説明

はんだ付け装置

【課題】少ない加熱源ではんだ付け対象の2つの部品を加熱してはんだ付けすることができるはんだ付け装置を提供する。
【解決手段】はんだ付け装置10における下治具21および連結部22により、はんだ付け対象であるパワーモジュールMpと上部電極54が位置決めされる。上治具23により、供給する溶融前のはんだ24が保持される。加熱用プレート30により、下治具21、連結部22を加熱してパワーモジュールMpと上部電極54を加熱するとともに上治具23を加熱して固体の球状はんだ24を加熱してパワーモジュールMpと上部電極54に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2つの部品をはんだ付けすべく溶融したはんだをはんだ付けしたい部分に落下させてはんだ付けすることが行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−134445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶融したはんだをはんだ付けしたい部分に落下させるためには、はんだ槽と、はんだを注入する注射器等を別に加熱しておく必要があり、はんだ槽を加熱するための加熱源と、はんだを注入する注射器等を加熱する加熱源とが必要であった。また、はんだの濡れ性をよくするためには、はんだ付けしようとする部品を加熱する必要があり、そのための加熱源が必要となる。このように、はんだ付け対象部品を加熱するための加熱源と、溶融はんだを準備するための加熱源が必要であった。即ち、加熱源が多数必要であった。
【0005】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、その目的は、少ない加熱源ではんだ付け対象の2つの部品を加熱してはんだ付けすることができるはんだ付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、はんだ付け対象の2つの部品を位置決めする第1の部材と、溶融前のはんだを保持し、前記はんだ付け対象の2つの部品にはんだを供給する第2の部材と、前記第1の部材を加熱して前記はんだ付け対象の2つの部品を加熱するとともに前記第2の部材を加熱して前記はんだを加熱する加熱源と、を備えたことを要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、第1の部材により、はんだ付け対象の2つの部品が位置決めされる。また、第2の部材により溶融前のはんだが保持される。そして、加熱源により、第1の部材が加熱されてはんだ付け対象の2つの部品が加熱されるとともに第2の部材が加熱されてはんだが加熱されはんだ付け対象の2つの部品に供給される。
【0008】
よって、少ない加熱源ではんだ付け対象の2つの部品を加熱してはんだ付けすることができる。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のはんだ付け装置において、前記加熱源による前記第2の部材への伝熱経路の途中に断熱材を更に備えたことを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、加熱源による第2の部材への伝熱経路の途中に備えられた断熱材により、第1の部材と第2の部材とに温度の差を作ることができ、はんだを供給するときに、部品側が十分に加熱されているようにすることが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載のはんだ付け装置において、前記第2の部材は、上下方向に貫通する貫通孔を有し、当該貫通孔に溶融前のはんだを保持したことを要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、第2の部材は、上下方向に貫通する貫通孔を有し、貫通孔に溶融前のはんだを保持したので、はんだを貫通孔を通して供給することができる。
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載のはんだ付け装置において、前記貫通孔は下ほど縮径されたテーパー状をなすことを要旨とする。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、貫通孔は下ほど縮径されたテーパー状をなすので、溶融前のはんだを保持しやすい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、少ない加熱源ではんだ付け対象の2つの部品を加熱してはんだ付けすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は第1の実施形態におけるはんだ付け装置の平面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は(a)のB−B線での縦断面図。
【図2】(a)ははんだ付け後の半導体装置の平面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は(a)のB−B線での縦断面図。
【図3】(a)は第1の実施形態におけるはんだ付け装置の作用を説明するためのはんだ付け装置の平面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は(a)のB−B線での縦断面図。
【図4】(a)は第1の実施形態におけるはんだ付け装置の作用を説明するためのはんだ付け装置の平面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は(a)のB−B線での縦断面図。
【図5】(a)は第2の実施形態におけるはんだ付け装置の平面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は(a)のB−B線での縦断面図。
【図6】(a)は第2の実施形態におけるはんだ付け装置の作用を説明するためのはんだ付け装置の平面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図、(c)は(a)のB−B線での縦断面図、(d)は温度分布図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1には、本実施形態におけるはんだ付け装置10を示す。当該はんだ付け装置10によりはんだ付けされた半導体装置50を図2に示す。
