説明

ごみ処理施設及びごみ処理方法

【課題】 従来は埋立処分されていた焼却灰中の磁性物(酸化鉄)を再利用することを可能にする、ごみ処理施設及びごみ処理方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係るごみ処理施設は、ごみ焼却炉2と、ごみ焼却炉2から排出した焼却灰から磁性物を磁力選別する磁力選別機4と、磁力選別機4により選別された磁性物を還元金属化処理する還元炉15と、を備えている。また、本発明に係るごみ処理方法は、ごみ焼却炉において可燃ごみを焼却処理する工程と、ごみ焼却炉から排出した焼却灰から磁性物を磁力選別する磁力選別工程と、磁力選別工程により選別された磁性物を還元炉において還元金属化処理する工程と、を含むことを特徴とする。本発明によれば、従来埋立処分されていた酸化鉄(磁性物)を、還元処理することにより、再利用可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却灰から磁力選別された磁性物(酸化鉄)を再利用するための、ごみ処理施設及びごみ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的なごみ処理施設の処理フローを図13に示す。
【0003】
粗大ごみは、リサイクル施設30で分別処理され、鉄類・アルミ類はスクラップ原料として再利用のめに売却され、可燃残渣はごみ焼却炉2で焼却処理される。
【0004】
廃プラスチックは、分別処理施設20で分別されて圧縮処理され、リサイクル施設においてリサイクルされる。
【0005】
可燃ごみは、ごみ焼却炉2において高温(例えば800℃〜1000℃)で焼却され、ごみ焼却炉2から排出された焼却灰3は、磁力選別機4によって磁性物(酸化鉄)5と非磁性物(焼却灰)6とに分別される。非磁性物(焼却灰)6は、溶融炉7において更に高温(例えば1300〜1400℃)で加熱・減溶され、有機物は、熱分解、ガス化、燃焼し、無機物は溶融してスラグ8として取り出され、非磁性物(焼却灰)に残留する金属は溶融炉内でスラグと比重分離して溶融メタルとして取り出される。また、非磁性物(焼却灰)に含まれている低沸点の重金属類や塩化物等は溶融により揮散し、冷却固化により溶融炉7の下流の集塵機で溶融飛灰として捕集される。スラグは、主に土木資材、建設資材としてリサイクルされ、有効利用される。溶融メタルは、主成分が鉄であり、建設機械などのカウンターウェイととして有効利用される。溶融飛灰は、鉛や亜鉛などの重金属類を高濃度で含むため、山元還元により資源化される。また、ストーカ式焼却炉から排出される焼却灰を焼成する場合は、ストーカ式焼却炉とは別にキルン炉により焼成が行われる(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−164059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、焼却灰から磁力選別機によって分別された磁性物(酸化鉄)は、焼却炉の高温燃焼によって酸化されており、資源化原料に適さない性状であるため、殆どが埋立処分されているのが実情である。
【0008】
そこで、本発明は、従来は埋立処分されていた焼却灰中の磁性物(酸化鉄)を再利用することを可能にする、ごみ処理施設及びごみ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るごみ処理施設は、ごみ焼却炉と、ごみ焼却炉から排出した焼却灰から磁性物を磁力選別する磁力選別機と、磁力選別機により選別された磁性物を還元金属化処理する還元炉と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るごみ処理施設は、前記磁性物を還元炉に投入する前に、前記磁性物に廃プラスチックを混合して成形する混合・成形機を更に備えることが好ましい。この場合において、前記磁性物を廃プラスチックと混合する前に該磁性物を破砕する破砕機と、該破砕機により破砕した磁性物を所定粒径以下に篩い分ける篩と、を備えることが好ましい。
