説明

しわ治療のためのプロテアーゼ阻害剤

しわまたはその他の皮膚損傷を減少させるための、Ucf-101のようなプロテアーゼ阻害剤の使用のための方法、組成物、およびキットが提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2004年2月5日出願の米国出願第60/542,187号(これの内容は参照により完全に組み入れられる)に基づく優先権を主張する。
【0002】
連邦政府によって支援された研究または開発
米国政府は、National Institutes of Healthにより授与されたDr.Michael DetmarへのグラントNo.CA92644のため、本発明においてある程度の権利を有し得る。
【0003】
背景
プロテアーゼおよびそれらの阻害剤は、多くの生物学的機能の調節に関与している。いくつかのプロテアーゼは、アポトーシスに関与している。カスパーゼは、アスパラギン酸残基の後で(他のカスパーゼを含む)他の細胞タンパク質を切断するシステイン・プロテアーゼであり、アポトーシス過程にとって重要である。Omi/HtrA2は、アポトーシスの間にサイトゾルへ放出され、IAP結合モチーフを介してアポトーシス阻害タンパク質(inhibitor of apoptosis proteins)(IAP)を中和することにより、シトクロムc(Cyt c)依存性のカスパーゼ活性化を促進するミトコンドリア・セリンプロテアーゼである。Omi/HtrA2のプロテアーゼ活性も、アポトーシスおよびカスパーゼ非依存性細胞死の両方の進行に寄与している。その他のタンパク質もアポトーシスに関与している。
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
本発明は、とりわけ、皮膚の治療、例えば、皮膚の損傷またはその他の皮膚状態の予防または減少において有用な方法および組成物(例えば、化粧用または治療用の方法および組成物)を含む。例えば、方法および組成物は、UVBにより誘導される光損傷(例えば、慢性光損傷)の症状およびしわを寛解させるために使用され得る。本発明者らは、例えば、プロテアーゼ阻害剤を対象、例えば、ヒトに投与することにより、しわが予防され、かつ/または減少し得ることを見出した。
【0005】
プロテアーゼ阻害剤は、好ましくは、アポトーシスにおいて活性化されるか、もしくはアポトーシスに関与しているプロテアーゼ、例えば、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ-7もしくはカスパーゼ-9)、またはアポトーシスに関与しているセリンプロテアーゼ、例えば、細菌HtrAシャペロンとの統計的に有意な配列相同性を有している哺乳動物セリンプロテアーゼの阻害剤である。例えば、プロテアーゼ阻害剤は、プロテアーゼに対する80、50、20、または10μM未満のIC50を有しているかもしれない。プロテアーゼ阻害剤は、他の哺乳動物プロテアーゼ、例えば、ヒト・カリクレイン、ヒト・プラスミン、またはヒト・トロンビンに対するIC50より少なくとも5倍、10倍、または20倍良好な(即ち、小さい)IC50で、アポトーシスにおいて活性化されるか、またはアポトーシスに関与しているプロテアーゼを優先的に阻害することができる。
【0006】
好ましい態様において、プロテアーゼ阻害剤はカスパーゼ阻害剤である。
【0007】
好ましい態様において、プロテアーゼ阻害剤はミトコンドリア・セリンプロテアーゼOmi/HtrA2の阻害剤である。
【0008】
好ましい態様において、プロテアーゼ阻害剤は細胞透過性の薬剤である。
【0009】
好ましい態様において、プロテアーゼ阻害剤は下記式(I)を有している。

式中:
R1およびR2は、各々独立に、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アラルキル、またはヘテロアラルキルであり、かつ1〜5個のR3で置換されていてもよく;
X、Y、およびZは、各々独立に、OまたはSであり;
----は、二重結合を表していてもよく;
nは、0〜20であり;
AおよびBは、各々独立に、アリールまたはヘテロアリールであり、かつ1〜5個のR3で置換されていてもよく;かつ
R3は、各々独立に、ハロ、ヒドロキシ、C1-C10アルキル、C1-C10ヒドロキシアルキル、C1-C6ハロアルキル、C1-C10アルコキシ、C1-C6ハロアルコキシ、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アラルキル、C7-C12ヘテロアルキル、C3-C8ヘテロシクリル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、C5-C10シクロアルケニル、C5-C10ヘテロシクロアルケニル、カルボキシ、カルボキシレート、シアノ、ニトロ、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、C1-C6ジアルキルアミノ、メルカプト、SO3H、スルフェート、S(O)NH2、S(O)2NH2、ホスフェート、C1-C4アルキレンジオキシ、オキソ、アシル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアミノカルボニル、C1-C6ジアルキルアミノカルボニル、C1-C10アルコキシカルボニル、C1-C10チオアルコキシカルボニル、C1-C6アルキルアンヒドリド(alkylanhydrido)、またはC1-C6ヒドロキシカルボニルアルキルである。
【0010】
好ましい態様において、R1およびR2はいずれもアリールである。
【0011】
好ましい態様において、R1およびR2はいずれもフェニルである。
【0012】
好ましい態様において、X、Y、およびZのうちの一つはSであり、かつ他の二つはOである。もう一つの態様において、YはSであり、かつXおよびZはOである。
【0013】
好ましい態様において、二重結合は存在する。
【0014】
好ましい態様において、nは0である。
【0015】
好ましい態様において、AおよびBのうちの一方はヘテロアリールであり、かつ他方はアリールである。
【0016】
好ましい態様において、Aはヘテロアリールであり、かつBはアリールである。
【0017】
好ましい態様において、Aは式(II)を有する。

式中、
Wは、O、S、またはNRaであり;かつ
Raは、水素またはC1-C6アルキルである。好ましくは、WはOである。
【0018】
好ましい態様において、Bは式(III)を有する。

式中、Rb、Rc、Rd、Re、およびRfは、各々独立に、水素、ハロ、ヒドロキシ、C1-C10アルキル、C1-C10ヒドロキシアルキル、C1-C6ハロアルキル、C1-C10アルコキシ、C1-C6ハロアルコキシ、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アラルキル、C7-C12ヘテロアラルキル、C3-C8ヘテロシクリル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、C5-C10シクロアルケニル、C5-C10ヘテロシクロアルケニル、カルボキシ、カルボキシレート、シアノ、ニトロ、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、C1-C6ジアルキルアミノ、メルカプト、SO3H、スルフェート、S(O)NH2、S(O)2NH2、ホスフェート、C1-C4アルキレンジオキシ、オキソ、アシル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアミノカルボニル、C1-C6ジアルキルアミノカルボニル、C1-C10アルコキシカルボニル、C1-C10チオアルコキシカルボニル、C1-C6アルキルアンヒドリド、またはC1-C6ヒドロキシカルボニルアルキルである。
【0019】
好ましい態様において、Rb、Rc、Rd、Re、およびRfは、各々独立に、水素、ヒドロキシ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C3-C8ヘテロシクリル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、カルボキシ、カルボキシレート、ニトロ、アミノ、アシル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアンヒドリド、またはC1-C6ヒドロキシカルボニルアルキルである。
【0020】
好ましい態様において、Rc、Rd、およびReは、各々水素であり、かつRbおよびRfは、各々独立に、ヒドロキシ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C3-C8ヘテロシクリル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、カルボキシ、カルボキシレート、ニトロ、アミノ、アシル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアンヒドリド、またはC1-C6ヒドロキシカルボニルアルキルである。
【0021】
好ましい態様において、RbまたはRfのうちの一つはニトロである。
【0022】
好ましい態様において、Rb、Rc、およびRfは、各々水素であり、かつRdおよびReは、各々独立に、ヒドロキシ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C3-C8ヘテロシクリル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、カルボキシ、カルボキシレート、ニトロ、アミノ、アシル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアンヒドリド、またはC1-C6ヒドロキシカルボニルアルキルである。
【0023】
好ましい態様において、RdまたはReのうちの一方はハロであり、かつ他方はC1-C4アルコキシである。
【0024】
好ましい態様において、RdはOCH3であり、かつReはClである。
【0025】
好ましい態様において、Rb、Rd、Re、およびRfは、各々水素であり、かつRcは、ヒドロキシ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C3-C8ヘテロシクリル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、カルボキシ、カルボキシレート、ニトロ、アミノ、アシル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアンヒドリド、またはC1-C6ヒドロキシカルボニルアルキルである。
【0026】
好ましい態様において、Rcはカルボキシである。
【0027】
好ましい態様において、Rc、Rd、およびRfは、各々水素であり、かつRbおよびReは、各々独立に、ヒドロキシ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C3-C8ヘテロシクリル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、カルボキシ、カルボキシレート、ニトロ、アミノ、アシル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアンヒドリド、またはC1-C6ヒドロキシカルボニルアルキルである。
【0028】
好ましい態様において、RbおよびReのうちの一つはニトロである。
【0029】
好ましい阻害剤は、以下より選択される。

