アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜付き光触媒
【課題】 光触媒の活性が高くガラス等の透明度を必要とする基材においても透明度が高く、付着強度の高い光触媒リン酸カルシウム薄膜を提供する。
【解決手段】 基材表面上にスパッタリング法を用いて、基材側に二酸化チタン、その表面にアモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜がコーティングされていることを特徴とする光触媒。
【解決手段】 基材表面上にスパッタリング法を用いて、基材側に二酸化チタン、その表面にアモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜がコーティングされていることを特徴とする光触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリン酸カルシウム薄膜付き光触媒に関し、より詳しくは、所定の基材に、二酸化チタン薄膜をコーティングし、更にその上にアモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜をコーティングした光触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタンは、光を照射すると強い酸化還元力(光触媒反応)を生じるため、脱臭、防汚、水の浄化等各種の化学反応を進行させる光触媒として広く用いられている。
【0003】
また、上記の光触媒反応は、二酸化チタンの表面反応であり、反応が完了するまで処理する有害物質を二酸化チタンに接触させておく必要がある。このため、二酸化チタン単独で使用されるのみならず、有害物質である有機物の吸着特性に優れるアパタイトを二酸化チタン基材に付着させるため、その基材を擬似体液に浸漬し、アパタイトを析出させ、多孔質アパタイト被覆二酸化チタン複合物を得る方法、あるいは、チタン含有リン酸カルシウムを加水分解して二酸化チタン被覆アパタイト結晶を得る方法などが下記特許文献1、2に示されている。
【0004】
また、共沈法を用いて、アパタイト結晶構造中に金属酸化物をイオン交換により形成する金属修飾アパタイトも、下記特許文献3に示されている。
【0005】
一方、光触媒は実用的には何らかの構造体を担体(基材)として、その表面に光触媒を結合させた状態に担持させて使用されるのが一般的な方法であり、二酸化チタンの微粒子やアパタイト被覆二酸化チタン微粒子等を有機又は無機のバインダーで固定する方法や、チタンアルコキシド等の二酸化チタンの前駆体からゲル・ゾル法により薄膜を成形する等の湿式による方法や、スパッタリング、蒸着といった乾式による方法が下記特許文献4に示されている。
【0006】
また、金属又は有機材料からなる基材に二酸化チタンを担持する場合、これらの基材を二酸化チタンで直接被覆すると、二酸化チタンが基材を侵食するチョーキングといわれる現象が生じるため、基材と二酸化チタンとの間にバインダー膜を介在させた積層構造にすることが行われている。そしてまた、また二酸化チタンをバインダー樹脂によって基材に結合させる場合には、二酸化チタンによってバインダー樹脂が分解され劣化・消失が生じるため、バインダー樹脂を増量することが下記特許文献5、6、7に示されている。
【特許文献1】特開平10−244166号公報
【特許文献2】特開2001−270709号公報
【特許文献3】特開平11−141931号公報
【特許文献4】特開2002−317260号公報
【特許文献5】特開2003−275601号公報
【特許文献6】特開2005−68817号公報
【特許文献7】特開平9−225319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、光触媒性薄膜を成形する技術としての湿式による方法では、そのプロセスの特性より塗布する溶液の性状管理が必要であったり、大きな面積の基材に形成する場合、膜の均一性に欠ける等の製造上の問題がある。またチョーキング対策として積層構造にすることは施工が面倒であるという問題がある。また、バインダー樹脂に二酸化チタンを混合する方法では、バインダー樹脂を増加することは、二酸化チタン粒子の全体の比率を下げ、光触媒の活性を低下させることを意味するため、光触媒の活性と耐久性とを両立させることが困難であるという問題があった。またガラス板等の特に透明度を必要とする基材においては、光透過性が著しく減少するという問題があった。具体的には、多孔質アパタイトや結晶性のアパタイトを被覆した複合体粒子では、もともと透明性が低いため、ガラス面などにコートする場合、透明性を維持するための薄膜化と消臭効果の向上のための高密度化とは相反するものであるから、複合体粒子の密度を上げることは困難であり、加えて有機・無機などのバインダが必要となる。一方乾式である蒸着による方法では、成膜時に基材が高温雰囲気に曝されるために、基材に耐熱上の制約が生じるという問題があった。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、小さな面積で効率的に、高い消臭・大気汚染・水処理等の効果を有し、付着強度が高く、透明性の確保も可能な光触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための第1の発明は、基材表面上に二酸化チタン薄膜、さらにその表面にアモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜がコーティングされていることを特徴とする光触媒である。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、上記基材が透明であることを特徴とする光触媒である。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜が上記二酸化チタン薄膜表面全体をカバーするように設けられたことを特徴とする光触媒である。
【0012】
第4の発明は、第1乃至第3のいずれか1の発明において、上記アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜の表面と上記二酸化チタン薄膜の表面が、上記基材の表面とほぼ同じく平滑に形成されていることを特徴とする光触媒。
【0013】
第5の発明は、第1乃至第4のいずれか1の発明において、上記二酸化チタンの薄膜が0.1〜1.0μmの厚さであることを特徴とする光触媒である。
【0014】
第6の発明は、第1乃至第5のいずれか1の発明において、上記アモルファス緻密リン酸カルシウムの膜厚が0.3〜2.0μmの厚さでコーティングされていることを特徴とする光触媒である。
【0015】
第7の発明は、第1乃至第6のいずれか1の発明において、上記アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜のカルシウム/リン(以下「Ca/P」という。)のモル比が0.5〜1.0であることを特徴とする光触媒である。
【0016】
第8の発明は、第1乃至第7のいずれか1の発明において、上記アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜が、パターン状にコーティングされていることを特徴とする光触媒である。
【0017】
第9の発明は、第1乃至第8のいずれか1の発明において、上記基材が透明ガラス板であることを特徴とする光触媒である。
【0018】
第10の発明は、第1乃至第9のいずれか1の発明において、上記基材が金属又は高分子樹脂であるいることを特徴とする光触媒である。
【0019】
