説明

X線CT撮影装置、再構成処理方法

【課題】CT画像にアーチファクトが発生することを抑制する技術を提供する。
【解決手段】被写体に向けてX線コーンビームを照射するX線発生部と、前記X線コーンビームを検出するX線検出部と、前記X線発生部と前記X線検出部とを、前記被写体を挟んで対向するように支持する支持部と、前記支持部を旋回駆動して、前記X線発生部及び前記X線検出部を前記被写体の周りで旋回させることにより、X線CT撮影を行わせる旋回駆動部と、前記X線CT撮影にて取得された投影データを再構成処理して三次元データを生成する演算処理部と、を備えるX線CT撮影装置であって、前記演算処理部が、X線CT撮影領域内のいかなる点についても、投影角180度分丁度の各方向からの前記X線コーンビームを照射して得られる投影データのみを再構成演算の処理対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
X線を照射して得られた投影データから、三次元データを生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被写体の患部等にX線を照射するスキャン撮影を行って投影データを取得し、これを再構成することで3次元データを取得するX線CT撮影装置が知られている。例えば特許文献1には、X線CT撮影装置の構成と、X線CT撮影方法について記載されている。
【0003】
具体的には、X線の束からなるX線コーンビームを、回転角にして180度にX線コーンビームのファン角(回転方向への広がりの角度)を加えた角度分回転させながら被写体に向けて照射する。そして、被写体を透過したX線が検出されることによって、X線の投影データが収集される。このように、180度にファン角を加えた角度分の回転角のX線コーンビームを照射することによって、被写体の撮影対象領域の全ての点について、少なくとも180度の範囲の各方向からX線照射した投影データを取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−125174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のX線CT撮影装置では、再構成した三次元データからCT画像を生成した際に、CT画像に縦方向や横方向等に延びる模様等、本来存在しないはずのアーチファクトが発生する場合がある。画像診断の精度を向上させるためには、このようなアーチファクトの発生を抑制することが望まれている。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みなされたものであり、CT画像にアーチファクトが発生することを抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、被写体に向けてX線コーンビームを照射するX線発生部と、前記X線コーンビームを検出するX線検出部と、前記X線発生部と前記X線検出部とを、前記被写体を挟んで対向するように支持する支持部と、前記支持部を旋回駆動して、前記X線発生部及び前記X線検出部を前記被写体の周りで旋回させることにより、X線CT撮影を行わせる旋回駆動部と、前記X線CT撮影にて取得された投影データを再構成処理して三次元データを生成する演算処理部とを備えるX線CT撮影装置であって、前記演算処理部が、X線CT撮影領域内のいかなる点についても、投影角180度分丁度の各方向からの前記X線コーンビームを照射して得られる投影データのみを再構成演算の処理対象とする。
【0008】
また、第2の態様は、第1の態様に係るX線CT撮影装置において、前記旋回駆動部が、前記X線コーンビームの回転方向に広がる角度に180度を加えた角度を回転角として、前記X線発生部及び前記X線検出部を旋回させることにより、前記X線CT撮影を実行する。
【0009】
また、第3の態様は、第2の態様に係るX線CT撮影装置において、前記X線発生部が、開口の大きさを調整することによって、前記X線の通過を部分的に遮断し、前記X線コーンビームの照射範囲を規制する規制部を有しており、前記X線CT撮影の際に、前記規制部の動作によって、前記CT撮影領域内の全ての点について、投影角180度分丁度の各方向から、前記X線コーンビームが照射される。
【0010】
また、第4の態様は、第3の態様に係るX線CT撮影装置において、前記規制部が、前記被写体に対するX線コーンビームの照射の開始時点において、前記支持部の旋回角に応じて、次第に前記被写体に対する前記X線コーンビームの照射範囲を拡大するように動作する。
【0011】
また、第5の態様は、第3の態様に係るX線CT撮影装置において、前記規制部が、前記被写体に対するX線コーンビームの照射の終了時点に到達する前の時点において、前記支持部の旋回角に応じて、次第にX線コーンビームの照射範囲を縮小するように前記X線の通過を規制する。
【0012】
また、第6の態様は、第3の態様に係るX線CT撮影装置において、前記規制部が、前記被写体に対するX線コーンビームの照射の開始時点において、前記支持部の旋回角に応じて、次第に前記被写体に対する前記X線コーンビームの照射範囲を拡大するように動作するとともに、前記被写体に対するX線コーンビームの照射の終了時点に到達する前の時点において、前記支持部の旋回角に応じて、次第にX線コーンビームの照射範囲を縮小するように前記X線の通過を規制するX線CT撮影装置また、第7の態様は、第2から6の態様までのいずれか1態様の態様に係るX線CT撮影装置において、前記X線CT撮影にて取得された投影データのうち、前記X線CT撮影領域内の全ての点について、投影角180度分丁度の各方向からX線を照射したデータのみを抽出して、所定の再構成演算処理を行う演算部、をさらに備える。
【0013】
また、第8の態様は、第2から7の態様までのいずれか1態様の態様に係るX線CT撮影装置において、前記X線検出部が、X線を検出する複数の検出素子が平面状に配列された検出面を有しており、前記検出面のX線検出可能範囲を制限することによって、前記X線CT撮影領域内の全ての点について、投影角180度分丁度の各方向から前記X線コーンビームを照射した投影データを取得する。
【0014】
また、第9の態様は、第8の態様に係るX線CT撮影装置において、前記X線検出部は、前記被写体に対する前記X線コーンビームの照射の開始時点において、前記支持部の旋回角に応じて、次第に前記検出面におけるX線の検出範囲を増大させる。
【0015】
また、第10の態様は、第8の態様に係るX線CT撮影装置において、前記X線検出部は、前記被写体に対する前記X線コーンビームの照射の終了時点に到達する前の時点において、前記支持部の旋回角に応じて、次第に前記検出面におけるX線の検出範囲を縮小させる。
【0016】
また、第11の態様は、第8の態様に係るX線CT撮影装置において、前記X線検出部は、前記被写体に対する前記X線コーンビームの照射の開始時点において、前記支持部の旋回角に応じて、次第に前記検出面におけるX線の検出範囲を増大させるとともに、前記被写体に対する前記X線コーンビームの照射の終了時点に到達する前の時点において、前記支持部の旋回角に応じて、次第に前記検出面におけるX線の検出範囲を縮小させる。
【0017】
また、第12の態様は、被写体に関するX線の投影データから三次元データを再構成する再構成処理方法において、X線発生部及びX線検出部を、被写体を挟んで対向させた状態で前記被写体の周りに旋回させつつ、X線発生部から被写体に向けて照射されたX線コーンビームをX線検出部で検出するX線CT撮影を実行して、X線の投影データを収集するデータ収集工程と、前記データ収集工程にて取得された投影データに対して、所定の再構成演算処理を行うことにより、三次元データを生成する演算工程とを有し、前記演算工程では、X線CT撮影領域内のいかなる点についても、投影角180度分丁度の各方向からの前記X線コーンビームを照射して得られる投影データのみを演算の処理対象とする。
【発明の効果】
【0018】
第1から第9の態様に係るX線CT撮影装置によれば、投影角180度分丁度の範囲の各方向からX線照射した投影データのみを、再構成演算の処理対象とするため、投影角180度分を超える方向からX線照射した投影データの加工処理によるアーチファクトの発生を抑制することができるという優れた効果を奏し得る。
【0019】
特に、第2の態様に係るX線CT撮影装置によれば、X線発生部およびX線検出部を、X線コーンビームの広がる角度分余計に回転させることによって、撮影対象領域内の全ての点について、投影角180度分の各方向からX線照射した投影データを取得することができるという優れた効果を奏し得る。すなわち、X線コーンビームの広がる角度分余計に回転させるだけでアーチファクトの発生を抑制することができるという効果を奏し得る。
【0020】
特に、第3から第6までの態様に係るX線CT撮影装置によれば、必要最小限のX線被曝で投影データを取得することができる。ゆえに、被写体のX線被曝量を最小限に抑えることができるという優れた効果を奏し得る。
【0021】
特に、第7の態様に係るX線CT撮影装置によれば、容易に投影角180度分の範囲を超える方向からX線照射した投影データを排除することができるという優れた効果を奏し得る。
【0022】
特に、第8から第11までの態様に係るX線CT撮影装置によれば、比較的容易なX線の検出素子のX線検出可能範囲の制御のみでアーチファクトの発生を抑制することができる。
【0023】
また第12の態様に係るX線CT撮影方法によれば、特に機械的な構成によらずとも演算工程において、投影角180度分丁度の範囲の各方向からX線照射した投影データのみを、再構成演算の処理対象とするため、投影角180度分を超える方向からX線照射した投影データの加工処理によるアーチファクトの発生を抑制することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係るX線CT撮影装置の概要を示す図である。