【0030】
プロテアーゼ阻害剤は、例えば、皮膚治療、例えば、しわ治療を必要とする顔、胸、首、手、および身体のその他の領域に局所投与され得る。治療は、プロテアーゼ阻害剤の複数回の投与、例えば、少なくとも2回、3回、または4回の投与を含むことができる。治療は、例えば、明示された日数、例えば、少なくとも2日、3日、4日、7日、14日、21日、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、またはそれ以上にわたる、プロテアーゼ阻害剤の毎日の投与(例えば、一日一回または一日二回)を含むことができる。
【0031】
好ましい態様において、対象におけるしわは、(例えば、本明細書に記載された定性的または定量的なしわ評価の方法を使用して)少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、25%、またはそれ以上、減少する。
【0032】
一つの態様において、対象の皮膚は、UV線に慢性的に曝されており、例えば、対象は、少なくとも1週間にわたり繰り返し(二回以上)日光に曝されているか、または、対象は、損傷を負った、もしくは加齢した皮膚の症状、例えば、しわを示している。
【0033】
もう一つの態様において、方法は、しわ形成またはその他の皮膚状態の予防または治療を必要とする対象を同定すること:プロテアーゼ阻害剤、例えば、本明細書に記載されたプロテアーゼ阻害剤を投与すること;および、例えば、対象の皮膚における、例えば、適用の部位における、しわ形成、その他の皮膚状態、またはアポトーシスに対する投与の効果を評価すること、を含む。好ましい態様において、対象の皮膚は、UV、例えば、UVB線に曝されている。しわまたはその他の皮膚状態の予防または減少を必要とする対象の同定は、例えば、対象により、医療提供者により、または化粧品の提供者により、実施され得る。プロテアーゼ阻害剤は、例えば、対象により、医療提供者により、または化粧品の提供者により、投与され得る。同様に、しわ形成に対する効果の評価は、例えば、対象により、医療提供者により、または化粧品の提供者により、実施され得る。
【0034】
一つの態様において、プロテアーゼ阻害剤は、化粧用に許容される組成物、例えば、クリーム、ローション、フォーム、ゲル、またはその他の化粧用調製物に含まれ提供される。もう一つの態様において、プロテアーゼ阻害剤は、薬学的に許容される担体、例えば、無菌の緩衝液に含まれ提供され得る。
【0035】
一つの態様において、プロテアーゼ阻害剤は、第二の薬剤、例えば、化粧用の薬剤、例えば、以下のうちの一つ以上と組み合わせて投与される:香料、日焼け剤、保湿剤、必須脂肪酸、セラミド、精油、日焼け止め剤(例えば、メトキシケイ皮酸オクチル、アミノ安息香酸、オキシベンゾン、パジメート(padimate)O、ホモサレート(homosalate)、または二酸化チタン)、タンパク質またはタンパク質加水分解産物、アミノ酸、ビタミン(例えば、レチノール/ビタミンAおよびその誘導体、またはトコフェロール/ビタミンE)、ポリオール、尿素、アラントイン、糖または糖誘導体、植物抽出物(例えば、マテ、コラ、ガラナ、またはアロエベラの抽出物)。
【0036】
プロテアーゼ阻害剤は、例えば、少なくとも2〜100日、より好ましくは少なくとも7〜90日、さらに好ましくは14〜60日にわたり、皮膚に適用された場合に、しわの出現を減少させるのに有効であるかもしれないし、または、より長期間、例えば、少なくとも3〜9ヶ月、より好ましくは4〜8ヶ月、または約6ヶ月にわたり、しわの出現を減少させるのに有効であるかもしれない。
【0037】
いくつかの態様において、プロテアーゼ阻害剤は、修飾されてもよく、例えば、誘導体化されるか、またはもう一つの分子と接合させられてもよい。好ましい態様において、プロテアーゼ阻害剤は、ヒトにおける使用にとってより適当なものにするため、例えば、プロテアーゼ阻害剤をより高活性に、より安定に、またはより可溶性にするため、修飾される。
【0038】
もう一つの局面において、開示は、好ましくは、UV曝露、例えば、UVB、例えば、日光の曝露の前または後に適用することの説明と共に、プロテアーゼ阻害剤、例えば、本明細書に記載されたプロテアーゼ阻害剤、例えば、Ucf-101を対象に供給することにより、しわ防御を対象に提供する方法を特色とする。
【0039】
さらにもう一つの局面において、開示は、アポトーシスの阻害剤、例えば、繊維芽細胞のアポトーシスの阻害剤を投与することにより、しわ防御またはしわ形成の調整を対象に提供する方法を特色とする。阻害剤は、例えば、皮膚に、例えば、しわまたは皮膚損傷、例えば、切傷、水泡、瘢痕、UV-B損傷、熱傷等の部位に、局所適用され得る。一つの態様において、阻害剤は、プロテアーゼ阻害剤、例えば、アポトーシスにおいて活性化されるか、もしくはアポトーシスに関与しているプロテアーゼ、例えば、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ-7もしくはカスパーゼ-9)、またはアポトーシスに関与しているセリンプロテアーゼ、例えば、細菌HtrAシャペロンとの統計的に有意な配列相同性を有している哺乳動物セリンプロテアーゼの阻害剤である。
【0040】
もう一つの局面において、開示は、しわ防御を対象に提供するためのキットを特徴とする。キットは、プロテアーゼ阻害剤、例えば、本明細書に記載されたプロテアーゼ阻害剤、例えば、Ucf-101を含有している組成物;およびしわを予防するか、治療するか、または減少させるためにプロテアーゼ阻害剤を使用することの説明を含む。説明は、UV、例えばUVBの曝露、例えば日光曝露の前または後に組成物を適用することの説明を含むことができる。
【0041】
好ましい態様において、組成物中のプロテアーゼ阻害剤の重量パーセントは、0.01%〜10%、例えば、0.01%〜3%、3%〜6%、または6%〜10%の範囲である。もう一つの好ましい態様において、プロテアーゼ阻害剤の重量パーセントは、0.05%〜10%、例えば、0.05%〜5%、例えば、0.05%〜3%の範囲である。好ましい態様において、組成物は、香料、保存剤、またはその他の化粧用の成分、例えば、保湿剤、または日焼け止め剤、例えば、メトキシケイ皮酸オクチル、アミノ安息香酸、オキシベンゾン、パジメートO、ホモサレート、もしくは二酸化チタンも有している。
【0042】
他に定義しない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語は、全て、当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有している。本明細書において言及された刊行物は、全て、参照により完全に組み入れられる。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が適用されるであろう。さらに、材料、方法、および実施例は、例示に過ぎず、制限的なものではない。
【0043】
本発明のその他の特色または利点は、以下のいくつかの態様の詳細な説明、および添付の特許請求の範囲より明白になるであろう。
【0044】
詳細な説明
本発明は、とりわけ、プロテアーゼ阻害剤を対象に投与することにより、しわ形成またはその他の皮膚状態(例えば、皮膚損傷)を予防するかまたは減少させる方法に関する。好ましいプロテアーゼ阻害剤は、アポトーシスにおいて活性化されるか、またはアポトーシスに関与しているプロテアーゼ、例えば、アポトーシスに関与しているセリンプロテアーゼ、もしくはカスパーゼの阻害剤である。例えば、プロテアーゼ阻害剤は、ミトコンドリア・セリンプロテアーゼOmi/HtrA2の阻害剤である。例示的な阻害剤は、Ucf-101である。
【0045】
プロテアーゼ阻害剤
カスパーゼ阻害剤は、カスパーゼの活性部位に結合することにより作用し、可逆性または不可逆性いずれかの連結を形成する。カスパーゼ阻害剤は、アルデヒド(CHO)、クロロメチル-ケトン(CMK)、フルオロメチルケトン(FMK)、またはフルオロアシルオキシメチルケトン(FAOM)のような官能基に付着したペプチド認識配列を含み得る。CHO基を有するカスパーゼ阻害剤は、典型的には可逆性であり、CMK基、FMK基、またはFAOM基を有するものは、典型的には不可逆性である。FMKはCMKよりわずかに低い反応性を示し、従って、阻害される酵素部位に対してより特異的である。内因性基質内に見出されるものに対応するペプチド認識配列が、特定のカスパーゼの特異性を決定する。Ac-YVAD-CHO配列を有するペプチドは、カスパーゼ1および4の強力な阻害剤であり(Kiおよそ10nM)、カスパーゼ3および7に対しては極めて弱い阻害効果を示す(Ki50μM)。阻害剤ペプチドからのチロシン残基の排除は、強力であるが特異性の低い阻害剤をもたらし、例えば、Z-VAD-FMKは、カスパーゼ1および4のみならず、カスパーゼ3および7も阻害する。認識配列DEVDを有する阻害剤は、カスパーゼ-3の強力な阻害剤である(Ki=0.5nM)。それらは、はるかに高い濃度でカスパーゼ3、6、7、8、および10も阻害する。カスパーゼ阻害剤の細胞透過性を増加させるためには、アスパラギン酸残基がエステル化(OMe)され得る。いくつかの態様において、カポジ線維芽細胞増殖因子の疎水性領域に対応するペプチドまたはその他の細胞透過性増強剤が、細胞透過性を増加させるため、認識配列に付加され得る。
【0046】
カスパーゼ阻害剤は、アポトーシス阻害タンパク質(IAP)、例えば、少なくとも一つのバキュロウイルス・アポトーシス阻害タンパク質リピート(BIR)ドメイン(Pfamアクセッション番号:PF00653(Bateman et al.(2004)Nucleic Acids Res.32:D138-41))を含んでいるタンパク質であってもよい。カスパーゼ阻害剤は、カスパーゼを阻害することができるタンパク質の機能性の断片または誘導体、例えば、阻害機能を保持している断片であってもよい。
【0047】
Ucf-101
Ucf-101は、アポトーシス促進性熱誘導可能ミトコンドリア・セリンプロテアーゼOmi/HtrA2の強力な、特異的な、競合性の、かつ可逆性の阻害剤として作用する、細胞透過性のフルフリリジン-チオバルビツル酸(furfurylidine-thiobarbituric acid)化合物である(His-Omi134-458に対してIC50=9.5μM)。Cilenti et al.(2003)J.Biol.Chem.278(13):11489-94を参照のこと。Ucf-101は、試験された他のセリンプロテアーゼに対してはほとんど活性を示さない(IC50=200μM)。Ucf-101は、カスパーゼ-9(-/-)ヌル線維芽細胞におけるOmi/HtrA2により誘導されるアポトーシスを阻止することが報告されている。Ucf-101は、例えば、Calbiochemより市販されている。Ucf-101は、低分子であるため、その作用を発揮するために哺乳動物細胞に侵入することができる。Ucf-101化合物に加え、構造的に関連した化合物、およびOmi/HtrA2を阻害するその他の化合物、例えば、本明細書に記載された化合物が、本明細書に記載された方法において使用され得る。
【0048】
プロテアーゼおよびそれらの阻害剤に関する研究のためのアッセイおよび技術は、当技術分野においてルーチンであり、例えば、Proteolytic enzymes:serine and cysteine peptidases,Methods in Enzymology Vol 244,A.J.Barrett,Editor(Academic Press 1995)に見出され得る。Omiプロテアーゼ活性は、例えば、Faccio(2000)J Biol Chem.275(4):2581-8に記載されている。Omiの阻害剤を評価するためのさらなる方法は、例えば、Cilenti et al.(2003)J.Biol.Chem.278(13):11489-94に記載されている。
【0049】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素のラジカルをさす。
【0050】
「アルキル」という用語は、示された数の炭素原子を含有している、直鎖型または分岐型であり得る炭化水素鎖をさす。例えば、C1-C12アルキルとは、基が、その中に1〜12個(両端を含む)の炭素原子を有しているかもしれないことを示す。「ハロアルキル」という用語は、一つ以上の水素原子がハロに交換されたアルキルをさし、全ての水素がハロに交換されたアルキル・モエティ(例えば、パーフルオロアルキル)を含む。「アリールアルキル」または「アラルキル」という用語は、アルキルの水素原子がアリール基に交換されたアルキル・モエティをさす。アラルキルには、複数個の水素原子がアリール基に交換された基が含まれる。「アリールアルキル」または「アラルキル」の例には、ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、9-フルオレニル基、ベンズヒドリル基、およびトリチル基が含まれる。
【0051】
「アルキレン」という用語は、二価のアルキル、例えば、-CH2-(メチレン)、-CH2CH2-(エチレン)、および-CH2CH2CH2-(プロピレン)をさす。
【0052】