上記の基材表面への二酸化チタン、アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜のコーティングは、蒸着やPVD、CVD、スパッタリング、レーザーアブレージョン、ゾルゲル法など、いろいろな方法によって行われる。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明は、基材表面上に、二酸化チタン薄膜、さらにその表面にアモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜がコーティングされていることを特徴とする光触媒であるから、(1)触媒の活性度が高く、有機物の吸着特性に優れ、脱臭・大気汚染・水処理等の浄化に供し、(2)膜の均一性に富み密着性の高い、品質の安定した薄膜を形成することができ、(3)適用する基材が耐熱上の制約を受けることがなく、(4)さらにバインダーを使用しないので、光透過性の低下が少ないという効果を有する。
【0021】
第2の発明は、第1の発明において、基材が透明な光触媒であるから、第1の発明の効果において、透明度が高く、採光しながら消臭、抗菌ができるという効果を有する。
【0022】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜が二酸化チタン薄膜表面全体をカバーするように設けられた光触媒であり、第4の発明は、第1乃至第3のいずれか1の発明において、アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜の表面と二酸化チタン薄膜の表面が基材の表面とほぼ同じく平滑に形成された光触媒であるから、より品質の安定した薄膜が形成され、それぞれの発明の効果において、脱臭・大気汚染の浄化、水処理等の性能が、より高い光触媒を得ることができる。
【0023】
第5の発明は、第1乃至第4のいずれか1の発明において、二酸化チタンの薄膜が0.1〜1.0μmの厚さであるから、二酸化チタンの膜厚が必要充分にして、第1乃至第4のいずれか1の発明の効果において、脱臭、大気汚染の浄化、水処理等の性能が、より高い光触媒を得ることができる。
【0024】
第6の発明は、第1乃至第5のいずれか1の発明において、アモルファス緻密リン酸カルシウムの膜厚が0.3〜2.0μmの厚さでコーティングされているから、アモルファス緻密リン酸カルシウムの膜厚が必要充分にして、第1乃至第5のいずれか1の発明の効果において、脱臭、大気汚染の浄化、水処理等の性能が、より高い光触媒を得ることができる。
【0025】
第7の発明は、第1乃至第6のいずれか1の発明において、上記アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜のCa/Pのモル比が0.5〜1.0の光触媒アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜であるから、第1乃至第6のいずれか1の発明の効果において、ホルムアルデヒドガス、アリシンガスのいずれのガスに対しても吸着性が高く脱臭、大気汚染の浄化、水処理等の性能が高い光触媒を得ることができる。
【0026】
第8の発明は、第1乃至第7のいずれか1の発明において、アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜が、パターン状の光触媒であるから、第1乃至第7のいずれか1の発明の効果において、アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜を厚くして、耐磨耗性等を高めながら、脱臭、大気汚染の浄化、水処理等の性能の高い光触媒を得ることができる。
【0027】
第9の発明は、第1乃至第8のいずれか1の発明において、基材がガラス板からなる光触媒であるから、第1乃至第8のいずれか1の発明の効果において、光透過性が高いという効果を有する光触媒を得ることができる。
【0028】
第10の発明は、第1乃至第9のいずれか1の発明において、基材が金属又は高分子樹脂からなる光触媒であるから、第1乃至第9のいずれか1の発明の効果において、基材である金属又は高分子樹脂の二酸化チタンによるチョーキングが防止されるという効果を有する光触媒を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、基材表面上にスパッタリング法を用いて、基材側に二酸化チタン薄膜、その表面にアモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜がコーティングされていることを特徴とする光触媒である。
【0030】
ここで、アモルファス緻密リン酸カルシウムとは、チタン粉末やチタン層の上にアパタイトを析出させる方法で作製された従来のアパタイト層が多孔質で著しく透過性が低いものであるのに対して、組織がアモルファスであることに加えて、非常に緻密であることを指している。
【0031】
二酸化チタン(TiO2)は光触媒反応を促進する触媒であるから、膜厚が薄過ぎると触媒反応が遅延するのみならず、膜の非形成部分が生じたり、膜の密着強度の低下が生じる。一方、触媒反応の速度には限界があり、膜厚が厚過ぎる場合には二酸化チタンの無駄に継ながる。
【0032】
また、リン酸カルシウム(Ca−P)は有害物質である有機物を吸着し、二酸化チタンの表面で行われる触媒反応が完了するまで、有機物を二酸化チタンに接触させておく機能を有するものであるから、膜厚が薄過ぎるとその吸着性能が低下し、厚過ぎると有機物の透過率が低下し、反って二酸化チタンの触媒反応が遅くなる。
【0033】
具体的には、上記二酸化チタン薄膜は0.1μmあれば触媒としての機能が確保される。またアモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜(以下「リン酸カルシウム薄膜」という。)は、パターンを形成しない場合において、0.3μm未満又は2.0μmを超えると効果が低下するので、0.3〜2.0μmの厚さでコーティングすることが好ましい(後述の図3)。またホルムアルデヒドを消臭する場合には、リン酸カルシウム薄膜におけるCa/Pのモル比は0.5以上であることが好ましいが、Ca/Pのモル比は上記リン酸一カルシウム(CMP)が0.5、リン酸二カルシウム(CPP)が1.0、リン酸三カルシウム(TCP)が1.5、ハイドロキシアパタイト(HA)が1.67であるから、ターゲットとして、いずれを使用してもこの要件を満たす。
【0034】
一方、ニンニク臭で代表される硫黄系ガスのアリシンを消臭する場合には、リン酸カルシウム薄膜におけるCa/Pのモル比は1.0以下であることが好ましいが、ターゲットとして上記リン酸一カルシウム(Ca/P=0.5)、リン酸二カルシウム(Ca/P=1.0)を使用すればこの要件を満たす。
【0035】
また、上記リン酸カルシウムは、リン酸一カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、アパタイト、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、アモルファスのいずれでもよく、これらの2種以上の混合物としてもよい。更にスパッタリング法によって得られた二酸化チタン・リン酸カルシウム薄膜複合コーティングの二酸化チタン薄膜は、アモルファスであるが、これを400から1300℃で熱処理してアナターゼ、ルチルとしてもよく、これらの2種以上の混合物としてもよい。リン酸カルシウム薄膜はアモルファスであって、原子レベルで緻密に二酸化チタン薄膜の上に堆積し、バインダー樹脂が介在しないため、透明性が高い。
【0036】
また、上記リン酸カルシウム(アパタイト)は、水酸アパタイト、炭酸アパタイト、フッ素アパタイト、シリカアパタイト、塩素アパタイトのいずれでもよく、これらの2種以上の混合物としてもよい。
【0037】
また、上記リン酸カルシウム薄膜は、その耐磨耗性を高める等のために膜厚を厚くすると、有機物の透過が阻害されて二酸化チタンの触媒反応が低下するが、リン酸カルシウム薄膜を円形、方形、櫛形等のパターン状にすれば、消臭効果を損なうことがなくなる。
【0038】
また、基材にガラス板を使用して、脱臭、大気汚染等の浄化の効果に加えて光り透過性を確保したい場合には、リン酸カルシウム薄膜は殆ど光り透過性に影響を及ぼさないので、その膜厚を上述の0.3〜2.0μmとしても、二酸化チタン薄膜の厚さを0.1〜0.5μmにすれば、光透過性を損なうことなく、脱臭、大気汚染等の浄化の効果を得ることができる。
