説明

X線検査装置

【課題】X線画像のぶれを防止し、物品の不良を精度良く検査することが目的とされる。
【解決手段】X線検査装置1は、搬送される物品の検査をX線画像Iに基づいて行う装置であって、検出部171と、制御部172とを備える。検出部171は、X線画像Iから物品の搬送速度に関するデータDを検出する。制御部172は、検出部171で検出されたデータDに基づいて搬送速度を制御する。具体的には、検出部171は、データDとしてX線画像Iでの物品の長さLを検出する。制御部172は、検出部171で検出された長さLを、物品の長さの実測値L0に漸近させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線検査装置に関し、特に製造ラインでの物品の検査に用いられるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、製造された物品中に異物が混入していないかどうかや、物品に欠損が生じていないかどうかなどの不良を検査するために、X線検査装置が用いられている。具体的にX線検査装置は、照射部、受光部、搬送機構、及び画像処理部を備えている。照射部は、物品にX線を照射する。受光部は、物品を透過したX線を受光する。搬送機構は、X線の照射位置に物品を搬送する。画像処理部は、受光部で受光されたX線の画像(以下、「X線画像」と称す。)を処理して、物品の不良を検査する。
【0003】
そして、従来のX線検査装置ではX線画像のぶれを低減すべく、物品の搬送速度が所望の値になるように、搬送機構がフィードバック制御によって搬送速度を調節していた。かかる所定値は、例えば露光時間との関係で決まる。これにより、画像処理部での処理の精度を高めていた。
【0004】
なお、本発明に関連する技術を以下に示す。
【特許文献1】特開2000−39406号公報
【特許文献2】特開2001−318061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のX線検査装置では、搬送機構がフィードバック制御によって調節した搬送速度は、X線画像にぶれを生じない所望の値からずれるおそれがあった。搬送速度が所望の値からずれると、X線画像がぶれてしまう。特に、搬送速度が所望の値よりも速くなると、X線画像のぶれは顕著である。X線画像がぶれてしまうと、画像処理の際に、物品の不良を検出できないおそれがある。
【0006】
また、従来のものでは、X線検査装置自身に搬送機構を配設することを前提としているため、かかる搬送機構に換えて既設の搬送機構(コンベアなど)を用いた場合、X線検査装置と既設の搬送装置とを別個に制御する必要がある。このため、既設の搬送機構の仕様などの情報を得ることができない場合には、搬送速度を所望の値に調節することが困難であった。このため、上述したのと同様に、X線画像がぶれて、物品の不良を検出できないおそれがある。
【0007】
本発明は上述した事情に鑑みて成されたものであり、X線画像のぶれを防止し、物品の不良を精度良く検査することが目的とされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明にかかるX線検査装置は、搬送される物品の検査をX線画像に基づいて行う装置であって、検出部と、制御部とを備える。検出部は、X線画像から物品の搬送速度に関するデータを検出する。制御部は、検出部で検出されたデータに基づいて搬送速度を制御する。
【0009】
第1の発明にかかるX線検査装置によれば、X線画像から検出されたデータに基づいて搬送速度を制御するので、搬送速度を所望の値へと精度良く導くことができる。よって、高い精度で、X線画像のぶれを補正することができ、以って物品の不良を精度良く検出することができる。
【0010】
第2の発明にかかるX線検査装置は、第1の発明にかかるX線検査装置であって、検出部は、データとしてX線画像での物品の長さを検出する。制御部は、検出部で検出された長さを、物品の長さの実測値に漸近させる。
【0011】
第2の発明にかかるX線検査装置によれば、X線画像に写った物品の長さを実測値に漸近させることで、高い精度で、X線画像のぶれを補正することができる。
【0012】
第3の発明にかかるX線検査装置は、第1または第2の発明にかかるX線検査装置であって、検出部によるデータの検出と、制御部によるデータに基づく搬送速度の制御とを、複数回繰り返し実行する。
【0013】
第3の発明にかかるX線検査装置によれば、データの検出と搬送速度の制御とを複数回繰り返し実行することで、X線画像のぶれがなくなり、以って高い精度で物品の不良を検出することができる。
【0014】
第4の発明にかかるX線検査装置は、第1乃至第3の発明のいずれか一つにかかるX線検査装置であって、制御部は、物品の搬送を担う搬送機構に対してデータに基づいた指令を出すことで、搬送速度を制御する。
【0015】
