説明

X線撮像装置

【課題】 X線検出におけるノイズ光の検出の影響を抑制することが可能なX線撮像装置を提供する。
【解決手段】 入射したX線を検出する複数の検出画素が配列されたX線検出部が一方の面11側に設けられ、他方の面12がX線入射面となっている裏面入射型の固体撮像素子10と、撮像素子10の入射面12上に設けられ、検出対象となるX線よりも長波長の光の遮蔽に用いられる遮蔽層20とによってX線撮像装置1を構成する。遮蔽層20は、入射面12上に直接に設けられる第1アルミニウム層21と、第1アルミニウム層21上に設けられる第2アルミニウム層22と、第1、第2アルミニウム層21、22の間に設けられ、紫外光の遮蔽に用いられる紫外光遮蔽層25とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子に入射したX線を検出してX線像を取得するX線撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線ダイレクト検出型のCCD(Charge Coupled Device)は、X線のフォトンをCCDの検出画素で直接的に捉えてX線像を取得することで、入射X線の位置情報、エネルギー情報、時間情報等を得るX線検出器である。このようなX線ダイレクト検出型のCCD(以下、X線CCDという)などの固体撮像素子は、優れた位置分解能及びエネルギー分解能を有することから、例えばX線天体観測衛星での標準的なX線検出器として用いられている(X線検出器については、例えば特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−249184号公報
【特許文献2】特開2008−107203号公報
【特許文献3】特開平06−302795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したX線CCDは、基本的に通常のCCDと同様の構造を有している。このため、X線CCDの各検出画素は、検出対象となるX線のみでなく、紫外光、可視光、赤外光等のX線よりも長波長の光(ノイズ光)に対しても検出感度を持つ。X線ダイレクト検出を目的とした撮像素子では、このような長波長(低エネルギー)のノイズ光の検出は、X線検出におけるS/N特性の劣化等の原因となる。
【0005】
このようなノイズ光の検出を抑制するため、X線CCDなどの撮像素子に対し、ポリイミド膜にアルミニウムを蒸着して形成されたOBF(Optical Blocking Filter、光遮蔽フィルタ)と呼ばれる薄膜を設け、これによってX線撮像装置(X線カメラ)を構成する方法が用いられている。このようなOBFは、例えばX線集束用のX線ミラーと、撮像素子との間に取り付けられる。
【0006】
しかしながら、このような構成では、X線撮像装置の内部にOBFを取り付けるためのスペースが必要となるため、装置が大型化する。また、OBFを介して入射するX線を撮像素子へと透過させるためにOBFの膜厚を薄くする必要があり、OBFを含む撮像装置が構造的に脆弱になるという問題がある。また、上記したように撮像装置をX線天体観測衛星等に搭載する場合、宇宙空間に放出後に、差圧によってOBFが破損しないように専用の排気弁を設けるなど、装置構造が複雑化する。また、このような装置構造の複雑化に伴って、観測衛星に搭載されたX線撮像装置の運用上のリスクも増大する。
【0007】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、ノイズ光の検出の影響を好適に抑制することが可能なX線撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明によるX線撮像装置は、(1)入射したX線を検出する複数の検出画素が1次元または2次元に配列されたX線検出部が一方の面側に設けられ、他方の面がX線入射面となっている裏面入射型の固体撮像素子と、(2)固体撮像素子のX線入射面上に設けられ、検出対象となるX線よりも長波長の光の遮蔽に用いられる遮蔽層とを備え、(3)遮蔽層は、X線入射面上に直接に設けられる第1アルミニウム層と、第1アルミニウム層上に設けられる第2アルミニウム層と、第1アルミニウム層及び第2アルミニウム層の間に設けられ、紫外光の遮蔽に用いられる紫外光遮蔽層とを有することを特徴とする。
【0009】
