説明

導電性組成物、太陽電池セルおよび太陽電池モジュール

【課題】良好な半田密着性を有しつつ、低コスト化が実現された導電性組成物を提供する。
【解決手段】導電性粒子(A)、半田粉(B)、溶剤(C)を含有し、上記導電性粒子(A)の25〜100質量%が、銀コート金属粉(a)であり、上記半田粉(B)の含有量が、上記導電性粒子(A)100質量部に対して1〜100質量部である、導電性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物、太陽電池セルおよび太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼成されて電極等を形成する材料として、種々の導電性組成物が用いられている。
例えば、特許文献1には、「電気抵抗率が20×10-6Ω・cm以下の金属材料(A)と、水酸基を1個以上有する脂肪酸銀塩(B)と、沸点が200℃以下の2級脂肪酸を用いて得られる2級脂肪酸銀塩(C)と、を含有する導電性組成物。」が開示され([請求項1])、この「金属材料(A)」として「銀粉末」が用いられている([実施例][0071])。
【0003】
また、特許文献2には、「銀粉(A)と、酸化銀(B)と、有機溶媒(D)とを含有し、該銀粉(A)が組成物に含有される銀単体および銀化合物中50質量%以上である導電性組成物」が提案されており([請求項1])、任意成分としてカルボン酸銀を含む態様や、ガラスフリット、金属系添加剤等の他の添加剤を含む態様が記載されている([請求項2][0030][0033][0034]等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−92684号公報
【特許文献2】特開2011−35062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
銀粉を含有する導電性組成物は、焼成後において優れた導電性を示すなど高性能である一方で、高コストであるという問題があった。
本発明者らは、導電性組成物の低コスト化を図るため検討を行ったところ、銀粉または銀粉の一部に代えて、銀コートニッケル粉等の銀コート金属粉を用いることにより、低コスト化が実現できることを明らかにした。
【0006】
しかしながら、このような銀コートニッケル粉を含有する導電性組成物を電極等を形成するために焼成した場合、銀コートの隙間から露出しているニッケル部分が焼成時に酸化してしまい、半田に対する密着性(半田密着性)が劣ることを、本発明者らは明らかにした。
【0007】
そこで、本発明は、良好な半田密着性を有しつつ、低コスト化が実現された導電性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、銀コートニッケル粉等の銀コート金属粉を含有する導電性組成物に、所定量の半田粉を配合することによって、半田密着性が良好になることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(7)を提供する。
【0009】
(1)導電性粒子(A)、半田粉(B)、溶剤(C)を含有し、上記導電性粒子(A)の25〜100質量%が、銀コート金属粉(a)であり、上記半田粉(B)の含有量が、上記導電性粒子(A)100質量部に対して1〜100質量部である、導電性組成物。
【0010】
(2)上記半田粉(B)の平均粒子径が、1〜10μmである、上記(1)に記載の導電性組成物。
【0011】
(3)上記銀コート金属粉(a)の平均粒子径が、1.5〜20μmである、上記(1)または(2)に記載の導電性組成物。
【0012】
(4)上記銀コート金属粉(a)が、ニッケル粉100質量部に対して5〜30質量部の銀コートを有する銀コートニッケル粉である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の導電性組成物。
【0013】
(5)さらに、上記導電性粒子(A)100質量部に対して1〜100質量部の有機酸銀塩(D)を含有する、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の導電性組成物。
【0014】
(6)受光面側の表面電極、半導体基板および裏面電極を具備し、上記表面電極および/または上記裏面電極が、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の導電性組成物を用いて形成される、太陽電池セル。