【図2】支持部及び上部フレームをその内部構造とともに示す部分断面図である。
【図3】上部フレームをその内部構造とともに示す部分断面図である。
【図4】X線発生部を示す縦断面図である。
【図5】ビーム成形機構を示す斜視図である。
【図6】旋回アームを示す正面図である。
【図7】検出器ホルダを示す斜視図である。
【図8】X線CT撮影装置の構成を示すブロック図である。
【図9】X線CT撮影装置によるX線CT撮影の動作を示す概念図である。
【図10】X線CT撮影時において、X線コーンビームの照射範囲を制御する様子を示す図である。
【図11】第2実施形態におけるX線CT撮影時において、X線コーンビームの照射範囲を制御する様子を示す図である。
【図12】照射開始時と照射終了時において、X線コーンビームの照射範囲を制御する様子を示す図である。
【図13】第3実施形態におけるX線CT撮影時において、X線コーンビームの検出範囲を制御する様子を示す図である。
【図14】第4実施形態におけるX線CT撮影時において、X線コーンビームの検出範囲を制御する様子を示す図である。
【図15】第5実施形態に係る情報処理本体部のCPUによって実現される機能ブロックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して実施の形態を詳細に説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0026】
<1.第1実施形態>
<1.1.概要>
図1は、第1実施形態に係るX線CT撮影装置100の概要を示す図である。本実施形態のX線CT撮影装置100は、医療用のX線撮影装置であり、所定の位置に固定された被写体M1に対して、X線発生部10およびX線検出部20を撮影対象領域(生体器官等)の中心を軸にして回転移動させながら、X線発生部10が発生させたX線コーンビームB1を照射して、投影データを収集する。そしてX線CT撮影装置100は、収集した投影データを再構成して3次元データ(ボリュームデータ)を生成し、この3次元データに基づいて、撮影対象領域についてのCT画像(断層面画像、ボリュームレンダリング画像等)を生成する。
【0027】
従来のX線CT撮影装置にて生成したCT画像において、アーチファクトが発生する原因を探った結果、三次元データを再構成する際に、撮影対象領域の一部に関して、投影角が180度を超える各方向からX線を照射して得た投影データが原因となってアーチファクトが発生する場合があることが分かった。なお、投影角とは、後に詳述するが、X線照射開始時点において、或る特定の地点を通過するX線の進行方向に対して、X線CT撮影中の或る時点での、前記特定の地点を通過するX線の進行方向が成す角度と定義される。
【0028】
これに対し、本実施形態に係るX線CT撮影装置100では、以下に述べる構成を備えることによって、撮影対象領域内のいかなる点についても、投影角180度分丁度(すなわち、投影角が0度から180度丁度まで)の範囲の各方向からX線を照射して得た投影データのみを再構成演算処理の対象とする。これにより、X線CT撮影装置100は、アーチファクトの発生が抑制されたCT画像を生成することができるように構成されている。
【0029】
<1.2.X線CT撮影装置の構成および機能>
図1に示すX線CT撮影装置100は、X線CT撮影を実行して、投影データを収集する本体部1と、本体部1において収集した投影データを処理して、各種画像を生成する情報処理装置8とに大別される。
【0030】
本体部1は、被写体M1に向けてX線の束で構成される角錐状のX線コーンビームB1を出射するX線発生部10と、X線発生部10で出射されたX線を検出するX線検出部20と、X線発生部10とX線検出部20とのそれぞれを対向させた状態で支持する支持部30と、鉛直方向に昇降移動可能に構成された昇降部40と、鉛直方向に延びる支柱50と本体制御部60とを備えている。X線撮影時には、X線発生部10とX線検出部20とが、被写体M1を挟んで対向するように支持部30に支持され、被写体M1の周りで旋回する。
【0031】
支持部30は、図示の例では機械的な旋回軸31の軸周りに旋回する旋回アームで構成されているが、特に旋回アームに限定されるものではなく、様々な構成のものが考えられる。例えば支持部30が、所定円の中心を回転中心として旋回する円環状部材で構成されており、この円環状部材にX線発生部10とX線検出部20とが対向するように設けられているものでもよい。
【0032】
X線発生部10およびX線検出部20は、支持部30の両端部にそれぞれ吊り下げ固定されており、互いに対向するように支持されている。支持部30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を介して、昇降部40に吊り下げ固定されている。
【0033】
ここで、以下の説明においては、旋回軸31の軸方向と平行な方向(ここでは、鉛直方向)を「z軸方向」とし、このz軸に交差する方向を「x軸方向」とし、さらにx軸方向およびz軸方向に交差する方向を「y軸方向」とする。x軸およびy軸方向は任意に定め得るが、ここでは、被写体M1である被検者がX線CT撮影装置100において位置決めされて支柱50に正対した時の被検者の左右の方向をx軸方向とし、被検者の前後の方向をy軸方向と定義する。
【0034】
これに対して、旋回する支持部30上の3次元座標については、X線発生部10とX線検出部20とが対向する方向を「Y軸方向」とし、Y軸方向に直交する水平方向を「X軸方向」とし、これらXおよびY軸方向に直交する鉛直方向を「Z軸方向」とする。本実施形態およびそれ以降の実施形態においては、上記のz軸方向はZ軸方向と共通する同一の方向となっている。また本実施形態の支持部30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を軸に旋回する。したがって、XYZ直交座標系は、xyz直交座標系に対してz軸(=Z軸)周りに回転することとなる。
【0035】
昇降部40は、鉛直方向に沿って延びるように立設された支柱50に係合している。昇降部40は、上部フレーム41と下部フレーム42とが、支柱50に係合する側の反対側に突出しており、略U字状の構造を有している。
【0036】
上部フレーム41には、支持部30の上端部分が取り付けられている。このように支持部30は、昇降部40の上部フレーム41に吊り下げされており、昇降部40が支柱50に沿って移動することによって、支持部30が上下に移動する。
【0037】
下部フレーム42には、被写体M1(ここでは人体の頭部)を左右から固定するイヤロッドや、顎を固定するチンレスト等で構成される被写体固定部421が設けられている。支持部30は、被写体M1の身長に合わせて昇降されて適当な位置に合わせられ、その状態で被写体M1が被写体保持部421に固定される。
【0038】
図1に示すように、X線発生部10、X線検出部20、支持部30、昇降部40は、防X線室70内に収容されている。X線検出部20の内部には、本体制御部60が備えられている。本体制御部60には、液晶モニタ等で構成される表示部61と、各種ボタンで構成される操作パネル62とが付加されている。操作パネル62は、生体器官等の撮影領域の位置等を指定することにも用いられる。
【0039】
また、防X線室70の壁の外側には、操作表示部600が設けられている。この操作表示部600には、液晶モニタ等で構成される表示部61aと、各種ボタンで構成される操作パネル62aとが付加されている。
【0040】
情報処理装置8は、通信ケーブルによって本体部1との間で各種データを送受信することができる。ただし、本体部1と情報処理装置8との間で、無線的にデータのやり取りが行われてもよい。
【0041】
情報処理装置8は、例えばコンピュータやワークステーション等で構成された情報処理本体部80を備えており、本体部1で取得された投影データを加工して、ボクセルで表現される三次元データ(ボリュームデータ)を再構成する。情報処理本体部80には、例えば液晶モニタ等のディスプレイ装置からなる表示部81およびキーボード、マウス等で構成される操作部82が接続されている。オペレータは、操作部82を介して情報処理装置8に対して各種指令を与えることができる。なお、表示部81は、タッチパネルで構成することも可能であり、この場合は、操作部82の機能の一部または全部を備えることとなる。
【0042】
図2は、支持部30及び上部フレーム41をその内部構造とともに示す部分断面図である。また図3は、上部フレーム41をその内部構造とともに示す部分断面図である。なお図2は、X線CT撮影装置100を側方から見たときの支持部30、上部フレーム41の状態を示す図であり、図3は、上方から見たときの上部フレーム41の状態を示す図である。
【0043】
上部フレーム41は、支持部30を前後方向(Y軸方向)に移動するYテーブル35Y、及び、Yテーブル35Yに支持されて横方向(X軸方向)に移動するXテーブル35Xで構成されるテーブル35を備えている。また、上部フレーム41は、Yテーブル35Yを駆動するY軸モータ60Yと、Yテーブル35Yに対してXテーブル35XをX方向に移動させるX軸モータ60Xと、Xテーブル35Xと支持部30とを連結する旋回軸31を中心として、支持部30を旋回させる旋回用モータ60Rを備えている。なお、本実施形態では、旋回軸31が鉛直方向に沿って延びるように構成されているが、旋回軸は任意の鉛直方向に対して任意の角度で傾いていてもよい。
【0044】
旋回軸31と支持部30の間にはベアリング37が介在しており、旋回軸31に対する支持部30の回転を容易にしている。旋回用モータ60Rは支持部30の内部に固定されており、ベルト38により旋回軸31に回動力を伝達して、支持部30を旋回させる。旋回軸31、ベアリング37、ベルト38及び旋回用モータ60Rは、支持部30を旋回する旋回機構の一例であり、支持部30の旋回機構はこのようなものに限定されない。
