説明

アクリル酸アルキルコポリマー改質延伸ポリプロピレンフィルム、テープ、繊維ならびに織布および不織布

(a)ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンおよびエチレンのランダムコポリマーまたはブロックコポリマー、ならびにポリプロピレン、エチレンおよび他の1種のオレフィンのランダムターポリマーまたはブロックターポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種のポリプロピレンポリマーと、(b)少なくとも1種のエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーを1〜30重量%とを含むフィルム、テープ、スリットフィルム繊維および溶融紡糸繊維が開示される。テープは延伸(すなわち一軸延伸)してモノフィラメント・スリットフィルム繊維を提供することができる。またかかる繊維の調製方法も開示される。また溶融紡糸繊維から調製された不織布も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン/アクリル酸アルキルコポリマーで改質されたポリプロピレンを含むフィルム、テープおよび繊維に関する。それはまた、これらの改質ポリプロピレン組成物から調製された溶融紡糸繊維から調製された織布および不織布にも関する。それはまた、これらの改質ポリプロピレン組成物のスリットフィルム繊維の調製方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンを含む延伸フィルムは、当該技術で公知の多数の方法によって溶融ポリマーから形成されてもよい。フィルムは、テンション装置で縦方向に熱延伸し、アニールすることによって一方向に延伸することができる。フィルムはまた、好適なテンション装置によって2方向(縦方向および横方向)に延伸させることもできる。延伸ポリプロピレン・フィルムは多種多様な包装用途に有用である。
【0003】
ポリプロピレンを含む繊維は、溶融紡糸、遠心紡糸およびメルト−ブローイングをはじめとする、当該技術で公知の多数の方法によって溶融ポリマーから直接形成されてもよい。
【0004】
繊維はまた、押出ポリプロピレン(PP)ホモポリマーまたはコポリマーフィルムから調製されてもよい。フラットフィルムは冷却水浴中へまたはチルドロール上へ押し出し、急冷することができる。あるいはまた、チューブラ・インフレートフィルム(tubular blown film)は環状ダイ(annular die)に通して押し出し、空気急冷することができる。急冷フィルムは次にテープへナイフで細断される。テープは次に、テンション装置で縦方向に熱延伸し、例えば、約2.5mm〜約6.5mmの制御された幅を有する延伸テープをアニールする工程によってそれらの元の長さの数倍に延伸される(すなわち、一軸延伸される)。延伸テープはモノフィラメント繊維を提供する。
【0005】
溶融紡糸繊維は、ドライレイト、ウェットレイド、エアレイド、スパンボンド、スパンレース、およびニードルパンチ法をはじめとする、多くの技術によって不織布へ組み入れることができる。そのように製造された不織布は、衣料(apparel)、カーペット基布、アグロテキスタイルおよびジオテキスタイルをはじめとする広範囲の用途で使用することができる。
【0006】
ポリプロピレン繊維は、撚糸もしくはロープでまたはカーペット用の糸を調製するために使用することができる。ポリプロピレン繊維はまた、防水布、ライナー、旗、サッククロス(sacking)、カーペット基布、アグロテキスタイルおよびジオテキスタイルのような用途で使用される布へ織るまたは編むこともできる。
【0007】
延伸されたスリットフィルム・テープから織られた布のコストを削減するために、
・テープのデニール(類似の幅ではあるがより薄い厚さ)を下げる
・テープの幅を大きくし(類似の厚さで)、寸法当たりのテープの数を減らすことによって織布の構造を小さくする(例えば、8×8テープ/平方インチ構造から5×5テープ/平方インチ構造へ)、および/または
・ポリプロピレン配合物中のCaCOのような不活性フィラーの量を増やす
ことが望ましい。
【0008】
テープを調製する際に使用される通常のポリプロピレン組成物では、上の目標のすべてを達成することはむしろ困難である。より高い延伸比および低下したデニールは、物理的性質の許容されない損失をもたらし得る。高い延伸比下でのPPテープの望ましくないフィブリル化もまた克服されなければならない。
【0009】
同様に、引張破壊荷重、靱性(引張破壊応力)および破断伸びのような改善された機械的性質の延伸ポリプロピレン・フィルムおよび繊維を提供することもまた望ましい。
【0010】
改善された機械的性質のポリプロピレン繊維は、少量の添加剤をポリプロピレンに添加することによって調製されてきた。例えば、PCT特許出願公報(特許文献1)は、滑剤、フィラー、および熱安定剤の組合せよりなる0.1〜20%の添加剤を添加することによるポリプロピレン・モノフィラメントの製造方法を記載している。(特許文献2)は、ポリプロピレンの溶融物に不混和性である0.1〜10%の別のポリマー(具体的には、ポリヘキサメチレンアジパミド)を添加することによるポリプロピレン溶融紡糸繊維の製造方法を記載している。ポリプロピレンはまた、少量の液晶ポリマー、ポリエチレン、ポリエチレングリコールおよびナイロン66の添加によって改質されてきた(非特許文献1)。改質組成物の機械的性質の改善は、紡糸延伸の低下、または巻取速度抑制に起因すると考えられてきた。
【0011】
ポリプロピレンとエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーとのブレンドは以前に開示された(例えば、米国特許公報(特許文献3)を参照されたい)。
【0012】
【特許文献1】国際公開第2003/048434号パンフレット
【特許文献2】欧州特許第0080274B1号明細書
【特許文献3】米国特許第3,433,573号明細書
【特許文献4】米国特許第5,028,674号明細書
【特許文献5】米国特許第2,897,183号明細書
【特許文献6】米国特許第3,350,372号明細書
【特許文献7】米国特許第3,756,996号明細書
【特許文献8】米国特許第5,532,066号明細書
【非特許文献1】応用ポリマー科学雑誌(Journal of Applied Polymer Science)、31(8)(1986)、2753−68ページ
【非特許文献2】ディ.シー.オルポート(D.C.Allport)およびダブリュ.エッチ.ジェーンズ(W.H.Janes)編、「ブロックコポリマー(Block Copolymers)」、第4.4および4.7章、アプライド・サイエンス・パブリッシャーズ社(Applied Science Publishers Ltd)、1973年
【非特許文献3】リチャード ティ.チョウ(Richard T.Chou)、ミミ ワイ.キーティング(Mimi Y.Keating)およびレステター ジェー.ヒューズ(Lester J.Hughes)著、「高圧管型法で製造された高柔軟性EMA(High Flexibility EMA made from High Pressure Tubular Process)」、年次技術会議−プラスチック技術者協会(Annual Technical Conference−Society of Plastics Engineers)、第60回(第2巻)(2002)、1832〜1836ページ。CODEN:ACPED4 ISSN:0272−5223;AN 2002:572809;CAPLUS.
