説明

ねじの許容差検査のための方法およびシステム

ねじ製品を測定し、予め規定された仕様と製品との整合性を判断する方法およびシステムが提供されている。測定システムは、電気的にコンピュータベースの構成要素に結合された測定装置を含む。測定装置はねじ製品の幅の情報を検出し、検出された幅の情報に関して回転の情報と長さの情報とを検出する。コンピュータベースの構成要素は検出された情報を受信し、検出された情報と予め規定された製品の品質仕様情報とを比較し、その比較に基づいて製品が仕様情報の不確定要素の範囲内にあるかどうかを測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
この発明は一般にファスナに関するものであり、より具体的にはファスナの品質に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
長い間、アメリカ政府はさまざまな製造業界に対してファスナの品質ガイドラインを提供してきた。これらのガイドラインの厳守に関する最近の検査では、特定の分野においてファスナの品質に改善の余地があることが強調されてきた。たとえば、連邦航空局(FAA)の文書番号AS9100の中で、商業航空機業界に対してスクリュー、ボルトおよびその他のファスナの品質ガイドラインが提示されている。
【0003】
スクリューおよびボルトの品質は現在ゲージで測定されている。ねじの特徴などのスクリューおよびボルトの品質を測定するための現在のゲージにはグリーンスレード(Greenslade)、サザン(Southern)およびジョンソン(Johnson)によって製造されたものなどがあるが、現在のゲージではAS9100で述べられている計測上の不確定要素の範囲を満たすことができない。さらに、これらのゲージは、ファスナに関してゲージが収集する情報のトレーサビリティを提供しない。
【0004】
したがって、計測上の不確定要素の範囲を満たすゲージに対するニーズについてはまだ対処されていないのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要
この発明は、ねじ製品の直接的な差動測定および、予め規定された仕様と製品との整合性を判断するための方法ならびにシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
測定システムは、電気的にコンピュータベースの構成要素に結合された測定装置を含む。測定装置はねじ製品の幅の情報を検出し、検出された幅の情報に関して回転の情報と長さの情報とを検出する。コンピュータベースの構成要素は、検出された情報を受信し、検出された情報と予め規定された製品の品質仕様情報とを比較し、その比較に基づいて製品が仕様情報の不確定要素の範囲内にあるかどうかを判断する。
【0007】
この発明のある局面において、測定装置は好適には、幅の情報を検出する2つのコンタクトプローブ、製品に関してプローブの長さの情報を検出する2つのスケール、および製品を保持し、製品に関してプローブの回転の情報を検出するスピンドルを含む。
【0008】
この発明の別の局面において、プローブは好適には空気活性プローブであり、スケールは好適には空気軸受スケールであり、スピンドルは好適には空気軸受スピンドルである。
【0009】
この発明のさらに別の局面において、コンピュータベースの構成要素は、好適には、検出された情報の一部に基づいて同心度誤差の値を判断し、検出された情報の一部に基づいて角度誤差の値を判断する。コンピュータベースの構成要素は同心度誤差の値と角度誤差の値を使用し、その物体が仕様情報の不確定要素の範囲内にあるかどうかを判断する。
【0010】
この発明の好ましい、および代替的な実施例は、添付の図を参照し以下に詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の詳細な説明
図1は測定システム20のブロック図を示しており、測定システム20はスクリュー、ボルト、ねじ切りされたロッドなどのファスナにあるねじの形状が予め規定された品質仕様の計測上の不確定要素の範囲内にあるかどうかを判断するシステムである。測定システム20は測定装置24を含み、測定装置24は電気的にコントローラ26に結合されている。測定装置24は、プローブとスケール30とスピンドル32とを使用し、ファスナのさまざまな測定情報を発生させる。コントローラ26はプロセッサ40を含み、プロセッサ40はユーザインターフェイス42とメモリ44とに結合されている。
【0012】
ファスナが測定装置24によって分析される前に、ユーザはユーザインターフェイス42を使用し、ファスナの仕様をコントローラ26に入力する。ユーザインターフェイス42はキーボード、ディスプレイ、マウスまたは他の任意のインターフェイスデバイスの中の1つを含み、それによりユーザは情報を入力し、プロセッサ40と情報交換することが可能になる。ファスナが測定装置24に挿入された後、プローブおよびスケール30ならびにスピンドル32は、ファスナとファスナ上のねじとについての特定のデジタル測定値および位置情報を提供するために、ユーザによって操作される。プローブおよびスケール30ならびにスピンドル32によって提供されたデジタル情報はコントローラ26に供給される。プロセッサ40は、測定装置24から受信した情報をメモリ44に保存する。プロセッサ40は比較プログラムを実行し、測定装置24から入ってくる情報とユーザによって入力された仕様情報とを比較して、保存された情報が仕様情報の許容範囲内にあるかどうかを判断する。
