説明

アクチュエータ、モータ制御システム、及びモータ制御方法

【課題】信頼性又はロバスト性を向上したアクチュエータ、モータ制御システム、及びモータ制御方法を提供する。
【解決手段】アクチュエータは、モータと、モータの回転角を検出する回転角センサと、モータの回転を所定の変位に変換する被駆動機構と、被駆動機構の変位を検出する位置センサと、モータを制御する制御装置と、を含み、制御装置は、正常時における回転角センサの回転角信号及び位置センサの変位信号の相対関係情報を記憶しており、変位信号を取得し、相対関係情報に基づいて回転角を推定した推定回転角信号を演算し、推定回転角信号に基づいてモータを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータで駆動するアクチュエータ、モータ制御システム、及びモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源であるモータからリンク又はギヤ等の機構へ回転を伝達し、動力を取り出す稼働部を変位させるアクチュエータがある。モータの回転角度を計測する回転角センサだけでは、リンク又はギヤ等の機構に生じるガタ、バッククラッシュ、撓み等があり、稼働部の変位を把握する正確さに限界がある。このため、アクチュエータは、位置センサを用いて稼働部の位置又は変位を検出している(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−202136号公報
【特許文献2】特開平8−006644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、モータ制御に反映させる撓みの変位を推力センサから得た推力と、送り駆動機構の剛性係数Kから演算する必要がある。この剛性係数Kは、機構毎のばらつきや経年変化の影響を受ける。このため、制御のロバスト性を高める要請がある。特許文献2では、補正トルク値の演算にモータの所定定数のパラメータを用いている。このため制御ループに所定のパラメータを用いた複雑な制御が必要となり、パラメータが変動するとロバスト性を高めることができない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、信頼性又はロバスト性を向上したアクチュエータ、モータ制御システム、及びモータ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し目的を達成するために、アクチュエータは、モータと、前記モータの回転角を検出する回転角センサと、前記モータの回転を所定の変位に変換する被駆動機構と、前記被駆動機構の変位を検出する位置センサと、前記モータを制御する制御装置と、を含み、前記制御装置は、正常時における前記回転角センサの回転角信号及び前記位置センサの変位信号の相対関係情報を記憶しており、前記変位信号を取得し、前記相対関係情報に基づいて回転角を推定した推定回転角信号を演算し、前記推定回転角信号に基づいて前記モータを制御することを特徴とする。
【0007】
これにより、回転角センサの回転角信号が取得できない場合、ガタ、バッククラッシュ、撓み等があっても、回転角センサを演算して推定し、モータの制御を継続することができる。その結果、アクチュエータは、回転角センサの回転角信号がなくても安定してモータを制御できる。
【0008】
本発明の望ましい態様として、前記制御装置は、前記相対関係情報の補正値を記憶しており、前記回転角信号が取得できない場合、前記補正値に基づいて前記変位信号から前記推定回転角信号を演算することが好ましい。これにより、回転角センサの回転角信号が取得できない場合、ガタ、バッククラッシュ、撓み等の影響を考慮した補正値を利用して変位信号から推定回転角信号を簡易に演算できる。
【0009】
本発明の望ましい態様として、前記回転角信号が取得できない場合、前記モータの回転方向を示す回転方向情報と前記相対関係情報とに基づいて、前記変位信号から前記推定回転角信号を演算することが好ましい。これにより、回転角センサの回転角信号が取得できない場合、ガタ、バッククラッシュ、撓み等の影響を相殺して変位信号から推定回転角信号を簡易に演算できる。
【0010】
本発明の望ましい態様として、前記被駆動機構は、変位する稼働部と、前記稼働部に前記モータの回転を変位に変換して伝達する機構部とを有し、前記位置センサは、前記稼働部又は前記機構部の位置を検出することが好ましい。これにより、アクチュエータは、回転角センサと異なる箇所に回転角センサと位置センサを有することになる。その結果、回転角センサからの回転角信号が取得できなくても位置センサを利用してアクチュエータが駆動できる。その結果、アクチュエータは信頼性又はロバスト性が向上する。
【0011】
本発明の望ましい態様として、前記制御装置は、前記回転角センサの前記回転角信号及び前記位置センサの前記変位信号が入力されることが好ましい。これにより、アクチュエータは、回転角センサの回転角信号と異なる種類である位置センサの変位信号を取得できるので、アクチュエータは信頼性又はロバスト性が向上する。
【0012】
本発明の望ましい態様として、前記制御装置は、演算した前記回転角信号及び前記変位信号の相関関係が、前記記憶手段に記憶する前記相対関係情報と異なる場合、異常と判断することが好ましい。これにより、回転角センサ及び位置センサが被駆動機構のフェールセンサとなり、アクチュエータは信頼性が向上する。
【0013】
本発明の望ましい態様として、被駆動機構がボールネジである位置制御装置に搭載されることが好ましい。これにより、信頼性の向上した位置制御装置が提供できる。
【0014】
本発明の望ましい態様として、前記アクチュエータを含む自動変速機であることが好ましい。これにより、信頼性の向上した自動変速機が提供できる。
【0015】
上述した課題を解決し目的を達成するために、モータ制御システムは、モータを制御するモータ制御信号を送出し、回転角センサから前記モータの回転角信号を取得し、位置センサから前記モータの回転に伴う変位信号を取得し、正常時の前記回転角信号及び前記変位信号の相対関係情報を記憶しており、前記回転角信号が取得できない場合、前記相対関係情報に基づいて、取得できる前記変位信号から推定した回転角である推定回転角信号を演算し、演算した前記推定回転角信号から前記モータ制御信号を演算することを特徴とする。
【0016】
これにより、回転角センサの回転角信号が取得できない場合、ガタ、バッククラッシュ、撓み等があっても、回転角センサを演算して推定し、モータの制御を継続することができる。その結果、アクチュエータは、回転角センサの回転角信号がなくても安定してモータを制御できる。
【0017】
