説明

X線検査装置

【課題】容器内の液体の正確な液面高さを検出できるX線検査装置を提供する。
【解決手段】本発明のX線検査装置100は、X線源から照射されるX線XSを用いて、容器内の物品の検査を行うX線検査装置であって、X線源から照射され容器を透過したX線XSに基づいてX線画像を生成する画像生成部242と、生成されたX線画像における、物品の最上端面画像SZGと最下端面画像SKGとから、当該最上端面画像SZGの中心位置P1および当該最下端面画像SKGの中心位置P2を検出する中心検出部243と、検出された中心位置P1と中心位置P2との距離に基づいて、液面高さTを検出する高さ検出部244と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品が入れられた容器にX線を照射し、当該容器内の物品についての検査を行うX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器内の液体についての検査を行うために、X線により液体検査を行うX線検出装置の開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、X線液量検査装置が開示されている。当該X線液量検査装置においては、直線状に配置したX線検出器が2列から成り、2列の表面にX線の波長選択性の違う層が2種類被覆されていて、2列の同一高さのX線検出素子からの検出信号の差分信号をもとに前記高さでの被検出物が低原子番号物質であるか高原子番号物質であるかを判断し、容器内の液量の判定を行う判定手段と、判定した結果を表示する表示手段が備えられている。
【0004】
また、特許文献2には、透視検査装置が開示されている。当該透視検査装置においては、間欠回転する回転テーブルの各区画に首振り可能なワーク載置台およびこのワーク載置台を初期位置に設定する装置を設けて前記ワーク載置台に載置されているワークを初期検査位置に設定し、また回転テーブルとは別個に検査室内に検査領域可変装置を設けてワークが該検査位置に到達した後、前記ワーク載置台を所定角度回動させてワークの検査領域が可変される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−357472号公報
【特許文献2】実開昭59−117956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のX線液量検査装置では、容器を回転搬送する場合には、液面が揺れてしまい、正確な液量の判定を行うことができない。また、上記特許文献2の透視検査装置は、容器内の液体の液面高さを検出するものではない。
【0007】
本発明の目的は、容器内の液体の正確な液面高さを検出できるX線検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)一の局面に従うX線検査装置は、X線源から照射されるX線を用いて、容器内の物品の検査を行うX線検査装置であって、X線源から照射され容器を透過したX線に基づいてX線画像を生成する画像生成部と、生成されたX線画像における、物品の最上端面画像と最下端面画像とから、当該最上端面画像の第1中心および当該最下端面画像の第2中心を検出する中心検出部と、検出された第1中心と第2中心との距離に基づいて、物品の高さを検出する高さ検出部と、を備えたものである。
【0009】
一の局面に従うX線検査装置においては、容器を透過したX線に基づいて画像生成部により生成されたX線画像における、物品の最上端面画像と最下端面画像とから、当該最上端面画像の第1中心および当該最下端面画像の第2中心が中心検出部により検出される。そして、第1中心と第2中心との距離に基づいて物品の高さが高さ検出部により検出される。
【0010】
ここで、検査する物品が液体であって、回転テーブルの回転によって検査を行うX線検査装置を採用する場合、当該回転による遠心力によって液面が揺れることが多い。しかし、本発明者は、液面の中心点は遠心力により揺れ難く、当該中心点の高さが変わり難いことに着眼し、以下のように液面の高さを検出することを見出した。すなわち、最上端面画像(例えば液面に相当する領域の画像)の第1中心と最下端面画像(例えば液体の底面に相当する領域の画像)の第2中心との距離に基づいて物品(例えば液体)の高さを検出することで、回転搬送により液面に揺れが生じた場合でも、正確な液面の高さを得ることができることを見出した。