「アルケニル」という用語は、2〜12個の炭素原子を含有しており、かつ一つ以上の二重結合を有している直鎖型または分岐型の炭化水素鎖をさす。アルケニル基の例には、以下に制限はされないが、アリル基、プロペニル基、2-ブテニル基、3-ヘキセニル基、および3-オクテニル基が含まれる。二重結合炭素のうちの一つは、アルケニル置換基の付着点であってもよい。「アルキニル」という用語は、2〜12個の炭素原子を含有しており、かつ一つ以上の三重結合を有していることを特徴とする直鎖型または分岐型の炭化水素鎖をさす。アルキニル基の例には、以下に制限はされないが、エチニル、プロパルギル、および3-ヘキシニルが含まれる。三重結合炭素のうちの一つは、アルキニル置換基の付着点であってもよい。
【0053】
「アルキルアミノ」および「ジアルキルアミノ」という用語は、それぞれ-NH(アルキル) ラジカルおよび-NH(アルキル)2ラジカルをさす。「アラルキルアミノ」という用語は、-NH(アラルキル)ラジカルをさす。「アルコキシ」という用語は-O-アルキル・ラジカルをさす。「メルカプト」という用語はSHラジカルをさす。「チオアルコキシ」という用語は-S-アルキル・ラジカルをさす。
【0054】
「アリール」という用語は、芳香族の単環式、二環式、または三環式の炭化水素環系をさす。環原子が置換されていてもよい。アリール・モエティの例には、以下に制限はされないが、フェニル、ナフチル、およびアントラセニルが含まれる。
【0055】
本明細書において利用されるような「シクロアルキル」という用語には、3〜12個の炭素を有している飽和の環式、二環式、三環式、または多環式の炭化水素基が含まれる。環原子が置換されていてもよい。シクロアルキル基は、縮合環を含有しているかもしれない。縮合環とは、共通の炭素原子を共有している環である。シクロアルキル・モエティの例には、以下に制限はされないが、シクロプロピル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、アダマンチル、およびノルボルニルが含まれる。
【0056】
「ヘテロシクリル」という用語は、O、N、またはSより選択されるヘテロ原子を、単環式の場合には1〜3個、二環式の場合には1〜6個、または三環式の場合には1〜9個、有している、非芳香族の3〜10員単環式、8〜12員二環式、または11〜14員三環式の環系(例えば、炭素原子、および単環式の場合1〜3個、二環式の場合1〜6個、三環式の場合1〜9個のN、O、またはSのヘテロ原子)をさす。ヘテロ原子は、ヘテロシクリル置換基の付着点であってもよい。環原子が置換されていてもよい。ヘテロシクリル基は、縮合環を含有しているかもしれない。縮合環とは、共通の炭素原子を共有している環である。ヘテロシクリルの例には、以下に制限はされないが、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、モルホリノ、ピロリニル、ピリミジニル、キノリニル、およびピロリジニルが含まれる。
【0057】
「シクロアルケニル」という用語は、5〜12個の炭素、好ましくは5〜8個の炭素を有している、部分不飽和の、非芳香族の、環式、二環式、三環式、または多環式の炭化水素基をさす。不飽和炭素は、シクロアルケニル置換基の付着点であってもよい。環原子が置換されていてもよい。シクロアルケニル基は、縮合環を含有しているかもしれない。縮合環とは、共通の炭素原子を共有している環である。シクロアルケニル・モエティの例には、以下に制限はされないが、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、またはノルボルネニルが含まれる。
【0058】
「ヘテロシクロアルケニル」という用語は、O、N、またはSより選択されるヘテロ原子を、単環式の場合には1〜3個、二環式の場合には1〜6個、または三環式の場合には1〜9個、有している、部分飽和の、非芳香族の、5〜10員単環式、8〜12員二環式、または11〜14員三環式の環系をさす(例えば、炭素原子、および単環式の場合1〜3個、二環式の場合1〜6個、三環式の場合1〜9個のN、O、またはSのヘテロ原子)。不飽和炭素またはヘテロ原子は、ヘテロシクロアルケニル置換基の付着点であってもよい。環原子が置換されていてもよい。ヘテロシクロアルケニル基は、縮合環を含有しているかもしれない。縮合環とは、共通の炭素原子を共有している環である。ヘテロシクロアルケニルの例には、以下に制限はされないが、テトラヒドロピリジルおよびジヒドロピラニルが含まれる。
【0059】
「ヘテロアリール」という用語は、O、N、またはSより選択されるヘテロ原子を、単環式の場合には1〜3個、二環式の場合には1〜6個、または三環式の場合には1〜9個、有している、芳香族の、5〜8員単環式、8〜12員二環式、または11〜14員三環式の環系をさす(例えば、炭素原子、および単環式の場合1〜3個、二環式の場合1〜6個、三環式の場合1〜9個のN、O、またはSのヘテロ原子)。環原子が置換されていてもよい。ヘテロアリール基の例には、以下に制限はされないが、フラニル、チエニル、ピロリル、ピリジニルが含まれる。
【0060】
「オキソ」という用語は、炭素に付着した場合にはカルボニルを形成し、窒素に付着した場合にはN-オキシドを形成し、硫黄に付着した場合にはスルホキシドまたはスルホンを形成する酸素原子をさす。
【0061】
「アシル」という用語は、置換基によってさらに置換されていてもよい、アルキルカルボニル置換基、シクロアルキルカルボニル置換基、アリールカルボニル置換基、ヘテロシクリルカルボニル置換基、またはヘテロアリールカルボニル置換基をさす。
【0062】
「アミノカルボニル」、「アルコキシカルボニル」、「アルキルアンヒドリド」、または「ヒドロキシカルボニルアルキル」という用語は、それぞれ、ラジカル-C(O)NH2、-C(O)O(アルキル)、-C(O)OC(O)(アルキル)、および(アルキル)CO2Hをさす。
【0063】
「置換基」という用語は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロシクリル基、ヘテロシクロアルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、またはヘテロアリール基上の、その基の任意の原子において「置換された」基をさす。任意の原子が置換され得る。適当な置換基には、以下に制限はされないが、アルキル(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12の、直鎖型または分岐型のアルキル)、シクロアルキル、ハロアルキル(例えば、CF3のようなパーフルオロアルキル)、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヘテロシクリル、アルケニル、アルキニル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アルコキシ、ハロアルコキシ(例えば、OCF3のようなパーフルオロアルコキシ)、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、カルボキシレート、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、S03H、スルフェート、ホスフェート、メチレンジオキシ(酸素が隣接原子に付着している-O-CH2-O-)、エチレンジオキシ、オキソ、チオキソ(例えば、C=S)、イミノ(アルキル、アリール、アラルキル)、S(O)nアルキル(ここで、nは0〜2である)、S(O)nアリール(ここで、nは0〜2である)、S(O)nヘテロアリール(ここで、nは0〜2である)、S(O)nヘテロシクリル(ここで、nは0〜2である)、アミン(モノ-、ジ-、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル、アリール、ヘテロアリール、およびそれらの組み合わせ)、エステル(アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル、アリール、ヘテロアリール)、アミド(モノ-、ジ-、アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル、アリール、ヘテロアリール、およびそれらの組み合わせ)、スルホンアミド(モノ-、ジ-、アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル、およびそれらの組み合わせ)が含まれる。一つの局面において、ある基の上の置換基は、独立に、単一の上記の置換基であるか、または上記の置換基のサブセットである。もう一つの局面において、置換基は、それ自体、上記の置換基のうちの一つで置換されていてもよい。
【0064】
いくつかの化学的実体(entities)の実際の電子構造は、一つの正準体(即ち、ルイス構造)のみによっては適切に表され得ないことが理解される。理論によって拘束されることは望まないが、実際の構造は、そうではなく、共鳴体または共鳴構造として集合的に知られる、二つ以上の正準体の何らかのハイブリッドまたは加重平均であり得る。共鳴構造は、個別の化学的実体ではなく、紙上でのみ存在する。それらは、特定の化学的実体についての結合電子および非結合電子の位置または「配置」のみが相互に異なっている。ある共鳴構造が、他のものより大きな程度でハイブリッドに寄与することもあり得る。従って、記述的および図示的な記載は、当技術分野が特定の種について優勢な共鳴体として認識するものに関してなされる。
【0065】
置換基および変数の組み合わせは、典型的には、安定な化合物の形成をもたらすものをさす。本明細書において使用されるように、「安定な」という用語は、製造を可能にするために十分な安定性を保有しており、かつ本明細書に詳述された目的(例えば、対象への治療的または予防的な投与)にとって有用であるために十分な期間にわたり化合物の完全性を維持する化合物をさす。
【0066】
本明細書に記載された化合物は、商業的な起源(例えば、市販されている化合物ライブラリー)から入手されてもよいし、または市販されている出発材料および試薬を使用して、以下に示されるような従来の方法により合成されてもよい。
【0067】
本明細書に記載された化合物は、反応混合物から分離され、カラムクロマトグラフィ、高圧液体クロマトグラフィ、または再結晶のような方法によりさらに精製され得る。熟練した当業者により認識され得るように、本明細書中の式の化合物を合成するさらなる方法は、当業者には明らかであろう。さらに、所望の化合物を与えるため、様々な合成工程が、代替的な順序または順番で実施され得る。本明細書に記載された化合物の合成において有用な合成化学変形および保護基方法論(保護および脱保護)は、当技術分野において既知であり、例えば、R.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers (1989);T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,2d.Ed.,John Wiley and Sons(1991);L.Fieser and M.Fieser,Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994);および L.Paquette,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)、ならびにそれらの後続の版に記載されたようなものを含む。
【0068】
本明細書に記載された化合物は、一つ以上の不斉中心を含有しているかもしれず、従って、ラセミ化合物およびラセミ混合物、単一の対掌体、個々のジアステレオマー、およびジアステレオマー混合物として存在し得る。これらの化合物の全てのそのような異性体が、明確に含まれる。化合物は、特定の連結に関して結合回転が制限されるような連結(例えば、炭素-炭素結合)(制限は、例えば、環または二重結合の存在に起因する)も含有しているかもしれない。従って、全てのシス/トランスおよびE/Z異性体が、明確に含まれる。化合物は、多数の互変異性体として表され得るかもしれず、そのような場合には、たとえ単一の互変異性体のみが表されていたとしても、開示は、本明細書に記載された化合物の全ての互変異性体を明確に含む(例えば、環系のアルキル化は多数の部位におけるアルキル化をもたらすかもしれず、開示は全てのそのような反応生成物を明確に含む)。そのような化合物の全てのそのような異性体が、明確に含まれる。本明細書に記載された化合物の全ての結晶形が、明確に含まれる。
【0069】
化合物には、化合物自体が含まれるのみならず、適用可能な場合には、それらの塩およびそれらのプロドラッグも含まれ得る。塩は、例えば、陰イオンと、本明細書に記載された化合物上の正の電荷を有する置換基(例えば、アミノ)との間で形成され得る。適当な陰イオンには、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸、硝酸、リン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、および酢酸が含まれる。同様に、塩は、陽イオンと、本明細書に記載された化合物上の負に電荷を有する置換基(例えば、カルボキシレート)との間でも形成され得る。適当な陽イオンには、ナトリウム・イオン、カリウム・イオン、マグネシウム・イオン、カルシウム・イオン、およびテトラメチルアンモニウム・イオンのようなアンモニウム陽イオンが含まれる。プロドラッグの例には、対象へ投与された際に活性化合物を提供することができるエステルおよびその他の薬学的に許容される誘導体が含まれる。
【0070】
しわ
