アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼの阻害活性を有する化合物またはその塩を有効成分とする殺虫剤
本発明は、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼの阻害活性を有する化合物またはその塩を有効成分とする殺虫剤に関するものである。前記アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼの阻害活性を有する化合物は、害虫の生体内でステロール代謝を抑制して、幼虫の殺虫活性に優れ、よって、安定性の高い殺虫剤として用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼの阻害活性を有する化合物またはその塩を有効成分とする殺虫剤に関する。
【0002】
〔背景技術〕
従来、農業生産物および加工物の生産性の増大、衛生昆虫の防除と山林保護のために、有機合成殺虫剤が広く用いられてきた。しかしながら、数十年にわたった連続使用と乱用により、天敵を用いた生物学的防除系に悪影響を及ぼし、害虫の異常発現または抵抗性害虫の出現、人間を始めとする非標的微生物への毒性発現および環境汚染などの多くの副作用を引き起こすことになった。
【0003】
このような理由により、有機合成殺虫剤の使用が制限されつつあり、特に、韓国内でも1993年に比べて、2004年までに現在使用中である殺虫剤の量を50%まで低下させる予定であるため、農産物の生産性を増加させる手段としての新たな殺虫剤の開発が強く望まれている。しかも、最近の動向をみると、今後10年内に世界の生物学的製剤市場が5兆ウォン以上に拡大するものと見込まれており、韓国内の生物農薬市場も940億ウォンに拡大するものと予想され、関連生物工学技術の発展に伴って、その可能性は次第に高くなるものと予想されている。
【0004】
殺虫剤は、昆虫の口、皮膚、気門を通じて侵入する。殺虫剤は、昆虫の作用部位に到達すると、あるものは分解されて無毒化するのに対して、ほかのものは活性化して強力な毒性を有する物質に変わって、器官に蓄積されるか、または体外に排出される。また、昆虫に殺虫剤が適用されても、その全部が殺虫作用に関与するものではなく、侵入時、体内で様々な抵抗を受けるため、その一部のみが作用部位に到達した後、生理および生理学的機能の変化を引き起こして致死作用を示す。従って、殺虫剤の作用機構を考慮すると、殺虫剤の作用場所とその方法、また体内での有効な殺虫剤の量を支配する代謝作用などが重要な意味を有している。
【0005】
現在用いられる殺虫剤は、作用機序の面で神経伝達阻害剤、エネルギー生産阻害剤、成長調節剤、及び性フェロモン誘引剤に大別され、さらに、前記成長調節剤は、幼弱ホルモン阻害剤およびキチン生合成阻害剤に分けられる。
【0006】
前記神経伝達阻害剤は、神経系を異常刺激し、興奮させるかまたは抑制して昆虫を殺すものである。
【0007】
ニューロンは、神経系構成の最小単位として細胞体から伸長する軸索末端が、ほかのニューロンの樹状突起と接触しているが、この接触部分をシナプスという。神経系で発生する刺激は、軸索を介してその末端であるシナプス前膜まで伝達され、即座にシナプス小胞体から放出される化学伝達物質であるアセチルコリン(acetyl−choline、以下、「ACh」という。)が、シナプスに移動し、その後、ニューロン伝達部であるシナプス後膜にあるレセプターに結合され、そのニューロンを刺激する。このような方法で、あるニューロンから次のニューロンに神経刺激を伝達し続けることになる。
【0008】
シナプス小胞体から放出されるAChは、シナプス前膜から後膜へ刺激を伝達するが、その役割を終えると、AChは、これ以上必要なく、これを加水分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼ(acetylcholinesterase、以下、「AChE」という。)は、シナプス後膜において生産される。このAChEは、二つの活性作用を行うが、一つは陰イオンとエステル分解部位を有しており、もう一つはAChを加水分解する役割を果たす。
【0009】
従って、神経刺激伝達を終えたAChが、シナプス後膜のレセプターに累積されると、過度の興奮と痙攣を引き起こして逆効果をもたらすので、AChEによって、AChは、コリンと酢酸に分解されてシナプス前膜に吸収された後、シナプス小胞体においてさらにAChに転換されて貯蔵される。
【0010】
このような理由により、AChEの阻害作用を示す殺虫剤は、主になっている有機リン系とカルバメート系が、神経化学伝達物質のAChを分解する酵素であるAChEの活性作用を阻害すると、AChがシナプスに蓄積されて、神経伝達機能に異常を生じ、痙攣と麻痺を引き起こして昆虫を殺すことになる。前記有機リン系とカルバメート系化合物は、主にAChEの活性部位に作用してAChの分解作用を阻害すると知られている。
【0011】
このような化合物は、昆虫の皮膚に比較的速く浸透し、中枢神経の表面に付着して異常神経機能作用を引き起こすが、その症状は、潜伏期を経て、異常行動、過眠症、激しい痙攣、麻痺の順に症状が進んで虫を殺すことになる。
【0012】
成長調節剤は、昆虫表皮の構成とキチン生合成阻害作用をもたらし、殺虫効果を示すものであり、これは、幼弱ホルモン阻害剤とキチン生合成阻害剤に分けられる。
【0013】
昆虫の体内に侵入した殺虫剤は、各種の酵素によって、酸化、還元、加水分解などにより代謝分解される。しかしながら、殺虫剤の中には、このような代謝過程において、解毒とは反対に毒性が著しく増加するものがある。このような変化を活性化といい、殺虫剤では酸化によるものが殆どである。
【0014】
昆虫の体壁である皮膚は、外骨格ともいい、脊髄動物の皮膚とは異なり、体形維持、筋肉サポート、硬さなどの構造的機能および化学組成が色々な点で異なる。昆虫は、漸進的成長のために脱皮をするが、表皮の生合成過程は、生理機能上、極めて重要である。昆虫の皮膚は、表皮、真皮、基底膜で構成されているが、表皮は、外表皮と原表皮に分けられている。キチンは、脊髄動物には存在せず、昆虫表皮の主要構成成分であり、脱皮阻害剤である殺虫剤によって、このキチン生合成を阻害すると昆虫が殺される。
【0015】
昆虫の原表皮は、N−アセチルグルコサミンの重合体として、キチンを多量含有しているので、脱皮阻害剤の作用機構は、神経阻害剤とは異なり、口や気孔から体内に取り込まれたとき、昆虫の表皮がうまく形成されず、正常的な脱皮を行うことができない。このとき、硬化蛋白質からなる外表皮の形成には影響を及ぼさず、内原表皮層のキチン形成を抑制する。このような脱皮阻害剤の具体的な作用機構は、未だ規定されていないが、UDP−N−アセチルグルコサミンの重合を抑制して、原表皮の主成分であるキチン生合成酵素を阻害するものと知られている。
【0016】
性フェロモン誘引剤は、昆虫の雌から分泌される雄誘引フェロモンを用いて、雄を誘引し捕獲して殺すものである。しかしながら、このような性フェロモン誘引剤は、未だ野外試験ではあまり効力が得られなかった。
【0017】
従来の殺虫剤は、マシン油乳剤を用いて虫体の表面を覆って窒息死させる物理的致死作用を引き起こすものもあるが、現在用いられる殆どの殺虫剤は、生命維持に基本となる役割を果たす神経系やエネルギー生産系の酵素に作用するものである。最近は、表皮層を形成するキチンの生合成を阻害し、または幼弱ホルモンの生成を阻害するなど、昆虫特有の機能に作用する殺虫剤を開発して実用化段階にある。
【0018】
多くの研究者によって、昆虫の生理関連研究が部分的に行われており、最近の研究動向は、分子生物学的方法により代謝関連酵素やレセプターについての研究が進まれている。
【0019】
昆虫細胞膜の生成、表皮層のワックス成分、および血リンパ液での脂肪輸送においてこのコレステロールが必要であるからであり、その要求量は、コレステロールの代わりに、22−デヒドロコレステロールや7−デヒドロエルゴステロールに代替可能であり、また前記化合物を代替化合物という。しかしながら、脱皮ホルモン合成には、代替化合物を用いることができない。
【0020】
昆虫の体内において、脂肪成分は、親水性が少なく、血リンパ液を介して組織間で輸送することが容易ではないが、昆虫は、輸送蛋白質を用いてこの難点を克服している。リン脂質、コレステロール、炭化水素、幼弱ホルモンはもとより、さらには餌や体壁から入った脂溶性物質と結合する。
【0021】
幼弱ホルモンも輸送または結合蛋白質と結合して血リンパ液に存在する。結合蛋白質は、幼弱ホルモンの輸送ばかりでなく、血リンパ液にある一般のエステラーゼの幼弱ホルモンの分解作用も防ぐ。しかしながら、幼弱ホルモン特異エステラーゼは、結合蛋白質との結合の有無に拘らず、幼弱ホルモンを分解することができ、血リンパ液内の幼弱ホルモンの濃度は、アラタ体から放出される量と幼弱ホルモン特異エステラーゼの活性によって決定される。
【0022】
幼弱ホルモンを分泌するアラタ体は、幼虫発育期間はもとより、成虫の生息活動期間にも周期的な活性を示し、これらの高いホルモン分泌活性は、アラタ体の体積変化と密接な関連がある。このとき、分泌細胞も大きくなり、細胞質はもとより、様々な細胞小器官がより多くなる。幼弱ホルモンの他の作用については、昆虫の変態を抑制して幼弱ホルモンの濃度が低くなると、脱皮させることも報告されている。
【0023】
多くの研究者によって、昆虫の生理関連研究については、分子生物学的方法により代謝関連酵素やレセプターに対する研究が部分的に行われているが、ホルモンの輸送やステロールの貯蔵に関連した研究はあまり行われていない。
【0024】
昆虫は、ステロールの合成能力がないため、ステロールは必須栄養分として要求され、多くの昆虫は、植物性ステロールをコレステロールに切り替えて用いる。コレステロールは、脱皮ホルモンを合成するのに必須であり、細胞膜を形成するのにもリン脂質と一緒に関与する。
【0025】
一方、アシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤は、人間の高脂血症の予防と治療に効果があり、特に、動脈硬化発生機序に関連している新たな作用機序を有する高脂血症の治療剤の開発の一環としてアシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼの開発が活発に進行されており、アシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼは、コレステロールのアシル化に関与して小腸でのコレステロールの吸収、肝臓での超低濃度脂蛋白質の合成、脂肪細胞と血管内壁に貯蔵型のアシル化したコレステロールの蓄積に関与して動脈硬化の進展にも関与する酵素として知られており、新たな代謝機序の高脂血症予防治療剤の開発研究が進行中であり、アシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤は、化学合成された尿素、アミド、フェノール系の合成化合物が主になっている。その中で、in vivoにおける活性評価試験を終えてから、動脈硬化予防治療剤として用いるために、前臨床段階評価中である医薬品候補物質はあるが、未だアシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤として臨床に用いられているものはない。