【0045】
X線CT撮影装置100では、X軸モータ60X、Y軸モータ60Y及び旋回用モータ60Rの制御モータを、予め決められたプログラムに従って駆動することによって、支持部30を旋回させることもでき、また、Xテーブル35X及びYテーブル35Yを前後(Y方向)及び左右(X方向)に移動させることもできる。この支持部30の旋回軸31の軸周りの旋回によって、X線発生部10およびX線検出部20が旋回軸31の軸周りに回転する。
【0046】
また、Xテーブル35X、Yテーブル35Yによって、旋回軸31を二次元平面(個々では水平面)内の特定の位置まで移動させた後、支持部30を軸周りに旋回させ、X線発生部10とX線検出部20を回転することができる。この場合、X線発生部10とX線検出部20の回転軸の位置は、旋回軸31の位置と一致することとなる。
【0047】
さらに、X線撮影装置100では、Xテーブル35XとYテーブル35Yとの駆動によって、旋回軸31を2次元平面内で移動させながら、同時に、支持部30を旋回軸31周りに旋回させることができる。このような旋回軸31の移動による支持部30の水平面内の移動と、旋回軸31周りの支持部30の旋回との合成運動によって、X線発生部10とX線検出部20とが、旋回軸31の位置とは別の位置に設定される特定の回転軸の軸周りに回転させることができる。このような、機械的な旋回軸31とは別の箇所にX線発生部10とX線検出部20の回転軸を設定する例としては、特開2007−29168に記載されたX線CT撮影装置の構成を適宜応用することも可能である。
【0048】
後述するように、X線CT撮影においては、X線発生部10がX線検出部20に向けてX線コーンビームB1を照射しつつ回転する。したがって、X線コーンビームB1も、後述の図9に示す中心C1を回転中心として回転することとなる。このX線コーンビームの回転中心C1は、X線発生部10とX線検出部20の回転軸でもある。なお、電磁波であるX線は、空間中を移動してとどまることのない成分であるが、X線コーンビームはX線束で構成されるものであり、一定の錐状の形状に形成されて照射される。そこで、本実施形態では、このX線束が回転する状態を、X線コーンビームの回転と考える。
【0049】
{X線発生部10}
図4は、X線発生部10を示す縦断面図である。また、図5は、ビーム成形機構16を示す斜視図である。図4に示すように、X線発生部10は、X線発生部10の備える各構成を収納するためのハウジング11を備えている。ハウジング11は、回転機構12を介して、支持部30に連結されている。
【0050】
回転機構12は、支持部30の内部に固定されている回転モータ121と、支持部30に固定された垂直軸122と、回転モータ121と垂直軸122とを連結する歯車機構123と、ハウジング11と垂直軸122に固定された固定部材124とを有する。
【0051】
ハウジング11は、本体制御部60からの制御信号に基づいて動作する回転モータ121の駆動によって、垂直軸122周りに水平面内で回転可能となるように構成されている。このような回転機構12は、例えばセファロ撮影時に使用される。
【0052】
X線発生部内部には、X線発生源であるX線管13を内蔵するX線検出器14が収容されている。X線検出器14はX線遮断ケースである筐体で構成されており、X線管13は、X線検出部20に対向する部分(図4の左側)を除いて、X線検出器14の筐体に覆われている。このX線発生器14はX線検出部20に対向する領域にビーム成形板15を備えている。そしてビーム成形板15は、ビーム成形機構16に取り付けられている。
【0053】
図5に示すように、ビーム成形機構16は、複数のガイドローラ161を介して複数の垂直ガイドレール162に沿って昇降自在に支持されたブロック163を有する。ブロック163は、X線管13から出射されたX線をX線検出部20に向けて案内するX線通過孔164(図4参照)を備えている。
【0054】
ブロック163は、ハウジング11に固定された昇降モータ165にネジ機構を介して連結されている。昇降モータ165を駆動することにより、X線発生部10は、X線の照射角度をZ軸方向に移動できる。これにより、X線発生部10を上下動させることなく、X線の照射角度を上下に移動できる。
【0055】
ブロック163の前方(X線通過孔164の外部)には、X線管13から出射されたX線ビームを成形する複数のビーム成形スリットが設けられたビーム成形板15が配置されている。このビーム成形板15は、照射範囲を規制する規制部となっている。ビーム成形板15は、ブロック163の前面に固定された複数の案内ローラ166によって水平方向に移動可能に支持されている。
【0056】
ビーム成形板15の一端には、連結アーム167が連結されている。連結アーム167には、ナット168が取り付けられている。ブロック163は、ビーム成形板15の長手方向に伸びるネジ軸169を回転自在に支持する。ナット168はネジ軸169に螺合されており、ネジ軸169がブロック163に固定されたモータ170に連結されている。
【0057】
ビーム成形板15は、本体制御部60からの制御信号に基づいて動作するモータ170の駆動によって、ブロック163の前部を水平方向の一方向に、すなわちX線ビームと交差する方向に移動する。
【0058】
本実施形態において、ビーム成形板15には、3種類のX線通過開口(一次スリット、コリメータ)が形成されている。これら3種類のX線通過開口には、X線ビームをコーン状(角錐状の場合も含む。)に成形するための長方形又は正方形のCT撮影用のビーム通過孔151と、X線ビームを細長い帯状に成形して細隙ビームとするための縦長のパノラマ撮影用のビーム通過孔152と、同じく縦長のセファロ撮影用のビーム通過孔153とが含まれる。
【0059】
例えばCT撮影用のビーム通過孔151をX線管13に対向させた場合、X線発生部10からX線検出部20に向けて角錐台状に広がるX線のコーンビームが出射される。なお、CT撮影用のビーム通過孔151の縦長と横長が同じとすると、X線ビームはX線の進行方向と直交する横断面が略正方形を有することとなる。なお、CT撮影用のビーム通過孔151は、方形に限定されるものではなく、適宜の形状を採用することができる。例えば、ビーム通過孔151を円形状とすることによって、円錐状のX線コーンビームを照射し、撮影対象領域を球状とすることも妨げられない。
【0060】
なお、本実施形態では、ブロック163のX線通過孔164の水平方向の幅を、ビーム通過孔151の水平方向の幅と同じ幅としている。そして、モータ170駆動によるビーム成形板15の移動によって、X線通過孔164とビーム通過孔151とで構成されるX線の出射孔の開度が調整され、X線コーンビームの水平方向の広がりの幅が調整される。
【0061】
例えば、ビーム成形板15をブロック163に対して変位させることにより、ビーム成形板15のビーム通過孔151が、X線通過孔164と重なる位置に移動させて、X線通過孔164を通過するX線を妨げないようにする。これにより、X線コーンビームの水平方向の広がりの幅を、最大幅とすることができる。
【0062】
また、ビーム成形板15をブロック163に対して変位させることにより、ビーム成形板15のビーム通過孔151が、X線通過孔164を通過するX線を部分的に遮断する(規制する)位置に移動させる。これにより、X線コーンビームの水平方向の広がりの幅を、上記最大幅よりも小さくすることができる。
【0063】
このように、本実施形態では、X線コーンビームの水平方向の広がりは、ビーム成形板15の位置の制御で決定される。なお、X線コーンビームの水平方向の広がりの制御する構成は、このようなものに限定されるものではなく、その他の構成によって実現することも可能である。
【0064】
例えば、本願出願人の出願にかかる実公平7−15524の図3に開示した複数のマスク板4、5の重ね合わせた、X線の規制を行うX線絞り装置のような構造のものを適宜応用することができる。
【0065】
すなわち、図示を省略するが、ビーム成形板15の前後のいずれかに、ビーム通過孔151と略同一(もしくはそれ以上)の水平方向の幅を有するビーム通過孔が形成された副ビーム成形板を設ける。ビーム成形板15のビーム通過孔151に対して、副ビーム成形板のビーム通過孔の位置を相対的に変化させることで、ビーム通過孔151の開口を部分的に遮断することにより、X線コーンビームの水平方向の広がりを制御することができる。
【0066】
なお、この副ビーム成形板を駆動する駆動モータとしては、ビーム成形板15を駆動する駆動モータ170と同様のものを採用することができる。また、副ビーム成形板を案内ローラ166と同様にして設けられたガイド機構に接続することによって、副ビーム成形板をビーム成形板15と同方向に移動させることができる。
【0067】
このような構成において、副ビーム成形板をビーム成形板15に対して相対的に変位させることにより、副ビーム成形板のビーム通過孔を、ビーム通過孔151を通過するX線を妨げないように、ビーム通過孔151と重なる位置に移動させる。これにより、X線コーンビームの水平方向の広がりの幅を、最大幅とすることができる。
【0068】
また、副ビーム成形板をビーム成形板15に対して相対的に変位させることにより、副ビーム成形板のビーム通過孔を、ビーム通過孔151を通過するX線を部分的に遮断する(規制する)位置に移動させる。これにより、X線コーンビームの水平方向の広がりの幅を、上記最大幅よりも小さくすることができる。
【0069】
このような態様では、X線コーンビームの水平方向の広がりは、ビーム成形板15に対する副ビーム成形板の相対的な位置よって決定される。
【0070】
パノラマ撮影用のビーム通過孔152又はセファロ撮影用のビーム通過孔153をX線管13に対向させた場合、X線発生部10からX線検出部20に向けて、横断面が縦長の略平坦な板状(ただし、厳密には角錐台)のX線ビームが出射される。
