説明

アクチュエータ及びその組立方法

【課題】減速比を損なうことなく小型化及び部品点数の削減が可能なアクチュエータ及びアクチュエータの組立方法を提供する。
【解決手段】電動モータユニット10と、出力ギアユニット20と、中間ギアユニット30と、ハウジング部材40と、カバー部材50とからなるアクチュエータ1において、電動モータ11及び出力軸24は、ハウジング部材40に対し軸方向に同じ側に組み付けられる。中間ギアユニット30は、入力ギア13と噛合う入力側中間ギア32と、出力ギア28と噛合い、入力側中間ギア32と同軸に配置される出力側中間ギア31とでのみ変速を行う。また、入力側中間ギア32は出力側中間ギア31よりも歯先円直径が大きく、入力側中間ギア32がハウジング部材40側に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクチュエータ及びその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の制御系の操作部等を操作するアクチュエータとして、モータを原動機としたものが多く用いられている。モータを原動機として用いる電動アクチュエータは、モータと、該モータの回転を減速する減速機とにより構成される。この種のアクチュエータは例えば特許文献1に示されている。
【0003】
特許文献1には、モータと減速機とからなるアクチュエータ本体と、モータを制御するコントローラとを一体化したアクチュエータが記載されている。この一体化のために、特許文献1では、減速機に対し同じ側にモータと出力軸を設ける構成とし、結果として小形化と部品点数削減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−181284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1に記載された減速機は、小径のギアと大径のギアとを一体にした2列の中間ギアユニットからなるものである。小型化や部品点数削減の観点から、中間ギアの列数は少ない方が好ましく、特許文献1に記載のアクチュエータには改善の余地がある。しかしながら、中間ギアを用いない場合、高減速比を得るためには出力側のギアを大径とすることが必要となる。また、中間ギアを1列とした場合、アクチュエータの構成部品の配置等から生じる制約によりギア同士が干渉する等のために組立ができず、中間ギアを2列とせざるを得ない。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、減速比を損なうことなく小型化及び部品点数の削減が可能なアクチュエータ及びその組立方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)電動モータ及び電動モータと同軸に接続される入力ギアを有する電動モータユニットと、出力ギアから入力された回転を出力軸の直線運動に変換して出力する出力ギアユニットと、前記入力ギアと前記出力ギアの間に配置され、前記入力ギアの回転を変速して前記出力ギアへ伝達する変速機能を有する中間ギアユニットと、前記電動モータユニット及び前記出力ギアユニット、前記中間ギアユニットが組み付けられるハウジング部材と、前記ハウジング部材と対になり前記中間ギアユニットを収容するカバー部材と、からなるアクチュエータにおいて、前記電動モータ及び前記出力軸は、前記ハウジング部材に対し軸方向に同じ側に組み付けられ、前記中間ギアユニットは、前記入力ギアと噛合う入力側中間ギアと、前記出力ギアと噛合い、前記入力側中間ギアと同軸に配置される出力側中間ギアとで変速を行い、前記入力側中間ギアは前記出力側中間ギアよりも歯先円直径が大きく、前記入力側中間ギアが前記ハウジング部材側に位置することを特徴とするアクチュエータ。
(2)前記中間ギアユニットは、前記ハウジング部材にボルトにより固定され、前記ボルトは前記ハウジング部材側から順に、雄ねじ部と、IT8以上の精度で加工された円筒部と、頭部を有し、前記ボルトを前記ハウジング部材に螺合させるために前記ハウジング部材に形成された被締結部は、前記中間ギアユニット側から順に、IT8以上の精度で加工された円筒部と、雌ねじ部を有し、前記中間ギアユニットは当該ボルトを挿入するためのIT8以上の精度で加工された円筒孔を有し、前記ボルトの前記円筒部と、前記ハウジング部材の前記円筒部と、前記中間ギアユニットの前記円筒孔とは略同径となっていることを特徴とする(1)に記載のアクチュエータ。