【0011】
前記還元炉の排ガスを前記ごみ焼却炉の排ガスと併せて処理する排ガス処理設備を備えることが好ましい。あるいは、ごみ処理施設が溶融炉を備える場合は、前記還元炉の排ガスを前記溶融炉の排ガスと併せて処理する排ガス処理設備を備えても良い。
【0012】
前記還元炉は、フレーム一体型水冷火格子を備えるとともに火格子下部から高温還元ガスが供給される水冷ストーカを備え、前記フレーム一体型水冷火格子は、炉壁を貫通して両サイドに延びる左右一対の支持部と該一対の支持部間を連結する連結部とが一体形成され、前記連結部の表面に耐火性保護層が設けられ、前記両サイドの支持部及び連結部を連通する冷却水流路が内部に形成され、前記支持部の炉壁外側部位に冷却水の出入口を備えることが好ましい。
【0013】
また、上記目的を達成するため、空冷火格子を有する燃焼ストーカの後段に、フレーム一体型水冷火格子を有する焼成ストーカを備え、焼却炉と一体で焼却灰の焼成処理を行うハイブリッド型ストーカ炉を、本発明に係るごみ処理施設が備えることを特徴とする。
【0014】
さらに、上記目的を達成するため、本発明に係るごみ処理方法は、ごみ焼却炉において可燃ごみを焼却処理する工程と、ごみ焼却炉から排出した焼却灰から磁性物を磁力選別する磁力選別工程と、磁力選別工程により選別された磁性物を還元炉において還元金属化処理する工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
上記本発明に係るごみ処理方法において、還元金属化処理工程において、廃プラスチックを還元剤として用いることが好ましい。この場合において、廃プラスチックは、前記磁性物と混合、成形してペレット化することが好ましい。前記磁性物を廃プラスチックと混合する前に該磁性物を破砕機によって破砕する破砕工程と、破砕した磁性物を所定粒径以下に篩い分ける篩工程と、を備えることが好ましい。
【0016】
前記還元炉の排ガスは、ごみ焼却炉の排ガス及び溶融炉の排ガスの少なくとも一方と併せて、共通の排ガス処理設備で排ガス処理することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来埋立処分されていた酸化鉄(磁性物)を、還元処理することにより、埋立処分量の低減、金属売却益の増加、リサイクル率の向上が可能となる。
【0018】
また、ごみ処理施設内の廃プラスチックを還元剤として用いることで、廃プラスチックを有効利用できる。特に、ごみ処理施設には、一般に廃プラスチックの処理施設が併設されているので利用し易い。
【0019】
さらに、還元炉から排出される排ガスは、ごみ処理施設内の焼却炉や溶融炉の排ガス処理設備と共通化して処理することにより、設備費の増加を抑えることができる。
【0020】
また、還元炉を、フレーム一体型水冷火格子の下部から高温還元ガスを供給するストーカ式とすることにより、キルン式のような大きな落下撹拌が行われないため、飛灰発生量を抑えることができる。
【0021】
また、乾燥段、燃焼段、及び後燃焼段からなる一般的なストーカ式焼却炉の前記後燃焼段に、フレーム一体型水冷火格子を組み込み、該フレーム一体型水冷火格子の下部から高温還元ガスを供給することにより、燃焼段で焼却処理された焼却灰の顕熱を有効利用でき、熱効率の良い還元処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るごみ処理施設の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係るごみ処理施設の構成要素である還元炉の一実施形態を示す縦断側面図である。
【図3】図2の還元炉の構成要素である火格子の一実施形態を示す平面図である。
【図4】図3の火格子の作動状態を示す平面図である。
【図5】図3の火格子の構成要素である可動火格子を一部断面で示す平面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う縦断面図である。