【0071】
なお、図示を省略するが、昇降部40に固定されて所定方向に延びるアームの先には、セファロ撮影時に使用されるセファロスタットが設けられている。セファロスタットとしては、具体的には、特開2003−245277に開示されたセファロスタットを含む種々のものを採用することができる。このようなセファロスタットには、例えば、頭部を定位置に固定する固定具やセファロ撮影用のX線検出器が備えられている。
【0072】
{X線検出部20}
図6は、支持部30を示す正面図である。なお、図6では、X線検出部20の内部も一部図示している。X線検出部20は、X線検出部20の各構成を収納するためのハウジング200を備えている。
【0073】
ハウジング200には、X線を検出するためのX線検出器21と、X線検出器21を内部に保持する検出器ホルダ22と、検出器ホルダ22を水平方向にスライド移動可能に支持するガイドレール23と、ハウジング200に取り付けられた移動モータ24とを備えている。
【0074】
X線検出器21は、X線を検出する検出素子である半導体撮像素子を縦方向及び横方向に2次元に平面状に配列することによって構成された検出面を有するX線センサを備えている。なお、X線センサとしては、例えばMOSセンサやCCDセンサのようなX線センサが考えられるが、これらに限られず、CMOSセンサ等のフラットパネルディテクタ(FPD)やX線蛍光増倍管(XII)、その他の固体撮像素子などを適宜採用することができる。
【0075】
検出器ホルダ22は、移動モータ24の回転軸に取り付けたローラに当接している。検出器ホルダ22は、本体制御部60からの制御信号に基づいて動作する移動モータ24により駆動されて、ガイドレール23に沿って水平方向に移動する。
【0076】
図7は、検出器ホルダ22を示す斜視図である。検出器ホルダ22は、X線発生部10に対向する側に、ビーム通過孔(2次成形用スリットないしコリメータ)221,222を有する。ビーム通過孔221,222は、上述のビーム通過孔151,152のそれぞれの形状に対応しており、例えば、ビーム通過孔151を通過するX線ビームは、ビーム通過孔221でより高い精度で成形されてX線検出器21に投射される。なお、ビーム通過孔(2次成形用スリットないしコリメータ)221,222を設けた部材は、省略してもよい。
【0077】
X線検出器21は、方形のビーム通過孔151に対応して方形に撮像素子が配列されて構成された検出素子群211と、縦長のビーム通過孔152に対応するように縦長に撮像素子が配列されて構成された検出素子群212とを備えている。X線検出器21は、検出器ホルダ22が形成するスロット224の内部に挿入される。
【0078】
スロット224にX線検出器21がセットされると、略正方形のビーム通過孔221の背後位置に、略正方形の検出素子群211が配置される。また、ビーム通過孔222の背後位置に検出素子群212が配置される。X線CT撮影時には、検出素子群211がビーム通過孔151を通過したX線に照射される位置に移動するように、また、パノラマ撮影時には、検出素子群212がビーム通過孔153を通過したX線に照射される位置に移動するように、検出器ホルダ22が移動制御される。
【0079】
なお、本実施形態ではX線検出器21に検出素子群211,212を設けているが、検出素子群211のみを設けて、X線CT撮影およびパノラマ撮影において、ビーム通過孔151およびビーム通過孔153の一方が適宜選択され、そして同一の検出素子群211でX線が検出されるように構成してもよい。その際、X線で照射される範囲のみの素子を読み出すように制御することで、投影データである画像信号の送信効率を向上することができる。
【0080】
図8は、X線CT撮影装置100の構成を示すブロック図である。図8に示すように、旋回用モータ60R、X軸モータ60X、Y軸モータ60Y、及び被写体保持部421は、所定位置の被写体M1に対して支持部30を相対的に移動させる駆動源となる駆動部65を構成している。そして駆動部65及び被写体保持部421は、X線管13を含むX線発生部10及びX線検出器21を含むX線検出部20を、被写体M1に対して相対的に移動させる移動機構として機能する。駆動部65は支持部30を旋回駆動する旋回駆動部の一例である。
【0081】
本体制御部60は、駆動部65を制御するプログラムPG1を含む各種制御プログラムを実行するCPU601と、ハードディスク等の固定ディスクで構成され、各種データやプログラムPG1を記憶する記憶部602と、ROM603と、RAM604とを、バスラインに接続した一般的なコンピュータとしての構成を有している。
【0082】
なお、本体制御部60に関する操作、表示は操作表示部600でも可能である。なお、本体制御部60および操作表示部600の操作機能および表示機能は、重複させてもよいが、操作表示部600に特有の操作、表示をさせるようにしてもよい。また、操作表示部600にも制御機能を持たせて、本体制御部60の制御の一部を分担させてもよいし、操作表示部600に本体制御60自体を設けるようにしてもよい。
【0083】
CPU601は、記憶部602に記憶されたプログラムPG1をRAM604上で実行することによって、各種の撮影モードに合わせて、X線発生部10を制御するX線発生部制御部601a及びX線検出部20を制御するX線検出部制御部601bとして機能する。
【0084】
なお、本体制御部60を構成するCPU601と情報処理本体部80を構成するCPU801とは、総合的に制御系を構成している。
【0085】
本体制御部60に付加されている操作パネル62は、複数の操作ボタン等で構成されている。なお、操作パネル62に代わる、もしくは操作パネル62に併用される入力装置としては、操作ボタンのほか、キーボード、マウス、タッチペン等を採用することができる。また、音声による指令をマイク等で受け付けて認識するようにしてもよい。つまり、操作パネル62は操作手段の一例である。したがって、操作手段としては、操作者の操作を受け付けることができるのであればどのようなものでも構わない。また、表示部61をタッチパネルで構成することも可能であり、この場合、表示部61が操作パネル62の機能の一部または全部を備えることとなる。
【0086】
表示部61には、本体部1の操作に必要な各種情報を文字や画像等で表示される。ただし、情報処理装置8の表示部81に表示されている表示内容を、表示部61にも表示されるようにしてもよい。また、表示部61に表示される文字や画像の上でマウス等によるポインタ操作等を通して本体部1に各種の指令ができるようにしてもよい。
【0087】
本体部1は、操作パネル62、あるいは情報処理装置8からの指令に従って、被写体M1の撮影対象領域(生体器官等)R1を局所的にCT撮影する。また、本体部1は、各種指令や座標データ等を情報処理装置8から受信する一方、撮影して取得したX線の投影データを情報処理装置8に送信する。
【0088】
情報処理本体部80は、各種プログラムを実行するCPU801と、ハードディスク等の固定ディスクで構成され、各種データやプログラムPG2を記憶する記憶部802とROM803と、RAM804とを、バスラインに接続した一般的なコンピュータとしての構成を有している。
【0089】
CPU801は、記憶部802に記憶されたプログラムPG2をRAM804上で実行することによって、操作部82で指定した領域の座標を算出して、撮影対象領域R1を特定する撮影領域特定部801aと、投影データから三次元データを再構成する等の演算処理を行う演算処理部801bとして機能する。
【0090】
なお、プログラムPG1,PG2は、所定のネットワーク回線等を介して本体制御部60または情報処理本体部80が取得するようにしてもよいし、あるいは可搬性のメディア(CD−ROM等)に保存されたプログラムPG1,PG2を、所定の読取装置にて読み取ることで取得する様に構成してもよい。
【0091】
本実施形態では、オペレータにより、操作パネル62または操作部82を介して、撮影対象領域R1が指定される。具体的には、生体の一部又は全体を表示する画面(イラストやパノラマ画像等)が表示部61または表示部81に表示され、オペレータが撮影したい領域を操作パネル62または操作部82を介して指定することで、撮影対象領域R1が指定される。なお、画面上に領域特定用の画面を表示することなく、操作パネル62もしくは操作部82から部位の名称の入力やコード入力等で直接部位の指定を行うようにしてもよい。
【0092】
<1.3.X線CT撮影装置の動作>
次に、X線CT撮影装置の動作について説明する。なお、以下に説明するX線CT撮影装置100の動作は、特に断らない限り、本体制御部60または情報処理本体部80によって制御されるものとする。
【0093】
図9は、X線CT撮影装置100によるX線CT撮影の動作を示す概念図である。なお図9は、X線発生部10、X線コーンビームB1、X線検出部20などを支持部30の旋回軸31の軸方向から見た様子を示している。
【0094】
本体制御部60は、オペレータから特定の撮影対象領域R1についてX線CT撮影を行うよう指示があった場合、旋回用モータ60R等の駆動部65を駆動することによって、支持部30を旋回させる。このとき、図9に示すように、X線発生部10からX線コーンビームB1が出射されるが、このコーンビームB1が、中心C1を回転中心として回転するように、すなわちX線発生部10とX線検出部20が中心C1を回転軸として回転するように、支持部30が旋回する。
【0095】
X線コーンビームB1が中心C1を回転中心に回転する間、常にX線照射されて撮影される領域がX線CT撮影の撮影対象領域R1である。なお、被写体M1の位置付けする際には、オペレータが撮影したい領域(関心領域)がこの撮影対象領域となるように、支持部30に対する被写体M1の相対的な位置が適宜調整される。
【0096】
