説明

めっき装置

【課題】 被めっき物とアノードとを隔離するための隔膜を備えためっき装置において、めっき槽内により簡単に隔膜を配置できる技術を提供する。
【解決手段】 被めっき物を配置する開口部と、被めっき物に向けてめっき液を供給する液供給管と、被めっき物と対向するように配置されたアノードと、被めっき物とアノードとを隔離するための隔膜と、を有するめっき槽を備えためっき装置において、めっき槽内壁には、隔膜外周端を固定するための隔膜外周固定部が設けられており、液供給管は、内管及び外管からなる二重管で構成され、内管は、隔膜中央に設けられた貫通孔に貫入される内管部及び該貫通孔を係止する隔膜貫通孔固定部を有し、外管は、前記内管部を受け入れた状態で内管を固定させる係合部を有するとともにめっき槽内に固定される槽固定部を備えているものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ウェハーやプリント配線板等の被めっき物に対して、めっき槽内のアノードと被めっき物とを隔膜により隔離してめっき処理を行うめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体のウェハーやプリント配線板等の被めっき物に対して、種々のめっき処理が行われている。このような被めっき物にめっき処理を行う装置の一つとして噴流式のめっき装置が知られている。
【0003】
この噴流式のめっき装置は、一般的に、被めっき物が配置できる開口部と、被めっき物に向けてめっき液を供給する液供給管と、被めっき物と対向するように配置されたアノードとを備え、被めっき物に向けて液供給管からめっき液を供給しながらめっき処理を行う。この噴流式のめっき装置は、被めっき物の被めっき面に均一なめっき処理が行え、開口部に配置する被めっき物を順次取り替えてめっき処理ができるので、小ロット生産やめっき処理の自動化に好適なものとして広く利用されている。
【0004】
この噴流式のめっき装置では、上述のような利点があるものの、アノード表面へ形成される皮膜、例えばブラックフィルムなどが剥離して、液中の不純物となり、被めっき物に向けて供給されるめっき液と一緒に流動して、めっき処理に悪影響を与える場合がある。また、液中に混入したエアーやアノードから発生する気泡が被めっき面に到達して良好なめっき処理を阻害することもある。そのため、この噴流式のめっき装置では、めっき槽内に、被めっき物とアノードとを隔離するための隔膜を配置することが行われる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−350185号公報
【0005】
特許文献1に示すような、隔膜をめっき槽内に配置した噴流式のめっき装置では、アノードから生じる不純物の影響や、不溶性アノードを使用した際に生じるめっき添加剤の消耗を防止することができ、さらにアノードから発生する気泡の影響も確実に解消できるものとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記先行技術のように、アノードと被めっき物とを確実に隔離できるように隔膜をめっき槽内に配置することは容易な作業ではない。特に、特許文献1のように、隔膜がすり鉢状になるようにめっき槽内で配置する場合、隔膜に皺などを発生させないために特別な取り付け治具を準備するか、或いは、すり鉢状の隔膜を分割して配置するなどの工夫が必要となり、装置の製造や装置メインテナンスにおいて非常に困難な作業を伴うものであった。
【0007】
本願発明は、以上のような事情を背景になされたものであり、被めっき物とアノードとを隔離するための隔膜を備えた噴流式めっき装置において、めっき槽内に、より簡単に隔膜を配置できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者は、めっき槽と液供給管とを改善することにより、隔膜をめっき槽内により簡単に配置できる本願発明を想到した。本願発明は、被めっき物を配置する開口部と、被めっき物に向けてめっき液を供給する液供給管と、被めっき物と対向するように配置されたアノードと、被めっき物とアノードとを隔離するための隔膜と、を有するめっき槽を備えためっき装置において、めっき槽内壁には、隔膜外周端を固定するための隔膜外周固定部が設けられており、液供給管は、内管及び外管からなる二重管で構成され、内管は、隔膜中央に設けられた貫通孔に貫入される内管部及び該貫通孔を係止する隔膜貫通孔固定部を有し、外管は、前記内管部を受け入れた状態で内管を固定させる係合部を有するとともにめっき槽内に固定される槽固定部を備えているものとした。
