説明

はんだ付けパレット及びプリント配線基板の搬送方法

【課題】はんだ付け条件の繰り返し性を向上させ、良好な個体差のないはんだ上がりを得られ、高品質なフローはんだ付けができるはんだ付けパレット及びプリント配線基板の搬送方法を提供する。
【解決手段】プリント配線基板2を水平に収容するプリント配線基板収容部3を有し、プリント配線基板収容部3にプリント配線基板2のはんだ付け箇所を下方に露出させる開口部4が形成されたはんだ付けパレット本体部5と、はんだ付けパレット本体部5の幅方向両端に配置されコンベア爪に係合するエッジ6を有するパレット幅微調板7と、はんだ付けパレット本体部5に対してパレット幅微調板7を幅方向に弾性的に移動自在に支持する弾性的支持部材8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付け条件の繰り返し性を向上させ、良好な個体差のないはんだ上がりを得られ、高品質なフローはんだ付けができるはんだ付けパレット及びプリント配線基板の搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リード部品を装着して未はんだのプリント配線基板をはんだ槽に搬送してはんだ付けを行うフローはんだ(自動はんだ付け装置)において、図4及び図5に示されるように、プリント配線基板101を保持するために、合成樹脂又は金属で構成されたはんだ付けパレット102が用いられる。はんだ付けパレット102には、自動はんだ付け装置のコンベア爪に係合するための羽根状のエッジ103が設けられる。従来、エッジ103は、はんだ付けパレット102と一体に形成される。
【0003】
図6に示されるように、自動はんだ付け装置のコンベア104には、はんだ付けパレット102に対して幅方向両端から臨む一対のコンベア爪105が設けられる。コンベア爪105には、V字状溝106が形成される。このV字状溝106にエッジ103が入ることにより、コンベア爪105にエッジ103が係合する。これにより、コンベア104がはんだ付けパレット102をくわえる(軽く挟んで支える)ことができる。
【0004】
はんだ付けパレット102は、プリント配線基板101の上面にはんだ槽のはんだが流れ込むのを防止するための波除レール107を有する。
【0005】
コンベア104がはんだ付けパレット102をくわえた状態ではんだ槽に移動することにより、プリント配線基板101をはんだ槽に搬送することができる。コンベア104には、搬送方向に複数個のコンベア爪105が並べられており、各コンベア爪105にはんだ付けパレット102を挟んでコンベア104が移動することで、複数枚のプリント配線基板101を連続的にはんだを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−109699号公報
【特許文献2】特開2007−173442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プリント配線基板101をはんだ槽に搬送する際に、コンベア爪105によるはんだ付けパレット102のくわえ力(幅方向に挟む力)が緩いと、はんだ槽のはんだにはんだ付けパレット102が当たったとき、はんだ付けパレット102がコンベア爪105をスリップする場合がある。はんだ付けパレット102がスリップすると、所定のはんだ付け温度プロファイルから外れ、良好な個体差のないはんだ上がりのプリント配線基板101を得ることができない。はなはだしいときは、はんだ付け異常が発生する。
【0008】
また、自動はんだ付け装置には、コンベア爪105によるはんだ付けパレット102のくわえ力が過剰に強いとき、コンベア104の過負荷を検出する機能がある。自動はんだ付け装置は、過負荷が検出されると、警報を出し、コンベア104の移動を停止する。しかし、コンベア104の移動が停止すると、所定のはんだ付け温度プロファイルから外れ、良好な個体差のないはんだ上がりのプリント配線基板101を得ることができない。はなはだしいときは、はんだ付け異常が発生する。
【0009】