【非特許文献4】ローランド ヒル(Rowland Hill)編、「合成ポリマーからの繊維(Fibers from Synthetic Polymers)」、ニューヨーク、エルゼビア・パブリッシング社(Elsevier Publishing Co)、1953年
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、延伸ポリプロピレン・フィルムおよびテープの引張破壊荷重、靱性(引張破壊応力)および破断伸び(%)のような機械的性質の強化ならびに溶融紡糸ポリプロピレン繊維の靱性および破断伸び(%)の強化に関する。これらの強化は少ない百分率(1〜30重量%、好ましくは1〜15重量%)のエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーをフィルムおよび繊維を調製するために使用されるPP配合物に組み入れることによって達成される(PP配合物は任意選択的に、CaCOのようなフィラーおよびUV安定剤、顔料などのような添加剤から選択される他の材料を含有してもよい)。エチレン/アクリル酸アルキルコポリマーとPPとの混合はまた、例えば、溶融PP樹脂の溶融強度を高めることによってPPの加工性をも改善する。これらのブレンドは、通常のポリプロピレン・フィルムおよび繊維よりも改善された伸縮性および延伸性をフィルムおよび繊維に提供する。これらのブレンドから調製されたテープの延伸性は製造中に改善される(すなわち、ブレンドは何のテープ・フィブリル化もなしにまたは減少したテープ・フィブリル化で増大した延伸比を可能にする)。改質ポリプロピレンブレンドの便益には、破断伸びの何の損失もなしの同じテープまたは繊維デニールでのより高い強度が含まれる。
【0014】
改質ポリプロピレンブレンドはまた、同じ装置処理量で未改質繊維と同じ性能レベルを有するより細デニールのポリプロピレン繊維の製造を可能にすることによりコスト削減をも提供する。あるいはまた、より高い処理量が改善された性能で同じデニールで達成されるかもしれない。本明細書に記載されるブレンドは、より少ない破断によってもたらされる、より低い製造不稼働時間をほとんどの方法に提供するであろう。
【0015】
本発明の目的は、エチレン/アクリル酸アルキルコポリマーをそれらの調製のために使用されるPP樹脂配合物中へ組み入れることによってそれからフィルム、溶融紡糸繊維、スリットフィルム・テープおよび繊維に使用されるポリプロピレン組成物の引張破壊荷重、靱性および破断伸びのような機械的性質を改善することにある。
【0016】
本発明の別の目的は、ある一定レベルのエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーを組み入れることによって、またはポリプロピレン配合物中にエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーを樹脂媒体(フィラー装填のための)として使用することによって、より高レベルのCaCOのような不活性フィラーを装填したポリプロピレンホモポリマー配合物の弾性特性を改善するまたは維持することにある。本目的は、引張特性の損失なしにフィルム、テープおよびスリットフィルム繊維の伸縮性を改善することにある。
【0017】
本発明の別の目的は、少ない百分率のエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーの組み入れによりPP配合物の加工性を改善することにある。一般に、チルドロールによるキャストフィルムの冷却(細断する前の)は、チルド水浴の使用によるほど効率的ではない。より遅い冷却はより結晶性のフィルムをもたらすので、チルドロール上で冷却されたフィルムの伸縮性は乏しい。エチレン/アクリル酸アルキルコポリマーの組み入れは、フィルムの伸縮性を高め、後続の延伸においてかかるフィルムから調製されたスリットフィルム・テープのフィブリル化を克服するまたは減らす。それはまた、溶融紡糸繊維の延伸性を高め、かつ、延伸繊維の引張特性を高める。
【0018】
本発明の別の目的は、より低いデニールの延伸テープの引張特性(引張破壊荷重、靱性および破断伸び)を高めることにある。
【0019】
本明細書に記載される改質ポリプロピレンブレンドの追加の便益には、フィルムおよび繊維の厚さおよび幅の改善された一様性、減少した静電気、および改善された耐摩耗性が含まれる。
【0020】
従って、本発明は、
(a)ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンおよびエチレンのランダムコポリマーまたはブロックコポリマー、ならびにポリプロピレン、エチレンおよび他の1種のオレフィンのランダムターポリマーまたはブロックターポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種のポリプロピレンポリマーと、
(b)少なくとも1種のエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーを1〜30重量%と
を含む組成物から調製されたフィルムを提供する。
【0021】
本発明はまた、前記フィルムから調製されたスリットフィルム・テープをも提供する。
【0022】
本発明はまた、前記フィルムから調製された前記スリットフィルム・テープを熱延伸し、アニールすることによって調製された繊維をも提供する。
【0023】
本発明はさらに、
(a)ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンおよびエチレンのランダムコポリマーまたはブロックコポリマー、ならびにポリプロピレン、エチレンおよび他の1種のオレフィンのランダムターポリマーまたはブロックターポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種のポリプロピレンポリマーと、
(b)1〜15重量%の少なくとも1種のエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーと
を含む組成物から調製された溶融紡糸繊維を提供する。
【0024】
本発明はまた、上述のような溶融紡糸繊維から調製された不織布をも提供する。
【0025】
本明細書に記載される改質ポリプロピレンブレンドを使用することの便益には、引張強度、「低速」穿孔および「高速」穿孔の改善が含まれる。
【0026】
本発明はまた、上述の組成物が(c)フィラー、艶消剤、UV安定剤、顔料および他の添加剤よりなる群から選択される少なくとも1種の追加成分を0.01〜40重量%さらに含む、フィルム、スリットフィルム・テープ、繊維(例えば、スリットフィルム繊維または溶融紡糸繊維)および不織布をも提供する。
【0027】
本発明はまた、
(1)以下の(a)および(b)、すなわち、
(a)ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンおよびエチレンのランダムコポリマーまたはブロックコポリマー、ならびにポリプロピレン、エチレンおよび他の1種のオレフィンのランダムターポリマーまたはブロックターポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種のポリプロピレンポリマーと、
(b)少なくとも1種のエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーを1〜30重量%と、任意選択的に
(c)フィラー、艶消剤、UV安定剤、顔料および他の添加剤よりなる群から選択される少なくとも1種の追加成分を0.01〜40重量%と
を含む組成物を調製する工程と、
(2)前記組成物をフィルムへ成形する工程と、
(3)前記フィルムをテープへ細断する工程と、
(4)工程(3)のテープを熱延伸し、かつ、アニールする工程と
を含むスリットフィルム繊維の調製方法をも提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
「コポリマー」は、2つ以上の異なるモノマーを含有するポリマーを意味する。用語「ダイポリマー」および「ターポリマー」は、それぞれ2つおよび3つの異なるモノマーのみを含有するポリマーを意味する。語句「様々なモノマーのコポリマー」は、その単位が様々なモノマーに由来するコポリマーを意味する。
【0029】
上に示されたように、本発明のフィルム、テープおよび繊維は、エチレン/アクリル酸アルキルコポリマーで改質されたポリプロピレン樹脂を含む組成物から調製される。
【0030】
ポリプロピレン(PPと略記される)ポリマーには、プロピレンのホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーおよびターポリマーが含まれる。プロピレンのコポリマーには、プロピレンとエチレン、1−ブテン、2−ブテン、様々なペンテン異性体などのような他のオレフィンとのコポリマー、好ましくはプロピレンとエチレンとのコポリマーが含まれる。プロピレンのターポリマーには、プロピレンとエチレンおよび他のオレフィンとのコポリマーが含まれる。統計コポリマーとしても知られるランダムコポリマーは、その中でプロピレンおよびコモノマーがプロピレン対コモノマーの供給比に対応した比でポリマー鎖の全体にわたってランダムに分布しているポリマーである。ブロックコポリマーは、プロピレンホモポリマーよりなる鎖セグメントおよび、例えば、プロピレンとエチレンとのランダムコポリマーよりなる鎖セグメントで構成されている。用語「ポリプロピレン」は、本明細書で用いられる時には一般に上述のプロピレンを含むポリマーの任意のものまたはすべてを言うために用いられる。
