説明

アクリル系人工大理石の製造方法。

【課題】離型フィルムが皺になったり、カールしたりすることなく、製品に皺が入らない品位の高い製品が得られ、生産性が改善されたアクリル系人工大理石の製造方法を提供すること。
【解決手段】温風循環式加熱炉1によりアクリル系人工大理石板を製造するに際し、該温風循環式加熱炉に隣接する仕切室6において、離型フィルム7を貼り付けたエンドレスベルトか5らなる水平な平面型上に、メタクリル酸メチルを主体とする不飽和単量体(I)、無機粉末(II)および重合開始剤(III)を含有するアクリル系単量体混合物を供給した後、温風循環式加熱炉1内に搬送し、硬化させる工程を含むアクリル系人工大理石の製造方法であって、離型フィルム7として、それを平面型に貼り付ける直前において、その水分率と仕切室6内の相対湿度における平衡水分率との差が、±0.5質量%以内であるものを用いるアクリル系人工大理石の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉内にアクリル系単量体混合物を供給し重合させることによりアクリル系人工大理石板を得る製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系樹脂重合原料混合物を重合し硬化させ板状品を得る方法として、鋳型法と連続製造方法の2種類の方法が知られている。鋳型法は2枚の金属板或いはガラス板に樹脂ガスケットを介してクランプで圧着した型枠に混合物を注入し、湯浴あるいは空気循環オーブンで硬化させた後、型枠を解体して最終製品を収得する方法である。このような方法はバッチ式操作なので操作が煩雑であり、製造費用も上昇して生産性が非常に低いという問題がある。
【0003】
一方、生産性に優れた連続製造方法としては、1組または対向する2組のスチール製エンドレスベルトと付帯装置から構成される連続硬化装置に連続的にアクリル系単量体混合物を注入し、スチールベルトの移動につれて適切な加熱、次いで冷却が可能な装置などから構成される硬化装置を用いて連続的に硬化させ、板状の製品を製造する方法である。
【0004】
更に特許文献1には、アクリル系人工大理石板を連続的に製造するにあたり、硬化反応を空気循環による加熱冷却装置で均一に重合する方法が開示されている。この方法は、1組のエンドレスベルトとフィルムとで形成される空間にアクリル系樹脂人工大理石板重合原料混合物を連続的に注入し、スチールベルトの移動に応じて連続的に硬化させるにあたり、加熱域と冷却域の2区域以上に区分し、各区域に送風機、ヒーター、循環ダクト、ノズルユニットからなる空気循環装置をベルト面に対し、上下対称に設装して、上下面を均一に硬化させる方法である。
【0005】
ここで使用するフィルムはアクリル系樹脂人工大理石板重合原料混合物を上下からはさみ込み、揮発成分の揮発防止、形状保持、鏡面・エンボス面等面状転写、ベルト面からの離型を容易にする。
【0006】
フィルムの材質としては、特許文献2には、製品表面の皺生成防止のためには重合温度(一般的には60〜130℃)の条件下で熱収縮率が小さいかまたは重合原料の重合に際する面方向の収縮率に近いことが好ましく、離型性や強度等を考慮して、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコールを用いることが好ましいとしており、特に離型性とガスバリヤー性に優れたポリビニルアルコールを使用したビニロンフィルムが良いとされている。
【0007】
しかしながらポリビニルアルコールを使用したビニロンフィルムは吸湿性が高く、湿潤状態では伸びて皺になり、乾燥状態では端部がカールして型枠に皺無く貼り付けることが容易ではない。また型枠に貼り付けた後も片面のみから雰囲気と水分の授受が進む為、伸びて型から浮いたり、カールして型から剥がれたりする。そのままにアクリル系樹脂重合原料混合物を載せ重合すると製品面に皺が転写、形状不良となり、製品の品位の低下、加工、据付時の不具合に繋がる為、研削・研磨して皺を取り除く工程が必要となり、生産性の悪い製造方法となっている。
【0008】
【特許文献1】特許第3190601号公報