さらに、前述のスリップと過負荷は、複数個のはんだ付けパレット102を所定の距離間隔をあけて同時に搬送するとき発生しやすい。それは、個々のはんだ付けパレット102には、幅方向の寸法ばらつきがあるにも拘わらず、一個のはんだ付けパレット102の幅方向の寸法に自動はんだ付け装置の全てのコンベア爪105間距離を合わせざるを得ないために発生する。
【0010】
これらの問題点のため、低品質のはんだ付けされたプリント配線基板101が生産され、はんだ修正を施さなければならない率が上がる。はなはだしいときは、不良品が生産される。そして、このために加工費が高くなり、はんだ付けされたプリント配線基板101が高価な製品になる。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、はんだ付け条件の繰り返し性を向上させ、良好な個体差のないはんだ上がりを得られ、高品質なフローはんだ付けができるはんだ付けパレット及びプリント配線基板の搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明のはんだ付けパレットは、プリント配線基板を水平に収容するプリント配線基板収容部を有し、上記プリント配線基板収容部に上記プリント配線基板のはんだ付け箇所を下方に露出させる開口部が形成されたはんだ付けパレット本体部と、上記はんだ付けパレット本体部の幅方向両端に配置されコンベア爪に係合するエッジを有するパレット幅微調板と、上記はんだ付けパレット本体部に対して上記パレット幅微調板を幅方向に弾性的に移動自在に支持する弾性的支持部材と、を備えたものである。
【0013】
上記弾性的支持部材は、コイルバネまたは板バネを有してもよい。
【0014】
本発明のプリント配線基板の搬送方法は、プリント配線基板を保持するはんだ付けパレットをコンベアではんだ槽に搬送する際に、上記はんだ付けパレットを、コンベア爪の挟み方向にはんだ付けパレット本体部と両端のパレット幅微調板とに分割形成し、上記はんだ付けパレット本体部に対して上記パレット幅微調板をコンベア爪の挟み方向に弾性的に移動自在に支持させ、上記両端のパレット幅微調板をコンベア爪で弾性が働く状態に挟んで搬送するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、はんだ付け条件の繰り返し性を向上させ、良好な個体差のないはんだ上がりを得られ、高品質なフローはんだ付けができるはんだ付けパレット及びプリント配線基板の搬送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示すはんだ付けパレットの上面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】従来のはんだ付けパレットの上面図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】自動はんだ付け装置のコンベア爪によりはんだ付けパレットをくわえた状況を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0018】
図1及び図2に示されるように、本発明に係るはんだ付けパレット1は、プリント配線基板2を水平に収容するプリント配線基板収容部3を有し、プリント配線基板収容部3にプリント配線基板2のはんだ付け箇所を下方に露出させる開口部4が形成されたはんだ付けパレット本体部5と、はんだ付けパレット本体部5の幅方向両端に配置されコンベア爪に係合するエッジ6を有するパレット幅微調板7と、はんだ付けパレット本体部5に対してパレット幅微調板7を幅方向に弾性的に移動自在に支持する弾性的支持部材8とを備える。
【0019】
弾性的支持部材8は、はんだ付けパレット本体部5に対してパレット幅微調板7を幅方向に移動自在に支持するパレット幅微調板固定ネジ17と、はんだ付けパレット本体部5とパレット幅微調板7との間に挟み込まれた弾性部材20とから構成される。
【0020】
このように、本発明に係るはんだ付けパレット1は、パレット本体部5とパレット幅微調板7とが分割形成され、はんだ付けパレット本体部5に対してパレット幅微調板7がパレット幅微調板固定ネジ17によって幅方向に移動自在に支持され、パレット本体部5とパレット幅微調板7との間に挟み込まれた弾性部材20がパレット幅微調板7の移動によって弾性的に伸縮される。