【0031】
ポリプロピレンホモポリマーまたはランダムコポリマーは任意の公知方法によって製造することができる。例えば、ポリプロピレンポリマーは、有機金属化合物と三塩化チタンを含有する固形分とをベースとするチーグラー−ナッタ(Ziegler−Natta)触媒システムの存在下に調製することができる。
【0032】
ブロックコポリマーは、プロピレンが一般に第1段階でそれだけで先ず重合され、プロピレンとエチレンのような追加コモノマーとが第1段階中に得られたポリマーの存在下に、第2段階で次に重合されることを除いて、同様に製造することができる。これらの段階のそれぞれは、例えば、同じ反応器でまたは別個の反応器で、連続的にまたは非連続的に、炭化水素希釈剤中の懸濁で、液体プロピレン中の懸濁で、またはさもなければ気相で実施することができる。
【0033】
ブロックコポリマーに関する、およびそれらの製造に関する追加情報は、(非特許文献2)に具体的に見いだされるかもしれない。
【0034】
用語「エチレン/アクリル酸アルキルコポリマー」には、アルキル部分が1〜6個の炭素原子を含有するエチレンとアクリル酸アルキルとのコポリマーが含まれる。アクリル酸アルキルの例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸ブチルが挙げられる。「エチレン/アクリル酸メチル(EMAと略記される)」は、エチレン(Eと略記される)とアクリル酸メチル(MAと略記される)とのコポリマーを意味する。「エチレン/アクリル酸エチル(EEAと略記される)」は、エチレン(Eと略記される)とアクリル酸エチル(EAと略記される)とのコポリマーを意味する。「エチレン/アクリル酸ブチル(EBAと略記される)」は、エチレン(Eと略記される)とアクリル酸ブチル(BAと略記される)とのコポリマーを意味する。
【0035】
エチレン/アクリル酸アルキルコポリマーへ組み入れられるアクリル酸アルキルコモノマーの相対量は、原理上、全コポリマーの数重量%から40重量パーセント以下ほど高くまたはさらにより高くまで広く変わることができる。同様に、アルキル基の選択も、また原理上、簡単なメチル基からかなりの分岐ありまたはなしの6個以下の炭素原子アルキル基まで変わることができる。アクリル酸アルキルエステル・コモノマー中に存在するアルキル基の相対量および選択は、いかにしておよびどの程度まで生じたエチレンコポリマーが熱可塑性組成物中の極性ポリマー構成要素として見なされるべきかを確定すると見なすことができる。
【0036】
好ましくは、アクリル酸アルキルコモノマーのアルキル基は1〜4個の炭素原子を有し、アクリル酸アルキルコモノマーはエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーの5〜30重量パーセント、好ましくは10〜25重量%の範囲の濃度を有する。最も好ましくは、アクリル酸アルキルコモノマーのアルキル基はメチルである。
【0037】
エチレン/アクリル酸アルキルコポリマーは、オートクレーブか管型反応器(tubular reactor)かのいずれかを用いてポリマー技術で周知の方法によって調製することができる。共重合は、オートクレーブ中で連続法として行うことができる:エチレン、アクリル酸アルキル、および任意選択的にメタノールのような溶媒(米国特許公報(特許文献4)を参照されたい)が、開始剤と共に、米国特許公報(特許文献5)に開示されたタイプの撹拌されるオートクレーブ中へ連続的に供給される。添加の速度は、重合温度、圧力、使用されるアクリル酸アルキルモノマー、およびコポリマーの目標組成を達成するために必要とされる反応混合物中のモノマーの濃度のような変数に依存するであろう。あるケースでは、分子量を制御するために、プロパンのようなテロゲンを使用することが望ましいかもしれない。反応混合物は、オートクレーブから連続的に取り出される。反応混合物が反応容器を出た後で、コポリマーは通常の方法、例えば、未重合材料および溶媒を減圧下におよび高温で蒸発させることによって未反応モノマーおよび溶媒(溶媒が使用された場合)から分離される。
【0038】
管型反応器によって製造されたエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーは、当該技術で一般に知られているようなより通常のオートクレーブ製造エチレン/アクリル酸アルキルとは区別することができる。このように、用語または語句「管型反応器によって製造された」エチレン/アクリル酸アルキルコポリマーは、本発明の目的のためには、管型反応器中などで高圧および高温で製造されたエチレンコポリマーであって、それぞれのエチレンおよびアクリル酸アルキルコモノマーについての異なる反応速度論の固有帰結が管型反応器内の反応経路に沿ったモノマーの意図的導入によって軽減されるまたは部分的に相殺されるコポリマーを意味する。当該技術で一般に認められているように、かかる管型反応器共重合技術は、ポリマー主鎖に沿ってより大きい相対的程度の不均質性(コモノマーのより塊状の分布)を有するコポリマーを生み出し、長鎖分岐の存在を減らす傾向があり、かつ、高圧撹拌オートクレーブ反応器で同じコモノマー比で製造されたものより高い融点によって特徴づけられるコポリマーを生み出すであろう。管型反応器によって製造されたエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーは一般に、オートクレーブ製造エチレン/アクリル酸アルキルコポリマーより堅く、より弾性である。
【0039】
この種の管型反応器によって製造されたエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーは、本願特許出願人から商業的に入手可能である。
【0040】
先に述べられたように管型反応器エチレン/アクリル酸アルキルコポリマーの実際の製造は、好ましくは、管に沿った反応体コモノマーの追加導入で、高温での高圧管型反応器中であり、撹拌される高温および高圧のオートクレーブ型反応器で製造されるだけではない。しかしながら、類似のエチレン/アクリル酸アルキルコポリマー材料は一連のオートクレーブ反応器で製造でき、ここで、コモノマー置換は米国特許公報(特許文献6)、米国特許公報(特許文献7)、および米国特許公報(特許文献8)に教示されているように、反応体コモノマーの多数ゾーン導入によって達成されることが理解されるべきであり、それなりにこれらの高融点材料は本発明の目的のためには同等であると考えられるべきである。
【0041】
通常のオートクレーブ製造コポリマーと比較して管型反応器によって製造されたエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーをさらに例示するおよび特徴づけるために、関連融点データ付きの商業的に入手可能なエチレン/アクリル酸メチルコポリマーの次のリストは、管型EMA樹脂がポリマー鎖に沿った非常に異なるMA分布のためにオートクレーブEMAの融点に対してかなりより高い融点を有することを示す。
オートクレーブ製造コポリマー
EMA−A1(21.5重量%MA) mp=76℃
EMA−A2(24重量%MA) mp=69℃
EMA−A3(20重量%MA) mp=80℃
EMA−A4(24重量%MA) mp=73℃
管型反応器によって製造されたコポリマー
EMA−T1(25重量%MA) mp=88℃
EMA−T2(20重量%MA) mp=95℃。
【0042】
管型反応器によって製造されたエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーとオートクレーブ製造エチレン/アクリル酸アルキルコポリマーとの差に関する追加議論については、(非特許文献3)を参照されたい。
【0043】
本発明での使用に好適なエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーは本願特許出願人から入手可能である。本願特許出願人から入手可能な管型反応器によって製造されたエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーの具体例については表Aを参照されたい。
【0044】
【表1】

【0045】
本発明で有用なエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーは、数的に有理数の点で約10以下のメルトインデックスを有するEMAによって証明されるように分子量の点でかなり変わり得る。ポリプロピレンを改質するために使用されるべきエチレン/アクリル酸アルキルコポリマー成分のグレードの具体的選択は、改質剤およびポリプロピレンのメルトインデックス、エチレン/アクリル酸アルキルコポリマーおよびポリプロピレンのそれぞれの軟化点に関連した延伸温度、ならびに熟慮される延伸プロフィール(延伸速度および延伸比)のような因子をバランスさせることによって左右されるであろう。エチレン/アクリル酸アルキルコポリマーの選択で考慮されるべき他の因子には、より高い相対分子量コポリマー(0.7MIのE/25重量%MAのような)と関係がある増加した弾性回復、ならびに比較的より低い分子コポリマー(8MIのE/20重量%MAのような)でフィラー(下を参照されたい)とより容易にブレンドする実利的能力が含まれる。
【0046】
