説明

c−METタンパク質キナーゼ阻害剤



本発明は、c−Metタンパク質キナーゼの阻害に有用な式(I)の化合物に関する。また、本発明は、本発明の化合物を含む、薬学的に許容可能な組成物、および該組成物を増殖性障害の処置に使用する方法も提供する。また、本発明は、式Iの化合物および薬学的に許容可能な担体、アジュバント、またはビヒクルを含む医薬組成物を提供する。さらに、本発明は、治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的組成物を患者に投与する工程を含む、患者の増殖性の疾患、状態、または障害を処置する方法、またはその重症度を軽減する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、c−METの阻害剤として有用な化合物に関する。また、本発明は、本発明の化合物を含む、薬学的に許容可能な組成物、および該組成物を様々な障害の処置に使用する方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
肝細胞増殖因子(HGF)は、分散因子としても知られており、有糸分裂および細胞運動性を誘導することによって形質転換および腫瘍形成を増強する多機能性増殖因子である。さらに、HGFは、さまざまなシグナル伝達経路を介して細胞の運動性と浸潤を刺激して転移を促進する。細胞効果を生じさせるためには、HGFが、その受容体であり、受容体型チロシンキナーゼであるc−METに結合しなければならない。c−METは、広範に発現されている、50キロダルトン(kDa)のαサブユニットおよび145kDaのアルファ−サブユニットからなるヘテロ二量体タンパク質であり(非特許文献1)、かなりの割合のヒトの癌で過剰発現されており、原発腫瘍から転移へ移行する間に増幅される。c−MET過剰発現が関与する多様な癌としては、胃腺癌、腎臓癌、小細胞肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、脳癌、肝臓癌、膵臓癌、および乳癌が挙げられるが、これらに限定されない。また、c−METは、アテローム性動脈硬化症および肺線維症にも関係する。したがって、c−METタンパク質キナーゼ受容体の阻害剤として有用な化合物を開発する必要が大いにある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Maggioraら、J.Cell Physiol.,173:183−186,1997
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の化合物、およびその薬学的に許容可能な組成物は、c−METの阻害剤として有効であることが見出されている。特に、本発明の化合物は、他のキナーゼに対してc−Metの活性を選択的に阻害することができることからも明らかなように、これまでに記載されてきた化合物よりも優れている。したがって、本発明は、以下の式を有する化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を特徴とする:
【0005】
【化1】

【0006】
式中、R、R、R、R、R、およびRは、下記に定義されたとおりである。
【0007】
また、本発明は、式Iの化合物および薬学的に許容可能な担体、アジュバント、またはビヒクルを含む医薬組成物を提供する。さらに、本発明は、治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的組成物を患者に投与する工程を含む、患者の増殖性の疾患、状態、または障害を処置する方法、またはその重症度を軽減する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義および一般的用語
本明細書において、別段の指定がない限り、以下の定義が適用される。本発明の目的上、化学元素は、元素の周期律表(CAS版)、およびthe Handbook of Chemistry and Physics、第75版、1994年に従って識別されている。加えて、有機化学の一般的原理は、「Organic Chemistry」、Thomas Sorrell、University Science Books、Sausalito:1999年、および「March’s Advanced Organic Chemistry」、第5版、Smith,M.B.およびMarch,J.編、John Wiley & Sons、New York:2001年、に記載されており、これらの文献の全内容は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0009】
本明細書に記載されているように、本発明の化合物は、上記に一般的な形で説明されている置換基、または本発明の具体的なクラス、サブクラス、および種を例とする置換基など、1つ以上の置換基によって随意で置換されていてもよい。「随意で置換されている」という語句は、「置換されているか、または非置換である」という語句と同義的に使用できるものと理解されるべきである。一般的に、「置換されている」という用語は、その前に「随意で」という用語があるか否かに関わらず、所定の構造中の1つ以上の水素ラジカルが、特定の置換基のラジカルで置き換えられていることを意味する。別段の指定がない限り、随意で置換されている基は、その基において置換可能な位置のそれぞれに置換基を有することが可能である。所定の構造の2つ以上の位置を、特定の基から選択される2つ以上の置換基で置換することができる場合、その置換基は、それぞれの位置で同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0010】
本明細書に記載されているように、ある列挙物の前に「随意で置換されている」という用語がある場合、前記用語は、その後に記載されている列挙物中のすべての置換可能な基を指している。例えば、Xがハロゲン、随意で置換されているC1−3アルキルまたはフェニルであれば、Xは、随意で置換されているアルキルであっても、随意で置換されているフェニルであってもよい。同様に、「随意で置換されている」という用語が、列挙物の後にあれば、前記用語は、別段の指定がない限り、その前に記載された列挙物におけるすべての置換可能な基を指している。例えば、Xがハロゲン、C1−3アルキル、またはフェニルであって、Xが随意でJで置換されているのであれば、C1−3アルキルおよびフェニルはともに、Jによって随意で置換されていることが可能である。当業者には明らかなように、H、ハロゲン、NO、CN、NH、OH、またはOCFなどの基は含まれない。なぜなら、これらは置換可能な基ではないからである。置換基のラジカルまたは構造が、「随意で置換されている」と識別または定義されていなければ、その置換基のラジカルまたは構造は非置換型である。
【0011】
本発明で想定される置換基の組み合わせは、好ましくは、安定した化合物または化学的に実施可能な化合物の形成をもたらす組み合わせである。本明細書において、「安定した」という用語は、化合物が、それらを製造、検出、ならびに、好ましくは、回収、精製、および本明細書で開示されている目的の1つ以上のために使用できるようにする条件に置かれたときに実質的に変化することがないことを意味する。いくつかの実施形態において、安定した化合物または化学的に実施可能な化合物とは、湿気または他の化学反応性の高い条件が存在しないときに40℃以下の温度で少なくとも1週間保存した場合に実質的に変化しない化合物である。
【0012】
本明細書において、「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、完全に飽和しているか、1つ以上の不飽和単位を含有する直鎖状(すなわち、非分枝状)または分枝状の、置換型または非置換型の炭化水素鎖を意味する。別段の指定がない限り、脂肪族基は、1〜20個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、脂肪族基は、1〜10個の炭素原子を含有する。他の実施形態において、脂肪族基は、1〜8個の炭素原子を含有する。さらに他の実施形態において、脂肪族基は、1〜6個の炭素原子を含有し、なお他の実施形態において、脂肪族基は、1〜4個の炭素原子を含有する。適当な脂肪族基としては、直線状または分枝状で、置換型または非置換型のアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基が挙げられるが、これらに限定されない。脂肪族基のさらなる例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、ビニル、およびsec−ブチルが挙げられる。本明細書において、「アルキル」という用語および「アルク−(alk−)」という接頭語は、直鎖状および分枝状の飽和炭素鎖をともに包含する。本明細書において、「アルキレン」という用語は、飽和二価の直鎖または分枝鎖の炭化水素基を表し、メチレン、エチレン、イソプロピレンなどを例とする。本明細書において、「アルキリデン」という用語は、二価の直鎖アルキル結合基を表す。本明細書において、「アルケニル」という用語は、1つ以上の炭素−炭素二重結合を含有する一価の直鎖または分枝鎖の炭化水素基を表す。本明細書において、「アルキニル」という用語は、1つ以上の炭素−炭素三重結合を含有する一価の直鎖または分枝鎖の炭化水素基を表す。
【0013】
「脂環式」(または「炭素環」)という用語は、完全に飽和しているか、または1つ以上の不飽和単位を含有する、単環式C〜C炭化水素または二環式C〜C12炭化水素であるが、芳香族ではなく、その分子の残部に対する単一の結合点を有するものであって、前記二環系の任意の個別の環が3〜7員であるものを意味する。適当な脂環式としては、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニルが挙げられるが、これらに限定されない。脂肪族基のさらなる例としては、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、およびシクロヘプテニルが挙げられる。
【0014】
本明細書において、「ヘテロ環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロ環式脂肪族(heterocycloaliphatic)」、または「ヘテロ環式」という用語は、系内の少なくとも1つの環が、同一または異なった1個以上のヘテロ原子を含有する単環式、二環式、または三環式の環系であり、完全に飽和しているか、または1つ以上の不飽和単位を含有する環系であるが、芳香族ではなく、またその分子の残部に対する単一の結合点を有するものを意味する。いくつかの実施形態において、「ヘテロ環」基、「ヘテロシクリル」基、「ヘテロ環式脂肪族」基、または「ヘテロ環式」基は、1つ以上の環員が、酸素、硫黄、窒素、またはリンから独立して選択されるヘテロ原子である3個から14個の環員を有し、その系内の各環が、3個から8個の環員を含有する。
【0015】
ヘテロ環の例としては、以下の単環:テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチオフェン−2−イル、テトラヒドロチオフェン−3−イル、2−モルホリノ、3−モルホリノ、4−モルホリノ、2−チオモルホリノ、3−チオモルホリノ、4−チオモルホリノ、ピロリジン−1−イル、ピロリジン−2−イル、ピロリジン−3−イル、テトラヒドロピペラジン−1−イル、テトラヒドロピペラジン−2−イル、テトラヒドロピペラジン−3−イル、ピペリジン−1−イル、ピペリジン−2−イル、ピペリジン−3−イル、ピペリジン−4−イル、ピラゾリン−1−イル、ピラゾリン−3−イル、ピラゾリン−4−イル、ピラゾリン−5−イル、チアゾリジン−2−イル、チアゾリジン−3−イル、チアゾリジン−4−イル、チアゾリジン−5−イル、イミダゾリジン−1−イル、イミダゾリジン−2−イル、イミダゾリジン−4−イル、イミダゾリジン−5−イル、および以下の二環:3−1H−ベンゾイミダゾール−2−オン、3−(1−アルキル)−ベンゾイミダゾール−2−オン、インドリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ベンゾチオラン、ベンゾジチアン、および1,3−ジヒドロ−イミダゾール−2−オンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
「ヘテロ原子」という用語は、1つ以上の酸素、硫黄、窒素、リン、またはケイ素を意味するものであり、窒素、硫黄、またはリンの任意の酸化形態、任意の塩基性窒素の四級化形態、またはヘテロ環の置換可能な窒素、例えばN(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルにおける場合)、NH(ピロリジニルにおける場合)またはNR(N−置換ピロリジニルにおける場合)などが挙げられる。
【0017】
本明細書において、「不飽和」という用語は、ある成分が1つ以上の不飽和単位を有するという意味である。
【0018】
本明細書において、「アルコキシ」または「チオアルキル」という用語は、既に定義されているように、酸素(「アルコキシ」)原子または硫黄(「チオアルキル」)原子を介して主炭素鎖に結合しているアルキル基を意味する。
【0019】
「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」、および「ハロアルコキシ」という用語は、場合によっては1つ以上のハロゲン原子で置換されているアルキル、アルケニル、またはアルコキシという意味である。「ハロゲン」という用語は、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0020】
単独で用いられたり、または「アラルキル」、「アラルコキシ」、もしくは「アリールオキシアルキル」におけるようなより大きい成分の一部として用いられたりする「アリール」という用語は、全部で6個から14個の環員を有する単環式、二環式、および三環式の炭素環系であって、その系の少なくとも1つの環が芳香族であり、その系の各環が3個から7個の環員を含有し、その分子の残部に対する単一の結合点を有するものを意味する。「アリール」という用語は、「アリール環」という用語と同義的に使用することが可能である。アリール環の例としては、フェニル、ナフチル、およびアントラセンが挙げられる。
【0021】
単独で用いられたり、または「ヘテロアラルキル」もしくは「ヘテロアリールアルコキシ」におけるようなより大きい成分の一部として用いられたりする「ヘテロアリール」という用語は、全部で5個から14個の環員を有する単環式、二環式、および三環式の環系であって、その系の少なくとも1つの環が芳香族であり、その系の少なくとも1つの環が1つ以上のヘテロ原子を含有し、その系の各環が3個から7個の環員を含有し、その分子の残部に対する単一の結合点を有するものを意味する。「ヘテロアリール」という用語は、「ヘテロアリール環」という用語または「ヘテロ芳香族」という用語と同義的に使用することが可能である。ヘテロアリール環のさらなる例としては、以下の単環:フラニル(例えば、フラン−2−イルまたはフラン−3−イル);イミダゾリル(例えば、N−イミダゾリル、イミダゾール−2−イル、イミダゾール−4−イル、またはイミダゾール−5−イル);イソオキサゾリル(例えば、イソオキサゾール−3−イル、イソオキサゾール−4−イル、イソオキサゾール−5−イル);オキサゾリル(例えば、オキサゾール−2−イル、オキサゾール−4−イル、またはオキサゾール−5−イル);ピロリル(例えば、N−ピロリル、ピロール−2−イル、またはピロール−3−イル);ピリジニル(例えば、ピリド−2−イル、ピリド−3−イル、またはピリド−4−イル);ピリミジニル(例えば、ピリミジン−2−イル、ピリミジン−4−イル、またはピリミジン−5−イル);ピリダジニル(例えば、ピリダジン−3−イル、ピリダジン−4−イル、ピリダジン−5−イル、またはピリダジン−6−イル);チアゾリル(例えば、チアゾール−2−イル、チアゾール−4−イル、またはチアゾール−5−イル);テトラゾリル(例えば、テトラゾール−1−イル、またはテトラゾール−5−イル);トリアゾリル(例えば、2−トリアゾリルまたは5−トリアゾリル);チエニル(例えば、チオフェン−2−イルまたはチオフェン−3−イル);ピラゾリル(例えば、ピラゾール−2−イル、ピラゾール−3−イル、またはピラゾール−4−イル);イソチアゾリル;1,2,3−オキサジアゾリル;1,2,5−オキサジアゾリル;1,2,4−オキサジアゾリル;1,2,3−トリアゾリル;1,2,3−チアジアゾリル;1,3,4−チアジアゾリル;1,2,5−チアジアゾリル;ピラジニル;1,3,5−トリアジニル;および以下の二環:ベンゾイミダゾリル;ベンゾフリル;ベンゾチエニル;インドリル(例えば、2−インドリル);プリニル;キノリニル(例えば、2−キノリニル、3−キノリニル、または4−キノリニル);およびイソキノリニル(例えば、1−イソキノリニル、3−イソキノリニル、または4−イソキノリニル)が挙げられる。
【0022】
いくつかの実施形態において、アリール基(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルなどが挙げられる)またはヘテロアリール基(ヘテロアラルキルおよびヘテロアリールアルコキシなどが挙げられる)は、1つ以上の置換基を含有することが可能である。アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素原子上の適当な置換基は、以下のR、R、R、R、J、J、またはJの定義に列挙されたものから選択される。その他の適当な置換基としては、以下のものが挙げられる:ハロゲン;−R;−OR;−SR;1,2−メチレンジオキシ;1,2−エチレンジオキシ;随意でRにより置換されているフェニル(Ph);随意でRにより置換されている−O(Ph);随意でRにより置換されている−(CH1−2(Ph);随意でRにより置換されている−CH=CH(Ph);−NO;−CN;−N(R;−NRC(O)R;−NRC(S)R;−NRC(O)N(R;−NRC(S)N(R;−NRCO;−NRNRC(O)R;−NRNRC(O)N(R;−NRNRCO;−C(O)C(O)R;−C(O)CHC(O)R;−CO;−C(O)R;−C(S)R;−C(O)N(R;−C(S)N(R;−OC(O)N(R;−OC(O)R;−C(O)N(OR)R;−C(NOR)R;−S(O);−S(O)OR;−S(O)N(R;−S(O)R;−NRS(O)N(R;−NRS(O);−N(OR)R;−C(=NH)−N(R;−(CH0−2NHC(O)R;−L−R;−L−N(R;−L−SR;−L−OR;−L−(C3−10脂環式)、−L−(C6−10アリール)、−L−(5〜10員ヘテロアリール)、−L−(5〜10員ヘテロシクリル)、オキソ、C1−4ハロアルコキシ、C1−4ハロアルキル、−L−NO、−L−CN、−L−OH、−L−CF;または2つの置換基が、それらが結合している介在原子とともに、5〜7員の飽和環、不飽和環、または部分的飽和環を形成している。ここで、式中、Lは、最大3個のメチレン単位が、−NH−、−NR−、−O−、−S−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)CO−、−C(O)−、−C(O)NH−、−C(O)NR−、−C(=N−CN)、−NHCO−、−NRCO−、−NHC(O)O−、−NRC(O)O−、−S(O)NH−、−S(O)NR−、−NHS(O)−、−NRS(O)−、−NHC(O)NH−、−NRC(O)NH−、−NHC(O)NR−、−NRC(O)NR、−OC(O)NH−、−OC(O)NR−、−NHS(O)NH−、−NRS(O)NH−、−NHS(O)NR−、−NRS(O)NR−、−S(O)−、または−S(O)−によって置換されているC1−6アルキレン基であり、かつ、単独に存在するRは、水素、随意で置換されているC1−6脂肪族、非置換の5〜8員のヘテロアリール環もしくはヘテロ環、フェニル、−O(Ph)、または−CH(Ph)から選択され、あるいは同一または異なった置換基上に2つ別々に存在するRは、それぞれのR基が結合している原子と一緒になって、5〜8員のヘテロシクリル環、アリール環、もしくはヘテロアリール環、または3〜8員のシクロアルキル環を形成し、前記ヘテロアリール環またはヘテロシクリル環が、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する。Rの脂肪族基上にある随意の置換基は、NH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、OH、O(C1−4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族)、O(ハロC1−4脂肪族)、またはハロC1−4脂肪族から選択され、ここで、Rの前記C1〜4脂肪族基のそれぞれは非置換である。
【0023】
いくつかの実施形態において、脂肪族基、脂環式基、ヘテロ脂肪族基、または非芳香族ヘテロ環は、1つ以上の置換基を含有することが可能である。いくつかの場合によっては、2つの置換基は、同一の原子上または異なった原子上で、それらが結合している介在原子とともに、N、O、またはSから選択される0〜3個のヘテロ原子を含有する5〜7員の飽和環、不飽和環、または部分的飽和環を形成する。脂肪族基もしくはヘテロ脂肪族基、または非芳香族ヘテロ環の飽和炭素上にある適当な置換基は、アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素に関して上で列挙した置換基から選択され、また、さらに以下のものが挙げられる:=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHCO(アルキル)、=NNHS(O)(アルキル)、または=NR。式中、各Rは、水素または随意で置換されているC1−6脂肪族から独立して選択され、または同一の窒素上にある2つのRは、その窒素と一緒になって、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する5〜8員のヘテロシクリル環またはヘテロアリール環を形成する。Rの脂肪族基上にある随意の置換基は、NH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、OH、O(C1−4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族)、O(ハロC1−4脂肪族)、またはハロ(C1−4脂肪族)から選択され、ここで、Rの前記C1−4脂肪族基のそれぞれは非置換である。
【0024】
いくつかの実施形態において、非芳香族ヘテロ環の窒素上における随意の置換基としては、−R、−N(R、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−S(O)、−S(O)N(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、または−NRS(O)が挙げられる。ここで、式中、Rは、水素、随意で置換されているC1−6脂肪族、随意で置換されているフェニル、随意で置換されている−O(Ph)、随意で置換されている−CH(Ph)、随意で置換されている−(CH1−2(Ph);随意で置換されている−CH=CH(Ph);または、酸素、窒素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する非置換の5〜6員のヘテロアリール環もしくはヘテロ環であるか、あるいは同一または異なった置換基上に2つの独立に存在するRは、それぞれのR基が結合している原子と一緒になって、フェニル、5〜8員のヘテロシクリル、5〜8員のヘテロアリール、もしくは3〜8員のシクロアルキル環であって、前記ヘテロアリール環またはヘテロシクリル環が、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するものを形成している。Rの脂肪族基またはフェニル環上にある随意の置換基は、−NH、−NH(C1−4脂肪族)、−N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、−OH、−O(C1−4脂肪族)、−NO、−CN、−C(O)OH、−C(O)O(C1−4脂肪族)、−O(ハロ(C1−4脂肪族))、またはハロ(C1−4脂肪族)から選択され、ここで、Rの前記C1−4脂肪族基はそれぞれ非置換である。
【0025】
上で詳しく説明したように、いくつかの実施形態において、2つの独立に存在するR(もしくはR、または本明細書において同様に定義されているその他任意の変数)は、それぞれの変数が結合している原子と一緒になって、フェニル、5〜8員のヘテロシクリル、5〜8員のヘテロアリール、または3〜8員のシクロアルキル環を形成することができる。2つの独立に存在するR(もしくはR、または本明細書において同様に定義されているその他任意の変数)が、それぞれの変数が結合している原子と一緒になって形成される例示的な環としては、以下ものが挙げられるが、これらに限定はされない:a)同一の原子に結合して、その原子と一緒になって環を形成する、2つの独立に存在するR(もしくはR、または本明細書において同様に定義されているその他任意の変数)。例えば、両方の存在するRが窒素原子と一緒になって、ピペリジン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、またはモルホリン−4−イル基を形成しているN(R;および、b)異なった原子に結合して、それら両原子と一緒になって環を形成する、2つの独立に存在するR(もしくはR、または本明細書において同様に定義されているその他任意の変数)。例えば、フェニル基が、
【0026】
【化2】