しわは、一般に、皮膚の自然老化過程、および日光の紫外線の曝露の結果である。しわは、組織学的レベルでの特定の構造的改変を伴わない、皮膚の表面における配置変化である。一般に、しわは、参照により本明細書に組み入れられるKligman et al.(1985)Br J Derm 113:37-42に記載されたようにして分類される。Kligmanは、しわを三つのクラスへと分類している:リニア・リンクル(linear wrinkles)、グリフィック・リンクル(glyphic wrinkles)、およびクリンクル(crinkles)。リニア・リンクルは、線状であり、顔の皮膚に一般に見出され、自然老化または紫外光曝露により引き起こされる。グリフィック・リンクルは、しわの明白な三角形または長方形として形作られ、日光に曝された顔、手、および首に見出され、紫外光曝露または皮膚日射病(dermatoheliosis)により悪化する。クリンクルは、皮膚のいかなる場所にも見出されるが、典型的には手の甲およびまぶたの周囲に見出される、弱い皮膚における細い縮れたしわである。
【0071】
リニア・リンクルは、さらに、(a)レギュラー・リンクル(regular wrinkles)および(b)ファイン・リンクル(fine wrinkles)へ細分され得る。レギュラー・リンクルは、長く、深く、明らかであり、カラスの足(crow's feet)とも呼ばれる。ファイン・リンクルは、細く、浅い。レギュラー・リンクルは、少なくとも約155ミクロン(0〜32Hz)、好ましくは約160〜250ミクロンの幅を有している。ファイン・リンクルは、(例えば、Takasu et al.(1996)J Soc Cosmet Chem Japan 29:394-405;および1995年5月2日公開の日本公開特許出願第07-113623号に本質的に記載されているようなShiseido Wrinkle Analyzer 3D Proシステムを使用して)二次元フーリエ変換により三次元形データを周波数ドメインのデータに変換することによって入手されたパワー・スペクトルで計算されるような、約154ミクロン未満、好ましくは約40〜154ミクロン(32〜126Hz)の幅を有している。
【0072】
組成物の有効量とは、対象に投与された際に、対象におけるしわもしくはファインリンクルの形成を予防するか、または対象におけるしわもしくはファインリンクルの出現を減少させる組成物の量と定義される。対象に投与される有効量は、典型的には、年齢、性別、表面積、体重、および皮膚の状態を含む多様な要因に基づく。体表面積は、患者の身長および体重からおよそ決定され得る。例えば、Scientific Tables,Geigy Pharmaceuticals,Ardley,New York,1970,537を参照のこと。有効用量は、当業者により認識されるように、投与経路、賦形剤の使用、および他のしわ減少化合物の使用のような他の治療との同時使用の可能性に依って変動するであろう。
【0073】
本明細書において使用されるように、「しわを予防または治療する」とは、しわの出現またはしわの形成の減少、改良、緩和、改変、改善、または影響を目的とした、しわを有しているか、もしくはしわの素因を有しているか、またはしわを引き起こす可能性が高い因子、例えば、UV線、例えば、UVB照射に曝された対象への治療剤の適用または投与を意味する。治療剤は、対象自身によって、または別の者、例えば、医療提供者もしくは化粧品の提供者によって、対象へ投与され得る。本明細書に記載された方法の好ましい態様において、対象におけるしわは、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、25%、またはそれ以上、減少する。
【0074】
方法および組成物は、予防的に使用されてもよいし、または対象におけるさらなるしわ形成を予防するか、もしくはしわの出現を減少させるために使用されてもよい。組成物は、しわの予防、減少、または治療のための医薬品または化粧品の製造のために使用されてもよい。
【0075】
プロテアーゼ阻害剤組成物の投与
しわまたはその他の皮膚状態の予防または減少のための薬学的組成物は、経口、局所、皮下、腹腔内、筋肉内、鼻腔内、および静脈内を含む非経口経路を介して投与され得る。局所投与が好ましい。組成物の反復投与、例えば、反復局所投与が使用され得る。複数の投与経路が同時に使用されてもよく、例えば、経口投与と併せて局所投与が使用されてもよい。非経口用剤形の例には、等張生理食塩水、5%グルコース、またはその他の周知の薬学的に許容される賦形剤による活性薬剤の水性溶液が含まれる。シクロデキストリンのような可溶化剤、または当業者に周知のその他の可溶化剤が、しわ減少組成物の送達のための薬学的賦形剤として利用され得る。
【0076】
本明細書に記載された組成物は、従来の方法を利用して、その他の投与経路のための剤形へも製剤化され得る。薬学的組成物は、例えば、経口投与用の剤形、カプセル、錠剤(各々、タイムリリース型および徐放性の製剤を含む)、またはゲル・シール(gel seal)へと製剤化され得る。カプセルは、ゼラチンまたはセルロース誘導体のような標準的な薬学的に許容される材料も含み得る。錠剤は、プロテアーゼ阻害剤化合物および固形担体および滑沢剤の混合物を圧縮することにより、従来の手法に従って製剤化され得る。固形担体の例には、デンプンおよび糖ベントナイト(sugar bentonite)が含まれる。しわ減少組成物は、例えば、結合剤としての乳糖またはマンニトール、ならびに従来の増量剤および打錠剤(tableting agent)を含有しているハード・シェル(hard shell)錠またはカプセルの形態でも投与され得る。
【0077】
本明細書に記載されたしわ減少化合物の局所投与は、上記の多くの異なる経路の中でも好ましい投与経路を提示する。局所適用の場合、組成物は、皮膚と適合性の媒体を含むことができる。そのような局所用の薬学的組成物は、皮膚への適用に適合した多くの形態、例えば、溶液、クリーム、軟膏、ゲル、ローション、シャンプー、またはエアロゾル製剤の形態で存在し得る。薬学的に許容される担体と混和された、しわの予防または減少において有用な組成物中の活性成分、例えば、プロテアーゼ阻害剤化合物の重量パーセントは、(組成物の全重量に基づき)0.01%〜10%の範囲である。アルコール、アロエベラ・ゲル、アラントイン、グリセリン、ビタミンAおよびE油、鉱油、ならびにポリエチレングリコールのような多様な担体材料が、本明細書に記載されたしわ減少組成物において利用され得る。その他の添加剤、例えば、保存剤、香料、日焼け止め、またはその他の化粧用成分が、組成物中に存在してもよい。局所組成物は、適用され、直ちに除去されてもよいし、または適用され、長時間にわたり、例えば、一夜または一日中、皮膚表面、例えば、顔に残されてもよい。
【0078】
しわの測定
しわの形成または出現に対する化合物の効果は、例えば、視覚検査により、定性的に評価されてもよいし、または、例えば、しわ形態学のコンピュータ支援測定により、定量的に評価されてもよい。好ましくは、しわ形態学が定量的に分析される。しわを測定するための定量法の例には、以下に制限はされないが、参照により本明細書に組み入れられるHoshino(1992)Pixel 45:121により提唱されたようなレーザー・ビームを利用したオプティカル・カット(optical cut)技術;または三次元皮膚レプリカを分析する方法、例えば、Shiseido Wrinkle Analyzer 3D Proシステム(Takasu et al.(1996)J Soc Cosmet Chem Japan 29:394-405;(米国特許出願第08/364,346号に対応する)1995年5月2日公開の日本公開特許出願第07-113623号)が含まれる。SILFLO(登録商標)(Flexico Development Ltd.)システムまたは類似したシステムが、皮膚のレプリカを得るために使用され得る。皮膚レプリカの表面上の不規則性、即ち、しわは、皮膚に対応する二次元平面上の点における高さから三次元形データを提供するために、例えば、Shiseido Wrinkle Analyzer 3D Proまたは類似したシステムを用いて分析される。三次元データによって、各しわの長さ、幅、深さ、面積、および体積が計算される。このようにして、本明細書に記載されたレギュラー・リンクルおよびファイン・リンクルのパラメータによって、レギュラー・リンクルのサブクラスおよびファイン・リンクルを含む異なるクラスのしわが、個々に認識されスコア化され得る。
【0079】
キット
本明細書に記載されたプロテアーゼ阻害剤は、キットに含まれ提供され得る。キットは、(a)阻害剤、例えば、阻害剤を含む組成物、および(b)情報材料を含む。情報材料は、本明細書に記載された方法、および/または本明細書に記載された方法のための阻害剤の使用に関する説明的、教育的、マーケティング、またはその他の材料であり得る。例えば、情報材料は、しわまたはその他の型の光損傷に関する。
【0080】
一つの態様において、情報材料は、本明細書に記載された方法を実施するための適当な様式で、例えば、適当な用量、剤形、または投与様式(例えば、本明細書に記載された用量、剤形、または投与様式)で、阻害剤を投与することの説明を含み得る。好ましい用量は0.05〜10%の阻害剤であり;好ましい投与様式は局所である。もう一つの態様において、情報材料は、適当な対象、例えば、ヒト、例えば、UVBにより誘導されたしわを有するか、もしくはそのリスクを有するヒトに、阻害剤を投与することの説明を含み得る。例えば、材料は、顔、手、または首に阻害剤を投与することの説明を含み得る。
【0081】
キットの情報材料は、その形態に関して制限されない。多くの場合、情報材料、例えば説明は、印刷物、例えば、印刷された文書、図面、および/または写真、例えば、ラベルもしくは印刷されたシートで提供される。しかしながら、情報材料は、点字、コンピュータ読取り可能材料、ビデオ録画、または音声記録のようなその他のフォーマットでも提供され得る。もう一つの態様において、キットの情報材料は、キットの使用者が、阻害剤および/または本明細書に記載された方法におけるその使用に関する実質的な情報を入手することができる、連絡情報、例えば、現住所、電子メール・アドレス、ウェブサイト、または電話番号である。当然、情報材料は、フォーマットの任意の組み合わせで提供され得る。
【0082】
阻害剤に加え、キットの組成物は、溶媒または緩衝液、安定剤、保存剤、香料、もしくはその他の化粧用成分、および/または本明細書に記載された状態もしくは障害を治療するための第二の薬剤、例えば、日焼け止めのようなその他の成分を含み得る。または、その他の成分は、キットに含まれていてもよいが、阻害剤とは異なる組成物または容器に含まれていてもよい。そのような態様において、キットは、阻害剤およびその他の成分を混和することの説明、またはその他の成分と共に阻害剤を使用することの説明を含み得る。
【0083】
阻害剤は、任意の形態、例えば、液状形態、乾燥形態、または凍結乾燥形態で提供され得る。阻害剤は、実質的に純粋であり、かつ/または無菌であることが好ましい。阻害剤が液状溶液に含まれ提供される場合、液状溶液は、好ましくは水性溶液であり、無菌の水性溶液が好ましい。阻害剤が乾燥形態として提供される場合、再生は一般に適当な溶媒の添加による。溶媒、例えば、滅菌水または緩衝液が、キット中に提供されてもよい。
【0084】
キットは、阻害剤を含有している組成物のための一つ以上の容器を含むことができる。いくつかの態様において、キットは、組成物および情報材料のための別々の容器、仕切り、またはコンパートメントを含有している。例えば、組成物は、ビン、バイアル、または注射器に含有され、情報材料はプラスチックのスリーブ(sleeve)またはパケット(packets)に含有され得る。その他の態様において、キットの別々のエレメントは、単一の分割されていない容器に含有されている。例えば、組成物は、ラベルの形態の情報材料が付着しているビン、バイアル、または注射器に含有される。いくつかの態様において、キットは、一つ以上の単位剤形(例えば、本明細書に記載された剤形)の阻害剤を各々含有している複数の個々の容器(例えば、パック)を含む。例えば、キットは、単一単位用量の阻害剤を各々含有している複数の注射器、アンプル、フォイル・パケット(foil packets)、またはブリスター・パックを含む。キットの容器は、気密性かつ/または防水性であり得る。
【0085】
キットは、組成物の投与のための適当な器具、例えば、注射器、吸入器、ピペット、ピンセット、計量スプーン、点滴器(例えば、点眼器)、スワブ(例えば、綿球もしくは木製スワブ)、または任意のそのような送達器具を含んでいてもよい。好ましい態様において、器具はスワブである。
【0086】
以下の具体的な実施例は、例示に過ぎず、決して開示の残りを制限するものではないと解釈されたい。
【0087】
実施例
実施例1:耳の厚さに対するUcf-101の効果
この実施例は、ucf-101が皮膚に対して刺激性でないことを示す。
【0088】
対照のマウスの耳の厚さ(FVB系統、雄、7週齢、n=3/群)を、厚み計(Mitsutoyo Corp.)を用いて測定した。両方の耳の厚さを測定した後、10μlのucf-101溶液(1.0%または0.1%)を左耳に適用し、10μlの溶媒を右耳に適用した。投与後3日間連続して耳の厚さを測定した。左右両方の耳の厚さの結果(平均値±S.D.)が表1に提供される。
【0089】
【表1】

