説明

アウターロータ形回転電機

【課題】固定子や回転子に対する冷却性能を向上させることなどが可能なアウターロータ形の回転電機(発電機又は電動機)を提供する。
【解決手段】アキシャル方向に並べて配設され、且つ、固定子巻線端部49a,52bの間に隙間53が設けられている固定子32,33と、固定子の外周を囲むように配設され、且つ、固定子との間にエアーギャップ50A,50Bが設けられている回転子31と、発電機内に設けられた回転ファン58を有し、この回転ファンによって送風する冷却風60が、隙間53及びエアーギャップ50A,50Bを流通して回転ファン58に戻るように循環することにより、この冷却風60によって固定子及び回転子を冷却する空気冷却装置と、発電機内に設けられた熱交換器59を有し、この熱交換器において冷却風60と冷却液体61との熱交換をすることにより、冷却液体61によって冷却風60を冷却する液体冷却装置とを備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアウターロータ形の回転電機(発電機又は電動機)に関し、特に風力用の永久磁石式発電機(PMG : Permanent Magnet Generator)などに適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
回転電機は、その作動中に生じる固定子や回転子の発熱に対して冷却を必要とする。一般的な回転電機では、その固定子や回転子の発熱を、回転電機の内部から表面への熱伝導によって冷却することが可能である。しかし、このような熱伝導による冷却方式のみでは、発熱量が大きい割に表面積が小さい大容量(高電圧又は大電流)の回転電機の固定子や回転子を十分に冷却することが困難である。
【0003】
特に、大型の風力用発電機のように海浜や海上などの過酷な環境に設置される場合には、海水や塩分を含む劣悪な外気から風力用発電機を守るため、風力用発電機全体をハウジングで密閉する必要がある。従って、風力用発電機に対しては、このような密閉状態でも確実に固定子や回転子を冷却することができる冷却方式が必要となる。
【0004】
風力用発電機のなかでも特に、ギアレス(ダイレクトドライブ)形の風力用永久磁石式発電機は、回転子に永久磁石を使用した多極のものであるため、回転子を風車に直結して運転することができ、増速ギアがあるものと比較してメンテナンス性に優れているといった特長を有している。しかし反面、固定子や回転子に対する冷却性能が不十分であると、永久磁石の減磁が発生して発電機出力が低下するという問題がある。
【0005】
詳述すると、永久磁石を扱う上で避けて通ることができない事項として減磁があり、この減磁には可逆減磁と不可逆減磁があるが、特に風力用永久磁石式発電機の場合にはタワー上に設置されるため、その運用期間中に永久磁石の不可逆減磁はもちろんのこと可逆減磁も極力無い方が望ましい。そして、永久磁石の減磁を起こす要因の1つとして、永久磁石が高温下にさらされることによる減磁がある。従って、風力用永久磁石式発電機においては、その固定子や回転子に対する冷却性能が不十分であると、負荷運転時には発電機内及び永久磁石自身の温度が上昇するため、永久磁石が減磁を起こしてしまう。このため、特に風力用永久磁石式発電機においては、その固定子や回転子を効率よく確実に冷却することが重要となる。
【0006】
また、一般に、定格出力が2000kWを超えるような大型の風力用永久磁石式発電機の場合には、インナーロータ形のものよりもアウターロータ形のものが採用されるケースがある。その理由は次のとおりである。
【0007】
インナーロータ形の風力用永久磁石式発電機の場合には、回転子より発熱量の大きい固定子鉄心と固定子巻線とからなる固定子が、回転子の外周側に配設され、永久磁石が取り付けられた回転子が、固定子の内周側にインナーロータとして配置された構成となるため、固定子の発熱を、当該発電機の外壁を通して、熱伝導により、当該発電機の周囲に放熱するという冷却方式が採用される。
【0008】
しかし、永久磁石式の発電機においては、回転子フレームに永久磁石を取り付けた構造の回転子を有するアウターロータ形のものの方が、インナーロータ形のものに比べて、回転子の直径が大きくてより多数の永久磁石を回転子に配置することが可能であるため、大きさが同じ(同じ直径で、同じ鉄心長)ならば発電出力をより高出力とすることができ、同じ発電出力の発電機ならば大きさをより小型化することができる。これは、発電出力のパラメータとなる回転子と固定子の磁力が、固定子巻線の場合には巻線の巻き数で調整できるが、永久磁石の場合には永久磁石の量で定まることから、より多量の永久磁石を回転子に配置することができるアウターロータ形の永久磁石式発電機のほうが、インナーロータ形の永久磁石式発電機よりも、非常に有利となるためである。
【0009】
ところが、放熱に関しては、アウターロータ形の風力用永久磁石式発電機の場合、発熱量の大きい固定子鉄心と固定子巻線とから成る固定子が、当該発電機の中心軸側(回転子の内周側)に配設されるため、上記のようなインナーロータ形の風力用発電機で採用されている冷却方式(即ち発電機の外壁を通して、熱伝導により、発電機の周囲に放熱するという冷却方式)を、採用することができない。
【0010】
かかる課題に対し、上記のようなインナーロータ形の風力用発電機で採用されている冷却方式とは異なる冷却方式が採用されているアウターロータ形の風力用永久磁石式発電機の従来例を、図5及び図6に示す。図5は従来のアウターロータ形の風力用永久磁石式発電機の構成を示す縦断面図、図6は前記アウターロータ形の風力用永久磁石式発電機の要部構成を拡大して示す縦断面図である。
【0011】
図5及び図6に示すように、本アウターロータ形風力用永久磁石式発電機(以下、単に発電機とも称する)は、アウターロータである回転子1と、固定子4とを有している。
【0012】