【0015】
(7)表面が半田で被覆されたインターコネクタを用いて上記(6)に記載の太陽電池セルを直列に接合した太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、良好な半田密着性を有しつつ、低コスト化が実現された導電性組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】太陽電池セルの模式断面図である。
【図2】太陽電池セルの表面電極側からみた模式上面図および裏面電極側からみた模式下面図である。
【図3】太陽電池モジュールの模式斜視図および接合部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[導電性組成物]
本発明の導電性組成物は、(1)導電性粒子(A)、半田粉(B)、溶剤(C)を含有し、上記導電性粒子(A)の25〜100質量%が、銀コート金属粉(a)であり、上記半田粉(B)の含有量が、上記導電性粒子(A)100質量部に対して1〜100質量部である、導電性組成物である。
以下、本発明の導電性組成物が含有する各成分について詳細に説明する。
【0019】
〔導電性粒子(A)〕
本発明の導電性組成物が含有する導電性粒子(A)は、その25〜100質量%が銀コート金属粉(a)であれば特に限定されない。そこで、まず、銀コート金属粉(a)について説明する。
【0020】
<銀コート金属粉(a)>
銀コート金属粉(a)としては、金属粉の表面の少なくとも一部に銀がコートされているものであれば特に限定されない。ここで、上記金属粉としては、例えば、ニッケル粉、銅粉、アルミニウム粉、マグネシウム粉等が挙げられ、なかでも、焼成時に酸化されにくいという理由から、ニッケル粉が好ましい。
【0021】
銀コート金属粉(a)において、ニッケル粉等の金属粉の表面をコートする銀の量(銀コート量)は、導電性の観点から、金属粉100質量部に対して5〜30質量部であるのが好ましく、20〜30質量部であるのがより好ましい。
【0022】
銀コート金属粉(a)は、銀が表面の一部に偏在しているものよりも、銀が偏在せずに、表面全体に亘って均一に分布されているものが好ましい。これにより、導通性が均一な銀コート金属粉となる。また、コートしている銀は、金属粉の表面に点状、網目状などの形状で付着していてよい。
【0023】
銀コート金属粉(a)の平均粒子径は、本発明の導電性組成物の印刷性が優れるという理由から、1.5〜20μmであるのが好ましく、比表面積が小さく焼成時に酸化されにくいという理由から、5〜20μmであるのがより好ましい。
【0024】
なお、本明細書において、平均粒子径とは、粒子径の平均値をいい、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された50%体積累積径(D50)をいう。なお、平均値を算出する基になる粒子径は、断面が楕円形である場合はその長径と短径の合計値を2で割った平均値をいい、正円形である場合はその直径をいう。
また、球状とは、長径/短径の比率が2以下の粒子の形状をいう。
【0025】
<銀粉>
本発明の導電性組成物は、低コスト化の観点からは、銀粉を含有しない方が好ましいが、導電性等の観点から、導電性粒子(A)として、銀粉を含有していてもよい。すなわち、この場合、上述した銀コート金属粉(a)以外の導電性粒子(A)が、銀粉となる。
【0026】
本発明の導電性組成物が含有する銀粉としては、印刷性が良好になるという理由から、平均粒子径が0.5〜10μmであるのが好ましく、0.7〜5μmであるのがより好ましく、1〜3μmであるのがさらに好ましい。
また、体積抵抗率のより小さい電極を形成することができ、光電変換効率の更に高い太陽電池セルを作製することができるという理由から、球状の銀粉末を用いるのがより好ましい。
このような銀粉としては、市販品を用いることができ、その具体例としては、AgC−102(形状:球状、平均粒子径:1.5μm、福田金属箔粉工業社製)、AgC−103(形状:球状、平均粒子径:1.5μm、福田金属箔粉工業社製)、AG4−8F(形状:球状、平均粒子径:2.2μm、DOWAエレクトロニクス社製)、AG2−1C(形状:球状、平均粒子径:1.0μm、DOWAエレクトロニクス社製)、AG3−11F(形状:球状、平均粒子径:1.4μm、DOWAエレクトロニクス社製)、AgC−2011(形状:フレーク状、平均粒子径:2〜10μm、福田金属箔粉工業社製)、AgC−301K(形状:フレーク状、平均粒子径:3〜10μm、福田金属箔粉工業社製)等が挙げられる。