第4の発明にかかるX線検査装置によれば、搬送速度の実測値や、搬送機構の仕様などの情報を得なくても、検出部で検出されるデータが所望のデータになるように、搬送装置に出す指令を調節することで、搬送速度を所望の値へと精度良く導くことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるX線検査装置によれば、X線画像から検出されたデータに基づいて搬送速度を制御するので、搬送速度を所望の値へと精度良く導くことができる。よって、高い精度で、X線画像のぶれを補正することができ、以って物品の不良を精度良く検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
1.X線検査装置の構成
図1は、本発明の実施の形態にかかるX線検査装置1を概念的に示す前面図である。なお図1では、X線検査装置1の前面のカバーは取り外されている。
【0018】
X線検査装置1は、X線を用いて物品Pの検査を行う装置であって、本体11、シールドボックス111、照射部12、受光部13、支持部14、遮蔽カーテン15、搬送機構16、制御装置17を備える。なお、図1には制御装置17を示していない。
【0019】
以下、各構成要素について説明する。制御装置17の詳細については「2.制御装置の構成」で説明する。
【0020】
<本体>
本体11には、X線が照射される内部空間S1と、通路W1,W2とが設けられている。通路W1は、外部から内部空間S1への物品Pの搬入に用いられる。通路W2は、内部空間S1から外部への物品Pの搬出に用いられる。なお、かかる物品Pの搬入及び搬出は、搬送機構16によって行われる。
【0021】
<照射部>
照射部12は、内部空間S1の上側に位置し、X線を物品Pに照射することができる。具体的には、照射部12で発せられたX線は、照射部12の下側に配置されたスリット121を通って、内部空間S1内の照射位置P1にある物品Pに達する。X線がスリット121を通ることで、照射部12から照射位置P1へと向かうX線の指向性が高まる。
【0022】
<シールドボックス>
シールドボックス111は、X線を遮蔽することができる筐体であって、本体11の上に載置されている。シールドボックス111の内部には、照射部12が配設されている。シールドボックス111によれば、照射部12から発せられたX線が、本体11の上側で漏洩するのを防止することができる。
【0023】
<受光部>
受光部13は、例えばラインセンサであって、照射位置P1の下側に位置する。受光部13は、物品Pに照射されたX線のうち物品Pを透過したものを受光する。
【0024】
そして、受光部13で受光したX線の画像(X線画像)を、例えば画像処理部で処理することで、物品Pに不良があるかどうかが検査される。上述したようにスリット121を通ったX線の指向性は高いので、受光部13で得られたX線画像にはノイズがほとんど生じず、以って高い精度で不良が検出される。
【0025】
<支持部>
支持部14は、本体11に取り付けられており、受光部13を支持する。
【0026】
<遮蔽カーテン>
遮蔽カーテン15は、通路W1,W2のそれぞれに吊り下げられている。図1では、通路W1,W2のそれぞれに、遮蔽カーテン15が二つずつ配設されている。遮蔽カーテン15を通路W1,W2に吊り下げることで、通路W1,W2を通ってX線が漏洩することを防止できる。
【0027】
<搬送機構>
搬送機構16は、X線の照射位置P1へと物品Pを搬送する機構であって、回転ローラ1611〜1613、駆動ローラ162、搬送ベルト163、及び搬送台1641,1642を有する(図1)。
【0028】
搬送台1641,1642はそれぞれ、支持部14の両側に配置されている。具体的には、搬送台1641は、支持部14に対して下流側の位置で、本体11及び支持部14の少なくともいずれか一方に取り付けられている。搬送台1642は、支持部14に対して上流側の位置で、本体11及び支持部14の少なくともいずれか一方に取り付けられている。なお、上流及び下流という表現は、物品Pの搬送方向90について用いている。
【0029】
搬送台1641,1642には、X線の透過を妨げる遮蔽部材を採用することが好ましい。これにより、照射部12から発せられたX線の、支持部14の下側の空間への伝播を遮ることができる。
【0030】
回転ローラ1611は搬送台1641に回転自在に支持されている。回転ローラ1612は、搬送台1642に回転自在に支持されている。回転ローラ1613は、支持部14によって回転自在に支持されている。
【0031】
搬送ベルト163は、回転ローラ1611〜1613に掛けられる。具体的には、回転ローラ1611〜1613の各々は、搬送ベルト163が三角形状を呈するように、搬送ベルト163を内周側から支持する。
【0032】
このとき、回転ローラ1611は、搬送ベルト163のうち物品Pを載せて搬送する部分163aの下流端を形成する。回転ローラ1612は、部分163aの上流端を形成する。なお、部分163aは、搬送ベルト163のうち物品Pに接する部分と把握することができる。
【0033】
