。特に、ゴムラテックスのサイズ、含有量及び構成単量体の組成比は、PVC樹脂の光学特性及び物理的特性に直接的な影響を及ぼすと知られている。
【0007】
特に、カト(Katto)らの米国特許第4,352,910号は、MBS系グラフト共重合体の製造において、多段階重合法を使用してゴムラテックスのガラス転移温度を調節することにより、衝撃強度と耐白化性との均衡がとれたMBS系グラフト共重合体を製造する方法について開示している。
【0008】
しかし、MBS系グラフト共重合体を使用してPVC樹脂のカラー特性及び低温衝撃強度を改善できる方法については、従来の技術で説明していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,352,910号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、PVC樹脂のカラー特性および低温衝撃強度を強化できるグラフト共重合体及びその製造方法を提供することであって、本発明が達成しようとする第1の技術的課題は、前記PVC樹脂の衝撃補強用のグラフト共重合体の製造に用いられるゴムラテックスを提供することである。
【0011】
本発明が達成しようとする第2の技術的課題は、前記ゴムラテックスを含むグラフト共重合体を提供することである。
【0012】
本発明が達成しようとする第3の技術的課題は、前記グラフト共重合体を含むPVC樹脂ブレンドを提供することである。
【0013】
本発明が達成しようとする第4の技術的課題は、前記ゴムラテックスを製造する方法を提供することである。
【0014】
本発明の前記目的及びその他の目的は、後述の本発明の構成によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記第1の技術的課題を達成するために本発明は、多層構造を有するゴムラテックスであって、内層ゴムラテックスの屈折率が外層ゴムラテックスの屈折率より大きいことを特徴とするゴムラテックスを提供する。
【0016】
前記第2の技術的課題を達成するために本発明は、前記ゴムラテックス50〜95重量%に、アルキル(メタ)アクリレート及びエチレン不飽和性芳香族化合物からなる群から選択された1種以上の単量体5〜50重量%をグラフト乳化重合させて製造されたことを特徴とするグラフト共重合体を提供する。
【0017】
前記第3の技術的課題を達成するために本発明は、前記グラフト共重合体1ないし20重量%及びPVC樹脂80ないし99重量%からなるPVC樹脂ブレンドを提供する。
【0018】
前記第4の技術的課題を達成するために本発明は、(1)共役ジエン系単量体、エチレン不飽和性芳香族化合物及び架橋剤の単量体混合物のうち、25〜75重量%を乳化重合して内層ゴムラテックスを製造する段階と、(2)前記内層のゴムラテックスに残余単量体混合物25〜75重量%を乳化重合して外層のゴムラテックスを製造する段階とを含むゴムラテックスの製造方法を提供する。
【0019】
本発明による前記グラフト共重合体を衝撃補強剤として使用して製造されたPVC樹脂は、衝撃強度、特に−10℃以下での低温衝撃強度に非常に優れ、カラー特性も優れる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の製造方法によって製造されたMBS系グラフト共重合体をPVC樹脂の衝撃補強剤として使用すれば、カラー特性及び低温衝撃強度に優れたPVC樹脂が製造される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
まず、本発明によるゴムラテックスと、前記ゴムラテックスを利用して製造されたグラフト共重合体と、前記グラフト共重合体を含むPVC樹脂ブレンドとに関して説明すれば、下記の通りである。
【0023】
本発明者らは、MBS系グラフト共重合体の基質として用いられるゴムラテックスを多段階重合を通じて製造するにあたって、内層および外層のゴムラテックスの屈折率を調節することによって、MBS系グラフト共重合体及びこれを含むPVC樹脂ブレンドのカラー特性と低温衝撃強度が変化することを発見して、本発明を完成した。
【0024】
本発明によるMBS系グラフト共重合体の製造に用いられるゴムラテックスは、多層構造を有するゴムラテックスであって、内層ゴムラテックスの屈折率が外層ゴムラテックスの屈折率より大きいことを特徴とする。
【0025】
