説明

アスパラガス切断可否自動判定装置

【課題】 畑に栽培されたアスパラガスが収穫に適した所定長さ以上に成長したものを、走行車に搭載した装置により自動的に判定し、且つその切断するアスパラガスの位置情報を出力して自動収穫装置・切断把持装置を作動させ易くする。
【解決手段】 畑を走行する走行車10に、畑のアスパラガスに向けて上下巾が狭く且つ走行方向の前後に所定巾をもった略水平な光を投射する上下一対の投光器11,12と、アスパラガスを撮影する撮影装置14と、同撮影装置の撮影画像のアスパラガスの表面にあらわれる受光ラインL,Lの上側受光ラインLと下側受光ラインLの位置を算出し且つ同一アスパラガスの上下の受光ラインのものかの関連性を判定し、判定結果と位置情報とを出力するコンピュータによる判定位置計算回路19を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畑で栽培されているアスパラガスの芽が所定長さまで成長したものを移動しながら、自動的に判別してアスパラガスの芽を基端から切断して収穫するためのアスパラガス切断可否自動判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アスパラガスは、その夏芽又は春芽が所定長さに達したものを切断して収穫されて販売されている。夏季において1日でアスパラガスは10cm程成長する。そして芽が畑の表土から25cm以上になった頃、採集されて出荷されるものである。あまり長い芽は、商品上価値が低いものとされている。そのため、アスパラガスの成長が速いのでアスパラガスの芽が25cmに達したものを毎日見つけてこれを切断して収穫する必要があった。
【0003】
従来、アスパラガスの収穫作業は、芽が25cm以上成長しているか否かを農作業者が目視で判断し、25cm以上になった芽をカマやハサミ等で人手によって切断していた。この作業は、作業者が腰を降ろして低い姿勢で行うものであり、手間と労力のかかるものとなっていた。
【0004】
そこで、アスパラガスの自動収穫機が期待されていた。その装置に近いものとして、果菜類のきゅうりの自動収穫の果菜類収穫機が特開平4−365414号公報に記載されている。この果菜類収穫機は、果菜類の内のきゅうりを果菜柄部分ロより切断して収穫するときは、果菜類収穫機を所定位置まで走行させて停止させると、切断しようとするきゅうりの母体部分イと柄部分ロとの両者の径が光電センサー1が移動することによって検出され、これら検出された両者の径から、前記母体部分イと柄部分ロとの境界がわかるので、この境界部分を果菜切断装置のカッターで切断してきゅうりを収穫するものである。
【0005】
しかしながら、この公報の収穫機のように一個毎果菜類の収穫部を近接してセンサーを収穫部に沿って動かして測定する方法を、畑の上で近接した距離で林立するアスパラガスの芽の長さの測定に適用すると、その長さの測定のために芽に近づき、次にセンサーを上下移動させねばならず、そのセンサーの移動・操作に時間がかかるとともに、複数の芽が機体に対し遠近に近接して林立すれば、センサーをアスパラガスに近づけること自体が難しいものとなり、機構的にも使用しにくくなるという問題があった。
【0006】
これとは別に、アスパラガスを収穫機に搭載した撮影装置で撮影し、その画像からアスパラガスの一本毎の長さを計算する手法も考えられるが、一本毎のアスパラガスの外形輪郭からの芽の長さを計算するのに時間がかかるものであった。しかも芽は遠近して林立するので、画像からその遠近差をも考慮して寸法を計算せねばならないので、かなり処理時間がかかるものとなっていた。
【特許文献1】特開平4−365414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、従来の収穫機の問題点を解消し、迅速に且つ精確にアスパラガスの寸法を測定して切断の可否を自動的に判断できるアスパラガス切断可否自動判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) アスパラガスの回収容器を備えてアスパラガスの畑を走行できる走行車に、上下巾が狭く且つ走行方向の前後に所定の巾をもった略水平な光を畑のアスパラガスの芽に向けて左右方向に投射する上下一対の投光器と、光が投射された畑のアスパラガスの芽を撮影する撮影装置とを装置し、