【0013】
1つの実施例において、プロセッサ40は、プローブおよびスケール30ならびにスピンドル32によって提供される情報に基づいて、ファスナのねじのピッチ円直径、フランク角、外径および内径を含む測定情報を途切れることなく発生させる。プロセッサ40は、プローブの先端の大きさなどのプローブ情報に基づいたねじの測定情報および入力された仕様情報を幾何学的に計算する。
【0014】
図2は測定装置100の非限定的な例を図示しており、測定装置100はコントローラ26が使用する情報を発生させる。測定装置100は、第1の土台部分102と第2の土台部分104とを含む。第1の土台部分102は実質的に第2の土台部分104に直交する形で装着されており、その結果102と104との2つの部分がL字型の構造になっている。第1の土台部分102と第2の土台部分104は、限定的でない花崗岩のような熱膨張に対して実質的に抵抗力のある物質から好適に作られている。スピンドル110は第1の土台部分102の上面に好適に装着されている。スピンドル110の非限定的な例は精密空気軸受スピンドルであり、これは0.001アークセカンドより良い分解能と3アークセカンドより良い精度を持つ。このレベルの分解能と精度を持つスピンドルはネルソン・エアー・コーポレイション(Nelson Air Corporation)によって製造されている。スピンドル110は高精度のデジタル回転情報を発生させる。ボルトまたはスクリュー114などのファスナは、ボルト114を然るべき位置にしっかりと保持するようサイズ決めされた取付板116を使用し、スピンドル110に装着されている。取付板116はスピンドル110のスピニング面に取付けられている。スピンドル110は電気的にコントローラ26と接続するデジタルデータポートを含む。さらに、スピンドル110はボルト114の位置を調整するために2つの手動バーニヤ調整装置120を含む。
【0015】
装着されたスピンドル110に面する第2の土台部分104の面は、第1の垂直軌道と第2の垂直軌道126と128とを含む。幾何学的基準を提供するため、X軸はスピンドル110のスピニング面とスピンドル110に面する第2の土台部分104の表面とに対して実質的に平行である。Z軸は第2の土台部分104の表面に対して実質的に平行であり、スピンドル110の装着面に対して実質的に垂直である。第1の垂直軌道と第2の垂直軌道126と128とは、Z軸に実質的に平行なスピンドル110の中心線からX軸方向に沿って実質的に等距離である。第1の垂直軌道と第2の垂直軌道126と128とはそれぞれ、摺動可能に第1のスケールと第2のスケール130と132とを受ける。スケール130と132との非限定的な例は0.2マイクロインチより良い分解能を持つ空気軸受スケールである。ネルソン・エアー・コーポレイションはこのレベルの分解能を持つ空気軸受スケールを製造している。スケール130と132とは垂直軌道126および128上のスケールの位置に基づき、Z軸の次元の情報を発生させる。発生したZ軸の情報はコントローラ26に送信される。
【0016】
図3に示されているように、第1のプローブと第2のプローブ140と142とはそれぞれ、第1のスケールと第2のスケール130と132とに装着されている。プローブ140と142とはプローブシャフト146と148とを含み、プローブシャフト146と148とはそれぞれのプローブチップ150と152とに連結している。プローブ140と142とはスケール130と132とに装着されており、その構成はプローブシャフト146と148とが互いに対面し、スピンドル110の中心線から実質的に等距離であるような構成である。プローブ140と142との非限定的な例は0.2マイクロインチより良い分解能を持つ空気活性プローブである。ハイデンハイン・コーポレイション(Heidenhain Corporation)がこのレベルの分解能を持つプローブを製造している。
【0017】
1つの実施例において、プローブチップ150と152とは、プローブシャフト146と148とに好適に接続されたスイベル装置(図には示されていない)に装着されている。スイベル装置によりプローブチップ150と152とは、プローブシャフト146と148との中心線に対するねじ山のオフセット角度に一致することが可能となる。プローブチップ150と152とは、さらに、プローブシャフト146と148とに旋回するように装着されることも可能である。
【0018】