本発明において、前記ゴムラテックスは、共役ジエン系単量体及びエチレン不飽和性芳香族化合物の共重合体ゴムラテックスであって、前記共役ジエン系単量体は、ブタジエン、イソプレン及びクロロイソプレンからなる群から選択された1種以上であるが、これに限定されるものではなく、前記エチレン不飽和性芳香族化合物は、スチレン、α−メチルスチレン、イソプロペニルナフタレン、ビニルナフタレン、ベンゼン環の各水素のうち少なくとも一つがC−Cのアルキル基に置換されたスチレン、及びベンゼン環の各水素のうち少なくとも一つがハロゲンに置換されたスチレンからなる群から選択された1種以上であるが、これに限定されるものではない。
【0026】
本発明において、前記ゴムラテックスをなす内層ゴムラテックスの場合は、屈折率が1.54〜1.59であることが望ましく、さらに望ましくは、1.545〜1.59である。前記内層ゴムラテックスの屈折率が1.54未満である場合には、衝撃強度改善の効果が小さく、前記屈折率が1.59を超過する場合には、白化度が大きくなって透明度に不利な影響を与えるので望ましくない。
【0027】
また、本発明において、前記ゴムラテックスをなす外層ゴムラテックスの場合は、屈折率が1.51〜1.54であることが望ましく、さらに望ましくは、1.51〜1.535である。前記外層ゴムラテックスの屈折率が1.51未満である場合には、透明度が低下し、前記屈折率が1.54を超過する場合には、衝撃強度改善の効果が小さいという問題があるので望ましくない。
【0028】
本発明では、前記ゴムラテックスを利用してアルキル(メタ)アクリレート及びエチレン不飽和性芳香族化合物からなる群から選択された1種以上の単量体を乳化重合して製造されたグラフト共重合体が、PVC樹脂の衝撃補強剤として用いられる。本発明において前記グラフト共重合体は、前記単量体を一括投入して乳化重合することで製造してもよく、前記単量体を2段階以上に分けて乳化重合することで製造してもよく、前記乳化重合方法が本発明を制限しない。
【0029】
本発明において、前記グラフト共重合体の製造に用いられる前記ゴムラテックスの含有量は、50〜95重量%であり、前記アルキル(メタ)アクリレート及びエチレン不飽和性芳香族化合物からなる群から選択された1種以上の単量体の含有量は、5〜50重量%であることが望ましい。前記グラフト共重合体の製造に用いられる前記ゴムラテックスの含有量が50重量%未満である場合には、衝撃補強効果が小さく、95重量%を超過する場合には、前記ゴムラテックスとPVC樹脂との相溶性不足によって分散性が低下して、結果として衝撃強化効果が実効的に発揮できない問題があるので望ましくない。
【0030】
本発明による前記グラフト共重合体の製造に用いられる前記アルキル(メタ)アクリレートは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート及びエチルアクリレートからなる群から選択された1種以上が用いられうるが、これに限定されるものではない。
【0031】
また、本発明による前記グラフト共重合体の製造に用いられる前記エチレン不飽和性芳香族化合物は、スチレン、α−メチルスチレン、イソプロペニルナフタレン、ビニルナフタレン、ベンゼン環の各水素のうち少なくとも一つがC−Cのアルキル基に置換されたスチレン、及びベンゼン環の各水素のうち少なくとも一つがハロゲンに置換されたスチレンからなる群から選択された1種以上が用いられうるが、これに限定されるものではない。
【0032】
本発明において、前記ゴムラテックスから前記グラフト共重合体を製造する乳化重合を実施するための反応媒体、乳化剤、安定剤、開始剤などは、当技術分野で公知のものを特別な制限なしに使用でき、これが本発明を限定するものではない。
【0033】
本発明は、前記ゴムラテックスを利用して製造された前記グラフト共重合体をPVC樹脂とブレンディングしてPVC樹脂ブレンドを製造できる。
【0034】
前記PVC樹脂ブレンドは、本発明によるグラフト共重合体1〜20重量%及びPVC樹脂80〜99重量%からなることを特徴とする。本発明によるPVC樹脂ブレンドにおいて前記本発明によるグラフト共重合体の含有量が1重量%未満であれば、耐衝撃性の改善効果が小さく、20重量%を超過する場合には、含有量を増加させてもそれ以上衝撃強度が増加せず、製造コストのみ過度に上昇する問題があって望ましくない。
【0035】
本発明において、前記PVC樹脂は特別に限定されず、当技術分野で公知の任意のものを使用できる。
【0036】