【0009】
本願発明では、めっき槽内に配置する隔膜を、予め、めっき槽内壁に固定できるように隔膜の外周加工をし、隔膜中央に内管を貫入できるように貫通孔を形成しておく。そして、本願発明のめっき槽内壁に設けられた隔膜外周固定部に、隔膜外周を固定する。隔膜中央に設けられた貫通孔には、本願発明における液供給管の内管部を貫入する。また、めっき槽内には、別途、本願発明における液供給管の外管部を固定しておき、隔膜の貫通孔に貫入した内管部を、外管部内に挿入し、外管部の係合部に内管が係合するまで内管全体を移動させる。外管と内管とが係合して一体となると、隔膜は、その外周がめっき槽内壁に設けられた隔膜回収固定部に固定され、隔膜の貫通孔が隔膜貫通孔固定部に固定されることにより、めっき槽内に配置される。このように本願発明では、隔膜を、本願発明のめっき槽内形状に合わせて、外周形状及び貫通孔を形成しておけば、特別な取り付け治具の準備や装置自体の大幅な設計変更も必要なく、極めて簡単に隔膜をめっき槽内に隔膜を配置することができる。特に、極めて取り扱いの困難な隔膜、例えば、柔軟な材質の隔膜や厚みの薄い隔膜であっても、本願発明によれば、隔膜の破損や皺などを発生させることなく、適切にめっき槽内に隔膜を配置することが可能となる。
【0010】
また、本願発明のめっき装置では、内管が外管に固定された際、外管内壁と内管外壁との間に、隔膜により被めっき物と隔離して形成されるアノード室へめっき液を供給するための分岐液流路が形成されるようにしておこくとが好ましい。めっき槽内が、隔膜により、アノード室と、被めっき物のあるカソード室とに隔離された場合、アノード室内の液交換を行うには、被めっき物へ供給するめっき液とは別の液供給経路を確保する必要がある。このような場合、本願発明における二重管構造の液供給管に、アノード室へめっき液を流動させる分岐液流路を形成しておけば、被めっき物に向けて供給するめっき液の一部を分岐してアノード室側へもめっき液を容易に供給することができる。このようにすれば、アノード室側へめっき液を供給するための別の液供給経路を設ける必要がなく、めっき装置構造が簡素となる。この場合、アノード室側に供給されるめっき液をアノード室外に排出する液排出経路を、アノード室内に設けておくことが好ましい。この液排出経路は、めっき槽内壁やめっき槽底部などのアノード室内で有れば、いずれに設けても構わない。要は、アノード室内へのめっき液の供給や、アノード室内でのめっき液の循環などが、適宜行われるように、めっき液が排出されるようにして有ればよいものである。
【0011】
また、本願発明のめっき装置における隔膜は、めっき槽内にすり鉢状に配置することが好ましい。例えば、外周方向に上昇するようにすり鉢状に隔膜を配置すると、アノードから発生する気泡が隔膜の傾斜に沿って外周方向に移動することになり、気泡の影響を解消することができる。隔膜をすり鉢状に配置する場合には、液供給管で固定される隔膜貫通孔の固定位置を、めっき槽内壁に設けられる隔膜外周固定部の水平位置よりも下方にすればよい。
【0012】
そして、本願発明のめっき装置は、隔膜外周固定部の下方に、アノード室に供給されためっき液を排出するためのアノード室液排出口を設け、該アノード室液排出口にはめっき液中の不純物を除去するフィルターを備えるようにすることが好ましい。隔膜の配置によりめっき槽内に形成されるアノード室内では、アノードにおいて発生するブラックフィルムなどの不純物を液中に混入し易くなるが、このアノード室から排出されるめっき液をそのまま、カソード室側のめっき液、つまり、被めっき物に向けて供給されるめっき液と混合すると、めっき液全体に不純物が混入することになり、良好なめっき処理に悪影響を及ぼすことが懸念される。そこで、アノード室から排出されるめっき液に対しては、めっき液中の不純物をフィルターにより除去するようにすれば、めっき液全体を不純物で汚染することを防止することが可能となる。
【0013】
さらに、本願発明のめっき装置においては、内管は、前記外管の外周側を覆うようにされたキャップ部を有し、前記キャップ部の先端側に前記隔膜貫通孔固定部が設けられた構造とし、外管の上端には、分岐液流路を流通するめっき液をアノード室へ供給するためのアノード室液供給口を設け、このアノード室液供給口を、アノード室液排出口の水平位置よりも高い位置に設けられるとともに、隔膜貫通孔固定部がアノード室液排出口の水平位置よりも低い位置に配置されたようにすることが好ましい。