【0016】
図2において、半導体素子(チップ)51の下面にはヒートスプレッダ52が接合材53により接合されている。ヒートスプレッダ52は四角の金属板よりなり、水平に配置されている。接合された半導体素子51とヒートスプレッダ52により、パワーモジュールMpが構成されている。
【0017】
そして、パワーモジュールMpにおける半導体素子51の通電により半導体素子51で発生する熱がヒートスプレッダ52を通して逃がされるようになっている。
半導体素子51の上面においては、図1のはんだ付け装置10により上部電極54がはんだ付けされる。上部電極54は金属の帯板よりなり、水平に配置されている。上部電極54の一端が半導体素子51の上方に位置し、上部電極54の一端部において、はんだ55により半導体素子51の上面と接合されている。
【0018】
本実施形態においては、パワーモジュールMpと、上部電極54とが、はんだ付け対象の2つの部品である。
図1において、はんだ付け装置10は、治具20と、加熱源としての加熱用プレート30を備えている。加熱用プレート30の上に治具20が搭載されている。治具20は下治具21と連結部22と上治具23を有している。下治具21、連結部22および上治具23は、伝熱性に優れた材料、例えば金属やカーボン等で形成される。
【0019】
下治具21は四角板状をなし、加熱用プレート30の上に固定されている。そして、加熱用プレート30において発生した熱が下治具21に伝わる。また、下治具21の上面における中央部にはパワーモジュールMpのヒートスプレッダ52が嵌まる凹部21aが形成され、凹部21aにヒートスプレッダ52を位置決めした状態で配置することができる。
【0020】
連結部22は四角枠状をなしている。下治具21の上面における外周部には連結部22が固定されている。また、連結部22における上部において貫通孔22aが形成され、貫通孔22aに上部電極54を位置決めした状態で配置することができる。
【0021】
このように本実施形態においては、第1の部材としての下治具21および連結部22により、パワーモジュールMp(ヒートスプレッダ52、半導体素子51)と上部電極54を位置決めすることができるようになっている。
【0022】
また、加熱用プレート30において発生した熱が下治具21を介して連結部22に伝わる。
四角枠状の連結部22の上面には上治具23が固定されている。そして、加熱用プレート30において発生した熱が下治具21および連結部22を介して上治具23に伝わる。
【0023】
第2の部材としての上治具23は四角板状をなし、中央部には貫通孔23aが形成されている。貫通孔23aは、上下方向に貫通している。貫通孔23aは、下ほど縮径されたテーパー状をなしている。貫通孔23aはパワーモジュールMpおよび上部電極54を治具20にセットした状態において、はんだ付けを行う箇所の上方に位置している。上治具23の貫通孔23a内に、溶融前のはんだとしての固体の球状はんだ24を保持することができるようになっている。即ち、貫通孔23aの下端開口部での直径よりも球状はんだ24の直径が大きく、上治具23の貫通孔23aに球状はんだ24を載せることができ、治具20に、溶融させるはんだ置き場を設けた構成となっている。そして、固体の球状はんだ24に対して加熱用プレート30において発生した熱が、下治具21、連結部22および上治具23を介して伝わる。
【0024】
次に、はんだ付け装置10の作用について説明する。
まず、半導体素子51の下面にヒートスプレッダ52を接合したパワーモジュールMpを用意する。また、上部電極54を用意する。
【0025】
そして、図3に示すように、はんだ付け装置10の治具20の下治具21にパワーモジュールMpのヒートスプレッダ52をセットする。また、上部電極54を治具20の連結部22にセットする。さらに、治具20の上治具23の貫通孔23aに固体の球状はんだ(溶融前の固体のはんだ)24を配置する。なお、図3(a)の平面図において上治具23は省略している。
【0026】
そして、加熱用プレート30を駆動して加熱用プレート30を発熱させる。加熱用プレート30の発する熱H(図4参照)は下治具21、連結部22および上治具23を介して固体の球状はんだ24に伝わり、固体の球状はんだ24の温度が上昇していく。また、加熱用プレート30の発する熱は下治具21を介してパワーモジュールMpのヒートスプレッダ52および半導体素子51に伝わり、ヒートスプレッダ52および半導体素子51の温度が上昇する。
【0027】
固体の球状はんだ24の温度が上昇してはんだの融点の230℃になると、固体の球状はんだ24が溶融して液体状となって貫通孔23aから落下(滴下)する。この溶融はんだは、図4に示すように、上部電極54の先端部に落下して半導体素子51の上面において半円弧状となる。なお、図4(a)の平面図において上治具23は省略している。
【0028】
その後、冷却し、はんだ付け装置10の治具20から、はんだ付けが完了した半導体装置50を取り出す。
このようにして、治具20に、溶融させるはんだ置き場を設けておき、治具20とヒートスプレッダ52を同時に加熱して固体の球状はんだ24を加熱し、融点を超えて落下してはんだ付けされる。
【0029】
よって、従来のはんだ付け装置においては、ヒートスプレッダ52側を温める加熱源と、溶融はんだを準備するための加熱源とが設けられ、はんだ槽とはんだを注入する注射器等を別に加熱しておく必要がある。つまり、ヒートスプレッダ52を加熱すると同時にはんだ槽やはんだ注入用注射器を加熱しておく必要があった。これに対し、本実施形態では、1つの加熱源としての加熱用プレート30のみを用いており、はんだ付け装置の小型化を図ることができるとともにシンプルな構成とすることができる。
【0030】
また、1回のはんだ付けのためのはんだ量は固体の球状はんだ24の大きさにより規定でき、所定の大きさの固体の球状はんだ24を治具20に搭載しておけばよい。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0031】