【0027】
という2つの存在するORにより置換されている場合、これら2つの存在するRが、それらが結合している酸素原子と一緒になって、以下の縮合6員の酸素含有環を形成する:
【0028】
【化3−1】

【0029】
。なお、その他さまざまな環が、2つの独立に存在するR(もしくはR、または本明細書において同様に定義されているその他任意の変数)が、それぞれの変数が結合している原子と一緒になったときに形成されうること、および上で詳述した例を限定的なものとする意図ではないことは理解される。
【0030】
いくつかの実施形態において、アルキル鎖または脂肪族鎖のメチレン単位は、別の原子または基によって随意で置換されている。そのような原子または基の例としては、以下のものが挙げられようが、それらに限定はされない:−NR−、−O−、−S−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)CO−、−C(O)−、−C(O)NR−、−C(=N−CN)、−NRCO−、−NRC(O)O−、−S(O)NR−、−NRS(O)−、−NRC(O)NR−、−OC(O)NR−、−NRS(O)NR−、−S(O)−、または−S(O)−。式中、Rは本明細書で定義されているものである。別段の特定がない限り、随意での置換により化学的に安定した化合物が形成される。随意での原子または基の置換は、鎖内でも鎖のいずれか一端でも、すなわち結合点において、および/または末端においても生じうる。また、2つの随意での置換も、それが化学的に安定した化合物を生じさせるのであれば、鎖内で互いに隣接していることもありうる。別段の特定がない限り、置換が末端側で生じるのであれば、その置換原子は末端のHに結合される。例えば、−CHCHCHの1つのメチレン単位が随意で−O−によって置換された場合、生じた化合物は、−OCHCH、−CHOCH、または−CHCHOHとなろう。
【0031】
本明細書に記載されているように、置換基から複数の環系内の1つの環の中心に引かれた(下記に示したような)結合は、その置換基の置換が、その複数の環系内の任意の環で任意の置換可能位置に存在することを示している。例えば、図aは、図bに示したいずれか任意の位置に置換が存在しうることを示している。
【0032】
【化3−2】

【0033】
このことは、随意の環系(点線で示されている)と縮合した複数の環系にも適用される。例えば、図cにおいて、Xは、環Aおよび環Bの両方に対して随意の置換基である。
【0034】
【化3−3】

【0035】
しかしながら、複数の環系における2つの環が、それぞれ各環の中心から引かれた異なる置換基を有するという場合には、別段の特定がない限り、各置換基は、それが結合している環上において置換されていることを示すだけである。例えば、図dにおいて、Yは、環Aだけに対する随意の置換基であり、Xは、環Bだけに対する随意の置換基である。
【0036】
【化3−4】

【0037】
本明細書において、「保護基」という用語は、例えば、アルコール、アミン、カルボキシル、カルボニルなどの官能基を、合成手順の過程で望ましくない反応から保護することを目的とする基を表す。一般に使用される保護基は、GreeneおよびWuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版(John Wiley & Sons、New York、1999年)に開示されており、この文献は、参照することにより本明細書に組み込まれる。窒素の保護基の例としては、アシル、アロイル、またはカルバミル基、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、t−ブチルアセチル、2−クロロアセチル、2−ブロモアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、フタリル、o−ニトロフェノキシアセチル、α−クロロブチリル、ベンゾイル、4−クロロベンゾイル、4−ブロモベンゾイル、4−ニトロベンゾイル、およびキラル補助基、例えば、保護された、または非保護のD、LもしくはD,L−アミノ酸、例えばアラニン、ロイシン、フェニルアラニンなど;スルホニル基、例えば、ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニルなど;カルバメート基、例えば、ベンジルオキシカルボニル、p−クロロベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、2−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、3,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、2,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、2−ニトロ−4,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,4,5−トリメトキシベンジルオキシカルボニル、1−(p−ビフェニリル)−1−メチルエトキシカルボニル、α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、t−ブチルオキシカルボニル、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、メトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、4−ニトロフェノキシカルボニル、フルオレニル−9−メトキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、フェニルチオカルボニルなど、アリールアルキル基、例えば、ベンジル、トリフェニルメチル、ベンジルオキシメチルなど、ならびにシリル基、例えば、トリメチルシリルなどが挙げられる。好適なN保護基は、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、ピバロイル、t−ブチルアセチル、アラニル、フェニルスルホニル、ベンジル、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、およびベンジルオキシカルボニル(Cbz)である。
【0038】
本明細書において、「プロドラッグ」という用語は、インビボにおいて式Iの化合物、または表1に列挙された化合物に変換される化合物を表す。このような変換は、例えば、血液中における加水分解または血液もしくは組織中におけるプロドラッグ形態から親形態への酵素的変換によって影響を受けることがある。本発明の化合物のプロドラッグは、例えば、エステルであってもよい。本発明においてプロドラッグとして利用することができるエステルは、フェニルエステル、脂肪族(C〜C24)エステル、アシルオキシメチルエステル、カーボネート、カルバメート、およびアミノ酸エステルである。例えば、OH基を含有する本発明の化合物は、この位置でアシル化されて、そのプロドラッグ形態になることが可能である。その他のプロドラッグ形態としては、ホスフェート、例えば、その親化合物のOH基がリン酸化されて生じるホスフェートなどが挙げられる。プロドラッグについての詳細な考察は、T.HiguchiおよびV.Stella、Pro−drugs as Novel Delivery Systems、the A.C.S.Symposium Seriesの第14巻、Edward B.Roche編、Bioreversible Carriers in Drug Design、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987年、およびJudkinsら、Synthetic Communications 26(23):4351−4367頁で提供されている。これらの文献は、それぞれが参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0039】
別段の記載がない限り、本明細書に描かれている構造は、その構造のすべての異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマー、および幾何学的(または立体配座的))形態;例えば、各不斉中心に対する(R)配置および(S)配置、(Z)二重結合異性体および(E)二重結合異性体、ならびに(Z)立体配座異性体および(E)立体配座異性体も含むという意味である。したがって、本化合物の単一の立体化学的異性体も、鏡像異性体、ジアステレオマー、および幾何学的(または立体配座的)な形態の混合物も本発明の範囲内にある。
【0040】
別段の記載がない限り、本発明の化合物のすべての互変異性型が本発明の範囲内にある。加えて、別段の記載がない限り、本明細書に描かれている構造は、1つ以上の同位体濃縮原子が存在するという点でのみ異なる化合物も含むという意味である。例えば、水素がジュウテリウムまたはトリチウムに置き換えられていること、または炭素が、13Cまたは14Cが濃縮された炭素で置き換えられていることを除けば本構造を有する化合物は、本発明の範囲内にある。このような化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析ツールまたはプローブとして、または改善された治療特性をもつc−MET阻害剤として有用である。
【0041】
本発明の化合物の説明
第一の態様において、本発明は、以下の式を有する化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を特徴とする:
【0042】
【化4】