【0021】
プリント配線基板2には、レギュレータIC、コネクタ等のプリント配線基板2のスルホールに挿入されるリード9を有するリード部品10、チップ抵抗、チップコンデンサ、IC等の表面実装部品11が実装される。リード部品10は、プリント配線基板2の上面に実装され、表面実装部品11はプリント配線基板2の上面と下面のいずれか一方又は両方に実装される。ここで、表面実装部品11は既にプリント配線基板2にはんだ固定され、リード部品10はリード9がスルホールに挿入されただけで未はんだである。
【0022】
パレット本体部5には、プリント配線基板収容部3と開口部4が設けられる。プリント配線基板収容部3は、プリント配線基板2を水平に収容するべく平坦な底部を有する。プリント配線基板収容部3の底部に、プリント配線基板2の下面に実装された表面実装部品11の干渉を回避する空洞部12と、リード部品10のリード9及びその周辺やビヤにはんだを充填する部分のプリント配線基板2の下面にはんだ槽のはんだを流し込んで当てるための開口部4とが形成される。開口部4は、プリント配線基板2のはんだ付け箇所であるリード部品10の配置箇所に設けられる。プリント配線基板収容部3の周囲には、プリント配線基板2を押さえるためのフィキシング13が複数個設けられる。
【0023】
パレット本体部5の両端上部には、はんだ付けパレット1の反りを防止するための補強レール14がパレット本体部5の両端に沿わせて設けられる。パレット本体部5の両側上部には、プリント配線基板2の上面にはんだ槽のはんだが流れ込むのを防止するための波除レール15がパレット本体部5の両側に沿わせて設けられる。
【0024】
パレット本体部5、パレット幅微調板7は、合成樹脂や金属で製造することができる。
【0025】
パレット幅微調板7は、はんだ付けパレット本体部5の幅方向両端にそれぞれ適宜な隙間を隔てて配置される。
【0026】
図3に拡大して示すように、パレット幅微調板7には、パレット本体部5に臨ませて、弾性部材20の一端部を収容するための凹部16が形成され、凹部16の上下方向中央には、パレット幅微調板固定ネジ(又はボルト)17が挿通される。弾性部材20は、コイルバネ(又は板バネ)からなり、パレット幅微調板固定ネジ17を中心にして螺旋状に設けられる。一方、パレット本体部5の両端には、パレット幅微調板7に臨ませて、弾性部材20の反対端部を収容するための凹部18が形成され、凹部18の上下方向中央には、パレット幅微調板固定ネジ17を螺合させるためのネジ穴19が形成される。
【0027】
パレット幅微調板7のパレット本体部5とは反対端に、コンベア爪105に係合するための羽根状のエッジ6が設けられる。
【0028】
以下、本発明のはんだ付けパレット1の作用効果を説明する。
【0029】
本発明のはんだ付けパレット1にプリント配線基板2を収容し、はんだ付けパレット1を図6に示したコンベア爪105で挟む。このとき、コンベア爪105間距離は、はんだ付けパレット1の自然幅よりも少し狭く設定する。
【0030】
パレット幅微調板7のエッジ6がコンベア爪105のV字状溝106に入って係合する。このとき、はんだ付けパレット本体部5とパレット幅微調板7との間に適宜な隙間があり、パレット幅微調板固定ネジ17と弾性部材20とからなる弾性的支持部材8がはんだ付けパレット本体部5に対してパレット幅微調板7を幅方向に弾性的に移動自在に支持しているため、パレット幅微調板7はコンベア爪105によるくわえ力に押されて幅が狭くなる方向に微動する。これにより、弾性部材20が付勢された状態となり、コンベア爪105によるはんだ付けパレット1のくわえ力が所定範囲、すなわちスリップするほど緩くなく、過負荷になるほど強くない適切な強さとなる。
【0031】
プリント配線基板2をはんだ槽に搬送する際、コンベア爪105によるはんだ付けパレット1のくわえ力がスリップするほど緩くない適切な強さであるため、はんだ槽のはんだにはんだ付けパレット1が当たったとき、はんだ付けパレット1がコンベア爪105をスリップすることがない。はんだ付けパレット1がスリップしないので、はんだ付け条件(温度プロファイル)の繰り返し性が向上し、良好な個体差のないはんだ上がりのプリント配線基板2を得ることができる。
