説明

X線撮影装置

【課題】任意の電荷蓄積期間、温度条件でのX線撮影に対応し、またハードウェアのの構成の制限を受けることなく、X線センサの各画素ごとに最適な暗電流補正を行うことができるX線撮影装置を得る。
【解決手段】少なくともX線撮影を実施している時間を含む電荷蓄積期間にX線の照射量に応じた電荷を含む蓄積された電荷を出力する複数の第1の画素と、X線の照射量に影響を受けずに前記電荷蓄積期間に蓄積された電荷を出力する複数の第2の画素とを備えるX線センサと、あらかじめ複数の既知の電荷蓄積期間におけるX線照射されない状態での前記第1の画素からの出力を保持する第1記憶部と、あらかじめ複数の既知の電荷蓄積期間における前記第2の画素から出力を保持する第2記憶部と、前記X線センサからの電荷出力を元にX線画像データを形成する信号処理演算部とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を検出するセンサを備え、そのセンサとX線発生器との間に被写体を配置し、被写体のX線像を得るX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フィルムに変わり、CCDやCMOSなどの半導体センサの上にX線を光に変換する蛍光体を備えたX線センサを用いた方式(以下デジタル方式)のX線撮影装置が広まりつつある。このデジタル方式では、X線センサから画像信号を取り出し、データ処理装置によりデジタルデータに変換し、また表示画像を生成し、CRTや液晶などのディスプレイにX線画像を表示する。
【0003】
上述したデジタル方式は、従来のフィルム方式と比較して、
1)リアルタイム観察が可能、
2)現像装置や廃液処理が不要、
3)受光感度が高くX線照射量が低減、
4)拡大・階調補正などの画像処理が容易、
5)撮像画像の経年変化がなく、治療前後の比較も容易、
6)保存場所を取らない
など多くのメリットがある。
【0004】
デジタル方式では、X線センサから出力された各画素に対応するX線画像信号を、出力された順番に取得し、X線センサの幅と高さに合わせて整列させて表示画像を作成し、ディスプレイに表示している。
【0005】
半導体センサは複数の画素からなっており、各画素はそれぞれ固有の光−電荷変換感度を有している。各画素は対面する蛍光体の発する光を電荷に変換し、画像信号として出力している。よって蛍光体が半導体センサ全画素に対して、同一の量の光を発したとしても、各画素の光−電荷変換感度のばらつきにより、各画素から画像出力信号として出力される電荷の量は同一とならない。
【0006】
また蛍光体も製造過程などに起因して、全画面において、X線−光変換感度が同一とならない。蛍光体全画面全体に均一のX線が照射されたとしても蛍光体各部分が発する光は同一の量とならずに、ばらつきを有することになる。
【0007】
この結果X線センサは蛍光体全画面全体に均一のX線が照射されたとしても、X線センサの出力である画像出力は全画素同一の値とはならず、X線の照射分布を適切に表現できない。
【0008】
X線画像は通常、明るさがより暗い部分がX線センサへのX線の照射量が多く、より明るい部分がX線センサへのX線の照射が少ないように表現されている。X線画像診断ではX線画像の各部分の明るさから被写体の状態を読み取り、評価する。例えばほぼ均一の組織構成であるべき部位に対して、X線画像のその部位に対応する部分の明るさを観察し、同程度の明るさの領域の中に一部分若干暗い部分があったとすると、その若干暗い部分は他の部分よりX線透過量が多い組織構成に変化してしまっていると判断できる。
【0009】
しかし前記感度ばらつきによりX線画像がX線の照射分布を適切に表現できないとなると、均一の組織構成である部位に対するX線画像は明るさが均一とならず、X線画像の明るさにより、被写体の組織構成の評価が行えない。
【0010】
そのためデジタル方式では感度補正処理を採用している。感度補正処理により、X線センサ各画素の画像出力を補正し、X線センサに均一なX線が照射されたときのX線画像出力の明るさが均一になる。
【0011】
通常感度補正処理は各画素に対する感度補正用の係数を、撮影ごとに得られた画像出力信号に乗じることで行われる。
【0012】
一般的な感度補正係数の作成方法について説明する。
【0013】
X線センサに均一なX線を照射し、画像出力信号を得る。各画素の値をviとする。また全画素の値から基準値vsを求める。基準値としては平均値、中間値、最大値、最小値などが用いられる。そして求めた基準値vsを用いて、各画素についての感度補正用係数kiを以下の式により求められる。
【0014】
ki = vs / vi
感度補正用係数kiは基準値vsの値を1としたときの各画素の出力値の大きさの相対値の逆数となる。
【0015】
X線撮影を行ったときに得られる画像出力信号Voiについて、前記感度補正用係数kiを用いて以下の計算を行うことにより感度補正後の各画素の値Vciを得ることができる。
【0016】
Vci = ki x Voi
X線センサの各画素の画像出力信号はX線照射により発生する電荷による成分と、X線の照射に関わらず発生する電荷による成分とに分けられる。
【0017】
X線の照射に関わらず発生する電荷を一般に暗電流という。
【0018】
前記感度補正係数で適切な感度補正を行うためには、X線画像出力信号は前記暗電流を適切に除去したものでなくてはならない。
【0019】
前述した感度補正係数の求め方において基準値vsを各画素の値viで割った値を係数としているということは基準値と各画素の値は常に一定の比を保つということを前提にしている。これはつまり画像出力信号がX線照射量に比例することを想定しているからである。
【0020】
しかしX線照射量に関わらず発生する電荷成分が画像出力信号中に含まれると、X線照射がなくとも0でない電荷出力信号が得られることになり、その結果画像出力信号とX線照射量は比例しなくなり、前記基準値と各画素の値は常に一定の比を保つという前提を満たすことができない。
【0021】
そのため感度補正を適切に行うためには、その前段階で適切な暗電流除去処理を行う必要がある。
【0022】