(3)(1)または(2)に記載のアクチュエータの組立方法であって、前記出力ギアユニットを固定した前記ハウジング部材において、前記入力側中間ギアと前記出力ギアとが干渉しないように前記中間ギアユニットを前記ハウジング部材上に配置した後、前記中間ギアユニットを前記出力ギアユニット方向にスライドさせることを特徴とするアクチュエータの組立方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るアクチュエータ及びアクチュエータの組立方法によれば、減速比を損なうことなく小型化及び部品点数の削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のアクチュエータの構造を示す断面図である。
【図2】中間ギアユニットの断面図で、図1のA方向矢視図である。
【図3】ハウジング部材に出力ギアユニット及び中間ギアユニットを組み付ける様子を軸線方向から見た図である。
【図4】中間ギアユニットをハウジング部材に固定するボルトの拡大図である。
【図5】前記ボルトを螺合させるハウジング部材のナット部の断面図である。
【図6】中間ギアユニットの軸受収容部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るアクチュエータ及びその製造方法の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、全ての図においては、同一又は相当する部分には、同一の符号を付してある。また、以下の説明における「軸方向」、「周方向」、「径方向」とは、各ギアの軸方向、周方向及び径方向を示す。
【0011】
(構成)
図1は、本発明のアクチュエータの構造を示す断面図(軸方向に沿う面で切断した断面の図)である。本発明のアクチュエータ1は、回転運動を直線運動に変換するボールねじを利用することにより、電動モータ等の駆動源から入力された回転力を軸力(軸方向力)に変換して出力するボールねじ式直動型アクチュエータである。
【0012】
本発明のアクチュエータ1は、駆動源となる電動モータ11を備える電動モータユニット10と、回転運動を直線運動に変換するボールねじ21を用いて出力軸24を直線運動せしめる出力ギアユニット20と、電動モータ11から回転力を受けてボールねじ21のねじ軸22に伝達する中間ギアユニット30と、電動モータユニット10、出力ギアユニット20、中間ギアユニット30を取付け固定するハウジング部材40と、ハウジング部材40と対になり中間ギアユニット30を収容するカバー部材50と、からなる。
【0013】
電動モータユニット10は、電動モータ11と、入力軸12と、入力ギア13で構成される。入力軸12は電動モータ11と同軸上に連結されている。また、入力軸12の外周に入力ギア13がベアリングナット14により軸方向から螺合されている。この螺合により、嵌合面でのフレッチングの発生、及び入力ギア13の入力軸12からの脱落が防止されている。このように一体構造として組み立てられた電動モータユニット10において、電動モータ11の回転は、入力軸12を介して入力ギア13へ伝えられ、中間ギアユニット30を経由して出力ギアユニット20へ出力される。
【0014】
出力ギアユニット20は、ボールねじ21、出力軸24、転がり軸受26、軸受収容部材27、出力ギア28で構成されている。ボールねじ21は、螺旋状のねじ溝22aを外周面に有するねじ軸22と、ねじ軸22のねじ溝22aに対向する螺旋状のねじ溝23aを内周面に有するナット23と、両ねじ溝22a、23aにより形成される螺旋状のボール転動路内に転動自在に装填された複数のボール(図示せず)と、前記ボールを前記ボール転動路の終点から始点へ戻し循環させるボール循環路(図示せず)と、を備える。
【0015】
すなわち、前記ボールは、前記ボール転動路内を移動しつつねじ軸22の回りを回って前記ボール転動路の終点に至り、そこで前記ボール転動路から掬い上げられて前記ボール循環路の一方の端部に入る。前記ボール循環路に入った前記ボールは前記ボール循環路内を通って前記ボール循環路の他方の端部に達し、そこから前記ボール転動路の始点に戻されるようになっている。なお、ねじ軸22、ナット23、及び前記ボールの素材は特に限定されるものではなく、一般的な材料を使用可能であり、例えば鋼等の金属やセラミックがあげられる。また、ねじ溝22a、23aの断面形状は、円弧状でもよいしゴシックアーク状でもよい。
【0016】
ボールねじ21は、前記ボールを介してねじ軸22に螺合されているナット23とねじ軸22とを相対回転運動させると、前記ボールの転動を介してねじ軸22とナット23とが軸方向に相対直線移動するようになっている。そして、前記ボール転動路と前記ボール循環路により無端状のボール通路が形成されており、前記ボール転動路内を転動する前記ボールが無端状の前記ボール通路内を無限に循環するようになっているため、ねじ軸22とナット23とは継続的に相対直線移動することができる。