【0032】
また、コンベア爪105によるはんだ付けパレット1のくわえ力が過負荷になるほど強くない適切な強さであるため、自動はんだ付け装置が過負荷を検出してコンベア104の移動を停止することがなく、警報も発生されない。コンベア104の移動が停止しないので、はんだ付け条件(温度プロファイル)の繰り返し性が向上し、良好な個体差のないはんだ上がりのプリント配線基板2を得ることができる。
【0033】
また、複数個のはんだ付けパレット1を自動はんだ付け装置で搬送する際、一個のはんだ付けパレット1の幅方向の寸法(公称幅)を基準にしてそれよりやや狭い程度に自動はんだ付け装置の全てのコンベア爪105間距離を合わせておけば、個々のはんだ付けパレット1に幅方向の寸法ばらつきがあったとしても、パレット幅微調板7が微動することにより、はんだ付けパレット1の幅が自動調節され、スリップも過負荷もなくなり、はんだ付け条件(温度プロファイル)の繰り返し性が向上し、良好な個体差のないはんだ上がりのプリント配線基板2を得ることができる。
【0034】
これらの結果、高品質のはんだ付けされたプリント配線基板2が生産され、はんだ修正を施さなければならない率は下がり、不良品もなくなり、高品質のプリント配線基板2が製造される。そして、これらのために加工費が安くなり、プリント配線基板2が安価な製品になる。
【0035】
本発明によれば、はんだ付けパレット1の幅方向の寸法が少なくとも数mmの許容差を有するので、自動はんだ付け装置の過負荷検出機能が従来よりラフである場合、あるいは過負荷検出機能が無い場合でも、安定した信頼性の高いはんだ付けを実現することができる。
【0036】
上記実施形態では、弾性部材20をコイルバネとしたが、板バネにしても本発明の効果が得られる。また、弾性的支持部材8を耐熱性がある柔らかい樹脂で構成しても本発明の効果が得られる。
【0037】
上記実施形態では、弾性的支持部材8を4個設けたが、4個未満でも5個以上でも本発明の効果が得られる。
【符号の説明】
【0038】
1 はんだ付けパレット
2 プリント配線基板
3 リント配線基板収容部
4 開口部
5 パレット本体部
6 エッジ
7 パレット幅微調板
8 弾性的支持部材
9 リード
10 リード部品
11 表面実装部品
12 空洞部
13 フィキシング
14 補強レール
15 波除レール
16 凹部
17 パレット幅微調板固定ネジ
18 凹部
19 ネジ穴
20 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線基板を水平に収容するプリント配線基板収容部を有し、上記プリント配線基板収容部に上記プリント配線基板のはんだ付け箇所を下方に露出させる開口部が形成されたはんだ付けパレット本体部と、
上記はんだ付けパレット本体部の幅方向両端に配置されコンベア爪に係合するエッジを有するパレット幅微調板と、
上記はんだ付けパレット本体部に対して上記パレット幅微調板を幅方向に弾性的に移動自在に支持する弾性的支持部材と、
を備えたことを特徴とするはんだ付けパレット。
【請求項2】
上記弾性的支持部材は、コイルバネまたは板バネを有することを特徴とする請求項1記載のはんだ付けパレット。
【請求項3】
プリント配線基板を保持するはんだ付けパレットをコンベアではんだ槽に搬送する際に、
上記はんだ付けパレットを、コンベア爪の挟み方向にはんだ付けパレット本体部と両端のパレット幅微調板とに分割形成し、
上記はんだ付けパレット本体部に対して上記パレット幅微調板をコンベア爪の挟み方向に弾性的に移動自在に支持させ、
上記両端のパレット幅微調板をコンベア爪で弾性が働く状態に挟んで搬送することを特徴とするプリント配線基板の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−23591(P2011−23591A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167963(P2009−167963)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】