従来のCCDなどを用いたデジタル方式の撮影装置の中には、あらかじめ複数の既知電荷蓄積期間の暗電流データを保持しておき、前記既知電荷蓄積期間と異なる電荷蓄積期間で撮影された画像データに応じた暗電流補正データを、あらかじめ保持している複数の暗電流データに基づいて算出し、その暗電流補正データに基づいて前記既知電荷蓄積期間と異なる電荷撮影期間における画像データに暗電流補正を施しているものがある(例えば下記の特許文献1参照)。
【0023】
図8は、上述した従来の撮影装置の実施形態の構成を示す図である。
【0024】
図8に示される構成の撮影装置において、まず暗電流記憶手段122は撮影に先立ちあらかじめCCD110への光の入射を遮った状態においてCCD110を複数の既知の電荷蓄積期間でそれぞれ撮影した際にCCD110から出力される既知電荷蓄積期間毎の暗電流データを記憶している。
【0025】
また図8に示される構成の撮影装置において撮影および暗電流補正は以下の手順で行われる。
【0026】
CCD110は受光面に結像された像を光電変換して蓄積し、またCCD110からA/D変換器118に蓄積信号を転送させ、A/D変換器118においてデジタル化し、その画像データを画像データバッファ120に一時的に記憶させる。
【0027】
次に制御手段128は外部のパーソナルコンピュータと接続し、パーソナルコンピュータから出力された露光開始信号から露光終了信号までの差を計算して撮像時間とし、補正データ算出手段124に出力する。前記撮像時間が画像データバッファ120に記憶された画像データの電荷蓄積期間となる。補正データ算出手段124は、例えば、制御手段128から受け取った撮像時間が前記既知の電荷蓄積期間である場合には、その既知の電荷蓄積期間に応じた暗電流データを暗電流データ記憶手段122から読み出し、その値を暗電流補正データとして補正手段126に出力する。また、制御手段128から受け取った撮像時間が上記既知の電荷蓄積期間と異なる場合には、上記撮像時間よりも長くかつ上記撮像時間に最も近い第1の既知電荷蓄積期間と、上記撮像時間よりも短くかつ上記撮像時間に最も近い第2の既知電荷蓄積期間とに応じた暗電流データをそれぞれ暗電流データ記憶手段122から読み出す。そして下式により比例配分された暗電流データを算出し、これを暗電流補正データとして補正手段126に出力する。
【0028】
I = { ( I1−I2 )/( T1−T2 ) }x T + I2
ただし、
I : 暗電流補正データ
T : 撮像時間
T1: 第1の既知電荷蓄積期間
T2: 第2の既知電荷蓄積期間
I1: 第1の既知電荷蓄積期間に応じた暗電流データ
I2: 第2の既知電荷蓄積期間に応じた暗電流データ
補正手段126は、画像データバッファ120に一時記憶された画像データを読み出し、その画像データから補正データ算出手段124から出力された暗電流補正データを差し引いて、暗電流補正済み画像データを算出し、これを外部のパーソナルコンピュータに出力する。
【0029】
また上述する従来の撮影装置ではCCD110の複数の温度条件毎に複数の既知電荷蓄積期間に応じた暗電流データを記憶し、暗電流補正データを、
撮影が行われた際のCCD110の温度条件および複数の温度条件に応じた複数の既知温度蓄積期間の暗電流データに基づいて算出することで、
CCD110の温度条件が異なる場合においても適切な暗電流補正を施すことができるよう対応している。
【0030】
また従来のCCDを用いたデジタル方式の撮影装置の中には、CCDにあらかじめ備えられている光学黒と呼ばれる画素の値を用いて、光学黒の画素の値を、受光による電荷を発生し、画像を構成する出力を行う撮影有効画素の値から差し引くことで暗電流補正を施しているものがある。
【0031】
図9は従来のCCDの一般的な構造を示す図である。
【0032】
露光による画像は有効画素203により発生する電荷出力により構成される。光学黒画素201は上部に遮光物を備え、光による電荷の発生が行われないように処置されている。また分断画素202は有効画素203と光学黒画素201との間に配置され、有効画素203と光学黒画素201とを確実に分けるために設けられている。
【0033】
光学黒画素201、分断画素202、及び有効画素203を含む縦方向の画素の列は垂直CCDと呼ばれ、図中縦方向で上部から下部に向かって各画素内の電荷を転送する。また水平CCD204では垂直CCDの最下方の画素から電荷を受け取ったのち、その電荷を水平CCDに沿って順に横方向に転送し、CCD外部に出力する。
【0034】
図10は従来のCCDから出力信号において光学黒画素201の値を用いて暗電流補正処理を行う方法を説明するものである。(a)は水平CCD204内の電荷が光学黒画素201、分断画素202、有効画素203のいずれかから受け取ったものなのかを模式的に示すものであり、また(b)は各画素内の電荷量を模式的に表すものである。
【0035】
光学黒画素201による電荷は暗電流による電荷であり、有効画素203による電荷は露光による電荷と暗電流による電荷の合わさったものである。
【0036】
水平CCD内の電荷は水平CCDに沿って横方向左向きに順次転送され、CCD外部に出力されるものとする。
【0037】
CCDから順次出力される電荷はA/D変換によってデジタル化されるが、このA/D変換する際に暗電流補正処理が行われる。
【0038】
まず水平CCDの先頭部分にある光学黒画素201の電荷からA/D変換回路に入力される。このとき先頭部の複数の光学画素201の電荷をサンプリングし、サンプリングされた複数の電荷から基準値を求める。基準値としては最大値、最小値、平均値、中間値などが用いられる。次に順次有効画素203の電荷がA/D変換回路に入力されるが、その際先に求めた基準値を各有効画素203の電荷による値から差し引く。これによって各有効画素203の出力から暗電流による成分が差し引かれ、暗電流補正した値が出力される。この暗電流補正した値をA/D変換し、デジタル信号を得る。
【特許文献1】特開2003−298952号公報(第6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