上下一対の投光器の投射光が上下において平行となるようにし且つその上下間隔をアスパラガスの芽が収穫できるまで成長して切断できると判断できる判断基準の基準長さとし、光を投射されたアスパラガスの撮影装置の撮影画像にあらわれるアスパラガスの受光個所の短い略水平な受光ラインが上下に存在し且つ上下一対の受光ラインが同じアスパラガスの受光ラインであることの関連性を判断し、上下一対の受光ラインが同一アスパラガスの関連性ありと判断されたアスパラガスは切断できるまで成長したアスパラガスと判定し、併せて受光ラインの画像上の位置から、そのアスパラガスの位置を算出し、判定結果と位置情報の信号を出力するコンピュータ又はデジタルロジックを用いた判定位置計算回路を設けた、アスパラガス切断可否自動判定装置
2) 判定位置計算回路の関連性の判断が撮影画像中の上方と下方の各受光ラインの像の情報から各受光ラインの前後左右の位置を計算し、上方と下方の受光ラインの対の前後左右の位置の偏差を上下の受光ラインの組み合わせで計算し、上側受光ラインを特定した場合の偏差が最も小さい下側受光ラインが同一のアスパラガスの上下の受光ラインのもので関連性があると判定するものである、前記1)記載のアスパラガス切断可否自動判定装置
3) 走行車にアスパラガス撮影用フラッシュランプを設け、判定位置計算回路の関連性の判断が投光器による撮影画像の受光ラインの像と、フラッシュランプを作動させての撮影画像のアスパラガスの芽の像とを同じ座標系で重ね合わせて芽の像上に受光ラインがあるものを同一アスパラガスの上下の受光ラインのものとその関連性を判定するものである、前記1)記載のアスパラガス切断可否自動判定装置
にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、投光器からの上下一対の投射光がアスパラガスに当たると、反射光となって短い略水平の受光ラインとして撮影装置の撮影画像にあらわれる。投射光の光は上下一対で平行であり、その間隔は投光器の上下間隔でアスパラガスが切断できるまで成長したと判断できる判断基準の基準長さとなっている。従って撮影装置の撮影画像を入力して判定計算回路は、上下一対の二つの受光ラインがあらわれて且つ上下の受光ラインが同一アスパラガスの受光ラインであるという関連性を判断し、関連性も認められれば、受光しているアスパラガスは切断できるまで成長していると判定し、切断指令と位置情報を別の収穫機・切断ロボットアーム装置に出力でき、自動収穫を容易にできる。
このように、本発明によれば複数のアスパラガスが畑に近接して林立していても、切断する基準長さ以上に成長して収穫できるアスパラガスか否かの判定は、その撮影画像上での上下一対の受光ラインの存在と関連性だけで判定でき、その判定に複雑な画像処理を行う必要がなく、正確且つ容易に判定でき、判定後速やかに自動的に収穫できるものとした。
【0010】
更に、フラッシュランプを設け、受光ライン関連付回路を備えたものは、アスパラガスが傾いている場合、曲がっている場合でも上下の二つの受光ラインが一つのアスパラガスのものであるか否かを、フラッシュランプでの撮影画像のアスパラガスの細長の芽の画像でもって同じ場所での投光器による撮影画像の二つの受光ラインとを連係づけることによって、上下の二つの受光ラインが同じ鉛直線上になくても正しく計測できるようにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のアスパラガス切断可否自動判定装置は、投射光の受光ラインが明確に撮影できる、夜・夕方・早朝になされるのが一般的であるが、投射光の波長として、太陽光・その反射光との区別ができ易い波長域の光あるいは変調を加えた光を使えば昼間でも可能にできる。
又、本発明の走行車には切断ロボットアーム装置とその制御部を搭載することで、自動収穫まで可能にできる。切断ロボットアーム装置は、ロボットアームの原点を用いた極座標で、アスパラガスの3次元上の座標を表現するのがロボットアームの制御がし易くなる。又、切断ロボットアーム装置は、現在に使用されているロボットアームが使用できるが、走行車の台上に旋回できる水平方向に伸縮自在なアームの先端に切断器と把持器を備えたシンプルなものでよい。
【0012】
本発明の「アスパラガスが切断できるまで成長していると判断される判断基準の基準長さ」とは、アスパラガスが切断すると定めたアスパラガスの畑の表面からアスパラガスの頂部までの長さから2cm程の下位の投射光の畑の表面からの高さを引いた長さとなる。切断するアスパラガスは、畑表面から25cm以上で、下位の投射光の畑表面の高さが2cm程であるので、基準長は23cm以上となることが多い。この基準長は、収穫の時期、収穫者の収穫長さの判断、下方の投光器の投光高さと畑の表土と間隔等によって適切な長さが決定されるものである。