本発明で有用なエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーとポリプロピレンとの組成物は乾式混合、ペレット混合、溶融混合によって、様々な成分の混合物の押出、および当該技術で公知の他の混合法によって調製されてもよい。
【0047】
本発明で有用な組成物は、テープ組成物の30〜40重量%以下であってもよい量で炭酸カルシウム(CaCO)のようなフィラーを任意選択的にさらに含んでもよい。例えば、0.01〜20重量%、0.1〜15重量%、約2〜約10重量%のCaCOが幾つかのスリットフィルム・テープ中に存在してもよい。本明細書に記載されるようなエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーは、ポリプロピレンベース樹脂と任意フィラーとの相溶性の強化を提供する。相溶性の強化は、フィラーとポリプロピレン樹脂との分離によって引き起こされる「粉立ち」の傾向の減少、加工操作中のより低い空気中CaCO微粒子、および織または編装置での摩耗の減少を提供するかもしれない。本明細書に記載されるようなエチレン/アクリル酸アルキルコポリマー改質剤の使用はまた、より高いフィラー装填を提供するかもしれない。
【0048】
本発明で有用な組成物は、TiOのような艶消剤、UV安定剤、顔料などのような他の添加剤を任意選択的にさらに含んでもよい。これらの添加剤は、フィルム、スリットフィルム繊維および溶融紡糸繊維の技術では周知である。これらの通常の成分は、本発明による組成物中に0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%存在してもよい。
【0049】
エチレン/アクリル酸アルキルコポリマーで改質されたポリプロピレンを含む組成物中へのかかる通常成分の任意の組み入れは、任意の公知方法によって実施することができる。この組み入れは、例えば、乾式混合によって、様々な成分の混合物の押出によって、通常のマスターバッチ技法などによって実施することができる。典型的なマスターバッチは75〜90重量%のCaCOを含んでもよい。CaCOおよびエチレン/アクリル酸アルキルコポリマー改質剤を含むマスターバッチの使用は注目すべきである。
【0050】
本明細書に記載される熱可塑性組成物は、押出加工によるフィルムおよび繊維の調製に好適である。
【0051】
スリットフィルム・テープおよび繊維がそれから形成されてもよい本発明のフィルムは、当業者に公知の実質的に任意のフィルム形成法によって製造することができる。そのようなものとして、フィルムおよびフィルム構造物は、様々な方法論(例えば、インフレートフィルム、機械延伸など)による延伸(一軸か二軸かのどちらか)を含めて典型的にはキャストする、押し出す、共押出するなどができる。タイ層などの存在がフィルムまたはフィルム構造物の特性を実質的に変えないという条件で、当該技術で一般に行われるような様々な添加剤がタイ層などの存在を含めてそれぞれのフィルム層中に存在し得ることは理解されるべきである。このように、酸化防止剤および熱安定剤、紫外(UV)光安定剤、顔料および染料、フィラー、艶消剤、スリップ防止剤、可塑剤、他の加工助剤などのような様々な添加剤が有利に使用されてもよいと考えられる。
【0052】
一実施形態では、フィルムは、フィルム中のポリマー鎖を押出の方向に概して整列するようにさせる押出法によって形成される。線状ポリマーは、高度に一軸延伸された後、延伸方向にかなりの強度を有するが、横方向にはより少ない強度を有する。この整列は、スリットフィルム糸の長さ次元に相当する押出の方向にフィルムに強度を追加することができる。あるいはまた、フィルムは当業者に公知のブローイング法によって形成されてもよい。
【0053】
本発明はポリプロピレンとエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーとを含む組成物から調製されたフィルムを提供する。フィルムは、延伸しない、一軸方向(例えば縦方向)に延伸する、または二軸方向(例えば縦軸方向および横軸方向)に延伸することができる。
【0054】
フィルムは収縮フィルムをはじめとする多種多様な包装用途で有用である。上に示されたように、フィルムはまたスリットフィルム・テープおよび繊維の調製にも有用である。
【0055】
本発明の好ましいフィルムには、以下のものが含まれる。
好ましいもの1。前記アクリル酸アルキルが、前記エチレン/アクリル酸アルキルコポリマー中に約5〜約30重量%の範囲で存在するフィルム。
好ましいもの2。前記アクリル酸アルキルが、前記エチレン/アクリル酸アルキルコポリマー中に約10〜約25重量%の範囲で存在する好ましいもの1のフィルム。
好ましいもの3。前記アクリル酸アルキルが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸ブチルよりなる群から選択される好ましいもの2のフィルム。
好ましいもの4。前記アクリル酸アルキルがアクリル酸メチルである好ましいもの3のフィルム。
好ましいもの5。成分(b)が全組成物の2〜30重量%、あるいはまた2〜20重量%、あるいはまた2〜10重量%の量で存在する好ましいもの1〜好ましいもの4のいずれか1つのフィルム。
好ましいもの6。(c)フィラー、艶消剤、UV安定剤、顔料および他の添加剤よりなる群から選択される少なくとも1種の追加成分を0.01〜40重量%さらに含む好ましいもの1〜好ましいもの5のいずれか1つのフィルム。
好ましいもの7。成分(c)が0.1〜15重量%の量で存在する好ましいもの6のフィルム。
好ましいもの8。冷却水浴中へ前記組成物を押し出し、急冷することにより調製される好ましいもの1〜好ましいもの7のいずれか1つのフィルム。
好ましいもの9。チルドロール上へ前記組成物を押し出し、急冷することにより調製される好ましいもの1〜好ましいもの7のいずれか1つのフィルム。
好ましいもの10。環状ダイに通して前記組成物を押し出し、空気急冷することによりチューブラ・インフレートフィルムに調製される好ましいもの1〜好ましいもの7のいずれか1つのフィルム。
好ましいもの11。前記組成物が管型反応器によって製造されたエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーを含む好ましいもの1〜好ましいもの10のいずれか1つのフィルム。
【0056】
本発明はまた、本発明のフィルムから調製されたスリットフィルム・テープをも提供する。好ましいテープは、上の好ましいフィルムから調製されたものである。
【0057】
本発明はまた、前記フィルムから調製された前記スリットフィルム・テープを熱延伸し、アニールすることによって調製された繊維をも提供する。好ましい繊維は、上の好ましいフィルムから調製されたテープから調製されたものである。
【0058】
本発明はまた、スリットフィルム繊維の調製方法をも提供する。好ましい方法は、上の好ましいフィルムを利用するものである。
【0059】
示されたように、スリットフィルム繊維はポリマー材料から形成され、それはフィルムへ成形され、テープへ細断され、熱延伸される。
【0060】
織布または編布は、上述のようなスリットフィルム繊維から調製することができる。好ましい織布または編布は上の好ましい繊維から調製される。
【0061】
ポリプロピレンポリマーをベースとするスリットフィルム繊維を、かかるポリマーを含む組成物から押し出されたフィルムを細断することによって製造する方法はよく知られている。これらのスリットフィルム・モノフィラメント繊維が意図される一般的用法には、ロープおよびひも(string)製造、合成芝用の繊維、サッククロスおよび、特に、重袋(heavy−duty sack)構造物用の織布、カーペット用の一次および二次基布、ジオテキスタイル、アグロテキスタイル、工業布、革紐、ベルト、衣料、おむつ、網、織られた容器などが含まれる。
【0062】
上述の組成物からのスリットフィルムそのものの製造は、任意の公知方法に従って実施することができる。例えば、いわゆる「インフレートフィルム」または「フラットダイ」法を用いて前記組成物を押し出すことによって第一フィルムを製造することが可能である。インフレートフィルムは、ポリマー組成物を環状ダイを通して押し出し、生じたチューブラ・フィルムを空気流で膨張させてインフレートフィルムを提供することによって調製される。キャスト・フラットフィルムは、フラットダイを通して組成物を押し出すことによって調製される。ダイを出たフィルムは、内部循環流体を含有する少なくとも1つのロール(チルロール)によって、または水浴によって冷却されてキャストフィルムを提供する。本発明のフィルムは、例えば、約60cm(2フィート)の幅を有するであろう。この第一フィルムは次にスリットフィルム・テープへ細断され、それはリールに巻かれる前にモノフィラメント繊維へ延伸される。
【0063】
スリットフィルム・テープは、支持フレーム、そのそれぞれが向かい合った刃先および向かい合った端を含む複数の実質的に平面の切刃、切刃を支持フレームに取り付けるための取付け構造物、および支持フレームに取り付けられ、かつ、刃の露出した刃先一面に下流方向にフィルムを供給するために配置構成された供給ロールを含むスリット装置で製造することができる。取付け構造物は、各刃が切断のためにその刃先の1つを露出されるように刃が取り付けられ、かつ、隣接する刃の刃先が約6mm〜8mm互いに間隔が開いている、実質的に整列した平行の、間隔を開けた関係に切刃を取り付けるために配置構成される。
【0064】