一方、本発明による前記PVC樹脂ブレンドは、必要に応じて当技術分野で公知の酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、着色剤及び滑剤などの添加剤を通常の含有量でさらに含みうる。
【0037】
次に、本発明による前記ゴムラテックスの製造方法について説明する。
【0038】
本発明による前記ゴムラテックスの製造方法は、(1)共役ジエン系単量体、エチレン不飽和性芳香族化合物及び架橋剤の単量体混合物のうち、25〜75重量%を乳化重合して内層ゴムラテックスを製造する段階と、(2)前記コア層ゴムラテックスに残余単量体混合物25〜75重量%を乳化重合して外層ゴムラテックスを製造する段階とを含むことを特徴とする。
【0039】
前記(1)段階の反応において、前記共役ジエン系単量体、エチレン不飽和性芳香族化合物及び架橋剤の単量体混合物は、25〜75重量%が用いられることが望ましい。前記(1)段階の反応での単量体使用量が全体単量体混合物対比25重量%未満である場合には、これを使用したPVC樹脂の低温衝撃強度が低くなる問題があり、75重量%を超過する場合には、前記PVC樹脂のカラー特性および低温衝撃強度がいずれも悪くなる問題がある。
【0040】
本発明による前記ゴムラテックスの製造方法で用いられる共役ジエン系単量体は、ブタジエン、イソプレン及びクロロイソプレンからなる群から1種以上選択されうる。ここで、前記共役ジエン系単量体は、外部からの衝撃を吸収して耐衝撃性を向上させる役割を果たす。
【0041】
また、本発明による前記ゴムラテックスの製造方法で用いられるエチレン不飽和性芳香族化合物は、スチレン、α−メチルスチレン、イソプロペニルナフタレン、ビニルナフタレン、ベンゼン環の各水素のうち少なくとも一つがC−Cのアルキル基に置換されたスチレン、及びベンゼン環の各水素のうち少なくとも一つがハロゲンに置換されたスチレンからなる群から1種以上選択されうる。ここで、前記エチレン不飽和性芳香族化合物は、ゴムラテックスの屈折率をPVC樹脂と同一にすることにより。屈折率の差によって発生する光の散乱を抑制してPVC樹脂の透明度を維持させる役割を果たす。
【0042】
本発明では、前記ゴムラテックスの製造時に架橋剤を使用でき、このときに用いられる架橋剤は、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、アリールメタクリレート、及び1,3−ブチレングリコールジアクリレートからなる群から選択された1種以上の化合物であることが望ましい。ここで、架橋剤は、前記ゴムラテックスの架橋度を調節する役割を果たす。
【0043】
また、本発明によるゴムラテックスの製造方法で用いられる前記グラフト架橋剤の含有量は、全体単量体対比0.1〜3重量%が用いられることが望ましく、さらに望ましくは、0.1〜1.5重量%である。前記グラフト架橋剤の使用量が0.1重量%未満である場合には、耐白化度が悪化する問題があり、3重量%を超過する場合には、耐衝撃性が低下する問題がある。
【0044】
本発明の前記(1)段階反応で製造された前記内層ゴムラテックスの屈折率は、1.54〜1.59であることが望ましい。前記屈折率が1.54未満である場合には、衝撃強度改善の効果が小さく、前記屈折率が1.59を超過する場合には、白化度が大きくなって透明度に不利な影響を与えうる。
【0045】
また、前記(2)段階反応において、前記(1)段階反応で製造された内層ゴムラテックスに、前記(1)段階反応に使用されていない残余単量体25〜75重量%を使用して乳化重合を実施する。このような方法で製造された外層ゴムラテックスの屈折率は、1.51〜1.54であることが望ましい。前記屈折率が1.51未満である場合には、透明度が低下し、前記屈折率が1.54を超過する場合には、衝撃強度改善の効果が小さいという問題がある。
【0046】
本発明の前記ゴムラテックスの製造方法で用いられる共役ジエン系単量体、エチレン不飽和性芳香族化合物及び架橋剤は、前記ゴムラテックスの屈折率を調節する役割を果たし、その含有量と種類は、所望の物性によって変更が可能である。したがって共役ジエン系単量体、エチレン不飽和性芳香族化合物及び架橋剤の含有量比は、本発明で限定されず、但し屈折率調節を通じた透明性確保のために、共役ジエン系単量体:(エチレン不飽和性芳香族化合物+架橋剤)の使用量を(1)段階及び(2)段階の反応全体で3:1に維持することが望ましい。但し、(1)段階反応での単量体は、全体単量体混合物のうち25〜75重量%を、(2)段階反応での単量体は、残余単量体混合物25〜75重量%を用いることが望ましい。このとき、(1)段階で製造された内層ゴムラテックスの屈折率は、1.54〜1.59であることが望ましく、(2)段階で製造された外層ゴムラテックスの屈折率は、1.51〜1.54であることが望ましい。