ここで、撮影対象領域R1の全体を一定の拡大率で撮影するためには、X線発生部10と中心C1とX線検出部20との距離を、照射開始時から照射終了時まで維持する必要がある。そのため、X線CT撮影の際には、本体制御部60は、X軸モータ60X及びY軸モータ60Yを制御して中心C1を軸に旋回軸31を回転運動させ、同時に旋回用モータ60Rを制御して支持部30を回転させることによって、中心C1を回転中心としてX線コーンビームB1を回転させる。
【0097】
なお、Xテーブル35X、Yテーブル35Yを駆動して、旋回軸31を特定の位置まで移動させて停止させた後、支持部30を旋回軸31の軸周りに旋回させてX線発生部10とX線検出部20を回転させてもよい。
【0098】
なお、X線CT撮影を安定して行うためには、支持部30が一定の旋回速度となるまで加速するための助走区間が設けられることが望ましい。そこで、本実施形態では、例えばX線発生部10について、図9に示す位置L0よりも少し手前から回転移動を開始させる。なお、この助走区間を移動する間のX線発生部10の移動軌跡は、必ずしもX線CT撮影時の軌道を構成する真円上の位置に設定される必要はない。
【0099】
X線CT撮影装置100は、X線コーンビームB1を回転させている間、あらかじめ定められた回数分、X線検出部20にて投影データを収集する。具体的には、本体制御部60が旋回用モータ60Rを監視して、支持部30が所定の角度分旋回する毎に、X線検出器21でのX線の検出データを投影データとして収集する。本実施形態では、支持部30が旋回する間、X線コーンビームB1を撮影対象領域R1に常に照射するように構成されている。
【0100】
ただし、X線の照射方法は、このようなものに限られるものではない。例えば、X線検出部20にてX線を検出するタイミングで、X線発生部10がX線コーンビームB1を撮影対象領域R1に向けて出射するように構成されていてもよい。この場合、被写体M1に対して、X線が間欠的に照射されることとなるため、X線の被曝量を低減することができる。
【0101】
収集された投影データは、逐次情報処理装置8に転送され、例えば記憶部802に記憶される。そして収集された投影データは、演算処理部801bにおいて加工され、三次元データに再構成される。演算処理部801bにおける再構成の演算処理は、所定の前処理、フィルタ処理、逆投影処理等で構成される。これらの演算処理については、周知技術を含む各種演算処理技術を適用することが可能である。
【0102】
また、図9に示すように、本実施形態では、1回のX線CT撮影におけるX線コーンビームB1の回転中心C1周りの回転角は、180度にX線コーンビームB1の回転方向の広がりの角度(以下、ファン角θ1と称する。)を加算した角度(ただし、360度未満)となっている。X線コーンビームB1の回転中心C1周りの回転角は、中心C1を回転軸とするX線発生部10とX線検出部20の軸周りの回転角でもある。
【0103】
X線発生部10は、位置L0から位置L1まで回転移動する。なお、ここでいうファン角θ1は、X線発生部10から出射したX線コーンビームB1が撮影対象領域R1の全部を通るとともに、X線検出部20にて検出可能な範囲の該X線コーンビームB1の広がりの角度である。換言すると、X線発生部10とX線検出部20とが、X線CT撮影の開始から終了までの間、180度にファン角θ1を加えた角度分回転する。位置L0、L1は厳密にはX線管13のX線が発生する原点である焦点の位置である。
【0104】
ここで、投影角の概念について説明する。本実施形態における投影角とは、X線の照射開始時点(具体的には、X線発生部10が位置L0に到達した時点)における、撮影対象領域R1内の特定の地点を通過X線の進行方向に対して、X線CT撮影の各時点における、上記特定の地点を通過するX線の進行方向が成す角度をいう。以下に、上記特定の地点を、X線コーンビームB1の回転中心である中心C1上の地点PS1とした場合を具体例に挙げて説明する。
【0105】
X線コーンビームB1の照射開始時点においては、地点PS1において、位置L0のX線発生部10からX線検出部20に向けて進行方向DR1のX線が通過する。ここで、1回のX線CT撮影においてN回分の投影データが取得されるとして、n番目(ただし、nは1〜Nまでの整数値)に投影データが取得される時点Tnにおいて、地点PS1を通過するX線の進行方向DRnとする。進行方向DR1に対してこの進行方向DRnの成す角度が、投影角PRnとなる。
【0106】
言い換えると、X線コーンビームB1は中心C1を回転中心として回転しつつ撮影対象領域R1を照射するのであるが、撮影対象領域R1内の特定の地点(例えば、地点PS1)について、旋回軸31の軸方向から見て、基準となる直線(具体的には、進行方向DR1に平行な直線LS)に対し、或る時点におけるX線検出部20に投影される上記特定の地点に入射する(もしくは、通過する)X線の成す角度が投影角となる。具体的に、X線発生部10が各位置L0,L1,L2に在るときのX線の投影角PRnは、位置L0で投影角0度、位置L2で投影角180度、位置L1で投影角(180度+θ1)となる。
【0107】
仮に、X線コーンビームB1が1度ずつ回転する(すなわち、支持部30が1度ずつ回転する)ごとに1つの投影データが取得されるものと仮定すると、地点PS1についての上記投影角PRnが1度増加するごとに、1つの投影データが取得されることとなる。そして、図9に示すように、X線発生部10が位置L0から位置L2にまで移動すると、地点PS1における投影角が180度となる。すなわち、X線発生部10が位置L2にあるとき、照射開始時点(X線発生部10が位置L0にある時点)でのX線撮影を含めて、181個の投影データが取得されることとなる。
【0108】
ここで、仮にX線CT撮影におけるX線発生部10の回転角を180度とした場合、X線発生部10は、位置L0から位置L2まで回転する。この場合、位置L0から出射されたX線コーンビームB1の外縁と撮影対象領域R1の外縁との交点P1については、投影角180度分よりも小さい範囲の方向からしかX線の照射を受けていない。投影データにおいて、投影角180度分の範囲の各方向からX線の照射を受けていない点が撮影対象領域R1に存在する場合、再構成した三次元データから、高精度なCT画像を生成することが困難となる。
【0109】
これに対し、本実施形態の如く、X線CT撮影におけるX線発生部10の回転角を180度にファン角を加えた角度とした場合、図9に示す交点P1についても、投影角180度分の各方向からX線を照射することができる。すなわち、撮影対象領域R1内の全ての点について、投影角180度分の各方向からX線照射した投影データを収集することができるため、三次元データから、撮影対象領域R1内の生体器官等の輪郭や形状が鮮明な高精度のCT画像を生成することが可能となる。
【0110】
なお、本実施形態では、上述したように、撮影対象領域R1内の全ての点について、投影角180度分の各方向からX線を照射したデータのみから三次元データを再構成する。したがって、図9に示すようなX線コーンビームB1を照射し続けた場合、投影角が180度を超える各方向からX線照射した投影データを取得する部分が生じる。そこで、次に述べる制御を実行することにより、余計なX線照射を排除する。
【0111】
図10は、X線CT撮影時において、X線コーンビームB1の照射範囲を制御する様子を示す図である。なお図10の(a)〜(e)は、X線CT撮影の状況を時系列順に並べて図示したものであり、(a)はX線コーンビームB1の回転中心C1を中心にした、位置L0を起点とするX線発生部10の回転の回転角が、(180°−θ1)であるとき、(b)は回転角が(180°−θ1)以上180°以下のとき、(c)は回転角が180°のとき、(d)は回転角が180°以上(180°+θ1)以下のとき、そして(e)は回転角が(180°+θ1)のときをそれぞれ図示している。X線発生部10は支持部30で回転されるので、X線発生部10の回転角は支持部30の旋回角でもある。
【0112】
図10(a)に示すように、X線発生部10が撮影対象領域(X線CT撮影領域)R1の周りを所定方向(ここでは右回り)に位置L0から位置L01まで回転移動しつつ、撮影対象領域R1にX線コーンビームB1を照射すると、投影角180度分丁度(投影角が0度から180度まで)の範囲の各方向からのX線照射が完了する地点P2が撮影対象領域R1に生じる。ここで、位置L01は、幾何学的に、回転角が180度からファン角θ1を減算した値であり、また、地点P2は、位置L01から出射されたX線コーンビームB1の回転方向の外縁と撮影対象領域R1の外縁の交点である。
【0113】
より一般化すると、撮影対象領域R1のうち、X線発生部10の位置L0と照射中の各位置とを結んだ線分よりも、X線発生部10が移動する側の部分(図10(a)〜(e)中、斜線ハッチングで示す領域)については、投影角180度分の方向のX線の照射が完了していることとなる。
【0114】
例えば図10(b)に示すように、X線発生部10が位置L02にある場合には、撮影対象領域R1のうち、位置L0と位置L02とを結んだ線分LN1よりも外側の領域R2については、投影角180度分の各方向のX線照射が既に行われている。そこで、本実施形態では、図10(b)に示すように、領域R2についてはX線が照射されないように、X線コーンビームB1の照射範囲が縮小制御される。なお、線分LN1は、位置L02、L03、・・・といったように、位置L01以降のX線発生部10の位置βと位置L01のX線発生部10の位置αを結ぶ線分である。
【0115】
この縮小制御は、X線発生部制御部601aが、図5に示すX線発生部10のビーム成形板15をスライド移動させることによって、ビーム通過孔151を通過するX線が徐々に遮断されることで実現される。またX線コーンビームB1の遮蔽度合については、X線発生部10が位置L01にあるときを基準(=回転角がゼロ)として、X線発生部10の回転角をωとしたとき、X線コーンビームB1のファン角がθ1から(ω/2)を減算した値となるように制御される。