上述のようにフィルムをテープへ細断した後、延伸操作を促進するようにフィルムを軟化させるために有効な温度に加熱されたオーブン中で、延伸操作は3〜6メートル(10〜20フィート)の全長にわたって行われるであろう。典型的に起こるのは、フィルムがオーブンを通る通路の初めには冷たく、それがオーブンを通過するにつれて徐々に加熱され軟化することである。ネッキングは、オーブンの入口から一定の距離にあるネックラインで起こる。ネッキングゾーンの位置は、延伸の率、オーブンの温度、およびフィルム材料の性質および厚さをはじめとする多数の因子に依存する。典型的な予備延伸テープは約120ミクロンの厚さおよび約6mm〜8mmの幅を有する。延伸後に、最終テープは約30〜50ミクロンの厚さおよび約2.5mm〜3mmの幅を有する。テープはある種の目的のためにより幅広くまたはより狭くすることができる。例えば、減少した端番手織布のための繊維は、約4mm〜約6mmの最終幅を有することができ、ポリプロピレン・ストラッピングは約10mm〜15mmの最終幅を有することができる。
【0065】
延伸比は一般に約2:1〜約16:1の範囲にあり、幾つかのポリマーに典型的な延伸比は約4:1〜約10:1であろう。織テープのための延伸比は好ましくは約5:1〜約8:1である。より幅広いストラッピングテープのための延伸比は典型的には約10:1〜約15:1である。それにわたって縦延伸が起こる距離は用いられる技術と共に変わるであろう。短延伸では、延伸は数インチの距離にわたって起こり、他の技術は、はるかにより大きい距離を伴う。熱延伸の後、織テープのための生じたモノフィラメント繊維は典型的には約700〜約1700のデニールを有するであろう。ポリプロピレン・ストラッピングは約3000〜約6000のデニールを有するであろう。
【0066】
本発明のテープの靱性、引張破壊荷重、破断伸びおよびデニールのような機械的性質は
・樹脂配合デザイン(ベース樹脂、添加されるCaCO、UV安定剤、顔料ような添加剤のレベルおよびタイプ)、
・使用されるエチレン/アクリル酸アルキルの量およびタイプ、
・フィルムおよびテープ加工装置(急冷、スリット化、延伸およびアニール機器構成)および
・加工条件(押出機スクリュー構造、温度分布およびポリマー押出量、延伸およびアニーリング温度および分布、ライン速度など)
をはじめとする様々なパラメーターを調節することによってバランスさせることができる。
【0067】
典型的には、スリットフィルム糸を調製するための製造設備は、装置および加工条件を改良するための制限能力を有するであろう。それ故、本発明のポリプロピレン樹脂のエチレン/アクリル酸アルキル改質は、それから調製されたフィルム、テープおよび糸の機械的性質のかなりの改善を提供することができる。
【0068】
上で指摘されたように、繊維はまた、遠心紡糸、溶融紡糸、スパンボンディングおよびメルトブローイングをはじめとする押出法から直接調製されてもよい。
【0069】
遠心紡糸では、繊維は、ポリマー溶融物が速く回転する源から加速される時に形成される。炉からの溶融材料は回転紡糸機中へ移され、遠心力が材料を紡糸装置の側面の小さな穴を通して押し出す時に繊維が生み出される。
【0070】
溶融紡糸では、繊維形成物質は、紡糸口金を通した押出のために溶融され、次に冷却によって直ちに凝固する。溶融紡糸繊維は、異なる断面形状(円形、三葉、五葉、八葉、およびその他)の紡糸口金から押し出すことができる。インライン延伸は、制御された温度および速度で作動する回転ロールのセットの周りに移動スレッドラインを巻き付けることによって達成される。具体的な溶融紡糸法およびその後の加工工程に依存して、製品は、モノフィラメント、糸、トウまたは不織布(例えばスパンボンドの)として集めることができる。溶融紡糸繊維に関する一般参考のためには(非特許文献4)を参照されたい。
【0071】
スパンボンディングは、溶融紡糸されたままの繊維からの不織ウェブの直接レイダウンである。連続フィラメントは紡糸口金を通って押し出され、加速され(ロールまたはジェットにより)、移動ベルト上へレイダウンされて不織シートを形成する。接合は溶融繊維交差点で起こる。
【0072】
メルトブローイングは、繊維がダイ先端を通って押し出され、熱い高速空気によって細長化され(および砕かれ)、移動ベルトまたはスクリーン上へ沈積されて細かい(低デニール)繊維のウェブを形成する別の直接レイダウン法である。
【0073】
スパンボンド(S)およびメルトブローン(M)ウェブの両方とも、形成後に、カレンダー掛けによってさらに接合するおよび/またはパターン化することができる。多層不織布(例えばSMS、SMMS、SMMMS)もまた本発明の繊維から調製することができる。
【0074】
本発明はさらに、上述のような組成物から調製される溶融紡糸繊維を提供する。好ましい溶融紡糸繊維には、以下のものが含まれる。
好ましいものA。前記アクリル酸アルキルが、前記エチレン/アクリル酸アルキルコポリマー中に約5〜約30重量%の範囲で存在する繊維。
好ましいものB。前記アクリル酸アルキルが、前記エチレン/アクリル酸アルキルコポリマー中に約10〜約25重量%の範囲で存在する好ましいものAの繊維。
好ましいものC。前記アクリル酸アルキルが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸ブチルよりなる群から選択される好ましいものBの繊維。
好ましいものD。前記アクリル酸アルキルがアクリル酸メチルである好ましいものCの繊維。
好ましいものE。成分(b)が2〜10重量%の量で存在する好ましいものA〜好ましいものDのいずれか1つの繊維。
好ましいものF。(c)フィラー、艶消剤、UV安定剤、顔料および他の添加剤よりなる群から選択される0.01〜15重量%の少なくとも1種の追加成分をさらに含む好ましいものA〜好ましいものEのいずれか1つの繊維。
好ましいものG。成分(c)が0.1〜5重量%の量で存在する好ましいものFの繊維。
好ましいものH。前記組成物が管型反応器によって製造されたエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーを含む好ましいものA〜好ましいものGのいずれか1つの繊維。
【0075】
不織布は、上述のような溶融紡糸繊維から調製することができる。好ましい不織布は上の好ましい繊維から調製される。
【0076】
織布または編布は上述のような溶融紡糸繊維から調製することができる。好ましい織布または編布は上の好ましい繊維から調製される。
【0077】
延伸フィルムは多種多様な包装用途で使用される。上述のように、本発明のフィルムはまたスリットテープ繊維を調製するために使用することもできる。
【0078】
スリットテープ繊維をはじめとする、本明細書に記載されるように調製された繊維は、コード(cord)、撚糸またはロープを調製するために有用である。多数の繊維が、例えば、撚る、編む、交錯させるなどによって結び合わされてコードを形成する。撚糸は、一般に、ロープより少ない数の繊維を含有し、直径がより小さい。これらのコード、撚糸またはロープは、断面ではおおよそ円形または扁平であってもよい。コードおよび撚糸は、靴ひも、バッグ用のストラップ、ブリーフケースなどに使用することができ、包装用途で使用することができる。ロープは多種多様な工業および海洋用途で使用することができる。コード、撚糸およびロープはまた、漁網、貨物網などのような比較的オープンな構造を有するネットを調製するためにさらに交錯させられてもよい(例えばニッティングなどによる)。
【0079】
本発明のスリットテープ繊維は、カーペット房、合成芝、マットなどのためのモノフィラメント繊維として使用することができる。それらはまた、ストラッピングとして使用することもできる。
【0080】
織布または編布は、上述のようなスリットテープ繊維または溶融紡糸繊維から調製することができる。一般に、織布は編布よりタイトな構造を有するかもしれない。本明細書に記載されるように調製されたポリプロピレン糸は、フィルター、防水布、天幕、天蓋、旗、建造物(例えば屋根ふき材)膜、機械ベルト、旅行鞄または包装用のライナー、重袋、カーペット基布、室内装飾材料(upholstery)、衣料、アグロテキスタイル(種子管理、雑草管理、ガーデニング、温室および緑蔵飼料での使用のための)およびジオテキスタイル(腐食制御および土壌保全のための)のような用途で使用される布へ織ることができる。編布は、食料品、薪などのような嵩高い物質の運搬での使用のための袋詰、ならびに建造物、工業網および漁網のために使用することができる。
【0081】
本明細書に記載されるような改質されたポリプロピレン組成物を使用する織布は、特に重袋のための、より低いスリップ傾向を有する。
【0082】
本発明の不織布は、おむつならびに成人失禁および女性衛生製品のような個人衛生のために使用される他の品目、帽子、ガウン、ブーティーズ、マスクなどをはじめとする個人保護具のような医療用衣料、掛け布、覆い、毛布などのような衛生保護備品、輸送容器、耐久紙、雑巾(wipe)、ラップ、旗、カーペット基布、フィルタリング、ジオテキスタイル、アグロテキスタイル、室内装飾材料、衣料、フィルター、ライナー、または建物での熱および湿気管理のための建造物ラップ(construction wrap)で使用することができる。
【0083】
カーペット基布にとって、布地の収縮は重要である(例えば、45℃で2.5%未満の収縮が望ましい)。織および不織カーペット基布は、強度、寸法安定性および形状をカーペットに与えるためのカーペット用の一次基布として典型的には使用される。それらは、本発明のスリットテープ繊維またはスパンボンド布から調製することができる。