(1)加熱用プレート30により下治具21、連結部22を加熱してパワーモジュールMpと上部電極54を加熱するとともに上治具23を加熱して固体の球状はんだ24を加熱・溶融してパワーモジュールMpと上部電極54に供給するようにした。よって、少ない加熱源ではんだ付け対象のパワーモジュールMpと上部電極54を加熱してはんだ付けすることができる。
【0032】
(2)上治具23は、上下方向に貫通する貫通孔23aを有し、貫通孔23aに溶融前のはんだ24を保持したので、溶融したはんだを貫通孔23aを通して落下させて供給することができる。
【0033】
(3)貫通孔23aは下ほど縮径されたテーパー状をなすので、球状はんだ24を保持しやすくなる。つまり、球状はんだ24を載置するための貫通孔の形状として、下側ほど縮径されたテーパーとすることにより安定して固体のはんだを保持することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0034】
図1に代わり、本実施形態のはんだ付け装置は図5に示す構成となっている。本実施形態では治具20における連結部22と上治具23との間に断熱材60を配置して治具20における伝熱の工夫をしている。断熱材60は板材よりなり、断熱材60の材質として例えばシリコン系を挙げることができる。他にも断熱材は多孔質構造体等であってもよい。断熱材60の厚さについては、上部への熱が伝わりにくいように最適化された厚さとなっている。
【0035】
図5に示すように、治具20の上治具23に固体の球状はんだ24を搭載して治具20と部品(パワーモジュールMp、上部電極54)と固体の球状はんだ24を同時に加熱する。詳しくは、治具20からの伝熱で固体の球状はんだ24を溶かして液体はんだをはんだ付け部分に滴下する。
【0036】
このとき、固体の球状はんだ24を搭載する上治具23への伝熱経路中に断熱材60を設けることにより、図6(d)の温度分布図に示すように、断熱材60の上下で温度差(例えば30℃)を得ることができる。詳しくは、ヒートスプレッダ52が十分にはんだ付け可能な温度(例えば260℃)に達した頃に治具20の上治具23の温度がはんだ溶融温度(例えば230℃)に達する。
【0037】
下側の部品(パワーモジュールMp、上部電極54)がはんだ溶融温度(例えば230℃)のときに上からはんだが落下しても、はんだがよく濡れる温度に達していないために、うまくはんだ付けを行うことができない場合がある。これに対し本実施形態では、パワーモジュールMpおよび上部電極54が、はんだ付け良好な温度となっているときに液体はんだを滴下させることができる。
【0038】
なお、図5(a)および図6(a)の平面図において上治具23は省略している。
以上のように、加熱源としての加熱用プレート30による上治具23への伝熱経路の途中に断熱材60を備えたので、上治具23と、下治具21および連結部22とに温度の差を作ることができ、はんだが落下するときに(はんだを供給するときに)、ヒートスプレッダ52側が十分に加熱されているように温度差をつけることができる。
【0039】
即ち、上治具23においては、はんだが溶融する温度(例えば、はんだ融点程度)とするとともに、下治具21においては、はんだ付け良好温度(例えば、はんだ融点プラス30℃)とすることができる。
【0040】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・上治具23におけるはんだ載置用貫通孔23aの形状として、テーパー角度は所望の角度とすることができる。
【0041】
・また、載置用貫通孔23aの形状として、下ほど縮径されたテーパーとしたが、これに代り、二段に縮径された形状としてもよい。つまり、上面が開口する凹部における底面に貫通孔を形成した構成とし、凹部の内部に溶融前のはんだを配置してもよい。
【0042】
・固体の球状はんだ24を用いたが、固体のはんだの形状としては、球状以外にも、例えば、直方体状等であってもよい。
・固体のはんだ(球状はんだ24)を用いたが、クリームはんだ(はんだペースト)を用いてもよく、要は液体以外のはんだを用いて加熱源により加熱して部品に供給すればよい。
【0043】
・ヒートスプレッダ(金属板)に代わり回路基板等の他の基板を用いてもよい。
・はんだ付け対象の2つの部品は、単なる導体同士等の他の2つの部品であってもよい。
【0044】
・下治具21を加熱源としての加熱用プレート30で加熱する構成としたが、これに代わり、上治具23を加熱源で加熱する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…はんだ付け装置、20…治具、21…下治具、22…連結部、23…上治具、30…加熱用プレート、51…半導体素子、52…ヒートスプレッダ、54…上部電極、Mp…パワーモジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ付け対象の2つの部品を位置決めする第1の部材と、
溶融前のはんだを保持し、前記はんだ付け対象の2つの部品にはんだを供給する第2の部材と、
前記第1の部材を加熱して前記はんだ付け対象の2つの部品を加熱するとともに前記第2の部材を加熱して前記はんだを加熱する加熱源と、
を備えたことを特徴とするはんだ付け装置。
【請求項2】
前記加熱源による前記第2の部材への伝熱経路の途中に断熱材を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載のはんだ付け装置。
【請求項3】
前記第2の部材は、上下方向に貫通する貫通孔を有し、当該貫通孔に溶融前のはんだを保持したことを特徴とする請求項1または2に記載のはんだ付け装置。
【請求項4】
前記貫通孔は下ほど縮径されたテーパー状をなすことを特徴とする請求項3に記載のはんだ付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−258799(P2011−258799A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132815(P2010−132815)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】