【0090】
表1から分かるように、ucf-101は,溶媒単独(DMSOおよびアセトン)と比較して、耳の厚さを増加させなかった。従って、ucf-101は、DMSO中1%またはアセトン中0.1%の濃度において刺激性でなかった。
【0091】
実施例2:UVBに曝された皮膚における耳の厚さに対するUcf-101の効果
この実施例は、ucf-101が、UVBに曝された皮膚に対して刺激性でないことを示す。
【0092】
0日目に、マウス(Swiss Webster系統、雄、7週齢、n=3/群)の耳の厚さを、厚み計(Mitsutoyo Corp.)を用いて測定した。両耳の厚さを測定した後、両耳にUVBを照射した(80mJ/cm2)。5μlの1%ucf-101を含むDMSOを左耳に適用し、5μlのDMSOを右耳に適用した。24時間後(1日目)、耳の厚さを測定し、第二の用量を投与した(左耳1%ucf-101を含むDMSO;右耳:DMSO)。さらに24時間後(2日目)、再び耳の厚さを測定し、第三の用量を投与した(左耳1%ucf-101を含むDMSO;右耳:DMSO)。次いで、さらに4日間連続して耳の厚さをモニタリングした(3〜6日目)。結果(平均±S.D.)が表2に提供される。
【0093】
【表2】