しかしながら、上述した一つ目の従来の撮影装置(図8参照)における暗電流補正方法では、既知電荷蓄積期間、温度条件での暗電流データを記憶するための暗電流データ記憶手段122が必要であり、多種の既知電荷蓄積期間、温度条件での暗電流データを記憶させたり、また多画素のCCDによる暗電流データを記憶させたりする必要がある場合には、膨大な記憶量の暗電流データ記憶手段が必要となる課題を有していた。もしくは準備されている暗電流データ記憶手段の容量に制限された数の暗電流データしかあらかじめ記憶することができないという課題を有していた。
【0040】
またあらかじめ暗電流データ記憶手段に記憶されている暗電流データの対応する既知電荷蓄積期間、温度条件の範囲内での撮影にしか対応できず、任意の電荷蓄積期間、温度条件で撮影が行えないという課題も有していた。
【0041】
また上述した二つ目の従来の撮影装置(図9参照)における暗電流補正方法では、各有効画素において、光学黒の画素により発生した暗電流の量により暗電流補正を行っており、各有効画素ごとに補正すべき暗電流量を求めて暗電流補正を行っているわけではない。またCCD中の各画素において単位時間、温度あたりの暗電流発生量にばらつきがあり、同一電荷蓄積期間で得られる光学黒の画素において発生する暗電流量(個々の画素の毎の値でなく、平均値)と、各有効画素において発生する個々の暗電流量とは必ずしも一致しない。よって各有効画素において最適な暗電流補正が行えないという課題を有していた。
【0042】
本発明は、任意の電荷蓄積期間、温度条件での撮影に対応し、またハードウェアの構成に制限を受けることなく、各有効画素ごとに最適な暗電流補正を行うことができるX線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0043】
本発明に係るX線撮影装置は、上記課題を解決するために、
少なくともX線撮影を実施している時間を含む電荷蓄積期間にX線の照射量に応じた電荷を含む蓄積された電荷を出力する複数の第1の画素と、
X線の照射量に影響を受けずに前記電荷蓄積期間に蓄積された電荷を出力する複数の第2の画素とを備えるX線センサと、
あらかじめ既知の複数の電荷蓄積期間におけるX線照射されない状態での前記第1の画素からのそれぞれの出力を保持する第1記憶部と、
あらかじめ既知の複数の電荷蓄積期間における前記第2の画素からのそれぞれの出力を保持する第2記憶部と、
前記X線センサからの電荷出力を元にX線画像データを形成する信号処理演算部とを備えたものであって、
また前記信号処理演算部は、前記第2記憶部にあらかじめ記憶させた既知の電荷蓄積期間における前記第2の画素からの出力に対する、前記少なくともX線撮影を実施している時間を含む電荷蓄積期間における前記第2の画素からの出力の比を算出する暗電流比算出部と、
前記暗電流比を、前記第1記憶部にあらかじめ記憶させたX線照射されない状態での前記既知の電荷蓄積期間における前記第1の画素からの出力に乗算した値を、前記少なくともX線撮影を実施している時間を含む電荷蓄積期間における前記各第1の画素からの出力に含まれる暗電流出力分として算出する暗電流算出部とを備えたものである。
【0044】
この構成により各第1の画素で補正すべき最適な暗電流量を求めることができる。
【0045】
また、少なくともX線撮影を実施している時間を含む電荷蓄積期間における各第1の画素からの出力から暗電流算出部で算出した暗電流出力分を差し引く暗電流除去部をさらに備える。
【0046】
これにより各有効画素で最適な暗電流量を補正することができる。
【発明の効果】
【0047】
以上のように、本発明によれば、少なくともX線撮影を実施している時間を含む電荷蓄積期間にX線の照射量に応じた電荷を含む蓄積された電荷を出力する複数の第1の画素と、X線の照射量に影響を受けずに前記電荷蓄積期間に蓄積された電荷を出力する第2の画素とを備えるX線センサを用い、
またあらかじめ複数の既知の電荷蓄積期間におけるX線照射されない状態での前記第1の画素からの出力ならびに前記第2の画素からの出力を記憶しておき、
暗電流比算出部により、あらかじめ記憶させた既知の電荷蓄積期間における前記第2の画素からの出力に対する、前記少なくともX線撮影を実施している時間を含む電荷蓄積期間における前記第2の画素からの出力の比を算出し、
暗電流算出部により、あらかじめ記憶させたX線照射されない状態での前記既知の電荷蓄積期間における前記第1の画素からの出力に、前記暗電流比算出部により求めた比を乗算し、X線照射されない状態での前記少なくともX線撮影を実施している時間を含む電荷蓄積期間における前期第1の画素から出力される暗電流量に相当する暗電流出力分を算出することで、各第1の画素ごとに補正すべき暗電流の量を求めることができる。
【0048】
また少なくともX線撮影を実施している時間を含む電荷蓄積期間における各第1の画素からの出力から暗電流算出部で算出した各第1の画素の暗電流出力分を差し引くことで、各第1の画素において最適な暗電流補正を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る撮影装置の構成を示すブロック図である。
【0050】
図1に示すX線撮影装置は、少なくともX線撮影を実施している時間を含む電荷蓄積期間にX線の照射量に応じた電荷を含む蓄積された電荷を出力する複数の第1の画素2と、X線の照射量に影響を受けずに前記電荷蓄積期間に蓄積された電荷を出力する複数の第2の画素3とを備えるX線センサ1と、あらかじめ複数の既知の電荷蓄積期間におけるX線照射されない状態での前記第1の画素2からの出力を保持する第1記憶部8と、あらかじめ既知の複数の電荷蓄積期間における第2の画素3からの出力を保持する第2記憶部9と、前記X線センサ1からの電荷出力を元に画像データを形成する信号処理演算部4とを備えている。
【0051】
また前記信号処理演算部4は、前記第2記憶部9にあらかじめ記憶させた既知の電荷蓄積期間における前記第2の画素3からの出力(a)に対する、前記少なくともX線撮影を実施している時間を含む電荷蓄積期間における前記第2の画素3からの出力(a’)の比を算出する暗電流比算出部6と、前記暗電流比を、前記第1記憶部8にあらかじめ記憶させたX線照射されない状態での前記既知の電荷蓄積期間における前記第1の画素2からの出力(b)に乗算した値を、前記少なくともX線撮影を実施している時間を含む電荷蓄積期間における前記各第1の画素2からの出力に含まれる暗電流出力分として算出する暗電流算出部5と、少なくともX線撮影を実施している時間を含む電荷蓄積期間における各第1の画素2からの出力(b’)から前記暗電流算出部5で算出した暗電流出力分を差し引く暗電流除去部8とを備えている。