【0043】
式中、
は、フェニル環、またはN、O、もしくはSから選択される最大2個のヘテロ原子を有する5員から9員のヘテロアリール環であって、前記フェニルまたはヘテロアリール環は、ハロゲン、C1−5脂肪族、−NR’C(O)R’、−C(O)N(R’)、−OR’、−(CH0−2N(R’),テトラヒドロピラニル、またはピペリジニルから選択される最大2つの基によって随意で置換されており;
R’は、水素またはC1−4アルキルであり;
、R、R、およびRのそれぞれは、個別に、水素、Cl、またはFであり、ここで、R、R、R、およびRの少なくとも1つがClまたはFであり;
は、
【0044】
【化5】

【0045】
であり、ここで、
XはOまたはNR5aであり、
Yは、C1−4脂肪族またはC3−6脂環式であって、随意でR5cによって置換されており、
rは0または1であり、
5a、R5b、R5c、R5d、およびR5eのそれぞれが、独立して水素またはC1−4脂肪族であるが、ここで、R5aおよびR5dまたはR5cおよびR5dが一緒になって、ピロリジン環またはピペリジン環を随意で形成し、R5bおよびR5cが一緒になって、5〜6員の炭素環を随意で形成し、ならびにR5dおよびR5eが一緒になって、ピロリジン環、ピペリジン環またはモルホリン環を随意で形成している。
【0046】
式Iの化合物の一つの実施形態において、Rは、随意で置換されているピラゾール−4−イル環、チオフェン−3−イル環、チオフェン−2−イル環、ベンゾ[b]チオフェン−2−イル環、フェニル環、ベンゾ[b]チオフェン−3−イル環、ピリジン−4−イル環、ピリジン−3−イル環、またはピリミジン−5−イル環である。さらなる実施形態において、Rは、随意で置換されているピラゾール−4−イル環、チオフェン−3−イル環、またはチオフェン−2−イル環である。さらになお、Rは以下のものから選択される:
【0047】
【化6】

【0048】
式Iの化合物の一つの実施形態において、XはOであり、XとN(R5d)(R5e)との間にある原子の数は3、4、または5個である。さらなる実施形態において、Rは以下のものから選択される:
【0049】
【化7】

【0050】
式Iの化合物の一つの実施形態において、R、R、R、およびRのうち1つまたは2つはフッ素であり、R、R、R、およびRの残りは水素である。さらなる実施形態において、RおよびRのそれぞれがフッ素であり、RおよびRのそれぞれが水素である。
【0051】
別の態様において、本発明は、表1の化合物を特徴とする。
【0052】
【表1−1】