【0014】
隔膜を配置しためっき槽内は、アノードの存在する側のアノード室と、被めっき物が配置されている側の、いわゆるカソード室との2部屋に分割されることになる。また、めっき液を各室に供給してめっき処理を行った後、被めっき物の交換を行う際には、めっき液の排出を行う場合がある。このめっき槽内のめっき液を排出した際、隔膜がめっき液から露出すると、隔膜自体が大気に接触することになる。つまり、めっき液面が隔膜の配置位置より下方になる場合、隔膜は大気に接触し、アノード室内へも大気が浸入する状態になる。このような状態になると、使用する隔膜の種類にもよるが、隔膜の劣化が進行し易くなり、隔膜のめっき液との濡れ性が低下する傾向となる。また、アノード室内へ大気が入り込んでしまうと、溶解性アノードを使用している場合でアノード自体が酸化されて、その後のめっき処理に悪影響を及ぼすことが懸念される。
【0015】
このように、噴流式のめっき装置における被めっき物の交換において、めっき槽内のめっき液を排出しても、めっき液面が隔膜配置位置よりも必ず上方となるようにして、隔膜が大気と接触しない状態を実現させる構造を検討した。その結果、めっき槽内からめっき液を排出した際のめっき液面が、めっき槽内に配置された隔膜位置よりも上方にある状態、即ち、めっき液中に隔膜が存在する状態とすればよい。そこで、内管は、前記外管の外周側を覆うようにされたキャップ部を有し、このキャップ部の先端側に前記隔膜貫通孔固定部を設けるようにし、外管の上端に設けた室液供給口をアノード室液排出口の水平位置よりも高い位置に設け、かつ、隔膜貫通孔固定部をアノード室液排出口の水平位置よりも低い位置に配置された構造としたのである。
【0016】
加えて、上記のようにめっき槽内のめっき液を排出した際に、隔膜が大気と接触しない状態を実現させる構造を採用する場合、二重管構造の液供給管における内管及び外管との間に形成される分岐液流路に、めっき液を排出する際にアノード室内のめっき液が流出してしまわないようにする逆流防止機構を備えるようにすることが望ましい。このような逆流防止機構を設けておくことで、めっき槽内のめっき液を排出した場合であっても、隔膜がめっき液に浸漬した状態を確実に実現できるものとなる。
【0017】
さらに加えて、本願発明のめっき装置においては、内管には、被めっき物に向けて供給するめっき液を分流するための液分流手段を設けることが望ましい。被めっき物へのめっき処理においては、めっき厚みの均一性や合金めっきの場合にあってはそのめっき組成の均一性などが厳しく要求される場合がある。具体的には、使用するめっき液の種類や電流密度などのめっき処理条件によっては、被めっき物に向けて供給されるめっき液の流動状態に大きく左右されて、被めっき物のめっき処理表面の全面において、めっき厚みやめっき組成の均一性が実現できない場合が生じる。特に、被めっき物に向けて供給されるめっき液が、被めっき物のほぼ中央付近から周辺方向に広がるような流動状態をしている場合、被めっき物の中央付近のめっき厚が、周辺側よりも厚くめっきされる場合がある。また、例えば、Ag−Sn合金めっきなどの合金めっき処理を行う場合には、中央付近の合金めっき組成と、周辺側の合金めっき組成とが相違してしまう傾向がある。このような場合には、本願発明のめっき装置における内管に、被めっき物に向けて供給するめっき液を分流するための液分流手段を設けておき、被めっき物の特定部位にめっき液の供給が集中しないようにして、被めっき物のめっき処理表面全面で均一なめっき厚みで、均一なめっき組成のめっき処理が行えるようにするとよい。
【0018】
この内管に設ける液分流手段は、被めっき物の特定部位にめっき液の供給が集中しないように、内管から被めっき物に向けて供給されるめっき液の供給方向が分散されるような構造で有れば、特に制限はされない。具体的には、内管におけるめっき液の供給側の上部に、円板状のダンパー体を設け、この円板状のダンパー体により供給されるめっき液の流動状態をめっき槽内に拡散させるようにすることができる。また、内管内に、めっき液の供給方向がめっき槽内に拡散するような分流経路を形成する構造を採用しても良い。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本願発明によれば、被めっき物とアノードとを隔離するための隔膜を有するめっき槽を備えためっき装置において、非常に簡単に隔膜をめっき槽内に配置することができる。また、すり鉢状の形態に隔膜を配置する場合であっても、隔膜に皺を発生させることがなく、めっき装置の製造作業やメインテナンス作業の効率化が図れるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本願発明に係るめっき装置の好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0021】