【0116】
別の角度からこの制御を説明すると、位置L01のX線発生部10の位置をαとし、位置L02、L03、・・・のように、位置L01以降のX線発生部10の位置をβとし、位置L0の位置のX線発生部10の位置をγとする。∠αγβ(角αγβ)を角度ψとすると、X線コーンビームB1のファン角が(θ1−ψ)の値となるように制御される。また、円周角の定理により、∠αγβ(=ψ)の値は、∠αC1β(=ω)の値の半分であるω/2となる。
【0117】
例えば、図10(c)に示す状態では、X線発生部10の位置L01からの回転角がθ1(=一切規制を受けないX線コーンビームB1のファン角)であるため、X線コーンビームB1のファン角が(θ1/2)(=θ1−(θ1/2))となる。そしてX線発生部10が、図10(d)に示す位置L04を通過して図10(e)に示す位置L1まで到達すると、X線コーンビームB1が完全に遮断される。このようにして、撮影対象領域R1内の全ての点について、投影角180度分の各方向からX線照射した投影データのみを収集することができる。
【0118】
以上のように、本実施形態では、X線照射の終了時点に到達する前の時点において、X線コーンビームB1の照射範囲を縮小するように制御する。本実施形態は、X線コーンビームB1の照射の終了時点が近づくにつれて、支持部30の旋回角に応じて、次第にX線コーンビームの照射範囲を縮小させる場合の制御である。
【0119】
以上のように、X線の照射範囲を回転角に応じて規制する制御を行うことによって、撮影対象領域R1内のいずれの点についても、投影角180度分丁度の範囲の各方向のみからX線照射した投影データを取得することができる。なお、この投影角180度分丁度の範囲とは、途中で中断することのない、連続した範囲(0度〜180度)の角度である。このような投影データから三次元データを再構成した場合、投影角180度分を超える方向からX線照射した投影データについての補正処理を必要としなくてよい。したがって、CT画像におけるアーチファクトの発生を低減でき、CT画像の画質を向上することができる。これにより、画像診断を正確に行うことが可能となる。
【0120】
<2.第2実施形態>
上記実施形態では、X線照射の終了時点が近づくにつれて、X線コーンビームB1の照射範囲を縮小するように制御しているが、X線の照射範囲の制御の仕方はこのようなものに限られるものではない。なお、以下の説明において、第1実施形態と同様の機能を有する要素については適宜同一符号を付して、その説明を省略する。
【0121】
図11は、第2実施形態におけるX線CT撮影時において、X線コーンビームB1の照射範囲を制御する様子を示す図である。なお図11の(a)〜(f)は、X線CT撮影の状況を時系列順に並べて図示したものである。
【0122】
X線コーンビームB1は、(e)や(f)で示す段階ではθ1のファン角を持つのであるが、(e)の段階にいたるまでは、θ1よりも小さいファン角であり、ファン角が照射開始時点でゼロの状態からX線発生部10の回転が進むにしたがって増大する。
【0123】
図11(a)は中心C1を中心にした、L0を起点とするX線発生部10の回転の回転角が0°のとき、(b)は回転角が0度以上θ1以下のとき、(c)は回転角がθ1のとき、(d)は回転角がθ1以上(2・θ1)以下のとき、そして(e)は回転角が(2・θ1)のとき、(f)は回転角が(180°+2・θ1)のときをそれぞれ図示している。また、撮影対象領域R1に対して、細かいドットで示した範囲がX線コーンビームB1で照射する範囲である。
【0124】
図11(a)は、X線発生部10が撮影対象領域R1に対するX線照射の開始時点の位置L0にある状態を示している。このとき、ビーム成形板15は、X線管13から出射されたX線を完全に遮断する位置に配置されており、X撮影対象領域R1に対してX線コーンビームB1が照射されないように規制されている。
【0125】
撮影対象領域R1のうち、X線発生部10の位置とX線照射の終了位置(位置L1)とを結んだ線分LN2(図11中、一点鎖線で示す。)が通過する部分について、X線の照射を行うように、X線コーンビームB1の照射範囲を増大させていく。具体的には、X線発生部10の回転に伴って、ビーム成形板15が移動され、ビーム通過孔151を介して次第にX線の通過量が増大される。なお、線分LN2は、位置L01A、L02A、・・・のように、位置L0以降のX線発生部10の位置β1と位置L1のX線発生部10の位置α1を結ぶ線分である。
【0126】
図11(b)は、具体的にはX線発生部10が位置L0から(θ1)/2の角度分回転して位置L01Aに到達した状態を示している。このとき、X線コーンビームB1のファン角は、幾何学的に回転角の半分である(θ1/4)となる。また図11(c)は、X線発生部10が位置L0からθ1の角度分回転して位置L02Aに到達した状態を示している。このとき、X線コーンビームB1のファン角は(θ1/2)となる。
【0127】
位置L0のX線発生部10の位置をα1とし、位置L01A、L02A、・・・のように、位置L0以降のX線発生部10の位置をβ1とし、位置L1の位置のX線発生部10の位置をγ1とする。そして、∠α1γ1β1(角α1β1γ1)を角度μとすると、X線コーンビームB1のファン角は、μの値となるように制御される。ここで、位置L0と位置L1とを結ぶ線LN2は、撮影対象領域R1である円の接線となっている。したがって、図11(b)、(c)に示すように、∠α1γ1β1=∠β1γ1α1=μとなる。
【0128】
そして図11(d)は、具体的にはX線発生部10が位置L0から(θ1+(θ1/2))の角度分回転して位置L03Aに到達した状態を示している。このとき、X線コーンビームB1のファン角は、((θ1/2)+(θ1/4))となる。このときも、X線コーンビームB1のファン角がμの値となるように制御される。
【0129】
さらに図11(e)は、X線発生部10が位置L0から(2・θ1)の角度分回転して位置L04Aに到達した状態を示している。このとき、X線コーンビームB1のファン角はθ1となり、撮影対象領域R1の全範囲にX線が照射されることとなる。そして図11(f)は、X線発生部10が位置L0から(回転角180°+θ1)の角度分回転して位置L1に到達した状態を示している。X線発生部10は、位置L04Aから位置L1に到達するまでの間、ファン角θ1のX線コーンビームB1を撮影対象領域R1に照射し、位置L1に到達した後、X線の照射を終了する。
【0130】
以上のようにX線コーンビームB1の照射開始時点からX線の照射範囲の制御を行った場合においても、第1実施形態と同様に、1回のX線CT撮影において、撮影対象領域R1内の全ての点についても、投影角180度分丁度の範囲の各方向からX線の照射を行った投影データを取得することができる。
【0131】
X線コーンビームB1の遮蔽度合の制御については、第1実施形態におけるX線発生部10の回転角ωに合わせて、ファン角をω分遮蔽することと同様の制御を応用することができる。第1実施形態ではX線照射の終了時点において制御しているのに対し、第2実施形態ではX線照射の開始時点の制御である点で異なる。
【0132】
第2実施形態に関する以上の説明は、X線コーンビームB1の照射の開始時点において、支持部30の旋回角に応じて、次第にX線コーンビームB1の照射範囲を拡大させる場合の説明である。
【0133】
なお、第1実施形態ではX線照射の終了時点が近づくにつれて、X線コーンビームB1の照射範囲を縮小するように制御し、第2実施形態ではX線照射の開始時点から、X線コーンビームB1の照射範囲を増大するように制御しているが、照射の開始時点でX線コーンビームB1の照射範囲を増大し、終了時点で照射範囲を縮小するように制御しても構わない。この場合、照射開始時からX線発生部10が回転角θ1分回転するまでの間(すなわち、回転角が0°の位置(図11(a)の位置L0)からθ1の位置(図11(c)の位置L02A)に到達するまでの間)と、照射終了時までにX線発生部10が回転角θ1分回転するまでの間(すなわち、回転角が180°(図10(c)の位置L03)〜(180°+θ1)(図10(e)の位置L1)までの間)とにおいて、X線の照射範囲が制御される。
【0134】
より具体的には、照射開始時には、X線コーンビームB1の照射がない状態から出発し、X線発生部の回転角が0°の位置からθ1の位置に到達するまでの間、X線発生部10が回転した回転角度分だけX線コーンビームB1のファン角を増大しつつX線コーンビームB1を照射させる制御を行う。これにより、X線発生部10がθ1回転する間に、ファン角がゼロからθ1まで増大する。その後は、ファン角θ1のX線コーンビームB1を撮影対象領域に照射する。そして、照射終了時には、X線発生部10が、回転角が180度の位置から(180°+θ1)の位置に到達するまでの間、回転した回転角度分だけ、X線コーンビームB1のファン角を減少させる制御を行う。これにより、X線発生部が回転角θ1分回転する間に、ファン角がθ1からゼロまで減少する、すなわちX線コーンビームB1の照射が終了することとなる。このような制御を行うことによっても、投影角180度分の投影データを得るだけのX線照射のみを行うことができる。
【0135】
さらに、照射開始時と照射終了時において、X線コーンビームB1の照射制御する方法は、上記のようなものに限られない。図12は、照射開始時と照射終了時において、X線コーンビームB1の照射範囲を制御する様子を示す図である。
【0136】
図12では、X線発生部10が中心C1を回転軸にして照射開始位置L0から回転角T1分回転して、位置L02Bに到達するまでの間に、ファン角をゼロからθ1まで一定の割合で増大させるとともに、位置L03Bから回転角T2分回転してX線の照射終了位置である位置L1に到達するまでの間に、X線コーンビームB1のファン角をθ1からゼロにまで一定の割合で減少させる制御を行っている。