【0053】
【表1−2】

【0054】
【表1−3】

【0055】
【表1−4】

【0056】
【表1−5】

【0057】
【表1−6】

【0058】
【表1−7】

【0059】
【表1−8】

【0060】
【表1−9】

【0061】
【表1−10】

【0062】
【表1−11】

【0063】
【表1−12】

【0064】
【表1−13】

【0065】
【表1−14】

【0066】
【表1−15】

【0067】
【表1−16】

【0068】
【表1−17】

【0069】
【表1−18】

【0070】
【表1−19】

【0071】
【表1−20】

【0072】
本発明の化合物の組成、処方、および投与
別の態様において、本発明は、本明細書記載の式またはクラスのいずれかの化合物を含む医薬組成物を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、表1の化合物を含む医薬組成物を提供する。さらなる実施形態において、本発明の組成物は、さらに別の治療薬を含む。
【0073】
別の実施形態によれば、本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な誘導体および薬学的に許容可能な担体、アジュバント、またはビヒクルを含む組成物を提供する。一つの実施形態において、本発明の組成物における化合物の量は、生体試料または患者においてc−METを計測可能な程度に阻害するのに有効な量である。好ましくは、本発明の組成物は、そのような組成物を必要とする患者に投与するために処方に従って作製されている。最も好ましくは、本発明の組成物は、患者に経口投与するために処方に従って作製されている。
【0074】
本明細書において、「患者」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。
【0075】
また、当然のことながら、本発明の化合物のいくつかのものは、処置のために遊離型で存在しているか、または適切な場合、その薬学的に許容可能な誘導体として存在していてもよい。本発明によれば、薬学的に許容可能な誘導体としては、薬学的に許容可能なプロドラッグ、塩、エステル、そのようなエステルの塩、または必要とする患者に投与されると、本明細書に別様に記載されている化合物、またはその代謝産物もしくは残留物を直接的または間接的に提供することができるその他任意の付加体もしくは誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
本明細書において、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、正しい医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずにヒトまたは下等動物の組織に接触させて使用するのに適した塩を意味する。
【0077】
薬学的に許容可能な塩は、当技術分野において公知である。例えば、S.M.Bergeらが、J.Pharmaceutical Sciences,66:1−19,1977年において、薬学的に許容可能な塩を詳細に説明しており、この文献は、参照することにより本明細書に組み込まれる。本発明の化合物の薬学的に許容可能な塩には、適切な無機および有機の酸ならびに無機および有機の塩基に由来するものが含まれる。薬学的に許容可能な非毒性の酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸などの無機酸とともに、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、もしくはマロン酸などの有機酸とともに形成されるか、またはイオン交換法など当技術分野において使用されている他の方法を用いて形成されるアミノ基の塩がある。その他の薬学的に許容可能な塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。適当な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびN(C1−4アルキル)塩が挙げられる。また、本発明は、本明細書に開示されている化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化も想定している。このような四級化によって、水または油に可溶性または分散性の生成物を取得することが可能である。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらなる薬学的に許容可能な塩としては、適切であれば、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、C1−8スルホン酸塩、およびアリールスルホン酸塩などの対イオンを用いて形成される非毒性のアンモニウムカチオン、第四級アンモニウムカチオン、およびアミンカチオンが挙げられる。
【0078】
上記したように、本発明の薬学的に許容可能な組成物は、薬学的に許容可能な担体、アジュバント、またはビヒクルをさらに含むが、本明細書において使用される場合、これらには、所望の具体的な剤形に合わせて、あらゆる溶媒、希釈剤、またはその他の液体ビヒクル、分散助剤もしくは懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤もしくは乳化剤、防腐剤、固体結合剤、潤滑剤などが含まれる。Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、2005年、D.B.Troy編、Lippincott Williams & Wilkins、Philadelphia、およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technology、J.SwarbrickおよびJ.C.Boylan編、1988−1999年、Marcel Dekker、New York(それぞれの内容が参照することにより本明細書に組み込まれる)には、薬学的に許容可能な組成物を処方に従って作製する際に使用されるさまざまな担体およびそれらを調製するための既知の手法が開示されている。従来の担体媒体については、例えば、好ましくない生物学的効果を引き起こしたり、あるいは薬学的に許容可能な組成物の何らかの他の成分と有害に相互作用したりするなどして、本発明の化合物と不適合であるとされる場合を除いて、その使用が本発明の範囲に含まれるものと考えられる。
【0079】
薬学的に許容可能な担体として役立つことができる物質のいくつかの例としは、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸塩)、グリシン、ソルビン酸、またはソルビン酸カリウム、植物由来の飽和脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩もしくは電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩、ろう、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロック重合体、羊毛脂、糖、例えば、ラクトース、ブドウ糖、およびショ糖;デンプン(例えば、コーンスターチおよび馬鈴薯デンプン);セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース;トラガント粉末;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤(例えば、ココアバターおよび坐薬ワックス);油(例えば、落花生油、綿実油;サフラワー油;ゴマ油;オリーブ油;コーン油および大豆油);グリコール類(例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール);エステル類(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル);寒天;緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム);アルギン酸;発熱性物質除去水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、ならびにリン酸緩衝液が挙げられるが、これらに限定されず、その上、その他非毒性の適合する潤滑剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)、その上、着色剤、解除剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、防腐剤、ならびに抗酸化剤も、処方者の判断に従って、組成物中に存在させることができる。
【0080】
本発明の組成物は、経口的に、非経口的に、吸入噴霧によって、局所的に、直腸内に、経鼻的に、口腔内に、経膣的に、または埋め込み型リザーバーを介して投与することが可能である。本明細書において、「非経口」という用語には、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、眼球内、肝内、病巣内、および頭蓋内への注入手法もしくは点滴手法などが含まれる。好ましくは、組成物は、経口、腹腔内、または静脈内に投与される。本発明の組成物の無菌注射剤形は、水性懸濁液または油性懸濁液とすることが可能である。これらの懸濁液は、適当な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁剤を用いて、当技術分野において知られている手法により処方に従って作製することが可能である。また、無菌の注射用製剤は、非毒性で非経口的に許容可能な希釈液または溶媒中、例えば、1,3−ブタンジオール溶液中の無菌注射用溶液または懸濁液であってもよい。使用し得る許容可能なビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液および等張食塩水などがある。さらに、無菌の固定油が通常、溶媒もしくは懸濁媒体として使用される。
【0081】
この目的で、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドなど、無刺激性の固定油を使用することも可能である。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、天然の薬学的に許容可能な油、例えば、オリーブ油またはヒマシ油と同じように、特にそのポリオキシエチル化された型で、注射剤を調製するのに有用である。また、これらの油剤または油懸濁液は、長鎖アルコールの希釈剤または分散剤、例えば、エマルジョンまたは懸濁液など薬学的に許容可能な剤形の処方剤に一般的に使用されるカルボキシルメチルセルロースまたは同様の分散剤を含むことも可能である。薬学的に許容可能な固体、液体、またはその他の剤形を製造する際に一般に使用される、その他の一般に使用される界面活性剤、例えば、Tween、Spanなど、およびその他の乳化剤または生物学的利用能促進剤なども、処方の目的に使用することが可能である。
【0082】
本発明の薬学的に許容可能な組成物は、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液、または水性溶液などが挙げられるが、これらに限定されない任意の経口的に許容可能な剤形で経口投与することが可能である。経口用の錠剤の場合、一般に使用される担体は、ラクトースおよびコーンスターチなどである。潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムなども典型的に添加される。カプセル剤形にして経口投与するために有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液が経口使用に必要とされるときには、活性成分を乳化剤および懸濁剤と組み合わせる。所望であれば、特定の甘味剤、香味剤、または着色剤を添加することも可能である。
【0083】
あるいは、本発明の薬学的に許容可能な組成物は、直腸投与用の坐薬の形で投与することも可能である。これらは、室温では固体であるが直腸温度では液体となるため直腸内で融解して薬物を放出する、適当な無刺激性の賦形剤と、薬剤とを混合することによって調製することができる。そのような物質としては、ココアバター、蜜ろう、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0084】
また、本発明の薬学的に許容可能な組成物は、特に、眼、皮膚、または下部腸管の疾患など、処置標的が、局所投与によって容易に接触可能な領域または器官を含むときには、局所的に投与することも可能である。適当な局所用処方剤が、これらの領域または器官のそれぞれについて容易に調製される。
【0085】
下部腸管への局所投与は、直腸坐薬処方剤(上記参照)にして、または適当な浣腸用処方剤にして達成することができる。局所的経皮パッチもまた使用することが可能である。
【0086】
局所投与のため、薬学的に許容可能な組成物を、1つ以上の担体に懸濁または溶解した活性成分を含む適当な軟膏として処方に従って作製することが可能である。本発明の化合物を局所投与するための担体としては、ミネラルオイル、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう、および水が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、薬学的に許容可能な組成物を、1つ以上の薬学的に許容可能な担体の中に懸濁または溶解している活性成分を含む適当なローションまたはクリームとして処方に従って作製することができる。適当な担体としては、ミネラルオイル、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステル、ろう、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
眼に使用するためには、薬学的に許容可能な組成物を、例えば、等張でpH調整済みの無菌食塩水中の微粒懸濁液、もしくはその他の水溶液として、または、好ましくは、等張でpH調整済みの無菌食塩水中の溶液、もしくはその他の水溶液として、塩化ベンジルアルコニウムなどの防腐剤とともに、またはそれなしに処方に従って作製することが可能である。あるいは、眼に使用するために、薬学的に許容可能な組成物を、ワセリンなどの軟膏にして処方に従って作製することも可能である。また、本発明の薬学的に許容可能な組成物は、鼻エアロゾルまたは鼻孔吸入によって投与することも可能である。このような組成物は、薬学的処方剤の技術分野において公知の手法に従って調製され、ベンジルアルコールまたはその他の適当な防腐剤、生物学的利用能を増進させるための吸収促進剤、フッ化炭素、および/またはその他通常の可溶化剤もしくは分散剤を使用して、食塩水中の溶液として調製することが可能である。
【0088】
最も好ましくは、本発明の薬学的に許容可能な組成物は、経口投与用に処方に従って作製されている。
【0089】
経口投与用の液体剤形としては、薬学的に許容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルが挙げられるが、これらに限定されない。液体剤形は、活性化合物に加えて、当技術分野において一般に使用される不活性希釈剤、例えば、水またはその他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(具体的には、綿実油、ピーナッツ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含んでもよい。不活性希釈剤以外には、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤などのアジュバント、甘味剤、香味剤、ならびに芳香剤も含んでいてもよい。
【0090】
注射用製剤、例えば、無菌の注射用の水性または油性の懸濁液は、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて、既知の技術に従って処方に従い作製することが可能である。また、無菌の注射用製剤は、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液のような、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の無菌注射用の溶液、懸濁液、またはエマルジョンであってもよい。使用することができる許容可能なビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液、U.S.P.および等張食塩水がある。さらに、無菌の固定油が、溶媒または懸濁媒体として従来から使用されている。この目的で、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドなど、あらゆる無刺激性の固定油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調製に用いられる。
【0091】
注射用処方剤は、例えば、細菌保持フィルターを通して濾過することによって、または使用前に滅菌水またはその他の無菌注射媒体に溶解または分散させることができる無菌の固体組成物の形で滅菌剤を取り込むことによって滅菌することができる。
【0092】
本発明の化合物の効果を延長するためには、皮下注射または筋肉内注射からの化合物の吸収を遅らせることがしばしば望ましい。これは、難水溶性の結晶質または非晶質の物質の懸濁液を使用することによって成し遂げることが可能である。このとき、化合物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、溶解速度は、同じく、結晶の大きさおよび結晶形に依存し得る。あるいは、化合物を油性ビヒクルに溶解または懸濁することで、非経口投与された化合物剤形の吸収の遅延が達成される。注射用デポー剤形は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製する。ポリマーに対する化合物の割合、および使用された具体的なポリマーの性質に応じて、化合物の放出速度を調節することができる。その他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)などが挙げられる。また、デポー注射処方剤は、体組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルジョンに化合物を取り込ませることによっても調製される。
【0093】
直腸投与もしくは膣内投与用の組成物は、好ましくは、常温では固体であるが体温では液体となるため、直腸腔内または膣腔内で溶解して活性化合物を放出する、ココアバター、ポリエチレングリコール、または坐薬用ワックスなど適当な無刺激性の賦形剤もしくは担体と、本発明の化合物とを混合することによって調製することができる坐薬である。
【0094】
経口投与用の固体剤形としては、カプセル剤、錠剤、ピル剤、粉末剤、および顆粒剤が挙げられる。このような固体剤形では、活性化合物は、少なくとも1つの不活性で薬学的に許容可能な賦形剤もしくは担体、例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、および/またはa)充填剤もしくは増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、ショ糖、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、b)結合剤、例えば、カルボキシルメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、およびアカシア、c)保湿剤、例えば、グリセロール、d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯またはタピオカのデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および炭酸ナトリウム、e)溶解遅延剤、例えば、パラフィン、f)吸収促進剤、例えば、第四級アンモニウム化合物、g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール、h)吸収剤、例えば、カオリン粘土およびベントナイト粘土、ならびにi)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤、ピル剤の場合、剤形は緩衝剤を含むことも可能である。
【0095】
同様のタイプの固体組成物を、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いる軟質および硬質のゼラチンカプセルにおける充填剤として使用することも可能である。固体剤形の錠剤、糖衣錠、カプセル剤、ピル剤、および顆粒剤は、コーティング剤およびシェル剤、例えば、溶腸性コーティング剤、および製薬技術分野において公知のその他のコーティング剤とともに調製することができる。これらは随意で乳白剤を含有することが可能であり、活性成分のみを、またはそれを選択的に、腸管の特定の部分において、随意に遅延させる様式で放出する組成物の剤形でもあり得る。使用できる埋め込み用組成物の例としては、ポリマー物質およびろうが挙げられる。同様のタイプの固体組成物を、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いる軟質および硬質のゼラチンカプセルにおける充填剤として使用することも可能である。
【0096】
活性化合物は、上記したような1つ以上の賦形剤とともにマイクロカプセル剤形になっていることもあり得る。固体剤形の錠剤、糖衣錠、カプセル剤、ピル剤、および顆粒剤は、コーティング剤およびシェル剤、例えば、溶腸性コーティング剤、放出調節コーティング剤、および製薬技術分野において公知のその他のコーティング剤とともに調製することができる。このような固体剤形において、活性化合物は、ショ糖、ラクトース、またはデンプンなど、少なくとも1つの不活性希釈剤と混ぜることが可能である。また、このような剤形は、通常の慣行どおり、不活性希釈剤以外の付加的物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースなどの製錠滑沢剤およびその他の製錠補助剤を含むことも可能である。カプセル剤、錠剤およびピル剤の場合、これらの剤形は緩衝剤を含むことも可能である。それらは随意で乳白剤を含有することが可能であり、活性成分のみを、またはそれを選択的に、腸管の特定の部分において、随意に遅延させる様式で放出する組成物の剤形でもあり得る。使用できる埋め込み用組成物の例としては、ポリマー物質およびろうが挙げられる。
【0097】
本発明の化合物を局所的または経皮的に投与するための剤形としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー剤、吸入剤、またはパッチが挙げられる。活性成分は、無菌条件下で、必要に応じて、薬学的に許容可能な担体および必要な防腐剤または緩衝剤と混和される。眼科用製剤、点耳薬、および点眼薬もまた本発明の範囲に入ると考えられる。さらに、本発明は、経皮パッチの使用も想定しているが、これは、身体への化合物の制御された送達をもたらすというさらなる長所を有する。このような剤形は、適切な媒体に化合物を溶解または分散させることよって作製することができる。また、吸収増進剤を用いて、皮膚を通過する化合物の流量を増加させることもできる。この速度は、速度制御膜を提供するか、または化合物をポリマーマトリックスまたはゲルの中に分散させることによって調節することができる。
【0098】
本発明の化合物は、好ましくは、投与を容易にし、かつ投与量を均一にするために単位剤形で処方に従って作製される。本明細書において、「単位剤形」という表現は、処置すべき患者に適した、物理的に別個の薬剤の単位を意味する。しかし、当然のことながら、本発明の化合物および組成物の一日の総使用量は、担当医が、正しい医学的判断の範囲内で決定すべきものである。具体的な患者または生物にとって特有の有効用量レベルは、処置されている障害およびその障害の重篤度;使用される具体的な化合物の活性;使用される具体的な組成物;患者の年齢、体重、全体的な健康状態、性別、および食生活;使用される具体的な化合物の投与時期、投与経路、および排泄速度;処置の継続期間;使用される具体的な化合物と併用される薬物、または同時に投与される薬物、および医学分野において公知の同様の因子など、さまざまな因子によって決まる。
【0099】
担体物質と組み合わせて、単一剤形にした組成物を製造することが可能な本発明の化合物の量は、処置を受ける対象、具体的な投与方式などに応じて変わる。好ましくは、組成物は、0.01〜100mg/kg体重/日の用量の阻害剤が、これらの組成物の投与を受ける患者に投与され得るように処方すべきである。
【0100】
処置または予防すべき具体的な状態または疾患に応じて、その状態を処置または予防するために通常投与されている追加的治療薬も、本発明の組成物中に存在することが可能である。本明細書において、特定の疾患または状態を処置または予防するために通常投与される追加的治療薬は、「処置されている疾患、または状態に適している」として知られている。追加的治療薬の例を、以下に提供する。
【0101】
本発明の組成物中に存在する追加的治療薬の量は、その追加的治療薬を唯一の活性薬剤として含む組成物にして通常投与される量よりも多くはない。好ましくは、本開示の組成物中の追加的治療薬の量は、その薬剤を唯一の治療活性薬剤として含む組成物中に通常存在する量の約50%から100%の範囲である。
【0102】
本発明の化合物および組成物の使用
一つの実施形態によれば、本発明は、生体試料においてc−METタンパク質キナーゼ活性を阻害する方法であって、該生体試料を、本発明の化合物、または該化合物を含む組成物に接触させる工程を含む方法に関する。本明細書において、「生体試料」という用語は、生体外の試料を意味するものであって、細胞培養物またはその抽出物;哺乳動物から採取された生検材料またはその抽出物;および血液、唾液、尿、大便、精子、涙液、もしくはその他の体液、またはそれらの抽出物などが挙げられるが、これらに限定されない。生体試料においてキナーゼ活性を阻害することは、当業者に知られている多様な目的にとって有用である。そのような目的の例としては、生物標本の保存および生物学的測定が挙げられるが、これらに限定されない。一つの実施形態において、生体試料においてキナーゼ活性を阻害する方法は、非治療的方法に限定される。
【0103】
「c−MET」という用語は、「c−Met」、「cMet」、「MET」、「Met」、または当業者に知られている他の記号表示と同義である。
【0104】
別の実施形態によれば、本発明は、患者においてc−METキナーゼ活性を阻害する方法であって、該患者に本発明の化合物、または該化合物を含む組成物を投与する工程を含む方法に関する。
【0105】
本明細書において、「c−MET介在性疾患」または「c−METが介在する状態」という用語は、c−METが関与することが知られている疾患またはその他の有害な状態を意味するものである。また、「c−MET介在性疾患」または「c−METが介在する状態」という用語は、c−MET阻害剤を用いた処置によって緩和される疾患または状態も意味するものである。そのような状態には、限定はされないが、腎癌、胃癌、大腸癌、脳癌、乳癌、前立腺癌、および肺癌、膠芽細胞腫、アテローム性動脈硬化症、肺線維症、臓器移植に関連した状態、アレルギー性障害、および自己免疫性障害が挙げられる。
【0106】
一つの態様において、本発明は、患者における増殖性障害を処置する方法であって、該患者に治療有効量の本発明の化合物または組成物のいずれかを投与する工程を含む方法を特徴とする。
【0107】
一つの実施形態によれば、増殖性障害は、癌、例えば、腎臓癌、胃癌、大腸癌、脳癌、乳癌、肝臓癌、前立腺癌、および肺癌、または膠芽細胞腫などである。
【0108】
別の実施形態において、本発明は、脳癌を処置するか、またはその重篤度を軽減する方法を必要とする患者における脳癌を処置するか、またはその重篤度を軽減する方法であって、該患者に本発明の化合物またはその組成物を投与することを含む方法に関する。
【0109】
別の実施形態において、増殖性障害は、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、慢性特発性骨髄線維症、骨髄線維症を伴う骨髄化生、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病、慢性好酸球性白血病、好酸球増加症候群、全身性肥満細胞症、異型CML、または若年性骨髄単球性白血病である。
【0110】
別の実施形態において、増殖性障害は、アテローム性動脈硬化症または肺線維症である。
【0111】
本発明の別の態様は、腫瘍転移を阻害する方法を必要とする患者における腫瘍転移を阻害する方法であって、該患者に本発明の化合物またはその組成物を投与することを含む方法に関する。
【0112】
処置すべき具体的な状態、または疾患に応じて、そのような状態を処置するために通常投与される追加的治療薬も、本発明の組成物に存在することが可能である。本明細書において、通常、特定の疾患または状態を処置するために投与される追加的治療薬は、「処置中の疾患または状態に適したもの」として知られている。
【0113】
一つの実施形態において、化学療法剤またはその他の抗増殖剤を本発明の化合物と併用して、増殖性疾患および癌を処置することが可能である。既知の化学療法剤の例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:アルキル化剤、例えば、シクロホスファミド、ロムスチン、ブスルファンプロカルバジン、イホスファミド、アルトレタミン、メルファラン、リン酸エストラムスチン、ヘキサメチルメラミン、メクロレタミン、チオテパ、ストレプトゾシン、クロラムブシル、テモゾロマイド、ダカルバジン、セムスチン、またはカルムスチンなど;白金製剤、例えば、シスプラチン、カルボプラチナム、オキサリプラチン、ZD−0473(AnorMED)、スピロプラチナム、ロバプラチン(Aeterna)、カルボキシフタラトプラチナム、サトラプラチン(Johnson Matthey)、テトラプラチンBBR−3464、(Hoffmann−La Roche)、オルミプラチン、SM−11355(Sumitomo)、イプロプラチン、またはAP−5280(Access)など;代謝拮抗剤、例えば、アザシチジン、トムデックス、ゲムシタビン、トリメトリキサート、カペシタビン、デオキシコホルマイシン、5−フルオロウラシル、フルダラビン、フロクスウリジン、ペントスタチン、2−クロロデオキシアデノシン、ラルチトレキセド、6−メルカプトプリン、ヒドロキシウレア、6−チオグアニン、デシタビン(SuperGen)、シタラビン、クロファラビン(Bioenvision)、2−フルオロデオキシシチジン、イロフルベン(MGI Pharma)、メトトレキサート、DMDC(Hoffmann−La Roche)、イダトレキサート、またはエチニルシチジン(Taiho)など;トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、アムサクリン、ルビテカン(SuperGen)、エピルビシン、メシル酸エキサテカン(Daiichi)、エトポシド、キナメド(ChemGenex)、テニポシド、ミトキサントロン、ギマテカン(Sigma−Tau)、イリノテカン(CPT−11)、ジフロモテカン(Beaufour−Ipsen)、7−エチル−10−ヒドロキシ−カンプトテシン、TAS−103(Taiho)、トポテカン、エルサミトルシン(Spectrum)、デクスラゾキサン(dexrazoxanet)(TopoTarget)、J−107088(Merck & Co)、ピクサントロン(Novuspharma)、BNP−1350(BioNumerik)、レベッカマイシンアナログ(Exelixis)、CKD−602(Chong Kun Dang)、BBR−3576(Novuspharma)、またはKW−2170(Kyowa Hakko)など;抗腫瘍性抗生物質、例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、アモナフィド、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アゾナフィド、デオキシルビシン、アントラピラゾール、バルルビシン、オキサントラゾール、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ロソキサントロン、エピルビシン、ブレオマイシン、硫酸塩(ブレノキサン)、テラルビシン、ブレオマイシン酸、イダルビシン、ブレオマイシンA、ルビダゾン、ブレオマイシンB、プリカマイシン(plicamycinp)、マイトマイシンC、ポルフィロマイシン、MEN−10755(Menarini)、シアノモルホリノドキソルビシン、GPX−100(Gem Pharmaceuticals)、またはミトキサントロン(novantrone)など、抗有糸分裂剤、例えば、パクリタキセル、SB408075(GlaxoSmithKline)、ドセタキセル、E7010(Abbott)、コルヒチン、PG−TXL(Cell Therapeutics)、ビンブラスチン、IDN 5109(Bayer)、ビンクリスチンA、105972(Abbott)、ビノレルビン、A204197(Abbott)、ビンデシン、LU223651(BASF)、ドラスタチン10(NCI)、D24851(ASTAMedica)、リゾキシン(Fujisawa)、ER−86526(Eisai)、ミボブリン(Warner−Lambert)、コンブレタスタチンA4(BMS)、セマドチン(BASF)、イソホモハリコンドリン−B(PharmaMar)、RPR 109881A(Aventis)、ZD6126(AstraZeneca)、TXD258(Aventis)、PEG−パクリタキセル(Enzon)、エポチロンB(Novartis)、AZ10992(Asahi)、T900607(Tularik)、IDN−5109(Indena)、T138067(Tularik)、AVLB(Prescient NeuroPharma)、クリプトフィシン52(Eli Lilly)、アザエポチロンB(BMS)、ビンフルニン(Fabre)、BNP−7787(BioNumerik)、アウリスタチンPE(Teikoku Hormone)、CA−4プロドラッグ(OXiGENE)、BMS247550(BMS)、ドラスタチン−10(NIH)、BMS184476(BMS)、CA−4(OXiGENE)、BMS188797(BMS)、またはタキソプレキシン(Protarga)など;アロマターゼ阻害剤、例えば、アミノグルテチミド、エキセメスタン、レトロゾール、アタメスタン(BioMedicines)、アナストロゾール(anastrazole)、YM−511(Yamanouchi)、またはフォルメスタンなど;チミジル酸合成酵素阻害剤、例えば、ペメトレキセド(Eli Lilly)、ノラトレキセド(Eximias)、ZD−9331(BTG)、またはCoFactor(商標)(BioKeys)など;DNAアンタゴニスト、例えば、トラベクテジン(PharmaMar)、マフォスファミド(Baxter International)、グルフォスファミド(Baxter International)、アパジコン(Spectrum Pharmaceuticals)、アルブミン+32P(Isotope Solutions)、O6ベンジルグアニン(Paligent)、チメクタシン(NewBiotics)、またはエドトレオチド(Novartis)など;ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、アルグラビン(NuOncology Labs)、チピファルニブ(Johnson & Johnson)、ロナファルニブ(Schering−Plough)、ペリリルアルコール(DOR BioPharma)、またはBAY−43−9006(Bayer)など; ポンプ阻害剤、例えば、CBT−1(CBA Pharma)、ゾスキダル三塩酸塩(Eli Lilly)、タリキダル(Xenova)、二クエン酸ビリコダル(Vertex)、またはMS−209(Schering AG)など;ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、タセジナリン(Pfizer)、酪酸ピバロイルオキシメチル(Titan)、SAHA(Aton Pharma)、デプシペプチド(Fujisawa)、またはMS−275(Schering AG)など;メタロプロテイナーゼ阻害剤、例えば、ネオバスタット(Aeterna Laboratories)、CMT−3(CollaGenex)、マリマスタット(British Biotech)、またはBMS−275291(Celltech)など;リボヌクレオシド還元酵素阻害剤、例えば、ガリウムマルトレート(Titan)、テザシタビン(Aventis)、トリアピン(Vion)、またはジドックス(Molecules for Health)など;TNFアルファアゴニスト/アンタゴニスト、例えば、ビルリジン(Lorus Therapeutics)、レビミド(Celgene)、CDC−394(Celgene)、エンタネルセプト(Immunex Corp.)、インフリキシマブ(Centocor,Inc.)、またはアダリムマブ(Abbott Laboratories)など;エンドセリンA受容体アンタゴニスト、例えば、アトラセンタン(Abbott)、YM−598(Yamanouchi)、またはZD−4054(AstraZeneca)など;レチノイン酸受容体アゴニスト、例えば、フェンレチニド(Johnson & Johnson)、アリトレチノイン(Ligand)、またはLGD−1550(Ligand)など;免疫調節剤、例えば、インターフェロンデキソソーム療法(Anosys)、オンコファージ(Antigenics)、ペントリックス(Australian Cancer Technology)、GMK(Progenics)、ISF−154(Tragen)、腺癌ワクチン(Biomira)、癌ワクチン(Intercell)、CTP−37(AVI BioPharma)、ノレリン(Biostar)、IRX−2(Immuno−Rx)、BLP−25(Biomira)、PEP−005(Peplin Biotech)、MGV(Progenics)、シンクロバックス(synchrovax)ワクチン(CTL Immuno)、βアレチン(Dovetail)、黒色腫ワクチン(CTL Immuno)、CLL療法(Vasogen)、またはp21RASワクチン(GemVax)など;ホルモン剤および抗ホルモン剤、例えば、エストロゲン、プレドニゾン、結合型エストロゲン、メチルプレドニゾロン、エチニルエストラジオール、プレドニゾロン、クロルトリアニセン、アミノグルテチミド、イデネストロール、ロイプロリド、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、ゴセレリン、メドロキシプロゲステロン、ロイポレリン、テストステロン、ビカルタミド、プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン、フルタミド、メチルテストステロン、オクトレオタイド、ジエチルスチルベストロール、ニルタミド、メゲストロール、ミトタン、タモキシフェン、P−04(Novogen)、トレモフィン、2−メトキシエストラジオール(EntreMed)、デキサメタゾン、またはアルゾキフェン(Eli Lilly)など;光線力学療法剤、例えば、タラポルフィン(Light Sciences)、Pd−バクテリオフェオホルビド(Yeda)、セラルックス(Theralux)(Theratechnologies)、ルテチウムテキサフィリン(Pharmacyclics)、モテクサフィンガドリニウム(Pharmacyclics)、またはヒペリシンなど;およびチロシンキナーゼ阻害剤、例えば、イマチニブ(Novartis)、カハラリドF(kahalide F)(PharmaMar)、レフルノミド(Sugen/Pharmacia)、CEP−701(Cephalon)、ZD1839(AstraZeneca)、CEP−751(Cephalon)、エルロチニブ(Oncogene Science)、MLN518(Millenium)、カネルチニブ(Pfizer)、PKC412(Novartis)、スクアラミン(Genaera)、フェノキソジオール、SU5416(Pharmacia)、トラスツズマブ(Genentech)、SU6668(Pharmacia)、C225(ImClone)、ZD4190(AstraZeneca)、rhu−Mab(Genentech)、ZD6474(AstraZeneca)、MDX−H210(Medarex)、バタラニブ(Novartis)、2C4(Genentech)、PKI166(Novartis)、MDX−447(Medarex)、GW2016(GlaxoSmithKline)、ABX−EGF(Abgenix)、EKB−509(Wyeth)、IMC−1C11(ImClone)、またはEKB−569(Wyeth)など。
【0114】
上記追加的治療薬は、複数回投薬計画の一部として、化合物含有組成物とは別に投与することが可能である。あるいは、上記薬剤は、単一組成物中で本発明の化合物と混合された、単一剤形の一部であってもよい。複数回投薬計画の一部として投与されるのであれば、2種類の活性薬剤を、同時に、連続的に、または互いに一定の期間内に、通常は、互いに5時間以内に提示することが可能である。
【0115】
担体物質と組み合わせて単一剤形を作製することが可能な化合物と(上記したように追加的治療薬を含む上記組成物中の)追加的治療薬の両方の量は、処置を受ける対象、および具体的な投与方式に応じて変わる。好ましくは、本発明の組成物は、0.01〜100mg/kg体重/日の用量の化学式I化合物を投与することができるよう製剤すべきである。
【0116】
追加的治療薬を含む上記組成物において、上記追加的治療薬および本発明の化合物は、相乗的に作用する可能性がある。そのため、そのような組成物中の追加的治療薬の量は、上記治療薬のみを利用する単剤治療法において必要とされる量に満たない。そのような組成物では、0.01〜100mg/kg体重/日の用量の追加的治療薬を投与することができる。
【0117】
本発明の組成物中に存在する追加的治療薬の量は、通常、その追加的治療薬を唯一の活性薬剤として含む組成物で投与されるであろう量よりも多くはない。好ましくは、本開示に係る組成物中の追加的治療薬の量は、その薬剤を唯一の治療活性薬剤として含む組成物中に通常存在する量の約50%から100%の範囲にある。
【0118】
また、本発明の化合物、またはその医薬組成物は、埋め込み用医療機器、例えば、人工器官、人工弁、代用血管、ステント、およびカテーテルをコーティングするための組成物に取り込ませることが可能である。例えば、血管ステントは、再狭窄(損傷後の血管壁の再狭窄)を克服するために用いられてきた。しかし、ステントまたはその他の埋め込み用機器を使用する患者は、血栓形成または血小板活性化のリスクを負っている。これらの望ましくない効果は、キナーゼ阻害剤を含む薬学的に許容可能な組成物によって該機器を事前にコーティングしておくことによって予防または軽減することが可能である。適当なコーティング剤およびコーティングされた埋め込み用機器の一般的な調製法は、米国特許第6,099,562号;第5,886,026号;および第5,304,121号に記載されている。コーティング剤は、典型的には、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル、およびこれらの混合物など生体適合性ポリマー物質である。このコーティング剤を、随意で、フルオロシリコーン、多糖類、ポリエチレングリコール、リン脂質、またはこれらを組み合わせたものの適当な上塗りによってさらに覆って、組成物に制御放出特性を付与することも可能である。本発明の化合物でコーティングされた埋め込み用機器は、本発明の別の実施形態である。
【0119】
本明細書記載の発明をより完全に理解できるようにするために、以下の実施例を示す。当然のことながら、これらの実施例は単に例示目的のものに過ぎず、いかなる形でも本発明を限定するものと解されるべきでない。
【0120】
本発明の化合物の調製
以下の定義は、本明細書において用いられている用語および略語を説明するものである:
Boc t−ブトキシカルボニル
ブライン NaClで飽和させた水
BSA ウシ血清アルブミン
DCM ジクロロメタン
DIAD ジイソプロピルアゾジカルボキシレート
DIEA ジイソプロピルエチルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO メチルスルホキシド
ESMS エレクトロスプレー質量分析
EtO エチルエーテル
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エチルアルコール
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
J いくつかの化学構造において、「J」はヨウ素原子を表すために用いられる。
Me メチル
MeOH メタノール
NBS N−ブロモコハク酸イミド
PdCl(dppf) 1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン〕ジクロロパラジウム(II)
Ph フェニル
RT 室温
tBu 第三ブチル
TCA トリクロロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
TLC 薄層クロマトグラフィー
TMS トリメチルシリル
本明細書において、その他の略語、記号、および慣例的表現は、現代科学文献において使用されているものと一致している。例えば、Janet S.Dodd,ed.,The ACS Style Guide:A Manual for Authors and Editors、第2版、Washington,D.C.:American Chemical Society、1997年を参照のこと。この文献は、参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0121】
本明細書において、「R(分)」という用語は、化合物に関連した、HPLC保持時間を分で表したものを意味する。別段の指定がない限り、報告された保持時間を得るために使用されたHPLC法は次の通りである:カラム:Zorbax SB C18カラム、3.0×150mm;勾配:10〜90%アセトニトリル/水(0.1%TFA)、5分;流速:1.0mL/分;および検出:254および214nm。
【0122】
逆相HPLCによる精製は、水/アセトニトリル(0.1%TFA)の直線勾配を、流速28mL/分で用いたWaters20×100mm YMC−Pack Pro C18カラム上で実施した。勾配の開始組成物と最終組成物は、10〜40%アセトニトリルと50〜90%アセトニトリルそれぞれの間で、化合物ごとに変化した。
【0123】
合成法
一般的に、本発明の化合物は、本明細書に説明されている方法、または類似化合物の調製について当業者に知られている方法によって調製することが可能である。以下の非限定的なスキームおよび実施例は、本発明をさらに例示するために提示されたものである。選択された本発明の化合物の物理化学的特性評価が表2に提供されている。
【実施例】
【0124】
実施例1.5−ブロモ−3−(1−(2,3−ジフルオロ−4−メトキシフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−アミン(化合物1005)およびN−tert−ブチル−3−(1−(4−ブロモ−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−アミン(化合物1009)の調製
【0125】
【化8】