【0011】
(2)X線検査装置は、高さ検出部により検出された物品の高さおよび容器の形状に基づいて、当該物品の内容量を算出する内容量算出部をさらに備えてもよい。
【0012】
この場合、従来においては、液面の高さのみを検出し、当該液面の高さが適切であれば相当の内容量(体積)を充足すると擬制していた。その結果、液面が揺れている場合の当該液面の高さを検出してしまうと、正確な内容量を得ることができなかった。しかし、本発明では、従来のような擬制を行うことなく、回転搬送により液面が揺れている場合でも、液体の内容量を正確に得ることができる。それにより、液体の内容量の良否を正確に判定できる。
【0013】
(3)X線検査装置は、算出された内容量と予め記憶された基準内容量との比較により、当該算出された内容量の適否を判定する判定部をさらに備えてもよい。
【0014】
この場合、予め記憶された基準内容量との比較を行うことで、算出された内容量の適否を適切に判定できる。すなわち、回転搬送により液面が揺れた場合でも、本発明に係るX線検査装置によって液面の正確な高さを得ることができるので、判定部による判定に基づいて所定範囲外の内容量の物品を確実に除外できる。
【0015】
(4)X線検査装置は、算出された内容量を表示する表示部をさらに備えてもよい。この場合、作業者は表示部を視認することで物品の内容量を把握することができる。
【0016】
(5)物品は液体であってもよい。この場合、回転搬送により液面が揺れるが、本発明に係るX線検査装置によって上述のように第1中心と第2中心との距離に基づいて液体の高さを検出することで、液体の正確な高さを得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るX線検査装置によれば、最上端面画像(例えば液面に相当する領域の画像)の第1中心と最下端面画像(例えば液体の底面に相当する領域の画像)の第2中心との距離に基づいて物品(例えば液体)の高さを検出することで、回転搬送により液面に揺れが生じた場合でも、正確な液面の高さを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係るX線検査装置の概略的構成の一例を示す模式的平面図である。
【図2】図1のX線検査装置の概略を説明するための模式的側面図である。
【図3】本実施形態に係るX線検査装置のハードウェア構成の例および機能的構成の例を示すブロック図である。
【図4】液面高さの検出方法を説明するための説明図である。
【図5】入力表示部における内容量の表示例を示す模式図である。
【図6】容器の形状が複雑な形状である場合の内容量の算出方法を説明するための説明図である。
【図7】最上端面画像の中心位置および最下端面画像の中心位置のその他の検出方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(1)X線検査装置の全体構成
以下、本発明の一実施形態に係るX線検査装置について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は本実施形態に係るX線検査装置100の概略的構成の一例を示す模式的平面図であり、図2は図1のX線検査装置100の概略を説明するための模式的側面図である。
【0021】
図1および図2に示すように、本実施形態に係るX線検査装置100は、ベルトコンベア900に取り付けられる。また、X線検査装置100は、主に、受取部600、X線検査部700、受渡部800およびX線漏洩防止カバー910からなる。
【0022】
受取部600は、受取テーブル611、回転軸612、第1モータ613、案内ガイド板634a,634b、案内ガイド板635a,635b、幅調整機構624、支持部材625および駆動部626からなる。
【0023】
X線検査部700は、X線源200、ラインセンサ220、制御部500、検査テーブル711、回転軸712および第2モータ713からなる。
【0024】
受渡部800は、受渡テーブル811、回転軸812、第3モータ813、案内ガイド板835a,835b、案内ガイド板834a,834b、幅調整機構824、支持部材825および駆動部826からなる。なお、図2における括弧書きの符号は、受取部600と同様の構成からなる受渡部800の構成部を示す。
【0025】