上記したX線撮像装置では、X線ダイレクト検出型の撮像素子として、裏面入射型の固体撮像素子を用いている。そして、X線よりも長波長のノイズ光に対し、撮像素子のX線入射面上に直接に遮蔽層を形成する構成としている。このような構成によれば、撮像素子及び遮蔽手段を含むX線撮像装置全体の小型化、構造の簡単化が可能となる。また、撮像素子と遮蔽層とが一体化されているため、撮像装置が構造的に脆弱になることはない。
【0010】
また、上記の撮像装置では、撮像素子の入射面上に可視光及び赤外光の遮蔽に用いられる第1アルミニウム層を形成するとともに、その上にさらに紫外光遮蔽層を設ける構成としている。これにより、紫外光、可視光、及び赤外光を含むノイズ光の波長範囲全体に対して充分な遮蔽効果を得ることができる。また、紫外光遮蔽層の外側に、さらに第2アルミニウム層を設けている。これにより、原子状酸素による紫外光遮蔽層の侵食を抑制するなど、紫外光遮蔽層を保護することが可能となる。以上より、X線検出におけるノイズ光の検出の影響を好適に抑制することが可能なX線撮像装置が実現される。
【0011】
ここで、第1、第2アルミニウム層の間に設けられる紫外光遮蔽層については、具体的にはポリイミド層からなる遮蔽層を用いることが好ましい。このようなポリイミドを材料に用いた遮蔽層によれば、撮像素子に入射する紫外光に対して充分な遮蔽効果を得ることができる。
【0012】
また、上記構成の遮蔽層において、第2アルミニウム層は、遮蔽層における最外層となっていることが好ましい。これにより、上記した原子状酸素による遮蔽層(例えばポリイミド層)の侵食等を確実に抑制することが可能となる。
【0013】
また、上記構成の遮蔽層に対し、第1アルミニウム層と第2アルミニウム層とを電気的に接続する導通部が設けられていることが好ましい。これにより、外側に位置する第2アルミニウム層の帯電を防止して、撮像素子を安定的に動作させることが可能となる。
【0014】
この場合、上記導通部は、固体撮像素子に対して、X線検出部に対応する領域を除く領域内(X線入射方向からみてX線検出部を外れた領域内)に設けられていることが好ましい。これにより、第1、第2アルミニウム層の間で導通部を形成することによる、X線検出部に対する紫外光の遮蔽効果の低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のX線撮像装置によれば、X線ダイレクト検出型の撮像素子として裏面入射型の固体撮像素子を用い、撮像素子のX線入射面上に直接に遮蔽層を形成するとともに、遮蔽層について、X線入射面側から第1アルミニウム層、紫外光遮蔽層、第2アルミニウム層の3層の遮蔽層を少なくとも含む構成とすることにより、X線検出におけるノイズ光の検出の影響を好適に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】X線撮像装置の基本構成を示す斜視図である。
【図2】X線撮像装置の第1実施形態の構成を示す(a)上面図、及び(b)側面断面図である。
【図3】図2に示したX線撮像装置の変形例を示す上面図である。
【図4】X線撮像装置の第2実施形態の構成を示す(a)上面図、及び(b)側面断面図である。
【図5】図4に示したX線撮像装置の変形例を示す上面図である。
【図6】X線撮像装置の第3実施形態の構成を示す(a)上面図、及び(b)側面断面図である。
【図7】図6に示したX線撮像装置の変形例を示す上面図である。
【図8】X線撮像装置の第4実施形態の構成を示す(a)上面図、及び(b)側面断面図である。
【図9】図8に示したX線撮像装置の変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面とともに、本発明によるX線撮像装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0018】
図1は、本発明によるX線撮像装置の基本構成を概略的に示す斜視図である。図1に示すX線撮像装置1は、固体撮像素子10と、遮蔽層20とを備えて構成されている。X線の検出に用いられる固体撮像素子10は、シンチレータ等を介さずに入射したX線を直接的に検出してX線像を取得するX線ダイレクト検出型の撮像素子であり、例えば上記したX線CCDを用いることができる。
【0019】
固体撮像素子10は、裏面入射型の撮像素子であり、その一方の面(表面)11側に、X線を検出する複数の検出画素が1次元または2次元に配列されたX線検出部(受光部)が形成されている。また、この表面11とは反対側の他方の面(裏面)12が、検出対象のX線が入射するX線入射面となっている。
【0020】