駆動ローラ162は、本体11に取り付けられており、搬送ベルト163に駆動力を与えることができる。駆動ローラ162で搬送ベルト163に駆動力を与えることで、搬送ベルト163は回転する。これにより、搬送ベルト163(部分163a)に載せられた物品Pを、搬送方向90へと搬送することができる。
【0034】
2.制御装置の構成
図2は、X線検査装置1を概念的に示すブロック図である。制御装置17は、検出部171及び制御部172を有する。
【0035】
検出部171は、受光部13で得られたX線画像Iから、物品Pの搬送速度Vに関するデータDを検出する。制御部172は、検出部171で検出されたデータDに基づいて搬送速度Vを制御する。そして、検出部171でのデータDの検出と、制御部172によるデータDに基づく搬送速度Vの制御とを、複数回繰り返し実行する。
【0036】
具体的には、検出部171は、搬送速度Vに関するデータDとして、X線画像Iに写った物品Pの長さLを検出する。制御部172は、検出部171で検出された長さLが、物品Pの長さの実測値L0に漸近するように、搬送機構16を制御する。そして、検出部171での長さLの検出と、制御部172による搬送機構16の制御とを、複数回繰り返し実行する。なお、実測値L0は、予め制御部172に与えられている。
【0037】
3.制御装置による制御
図3は、制御装置17による制御をフローチャートで示した図である。まず、物品Pの搬送を開始する(START)。このとき、制御部172は搬送機構16に対して、制御信号S1を送信することで搬送の開始の指令を出す(図2)。
【0038】
制御信号S1を受信した搬送機構16は、駆動ローラ162を回転することで、搬送を開始する。なお、搬送開始時の搬送速度Vは、測定などによって得ておく必要はない。
【0039】
搬送開始後、ステップ301に移行する。ステップ301では、検出部171によって物品Pの長さLを検出する。
【0040】
ステップ301の実行後、ステップ302に移行する。ステップ302では、制御部172によって、検出部171で検出した長さLが、実測値L0にぶれ幅ΔL1を加算したもの(以下、「長さL0+ΔL1」と称す。)より小さいかどうかを判定する。ここで、ぶれ幅ΔL1は、X線画像Iに写った物品Pの長さLが実測値L0より大きい場合について、不良の検出に際して許容できるぶれの幅を表す。
【0041】
ステップ302で長さLが、長さL0+ΔL1より大きいと判定された場合(「No」と判定された場合)には、ステップ303に移行する。ステップ302で長さLが、長さL0+ΔL1より小さいと判定された場合(「Yes」と判定された場合)には、ステップ304に移行する。
【0042】
ステップ303では、制御部172による搬送機構16の制御によって、搬送速度Vを大きくする。具体的には、制御部172は搬送機構16に対して、制御信号S2を送信することで搬送速度Vを大きくする指令を出す(図2)。
【0043】
制御信号S2を受信した搬送機構16は、駆動ローラ172の回転数を大きくすることで、搬送速度Vを大きくする。なお、大きくした後の搬送速度Vも、測定などによって得る必要はない。ステップ303の実行後は、ステップ301へと戻る。
【0044】
ステップ304では、制御部172によって、検出部171で検出した長さL(ステップ301)が、実測値L0にぶれ幅ΔL2を減算したもの(以下、「長さL0−ΔL2」と称す。)より大きいかどうかを判定する。ここで、ぶれ幅ΔL2は、X線画像Iに写った物品Pの長さLが実測値L0より小さい場合について、不良の検出に際して許容できるぶれの幅を表す。
【0045】
ステップ304で長さLが、長さL0−ΔL2より小さいと判定された場合(「No」と判定された場合)には、ステップ305に移行する。ステップ304で長さLが、長さL0−ΔL2より大きいと判定された場合(「Yes」と判定された場合)には、制御装置17での制御が終了する。
【0046】
ステップ305では、制御部172による搬送機構16の制御によって、搬送速度Vを小さくする。具体的には、制御部172は搬送機構16に対して、制御信号S3を送信することで搬送速度Vを小さくする指令を出す(図2)。
【0047】
制御信号S3を受信した搬送機構16は、駆動ローラ172の回転数を小さくすることで、搬送速度Vを小さくする。なお、小さくした後の搬送速度Vも、測定などによって得る必要はない。ステップ305の実行後は、ステップ301へと戻る。
【0048】
上述した制御装置17による制御によれば、ステップ301〜305を複数回繰り返し実行することで、X線画像Iに写った物品Pの長さLを、検出部171で検出しながら、実測値L0に漸近させることができる。換言すれば、搬送速度Vを所望の値へと近づけることができる。よって、高い精度で、X線画像Iのぶれを補正することができる。
【0049】
しかも、制御部172から搬送機構16に対しては、制御信号Sを送信するだけで良い。よって、搬送速度Vの実測値を測定などによって得なくても、検出部171で検出されるデータD(長さL)が所望のデータ(実測値L0)になるように、搬送機構16に出す指令(制御信号S2,S3)を調節することで、搬送速度Vを所望の値へと精度良く導くことができる。
