説明

がいし漏れ電流観測方法、装置並びにプログラム

【課題】撮像手段を用いて監視対象の監視を行って監視画像データの取得を中断することなく常時且つ長期に亘って継続して行いながら、監視対象に所定の現象が生じている場合であって監視対象の分析等に必要とされる一定期間の監視画像データのみを自動的に保存することができるようにする。
【解決手段】電流測定手段を用いてがいしの漏れ電流を測定すると共に撮像手段を用いてがいしの監視画像を取得し、複数の画像保存手段のうちの一台が取り込んだ監視画像のデータを漏れ電流の大きさに基づいて保存するか否かを判断すると共に保存しないと判断した場合に消去する間は複数の画像保存手段のうちの他の一台が監視画像データを取り込むようにして、監視画像データの取り込みと消去とを予め設定された取込時間帯に従って複数の画像保存手段で交互に行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がいし漏れ電流観測方法、装置並びにプログラムに関する。さらに詳述すると、本発明は、紫外線カメラの画像データを用いてがいし漏れ電流を推定する装置に提供するデータの作成に用いて好適ながいし漏れ電流観測方法、装置並びにプログラムに関する。
【0002】
本明細書において、がいし漏れ電流とは、電気絶縁性材料により構成されて電線を支持するがいしにおいてその表面に発生する漏れ電流を意味するものとして用いている。
【背景技術】
【0003】
既存電力設備の長寿命化及び設備利用の高効率化等の要請から、電力設備の維持管理手法は、従来の事後処理型管理(Corrective Maintenance;CMともいう)や定期的取り替え型管理(Time Based Maintenance;TBMともいう)から、状態に基づく管理(Condition Based Maintenance;CBMともいう)に向かうことが予測されており、そのために設備の状態を常時監視する技術の確立が望まれている。しかしながら、がいしの常時監視技術は確立されていない。
【0004】
がいしの監視項目としては、がいし表面の汚損の程度や主に塩害などによる塩分付着量の監視が挙げられる。汚損物ががいし表面に付着し、例えば降雨などによりがいし表面が湿潤した状態になると汚損物に含まれる電解質(主にNaCl)によって導電路が形成されて放電が生じ、本来電気絶縁体であるがいし表面において漏れ電流が発生する場合がある。このような放電や漏れ電流が生じると、ジュール熱や電気化学的な作用等によってがいしが損傷または劣化してしまう虞がある。特に、シリコーンゴム等の高分子絶縁材料を外皮として採用した高分子がいしは、従来の磁器がいしと比べて軽量かつ高強度で絶縁性能に優れることから電力輸送分野における今後の適用拡大が期待されている一方で、有機材料であるために放電や漏れ電流の発生による侵食劣化が懸念されている。
【0005】
そこで、がいし漏れ電流を推定する装置として、がいし表面において放電により発光している部分の面積と発光時にがいし表面を流れる漏れ電流値との間の相関関係を利用するものであって、がいし又は該がいしと同じ材質の試験体の監視画像を取得する撮像手段と、撮像手段によって得られた監視画像から放電により発光している部分の面積を求める発光面積算定手段と、漏れ電流値と発光面積との間の相関関係に基づいて発光面積算定手段によって求めた発光面積からがいし又は試験体の表面を流れる漏れ電流値を推定する推定手段とを備える装置が提案されている(特許文献1)。
【0006】
特許文献1の装置を用いてがいし漏れ電流を推定するためには、がいし表面が放電により発光している時の監視画像における発光部分の面積と漏れ電流計測回路によって計測したがいし漏れ電流値との組み合わせデータが必要とされ、がいし漏れ電流の推定を精度良く行うためには多数の組み合わせデータが必要とされる。そして、がいし表面発光時の監視画像データとがいし漏れ電流値との組み合わせデータを多数揃えるためには、撮像手段を用いてがいしの監視を中断することなく常時且つ長期に亘って行うと共に少なくともがいし表面発光時の監視画像データを保存する必要がある。
【0007】
しかしながら、長期に亘って監視画像データを常時取得して記録媒体に記録を続けると、記録媒体の容量には限界があるので記録媒体はいずれ一杯になってしまう。記録媒体が一杯になった場合には、新しい記録媒体に交換したり、同じ記録媒体を再び使用するために記録媒体に記録された監視画像データを他の記録媒体や装置にコピーしてから消去したりする作業が必要とされ、そのたびに記録を中断しなければならない。そして、記録を中断してしまうことにより、必要とされる状況でのデータが欠落してしまうなどの問題が生じる。
【0008】
そこで、撮像手段を用いた監視対象の監視並びに監視画像データの記録を中断することなく常時行う従来の方法として、監視画像データを記録する記録媒体が一杯になった場合には古い画像データに最新の画像データを自動的に順次上書きして監視画像データを記録し続けるといういわゆる循環記録方式がある。
【0009】
しかしながら、例えば監視対象に異常が発生した時の監視画像データは多様な状況のデータ収集や将来におけるデータ活用の観点から長期間保存しておくことが望まれたとしても、循環記録方式では古い画像データに最新の画像データが無条件に上書きされてしまうために古い画像データは一切残らないという問題があった。特許文献1のがいし漏れ電流推定装置で用いるデータの収集を例に挙げれば、古い画像データに最新の画像データが上書きされてしまうことによって、不定期に生起するがいし表面発光時の監視画像データとがいし漏れ電流値との組み合わせデータが蓄積されないという問題が生じる。
【0010】