【0039】
なお、上記二酸化チタン、リン酸カルシウム薄膜はスパッタリング工法によるものであるから、基材は、金属、樹脂、ガラス等に適用できるが、二酸化チタンによってチョ−キングを受ける基材の場合には、事前にリン酸カルシウム膜を形成してチョーキング防止の対策を行う必要がある。
【0040】
なお、前述の通り、上記基材表面への二酸化チタン、リン酸カルシウム薄膜のコーティングは、蒸着やPVD、CVD、スパッタリング、レーザーアブレージョン、ゾルゲル法など、各種の方法によって行われる。
【0041】
以下実施例により、より詳細に説明する。
【実施例1】
【0042】
図1は実施例(後述の実施例2、3を含む)に係るスパッタリング装置の概念図である。図1において、100はスパッタリング装置全体を示し、101は真空容器、200は真空容器の上側に配置される基板、300は基板200の下側に対向して配置されるターゲットである。
【0043】
真空容器101の1壁面からArガスが装填され、他の壁面から真空ポンプによって排気される。ターゲットには高周波電源102から高周波電圧が印加される。本実施例1のスパッタリング装置、基材、ターゲットの諸元は下記の通りである。
【0044】
スパッタリング装置:アネルバ社製SPF−210HS
基材:ガラス板
寸法(縦×横×厚さ):80mm×16mm×1mm、
ターゲット:TiO2/HA
スパッタリングの手順は、まず真空容器101内の所定の位置にターゲットTiO2をセットし、真空容器101内を真空ポンプ103により吸引して1×10−5Paの真空度にした後、この真空度を維持したままArガスを10ml/分の量で装填し、Arガスの圧力を5.0Paとする。
【0045】
続けて、高周波電源102により、ターゲットのTiO2に高周波電圧を掛け、放電電力100W、圧力5.0PaにてTiO2薄膜コーティングを行い、所定の厚みの均一な薄膜を形成する。
【0046】
次に、ターゲットをTiO2からHAに取替え、真空容器101内を真空ポンプ103により吸引して1×10−5Paの真空度にした後、この真空度を維持したままArガスを10ml/分の量で装填し、Arガスの圧力を0.5Paとする。
【0047】
続けて、高周波電源102により、ターゲットであるHAに高周波電圧を掛け、放電電力100W、圧力0.5Paにてリン酸カルシウム薄膜コーティングを行い、所定の厚みの均一な薄膜を形成し、電気炉内にて500℃にて加熱処理を行いTiO2層をアナターゼ構造に結晶化し、X線回析法にてその結晶構造の確認を行う。
【0048】
次に、上記の手順で作製した二酸化チタン・リン酸カルシウム薄膜コーテイング(TiO2―HA)の消臭性の効果を確認する。
【0049】
まず、密閉容器(40cc)内に上記薄膜を形成した基材から切り出した寸法80mm×16mm×1mmの試料を収納し、この容器内にホルムアルデヒドガス(HCHO)を0.5ml入れて暗所に1時間放置し、その後、紫外線照射器を使用し、0.5mWの紫外線を連続照射した。これによりホルムアルデヒドガス(HCHO)は、リン酸カルシウム薄膜による吸着及び紫外線照射による光触媒効果により二酸化炭素と水分とに分解されるので、各時間毎に容器内のガスを0.1ml取り出し、ガスクロマトグラフィ(日立製 GC−3900)を使用して計測する。
【0050】
表1は本発明の実施例及び比較例に係る消臭効果をデジタルに示したものであり、図2はそれをグラフ表示したものである。
【0051】
表1において、比較例1は、HA薄膜のみの1層をコーティングしたものであり、比較例2はTiO2薄膜のみの1層をコーティングしたもので、1H後のホルムアルデヒドの残存率がそれぞれ90%、86%でいずれも消臭効果は殆ど見られない。
【0052】
これに対して、実施例1・1〜1・3は、TiO2薄膜の厚さがいずれも0.5μmで、HAの膜厚を0.5、1.0、2.0μmと変化させたものであるが、1H後のホルムアルデヒドの残存率がそれぞれ0.4、2.0、7.5%で顕著な消臭効果が見られる。
【0053】
また、図3は本発明の実施例に係るHA薄膜の厚さがホルムアルデヒドの消臭効果に及ぼす影響を示したグラフである。具体的には、本発明の実施例に係るTiO2薄膜の厚さを0.5μmに固定し、ホルムアルデヒドが0%になるまでの時間をHA薄膜(パターンなし)の厚さを変化させてグラフ表示したものであり、HAの薄膜の厚さが、0.3〜2.0μmであれば、ホルムアルデヒドの残存率は3H以内に0%になることが判る。
【0054】
実施例1・4、1・5はHA薄膜(パターンなし)の厚さがいずれも0.5μmで、TiO2薄膜の厚さそれぞれ0.3、0.1μmとしたものであるが、1H後のホルムアルデヒドの残存率は、それぞれ3.6と56%となっている。図9は本発明の実施例に係るTiO2薄膜の厚さがホルムアルデヒドの消臭効果に及ぼす影響を示したグラフであり、表1に示した実施例1・1、1・4、1・5の消臭試験結果をもとにプロットしたものであり、HA薄膜の厚さが0.5μmのとき、TiO2薄膜の厚さが0.1μmあれば1H後にホルムデヒドは略半減することを示している。
【0055】
図4は本発明の実施例に係る光触媒の走査型顕微鏡による断面写真であり、光触媒は、ガラス板製の基材上に厚さ0.5μmのTiO2薄膜と厚さ0.5μmのHA薄膜(パターンなし)を順次コーティングさせたものであり、柱状構造を持ったTiO2薄膜の上に、均一で緻密なHA膜が形成され、TiO2薄膜層もHA膜層も平滑度が高いことが判る。
【0056】
図5は本発明の実施例に係る光触媒のX線回折による各薄膜のX線回折パターンを示したものであり、(a) はガラス板製の基材のみ、(b)はガラス板製の基材上にHA薄膜(パターンなし)のみをコーティングしたもの、(c)はガラス板製の基材上にTiO2薄膜とHA薄膜(パターンなし)を順次コーティングしたものであるである。
【0057】
(a)では、2θ=25°付近にガラスを示すブロードなピークが見られる。(b)では、ガラス板製の基材のピークに加え、2θ=30°付近にアモルファスなリン酸カルシウムを示すブロードなピークが存在する。また、(c)では、(b)のピークに加え、2θ=25.3°、37.8°、53.9°に結晶性のアナターゼ二酸化チタンを示すピークが見られる。このことから、コーティングしたHA薄膜がアモルファスリン酸カルシウム層であることが判かる。
【0058】
【表1】
【実施例2】
【0059】
本実施例は、実施例1において、基材の表面に形成されたTiO2薄膜の表面にHA薄膜を形成するときに、TiO2薄膜の形成された基材の表面に下記円形パターンの設けられた樹脂製フイルムを被覆し、それ以外の条件は実施例1と同一にしたものである。これにより、HA薄膜に設けたパターンが光触媒の性能に及ぼす影響を明確にしている。
【0060】
図6は本発明の実施例に係る光触媒の説明図であり、(a)はリン酸カルシウム薄膜(円形パターンのなし)の断面図、(b)はリン酸カルシウム薄膜(円形パターンあり)の断面図、(c)は円形パターンの平面図である。図6において3は基材、2は二酸化チタン(TiO2)層、1はリン酸カルシウム層を示している。
【0061】
表1において、実施例2・1、2・2は、TiO2薄膜の厚さがいずれも0.5μmで、HA薄膜の厚さもいずれも0.5μmとし、パターンを円形としその直径をそれぞれ1.3、2.9mm、被覆率をそれぞれ17、26%としたものであるが、1H後のホルムアルデヒドの残存率がそれぞれ0、0.4%で実施例1と同様に顕著な消臭効果が見られる。
【0062】