【0094】
表2に見られるように、ucf-101は、対照と比較して、耳の厚さを増加させなかった(即ち、刺激性でなかった)。
【0095】
実施例3:しわおよび血管形成に対するOmi阻害の効果
この実施例は、Omi/HtrA2の阻害が、UVBにより誘導される皮膚損傷を減少させることを示す。
【0096】
5群のマウス(7週齢雌無毛Skh-1マウス、n=3/群)を使用した:群1:UVB+1%ucf-101を含むDMSO;群2:UVB+DMSO対照;群3:UVB+0.1%ucf-101を含むアセトン;群4:UVB+アセトン対照;群5:UVBなし対照。
【0097】
群1、2、3および4は、マウスの背側皮膚表面に0.35mW/cm2を送達するため、蛍光灯(Southern New England Ultraviolet)を使用したUVB照射に曝した。照射の後、各群について示された試料(各100μl)を、背部皮膚に適用した。慢性UVB曝露をシミュレートするため、10週間、週3回、この手法を繰り返した。UVB照射は、0.5最小紅斑線量(MED)(20mJ/cm2)の線量から開始し、4.5MEDの最大線量まで、毎日0.5MEDずつ徐々に増加させた。全累積線量は6.54J/cm2 UVBであった。
【0098】
10週間後、皮膚しわ生成を、五つのカテゴリ(0:しわなし;1:軽微なしわ;2:明らかなしわ;3:強いしわ;4:重度のしわ)を使用して評価した。群1および群2のマウスを屠殺し、背部皮膚試料を液体窒素で急速凍結した。モノクローナル・ラット抗マウスCD31抗体(BD Pharmingen)を使用した免疫組織化学的染色を、7-マイクロメートル凍結切片に対して実施した。代表的な切片を、UVB照射マウスから入手し、Nikon E-600顕微鏡を使用して分析した。画像をSpotディジタル・カメラ(Diagnostic Instruments)を用いて捕獲し、形態測定分析をIP-LABソフトウェアを使用して実施した。真皮において血管が占める面積を決定した。
【0099】
結果(平均値±S.D.)が、表3(しわ生成)および表4(血管面積)に示される。
【0100】
【表3】