(1−1)受取部
図2に示すように、垂直に設けられた回転軸612の一端側に第1モータ613が取り付けられ、当該回転軸612の他端側に水平面を有する受取テーブル611が取り付けられる。受取テーブル611は、天板が円板形状からなる。
【0026】
また、支持部材625の一端側に駆動部626および幅調整機構624が設けられ、支持部材625の他端側に案内ガイド板634a,634bおよび案内ガイド板635a,635bが設けられる。なお、物品Bが充填された容器Cを搬送するために、案内ガイド板634aと案内ガイド板634bとの組に対して、一定の間隔を空けて、案内ガイド板635aと案内ガイド板635bとの組が設けられる。
【0027】
(1−2)検査部
垂直に設けられた回転軸712の一端に第2モータ713が取り付けられ、当該回転軸712の他端に、水平面を有する検査テーブル711が取り付けられる。検査テーブル711は、天板が円板形状からなる。
【0028】
本実施形態において、検査テーブル711はカーボンからなる。それにより、検査テーブル711は、X線を透過しやすく、X線の照射に影響を与えないというメリットがある。さらに、カーボンからなる検査テーブル711は剛性も高く、金属と比較して軽量なので物品を確実に保持することができ、当該検査テーブル711の回転の安定性を向上できる。特に、カーボンからなる検査テーブル711は、軽量であるので、当該検査テーブル711の偏芯等を防止することができる。また、当該検査テーブル711は、剛性が高いので、重量増加した物品を検査対象に含めることができ、さらに駆動モータの容量を低減して、低コストおよび省電力を実現することができる。
【0029】
X線検査部700に設けられたX線漏洩防止カバー910内には、制御部500が内蔵される。また、検査テーブル711の上方には、X線源200が設けられる。
【0030】
本実施形態において、X線源200は、上方から平面視した場合に、ベルトコンベア900の搬送方向(図1の矢印HL1の方向)に対して交差するように設けられ、かつ側面視した場合に、ベルトコンベア900に近い方向から遠ざかる方向(図2の矢印D1の方向)に向かって斜め下方に照射できるよう配設されている。
【0031】
このように配設されたX線源200によって、物品Bが充填された容器Cに対してX線XSが照射される。本実施形態では、物品Bはドレッシング、たれ(焼肉のたれ等)または飲料水などの液体である。また、容器Cは例えば円柱形状であり、底面の直径よりも高さの方が大きい容器である。
【0032】
ラインセンサ220は、X線源200から照射されたX線XSが容器Cを透過し、当該透過したX線を受けることができる位置に設けられる。
【0033】
制御部500は、X線源200との間で信号の送受信およびラインセンサ220からの信号を受信できるように設けられる。また、制御部500は、第1モータ613、第2モータ713、第3モータ813、駆動部626,826および幅調整機構624,824との信号の送受信が可能である。
【0034】
(1−3)受渡部
垂直に設けられた回転軸812の一端側に第3モータ813が取り付けられ、当該回転軸812の他端側に水平面を有する受渡テーブル811が取り付けられる。受渡テーブル811は、天板が円板形状からなる。また、支持部材825の一端側に駆動部826および幅調整機構824が設けられ、当該支持部材825の他端側に案内ガイド板835a,835bおよび案内ガイド板834a,834bが設けられる。なお、物品Bが充填された容器Cを搬送するために、案内ガイド板835aと案内ガイド板835bとの組に対して、一定の間隔を空けて、案内ガイド板834aと案内ガイド板834bとの組が設けられる。
【0035】
(1−4)X線検査装置の動作の流れ
次いで、図1および図2に示したX線検査装置100の動作の一例についての説明を行う。
【0036】
図1および図2に示すように、ベルトコンベア900上を搬送される容器Cが受取部600の案内ガイド板634a,634bおよび案内ガイド板635a,635bにより受取テーブル611側に移動される。この場合、容器Cは、矢印HL2の方向に沿って案内ガイド板634aと案内ガイド板635aとの間を通過し、受取テーブル611に載置される。
【0037】
受取テーブル611に載置された容器Cは、受取テーブル611が矢印R1(図2)の方向に回転することにより、案内ガイド板634bと案内ガイド板635bとの間を通過することで矢印HL3の方向に移送され、検査テーブル711に受け渡される。