【0027】
〔半田粉(B)〕
本発明の導電性組成物は、電極等を形成するために後に焼成されるが、このとき、銀コートの隙間から露出しているニッケル等の金属部分が焼成時に酸化してしまい、半田に対する密着性(半田密着性)が劣る場合がある。
しかしながら、本発明の導電性組成物は、上述した導電性粒子(A)100質量部に対して1〜100質量部の半田粉(B)を含有することにより、半田密着性の劣化を抑制し、良好なものにすることができる。
【0028】
本発明の導電性組成物が含有する半田粉(B)としては、特に限定されず、従来公知の半田合金からなる粒子を使用することができる。
半田粉(B)の具体例としては、スズ(Sn)−鉛(Pb)系、Sn−Ag(銀)系、Sn−Cu(銅)系、Sn−Ag−In(インジウム)系、Sn−Ag−Bi(ビスマス)系、Sn−Ag−Cu系等の合金からなる粒子が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、環境保全の観点から、鉛を含有しない(鉛フリー)の合金からなる粒子を半田粉(B)として用いるのが好ましい。
【0029】
半田粉(B)の平均粒子径は、分散性および印刷性に優れるという理由から、1〜10μmであるのが好ましく、1〜5μmであるのがより好ましい。
【0030】
半田粉(B)の含有量は、特に限定されず、例えば、導電性粒子(A)100質量部に対して1〜100質量部が挙げられるが、導電性が維持され、かつ、半田密着性がより良好になるという理由から、導電性粒子(A)100質量部に対して、5〜50質量部であるのが好ましく、5〜20質量部であるのがより好ましい。
【0031】
〔溶剤(C)〕
本発明の導電性組成物が含有する溶剤(C)としては、特に限定されないが、沸点が200℃以上の有機溶剤であることが好ましい。沸点が200℃以上の有機溶剤としては、具体的には、例えば、ブチルカルビトール、メチルエチルケトン、イソホロン、α−テルピネオール、トリエチレングリコール等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
溶剤(C)の量は、上述した導電性粒子(A)100質量部に対して、2〜20質量部であるのが好ましく、5〜15重量部であるのがより好ましい。
【0032】
〔有機酸銀塩(D)〕
本発明の導電性組成物は、さらに、有機酸銀塩(D)を含有していてもよい。
本発明の導電性組成物は、半田粉(B)を含有するものであるが、この半田粉(B)の含有量が多量になると、後に焼成されて形成される電極において、体積抵抗率が劣る(体積抵抗率が大きくなる)場合がある。
しかし、本発明の導電性組成物は、さらに、有機酸銀塩(D)を含有することで、体積抵抗率の劣化を抑制し、電極において良好な体積抵抗率を得ることができる。
【0033】
有機酸銀塩(D)としては、有機カルボン酸(脂肪酸)の銀塩であれば特に限定されず、例えば、特開2008−198595号公報の[0063]〜[0068]段落に記載された脂肪酸金属塩(特に3級脂肪酸銀塩)、特許第4482930号公報の[0030]段落に記載された脂肪酸銀塩、特開2010−92684号公報の[0029]〜[0045]段落に記載された水酸基を1個以上有する脂肪酸銀塩、同公報の[0046]〜[0056]段落に記載された2級脂肪酸銀塩、特開2011−35062号公報の[0022]〜[0026]に記載されたカルボン酸銀等を用いることができる。
これらのうち、印刷性が良好となり、体積抵抗率の小さい電極を形成することができ、光電変換効率のより高い太陽電池セルを作製することができる理由から、炭素数18以下の脂肪酸銀塩(D1)、カルボキシ銀塩基(−COOAg)と水酸基(−OH)とをそれぞれ1個以上有する脂肪酸銀塩(D2)、および、水酸基(−OH)を有さずにカルボキシ銀塩基(−COOAg)を2個以上有するポリカルボン酸銀塩(D3)からなる群から選択される少なくとも1種の脂肪酸銀塩を用いるのが好ましい。
【0034】