この発明の1つの実施例において、図2に示されているように、測定装置100は第1の土台部分102に位置するように位置決めされる。垂直軌道126と128とは垂直の方向を向くことになる。この位置で、プローブ140と142が取付けられたスケール130と132とは釣り合っており、ほとんど重量のない状態である。スケール130と132とが釣り合っていることにより、スケール130と132とが垂直軌道126と128とを上または下に動くことが可能になる。これは、プローブ140と142とが測定されているファスナのねじに対して与える圧力から、プローブチップ150と152とが受ける上または下方向の力に基づくものである。第1の釣り合い錘と第2の釣り合い錘160と162とは、第1の滑車と第2の滑車170と172とをそれぞれ通る第1のケーブルと第2のケーブル164と166とを介して、第1のスケールと第2のスケール130と132とにそれぞれ好適に結合されている。第1の滑車と第2の滑車170と172とは、第2の土台部分104の、スピンドル110に面する第2の土台部分104の面に実質的に直交する両側面に好適に取付けられている。
【0019】
他の実施例において、測定装置100は好適には第2の土台部分104に位置する。測定装置100が第2の土台部分104に位置し、スケール130と132とが釣り合い錘を必要としなくなることは有利である。
【0020】
図4は、図2と図3とに示されている測定システム100によって実行される非限定的
な例示のプロセス200を図示している。ブロック204で、システム100のユーザは、測定されるべきスクリューまたはボルトなどのファスナのねじについて予め規定された品質仕様を入力する。仕様はピッチ円直径、フランク角、外径および内径の値を好適に含む。仕様はさらに、歯すじの方向誤差、真円度誤差、逓減、振れ、捩れ角および歯すじ経路などの形状誤差を含んでもよい。ブロック206で、ボルトまたはスクリューが測定装置20の中に置かれ、置かれたボルトまたはスクリューのねじの測定情報が発生する。ブロック206は後に図5でより詳細に説明される。ブロック210で、プロセッサ40は発生したファスナの測定値と入力された仕様とを比較する。ブロック212でプロセッサ40はその比較に基づき計測上の不確定要素の値を発生させる。
【0021】
図5は、ブロック206(図4)で測定情報を発生させるためのプロセス250を図示したものである。ブロック260で、プローブチップ150と152とはファスナ114のねじのないシャンクと接触する形で、ねじのないシャンクの対向する側に置かれる。プローブチップ150と152とはできる限りファスナの頭部に近い位置に置かれるが、スピンドル110はまだプローブ140と142と干渉することなく回転することができる。ブロック264で、ファスナが回転し、プローブ140と142、スケール130と132およびスピンドル110によって生み出されるデジタル情報がメモリ44での保存のためにコントローラ26に送信される。ブロック270で、プローブチップ150と152とはファスナのねじに近い位置に、ファスナのシャンクと接触する形で置かれる。ブロック272で、ファスナが回転し、プローブ140と142、スケール130と132およびスピンドル110によって生み出される情報が発生し、コントローラ26に送信される。
【0022】
ブロック280で、プローブの先端が、ねじの先端または末端のどちらかに接触するように、ファスナ近くに置かれる。ブロック282で、ファスナが回転し、その結果、ねじにかかる圧力により、強制されて、プローブチップがファスナを上または下に移動する。プローブチップ150と152とがファスナを上または下に移動してゆくと、プローブ140と142およびスケール130と132が軌道に沿って移動する。プローブチップ150と152とがファスナを上または下に移動すると、プローブ140と142、スケール130と132およびスピンドル110は情報を発生させる。ブロック288で、プローブ140と142、スケール130と132およびスピンドル110によって発生した情報はすべて分析のためにコントローラ26に送信される。
【0023】
プロセッサ40はブロック264で保存されたデジタル情報を使用し、置かれたファスナの同心度誤差の値を判断する。同心度誤差の値は好適には、スピンドル110の中心線に対するファスナの縦軸の位置である。
【0024】
プロセッサ40はブロック272で保存された保存デジタル情報を使用し、角度誤差の値を判断する。角度誤差の値は好適には、スピンドルの中心線と置かれたファスナの中心線との間の角度の差である。
【0025】
1つの実施例において、測定装置100は同心度誤差の値と角度誤差の値とを最少にするよう調節される。スピンドル110は5自由度の調整を可能にする調整構成要素を含む。プローブ140および142とスケール130および132との間の接続は3自由度の調整を可能にする調整構成要素を含む。
【0026】
他の実施例において、プロセッサ40は同心度誤差の値と角度誤差の値を用いて、ブロック282で保存されたねじの測定情報を数学的に調整する。
【0027】
この発明の好ましい実施例は上記のとおり例示され、記載されてきたが、発明の精神と
範囲を逸脱することなく多くの修正が行なわれ得る。したがって、この発明の範囲は好ましい実施例の開示によって限定されるものではなく、この発明は特許請求の範囲を参照して専ら決定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明に従って形成された測定システムのブロック図の非限定的な例を図示する。
【図2】この発明に従って形成された測定装置の非限定的な例の斜視図である。
【図3】この発明に従って形成された測定装置の非限定的な例の斜視図である。