【0084】
カーペット二次基布は、カーペット糸が固定される基材を提供するために使用することができる。それらは不織材料から調製することができる。本発明の溶融紡糸繊維は、カーペット二次基布として有用な不織基材を調製するために有用である。
【0085】
ジオテキスタイルは、道路品質を改善するために砂利および舗装層の下に道路で使用することができる。ジオテキスタイル布は、おおよそ2.5mm幅を有するPPテープを織ることによって典型的には製造される。ジオテキスタイルはまた、溶融紡糸繊維に由来するスパンボンド不織材料からも調製される。ジオテキスタイルの収縮要件は、カーペット基布のそれほど厳しくない。しかしながら、耐穿孔性はジオテキスタイルにとって極めて重要である。
【0086】
本発明は、その好ましい実施形態に関して特に示され、記載されてきたが、形式上および詳細での様々な変更が本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われるかもしれないことは当業者によって理解されるであろう。
【0087】
次の実施例は単に例示的なものであり、本明細書に記載されるおよび/または特許請求される本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0088】
(スリットフィルム・テープ)
(試行1)
本試行は、下に示す樹脂配合物を使用して押出キャスティングラインで行った。フィルムをチルド(急冷)ロール上へキャストした。それを次にテープへ細断し、その後アニーリングオーブン中で5mmテープへ6または7倍延伸した。テープの延伸およびアニーリングを同時に実施した。サンプルを取り出し、製造手順を15分間行った後に引張強度について試験した。5.0mm幅の250mm長さテープを200mm/分のクロスヘッド分離の速度でユニバーサル引張試験機(Universal Tensile Test Machine)で延伸した。結果を表2にまとめる。
【0089】
(使用する材料)
PP−1:タイタン・ペトロケミカル(Titan Petrochemical)(M)Sdn Bhdから入手可能な、3g/10分(米国材料試験協会(ASTM)D−1238、2.16Kg質量を用いて230℃)のメルトインデックス(MI)のポリプロピレンホモポリマー。
【0090】
EMA−1:2g/10分(ASTM D−1238、2.16Kg質量を用いて190℃)のMIの24重量%アクリル酸メチル入りエチレン/アクリル酸アルキルコポリマー、
フィラーとしての炭酸カルシウム。
【0091】
(樹脂配合物)
比較例C1:PP−1(99%)+CaCO(1%)
実施例2:PP−1(89%)+CaCO(1%)+EMA−1(10%)
実施例3:PP−1(94%)+CaCO(1%)+EMA−1(5%)。
【0092】
【表2】

【0093】
比較例C1(0%EMA−1)を使用したランは、加工性に乏しく、かつ、実施例2および3(10%および5%EMA−1)について用いた条件下で不安定であるので中止した。比較例1から調製されたテープのフィブリル化には、6の延伸比でさえも試行中に遭遇した。
【0094】
純PP配合物での標準製造条件下で(比較例1を参照されたい)、キャストフィルムは高い押出機処理量(例えば、180rpmより上の押出機スクリュー速度)で不安定である。機械処理量は低く、従ってライン生産性もまた低下する。さらに、延伸比が約6を越えて上がると、テープのフィブリル化が起こり始め、テープの幅には非常に一貫性がない。
【0095】
5〜10%のEMA樹脂(例えばEMA−1)をPP配合物中へ組み入れることによって、製造を高い処理量で非常にスムーズに行うことができ、押出機からのキャストフィルムは非常に安定である。新配合物はより良好な加工性と改善された溶融強度とを有する。
【0096】
スリットテープは、フィブリル化する何の傾向もなく6および7倍に延伸することができる。靱性、引張破壊荷重および破断伸びのような延伸テープの機械的性質は満足できるものである。
【0097】
(試行2)
本試行は押出キャスティングラインで行った。フィルムをチルド水浴中で急冷した。それを次にテープへ細断し、その後アニーリングオーブン中で3mmテープへ少なくとも6倍延伸した。テープの延伸およびアニーリングを同時に実施した。サンプルを取り出し、製造手順を15分間行った後に引張強度について試験した。3.0mm幅の250mm長さテープを200mm/分のクロスヘッド分離の速度でユニバーサル引張試験機で延伸した。結果を表3にまとめる。
【0098】
(使用する材料)
PP−2:タイタン・ペトロケミカル(M)Sdn BhdからPD855として入手可能な、3g/10分(ASTM D−1238、230℃/2.16Kg)のメルトインデックス(MI)のポリプロピレンホモポリマー。
【0099】
2g/10分(ASTM D−1238、190℃/2.16Kg)のMIの24重量%アクリル酸メチル入りエチレン/アクリル酸アルキルコポリマー(EMA−1)。
【0100】
白色マスターバッチ、CaCOを含む着色剤/フィラー。
【0101】
(樹脂配合物)
比較例C4およびC6:PP−2(95%)+白色マスターバッチ(5%)。
【0102】
実施例5および7〜9:PP−2(90%)+白色マスターバッチ(5%)+EMA−1(5%)。
【0103】
【表3】

【0104】
これらの試行結果は、5%のエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーのPPへの添加が延伸PPテープの引張破壊荷重、破断伸びおよび靱性のような機械的性質を改善することを裏付けた。
【0105】
類似の平均デニールのテープ(比較例C4および実施例5、比較例C6および実施例7)を比較すると、5%EMAを組み入れたPPから製造したテープは、類似の延伸比で延伸した標準PPテープより平均引張破壊荷重、平均破断伸びおよび平均靱性の改善を示した。
【0106】
より高い延伸比(8倍)下での改質PPテープ(実施例8)の平均引張破壊および平均靱性の改善は、標準(比較例C6)または標準延伸比(6倍)で製造した改質PPテープ(実施例7)と比べてさらにより顕著であった。
【0107】
より低い平均デニールの改質PPテープ(実施例5)は、より高い平均デニールの標準PPテープ(比較例C6)とほぼ同じほど高い引張特性を有する。高い延伸比(7倍)で調製した改質PP低デニールテープ(実施例9)は、標準PPテープ(比較例C4)に類似の平均引張破壊荷重および破断伸びを有するが、それよりはるかに高い靱性を有する。
【0108】
(試行3)
これらの試行では、繊維をジオテキスタイルに好適な織布への組み入れに好適なやり方で製造した。
【0109】
PP−3:ベース・ポリプロピレン材料は、ポリプロピレン(アモコ(Amoco)GA02、MFI:1.8)を2重量パーセントの色添加剤(アンパセット・ノアール(Ampacet Noir)190826)および3.5重量パーセントのCaCOフィラー(マルチベース(Multibase)ME50004)とブレンドすることによって得られ、比較例C10と称される。ベース材料PP−3を3重量パーセントのポリオレフィンコポリマー(ブースター(Booster)PO)とさらにブレンドして比較例C11を調製する。ベース材料PP−3を5重量パーセントまたは10重量パーセントのEMA−1とブレンドして実施例12および13を調製する。
【0110】
(加工条件)
押出温度:255℃
オーブン(延伸):163℃
チルロール:27℃
投入量:270〜300kg/時
キャストフィルム幅:1250mm
キャストフィルムの厚さ:175〜180μm
延伸前のテープ幅:6mm
延伸後のテープ幅:おおよそ2.5mm
【0111】
加工を5%EMA−1および7の延伸比で開始した。次に、強度を改善するために延伸比を7.4および7.8に上げた。
【0112】
【表4】

【0113】
ポリプロピレン(比較例C10)と比べて、本発明の組成物から調製したテープはより高い延伸比でより高い強度および類似の伸びを実証した。ポリプロピレンプラス3重量%ブースターPO(比較例例C11)と比べて、本発明の組成物から調製したテープはより高い延伸比で僅かにより高い伸びと強度とを実証した。
【0114】
さらに、本明細書に記載するようなエチレン/アクリル酸アルキル改質組成物を使用すると、僅かにより低いエネルギー消費率と押出機での僅かにより低い圧力とを可能にした。
【0115】
エチレン/アクリル酸アルキルコポリマーをPP配合物に組み入れることによって、
・伸びの有意の損失なしに非常に高い引張破壊荷重および靱性を持った高度に延伸された低デニールテープ、または
・織繊維バッグもしくは積層基材構造でのコスト削減のための良好な機械的性質を持った高度に延伸された高デニール(幅広いが薄い)テープ
を製造することができる。
【0116】
(紡糸繊維)
(試行4)
本試行の目的は、PP糸対PP/EMAブレンド糸の紡糸性能(最大延伸性)および機械的性質を比較することにある。糸を紡績機で一対の加熱ロール間で延伸し、巻き取り、試験した。PP/EMAブレンドを紡糸前に溶融ブレンドした。
【0117】
(使用する材料)
比較例C14:100%PP−4(プロファックス(Profax)(登録商標)6323)
実施例15:PP−4とEMA−1との95%/5%ブレンド
実施例16:PP−4とEMA−1との90%/10%ブレンド。
【0118】
(紡糸条件)