【0026】
本発明では、昆虫がステロールを必須に要求するので、これらの代謝機序のうち、貯蔵や輸送に関与するステロールアシル化酵素を阻害して殺虫活性を示す新たな作用機序を糾明し、この機序を用いて活性物質を開発して、安全性が確保された作用機序の殺虫活性物質を発明した。
【0027】
〔発明の開示〕
本発明では、幼虫のステロール代謝において、貯蔵型ステロールまたは各種のホルモン生成に重要な役割をするものと知られているステロールアシル化酵素を新たな概念の目標指向的な探索系として使用して、天然資源からは新たな活性物質を探索し、阻害活性物質を分離精製して構造を糾明し、既に合成されているアシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害活性を有する有機合成物を、本発明の検索系において活性を評価し、酵素阻害活性を確認した物質を、種々の幼虫に処理した結果、活性物質が幼虫に対して生物活性を示すことを確認して、本発明を完成するに至った。
【0028】
本発明の目的は、アシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼの阻害活性を有する化合物またはその塩を有効成分とする殺虫剤を提供することである。
【0029】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の前記およびほかの目的、特徴および利点は添付図面を参考する以降の詳細な説明からより明らかに理解可能であろう。
【0030】
図1は、本発明のpyripyropene A(化学式1)の水素核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0031】
図2は、本発明のphenylpyropene A(化学式2)の水素核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0032】
図3は、本発明のphenylpyropene B(化学式3)の水素核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0033】
図4は、本発明のphenylpyropene C(化学式4)の水素核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0034】
図5は、本発明のフェオホルバイドa(pheophorbide a)(化学式5)の水素核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0035】
図6は、本発明のpyripyropene Aによるコナガ幼虫の殺虫効果を示すグラフである。
【0036】
図7は、本発明の化合物によるコナガ幼虫の殺虫効果を示すグラフである。
【0037】
図8は、本発明のphenylpyropene A、B、Cによるチャイロゴミムシダマシ幼虫の体重減少効果を示すグラフである。
【0038】
図9は、本発明のpyripyropene A、phenylpyropene A、Cおよびフェオホルバイドaによるチャイロゴミムシダマシ幼虫の成長阻害程度と殺虫活性を比較した写真である。
【0039】
〔発明を実施するための最良の形態〕
前記目的を達成するために、本発明は、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼの阻害活性を有する化合物またはその塩を有効成分とする殺虫剤を提供する。
【0040】
以下、本発明について詳述する。
【0041】
本発明は、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼの阻害活性を有する化合物を有効成分とする殺虫剤を提供する。具体的には、下記化学式1〜11よりなる群から選ばれた化合物を有効成分とする殺虫剤を提供する。
【0042】
【化1】
【0043】
【化2】
【0044】
【化3】
【0045】
【化4】
【0046】
【化5】
【0047】
【化6】
【0048】
【化7】
【0049】
【化8】
【0050】
【化9】
【0051】
【化10】
【0052】
【化11】
前記化学式1〜11の化合物は、化学的合成および植物または微生物から抽出して得られたものが用いられ得る。
【0053】
そのうち、前記化学式1〜4の化合物は、ペニシリウムグリセオフルビン F1959(Penicillium griseofulvum F1959)を培養した後、酢酸エチルで抽出して抽出物を得、得られた抽出物をクロマトグラフィーに付して製造される。
【0054】
前記ペニシリウムグリセオフルビン F1959から得られた酢酸エチル抽出物は、クロマトグラフィーによって前記化合物が得られる。前記クロマトグラフィーは、シリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィーを順次行うことが好ましく、このとき、シリカゲルカラムクロマトグラフィーの溶媒は、クロロホルムとメタノールの混合溶媒を用い、高速液体クロマトグラフィーは、アセトニトリルと水の混合溶媒を用いることが好ましい。
【0055】
前記化学式1〜11からなる化合物は、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼに対して阻害活性を示すものであり、本発明では前記阻害活性により幼虫の殺虫活性を示す。
【0056】
具体的には、本発明の殺虫剤は、昆虫が成育するのにステロールが必須に要求され、これらの代謝機序中に関連したステロールの貯蔵、輸送およびホルモン活性や破壊において、ステロールアシル化酵素が必須に用いられることに着目して、前記化合物が、代謝機序中の貯蔵または輸送に関与するアシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼを阻害して殺虫活性を示すことを、下記実施例を通じて確認した。
【0057】
本発明に関するアシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼに対して阻害活性を有する化合物は、有害節足動物類(例えば、有害昆虫及び有害ダニ)および有害線虫類を含む害虫に対する防除効力を示す。また、従来、殺虫剤に対する抵抗性が向上した害虫を、効果的に防除するのに用いられ得る。
【0058】
本発明の化合物を殺虫剤の有効成分として用いる場合、それは、任意のその他の成分を添加することなく、それ自体としてまたは塩(塩酸および硫酸のような無機酸、またはp−トルエンスルホン酸のような有機酸との農・化学的に許容可能な塩)の形態で使用されてもよい。さらに、本発明の化合物は、通常、固体担体、液体担体、気体担体または誘引物(餌)と混合するか、あるいは塩基性物質、例えば多孔質セラミック板または不織布に吸収させた後、界面活性剤、および必要に応じて、その他の助剤を添加して、これらを各種の形態、例えば、オイルスプレー、乳化濃縮物、水和剤、流動顆粒、粉末、エアゾール、燻煙剤(例えば、フォギング)、蒸発可能な剤形物、スモーク剤、毒性餌、防ダニ用シートまたは樹脂剤形物として剤形することができる。
【0059】
前記各剤形物は、通常、有効成分として一つ以上の前記化合物を0.01乃至95重量%含有することができる。
【0060】
剤形物に用いられる固体担体としては、カオリン粘土、珪藻土、合成水和した酸化珪素、ベントナイト、文挟粘土、および酸性粘土のような粘土物質の微細粉末または顆粒;各種のタルク、セラミック、およびその他の無機物質、例えば、絹雲母、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、およびケイ酸;および化学的肥料、例えば、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素、および塩化アンモニウムが挙げられる。
【0061】
液体担体としては、水;アルコール、例えば、メタノールおよびエタノール;ケトン、例えばアセトンおよびメチルエチルケトン;芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、およびメチルナフタレン;脂肪族炭化水素、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、灯油、軽油;エステル、例えば、酢酸エチルおよび酢酸ブチル;ニトリル、例えばアセトニトリルおよびイソブチロニトリル;エーテル、例えば、ジイソプロピルエーテルおよびジオキサン;酸アミド、例えば、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミド;ハロゲン化炭化水素、例えば、ジクロロメタン、トリクロロエタン、および四塩化炭素;ジメチルスルホキシド;および植物油、例えば、大豆油および綿実油が挙げられる。
【0062】
気体担体または推進剤としては、フロンガス、ブタンガス、LPG(液化石油ガス)、ジメチルエーテル、および二酸化炭素が挙げられる。
【0063】
毒性餌に用いられるための塩基物質としては、餌、例えば、穀物粉、植物油、糖類、および結晶セルロース;酸化防止剤、例えば、ジブチルヒドロキシトルエンおよびノルジヒドログアヤレト酸;保存剤、例えば、デヒドロ酢酸;飲食防止用物質、例えば、トウガラシ粉;および誘引性風味、例えば、チーズ風味およびタマネギ風味が挙げられる。
【0064】
界面活性剤としては、アルキルサルフェート、スルホン酸アルキル、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル、およびそのポリオキシエチレン誘導体、ポリエチレングリコールエーテル、多価アルコールエステル、および糖アルコール誘導体が挙げられる。
【0065】
接着剤または分散剤のような助剤としては、カゼイン、ゼラチン;多糖類、例えば、澱粉、アラビアゴム、セルロース誘導体、およびアルギン酸;リグニン誘導体、ベントナイト、糖類、および合成水溶性重合体、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびポリアクリル酸が挙げられる。
【0066】