図7は本発明の実施例に係る光触媒のリン酸カルシウムのCa/Pモル比とガスの吸着性(吸着残存率)の関係を示したグラフであり、表2は各種リン酸カルシウムのCa/Pのモル比を表示したものである。図7は表2に示された各種リン酸カルシウムの粉末を使用し、吸着試験開始して1H後のリン酸カルシウムの粉末に吸着されないで残ったガスの残存率を縦軸とし、各種リン酸カルシウムに対応するCa/Pのモル比を横軸にとってプロットしたものである。なお表2において、HAのCa/Pのモル比は1.67となっているが、スパッタリングのコーティング条件を制御することによって3.0程度までとすることができる。ガス残存率の測定は、表2に示す各種リン酸カルシウムの粉末3gを容量130mlのガラス製ボトルに詰め、ボトル内のガスの残存率をガスクロマトグラフィ(日立製 GC-3900)により測定した。ホルムアルデヒドガスの場合にはCa/Pのモル比が高いほど吸着性が高い。これはCa/Pのモル比の高いリン酸カルシウムほど、水との親和性が高く、水との親和性の高いホルムアルデヒドガスが吸着され易いと考えられるからである。一方アリシンの場合には、Ca/Pのモル比が低いほど吸着性が高い。これはアリシンは硫黄系のガス臭であり、Ca/Pのモル比の低いリン酸カルシウムほど、リン原子が多く、硫黄系原子との親和性が高いためと考えられるからである。
【0063】
図8は本発明の実施例に係る二酸化チタン(TiO2)薄膜の厚さと透過率との関係を示したグラフである。スパッタリング法によりTiO2をターゲットとして電力100W、圧力5.0Paでコーティングして、異なる膜厚の薄膜を作製し、500℃×4Hで加熱処理し紫外可視近赤外分光光度計(UbestV-570DS:日本分光)にて透過率を測定したものである。グラフ中、上側の曲線は可視光線の上限に近い波長700nm、下側の曲線は可視光線の下限に近い波長400nmのTiO2薄膜の厚さに対する透過率を示したものであり、両曲線ともTiO2の薄膜の厚さが厚くなると透過率が低下しており、膜厚を0.5μm以下にすれば透明性が維持できる。
【0064】
【表2】
【実施例3】
【0065】
上記の実施例1、2において、ガスを対象とする光触媒の効果を示したが、本実施例では、液体を対象とする光触媒の効果を示す。
【0066】
メチレンブルー(1mM(Mol))を下記の表3に示す各光触媒層上に滴下し、暗所にて2時間乾燥した後、0.5mWの紫外線を連続照射し、実施例2と同一の紫外可視近赤分光光度計(UbestV-570DS:日本分光)にて、紫外線照射前後の560nmの波長の透過率変化を測定し、各時間のメチレンブルー残存率を求めた。
【0067】
【表3】
図10は本発明の実施例に係る光触媒の有するメチレンブルーの分解率(残存率)を示したグラフである。図10において、縦軸のABS(Absorbance)とは各時間における、メチレンブルーを透過した時に吸収された光の吸光度であり、ABS0とは、計測開始 (時間0)時のメチレンブルーの吸光度である。そしてABS/ABS0をもってメチレンブルーの残存率を示している。
【0068】
実施例3・1の厚さ0.5μmのTiO2薄膜と厚さ0.5μmのHA薄膜をコーティングした光触媒では、メチレンブルーは3時間後44%まで減少し、比較例3、4、5に係る基材だけのもの、厚さ0.5μmのHA薄膜のみを基材にコーティングしたもの、厚さ0.5μmのTiO2薄膜のみを基材にコーティングしたものとの間には顕著な相違があることが判かる。
【0069】
図11は、本発明の実施例に係る光触媒によるメチレンブルーの分解の状況を示した写真であり、図10で示した実施例と比較例に対応するメチレンブルーの分解の様子を示している。比較例3、4、5に係る基材だけのもの、厚さ0.5μmのHA薄膜のみを基材にコーティングしたもの、厚さ0.5μmのTiO2薄膜のみを基材にコーティングしたものでは、メチレンブルーの濃度変化が見られない。これに対し、実施例3・1の厚さ0.5μmのTiO2薄膜と厚さ0.5μmのHA薄膜を基材に順次コーティングしたものは時間の経過に伴い、特に3時間後より色が薄くなり、視覚的にも、メチレンブルーが早く分解されていることが明白である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施例に係るスパッタリング装置の概念図である。
【図2】本発明の実施例に係る光触媒消臭力評価試験の結果を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例に係るHA薄膜の厚さがホルムアルデヒドの消臭に及ぼす影響を示したグラフである。
【図4】本発明の実施例に係る光触媒の走査型電子顕微鏡による断面写真である。
【図5】本発明の実施例に係る光触媒のX線回折による各薄膜のX線回折パターンを示したものであり、(a) はガラス板製の基材のみ、(b)はガラス板製の基材上にHA薄膜(パターンなし)のみをコーティングしたもの、(c)はガラス板製の基材上にTiO2薄膜とHA薄膜(パターンなし)を順次コーティングしたものである。
【図6】本発明の実施例に係る光触媒リン酸カルシウム薄膜の説明図であり、(a)はリン酸カルシウム薄膜(円形パターンのなし)の断面図、(b)はリン酸カルシウム薄膜(円形パターンあり)の断面図、(c)は円形パターンの平面図である。
【図7】本発明の実施例に係るリン酸カルシウムのCa/Pモル比とガスの吸着性(吸着残存率)の関係を示したグラフである。
【図8】本発明の実施例に係る二酸化チタン(TiO2)薄膜の厚さと透過率との関係を示したグラフである。
【図9】本発明の実施例に係るTiO2薄膜の厚さがホルムアルデヒドの消臭効果に及ぼす影響を示したグラフである。
【図10】本発明の実施例に係る光触媒の有するメチレンブルーの分解率(残存率)を示したグラフである。
【図11】本発明の実施例に係る光触媒によるメチレンブルーの分解の状況を示した写真である。
【符号の説明】
【0071】
100・・スパッタリング装置
101・・真空容器
102・・高周波電源
103・・真空ポンプ
200・・基板
300・・ターゲット(TiO2/HA)
【技術分野】
【0001】
本発明はリン酸カルシウム薄膜付き光触媒に関し、より詳しくは、所定の基材に、二酸化チタン薄膜をコーティングし、更にその上にアモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜をコーティングした光触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタンは、光を照射すると強い酸化還元力(光触媒反応)を生じるため、脱臭、防汚、水の浄化等各種の化学反応を進行させる光触媒として広く用いられている。
【0003】
また、上記の光触媒反応は、二酸化チタンの表面反応であり、反応が完了するまで処理する有害物質を二酸化チタンに接触させておく必要がある。このため、二酸化チタン単独で使用されるのみならず、有害物質である有機物の吸着特性に優れるアパタイトを二酸化チタン基材に付着させるため、その基材を擬似体液に浸漬し、アパタイトを析出させ、多孔質アパタイト被覆二酸化チタン複合物を得る方法、あるいは、チタン含有リン酸カルシウムを加水分解して二酸化チタン被覆アパタイト結晶を得る方法などが下記特許文献1、2に示されている。
【0004】
また、共沈法を用いて、アパタイト結晶構造中に金属酸化物をイオン交換により形成する金属修飾アパタイトも、下記特許文献3に示されている。
【0005】
一方、光触媒は実用的には何らかの構造体を担体(基材)として、その表面に光触媒を結合させた状態に担持させて使用されるのが一般的な方法であり、二酸化チタンの微粒子やアパタイト被覆二酸化チタン微粒子等を有機又は無機のバインダーで固定する方法や、チタンアルコキシド等の二酸化チタンの前駆体からゲル・ゾル法により薄膜を成形する等の湿式による方法や、スパッタリング、蒸着といった乾式による方法が下記特許文献4に示されている。
【0006】
また、金属又は有機材料からなる基材に二酸化チタンを担持する場合、これらの基材を二酸化チタンで直接被覆すると、二酸化チタンが基材を侵食するチョーキングといわれる現象が生じるため、基材と二酸化チタンとの間にバインダー膜を介在させた積層構造にすることが行われている。そしてまた、また二酸化チタンをバインダー樹脂によって基材に結合させる場合には、二酸化チタンによってバインダー樹脂が分解され劣化・消失が生じるため、バインダー樹脂を増量することが下記特許文献5、6、7に示されている。
【特許文献1】特開平10−244166号公報
【特許文献2】特開2001−270709号公報
【特許文献3】特開平11−141931号公報