【0017】
ボールねじ21のナット23は、出力軸24の中空内部の軸方向一端部(図1では右端の開口部)に内包されており、例えばコッター等の固定要素(図示せず)によって出力軸24に連結されている。また、ねじ軸22の出力軸24と反対側端部付近(図1では右端付近)には、軸受収容部材27内に収納された軸受26が圧入嵌合されており、これによりねじ軸22は、出力ギアユニット20をハウジング部材40に組み付けた際に、ハウジング部材40に回転自在に支持されるようになっている。更に、同じ側のねじ軸22端部には出力ギア28が圧入嵌合されており、中間ギアユニット30から出力ギア28へ入力された回転が、ねじ軸22へと伝わるようになっている。このような構成により、出力ギアユニット20は一体構造となり、出力ギア28及び転がり軸受26とねじ軸22の嵌合面でのフレッチングや、出力ギア28のねじ軸22からの脱落を防止できる。
【0018】
図2は、中間ギアユニット30の断面図で、図1のA方向矢視図である。中間ギアユニット30は、出力ギア28と噛合う出力側中間ギア31と、入力ギア13と噛合う入力側中間ギア32と、入力側中間ギア32のカバー部材50側を支持する転がり軸受33と、入力側中間ギア32のハウジング部材40側を支持する転がり軸受36と、転がり軸受36を内包する軸受収容部材35で構成される。入力側中間ギア32は、入力ギア13と噛合うギア部32aと、ハウジング部材40側に伸びる第1シャフト部32bと、カバー部材50側に伸びる第2シャフト部32cとを有し、ギア部32aの軸方向端面と突き当たるように出力側中間ギア31は第2シャフト部32cの外周に圧入嵌合される。この出力側中間ギア31は、入力側中間ギア32よりも歯数が少なく小径となっている。出力側中間ギア31の歯数を小さくすることにより減速比を大きくすることができる。
【0019】
転がり軸受33は、この出力側中間ギア31と隣接するように、第2シャフト部32c端部の外周面に圧入嵌合され、軸受収容部材35に内包された転がり軸受36は第1シャフト部32bの外周面に圧入嵌合されている。このような構成により、中間ギアユニット30は一体構造となり、出力側中間ギア31及び転がり軸受33、36と第1、第2シャフト部32b、32cとの嵌合面でのフレッチングや、シャフト部からの脱落が防止できる。
【0020】
以上の電動モータユニット10、出力ギアユニット20、中間ギアユニット30は、各ユニットを前述のように一体構造として組立てた後、図1のようにハウジング部材40に組み付けられる。すなわち、出力ギアユニット20の出力軸24は、ハウジング部材40に形成された円筒の出力軸収容筒部41に同軸に嵌合され、出力ギア28がハウジング部材40に対して出力軸24と逆側(図1の右側)に位置するように、出力ギアユニット20はハウジング部材40に組み付けられる。このとき、軸受収容部材27は、軸受収容部材27及び転がり軸受26を介してねじ軸22がハウジング部材40に対し回転自在に支持される位置に固定される。
【0021】
また、電動モータユニット10は、ハウジング部材40に対し軸方向出力軸24側(図1の左側)に電動モータ11が位置し、且つ入力ギア13が出力ギア28と同じ側に位置するように、ハウジング部材40に組み付けられる。このように電動モータ11と出力軸24をハウジング部材40に対し同じ側に配置することで、アクチュエータ1の軸方向寸法を小さくすることができる。
【0022】
また、このとき入力ギア13を出力ギア28よりもハウジング部材40側に(図1において入力ギア13を出力ギア28よりも左側に)配置する。これは、電動モータ11の取付面と入力ギア13との距離を短くして、電動モータ11に作用するギアの反力によるモーメントを小さくするためである。これにより、電動モータ11を小さくすることができるので、アクチュエータ1を小型化でき、安価にすることができる。またモータの寿命低下を防止することが可能となる。
【0023】
中間ギアユニット30は、出力側中間ギア31と出力ギア28が、入力側中間ギア32と入力ギア13が噛合うようにハウジング部材40に組み付けられる。各ユニットがハウジング部材40に組み付けられた後、カバー部材50が組み付けられるが、これにより、カバー部材50の軸受収容部51に、中間ギアユニット30のカバー部材50側の転がり軸受33が嵌合する。これにより、中間ギアユニット30の出力側中間ギア31及び入力側中間ギア32は、ハウジング部材40とカバー部材50に対して回転自在に支持される。
【0024】