【図4】図1に示されたシステムによって実行されるプロセスの例を図示する。
【図5】図1に示されたシステムによって実行されるプロセスの例を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の幅の情報を検出し、検出された幅の情報に関する回転の情報と長さの情報とを検出する測定装置と、
検出された情報を受信し、検出された情報と予め規定された物体の品質仕様情報とを比較し、その比較に基づいて物体が仕様情報の不確定要素の範囲内にあるかどうかを測定するコンピュータベースの構成要素とを含む測定システム。
【請求項2】
物体はファスナを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
ファスナはスクリューまたはボルトの少なくとも1つを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
測定装置は、
物体の幅の情報を検出するための少なくとも2つのコンタクトプローブと、
それぞれのプローブに結合され、物体に関してプローブの長さの情報を検出するための少なくとも2つのスケールと、
物体を保持するよう構成され、物体に関してプローブの回転の情報を検出するためのスピンドルとを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
プローブは空気活性プローブを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
スケールは空気軸受スケールを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
スピンドルは空気軸受スピンドルを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
コンピュータベースの構成要素は検出された情報の第1の部分に基づき同心度誤差の値を判断する、請求項4に記載のシステム。
【請求項9】
コンピュータベースの構成要素は検出された情報の第2の部分に基づき角度誤差の値を判断する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
コンピュータベースの構成要素は同心度誤差の値と角度誤差の値とを使用して、物体が仕様情報の不確定要素の範囲内にあるかどうかを判断する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
物体の測定方法であって、
物体の品質仕様を入力することと、
物体を回転させることと、
回転する物体の幅の情報と、それに対応する長さの情報および角度の情報とを検出することと、
検出された情報と入力された仕様情報とを比較することと、
物体が仕様情報の不確定要素の範囲内にあるかどうかを判断することとを含む方法。
【請求項12】
物体はファスナを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ファスナはスクリューまたはボルトの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
検出することは、
少なくとも2つのコンタクトプローブを用いて物体の幅の情報を検出することと、
それぞれのプローブに結合された少なくとも2つのスケールを用いて、物体に関してプローブの長さの情報を検出することと、
物体を保持するよう構成されたスピンドルを用いて、物体に関してプローブの回転の情報を検出することとを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
プローブは空気活性プローブを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
スケールは空気軸受スケールを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
スピンドルは空気軸受スピンドルを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
検出された情報の第1の部分に基づき同心度誤差の値を判断することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
検出された情報の第2の部分に基づき角度誤差の値を判断することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
物体が仕様情報の不確定要素の範囲内にあるかどうかを判断することは判断された同心度誤差の値と角度誤差の値とにさらに基づく、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−506619(P2006−506619A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552000(P2004−552000)
【出願日】平成15年11月11日(2003.11.11)
【国際出願番号】PCT/US2003/035813
【国際公開番号】WO2004/044521
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】