【0013】
下方の投光器からの受光ラインが切断の個所の基準となる。切断の実際個所は下方の受光ラインでなくても、これに近い上下位置でもよい。切断器の構造寸法を考慮して切断の位置は決定される。
【0014】
又アスパラガスの切断ロボットアーム装置による切断は、走行車の左右の手前の方のアスパラガスの方から切断するのが、その後方・奥の方のアスパラガスの切断が容易となるので好ましい。
【0015】
本発明の投光器の「上下巾が狭く且つ走行方向に所定の巾をもった略水平な光」は、略水平にアスパラガスに向けてレーザー光を放射するレーザーダイオードの前にシリンドリカルロッドレンズやガルバノミラーを設けることで形成できる。又はレーザーダイオードを鉛直軸まわりに所定の角度首振らせることでも形成できる。点光源の通常可視光の光を上下巾が狭く且つ走行方向の所定の巾(所定の角度範囲)のみに放射するように、凹面鏡・レンズ・光遮断スリット孔等を組み合わせることでも可能となる。
【0016】
本発明の走行車は、駆動力を備えた自走車でも、又牽引された車体でもよい。又自走車はタイヤで走行するタイプでも又はクローラ車タイプ又は車輪とレールでもよい。
【0017】
投光器から投射される光が「略水平な光」としたのは、走行車自体の傾きが畑面の凹凸・傾斜等で発生しえること及び投射方向が多少水平でなく水平から小さな角度で下又は上向きに傾いても、上下対の光が平行ならば芽に上下光とも投光できるものなら使用できるからである。
アスパラガスが栽培されている畑面と平行な面から傾いた光の為に上下一対の受光ラインの位置が両方とも上方向又は下方向にシフトする寸法が2cm以内で収まる範囲であれば使用可能である。
【0018】
又「走行方向に所定の巾をもった略水平な光」の所定の巾とは、投光器からの光を受光することとなる方向にある複数本のアスパラガスを撮影装置が測定して切断ロボットアーム装置がそれらを切断して把持して回収容器に移載できるアスパラガスの前後方向の範囲(前後方向の長さ)内ということである。一般に走行車の間欠走行の距離より長い距離となる。
【0019】
上下一対の受光ラインの関連性を判断する上下の受光ラインは3次元のラインであるのでその位置の偏差の計算は、ラインの中間点、ライン端の端点で代表してその点の位置の偏差を計算してもよいし、受光ラインを平行移動して他の受光ラインに交差(接触)するときの最小の移動量でもって位置偏差とする偏差計算でもよい。あるいは、上下の受光ラインが一方の受光ラインを略重なるまで移動させたときのその移動量をもって位置偏差としてもよい。
【0020】
これらの偏差量を上下の受光ラインの組み合わせで計算して、これらの偏差量から同一アスパラガスの上下の受光ラインのものであると関連性を判断する判定方法は種々ある。例えば、上下の受光ラインの位置の前後左右の距離の偏差量を計算して、その偏差量が最も小さい値のもので、しかもその偏差量が隣接する下位受光ラインとの距離の半分程度の値の設定偏差値(例えば10cm)以内のものをもって同一アスパラガスの上下の受光ラインと判定する方法がある。この方法の後者の条件は、基準長さに達していない未成長のアスパラガス(上方の受光ラインがないアスパラガス)と隣接した別のアスパラガスの上方の受光ラインとの組み合わせを排除するものである。この設定偏差値はそれが区別できる値を選定する。
【0021】
あるいは、下位の受光ラインから一定の左右前後の位置の設定偏差値(巾範囲)内にあって且つ1個しか上方受光ラインがなければ、この1個の上方受光ラインを同一のアスパラガスの上方受光ラインと判断し、設定偏差値内に2個以上あれば、その時最も近いものを同一アスパラガスの上方受光ラインとし、上方受光ラインがなければ基準長に達しない未成長の非切断のアスパラガスであると判断する方法も可能である。
【0022】
又は、上下の受光ラインの組み合わせパターンを複数想定してその組み合わせパターンの各一対の上下受光ラインの偏差値の総和をとって、これが最も小さいもののパターンをもって同一アスパラガスの上下対を決定する方法等もある。