【0038】
検査テーブル711が矢印−R1(図2)の方向に回転することにより、検査テーブル711に載置された容器Cは、検査テーブル711上を矢印HL4の方向に沿って移動し、X線源200から照射されたX線XSにより液面検査が実施される。また、液体の下方に溜まることが多い異物の検査についてもX線画像を用いて実施される。なお、液面検査の詳細については後述する。
【0039】
そして、検査が終了した容器Cは、検査テーブル711上を矢印HL5の方向に沿って移動する。この場合、容器Cは、矢印HL6の方向に沿って案内ガイド板834bと案内ガイド板835bとの間を通過し、受渡テーブル811に載置される。
【0040】
受渡テーブル811に載置された容器Cは、当該受渡テーブル811が矢印R1(図2)の方向に回転することにより、案内ガイド板834aと案内ガイド板835aとの間を通過することで矢印HL7の方向に移送される。そして、容器Cはベルトコンベア900上に戻され、次工程へと搬送される。
【0041】
(2)画像処理による液面検査
続いて、本実施形態に係るX線検査装置100の画像処理に係る構成部の詳細について説明する。
【0042】
(2−1)液面検査を実施する構成
図3は本実施形態に係るX線検査装置100のハードウェア構成の例および機能的構成の例を示すブロック図であり、図4は液面高さの検出方法を説明するための説明図であり、図5は入力表示部MTにおける内容量の表示例を示す模式図である。
【0043】
図3に示すように、X線検査装置100は、ハードウェア構成として、上述のラインセンサ220、A/Dコンバータ230、CPU(中央演算処理装置)260、ROM(リードオンリーメモリ)またはRAM(ランダムアクセスメモリ)等のメモリ270、ハードディスク280および上述の入力表示部MTを含む。
【0044】
CPU260がメモリ270またはハードディスク280に格納されている各種プログラムを実行することによって、輝度毎データ取得部240、合算部241、画像生成部242、中心検出部243、高さ検出部244、内容量算出部245、表示データ作成部246、判定部247および領域認識部250が機能的に実現される。各種プログラムは、当該プログラムが記録されたCD−ROM、DVD−ROM等の記録媒体からインストールすることが可能である。
【0045】
また、X線検査装置100は、入力表示部MTでのデータ表示を制御する表示制御回路(図示せず)、入力表示部MTを介して作業者により入力されたデータを取り込むキー入力回路(図示せず)およびプリンタ等の外部機器またはLAN(ローカルエリアネットワーク)等のネットワークとの接続を可能にする通信ポート(図示せず)等を備えている。
【0046】
CPU260、メモリ270およびハードディスク280は、アドレスバスまたはデータバス等のバスラインを介して相互に接続されている。
【0047】
図3において、最初に、容器Cを透過したX線XSがラインセンサ220に入射され、当該ラインセンサ220によりX線XSに基づいてアナログデータである検出データKDaが生成される。検出データKDaは、A/Dコンバータ230によりデジタルデータである検出データKDdに変換される。
【0048】
検出データKDdの検出値に基づき輝度毎データ取得部240により輝度毎データLD1が取得される。輝度毎データLD1は画像の1ライン分に相当するものである。そして、合算部241により複数の輝度毎データLD1が合算されることにより、画像の全ライン分に相当する輝度毎データLD2が生成される。
【0049】
次に、輝度毎データLD2に基づいて画像生成部242により画像が生成される。生成された画像に基づいて異物検査が実施される。ここで、本実施形態では、図4(a)に示すように、通常状態では水平な液面EK1が、容器Cが回転搬送されることで、液面EK1の中心位置P1を基準に揺れ動き、傾斜した液面EK2または液面EK3と変化する。
【0050】
このように、容器Cが回転搬送されると、当該容器C内の物品(液体)Bの液面が変化するが、液面の揺動基準である中心位置P1は変化し難い。そこで、本実施の形態における検出処理は、変化し難い液面の中心位置P1を用いて液面高さTを検出するものである。以下、検出処理について説明を行う。
【0051】