このような撮像素子10に対し、そのX線入射面12上に、検出対象となるX線よりも長波長(低エネルギー)の光の遮蔽に用いられる遮蔽層20が形成されている。この遮蔽層20により、X線入射面12側から撮像素子10へと入射する紫外光、可視光、及び赤外光を含むノイズ光が遮蔽される。
【0021】
遮蔽層20は、具体的には、撮像素子10の入射面12上に直接に設けられた第1アルミニウム層21と、第1アルミニウム層21上(第1アルミニウム層21に対して入射面12とは反対側)に設けられた第2アルミニウム層22と、第1、第2アルミニウム層21、22の間に設けられた紫外光遮蔽層25とによって構成されている。
【0022】
この遮蔽層20において、第1アルミニウム層21は、撮像素子10に入射するノイズ光のうちで可視光及び赤外光の遮蔽に用いられる。また、紫外光遮蔽層25は、ノイズ光のうちで紫外光の遮蔽に用いられる。また、第2アルミニウム層22は、第1アルミニウム層21とともに可視光及び赤外光の遮蔽に用いられる。また、この第2アルミニウム層22は、遮蔽層20における最外層(暴露面)となっており、内側の紫外光遮蔽層25等に対する保護層としても機能する。
【0023】
また、紫外光遮蔽層25を介して積層された第1アルミニウム層21と第2アルミニウム層22との間には、それらを電気的に接続する導通部23が設けられている。なお、この導通部23の構成については、具体的には後述する。
【0024】
紫外光遮蔽層25としては、具体的には例えばポリイミド層を用いることができる。また、遮蔽層20を構成する各層の厚さについては、その一例として、第1アルミニウム層21の厚さを100nm(1000Å)、紫外光遮蔽層25であるポリイミド層の厚さを100nm(1000Å)、第2アルミニウム層22の厚さを40nm(400Å)とした構成を用いることができる。
【0025】
本発明によるX線撮像装置の効果について説明する。
【0026】
図1に示したX線撮像装置1においては、X線ダイレクト検出型の撮像素子として、裏面入射型の固体撮像素子10を用いている。そして、検出対象のX線よりも長波長のノイズ光に対し、撮像装置1とは別にOBF等の遮蔽手段を設けるのではなく、撮像素子10のX線入射面12上に直接に遮蔽層20を形成する構成としている。このような構成によれば、撮像素子10及び遮蔽層20を含むX線撮像装置1の全体の小型化、構造の簡単化が可能となる。また、撮像素子10と遮蔽層20とが一体化されていることにより、撮像装置1が構造的に脆弱になることが防止される。
【0027】
また、裏面入射型の撮像素子10では、X線入射面12上には紫外光を吸収する電極等が形成されないため、表面11側に形成されたX線検出部の各画素は、紫外光、可視光、及び赤外光を含む波長範囲のノイズ光に対して検出感度を有する。また、X線入射面12上にアルミニウムによる遮蔽層のみを設けた構成では、可視光及び赤外光が遮蔽されるものの、紫外光については充分な遮蔽効果は得られない。
【0028】
これに対して、図1のX線撮像装置1では、撮像素子10の入射面12上に可視光及び赤外光の遮蔽に用いられる第1アルミニウム層21を形成するとともに、その上にさらに紫外光遮蔽層25を設ける構成としている。これにより、紫外光、可視光、及び赤外光を含むノイズ光の波長範囲全体に対して充分な遮蔽効果を得ることができる。ここで、一般的に、紫外光の波長範囲は10nm〜400nm、可視光の波長範囲は400nm〜750nm、赤外光の波長範囲は750nm〜100μm程度である。
【0029】
また、紫外光遮蔽層25の外側に、さらに第2アルミニウム層22を設けている。このような第2アルミニウム層22により、第1アルミニウム層21にピンホール等があった場合でも、第1、第2アルミニウム層21、22を合わせて充分な可視光及び赤外光の遮蔽効果を得ることができる。また、第2アルミニウム層22は、固体撮像素子10への輻射等による熱の流入を抑制する機能をも有する。
【0030】
また、このようなX線撮像装置を観測衛星等に搭載して宇宙空間で使用した場合、その周回軌道上に存在する原子状酸素などによる紫外光遮蔽層(例えばポリイミド層)の侵食が問題となる。これに対して、上記のように紫外光遮蔽層25の外側に第2アルミニウム層22を設ける構成によれば、原子状酸素などによる紫外光遮蔽層25の侵食を抑制することができる。以上より、上記構成によれば、X線検出におけるノイズ光の検出の影響を好適に抑制することが可能なX線撮像装置1が実現される。
【0031】