【0126】
スキーム1の工程1−iに示すように、2−フルオロニコチン酸(8.5g、59.0mmol)を、100mLの無水ジクロロメタンおよび0.274mLの無水DMFに懸濁した。この混合液を、氷浴によって5℃に冷却した。冷却した混合液に塩化オキサリル(5.41mL、62.0mmol)を一滴ずつ加えた。添加した後、混合液を室温まで温め、15時間撹拌したところで、すべての固形物が溶液になった。この混合液を0℃に冷却し、30mLのDCM中に入れた2,3−ジフルオロ−4−メトキシアニリン(化合物1001、10.0g、62.84mmol)を一滴ずつ加えた。その後、DIEA(20.6mL、118.1mmol)を滴下した。この混合液を室温まで温め、16時間撹拌した後、60mLの2M HClで反応を停止させた。この有機分を50mLの飽和炭酸水素ナトリウムで2回、50mLの水で1回、さらに50mLのブラインで1回洗浄した。そして、この有機分を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。残留物を、350mLのヘキサンでスラリー状にし、30分間撹拌し、真空濾過によって回収し、ヘキサンで十分に洗浄し、真空下で乾燥させ、2−フルオロ−N−(2,3−ジフルオロ−4−メトキシフェニル)ピリジン−3−カルボキサミド(化合物1002、14.3g、収率86%)を得た: H NMR(300 MHz,CDCl) δ 8.68−8.62(m,2H),8.40(dt,J=4.7,1.6Hz,1H),8.06−7.99(m,1H),7.44(td,J=5.0,2.5Hz,1H),6.82−6.75(m,1H)および3.91(d,J=5.4Hz,3H)。
【0127】
スキーム1の工程1−iiに示すように、化合物1002(9.8g、34.4mmol)を乾燥N−メチルピロリジノン(75mL)およびtert−ブチルアミン(25mL、237mmol)に溶解して、その混合液を15時間で100℃に加熱した。この反応液を室温まで冷却してから、激しく撹拌しながら飽和NaHCOに注入した。生じた沈殿物を真空濾過によって回収し、水で十分に洗浄し、真空オーブンで16時間乾燥させた。この固形物を取り出してEtOAcの中に入れ、有機分を水とブラインで洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した後、有機分をヘキサンで処理し、得られた沈殿物を濾過によって回収し、2−(tert−ブチルアミノ)−N−(2,3−ジフルオロ−4−メトキシフェニル)ピリジン−3−カルボキサミド(化合物1003、9.2g、収率79.8%)を得た:H NMR(300 MHz,CDCl) 8.26(dd,J=1.8,4.7Hz,1H),8.01(s,1H),7.83−7.77(m,1H),7.68−7.64(m,2H),6.80−6.73(m,1H),6.51(dd,J=4.7,7.7Hz,1H),3.91(s,3H)および1.49(s,9H)。
【0128】
スキーム1の工程1−iiiに示すように、化合物1003(9.2g、27.4mmol)を100mLの無水アセトニトリルの中に溶解させた。トリフェニルホスフィン(8.26mL、35.7mmol)を加えて、混合液を室温で5分間撹拌し、その後、四塩化炭素(3.18mL、32.9mmol)を加えた。この混合液を3時間還流し、室温まで冷却してから、TMS−アジド(5.41mL、41.14mmol)を加えた。この反応液を加熱して18時間還流し、室温まで冷却してから、EtOAcで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。有機分を濾過し、減圧下で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(10〜30%EtOAc/ヘキサン)によって精製し、N−tert−ブチル−3−(1−(2,3−ジフルオロ−4−メトキシフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−アミン(化合物1004、7.80g、収率78.9%)を得た:ESMS(M+1)=361。
【0129】
スキーム1の工程1−ivに示すように、化合物1004(5.0g、13.9mmol)を15mLのメタノールおよび30mLの6M HClに溶解させた。10時間還流した後、混合液を0℃に冷却して、6M水酸化ナトリウムでpHを8に調整した。生じた白色の沈殿物を真空濾過によって回収し、水で十分に洗浄し、真空下で55℃にて16時間乾燥させ、3−(1−(2,3−ジフルオロ−4−メトキシフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−アミン(4.2g)を得た:ESMS(M+1)=305。
【0130】
スキーム1の工程1−vに示すように、3−(1−(2,3−ジフルオロ−4−メトキシフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−アミン(4.2g)を、50mLの無水アセトニトリルに懸濁して、0℃に冷却した。この混合液に、NBS(2.60g、14.62mmol)を一滴ずつ加えて1時間撹拌した。この混合液に、硫酸ナトリウムの濃縮溶液を加え、その後、濃縮した重炭酸ナトリウムを加えた。室温で1時間撹拌した後、反応液を濾過し、水で十分に洗浄し、真空下で55℃にて16時間乾燥させ、5−ブロモ−3−(1−(2,3−ジフルオロ−4−メトキシフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−アミンが得られた(化合物1005、4.50g、収率85.1%):ESMS(M+1)=383; H NMR(300 MHz,DMSO−d) δ 8.20(d,J=2.5Hz,1H),7.64−7.56(m,2H),7.36−7.28(m,1H),6.73(s,2H),および3.97(s,3H)。
【0131】
化合物1001を化合物1004に変換するのに用いた反応順序と同じ反応順序を用いて、化合物1006を化合物1009に変換した。特性評価データは以下のとおりである:化合物1007: ESMS(M+1)=329.16/331.12;化合物1008:ESMS(M+1)=382.36/384.34;および化合物1009:H NMR(300 MHz,DMSO−d) δ 8.21(dd,J=1.9,4.8Hz,1H),7.90−7.84(m,1H),7.54−7.48(m,1H),7.44(dd,J=1.9,7.7Hz,1H),6.71(s,1H),6.58(dd,J=4.8,7.7Hz,1H),および1.31(s,9H).
本発明の化合物を調製する上で有用な別の中間体である5−ブロモ−3−(置換−フェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−アミンを合成する際には、出発物質として以下のアニリンを同じように用いることができる:
【0132】
【化9】