ところで、前述の通り出力側中間ギア31は入力側中間ギア32よりも小径となり、かつ入力側中間ギア32が出力側中間ギア31よりもハウジング側に配置されている。このような場合、出力ギア28と出力側中間ギア31とが噛合う際に、図1に示すように、軸受収容部材27と出力軸24とが、入力側中間ギア32の歯先円直径と干渉する配置となる。これにより、出力ギアユニット20と中間ギアユニット30とを順に、ハウジング部材40に軸方向から組み付けることは困難となる。
【0025】
すなわち、出力ギアユニット20を先にハウジング部材40に組み付けた場合、中間ギアユニット30の入力側中間ギア32の歯先円直径と出力ギア28の歯先円直径とが干渉する。逆に中間ギアユニット30を先にハウジング部材40に組み付けた場合、入力側中間ギア32の歯先円直径と出力ギアユニット20の出力軸24とが干渉する。このような問題を解決するアクチュエータ1の組立方法について、図1及び図3を用いて説明する。
【0026】
(組立方法)
図3は、出力ギアユニット20及び中間ギアユニット30をハウジング部材40に組み付ける様子を軸線方向から見た図である。出力ギアユニット20は、出力軸24の軸方向端部(図1の左側)からハウジング部材40に設けられた出力軸収容筒部41へ挿入され、図3(a)のように、ボルト29により軸受収容部材27とハウジング部材40とを締結することで、ハウジング部材40に固定される。ハウジング部材40には、軸受収容部材27の外周と略同形状の軸受収容部材27を収容するための第1の凹部42が設けられ、この第1の凹部42に軸受収容部材27を嵌め込むことにより、出力ギアユニット20のハウジング部材40に対する相対位置を正確に位置決めすることができる。
【0027】
次に、中間ギアユニット30をハウジング部材40に組み付ける。ハウジング部材40には、中間ギアユニット30を収容するための第2の凹部43が設けられている。第2の凹部43の出力ギアユニット20側(図3の上側)の第1縁部43aの少なくとも一部は、中間軸ユニット30の軸受収容部材35の同じ側の側面35aと略同一の形状を有する。この第1縁部43aは、前記側面35aが第1縁部43aと接触する位置に中間ギアユニット30を配置したとき(図3(a))、出力ギア28と出力側中間ギア31とが噛合う位置に設けられている。
【0028】
第2の凹部43の第1縁部と対向する第2縁部43bは、その少なくとも一部が軸受収容部材35の同じ側の側面35bと略同一の形状を有するようになっている。この第2縁部43bは、前記側面35bが第2縁部43bと接触する位置に中間ギアユニット30を配置したとき(図3(b))、出力ギア28の歯先円直径と入力側中間ギア32の歯先円直径とが干渉しない位置に設けられている。すなわち、出力ギア28の中心軸と入力側中間ギア32の中心軸との距離Dが、出力ギア28と入力側中間ギア32の歯先円半径の和と同じまたはそれ以上となる。更に、両縁部43a、43bは、軸受収容部材35の幅X(図3の左右方向長さ)と略同等の間隔を保って対向する第3縁部43c及び第4縁部43dにより接続されており、第2の凹部43は、軸受収容部材35とハウジング部材40との接触面の形状よりも、出力ギア28の回転中心と入力ギア13の回転中心とを結ぶ直線方向に伸びた形状を有している。
【0029】
このような第2の凹部43内部に、第2縁部43bと軸受収容部材35の側面35bとが接触するように、中間ギアユニット30を嵌め込む(図3(b))。次に、第1縁部43aと軸受収容部材35の側面35aとが接触する位置、すなわち出力ギア28と出力側中間ギア31とが噛合う位置まで、中間ギアユニット30を出力ギアユニット20側にスライド(平行移動)させる(図3(a))。この位置において、ボルト34を用いて軸受収容部材35とハウジング部材40とを締結することにより、中間ギアユニット30をハウジング部材40に固定する。
【0030】
中間ギアユニット30の組み付け後、電動モータユニット10をハウジング部材40にボルトにより締結固定する。ハウジング部材40に対し中間ギアユニット30の逆側から、ハウジング部材40に形成された取付孔44に電動モータユニット10を入力ギア13側から挿入し、電動モータ11をボルト(図示せず)により固定する。この時、電動モータ11のフランジ部11aとハウジング部材40に形成された嵌合部44a(図1)とを嵌合させる。これにより、入力ギア13が入力側中間ギア32と噛合う位置で、電動モータユニット10は位置決めされる。
【0031】
最後にカバー部材50をハウジング部材40にボルト等で締結固定する。このとき、カバー部材50には、軸方向に伸びる複数のピン(図示せず)が設けられており、こられをハウジング部材に設けられた前記ピンと対応するピン孔に挿入する。これにより、カバー部材50は、転がり軸受33を支持するように位置決めされる。
【0032】