ここで、遮蔽層20において、第1、第2アルミニウム層21、22の間に設けられる紫外光遮蔽層25については、具体的には上記したようにポリイミド層からなる遮蔽層を用いることが好ましい。このようなポリイミド層によれば、撮像素子10に入射する紫外光に対して充分な遮蔽効果を得ることができる。
【0032】
また、紫外光遮蔽層25の材料については、より一般にはポリイミドに限らず、例えばテフロン(登録商標)、PETなどの有機系材料、あるいはカーボン、ベリリウムなどの原子番号が小さい材料を用いることが可能である。このような紫外光遮蔽層25の材料については、実際の撮像装置1においてカットしたい紫外光の波長(エネルギー)、検出対象のX線のエネルギー等の具体的な条件を考慮して選択することが好ましい。
【0033】
また、上記構成の遮蔽層20において、第2アルミニウム層22は、遮蔽層20における最外層となっていることが好ましい。これにより、上記した原子状酸素などによる遮蔽層(例えばポリイミド層)の侵食を確実に抑制することが可能となる。
【0034】
また、遮蔽層25を構成する各層の厚さの範囲については、例えば第1、第2アルミニウム層21、22の厚さをそれぞれ100nm以下とし、ポリイミドの紫外光遮蔽層25の厚さを50nm以上300nm以下とすることが好ましい。ただし、このような遮蔽層20の具体的な構成条件については、撮像装置1の使用環境、X線の検出条件等によってX線やノイズ光の強度、波長分布等が異なるため、遮蔽層20の各層の最適膜厚等がそれらの条件に応じて変化することを考慮する必要がある。
【0035】
また、図1に模式的に示したように、上記した積層構造を有する遮蔽層20に対し、第1アルミニウム層21と第2アルミニウム層22とを電気的に接続する導通部23が設けられていることが好ましい。これにより、外側に位置する第2アルミニウム層22の帯電を防止して、撮像素子10を安定的に動作させることが可能となる。
【0036】
この場合、導通部23は、固体撮像素子10に対して、X線検出部に対応する領域を除く領域内(X線入射方向からみてX線検出部を外れた領域内)に設けられていることが好ましい。このように導通部23を設ける位置を設定することにより、第1、第2アルミニウム層21、22の間で導通部23を形成することによるX線検出部に対する紫外光の遮蔽効果の低下を防止して、複数の検出画素からなるX線検出部の全体でノイズ光を確実に遮蔽することができる。
【0037】
本発明によるX線撮像装置の構成について、その具体的な実施形態とともにさらに説明する。なお、以下の各図では、X線撮像装置のX線入射方向からみた構成を示す上面図において、図の見易さのため、導通部23に相当する部分に斜線を付して示している。
【0038】
図2は、X線撮像装置の第1実施形態の構成を示す(a)上面図、及び(b)側面断面図である。ここで、図2(b)は、図2(a)に示すI−I線に沿った断面図を示している。本実施形態のX線撮像装置1Aは、固体撮像素子10と、遮蔽層20とを備えて構成されている。また、遮蔽層20は、第1アルミニウム層21と、紫外光遮蔽層25と、第2アルミニウム層22とによって構成されている。
【0039】
撮像素子10の表面(図中の下面)11側には、その所定範囲に、複数の検出画素が2次元配列された矩形状のX線検出部15が設けられている。また、X線検出部15の一辺側(図中の右辺側)には、検出部15の各画素でX線を検出することで生成された電荷を転送、出力するための電荷転送部16が設けられている。また、撮像素子10の表面11上には、図2(b)に模式的に示すように、撮像素子10(例えばCCD)としての機能を実現するために必要な表面電極13等の各要素が形成されている。
【0040】
本実施形態のX線撮像装置1Aでは、撮像素子10のX線検出部15に対応する領域を除く領域内、図2(a)に示す具体例ではX線検出部15の右辺と撮像素子10の右辺とで挟まれた領域内にある遮蔽層20において、撮像素子10の右辺に沿って伸びる開口部26が紫外光遮蔽層25に設けられている。そして、この開口部26がアルミニウムで充填されることによって、アルミニウム層21、22を電気的に接続する導通部23が構成されている。このような構成によれば、遮蔽層20によるX線検出部15の全体に対するノイズ光の遮蔽効果を確保しつつ、アルミニウム層21、22を導通部23によって導通させて、第2アルミニウム層22の帯電を好適に防止することができる。
【0041】