本発明の望ましい態様として、前記相対関係情報の補正値を記憶しており、前記回転角信号が取得できない場合、前記補正値に基づいて、取得できる前記変位信号から前記推定回転角信号を演算することが好ましい。これにより、回転角センサの回転角信号が取得できない場合、ガタ、バッククラッシュ、撓み等の影響を考慮した補正値を利用して変位信号から推定回転角信号を簡易に演算できる。
【0018】
本発明の望ましい態様として、前記回転角信号が取得できない場合、前記相対関係情報と前記モータ制御信号のモータ回転方向に基づいて、取得できる前記変位信号から前記推定回転角信号を演算することが好ましい。これにより、回転角センサの回転角信号が取得できない場合、ガタ、バッククラッシュ、撓み等の影響を相殺して変位信号から推定回転角信号を簡易に演算できる。
【0019】
上述した課題を解決し目的を達成するために、モータ制御システムは、モータを制御するモータ制御信号を送出し、回転角センサから前記モータの回転角信号を取得し、位置センサから前記モータの回転に伴う変位信号を取得し、正常時の前記回転角信号及び前記変位信号の相対関係情報を記憶しており、前記回転角信号及び前記変位信号の相対関係が前記相対関係情報と異なる場合、異常と判断することを特徴とする。これにより、回転角センサ及び位置センサが被駆動機構のフェールセンサとなり、アクチュエータは信頼性が向上する。
【0020】
上述した課題を解決し目的を達成するために、モータ制御方法は、モータを制御するモータ制御信号を送出し、回転角センサから前記モータの回転角信号を取得し、位置センサから前記モータの回転に伴う変位信号を取得する信号取得ステップと、正常時の前記回転角信号及び前記変位信号の相対関係情報を記憶する記憶ステップと、前記回転角信号が取得できない場合、前記相対関係情報に基づいて、取得できる前記変位信号から推定した回転角である推定回転角信号を演算する演算ステップと、演算した前記推定回転角信号から前記モータ制御信号を演算する制御ステップと、を含むことを特徴とする。
【0021】
これにより、回転角センサの回転角信号が取得できない場合、ガタ、バッククラッシュ、撓み等があっても、回転角センサを演算して推定し、モータの制御を継続することができる。その結果、アクチュエータは、回転角センサの回転角信号がなくても安定してモータを制御できる。
【0022】
本発明の望ましい態様として、前記相対関係情報の補正値を記憶する前記記憶ステップと、前記演算ステップでは、前記相対関係情報の補正値に基づいて、取得できる前記変位信号から前記推定回転角信号を演算することが好ましい。これにより、回転角センサの回転角信号が取得できない場合、ガタ、バッククラッシュ、撓み等の影響を考慮した補正値を利用して変位信号から推定回転角信号を簡易に演算できる。
【0023】
本発明の望ましい態様として、前記演算ステップでは、前記相対関係情報と前記モータ制御信号のモータ回転方向に基づいて、取得できる前記変位信号から前記推定回転角信号を演算することが好ましい。これにより、回転角センサの回転角信号が取得できない場合、ガタ、バッククラッシュ、撓み等の影響を相殺して変位信号から推定回転角信号を簡易に演算できる。
【0024】
上述した課題を解決し目的を達成するために、モータ制御方法は、モータを制御するモータ制御信号を送出し、回転角センサから前記モータの回転角信号を取得し、位置センサから前記モータの回転に伴う変位信号を取得する信号取得ステップと、正常時の前記回転角信号及び前記変位信号の相対関係情報を記憶する記憶ステップと、前記信号取得ステップで取得した前記回転角信号及び前記変位信号の相対関係が、記憶されている前記相対関係情報と異なる場合、異常と判断する異常判断ステップと、を含むことを特徴とする。これにより、回転角センサ及び位置センサが被駆動機構のフェールセンサとなり、アクチュエータは信頼性が向上する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、信頼性又はロバスト性を向上したアクチュエータ、モータ制御システム、及びモータ制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、実施形態1に係るアクチュエータの構成図である。
【図2】図2は、実施形態1に係るモータ制御システムのブロック図である。
【図3】図3は、実施形態1に係るモータ制御方法を説明するフローチャートである。
【図4】図4は、実施形態1に係る記憶手段が記憶する、回転角センサの回転角信号及び位置センサの変位信号の相対関係情報を説明する説明図である。
【図5】図5は、実施形態1に係るモータ制御方法を説明するフローチャートである。
【図6】図6は、実施形態1に係るモータ制御方法を説明する説明図である。
【図7】図7は、実施形態2に係るモータ制御方法を説明するフローチャートである。
【図8】図8は、実施形態2に係るモータ制御方法を説明する説明図である。
【図9】図9は、実施形態3に係るモータ制御方法を説明するフローチャートである。
【図10】図10は、実施形態3に係るモータ制御方法を説明する説明図である。
【図11】図11は、変形例に係るアクチュエータの構成図である。
【図12】図12は、実施形態4に係るアクチュエータを有する位置決めテーブル駆動機構の構成図である。
【図13】図13は、実施形態5に係るアクチュエータを有する自動変速機の構成図である。
【図14】図14は、実施形態5に係る記憶手段が記憶する、回転角センサの回転角信号及び位置センサの変位信号の相対関係情報を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0028】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るアクチュエータの構成図である。図2は、本実施形態に係るモータ制御システムのブロック図である。
【0029】
図1に示すアクチュエータ1は、P方向へ直線変位する稼働部35を駆動する駆動機構である。アクチュエータ1は、ブラシレスモータ10と、回転角センサ21と、位置センサ22と、稼働部35を有する被駆動機構30と、制御装置40とを含んでいる。
【0030】
ブラシレスモータ10は、被駆動機構30へ回転駆動を与える駆動源である。例えば、ステータコアには、電機子巻線を施し、ロータコアには永久磁石を貼り付けて、又は埋め込んで構成する。電機子巻線を制御装置40からのモータ制御信号SMで励磁し、ロータコアを回転させる。ロータコアの回転は、ブラシ付きモータのように、加える電力により予測されるものではなく、回転角センサ21で回転角信号を取得する必要がある。また、ブラシレスモータ10は、誘導モータ、リラクタンスモータでもよい。
【0031】