【0101】
表3から分かるように、Omi/HtrA2の阻害は、UVBにより誘導されるしわ形成の予防および減少において有効であった。
【0102】
【表4】

【0103】
表4から分かるように、Omi/HtrA2の阻害は、UVBにより誘導される血管拡張の減少において有効であった。
【0104】
実施例4:耳の厚さに対する試験試料の効果
この実施例は、ucf-101を含む試験試料が皮膚に対して刺激性でないことを示す。
【0105】
0日目に、対照のマウスの耳の厚さ(FVB系統、雌、7週齢、n=3/群)を、厚み計(Mitsutoyo Corp.)を用いて測定した。両耳の厚さを測定した後、10μlの試験試料溶液を左耳に適用し、10μlの溶媒を右耳に適用した。24時間後(1日目)、耳の厚さを測定し、第二の用量を投与した(左耳:試験溶液、右耳:溶媒)。さらに24時間後(2日目)、再び耳の厚さを測定し、第三の用量を投与した(左耳:試験溶液、右耳:溶媒)。さらに24時間後(3日後)、耳の厚さを測定した。結果(平均値±S.D.)が表5に提供される。
【0106】
【表5】


【0107】
表5に見られるように、評価された試験試料溶液は、対照と比較して、耳の厚さを増加させなかった。
【0108】
実施例5:皮膚における試験試料の効果
この実施例は、ucf-101を含む試験試料が皮膚に対して刺激性でないことを示す。
【0109】
0日目、マウス(FVB系統、雌、7週齢、n=3/群)の背部皮膚の毛を、電気クリッパーにより刈り取った。5μlの試験試料溶液(直径およそ1cm)を背部皮膚に適用した。24時間後(1日目)、スコア化システム(0:紅斑なし;1:極めて軽微な紅斑;2:明確な紅斑;3:中程度の紅斑;4:いくつかの紅斑および浮腫)に基づき皮膚刺激を測定し、第二の用量を投与した。さらに24時間後(2日目)、皮膚刺激を測定し、第三の用量を投与した。さらに24時間後(3日目)、再び皮膚刺激を測定した。結果が表6に提供される。
【0110】
【表6】

【0111】
表6から分かるように、試験試料溶液は皮膚刺激を誘導しなかった。これらの物質は、0.1%の濃度において刺激原でなかった。
【0112】
実施例6:しわおよび血管形成に対するOmi阻害の効果
この実施例は、Omi/HtrA2の阻害が、UVBにより誘導される皮膚損傷を減少させることを示す。
【0113】
7群のマウス(Skh-1無毛、7週齢、雌、n=3/群)を使用した:群1:UVB+0.1%ucf-101を含む25%DMSO+75%エタノール;群2:UVB+0.1%zVAD-FMKを含む25%DMSO+75%エタノール;群3:UVB+0.1%TAPI-0を含む25%DMSO+75%エタノール;群4:UVB+0.1%トラネキサム酸を含む25%DMSO+75%エタノール;群5:UVB+0.1%大豆トリプシンインヒビターを含む25%DMSO+75%エタノール;群7:UVBなし対照。
【0114】
群1、2、3、4、5、および6は、マウスの背側皮膚表面に0.35mW/cm2を送達するため、蛍光灯(Southern New England Ultraviolet)を使用したUVB照射に曝した。照射の後、各群について示された試料(各100μl)を、背部皮膚に適用した。慢性UVB曝露をシミュレートするため、10週間、週3回、この手法を繰り返した。UVB照射は、0.5最小紅斑線量(MED)(20mJ/cm2)の線量から開始し、4.5MEDの最大線量まで、毎日0.5MEDずつ徐々に増加させた。全累積線量は6.54J/cm2 UVBであった。
【0115】
10週間後、皮膚しわ生成を、五つのカテゴリ(0:しわなし;1:軽微なしわ;2:明らかなしわ;3:強いしわ;4:重度のしわ)を使用して評価した。マウスを屠殺し、背部皮膚試料を液体窒素で急速凍結した。モノクローナル・ラット抗マウスCD31抗体(BD Pharmingen)を使用した免疫組織化学的染色を、7-マイクロメートル凍結切片に対して実施した。代表的な切片を、UVB照射マウスから入手し、Nikon E-600顕微鏡を使用して分析した。画像をSPOT(商標)ディジタル・カメラ(Diagnostic Instruments)を用いて捕獲し、形態測定分析をIP-LAB(商標)ソフトウェアを使用して実施した。真皮において血管が占める面積を決定した。群1と比較した血管の差を分析するため、対応のない両側スチューデントt-検定を使用した。
【0116】
結果(平均値±S.D.)が、表7(しわ生成)および表8(血管面積)に示される。
【0117】
【表7】