回転子1は、円筒状の回転子フレーム2と、回転子フレーム2の内周面に取り付けられた複数の永久磁石3とを有して成るものであり、固定子4の外周を囲むように配設されている。即ち、回転子1はアウターロータとして配置されている。また、回転子フレーム2におけるアキシャル方向(回転軸方向)(図5及び図6における中心軸12の方向)の両端部2a,2bには、円板状の回転子フレーム5,6の外周部5a,6aがそれぞれ固定されている。また、回転子フレーム5,6の内周部5b,6bは、アキシャル方向の両側に配設された軸受支持フレーム7,8にそれぞれ固定されている。
【0013】
発電機中央部には円筒状のサポートフレーム9が配設されており、このサポートフレーム9におけるアキシャル方向の両端部9a,9bと、軸受支持フレーム7,8との間には、軸受10,11がそれぞれ介設されている。従って、回転子1は、軸受10,11を介してサポートフレーム9に回転可能に支持され、中心軸12を中心にして回転することができる。サポートフレーム9は、ナセル側の支持フレーム22に固定されている。また、回転子1の内周側の空間は、回転子フレーム2と、回転子フレーム5,6と、軸受支持フレーム7,8と、サポートフレーム9によって密閉されている。
【0014】
軸受支持フレーム7には、ブレード支持フレーム13を介してブレード支持フレーム14が接続されている。ブレード支持フレーム14は円筒状のフレーム14aの部分と前面のフレーム14bの部分とを有してなるものであり、円筒状のフレーム14aの外周面に複数のブレード(風車)15が固定されている。従って、風力により、ブレード15とともに回転子1が回転駆動される。
【0015】
固定子4は鋼板を積層して成る固定子鉄心16と、固定子巻線17とを有して成るものであり、回転子1の内周側に配設されている。即ち、固定子4はステータとして配置されている。また、回転子1の内周と固定子4の外周との間には、エアーギャップ26が設けられている。固定子鉄心16は、内側のヨーク部16aと、ヨーク部16aから外側へ突出するように形成された複数のティース部16bとを有して成るものである。固定子巻線17は、固定子鉄心16のティース部16bに巻回され、円周方向(回転子1の回転方向)において隣接するティース部16bの間のスロット(溝)内に収容され、且つ、固定子巻線端部(コイルエンド)17a,17bが、固定子鉄心16(スロット)からアキシャル方向の両側に出ている。
【0016】
固定子4(固定子鉄心16)の内周面には、アキシャル方向に離間して配設された固定子用固定フレーム20,21の一方の端部20a,21aが固定されている。固定子用固定フレーム20,21の他方の端部20b,21bは、円板状のサポートフレーム18,19の外周部18a,19aに固定されている。サポートフレーム18,19は、アキシャル方向に離間した状態でサポートフレーム9の外周面に突設されている。従って、固定子4は、固定子用固定フレーム20,21及びサポートフレーム18,19を介して、サポートフレーム9に支持されている。
【0017】
そして、この発電機には、発電機内に設けられた回転ファン23を有して成る空気冷却装置と、発電機内に設けられた熱交換器24を有して成る液体冷却装置とが装備されている。回転ファン23及び熱交換器24は、固定子4の内周側で且つサポートフレーム18,19の間において、アキシャル方向に隣接した状態で配置されている。回転ファン23は、電動機(図示省略)で羽根23aを回転駆動することにより、発電機内の空気(冷却風25)を、アキシャル方向に吹き出すものである。
【0018】
従って、図5及び図6に点線の矢印で示すように、本発電機では、回転ファン23が作動すると、回転ファン23によって吹き出された冷却風(発電機内の空気)25が、発電機内で循環し、且つ、この冷却風25が熱交換器24において冷却水27と熱交換して冷却されることにより、固定子4及び回転子1が冷却される。
【0019】
詳述すると、回転ファン23によって吹き出された冷却風25は、まず、熱交換器24を流通するが、このときに熱交換器24において冷却水27と熱交換をすることにより、冷却される。即ち、図中に二点鎖線の矢印で示すように冷却水供給装置(図示省略)から熱交換器24へ冷却水27が供給され、この冷却水27と冷却風25とが熱交換器24で熱交換することにより、冷却水27によって冷却風25が冷却される。また、熱交換後の冷却水27は、図中に二点鎖線の矢印で示すように熱交換器24から排出され、前記冷却水供給装置で冷却された後、再び熱交換器24へ供給される(即ち冷却水27は熱交換器24と冷却水供給装置との間で循環する)。
【0020】
熱交換器24で冷却された冷却風25は、サポートフレーム18に形成されている通風口18aを流通した後、コイルエンド17aへと流れ、ここでコイルエンド17aを冷却する。その後、冷却風25は、エアーギャップ26へ流入して、エアーギャップ26をアキシャル方向に流通し、このときに固定子4(固定子鉄心16)及び回転子1を冷却した後、エアーギャップ26から流出する。エアーギャップ26から流出した冷却風25は、コイルエンド17bへと流れ、ここでコイルエンド17bを冷却した後、サポートフレーム19に形成されている通風口19bを流通して、回転ファン23へと戻る。その後、回転ファン23へ戻った冷却風25(即ち固定子4や回転子1を冷却して温まった冷却風25)が、回転ファン23により再度吹き出されて熱交換器24で冷却される。以後、同様に、上記のような冷却風25の循環が繰り返される。
【0021】
かくして、固定子4及び回転子1の発熱が、発電機内を循環する冷却風25へ伝わり、更に熱交換器24において冷却風25から冷却水27へと伝わり、この冷却水27によって発電機外へ放出される。
【0022】