【0052】
図2は、本発明の実施の形態を含むシステムの構成を示すブロック図である。図中点線で囲む範囲が本発明の実施の形態に係る部分である。
【0053】
システムは本発明の実施の形態に加え、被写体11をX線センサ1との間に配し、X線センサ1に対向した位置に配置されるX線発生装置13と、X線センサ1の駆動を制御し、X線センサ1に対して、内部に電荷を蓄積させる動作と内部に蓄積された電荷を出力させる動作を任意に制御するセンサ制御部12と、信号処理演算部4からの出力を受け、明るさ調整などの画像処理を行う画像処理部14と画像処理部14からの出力を表示する画像表示部15とを備える。
【0054】
以上のように構成されたX線撮影装置を含むシステムについてその動作を説明する。
【0055】
まずX線センサ1が被写体11を撮影すべく配置される。
【0056】
X線の照射が開始されると同時に、センサ制御部12がX線センサ1に対して、X線センサ1内の電荷の転送を行う動作を停止し、X線照射により発生する電荷がX線センサ1内の画素に継続して蓄積されるように制御する。
【0057】
次にX線発生装置13からX線が照射され、被写体11によるX線像に対応する電荷信号がX線センサ1内の第1の画素2に生成される。また同時にX線の照射によらずに照射中に発生する電荷がX線センサ1内の第1の画素2かつ第2の画素3に生成される。
【0058】
X線の照射が終了すると同時に、センサ制御部12がX線センサ1に対して、X線センサ1内の電荷の転送を行う動作を開始し、X線センサ1内の第1の画素2に生成された電荷信号V(i,j)(i,jは第1の画素2内の各画素と電荷信号を対応付けるための添え字)を信号処理演算部4の暗電流除去部8に出力し、またX線センサ1内の第2の画素3に生成された電荷信号を図1に示すように信号処理演算部4内の暗電流比算出部6に出力する。
【0059】
上記X線センサ1内の電荷の転送を行う動作を停止してから、その後X線センサ1内の電荷の転送を行う動作を開始するまでのX線センサ1内で電荷が蓄積される期間を撮影電荷蓄積期間と呼ぶ。
【0060】
なお上記の例ではセンサ制御部12がX線センサ1に対して、X線センサ1内の電荷の転送を行う動作を停止するタイミングを、X線の照射が開始されると同時としているが、X線照射が開始される前の任意の時でもよい。
【0061】
なお上記の例ではセンサ制御部12がX線センサ1に対して、X線センサ1内の電荷の転送を行う動作を開始するタイミングを、X線の照射が終了すると同時としているが、X線照射が終了した後の任意の時でもよい。
【0062】
第1記憶部8はあらかじめX線センサ1内の第1の画素2においてX線を照射せず、複数の長さの異なる所定の時間の間、電荷を蓄積させたときのそれぞれの出力を記憶しておく。
【0063】
ここで各所定の時間電荷を蓄積させるのは、同一の温度条件で行うものとする。
【0064】
またここにおいて複数の所定の時間を既知電荷蓄積期間t(n)(nは複数ある既知電荷蓄積期間を区別するための添え字)と呼ぶ。また前記第1記憶部8に記憶する出力をVdcs(n,i,j)(nは対応する既知電荷蓄積期間t(n)と同一の添え字。i,jは第1の画素2内の各画素と出力を対応付けるための添え字)と表現する。
【0065】
第2記憶部9はあらかじめX線センサ1内の第2の画素3において前記複数の長さの異なる既知電荷蓄積期間の間、電荷を蓄積させたときのそれぞれの出力を記憶しておく。
【0066】
ここで各既知電荷蓄積期間の間、電荷を蓄積させるのは同一の温度条件で行うものとし、かつ前記第1記憶部8にあらかじめ記憶しているX線センサ1内の第1の画素2の出力を得たときとも同一の温度条件で行うものとする。
【0067】
第1記憶部8ならびに第2記憶部9それぞれに記憶する出力の作成方法について説明する。
【0068】
3つの長さの異なる電荷蓄積期間t(0)、t(1)、t(2)(t(0)≠t(1)、t(1)≠t(2)、t(2)≠t(0))を設定する。
【0069】
温度を一定に保った状態で、かつX線が照射されない状態において、センサ制御部12により、X線センサ1を内部に電荷を蓄積させる状態にする。X線センサ1が内部に電荷を蓄積する状態になってから期間t0経過後、センサ制御部12により、X線センサ1の状態を内部に蓄積された電荷を出力する状態にする。得られた出力のうち、X線センサ1内の第1の画素2からの出力を第1記憶部8に記憶させ、また第2の画素3からの出力を第2記憶部9に記憶させる。
【0070】
同一の温度状態で期間t1、t2についても同様の処理を繰り返し行い、X線センサ1内の第1の画素2からの出力を第1記憶部8に記憶させ、第2の画素3からの出力を第2記憶部9に記憶させる。
【0071】
これにより第1記憶部8、第2記憶部9それぞれにX線照射されない状態でのX線センサ1内の第1の画素2、第2の画素3の異なる3つの長さの異なる電荷蓄積期間における出力が記憶される。
【0072】
なお上記の例では、各電荷蓄積期間t(n)において、1回ずつ電荷蓄積を行い、その出力をそのまま第1記憶部8ならびに第2記憶部9に記憶させているが、望ましくは同一電荷蓄積期間において、複数回電荷蓄積を行い、それにより得られる複数個の出力から、各画素ごとに中間値、平均値、最大値、最小値などの基準値を求め、各画素ごとに求められた基準値により構成される全画素分のデータを第1記憶部8ならびに第2記憶部9に記憶させたほうがよい。
【0073】
複数回の出力から一つのデータを求めることにより、ある出力に何らかのノイズがのり、値が適切でなくなってしまったときの弊害を除去することができるためである。
【0074】
一方、暗電流比算出部6は、まず第2記憶部9にあらかじめ記憶している複数の第2の画素の出力から電荷蓄積期間と出力値との関係を求める。
【0075】
図3に複数の第2の画素の出力から電荷蓄積期間と出力値との関係を求める手順を示す。
【0076】
まずあらかじめ記憶している各第2の画素の出力ごとに、全画素の出力値から基準値として中間値vdcs_med(n)(nは導出元の第2の画素3の出力に対応する既知電荷蓄積期間t(n)のnと同じ添え字。n=0、1、2。)を求める(STEP51)。