【図7】図3の火格子の構成要素である固定火格子を一部断面で示す平面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿う縦断面図である。
【図9】図3のIX−IX線に沿う縦断面図である。
【図10】図9のX−X線に沿う縦断面図である。
【図11】火格子の他の実施形態を示す平面図である。
【図12】本発明に係るごみ処理施設の構成要素であるストーカ式複合炉の一実施形態を示す縦断側面図である。
【図13】従来のごみ処理施設を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、全図を通し、同様の構成部分には同符号を付した。
【0024】
本発明に係るごみ処理施設の一実施形態を図1にブロック図で示す。ごみ処理施設1には、可燃ごみと、粗大ごみと、廃プラスチックとが搬送されてくる。
【0025】
可燃ごみは、ごみ焼却炉2において焼却される。ごみ焼却炉2から排出した焼却灰3は、磁力選別機4によって、磁性物5(酸化鉄)と非磁性物6(焼却灰)とに磁力選別される。磁力選別機4によって選別された非磁性物6は、従来と同様、溶融炉7において溶融処理され、溶融炉7から排出されたスラグ8や溶融メタルはリサイクルされ、溶融飛灰9は山元還元される。
【0026】
磁力選別機4により選別された磁性物5は、破砕機10において破砕された後、篩11において所望粒径(例えば59mm以下)に篩選別され、篩上のものは破砕機10の上流側の破砕機10に戻して再破砕し、篩下の細かな磁性物5(酸化鉄)が回収される。
【0027】
ごみ処理施設1には、廃プラスチックの分別処理施設20が併設されている。分別処理施設20において金属屑等の不適物を取り除かれた廃プラスチックは、圧縮梱包されてリサイクルされる一方、一部の廃プラスチックは、篩分けされた前述の磁選、分級された磁性物(酸化鉄)5と混合(12)され、適宜成分調整した上でペレットに成形(13)され、還元鉄原料とされる。なお、廃プラスチックを酸化鉄と混合、成形するための混合・成形機は、混合機と成形機とが一体であっても別体でもよい。
【0028】
本発明のごみ処理施設1には、還元炉15が配設されている。還元炉15において前記還元鉄原料を高温(1100℃〜1300℃)で加熱すると、プラスチック成分が還元炉15内で瞬時に還元ガス(CO,H)となって酸化鉄を還元することにより、鉄が得られる。
【0029】
還元炉15の排ガスは、ごみ焼却炉2及び溶融炉7の少なくとも一方の排ガス処理設備(図示せず。)を利用して排ガス処理することができる。それにより、排ガス処理設備を増設せずに済むので、設備費の増加を抑えることができる。
【0030】
ごみ処理施設1には、従来と同様に、粗大ごみを分別してリサイクルするためのリサイクル施設30も併設されており、リサイクル施設30で分別された鉄類はスクラップ原料として売却される。還元炉15によって得られた鉄は、粗大ごみから分別された鉄類と同様に、スクラップ原料として再利用するためい売却される。
【0031】
一般に、ごみ処理施設には、粗大ごみ・不燃ごみのリサイクル設備を併設しており、スクラップ類の売却ルートが確立しているため、還元炉15で還元された鉄の売却にも活用可能である。また、溶融炉7が連続可動しないごみ処理施設の場合、溶融炉7の休止期間に還元炉15を運転することで、運転員の増員無しに、還元炉15を導入することができる。
【0032】
なお、上記実施形態では、廃プラスチックを酸化鉄の還元剤として用いたが、還元剤として従来用いられている石炭、コークス等を、廃プラスチックに代えて焼却灰に加えることもできるし、あるいは、廃プラスチックと併用して用いることもできる。
【0033】
還元炉15の一実施形態を図2に示す。図2は、フレーム一体型水冷火格子43を備えるストーカ式還元炉15Aの内部構造を示す側面図である。このストーカ式還元炉15Aは、従来のストーカ炉のような金属製のフレームの上に耐火物製火格子を載せて連結支持して火格子の下方から空気を供給する構成と異なり、後述するように、火格子がフレームと一体的に形成されるとともに内部に冷却水流路が形成されており、火格子下部から高温還元ガスを供給することができるように構成されている。