【0047】
本発明による前記ゴムラテックスの製造方法において、乳化重合を実施するための反応媒体、乳化剤、安定剤、開始剤などは、当技術分野で公知のものであれば、特別な制限なしに通常の含有量で用いられることが可能であり、これについては下記実施例を参照できる。
【0048】
本発明によって製造されたゴムラテックスを利用して製造されたグラフト共重合体をPVC樹脂に衝撃補強剤として使用する場合、PVC樹脂のカラー特性は、ASTM1003規格のカラーメートルを利用したb値が10以下であり、低温衝撃強度は、下記の評価方法によって−20℃で300rpm以上であって、既存のPVC樹脂対比カラー特性及び衝撃強度、特に低温層隔強度が優秀である。
【0049】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明が次の実施例に限定されるものではなく、本発明の基本思想を維持した変形、改造などは本発明の範囲に含まれると理解する。
【実施例】
【0050】
実施例1
(ゴムラテックスの製造)
下記化合物の重量%は、ゴムラテックスの製造のために使われた単量体混合物100重量%を基準に表したものであり、重量部は、前記単量体混合物100重量部を基準に表したものである。
【0051】
撹拌機が装着された120リットル高圧重合容器にイオン交換水150重量部、添加剤として緩衝溶液0.5重量部、オレイン酸カリウム1.0重量部、エチレンジアミンテトラナトリウム酢酸塩0.0047重量部、硫酸第一鉄0.003重量部、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.02重量部、及びジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド0.1重量部を初期充填した。
【0052】
ここに第1段階として、ブタジエン30重量%、スチレン19.5重量%、及びジビニルベンゼン0.5重量%を投入して35℃で重合を実施し、投入された単量体の重合転換率が90%以上で、第2段階としてブタジエン45重量%、スチレン4.5重量%、ジビニルベンゼン0.5重量%、及びオレイン酸カリウム0.5重量部を加え、10時間重合して粒子サイズが1000Åであるスチレン−ブタジエンゴムラテックスを得た。その最終重合転換率は98%であった。
【0053】
(MBS系グラフト共重合体の製造)
下記化合物の重量%は、MBS系グラフト共重合体の製造のために使われた前記ゴムラテックス及び新たに添加された単量体の混合物100重量%を基準に表したものであり、重量部は、前記ゴムラテックス及び新たに添加された単量体の混合物100重量部を基準に表したものである。
【0054】
前記で得たゴムラテックス70重量%(固形分)を密閉反応器に投入した後、窒素を充填し、ここにエチレンジアミンテトラナトリウム酢酸塩0.0094重量部、硫酸第一鉄0.006重量部、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.04重量部を投入した後、メチルメタクリレート14重量%、オレイン酸カリウム0.14重量部、イオン交換水14重量部、及びt−ブチルヒドロペルオキシド0.05重量部を添加して10分間60℃で2時間重合を実施し、次いで、スチレン16重量%、エチレンジアミンテトラナトリウム酢酸塩0.0094重量部、硫酸第一鉄0.006重量部、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.04重量部、オレイン酸カリウム0.16重量部、イオン交換水16重量部、及びt−ブチルヒドロペルオキシド0.05重量部を投入した後に、60℃で2時間重合を実施した。
【0055】
(MBS粉末の製造)
前記製造されたメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレンのグラフト共重合体(MBSグラフト共重合体)反応生成物(液状)100重量部に、酸化防止剤(Irganox−245)0.5重量部を添加して撹拌しつつ、硫酸マグネシウム4重量部及び硫酸2重量部を加えて70℃で重合体と水とを分離させた後、脱水乾燥してMBS粉末を得た。
【0056】
(PVC樹脂試片の製造)