第一実施形態:図1に、本発明に係る第一実施形態のめっき装置の断面概略図を示す。図1に示すめっき装置は噴流式のものであり、例えば、ウェハーなどの被めっき物Wを配置できる開口部10と、被めっき物Wに向けてめっき液を供給する液供給管20と、被めっき物Wに対向するように配置されたアノード電極30とを有するカップ状のめっき槽Bを備えている。このめっき槽B内には、被めっき物Wとアノード電極30とを隔離するための隔膜Fがすり鉢状に配置されている。この隔膜Fにより、めっき槽B内はアノード室Aと、被めっき物にめっき処理を行うためのカソード室Cが形成されることとなる。
【0022】
また、めっき槽Bの開口部10は、トップリング101、被めっき物Wの外周と接触する環状カソード電極102、シールパッキン103、環状支持台104とから形成されている。そして、この開口部10の下方位置には、被めっき物Wに向けて供給されためっき液の液流出路40がめっき槽Bに形成されている。この液流出路40から排出されためっき液は、めっき槽Bの壁内を通過してめっき液貯槽(図示省略)に送液される。
【0023】
液供給管20は、図2に示すように外管21と内管22とからなる2重管構造とされている。外管21は、外管21の上端側にアノード室Aへめっき液を導入するためのアノード室液供給口211が設けられ、上端に内管22との係合部212が形成されている。そして、めっき槽Bの底部中央に外管21を固定できるような槽固定部213が設けられている。また、内管22は、隔膜の中央に形成された貫通孔に貫入できる内管部221と、その貫通孔を固定するための隔膜貫通孔を固定するための鍔部222とが設けられている。この鍔部222の下側には、外管21の係合部212に係り合うようにされた係合部223が形成されている。
【0024】
また、図1に示すように、めっき槽Bの内壁には、隔膜Fの外周を固定するための、隔膜外周固定部50が形成されている。図3には、この隔膜外周固定部50の一部を拡大して示しているが、この隔膜外周固定部50は、めっき槽Bの内壁の一部を構成するもので、隔膜Fの外周を固定するための膜取り付け部501が設けられており、その下方にはアノード室Aのめっき液を排出するためのアノード室液排出口502が設けられている。このアノード室液排出口502には、めっき液中の不純物を除去するためのフィルター503が配置されている。
【0025】
続いて、本実施形態のめっき装置における隔膜の配置手順について説明する。図4には、隔膜を配置する際の手順((1)〜(3))を示している。まず、めっき槽Bには、その底部中央に外管21を取り付け、アノード電極30を配置する。そして、槽壁の一部となる隔膜外周固定部50を配置し、隔膜Fの外周部分を膜取り付け部501にて固定する(図4(1))。次に、隔膜Fの中央に形成された貫通孔FHに、内管22の鍔部222が隔膜Fに当接するまで内管部221を貫入させる(図4(2))。更に、内管22を下方に移動して外管21内に内管部221をゆっくり挿入し、内管22の係合部223と、外管21の上端に形成された係合部212とを係り合わせて、外管21に内管22を固定することで、二重管構造の液供給管20を形成する(図4(3))。このとき、隔膜Fの貫通孔FHも鍔部222により固定される。また、この第一実施形態では、隔膜Fの貫通孔FHの固定される水平位置を、隔膜F外周を固定する隔膜外周固定部50の水平位置よりも低くしているため、隔膜Fはすり鉢状に配置される。また、二重管構造の液供給管20では、隔膜Fを固定した際に、外管21の内壁と内管22の外壁との間に所定の空間(分岐液流路)が形成される。つまり、この液供給管20は、内管による主めっき液供給路S1と、外管の上端側に設けたアノード室Aの液供給口211へ、めっき液を導くため分岐液流路S2とを形成する。
【0026】
図4のような手順により、めっき槽B内に隔膜Fを配置した後は、環状支持台104、シールパッキン103、環状カソード電極102、トップリング101を順次配置して、被めっき物Wを配置するための開口部10を形成する。