なお、アウターロータ形の永久磁石式発電機において、回転ファンと熱交換器とを用いた冷却装置が装備された構成が開示されている先行技術文献としては、下記の特許文献1,2がある。特許文献1では、上記と同様に冷却風を循環させている。特許文献2では、固定子鉄心に冷却チャンネル(ダクト)を形成し、この冷却チャンネルにも冷却風を流すことにより、より効果的に固定子を冷却するようにしている。
また、インナーロータ形の風力用永久磁石式発電機における冷却方式が開示されている先行技術文献としては、下記の特許文献3がある。特許文献3には、アウターステータとしての複数の固定子を、アキシャル方向に並べ且つ離間して配置し、インナーロータである永久磁石式回転子と一体のラジアルファンによって、隣接するコイルエンドの間の隙間へ冷却風を流すことにより、コイルエンドも冷却する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2010−110206号公報
【特許文献2】特開2010−226947号公報
【特許文献3】特許第4299734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
図5及び図6に示すような従来の冷却方式では、大型の(鉄心長の長い)アウターロータ形風力用永久磁石式発電機に対しては、その固定子や回転子を十分に冷却することが難しい。つまり、図5及び図6に示すようなアウターロータ形風力用永久磁石式発電機において、その大きさが大きくなると、固定子鉄心16の鉄心長(アキシャル方向の長さ)が長くなるため、エアーギャップ26の長さ(アキシャル方向の長さ)も長くなる。そして、エアーギャップ26はギャップ長(径方向の幅)が小さいため、エアーギャップ26の長さが長くなると、回転ファン23により発電機内で循環する冷却風25の圧力損失が増大するため、回転ファン23のモータ容量を大きくする必要があった。
【0025】
例えば、定格出力が2000kWを超えるアウターロータ形風力用永久磁石式発電機は、数メートルの回転子直径と、数メートルの鉄心長を有する大型の発電機となるが、そのエアーギャップ26のギャップ長は僅か数mmである。これは、磁気回路としての効率をよくするには、エアーギャップ26のギャップ長が可能な限り0に近いことが望ましいことから、発電機の軸受10,11と固定子4と回転子1の機械的精度を考慮して可能な限り、エアーギャップ26のギャップ長を小さな値に設計するためである。従って、回転ファン23によって発電機内を循環する冷却風25の圧力損失は、ギャップ長が小さいエアーギャップ26の長さ、即ち鉄心長によってほぼ決まるため、鉄心長が長くなると、増大する。このため、固定子4や回転子1では、冷却風25がエアーギャップ26に流入する側と、冷却風25がエアーギャップ26から流出する側とで、大きな温度差が生じる。
【0026】
上記のような問題は、特許文献1の発電機においても生じ得るものである。また、特許文献2では固定子鉄心に冷却チャンネル(ダクト)を形成して冷却効果を高めてはいるが、これは固定子鉄心を介して間接的に固定子巻線を冷却する方式である。従って、固定子巻線を直接冷却することができるようにして、更に冷却性能を向上させることにより、より確実に上記のような問題点の解決を図ることができるようにすること望ましい。
また、大型の風力用永久磁石式発電機に対しては、固定子の故障に対する発電出力の冗長性の向上や、据付現地への発電機の運搬性の向上といった課題を解決することも望まれているが、このような課題についても、図5及び図6に示す発電機構造や特許文献1,2に示されている発電機構造では対応することができない。
また、特許文献3に開示されているのはインナーロータ形の風力用永久磁石式発電機であり、アウターロータ形のものは構造が異なる。
【0027】
従って、本発明は上記の事情に鑑み、固定子や回転子に対する冷却性能を向上させることができ、更には発電出力の冗長性や運搬性の向上を図ることも可能なアウターロータ形の回転電機(発電機又は電動機)を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記課題を解決する第1発明のアウターロータ形回転電機は、回転軸方向に並べて配設され、且つ、隣接する固定子巻線端部の間に隙間が設けられている複数の固定子と、
前記複数の固定子の外周を囲むように配設され、且つ、前記複数の固定子との間にエアーギャップが設けられている回転子と、
回転電機内に設けられた回転ファンを有し、前記回転ファンによって送風する冷却風が、前記隙間及び前記エアーギャップを流通して前記回転ファンに戻るように循環することにより、前記冷却風によって前記複数の固定子及び前記回転子を冷却する第1の冷却手段と、
回転電機内に設けられた熱交換器を有し、前記熱交換器において前記冷却風と冷却液体との熱交換をすることにより、前記冷却液体によって前記冷却風を冷却する第2の冷却手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0029】
また、第2発明のアウターロータ形回転電機は、第1発明のアウターロータ形回転電機において、
前記回転ファンは、前記固定子の内周側の空間に配設され、径方向へ前記冷却風を吹き出すことを特徴とする。
【0030】
また、第3発明のアウターロータ形回転電機は、第2発明のアウターロータ形回転電機において、
前記回転ファンは、複数台が、円周上に等配に配置されており、
前記熱交換器は、前記回転ファンの台数と同じ複数台が、各回転ファンに対応して、円周上に等配に配置されていること、
を特徴とする。
【0031】
また、第4発明のアウターロータ形回転電機は、第3発明のアウターロータ形回転電機において、
各熱交換器は、各回転ファンと前記隙間との間に配置されていることを特徴とする。
【0032】
また、第5発明のアウターロータ形回転電機は、第2発明のアウターロータ形回転電機において、
前記回転ファンは、複数台が、円周上に等配に配置されており、