回転角センサ21は、ブラシレスモータ10の回転Aを検出し、回転角信号SAを送出する検出装置である。回転角センサ21は、例えば、磁気式エンコーダ、レゾルバ等である。位置センサ22は、稼働部35のP方向の変位を検出し、変位信号SPを送出する検出装置である。位置センサ22は、ホールIC等である。例えば、回転角センサ21と、位置センサ22とは、異なる動作原理のセンサとすることが、回転角センサ21と、位置センサ22の両方が故障する故障確率を低減する点でより好ましい。例えば、回転角センサ21を磁気リアクタンス式のレゾルバとし、位置センサ22は、ホールICとする。
【0032】
被駆動機構30は、ブラシレスモータ10の回転運動を近似的な直線運動の変位に変換して伝達する機構部31、32、33と、回転支点部41、42、43、44と、稼働部35とを有している。被駆動機構30は、機構部31、32、33と、回転支点部41、42、43、44とのリンク機構により、ブラシレスモータ10のロータコアの回転駆動力を直線変位へ変換し、稼働部35を所定の位置に移動させることができる。実施形態1に係るアクチュエータ1では、位置センサ22は、稼働部35に取り付けられる。稼働部35は、例えば、トランスミッションのアクチュエータの稼働部として適用される。被駆動機構30は、ギヤ機構であってもよい。被駆動機構30は、ギヤ機構であって、アクチュエータ1は、船外機のギヤ変速機構として適用される。
【0033】
制御装置40は、マイコン等のコンピュータシステムである。例えば、図2に示すように、入力インターフェース40aと、出力インターフェース40bと、CPU(Central Processing Unit)40cと、ROM(Read Only Memory)40dと、RAM(Random Access Memory)40eと、内部記憶装置40fと、を含んでいる。入力インターフェース40a、出力インターフェース40b、CPU40c、ROM40d、RAM40e及び内部記憶装置40fは、内部バスで接続されている。
【0034】
入力インターフェース40aは、回転角センサ21からの回転角信号SAを受け取り、CPU40cに出力する。また、入力インターフェース40aは、位置センサ22からの変位信号SPを受け取り、CPU40cに出力する。出力インターフェース40bは、CPU40cから指示信号を受け取り、ブラシレスモータ10にモータ制御信号SMを出力する。
【0035】
ROM40dには、BIOS等のプログラムが記憶されている。内部記憶装置40fは、例えばHDD(Hard disk drive)やフラッシュメモリ等であり、内部記憶装置40fはオペレーティングシステムプログラムやアプリケーションプログラムを記憶している。CPU40cは、RAM40eをワークエリアとして使用しながらROM40dや内部記憶装置40fに記憶されているプログラムを実行することにより、種々の機能を実現する。なお、内部記憶装置40f又はRAM40eは、記憶手段40Eとなる。
【0036】
図2に示すように、アクチュエータ1のモータ制御システム1Sは、回転角センサ21と、位置センサ22と、ブラシレスモータ10とが制御装置40と接続されている。制御装置40は、回転角センサ21の回転角信号SA及び位置センサ22の変位信号SPを取得する。制御装置40は、回転角信号SAに基づきブラシレスモータ10のモータ制御信号SMを演算する。制御装置40は、演算したモータ制御信号SMに基づいて、ブラシレスモータ10をフィードバック制御する。
【0037】
図3は、本実施形態に係るモータ制御方法を説明するフローチャートである。図4は、本実施形態に係る記憶手段が記憶する、回転角センサの回転角信号及び位置センサの変位信号の相対関係情報を説明する説明図である。まず、本実施形態のモータ制御システム1Sは、回転角センサ21及び位置センサ22の正常な場合、回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係情報を記憶手段40Eに記憶する手順を行う。
【0038】
図3に示すように、モータ制御システム1Sは、制御装置40のモータ制御信号SMに基づきブラシレスモータ10をモータ回転させる(ステップS1)。ブラシレスモータ10の回転駆動に伴い、制御装置40は、回転角センサ21からの回転角信号SA及び位置センサ22からの変位信号SPを取得する(ステップS2)。
【0039】
次に、CPU40cは、取得した回転角信号SA及び変位信号SPを、図4に示すような回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係情報として演算する。位置センサ22が検出する変位信号SPは、ブラシレスモータ10の回転に伴う変位を検出している。このため、変位信号SPを縦軸に、回転角信号SAを横軸にとると、回転角信号SA及び変位信号SPには相対関係が存在する。
【0040】
例えば、モータ制御システム1Sは、ブラシレスモータ10を被駆動機構30との連結の反対方向からみて時計方向(いわゆるCW方向)へ回転する。図4に示すように、回転角センサ21の回転角信号SAが回転角信号SAから回転角信号SAとなるが位置センサ22の変位信号SPはSPから大きく変化しない。次に、回転角センサ21の回転角信号SAが回転角信号SAから回転角信号SAとなるにつれて、位置センサ22の変位信号SPはSPからSPへ直線的に増加する。
【0041】
例えば、モータ制御システム1Sは、ブラシレスモータ10を被駆動機構30との連結の反対方向からみて反時計方向(いわゆるCCW方向)へ回転する。図4に示すように、回転角センサ21の回転角信号SAが回転角信号SAから回転角信号SAとなるが位置センサの変位信号SPはSPから大きく変化しない。次に、回転角センサ21の回転角信号SAが回転角信号SAから回転角信号SAとなるにつれて、位置センサ22の変位信号SPはSPからSPへ直線的に減少する。
【0042】
このように、回転角センサ21の回転角信号SAに位置センサ22の変位信号SPが同期しない領域では、機構部31、32、33、回転支点部41、42、43、44、又は稼働部35等のガタ、バッククラッシュ、撓みの影響でヒステリシス(Hysteresis)現象が生じていると考えられる。
【0043】
このため、制御装置40は、回転角信号SAと回転角信号SAとの中点、回転角信号SAと回転角信号SAとの中点を演算し、中点間を結んだ線分と(SA、SP)−(SA、SP)との距離又は、上述した中点間を結んだ線分と(SA、SP)−(SA、SP)との距離である補正値εを演算する(ステップS3)。
【0044】
次に、制御装置40は、補正値εと、図4に示す回転角センサ21の回転角信号SA及び位置センサ22の変位信号SPの相対関係情報を記憶手段40Eとなる内部記憶装置40f又はRAM40eに記憶する(ステップS4)。
【0045】