【特許文献2】特開2000−317964公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述したような従来技術の課題を解決する為になされたものであり、離型フィルムが皺になったり、カールしたりすることなく、製品表面に皺が入らない品位の高い製品が得られ、生産性が改善されたアクリル系人工大理石の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、
温風循環式加熱炉によりアクリル系人工大理石板を製造するに際し、該温風循環式加熱炉に隣接する仕切室において、離型フィルムを貼り付けた水平な平面型上に、メタクリル酸メチルを主体とする不飽和単量体(I)、無機粉末(II)および重合開始剤(III)を含有するアクリル系単量体混合物を供給した後、温風循環式加熱炉内に搬送し、硬化させる工程を含むアクリル系人工大理石の製造方法であって、離型フィルムとして、それを平面型に貼り付ける直前において、その水分率と仕切室内の相対湿度における平衡水分率との差が、±0.5質量%以内であるものを用いることを特徴とするアクリル系人工大理石の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアクリル系人工大理石の製造方法は、アクリル系単量体混合物を該混合物の上部と下部にフィルムを貼り付けて連続的に温風循環式加熱炉で硬化させるにあたり、離型フィルムが皺になる、またはカールするなどして製品面に皺が転写して表面品位が低下することなく、また発生した皺を研削・研磨して取り除く工程が不要な、生産性の優れた製造方法にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で用いるアクリル系単量体混合物は、メタクリル酸メチルを主体とする不飽和単量体(I)、無機粉末(II)、重合開始剤(III)を含有する。また必要に応じて、燐酸エステル系やシラン系などのカップリング剤、ステアリン酸などの離型剤、染顔料、補強材、改質剤、安定剤、紫外線吸収剤、難燃化剤、重合調節剤、抗菌剤等の各種の添加剤を含有させることも可能である。
【0013】
本発明で使用するメタクリル酸メチルを主体とする不飽和単量体(I)とは、メタクリル酸メチルを50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは75質量%以上含有し他の不飽和単量体を含有していてもよい、不飽和単量体または不飽和単量体混合物をいう。不飽和単量体(I)中のメタクリル酸メチルの割合が50質量%以上であると、得られるアクリル系人工大理石が耐候性や高級感に優れたものとなる。
【0014】
メタクリル酸メチルと併用することのできる他の不飽和単量体は、メタクリル酸メチルと共重合し得るものであれば特に制限はない。そのようなものの具体例としては、1分子中の炭素原子数が1〜18の一価アルコールまたは一価フェノールとアクリル酸とのエステル、1分子中の炭素原子数が2〜18の一価アルコールまたは一価フェノールとメタクリル酸とのエステル、1分子中の炭素原子数が2〜4の二価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン、エチレン、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、ブタジエン、イソプレン、グリシジル(メタ)アクリレート等の一官能性不飽和単量体;(メタ)アクリル酸とエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、テトラメチロールメタン、ジメチロールエタン、トリメチロールエタン、ジメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールとの多価エステル、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート等の多官能性不飽和単量体;等をあげることができるが、これらに限定されるものではない。なお、メタクリル酸メチルと併用する他の不飽和単量体は、2種類以上の混合物であることも可能である。
【0015】