【0077】
次に求めた複数の基準値vdcs_med(n)と、各基準値の導出元である第2の画素3からの出力値に対応する既知の電荷蓄積期間t(n)との関係を、横軸に電荷蓄積期間、縦軸に基準値の値とするX−Y平面にプロットする。図4にプロットした状態を示す(STEP52)。
【0078】
次にプロットした点を通る直線を表現する一次式を求めます。一次式は既知の電荷蓄積期間t(n)と基準値vdcs_med(n)の値から最小二乗法で求めることができます。同一の温度状態では暗電流の発生は電荷蓄積期間に比例するので、プロットした点は直線にのり、一次式で表現することができます(STEP53)。
【0079】
ここで求めた一次式が電荷蓄積期間と基準値との関係を示します。
【0080】
求めた一次式のY切片をBsとします。
【0081】
次にX線撮影によるX線センサ1内の各(i,j)の第2の画素3の全画素の出力から基準値として中間値vdc_medを求める。
【0082】
その後次式により比Cdcを求める。
【0083】
Cdc = (vdc_med − Bs)/(vdcs_med(0) − Bs)
先に求めたBsはA/D変換回路によるX線センサ1内の第2の画素3からの出力に対するオフセットに相当するものである。第2の画素3内に蓄積された電荷が存在せず、第2の画素3からの出力の値が0であるときでも、A/D変換(第1の画素2と暗電流除去部7間、あるいは第2の画素3と暗電流比算出部6間で実施)後の値としては0より大きい一定の値となるようにA/D変換回路を設定することがある。この一定の値がオフセットである。このオフセットは電荷蓄積期間、温度条件によらず一定と考えることができる。
【0084】
よって値vdc_medから値Bsを差し引いたもの、また値vdcs_med(0)から値Bsを差し引いたものはそれぞれにおける暗電流量と考えることができ、Cdcはそれぞれによる暗電流量の比を示す。
【0085】
その後求めたCdcを暗電流算出部5に出力する。
【0086】
なお上記式でvdcs_med(0)を用いている部分は他のvdcs_med(1)もしくはvdcs_med(2)でもよい。
【0087】
なお前記基準値は平均値、最大値、最小値などでもよい。
【0088】
次に暗電流算出部5において第1記憶部8にあらかじめ記憶している複数の第1の画素2の出力Vdcs(n,i,j)から各画素P(i,j)(i,jは各画素を特定する添え字)ごとに電荷蓄積期間と出力値との関係を求める。
【0089】
図5に複数の第1の画素2の出力から電荷蓄積期間と各画素の出力値との関係を求める手順を示す。
【0090】
まず第1の画素2内の添え字I,Jで特定される画素P(I,J)の複数の第1の画素2における出力値Vdcs(n,I,J)と、各出力値が対応する既知の電荷蓄積期間t(n)との関係を、横軸に電荷蓄積期間、縦軸に画素の出力値とするX−Y平面にプロットする。図6にプロットした状態を示す(STEP61)。
【0091】
次にプロットした点を通る直線を表現する一次式を求めます。一次式は既知の電荷蓄積期間t(n)と出力値Vdcs(n,I,J)の値から最小二乗法で求めることができます。同一の温度状態では暗電流の発生は電荷蓄積期間に比例するので、プロットした点は直線にのり、一次式で表現することができます(STEP62)。
【0092】
求められた一次式が電荷蓄積期間と第1の画素2内の画素P(I,J)の出力との関係を示します。
【0093】
求めた一次式のY切片をB’s(I,J)(I,Jは対応する画素Pと同一の添え字)とします。
【0094】
ここで求めたB’s(I,J)は前記Bsと同様A/D変換回路によるX線センサ1内の第1の画素2からの出力に対するオフセットに相当するものである。前記Bsと同様電荷蓄積期間、温度条件によらず一定と考えることができる。
【0095】
次にここで求めたB’s(I,J)と先に求めたCdcとあらかじめ記憶していた値Vdcs(0,I,J)を用いて、次式(1)により値Vdc(I,J)(I,Jは対応する画素Pと同一の添え字)を求める。
【0096】
Vdc(I,J) = Cdc x (Vdcs(0,I,J)−B’s(I,J))+ B’s(I,J) ――――― (1)
同様に他の画素P(i,j)についてもB‘s(i,j)を求め、さらにVdc(i,j)を求める。
【0097】
その後求めた全てのVdc(i,j)を暗電流除去部7に出力する。
【0098】
なお上記式でVdcs(0,I,J)を用いている部分は他のVdcs(1,I,J)もしくはVdcs(2,I,J)でもよい。しかし先にCdcを求める際に使用している基準値vds_med(n)と同一の既知電荷蓄積期間によるVdcs(n,I,J)である必要がある。
【0099】
暗電流除去部7はX線撮影による第1の画素2からの出力V(i,j)と暗電流算出部5から出力されたVdc(i,j)とを用いて次式(2)により値V’(i,j)を求め、画像データの各点の値とする。
【0100】
V’(i,j) = V(i,j) − Vdc(i,j) ――――― (2)
その後求めた画像データV’(i,j)を画像処理部14に出力する。
【0101】
画像処理部14は画像データV’(i,j)を元に、明るさ調整などの処理を行い表示用の画像データを作成したのち、画像表示部15に出力し、画像表示部15は得られた画像データを表示する。
【0102】
ここで、前記第1の画素2において生成された電荷信号V(i,j)は撮影電荷蓄積期間の間に生成されたX線照射による電荷とX線照射によらない暗電流による電荷と前記A/D変換回路のオフセットB’s(i,j)が合わさったものである。
【0103】
また前記第2の画素3において撮影電荷蓄積期間の間に生成された電荷はX線照射によらない暗電流による電荷と前記A/D変換回路のオフセットBsが合わさったものである。
【0104】
また基準値vdcs_med(n)の元となる前記第2記憶部9にあらかじめ記憶されている第2の画素3における既知電荷蓄積期間蓄積させたときの出力はX線照射によらない暗電流による電荷と前記A/D変換回路のオフセットBsが合わさったものである。
【0105】