【0027】
第一実施形態で示すめっき装置においては、次のようにしてめっき処理が行われる。まず、上記した手順により隔膜Fをめっき槽Bに配置し、めっき槽Bの開口部10に、被めっき物となるウェハーを配置する。この被めっき物Wは上方にある押圧手段(図示省略)により環状支持台104に押圧され固定される。また、被めっき物Wの外周は、開口部10に設置された環状カソード電極102と接触し、めっき電流の供給がされる。
【0028】
被めっき物Wの配置後、液供給管20へめっき液が送液されて、主めっき液供給路S1より、被めっき物Wに向けてめっき液が供給されるとともに、一部のめっき液は液供給管20の分岐液流路S2を通過してアノード室液供給口211よりアノード室Aに供給される。
【0029】
主めっき液経路S1から供給されためっき液は、被めっき物の被めっき面の中央付近から周辺方向に広がるような流動し、液流出路40から排出される。また、アノード室Aに供給されためっき液は、隔膜外周固定部50に設けられているアノード室液排出口502から排出される。このアノード室から排出されるめっき液中の不純物はフィルター503により除去される。
【0030】
上記した本実施形態のめっき装置においては、装置製造時における作業、特に隔膜をすり鉢状に配置する作業が極めて簡単に行えた。また、アノード交換などの作業に必要となる隔膜の取り外しも容易に行え、その後の隔膜の配置も簡単に行えることから、メインテナンス作業の効率が飛躍的に向上した。
【0031】
第二実施形態:この第二実施形態では、上記第一実施形態の液供給管と異なる構造のめっき装置について説明する。図5には、本発明に係る第二実施形態のめっき装置の断面概略図を示す。この第二実施形態のめっき装置は、第一実施形態のめっき装置と同様な噴流式であり、ウェハーなどの被めっき物Wを配置してめっき処理を行うものである。そのため、上記第一実施形態(図1〜図4)と同じ装置構成に関しては、同じ図面符号を使用している。尚、隔膜の配置手順、めっき処理の手順に関しては、上記第一実施形態の場合と基本的に同じなので、詳細な説明は省略する。
【0032】
図5に示す第二実施形態におけるめっき装置は、液供給管20の内管22の形態が上記第一実施形態の場合と全く異なる構造となっている。図6には、この第二実施形態における液供給管20の分解断面図を示している。図6を見ると判るように、外管21は第一実施形態と同様な構造としている。内管22は、内管部221とキャップ部225とからなり、キャップ部225の先端側には隔膜貫通孔固定部226が形成されている。この第二実施形態のめっき装置における液供給管20では、内管22の内管部21とキャップ部225とにより、外管21の周りを覆うような状態で配置される。
【0033】
図7には、図5に示すめっき装置の一部断面の拡大図を示している。図6で示した液供給管20を配置した場合、図7に示すように、外管21と、その周りを覆うように配置された内管22との間に所定の空間(分岐液流路S2)が形成される。つまり、この第二実施形態の液供給管20では、分岐液流路S2を流通するめっき液が、外管21のアノード室液供給口211を通過して、内管22のキャップ部225形状に沿って移動し、アノード室Aに供給されることになる。このアノード室Aに供給されためっき液は、隔膜外周固定部50の下方に設けられたアノード室液排出口502より排出される。
【0034】
そして、この第二実施形態のめっき装置では、液供給管20の外管21に設けたアノード室液供給口211が、隔膜外周固定部50の下方に設けられたアノード室液排出口502の水平位置より、若干高い位置に設けられている。その結果、この第二実施形態のめっき装置においては、被めっき物Wの交換などの際にめっき槽からめっき液を排出させた場合であっても、隔膜Fがめっき液に浸漬された状態となるように、めっき槽内にめっき液を溜めることができる(図7の波線(液面))。従って、被めっき物Wの交換などのメインテナンス作業の度に、隔膜Fが大気に接触することを抑制できる。また、アノード室A内にはめっき液が溜まった状態となっているので、次のめっき処理を開始するために、めっき槽内へめっき液をスムーズに供給することができる。
【0035】