【0133】
実施例2.1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール(化合物1012)の調製
【0134】
【化10】

【0135】
スキーム2の工程2−iに示すように、0℃にて、200mLのDCM中のテトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール(15.83g、0.155mol)、トリエチルアミン(21.6mL、0.155mol)、およびジメチルアミノピリジン(1.89g、0.015mol)の混合液に、塩化メタンスルホニル(12mL、0.155mol)を一滴ずつ加えた。この反応液を室温まで温めて、16時間撹拌した。この有機分を水で洗浄し、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、揮発性物質を減圧下で除去し、テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメタンスルホネート(化合物1010、22.6g、収率80.9%)を黄色の固形物として得た: H NMR(300 MHz,CDCl) δ 4.90(qn,J=4.2Hz,1H),3.95(dt,J=12.0,4.2Hz,2H),3.59−3.51(m,2H),3.04(s,3H),2.08−2.01(m,2H),1.94−1.82(m,2H)。
【0136】
スキーム2の工程2−iiに示すように、0℃にて、200mLの無水DMF中の4−ヨードピラゾール(24.21g、124.8mmol)の溶液に水素化ナトリウム(6.101mLの60%NaH/ミネラルオイル、137.3mmol)をゆっくりと加えた。この溶液を0℃で1時間撹拌し、100mLの無水DMF中のテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメタンスルホネート(化合物1010、22.5g、124.8mmol)を一滴ずつ加えた。この反応混合液を100℃で18時間加熱し、その時点で、25mLの無水DMF中、8.0gの(化合物1010)をさらに一滴ずつ加えた。この反応混合液を100℃でさらに24時間加熱した。この混合液を室温まで冷却し、100mLの水を加えた。この混合液をEtOAc(3x100mL)で抽出し、ひとまとめにした有機分を水で洗浄し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮し、半固形物を得た。DCMからの再結晶化によって、1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−4−ヨード−1H−ピラゾール(化合物1011、11.96g)を得た。母液をヘキサンでトリチュレートし、第二の結晶収穫物を得た(5.26g,全収率49.6%):ESMS(M+H)=279.0。
【0137】
スキーム2の工程2−iiiに示すように、DMSO中の1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−4−ヨード−1H−ピラゾール(化合物1011、1.0g、3.60mmol)、酢酸カリウム(776mg、7.91mmol)、およびビス(ピナコール)ジボロン(1.37g、5.39mmol)の混合液を窒素で30分間フラッシュした。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(623.3mg、0.539mmol)を加えて、反応液を95℃で16時間加熱した。室温まで冷却した後、混合液をEtOAcで希釈し、フロリジル(登録商標)のプラグに通して濾過し、続いて、EtOAc/ヘキサンで洗浄した。濾液を減圧下で濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜50%EtOAc/ヘキサン)によって精製し、1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾールを白色の固形物として得た(化合物1012、385mg、収率38.5%):H NMR(300 MHz,CDCl) δ 7.80(s,1H),7.75(s,1H),4.36(m,1H),4.08(d,2H),3.57(t,2H),2.08(m,4H),1.32(s,12H)。
【0138】
実施例3.tert−ブチル4−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(化合物1015)の調製
【0139】
【化11】

【0140】
スキーム3の工程3−iに示すように、N−Boc−4−ヒドロキシピペリジン(30g、149.1mmol、1eq.)、トリエチルアミン(22.87mL、164mmol、1.1eq.)およびN,N−ジメチルピリジン−4−アミン(DMAP)(1.83g、14.98mmol、0.1eq.)を、無水塩化メチレン(500mL)に溶解し、氷浴で0℃に冷却した。塩化メタンスルホニル(12.12mL、156.6mmol、1.05eq.)を一滴ずつ加えた。この滴下が終わったところで、反応液を室温まで温めて、16時間撹拌した。この反応液を水(3x100mL)および飽和炭酸水素ナトリウム(3x100mL)で洗浄した。ひとまとめにした洗液を塩化メチレンで逆抽出した。ひとまとめにした有機分をNaSO上で乾燥させて濃縮すると、40.83g(146.2mmol)の1−(tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イルメタンスルホネート(化合物1013、収率98%)が得られたが、これはオフホワイトの固形物で、それ以上精製することなしに使用した。
【0141】
スキーム3の工程3−iiに示すように、0℃でDMF(300mL)中の4−ブロモピラゾール(4.68g、31.83mmol)の溶液に、水素化ナトリウム(ミネラルオイル上60%、1.27g、31.83mmol)を加えた。この溶液を、0℃で1時間撹拌し、その時点で、DMF(50mL)中の化合物1013の溶液(9.78g、31.83mmol)を一滴ずつ加えた。この反応混合液を室温で1時間撹拌した後16時間還流した。2つの出発物質がともに見えなくなったことを、TLC(1:1EtOAc/ヘキサン)によって観察した。反応液を室温まで冷却し、ブライン(300mL)を加えて反応を停止させ、酢酸エチルで抽出した(3x200mL)。ひとまとめにした有機分を1%LiCl水溶液(3x200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生じた粗臭化物をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜25%EtOAc/ヘキサン)によって精製し、化合物1014を得た。
【0142】
スキーム3の工程3−iiiに示すように、tert−ブチル4−(4−ブロモ−1H−ピラゾール−1−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(化合物1014、10.52g、31.86mmol)、4,4,5,5−テトラメチル−2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボロラン(9.71g、38.23mmol)、および酢酸カリウム(9.38g、95.58mmol)を105mLの1,4−ジオキサンの中に溶解させた。この混合液を窒素で20分間フラッシュして、PdCl(dppf)(1.3g、1.59mmol)を加えた。この反応液を90℃で11時間加熱した。反応液を室温まで冷却し、フロリジル(登録商標)のプラグに通して濾過し、続いて、酢酸エチルで濯いだ。この濾液を減圧下で濃縮すると暗褐色の油ができ、それを、ヘキサンに溶解して、1:2のEtOAc/ヘキサンにより別のフロリジル(登録商標)のプラグに通して溶出した。この濾液を減圧下で濃縮すると、黄褐色の油が得られ、それをヘキサンでトリチュレートし、白色の沈殿物が形成されるまで0℃にて撹拌した。この沈殿物を真空濾過によって回収し、ヘキサンで洗浄し、乾燥し、6.79gのtert−ブチル4−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)ピペリジン−1−カルボキシレート(化合物1015)を得た。
【0143】
化合物1011を化合物1012に、また化合物1014を化合物1015に変換させるのと同様の方法で、他のハロゲン化アリールまたはハロゲン化ヘテロアリールを、本発明の化合物の調製に用いられるボロン酸中間体に変換することができる。
【0144】
実施例4.3−(1−(4−(4−(メチルアミノ)ブトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−2−アミン(化合物137)の調製
【0145】
【化12】