ここで、上記脂肪酸銀塩(D2)としては、例えば、下記式(I)〜(III)のいずれかで表される化合物が挙げられる。
【0035】
【化1】

【0036】
式(I)中、nは0〜2の整数を表し、R1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。nが0または1である場合、複数のR2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。nが2である場合、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(II)中、R1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(III)中、R1は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0037】
また、上記ポリカルボン酸銀塩(D3)としては、例えば、下記式(IV)で表される化合物であるが挙げられる。
【0038】
【化2】

【0039】
式(IV)中、mは、2〜6の整数を表し、R4は、炭素数1〜24のm価の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数2〜12のm価の不飽和脂肪族炭化水素基、炭素数3〜12のm価の脂環式炭化水素基、または、炭素数6〜12のm価の芳香族炭化水素基を表す。R4の炭素数をpとすると、m≦2p+2である。
【0040】
上記脂肪酸銀塩(D1)としては、具体的には、2−メチルプロパン酸銀塩(別名:イソ酪酸銀塩)、2−メチルブタン酸銀塩等が好適に例示される。
また、上記脂肪酸銀塩(D2)としては、具体的には、2−ヒドロキシイソ酪酸銀塩、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−n−酪酸銀塩等が好適に例示される。
また、上記ポリカルボン酸銀塩(D3)としては、具体的には、1,3,5−ペンタントリカルボン酸銀塩、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸銀塩等が好適に例示される。
【0041】
本発明の導電性組成物において、有機酸銀塩(D)の含有量は、導電性粒子(A)100質量部に対して1〜100質量部が好ましく、5〜100質量部がより好ましく、5〜40質量部がさらに好ましい。
【0042】
〔樹脂〕
本発明の導電性組成物は、印刷性の観点から、必要に応じて、樹脂を含有していてもよい。
上記樹脂としては、具体的には、例えば、エチルセルロース樹脂、ニトロセルロース樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのうち、熱分解性の観点から、エチルセルロース樹脂を用いるのが好ましい。
また、上記樹脂は、溶剤に溶解したものであってよく、この溶剤としては、具体的には、例えば、α−テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ジアセトンアルコール、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記樹脂の含有量は、導電性粒子(A)100質量部に対して0〜20質量部であるのが好ましく、10〜20質量部であるのがより好ましい。
【0043】
〔ガラスフリット〕
本発明の導電性組成物は、必要に応じて、ガラスフリットを含有していてもよい。
上記ガラスフリットとしては、特に限定されず、無鉛系であっても無鉛系でなくてもよく、例えば、鉛ホウケイ酸ガラスフリット等が挙げられる。
上記ガラスフリットの形状は特に限定されず、球状でも破砕粉状でもよい。球状のガラスフリットの平均粒子径(D50)は、0.1〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。さらに、15μm以上の粒子を除去した、シャープな粒度分布を持つガラスフリットを用いることが好ましい。
上記ガラスフリットの含有量は、導電性粒子(A)100質量部に対して0.5〜5質量部であるのが好ましく、2〜5質量部であるのがより好ましい。
【0044】
本発明の導電性組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、上述した必須成分および任意成分をボールミル等を用いて混合する方法が挙げられる。