そこで、循環記録方式でありながら必要なデータについては長期保存を可能とする従来の方法として、撮像部から取得した映像データを循環記録方式の第一の記録装置に記録し、第一の記録装置に記録された映像データを所定の検索条件に従って検索すると共に、検索された映像データを当該映像データに関連付けされた情報のリストとして表示し、リストから選択された映像データを第一の記録装置から読み出して第二の記録装置に保存する映像データの保存方法がある(特許文献2)。この映像データの保存方法では、第一の記録装置に記録された映像データを再生し、モニタに再生表示されている映像データを見ながら操作者がイン点指定ボタンを操作して保存したい映像データの先頭を指定すると共にアウト点指定ボタンを操作して保存したい映像データの末尾を指定することによって第一の記録装置から読み出して第二の記録装置に保存する映像データの保存区間を指定するようにしている。
【0011】
【特許文献1】特開2006−12799号
【特許文献2】特開2004−173259号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献2の映像データの保存方法では、第二の記録装置に保存する映像データの保存区間を指定するためには、操作者が第一の記録装置に記録された映像データの全てを見なければならない。このため、記録された長時間の映像データの中から長期間保存すべき映像データを効率的に選択して保存することができるとは言い難い。
【0013】
そこで、本発明は、撮像手段を用いて監視対象の監視を行って監視画像データの取得を中断することなく常時且つ長期に亘って継続して行いながら、監視対象に所定の現象が生じている場合であって監視対象の分析等に必要とされる一定期間の監視画像データのみを自動的に保存することができるがいし漏れ電流観測方法、装置並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するため、請求項1記載のがいし漏れ電流観測方法は、電流測定手段を用いてがいしの漏れ電流を測定すると共に撮像手段を用いてがいしの監視画像を取得し、複数の画像保存手段のうちの一台が取り込んだ監視画像のデータを漏れ電流の大きさに基づいて保存するか否かを判断すると共に保存しないと判断した場合に消去する間は複数の画像保存手段のうちの他の一台が監視画像データを取り込むようにして、監視画像データの取り込みと消去とを予め設定された取込時間帯に従って複数の画像保存手段で交互に行うようにしている。
【0015】
また、請求項2記載のがいし漏れ電流観測装置は、がいしの漏れ電流を測定する電流測定手段と、がいしの監視画像を取得する撮像手段と、予め設定された取込時間帯に従って監視画像のデータを交互に取り込むと共に漏れ電流の大きさに基づいて監視画像データを保存するか否かの判断を行って保存しないと判断した場合に消去する複数の画像保存手段とを有するようにしている。
【0016】
請求項3記載のがいし漏れ電流観測プログラムは、がいしの漏れ電流のデータが記録されたデータベースにアクセス可能であると共にがいしの監視画像を取得する撮像手段と監視画像のデータを取り込み可能に接続されたコンピュータに、少なくとも、予め設定された取込時間帯に従って監視画像データを撮像手段から取り込む処理と、監視画像データ取得中の漏れ電流のデータをデータベースから読み込む処理と、漏れ電流の大きさに基づいて監視画像データを保存するか否かを判断する処理と、監視画像データを保存しないと判断した場合に監視画像データを消去する処理とを行わせるようにしている。
【0017】
したがって、このがいし漏れ電流観測方法、装置並びにプログラムによると、がいしの監視画像データ(以下、単に監視画像データとも表記する)の取り込みと取り込んだ監視画像データの保存の要否の判断及び保存不要と判断した場合の消去とを予め設定された取込時間帯に従って複数の画像保存手段の間で時間差を設けて交互に行うことができるので、監視画像データの取得が中断することなく常時行われる。さらに、がいしの漏れ電流の大きさに基づいて監視画像データの保存の要否を自動的に判断するようにしているので、がいし漏れ電流の解析に有用なデータのみが自動的に保存される。
【0018】
また、請求項4記載の発明は、請求項1記載のがいし漏れ電流観測方法において、NTPサーバにより提供される時刻に基づいて取込時間帯を制御するようにしている。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項2記載のがいし漏れ電流観測装置において、NTPサーバにより提供される時刻に基づいて取込時間帯を制御するようにしている。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項3記載のがいし漏れ電流観測プログラムにおいて、NTPサーバにより提供される時刻に基づいて取込時間帯を制御するようにしている。
【0021】
したがって、このがいし漏れ電流観測方法、装置並びにプログラムの場合には、複数の画像保存手段若しくはコンピュータがNTPサーバにより提供される時刻に基づいて監視画像データの取り込みの開始と終了とを制御するようにしているので、監視画像データを取り込む装置が切り替わるタイミングにずれがなく、欠落のない監視画像データがより確実に収集される。
【発明の効果】
【0022】
本発明のがいし漏れ電流観測方法、装置並びにプログラムによれば、監視画像データの取得を中断することなく常時行うことが可能であり、観測データの欠落の防止を図ることができる。
【0023】
また、本発明によれば、がいし漏れ電流の解析に有用なデータのみを保存することが可能であり、記録媒体が一杯になるまでの期間を大幅に延長することが可能であり、長期に亘る監視画像データの収集を行うことができる。さらに、がいし漏れ電流の解析に有用なデータのみを自動的に保存することが可能であり、長時間の監視画像データの中から長期間保存すべきデータの選択の手間を省いて必要なデータの選択と収集とを効率化することができる。
【0024】