【0146】
スキーム4の工程4−iに示すように、150mLのDCM中の5−ブロモ−3−(1−(2,3−ジフルオロ−4−メトキシフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−アミン(化合物1005、20.0g、7.663mmol)を0℃に冷却した。三臭化ホウ素(DCM中20.0mLの1M溶液、20mmol)を一滴ずつ加えた。この滴下が終わった後、反応混合液を室温まで温め、48時間撹拌した。この反応液を、砕いた氷で慎重に停止させ、EtOAc(3x200mL)で抽出した。ひとまとめにした有機分を水で洗浄し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。濾過した後、減圧下で揮発性物質を除去すると、茶色の固形物が産出されたので、これをペンタンでトリチュレートし、4−(5−(2−アミノ−5−ブロモピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェノール(化合物1016)を薄茶色の固形物として得た。
【0147】
スキーム4の工程4−iiに示すように、30mLのTHF中の4−(5−(2−アミノ−5−ブロモピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェノール(化合物1016、3.0g、8.13mmol)の溶液に、14.13mLの2M KCO(aq)を加え、その後、1,4−ジブロモブタン(2.44mL、20.325mmol)を加えた(28.26mmol)。この反応混合液を70℃に加熱して、この温度で16時間撹拌した。この混合液を冷却し、減圧下で濃縮し、EtOAc(100mL)の中に溶解させ、水で洗浄し(3x30mL)、ブライン(30mL)で洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、有機分を濾過し、減圧下で揮発性物質を除去し、オフホワイトの固形物を得た。この固形物をシリカゲルクロマトグラフィー(10%EtOAc/ヘキサン)によって精製し、3−(1−(4−(4−ブロモブトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−ブロモピリジン−2−アミン(化合物1017、3.0g、収率73%)を得た。
【0148】
スキーム4の工程4−iiiに示すように、3−(1−(4−(4−ブロモブトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−ブロモピリジン−2−アミン(化合物1017、3.0g、4.08mmol)を30mLのTHFに溶解して、0℃に冷却した。メチルアミン(50mLの水中40%のメチルアミンを加熱して生成させたもの)を気泡にして反応混合液の中に送り込み、4時間撹拌を続けた。TLC解析によって出発物質が消尽された後、反応混合液を減圧下で濃縮し、残留物を100mLのEtOAcの中に溶解させた。有機分を水(3x30mL)およびブライン(30mL)で洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、有機分を濾過し、減圧下で揮発性物質を除去し、3−(1−(4−(4−(メチルアミノ)ブトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−ブロモピリジン−2−アミン(化合物1018、1.60g、収率88%)を白色の固形物として得た。
【0149】
スキーム4の工程4−ivに示すように、3−(1−(4−(4−(メチルアミノ)ブトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−ブロモピリジン−2−アミン(化合物1018、1.80g、4.088mmol)を20mLのTHFに溶解して、KCOの2M水溶液(6mL)を加え、その後、二炭酸ジ−tert−ブチル(1.0mL、4.35mmol)を加えた。この反応混合液を室温で16時間撹拌した。EtOAcで抽出(2x100mL)した後、ひとまとめにした有機分を水で洗浄(2x50mL)し、ブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。濾過後、揮発性物質を減圧下で除去し、tert−ブチル4−(4−(5−(2−アミノ−5−ブロモピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェノキシ)ブチルメチルカルバメート(化合物1019、1.80g、収率82%)を白色の固形物として得た。
【0150】
スキーム4の工程4−vに示すように、tert−ブチル4−(4−(5−(2−アミノ−5−ブロモピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェノキシ)ブチルメチルカルバメート(化合物1019、554mg、1.00mmol)と1−メチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール(250mg、1.20mmol)を8.0mLのDMFに溶解し、4.0mLの飽和NaHCO(aq)を加えた。この混合液をアルゴンガスで1時間フラッシュし、PdCl(dppf)(43.2mg、53.0mmol)を加えた。この反応混合液を、さらに30分間アルゴンでフラッシュし、その後、100℃に1時間加熱した。冷却した後、混合物をEtOAc(80mL)で希釈し、水で洗浄し(3x40mL)、ブライン(40mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。濾過後、有機分を減圧下で濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(40%EtOAc/ヘキサン)によって精製し、tert−ブチル4−(4−(5−(2−アミノ−5−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェノキシ)ブチルメチルカルバメート(278mg、収率50%)を得、これを後続の反応に使用した。
【0151】
スキーム4の工程4−viに示すように、tert−ブチル4−(4−(5−(2−アミノ−5−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェノキシ)ブチルメチルカルバメート(147mg、265mmol)を4mLのDCMに溶解させ、エチルエーテル中1MのHCl(1.0mL)で処理した。この反応混合液を室温に温めて、16時間撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去し、生じた白色の固形物をエチルエーテルでトリチュレートし、3−(1−(4−(4−(メチルアミノ)ブトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−2−アミン塩酸塩(化合物137、109mg、収率84%)を得た。
【0152】
適当なジブロモアルカン、アミン、およびボロン酸エステルを用いて、上記実施例4で説明した手順と同様の手順によって以下の化合物を調製した:化合物134〜135および137〜138。
【0153】
実施例5.3−(1−(4−(4−モルホリノブトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−(1−イソペンチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−2−アミン(化合物150)の調製
【0154】
【化13】

【0155】
スキーム5の工程5−iに示すように、26mLのDMF中の4−(5−(2−アミノ−5−ブロモピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェノール(化合物1016、2.0g、5.42mmol)と1−イソペンチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール(1.57g、5.96mmol)の溶液に、13mLの飽和NaHCO(aq)を加えた。この混合液をアルゴンガスで45分間フラッシュして、PdCl(dppf)(442mg、6.54mmol)を加えた。この反応混合液を、アルゴンでさらに30分間フラッシュしてから、100℃で1時間加熱した。冷却した後、反応混合液をEtOAc(100mL)で希釈して、水(50mL)で洗浄し、ブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(80%EtOAc/ヘキサン)で精製し、4−(5−(2−アミノ−5−(1−イソペンチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェノールを得た(化合物1020、2.0g、収率58%)。
【0156】
スキーム5の工程5−iiに示すように、4−(5−(2−アミノ−5−(1−イソペンチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェノール(化合物1020、690mg、1.62mmol)を15mLのTHFの中に溶解させ、0℃に冷却し、2.0mLの2M KCO(aq)を加え、その後、1,3−ジブロモプロパン(0.40mL、4.043mmol)を加えた。この反応混合液を80℃で16時間加熱した。この混合液を室温まで冷却し、冷水で処理し、CHClで抽出した(2×50mL)。ひとまとめにした有機分をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で揮発性物質を除去した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(60〜80%EtOAc/ヘキサン)で精製し、3−(1−(4−(3−ブロモブトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−(1−イソペンチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−2−アミンを得た(化合物1021、680mg、収率53%)。
【0157】
スキーム5の工程5−iiiに示すように、3−(1−(4−(3−ブロモブトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−(1−イソペンチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−2−アミン(化合物1021、111mg、0.203mmol)を5mLのTHFに溶解して、0℃に冷却した。この混合液を、ピペリジン(0.06mL、0.61mmol)で処理し、70℃に温めて、16時間撹拌した。この反応液を室温に冷却し、冷水で処理し、CHCl(50mL)で抽出した。有機分を水で洗浄し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で揮発性物質を除去した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(5%MeOH/CHCl)によって精製し、3−(1−(4−(3−(ピペリジン−1−イル)プロポキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−(1−イソペンチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−2−アミンを得た(化合物150、70mg、収率78%)。
【0158】
適当なボロン酸エステル、ジブロモアルカン、およびアミンを用いて、上記実施例5で説明した手順と同様の手順で以下の化合物を調製した:化合物132〜133、136、148〜149、151〜154、157〜171、および174〜176。
【0159】
実施例6.3−(1−(4−(2−(ジメチルアミノ)エトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−2−アミン(化合物2)の調製
【0160】
【化14】

【0161】
スキーム6の工程6−iに示すように、0℃で4mLのTHF中の4−(5−(2−アミノ−5−ブロモピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェノール(化合物1016、1.0g、2.71mmol)、2−クロロエタノール(218μL、3.25mmol)、およびトリフェニルホスフィン(853mg、3.25mmol)の溶液に、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(630μL、3.25mmol)を加えた。この混合液を、80℃で10分間、マイクロ波照射下にて加熱した。冷却した後、混合液をEtOAcで希釈して、飽和塩化アンモニウムで洗浄し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜40%EtOAc/ヘキサン)で精製し、3−(1−(4−(2−クロロエトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−ブロモピリジン−2−アミンを得た(化合物1022、1.169g、収率100%)。
【0162】
スキーム6の工程6−iiに示すように、13.5mLのアセトン中の3−(1−(4−(2−クロロエトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−ブロモピリジン−2−アミン(化合物1022、1.169g、2.71mmol)の溶液にヨウ化ナトリウム(812.7mg、5.42mmol)を加え、反応混合液を還流で16時間加熱した。追加のヨウ化ナトリウム(406mg、2.71mmol)を加え、反応液を密封し、マイクロ波照射下にて100℃で20分間加熱して、塩化物が、中間体であるヨウ化物に変換するのを完了させた。冷却した後、混合液を濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をDMF(10mL)に溶解して、KCO(562mg、4.07mmol)およびジメチルアミン(THF中2M溶液で2.03mL、4.07mmol)を加えた。この反応混合液を密封して、室温で16時間撹拌した。この混合液をEtOAcで希釈して、有機分を水で洗浄し(3回)、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で揮発性物質を除去し、3−(1−(4−(2−(ジメチルアミノ)エトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−ブロモピリジン−2−アミン(化合物1023、1.09g、収率87%)を得た。
【0163】
スキーム6の工程6−iiiに示すように、3mLのDMF中の3−(1−(4−(2−(ジメチルアミノ)エトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−ブロモピリジン−2−アミン(化合物1023、50mg、0.114mmol)、1−メチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール(30.7mg、0.148mmol)、および1.2M NaHCO(aq)(284μL、0.341mmol)の混合液を窒素ガスで1時間フラッシュした。PdCl(dppf)(5.0mg、0.007mmol)を加え、その混合液を密閉チューブ内でマイクロ波照射下にて120℃で11分間加熱した。冷却した後、反応混合液を飽和炭酸水素ナトリウム(aq)の中に注ぎ込み、それに続いて、EtOAcで抽出した。ひとまとめにした有機分をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜50%の1:9メタノール中7M NH/DCM)によって精製した。得られた精製産物をメタノールに溶解し、2M HCl/エチルエーテルで処理し、20分間撹拌した。減圧下で濃縮した後、残留物を、アセトニトリル/水に溶解し、凍結乾燥し、3−(1−(4−(2−(ジメチルアミノ)エトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−2−アミン(化合物2、8.3mg、収率14%)を得た。
【0164】
適当なフェノール、アミン、およびボロン酸エステルを用い、上記実施例6で説明した手順と同様の手順によって以下の化合物を調製した:化合物1、4〜96、100〜105、および110〜111。
【0165】
実施例7.3−(1−(4−(4−(メチルアミノ)シクロヘキシルオキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−2−アミン(化合物131)および3−(1−(4−(4−(ジメチルアミノ)シクロヘキシルオキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−2−アミン(化合物177)の調製
【0166】
【化15】

【0167】
スキーム7の工程7−iに示すように、0℃で80mLのTHF中の4−(5−(2−アミノ−5−ブロモピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェノール(化合物1016、2.06g、5.59mmol)、tert−ブチル4−ヒドロキシシクロヘキシルメチルカルバメート(1.60g、7.0mmol)、およびトリフェニルホスフィン(548mg、13.97mmol)の溶液に、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(5.53mL、27.9mmol)をゆっくりと加えた。添加が終わった後、反応混合液を室温まで温め、室温にてさらに1時間、撹拌を続けた。50mLの飽和NHCl(aq)で反応を停止させ、EtOAcで抽出した(2×50mL)。ひとまとめにした有機分を水(50mL)で洗浄し、ブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(20%EtOAc/ヘキサン)によって精製し、tert−ブチル4−(4−(5−(2−アミノ−5−ブロモピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェノキシ)シクロヘキシルメチルカルバメート(化合物1024、1.0g、収率31%)を得た。
【0168】
スキーム7の工程7−iiに示すように、tert−ブチル4−(4−(5−(2−アミノ−5−ブロモピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェノキシ)シクロヘキシルメチルカルバメート(化合物1024、250mg、0.43mmol)、1−メチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール(90mg、0.43mmol)、2mLの飽和NaHCO、および4mLのDMFの混合液をアルゴンガスで1時間フラッシュした。PdCl(dppf)(17mg、0.021mmol)を加えて、この反応混合液をアルゴンガスでさらに30分間フラッシュし、その後、100℃で1時間加熱した。冷却した後、混合液を40mLのEtOAcで希釈し、水(3×20mL)で洗浄し、ブライン(20mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(40%EtOAc/ヘキサン)で精製し、tert−ブチル4−(4−(5−(2−アミノ−5−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェノキシ)シシクロヘキシルメチルカルバメート(化合物1025、100mg、収率40%)を得た。
【0169】
スキーム7の工程7−iiiに示すように、tert−ブチル4−(4−(5−(2−アミノ−5−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェノキシ)−シシクロヘキシルメチルカルバミン酸(化合物1025、146mg、0.264mmol)を3mLのDCMの中に溶解させ、エチルエーテル中の1M HCl(1.0mL)で処理した。この反応混合液を室温まで温めて、16時間撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去し、得られた白色の固形物をエチルエーテルでトリチュレートし、3−(1−(4−(4−(メチルアミノ)シクロヘキシルオキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−2−アミン二塩酸塩(化合物131、63mg、収率66%)を得た。
【0170】
スキーム7の工程7−ivに示すように、3−(1−(4−(4−(メチルアミノ)シクロヘキシルオキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−2−アミン二塩酸塩(化合物131、60mg、0.108mmol)を30mLのTHFに溶解した。KCO(15mg、0.108mmol)を加えた後、ヨウ化メチル(8.5μL、0.108mmol)を加えた。この反応混合液を室温で30分間撹拌し、水(30mL)で希釈して、EtOAc(2×20mL)で抽出した。ひとまとめにした有機分を水(2×30mL)で洗浄し、ブライン(20mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(1%メタノール/CHCl(溶出液100mLに対して濃縮NHOHを6滴ずつ含む))によって精製し、3−(1−(4−(4−(ジメチルアミノ)シクロヘキシルオキシ)−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−2−アミン(化合物177、37.5mg、収率70%)を得た。
【0171】
別の手順では、化合物131のような第二級アミンをパラホルムアルデヒド/NaBH(OAc)で処理して、対応するN−メチル化三級アミンを生成させることもできる。
【0172】
適当なヒドロキシル化合物およびボロン酸エステルを用い、上記実施例7で説明した手順と同様の手順によって以下の化合物を調製した:化合物3、106〜109、112〜130、139〜147、155〜156、172〜173、および178−179.
実施例8.3−(1−(2,3−ジフルオロ−4−(ピペリジン−1−イル)フェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−2−アミン(化合物97)の調製
【0173】
【化16】