前記熱交換器は、円環状のものであり、前記複数台の回転ファンの周囲を囲むように配置されていること、
を特徴とする。
【0033】
また、第6発明のアウターロータ形回転電機は、第1〜第5発明の何れか1つのアウターロータ形回転電機において、
前記冷却液体は、水、もしくは不凍液、もしくは水と不凍液の混合液を用いることを特徴とする。
【0034】
また、第7発明のアウターロータ形回転電機は、第1〜第6発明の何れか1つのアウターロータ形回転電機であって、
前記回転子にブレードが接続され、風力によって前記ブレードとともに前記回転子が回転することにより発電するアウターロータ形風力用発電機であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
第1発明のアウターロータ形回転電機によれば、回転軸方向に並べて配設され、且つ、隣接する固定子巻線端部の間に隙間が設けられている複数の固定子と、前記複数の固定子の外周を囲むように配設され、且つ、前記複数の固定子との間にエアーギャップが設けられている回転子と、回転電機内に設けられた回転ファンを有し、前記回転ファンによって送風する冷却風が、前記隙間及び前記エアーギャップを流通して前記回転ファンに戻るように循環することにより、前記冷却風によって前記複数の固定子及び前記回転子を冷却する第1の冷却手段と、回転電機内に設けられた熱交換器を有し、前記熱交換器において前記冷却風と冷却液体との熱交換をすることにより、前記冷却液体によって前記冷却風を冷却する第2の冷却手段とを備えたことを特徴としているため、次のような効果を得られる。
【0036】
(1) ステータが複数の固定子から成る構造(即ちステータを複数の固定子に分割した構造)であるため、従来のようにステータが一体の固定子から成る場合に比べて、各固定子ごとのエアーギャップの長さを短くすることができる。即ち、固定子と回転子の間の通風距離が短くなる。従って、固定子巻線端部間の隙間及びエアーギャップを流通して回転ファンに戻るように循環する冷却風の圧力損失を、低減することができ、固定子内部での冷却の不均一を改善することもできることから、固定子内部の温度差も改善することができる。更には、冷却風が固定子巻線端部間の隙間を流通することにより、固定子巻線端部を直接冷却することもできる。このため、固定子や回転子に対する冷却能力が大幅に向上する。例えば特許文献2のように冷却チャンネルを設けて間接的に固定子巻線を冷却する冷却方式と比べても、冷却性能が高い。
また、冷却風の圧力損失が低減することによって、回転ファン用のモータ容量を小さくすることもできる。或いは、回転ファン用のモータ容量を従来と同じに設計するならば、冷却性能が向上するため、例えば永久磁石式発電機においては、永久磁石が減磁する温度に対して余裕が生じ、従来よりも発電機本体の高出力な運転が可能になり、発電機の限界出力を従来と同じ設計とする場合には発電機の大きさを従来よりも小型にすることができる。
(2) ステータが複数の固定子から成る構造であることから、それぞれの固定子が独立して発電するため、いずれかの固定子が故障した場合でも、故障していない他の固定子によって発電運転を継続することができる。このため、固定子の故障に対する冗長性が向上する。
(3) ステータが複数の固定子から成る構造であることから、回転電機を据付現地へ運搬して現地で組み立てる際には、複数の固定子を分離して運搬することができるため、据付現地への発電機の運搬性が向上する。
【0037】
第2発明のアウターロータ形回転電機によれば、第1発明のアウターロータ形回転電機において、前記回転ファンは、前記固定子の内周側の空間に配設され、径方向へ前記冷却風を吹き出すことを特徴としているため、上記第1発明と同様の効果が得られ、しかも、冷却風を、より確実に固定子巻線端部の間の隙間に流すことができる。
【0038】
第3発明のアウターロータ形回転電機によれば、第2発明のアウターロータ形回転電機において、前記回転ファンは、複数台が、円周上に等配に配置されており、前記熱交換器は、前記回転ファンの台数と同じ複数台が、各回転ファンに対応して、円周上に等配に配置されていることを特徴としているため、上記第2発明と同様の効果が得られ、しかも、より確実に固定子及び回転子を均一に冷却することができる。
【0039】
第4発明のアウターロータ形回転電機によれば、第3発明のアウターロータ形回転電機において、各熱交換器は、各回転ファンと前記隙間との間に配置されていることを特徴としているため、上記第3発明と同様の効果が得られ、しかも、熱交換器において冷却した冷却風が固定子巻線端部を直接的に冷却することができる。
【0040】
第5発明のアウターロータ形回転電機によれば、第2発明のアウターロータ形回転電機において、前記回転ファンは、複数台が、円周上に等配に配置されており、前記熱交換器は、円環状のものであり、前記複数台の回転ファンの周囲を囲むように配置されていることを特徴としているため、上記第2発明と同様の効果が得られ、しかも、より確実に固定子及び回転子を均一に冷却することができ、且つ、より確実に熱交換器において冷却風を冷却することができる。
【0041】
第6発明のアウターロータ形回転電機によれば、第1〜第5発明の何れか1つのアウターロータ形回転電機において、前記冷却液体は、水、もしくは不凍液、もしくは水と不凍液の混合液を用いることを特徴としているため、より効果的に冷却液体によって冷却風を冷却することができる。
【0042】
第7発明のアウターロータ形回転電機によれば、第1〜第6発明の何れか1つのアウターロータ形回転電機であって、前記回転子にブレードが接続され、風力によって前記ブレードとともに前記回転子が回転することにより発電するアウターロータ形風力用発電機であることを特徴としているため、上記のような第1〜第6発明の効果が得られるアウターロータ形の風力用発電機を実現することができ、特に大型(鉄心長の長い)のアウターロータ形風力用永久磁石式発電機などに適用して有効なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態例に係るアウターロータ形風力用永久磁石式発電機の構成を示す縦断面図(図3のB−B線矢視断面図)である。