さらに、この第二実施形態の図6で示した液供給管とは異なる別形態の液供給管について、図8を参照しながら説明する。図8には、別形態の液供給管の分解概略断面図を示している。この図8に示す液供給管20’は、内管22’及び外管21からなり、この内管22’の形態が上記第二実施形態の図6に示した場合と異なった構造となっている。この図8の内管22’は、内管部221’とキャップ部225’とからなり、この内管部221’とキャップ部225’とは分離して構成されている。また、外管21は第二実施形態の図6に示したものと基本的には同様な構造としてあり、この外管21の上端の係合部212にキャップ部225’が係止される。このキャップ部225’が外管21に取り付けられた時に、内管部221’の一端側が外管21の上端に設けられたアノード室液供給口211を塞閉或いは開口できるように、外管21上端とキャップ部225’との間を上下に移動自在となるように取り付けられる。
【0036】
この図8に示す液供給管20’であると、内部管221’が上下移動自在となっているため、図9に示すような動作が行える。図9(a)には、図8の液供給管を使用した際の、めっき液をめっき槽内へ供給する場合の状態を示しており、図9(b)には、めっき液をめっき槽から排出する場合の状態を示している。図9(a)に示すように、めっき液を供給する場合、上方に向けて供給されるめっき液圧力により、内部管221’は上方側に押し上げられて、アノード室液供給口211が開かれた状態となり、めっき液は、分岐液流路を通過してキャップ部225形状に沿って移動し、アノード室Aに供給されることになる。また、めっき槽内からめっき液を排出する場合には、下方に排出されるめっき液の圧力により、内部管221’は下方側に押し下げられて、アノード室液供給口211が塞ぐようになる。このようにアノード室液供給口211が閉じられていると、アノード室側に存在するめっき液は、アノード室内を充満した状態になり、図7で示したように、隔膜がめっき液に浸漬された状態を確実に維持できるようになる。
【0037】
第三実施形態:この第三実施形態では、上記第二実施形態の液供給管の内管に液分流手段を設けた構造のめっき装置について説明する。図10には、本発明に係る第三実施形態のめっき装置の断面概略図を示す。この第三実施形態のめっき装置は、上記第二実施形態のめっき装置と同様な噴流式であり、ウェハーなどの被めっき物Wを配置してめっき処理を行うものである。よって、上記第二実施形態(図5)と同じ装置構成に関しては、同じ図面符号を使用している。尚、隔膜の配置手順、めっき処理の手順に関しては、上記第一及び第二実施形態の場合と基本的に同じなため、詳細な説明は省略する。
【0038】
この第三実施形態のめっき装置では、液供給管20の内管22に液分流手段60を設けたものである。この液分流手段60は、支柱61に、大きさの異なる二つの漏斗状分流板62が同心円上に配された構造となっている。そして、内管22内部に設けられたメッシュ状固定板63に支柱61を取り付けることにより、液分流手段60が固定される。この液分流手段60により、液供給管から供給されるめっき液は、メッシュ状固定板63を通過して、大きさの異なる二つの漏斗状分流板62により形成された液分流路に沿ってめっき槽内供給される。その結果、図10の太線矢印のように、めっき液は、放射状に広がって状態でめっき槽内を流動することになる。また、支柱61の存在により、ウェハーWの中央付近に集中してめっき液が供給される状態が抑制されるようになる。
【0039】
続いて、この第三実施形態における液分流手段の効果について調べた結果について説明する。液分流手段の効果は、Sn−Ag合金めっき液を用いて、直径300mmのウェハーに厚み7μm(目標)のSn−Ag合金めっきを行い、そのめっき厚みを測定することにより行った。内管径30mm、漏斗状分流板によって形成される液分流路は約1mm幅であった。また、隔膜は、電解質膜を用い、アノード電極は不溶性電極を使用した。また、Sn−Agめっき液は、Sn濃度50g/L、Ag濃度0.5g/Lの市販のめっき液を用い、液温20℃、電流密度2.5A/dm、液供給管からのめっき液流量を20L/minとしてめっき処理を行った。
【0040】
また、このめっき処理は、図10で示した第三実施形態のめっき装置(実施例1)と、この図10で示す液供給管の内管に液分流手段を設けていないめっき装置(比較例1)とを用いて、ウェハーにそれぞれSn−Ag合金めっき処理を行った。そして、めっき処理後のウェハーのめっき表面の13カ所について、Sn−Ag合金めっきの厚み測定を行った。その結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に示すように、実施例1の液分流手段を備えためっき装置によるめっき処理であると、液分流手段を備えていないめっき装置(比較例1)の場合に比べ、めっき厚みのバラツキが少ないことが認められた。また、厚みの均一程度を指し示す均一性値は、実施例1が比較例1の半分以下の値となっており、めっき厚みの均一性が高いことが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第一実施形態のめっき装置の概略断面図。