以上のような組立方法によれば、前述した出力ギア28と入力側中間ギア32との干渉を避けることができる。このため、中間ギアユニット30と出力ギアユニット20が前述の条件で制約される場合に、図1に示すような、中間ギアが1列のアクチュエータを組立が可能となり、アクチュエータの小型化や部品点数の低減を実現できる。
【0033】
なお、以上の組立方法では、出力ギア28と出力側中間ギア31とを噛み合わせるために、中間ギアユニット30をスライド(平行移動)させているが、これに限定されない。すなわち、中間ギアユニット30を回転させるようにスライドさせることにより、出力ギア28と出力側中間ギア31とが噛み合う位置に中間ギアユニット30を移動させても良い。詳細には、まず、中間ギアユニット30を固定するボルト34、34のうち一方のボルト34で、中間ギアユニット30をハウジング部材に取り付ける。次に、出力ギアユニット20と干渉しない位置に中間ギアユニット30を回転移動させ、出力ギアユニット20を組み付ける。その後、出力ギア28と出力側中間ギア31とが噛み合う位置まで、固定側のボルト34を中心として中間ギアユニット30を回転させ、他方のボルト34を取り付けることにより、中間ギアユニット30を固定する。このとき、第2の凹部43の形状を、中間ギアユニット30の移動経路に合わせた形状としても良い。なお、本説明では、単に「スライド」と表記した場合は、平行移動、回転、及び平行移動と回転の組合せも含む。
【0034】
ところで、上述したように、電動モータユニット10、出力ギアユニット20及びカバー部材50は、凹部やピン等により、ハウジング部材40の適切な位置へ正確に配置することができる。これに対し、中間ギアユニット30は、ハウジング部材40の第2の凹部43に軸方向から嵌め込まれた後、出力ギア28の方へ第2の凹部43内をスライドさせられる。このため、凹部との嵌合やピンによる位置決めができず、径方向の位置決めが困難となる。このため、出力ギア28及び入力ギア13と、入力側中間ギア32及び出力側中間ギア31との軸間距離が適正値に保たれないままに中間ギアユニット30がハウジング部材40に取り付けられる可能性がある。この位置決めを簡便且つ適切に行うための手法及び構造について、以下、図2及び図4〜6を用いて説明する。
【0035】
(位置決め方法)
図4はボルト34の拡大図、図5は前記ボルト34を螺合させる被締結部45の断面図、図6は軸受収容部材35の断面図である。図4に示す通り、ボルト34は、頭部34aと雄ねじ部34bとの間に、ねじ溝が形成されていない円筒部34cが形成されている。この円筒部34cはJIS B 0401で示されるIT8以上の精度で研磨加工されており、軸受収容部材35のボルト孔35cの深さYよりも長くなっている。軸受収容部材35のボルト孔35の内周面は円筒部34cと同様にIT8以上の精度で研磨加工してあり、円筒部34cの外径と略同径となっている。
【0036】
図5に示すハウジング部材40の被締結部45には、ボルト34の雄ねじ部34bと螺合する雌ねじ部45aが形成され、前述した第2の凹部43と雌ねじ部45aとの間には、円筒部45bが設けられている。この円筒部45bも、ボルト34の円筒部34c及び軸受収容部材35のボルト孔35cと同様にIT8以上の精度で研磨加工された略同径の円筒内周面を有する。
【0037】
ボルト34は軸受収容部材35のボルト孔35c及び被締結部45に挿入され、ボルト34の雄ねじ部34bを被締結部45の雌ねじ部45aに螺合させることにより、軸受収容部材35はハウジング部材40に固定される。このとき、ボルト34の円筒部34c、軸受収容部材35のボルト孔35c、ハウジング部材40のボルト孔45の円筒部45bは、いずれも研磨加工により略同径の円筒面がIT8以上の精度で形成されているため、各ボルト孔とボルト34は同軸に固定される。
【0038】
この結果、ボルト34全体に雄ねじ溝が形成され、ボルト孔35c及び被締結部45に雌ねじ溝が形成された場合よりも、軸受収容部材35をハウジング部材40に対してボルト径方向のずれが小さくなり、正確な位置に組み付けることが可能となる。この結果、中間ギアユニット30の高精度な位置決めが可能となる。
【0039】
なお、上記の例ではボルト34の円筒部34c、軸受収容部材35のボルト孔35の内周面、ハウジング部材40のボルト孔45の円筒部45bを研磨加工する例を示したが、これに限定されず、研磨加工と同等の精度、すなわちIT8以上の精度で加工されていれば良く、高精度な切削加工を用いることもできる。また、上記の例において第2の凹部43を形成しなくても、入力側中間ギア32と出力ギア28とが干渉しないように中間ギアユニット30をハウジング部材40上に配置した後、中間ギアユニット30を出力ギアユニット20方向にスライドさせることにより、アクチュエータ1を組み立てることもできる。しかしながら、上述のように、正確な位置決めをするためには、第2の凹部43を形成することが好ましい。