【0050】
X線画像Iのぶれを防止するという観点からは、ぶれ幅ΔL1,ΔL2を小さく設定することが好ましい。これにより、X線画像IのぶれがほとんどないX線画像Iを得ることができ、以って不良の検出の精度がより高まる。
【0051】
4.変形例
<X線検査装置の構成>
図4は、本変形例にかかるX線検査装置1Aを概念的に示す図である。図5は、X線検査装置1Aを概念的に示すブロック図である。なお図4では、X線検査装置1Aの前面のカバーは取り外されている。
【0052】
X線検査装置1Aは、上述したX線検査装置1(図1)について、搬送機構16に代えて、X線検査装置の構成要素でない搬送機構3を採用したものである。搬送機構3は、物品Pの搬送を担う機構であって、X線の照射位置P1へと物品Pを搬送する。搬送機構3には、例えば既設のコンベアが採用できる。
【0053】
搬送機構3を採用した場合、図4に示されるように支持部14は、搬送機構16を採用した場合(図1)よりも下に配置される。これにより、搬送機構3の搬送ベルトのうち物品Pを載せる部分を、搬送機構16を採用した場合(図1)の、搬送ベルト163の部分163aと同じ位置に配置することができる。
【0054】
よって、搬送機構16に代えて搬送機構3を採用する場合でも、遮蔽カーテン15の長さを変える必要がない。
【0055】
搬送機構3を採用した場合、搬送機構3の厚みの分だけ、照射位置P1と受光部13との間の距離Lp1が大きくなり、受光部13で受光されるX線の強度が低下するおそれがある。しかし、受光部13を搬送機構3の直下に配置することで、X線の強度の低下を抑えることができる。更には、距離Lp1に応じて露光時間を調節することで、受光部13でX線の受光量を大きくすることで、X線の強度の低下を補うことができる。
【0056】
検出部171は、搬送速度Vに関するデータDとして、搬送方向90についての物品Pの長さLaと、搬送方向90に交差する方向についての物品Pの長さLbとを検出する。
【0057】
制御部172は、検出部171で検出された長さLa,Lbから、長さLaと長さLbの比La/Lbを求める。そして、制御部172は、比La/Lbが所定値La0/Lb0に漸近するように、搬送機構3を制御する。なお、所定値La0/Lb0は、搬送方向90についての物品Pの長さの実測値La0と、搬送方向90に交差する方向についての物品Pの長さの実測値Lb0との比であり、予め制御部172に与えられている。
【0058】
なお、検出部171で長さLa,Lbを検出する対象は、上から見た形状が円形のものであることが好ましい。なぜなら、上から見た形状が円形のものについては、搬送機構3への置き方を変えても、実測値La0,Lb0が変わらず、以って後述する制御部172による制御が容易になるからである。
【0059】
よって、上から見た形状が円形でない物品Pの不良を検査する場合には、予め上から見た形状が円形のものを流して、後述する制御装置17による制御を実行しておくことが好ましい。
【0060】
<制御装置による制御>
図6は、X線検査装置1Aの制御装置17による制御をフローチャートで示した図である。まず、物品Pの搬送を開始する(START)。このとき、制御部172は搬送機構16に対して、制御信号S61を送信することで、搬送の開始の指令を出す(図5)。
【0061】
制御信号S61を受信した搬送機構3は、物品Pの搬送を開始する。搬送開始後、ステップ601に移行する。ステップ601では、検出部171によって物品Pの長さLa,Lbを検出する。
【0062】
ステップ601の実行後、ステップ602に移行する。ステップ602では、制御部172によって、検出部171で検出された長さLa,Lbから、長さLaと長さLbの比La/Lbが算出される。
【0063】
ステップ602の実行後、ステップ603に移行する。ステップ603では、制御部172によって、検出部171で検出した長さLa,Lbの比La/Lbが、所定値La0/Lb0にぶれ幅ΔLc1を加算したもの(以下、「比Lc1」と称す。)より小さいかどうかを判定する。ここで、ぶれ幅ΔLc1は、X線画像Iに写った物品Pについての比La/Lbが所定値La0/Lb0より大きい場合について、不良の検出に際して許容できるぶれの幅を表す。
【0064】
ステップ603で比La/Lbが、比Lc1より大きいと判定された場合(「No」と判定された場合)には、ステップ604に移行する。ステップ603で比La/Lbが、比Lc1より小さいと判定された場合(「Yes」と判定された場合)には、ステップ605に移行する。
【0065】
ステップ604では、制御部172による搬送機構3の制御によって、搬送速度Vを大きくする。具体的には、制御部172は搬送機構3に対して、制御信号S62を送信することで搬送速度Vを大きくする指令を出す(図5)。制御信号S62を受信した搬送機構3は、搬送速度Vを大きくする。ステップ604の実行後は、ステップ601へと戻る。
【0066】