【0118】
表7から分かるように、Omi/HtrA2の阻害は、UVBにより誘導されるしわ形成の予防および減少において有効であった。
【0119】
【表8】

**P<0.01、 ***P<0.001、 N.S.:有意性なし
【0120】
表8から分かるように、Omi/HtrA2の阻害は、UVBにより誘導される血管拡張の減少において有効であった。
【0121】
その他の態様は、以下の特許請求の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるしわを減少させる方法であって、該しわを減少させるのに十分な量のアポトーシスに関与しているカスパーゼまたはセリンプロテアーゼの阻害剤を含む組成物を対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
しわが、慢性UVB曝露により引き起こされるものである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
組成物が局所投与される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
組成物が無菌である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
阻害剤がカスパーゼ阻害剤である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
阻害剤がOmi/HtrA2阻害剤である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
阻害剤が式(I)を有している、請求項1記載の方法:

式中:
R1およびR2は、各々独立に、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アラルキル、またはヘテロアラルキルであり、かつ1〜5個のR3で置換されていてもよく;
X、Y、およびZは、各々独立に、OまたはSであり;
----は、二重結合を表していてもよく;
nは、0〜20であり;
AおよびBは、各々独立に、アリールまたはヘテロアリールであり、かつ1〜5個のR3で置換されていてもよく;かつ
R3は、各々独立に、ハロ、ヒドロキシ、C1-C10アルキル、C1-C10ヒドロキシアルキル、C1-C6ハロアルキル、C1-C10アルコキシ、C1-C6ハロアルコキシ、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アラルキル、C7-C12ヘテロアラルキル、C3-C8ヘテロシクリル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、C5-C10シクロアルケニル、C5-C10ヘテロシクロアルケニル、カルボキシ、カルボキシレート、シアノ、ニトロ、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、C1-C6ジアルキルアミノ、メルカプト、SO3H、スルフェート、S(O)NH2、S(O)2NH2、ホスフェート、C1-C4アルキレンジオキシ、オキソ、アシル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアミノカルボニル、C1-C6ジアルキルアミノカルボニル、C1-C10アルコキシカルボニル、C1-C10チオアルコキシカルボニル、C1-C6アルキルアンヒドリド(alkylanhydrido)、またはC1-C6ヒドロキシカルボニルアルキルである。
【請求項8】
R1およびR2がいずれもアリールである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
R1およびR2がいずれもフェニルである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
X、Y、およびZのうちの一つがSであり、かつ他の二つがOである、請求項7記載の方法。
【請求項11】
YがSであり、かつYおよびZがOである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
二重結合が存在する、請求項7記載の方法。
【請求項13】
nが0である、請求項7記載の方法。
【請求項14】
AおよびBのうちの一方がヘテロアリールであり、かつ他方がアリールである、請求項7記載の方法。
【請求項15】
Aがヘテロアリールであり、かつBがアリールである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
Aが式(II)を有する、請求項15記載の方法:

式中、
Wは、O、S、またはNRaであり;かつ
Raは、水素またはC1-C6アルキルである。
【請求項17】
WがOである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
Bが式(III)を有する、請求項15記載の方法:

式中、Rb、Rc、Rd、Re、およびRfは、各々独立に、水素、ハロ、ヒドロキシ、C1-C10アルキル、C1-C10ヒドロキシアルキル、C1-C6ハロアルキル、C1-C10アルコキシ、C1-C6ハロアルコキシ、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アラルキル、C7-C12ヘテロアラルキル、C3-C8ヘテロシクリル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、C5-C10シクロアルケニル、C5-C10ヘテロシクロアルケニル、カルボキシ、カルボキシレート、シアノ、ニトロ、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、C1-C6ジアルキルアミノ、メルカプト、SO3H、スルフェート、S(O)NH2、S(O)2NH2、ホスフェート、C1-C4アルキレンジオキシ、オキソ、アシル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアミノカルボニル、C1-C6ジアルキルアミノカルボニル、C1-C10アルコキシカルボニル、C1-C10チオアルコキシカルボニル、C1-C6アルキルアンヒドリド、またはC1-C6ヒドロキシカルボニルアルキルである。
【請求項19】
Rb、Rc、Rd、Re、およびRfが、各々独立に、水素、ヒドロキシ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C3-C8ヘテロシクリル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、カルボキシ、カルボキシレート、ニトロ、アミノ、アシル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアンヒドリド、またはC1-C6ヒドロキシカルボニルアルキルである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
Rc、Rd、およびReが、各々水素であり、かつRbおよびRfが、各々独立に、ヒドロキシ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C3-C8ヘテロシクリル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、カルボキシ、カルボキシレート、ニトロ、アミノ、アシル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアンヒドリド、またはC1-C6ヒドロキシカルボニルアルキルである、請求項18記載の方法。
【請求項21】
RbまたはRfのうちの一つがニトロである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
Rb、Rc、およびRfが、各々水素であり、かつRdおよびReが、各々独立に、ヒドロキシ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C3-C8ヘテロシクリル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、カルボキシ、カルボキシレート、ニトロ、アミノ、アシル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアンヒドリド、またはC1-C6ヒドロキシカルボニルアルキルである、請求項18記載の方法。
【請求項23】
RdまたはReのうちの一方がハロであり、かつ他方がC1-C4アルコキシである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
RdがOCH3であり、かつReがClである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
Rb、Rd、Re、およびRfが、各々水素であり、Rcが、ヒドロキシ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C3-C8ヘテロシクリル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、カルボキシ、カルボキシレート、ニトロ、アミノ、アシル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアンヒドリド、またはC1-C6ヒドロキシカルボニルアルキルである、請求項18記載の方法。
【請求項26】
Rcがカルボキシである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
Rc、Rd、およびRfが、各々水素であり、かつRbおよびReが、各々独立に、ヒドロキシ、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C3-C8ヘテロシクリル、C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、カルボキシ、カルボキシレート、ニトロ、アミノ、アシル、アミノカルボニル、C1-C6アルキルアンヒドリド、またはC1-C6ヒドロキシカルボニルアルキルである、請求項18記載の方法。
【請求項28】
RbおよびReのうちの一つがニトロである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
化合物が以下より選択される、請求項7記載の方法:

【請求項30】
しわが、UVB曝露により引き起こされるものである、請求項7記載の方法。
【請求項31】
しわが、UVB曝露により引き起こされるものである、請求項29記載の方法。
【請求項32】
阻害剤が局所投与される、請求項7記載の方法。
【請求項33】
阻害剤が局所投与される、請求項29記載の方法。
【請求項34】
組成物が化粧用組成物である、請求項7記載の方法。
【請求項35】
組成物が化粧用組成物である、請求項29記載の方法。
【請求項36】
阻害剤が薬学的に適当な担体に含まれ提供される、請求項7記載の方法。
【請求項37】
阻害剤が薬学的に適当な担体に含まれ提供される、請求項29記載の方法。
【請求項38】
組成物が化粧用薬剤をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項39】
組成物が化粧用薬剤をさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項40】
しわ防御を対象に提供する方法であって:
該しわを減少させるのに十分な量のアポトーシスに関与しているカスパーゼまたはセリンプロテアーゼの阻害剤を含む組成物を対象に供給すること、および
しわを減少させるために該組成物を使用することの説明を対象に供給することを含む方法。
【請求項41】
説明が、日光曝露前に組成物を皮膚に適用することの指示を含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
組成物が化粧用薬剤をさらに含む、請求項40記載の方法。
【請求項43】
しわを減少させるのに十分な量のアポトーシスに関与しているカスパーゼまたはセリンプロテアーゼの阻害剤を含む、局所適用用の組成物。
【請求項44】
しわの減少を必要とする対象を同定すること、
該しわを減少させる量のアポトーシスに関与しているカスパーゼまたはセリンプロテアーゼの阻害剤を投与すること;および
しわ減少に対する阻害剤の効果をモニタリングすること、を含む方法。

【公表番号】特表2007−522150(P2007−522150A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552343(P2006−552343)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/003908
【国際公開番号】WO2005/077019
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(501386533)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (9)
【出願人】(506268913)リサーチ ファンデーション オブ ザ ユニバーシティー オブ セントラル フロリダ (1)
【Fターム(参考)】