【0034】
ストーカ式還元炉15Aは、図示に示す如く、還元鉄原料Aを投入する為の投入口41、投入された還元鉄原料Aを押し出す為のプッシャ42、これに依って押し出された還元鉄原料Aを搬送する火格子43等を備えている。
【0035】
火格子43は、固定火格子43Aと可動火格子43Bとが前後方向(図2において、左側が前側)に傾斜状に且つ交互に配置されている(図2では、一対の固定火格子と可動火格子のみを図示している。)。可動火格子43Bが前後傾斜方向に往復移動する事に依り還元鉄原料Aは順次下流側(図2の左側)へ搬送される。
【0036】
ストーカ式還元炉15Aは、還元鉄原料Aの高温還元処理に適した構造であり、火格子43の下部スペースを形成する風箱44内に火炎を放射するバーナ45が設置されている。
【0037】
風箱45は、高温燃焼排ガスBを火格子43の下部全体に供給可能な様に上方が開口した箱型を呈して居り、図示省略しているが、耐火物に依って内面がライニングされている。
【0038】
バーナ45は、化石燃料、COGガス、バイオガス等の燃料を燃焼させる事に依り低酸素濃度の高温燃焼排ガスBを発生させてこれを火格子43の下部に供給する。火格子43の下部に供給された低酸素濃度の高温燃焼排ガスBは、可動火格子43Bと固定火格子43Aとの間隙を通って火格子43上の還元鉄原料Aを高温還元雰囲気中で還元処理することができる。
【0039】
高温燃焼排ガスBは、好適には、酸素濃度1%以下に制御されて供給される。例えば、火格子43の下部に供給される前に高温燃焼排ガスBの酸素濃度を酸素濃度計(図示せず)に依って検出し、検出された酸素濃度が1%を超える場合には、バーナ45に供給される燃焼用空気の空気比や燃料ガス及び燃焼用空気の空燃比を調整する事に依り酸素濃度を1%以下に制御する事ができる。
【0040】
図3,4,7,8を参照すれば、ストーカ式還元炉15Aの固定火格子43Aは、平面視において矩形状を成しており、左右一対の支持部51、52と、これら支持部51、52間を連結する連結部53とを備えている。左右一対の支持部51、52は、左右の炉壁即ち炉本体の左右の側壁54、55の貫通孔54a、55aを貫通し、側壁54、55に支持されて固定されている。炉本体の側壁54,55は、耐火壁であり、図示例では、高温ガスに耐えるため、内部を冷却水Cが循環する冷却水流路54c、55cが形成されている。
【0041】
ストーカ式還元炉15Aの可動火格子43Bは、図3〜6を参照すれば、L字状をした左右一対の支持部56、57と、これら支持部56、57を連結する連結部58を備えている。L字状の支持部56、57は、前後方向に延びる縦片56a、57aと外側方に延びる横片56b、57bとを備えている。
【0042】
可動火格子43Bは、固定火格子43A上にずれ重なるようにして配置されている。可動火格子43Bの支持部56、57は、炉本体の側壁54,55の貫通孔54a,55aを貫通し、炉外に設置された案内機構60,61に接続され、前後方向(図3のX方向)に案内自在に支持されている。
【0043】
火格子43は、それらの下方から供給される1100℃〜1300℃の高温ガスに晒される。そのため、固定火格子43A及び可動火格子43Bは、それぞれ、図5〜図8に一部断面で示すように、前記支持部及び連結部を連通する冷却水流路63、64が内部に形成されている。冷却水流路の入口63a、64a及び出口63b、64bは支持部51、52、56、57の炉外部位に設けられ、これらの冷却水出入口63a、64a、63b、64bに接続されている冷却水用配管68a、68b、69a〜69eが炉内の高温ガスに晒されないようになっている。火格子43は、支持部51,52、56,57及び連結部53、58を一体的に鋳造した水管鋳込み式の鋳鋼製が望ましい。あるいは、図示例の固定火格子43Aのように内部の冷却水流路が直線状貫通孔によって形成されている場合は、無垢材(鋼材)に深孔加工を施し、両端開口部をU字管等で管接続することによって冷却水の流路を形成しても良い。冷却水流路63、64は、図外の冷却水供給装置と冷却水用配管を介して接続され、冷却水Cが循環する。