【特許文献4】特開2002−317260号公報
【特許文献5】特開2003−275601号公報
【特許文献6】特開2005−68817号公報
【特許文献7】特開平9−225319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、光触媒性薄膜を成形する技術としての湿式による方法では、そのプロセスの特性より塗布する溶液の性状管理が必要であったり、大きな面積の基材に形成する場合、膜の均一性に欠ける等の製造上の問題がある。またチョーキング対策として積層構造にすることは施工が面倒であるという問題がある。また、バインダー樹脂に二酸化チタンを混合する方法では、バインダー樹脂を増加することは、二酸化チタン粒子の全体の比率を下げ、光触媒の活性を低下させることを意味するため、光触媒の活性と耐久性とを両立させることが困難であるという問題があった。またガラス板等の特に透明度を必要とする基材においては、光透過性が著しく減少するという問題があった。具体的には、多孔質アパタイトや結晶性のアパタイトを被覆した複合体粒子では、もともと透明性が低いため、ガラス面などにコートする場合、透明性を維持するための薄膜化と消臭効果の向上のための高密度化とは相反するものであるから、複合体粒子の密度を上げることは困難であり、加えて有機・無機などのバインダが必要となる。一方乾式である蒸着による方法では、成膜時に基材が高温雰囲気に曝されるために、基材に耐熱上の制約が生じるという問題があった。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、小さな面積で効率的に、高い消臭・大気汚染・水処理等の効果を有し、付着強度が高く、透明性の確保も可能な光触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための第1の発明は、基材表面上に二酸化チタン薄膜、さらにその表面にアモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜がコーティングされていることを特徴とする光触媒である。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、上記基材が透明であることを特徴とする光触媒である。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜が上記二酸化チタン薄膜表面全体をカバーするように設けられたことを特徴とする光触媒である。
【0012】
第4の発明は、第1乃至第3のいずれか1の発明において、上記アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜の表面と上記二酸化チタン薄膜の表面が、上記基材の表面とほぼ同じく平滑に形成されていることを特徴とする光触媒。
【0013】
第5の発明は、第1乃至第4のいずれか1の発明において、上記二酸化チタンの薄膜が0.1〜1.0μmの厚さであることを特徴とする光触媒である。
【0014】
第6の発明は、第1乃至第5のいずれか1の発明において、上記アモルファス緻密リン酸カルシウムの膜厚が0.3〜2.0μmの厚さでコーティングされていることを特徴とする光触媒である。
【0015】
第7の発明は、第1乃至第6のいずれか1の発明において、上記アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜のカルシウム/リン(以下「Ca/P」という。)のモル比が0.5〜1.0であることを特徴とする光触媒である。
【0016】
第8の発明は、第1乃至第7のいずれか1の発明において、上記アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜が、パターン状にコーティングされていることを特徴とする光触媒である。
【0017】
第9の発明は、第1乃至第8のいずれか1の発明において、上記基材が透明ガラス板であることを特徴とする光触媒である。
【0018】
第10の発明は、第1乃至第9のいずれか1の発明において、上記基材が金属又は高分子樹脂であるいることを特徴とする光触媒である。
【0019】
上記の基材表面への二酸化チタン、アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜のコーティングは、蒸着やPVD、CVD、スパッタリング、レーザーアブレージョン、ゾルゲル法など、いろいろな方法によって行われる。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明は、基材表面上に、二酸化チタン薄膜、さらにその表面にアモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜がコーティングされていることを特徴とする光触媒であるから、(1)触媒の活性度が高く、有機物の吸着特性に優れ、脱臭・大気汚染・水処理等の浄化に供し、(2)膜の均一性に富み密着性の高い、品質の安定した薄膜を形成することができ、(3)適用する基材が耐熱上の制約を受けることがなく、(4)さらにバインダーを使用しないので、光透過性の低下が少ないという効果を有する。
【0021】
第2の発明は、第1の発明において、基材が透明な光触媒であるから、第1の発明の効果において、透明度が高く、採光しながら消臭、抗菌ができるという効果を有する。
【0022】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜が二酸化チタン薄膜表面全体をカバーするように設けられた光触媒であり、第4の発明は、第1乃至第3のいずれか1の発明において、アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜の表面と二酸化チタン薄膜の表面が基材の表面とほぼ同じく平滑に形成された光触媒であるから、より品質の安定した薄膜が形成され、それぞれの発明の効果において、脱臭・大気汚染の浄化、水処理等の性能が、より高い光触媒を得ることができる。
【0023】
第5の発明は、第1乃至第4のいずれか1の発明において、二酸化チタンの薄膜が0.1〜1.0μmの厚さであるから、二酸化チタンの膜厚が必要充分にして、第1乃至第4のいずれか1の発明の効果において、脱臭、大気汚染の浄化、水処理等の性能が、より高い光触媒を得ることができる。
【0024】
第6の発明は、第1乃至第5のいずれか1の発明において、アモルファス緻密リン酸カルシウムの膜厚が0.3〜2.0μmの厚さでコーティングされているから、アモルファス緻密リン酸カルシウムの膜厚が必要充分にして、第1乃至第5のいずれか1の発明の効果において、脱臭、大気汚染の浄化、水処理等の性能が、より高い光触媒を得ることができる。
【0025】
第7の発明は、第1乃至第6のいずれか1の発明において、上記アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜のCa/Pのモル比が0.5〜1.0の光触媒アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜であるから、第1乃至第6のいずれか1の発明の効果において、ホルムアルデヒドガス、アリシンガスのいずれのガスに対しても吸着性が高く脱臭、大気汚染の浄化、水処理等の性能が高い光触媒を得ることができる。
【0026】
第8の発明は、第1乃至第7のいずれか1の発明において、アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜が、パターン状の光触媒であるから、第1乃至第7のいずれか1の発明の効果において、アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜を厚くして、耐磨耗性等を高めながら、脱臭、大気汚染の浄化、水処理等の性能の高い光触媒を得ることができる。
【0027】
第9の発明は、第1乃至第8のいずれか1の発明において、基材がガラス板からなる光触媒であるから、第1乃至第8のいずれか1の発明の効果において、光透過性が高いという効果を有する光触媒を得ることができる。