ブロック温度:245℃
紡糸口金:10の穴、0.015インチ×0.060インチ
供給ロール温度:60℃
供給ロール速度:500ヤード毎分(ypm)
延伸ロール温度:80℃。
【0119】
延伸ロール速度は最大延伸を測定するために可変であった(例えば、3倍延伸を得るために1500ypmを用いた)。
【0120】
【表5】

【0121】
エチレン/アクリル酸アルキルコポリマーの添加は、残留伸びを大きくし、単段延伸溶融紡糸ポリプロピレン繊維での初期弾性率を下げる(より良好な延伸性を示唆する)。添加はまた、最大紡糸延伸比を上げ、望ましいことに増加した強度および/または低下したデニールにつながる。
【0122】
(試行5および6)
2つの丸一日紡糸試行を実施した。第1試行は二軸スクリュー混合装置で製造したブレンド(溶融ブレンド)を使用して行った。第2試行は混転ブレンダーで混合したポリマーのブレンド(ドライブレンド)を使用して行った。5、10および15重量%のEMA−1とのブレンドを調製した。
【0123】
二軸スクリュー押出機で調製し、第1試行中にランした溶融ブレンド
比較例C17:100%PP−5(4のMFIのポリプロピレン)
実施例18:PP−5とEMA−1との95%/5%ブレンド
実施例19:PP−5とEMA−1との90%/10%ブレンド。
【0124】
混転ブレンダーで調製し、第2試行中にランしたドライブレンド
実施例20:PP−5とEMA−1との95%/5%ブレンド
実施例21:PP−5とEMA−1との85%/15%ブレンド。
【0125】
両試行のための紡糸条件
ブロック温度:240℃
溶融物温度:240℃
紡糸口金:600の穴
供給ロール温度:137℃
供給ロール速度:600rpm
延伸ロール温度:23℃。
【0126】
延伸ロール速度は所望の延伸比(S.R.)に依存して変わった(例えば、3.0のS.R.については1800rpm)。
【0127】
【表6】

【0128】
【表7】

【0129】
PPとEMA−1とのブレンドはうまく紡糸された。延伸比の顕著な改善は、結果として生じる靱性増加と共に達成することができた。これらの試行は、エチレン/アクリル酸アルキルコポリマーを添加した時にPPのより高い延伸性(破断なしの)を示した。100%PPについて最大延伸比が2.5である場合、5、10または15重量%EMA−1を添加すると、最大延伸比を3.5まで上げた。また、破断伸びは低下するが、増加したS.R.で引張強度の増加を見ることもできる。
【0130】
(試行7)
本試行の目的は、高温で試験を行うことができるためにオーブンと組み合わせた引張試験機で未改質および改質PPから調製したフィルムの延伸性を評価することにある。
【0131】
(使用する材料)
比較例C22:100%PP−6(モプレン(Moplen)T30S)
比較例C23:90%PP−6+10重量%エンゲージ(Engage)8200(メタロセン・ポリエチレン)
実施例24:95%PP−6+5重量%EMA−1
実施例25:90%PP−6+10重量%EMA−1。
【0132】
我々は、0.5mm厚さのダンベル形状のサンプルを作り出し、それらの引張特性を100℃で測定した。100℃より上では、サンプルは試験装置の限度内(1500%の最大)で破断しなかった。表7に報告する結果は、100℃で試験した、配合物当たり20サンプルについての平均値である。
【0133】
【表8】

【0134】
上の表から分かるように、10%EMA−1は100%PPに対して破断伸びの5%増加を示す。
【0135】
(二軸延伸フィルム)
(試行8)
サンプルは、ポリプロピレンとエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーとを溶融ブレンドし、次に押出によりキャストフィルムを形成することによって調製した。二軸延伸フィルムを製造するために用いたラインは、縦方向および横方向の両方の延伸を可能にするためのクリップ・システムを有した。
【0136】
比較例C26:100%PP−7(2のMFIを有するバーゼル(Basell)HP1078ポリプロピレンホモポリマー)
実施例27:95重量%PP−7+5重量%EMA−1
実施例28:90重量%PP−7+10重量%EMA−1。
【0137】
延伸条件は次の通りであった。
延伸装置での予熱:145℃で30または40秒
クリップ温度:82、88、100または105℃
延伸速度:400%/秒
延伸後のアニーリング温度:145℃
【0138】
【表9】

【0139】
上述の他の試行では、延伸ロールを用いるエチレン/アクリル酸アルキルコポリマー改質ポリプロピレンブレンドの延伸性は100%PPより高い延伸性を与えた。本試行では、非常に小さく(高い応力集中)、かつ、それらの間で大きなスペース(約10cm)のあるクリップでフィルムが時々破断したので、延伸性比較を行うことは困難であった。しかしながら、工業装置では、MD延伸は常にクリップではなくロールで行われる。
【0140】
しかしながら、EMA−1で改質したPPをベースとするサンプルの幾つかのより高い延伸は100%ポリプロピレンと類似のまたはそれより高い破断伸びでより良好な引張強度を提供することを観察することができる。
【0141】
10%EMA−1入りで製造した7×7延伸フィルムについては、6×6(PPについて最大二軸延伸性)での100%PPに対して、引張強度(MDとTDとの平均)が破断伸びの損失なしに8%高いことが分かった。
【0142】
5%EMA−1入りで製造した5×9延伸フィルムについては、5×9の同じ延伸比での100%PPに対して、引張強度(MDとTDとの平均)が24%高く、破断伸び(MDとTDとの平均)が22%高いことが分かった。
【0143】
(スパンボンド布)
(試行9)
本試行の目的は、スパンボンド布を調製するためにエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーをポリプロピレンに添加することの効果を評価することにある。
【0144】
スパンボンド布は、合計68の紡糸場所で供給し、繊維を移動ベルト上へ置く2つの押出機を用いて調製した。
【0145】
比較例C29:2.5:1の延伸比での100%ポリプロピレンホモポリマーPP−8
実施例30:3:1の延伸比での95重量%PP−8+5重量%EMA−1。
【0146】
実施例30布のための紡糸条件は
ブロック温度:240℃
溶融物温度:240℃
供給ロール温度:137℃
供給ロール速度:600rpm
延伸ロール温度:23℃
延伸ロール速度:1800rpm
であった。
【0147】
これらの試行は、実施例30が高い延伸性を提供することを示した。実施例30は3:1の比で延伸したが、比較例C29について達成可能な最大延伸比は2.5:1であった。完成布実施例30は、同じ基本重量で標準PP不織布(比較例C29)より著しく高い耐穿孔性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンおよびエチレンのランダムコポリマーまたはブロックコポリマー、ならびにポリプロピレン、エチレンおよび他の1種のオレフィンのランダムターポリマーまたはブロックターポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種のポリプロピレンポリマーと、
(b)少なくとも1種のエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーを1〜30重量%と
を含む組成物から調製されることを特徴とするフィルム。
【請求項2】
前記アクリル酸アルキルが、前記エチレン/アクリル酸アルキルコポリマー中に約5〜約30重量%の範囲で存在することを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記アクリル酸アルキルが、前記エチレン/アクリル酸アルキルコポリマー中に約10〜約25重量%の範囲で存在することを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記アクリル酸アルキルが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸ブチルよりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項5】
前記アクリル酸アルキルがアクリル酸メチルであることを特徴とする請求項4に記載のフィルム。
【請求項6】
成分(b)が2〜30重量%の量で存在することを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項7】
成分(b)が2〜20重量%の量で存在することを特徴とする請求項6に記載のフィルム。
【請求項8】
成分(b)が2〜10重量%の量で存在することを特徴とする請求項6に記載のフィルム。
【請求項9】
(c)フィラー、艶消剤、UV安定剤、顔料および他の添加剤よりなる群から選択される少なくとも1種の追加成分を0.01〜40重量%さらに含むことを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項10】
成分(c)が0.1〜15重量%の量で存在することを特徴とする請求項9に記載のフィルム。
【請求項11】
冷却水浴中へ前記組成物を押し出し、急冷することにより調製されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項12】