安定化剤としては、PAT(isopropyl acid phosphate)、BHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、BHA(2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールおよび3−tert−ブチル−4−メトキシフェノールの混合物)、植物油、鉱油、界面活性剤、脂肪酸、およびそのエステルが挙げられる。
【0067】
本発明による化合物が、農業用殺虫剤、ダニ駆除剤、または抗線虫剤として用いられる場合、それらの適用量は、通常、10エーカー当たり0.1乃至100gである。水で希釈した後に用いられる乳化濃縮物、水和剤、流動顆粒、およびその他の類似剤形物の場合、その適用濃度は、通常、1乃至100,000ppmの範囲である。顆粒、粉末またはその他の類似剤形物の適用は、希釈しなかった剤形物として行われる。本発明の化合物を、流行病予防のための殺虫剤、ダニ駆除剤、または抗線虫剤として用いるのに当たって、それらが乳化濃縮物、水和剤、流動顆粒、またはその他の類似剤形物である場合、水で濃度0.1乃至500ppmに希釈し、あるいはそれらをオイルスプレー、エアゾール、燻煙剤、毒性餌、防ダニ用シートまたはその他の類似剤形物である場合は、そのまま適用される。この適用量および濃度は、剤形物の形態、適用時期、場所および方法、害虫の種類、損害の程度、およびその他の要因によって異なるので、前記範囲に限定されず、増減が可能である。
【0068】
本組成物を、ウシとブタなどの家畜、またはネコおよびイヌなどの愛玩動物の寄生虫防除のための殺虫剤またはダニ駆除剤として用いる場合、その組成物またはその塩を、公知の獣医学的方法、例えば、系統的防除のための錠剤、カプセル、液剤、ボーラス、餌混入、座薬または注射剤;または油性若しくは水性溶液の噴霧、注入(注ぎまたは点滴)処理によって、または非系統的防除のためにカラーおよびタグのような適切な形状に作った成形品を用いて適用することができる。この場合、本化合物は、通常、宿主の体重1kg当たり0.01乃至100mgの量で適用される。
【0069】
本化合物は、ほかの殺虫剤、抗線虫剤、ダニ駆除剤、殺菌剤、殺真菌剤、除草剤、植物成長調整剤、共力剤、肥料、土壌コンディショナ、および/または動物飼料とともに、あるいはそれらと別途にして同時に使用することができる。
【0070】
実施例
以下、本発明を添付図面を参照する下記実施例に基づいてより詳しく説明する。しかしながら、下記実施例は、単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0071】
実施例1:アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害物質の製造
<アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害物質の製造>
(1)本発明で用いられる生産菌株のペニシリウムグリセオフルビン F1959は、韓国慶尚北道蔚山において採取した土壌から分離した菌であって、菌学的研究によりペニシリウムグリセオフルビンと判明され、本発明者等は、生命工学研究所韓国種菌協会にペニシリウムグリセオフルビン F1959として寄託し、寄託番号KCTC 0387BPを付与された。
【0072】
冷凍保管された前記菌株(10%グリセロール、−80℃)を、バッフル付き1L三角フラスコに入れ、100ml種菌培地(ブドウ糖0.5%、酵母エキス0.2%、ポリペプトン0.5%、リン酸カリウム0.1%、MgSO4・7H2O0.05%、pH5.8に調整した後滅菌する)に接種して、29℃で18時間の間振盪培養した。前記培養された種菌20mlを、バッフル付き5L三角フラスコに入れ、1L生産培地(可溶性澱粉2%、soytone0.4%、Pharmamedia0.3%、リン酸カリウム0.1%、MgSO4・7H2O0.05%、炭酸カルシウム0.3%、塩化ナトリウム0.2%、pH5.8に調整した後滅菌する)に接種して、29℃で120時間の間振盪培養した。
【0073】
(2)前記(1)で培養された発酵液に同量の酢酸エチル(EtOAc)で撹拌して抽出した後、減圧濃縮して、褐色油状の抽出物を得た。
【0074】
前記抽出物をシリカゲル(Merck社、9385)カラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール=99:1、98:2、97:3、95:5、90:10 V/V%、シリカゲルの4倍量)を行い、分液を薄膜クロマトグラフィーにより物質の分布度を確認し、同じ物質群を集めて、in vitroにおけるACATの阻害活性を測定した後、活性部分を集めた。活性物質は、クロロホルム−メタノール95:5〜90:10 V/V%において溶出され、有機溶媒層を減圧濃縮して、黄褐色の油状抽出物を得た。
【0075】
(3−1)前記得られた黄褐色抽出物を高速液体クロマトグラフィーにより、本発明のpyripyropene(化学式1)を含有した活性物質を精製した。具体的には、前記高速液体クロマトグラフィーカラムは、YMC社のODS(20×250mm)を用い、検出器は紫外線検出器を用いており、322nmにおいて前記pyripyropeneを含有した活性物質を検出した。
【0076】
前記精製されたpyripyropeneを含有した活性物質を、アセトニトリル/水(45/55、体積比)を溶媒として溶出し、11分でpyripyropene A(化学式1)を溶出した。
【0077】
前記得られた溶出液を減圧濃縮してもう一回精製し、無色結晶であるpyripyropene A(化学式1)を得た。前記化合物の生産量は、120時間の間培養した発酵液1Lにつき13mgが生産された。
【0078】
(3−2)また、前記(2)で得られた黄褐色抽出物を高速液体クロマトグラフィーを用いて、本発明の化学式2〜4の化合物を含有した活性物質を精製した。具体的には、高速液体クロマトグラフィーカラムでは、YMC社のODS(20×250mm)を用い、検出器は紫外線検出器を用いており、320nmで前記化学式2〜4の化合物を含有した活性物質を検出した。
【0079】
前記精製された活性物質を、アセトニトリル/水(75/25、体積比)を溶媒として1分当たり8mlを溶出させ、15分、26分、49分においてそれぞれphenylpyropene A(化学式2)、phenylpyropene B(化学式3)、phenylpyropene C(化学式4)を含有した分液を溶出した。
【0080】
前記分液を減圧濃縮して、無色結晶であるphenylpyropene A(化学式2)、phenylpyropene B(化学式3)、phenylpyropene C(化学式4)をそれぞれ得た。前記phenylpyropene A、B、Cの生産量は、120時間の間培養した発酵液1Lにつきそれぞれ2.9mg、3mg、3.1mgが生産された。
【0081】
<本発明のステロール代謝活性阻害物質の構造>
(1)紫外線−可視光線分析
前記実施例1で得られたステロール代謝活性阻害物質の構造を決定するために、紫外線−可視光線吸光度分析を行った。具体的には、前記実施例1で得られた化合物を100%メタノールに溶かし、紫外線−可視光線分光器(Shimazu社、UV−265)を用いて吸収波長を分析した。
【0082】
実験の結果、UV232と322nmにおいて極大吸光値を示したので、分子構造内にピリジンまたはフェニル基の存在が推定された。
【0083】
(2)赤外線吸光度分析
赤外線(IR)吸光度分析は、活性物質試料2mgをクロロホルムに溶かし、AgBrを塗った後乾燥して、比率記録型赤外線分光器(Bio−Rad Digilab Division、FTS−80)で分析した。
【0084】
分光の結果、3550cm−1において分子内にOH基の存在と、1740cm−1と1702cm−1において分子内にCOO基の存在を示す吸収ピークを観察することができた。
【0085】
(3)分子量分析
前記実施例1で得られた化合物の分子量を分析するために、VGZAB−7070質量分析器を用いて、高分解能質量分析を行った。
【0086】
pyripyropene A(化学式1)の分子量が583、phenylpyropene A(化学式2)の分子量が581、phenylpyropene B(化学式3)の分子量が508、phenylpyropene C(化学式4)の分子量が450、フェオホルバイドa(化学式5)の分子量が592として測定された。
【0087】
(4)核磁気共鳴(NMR)分析
前記実施例1で得られた化合物の構造を調べるために、核磁気共鳴(NMR)分析を行った。前記化合物10mgを完全乾燥し、CDCl3に溶かして、5mmNMRチューブに入れ、Varian Unity−500機種でNMR分析を行った。1H−NMRは500.13MHzで核磁気共鳴スペクトルを測定した。結果は、下記図1〜4に示した。
【0088】
前記(1)〜(4)の分析によって、化学式1〜4の化合物の構造を確認することができた。
【0089】
実験例1:本発明による化合物のACAT活性実験
アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ活性阻害(以下、「ACAT」という。)物質の活性測定は、Brecher法を若干修正して用いた[Brecher.P and C.Chen;Biochimica Biophysica Acat 617:458〜471,1980]。この方法は、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ活性酵素原としては、肝から部分精製したミクロソームを用いており、基質としてはコレステロールと放射能で標識されたオレオイルCoAを反応させるものであり、反応生成物であるコレステロールエステルに含まれた放射能の量で反応程度を測定した。
【0090】
具体的には、アセトンに溶解させたコレステロールとアセトンに溶解させたTriton WR−1339を水に懸濁させ、アセトンは窒素ガスで除去した後、リン酸カリウム緩衝液(pH7.4、最終濃度0.4M)を添加した。酵素反応を安定化させるために、bovine serum albuminを最終濃度で30μMを入れ、DMSOまたはMeOHで溶かした試料を適量入れて、37℃で30分間予備反応させた。この予備反応後、本反応は、基質である[1−14C]oleoyl−CoenzymeAを0.04μ Ciとなるように入れ、37℃で30分間反応させた。反応終了後、イソプロパノール−ヘプタン1mlを入れて反応を停止させた後、n−ヘプタン0.6mlとKPB buffer0.4mlを入れてよく混ぜてから、2分間静置した。分液すると、上澄液200μlを取って、シンチレーションバイアルに入れた。この溶液にシンチレーションカクテル(Lipoluma,Lumac Co.)4mlを入れ、シンチレーションカウンタ(Packard Delta−200)で生成されたオレイン酸コレステリルの量を測定し、阻害活性は下記式1により計算した。