PVC樹脂の試片製造は、加工を容易にするためにPVC樹脂マスターバッチを製造して実施した。PVC樹脂マスターバッチは、PVC樹脂100重量部、熱安定剤(ステアリン酸スズ)1.5重量部、内部滑剤(ステアリン酸カルシウム)1.0重量部、外部滑剤(パラフィンワックス)0.5重量部、加工助剤(LG化学、PA−910)0.5重量部、及び顔料0.3重量部を高速撹拌機を利用して130℃の温度で十分に混合した後に、冷却して製造した。
【0057】
PVC樹脂試片の製造のために用いられる衝撃補強剤の使用量は、PVC樹脂100重量部に対して9重量部を使用し、195℃のロールを使用して低温回転衝撃強度測定のための0.5mm厚さのシートを製造した。
【0058】
実施例2
前記ゴムラテックス重合時に、1段階でブタジエン25重量%、スチレン24重量%及びジビニルベンゼン1重量%を投入し、2段階でブタジエン50重量%を投入して重合を実施したことを除いては、前記実施例1と同様に行う。
【0059】
比較例1
前記ゴムラテックス重合時に、1段階でブタジエン37.5重量%、スチレン12重量%及びジビニルベンゼン0.5重量%を投入し、2段階でブタジエン37.5重量%、スチレン12重量%及びジビニルベンゼン0.5重量%を投入して重合を実施したことを除いては、前記実施例1と同様に行う。
【0060】
比較例2
前記ゴムラテックス重合時に、1段階でブタジエン45重量%、スチレン4.5重量%及びジビニルベンゼン0.5重量%を投入し、2段階でブタジエン30重量%、スチレン19.5重量%及びジビニルベンゼン0.5重量%を投入して重合を実施したことを除いては、前記実施例1と同様に行う。
【0061】
比較例3
前記ゴムラテックス重合時に、1段階でブタジエン50重量%を投入し、2段階でブタジエン25重量%、スチレン24重量%及びジビニルベンゼン1重量%を投入して重合を実施したことを除いては、前記実施例1と同様に行う。
【0062】
比較例4
前記ゴムラテックス重合時に、ブタジエン75重量%、スチレン24重量%及びジビニルベンゼン1重量%を一括投入して重合を1段階で実施したことを除いては、前記実施例1と同様に行う。
【0063】
(物性試験)
屈折率の評価
屈折率は、前記製造された各段階別ラテックスを70℃で加熱乾燥させて得たフィルムを屈折率計(Abbe社製のRefractometer)を使用して25℃で測定した。
【0064】
ガラス転移温度(Tg)の評価
ガラス転移温度は、Rheometric Scientific社製のDMTA Vを利用して常温から昇温速度10℃/minで上昇させつつ測定した。
【0065】
低温衝撃強度の評価
低温衝撃強度は、実施例1による方法で製造したシートを切って厚さ0.5mm、10cmx14cmの試片を製作して、−20℃で2時間熟成した後、回転する円形のこぎりに向けて、5mm/秒の速度で動かしたときに試片が壊れる最低rpmを測定した。
【0066】
カラー特性の評価
前記方法で製造されたシートを加熱プレスを利用してASTM1003規格のカラー特性測定のための3mm厚さの試片を製造し、カラーコンピュータ(SUGA Color Computer)を利用してb値を測定した。
【0067】
実施例1及び2、比較例1ないし4について重合段階別ゴムラテックスの段階別屈折率と段階別ガラス転移温度、及び前記実施例及び比較例によって製造されたPVC樹脂ブレンドのカラー特性及び低温衝撃強度をそれぞれ測定して表1に示した。
【0068】
【表1】

【0069】
前記表において、BDはブタジエン、SMはスチレン、DVBはジビニルベンゼンをそれぞれ示す。
【0070】
前記表に示したように、本発明による多段階重合方法によって屈折率を段階別に変化させて製造されたゴムラテックスを使用して製造されたMBS系グラフト共重合体を衝撃補強剤として使用したPVC樹脂のカラー特性と低温回転衝撃強度とが改善されたことを確認した。すなわち、実施例1および実施例2のように、内層ゴムラテックスの屈折率が1.54〜1.59であり、外層ゴムラテックスの屈折率が1.51〜1.54である場合、前記PVC樹脂のカラー特性が向上し、低温回転衝撃強度が向上した。一方、比較例1ないし4のように、内層と外層ゴムラテックスの屈折率が前記範囲を外れる場合、前記PVC樹脂のカラー特性も悪くて低温衝撃強度も低いことを確認した。特に、比較例4で単量体を全て一括投入して重合する場合に、多段階で重合する場合に比べて、前記PVC樹脂のカラー特性、低温回転衝撃強度のいずれも本発明の結果より劣悪なことを確認した。