【0137】
なお、図12に示す位置L01Bは、X線コーンビームB1の照射範囲が増大している途中のX線発生部10の位置であって、X線コーンビームB1の全照射の状態(ファン角がθ1の状態)に対して、X線発生部10の回転方向の反対側半分(鉛直方向上方から見たとき、X線発生部10からX線検出部20に向かって左側半分であり、ファン角がθ1/2。)のみの照射が行われるときの位置を示している。さらに、位置L04Bは、X線コーンビームB1の照射範囲が減少している途中の状態のX線発生部10の位置であって、全照射の状態に対して、X線発生部10の回転方向側半分(鉛直方向上方から見たとき、X線発生部10からX線検出部20に向かって左側半分であり、ファン角がθ1/2。)のみの照射が行われるときの位置を示している。
【0138】
図12に示すように、X線発生部10が位置L02Bから、回転角(180°−θ1)分回転して、位置L03Bに到達した時点で、図10(a)に示す地点P2と同様に、地点P2Bについては、投影角180度分の範囲の各方向からX線の照射が完了する。この、位置L0から位置03BまでのX線発生部10の回転角(∠L0,C1,L03B)は、∠L02B,C1,L03Bが180°−θ1であることから、(180°−θ1+T1)となる。
【0139】
また、位置L0から位置L03BまでのX線発生部10の回転角は、位置L0から位置L1までの回転角(180°+θ1)から、回転角T2を減算した値(=180°+θ1−T2)となる。以上をまとめると、以下の等式が成立する。
∠L0,C1,L03B=180°−θ1+T1=180°+θ1−T2・・・(1)
また、上記式(1)より、以下の等式が導かれる。
T2=2・θ1−T1・・・(2)
【0140】
上記式(2)によると、X線照射開始地点である位置L0からX線発生部が回転角T1分回転するまでの間、回転方向の反対側からファン角をゼロからθ1まで一定の割合で増大させた場合、X線発生部10が位置L0から回転角(180°−θ1+T1)分回転した位置L03Bから回転角(2・θ1−T1)(=T2)分回転して位置L1に到達するまで、回転方向の反対側からファン角をθ1からゼロまで一定の割合で減少させる。これにより、撮影対象領域R1内の全ての点について、投影角180°分丁度のX線照射した投影データのみを取得することができる。
【0141】
ここで、第1実施形態で説明した制御方法は、T1=0,T2=2・θ1に相当するものとなっており、第2実施形態で説明した制御方法は、T1=2・θ1,T2=0の場合に相当するものとなっている。
【0142】
なお、X線コーンビームB1のファン角を、必ずしも一定の割合で増大または減少させる必要はなく、投影角180°分丁度の照射制御ができる範囲において、適宜変更することができる。
【0143】
<3.第3実施形態>
上記第1、第2実施形態では、X線発生部制御部601aがX線コーンビームB1の照射範囲を制御することによって、取得する投影データの範囲を制限している。しかし、投影データの取得範囲を制限する技術は、上記のものに限られるものではない。
【0144】
本実施形態では、撮影対象領域R1に対するX線コーンビームB1の照射範囲を制御するのではなく、X線検出部制御部601bがX線の検出可能範囲を制御することによって、投影データの取得範囲を制限する。
【0145】
図13は、第3実施形態におけるX線CT撮影時において、X線コーンビームB1の検出範囲を制御する様子を示す図である。なお、図13の(a)〜(c)は、X線CT撮影の状況を時系列順に並べて図示したものである。図13中、X線発生部10の位置L0,L01,L03,L1については、図10中に示した位置と一致している。
【0146】
図13に示すように、本実施形態のX線CT撮影においても、第1実施形態と同様にX線発生部10は、撮影対象領域R1の中心となるX線コーンビームB1の回転中心C1を回転軸として、回転角にして180度にファン角θ1を加えた角度分回転移動しつつ、X線コーンビームB1を撮影対象領域R1に照射する。ただし、X線発生部10については、X線コーンビームB1が撮影対象領域R1の全部に常に照射され、また、X線検出部20については、撮影対象領域R1のうち、投影角180度分の各方向についてのX線の照射が完了した部分については、その部分を通過したX線を検出しないように制御される。
【0147】
具体的に、図13(a)に示すように、X線発生部10が位置L01に到達すると、地点P2については、すでに投影角180度分の各方向からX線を照射して得た投影データが取得される。したがって、地点P2については、これ以上投影データを取得する必要がないため、X線検出部20は、この部分のX線の検出機能を無効化する。無効化される対象となるX線の照射範囲は、撮影対象領域R1に斜線で示した範囲である。
【0148】
さらに図13(b)に示すように、X線発生部10が位置L03に到達した時点で、撮影対象領域R1のうち、位置L03と位置L0とを結んだ線分の右側の領域R3については、投影角180度分丁度の範囲の各方向からX線照射した投影データの取得が既に完了する。したがってこの時点では、この領域R3を透過するX線を検出する部分の機能が無効化されることとなる。そして図13(c)に示すように、X線発生部10が位置L1に到達すると、X線の検出可能範囲(図13中、太線で示す。)が消失し、X線の検出が行われなくなる。
【0149】
第3実施形態に関する以上の説明は、X線コーンビームB1の照射の終了時点に到達する時点において、支持部30の旋回角に応じて、次第に検出面におけるX線の検出範囲を縮小させる場合の説明である。
【0150】
以上のように、X線検出部20の検出面の検出可能範囲を制限することによっても、撮影対象領域R1内のいずれの点についても、投影角180度分丁度の範囲の各方向からX線照射して得た投影データのみを取得することができる。なお、本実施形態では、X線CT撮影において、X線コーンビームB1が撮影対象領域R1に常に照射されることとなる。したがって、X線の被曝量を低減するという観点では、第1もしくは第2実施形態の方が有利である。
【0151】
<4.第4実施形態>
第3実施形態では、X線CT撮影の終了時点に近づくにつれて、X線検出部20によるX線の検出可能範囲を制限する制御を行っているが、検出可能範囲の制御の仕方はこれに限られるものではない。
【0152】
本実施形態では、X線コーンビームB1の照射開始時点から、X線の検出可能範囲を制御することによって、撮影対象領域R1のいかなる点についても、投影角180度分丁度の範囲の各方向からX線照射した投影データのみを取得するように構成されている。
【0153】
図14は、第4実施形態におけるX線CT撮影時において、X線コーンビームB1の検出範囲を制御する様子を示す図である。なお、図14の(a)〜(c)は、X線CT撮影の状況を時系列順に並べて図示したものである。図14中、X線発生部10の位置L0,L02A,L04A,L1については、それぞれ図11中に示す位置と一致している。
【0154】
本実施形態におけるX線CT撮影では、第3実施形態と同様に、X線発生部10は、撮影対象領域R1の中心となるX線コーンビームB1の回転中心C1を回転軸にして、回転角180度にファン角θ1を加えた角度分回転移動しつつ、ファン角がθ1のX線コーンビームB1を撮影対象領域R1に照射する。ただし、本実施形態では、図14(a)に示すように、X線照射の開始時点では、X線検出部20は、X線を検出しないように制御される。X線発生部10が回転移動して、位置L04Aに到達するまでの間に、次第にX線検出部20のX線の検出可能範囲(図14中、太線で示す。)が拡大される。具体的には、撮影対象領域R1のうち、位置L1と、X線検出部20の位置とを結んだ線分の左側の領域R4を透過するX線を検出する部分について、X線の検出機能が有効化される。
【0155】
このように、X線の照射開始時点から、支持部30の旋回角に応じて、検出面におけるX線の検出可能範囲が次第に拡大するようにX線検出部20を制御することによって、撮影対象領域R1のいずれの点についても、投影角180度分丁度の範囲の各方向からX線照射した投影データのみを取得することができる。
【0156】
第4実施形態に関する以上の説明は、X線コーンビームB1の照射の開始時点において、支持部30の旋回角に応じて、次第にX線検出部20の検出面におけるX線の検出範囲を拡大させる場合の説明である。
【0157】
また、第3、第4実施形態で説明したX線検出部20の制御は、第1、第2実施形態において、X線発生部10から照射されるX線コーンビームB1の検出を行っているX線検出器21の検出範囲のみを有効化することと等価である。したがって、第2実施形態で詳細に説明したように、X線の照射開始時点においてX線の検出範囲を増大させ、またX線の照射終了時点に到達する前の時点において、X線の検出範囲を狭めるようにX線検出部20を制御することによっても、撮影対象領域R1のいずれの点について、投影角180度分丁度の範囲の各方向からX線照射した投影データのみを取得することができることは言うまでもない。
【0158】
<5.第5実施形態>
上記実施形態では、X線発生部10またはX線検出部20を制御して、投影データの取得範囲を調整することにより、撮影対象領域R1の全ての点について、投影角180度分丁度の範囲の各方向からX線を照射して得た投影データのみを再構成の演算処理に用いるようにしている。しかし、演算処理する投影データの範囲を制限する技術は、このようなものに限られるものではない。
【0159】