【図2】前記アウターロータ形風力用永久磁石式発電機の要部構成を拡大して示す縦断面図である。
【図3】前記アウターロータ形風力用永久磁石式発電機の構成を示す横断面図(図1のA−A線矢視断面拡大図)である。
【図4】本発明の実施の形態例に係るアウターロータ形風力用永久磁石式発電機の構成を示す横断面図(熱交換器の他の構成例を示す図)である。
【図5】従来のアウターロータ形風力用永久磁石式発電機の構成を示す縦断面図である。
【図6】前記アウターロータ形風力用永久磁石式発電機の要部構成を拡大して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づき詳細に説明する。
【0045】
<構成>
図1〜図3に示すように、本発明の実施の形態例に係るアウターロータ形風力用永久磁石式発電機(以下、単に発電機とも称する)は、回転子31と、ステータである第1の固定子32及び第2の固定子33とを有している。即ち、本実施の形態例では、ステータが2つの固定子32,33から成る構造(即ちステータを2つの固定子32,33に分割した構造)になっていることを特徴としている。
【0046】
詳述すると、回転子31は、円筒状の回転子フレーム34と、回転子フレーム34の内周面に取り付けられた複数の永久磁石35とを有して成るものである。即ち、回転子31の永久磁石35はラジアルギャップ形のアウターロータとして配置されている。なお、永久磁石35は、2つの固定子32,33と対向した回転子31の内周面の位置にそれぞれ配置されている。
【0047】
回転子フレーム34におけるアキシャル方向(回転軸方向)(図1及び図2における中心軸43の方向)の両端部34a,34bには、円板状の回転子フレーム36,37の外周部36a,37aがそれぞれ固定されている。また、回転子フレーム36,37の内周部36b,37bは、アキシャル方向の両側に配設された軸受支持フレーム38,39にそれぞれ固定されている。
【0048】
発電機中央部には円筒状のサポートフレーム40が配設されており、このサポートフレーム40の両端部40a,40bと、軸受支持フレーム38,39との間には、軸受41,42がそれぞれ介設されている。従って、回転子31は、軸受41,42を介してサポートフレーム40に回転可能に支持され、中心軸43を中心にして回転することができる。サポートフレーム40は、ナセル側の支持フレーム44に固定されている。また、回転子31の内周側の空間は、回転子フレーム34と、回転子フレーム36,37と、軸受支持フレーム38,39と、サポートフレーム40によって密閉されている。
【0049】
軸受支持フレーム38には、ブレード支持フレーム45を介してブレード支持フレーム46が接続されている。ブレード支持フレーム46は円筒状のフレーム46aの部分と前面のフレーム46bの部分とを有してなるものであり、円筒状のフレーム46aの外周面に複数のブレード47が固定されている。従って、風力により、ブレード47とともに回転子31が回転駆動される。
【0050】
第1の固定子32は鋼板を積層して成る固定子鉄心48と、銅線を巻いた固定子巻線49とを有して成るものである。また、回転子31の内周と固定子32の外周との間には、エアーギャップ50Aが設けられている。固定子鉄心48は、内側のヨーク部48aと、ヨーク部48aから外側へ突出するように形成された複数のティース部48bとを有して成るものである。固定子巻線49は、固定子鉄心48のティース部48bに巻回され、円周方向(回転子31の回転方向)において隣接するティース部48bの間のスロット(溝)48c(図3参照)内に収容され、且つ、コイルエンド49a,49bが、固定子鉄心48の両側に出ている。なお、図3では固定子巻線49の記載を省略している。
【0051】
第2の固定子33も第1の固定子32と同様の構造である。即ち、第2の固定子33は鋼板を積層して成る固定子鉄心51と、固定子巻線52とを有して成るものである。また、回転子31の内周と固定子33の外周との間には、エアーギャップ50Bが設けられている。固定子鉄心51は、内側のヨーク部51aと、ヨーク部51aから外側へ突出するように形成された複数のティース部51bとを有して成るものである。固定子巻線52は、固定子鉄心51のティース部51bに巻回され、円周方向(回転子31の回転方向)において隣接するティース部48bの間のスロット(溝)内に収容され、且つ、コイルエンド52a,52bが、固定子鉄心51の両側に出ている。
【0052】
そして、2つの固定子32,33はアキシャル方向に並べて配設されており、2つのエアーギャップ50A,50Bを冷却風が通過するため、全体の圧力損失は、従来のものに比べて非常に小さくなり、冷却性能が向上する。
しかも、アキシャル方向に隣接する固定子32のコイルエンド49aと、固定子33のコイルエンド52bとの間には、隙間53が設けられている。従って、隙間53(コイルエンド49a,52b間)での発電機内で循環する冷却風60に対する圧力損失が、非常に小さくなる。
【0053】
固定子32,33(固定子鉄心48,51)の内周面には、アキシャル方向に離間して配設された固定子用固定フレーム54,55の一方の端部54a,55aが固定されている。固定子用固定フレーム54,55の他方の端部54b,55bは、円板状のサポートフレーム56,57の外周部56a,57aに固定されている。サポートフレーム56,57は、アキシャル方向に離間した状態でサポートフレーム40の外周面に突設されている。従って、固定子32,33は、固定子用固定フレーム54,55及びサポートフレーム56,57を介して、サポートフレーム40に支持されている。