また、本発明によれば、各画像保存手段の処理のタイミングを一致させることが可能であり、監視画像データを取り込む装置の切り替えのタイミングを一致させて監視画像データの欠落の防止をより確実に図ることできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1から図3に、本発明のがいし漏れ電流観測方法並びに装置の実施形態の一例を示す。このがいし漏れ電流観測方法は、電流測定手段3を用いてがいしの漏れ電流を測定すると共に撮像手段5を用いてがいしの監視画像を取得し、二台の画像保存手段10A及び10Bのうちの一台が取り込んだ監視画像のデータを漏れ電流の大きさに基づいて保存するか否かを判断すると共に保存しないと判断した場合に消去する間は二台の画像保存手段10A及び10Bのうちの他の一台が監視画像データを取り込むようにして、監視画像データの取り込みと消去とを予め設定された取込時間帯に従って二台の画像保存手段10A及び10Bで交互に行うようにしている。
【0027】
上記がいし漏れ電流観測方法は、本発明のがいし漏れ電流観測装置として装置化される。本実施形態のがいし漏れ電流観測装置1は、がいしの漏れ電流を測定する電流測定手段3と、がいしの監視画像を取得する撮像手段5と、予め設定された取込時間帯に従って監視画像のデータを交互に取り込むと共に漏れ電流の大きさに基づいて監視画像データを保存するか否かの判断を行って保存しないと判断した場合に消去する第一の画像保存手段10A及び第二の画像保存手段10Bとを備える。
【0028】
電流測定手段3は、がいしの表面に取り付けられてがいし表面において放電によって発生する漏れ電流を測定する。具体的には例えば、電流検出回路を備える電流測定用センサが用いられる。
【0029】
本実施形態では、がいし漏れ電流のデータを蓄積して保存するデータサーバ4が用いられる。電流測定手段3とデータサーバ4とは通信回線等により接続され、通信回線等を介して電流測定手段3で測定したがいし漏れ電流値データの送受信が行われる。そして、電流測定手段3で測定されたがいし漏れ電流値データ並びに当該がいし漏れ電流が測定された時刻のデータが蓄積されてデータサーバ4に漏れ電流データベース18が構築される。
【0030】
また、第一の画像保存手段10A及び第二の画像保存手段10Bとデータサーバ4とは通信回線8により接続され、通信回線8を介して相互にデータや制御指令等の信号の送受信(出入力)が行われる。
【0031】
撮像手段5は、画像を構成する各画素の複数階調の明るさの値即ち輝度値データを有するグレースケール若しくはカラーのデジタル画像データを取得するものである。
【0032】
ここで、がいし表面における放電による発光の要素としては、がいし表面の汚損物に含まれるナトリウム(Na)の炎色反応による発光と、空気中の窒素(N)がイオン化する際の発光との二つがある。ナトリウムの炎色反応による発光では600nm程度(より正確には589nm程度)の波長の光が放出される。窒素がイオン化する際の発光では紫外光(波長は1nm〜400nm)が放出される。
【0033】
そこで、従来のがいし漏れ電流を推定する装置では、放電時のナトリウムの炎色反応に起因する発光と窒素がイオン化する際の発光との少なくとも一方又は双方の発光を画像にとらえると共に、この画像における発光面積と放電時にがいし表面を流れた漏れ電流値とを計測して発光面積と漏れ電流値との間の相関関係を予め求め、この撮影条件と同条件又はほぼ同じと見なせる条件の下で放電時の発光を画像にとらえると共にこの画像における発光面積を求めて予め求めた相関関係に基づいて対応する漏れ電流値を推定するようにしている。
【0034】
本実施形態では、撮像手段5としては、紫外光の波長(具体的には1nm〜400nm)に大きな感度を持たせた既存又は新規の紫外線検出用カメラや、可視光及び紫外光を検出可能なCCD(Charge−Coupled Deviceの略)等の撮像素子を備えて紫外光を除去するフィルタ処理を省略して可視光から紫外光までを撮影可能な既存又は新規のCCDカメラ等が用いられる。
【0035】
紫外光の波長に大きな感度を持たせた紫外線カメラを用いた場合には、放電時に空気中の窒素がイオン化する際に放出される紫外光を感度良く撮影することができるので、太陽光下であってもがいし表面で発生する放電光を背景に埋もれさせずに良好に撮影することができる。また、可視光から紫外光までを撮影可能な紫外線カメラを用いた場合には、放電時のナトリウムの炎色反応による発光と空気中の窒素がイオン化する際の発光との両方をとらえることができる。
【0036】
放電は可視光(ナトリウム発光)及び紫外光の両方の成分を含んでいるが、可視光だけの発光面積では十分な情報を得られない場合もあるので紫外光及び可視光の両方の情報を得られることが好ましく、この場合において一般的な紫外線カメラは特殊フィルターを使わない限り可視光情報も取得できるので紫外線カメラの使用が好ましい。
【0037】
本実施形態のがいし漏れ電流観測装置1は、撮像手段5により取得された監視画像データをビデオ信号補償器2を介しデータ伝送ケーブル9を通じて伝送するようにしている。なお、例えば監視画像データの伝送距離が長距離となる場合にデータ伝送の高速化を図るためや近傍の大きな電界の影響によるノイズ流入の防止を図るためにデータ伝送ケーブル9として光ファイバを使うようにしても良く、この場合には、ビデオ信号補償器の替わりに電気/光信号変換器を用いるようにしても良い。
【0038】
さらに、本実施形態のがいし漏れ電流観測装置1は、撮像手段5により取得された監視画像データを第一の画像保存手段10Aと第二の画像保存手段10Bとに分配して伝送するための監視画像データ分配器6を備える。監視画像データ分配器6は、撮像手段5から入力された監視画像データをデータ伝送ケーブル9を通じて第一の画像保存手段10A又は第二の画像保存手段10Bのどちらかに分配して出力するものである。
【0039】