紫外光遮蔽層25の開口部26及び導通部23の構成については、図3に図2に示したX線撮像装置の変形例を示すように、具体的には様々な構成を用いることが可能である。図3(a)に示す構成では、検出部15の右辺と撮像素子10の右辺とで挟まれた領域、検出部15の左辺と撮像素子10の左辺とで挟まれた領域、検出部15の上辺と撮像素子10の上辺とで挟まれた領域、及び検出部15の下辺と撮像素子10の下辺とで挟まれた領域内にある遮蔽層20において、それぞれ紫外光遮蔽層25に開口部26が設けられ、これらの開口部26がアルミニウムで充填されることによって導通部23が構成されている。また、図3(b)に示す構成では、上記した領域内にある遮蔽層20において、検出部15を囲むように一体化された開口部26が設けられ、この開口部26がアルミニウムで充填されることによって導通部23が構成されている。
【0042】
図4は、X線撮像装置の第2実施形態の構成を示す(a)上面図、及び(b)側面断面図である。ここで、図4(b)は、図4(a)に示すII−II線に沿った断面図を示している。本実施形態のX線撮像装置1Bは、固体撮像素子10と、遮蔽層20とを備えて構成されている。撮像素子10の構成、及び遮蔽層20の基本的な積層構造については、図2に示したX線撮像装置1Aと同様である。
【0043】
本実施形態のX線撮像装置1Bでは、アルミニウム層21、22及び紫外光遮蔽層25を含む遮蔽層20の右側の側面上に、導電性樹脂からなり導通部23として機能する樹脂導通部27が設けられている。このような構成によっても、アルミニウム層21、22を樹脂導通部27によって導通させて、第2アルミニウム層22の帯電を好適に防止することができる。
【0044】
樹脂導通部27による導通部23の構成については、図5に図4に示したX線撮像装置の変形例を示すように、具体的には様々な構成を用いることが可能である。図5(a)に示す構成では、遮蔽層20の右側の側面上、左側の側面上、上側の側面上、及び下側の側面上に、それぞれ導通部23として機能する樹脂導通部27が設けられている。また、図5(b)に示す構成では、上記した側面上に、遮蔽層20を囲むように一体化された導通部23として機能する樹脂導通部27が設けられている。
【0045】
図6は、X線撮像装置の第3実施形態の構成を示す(a)上面図、及び(b)側面断面図である。ここで、図6(b)は、図6(a)に示すIII−III線に沿った断面図を示している。本実施形態のX線撮像装置1Cは、固体撮像素子10と、遮蔽層20とを備えて構成されている。撮像素子10の構成、及び遮蔽層20の基本的な積層構造については、図2に示したX線撮像装置1Aと同様である。
【0046】
本実施形態のX線撮像装置1Cでは、撮像素子10の右辺に面する領域内にある遮蔽層20において、紫外光遮蔽層25及び第2アルミニウム層22が形成されず第1アルミニウム層21が露出した段差部(第1アルミニウム層露出部)28が設けられている。そして、この段差部28において、導通ワイヤ29によってアルミニウム層21、22を電気的に接続することで導通部23が構成されている。このような構成によっても、アルミニウム層21、22を段差部28及び導通ワイヤ29によって導通させて、第2アルミニウム層22の帯電を好適に防止することができる。
【0047】
遮蔽層20の段差部28及び導通ワイヤ29の構成については、図7に図6に示したX線撮像装置の変形例を示すように、具体的には様々な構成を用いることが可能である。図7(a)に示す構成では、撮像素子10の右辺に面する領域、左辺に面する領域、上辺に面する領域、及び下辺に面する領域内にある遮蔽層20において、それぞれ段差部28が設けられ、これらの段差部28で導通ワイヤ29によってアルミニウム層21、22を電気的に接続することで導通部23が構成されている。また、図7(b)に示す構成では、上記した領域内にある遮蔽層20において、検出部15を囲むように一体化された段差部28が設けられ、この段差部28で導通ワイヤ29によってアルミニウム層21、22を電気的に接続することで導通部23が構成されている。
【0048】
図8は、X線撮像装置の第4実施形態の構成を示す(a)上面図、及び(b)側面断面図である。ここで、図8(b)は、図8(a)に示すIV−IV線に沿った断面図を示している。本実施形態のX線撮像装置1Dは、固体撮像素子10と、遮蔽層20とを備えて構成されている。撮像素子10の構成、及び遮蔽層20の基本的な積層構造については、図2に示したX線撮像装置1Aと同様である。
【0049】