【0054】
また、この発電機には、回転ファン58を有して成る空気冷却装置(第1の冷却手段)と、熱交換器59を有して成る液体冷却装置(第2の冷却手段)とが装備されている。
【0055】
回転ファン58及び熱交換器59は、固定子32,33の内側の空間に配設され、固定子用固定フレーム54,55及びサポートフレーム56,57の間に位置している。回転ファン58は、電動機(図示省略)で羽根58aを回転駆動することにより、発電機内の空気(冷却風60)を、スラスト方向(固定子32,33の半径方向)へ(コイルエンド49a,52b間の隙間53に向かって)、吹き出すものである。熱交換器59は、コイルエンド49a,52b間の隙間53と、回転ファン58との間に配設されている。熱交換器59及び回転ファン58は、固定子用固定フレーム54,55に支持(固定)されている。
【0056】
また、図3に示すように、回転ファン58は、複数台が、円周方向に等間隔に配設されている(即ち図示例では6台が、円周上に6等配に配置さている)。熱交換器59は、複数台の回転ファン58のそれぞれに対応して、回転ファン58の台数と同じ複数台が、円周方向に等分割配置されている。即ち、図示例では、6台の熱交換器59が、6台の回転ファン58のそれぞれに対応して、6等配に配置されており、正六角形状を成している。
【0057】
なお、これに限定するものではなく、例えば図4に示すように、複数台の円弧状の熱交換器59を、円環状を成すように配設してもよい。また、この場合、円環状の熱交換器59は一体のものであってもよい。更に、実施例では回転ファン58の台数を6台で説明したが、この台数に限定されないことは勿論である。
【0058】
次に動作について説明する。図2(及び図1)に点線の矢印で示すように、本発電機では、回転ファン58が作動すると、回転ファン58によって吹き出される冷却風(発電機内の空気)60が、発電機内で循環し、且つ、この冷却風60が熱交換器59において冷却液体61と熱交換して冷却されることにより、固定子32,33及び回転子31が冷却される。
【0059】
詳述すると、回転ファン58によって吹き出された冷却風60は、まず、熱交換器59を流通するが、このときに熱交換器59において冷却液体61と熱交換をすることにより、冷却される。即ち、図中に二点鎖線の矢印で示すように冷却水供給装置(図示省略)から熱交換器59へ冷却液体61が供給され、この冷却液体61と冷却風60とが熱交換器59で熱交換することにより、冷却液体61によって冷却風60が冷却される。また、熱交換後の冷却液体61は、図中に二点鎖線の矢印で示すように熱交換器59から排出され、前記冷却水供給装置で冷却された後、再び熱交換器59へ供給される(即ち冷却水61は熱交換器59と冷却水供給装置との間で循環する)。
なお、冷却液体61として好ましくは、比熱の高い水、不凍液、もしくは水と不凍液の混合液を用いた方がより冷却効果が大きい。
【0060】
そして、熱交換器59で冷却された冷却風60は、コイルエンド49a,52b間の隙間53を流通する。このとき、冷却風60により、コイルエンド49a,52bが冷却される。その後、冷却風60は、アキシャル方向の両側(固定子32側と固定子33側)に分かれて、固定子32側のエアーギャップ50Aと、固定子33側のエアーギャップ50Bとにそれぞれ流入する。
【0061】
エアーギャップ50Aへ流入した冷却風60は、エアーギャップ50Aをアキシャル方向へ流通し(アキシャル方向の一端側へ向かって流れ)、このときに固定子32(固定子鉄心48)及び回転子31を冷却した後、エアーギャップ50Aから流出する。エアーギャップ50Aから流出した冷却風60は、コイルエンド49bへと流れ、ここでコイルエンド49bを冷却した後、サポートフレーム56に形成された通風口56bを流通して、回転ファン58へと戻る。
【0062】
一方、エアーギャップ50Bへ流入した冷却風60は、エアーギャップ50Bを回転軸方向へ流通し(アキシャル方向の他端側へ向かって流れ)、このときに固定子33(固定子鉄心51)及び回転子31を冷却した後、エアーギャップ50Bから流出する。エアーギャップ50Bから流出した冷却風60は、コイルエンド52aへと流れ、ここでコイルエンド52aを冷却した後、サポートフレーム57に形成された通風口57bを流通して、回転ファン58へと戻る。
【0063】
その後、この固定子32側を循環して回転ファン58へ戻った冷却風60(即ち固定子32及び回転子31を冷却して温まった冷却風60)と、固定子33側を循環して回転ファン58へ戻った冷却風60(即ち固定子33及び回転子31を冷却して温まった冷却風60)とが、ともに回転ファン58により再度吹き出されて熱交換器59で冷却される。以後、同様に、上記のような固定子32側における冷却風60の循環と、固定子33側における冷却風60の循環とが、繰り返される。
【0064】
かくして、固定子32,33及び回転子31の発熱が、発電機内を循環する冷却風60へ伝わり、更に熱交換器59において冷却風60から冷却水61へと伝わり、この冷却水61Bによって発電機外へ放出される。
【0065】
<作用効果>
以上のように、本実施の形態例のアウターロータ形風力用永久磁石式発電機によれば、アキシャル方向に並べて配設され、且つ、隣接するコイルエンド49a,52bの間に隙間53が設けられている2つの固定子32,33と、2つの固定子32,33の外周を囲むように配設され、且つ、2つの固定子32,33との間にエアーギャップ50A,50Bが設けられている回転子31と、発電機内に設けられた回転ファン58を有し、この回転ファン58によって送風する冷却風60が、隙間53及びエアーギャップ50A,50Bを流通して回転ファン58に戻るように循環することにより、この冷却風60によって2つの固定子32,33及び回転子31を冷却する空気冷却装置(第1の冷却手段)と、発電機内に設けられた熱交換器59を有し、この熱交換器59において冷却風60と冷却液体61との熱交換をすることにより、冷却液体61によって冷却風60を冷却する液体冷却装置(第2の冷却手段)とを備えたことを特徴としているため、次のような効果を得られる。