本実施形態に係るモータ制御システム1Sでは、制御装置40が補正値εと、図4に示す回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係情報を演算し、記憶手段40Eに記憶している。この演算はモータ制御システム1S以外のコンピュータシステムで補正値εと、図4に示す回転角センサ21の回転角信号SA及び位置センサ22の変位信号SPの相対関係情報を演算し、記憶手段40Eとなる内部記憶装置40f又はRAM40eに記憶するようにしてもよい。また、モータ制御システム1Sは、回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係情報を記憶手段40Eに記憶していれば、補正値εを都度演算して求めることができる。このため、ステップS3での補正値εの演算ステップと、ステップS4での補正値εの記憶手段40Eへの記憶を省略し、後で制御装置40が補正値εを都度演算して求めてもよい。
【0046】
次に、回転角信号SAが取得できない場合の本実施形態に係るモータ制御システム1Sのモータ制御方法について説明する。図5は、実施形態1に係るモータ制御方法を説明するフローチャートである。図6は、実施形態1に係るモータ制御方法を説明する説明図である。
【0047】
本実施形態に係るモータ制御システム1Sは、制御装置40のモータ制御信号SMに基づきブラシレスモータ10をモータ回転させる(ステップS11)。ブラシレスモータ10の回転駆動に伴い、制御装置40は、回転角センサ21からの回転角信号SA及び位置センサ22からの変位信号SPを取得する(ステップS12)。
【0048】
制御装置40は、回転角センサ21が正常か否か判断する(ステップS13)。回転角信号SAが取得できるため、回転角センサ21が正常であると判断する場合(ステップS13、Yes)、制御装置40は、ステップS12を継続する。回転角信号SAが取得できないため、回転角センサ21が正常ではないと判断する場合(ステップS13、No)、制御装置40は、変位信号SPと記憶手段40Eに記憶している回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係情報に基づいて回転角を推定した推定回転角信号の演算を行う(ステップS14)。
【0049】
制御装置40は、補正値εと、正常時における回転角センサ21の回転角信号SA及び位置センサ22の変位信号SPの図4に示す相対関係情報を記憶手段40Eとなる内部記憶装置40f又はRAM40eに記憶してある。制御装置40は、RAM40eのワークエリアに、補正値εと、回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係情報とを読み出す記憶手段照会を行う。仮に、補正値εが記憶手段40Eに記憶していない場合、制御装置40が補正値εを都度演算して求めて、RAM40eのワークエリアに記憶してもよい。制御装置40は、取得できる変位信号SPを、ブラシレスモータ10の回転方向の情報及び補正値εと共に、回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係情報に当てはめて演算することで、変位信号SPに対応する回転角を推定した推定回転角信号を演算することができる。
【0050】
例えば、図6に示すように、モータ制御システム1Sがブラシレスモータ10を被駆動機構30との連結の反対方向からみて時計方向(いわゆるCW方向)へ回転する場合、位置センサ22からの変位信号SPCWのみ取得できている。変位信号SPCWを回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係情報に当てはめると、回転角対応点m1となるが、回転角対応点m1から補正値ε分減算し、回転角対応点m2を演算できる。この結果、制御装置40は、変位信号SPCWと記憶手段40Eに記憶している回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係情報に基づいて回転角を推定した推定回転角信号SACWの演算を行うことができる。
【0051】
例えば、モータ制御システム1Sがブラシレスモータ10を被駆動機構30との連結の反対方向からみて反時計方向(いわゆるCCW方向)へ回転する場合、位置センサ22からの変位信号SPCCWのみ取得できている。変位信号SPCCWを回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係情報に当てはめると、回転角対応点m3となるが、回転角対応点m3から補正値ε分加算し、回転角対応点m4を演算できる。この結果、制御装置40は、変位信号SPCCWと記憶手段40Eに記憶している回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係情報に基づいて回転角を推定した推定回転角信号SACCWの演算を行うことができる。
【0052】
ここで、変位信号SPを回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係情報に当てはめると、一義的に推定回転角信号SAを演算できる。同様に、変位信号SPを回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係情報に当てはめると、一義的に推定回転角信号SAを演算できる。図6に示すように、回転角センサ21の回転角信号SAと位置センサ22の変位信号SPとの関係は、補正値εで補正すると、(SA、SP)−(SA、SP)の直線に近似できる。
【0053】
制御装置40は、稼働部35が所定の停止位置か判断する(ステップS15)。稼働部35が所定の停止位置にないと判断する場合(ステップS15、No)、制御装置40は、演算した推定回転角信号と変位信号SPとを用いてモータ制御信号SMを演算する。モータ制御信号SMに基づいて、ブラシレスモータ10は、回転を継続する(ステップS11)。稼働部35が所定の停止位置にあると判断する場合(ステップS15、Yes)、制御装置40は、モータ制御を終了する。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のアクチュエータ1は、ブラシレスモータ10と、ブラシレスモータ10の回転を検出する回転角センサ21と、ブラシレスモータ10の回転を所定の変位に変換する被駆動機構30と、被駆動機構30の変位を検出する位置センサ22と、ブラシレスモータ10を制御する制御装置40と、を含んでいる。制御装置40は、正常時における回転角センサ21の回転角信号SA及び位置センサ22の変位信号SPの相対関係情報を記憶する記憶手段40Eを含み、変位信号SPを取得し、相対関係情報に基づいて回転角を推定した推定回転角信号SACW、SACCWを演算し、この推定回転角信号に基づいてブラシレスモータ10を制御する。
【0055】
これにより、ガタ、バッククラッシュ、撓み等があっても、取得できる位置センサ22の変位信号SPから取得できない回転角センサ21の回転角信号SAを推定し、モータ制御を継続することができる。その結果、アクチュエータ1は、回転角センサ21の回転角信号SAが取得できなくても安定してブラシレスモータ10を制御できる。