なお、第一の画像保存手段10A及び第二の画像保存手段10Bは、データ伝送ケーブル9が接続されて撮像手段5により取得された監視画像データを監視画像データ分配器6を介して取り込む入力端子16を備える。入力端子16は、具体的には例えば、USB(Universal Serial Busの略)やSCSI(Small Computer System Interfaceの略)やIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineersの略)1394等である。
【0040】
さらに、本実施形態では、通信回線8にNTP(Network Time Protocolの略)サーバ7が接続され、第一の画像保存手段10A及び第二の画像保存手段10Bに対して通信回線8を介して時刻データの提供が行われる。また、データサーバ4に対しても通信回線8を介して時刻データの提供が行われ、電流測定手段3で測定されたがいし漏れ電流値データが漏れ電流データベース18に蓄積される際に当該がいし漏れ電流が測定された時刻のデータとして一緒に蓄積される時刻データもNTPサーバ7から提供される時刻データに基づく。これにより、第一の画像保存手段10A及び第二の画像保存手段10B並びにデータサーバ4の時刻が同期される。
【0041】
がいし漏れ電流観測装置1の処理は、図1のフロー図に示すステップに従って実行される。すなわち、
まず、電流測定手段3を用いてがいしの漏れ電流の測定を開始すると共に撮像手段5を用いてがいしの監視画像の取得を開始するステップ(W1)が実行される。
【0042】
そして、第一の画像保存手段10Aの処理ターン(T1)として、ステップW1で取得を開始した監視画像データを取り込むと共に記録を開始するステップ(T1−S1)と、ステップT1−S1で開始した監視画像データの取り込みと記録とを終了するステップ(T1−S2)と、ステップW1で測定を開始したがいし漏れ電流値データを読み込むステップ(T1−S3)と、ステップT1−S3で読み込んだがいし漏れ電流値の大きさに基づいてステップT1−S1からT1−S2までの間に記録した監視画像データをそのまま保存するか否かを判断するステップ(T1−S4)と、ステップT1−S4で監視画像データを保存しないと判断した場合(T1−S4;No)にステップT1−S1からT1−S2までの間に記録した監視画像データを消去するステップ(T1−S5)と、がいし漏れ電流の観測を終了するか否かを判断するステップ(T1−S6)とが実行される。
【0043】
さらに、第二の画像保存手段10Bの処理ターン(T2)として、第一の画像保存手段10Aの処理ターンT1における監視画像データの取り込みと記録とを終了するステップ(T1−S2)と同時にステップW1で取得を開始した監視画像データを取り込むと共に記録を開始するステップ(T2−S1)が実行され、続いて、ステップT2−S1で開始した監視画像データの取り込みと記録とを終了するステップ(T2−S2)と、ステップW1で測定を開始したがいし漏れ電流値データを読み込むステップ(T2−S3)と、ステップT2−S3で読み込んだがいし漏れ電流値の大きさに基づいてステップT2−S1からT2−S2までの間に記録した監視画像データをそのまま保存するか否かを判断するステップ(T2−S4)と、ステップT2−S4で監視画像データを保存しないと判断した場合(T2−S4;No)にステップT2−S1からT2−S2までの間に記録した監視画像データを消去するステップ(T2−S5)と、がいし漏れ電流の観測を終了するか否かを判断するステップ(T2−S6)とが実行される。
【0044】
そして、第一の画像保存手段10Aの処理ターン(T3)として、第二の画像保存手段10Bの処理ターンT2における監視画像データの取り込みと記録とを終了するステップ(T2−S2)と同時に、ステップW1で取得を開始した監視画像データを取り込むと共に記録を開始するステップ(T3−S1)が実行され、続いて、第一の画像保存手段10Aの前回の処理ターンT1におけるステップT1−S2からT1−S6までの処理と同様にステップT3−S2からT3−S6までの処理が実行される。
【0045】
以降同様に、ステップS6(T1−S6,T2−S6,T3−S6,…,のこと)で処理終了(S6;Yes)と判断されるまで、一方の画像保存手段の監視画像データの取り込み及び記録の終了と同時に他方の画像保存手段の監視画像データの取り込み及び記録が開始され、二台の画像保存手段によって監視画像データの取り込み及び記録が中断することなく交互に繰り返される。
【0046】
上述のがいし漏れ電流観測方法並びにがいし漏れ電流観測装置は、がいし漏れ電流観測プログラムをコンピュータ上で実行することによっても実現される。本実施形態では、がいし漏れ電流観測プログラムをコンピュータ上で実行する場合を例に挙げて説明する。
【0047】
がいし漏れ電流観測プログラム17を実行するためのがいし漏れ電流観測装置1の全体構成と共に、コンピュータを用いて構築される第一の画像保存手段10A及び第二の画像保存手段10Bの構成を図2及び図3に示す。なお、以降では、第一の画像保存手段10Aと第二の画像保存手段10Bとのことを単に画像保存手段10とも表記する。
【0048】
画像保存手段10は、制御部11、記憶部12、入力部13、表示部14及びメモリ15を備え相互にバス等の信号回線により接続される。制御部11は記憶部12に記憶されているがいし漏れ電流観測プログラム17により画像保存手段10全体の制御並びにがいし漏れ電流の観測に係る演算を行うものであり、例えばCPU(Central Processing Unitの略)である。記憶部12は少なくともデータやプログラムを記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。入力部13は少なくとも作業者の命令をCPUに与えるためのインターフェイスであり、例えばキーボードである。表示部14は制御部11の制御により文字や図形等の表示を行うものであり、例えばディスプレイである。メモリ15は制御部11が各種制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となる。