【0066】
(1) ステータが2つの固定子32,33から成る構造(即ちステータを2つの固定子32,33に分割した構造)であるため、従来のようにステータが一体の固定子から成る場合に比べて、各固定子32,33ごとのエアーギャップ50A,50Bの長さを短くすることができる(従来の約半分になる)。即ち、固定子32,33と回転子31の間の通風距離が短くなる。従って、コイルエンド49a,52b間の隙間53及びエアーギャップ50A,50Bを流通して回転ファン58に戻るように循環する冷却風60の圧力損失を、低減することができ(従来の半分近くに低減可能である)、固定子32,33内部での冷却の不均一を改善することもできることから、固定子32,33内部の温度差も改善することができる。更には、冷却風60がコイルエンド49a,52b間の隙間53を流通することにより、コイルエンド49a,52bを直接冷却することもできる。このため、固定子32,33や回転子31に対する冷却能力が大幅に向上する。例えば特許文献2のように冷却チャンネルを設けて間接的に固定子巻線を冷却する冷却方式と比べても、冷却性能が高い。
また、冷却風60の圧力損失が低減することによって、回転ファン用のモータ容量を従来よりも小さくすることもできる。或いは、回転ファン用のモータ容量を従来と同じに設計するならば、冷却性能が向上するため、永久磁石が減磁する温度に対して余裕が生じ、従来よりも発電機本体の高出力な運転が可能になり、発電機の限界出力を従来と同じ設計とする場合には発電機の大きさを従来よりも小型にすることができる。
(2) ステータが2つの固定子32,33から成る構造であることから、それぞれの固定子32,33が独立して発電するため、例えば一方の固定子32が故障した場合でも、故障していない他方の固定子33によって発電運転を継続することができる。このため、固定子の故障に対する冗長性が向上する。
(3) ステータが2つの固定子32,33から成る構造であることから、発電機を据付現地へ運搬して現地で組み立てる際には、2つの固定子32,33を分離して運搬することができるため、据付現地への発電機の運搬性が向上する。例えば、定格出力が2000kWを超えるような大型の風力用永久磁石式発電機では、発電機全体の重量が100トン近くにもなる。従って、発電機の組み立てや運搬を考えると、固定子(発電機本体)を隙間53の部分で分割して製作・組み立てすることが可能であることから、工場で発電機を部分的に組み立て、この組み立てた部分を据付現地に運搬して据付現地で最終的な組み立てを行うことが可能であることが必要な大型発電機に対しては、固定子の分割構造が有利である。
【0067】
(4) 本実施の形態例のアウターロータ形風力用永久磁石式発電機によれば、回転ファン58は、固定子32,33の内周側の空間に配設され、径方向へ冷却風60を吹き出すことを特徴としているため、冷却風60を、より確実に固定子巻線端部49a,52b間の隙間53に流すことができる。
【0068】
(5) 本実施の形態例のアウターロータ形風力用永久磁石式発電機によれば、回転ファン58は、複数台が、円周上に等配(実施例では6等配)に配置されており、熱交換器59は、回転ファン58の台数と同じ複数台が、各回転ファン58に対応して、円周上に等配(実施例では6等配)に配置されていることを特徴としているため、より確実に固定子32,33及び回転子31を均一に冷却することができる。
【0069】
(6) 本実施の形態例のアウターロータ形風力用永久磁石式発電機によれば、各熱交換器59は、各回転ファン58と隙間53との間に配置されていることを特徴としているため、熱交換器59において冷却した冷却風60がコイルエンド49a,52bを直接的に冷却することができる。
【0070】
(7) 本実施の形態例のアウターロータ形風力用永久磁石式発電機によれば、回転ファン58は、複数台が、円周上に等配(図示例では6等配)に配置されており、熱交換器59は、円環状のものであり、複数台の回転ファン58の周囲を囲むように配置されていることを特徴としているため、より確実に固定子32,33及び回転子31を均一に冷却することができ、且つ、より確実に熱交換器59において冷却風60を冷却することができる。
【0071】
(8) 本実施の形態例のアウターロータ形風力用永久磁石式発電機によれば、冷却液体を用いることを特徴としているため、冷却気体を用いる場合に比べて、より確実に冷却風60を冷却することができる。
【0072】
なお、冷却風60が隙間53及びエアーギャップ50A,50Bを流れて循環すればよいため、冷却風60の流れる方向(循環する方向)は、必ずしも図示例の方向に限定するものではなく、図示例と逆でもよい。また、回転ファン58は、必ずしも1台に限定するものではなく、図示は省略するが、例えば2台の回転ファン58をアキシャル方向の両側(固定子32側と固定子33側)にそれぞれ配置することにより、これらの回転ファン58によって冷却風60が、図示例と同様に固定子32側と固定子33側のそれぞれにおいて循環するようにしてもよい。
【0073】
また、上記では回転ファン58及び熱交換器59を6等配に配置した例を示したが、これに限定するものではなく、等配に配置される回転ファン58及び熱交換器59の台数が多くなるほど冷却の均一性が向上することから、回転ファン58及び熱交換器59を、円周上に7等配以上(7等配、8等配等)に配置してもよく、逆に円周上に5等配以下(5等配、4等配等)に減らして配置してもよい。冷却の均一性を考慮して、複数台の回転ファン58及び熱交換器59を、円周上に等配に配置することが重要である。
【0074】