中でも不飽和単量体(I)には、得られるアクリル系人工大理石の耐熱性、耐汚染性等を向上させるために多官能性不飽和単量体を併用することが望ましい。多官能性不飽和単量体の種類としては、上述のものを使用し得るが、とりわけエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等が好ましい。多官能性不飽和単量体の含有量は、不飽和単量体(I)の0.05〜5質量%であるのが好ましく、0.1〜4質量%であるのがより好ましい。多官能性不飽和単量体の含有量が0.05質量%未満であると、得られるアクリル系人工大理石の耐熱性、耐汚染性等が低下し実用性能が伴わず、一方5質量%を越えると、加工時の曲げ抵抗が大きくなり過ぎて曲げ加工性が悪化する傾向がある。
【0016】
不飽和単量体(I)には、アクリル系単量体混合物の粘度調節のため、得られるアクリル系人工大理石に外観上の問題を発生しない限りにおいて、メタクリル酸メチルを主体とする単量体から形成される重合体を混合してもよい。従って、本発明における不飽和単量体(I)には、その一部を重合体として溶解含有するシラップも包含される。混合させる重合体は、必ずしも1種類の重合体である必要はなく、アクリル系人工大理石の特性を損なわない範囲において、組成あるいは分子量分布を異にする複数種類の重合体のブレンド物であってもよい。また、該重合体を含有させる方法としては、例えば、ビーズ状、ペレット状などの重合体を不飽和単量体に直接溶解させる方法、不飽和単量体を低い重合率まで重合させておく方法等を挙げることができる。
【0017】
本発明で使用する無機粉末(II)は、メタクリル酸メチルを主体とする不飽和単量体(I)に不溶で、その重合硬化を阻害しないものであれば特に制限はなく、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、シリカ、タルク、クレー等の粉末を使用することができる。中でも得られるアクリル系人工大理石に高級感を与えるために、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、シリカが好ましく用いられ、水酸化アルミニウムがより好ましく用いられる。これらの無機粉末(II)は2種類以上を併用することも可能である。
【0018】
無機粉末(II)の使用量は、アクリル系人工大理石に要求される性能等によって定まるものであるが、不飽和単量体(I)と無機粉末(II)との総量を基準にして80〜20質量%であり、好ましくは70〜40質量%である。無機粉末(II)の使用量が20質量%未満であると、得られるアクリル系人工大理石の耐熱性、硬度等が低下し、また高級感を呈さなくなる。一方、使用量が80質量%を超えると、アクリル系単量体混合物をスラリー化できずに混合が困難となり、得られるアクリル系人工大理石の強度等も低下する。
【0019】
本発明で使用する重合開始剤(III)は、加熱炉内温度に対し10〜60℃低い10時間半減期を持つ重合開始剤が好ましく、より好ましくは加熱炉内温度に対し40〜60℃低い10時間半減期を持つ重合開始剤であり、使用量については特に制限されない。加熱炉内温度と10時間半減期温度の差が10℃より小さいと熱分解速度が緩慢となり硬化時間が長く生産性に乏しくなるため好ましくない。また差が60℃より大きいと重合開始剤の保管、取扱が容易でない上に、重合時の加熱により急激に分解が進む為硬化物に発泡を生じたり、ラジカル失活により硬化物の反応率が低下したりする。なお、本発明でいう「10時間半減期温度」とは、重合開始剤分子が熱分解して10時間後に当初の半分の数に減ずる温度を指す。つまり、同じ重合温度においては、10時間半減期温度の高い重合開始剤ほどその分解速度が遅く、重合反応の速度も遅いことを意味する。
【0020】
また10時間半減期温度が上記範囲内の重合開始剤は単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。また本発明における重合開始剤としては、10時間半減期温度が上記範囲外の開始剤を組み合わせて併用することもでき、目的や用途に応じて適宜選択することができる。
【0021】
本発明の製造方法では、水平に置いた平面型上に、離型フィルムを密着するように貼り付ける。平面型の材質は、金属板、ガラス板などを挙げることができ、中でもスチール板、ステンレス板が好ましい。平面型はその面内で人工大理石板の製造に供される部分が平面であれば、エンドレスベルトの如く残余の部分が曲面となっていてもよい。水平とは、人工大理石板を製造するにあたり、所望の平面精度、板厚精度が得られる限りにおいて略水平であればよい。