【0091】
[式1]
阻害活性(%)=[1−(T−B/C−B)]×100
(前記式中、T:酵素反応液に試料を入れた試験区におけるcpm値、C:酵素反応液に試料を入れなかった対照区におけるcpm値、B:酵素原を入れず、試料を入れた対照区のcpm値。)
前記ACAT阻害率を測定した結果、
pyripyropene A(化学式1)は、酵素の活性を50%阻害する濃度、すなわちIC50が35ng/mlであり、分子量が583であるので、0.060nMとして計算された。
【0092】
pyripyropene A(化学式2)は、酵素の活性を50%阻害する濃度が500ng/mlと測定され、活性物質の分子量が581であるので、IC50が0.86μMとして計算された。
【0093】
phenylpyropene B(化学式3)は、酵素の活性を50%阻害する濃度が6.5μg/mlと測定され、活性物質の分子量が508であるので、IC50が12.8μMとして計算された。
【0094】
phenylpyropene C(化学式4)は、酵素の活性を50%阻害する濃度が7.2μg/mlと測定され、活性物質の分子量が450であるので、IC50が16.0μMとして計算された。
【0095】
フェオホルバイドa(化学式5)は、酵素の活性を50%阻害する濃度が1.3μg/mlであり、分子量が592であるので、IC50が2.2μMとして計算された。
【0096】
また、化学式6〜11の化合物を20μg/ml、100μg/mlの濃度で処理したとき、化学式6の化合物が92.4、99.2%阻害;化学式7の化合物が96.6、97.8%阻害;化学式8の化合物が84.5、93.8%阻害;化学式9の化合物が93.4、98.4%阻害;化学式10の化合物が17.6、82.0%阻害;化学式11の化合物が84.8、89.6%阻害するものと測定され、ACAT酵素の活性を阻害することが確認された。
【0097】
実験例2:コナガ(Plutella xylostella L.)の幼虫に対する活性試験
本発明で用いられる試験昆虫としてのコナガの幼虫は、2001年4月韓国大田市儒城区魚隠洞所在の韓国生命工学研究院昆虫資源質から分譲され、実験昆虫として用いた。本発明のACAT阻害活性を有する化合物は、正確に重量を測定し、アセトンに適正量を溶かした後、triton X−100 100ppm水溶液9倍と混合し順次希釈して、処理すべき活性検索物質溶液を調製した。コナガ幼虫の餌としては、均一な発育状態のキャベツ葉のディスク(径3.0cm)を打ち抜き、用意された活性検索物質溶液に30秒間十分に浸る程度に浸漬してから取り出し、フード内で60分間乾燥した。蒸留水で濡らしたろ紙ディスクのシャーレ(55×20mm)に、活性検索物質が処理された葉を載せ、コナガの2齢幼虫を虫体が損なわないように柔らかなブラシで幼虫を移動させ、10匹ずつ3回繰り返して接種した。活性検索物質が処理されたコナガ幼虫は、恒温室(25±1℃、相対湿度40〜45%、16L:8D)で飼育し、24時間目、48時間目の殺虫率を調査した。無処理区は、処理された抽出物を除いたアセトン10%溶液にtriton X−100 100ppm水溶液9倍を処理して、活性検索物質の処理方法と同様にして処理した。活性検索実験は、3回繰り返して行い、Finney(1982)のプロビット法によって半数致死濃度(LC50)を算出した。
【0098】
図6に示すように、本発明で用いられるACAT阻害剤中にpyripyropene A(化学式1)は、0.001〜1mgずつコナガに処理し、24時間おきに殺虫程度を測定したところ、対照区と比較して持続的な殺虫現状が示されており、濃度依存的にコナガに殺虫効果が示された。
【0099】
図7に示すように、本発明で用いられるACAT阻害剤(化学式5〜11)を1mgずつコナガに処理し、24時間おきに殺虫程度を測定したところ、対照区と比較して持続的な殺虫現状が示されており、in−vitroにおけるACAT阻害活性が高い化合物は殺虫力が高く、ACAT阻害活性が低い化合物は殺虫力が低く示されることから、in−vitroにおけるACAT阻害活性と殺虫力が相関性を有するものと示された。
【0100】
実験例3:チャイロゴミムシダマシ(Tenebrio montor L.)の幼虫に対する活性試験
本発明で用いられるACAT阻害剤のうち、phenylpyropene A、B、C(化学式2〜4)により、幼虫の体重減少活性を実験した。試験昆虫としてのチャイロゴミムシダマシ幼虫は、韓国生命工学研究院昆虫資源質から分譲され、実験で用いた。チャイロゴミムシダマシの2齢幼虫(10〜12mm)を、活性評価実施の24時間前に健康な幼虫を選んで試験毎に用いた。化学式2〜4の化合物をそれぞれアセトン10%溶液を用いて、1mg/1mlの濃度で溶解させた後、順次希釈して、餌として用いるふすま1g当たり溶液1mlを入れて混合した。前記化合物が混合されたふすまをガラスシャーレ(90×20mm)に入れ、デシケーターに入れて約2時間減圧下で有機溶媒を除去させた後、活動性の良好な幼虫の体重を10匹単位で測定した後、ろ紙ディスクのシャーレ(87×15mm)に、適正量の活性検索物質を処理したふすまと一緒に入れた。室内温度25±1℃、相対湿度40〜45%、16時間明/8時間暗の条件で飼育しながら前記化合物を処理し、72時間の経過後、3日おきに幼虫の体重と摂食量を調査した。実験は3回繰り返して行い、無処理区はアセトン10%溶液を用いた。その結果を図8に示した。
【0101】
図8に示すように、本発明で用いられるACAT阻害剤のうち、phenylpyropene A、B、C(化学式2〜4)を飼料10g当たり1mgずつ入れて、チャイロゴミムシダマシに処理し、3日目、7日目に体重を測定したところ、対照区と比較して持続的な体重減少現象が示された。
【0102】
また、図9に示すように、本発明で用いられるACAT阻害剤のうち、pyripyropene A(化学式1)、phenylpyropene A、C(化学式2、4)、フェオホルバイドa(化学式5)を飼料10g当たり1mgずつ添加して、チャイロゴミムシダマシに摂食させて、それぞれの幼虫成長の阻害程度と殺虫活性を比較した結果、ACAT阻害活性物質を混合させた餌を摂食した幼虫は、全ての処理区において幼虫成長阻害が示され、特に、ACAT阻害活性の高いpyripyropene Aの処理区では、幼虫とサナギの時期にその殆どが死に至り、早期羽化して致死したものも観察され、ほかのACAT阻害剤の処理区でも、半数以上が幼虫とサナギの時期に死んだことが観察されており、生き残った幼虫も成長阻害が生じ、幼虫の虫体が著しく小さく、虫体の活動性が減少することが観察された。本実験の結果、ACAT阻害剤と幼虫の殺虫活性および成長阻害活性とにおいて連関関係が確実にあることが確認された。
【0103】
〔産業上の利用可能性〕
以上のように、本発明は、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼの阻害活性を有する化合物またはその塩を有効成分とする殺虫剤に関するものであり、前記アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼの阻害活性を有する化合物は、害虫の生体内でのステロール代謝を抑制して、幼虫の殺虫活性に優れ、かつ、安定性の高い殺虫剤として用いることができる。また、ペニシリウムグリセオフルビン F1959を用いて、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼの阻害活性を有する化合物を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明のpyripyropene A(化学式1)の水素核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【図2】本発明のphenylpyropene A(化学式2)の水素核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【図3】本発明のphenylpyropene B(化学式3)の水素核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【図4】本発明のphenylpyropene C(化学式4)の水素核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【図5】本発明のフェオホルバイドa(pheophorbide a)(化学式5)の水素核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【図6】本発明のpyripyropene Aによるコナガ幼虫の殺虫効果を示すグラフである。
【図7】本発明の化合物によるコナガ幼虫の殺虫効果を示すグラフである。
【図8】本発明のphenylpyropene A、B、Cによるチャイロゴミムシダマシ幼虫の体重減少効果を示すグラフである。
【図9】本発明のpyripyropene A、phenylpyropene A、Cおよびフェオホルバイドaによるチャイロゴミムシダマシ幼虫の成長阻害程度と殺虫活性を比較した写真である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼの阻害活性を有する化合物またはその塩を有効成分とする殺虫剤に関する。
【0002】
〔背景技術〕
従来、農業生産物および加工物の生産性の増大、衛生昆虫の防除と山林保護のために、有機合成殺虫剤が広く用いられてきた。しかしながら、数十年にわたった連続使用と乱用により、天敵を用いた生物学的防除系に悪影響を及ぼし、害虫の異常発現または抵抗性害虫の出現、人間を始めとする非標的微生物への毒性発現および環境汚染などの多くの副作用を引き起こすことになった。
【0003】
このような理由により、有機合成殺虫剤の使用が制限されつつあり、特に、韓国内でも1993年に比べて、2004年までに現在使用中である殺虫剤の量を50%まで低下させる予定であるため、農産物の生産性を増加させる手段としての新たな殺虫剤の開発が強く望まれている。しかも、最近の動向をみると、今後10年内に世界の生物学的製剤市場が5兆ウォン以上に拡大するものと見込まれており、韓国内の生物農薬市場も940億ウォンに拡大するものと予想され、関連生物工学技術の発展に伴って、その可能性は次第に高くなるものと予想されている。
【0004】