【0056】
また、ガタ、バッククラッシュ、撓み等の適用機器毎に生じる想定していた制御モデルからのズレを吸収し、汎用のアクチュエータ駆動に用いることができる。また、回転角センサ21の回転角信号SA及び位置センサ22の変位信号SPの相対関係情報を定期的に更新し、記憶手段40Eに保存すれば、経年変化による影響を低減することができる。
【0057】
本実施形態のアクチュエータ1は、制御装置40の記憶手段40Eに相対関係情報の補正値εを記憶しており、制御装置40は、回転角センサ21の回転角信号SAが取得できない場合、補正値εに基づいて、取得可能な位置センサ22の変位信号SP、推定回転角信号SACW、SACCWを演算することが好ましい。
【0058】
これにより、回転角センサ21の回転角信号SAが取得できない場合、ガタ、バッククラッシュ、撓み等の影響を考慮した補正値εを利用して変位信号SPから推定回転角信号SACW、SACCWを簡易に演算できる。
【0059】
(実施形態2)
図7は、実施形態2に係るモータ制御方法を説明するフローチャートである。図8は、実施形態2に係るモータ制御方法を説明する説明図である。本実施形態では、アクチュエータ1は、記憶手段40Eに記憶する回転角センサ21の回転角信号SA及び位置センサ22の変位信号SPの相対関係情報と、モータ回転方向とによりモータ制御する点に特徴がある。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0060】
図7に示すように、本実施形態に係るアクチュエータ1のモータ制御システム1Sは、制御装置40のモータ制御信号SMに基づきブラシレスモータ10をモータ回転させる(ステップS21)。ブラシレスモータ10の回転駆動に伴い、制御装置40は、回転角センサ21からの回転角信号SA及び位置センサ22からの変位信号SPを取得する(ステップS22)。
【0061】
制御装置40は、回転角センサ21が正常か否か判断する(ステップS23)。回転角信号SAが取得できるため、回転角センサ21が正常であると判断する場合(ステップS23、Yes)、制御装置40は、ステップS22を継続する。回転角信号SAが取得できないため、回転角センサ21が正常ではないと判断する場合(ステップS23、No)、制御装置40は、直前までブラシレスモータ10を回転していた方向を判別し回転方向を記憶手段40Eに記憶する回転方向判別を行う(ステップS24)。
【0062】
制御装置40は、変位信号SPと記憶手段40Eに記憶している回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係情報に基づいて回転角を推定した推定回転角信号の演算を行う(ステップS25)。制御装置40は、RAM40eのワークエリアに、ブラシレスモータ10の回転方向の情報と、回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係情報とを読み出す記憶手段照会を行う。制御装置40は、取得できる変位信号SPを、ブラシレスモータ10の回転方向の情報と共に、回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係情報に当てはめて演算することで、変位信号SPに対応する回転角を推定した推定回転角信号を演算することができる。
【0063】
例えば、図8に示すように、モータ制御システム1Sがブラシレスモータ10を被駆動機構30との連結の反対方向からみて時計方向(いわゆるCW方向)へ回転する場合、位置センサ22からの変位信号SPCWのみ取得できている。この場合、回転角センサ21の回転角信号SAは、(SA、SP)と(SA、SP)とを結ぶ直線L上の対応する回転角対応点となる推定回転角信号SACWとして演算できる。図8に示すように、実際の変位信号SPCWを回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係情報に当てはめると、変位信号SPCWに対応する回転角センサ21の回転角信号SAは、(SA、SP)と(SA、SP)とを結ぶ直線L上の対応する回転角対応点l1となるが、逆回転のデータを参照し、直線L上の対応する回転角対応点l2の推定回転角信号SACWを演算する。これにより、推定回転角信号SACWは本来の回転角信号の誤差と反対の誤差を含んでいるので、制御装置40は推定回転角信号SACWに基づいてモータ制御信号SMを演算し、ブラシレスモータ10を制御すれば、誤差が相殺された状態で駆動する。
【0064】
例えば、モータ制御システム1Sがブラシレスモータ10を被駆動機構30との連結の反対方向からみて反時計方向(いわゆるCCW方向)へ回転する場合、位置センサ22からの変位信号SPCCWのみ取得できている。図8に示すように、実際の変位信号SPCCWを回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係情報に当てはめると、直線L上の対応する回転角対応点l3となるが逆回転のデータを参照し、直線L上の対応する回転角対応点l4の推定回転角信号SACCWを演算する。これにより、推定回転角信号SACCWは本来の回転角信号の誤差と反対の誤差を含んでいるので、制御装置40は推定回転角信号SACCWに基づいてモータ制御信号SMを演算し、ブラシレスモータ10を制御すれば、誤差が相殺された状態で駆動する。
【0065】
制御装置40は、稼働部35が所定の停止位置か判断する(ステップS26)。稼働部35が所定の停止位置にないと判断する場合(ステップS26、No)、制御装置40は、演算した推定回転角信号と変位信号SPとを用いてモータ制御信号SMを演算する。モータ制御信号SMに基づいて、ブラシレスモータ10は、回転を継続する(ステップS21)。稼働部35が所定の停止位置にあると判断する場合(ステップS26、Yes)、制御装置40は、モータ制御を終了する。
【0066】
以上説明したように、本実施形態のアクチュエータ1は、ブラシレスモータ10と、ブラシレスモータ10の回転を検出する回転角センサ21と、ブラシレスモータ10の回転を所定の変位に変換する被駆動機構30と、被駆動機構30の変位を検出する位置センサ22と、ブラシレスモータ10を制御する制御装置40と、を含んでいる。制御装置40は、正常時における回転角センサ21の回転角信号SA及び位置センサ22の変位信号SPの相対関係情報を記憶する記憶手段40Eを含み、回転角信号SAが取得できない場合、ブラシレスモータ10の回転方向を示す回転方向情報と上述した相対関係情報とに基づいて、変位信号SPから回転角を推定した推定回転角信号SACW、SACCWを演算することが好ましい。
【0067】