【0040】
また、ボルト34の頭部がカバー部材50と接触する位置までボルト34が緩んだ場合でも、ボルト34の円筒部34cとハウジング部材40の被締結部45の円筒部45bとが嵌合していることが好ましい。これにより、ボルト34が緩んでも、ボルト34や中間ギアユニット30が脱落しないだけでなく、上述のハウジング部材40に対する中間ギアユニット30の位置決め精度を維持することができる。この結果、万が一ボルト34が緩んだ場合でも、出力ギア28と出力側中間ギア31、入力ギア13と入力側中間ギア32の噛合精度を保つことができるので、アクチュエータとしての機能を損なうことがない。
【0041】
以上のように、本発明のアクチュエータによれば、上述のような制約がある場合に、中間ギアを1列とすることができるので小型化、及び部品点数低減が可能となる。また、中間ギアユニットをハウジング部材にスライドさせて組み付けることにより、組立性を損なうことがない。更に、IT8以上の精度で加工した円筒部を持つボルト及びボルト孔を形成することにより、中間ギアユニットの位置決めも簡便且つ高精度に行うことができる。
【符号の説明】
【0042】
1 アクチュエータ
10 電動モータユニット
11 電動モータ
12 入力軸
13 入力ギア
14 ベアリングナット
20 出力ギアユニット
21 ボールねじ
22 ねじ軸
23 ナット
24 出力軸
26 転がり軸受
27 軸受収容部材
28 出力ギア
30 中間ギアユニット
31 出力側中間ギア
32 入力側中間ギア
33 転がり軸受
34 ボルト
35 軸受収容部材
36 転がり軸受
40 ハウジング部材
41 出力軸収容筒部
42 第1の凹部
43 第2の凹部
44 取付孔
45 被締結部
50 カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータ及び電動モータと同軸に接続される入力ギアを有する電動モータユニットと、
出力ギアから入力された回転を出力軸の直線運動に変換して出力する出力ギアユニットと、
前記入力ギアと前記出力ギアの間に配置され、前記入力ギアの回転を変速して前記出力ギアへ伝達する変速機能を有する中間ギアユニットと、
前記電動モータユニット及び前記出力ギアユニット、前記中間ギアユニットが組み付けられるハウジング部材と、
前記ハウジング部材と対になり前記中間ギアユニットを収容するカバー部材と、からなるアクチュエータにおいて、
前記電動モータ及び前記出力軸は、前記ハウジング部材に対し軸方向に同じ側に組み付けられ、
前記中間ギアユニットは、前記入力ギアと噛合う入力側中間ギアと、前記出力ギアと噛合い、前記入力側中間ギアと同軸に配置される出力側中間ギアとで変速を行い、
前記入力側中間ギアは前記出力側中間ギアよりも歯先円直径が大きく、前記入力側中間ギアが前記ハウジング部材側に位置することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記中間ギアユニットは、前記ハウジング部材にボルトにより固定され、
前記ボルトは前記ハウジング部材側から順に、雄ねじ部と、IT8以上の精度で加工された円筒部と、頭部を有し、
前記ボルトを前記ハウジング部材に螺合させるために前記ハウジング部材に形成された被締結部は、前記中間ギアユニット側から順に、IT8以上の精度で加工された円筒部と、雌ねじ部を有し、
前記中間ギアユニットは当該ボルトを挿入するためのIT8以上の精度で加工された円筒孔を有し、
前記ボルトの前記円筒部と、前記ハウジング部材の前記円筒部と、前記中間ギアユニットの前記円筒孔とは略同径となっていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアクチュエータの組立方法であって、
前記出力ギアユニットを固定した前記ハウジング部材において、
前記入力側中間ギアと出力ギアとが干渉しないように前記中間ギアユニットを前記ハウジング部材上に配置した後、
前記中間ギアユニットを前記出力ギアユニット方向にスライドさせることを特徴とするアクチュエータの組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−189205(P2012−189205A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−15330(P2012−15330)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】