【0028】
第10の発明は、第1乃至第9のいずれか1の発明において、基材が金属又は高分子樹脂からなる光触媒であるから、第1乃至第9のいずれか1の発明の効果において、基材である金属又は高分子樹脂の二酸化チタンによるチョーキングが防止されるという効果を有する光触媒を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、基材表面上にスパッタリング法を用いて、基材側に二酸化チタン薄膜、その表面にアモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜がコーティングされていることを特徴とする光触媒である。
【0030】
ここで、アモルファス緻密リン酸カルシウムとは、チタン粉末やチタン層の上にアパタイトを析出させる方法で作製された従来のアパタイト層が多孔質で著しく透過性が低いものであるのに対して、組織がアモルファスであることに加えて、非常に緻密であることを指している。
【0031】
二酸化チタン(TiO2)は光触媒反応を促進する触媒であるから、膜厚が薄過ぎると触媒反応が遅延するのみならず、膜の非形成部分が生じたり、膜の密着強度の低下が生じる。一方、触媒反応の速度には限界があり、膜厚が厚過ぎる場合には二酸化チタンの無駄に継ながる。
【0032】
また、リン酸カルシウム(Ca−P)は有害物質である有機物を吸着し、二酸化チタンの表面で行われる触媒反応が完了するまで、有機物を二酸化チタンに接触させておく機能を有するものであるから、膜厚が薄過ぎるとその吸着性能が低下し、厚過ぎると有機物の透過率が低下し、反って二酸化チタンの触媒反応が遅くなる。
【0033】
具体的には、上記二酸化チタン薄膜は0.1μmあれば触媒としての機能が確保される。またアモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜(以下「リン酸カルシウム薄膜」という。)は、パターンを形成しない場合において、0.3μm未満又は2.0μmを超えると効果が低下するので、0.3〜2.0μmの厚さでコーティングすることが好ましい(後述の図3)。またホルムアルデヒドを消臭する場合には、リン酸カルシウム薄膜におけるCa/Pのモル比は0.5以上であることが好ましいが、Ca/Pのモル比は上記リン酸一カルシウム(CMP)が0.5、リン酸二カルシウム(CPP)が1.0、リン酸三カルシウム(TCP)が1.5、ハイドロキシアパタイト(HA)が1.67であるから、ターゲットとして、いずれを使用してもこの要件を満たす。
【0034】
一方、ニンニク臭で代表される硫黄系ガスのアリシンを消臭する場合には、リン酸カルシウム薄膜におけるCa/Pのモル比は1.0以下であることが好ましいが、ターゲットとして上記リン酸一カルシウム(Ca/P=0.5)、リン酸二カルシウム(Ca/P=1.0)を使用すればこの要件を満たす。
【0035】
また、上記リン酸カルシウムは、リン酸一カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、アパタイト、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、アモルファスのいずれでもよく、これらの2種以上の混合物としてもよい。更にスパッタリング法によって得られた二酸化チタン・リン酸カルシウム薄膜複合コーティングの二酸化チタン薄膜は、アモルファスであるが、これを400から1300℃で熱処理してアナターゼ、ルチルとしてもよく、これらの2種以上の混合物としてもよい。リン酸カルシウム薄膜はアモルファスであって、原子レベルで緻密に二酸化チタン薄膜の上に堆積し、バインダー樹脂が介在しないため、透明性が高い。
【0036】
また、上記リン酸カルシウム(アパタイト)は、水酸アパタイト、炭酸アパタイト、フッ素アパタイト、シリカアパタイト、塩素アパタイトのいずれでもよく、これらの2種以上の混合物としてもよい。
【0037】
また、上記リン酸カルシウム薄膜は、その耐磨耗性を高める等のために膜厚を厚くすると、有機物の透過が阻害されて二酸化チタンの触媒反応が低下するが、リン酸カルシウム薄膜を円形、方形、櫛形等のパターン状にすれば、消臭効果を損なうことがなくなる。
【0038】
また、基材にガラス板を使用して、脱臭、大気汚染等の浄化の効果に加えて光り透過性を確保したい場合には、リン酸カルシウム薄膜は殆ど光り透過性に影響を及ぼさないので、その膜厚を上述の0.3〜2.0μmとしても、二酸化チタン薄膜の厚さを0.1〜0.5μmにすれば、光透過性を損なうことなく、脱臭、大気汚染等の浄化の効果を得ることができる。
【0039】
なお、上記二酸化チタン、リン酸カルシウム薄膜はスパッタリング工法によるものであるから、基材は、金属、樹脂、ガラス等に適用できるが、二酸化チタンによってチョ−キングを受ける基材の場合には、事前にリン酸カルシウム膜を形成してチョーキング防止の対策を行う必要がある。
【0040】
なお、前述の通り、上記基材表面への二酸化チタン、リン酸カルシウム薄膜のコーティングは、蒸着やPVD、CVD、スパッタリング、レーザーアブレージョン、ゾルゲル法など、各種の方法によって行われる。
【0041】
以下実施例により、より詳細に説明する。
【実施例1】
【0042】
図1は実施例(後述の実施例2、3を含む)に係るスパッタリング装置の概念図である。図1において、100はスパッタリング装置全体を示し、101は真空容器、200は真空容器の上側に配置される基板、300は基板200の下側に対向して配置されるターゲットである。
【0043】
真空容器101の1壁面からArガスが装填され、他の壁面から真空ポンプによって排気される。ターゲットには高周波電源102から高周波電圧が印加される。本実施例1のスパッタリング装置、基材、ターゲットの諸元は下記の通りである。
【0044】
スパッタリング装置:アネルバ社製SPF−210HS
基材:ガラス板
寸法(縦×横×厚さ):80mm×16mm×1mm、
ターゲット:TiO2/HA
スパッタリングの手順は、まず真空容器101内の所定の位置にターゲットTiO2をセットし、真空容器101内を真空ポンプ103により吸引して1×10−5Paの真空度にした後、この真空度を維持したままArガスを10ml/分の量で装填し、Arガスの圧力を5.0Paとする。
【0045】
続けて、高周波電源102により、ターゲットのTiO2に高周波電圧を掛け、放電電力100W、圧力5.0PaにてTiO2薄膜コーティングを行い、所定の厚みの均一な薄膜を形成する。
【0046】
次に、ターゲットをTiO2からHAに取替え、真空容器101内を真空ポンプ103により吸引して1×10−5Paの真空度にした後、この真空度を維持したままArガスを10ml/分の量で装填し、Arガスの圧力を0.5Paとする。
【0047】
続けて、高周波電源102により、ターゲットであるHAに高周波電圧を掛け、放電電力100W、圧力0.5Paにてリン酸カルシウム薄膜コーティングを行い、所定の厚みの均一な薄膜を形成し、電気炉内にて500℃にて加熱処理を行いTiO2層をアナターゼ構造に結晶化し、X線回析法にてその結晶構造の確認を行う。
【0048】
次に、上記の手順で作製した二酸化チタン・リン酸カルシウム薄膜コーテイング(TiO2―HA)の消臭性の効果を確認する。
【0049】
まず、密閉容器(40cc)内に上記薄膜を形成した基材から切り出した寸法80mm×16mm×1mmの試料を収納し、この容器内にホルムアルデヒドガス(HCHO)を0.5ml入れて暗所に1時間放置し、その後、紫外線照射器を使用し、0.5mWの紫外線を連続照射した。これによりホルムアルデヒドガス(HCHO)は、リン酸カルシウム薄膜による吸着及び紫外線照射による光触媒効果により二酸化炭素と水分とに分解されるので、各時間毎に容器内のガスを0.1ml取り出し、ガスクロマトグラフィ(日立製 GC−3900)を使用して計測する。
【0050】
表1は本発明の実施例及び比較例に係る消臭効果をデジタルに示したものであり、図2はそれをグラフ表示したものである。
【0051】