【0044】
また、耐火性能を向上させるため、固定火格子43Aの連結部53は、支持部51,52より薄く形成され、薄くした分をセラミック等の耐火性保護層53aによって被覆されている。可動火格子43Bの連結部58も同様に、支持部56、57に比べて薄く形成され、薄くした分を耐火性保護層58aで被覆されている。なお、耐火性保護層53a、58aは、セラミック板等により構成して、取り外し可能に固定しても良い。
【0045】
可動火格子43Bは、固定火格子43A上で摺動する。固定火格子43Aの上部には可動火格子43Bの摺動による摩耗に対応するため、取替え式のシュー65が取り付けられている。シュー65は、固定火格子43Aと可動火格子43Bとの間に、高温ガスが火格子の下から上へ通り抜けるための隙間を形成するスペーサとしても作用する。
【0046】
可動火格子43Bは、両端の支持部56、57が炉側壁の貫通孔54a、55aを貫通した状態で前後動する。可動火格子43Bが前後動した場合に、炉側壁の貫通口54a、55aから処理物や高温排ガスが漏出することを防ぐための構造が採用されている。
【0047】
可動火格子43Bが前進した際(図4の状態)に可動火格子43B後方の貫通口54a、55aを塞ぐため、可動火格子43Bの支持部56,57の後部に水冷壁67が取り付けられている。水冷壁67は、内部に冷却水路67a(図5参照)を備えている。したがって、可動火格子43Bが前進した際には、図4に示すように、後部の水冷壁67が可動火格子43Bの後部の貫通孔54a、55aを塞いた状態を維持する。
【0048】
また、可動火格子43Bが後退した際に横片56b、57bの前方(図3、4の下方)の貫通孔54a、55aを塞ぐために、支持部56、57の縦片56a,57aの外側面に対して、固定火格子43A上に取り付けられた水冷壁70、71が近接配置される。水冷壁70,71は、内側面に耐火物ブロック70a,71aが固定されており、内部に冷却水が循環する水路80(図10参照)が形成されている。水冷壁70,71は、支持部56,57の縦片56a、57aとの間の隙間G(図10参照)を調節可能に取り付けられている。具体的には、水冷壁70,71を固定火格子43A上に固定するためのアングル70b、71bに炉の幅方向に延びる長孔70c、71c(図3参照)が形成され、長孔70c、71cを介してボルト70d、71d及び図外のナットによって、水冷壁70,71を固定火格子43Aに固定している。したがって、水冷壁70,71は、ボルト70d、71dを緩めれば、水冷壁70,71を炉の幅方向(図3の左右方向)へ微小移動させて、支持部56,57の縦片56a,57aとの間の隙間Gを調節できる。また、ボルト70d、71dを外せば水冷壁70,71を取り外すこともでき、水冷壁70,71を取り外した空間を通じて、取替式シュー65の交換を炉側壁から行うこともできる。
【0049】
可動火格子43Bの支持部56,57及び固定火格子43Aの支持部51,52は、それらの炉外に出ている部分が、炉の側壁54,55に取り付けられたボックス72,73内に収容され得る(図3,4)。ボックス72,73内は、不活性ガスや自己の排ガスなどでパージされ、炉内ガスの侵入が防がれ得る。
【0050】
可動火格子43Bは、図3,4,9,10を参照すれば、ボックス72,73内に固定されたガイドレール60a、61aに案内される摺動体60b、61bに連結されている。摺動体60b、61bに連結された押出しロッド60c、61cは、ボックス72,73を貫通し、駆動装置81(図2参照)に接続され、可動火格子43Bの支持部56b、57bをボックス72,73内で前後させる。可動火格子43Bの冷却水流路63に接続される冷却水用配管68a、68bは、左右のボックス72、73を摺動可能に貫通して延びている。
【0051】