【0049】
画像保存手段10の制御部11には、がいし漏れ電流観測プログラム17を実行することにより、NTPサーバ7から時刻データを取得すると共に取得した時刻データに基づいて監視画像データの取り込みの開始と終了とを判断する処理時間制御部11a、監視画像データ分配器6を介して撮像手段5から監視画像データを取り込むと共に取り込んだ監視画像データを記憶部12に記録する監視画像データ記録部11b、データサーバ4の漏れ電流データベース18から漏れ電流値データを読み込むと共に読み込んだ漏れ電流の大きさに基づいて監視画像データを保存する必要があるか否かを判断するデータ保存要否判断部11c、データ保存要否判断部11cが監視画像データを保存する必要がないと判断した場合に記憶部12に記録した監視画像データを消去する監視画像データ消去部11dが構成される。
【0050】
さらに、記憶部12には、取り込んだ監視画像データを記録すると共に記録した監視画像データを保存する必要があると判断した場合に監視画像データをそのまま保存して蓄積する監視画像データベース19が作成される。
【0051】
がいし漏れ電流観測プログラム17を用いた本発明の実行にあたっては、まず、電流測定手段3によるがいし漏れ電流の測定を開始すると共に、撮像手段5による監視画像の取得を開始する(W1)。また、第一の画像保存手段10Aと第二の画像保存手段10Bとにおいてがいし漏れ電流観測プログラム17を起動させる。
【0052】
そして、がいし漏れ電流観測プログラム17の起動と同時に、画像保存手段10の制御部11の処理時間制御部11aはNTPサーバ7から時刻データの取得を開始すると共に、取得した時刻データに基づいて各画像保存手段10が監視画像データの取込時間帯か否かを判断する。ここで、取込時間帯とは画像保存手段10が監視画像データの取り込み及び記録を行う時間帯のことをいう。
【0053】
処理時間制御部11aがNTPサーバ7から取得した時刻データに基づいて取込時間帯に該当すると判断した場合には監視画像データ記録部11bに対して監視画像データの取り込み及び記録の指令を与え、取込時間帯に該当しないと判断した場合には外部に対する処理指令の出力は行わずに時刻データの取得を継続して行う。
【0054】
ここで、本発明は、監視画像データの取り込みと記録とを複数の画像保存手段で交互に行うことにより、監視画像データの収集を中断することなく継続して行うものである。本実施形態では、第一の画像保存手段10Aと第二の画像保存手段10Bとで監視画像データの取り込みと記録とを交互に行う。
【0055】
監視画像データの取込時間帯の設定は、がいし漏れ電流観測プログラム17上に予め規定しておくようにしても良いし、がいし漏れ電流観測プログラム17起動後に作業者が指定するようにしても良い。がいし漏れ電流観測プログラム17起動後に取込時間帯を設定する場合には、制御部11の処理時間制御部11aが取込時間帯の指定を要求する内容のメッセージを表示部14に表示し、入力部13を介して入力された作業者の指定の時間帯を用いるようにする。
【0056】
取込時間帯が、がいし漏れ電流観測プログラム17上に予め規定されている場合には処理時間制御部11aがプログラム17から読み込んだ時間帯をメモリ15に記憶させ、がいし漏れ電流観測プログラム17起動後に作業者が指定する場合には処理時間制御部11aが入力部13を介して入力された作業者の指定の時間帯をメモリ15に記憶させる。
【0057】
監視画像データの取込時間帯は、監視画像データの取り込み及び記録が中断することがないように、がいし漏れ電流観測装置1を構成する複数の画像保存手段が交互に連続して取り込み及び記録を行うように設定される。本実施形態では、第一の画像保存手段10Aは偶数分台に監視画像データの取り込み及び記録を行うように設定され、第二の画像保存手段10Bは奇数分台に監視画像データの取り込み及び記録を行うように設定される。なお、偶数分台とは例えば2分00秒から3分00秒までや4分00秒から5分00秒までのことをいう。そして、奇数分台とは例えば1分00秒から2分00秒までや3分00秒から4分00秒までのことをいう。また、毎時丁度の00分は偶数分として扱う。
【0058】
本実施形態では、がいし漏れ電流の観測開始後、制御部11の処理時間制御部11aがNTPサーバ7から当初に取得する時刻が偶数分台の場合、即ち第一の画像保存手段10Aによる監視画像データの取り込み及び記録の処理から始まる場合について説明する。
【0059】
まず、第一の画像保存手段10Aの処理(T1)について説明する。なお、以下においては、特に断らない限り、第一の画像保存手段10Aを構成する手段の処理について説明する。
【0060】
制御部11の処理時間制御部11aはメモリ15に記憶された取込時間帯の設定を読み込む。本実施形態では、処理時間制御部11aは、第一の画像保存手段10Aの取込時間帯の設定として偶数分台であることを読み込む。
【0061】
そして、処理時間制御部11aがNTPサーバ7から当初に取得する時刻が偶数分台であるので、処理時間制御部11aは監視画像データの取り込み及び記録を開始する指令を監視画像データ記録部11bに与える。監視画像データ記録部11bはこの指令に基づいて監視画像データ分配器6を介して撮像手段5から監視画像データを取り込むと共に取り込んだ監視画像データを記憶部12の監視画像データベース19に記録する(T1−S1)。なお、処理時間制御部11aは時刻データの取得を継続して行う。
【0062】