したがって、本発明による段階別屈折率を有するゴムラテックスを基質として使用したMBS系グラフト共重合体をPVC樹脂に使用する場合、カラー特性及び低温衝撃強度に優れるということを確認することができた。
【0071】
以上、実施例に基づいて本発明を詳細に説明されたが、当業者ならば、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変形及び修正が可能であるということが明らかであり、また、このような変形及び修正が特許請求の範囲に属するということも当然なことである。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲及びその均等物によって決定されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層と外層との多層構造を有するゴムラテックスであって、前記ゴムラテックスの内外層は、共役ジエン系単量体及びエチレン不飽和性芳香族化合物、または共役ジエン系単量体、エチレン不飽和性芳香族化合物及び架橋剤の共重合体であって、
前記内層ゴムラテックスの屈折率が1.54ないし1.59であり、前記外層ゴムラテックスの屈折率が1.51ないし1.54であるものの、内層の屈折率が外層のそれより0.022を超えてそれ以上大きいことを特徴とするゴムラテックス。
【請求項2】
前記共役ジエン系単量体が、ブタジエン、イソプレン及びクロロイソプレンからなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のゴムラテックス。
【請求項3】
前記エチレン不飽和性芳香族化合物が、スチレン、α−メチルスチレン、イソプロペニルナフタレン、ビニルナフタレン、ベンゼン環の各水素のうち少なくとも一つがC−Cのアルキル基に置換されたスチレン、及びベンゼン環の各水素のうち少なくとも一つがハロゲンに置換されたスチレンからなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のゴムラテックス。
【請求項4】
前記架橋剤が、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、アリールメタクリレート、及び1,3−ブチレングリコールジアクリレートからなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれか一項に記載のゴムラテックス。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちいずれか一項に記載のゴムラテックス50〜95重量%に、アルキル(メタ)アクリレート及びエチレン不飽和性芳香族化合物からなる群から選択された1種以上の単量体5〜50重量%をグラフト乳化重合させて製造されたことを特徴とするグラフト共重合体。
【請求項6】
前記アルキル(メタ)アクリレートが、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、及びエチルアクリレートからなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項5に記載のグラフト共重合体。
【請求項7】
前記エチレン不飽和性芳香族化合物が、スチレン、α−メチルスチレン、イソプロペニルナフタレン、ビニルナフタレン、ベンゼン環の各水素のうち少なくとも一つがC−Cのアルキル基に置換されたスチレン、及びベンゼン環の各水素のうち少なくとも一つがハロゲンに置換されたスチレンからなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項5または6に記載のグラフト共重合体。
【請求項8】
請求項5ないし請求項7のうちいずれか一項のグラフト共重合体1ないし20重量%及びPVC樹脂80ないし99重量%を含むPVC樹脂ブレンド。

【公開番号】特開2011−140668(P2011−140668A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94279(P2011−94279)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【分割の表示】特願2007−553053(P2007−553053)の分割
【原出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】