更には、アスパラガスが左右方向の位置を略同一にして前後に列べて植生している場合では、アスパラガスの受光ラインを左右列にまず区分して、各区分で前後方向の偏差が最も小さいものを同一アスパラガスの上下の受光ラインであると判断する方法等がある。
あるいは、簡単な関連性の判断方法として、アスパラガスが長い間隔(例えば20cm以上)で前後方向に1列で栽培されている場合では、下位の受光ラインから設定偏差値(例えば±10cm)以内に上位の受光ラインがあれば、これが同一アスパラガスの上下の受光ラインと判断することもできる。
【0023】
判定位置計算回路の関連性の判断において、偏差の値が最小となる上下対の受光ラインの上方の受光ラインが別の偏差の値が最小となる上下対の上方の受光ラインと共通となっている場合において、上下対の偏差の値が小さい方の上下対の方が同一のアスパラガスのものと判定して上下対を確定し、確定した上下対の受光ラインを除いて残った上下の受光ラインで偏差の値が最小となる上下の受光ラインの上下対を共通の上方受光ラインがなくなるまで同様に求めていくことでも可能である。又、関連性が不明な対は切断せずに残す処理又はもっと精度のよい処理フローを付加して決定していく処理もある。
【実施例1】
【0024】
以下、本発明の実施例1を図面に基づき説明する。
本実施例1は、バッテリーとモータを用いタイヤで走行する自走タイプの走行車の車体上に垂直軸を回転自在に設け、同垂直軸に伸縮自在なアームを取り付け、同アームの先端にアスパラガスの切断と把持を可能とする切断刃を電磁ソレノイドで開閉自在にした切断ロボットを装置し、同垂直軸の上方にレーザー光を用いた上方の投光器を設け、垂直軸の下位にCCDカメラを用いた撮影装置を設け、更にその下方の車体に下のレーザー光を用いた下方の投光器を取り付けている例である。又その判定位置計算回路の関連性の判断はコンピュータのプログラムによる処理でもって請求項2記載のものである。
【0025】
図1は、実施例1を示す正面図である。
図2は、実施例1を示す斜視図である。
図3は、実施例1の投光器からの投光状態を示す説明図である。
図4は、実施例1の投光器からの投光状態を示す斜視図である。
図5は、実施例1の投光状態の説明図である。
図6は、撮影装置の撮影画像例を示す説明図である。
図7は、フラッシュランプを用いた撮影装置の撮影画像を示す説明図である。
図8は、レーザ光の撮影画像とフラッシュランプの撮影画像との重ね合わせの画像を示す説明図である。
図9は、実施例1の判定位置計算回路の全体の処理フロー図である。
図10は、判定位置計算回路の関連性判断ソフトのフロー図である。
図11は、フラッシュランプを用いた判定位置計算回路の処理フローを示す説明図である。
図12は、切断把持部を示す説明図である。
【0026】
図中、1は実施例1のアスパラガス収穫ロボット、10はタイヤ10bを用いてモータとバッテリー(図示せず)でもって自走する走行車、10aはその車体、10bはタイヤ、10cは走行車10に連結された牽引台車、10dは同牽引台車上の回収容器、10eはレール、11,12はレーザー光を略水平に且つ走行方向の80cm程の距離のアスパラガスに対し投光できる上下の同じ構造の投光器、11aはレーザー光を一定の上下巾(数mm程)にするためのスリット11bを有する発光ダイオード前方に置かれた光遮断板、13は車体10aの上面に鉛直に且つ鉛直線まわりに自転できるようにモータを駆動源として回転機構(図示せず)により回転する垂直軸、14は同垂直軸13の下部に取り付けたTVカメラを用いた撮影装置、15は切断ロボットアーム装置、15aは垂直軸13の中程に取り付けられた電動シリンダーを用いた伸縮アーム、15bは同伸縮アームのシリンダーロッドの先端に回転自在に取り付けた偏心腕、15cは同偏心腕を回動させるモータ、15dは同偏心腕の一端に取り付けられたアスパラガス把持部刃面を備えた電動はさみである切断把持器、16はバッテリー、17は垂直軸13の駆動装置、18は同駆動装置の制御部、19は撮影装置14の撮影画像を入力し、アスパラガスの受光ラインから、切断できるまで成長したアスパラガスであるか判定し、併せてアスパラガスの位置情報を算出するコンピュータを用いた判定位置計算回路、20は同判定位置回路19からの切断するアスパラガスの位置情報を入力して垂直軸13の駆動装置17を所定角度回動させ、又切断ロボットアーム装置15の伸縮アーム15a,偏心腕15bのモータ15cを作動させ、切断把持器15dを動かしてアスパラガスを切断して切断したアスパラガスを把持して回収容器10dまで移載するように切断ロボットアーム装置15を制御するロボットアーム制御部である。図中Aはアスパラガスの芽、Lは下側受光ライン、Lは上側受光ラインである。