【0045】
[太陽電池セル]
次に、本発明の太陽電池セルについて説明する。
本発明の太陽電池セルは、受光面側の表面電極、半導体基板および裏面電極を具備し、上記表面電極および/または上記裏面電極が、本発明の導電性組成物を用いて形成される太陽電池セルである。
【0046】
なお、本発明の導電性組成物を、全裏面電極型(いわゆるバックコンタクト型)太陽電池の裏面電極の形成にも適用することができる。
【0047】
以下に、本発明の太陽電池セルの構成について図1および図2を用いて説明する。なお、図1では、結晶系シリコン太陽電池を例に挙げて、本発明の太陽電池セルを説明するが、これに限られることはなく、例えば、薄膜系のアモルファスシリコン太陽電池、ハイブリッド型(HIT)太陽電池等であってもよい。
【0048】
図1に示すように、本発明の太陽電池セル10は、受光面側の表面電極1(フィンガー電極1a)と、n層3およびp層5が接合したpn接合シリコン基板4(以下、これらを併せて「結晶系シリコン基板7」ともいう。)と、裏面電極6(全面電極6a)とを具備するものである。なお、図1は、図2のI−I線における模式的な断面図である。
また、図1に示すように、本発明の太陽電池セル10は、反射率低減のためピラミッド状のテクスチャが形成された反射防止膜2を具備するのが好ましい。
【0049】
図2(A)に示すように、本発明の太陽電池セル10は、受光面側の表面電極1として、フィンガー電極1aとバスバー電極1bとを具備するものである。
また、図2(B)および図1に示すように、本発明の太陽電池セル10は、裏面電極6として、全面電極6aと接続部6bとを具備するものである。
【0050】
〔表面電極/裏面電極〕
本発明の太陽電池セルが具備する表面電極および裏面電極は、少なくともいずれか一方が本発明の導電性組成物を用いて形成されていれば、電極の配置(ピッチ)、形状、高さ、幅等は特に限定されない。
ここで、図1および図2に示す態様においては、少なくとも、フィンガー電極1aおよびバスバー電極1bを有する表面電極1を本発明の導電性組成物を用いて形成することになる。
一方、裏面電極6は、本発明の導電性組成物を用いて形成してもよいが、アルミニウム電極で全面電極6aを形成し、銀電極で接続部6bを形成するのが好ましい。
【0051】
〔反射防止膜〕
本発明の太陽電池セルが具備していてもよい反射防止膜は、受光面の表面電極が形成されていない部分に形成される膜(膜厚:0.05〜0.1μm程度)であって、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、酸化チタン膜、これらの積層膜等から構成されるものである。
【0052】
〔結晶系シリコン基板〕
本発明の太陽電池セルが具備する結晶系シリコン基板は特に限定されず、太陽電池を形成するための公知のシリコン基板(板厚:100〜450μm程度)を用いることができ、また、単結晶または多結晶のいずれのシリコン基板であってもよい。
【0053】
また、上記結晶系シリコン基板はpn接合を有するが、これは、第1導電型の半導体基板の表面側に第2導電型の受光面不純物拡散領域が形成されていることを意味する。なお、第1導電型がn型の場合には、第2導電型はp型であり、第1導電型がp型の場合には、第2導電型はn型である。
ここで、p型を与える不純物としては、ホウ素、アルミニウム等が挙げられ、n型を与える不純物としては、リン、砒素などが挙げられる。
【0054】
本発明の太陽電池セルの製造方法は特に限定されないが、本発明の導電性組成物をシリコン基板上に塗布して配線を形成する配線形成工程と、得られた配線を熱処理して電極(表面電極および/または裏面電極)を形成する熱処理工程とを有する方法が挙げられる。
なお、本発明の太陽電池セルが反射防止層を具備する場合、反射防止膜は、プラズマCVD法等の公知の方法により形成することができる。
以下に、配線形成工程、熱処理工程について詳述する。
【0055】
<配線形成工程>
上記配線形成工程は、本発明の導電性組成物をシリコン基板上に塗布して配線を形成する工程である。
ここで、塗布方法としては、具体的には、例えば、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷等が挙げられる。
【0056】
<熱処理工程>