そして、処理時間制御部11aがNTPサーバ7から取得する時刻が偶数分台が終わって奇数分台に入った場合には、処理時間制御部11aは監視画像データの取り込み及び記録を終了する指令を監視画像データ記録部11bに与える。監視画像データ記録部11bはこの指令に基づいて監視画像データの取り込み及び記録を終了する(T1−S2)。以下では、当該処理ターン(即ちT1)において監視画像データ記録部11bが監視画像データの取り込み及び記録を行う時間帯即ちT1−S1からT1−S2までの時間帯のことをT1時間帯と呼び、T1時間帯に監視画像データベース19に記録される監視画像データのことをT1時間帯監視画像データと呼ぶ。
【0063】
次に、データ保存要否判断部11cは、データサーバ4内の漏れ電流データベース18から、T1時間帯のがいし漏れ電流値データを読み込んでT1時間帯漏れ電流値データとしてメモリ15に記憶させる(T1−S3)。
【0064】
続いて、データ保存要否判断部11cは、メモリ15に記憶させたT1時間帯漏れ電流値データ中の最大値(以下、T1時間帯最大値と呼ぶ)を特定する。そして、データ保存要否判断部11cはT1時間帯最大値と監視画像データを保存する必要があるか否かを判断するための閾値(以下、データ保存要否閾値と呼ぶ)とを比較して、記憶部12の監視画像データベース19に記録したT1時間帯監視画像データの保存の要否を判断する(T1−S4)。
【0065】
データ保存要否閾値は、がいし表面における漏れ電流の大きさに関する指標であって、監視画像データの取込時間帯におけるがいし漏れ電流値がこの閾値よりも大きい場合には当該取込時間帯の監視画像データは保存する必要があると判断するための指標である。データ保存要否閾値の大きさは特に限定されるものではなく、観測対象のがいしにおける実際の漏れ電流の大きさやがいしの損傷又は劣化に繋がり得る漏れ電流の大きさ等を考慮して作業者が適当な値を設定すれば良い。本実施形態では、データ保存要否閾値として漏れ電流の大きさ5mAとする。
【0066】
なお、データ保存要否閾値は、がいし漏れ電流観測プログラム17上に予め規定しておくようにしても良いし、がいし漏れ電流観測プログラム17起動後に作業者が指定するようにしても良い。がいし漏れ電流観測プログラム17起動後にデータ保存要否閾値を設定する場合には、制御部11のデータ保存要否判断部11cがデータ保存要否閾値の指定を要求する内容のメッセージを表示部14に表示し、入力部13を介して入力された作業者の指定の値を用いるようにする。
【0067】
データ保存要否閾値が、がいし漏れ電流観測プログラム17上に予め規定されている場合にはデータ保存要否判断部11cがプログラム17から読み込んだ値をメモリ15に記憶させ、がいし漏れ電流観測プログラム17起動後に作業者が指定する場合にはデータ保存要否判断部11cが入力部13を介して入力された作業者の指定の値をメモリ15に記憶させる。
【0068】
データ保存要否判断部11cは、メモリ15からデータ保存要否閾値を読み込み、T1時間帯最大値がデータ保存要否閾値以下であってT1時間帯監視画像データを保存する必要がないと判断した場合には(T1−S4;No)、監視画像データ消去部11dに対して監視画像データベース19に記録したT1時間帯監視画像データを消去する指令を与える。監視画像データ消去部11dはこの指令に基づいてT1時間帯監視画像データを消去する(T1−S5)。
【0069】
一方、T1時間帯最大値がデータ保存要否閾値より大きくT1時間帯監視画像データを保存する必要があると判断した場合には(T1−S4;Yes)、データ保存要否判断部11cは、ステップT1−S3でメモリ15に記憶させたT1時間帯漏れ電流値データを読み込み、このT1時間帯漏れ電流値データをT1時間帯監視画像データに対応する漏れ電流値データとして監視画像データベース19に書き込む。
【0070】
ステップT1−S4;Yesの場合の処理又はステップT1−S5の処理に続いて、制御部11はがいし漏れ電流の観測を終了するか否かを判断する(T1−S6)。
【0071】
がいし漏れ電流の観測終了の設定は、観測終了時刻としてがいし漏れ電流観測プログラム17上に予め規定しておくようにしても良いし、がいし漏れ電流観測プログラム17起動後に作業者が適時に指定するようにしても良い。さらに、がいし漏れ電流観測プログラム17上に観測終了時刻を予め規定すると共に、プログラム起動後に作業者が適時に指定することもできるようにしても良い。がいし漏れ電流観測プログラム17起動後に観測終了を適時に設定する場合には、作業者が観測終了に適当な時期であると判断した時に入力部13を介して入力した観測終了の指令が制御部11に与えられるようにする。
【0072】
観測終了時刻ががいし漏れ電流観測プログラム17上に予め規定されている場合には制御部11がプログラム17から読み込んだ時刻をメモリ15に記憶させ、がいし漏れ電流観測プログラム17起動後に作業者が観測終了を指定する場合には制御部11が入力部13を介して入力された作業者の観測終了指令をメモリ15に記憶させる。
【0073】
そして、メモリ15に記憶されている観測終了時刻になった場合、若しくはメモリ15に観測終了指令が記憶されている場合には(T1−S6;Yes)、第一の画像保存手段10Aの制御部11は当該処理ターンT1の処理を終了すると共にがいし漏れ電流の観測を終了する(END)。
【0074】
一方、メモリ15に記憶されている観測終了時刻になっていない場合、さらに、メモリ15に観測終了指令が記憶されていない場合には(T1−S6;No)、第一の画像保存手段10Aの制御部11は当該処理ターンT1の処理を終了すると共に第一の画像保存手段10Aの次の処理ターン(本実施例ではT3)に移行する。
【0075】
続いて、本実施形態では第一の画像保存手段10Aの他方の画像保存手段に該当する第二の画像保存手段10Bの処理(T2)について説明する。
【0076】
第二の画像保存手段10Bの制御部11の処理時間制御部11aはメモリ15に記憶された取込時間帯の設定を読み込む。本実施形態では、処理時間制御部11aは、第二の画像保存手段10Bの取込時間帯の設定として奇数分台であることを読み込む。