【0027】
以下、本実施例1の動作と使い方について説明する。アスパラガス収穫作業は、太陽が上がらない暗い早朝か又は夜においてなされる。
本実施例1のアスパラガス収穫ロボット1のタイヤ10bを畑の畦の溝に敷いた走行レール板21上に置き、バッテリー16でモータ(図示せず)を作動させてタイヤ10bを動かして畑中を走行させる。走行車10の走行停止はモータ制御部(図示せず)によって20cm程の一定走行距離毎に停止する間欠移動でなされる。
【0028】
走行車10が停止すると、上下一対の投光器11,12からレーザー光を投射する各投光器は水平に並んだ発光ダイオードの走行方向に拡がって放射する投光を、前方の光遮断板11bのスリット11cで上下巾数mm程で又50cm程の前後方向(走行方向)の巾でアスパラガスに向けて略水平の赤色のレーザー光を投光する。上下レーザー光の上下間隔は23cmであり、下方のレーザー光は畑の表土から上方2cmの位置となるようにしている。
【0029】
上下一対の投光器11,12から23cm上下間隔の平行な略水平なレーザー光が前後50cm巾にわたって放射されると、アスパラガスの芽が畑の表面から25cm以上の高さになっていれば、アスパラガスの芽に上下のレーザー光がともに当たり、アスパラガスの芽の直径の巾の短い略水平又は少し湾曲した受光ラインが光ってあらわれる。
【0030】
撮影装置14はこの受光ラインを撮像する。そしてアスパラガスの芽が畑表土から25cm以上であれば上下一対の受光ラインが撮影される。もしアスパラガスの芽が畑表土から25cmより短ければ下方の受光ラインしかあらわれない。この撮影装置14は、暗い早朝でなされるため、受光ラインのみしか撮像されず鮮明な受光ラインのみの画像となる。この撮影装置14の撮影画像を図6に示す。
【0031】
例えば図6に示す撮影装置14の撮影画像では、上下一対の受光ラインが略上下にある左から1,3,4番目の受光ラインのものは切断できるアスパラガスの可能性が高い。左から2,5番目のアスパラガスは上方の受光ラインが存在せず切断する長さに達してないものである。
この撮影装置14の撮影画像情報は、判定位置計算回路19に入力され、受光ライン(光点ともいう)の撮影画像上の座標(u,v)が決定され、下位のレーザー光の投光器11の受光ラインの位置を、鉛直方向の座標Zの原点とし、撮影装置のレンズの光学軸線上のCCDの位置を前後方向(Y軸)、左右方向(X軸)の原点とするXYZの座標系に下記の計算方法により座標変換する。
【0032】
3次元座標系XYZ上の座標(x,y,z)をTVカメラの撮影装置で撮影し、TVカメラのラスタ座表系(画面座標系)UV上で座標(u,v)として観測された場合、透視変換の式を用いると以下の数1の式が成り立つ事が一般的に知られている。
【0033】
【数1】

【0034】
ここで、a11〜a33 は、TVカメラの位置と姿勢により定まる値である。
下側の投光器11が z=0 のXY平面に照射されているとすると、XY平面からUV平面への透視変換であり次の数2の式が成り立つ。
【0035】
【数2】

【0036】
この式で λ を消去すると下式の数3となり、
【0037】
【数3】

【0038】
下側の受光ライン上にある任意の n点に対してこの数4の式が成り立つ。よって
【数4】

【0039】
この式で行列T とベクトルw は、座標値が既知である受光ライン上の
n点をTVカメラの撮影装置14で測定することで決定できる。よって、 n が4以上の場合はTVカメラの姿勢を表すベクトルh
は最小二乗誤差を満たす次の数5の式で計算できる。
【0040】
【数5】

【0041】
ここで、 (TtT)-1t は行列Tの疑似逆行列で n=4 のときは
-1 と一致する。
この式を用いて b11〜b32 を求める事ができるので、ラスタ座標(u,v)から下側の受光ライン上の3次元座標系(x,y)は数3の式を変形して下記数6の式
【0042】
【数6】

で求めることができる。
【0043】
同様の手法により上側の受光ライン上の座標も算出できる。上側のスリットレーザが
z=l のXY平面に照射されているとすると次の数7の式が成り立つ。
【数7】

【0044】
同様の手法によりラスタ座標(u,v)から上側の受光ライン上の3次元座標系(x,y)は、