また第1記憶部8にあらかじめ記憶されている各第1の画素2の出力Vdcs(n,i,j)は既知電荷蓄積期間の間蓄積されたX線照射によらない暗電流による電荷と前記A/D変換回路のオフセットB’s(i,j)が合わさったものである。
【0106】
暗電流の単位時間あたりの発生量は各画素ごとにばらつきがあるが、温度条件が同一であれば各画素ごとには電荷蓄積期間に比例して発生する。
【0107】
よってある2つの画素A,Bにおいて、電荷蓄積期間T1と電荷蓄積期間T2(T1≠T2)のそれぞれで発生する暗電流による電荷の量を求めたとき、
画素Aにおいて電荷蓄積期間T1で発生した暗電流による電荷量A1と、電荷蓄積期間T2で発生した暗電流による電荷量A2との比は画素Bにおいて電荷蓄積期間T1で発生した暗電流による電荷量B1と、電荷蓄積期間T2で発生した暗電流による電荷量B2との比に等しくなる。
【0108】
よって仮に電荷蓄積期間T2で発生した暗電流による電荷量B2が未知の値であるとするとA1,A2,B1を用いて次式(3)によりB2の値を求めることができる。
【0109】
A2 / A1 = B2 / B1
∴ B2 = A2 / A1 x B1 ――――― (3)
ここにおいて既知電荷蓄積期間を電荷蓄積期間T1に対応させ、
また撮影電荷蓄積期間を電荷蓄積期間T2に対応させると、
前記第2記憶部9にあらかじめ記憶されている第2の画素3の出力から求めた基準値vdcs_medからオフセットであるBsを差し引いたものは電荷量A1に対応させることができ、
またX線撮影での撮影電荷蓄積期間に、X線照射の影響を受けず第2の画素3に蓄積された電荷として得られる出力から求められた基準値vdc_medからオフセットであるBsを差し引いたものは電荷量A2に対応させることができる。
【0110】
またさらに第1記憶部8にあらかじめ記憶されているX線照射されない状態で蓄積された第1の画素2の各画素の出力Vdcs(0,i,j)からオフセットであるB’s(i,j)を差し引いたものは電荷量B1に対応させることができる。
【0111】
従って電荷量B2には撮影電荷蓄積期間に前記第1の画素2においてX線照射されない状態で蓄積された電荷が対応することになり、前記式(1)より値Vdc(i,j)からオフセットであるB’s(i,j)を差し引いたものが対応することとなる。
【0112】
よって値Vdc(i,j)は撮影電荷蓄積期間の間に前記第1の画素2の各画素において生成された暗電流による電荷量とオフセットB’s(i,j)を足し合わせたものを表すことになる。
【0113】
以上から前記式(2)により求められたV’(i,j)はX線撮影により得られた第1の画素2からの出力V(i,j)から暗電流による電荷とオフセットB’s(i,j)を削除したものとなり、これによりX線照射による電荷のみによる値が求められたことになる。
【0114】
なお暗電流は同一画素において温度条件が異なると単位時間あたりの発生量が変化する。その変化の内容はおよそ5℃の上昇で単位時間あたりの発生量が2倍となるというものである。
【0115】
よって前記値A1、B1を求めたときの温度条件に比べて前記値A2、B2を求めたのときの温度条件がK℃高く、そのときの画素A,Bがそれぞれ出力する値A2’、B2’がもとのA2、B2に対してm倍になったと想定することができる。このときA2とA2‘、B2とB2’との関係は下式のようになる。
【0116】
A2’ = m x A2
B2’ = m x B2
よって
A2’ / A1 = m x A2 / A1
式(2)より
A2’ / A1 = m x B2 / B1
= B2’ / B1
よって
A2’ / A1 = B2’ / B1
となり、電荷蓄積期間T1、電荷蓄積期間T2それぞれで得られる出力の比が等しいという関係は維持される。
【0117】
よって基準値vdcs_med(0)の元となる前記第2記憶部9にあらかじめ記憶されている各第2の画素3における既知電荷蓄積期間の間蓄積させたときの出力ならびに第1記憶部8にあらかじめ記憶されている各第1の画素2の出力を求めるときの温度条件と、X線撮影を行うときの温度条件が異なっても、X線撮影による前記第1の画素2の各画素の出力に含まれる暗電流量を求めることができる。
【0118】
なお上記の例では明るさ調整などの表示画像を作成する処理を行う画像処理部14を設ける例を示したが、画像処理部14が行う処理を信号処理演算部4に含め、画像処理部14を省いてもよい。
【0119】
<第2の実施の形態>
図7は本発明の第2の実施の形態にかかるX線撮影装置を含むシステム構成の例を示す図である。
【0120】
X線センサ1とセンサ制御部12などを内部に持つ回路構成部10とLANなどのI/Fで回路構成部10と接続され、X線撮影に関するユーザーインターフェース機能やX線画像の編集機能などを実現するパーソナルコンピュータ11とX線画像を表示するディスプレイ12とで構成される。
【0121】
前記信号処理演算部4ならびに第1記憶部8、第2記憶部9は前記パーソナルコンピュータ内に実現され、撮影ごとにインターフェースを通じて第1の画素2、第2の画素3のデータを回路構成部10から受け取り、パーソナルコンピュータ内で処理を行う。
【0122】
なお前記信号処理演算部4のうちの前記暗電流比算出部6と第2記憶部9を前記回路構成部10内で実現するものとし、
回路構成部10に記憶手段を備え、その記憶手段に前記第2記憶部9にあらかじめ記憶される第2の画素3からの出力を保存し、撮影ごとに得られる第2の画素3からの出力から前記比Cdcを求め、その後比Cdcをパーソナルコンピュータ11に送信してもよい。
【0123】
この構成によれば回路構成部10からパーソナルコンピュータ11に送信するデータが比Cdcと第1の画素の出力となり、第2の画素の出力を送信する必要がなくなり、送信にかかる時間を短縮する。また撮影ごとの第2の画素の出力の基準値と比の導出をハードウェアで実現することで処理時間が短縮する。よって画像を表示するまでの時間が短縮することになり、デジタル化の利点であるリアルタイム観察に貢献する。
【0124】