殺虫剤は、昆虫の口、皮膚、気門を通じて侵入する。殺虫剤は、昆虫の作用部位に到達すると、あるものは分解されて無毒化するのに対して、ほかのものは活性化して強力な毒性を有する物質に変わって、器官に蓄積されるか、または体外に排出される。また、昆虫に殺虫剤が適用されても、その全部が殺虫作用に関与するものではなく、侵入時、体内で様々な抵抗を受けるため、その一部のみが作用部位に到達した後、生理および生理学的機能の変化を引き起こして致死作用を示す。従って、殺虫剤の作用機構を考慮すると、殺虫剤の作用場所とその方法、また体内での有効な殺虫剤の量を支配する代謝作用などが重要な意味を有している。
【0005】
現在用いられる殺虫剤は、作用機序の面で神経伝達阻害剤、エネルギー生産阻害剤、成長調節剤、及び性フェロモン誘引剤に大別され、さらに、前記成長調節剤は、幼弱ホルモン阻害剤およびキチン生合成阻害剤に分けられる。
【0006】
前記神経伝達阻害剤は、神経系を異常刺激し、興奮させるかまたは抑制して昆虫を殺すものである。
【0007】
ニューロンは、神経系構成の最小単位として細胞体から伸長する軸索末端が、ほかのニューロンの樹状突起と接触しているが、この接触部分をシナプスという。神経系で発生する刺激は、軸索を介してその末端であるシナプス前膜まで伝達され、即座にシナプス小胞体から放出される化学伝達物質であるアセチルコリン(acetyl−choline、以下、「ACh」という。)が、シナプスに移動し、その後、ニューロン伝達部であるシナプス後膜にあるレセプターに結合され、そのニューロンを刺激する。このような方法で、あるニューロンから次のニューロンに神経刺激を伝達し続けることになる。
【0008】
シナプス小胞体から放出されるAChは、シナプス前膜から後膜へ刺激を伝達するが、その役割を終えると、AChは、これ以上必要なく、これを加水分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼ(acetylcholinesterase、以下、「AChE」という。)は、シナプス後膜において生産される。このAChEは、二つの活性作用を行うが、一つは陰イオンとエステル分解部位を有しており、もう一つはAChを加水分解する役割を果たす。
【0009】
従って、神経刺激伝達を終えたAChが、シナプス後膜のレセプターに累積されると、過度の興奮と痙攣を引き起こして逆効果をもたらすので、AChEによって、AChは、コリンと酢酸に分解されてシナプス前膜に吸収された後、シナプス小胞体においてさらにAChに転換されて貯蔵される。
【0010】
このような理由により、AChEの阻害作用を示す殺虫剤は、主になっている有機リン系とカルバメート系が、神経化学伝達物質のAChを分解する酵素であるAChEの活性作用を阻害すると、AChがシナプスに蓄積されて、神経伝達機能に異常を生じ、痙攣と麻痺を引き起こして昆虫を殺すことになる。前記有機リン系とカルバメート系化合物は、主にAChEの活性部位に作用してAChの分解作用を阻害すると知られている。
【0011】
このような化合物は、昆虫の皮膚に比較的速く浸透し、中枢神経の表面に付着して異常神経機能作用を引き起こすが、その症状は、潜伏期を経て、異常行動、過眠症、激しい痙攣、麻痺の順に症状が進んで虫を殺すことになる。
【0012】
成長調節剤は、昆虫表皮の構成とキチン生合成阻害作用をもたらし、殺虫効果を示すものであり、これは、幼弱ホルモン阻害剤とキチン生合成阻害剤に分けられる。
【0013】
昆虫の体内に侵入した殺虫剤は、各種の酵素によって、酸化、還元、加水分解などにより代謝分解される。しかしながら、殺虫剤の中には、このような代謝過程において、解毒とは反対に毒性が著しく増加するものがある。このような変化を活性化といい、殺虫剤では酸化によるものが殆どである。
【0014】
昆虫の体壁である皮膚は、外骨格ともいい、脊髄動物の皮膚とは異なり、体形維持、筋肉サポート、硬さなどの構造的機能および化学組成が色々な点で異なる。昆虫は、漸進的成長のために脱皮をするが、表皮の生合成過程は、生理機能上、極めて重要である。昆虫の皮膚は、表皮、真皮、基底膜で構成されているが、表皮は、外表皮と原表皮に分けられている。キチンは、脊髄動物には存在せず、昆虫表皮の主要構成成分であり、脱皮阻害剤である殺虫剤によって、このキチン生合成を阻害すると昆虫が殺される。
【0015】
昆虫の原表皮は、N−アセチルグルコサミンの重合体として、キチンを多量含有しているので、脱皮阻害剤の作用機構は、神経阻害剤とは異なり、口や気孔から体内に取り込まれたとき、昆虫の表皮がうまく形成されず、正常的な脱皮を行うことができない。このとき、硬化蛋白質からなる外表皮の形成には影響を及ぼさず、内原表皮層のキチン形成を抑制する。このような脱皮阻害剤の具体的な作用機構は、未だ規定されていないが、UDP−N−アセチルグルコサミンの重合を抑制して、原表皮の主成分であるキチン生合成酵素を阻害するものと知られている。
【0016】
性フェロモン誘引剤は、昆虫の雌から分泌される雄誘引フェロモンを用いて、雄を誘引し捕獲して殺すものである。しかしながら、このような性フェロモン誘引剤は、未だ野外試験ではあまり効力が得られなかった。
【0017】
従来の殺虫剤は、マシン油乳剤を用いて虫体の表面を覆って窒息死させる物理的致死作用を引き起こすものもあるが、現在用いられる殆どの殺虫剤は、生命維持に基本となる役割を果たす神経系やエネルギー生産系の酵素に作用するものである。最近は、表皮層を形成するキチンの生合成を阻害し、または幼弱ホルモンの生成を阻害するなど、昆虫特有の機能に作用する殺虫剤を開発して実用化段階にある。
【0018】
多くの研究者によって、昆虫の生理関連研究が部分的に行われており、最近の研究動向は、分子生物学的方法により代謝関連酵素やレセプターについての研究が進まれている。
【0019】
昆虫細胞膜の生成、表皮層のワックス成分、および血リンパ液での脂肪輸送においてこのコレステロールが必要であるからであり、その要求量は、コレステロールの代わりに、22−デヒドロコレステロールや7−デヒドロエルゴステロールに代替可能であり、また前記化合物を代替化合物という。しかしながら、脱皮ホルモン合成には、代替化合物を用いることができない。
【0020】
昆虫の体内において、脂肪成分は、親水性が少なく、血リンパ液を介して組織間で輸送することが容易ではないが、昆虫は、輸送蛋白質を用いてこの難点を克服している。リン脂質、コレステロール、炭化水素、幼弱ホルモンはもとより、さらには餌や体壁から入った脂溶性物質と結合する。
【0021】
幼弱ホルモンも輸送または結合蛋白質と結合して血リンパ液に存在する。結合蛋白質は、幼弱ホルモンの輸送ばかりでなく、血リンパ液にある一般のエステラーゼの幼弱ホルモンの分解作用も防ぐ。しかしながら、幼弱ホルモン特異エステラーゼは、結合蛋白質との結合の有無に拘らず、幼弱ホルモンを分解することができ、血リンパ液内の幼弱ホルモンの濃度は、アラタ体から放出される量と幼弱ホルモン特異エステラーゼの活性によって決定される。
【0022】
幼弱ホルモンを分泌するアラタ体は、幼虫発育期間はもとより、成虫の生息活動期間にも周期的な活性を示し、これらの高いホルモン分泌活性は、アラタ体の体積変化と密接な関連がある。このとき、分泌細胞も大きくなり、細胞質はもとより、様々な細胞小器官がより多くなる。幼弱ホルモンの他の作用については、昆虫の変態を抑制して幼弱ホルモンの濃度が低くなると、脱皮させることも報告されている。
【0023】
多くの研究者によって、昆虫の生理関連研究については、分子生物学的方法により代謝関連酵素やレセプターに対する研究が部分的に行われているが、ホルモンの輸送やステロールの貯蔵に関連した研究はあまり行われていない。
【0024】
昆虫は、ステロールの合成能力がないため、ステロールは必須栄養分として要求され、多くの昆虫は、植物性ステロールをコレステロールに切り替えて用いる。コレステロールは、脱皮ホルモンを合成するのに必須であり、細胞膜を形成するのにもリン脂質と一緒に関与する。
【0025】
一方、アシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤は、人間の高脂血症の予防と治療に効果があり、特に、動脈硬化発生機序に関連している新たな作用機序を有する高脂血症の治療剤の開発の一環としてアシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼの開発が活発に進行されており、アシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼは、コレステロールのアシル化に関与して小腸でのコレステロールの吸収、肝臓での超低濃度脂蛋白質の合成、脂肪細胞と血管内壁に貯蔵型のアシル化したコレステロールの蓄積に関与して動脈硬化の進展にも関与する酵素として知られており、新たな代謝機序の高脂血症予防治療剤の開発研究が進行中であり、アシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤は、化学合成された尿素、アミド、フェノール系の合成化合物が主になっている。その中で、in vivoにおける活性評価試験を終えてから、動脈硬化予防治療剤として用いるために、前臨床段階評価中である医薬品候補物質はあるが、未だアシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤として臨床に用いられているものはない。
【0026】
本発明では、昆虫がステロールを必須に要求するので、これらの代謝機序のうち、貯蔵や輸送に関与するステロールアシル化酵素を阻害して殺虫活性を示す新たな作用機序を糾明し、この機序を用いて活性物質を開発して、安全性が確保された作用機序の殺虫活性物質を発明した。
【0027】
〔発明の開示〕
本発明では、幼虫のステロール代謝において、貯蔵型ステロールまたは各種のホルモン生成に重要な役割をするものと知られているステロールアシル化酵素を新たな概念の目標指向的な探索系として使用して、天然資源からは新たな活性物質を探索し、阻害活性物質を分離精製して構造を糾明し、既に合成されているアシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害活性を有する有機合成物を、本発明の検索系において活性を評価し、酵素阻害活性を確認した物質を、種々の幼虫に処理した結果、活性物質が幼虫に対して生物活性を示すことを確認して、本発明を完成するに至った。
【0028】
本発明の目的は、アシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼの阻害活性を有する化合物またはその塩を有効成分とする殺虫剤を提供することである。
【0029】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の前記およびほかの目的、特徴および利点は添付図面を参考する以降の詳細な説明からより明らかに理解可能であろう。
【0030】