【0045】
【数8】

となる。
【0046】
数6,数8の式により、下側の受光ライン上の座標と上側の受光ライン上の座標を算出できる。
なお、これらの式は線形の計算式であるのでラスタ座標(u,v)と3次元座標系(x,y)は1対1に対応する。よって、投光器とTVカメラの撮影装置の位置関係を固定すれば、これらの式を事前に計算しておきテーブルを作成することにより、高速に算出することができる。
【0047】
各受光ラインの位置がXYZ座標系で計算される。次に上下にある複数の受光ラインのXYZ座標系での座標値からどの上下対の受光ラインが、同一アスパラガスの芽の受光ラインのものであるかの関連性を以下のように判断する。
その判断は、下側の受光ラインのXYZ座標のXY座標の中間点のX座標の最大値と最小値の中間の値x01とY座標の最大値と最小値の中間の値y01の座標(x01,y01)を求める。
同様に、上側の受光ラインのXYZ座標の中間点の座標(x02,y02)を算出する。
上下の受光ラインの偏差を中間値の差として求める。
△x=x02−x01,△y=y02−y01,△l2=△x2+△y2
これが上下の対の一組の受光ラインの偏差△l2となる。
【0048】
上側受光ラインを特定した場合の上下対の偏差△l2が最小となる上下の受光ラインの対の組み合わせを求め、偏差最小値となる下側受光ラインが同一アスパラガスのものと判断する。これらの判定、位置計算は、上側の受光ライン全部に対して行われ、これら情報は記憶されて、ロボットアーム制御部20を介して切断ロボットアーム装置15に出力される。この処理を図9,10に示している。
【0049】
これらの判定結果の情報と下位の受光ラインの3次元座標(x,y,0)(Z座標の原点0は下位の投光器11の高さである。)の情報とをロボットアーム制御部20に出力する。
ロボットアーム制御部20は切断すべき判定結果であれば、その下位の受光ライン(x,y,0)の情報に基づき、伸縮アーム15aを垂直軸13まわりに回転させ、又伸縮アーム15aを適正な長さに伸縮させ、又モータ15cを作動させて偏心腕15bを所定の角度にして、偏心腕15bの切断把持器15dの切断刃を開いて近づけアスパラガスの下位の受光ラインの位置(x,y,0)で切断刃を閉じてアスパラガスを切断し、又切断刃に付設した把持部で切断されたアスパラガスを把持し、モータ15c、伸縮アーム15a、垂直軸13を作動させて把持したアスパラガスを回収容器10dの上方まで移動し、把持部を開放して切断したアスパラガスを回収容器10d内に落下させて収容する。これらのロボットアームの機能はロボットアームの公知技術のものである。
【0050】
走行車10の一回の停車で、上記の様にして、走行方向の約40cmの巾の中にあるアスパラガスの長さを判定し、25cm以上となったアスパラガスのみを切断して、回収容器10d内に移載する。
その後、走行車10を20cm程走行させて停車させ、同様にアスパラガスの撮影と判断とアスパラガスの回収容器10dへの移載を行って、畑に沿って25cm以上のアスパラガスを自動的に収穫していくものである。
【0051】
前記実施例1のアスパラガス切断可否判定装置に、撮影装置の撮影と連動したフラッシュランプ30を設け、判定位置計算回路の関連性の判断がフラッシュランプ30を用いたアスパラガスの芽の画像でもって上下一対の受光ラインを関連性を決定するようにすることができる。
【0052】
この例では、上下一対の投光器によって略水平のレーザー光を投光し、撮影装置14で受光ラインを撮影した後、2m程の有効到達距離のフラッシュランプ30の光をアスパラガスに向けて投光し、そのフラッシュ光のアスパラガスを撮影装置14で撮影する。
【0053】
このフラッシュランプによる撮影装置14の撮影画像は、細長のアスパラガスの芽全体が撮影される。その一例を図7に示している。
【0054】
判定位置計算回路のコンピュータのソフトを用いた関連性判定ソフトは、このフラッシュ光のアスパラガスの芽の画像と、レーザー光の受光ラインの画像を同じ座標で図8に示すように重ね合わせ、アスパラガスの芽の画像のライン上にある受光ラインを算定し、その上下の受光ラインを同一アスパラガスの受光ラインとその関連性を判定する。