また前記信号処理演算部4ならびに第1記憶部8、第2記憶部9を回路構成部10内で実現するものとし、回路構成部10に前記第2記憶部9にあらかじめ記憶される第2の画素3からの出力を保存する記憶手段と前記第1記憶部8にあらかじめ記憶する第1の画素2からの出力を保存する記憶手段を備え、回路構成部10内で前記比Cdcの算出と前記値Vdc(i,j)の算出を行い、その後前記値V’(i,j)の算出を行い、その後値V’(i,j)のみをパーソナルコンピュータ11に送信してもよい。
【0125】
この構成によれば回路構成部10からパーソナルコンピュータ11に送信するデータが第1の画素2の出力について暗電流補正を行った値V’(i,j)のみとなり、送信にかかる時間を短縮する。また全ての処理をハードウェアで実現することで処理時間が短縮する。よって画像を表示するまでの時間が短縮することになり、更にデジタル化の利点であるリアルタイム観察に貢献する。
【0126】
しかしこの構成ではX線照射されない状態でのX線センサ1内の第1の画素2、第2の画素3の異なる3つの長さの異なる電荷蓄積期間における出力を保存する必要があるため、回路構成部10にX線センサ1の画素数の3倍のデータ数を保存できる記憶手段が必要となり、広い範囲を撮影対象とするX線撮影装置などにより画素数が増えると記憶手段の必要容量も大きくなり、X線センサの付け替えなどで撮影対象の範囲が可変となるX線撮影装置ではあらかじめ回路構成部10にどれだけの容量の記憶手段を備えておくべきかの考察が必要となる。
【0127】
なお上記の例ではX線センサ1内の第2の画素3において既知電荷蓄積期間の間電荷を蓄積させた出力を第2記憶部9に記憶しておき、撮影ごとに基準値を求めるとしているが、あらかじめ基準値を求めておき、求めた基準値を第2記憶部9に記憶しておいてもよい。
【0128】
この場合は基準値が中間値や平均値などどれか一つに固定されるが、撮影ごとに基準値を求める必要がなく、処理時間を短縮し、デジタル化の利点であるリアルタイム観察に貢献する。また記憶しておくデータの数が第2の画素3の画素数の3倍から基準値として3つのデータとなることから回路に備える記憶手段の容量を小さくすることができる。
【0129】
また上記の例では第2記憶部9にあらかじめ記憶されている複数の既知電荷蓄積期間におけるX線センサ1内の第2の画素3からの出力から求められる基準値と既知電荷蓄積期間との関係を表す一次式を求め、Y切片Bsを求める処理を、X線撮影ごとに行っているが、あらかじめ関係を表す一次式ならびにY切片Bsを求めておき、求めたY切片Bsを第2記憶部9に記憶しておいてもよい。
【0130】
この場合は基準値が中間値や平均値などどれか一つに固定されるが、Y切片Bsを求める必要がなく、処理時間を短縮し、デジタル化の利点であるリアルタイム観察に貢献する。
【0131】
またY切片Bsを第2記憶部9にあらかじめ記憶させておく場合、第2記憶部9にあらかじめ記憶させておく第2の画素3の出力もしくは第2の画素3の出力から求めた基準値は一つの既知電荷蓄積期間によるもののみでよい。
【0132】
この場合値Cdcを求める際に用いる値vdcs_med(n)についてnはあらかじめ記憶されている一つに限定されるが、記憶しておくデータの数が第2の画素3の画素数の3倍(異なる3つの長さの異なる電荷蓄積期間に対応)もしくは基準値3つから、画素数の1倍とY切片1つを合わせた数もしくは基準値1つにY切片1つを合わせた数となることから回路に備える記憶手段の容量を小さくすることができる。
【0133】
なお上記の例では第1記憶部8にあらかじめ記憶されている複数の既知電荷蓄積期間におけるX線照射されない状態でのX線センサ1内の第1の画素2からの出力から、各画素の出力値と既知電荷蓄積期間との関係を表す一次式を求め、Y切片Bs‘(i,j)を求める処理を、X線撮影ごとに行っているが、あらかじめ関係を表す一次式ならびにY切片Bs‘(i,j)を求めておき、求めたY切片Bsを第1記憶部8に記憶しておいてもより。
【0134】
この場合撮影ごとにY切片Bs(i,j)を求める必要がなく、処理時間を短縮し、デジタル化の利点であるリアルタイム観察に貢献する。
【0135】
またY切片Bs‘(i,j)を第1記憶部8にあらかじめ記憶させておく場合、第1記憶部8にあらかじめ記憶させておく第1の画素2の出力は一つの既知電荷蓄積期間による出力のみでよい。しかしこの場合、値Cdcを求める際に用いる基準値vdcs_med(n)の導出元となる第2の画素3の出力が対応する既知電荷蓄積期間と同一の既知電荷蓄積期間による第1の画素2の出力である必要がある。
【0136】
この場合値Vdc(i,j)を求める際に用いる値Vdcs(n,i,j)についてnはあらかじめ記憶されている一つに限定されるが、記憶しておくデータの数が第1の画素2の画素数の3倍(異なる3つの長さの異なる電荷蓄積期間に対応)から第1の画素2の画素数の2倍(一つの既知電荷蓄積期間による出力と各画素のY切片)となることから回路に備える記憶手段の容量を小さくすることができる。
【0137】
なお上記の例では3つの既知電荷蓄積期間を設定する例を示していたが、最低2つの既知電荷蓄積期間を設定すれば、上記の例と同様に処理を行うことができる。
【0138】
なお上記の例では複数の第2の画素3の全画素の出力から一つの基準値を求めているが、全画素ではなく、全画素から任意に選択したいくつかの画素の出力から一つの基準値を求めてもよい。
【0139】
全画素からいくつかの画素を任意に選択する方法としては、全画素の出力値において値のばらつきが大きいときに、出力値の近い画素を選び出すという方法などがある。
【0140】
なお上記の例では複数の第2の画素3の出力から一つの基準値を求めているが、複数の第2の画素3のうち特定の画素の出力をそのまま基準値としてもよい。
【0141】
これにより複数の出力から一つの基準値を求める処理が不要となる。
【0142】
またX線センサ1において第2の画素3を1個だけ備えるものとし、その画素の出力をそのまま基準値としてもよい。
【0143】
これにより複数の出力から一つの基準値を求める処理が不要となる。
【0144】
またX線センサ1内において第1の画素2を広く取ることができ、同一外形寸法のX線センサ1を考えたとき、より広い撮影領域を実現することができる。
【0145】
なお上記の例ではX線撮影を行うX線センサを用いたX線撮影装置について記述しているが、暗電流の発生はX線の照射によらないため、通常の可視光による撮影を行う撮影装置についても適用できる。