(2−2)液面画像および液体底面画像の抽出
まず初めに、画像生成部242により生成された濃淡画像をエッジ処理によって図4(b)に示す線画像(太線で図示)に処理する。この場合、エッジ処理により当該容器C内の物品(液体)Bの輪郭が抽出される。
【0052】
次に、領域認識部250により図4(b)の線画像から閉領域が抽出され、液面と底面とが選定される。具体的に、図4(b)に示すように、領域認識部250により、楕円形状からなる最上端面画像SZG、中間画像STGおよび楕円形状からなる最下端面画像SKGが抽出される。この場合、領域認識部250により、最上端面画像SZGを液面として認識し、最下端面画像SKGを底面として選定する。
【0053】
(2−3)各画像の中心位置の特定
次いで、中心検出部243により、液面と選定された最上端面画像SZGと、底面と選定された最下端面画像SKGとの各中心位置を特定する。以下、最上端面画像SZGにおける中心の特定手法について説明を行い、続いて最下端面画像SKGにおける中心の特定手法について説明を行う。
【0054】
まず初めに、図4(b)に示すように、中心検出部243により最上端面画像SZGに対して、所定の間隔からなる複数の水平線M1〜Mnおよび所定の間隔からなる複数の垂直線G1〜Gnが引かれる。
【0055】
次に、中心検出部243により、水平線M1〜Mnのそれぞれにおいて、最上端面画像SZGの外周エッジ部と交差する点間の距離が測定され、最長の水平線が特定される。具体的に、図4(b)の最上端面画像SZGの場合、水平線Mpが外周エッジ部と交差する点間の距離が最長のため、当該水平線Mpが最長の水平線として特定される。
【0056】
続いて、中心検出部243により、垂直線G1〜Gnのそれぞれにおいて、最上端面画像SZGの外周エッジ部と交差する点間の距離が測定され、最長の垂直線が特定される。具体的に、図4(b)の最上端面画像SZGの場合、垂直線Gpが外周エッジ部と交差する点間の距離が最長のため、当該垂直線Gpが特定される。
【0057】
次に、中心検出部243によって、上記で特定された水平線Mpと垂直線Gpとの交点位置が最上端面画像SZGの中心位置P1として求められる。
【0058】
次いで、最下端面画像SKGにおける中心の特定手法について説明を行う。まず初めに、図4(b)に示すように、中心検出部243により最下端面画像SKGに対して、所定の間隔からなる複数の水平線L1〜Lnおよび所定の間隔からなる複数の垂直線F1〜Fnが引かれる。
【0059】
次に、中心検出部243により、水平線L1〜Lnのそれぞれにおいて、最下端面画像SKGの外周エッジ部と交差する点間の距離が測定され、最長の水平線が特定される。具体的に、図4(b)の最下端面画像SKGの場合、水平線Lpが外周エッジ部と交差する点間の距離が最長のため、当該水平線Lpが最長の水平線として特定される。
【0060】
続いて、中心検出部243により、垂直線F1〜Fnのそれぞれにおいて、最下端面画像SKGの外周エッジ部と交差する点間の距離が測定され、最長の垂直線が特定される。具体的に、図4(b)の最下端面画像SKGの場合、垂直線Fpが外周エッジ部と交差する点間の距離が最長のため、当該垂直線Fpが特定される。
【0061】
次に、中心検出部243によって、上記で特定された水平線Lpと垂直線Fpとの交点位置が最下端面画像SKGの中心位置P2として求められる。本実施形態では、回転搬送により揺れる液面EK2または液面EK3に対して斜め方向のX線XSが照射され、不動の液体底面に対して斜め方向のX線XSが照射される。それにより、領域認識部250により、最上端面画像SZGおよび最下端面画像SKGをX線透過画像上で平面的に相当面積を持った状態で取得できる。これにより、中心検出部243により中心位置P1および中心位置P2を容易に検出でき、高さ検出部244により液面高さTを容易に得ることができる。
【0062】
(2−4)各中心位置から液面高さの取得
このように検出された中心位置P1および中心位置P2の位置が高さ検出部244により選定される。まず、高さ検出部244により中心位置P1および中心位置P2の位置がXY座標に配置される。なお、X座標が物品Bの幅方向の位置であり、Y座標が物品Bの高さ方向の位置である。高さ検出部244により中心位置P1の座標が(x1,y1)とされ、中心位置P2の座標が(x1,y2)とされる。
【0063】