この関連性判定ソフトであれば、大きく傾いたアスパラガス、大きく曲がったアスパラガスでも、同一のアスパラガスの上下の受光ラインであることの関連性が精度よく判定できる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、アスパラガスの切断と収穫の技術であるが、この種の細長い植物の芽・茎を、所定長さ成長したものを切断して、又は切断せず引き抜いて移載する技術にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1を示す正面図である。
【図2】実施例1を示す斜視図である。
【図3】実施例1の投光器からの投光状態を示す説明図である。
【図4】実施例1の投光器からの投光状態を示す斜視図である。
【図5】実施例1の投光状態の説明図である。
【図6】撮影装置の撮影画像例を示す説明図である。
【図7】フラッシュランプを用いた撮影装置の撮影画像を示す説明図である。
【図8】レーザ光の撮影画像とフラッシュランプの撮影画像との重ね合わせの画像を示す説明図である。
【図9】実施例1の判定位置計算回路の全体の処理フロー図である。
【図10】判定位置計算回路の関連性判断ソフトのフロー図である。
【図11】フラッシュランプを用いた判定位置計算回路の処理フローを示す説明図である。
【図12】切断把持部を示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1 アスパラガス収穫ロボット
10 走行車
10a 車体
10b タイヤ
10c 牽引台車
10d 回収容器
10e レール
11,12 投光器
11a 光遮断板
11b スリット
13 垂直軸
14 撮影装置
15 切断ロボットアーム装置
15a 伸縮アーム
15b 偏心腕
15c モータ
15d 切断把持器
16 バッテリー
17 駆動装置
18 制御部
19 判定位置計算回路
20 ロボットアーム制御部
21 走行レール板
30 フラッシュランプ
A アスパラガス
下側受光ライン
上側受光ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスパラガスの回収容器を備えてアスパラガスの畑を走行できる走行車に、上下巾が狭く且つ走行方向の前後に所定の巾をもった略水平な光を畑のアスパラガスの芽に向けて左右方向に投射する上下一対の投光器と、光が投射された畑のアスパラガスの芽を撮影する撮影装置とを装置し、
上下一対の投光器の投射光が上下において平行となるようにし且つその上下間隔をアスパラガスの芽が収穫できるまで成長して切断できると判断できる判断基準の基準長さとし、光を投射されたアスパラガスの撮影装置の撮影画像にあらわれるアスパラガスの受光個所の短い略水平な受光ラインが上下に存在し且つ上下一対の受光ラインが同じアスパラガスの受光ラインであることの関連性を判断し、上下一対の受光ラインが同一アスパラガスの関連性ありと判断されたアスパラガスは切断できるまで成長したアスパラガスと判定し、併せて受光ラインの画像上の位置から、そのアスパラガスの位置を算出し、判定結果と位置情報の信号を出力するコンピュータ又はデジタルロジックを用いた判定位置計算回路を設けた、アスパラガス切断可否自動判定装置。
【請求項2】
判定位置計算回路の関連性の判断が撮影画像中の上方と下方の各受光ラインの像の情報から各受光ラインの前後左右の位置を計算し、上方と下方の受光ラインの対の前後左右の位置の偏差を上下の受光ラインの組み合わせで計算し、上側受光ラインを特定した場合の偏差が最も小さい下側受光ラインが同一のアスパラガスの上下の受光ラインのもので関連性があると判定するものである、請求項1記載のアスパラガス切断可否自動判定装置。
【請求項3】
走行車にアスパラガス撮影用フラッシュランプを設け、判定位置計算回路の関連性の判断が投光器による撮影画像の受光ラインの像と、フラッシュランプを作動させての撮影画像のアスパラガスの芽の像とを同じ座標系で重ね合わせて芽の像上に受光ラインがあるものを同一アスパラガスの上下の受光ラインのものとその関連性を判定するものである、請求項1記載のアスパラガス切断可否自動判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−131223(P2009−131223A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311326(P2007−311326)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000214191)長崎県 (106)
【Fターム(参考)】