図1は、本発明のpyripyropene A(化学式1)の水素核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0031】
図2は、本発明のphenylpyropene A(化学式2)の水素核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0032】
図3は、本発明のphenylpyropene B(化学式3)の水素核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0033】
図4は、本発明のphenylpyropene C(化学式4)の水素核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0034】
図5は、本発明のフェオホルバイドa(pheophorbide a)(化学式5)の水素核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0035】
図6は、本発明のpyripyropene Aによるコナガ幼虫の殺虫効果を示すグラフである。
【0036】
図7は、本発明の化合物によるコナガ幼虫の殺虫効果を示すグラフである。
【0037】
図8は、本発明のphenylpyropene A、B、Cによるチャイロゴミムシダマシ幼虫の体重減少効果を示すグラフである。
【0038】
図9は、本発明のpyripyropene A、phenylpyropene A、Cおよびフェオホルバイドaによるチャイロゴミムシダマシ幼虫の成長阻害程度と殺虫活性を比較した写真である。
【0039】
〔発明を実施するための最良の形態〕
前記目的を達成するために、本発明は、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼの阻害活性を有する化合物またはその塩を有効成分とする殺虫剤を提供する。
【0040】
以下、本発明について詳述する。
【0041】
本発明は、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼの阻害活性を有する化合物を有効成分とする殺虫剤を提供する。具体的には、下記化学式1〜11よりなる群から選ばれた化合物を有効成分とする殺虫剤を提供する。
【0042】
【化1】
【0043】
【化2】
【0044】
【化3】
【0045】
【化4】
【0046】
【化5】
【0047】
【化6】
【0048】
【化7】
【0049】
【化8】
【0050】
【化9】
【0051】
【化10】
【0052】
【化11】
前記化学式1〜11の化合物は、化学的合成および植物または微生物から抽出して得られたものが用いられ得る。
【0053】
そのうち、前記化学式1〜4の化合物は、ペニシリウムグリセオフルビン F1959(Penicillium griseofulvum F1959)を培養した後、酢酸エチルで抽出して抽出物を得、得られた抽出物をクロマトグラフィーに付して製造される。
【0054】
前記ペニシリウムグリセオフルビン F1959から得られた酢酸エチル抽出物は、クロマトグラフィーによって前記化合物が得られる。前記クロマトグラフィーは、シリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィーを順次行うことが好ましく、このとき、シリカゲルカラムクロマトグラフィーの溶媒は、クロロホルムとメタノールの混合溶媒を用い、高速液体クロマトグラフィーは、アセトニトリルと水の混合溶媒を用いることが好ましい。
【0055】
前記化学式1〜11からなる化合物は、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼに対して阻害活性を示すものであり、本発明では前記阻害活性により幼虫の殺虫活性を示す。
【0056】
具体的には、本発明の殺虫剤は、昆虫が成育するのにステロールが必須に要求され、これらの代謝機序中に関連したステロールの貯蔵、輸送およびホルモン活性や破壊において、ステロールアシル化酵素が必須に用いられることに着目して、前記化合物が、代謝機序中の貯蔵または輸送に関与するアシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼを阻害して殺虫活性を示すことを、下記実施例を通じて確認した。
【0057】
本発明に関するアシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼに対して阻害活性を有する化合物は、有害節足動物類(例えば、有害昆虫及び有害ダニ)および有害線虫類を含む害虫に対する防除効力を示す。また、従来、殺虫剤に対する抵抗性が向上した害虫を、効果的に防除するのに用いられ得る。
【0058】
本発明の化合物を殺虫剤の有効成分として用いる場合、それは、任意のその他の成分を添加することなく、それ自体としてまたは塩(塩酸および硫酸のような無機酸、またはp−トルエンスルホン酸のような有機酸との農・化学的に許容可能な塩)の形態で使用されてもよい。さらに、本発明の化合物は、通常、固体担体、液体担体、気体担体または誘引物(餌)と混合するか、あるいは塩基性物質、例えば多孔質セラミック板または不織布に吸収させた後、界面活性剤、および必要に応じて、その他の助剤を添加して、これらを各種の形態、例えば、オイルスプレー、乳化濃縮物、水和剤、流動顆粒、粉末、エアゾール、燻煙剤(例えば、フォギング)、蒸発可能な剤形物、スモーク剤、毒性餌、防ダニ用シートまたは樹脂剤形物として剤形することができる。
【0059】
前記各剤形物は、通常、有効成分として一つ以上の前記化合物を0.01乃至95重量%含有することができる。
【0060】
剤形物に用いられる固体担体としては、カオリン粘土、珪藻土、合成水和した酸化珪素、ベントナイト、文挟粘土、および酸性粘土のような粘土物質の微細粉末または顆粒;各種のタルク、セラミック、およびその他の無機物質、例えば、絹雲母、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、およびケイ酸;および化学的肥料、例えば、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素、および塩化アンモニウムが挙げられる。
【0061】
液体担体としては、水;アルコール、例えば、メタノールおよびエタノール;ケトン、例えばアセトンおよびメチルエチルケトン;芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、およびメチルナフタレン;脂肪族炭化水素、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、灯油、軽油;エステル、例えば、酢酸エチルおよび酢酸ブチル;ニトリル、例えばアセトニトリルおよびイソブチロニトリル;エーテル、例えば、ジイソプロピルエーテルおよびジオキサン;酸アミド、例えば、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミド;ハロゲン化炭化水素、例えば、ジクロロメタン、トリクロロエタン、および四塩化炭素;ジメチルスルホキシド;および植物油、例えば、大豆油および綿実油が挙げられる。
【0062】
気体担体または推進剤としては、フロンガス、ブタンガス、LPG(液化石油ガス)、ジメチルエーテル、および二酸化炭素が挙げられる。
【0063】
毒性餌に用いられるための塩基物質としては、餌、例えば、穀物粉、植物油、糖類、および結晶セルロース;酸化防止剤、例えば、ジブチルヒドロキシトルエンおよびノルジヒドログアヤレト酸;保存剤、例えば、デヒドロ酢酸;飲食防止用物質、例えば、トウガラシ粉;および誘引性風味、例えば、チーズ風味およびタマネギ風味が挙げられる。
【0064】
界面活性剤としては、アルキルサルフェート、スルホン酸アルキル、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル、およびそのポリオキシエチレン誘導体、ポリエチレングリコールエーテル、多価アルコールエステル、および糖アルコール誘導体が挙げられる。
【0065】
接着剤または分散剤のような助剤としては、カゼイン、ゼラチン;多糖類、例えば、澱粉、アラビアゴム、セルロース誘導体、およびアルギン酸;リグニン誘導体、ベントナイト、糖類、および合成水溶性重合体、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびポリアクリル酸が挙げられる。
【0066】
安定化剤としては、PAT(isopropyl acid phosphate)、BHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、BHA(2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールおよび3−tert−ブチル−4−メトキシフェノールの混合物)、植物油、鉱油、界面活性剤、脂肪酸、およびそのエステルが挙げられる。
【0067】
本発明による化合物が、農業用殺虫剤、ダニ駆除剤、または抗線虫剤として用いられる場合、それらの適用量は、通常、10エーカー当たり0.1乃至100gである。水で希釈した後に用いられる乳化濃縮物、水和剤、流動顆粒、およびその他の類似剤形物の場合、その適用濃度は、通常、1乃至100,000ppmの範囲である。顆粒、粉末またはその他の類似剤形物の適用は、希釈しなかった剤形物として行われる。本発明の化合物を、流行病予防のための殺虫剤、ダニ駆除剤、または抗線虫剤として用いるのに当たって、それらが乳化濃縮物、水和剤、流動顆粒、またはその他の類似剤形物である場合、水で濃度0.1乃至500ppmに希釈し、あるいはそれらをオイルスプレー、エアゾール、燻煙剤、毒性餌、防ダニ用シートまたはその他の類似剤形物である場合は、そのまま適用される。この適用量および濃度は、剤形物の形態、適用時期、場所および方法、害虫の種類、損害の程度、およびその他の要因によって異なるので、前記範囲に限定されず、増減が可能である。
【0068】
本組成物を、ウシとブタなどの家畜、またはネコおよびイヌなどの愛玩動物の寄生虫防除のための殺虫剤またはダニ駆除剤として用いる場合、その組成物またはその塩を、公知の獣医学的方法、例えば、系統的防除のための錠剤、カプセル、液剤、ボーラス、餌混入、座薬または注射剤;または油性若しくは水性溶液の噴霧、注入(注ぎまたは点滴)処理によって、または非系統的防除のためにカラーおよびタグのような適切な形状に作った成形品を用いて適用することができる。この場合、本化合物は、通常、宿主の体重1kg当たり0.01乃至100mgの量で適用される。
【0069】