上記構成を有する還元炉15Aによれば、投入口41から投入された還元鉄原料Aは、プッシャ42によって火格子43上に押し出され、駆動装置81の駆動により可動火格子43Bが前後動することで、火格子43上を還元鉄原料Aが下流側に搬送されつつ、火格子43下部から供給される高温ガスBとプラスチック成分による還元ガスにより還元金属化される。なお、図2に示すようなストーカ炉の場合、キルン炉の様な大きな落下撹拌が行われないため、飛灰発生量を抑制することができる。
【0052】
還元炉に使用される水冷式の可動火格子は、上記形態に代えて、例えば、図11に示すように、可動火格子43B’の左右の支持部56’、57’を平面視凸状に鋳造し、凸片56m、57mを除く側面56n、57nに対し、炉幅方向位置調節可能且つ取外し可能な水冷壁70’、71’をそれぞれ近接配置する構成とすることも可能である。
【0053】
さらに、上記実施形態のストーカ式還元炉に代えて、一般的なストーカ焼却炉の最終段(後燃焼段)の後燃焼ストーカを、上記ストーカ式還元炉と同様の構造に置換したストーカ式複合炉を採用することもできる。すなわち、図12に示すように、ストーカ式複合炉100は、空冷火格子101を有する乾燥ストーカ102及び燃焼ストーカ103の後段に、フレーム一体型水冷火格子43を有する水冷ストーカ104を備え、空冷式の乾燥ストーカ102及び燃焼ストーカ103にはそれらの下部から燃焼用空気Eを供給し、フレーム一体型水冷火格子43の下部からは高温(1100〜1300℃程度)で低酸素濃度の還元ガスBを供給するように構成している。フレーム一体型水冷火格子は、図3〜図11で示したものと同様の構成を採用できる。ストーカ式複合炉100は、水冷ストーカ104の上部炉内を加熱するための加熱バーナ106を備えることができ、また、水冷ストーカ104の上流部に還元剤を供給するための還元剤供給装置107を備えることができる。
【0054】
斯かる構成のストーカ式複合炉100によれば、投入口105から投入された可燃ごみは、乾燥ストーカ102で乾燥され、燃焼ストーカ103で燃焼して焼却灰となった後、水冷ストーカ104において高温の還元ガスによって焼却灰中の酸化鉄が還元処理される。
【0055】
このように、ストーカ式複合炉100は、乾燥ストーカ102及び燃焼ストーカ103で焼却処理された焼却灰の顕熱を利用し、さらに水冷ストーカ104においてフレーム一体型水冷火格子43の下から高温の還元ガスを供給することで、効率的に焼却灰中の磁性物(酸化鉄)の還元処理を行うことができる。
【0056】
なお、ストーカ式複合炉100は、焼成を目的とする場合は、フレーム一体型水冷火格子43の下部から供給される高温ガスは還元ガスでなくても良いが、その場合には、酸化鉄を還元処理するための還元炉が別途併設される。従来の一般的な水冷ストーカ式焼却炉による焼却灰の焼成は、火格子上面から一方向の加熱となり、焼却灰が断熱層となって熱伝導効率が悪いが、図12に示すようなストーカ式複合炉の場合、緩やかな撹拌とストーカ下部からの高温ガス供給が加わるため、焼却灰の焼成速度が増し、外部燃料の削減に大きく貢献する。
【0057】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、形態の変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 ごみ処理施設
2 ごみ焼却炉
3 焼却灰
4 磁力選別機
5 磁性物(酸化鉄)
6 非磁性物(焼却灰)
7 溶融炉
8 スラグ
9 溶融飛灰
10 破砕機
11 篩
15、15A 還元炉
20 分別処理施設
30 リサイクル施設
43 フレーム一体型水冷火格子
43A 固定火格子
43B 可動火格子
56、57、51、52 支持部
53、58 連結部
53a、58a 耐火性保護層
63,64 冷却水流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみ焼却炉と、ごみ焼却炉から排出した焼却灰から磁性物を磁力選別する磁力選別機と、磁力選別機により選別された磁性物を還元金属化処理する還元炉と、を備えていることを特徴とするごみ処理施設。
【請求項2】