これにより、図3において、ステップS3の手順を省くことができる。また、記憶手段40Eが相対関係情報の補正値εを記憶しておく必要がない。また、ガタ、バッククラッシュ、撓み等があっても、取得できる位置センサ22の変位信号SPから取得できない回転角センサ21の回転角信号SAを推定し、モータ制御を継続することができる。その結果、アクチュエータ1は、回転角センサ21の回転角信号SAが取得できなくても安定してブラシレスモータ10を制御できる。また、回転角センサ21の回転角信号SAが取得できない場合、ガタ、バッククラッシュ、撓み等の影響を相殺して変位信号SPから推定回転角信号SACW、SACCWを簡易に演算できる。
【0068】
(実施形態3)
図9は、実施形態3に係るモータ制御方法を説明するフローチャートである。図10は、実施形態3に係るモータ制御方法を説明する説明図である。本実施形態では、モータ制御システム1Sは、取得した回転角信号SA及び変位信号SPが、記憶手段40Eに記憶する回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係情報と異なる場合、異常と判断する点に特徴がある。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0069】
図9に示すように、本実施形態に係るアクチュエータ1のモータ制御システム1Sは、制御装置40のモータ制御信号SMに基づきブラシレスモータ10をモータ回転させる(ステップS31)。ブラシレスモータ10の回転駆動に伴い、制御装置40は、回転角センサ21からの回転角信号SA及び位置センサ22からの変位信号SPを取得する(ステップS32)。
【0070】
制御装置40は、取得した回転角信号SA及び変位信号SPから新たに回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係を演算する。制御装置40は、新たに得られた回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係と、図4に示す正常時の回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係と比較する(ステップS33)。例えば、新たに得られた回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係が図10に示す(SA、SP)−(SA、SP)−(SA、SP)−(SA、SP)−(SA、SP)の点線で示される軌跡となれば、図4に示す正常時の転角信号SA及び変位信号SPの相対関係と差がないので正常と判断し(ステップS33、Yes)、ステップS32を継続する。
【0071】
また、制御装置40は、回転角信号SA及び変位信号SPを演算し、(SA、SP)−(SA、SP)−(SA、SP)−(SA、SP)−(SA、SP)の点線で示される軌跡と異なる軌跡、例えば、(SA、SP)−(SA、SP)−(SA、SP)となる場合(ステップS33、No)、異常と判断する(ステップS34)。このように、ブラシレスモータ10の回転が稼働部35の変位と同期していないことから被駆動機構30の異常を早期に検出することができる。
【0072】
本実施形態のモータ制御システム1Sは、ブラシレスモータ10を制御するモータ制御信号SMを送出し、回転角センサ21からブラシレスモータ10の回転角信号SAを取得し、位置センサ22からブラシレスモータ10の回転に伴う変位信号SPを取得し、正常時の回転角信号SA及び変位信号SPの相対関係情報を記憶手段40Eに記憶しており、取得した回転角信号SA及び変位信号SPが正常時の相対関係情報と異なる場合、異常と判断する。これにより、回転角センサ21及び位置センサ22が被駆動機構30のフェールセンサとなり、アクチュエータ1は信頼性が向上する。
【0073】
(変形例)
図11は、変形例に係るアクチュエータの構成図である。変形例のアクチュエータ2は、位置センサ22が、被駆動機構30の機構部33の変位の変位を検出している点に特徴がある。なお、上述したものと同じ部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0074】
変形例に係るアクチュエータ2は、被駆動機構30は、機構部31、32、33と、回転支点部41、42、43、44とのリンク機構により、ブラシレスモータ10のロータコアの回転駆動力を直線変位へ変換し、稼働部35を所定の位置に移動させることができる。稼働部35を直接検出しなくても、位置センサ22が稼働部35と連動する機構部33又は機構部32の変位を検出することで、稼働部35の位置を推定可能となる。
【0075】
また、上述した実施形態と合わせて、アクチュエータ2は、被駆動機構30が直線変位する稼働部35と、稼働部35にブラシレスモータ10の回転を変位に変換して伝達する機構部31、32、33とを有し、位置センサ22は、稼働部35又は機構部32、33の位置を検出することが好ましい。これにより、アクチュエータ2は、回転角センサ21と異なる箇所である機構部32、又は33に回転角センサ21と異なる位置センサ22を有することになる。その結果、アクチュエータ2は信頼性又はロバスト性が向上する。
【0076】
(実施形態4)
図12は、実施形態4に係るアクチュエータを有する位置決めテーブル駆動機構の構成図である。本実施形態では、位置決めテーブル駆動機構100は、アクチュエータ1の被駆動機構30となるボールネジ52とを有する位置制御装置である点に特徴がある。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0077】
図12に示す位置決めテーブル駆動機構100は、X軸方向へテーブル53を駆動するX軸送り駆動機構である。位置決めテーブル駆動機構100は、台座50と、リニアガイド51と、テーブル53と、カップリング部材55と、ガイド56と、ボールネジ52と、ブラシレスモータ10と、回転角センサ21と、位置センサ22と、制御装置40とを含んでいる。
【0078】
テーブル53は、ワークを載置可能なワークステージである。テーブル53の裏面には、ボールナットが固定されている。リニアガイド51は、テーブル53を搭載し、テーブル53をX軸方向へ自在にスライドさせるスライド機構である。リニアガイド51は、台座50上に固定されている。
【0079】
ブラシレスモータ10は、ボールネジ52を回転駆動する駆動源である。カップリング部材55は、ブラシレスモータ10の回転軸とボールネジ52とに接続する接続部材である。ボールネジ52は、テーブル53の下部にあるボールナットと接続され、ブラシレスモータ10の回転をテーブル53のX軸方向の軸送り駆動力へ変換する。ボールネジ52とカップリング部材55とは、被駆動機構となっている。ガイド56は、テーブル53を位置規制する。
【0080】