【0174】
スキーム8の工程8−iに示すように、トルエン中のN−tert−ブチル−3−(1−(4−ブロモ−2,3−ジフルオロフェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−2−アミン(化合物1009、500mg、1.10mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(20.15mg、0.022mmol)、Boc−ピペラジン(266mg、1.43mmol)、(R)−(+)−(1,1'−ビナフタレン−2,2'−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)(68.5mg、0.11mmol)、ナトリウム−t−ブトキシド(148mg、1.54mmol)を100℃で24時間加熱した。冷却した後、反応混合液をEtOAcで希釈し、水で洗浄し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(30%EtOAc/ヘキサン)で精製し、tert−ブチル4−(4−(5−(2−(tert−ブチルアミノ)ピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェニル)ピペラジン−1−カルボキシレートを得た(化合物1026、350mg、収率62%):ESMS(M+1)=515.2
スキーム8の工程8−iiに示すように、tert−ブチル4−(4−(5−(2−(tert−ブチルアミノ)ピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェニル)ピペラジン−1−カルボキシレート(化合物1026、350mg、0.68mmol)を、5mLのアセトニトリルに溶解し、N−ブロモスクシンイミド(121mg、0.68mmol)を加えた。反応混合液を1時間撹拌し、1M Na(aq)を加えた。この混合液をEtOAcで抽出し、ひとまとめにした有機分をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(30%EtOAc/ヘキサン)で精製し、tert−ブチル4−(4−(5−(2−(tert−ブチルアミノ)−5−ブロモピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェニル)ピペラジン−1−カルボキシレート(化合物1027、290mg、収率72%)を得た:ESMS(M+1)=595.2。
【0175】
スキーム8の工程8−iiiに示すように、tert−ブチル4−(4−(5−(2−(tert−ブチルアミノ)−5−ブロモピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェニル)ピペラジン−1−カルボキシレート(化合物1027、100mg、0.169mmol)、1−メチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール(42.1mg、0.20mmol)、1.2M NaHCO(aq)(0.14mL)、および1mLのDMFを窒素ガスで20分間フラッシュした。PdCl(dppf)(123mg、0.17mmol)を加えて、この反応混合液を、窒素ガスでさらに20分間フラッシュし、その後、120℃で10分間加熱した。冷却した後、この混合液をEtOAcで希釈し、水で洗浄し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜50%EtOAc/ヘキサン)で精製し、tert−ブチル 4−(4−(5−(2−(tert−ブチルアミノ)−5−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェニル)ピペラジン−1−カルボキシレート(化合物1028、95mg、収率95%)を得た:ESMS(M+1)=595.3。
【0176】
スキーム8の工程8−ivに示すように、tert−ブチル 4−(4−(5−(2−(tert−ブチルアミノ)−5−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−3−イル)−1H−テトラゾール−1−イル)−2,3−ジフルオロフェニル)ピペラジン−1−カルボキシレート(化合物1028、95mg、0.16mmol)を、5mLの5.5 M HCl/イソプロパノールで処理して、この反応混合液を70℃で10時間撹拌した。冷却した後、得られた固体を濾過によって回収し、3−(1−(2,3−ジフルオロ−4−(ピペラジン−1−イル)フェニル)−1H−テトラゾール−5−イル)−5−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−2−アミン(化合物97、26mg、収率32%)を得た。
【0177】
適当なボロン酸エステルを用い、上記実施例8で説明した手順と同様の手順によって以下の化合物を調製した:化合物98〜99。
【0178】
【表2−1】

【0179】
【表2−2】

【0180】
【表2−3】

【0181】
【表2−4】

【0182】
【表2−5】

【0183】
【表2−6】

【0184】
【表2−7】

【0185】
【表2−8】

【0186】
【表2−9】

【0187】
【表2−10】

【0188】
【表2−11】

【0189】
【表2−12】

【0190】
本発明の化合物の生物学的測定法
実施例31.c−METキナーゼ阻害測定
本発明の化合物を、標準的な放射分析測定法を用いて、c−METキナーゼを阻害する能力についてスクリーニングした。端的に言うと、本キナーゼ測定法では、33P−ATPの末端にある33P−リン酸が、基質であるポリE4Yに転移するのを調べる。本測定法は、96穴プレート内で、各ウェルにつき最終容量を、1.0nM c−Met、100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、25mM NaCl、0.01%BSA、1mM DTT、0.5mg/mLのpolyE4Y、および35μM ATPを含有する100μLとして実施した。それによると、本発明の化合物をDMSOに溶解させて、10mMの最初の原液を作成した。そして、DMSOに段階希釈して、測定用の最終溶液を取得した。DMSOまたはDMSO中の阻害剤の1.5μL等量液を各ウェルに加えた。33P−ATPおよびpolyE4Y(Sigmaから入手)を加えて反応を開始させた。20分後、4mMのATPを含有する、50μLの30%トリクロロ酢酸(TCA)によって反応を停止させた。この反応混合液を0.66mmのGFフィルタープレート(Corning)に移して、5%TCAで3回洗浄した。50μLのUltimate Gold(商標)高効率シンチラント(Packard Bioscience)を添加した後に、試料を、Packard TopCount NXT Microplate Scintillation and Luminescence Counter(Packard BioScience)で計測した。Microsoft Excel Solverマクロを用いて、K値を計算し、そのデータを競合的強結合阻害についての動態モデルに適合させた。本測定法によって測定すると、化合物1から179はそれぞれ、3.9μM以下のKを有していた。
【0191】
実施例32.Snu5胃癌腫細胞におけるc−Met活性の阻害
改変Snu5細胞株中のルシフェラーゼ誘導シグナルを阻害する能力についても、本発明の化合物をスクリーニングした。Snu5[American Type Culture Collectionから入手(カタログ番号CRL−5973)]は、構成的に活性があるc−Metを過剰発現することが知られているヒトの胃癌腫である。この細胞株に、6×AP1プロモーター応答エレメントおよびC−末端にPEST配列(マウスオルニチンデカルボキシラーゼに由来するタンパク質分解シグナルであって、ルシフェラーゼの半減期を短縮する)を有するルシフェラーゼ遺伝子からなる遺伝子構築物を含有するレトロウイルスpCLPCXで形質導入した。また、構成的に活性型のcMetは、細胞経路(主にMAPキナーゼ)を活性化し、その結果、ルシフェラーゼ−PESTのAP−1誘導による転写、および最終生成物への翻訳が起きる。そして、その活性は、ルシフェリン(PromegaよりのSteady−Glo)添加によって化学発光の読み出しとして定量化できる。残存発光量(lumiscence)は、c−Metの阻害と強く相関する。ピューロマイシンで新しい細胞株(Snu5−AP1−Luc−Pest)を選択することによって、安定した細胞株を得た。細胞は、完全培地[10%ウシ胎仔血清(FBS、Hyclone)およびペニシリン/ゲンタマイシン(Invitrogen)を含有するIscove’s培地(Invitrogen)]の中で増殖させた。本発明の化合物をDMSOに溶解させて10mMの最初の原液を作成した。そして、DMSOに段階希釈して、完全培地に移し、10倍溶液を作成した。Snu5−AP1−Luc−Pest細胞の数を数え、200,000細胞/mL溶液に希釈した。この細胞(90μL)を、透明な底板をもつ96ウェル黒色プレート(Costar)の各ウェルに加えた。そして、10μLの10倍化合物溶液を、3回反復で細胞に加えた。プレートを37℃/5%COインキュベーター内に温置した。6時間後、50μLのSteady Glo試薬(Promega)を各ウェルに加え、プレート振盪機上に5分間置いて、確実に細胞を完全に溶解させた。このプレートを、1450 Microbeta Liquid Scintillation and Luminescence Counter(Perkin−Elmer)上で読み取った。グラフ作成ソフトウェアPrism(GraphPad)を用いる4−パラメーターフィットを用いて、IC50を計算した。化合物2、4、7〜10、21、28、31〜34、38〜39、42、44、46〜49、53〜54、57、61、63、73、91、97、99、103、106〜109、112〜115、120〜122、124〜125、128〜134、136〜139、141〜142、144〜149、および151〜179は、IC50が0.50μM以下であった。
【0192】
本明細書で引用されている刊行物および特許はすべて、あたかも、個別の刊行物または特許ごとに、参照することにより本明細書に組み込まれると、具体的かつ個別に指示されているのと同じように、参照することにより本明細書に組み込まれる。上記発明は、明確に理解されるよう、例示および実例によって詳しく説明されているが、当業者には、本発明の教示に照らせば、添付の請求項の趣旨と範囲を逸脱することなく、特定の変更および修正を加えることが可能であることはすぐに明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
【化17】

を有する化合物、またはその薬学的に受容可能な塩であって、式中、
は、フェニル環、またはN、O、もしくはSから選択される最大2個のヘテロ原子を有する5員から9員のヘテロアリール環であって、該フェニル環または該ヘテロアリール環は、ハロゲン、C1−5脂肪族、−NR’C(O)R’、−C(O)N(R’)、−OR’、−(CH0−2N(R’)、テトラヒドロピラニル、またはピペリジニルから選択される最大2つの基によって随意で置換されており;
R’は、水素またはC1−4アルキルであり;
、R、R、およびRのそれぞれは、個別に、水素、Cl、またはFであり、ここで、R、R、R、およびRの少なくとも1つがClまたはFであり;
は、
【化18】

であり、式中
XはOまたはNR5aであり、
Yは、C1−4脂肪族またはC3−6脂環式であって、随意でR5cによって置換されており、
rは0または1であり、
5a、R5b、R5c、R5d、およびR5eのそれぞれは、独立して水素またはC1−4脂肪族であり、ここで、R5aおよびR5dまたはR5cおよびR5dが一緒になって、ピロリジン環またはピペリジン環を随意で形成し、R5bおよびR5cが一緒になって、5〜6員の炭素環を随意で形成し、ならびにR5dおよびR5eが一緒になって、ピロリジン環、ピペリジン環またはモルホリン環を随意で形成している、
化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項2】
が、随意で置換されているピラゾール−4−イル環、チオフェン−3−イル環、チオフェン−2−イル環、ベンゾ[b]チオフェン−2−イル環、フェニル環、ベンゾ[b]チオフェン−3−イル環、ピリジン−4−イル環、ピリジン−3−イル環、またはピリミジン−5−イル環である、請求項1記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項3】
が、随意で置換されているピラゾール−4−イル環、チオフェン−3−イル環、またはチオフェン−2−イル環である、請求項2記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項4】
が、以下から選択される、請求項3記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩:
【化19】


【請求項5】
XがOであり、XとN(R5d)(R5e)との間にある原子の数が3個、4個、または5個である、請求項1〜4のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項6】
が、
【化20】

である、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
、R、R、およびRの1つまたは2つがフッ素であり、R、R、R、およびRの残りが水素である、請求項1〜6のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項8】
およびRのそれぞれがフッ素であり、RおよびRのそれぞれが水素である、請求項7記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項9】
化合物が、以下のものから選択される、請求項1記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩:
【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】


【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、および薬学的に受容可能な担体、アジュバント、またはビヒクルを含む薬学的組成物。
【請求項11】
さらに化学療法剤または抗増殖剤を含む、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
患者における増殖性障害を処置する、またはその重篤度を軽減するための、請求項1〜9のいずれか一項記載の化合物、または該化合物を含む医薬組成物の使用。
【請求項13】
前記障害が転移性癌である、請求項12記載の使用。
【請求項14】
前記障害が、膠芽細胞腫;胃癌腫;または結腸癌、乳癌、前立腺癌、脳癌、肝臓癌、膵臓癌、もしくは肺癌から選択された癌である、請求項12記載の使用。
【請求項15】
前記障害がアテローム性動脈硬化症または肺線維症である、請求項12記載の使用。
【請求項16】
生体試料においてc−METタンパク質キナーゼ活性をインビトロで阻害する方法であって、該生体試料を、請求項1〜9のいずれか一項記載の化合物、または該化合物を含む薬学的組成物に接触させる工程を含む方法。

【公表番号】特表2012−506381(P2012−506381A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532324(P2011−532324)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/061253
【国際公開番号】WO2010/048131
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】