本実施形態のX線撮像装置1Dでは、撮像素子10の右辺に面する領域内にある遮蔽層20において、紫外光遮蔽層25及び第2アルミニウム層22が形成されず第1アルミニウム層21が露出した段差部(第1アルミニウム層露出部)28が設けられている。そして、この段差部28において、樹脂導通部30によってアルミニウム層21、22を電気的に接続することで導通部23が構成されている。このような構成によっても、アルミニウム層21、22を段差部28及び樹脂導通部30によって導通させて、第2アルミニウム層22の帯電を好適に防止することができる。
【0050】
遮蔽層20の段差部28及び樹脂導通部30の構成については、図9に図8に示したX線撮像装置の変形例を示すように、具体的には様々な構成を用いることが可能である。図9(a)に示す構成では、撮像素子10の右辺に面する領域、左辺に面する領域、上辺に面する領域、及び下辺に面する領域内にある遮蔽層20において、それぞれ段差部28が設けられ、これらの段差部28で樹脂導通部30によってアルミニウム層21、22を電気的に接続することで導通部23が構成されている。また、図9(b)に示す構成では、上記した領域内にある遮蔽層20において、検出部15を囲むように一体化された段差部28が設けられ、この段差部28で樹脂導通部30によってアルミニウム層21、22を電気的に接続することで導通部23が構成されている。
【0051】
本発明によるX線撮像装置は、上記実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、第1、第2アルミニウム層21、22の間に1層の紫外光遮蔽層25のみを設ける構成としているが、紫外光遮蔽層25を含む複数の層をアルミニウム層21、22の間に設ける構成としても良い。また、上記実施形態では、第2アルミニウム層22を遮蔽層20における最外層としているが、アルミニウム層22の外側にさらに追加の層を設け、それを最外層としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、X線検出におけるノイズ光の検出の影響を好適に抑制することが可能なX線撮像装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1、1A、1B、1C、1D…X線撮像装置、10…固体撮像素子(X線CCD)、11…表面、12…X線入射面、13…表面電極、15…X線検出部、16…電荷転送部、20…遮蔽層、21…第1アルミニウム層、22…第2アルミニウム層、23…導通部、25…紫外光遮蔽層(ポリイミド層)、26…開口部、27…樹脂導通部、28…段差部、29…導通ワイヤ、30…樹脂導通部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射したX線を検出する複数の検出画素が配列されたX線検出部が一方の面側に設けられ、他方の面がX線入射面となっている裏面入射型の固体撮像素子と、
前記固体撮像素子の前記X線入射面上に設けられ、検出対象となるX線よりも長波長の光の遮蔽に用いられる遮蔽層とを備え、
前記遮蔽層は、
前記X線入射面上に直接に設けられる第1アルミニウム層と、
前記第1アルミニウム層上に設けられる第2アルミニウム層と、
前記第1アルミニウム層及び前記第2アルミニウム層の間に設けられ、紫外光の遮蔽に用いられる紫外光遮蔽層と
を有することを特徴とするX線撮像装置。
【請求項2】
前記紫外光遮蔽層は、ポリイミド層からなることを特徴とする請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項3】
前記第2アルミニウム層は、前記遮蔽層における最外層となっていることを特徴とする請求項1または2記載のX線撮像装置。
【請求項4】
前記第1アルミニウム層と前記第2アルミニウム層とを電気的に接続する導通部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のX線撮像装置。
【請求項5】
前記導通部は、前記固体撮像素子に対して、前記X線検出部に対応する領域を除く領域内に設けられていることを特徴とする請求項4記載のX線撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−223922(P2010−223922A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74656(P2009−74656)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】