以上説明したように、本実施形態の位置決めテーブル駆動機構100は、ブラシレスモータ10と、ブラシレスモータ10の回転を検出する回転角センサ21と、ブラシレスモータ10の回転を所定の変位に変換する被駆動機構であるボールネジ52と、被駆動機構であるボールネジ52の変位を検出する位置センサ22と、ブラシレスモータ10を制御する制御装置40と、を含んでいる。制御装置40は、正常時における回転角センサ21の回転角信号SA及び位置センサ22の変位信号SPの相対関係情報を記憶する記憶手段40Eを含み、変位信号SPを取得し、相対関係情報に基づいて回転角を推定した推定回転角信号を演算し、この推定回転角信号に基づいてブラシレスモータ10を制御する。
【0081】
これにより、位置決めテーブル駆動機構100は、ガタ、バッククラッシュ、撓み等があっても、取得できる位置センサ22の変位信号SPから取得できない回転角センサ21の回転角信号を推定し、モータ制御を継続することができる。その結果、位置決めテーブル駆動機構100は、回転角センサ21の回転角信号SAが取得できなくても安定してブラシレスモータ10を制御できる。
【0082】
(実施形態5)
図13は、実施形態5に係るアクチュエータを有する自動変速機の構成図である。図14は、実施形態5に係る記憶手段が記憶する、回転角センサの回転角信号及び位置センサの変位信号の相対関係情報を説明する説明図である。本実施形態の自動変速機60は、アクチュエータ1と同じアクチュエータ1α、1βを含んでいる点に特徴がある。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0083】
図13に示す自動変速機60は、オートメーテッドマニュアルトランスミッション(AMT:Automated Manual Transmission)と呼ばれる自動変速機であって、マニュアルトランスミッションの動作を上述したアクチュエータ1と同じアクチュエータ1α、1βを複数組み合わせることで自動制御している。自動変速機60は、操作レバー検出手段61と、アクセル開度検出手段62と、制御装置40と、アクチュエータ1αと、アクチュエータ1βとを含んでいる。操作レバー検出手段61と、アクセル開度検出手段62とは、制御装置40に接続されている。アクチュエータ1αと、アクチュエータ1βとは、制御装置40を共有しており、上述したアクチュエータ1と同様に接続されている。
【0084】
操作レバー検出手段61は、ドライバーが操作レバーを操作したレバー操作信号を検出し、制御装置40へ伝達する。アクセル開度検出手段62は、ドライバーがアクセルを操作した操作度合いをアクセル開度信号として検出し制御装置40へ伝達する。制御装置40は、エンジンコントロールユニット(Engine Control Unit、ECU)としても機能する制御装置である。制御装置40は、記憶手段40Eに、レバー操作信号及びアクセル開度信号に応じたトランスミッションの選択情報を記憶している。トランスミッションの選択情報は、レバー操作信号及びアクセル開度信号に応じた情報に限られず、例えば車速情報、温度情報等の外部信号に応じた情報となっていてもよい。この場合、制御装置40は外部信号を取得することができる。
【0085】
アクチュエータ1α及びアクチュエータ1βは、アクチュエータ1と同様に構成されたアクチュエータである。ブラシレスモータ10α、10βと、回転角センサ21α、21βと、位置センサ22α、22βと、稼働部35α、35βを有する被駆動機構30α、30βとは、実施形態1におけるブラシレスモータ10と、回転角センサ21と、位置センサ22と、稼働部35を有する被駆動機構30と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0086】
例えば、図14に示すように、自動変速機60は、トランスミッション構造を有し、前進用ギヤ位置G1〜G6及び後進用ギヤ位置Rを有する6速自動変速機である。自動変速機60のトランスミッションは、前進用ギヤ位置G1〜G6及び後進用ギヤ位置Rのいずれかを選択するセレクト位置N1〜N4を有している。本実施形態の自動変速機60では、アクチュエータ1α、1βを含み、セレクト用のアクチュエータ1αは、稼働部35αをN1〜N4へ移動させることができる。また、シフト用のアクチュエータ1βは、稼働部35βをG5−N4−G6の方向、G3−N3−G4の方向、G1−N2−G2の方向、N1−Rの方向のいずれかの方向に自在に移動させることができる。このように、稼働部35αと、稼働部35βとの相互作用により、トランスミッション構造におけるギヤ位置が選択される。
【0087】
セレクト用のアクチュエータ1αは、稼働部35αをN1〜N4へ移動させると、セレクト位置N1〜N4に応じて、位置センサ22αが変位信号SPαを出力し、回転角センサ21αが回転角信号SAαを出力する。回転角信号SAαは、例えば、回転角信号αN1、αN2、αN3、αN4となる。制御装置40は、所定のセレクト位置N1〜N4のいずれかとなると、ブラシレスモータ10を停止させる。次にシフト用のアクチュエータ1βは、稼働部35βを前進用ギヤ位置G1〜G6及び後進用ギヤ位置Rのいずれかを選択する位置に自在に移動させる。選択した前進用ギヤ位置G1〜G6及び後進用ギヤ位置Rに応じて、位置センサ22βが変位信号SPβを出力し、回転角センサ21βが回転角信号SAβを出力する。回転角信号SAβは、例えば、回転角信号βFR、βRRとなる。
【0088】
制御装置40は、ブラシレスモータ10α、10βを回転し、上述した図3に示すフローチャートに沿って、回転角センサ21α、21β及び位置センサ22α、22βの正常な場合における回転角信号SAα、SAβ及び変位信号SPα、SPβの相対関係情報Sα、Sβを記憶手段40Eに記憶する手順を行う。
【0089】
自動変速機60は、レバー操作信号及びアクセル開度信号が伝達されると、制御装置40が記憶手段40Eに記憶したトランスミッションの選択情報に基づき、ブラシレスモータ10α、10βを制御する。ここで、制御装置40は、上述した実施形態1、2、3で例示したモータ制御方法を実行することができる。
【0090】
以上説明したように、本実施形態の自動変速機60は、ブラシレスモータ10α、10βと、ブラシレスモータ10α、10βの回転を検出する回転角センサ21α、21βと、ブラシレスモータ10α、10βの回転を所定の変位に変換する被駆動機構30α、30βと、被駆動機構30α、30βの変位を検出する位置センサ22α、22βと、ブラシレスモータ10α、10βを制御する制御装置40と、を含んでいる。制御装置40は、正常時における回転角センサ21α、21βの回転角信号SAα、SAβ及び位置センサ22α、22βの変位信号SPα、SPβの相対関係情報Sα、Sβを記憶する記憶手段40Eを含んでいる。そして、変位信号SPα、SPβを取得し、上述した相対関係情報Sα、Sβに基づいて回転角を推定した推定回転角信号を演算し、この推定回転角信号に基づいてブラシレスモータ10α、10βを制御する。