【0077】
そして、本実施形態では、前述のとおり、がいし漏れ電流の観測開始後、処理時間制御部11aがNTPサーバ7から当初に取得する時刻は偶数分台であるので、奇数分台に監視画像データの取り込みを行うように設定された第二の画像保存手段10Bの処理時間制御部11aは当初は外部に対する処理指令の出力を行わずにそのままNTPサーバ7からの時刻データの取得を継続して行う。この時、第一の画像保存手段10Aは監視画像データの取り込み及び記録を行っている(T1−S1)。なお、以下においては、特に断らない限り、第二の画像保存手段10Bを構成する手段の処理について説明する。
【0078】
NTPサーバ7から取得する時刻が偶数分台が終了して奇数分台になると同時に、処理時間制御部11aは監視画像データの取り込み及び記録を開始する指令を監視画像データ記録部11bに与える。監視画像データ記録部11bはこの指令に基づいて監視画像データ分配器6を介して撮像手段5から監視画像データを取り込むと共に取り込んだ監視画像データを記憶部12の監視画像データベース19に記録する(T2−S1)。なお、処理時間制御部11aは時刻データの取得を継続して行う。
【0079】
ここで、偶数分台の終了と同時に第一の画像保存手段10Aの監視画像データ記録部11bは監視画像データの取り込み及び記録を終了しており(T1−S2)、第一の画像保存手段10Aによる監視画像データの取り込み及び記録の終了(T1−S2)と同時に第二の画像保存手段10Bによる監視画像データの取り込み及び記録が開始(T2−S1)され、途切れることなく連続した観測が行われる。
【0080】
そして、処理時間制御部11aがNTPサーバ7から取得する時刻が奇数分台が終わって偶数分台に入った場合には、処理時間制御部11aは監視画像データの取り込み及び記録を終了する指令を監視画像データ記録部11bに与える。監視画像データ記録部11bはこの指令に基づいて監視画像データの取り込み及び記録を終了する(T2−S2)。以下では、当該処理ターン(即ちT2)において監視画像データ記録部11bが監視画像データの取り込み及び記録を行う時間帯即ちT2−S1からT2−S2までの時間帯のことをT2時間帯と呼び、T2時間帯に監視画像データベース19に記録される監視画像データのことをT2時間帯監視画像データと呼ぶ。
【0081】
次に、データ保存要否判断部11cは、データサーバ4内の漏れ電流データベース18から、T2時間帯のがいし漏れ電流値データを読み込んでT2時間帯漏れ電流値データとしてメモリ15に記憶させる(T2−S3)。
【0082】
続いて、データ保存要否判断部11cは、メモリ15に記憶させたT2時間帯漏れ電流値データ中の最大値(以下、T2時間帯最大値と呼ぶ)を特定する。そして、データ保存要否判断部11cはT2時間帯最大値とデータ保存要否閾値とを比較して、記憶部12の監視画像データベース19に記録したT2時間帯監視画像データの保存の要否を判断する(T2−S4)。なお、データ保存要否閾値の設定等については第一の画像保存手段10Aの場合と同じである。
【0083】
データ保存要否判断部11cは、メモリ15からデータ保存要否閾値を読み込み、T2時間帯最大値がデータ保存要否閾値以下であってT2時間帯監視画像データを保存する必要がないと判断した場合には(T2−S4;No)、監視画像データ消去部11dに対して監視画像データベース19に記録したT2時間帯監視画像データを消去する指令を与える。監視画像データ消去部11dはこの指令に基づいてT2時間帯監視画像データを消去する(T2−S5)。
【0084】
一方、T2時間帯最大値がデータ保存要否閾値より大きくT2時間帯監視画像データを保存する必要があると判断した場合には(T2−S4;Yes)、データ保存要否判断部11cは、ステップT2−S3でメモリ15に記憶させたT2時間帯漏れ電流値データを読み込み、このT2時間帯漏れ電流値データをT2時間帯監視画像データに対応する漏れ電流値データとして監視画像データベース19に書き込む。
【0085】
ステップT2−S4;Yesの場合の処理又はステップT2−S5の処理に続いて、制御部11はがいし漏れ電流の観測を終了するか否かを判断する(T2−S6)。なお、がいし漏れ電流の観測終了の設定等については第一の画像保存手段10Aの場合と同じである。
【0086】
メモリ15に記憶されている観測終了時刻になった場合、若しくはメモリ15に観測終了指令が記憶されている場合には(T2−S6;Yes)、第二の画像保存手段10Bの制御部11は当該処理ターンT2の処理を終了すると共にがいし漏れ電流の観測を終了する(END)。
【0087】
一方、メモリ15に記憶されている観測終了時刻になっていない場合、さらに、メモリ15に観測終了指令が記憶されていない場合には(T2−S6;No)、第二の画像保存手段10Bの制御部11は当該処理ターンT2の処理を終了すると共に第二の画像保存手段10Bの次の処理ターン(本実施例ではT4)に移行する。
【0088】
ここで、奇数分台の終了と同時即ち処理ターンT2における第二の画像保存手段10Bによる処理ターンT3の監視画像データの取り込み及び記録の終了(T2−S2)と同時に第一の画像保存手段10Aによる監視画像データの取り込み及び記録が開始(T3−S1)される。そして、この取り込み及び記録の終了(T3−S2)と同時に第二の画像保存手段10Bによる処理ターンT4の監視画像データの取り込み及び記録が開始(T4−S1)される。
【0089】
このように、一方の画像保存手段による監視画像データの取り込み及び記録の終了と同時に他方の画像保存手段による監視画像データの取り込み及び記録が開始され、本実施形態では二台の画像保存手段によって交互に途切れることなく連続した監視画像データの取得が行われる。
【0090】