上記熱処理工程は、上記配線形成工程で得られた配線を熱処理して導電性の配線(電極)を得る工程である。
ここで、上記熱処理は特に限定されないが、700〜800℃の温度で、数秒〜数十分間、加熱(焼成)する処理であるのが好ましい。温度および時間がこの範囲であると、シリコン基板上に反射防止膜を形成した場合であっても、ファイヤースルー法により容易に電極を形成することができる。
【0057】
[太陽電池モジュール]
本発明の太陽電池モジュールは、表面が半田で被覆されたインターコネクタを用いて本発明の太陽電池セルを直列に接合した太陽電池モジュールである。
以下に、本発明の太陽電池モジュールの構成について図3を用いて説明する。
【0058】
図3に示すように、本発明の太陽電池モジュール20は、金属リボン8bの表面を半田8aで被覆したインターコネクタ8を用いて、太陽電池セル10を直列に接合したものである。
ここで、金属リボンとしては、具体的には、例えば、導電性接着剤をコートした銅やアルミニウムリボン等を好適に用いることができる。
また、図3における接合部の拡大断面図に示すように、表面電極1のバスバー電極1bとインターコネクタ8の半田8aとが密着しており、裏面電極6の接続部6bとインターコネクタ8の半田8aとが密着している。
【0059】
本発明の太陽電池モジュールは、バスバー電極(および裏面電極の接続部)が本発明の導電性組成物を用いて形成されていることで、インターコネクタの半田との密着性が良好となり、容易にモジュール化することができる。
【実施例】
【0060】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
(実施例1〜6、比較例1〜3)
まず、ボールミルに、下記第1表に示す成分を下記第1表中に示す組成比となるように添加し、これらを混合することにより導電性組成物を調製した。
【0062】
<体積抵抗率>
調製した導電性組成物をシリコン基板(単結晶シリコンウェハー、LS−25TVA、156mm×156mm×200μm、信越化学工業社製(以下同じ))上に、スクリーン印刷で全面塗布した塗膜を形成した。
塗膜を形成した後、780℃で60秒間熱処理して導電性の被膜(銀膜)とした後に、被膜の体積抵抗率を抵抗率計(ロレスターGP、三菱化学社製)を用いた4端子4探針法により測定した。その結果を下記第1表に示す。
【0063】
<半田密着性>
シリコン基板を準備し、裏面の全面にアルミニウムペーストをスクリーン印刷で塗布し、乾燥させた。
次いで、シリコン基板の表面に、調製した各導電性組成物をスクリーン印刷で塗布することにより、フィンガー電極の所定の配線パターンおよびバスバー電極の所定の配線パターンを形成した。
スクリーン印刷で配線を形成した後、焼成炉にてピーク温度740℃の条件で60秒間焼成し、導電性の配線(フィンガー電極およびバスバー電極)を形成させた太陽電池セルのサンプルを作製した。
作製した太陽電池セルのサンプルのバスバー電極上に、半田ゴテを用いて半田リボン(組成:Sn−3Ag−0.5Cu)を実装した。
その後、JIS K6850:1999に準じて、引張速度50mm/分で引張せん断試験を行い、破断時の荷重(MPa)を測定した。
破断時の荷重が5MPa以上であった場合には半田密着性に非常に優れるものとして「◎」と評価し、破断時の荷重が1MPa以上であった場合には半田密着性に優れるものとして「○」と評価し、破断時の荷重が1MPa未満であった場合には半田密着性に劣るものとして「×」と評価した。結果を下記第1表に示す。
【0064】
<スクリーン印刷性>
調製した導電性組成物をシリコン基板上に、スクリーン印刷で塗布して配線(線幅:70μm、長さ:5cm)を形成した。
スクリーン印刷で形成した乾燥(焼成)前の配線を光学顕微鏡で観察した。
断線、蛇行、ニジミおよびメッシュ跡のいずれも確認されなかった場合は、印刷性が良好なものとして「○」と評価し、いずれかが確認された場合は、印刷性に劣るものとして「×」と評価した。結果を下記第1表に示す。
【0065】
<コスト>
導電性組成物の調製に用いた導電性粒子の少なくとも一部が銀粉ではない銀コートニッケル粉等である場合には、低コストであるとして「○」と評価し、導電性粒子の全てが銀粉である場合には、高コストであるとして「×」と評価した。結果を下記第1表に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