【0146】
以上のように、実施の形態によれば、暗電流比算出部6において、あらかじめ記憶させておく第2の画素3の出力から求められる基準値と、X線撮影で得られる第2の画素3の出力から求められる基準値との比を求め、暗電流算出部5において前記比とあらかじめ記憶させておく第1の画素2の各画素の出力との積を求め、暗電流除去部8においてX線撮影で得られる第1の画素2の出力から前記積を差し引くことで、第1の画素2の各画素においてX線の照射による電荷のみが得られ、各画素において適切な暗電流補正処理を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明のX線撮影装置は、あらかじめ記憶させたX線照射されない状態で既知の電荷蓄積期間における第1の画素からの出力に、暗電流比算出部により求めた比を乗算することで、X線撮影時の電荷蓄積期間中に第1の画素から出力される暗電流出力分を算出することで、各有効画素ごとに補正すべき暗電流の量を求めることができ、被写体の組成を適切に表現するのに有用であり、またその後の感度補正処理などが適切に行え画像評価において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の実施の形態に係るX線撮影装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明によるX線撮影装置を含むシステムの構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態に係るX線センサ内の第2の画素における電荷蓄積期間と、出力から求められる基準値との関係を求める手順を示す図
【図4】本発明の実施の形態に係るX線センサ内の第2の画素における電荷蓄積期間と、出力から求められる基準値との関係を示す図
【図5】本発明の実施の形態に係るX線センサ内の第1の画素における電荷蓄積期間と、出力値との関係を求める手順を示す図
【図6】本発明の実施の形態に係るX線センサ内の第1の画素における電荷蓄積期間と、出力値との関係を示す図
【図7】本発明によるX線撮影装置を含むシステムの構成を示す図
【図8】従来の撮影装置の例1の構成を示す図
【図9】従来の撮影装置の例2で用いられるCCDセンサの構造を示す図
【図10】従来の撮影装置の例2による暗電流補正処理の方法を示す図
【符号の説明】
【0149】
1 X線センサ
2 第1の画素
3 第2の画素
4 信号処理演算部
5 暗電流算出部
6 暗電流比算出部
7 暗電流除去部
8 第1記憶部
9 第2記憶部
11 被写体
12 センサ制御部
13 X線発生装置
14 画像処理部
15 画像表示部
16 回路構成部
17 パーソナルコンピュータ
18 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともX線撮影を実施している時間を含む電荷蓄積期間にX線の照射量に応じた電荷を含む蓄積された電荷を出力する複数の第1の画素と、
X線の照射量に影響を受けずに前記電荷蓄積期間に蓄積された電荷を出力する複数の第2の画素とを備えるX線センサと、
あらかじめ既知の複数の電荷蓄積期間におけるX線照射されない状態での前記第1の画素からのそれぞれの出力を保持する第1記憶部と、
あらかじめ既知の複数の電荷蓄積期間における前記第2の画素からのそれぞれの出力を保持する第2記憶部と、
前記X線センサからの電荷出力を元に画像データを形成する信号処理演算部とを備えるX線撮影装置であって、
前記信号処理演算部は、前記第2記憶部にあらかじめ記憶させた既知の電荷蓄積期間における前記第2の画素からの出力に対する、前記少なくともX線撮影を実施している時間を含む電荷蓄積期間における前記第2の画素からの出力の比を算出する暗電流比算出部と、
前記暗電流比を、前記第1記憶部にあらかじめ記憶させたX線照射されない状態での前記既知の電荷蓄積期間における前記第1の画素からの出力に乗算した値を、前記少なくともX線撮影を実施している時間を含む電荷蓄積期間における前記各第1の画素からの出力に含まれる暗電流出力分として算出する暗電流算出部とを備えたX線撮影装置。
【請求項2】
少なくともX線撮影を実施している時間を含む電荷蓄積期間における各第1の画素からの出力から、前記暗電流算出部で算出した暗電流出力分を差し引く暗電流除去部とをさらに備えた請求項1記載のX線撮影装置。
【請求項3】
信号処理演算部は、専用の回路構成部と、前記回路構成部と所定のI/Fでつながるパーソナルコンピュータとからなり、前記回路構成部に暗電流比算出部、暗電流算出部、および暗電流除去部のうち少なくとも一つを備えた請求項2記載のX線撮影装置。
【請求項4】
信号処理演算部は、専用の回路構成部と、前記回路構成部と所定のI/Fでつながるパーソナルコンピュータとからなり、前記パーソナルコンピュータに暗電流比算出部、暗電流算出部、および暗電流除去部のうち少なくとも一つを備えた請求項2記載のX線撮影装置。
【請求項5】
第2の画素はX線センサに1個備える請求項1から4のいずれかに記載のX線撮影装置。
【請求項6】
同一の電荷蓄積期間における複数のX線照射されない状態での前記第1の画素からの出力から、第1記憶部にあらかじめ記憶する既知の電荷蓄積期間におけるX線照射されない状態での前記第1の画素からの出力を作成することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のX線撮影装置。
【請求項7】
同一の電荷蓄積期間における複数の前記第2の画素からの出力から、第2記憶部にあらかじめ記憶する既知の電荷蓄積期間における前記第2の画素からの出力を作成することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のX線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−183148(P2007−183148A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1159(P2006−1159)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】