表1において、比較例1は、HA薄膜のみの1層をコーティングしたものであり、比較例2はTiO2薄膜のみの1層をコーティングしたもので、1H後のホルムアルデヒドの残存率がそれぞれ90%、86%でいずれも消臭効果は殆ど見られない。
【0052】
これに対して、実施例1・1〜1・3は、TiO2薄膜の厚さがいずれも0.5μmで、HAの膜厚を0.5、1.0、2.0μmと変化させたものであるが、1H後のホルムアルデヒドの残存率がそれぞれ0.4、2.0、7.5%で顕著な消臭効果が見られる。
【0053】
また、図3は本発明の実施例に係るHA薄膜の厚さがホルムアルデヒドの消臭効果に及ぼす影響を示したグラフである。具体的には、本発明の実施例に係るTiO2薄膜の厚さを0.5μmに固定し、ホルムアルデヒドが0%になるまでの時間をHA薄膜(パターンなし)の厚さを変化させてグラフ表示したものであり、HAの薄膜の厚さが、0.3〜2.0μmであれば、ホルムアルデヒドの残存率は3H以内に0%になることが判る。
【0054】
実施例1・4、1・5はHA薄膜(パターンなし)の厚さがいずれも0.5μmで、TiO2薄膜の厚さそれぞれ0.3、0.1μmとしたものであるが、1H後のホルムアルデヒドの残存率は、それぞれ3.6と56%となっている。図9は本発明の実施例に係るTiO2薄膜の厚さがホルムアルデヒドの消臭効果に及ぼす影響を示したグラフであり、表1に示した実施例1・1、1・4、1・5の消臭試験結果をもとにプロットしたものであり、HA薄膜の厚さが0.5μmのとき、TiO2薄膜の厚さが0.1μmあれば1H後にホルムデヒドは略半減することを示している。
【0055】
図4は本発明の実施例に係る光触媒の走査型顕微鏡による断面写真であり、光触媒は、ガラス板製の基材上に厚さ0.5μmのTiO2薄膜と厚さ0.5μmのHA薄膜(パターンなし)を順次コーティングさせたものであり、柱状構造を持ったTiO2薄膜の上に、均一で緻密なHA膜が形成され、TiO2薄膜層もHA膜層も平滑度が高いことが判る。
【0056】
図5は本発明の実施例に係る光触媒のX線回折による各薄膜のX線回折パターンを示したものであり、(a) はガラス板製の基材のみ、(b)はガラス板製の基材上にHA薄膜(パターンなし)のみをコーティングしたもの、(c)はガラス板製の基材上にTiO2薄膜とHA薄膜(パターンなし)を順次コーティングしたものであるである。
【0057】
(a)では、2θ=25°付近にガラスを示すブロードなピークが見られる。(b)では、ガラス板製の基材のピークに加え、2θ=30°付近にアモルファスなリン酸カルシウムを示すブロードなピークが存在する。また、(c)では、(b)のピークに加え、2θ=25.3°、37.8°、53.9°に結晶性のアナターゼ二酸化チタンを示すピークが見られる。このことから、コーティングしたHA薄膜がアモルファスリン酸カルシウム層であることが判かる。
【0058】
【表1】
【実施例2】
【0059】
本実施例は、実施例1において、基材の表面に形成されたTiO2薄膜の表面にHA薄膜を形成するときに、TiO2薄膜の形成された基材の表面に下記円形パターンの設けられた樹脂製フイルムを被覆し、それ以外の条件は実施例1と同一にしたものである。これにより、HA薄膜に設けたパターンが光触媒の性能に及ぼす影響を明確にしている。
【0060】
図6は本発明の実施例に係る光触媒の説明図であり、(a)はリン酸カルシウム薄膜(円形パターンのなし)の断面図、(b)はリン酸カルシウム薄膜(円形パターンあり)の断面図、(c)は円形パターンの平面図である。図6において3は基材、2は二酸化チタン(TiO2)層、1はリン酸カルシウム層を示している。
【0061】
表1において、実施例2・1、2・2は、TiO2薄膜の厚さがいずれも0.5μmで、HA薄膜の厚さもいずれも0.5μmとし、パターンを円形としその直径をそれぞれ1.3、2.9mm、被覆率をそれぞれ17、26%としたものであるが、1H後のホルムアルデヒドの残存率がそれぞれ0、0.4%で実施例1と同様に顕著な消臭効果が見られる。
【0062】
図7は本発明の実施例に係る光触媒のリン酸カルシウムのCa/Pモル比とガスの吸着性(吸着残存率)の関係を示したグラフであり、表2は各種リン酸カルシウムのCa/Pのモル比を表示したものである。図7は表2に示された各種リン酸カルシウムの粉末を使用し、吸着試験開始して1H後のリン酸カルシウムの粉末に吸着されないで残ったガスの残存率を縦軸とし、各種リン酸カルシウムに対応するCa/Pのモル比を横軸にとってプロットしたものである。なお表2において、HAのCa/Pのモル比は1.67となっているが、スパッタリングのコーティング条件を制御することによって3.0程度までとすることができる。ガス残存率の測定は、表2に示す各種リン酸カルシウムの粉末3gを容量130mlのガラス製ボトルに詰め、ボトル内のガスの残存率をガスクロマトグラフィ(日立製 GC-3900)により測定した。ホルムアルデヒドガスの場合にはCa/Pのモル比が高いほど吸着性が高い。これはCa/Pのモル比の高いリン酸カルシウムほど、水との親和性が高く、水との親和性の高いホルムアルデヒドガスが吸着され易いと考えられるからである。一方アリシンの場合には、Ca/Pのモル比が低いほど吸着性が高い。これはアリシンは硫黄系のガス臭であり、Ca/Pのモル比の低いリン酸カルシウムほど、リン原子が多く、硫黄系原子との親和性が高いためと考えられるからである。
【0063】
図8は本発明の実施例に係る二酸化チタン(TiO2)薄膜の厚さと透過率との関係を示したグラフである。スパッタリング法によりTiO2をターゲットとして電力100W、圧力5.0Paでコーティングして、異なる膜厚の薄膜を作製し、500℃×4Hで加熱処理し紫外可視近赤外分光光度計(UbestV-570DS:日本分光)にて透過率を測定したものである。グラフ中、上側の曲線は可視光線の上限に近い波長700nm、下側の曲線は可視光線の下限に近い波長400nmのTiO2薄膜の厚さに対する透過率を示したものであり、両曲線ともTiO2の薄膜の厚さが厚くなると透過率が低下しており、膜厚を0.5μm以下にすれば透明性が維持できる。
【0064】
【表2】
【実施例3】
【0065】
上記の実施例1、2において、ガスを対象とする光触媒の効果を示したが、本実施例では、液体を対象とする光触媒の効果を示す。
【0066】
メチレンブルー(1mM(Mol))を下記の表3に示す各光触媒層上に滴下し、暗所にて2時間乾燥した後、0.5mWの紫外線を連続照射し、実施例2と同一の紫外可視近赤分光光度計(UbestV-570DS:日本分光)にて、紫外線照射前後の560nmの波長の透過率変化を測定し、各時間のメチレンブルー残存率を求めた。
【0067】
【表3】
図10は本発明の実施例に係る光触媒の有するメチレンブルーの分解率(残存率)を示したグラフである。図10において、縦軸のABS(Absorbance)とは各時間における、メチレンブルーを透過した時に吸収された光の吸光度であり、ABS0とは、計測開始 (時間0)時のメチレンブルーの吸光度である。そしてABS/ABS0をもってメチレンブルーの残存率を示している。
【0068】
実施例3・1の厚さ0.5μmのTiO2薄膜と厚さ0.5μmのHA薄膜をコーティングした光触媒では、メチレンブルーは3時間後44%まで減少し、比較例3、4、5に係る基材だけのもの、厚さ0.5μmのHA薄膜のみを基材にコーティングしたもの、厚さ0.5μmのTiO2薄膜のみを基材にコーティングしたものとの間には顕著な相違があることが判かる。
【0069】
図11は、本発明の実施例に係る光触媒によるメチレンブルーの分解の状況を示した写真であり、図10で示した実施例と比較例に対応するメチレンブルーの分解の様子を示している。比較例3、4、5に係る基材だけのもの、厚さ0.5μmのHA薄膜のみを基材にコーティングしたもの、厚さ0.5μmのTiO2薄膜のみを基材にコーティングしたものでは、メチレンブルーの濃度変化が見られない。これに対し、実施例3・1の厚さ0.5μmのTiO2薄膜と厚さ0.5μmのHA薄膜を基材に順次コーティングしたものは時間の経過に伴い、特に3時間後より色が薄くなり、視覚的にも、メチレンブルーが早く分解されていることが明白である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施例に係るスパッタリング装置の概念図である。