チルドロール上へ前記組成物を押し出し、急冷することにより調製されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項13】
環状ダイ(annular die)に通して前記組成物を押し出し、空気急冷することによりチューブラ・インフレートフィルム(tubular blown film)に調製されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項14】
前記組成物が管型反応器(tubular reactor)によって製造されたエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のフィルムを、細断することによって調製されることを特徴とするテープ。
【請求項16】
請求項15に記載の細断されたテープフィルム(split tape film)から調製されることを特徴とする織布。
【請求項17】
ロープ、ひも(string)、コード(cord)、合成芝、サッククロス(sacking)、重袋(heavy−duty sack)、カーペット用の一次および二次基布、ジオテキスタイル、アグロテキスタイル、工業布、革紐、ベルト、衣料(apparel)、おむつ、網、容器、フィルター、防水布、天幕、天蓋、旗、屋根膜(roofing membrane)、旅行鞄ライナー、パッケージ、ならびに室内装飾材料(upholstery)よりなる群から選択される、請求項16に記載の織布から製造されることを特徴とする物品。
【請求項18】
請求項31に記載の細断されたテープフィルムでできていることを特徴とする重袋。
【請求項19】
請求項31に記載の細断されたテープフィルムでできていることを特徴とするジオテキスタイル。
【請求項20】
請求項31に記載の細断されたテープフィルムでできていることを特徴とすることを特徴とするアグロテキスタイル。
【請求項21】
請求項15に記載の細断されたテープを熱延伸し、かつ、アニールすることによって調製されることを特徴とする繊維。
【請求項22】
ロープ、ひも、コード、合成芝、サッククロス、重袋、カーペット用の一次および二次基布、ジオテキスタイル、アグロテキスタイル、工業布、革紐、ベルト、衣料、おむつ、網、容器、フィルター、防水布、天幕、天蓋、旗、屋根膜、旅行鞄ライナー、パッケージ、ならびに室内装飾材料よりなる群から選択される、請求項21に記載の細断されたテープから製造されることを特徴とする物品。
【請求項23】
(1)以下の(a)および(b)、すなわち、
(a)ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンおよびエチレンのランダムコポリマーまたはブロックコポリマー、ならびにポリプロピレン、エチレンおよび他の1種のオレフィンのランダムターポリマーまたはブロックターポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種のポリプロピレンポリマーと、
(b)少なくとも1種のエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーを1〜30重量%と、
を含む組成物を調製する工程と、
(2)前記組成物をフィルムへ成形する工程と、
(3)前記フィルムをテープへ細断する工程と、
(4)工程(3)のテープを熱延伸し、かつ、アニールする工程と
を含むことを特徴とする繊維の調製方法。
【請求項24】
前記アクリル酸アルキルが、前記エチレン/アクリル酸アルキルコポリマー中に約5〜約30重量%の範囲で存在することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記アクリル酸アルキルが、前記エチレン/アクリル酸アルキルコポリマー中に約10〜約25重量%の範囲で存在することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記アクリル酸アルキルが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸ブチルよりなる群から選択されることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記アクリル酸アルキルがアクリル酸メチルであることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
成分(b)が2〜30重量%の量で存在することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項29】
成分(b)が2〜20重量%の量で存在することを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
成分(b)が2〜10重量%の量で存在することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
(c)フィラー、艶消剤、UV安定剤、顔料および他の添加剤よりなる群から選択される少なくとも1種の追加成分を0.01〜40重量%さらに含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項32】
成分(c)が0.1〜15重量%の量で存在することを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項33】
冷却水浴中へ前記組成物を押し出し、急冷することにより調製されることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項34】
チルドロール上へ前記組成物を押し出し、急冷することにより調製されることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項35】
環状ダイに通して前記組成物を押し出し、空気急冷することにより、チューブラ・インフレートフィルムに調製されることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物が管型反応器によって製造されたエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーを含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項37】
(a)ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンおよびエチレンのランダムコポリマーまたはブロックコポリマー、ならびにポリプロピレン、エチレンおよび他の1種のオレフィンのランダムターポリマーまたはブロックターポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種のポリプロピレンポリマーと、
(b)少なくとも1種のエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーを1〜15重量%と、
を含む組成物から調製されることを特徴とする溶融紡糸繊維。
【請求項38】
前記アクリル酸アルキルが、前記エチレン/アクリル酸アルキルコポリマー中に約5〜約30重量%の範囲で存在することを特徴とする請求項37に記載の繊維。
【請求項39】
前記アクリル酸アルキルが、前記エチレン/アクリル酸アルキルコポリマー中に約10〜約25重量%の範囲で存在することを特徴とする請求項38に記載の繊維。
【請求項40】
前記アクリル酸アルキルが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸ブチルよりなる群から選択されることを特徴とする請求項37に記載の繊維。
【請求項41】
前記アクリル酸アルキルがアクリル酸メチルであることを特徴とする請求項40に記載の繊維。
【請求項42】
成分(b)が2〜10重量%の量で存在することを特徴とする請求項37に記載の繊維。
【請求項43】
(c)フィラー、艶消剤、UV安定剤、顔料および他の添加剤よりなる群から選択される少なくとも1種の追加成分を0.01〜15重量%さらに含むことを特徴とする請求項37に記載の繊維。
【請求項44】
成分(c)が0.1〜5重量%の量で存在することを特徴とする請求項43に記載の繊維。
【請求項45】
前記組成物が管型反応器によって製造されたエチレン/アクリル酸アルキルコポリマーを含むことを特徴とする請求項37に記載の繊維。
【請求項46】
請求項37に記載の溶融紡糸繊維から調製されることを特徴とする不織布。
【請求項47】
おむつ、衛生製品、医療用衣料、マスク、掛け布、覆い、毛布、パッケージング、耐久紙、雑巾(wipe)、ラップ、旗、カーペット基布、フィルター、ジオテキスタイル、アグロテキスタイル、工業布、屋根膜、旅行鞄ライナー、室内装飾材料、および建造物ラップ(construction wrap)よりなる群から選択される、請求項37に記載の溶融紡糸繊維から製造されることを特徴とする物品。

【公表番号】特表2007−501875(P2007−501875A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522552(P2006−522552)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/019658
【国際公開番号】WO2005/017008
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】