次に、高さ検出部244により、中心位置P2のy2から中心位置P1のy1を減算した値である(y2−y1)が算出される。当該減算値(y2−y1)はラインセンサ220における距離、つまり、図4(b)に示すように、X線透過画像における液面高さT1である。
【0064】
そこで、実際の搬送ラインを流れる物品Bの液面高さT(図4(a))を得るために補正が必要となる。すなわち、高さ検出部244により上記の減算値(y2−y1)に補正値αが乗じられる。つまり、高さ検出部244により、T1×αが演算されることによって液面高さTが得られる。
【0065】
(2−5)内容量の取得
次に、高さ検出部244により検出された液面高さTおよび容器Cの形状に基づいて、物品(液体)Bの内容量NRが内容量算出部245により算出される。この場合、上述したように、容器Cの形状が円柱形状である場合には、メモリ270(図3)またはハードディスク280(図3)において当該容器Cの内部底面の面積S1が記憶されている。内容量算出部245は、算出された上記液面高さTと、記憶された上記容器Cの内部底面の面積S1とから、T×S1により物品(液体)Bの内容量NRを算出する。
【0066】
内容量算出部245により算出された内容量NRの表示データが表示データ作成部246によって作成される。算出された内容量NRが例えば500mlである場合には、図5に示すように、表示データ作成部246により入力表示部MTの領域R1において「500ml」と表示される。
【0067】
また、算出された内容量NRと、メモリ270(図3)またはハードディスク280(図3)に予め記憶された基準内容量との比較により、算出された内容量NRの適否が判定部247により判定される。例えば、算出された内容量NRが適切であると判定部247により判定された場合には、図5に示すように、表示データ作成部246により入力表示部MTの領域R2において「OK 良品」と表示される。
【0068】
(3)本実施形態における効果
本実施形態では、容器Cを透過したX線XSに基づいて画像生成部242により生成されたX線画像における、物品(液体)Bの最上端面画像SZGと最下端面画像SKGとから、当該最上端面画像SZGの中心位置P1および当該最下端面画像SKGの中心位置P2が中心検出部243により検出される。そして、中心位置P1と中心位置P2との距離に基づいて液面高さTが高さ検出部244により検出される。
【0069】
ここで、検査する物品Bが液体であって、回転搬送によって検査を行うX線検査装置100を採用する場合、当該回転による遠心力によって液面が揺れることが多い。しかし、液面の中心点は遠心力により揺れ難く、当該中心点の高さが変わり難いことに着眼し、中心位置P1と中心位置P2との距離に基づいて液面高さTを検出することで、回転搬送により液面に揺れが生じた場合でも、正確な液面高さTを得ることができる。
【0070】
また、従来においては、液面の高さのみを検出し、当該液面の高さが適切であれば相当の内容量(体積)を充足すると擬制していた。その結果、液面が揺れている場合の当該液面の高さを検出してしまうと、正確な内容量を得ることができなかった。
【0071】
しかし、本実施形態では、従来のような擬制を行うことなく、回転搬送により液面が揺れている場合でも、検出した液面高さTおよび容器Cの形状に基づいて内容量NRを正確に得ることができる。これにより、内容量NRの良否を正確に判定できる。
【0072】
また、本実施形態のように、中心位置P1,P2を検出し、検出した中心位置P1,P2から液面高さTを求めることによって、回転搬送により液面が揺れて波のような状態になった場合でも、液面の高さを平均化することができる。これにより、信頼性高い液面高さTを得ることができる。さらに、容器Cの搬送角度が異なることで、液面の揺れの度合いが異なっても、変化し難い中心位置P1,P2を検出することによって信頼性高い液面高さTを得ることができる。
【0073】
また、本実施形態では、算出された内容量NRと予め記憶された基準内容量との比較を行うことで、当該算出された内容量NRの適否を適切に判定できる。すなわち、回転搬送により液面が揺れた場合でも、X線検査装置100によって正確な液面高さTを得ることができるので、判定部247による判定に基づいて所定範囲外の内容量NRの物品Bを確実に除外できる。
【0074】