第1表中の各成分は、以下のものを使用した。
・銀粉:AgC−103(形状:球状、平均粒子径:1.5μm、福田金属箔粉工業社製)
・銀コートニッケル粉(1.5μm)(形状:球状、平均粒子径:1.5μm、銀コート量:20質量%、福田金属箔粉工業社製)
・銀コートニッケル粉(5μm)(形状:球状、平均粒子径:5μm、銀コート量:20質量%、福田金属箔粉工業社製)
・銀コートニッケル粉(25μm)(形状:球状、平均粒子径:25μm、銀コート量:20質量%、福田金属箔粉工業社製)
・半田粉:ST−3(Sn96.5/Ag3/Cu0.5、形状:球状、平均粒子径:3μm、三井金属鉱業社製)
【0068】
・溶剤:α−テルピネオール
・ガラスフリット:ST−01(鉛ホウケイ酸ガラスフリット、セントラル硝子社製)
・ビヒクル:EC−100FTP(エチルセルロース樹脂固形分:9%、日新化成社製)
・有機酸銀塩:下記のように調製したイソ酪酸銀塩
まず、酸化銀(東洋化学工業社製)50g、イソ酪酸(関東化学社製)38gおよびメチルエチルケトン(MEK)300gをボールミルに投入し、室温で24時間撹拌させることにより反応させた。次いで、吸引ろ過によりMEKを取り除き、得られた粉末を乾燥させることにより、白色のイソ酪酸銀塩を調製した。
【0069】
第1表に示す結果から明らかなように、実施例1〜6は、低コスト性に優れ、かつ、半田密着性にも優れていた。
また、実施例3と実施例4とを対比すると、銀コートニッケル粉(5μm)を使用した実施例3は、銀コートニッケル粉(25μm)を使用した実施例4よりも、スクリーン印刷性に優れていた。
また、実施例5と実施例6とを対比すると、イソ酪酸銀塩を含有する実施例6は、これを含有しない実施例5よりも、良好な体積抵抗率が得られた。
一方、導電性粒子として銀粉のみを使用した比較例1は、高コストであった。また、比較例2および3は、半田粉を含有しないため本発明の導電性組成物に該当しないものであるが、これらはいずれも半田密着性に劣っていた。
【符号の説明】
【0070】
1 表面電極
1a フィンガー電極
1b バスバー電極
2 反射防止膜
3 n層
4 pn接合シリコン基板
5 p層
6 裏面電極
6a 全面電極(アルミニウム電極)
6b 接続部(銀電極)
7 結晶系シリコン基板
8 インターコネクタ
8a 半田
8b 金属リボン
10 太陽電池セル
20 太陽電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子(A)、半田粉(B)、溶剤(C)を含有し、
前記導電性粒子(A)の25〜100質量%が、銀コート金属粉(a)であり、
前記半田粉(B)の含有量が、前記導電性粒子(A)100質量部に対して1〜100質量部である、導電性組成物。
【請求項2】
前記半田粉(B)の平均粒子径が、1〜10μmである、請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
前記銀コート金属粉(a)の平均粒子径が、1.5〜20μmである、請求項1または2に記載の導電性組成物。
【請求項4】
前記銀コート金属粉(a)が、ニッケル粉100質量部に対して5〜30質量部の銀コートを有する銀コートニッケル粉である、請求項1〜3のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項5】
さらに、前記導電性粒子(A)100質量部に対して1〜100質量部の有機酸銀塩(D)を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項6】
受光面側の表面電極、半導体基板および裏面電極を具備し、
前記表面電極および/または前記裏面電極が、請求項1〜5のいずれかに記載の導電性組成物を用いて形成される、太陽電池セル。
【請求項7】
表面が半田で被覆されたインターコネクタを用いて請求項6に記載の太陽電池セルを直列に接合した太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−73890(P2013−73890A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214154(P2011−214154)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】