【図2】第一実施形態の液供給管の分解概略断面図。
【図3】第一実施形態のめっき装置の一部拡大断面図。
【図4】第一実施形態のめっき装置における隔膜配置の手順を示す概略図。
【図5】第二実施形態のめっき装置の概略断面図。
【図6】第二実施形態の液供給管の分解概略断面図。
【図7】第二実施形態のめっき装置の一部拡大断面図。
【図8】別形態の液供給管の分解概略断面図。
【図9】図8に示す液供給管の説明用断面図。
【図10】第三実施形態のめっき装置の概略断面図。
【符号の説明】
【0044】
10 開口部
101 トップリング
102 環状カソード電極
103 シールパッキン
104 環状支持台
20 液供給管
21 外管
211 アノード室液供給口
212 係合部
213 槽固定部
22 内管
221 内管部
222 鍔部
223 係合部
225 キャップ部
226 隔膜貫通孔固定部
30 アノード電極
40 液流出路
50 隔膜外周固定部
501 隔膜取り付け部
502 アノード室液排出口
503 フィルター
60 液分流手段
63 メッシュ状固定板
B めっき槽
W 被めっき物
F 隔膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき物を配置する開口部と、被めっき物に向けてめっき液を供給する液供給管と、被めっき物と対向するように配置されたアノードと、被めっき物とアノードとを隔離するための隔膜と、を有するめっき槽を備えためっき装置において、
めっき槽内壁には、隔膜外周端を固定するための隔膜外周固定部が設けられており、
液供給管は、内管及び外管からなる二重管で構成され、
内管は、隔膜中央に設けられた貫通孔に貫入される内管部及び該貫通孔を係止する隔膜貫通孔固定部を有し、
外管は、前記内管部を受け入れた状態で内管を固定させる係合部を有するとともにめっき槽内に固定される槽固定部を備えていることを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
前記内管が前記外管に固定された際、外管内壁と内管外壁との間に、隔膜により被めっき物と隔離して形成されるアノード室へめっき液を供給するための分岐液流路が形成される請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記隔膜は、めっき槽内ですり鉢状に配置された請求項1または請求項2に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記隔膜外周固定部の下方に、アノード室に供給されためっき液を排出するためのアノード室液排出口が設けられ、該アノード室液排出口にはめっき液中の不純物を除去するフィルターが備えられた請求項3に記載のめっき装置。
【請求項5】
前記内管は、前記外管の外周側を覆うようにされたキャップ部を有し、前記キャップ部の先端側に前記隔膜貫通孔固定部が設けられ、
前記外管の上端には、分岐液流路を流通するめっき液をアノード室へ供給するためのアノード室液供給口が設けられており、
前記アノード室液供給口は、前記アノード室液排出口の水平位置よりも高い位置に設けられるとともに、前記隔膜貫通孔固定部は前記アノード室液排出口の水平位置よりも低い位置に配置された請求項3または請求項4に記載のめっき装置。
【請求項6】
前記内管は、被めっき物に向けて供給するめっき液を分流するための液分流手段が設けられている請求項1〜請求項5いずれかに記載のめっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−169773(P2007−169773A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25673(P2006−25673)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000228165)日本エレクトロプレイテイング・エンジニヤース株式会社 (29)
【Fターム(参考)】