【0091】
また、自動変速機60は、トランスミッション機構にガタ、バッククラッシュ、撓み等があっても、取得できる位置センサ22α、22βの変位信号SPα、SPβから取得できない回転角センサ21α、21βの回転角信号SAα、SAβを推定し、モータ制御を継続することができる。その結果、自動変速機60は、回転角センサ21α、21βの回転角信号SAα、SAβが取得できなくても安定してブラシレスモータ10α、10βを制御できる。
【符号の説明】
【0092】
1、2 アクチュエータ
1S モータ制御システム
10、10α、10β ブラシレスモータ
21、21α、21β 回転角センサ
22、22α、22β 位置センサ
30、30α、30β 被駆動機構
35、35α、35β 稼働部
40 制御装置
40E 記憶手段
41、42、43、44 回転支点部
60 自動変速機
61 操作レバー検出手段
62 アクセル開度検出手段
100 位置決めテーブル駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの回転角を検出する回転角センサと、
前記モータの回転を所定の変位に変換する被駆動機構と、
前記被駆動機構の変位を検出する位置センサと、
前記モータを制御する制御装置と、を含み、
前記制御装置は、正常時における前記回転角センサの回転角信号及び前記位置センサの変位信号の相対関係情報を記憶しており、前記変位信号を取得し、前記相対関係情報に基づいて回転角を推定した推定回転角信号を演算し、前記推定回転角信号に基づいて前記モータを制御することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記制御装置は、前記相対関係情報の補正値を記憶しており、前記回転角信号が取得できない場合、前記補正値に基づいて前記変位信号から前記推定回転角信号を演算する請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記制御装置は、前記回転角信号が取得できない場合、前記モータの回転方向を示す回転方向情報と前記相対関係情報とに基づいて、前記変位信号から前記推定回転角信号を演算する請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記被駆動機構は、変位する稼働部と、前記稼働部に前記モータの回転を変位に変換して伝達する機構部とを有し、前記位置センサは、前記稼働部又は前記機構部の位置を検出する請求項1から3のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記制御装置は、前記回転角センサの前記回転角信号及び前記位置センサの前記変位信号が入力される請求項1から4のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記制御装置は、演算した前記回転角信号及び前記変位信号の相関関係が、記憶する前記相対関係情報と異なる場合、異常と判断する請求項1から5のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記被駆動機構がボールネジである位置制御装置に搭載される請求項1から6のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載のアクチュエータを含む自動変速機。
【請求項9】
モータを制御するモータ制御信号を送出し、
回転角センサから前記モータの回転角信号を取得し、
位置センサから前記モータの回転に伴う変位信号を取得し、
正常時の前記回転角信号及び前記変位信号の相対関係情報を記憶しており、
前記回転角信号が取得できない場合、前記相対関係情報に基づいて、取得できる前記変位信号から推定した回転角である推定回転角信号を演算し、演算した前記推定回転角信号から前記モータ制御信号を演算することを特徴とするモータ制御システム。
【請求項10】
前記相対関係情報の補正値を記憶しており、前記回転角信号が取得できない場合、前記補正値に基づいて、取得できる前記変位信号から前記推定回転角信号を演算する請求項9に記載のモータ制御システム。
【請求項11】
前記回転角信号が取得できない場合、前記相対関係情報と前記モータ制御信号のモータ回転方向に基づいて、取得できる前記変位信号から前記推定回転角信号を演算する請求項9又は10に記載のモータ制御システム。
【請求項12】
モータを制御するモータ制御信号を送出し、
回転角センサから前記モータの回転角信号を取得し、
位置センサから前記モータの回転に伴う変位信号を取得し、
正常時の前記回転角信号及び前記変位信号の相対関係情報を記憶しており、
前記回転角信号及び前記変位信号の相対関係が前記相対関係情報と異なる場合、異常と判断することを特徴とするモータ制御システム。
【請求項13】
モータを制御するモータ制御信号を送出し、回転角センサから前記モータの回転角信号を取得し、位置センサから前記モータの回転に伴う変位信号を取得する信号取得ステップと、
正常時の前記回転角信号及び前記変位信号の相対関係情報を記憶する記憶ステップと、
前記回転角信号が取得できない場合、前記相対関係情報に基づいて、取得できる前記変位信号から推定した回転角である推定回転角信号を演算する演算ステップと、
演算した前記推定回転角信号から前記モータ制御信号を演算する制御ステップと、
を含むことを特徴とするモータ制御方法。
【請求項14】
前記相対関係情報の補正値を記憶する前記記憶ステップと、
前記演算ステップでは、前記相対関係情報の補正値に基づいて、取得できる前記変位信号から前記推定回転角信号を演算する請求項13に記載のモータ制御方法。
【請求項15】
前記演算ステップでは、前記相対関係情報と前記モータ制御信号のモータ回転方向に基づいて、取得できる前記変位信号から前記推定回転角信号を演算する請求項13又は14に記載のモータ制御方法。
【請求項16】
モータを制御するモータ制御信号を送出し、回転角センサから前記モータの回転角信号を取得し、位置センサから前記モータの回転に伴う変位信号を取得する信号取得ステップと、
正常時の前記回転角信号及び前記変位信号の相対関係情報を記憶する記憶ステップと、
前記信号取得ステップで取得した前記回転角信号及び前記変位信号の相対関係が、記憶されている前記相対関係情報と異なる場合、異常と判断する異常判断ステップと、
を含むことを特徴とするモータ制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−216145(P2012−216145A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82172(P2011−82172)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】