【図2】本発明の実施例に係る光触媒消臭力評価試験の結果を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例に係るHA薄膜の厚さがホルムアルデヒドの消臭に及ぼす影響を示したグラフである。
【図4】本発明の実施例に係る光触媒の走査型電子顕微鏡による断面写真である。
【図5】本発明の実施例に係る光触媒のX線回折による各薄膜のX線回折パターンを示したものであり、(a) はガラス板製の基材のみ、(b)はガラス板製の基材上にHA薄膜(パターンなし)のみをコーティングしたもの、(c)はガラス板製の基材上にTiO2薄膜とHA薄膜(パターンなし)を順次コーティングしたものである。
【図6】本発明の実施例に係る光触媒リン酸カルシウム薄膜の説明図であり、(a)はリン酸カルシウム薄膜(円形パターンのなし)の断面図、(b)はリン酸カルシウム薄膜(円形パターンあり)の断面図、(c)は円形パターンの平面図である。
【図7】本発明の実施例に係るリン酸カルシウムのCa/Pモル比とガスの吸着性(吸着残存率)の関係を示したグラフである。
【図8】本発明の実施例に係る二酸化チタン(TiO2)薄膜の厚さと透過率との関係を示したグラフである。
【図9】本発明の実施例に係るTiO2薄膜の厚さがホルムアルデヒドの消臭効果に及ぼす影響を示したグラフである。
【図10】本発明の実施例に係る光触媒の有するメチレンブルーの分解率(残存率)を示したグラフである。
【図11】本発明の実施例に係る光触媒によるメチレンブルーの分解の状況を示した写真である。
【符号の説明】
【0071】
100・・スパッタリング装置
101・・真空容器
102・・高周波電源
103・・真空ポンプ
200・・基板
300・・ターゲット(TiO2/HA)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面上に二酸化チタン薄膜、さらにその表面にアモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜がコーティングされていることを特徴とする光触媒。
【請求項2】
上記基材が透明であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒。
【請求項3】
上記アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜が上記二酸化チタン薄膜表面全体をカバーするように設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の光触媒。
【請求項4】
上記アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜の表面と上記二酸化チタン薄膜の表面が上記基材の表面とほぼ同じく平滑に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の光触媒。
【請求項5】
上記二酸化チタンの薄膜が0.1〜1.0μmの厚さであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の光触媒。
【請求項6】
上記アモルファス緻密リン酸カルシウムの膜厚が0.3〜2.0μmの厚さでコーティングされていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の光触媒。
【請求項7】
上記アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜のカルシウム/リンのモル比が0.5〜1.0であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の光触媒。
【請求項8】
上記アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜が、パターン状にコーティングされていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の光触媒。
【請求項9】
上記基材が透明ガラス板であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載の光触媒。
【請求項10】
上記基材が金属又は高分子樹脂であるいることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載の光触媒。
【請求項1】
基材表面上に二酸化チタン薄膜、さらにその表面にアモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜がコーティングされていることを特徴とする光触媒。
【請求項2】
上記基材が透明であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒。
【請求項3】
上記アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜が上記二酸化チタン薄膜表面全体をカバーするように設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の光触媒。
【請求項4】
上記アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜の表面と上記二酸化チタン薄膜の表面が上記基材の表面とほぼ同じく平滑に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の光触媒。
【請求項5】
上記二酸化チタンの薄膜が0.1〜1.0μmの厚さであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の光触媒。
【請求項6】
上記アモルファス緻密リン酸カルシウムの膜厚が0.3〜2.0μmの厚さでコーティングされていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の光触媒。
【請求項7】
上記アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜のカルシウム/リンのモル比が0.5〜1.0であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の光触媒。
【請求項8】
上記アモルファス緻密リン酸カルシウム薄膜が、パターン状にコーティングされていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の光触媒。
【請求項9】
上記基材が透明ガラス板であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載の光触媒。
【請求項10】
上記基材が金属又は高分子樹脂であるいることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載の光触媒。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−90338(P2007−90338A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234266(P2006−234266)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(800000068)学校法人東京電機大学 (112)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(800000068)学校法人東京電機大学 (112)
【Fターム(参考)】
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