さらに、本実施形態では、算出された内容量NRが入力表示部MTに表示されるので、作業者は当該入力表示部MTを視認することで物品Bの内容量NRを把握することができる。それにより、作業者は物品Bが良品であるか不良品であるかについて認識できる。
【0075】
(4)請求項の各構成要素と上記実施形態の各部との対応関係
上記実施形態においては、X線検査装置100がX線検査装置に相当し、X線源200がX線源に相当し、X線XSがX線に相当し、容器Cが容器に相当し、物品Bが物品に相当し、画像生成部242が画像生成部に相当し、最上端面画像SZGが最上端面画像に相当し、最下端面画像SKGが最下端面画像に相当し、中心位置P1が第1中心に相当し、中心位置P2が第2中心に相当し、中心検出部243が中心検出部に相当し、液面高さTが物品の高さに相当し、高さ検出部244が高さ検出部に相当し、内容量NRが内容量に相当し、内容量算出部245が内容量算出部に相当し、判定部247が判定部に相当し、入力表示部MTが表示部に相当する。
【0076】
(5)変形例
なお、上記実施形態では、容器Cの形状が複雑でない円柱形状であるので、液面高さTと容器Cの内部底面の面積とを乗じることによって内容量NRを算出することができるが、容器Cの形状が複雑な形状である場合には、次のようにして内容量NRを算出する。
【0077】
図6は容器Cの形状が複雑な形状である場合の内容量NRの算出方法を説明するための説明図である。
【0078】
図6(a)に示す場合のように、容器C1内の物品(液体)Bの液面高さTを得ても、当該液面高さTと容器C1の内部底面の面積との乗算によっては正確な内容量NRを得ることはできない。この場合、液面高さTと容器C1の内部底面の面積との乗算によって得られる内容量から体積Th1(斜線部)を減算する補正を行うことで、正確な内容量NRを得ることができる。
【0079】
また、図6(b)の場合であっても、図6(a)と同様に、液面高さTと容器C1の内部底面の面積との乗算によっては正確な内容量NRを得ることはできないので、液面高さTと容器C1の内部底面の面積との乗算によって得られる内容量から体積Th1および体積Th2(斜線部)を減算する補正を行うことで、正確な内容量NRを得ることができる。
【0080】
このように、容器Cの形状が複雑なものであっても、補正値を予め記憶させておき、当該補正値に基づいて内容量に対して補正を行うことで、正確な内容量NRを得ることができる。
【0081】
また、上記の方法とは別に、容器C1,C2の形状を予め記憶させておけば、液面高さTを得るだけで正確な内容量NRを得ることができる。この場合、容器C1,C2の形状の関数fから得られる微小区間の体積をメモリ270またはハードディスク280に記憶しておき、内容量算出部245により当該体積を積分区間(0,T(Tは上記液面高さ))で定積分することによって内容量NRを算出できる。
【0082】
また、容器Cの断面形状が円形のものだけでなく、断面形状が正方形または長方形である容器Cについても、本実施形態のX線検査装置100によって正確な液面高さTおよび内容量NRを得ることができる。
【0083】
また、上記実施形態では、水平線L1〜Lnおよび垂直線F1〜Fnを用いて最下端面画像SKGの中心位置P2を検出する方法を採用したが、これに限定されるものではなく、例えば楕円関数を用いて検出してもよい。この場合、中心位置P2と予測される点を含んだ複数の楕円関数を用意しておき、これらの楕円関数と最下端面画像SKGとの相関をとることで中心位置P2が特定される。
【0084】
また、最上端面画像SZGの中心位置P1および最下端面画像SKGの中心位置P2のその他の検出方法として、下記のようにしてもよい。図7は最上端面画像SZGの中心位置P1および最下端面画像SKGの中心位置P2のその他の検出方法を説明するための説明図である。
【0085】
図7に示すように、まず、複数の水平線L1〜Lnのうち、最下端面画像SKGの外周エッジ部との交点が一つである水平線が中心検出部243によって特定される。図7の場合、交点K1を有する水平線L1および交点K2を有する水平線Lnが特定される。
【0086】
続いて、複数の垂直線F1〜Fnのうち、最下端面画像SKGの外周エッジ部との交点が一つである垂直線が中心検出部243によって特定される。図7の場合、交点K3を有する垂直線F1および交点K4を有する垂直線Fnが特定される。
【0087】