離型フィルムは、平面型との間に皺に伴なう隙間ができたり気泡が入り込んだりせぬようにニップロール等で圧着して密着させる。離型フィルムに隙間や気泡ができると、その上に供給されて硬化させるアクリル系単量体混合物に形状が転写されるため、得られるアクリル系人工大理石の表面に凹部欠陥を生じる原因となる。
【0022】
本発明で使用する離型フィルムとしては、平面型に接する下側と必要に応じて用いられる上側とでその材質を問わないが、重合温度(例えば60〜130℃)の条件下で、熱収縮率が小さいかまたは重合原料の重合に際する面方向の収縮率に近いことや強度等を考慮して、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコールを挙げることができる。中でも離型性と単量体蒸気のガスバリヤー性を考慮するとポリビニルアルコールを用いることが好ましい。
さらにポリビニルアルコール製のフィルム(ビニロンフィルム)を用いる場合、炉内に挿入する前の水分率が1質量%以上12質量%以下である事が望ましい。1質量%未満であると、室内の温湿度環境を維持する事が困難になる場合がある。また1質量%未満であるとフィルムの柔軟性が乏しくなり、平面上への貼付が困難になる場合がある。一方12質量%より大きいとフィルムの剛性が不足し、取り扱いが困難になる場合がある。
本発明では、離型フィルムを平面型に密着させる時点において、離型フィルムの水分率(質量%)から仕切室内の相対湿度における平衡水分率(質量%)を引いた差が、−0.5〜+0.5質量%であるように調湿した離型フィルムを用いる。離型フィルムの片面が平面型、他の面が空気に触れている単量体混合物供給前の状態では、空気面のみからしか吸放湿しないため、上記のの範囲を上回る、すなわち離型フィルムの水分率が高いと放湿してカールしたり、上記の範囲を下回る、すなわち離型フィルムの水分率が低いと吸湿して皺が発生したりする。
【0023】
水分率の調整方法としては、離型フィルムの製造時に水分率を所定値に調整し防湿梱包して保持する方法;使用前に平面型上に離型フィルムを貼り付ける室内とできるだけ同じ環境に調温、調湿した部屋に数日間保管し安定させる方法;巻出しロールから平面型までに仕切室の雰囲気で調湿することのできる時間を長くする方法;などを挙げることができる。仕切室の気温は、湿度を調節し易い点や不飽和単量体の重合防止の点から15〜30℃であるのが好ましく、18〜25℃であるのがより好ましい。仕切室の湿度は、離型フィルムの平衡水分率が適切な範囲に入る点から60〜80%RHであるのが好ましく、63〜75%RHであるのがより好ましい。離型フィルムの尚、本明細書において、仕切室内という表現は貼り付けを行う周辺環境の事を言い、加熱炉に隣接た区画であれば、例えばブース内、チャンバ内、槽内などをも含む。
【0024】
本発明において、アクリル系単量体混合物を伴なった平面型を温風循環式加熱炉に供給し重合する方法としては、前述した先行技術の他に、アクリル系単量体混合物を上下2枚の離型フィルム付き平面型板間に注入したセルを搬送装置で連続的に供給する方式;例えば1組のエンドレスベルトと離型フィルムとサイドリテーナー、または上下2組のエンドレスベルトと離型フィルムとサイドリテーナーで形成される空間にアクリル系単量体混合物を連続的に注入し、スチールベルトの移動に応じて連続的に硬化させる方式など、進行方向に有限または無限に連続する担持体上にアクリル系単量体混合物を流したものを搬送する方式;のいずれであってもアクリル系単量体混合物を炉内に供給をできる方式であれば制限を受けない。
【実施例】
【0025】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はそれらにより何ら制限されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、離型フィルムの水分率、平衡水分率の測定は以下のようにして求めた。
【0026】
(1)離型フィルムの水分率:
200×200mmに切り出した離型フィルムを測定した時の質量を(Wc)とし、その後熱風乾燥器にて120℃−2時間加熱後測定した時の質量を(Wd)とし、下記の数式により離型フィルムの水分率を求めた。
離型フィルムの水分率(wt%)={Wc−Wd}÷Wd×100
【0027】
(2)貼り付け環境での離型フィルムの平衡水分率:
離型フィルムを200×200mmに切り出し、熱風乾燥器内でフィルムの一辺を2箇所クリップで吊るし、120℃−2時間加熱後測定した時の質量を(Wd)とし、同様に平面上に離型フィルムを貼り付ける室内に30分吊るした後に測定した時の質量を(Ww)とし下記の数式により平面上に離型フィルムを貼り付ける室内環境でのでの平衡水分率を求めた。
離型フィルムの平衡水分率(wt%)={Ww−Wd}÷Wd×100
[式中、Wcは採取した離型フィルム試料の質量(g)、Wdは加熱後の試料質量(g)、Wwは室内に30分放置後に採取した試料の質量(g)を示す。]
【0028】
《実施例1》
厚み50μmのポリビニルアルコール(ポバール)フィルム(VF−L#5000、クラレ社製)を200×200mmに切り出し、質量を測定し、そしてそのフィルムを熱風乾燥器 [セーフティオーブンSPH−100:タバイエスペック社製]内に一辺をクリップ2点止めで吊り、120℃−2時間加熱後質量を測定し離型フィルムの水分率を求めたところ7.7質量%であった。
【0029】
加熱炉の手前にある、エンドレスステンレスベルトの一端がある仕切られた室内で、上記の離型フィルムの一辺を2箇所クリップで吊るし、30分放置後の質量を測定し貼り付け環境での離型フィルムの平衡水分率を求めたところ7.9質量%であった。尚、この時室内は気温20℃、相対湿度66%であった。
【0030】
前記室内環境のまま、エンドレスステンレスベルトの一端に上記の離型フィルムを連続的に載せながらロールでニップしベルトにフィルムを貼り付けた後にアクリル系単量体混合物として、メタクリル酸メチル(MMA) 285質量部、メタクリル樹脂(PMMA、商品名「パラビーズ」、クラレ社製)100質量部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート(BG) 15質量部、水酸化アルミニウム粉末(ハイジライト、昭和電工社製) 600質量部を混合し、真空下で脱気して得たアクリル系単量体混合物を30℃に温調した後、定量ポンプでインラインミキサーに2.0kg/分で連続的に投入し、同時に重合開始剤ターシャリーブチルパーオキシネオデカノエート(商品名「パーブチルND」、日本油脂製、10時間半減期温度46.4℃)をアクリル系単量体混合物1kg当たり8gの割合で投入して混合した後、離型フィルムを貼り付けたエンドレスステンレスベルトの上部から供給し液の厚みが11mmになるように板状に流延させ
さらにその上に離型フィルムを載せて75℃一定温度とした図1に示す温風循環式重合加熱炉内に連続的に搬送し重合硬化させた。得られたアクリル人工大理石からフィルムを取り除き、平面型側の面状を確認したところ、目的とした平滑な鏡面であった。
【0031】
《実施例2》
フィルムを厚み40μmのポバールフィルム(VF−T#4000、クラレ社製)を200×200mmに切り出し、実施例1と同様に離型フィルムの水分率を求めたところ8.4質量%であった。
【0032】
加熱炉の手前にある、エンドレスステンレスベルトの一端がある仕切られた室内で、上記の離型フィルムの一辺を2箇所クリップで吊るし、30分放置後の質量を測定し貼り付け環境での離型フィルムの平衡水分率を求めたところ8.7質量%であった。尚、この時室内は気温23℃、相対湿度72%であった。
【0033】
前記室内環境のまま、エンドレスステンレスベルトの一端に上記の離型フィルムを連続的に載せながらロールでニップしベルトにフィルムを貼り付けた後に、実施例1と同様にしてアクリル系単量体混合物を上部から供給し液の厚みが11mmになるように板状に流延させ、さらにその上に離型フィルム8を載せて75℃一定温度とした図1に示す温風循環式重合加熱炉内に連続的に搬送し重合硬化させた。得られたアクリル人工大理石からフィルムを取り除き面状を確認したところ、目的とした平滑な鏡面であった。
【0034】
《比較例1》