本化合物は、ほかの殺虫剤、抗線虫剤、ダニ駆除剤、殺菌剤、殺真菌剤、除草剤、植物成長調整剤、共力剤、肥料、土壌コンディショナ、および/または動物飼料とともに、あるいはそれらと別途にして同時に使用することができる。
【0070】
実施例
以下、本発明を添付図面を参照する下記実施例に基づいてより詳しく説明する。しかしながら、下記実施例は、単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0071】
実施例1:アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害物質の製造
<アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害物質の製造>
(1)本発明で用いられる生産菌株のペニシリウムグリセオフルビン F1959は、韓国慶尚北道蔚山において採取した土壌から分離した菌であって、菌学的研究によりペニシリウムグリセオフルビンと判明され、本発明者等は、生命工学研究所韓国種菌協会にペニシリウムグリセオフルビン F1959として寄託し、寄託番号KCTC 0387BPを付与された。
【0072】
冷凍保管された前記菌株(10%グリセロール、−80℃)を、バッフル付き1L三角フラスコに入れ、100ml種菌培地(ブドウ糖0.5%、酵母エキス0.2%、ポリペプトン0.5%、リン酸カリウム0.1%、MgSO4・7H2O0.05%、pH5.8に調整した後滅菌する)に接種して、29℃で18時間の間振盪培養した。前記培養された種菌20mlを、バッフル付き5L三角フラスコに入れ、1L生産培地(可溶性澱粉2%、soytone0.4%、Pharmamedia0.3%、リン酸カリウム0.1%、MgSO4・7H2O0.05%、炭酸カルシウム0.3%、塩化ナトリウム0.2%、pH5.8に調整した後滅菌する)に接種して、29℃で120時間の間振盪培養した。
【0073】
(2)前記(1)で培養された発酵液に同量の酢酸エチル(EtOAc)で撹拌して抽出した後、減圧濃縮して、褐色油状の抽出物を得た。
【0074】
前記抽出物をシリカゲル(Merck社、9385)カラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール=99:1、98:2、97:3、95:5、90:10 V/V%、シリカゲルの4倍量)を行い、分液を薄膜クロマトグラフィーにより物質の分布度を確認し、同じ物質群を集めて、in vitroにおけるACATの阻害活性を測定した後、活性部分を集めた。活性物質は、クロロホルム−メタノール95:5〜90:10 V/V%において溶出され、有機溶媒層を減圧濃縮して、黄褐色の油状抽出物を得た。
【0075】
(3−1)前記得られた黄褐色抽出物を高速液体クロマトグラフィーにより、本発明のpyripyropene(化学式1)を含有した活性物質を精製した。具体的には、前記高速液体クロマトグラフィーカラムは、YMC社のODS(20×250mm)を用い、検出器は紫外線検出器を用いており、322nmにおいて前記pyripyropeneを含有した活性物質を検出した。
【0076】
前記精製されたpyripyropeneを含有した活性物質を、アセトニトリル/水(45/55、体積比)を溶媒として溶出し、11分でpyripyropene A(化学式1)を溶出した。
【0077】
前記得られた溶出液を減圧濃縮してもう一回精製し、無色結晶であるpyripyropene A(化学式1)を得た。前記化合物の生産量は、120時間の間培養した発酵液1Lにつき13mgが生産された。
【0078】
(3−2)また、前記(2)で得られた黄褐色抽出物を高速液体クロマトグラフィーを用いて、本発明の化学式2〜4の化合物を含有した活性物質を精製した。具体的には、高速液体クロマトグラフィーカラムでは、YMC社のODS(20×250mm)を用い、検出器は紫外線検出器を用いており、320nmで前記化学式2〜4の化合物を含有した活性物質を検出した。
【0079】
前記精製された活性物質を、アセトニトリル/水(75/25、体積比)を溶媒として1分当たり8mlを溶出させ、15分、26分、49分においてそれぞれphenylpyropene A(化学式2)、phenylpyropene B(化学式3)、phenylpyropene C(化学式4)を含有した分液を溶出した。
【0080】
前記分液を減圧濃縮して、無色結晶であるphenylpyropene A(化学式2)、phenylpyropene B(化学式3)、phenylpyropene C(化学式4)をそれぞれ得た。前記phenylpyropene A、B、Cの生産量は、120時間の間培養した発酵液1Lにつきそれぞれ2.9mg、3mg、3.1mgが生産された。
【0081】
<本発明のステロール代謝活性阻害物質の構造>
(1)紫外線−可視光線分析
前記実施例1で得られたステロール代謝活性阻害物質の構造を決定するために、紫外線−可視光線吸光度分析を行った。具体的には、前記実施例1で得られた化合物を100%メタノールに溶かし、紫外線−可視光線分光器(Shimazu社、UV−265)を用いて吸収波長を分析した。
【0082】
実験の結果、UV232と322nmにおいて極大吸光値を示したので、分子構造内にピリジンまたはフェニル基の存在が推定された。
【0083】
(2)赤外線吸光度分析
赤外線(IR)吸光度分析は、活性物質試料2mgをクロロホルムに溶かし、AgBrを塗った後乾燥して、比率記録型赤外線分光器(Bio−Rad Digilab Division、FTS−80)で分析した。
【0084】
分光の結果、3550cm−1において分子内にOH基の存在と、1740cm−1と1702cm−1において分子内にCOO基の存在を示す吸収ピークを観察することができた。
【0085】
(3)分子量分析
前記実施例1で得られた化合物の分子量を分析するために、VGZAB−7070質量分析器を用いて、高分解能質量分析を行った。
【0086】
pyripyropene A(化学式1)の分子量が583、phenylpyropene A(化学式2)の分子量が581、phenylpyropene B(化学式3)の分子量が508、phenylpyropene C(化学式4)の分子量が450、フェオホルバイドa(化学式5)の分子量が592として測定された。
【0087】
(4)核磁気共鳴(NMR)分析
前記実施例1で得られた化合物の構造を調べるために、核磁気共鳴(NMR)分析を行った。前記化合物10mgを完全乾燥し、CDCl3に溶かして、5mmNMRチューブに入れ、Varian Unity−500機種でNMR分析を行った。1H−NMRは500.13MHzで核磁気共鳴スペクトルを測定した。結果は、下記図1〜4に示した。
【0088】
前記(1)〜(4)の分析によって、化学式1〜4の化合物の構造を確認することができた。
【0089】
実験例1:本発明による化合物のACAT活性実験
アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ活性阻害(以下、「ACAT」という。)物質の活性測定は、Brecher法を若干修正して用いた[Brecher.P and C.Chen;Biochimica Biophysica Acat 617:458〜471,1980]。この方法は、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ活性酵素原としては、肝から部分精製したミクロソームを用いており、基質としてはコレステロールと放射能で標識されたオレオイルCoAを反応させるものであり、反応生成物であるコレステロールエステルに含まれた放射能の量で反応程度を測定した。
【0090】
具体的には、アセトンに溶解させたコレステロールとアセトンに溶解させたTriton WR−1339を水に懸濁させ、アセトンは窒素ガスで除去した後、リン酸カリウム緩衝液(pH7.4、最終濃度0.4M)を添加した。酵素反応を安定化させるために、bovine serum albuminを最終濃度で30μMを入れ、DMSOまたはMeOHで溶かした試料を適量入れて、37℃で30分間予備反応させた。この予備反応後、本反応は、基質である[1−14C]oleoyl−CoenzymeAを0.04μ Ciとなるように入れ、37℃で30分間反応させた。反応終了後、イソプロパノール−ヘプタン1mlを入れて反応を停止させた後、n−ヘプタン0.6mlとKPB buffer0.4mlを入れてよく混ぜてから、2分間静置した。分液すると、上澄液200μlを取って、シンチレーションバイアルに入れた。この溶液にシンチレーションカクテル(Lipoluma,Lumac Co.)4mlを入れ、シンチレーションカウンタ(Packard Delta−200)で生成されたオレイン酸コレステリルの量を測定し、阻害活性は下記式1により計算した。
【0091】
[式1]
阻害活性(%)=[1−(T−B/C−B)]×100
(前記式中、T:酵素反応液に試料を入れた試験区におけるcpm値、C:酵素反応液に試料を入れなかった対照区におけるcpm値、B:酵素原を入れず、試料を入れた対照区のcpm値。)
前記ACAT阻害率を測定した結果、
pyripyropene A(化学式1)は、酵素の活性を50%阻害する濃度、すなわちIC50が35ng/mlであり、分子量が583であるので、0.060nMとして計算された。
【0092】
pyripyropene A(化学式2)は、酵素の活性を50%阻害する濃度が500ng/mlと測定され、活性物質の分子量が581であるので、IC50が0.86μMとして計算された。
【0093】
phenylpyropene B(化学式3)は、酵素の活性を50%阻害する濃度が6.5μg/mlと測定され、活性物質の分子量が508であるので、IC50が12.8μMとして計算された。
【0094】
phenylpyropene C(化学式4)は、酵素の活性を50%阻害する濃度が7.2μg/mlと測定され、活性物質の分子量が450であるので、IC50が16.0μMとして計算された。
【0095】
フェオホルバイドa(化学式5)は、酵素の活性を50%阻害する濃度が1.3μg/mlであり、分子量が592であるので、IC50が2.2μMとして計算された。
【0096】
また、化学式6〜11の化合物を20μg/ml、100μg/mlの濃度で処理したとき、化学式6の化合物が92.4、99.2%阻害;化学式7の化合物が96.6、97.8%阻害;化学式8の化合物が84.5、93.8%阻害;化学式9の化合物が93.4、98.4%阻害;化学式10の化合物が17.6、82.0%阻害;化学式11の化合物が84.8、89.6%阻害するものと測定され、ACAT酵素の活性を阻害することが確認された。
【0097】
実験例2:コナガ(Plutella xylostella L.)の幼虫に対する活性試験