そして、例えば本実施形態のように二台の画像保存手段によって交互に途切れることなく連続した監視画像データの取得を行うために、一方の画像保存手段が監視画像データの取り込み及び記録を行っている間即ちステップS1からS2までの間に他方の画像保存手段がステップS3からS6までの処理を終了させていることが必要である。そのため、画像保存手段がステップS3からS6までの処理を終了させるのに必要とされる時間を踏まえて監視画像データの取込時間帯が設定される。また、三台以上の画像保存手段を用いてがいし漏れ電流観測装置を構成する場合には、他の複数台の画像保存手段が交互に連続して監視画像データの取り込み及び記録を行う間に一台の画像保存手段がステップS3からS6までの処理を終了させることができるように画像保存手段の台数並びに一台の画像保存手段が一回で監視画像データの取り込み及び記録を行う時間が設定される。
【0091】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態のがいし漏れ電流観測装置1では、各画像保存手段10が処理時間の制御を行うと共に取込時間帯の設定に従って監視画像データを取り込むようにしているが、これに限られず、監視画像データ分配器6が処理時間の制御を行うと共に取込時間帯の設定に従って各画像保存手段10に対して監視画像データを入力し、このデータ入力の開始と終了とを契機として各画像保存手段10が処理を遂行するようにしても良い。
【0092】
また、本実施形態のがいし漏れ電流観測装置1では、電流測定手段3によって測定されたがいし漏れ電流値データが蓄積される漏れ電流データベース18を格納するデータサーバ4を別個に有するものとして構成されているが、場合によっては、データサーバ4を有さない構成とすることも可能である。この場合には、電流測定手段3によって測定されたがいし漏れ電流値データが各画像保存手段10に電流測定手段3から直接入力されると共に各画像保存手段10の記憶部12に記録され、ステップS3においてデータ保存要否判断部11cは記憶部12に記録された漏れ電流値データ中から最大値を特定する。
【0093】
また、本実施形態のがいし漏れ電流観測装置1では、装置を構成する各機器の処理時間を同期させるための時刻データを提供するNTPサーバ7を別個に有するものとして構成されているが、場合によっては、NTPサーバ7を有さない構成とすることも可能である。この場合には、画像保存手段10のどちらか一方ががいし漏れ電流観測装置1の構成機器に対する制御信号出力機能を備え、この制御信号に従って各機器の処理の開始と終了とが制御される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明のがいし漏れ電流観測方法を装置化したがいし漏れ電流観測装置の実施形態の一例を説明するフローチャートである。
【図2】本実施形態のがいし漏れ電流観測装置の全体構成を説明する図である。
【図3】本実施形態のがいし漏れ電流観測方法をプログラムを用いて実施する場合のがいし漏れ電流観測装置の全体構成並びに第一及び第二の画像保存手段の機能ブロックを示す図である。
【符号の説明】
【0095】
1 がいし漏れ電流観測装置
3 電流測定手段
4 データサーバ
5 撮像手段
6 監視画像データ分配器
7 NTPサーバ
10A 第一の画像保存手段
10B 第二の画像保存手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流測定手段を用いてがいしの漏れ電流を測定すると共に撮像手段を用いて前記がいしの監視画像を取得し、複数の画像保存手段のうちの一台が取り込んだ前記監視画像のデータを前記漏れ電流の大きさに基づいて保存するか否かを判断すると共に保存しないと判断した場合に消去する間は前記複数の画像保存手段のうちの他の一台が前記監視画像データを取り込むようにして、前記監視画像データの取り込みと消去とを予め設定された取込時間帯に従って前記複数の画像保存手段で交互に行うことを特徴とするがいし漏れ電流観測方法。
【請求項2】
がいしの漏れ電流を測定する電流測定手段と、前記がいしの監視画像を取得する撮像手段と、予め設定された取込時間帯に従って前記監視画像のデータを交互に取り込むと共に前記漏れ電流の大きさに基づいて前記監視画像データを保存するか否かの判断を行って保存しないと判断した場合に消去する複数の画像保存手段とを有することを特徴とするがいし漏れ電流観測装置。
【請求項3】
がいしの漏れ電流のデータが記録されたデータベースにアクセス可能であると共に前記がいしの監視画像を取得する撮像手段と前記監視画像のデータを取り込み可能に接続されたコンピュータに、少なくとも、予め設定された取込時間帯に従って前記監視画像データを前記撮像手段から取り込む処理と、前記監視画像データ取得中の前記漏れ電流のデータを前記データベースから読み込む処理と、前記漏れ電流の大きさに基づいて前記監視画像データを保存するか否かを判断する処理と、前記監視画像データを保存しないと判断した場合に前記監視画像データを消去する処理とを行わせることを特徴とするがいし漏れ電流観測プログラム。
【請求項4】
NTPサーバにより提供される時刻に基づいて前記取込時間帯を制御することを特徴とする請求項1記載のがいし漏れ電流観測方法。
【請求項5】
NTPサーバにより提供される時刻に基づいて前記取込時間帯を制御することを特徴とする請求項2記載のがいし漏れ電流観測装置。
【請求項6】
NTPサーバにより提供される時刻に基づいて前記取込時間帯を制御することを特徴とする請求項3記載のがいし漏れ電流観測プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−91209(P2008−91209A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270741(P2006−270741)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】