加熱炉の手前にある、エンドレスステンレスベルトの一端がある仕切られた室内の環境を気温23℃、相対湿度55質量%に変更した以外は実施例1と同様にして離型フィルムの平衡水分率を求めたところ5.9質量%であった。
【0035】
前記室内環境のまま、エンドレスステンレスベルトの一端に上記の離型フィルムを連続的に載せながらロールでニップしベルトにフィルムを貼り付けたが、搬送とともに端部よりフィルムがベルトより剥がれベルトとフィルムの間に空気が入った。そのままアクリル系単量体混合物を上部から供給しさらにその上に離型フィルムを載せて加熱炉内に連続的に搬送し重合硬化させた。得られたアクリル人工大理石からフィルムを取り除き面状を確認したところ、進行方向に皺が複数寄った面状となり平滑にはならなかった。
【0036】
《比較例2》
加熱炉の手前にある、エンドレスステンレスベルトの一端がある仕切られた室内の環境を気温25℃、相対湿度88%に変更した以外は実施例1と同様にして離型フィルムの平衡水分率を求めたところ11.3質量%であった。
【0037】
前記室内環境のまま、エンドレスステンレスベルトの一端に上記の離型フィルムを連続的に載せながらロールでニップしベルトにフィルムを貼り付けたが、搬送とともにフィルムがベルトより端部から徐々に剥がれ無数の皺が発生した。そのままアクリル系単量体混合物を上部から供給しさらにその上に離型フィルムを載せて加熱炉内に連続的に搬送し硬化させた。得られたアクリル人工大理石からフィルムを取り除き面状を確認したところ、全体に皺が寄った面状となり平滑にはならなかった。
【0038】
《比較例3》
加熱炉の手前にある、エンドレスステンレスベルトの一端がある仕切られた室内の環境を気温25℃、相対湿度92%に変更した以外は実施例1と同様にして離型フィルムの平衡水分率を求めたところ13.7質量%であった。
【0039】
前記室内環境のまま、エンドレスステンレスベルトの一端に上記の離型フィルムを貼り付ける為ロールから引き出そうしたところ、フィルムが柔らかくなり過ぎ伸びてしまう為ベルトに貼り付けることができなかった。
【0040】
以下の表1に、上記の実施例および比較例で得られた評価結果を示す。
【0041】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明で示すアクリル系人工大理石板を連続的に製造する装置の側面図の一例。
【符号の説明】
【0043】
1 加熱炉
2 循環ブロワー
3 熱交換器
4、4’ ベルトプーリー
5 エンドレススレンレスベルト
6 仕切室
7 離型フィルム(ベルト貼付用)
8 離型フィルム(アクリル系単量体混合物揮散防止用)
9 アクリル系単量体混合物供給ホース
10 ニップロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温風循環式加熱炉によりアクリル系人工大理石板を製造するに際し、該温風循環式加熱炉に隣接する仕切室において、離型フィルムを貼り付けた水平な平面型上に、メタクリル酸メチルを主体とする不飽和単量体(I)、無機粉末(II)および重合開始剤(III)を含有するアクリル系単量体混合物を供給した後、温風循環式加熱炉内に搬送し、硬化させる工程を含むアクリル系人工大理石の製造方法であって、離型フィルムとして、それを平面型に貼り付ける直前において、その水分率と仕切室内の相対湿度における平衡水分率との差が、±0.5質量%以内であるものを用いることを特徴とするアクリル系人工大理石の製造方法。
【請求項2】
離型フィルムが親水性フィルムである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
離型フィルムがポリビニルアルコールフィルムである請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
平面型がエンドレスベルトである請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−298038(P2009−298038A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155584(P2008−155584)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】