本発明で用いられる試験昆虫としてのコナガの幼虫は、2001年4月韓国大田市儒城区魚隠洞所在の韓国生命工学研究院昆虫資源質から分譲され、実験昆虫として用いた。本発明のACAT阻害活性を有する化合物は、正確に重量を測定し、アセトンに適正量を溶かした後、triton X−100 100ppm水溶液9倍と混合し順次希釈して、処理すべき活性検索物質溶液を調製した。コナガ幼虫の餌としては、均一な発育状態のキャベツ葉のディスク(径3.0cm)を打ち抜き、用意された活性検索物質溶液に30秒間十分に浸る程度に浸漬してから取り出し、フード内で60分間乾燥した。蒸留水で濡らしたろ紙ディスクのシャーレ(55×20mm)に、活性検索物質が処理された葉を載せ、コナガの2齢幼虫を虫体が損なわないように柔らかなブラシで幼虫を移動させ、10匹ずつ3回繰り返して接種した。活性検索物質が処理されたコナガ幼虫は、恒温室(25±1℃、相対湿度40〜45%、16L:8D)で飼育し、24時間目、48時間目の殺虫率を調査した。無処理区は、処理された抽出物を除いたアセトン10%溶液にtriton X−100 100ppm水溶液9倍を処理して、活性検索物質の処理方法と同様にして処理した。活性検索実験は、3回繰り返して行い、Finney(1982)のプロビット法によって半数致死濃度(LC50)を算出した。
【0098】
図6に示すように、本発明で用いられるACAT阻害剤中にpyripyropene A(化学式1)は、0.001〜1mgずつコナガに処理し、24時間おきに殺虫程度を測定したところ、対照区と比較して持続的な殺虫現状が示されており、濃度依存的にコナガに殺虫効果が示された。
【0099】
図7に示すように、本発明で用いられるACAT阻害剤(化学式5〜11)を1mgずつコナガに処理し、24時間おきに殺虫程度を測定したところ、対照区と比較して持続的な殺虫現状が示されており、in−vitroにおけるACAT阻害活性が高い化合物は殺虫力が高く、ACAT阻害活性が低い化合物は殺虫力が低く示されることから、in−vitroにおけるACAT阻害活性と殺虫力が相関性を有するものと示された。
【0100】
実験例3:チャイロゴミムシダマシ(Tenebrio montor L.)の幼虫に対する活性試験
本発明で用いられるACAT阻害剤のうち、phenylpyropene A、B、C(化学式2〜4)により、幼虫の体重減少活性を実験した。試験昆虫としてのチャイロゴミムシダマシ幼虫は、韓国生命工学研究院昆虫資源質から分譲され、実験で用いた。チャイロゴミムシダマシの2齢幼虫(10〜12mm)を、活性評価実施の24時間前に健康な幼虫を選んで試験毎に用いた。化学式2〜4の化合物をそれぞれアセトン10%溶液を用いて、1mg/1mlの濃度で溶解させた後、順次希釈して、餌として用いるふすま1g当たり溶液1mlを入れて混合した。前記化合物が混合されたふすまをガラスシャーレ(90×20mm)に入れ、デシケーターに入れて約2時間減圧下で有機溶媒を除去させた後、活動性の良好な幼虫の体重を10匹単位で測定した後、ろ紙ディスクのシャーレ(87×15mm)に、適正量の活性検索物質を処理したふすまと一緒に入れた。室内温度25±1℃、相対湿度40〜45%、16時間明/8時間暗の条件で飼育しながら前記化合物を処理し、72時間の経過後、3日おきに幼虫の体重と摂食量を調査した。実験は3回繰り返して行い、無処理区はアセトン10%溶液を用いた。その結果を図8に示した。
【0101】
図8に示すように、本発明で用いられるACAT阻害剤のうち、phenylpyropene A、B、C(化学式2〜4)を飼料10g当たり1mgずつ入れて、チャイロゴミムシダマシに処理し、3日目、7日目に体重を測定したところ、対照区と比較して持続的な体重減少現象が示された。
【0102】
また、図9に示すように、本発明で用いられるACAT阻害剤のうち、pyripyropene A(化学式1)、phenylpyropene A、C(化学式2、4)、フェオホルバイドa(化学式5)を飼料10g当たり1mgずつ添加して、チャイロゴミムシダマシに摂食させて、それぞれの幼虫成長の阻害程度と殺虫活性を比較した結果、ACAT阻害活性物質を混合させた餌を摂食した幼虫は、全ての処理区において幼虫成長阻害が示され、特に、ACAT阻害活性の高いpyripyropene Aの処理区では、幼虫とサナギの時期にその殆どが死に至り、早期羽化して致死したものも観察され、ほかのACAT阻害剤の処理区でも、半数以上が幼虫とサナギの時期に死んだことが観察されており、生き残った幼虫も成長阻害が生じ、幼虫の虫体が著しく小さく、虫体の活動性が減少することが観察された。本実験の結果、ACAT阻害剤と幼虫の殺虫活性および成長阻害活性とにおいて連関関係が確実にあることが確認された。
【0103】
〔産業上の利用可能性〕
以上のように、本発明は、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼの阻害活性を有する化合物またはその塩を有効成分とする殺虫剤に関するものであり、前記アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼの阻害活性を有する化合物は、害虫の生体内でのステロール代謝を抑制して、幼虫の殺虫活性に優れ、かつ、安定性の高い殺虫剤として用いることができる。また、ペニシリウムグリセオフルビン F1959を用いて、アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼの阻害活性を有する化合物を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明のpyripyropene A(化学式1)の水素核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【図2】本発明のphenylpyropene A(化学式2)の水素核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【図3】本発明のphenylpyropene B(化学式3)の水素核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【図4】本発明のphenylpyropene C(化学式4)の水素核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【図5】本発明のフェオホルバイドa(pheophorbide a)(化学式5)の水素核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【図6】本発明のpyripyropene Aによるコナガ幼虫の殺虫効果を示すグラフである。
【図7】本発明の化合物によるコナガ幼虫の殺虫効果を示すグラフである。
【図8】本発明のphenylpyropene A、B、Cによるチャイロゴミムシダマシ幼虫の体重減少効果を示すグラフである。
【図9】本発明のpyripyropene A、phenylpyropene A、Cおよびフェオホルバイドaによるチャイロゴミムシダマシ幼虫の成長阻害程度と殺虫活性を比較した写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼの阻害活性を有する化合物またはその塩を有効成分とする殺虫剤。
【請求項2】
前記アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害活性を有する化合物は、下記化学式1〜11
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
よりなる群から選ばれた1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の殺虫剤。
【請求項3】
前記化学式1〜4の化合物が、
ペニシリウムグリセオフルビン F1959(Penicillium griseofulvum F1959)を培養し、
前記培養された細包を酢酸エチルで抽出し、
前記抽出物をクロマトグラフィーする工程により製造されることを特徴とする請求項2に記載の殺虫剤。
【請求項1】
アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼの阻害活性を有する化合物またはその塩を有効成分とする殺虫剤。
【請求項2】
前記アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害活性を有する化合物は、下記化学式1〜11
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
よりなる群から選ばれた1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の殺虫剤。
【請求項3】
前記化学式1〜4の化合物が、
ペニシリウムグリセオフルビン F1959(Penicillium griseofulvum F1959)を培養し、
前記培養された細包を酢酸エチルで抽出し、
前記抽出物をクロマトグラフィーする工程により製造されることを特徴とする請求項2に記載の殺虫剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2006−513233(P2006−513233A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564582(P2004−564582)
【出願日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【国際出願番号】PCT/KR2003/002711
【国際公開番号】WO2004/060065
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(505093367)コリア リサーチ インスティチュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (13)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【国際出願番号】PCT/KR2003/002711
【国際公開番号】WO2004/060065
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(505093367)コリア リサーチ インスティチュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (13)
【Fターム(参考)】
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