前記磁性物を還元炉に投入する前に前記磁性物に廃プラスチックを混合して成形する混合・成形機を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のごみ処理施設。
【請求項3】
前記磁性物を廃プラスチックと混合する前に該磁性物を破砕する破砕機と、該破砕機により破砕した磁性物を所定粒径以下に篩い分ける篩と、を備えることを特徴とする請求項2に記載のごみ処理施設。
【請求項4】
前記還元炉の排ガスを、前記ごみ焼却炉の排ガスと併せて処理する排ガス処理設備を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のごみ処理施設。
【請求項5】
ごみ処理施設が前記磁力選別機で選別された非磁性物を溶融処理する溶融炉を更に備え、前記還元炉の排ガスを、前記溶融炉の排ガスと併せて処理する排ガス処理施設を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のごみ処理施設。
【請求項6】
前記還元炉は、フレーム一体型水冷火格子を備えるとともに該フレーム一体型水冷火格子下部から高温還元ガスが供給される水冷ストーカを備え、
前記フレーム一体型水冷火格子は、左右の炉壁をそれぞれ貫通して延びる左右一対の支持部と該一対の支持部間を連結する連結部とが一体形成され、前記連結部の表面に耐火性保護層が設けられ、前記支持部及び連結部を連通する冷却水流路が内部に形成され、前記支持部の炉壁外側部位に冷却水の出入口を備えることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のごみ処理施設。
【請求項7】
火格子下部から空気が供給される乾燥ストーカと、前記乾燥ストーカの後段に配置され火格子下部から空気が供給される燃焼ストーカと、前記燃焼ストーカの後段に配置されフレーム一体型水冷火格子を備えるとともに下部から高温ガスが供給される水冷ストーカと、を備えるストーカ式複合炉であって、
前記フレーム一体型水冷火格子は、左右の炉壁をそれぞれ貫通して延びる左右一対の支持部と該一対の支持部間を連結する連結部とが一体形成され、前記連結部の表面に耐火性保護層が設けられ、前記支持部及び連結部を連通する冷却水流路が内部に形成され、前記支持部の炉壁外側部位に冷却水の出入口を備える前記ストーカ式複合炉を有することを特徴とする、ごみ処理施設。
【請求項8】
ごみ焼却炉において可燃ごみを焼却処理する工程と、ごみ焼却炉から排出した焼却灰から磁性物を磁力選別する磁力選別工程と、磁力選別工程により選別された磁性物を還元炉において還元金属化処理する工程と、を含むことを特徴とするごみ処理方法。
【請求項9】
前記還元金属化処理する工程において、廃プラスチックを還元剤として用いることを特徴とする請求項8に記載のごみ処理方法。
【請求項10】
廃プラスチックを前記磁性物と混合、成形してペレット化することを特徴とする請求項9に記載のごみ処理方法。
【請求項11】
前記磁性物を廃プラスチックと混合する前に該磁性物を破砕機によって破砕する破砕工程と、破砕した磁性物を所定粒径以下に篩い分ける篩工程と、を更に備えることを特徴とする請求項10に記載のごみ処理方法。
【請求項12】
前記還元炉の排ガスを、前記ごみ焼却炉の排ガスと併せて処理する排ガス処理工程を更に含むことを特徴とする請求項8〜11の何れかに記載のごみ処理方法。
【請求項13】
前記磁力選別工程で磁力選別された非磁性物を溶融炉で処理する溶融処理工程と、前記還元炉の排ガスを、前記溶融炉の排ガスと併せて処理する排ガス処理工程とを、更に含むことを特徴とする請求項8〜12の何れかに記載のごみ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−56392(P2011−56392A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208553(P2009−208553)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】