図15は、第5実施形態に係る情報処理本体部80のCPU801Aによって実現される機能ブロックを示す図である。本実施形態のX線CT撮影では、第1〜第4実施形態でのX線CT撮影と同様に、X線発生部10が回転角180度にファン角θ1を付加した角度分回転移動しつつ、撮影対象領域R1にX線コーンビームB1を照射する。ただし、X線発生部10は、常にファン角θ1のX線コーンビームB1を撮影対象領域R1に照射し、X線検出部20は、撮影対象領域R1内の全ての点を透過するX線を検出する。これにより、X線の投影データを収集されるが、この投影データには、投影角180度分の範囲を超える方向からX線を照射して得られた投影データ(以下、「余剰投影データ」と称する。)が含まれている。余剰投影データの範囲は、第1から第4の実施形態より自明なので、詳述は省略する。
【0160】
図14に示すように、本実施形態情報処理本体部80は、CPU801の代わりに、プログラムPG2にしたがって動作することにより、データ除外部801cとして機能するCPU801Aを備えている。このデータ除外部801cは、上述の余剰投影データを、全投影データから排除する機能を有する。したがって、データ除外部801cによって取得される投影データは、撮影対象領域R1の全ての点について、投影角180度分丁度の範囲の各方向からX線を照射して得た投影データのみが含まれることとなる。
【0161】
このようにして、投影角180度分丁度の各方向からの前記X線コーンビームを照射して得られる投影データのみがを再構成演算の処理対象となる。
【0162】
本実施形態においても、このような投影データから、演算処理部801bが三次元データを再構成することによって、アーチファクトの発生が低減されたCT画像を生成することが可能となる。また、本実施形態の場合、第1〜第4実施形態で説明したX線発生部10またはX線検出部20の制御が不要となるため、装置構成を簡略化することができ、製造コストを抑制することが可能となる。
【0163】
<6.変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0164】
例えば上実施形態では、上記実施形態では、被写体保持部421が被写体M1である被検者を立位姿勢で所定位置に固定させるように構成されているが、例えば被写体M1を坐位姿勢で固定できる椅子等で構成されていてもよい。
【0165】
また、上記実施形態では、XYテーブル35で構成される水平移動機構に旋回軸31を取り付けることによって、支持部30を被写体M1に対して水平方向に移動させているが、例えば、被写体保持部421を椅子等で構成し、これを水平移動機構に接続することによって、支持部30に対して被写体M1を相対的に移動させてもよい。また、旋回軸31及び被写体保持部421のそれぞれに、水平移動機構を設けて、それぞれを水平方向に移動可能に構成してもよい。
【0166】
また、上記実施形態のX線CT撮影装置100は、床に垂直に立設する構造を有しているが、被写体M1である被検者が寝た姿勢でX線CT撮影が行われる構造に応用することが可能であることは言うまでもない。
【0167】
また、上記実施の形態に示した機能ブロックは、ソフトウェアにより実現されると説明したが、これらの機能ブロックの一部または全部を専用の論理回路によりハードウェアとして実現してもよい。
【0168】
さらに上記実施形態および変形例にて説明した各構成は、互いに矛盾の生じない限り、適宜組み合わせたり、または省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0169】
100 X線CT撮影装置
10 X線発生部
13 X線管
14 X線発生器
15 ビーム成形板
151,152,153 ビーム通過孔
20 X線検出部
21 X線検出器
211,212 検出素子群
30 旋回アーム
31 旋回軸
40 昇降部
60 本体制御部
601 CPU
601a X線発生部制御部
601b X線検出部制御部
60R 旋回用モータ
60X X軸モータ
60Y Y軸モータ
61 表示部
62 操作パネル
65 駆動部
70 防X線室
8 情報処理装置
80 情報処理本体部
801,801A CPU
801b 演算処理部
801c データ除外部
B1 X線コーンビーム
C1 中心(X線コーンビームB1の回転中心)
M1 被写体
PG1,PG2 プログラム
R1 撮影対象領域
θ1 ファン角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に向けてX線コーンビームを照射するX線発生部と、
前記X線コーンビームを検出するX線検出部と、
前記X線発生部と前記X線検出部とを、前記被写体を挟んで対向するように支持する支持部と、
前記支持部を旋回駆動して、前記X線発生部及び前記X線検出部を前記被写体の周りで旋回させることにより、X線CT撮影を行わせる旋回駆動部と、
前記X線CT撮影にて取得された投影データを再構成処理して三次元データを生成する演算処理部と、
を備えるX線CT撮影装置であって、
前記演算処理部が、X線CT撮影領域内のいかなる点についても、投影角180度分丁度の各方向からの前記X線コーンビームを照射して得られる投影データのみを再構成演算の処理対象とするX線CT撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線CT撮影装置において、
前記旋回駆動部が、前記X線コーンビームの回転方向に広がる角度に180度を加えた角度を回転角として、前記X線発生部及び前記X線検出部を旋回させることにより、前記X線CT撮影を実行するX線CT撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載のX線CT撮影装置において、
前記X線発生部が、開口の大きさを調整することによって、前記X線の通過を部分的に遮断し、前記X線コーンビームの照射範囲を規制する規制部を有しており、
前記X線CT撮影の際に、前記規制部の動作によって、前記CT撮影領域内の全ての点について、投影角180度分丁度の各方向から、前記X線コーンビームが照射されるX線CT撮影装置。
【請求項4】
請求項3に記載のX線CT撮影装置において、
前記規制部が、前記被写体に対するX線コーンビームの照射の開始時点において、前記支持部の旋回角に応じて、次第に前記被写体に対する前記X線コーンビームの照射範囲を拡大するように動作するX線CT撮影装置。
【請求項5】
請求項3に記載のX線CT撮影装置において、
前記規制部が、前記被写体に対するX線コーンビームの照射の終了時点に到達する前の時点において、前記支持部の旋回角に応じて、次第にX線コーンビームの照射範囲を縮小するように前記X線の通過を規制するX線CT撮影装置。
【請求項6】
請求項3に記載のX線CT撮影装置において、
前記規制部が、
前記被写体に対するX線コーンビームの照射の開始時点において、前記支持部の旋回角に応じて、次第に前記被写体に対する前記X線コーンビームの照射範囲を拡大するように動作するとともに、
前記被写体に対するX線コーンビームの照射の終了時点に到達する前の時点において、前記支持部の旋回角に応じて、次第にX線コーンビームの照射範囲を縮小するように前記X線の通過を規制するX線CT撮影装置
【請求項7】
請求項2から6までのいずれか1項に記載のX線CT撮影装置において、
前記X線CT撮影にて取得された投影データのうち、前記X線CT撮影領域内の全ての点について、投影角180度分丁度の各方向からX線を照射したデータのみを抽出して、所定の再構成演算処理を行う演算部、
をさらに備えるX線CT撮影装置。
【請求項8】
請求項2から7までのいずれか1項に記載のX線CT撮影装置において、
前記X線検出部が、X線を検出する複数の検出素子が平面状に配列された検出面を有しており、前記検出面のX線検出可能範囲を制限することによって、前記X線CT撮影領域内の全ての点について、投影角180度分丁度の各方向から前記X線コーンビームを照射した投影データを取得するX線CT撮影装置。
【請求項9】
請求項8に記載のX線CT撮影装置において、
前記X線検出部は、前記被写体に対する前記X線コーンビームの照射の開始時点において、前記支持部の旋回角に応じて、次第に前記検出面におけるX線の検出範囲を増大させるX線CT撮影装置。
【請求項10】
請求項8に記載のX線CT撮影装置において、
前記X線検出部は、前記被写体に対する前記X線コーンビームの照射の終了時点に到達する前の時点において、前記支持部の旋回角に応じて、次第に前記検出面におけるX線の検出範囲を縮小させるX線CT撮影装置。
【請求項11】
請求項8に記載のX線CT撮影装置において、
前記X線検出部は、
前記被写体に対する前記X線コーンビームの照射の開始時点において、前記支持部の旋回角に応じて、次第に前記検出面におけるX線の検出範囲を増大させるとともに、
前記被写体に対する前記X線コーンビームの照射の終了時点に到達する前の時点において、前記支持部の旋回角に応じて、次第に前記検出面におけるX線の検出範囲を縮小させるX線CT撮影装置。
【請求項12】
被写体に関するX線の投影データから三次元データを再構成する再構成処理方法において、
X線発生部及びX線検出部を、被写体を挟んで対向させた状態で前記被写体の周りに旋回させつつ、X線発生部から被写体に向けて照射されたX線コーンビームをX線検出部で検出するX線CT撮影を実行して、X線の投影データを収集するデータ収集工程と、
前記データ収集工程にて取得された投影データに対して、所定の再構成演算処理を行うことにより、三次元データを生成する演算工程と、
を有し、
前記演算工程では、X線CT撮影領域内のいかなる点についても、投影角180度分丁度の各方向からの前記X線コーンビームを照射して得られる投影データのみを演算の処理対象とする再構成処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−136027(P2011−136027A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297837(P2009−297837)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【Fターム(参考)】