ステップ605では、制御部172によって、ステップ602で算出された比La/Lbが、所定値La0/Lb0にぶれ幅ΔLc2を減算したもの(以下、「比Lc2」と称す。)より大きいかどうかを判定する。ここで、ぶれ幅ΔLc2は、X線画像Iに写った物品Pについての比La/Lbが所定値La0/Lb0より小さい場合について、不良の検出に際して許容できるぶれの幅を表す。
【0067】
ステップ605で比La/Lbが、比Lc2より小さいと判定された場合(「No」と判定された場合)には、ステップ606に移行する。ステップ605で比La/Lbが、比Lc2より大きいと判定された場合(「Yes」と判定された場合)には、制御装置17での制御が終了する。
【0068】
ステップ606では、制御部172による搬送機構3の制御によって、搬送速度Vを小さくする。具体的には、制御部172は搬送機構3に対して、制御信号S63を送信することで搬送速度Vを小さくする指令を出す(図5)。制御信号S63を受信した搬送機構3は、搬送速度Vを小さくする。ステップ606の実行後は、ステップ601へと戻る。
【0069】
上述した制御装置17による制御によれば、搬送機構3の仕様などの情報を得なくても、X線検査装置1(図1)と同様に、搬送機構3に対して搬送速度Vを大きくしたり小さくしたりする指令(制御信号S2,S3)を出すだけで、高い精度で、X線画像Iのぶれを補正することができる。
【0070】
なお、本変形例においても、X線検査装置1(図1)と同様に、物品Pの長さLを実測値L0に漸近させても良い。
【0071】
5.その他の変形例
図1に示されるX線検査装置1において、搬送機構16は上下に移動可能であっても良い。具体的には、厚みの小さい物品Pの不良を検査する場合には、搬送機構16を上に移動させて、通路W1,W2の上下方向についての幅Lp2を小さくする。
【0072】
他方、厚みの大きい物品Pの不良を検査する場合には、搬送機構16を下に移動させて幅Lp2を大きくする。
【0073】
搬送機構16を上に移動させて幅Lp2を小さくした場合には、照射部12と受光部13との間の距離が小さくなるので、照射部12から発せられるX線の強度を小さくしても、受光部13で所望の強度のX線を受光することができる。よって、精度良く物品Pの不良を検出しつつも、X線の漏洩が防止しやすくなる。しかも、遮蔽カーテン15の長さを短くすることができ、以って遮蔽カーテン15を物品Pが通過する際の抵抗を小さくすることができる。
【0074】
物品Pの厚みが著しく小さくて、幅Lp2を著しく小さくした場合には、遮蔽カーテン15がなくても、通路W1,W2からはX線はほとんど漏洩しない。よって、遮蔽カーテン15を除去することができ、以ってX線検査装置1を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態にかかるX線検査装置を概念的に示す図である。
【図2】X線検査装置を概念的に示すブロック図である。
【図3】制御装置による制御をフローチャートで示す図である。
【図4】変形例にかかるX線検査装置を概念的に示す図である。
【図5】変形例にかかるX線検査装置を概念的に示すブロック図である。
【図6】制御装置による制御をフローチャートで示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1,1A X線検査装置
3,16 搬送機構
171 検出部
172 制御部
I X線画像
P 物品
V 搬送速度
D データ
L 長さ
L0 実測値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される物品の検査をX線画像に基づいて行う装置であって、
前記X線画像から前記物品の搬送速度に関するデータを検出する検出部と、
前記検出部で検出された前記データに基づいて前記搬送速度を制御する制御部と
を備える、X線検査装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記データとして前記X線画像での前記物品の長さを検出し、
前記制御部は、前記検出部で検出された前記長さを、前記物品の長さの実測値に漸近させる、
請求項1記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記検出部による前記データの検出と、前記制御部による前記データに基づく前記搬送速度の制御とを、複数回繰り返し実行する、請求項1または請求項2記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記物品の搬送を担う搬送機構に対して前記データに基づいた指令を出すことで、前記搬送速度を制御する、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−156631(P2009−156631A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332655(P2007−332655)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】