また、上記ではステータを固定子32と固定子33に2分割した場合について説明したが、これに限定するものではなく、ステータを3分割以上(3分割、4分割、5分割等)の多数分割にしてもよく、発電機が大型になればなるほど、ステータの分割数を多くした方が、冷却性能の向上やその他の課題に対して効果的である。
【0075】
また、本発明は、特に風力用の永久磁石式発電機に適用して有用なものであるが、必ずしもこれに限定するものではなく、風力用以外の用途に利用される永久磁石式発電機にも適用することができる。更に、本発明は、永久磁石式の発電機に限定するものでもなく、回転子鉄心に回転子巻線を設けた構成の回転子を有する発電機にも適用することができる。また、本発明は、発電機に限定するものでもなく、電動機に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明はアウターロータ形の回転電機(電動機又は発電機)に関するものであり、特に、大型のアウターロータ形回転電機(例えば大型のアウターロータ形風力用永久磁石式発電機)などにおいて、その固定子や回転子の冷却効率を向上させる場合に適用して有用なものである。
【符号の説明】
【0077】
31 回転子(アウターロータ)
32,33 固定子(ステータ)
34 回転子フレーム
34a,34b 回転子フレームの端部
35 永久磁石
36 回転子フレーム
36a 回転子フレームの外周部
36b 回転子フレームの内周部
37 回転子フレーム
37a 回転子フレームの外周部
37b 回転子フレームの内周部
38,39 軸受支持フレーム
40 サポートフレーム
40a,40b サポートフレームの端部
41,42 軸受
43 中心軸
44 ナセル側の支持フレーム
45,46 ブレード支持フレーム
46a 円筒状のフレーム
46b 前面のフレーム
47 ブレード
48 固定子鉄心
48a 固定子鉄心のヨーク部
48b 固定子鉄心のティース部
48c 固定子鉄心のスロット
49 固定子巻線
49a,49b 固定子巻線端部(コイルエンド)
50A,50B エアーギャップ
51 固定子鉄心
51a 固定子鉄心のヨーク部
51b 固定子鉄心のティース部
52 固定子巻線
52a,52b 固定子巻線端部(コイルエンド)
53 隣接するコイルエンド間の隙間
54 固定子用固定フレーム
54a,54b 固定子用固定フレームの端部
55 固定子用固定フレーム
55a,55b 固定子用固定フレームの端部
56 サポートフレーム
56a サポートフレームの外周部
56b サポートフレームの通風口
57 サポートフレーム
57a サポートフレームの外周部
57b サポートフレームの通風口
58 回転ファン
58a 回転ファンの羽根
59 熱交換器
60 冷却風
61 冷却液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸方向に並べて配設され、且つ、隣接する固定子巻線端部の間に隙間が設けられている複数の固定子と、
前記複数の固定子の外周を囲むように配設され、且つ、前記複数の固定子との間にエアーギャップが設けられている回転子と、
回転電機内に設けられた回転ファンを有し、前記回転ファンによって送風する冷却風が、前記隙間及び前記エアーギャップを流通して前記回転ファンに戻るように循環することにより、前記冷却風によって前記複数の固定子及び前記回転子を冷却する第1の冷却手段と、
回転電機内に設けられた熱交換器を有し、前記熱交換器において前記冷却風と冷却液体との熱交換をすることにより、前記冷却液体によって前記冷却風を冷却する第2の冷却手段と、
を備えたことを特徴とするアウターロータ形回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載のアウターロータ形回転電機において、
前記回転ファンは、前記固定子の内周側の空間に配設され、径方向へ前記冷却風を吹き出すことを特徴とするアウターロータ形回転電機。
【請求項3】
請求項2に記載のアウターロータ形回転電機において、
前記回転ファンは、複数台が、円周上に等配に配置されており、
前記熱交換器は、前記回転ファンの台数と同じ複数台が、各回転ファンに対応して、円周上に等配に配置されていること、
を特徴とするアウターロータ形回転電機。
【請求項4】
請求項3に記載のアウターロータ形回転電機において、
各熱交換器は、各回転ファンと前記隙間との間に配置されていることを特徴とするアウターロータ形回転電機。
【請求項5】
請求項2に記載のアウターロータ形回転電機において、
前記回転ファンは、複数台が、円周上に等配に配置されており、
前記熱交換器は、円環状のものであり、前記複数台の回転ファンの周囲を囲むように配置されていること、
を特徴とするアウターロータ形回転電機。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載のアウターロータ形回転電機において、
前記冷却液体は、水、もしくは不凍液、もしくは水と不凍液の混合液を用いることを特徴とするアウターロータ形回転電機。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載のアウターロータ形回転電機であって、
前記回転子にブレードが接続され、風力によって前記ブレードとともに前記回転子が回転することにより発電するアウターロータ形風力用発電機であることを特徴とするアウターロータ形回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−196101(P2012−196101A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60017(P2011−60017)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】