次に、中心検出部243によって、上記の水平線L1と水平線Lnとの中間の水平線Lpが特定され、上記の垂直線F1と垂直線Fnとの中間の垂直線Fpが特定される。そして、中心検出部243によって、上記で特定された水平線Lpと垂直線Fpとの交点位置が最下端面画像SKGの中心位置P2として求められる。同様にして中心検出部243によって最上端面画像SZGの中心位置P1が検出される。このように検出された最上端面画像SZGの中心位置P1の座標を(x1,y1)とし、最下端面画像SKGの中心位置P2の座標を(x1,y2)とすると、高さ検出部244により(y2−y1)が演算されることによって、X線透過画像上の液面高さT1が得られる。そして、高さ検出部244によりT1×αが演算されることによって、上記と同様に、液面高さTを得ることができる。
【0088】
また、上記実施形態では、高さ検出部244によりX線透過画像上の液面高さT1に補正値αが乗じられることとしたが、液面高さT1が物品Bの液面高さTと同じである場合には、高さ検出部244により液面高さT1に補正値αを乗じる必要はない。
【0089】
さらに、本実施形態に係るX線検査装置100においてインターロックSWを取り付け、当該X線検査装置100を取り付けるベルトコンベア900の所定領域にワイヤー等でキーを掛けておいてもよい。この場合、作業者がキーをインターロックSWに挿入することにより、インターロックが可能となる。すなわち、メンテナンスまたは清掃等のために、X線検査装置100がベルトコンベア900から取り外され、単体となる場合でも、当該X線検査装置100の誤動作が防止される。したがって、作業者の被爆が確実に防止されて安全性を維持できるとともに、コストもかからない。また、このようなインターロック機能をX線検査装置100に付加することで、作業現場におけるメンテナンス等の種々の作業に対して柔軟に対応することができる。
【0090】
さらに、本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0091】
100 X線検査装置
200 X線源
220 ラインセンサ
242 画像生成部
243 中心検出部
244 高さ検出部
245 内容量算出部
247 判定部
B 物品
C 容器
MT 入力表示部
NR 内容量
P1,P2 中心位置
SKG 最下端面画像
SZG 最上端面画像
T 液面高さ
XS X線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源から照射されるX線を用いて、容器内の物品の検査を行うX線検査装置であって、
前記X線源から照射され前記容器を透過したX線に基づいてX線画像を生成する画像生成部と、
生成された前記X線画像における、前記物品の最上端面画像と最下端面画像とから、当該最上端面画像の第1中心および当該最下端面画像の第2中心を検出する中心検出部と、
検出された前記第1中心と前記第2中心との距離に基づいて、前記物品の高さを検出する高さ検出部と、を備えたことを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記高さ検出部により検出された前記物品の高さおよび前記容器の形状に基づいて、当該物品の内容量を算出する内容量算出部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
算出された前記内容量と予め記憶された基準内容量との比較により、当該算出された内容量の適否を判定する判定部をさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
算出された前記内容量を表示する表示部をさらに備えたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記物品は液体であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のX線検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−247715(P2011−247715A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120283(P2010−120283)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】